JP4168689B2 - 薄膜積層体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶ディスプレイ素子やプラズマディスプレイ素子、有機ELディスプレイ素子などに用いられる低抵抗の透明電極用の薄膜積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
酸化物透明導電性薄膜は、高い導電性と可視光領域での高い透過率とを有している。
【0003】
このため、酸化物透明導電性薄膜は太陽電池、液晶表示素子、その他各種受光素子等の電極として、あるいは近赤外域の波長における反射吸収特性を生かして自動車窓ガラスや建築物の窓ガラス等に用いる熱線反射膜として、あるいは各種の帯電防止膜、冷凍ショーケースなどの防曇用の透明発熱体として利用されている。
【0004】
酸化物透明導電性薄膜には、アンチモンやフッ素がドーピングされた酸化錫(SnO2)膜や、アルミニウムやガリウムがドーピングされた酸化亜鉛(ZnO)膜や、錫がドーピングされた酸化インジウム(In23)膜などが広範に利用されている。特に錫がドーピングされた酸化インジウム膜、すなわちIn23−Sn系膜はITO(Indium tin oxide)膜と称され、低抵抗の膜が容易に得られることから良く用いられている。
【0005】
これらの酸化物透明導電性薄膜の製造方法としてはスパッタリング法や蒸着法、透明導電層形成用塗液を塗布する方法が良く用いられている。特に、スパッタリング法は、蒸気圧の低い材料を用いて被成膜物質(以下、単に「基板」と示す。)上に膜を形成する場合や、精密な膜厚制御が必要とされる際に有効な手法であり、操作が非常に簡便であることから広範に利用されている。
【0006】
スパッタリング法は一般に、約10Pa以下のアルゴンガス圧のもとで、基板を陽極とし、ターゲットを陰極としてこれらの間にグロー放電を起こしてアルゴンプラズマを発生させ、プラズマ中のアルゴン陽イオンを陰極のターゲットに衝突させ、これによってターゲット成分の粒子をはじき飛ばし、該粒子を基板上に堆積させて成膜するというものである。
【0007】
スパッタリング法は、アルゴンプラズマの発生方法で分類され、高周波プラズマを用いるものは高周波スパッタリング法、直流プラズマを用いるものは直流スパッタリング法という。また、ターゲットの裏側にマグネットを配置してアルゴンプラズマをターゲット直上に集中させ、低ガス圧でもアルゴンイオンの衝突効率を上げて成膜する方法をマグネトロンスパッタリング法という。通常、上記の酸化物透明導電性薄膜の製造法には直流マグネトロンスパッタリング法が採用されている。
【0008】
一般に、ITO膜や酸化インジウム膜の室温成膜による膜では、結晶相と非晶質相との混在した膜が得られやすく、そのような膜で積層体の最表面を覆うと表面の凹凸は激しくなってしまう。また結晶相が存在すれば結晶粒界が存在し、この粒界から金属膜の拡散染みだしや腐食が起こりやすく、特性を変化させてしまうおそれがある。
【0009】
建築窓用の熱線遮蔽膜などの用途には特に表面を被覆する酸化物膜の結晶性が問題になってくる。すなわち、結晶性の良いほうが耐環境性が劣ることになる。
【0010】
一方、LCDや有機EL用の電極としては、表面が平滑で低抵抗な透明導電膜が必要とされている。特に有機EL用の電極の場合、該透明導電膜の上に有機化合物の超薄膜を形成するため、優れた表面平滑性が要求される。
【0011】
膜表面の平滑性は、一般に膜の結晶性に大きく左右される。同一組成であっても結晶粒界の存在しない非晶質膜の方が結晶粒界のある結晶性の膜に比較して表面平滑性は良好である。従来組成のITO膜の場合には、成膜時の基板温度を下げて(150℃以下の低温で)スパッタリング成膜して得た非晶質ITO膜の方が表面平滑性に優れていることが知られている。
【0012】
しかし、非晶質ITO膜の比抵抗は6〜8×10-4Ω・cm程度が限界で、それより低抵抗化することは難しく、シート抵抗の低い電極膜を形成するためには膜厚を厚くする必要があった。例えば、70〜150nmの膜厚では、40Ω/□程度が限界であった。また、ITO膜の膜厚が厚くなると膜の着色の問題が生じてしまうだけでなく、材料コストをあげてしまうという新たな問題も出てくる。
【0013】
また、非晶質膜を得ようとして基板を加熱せずに成膜したITO膜では、スパッタリングガス圧が低いと、基板に入射するスパッタ粒子の運動エネルギーが高いため、局所的に温度が上がり、微細な結晶相と非晶質相で構成された膜が得られてしまうことがわかっている。これは、X線回折のほか、透過型電子顕微鏡の解析でも確認されている。このように微細な結晶相が一部で形成されていると、膜の表面平滑性に多少の影響を及ぼす。また膜を所定の形状に弱酸でエッチング除去する際には、結晶相のみが除去できずに残存することがあり、問題となっている。
【0014】
上記の問題を解決するために、発明者は、完全に非晶質構造をとり、表面が平滑な酸化インジウム系透明導電膜の開発を行ってきた。例えば、特開平6−234565号公報にはZnが含有されたIn23材料、特開平11−323531号公報にはGeが含有されたIn23材料が記載されている。
【0015】
発明者はさらに、特願2002−157568号にはSiが含有されたIn23材料、特願2002−157568号にはWが含有されたIn23材料を開発している。これらの材料では、基板温度を低温にしたスパッタリング成膜で安定に非晶質膜が得られており、拡散染みだしや腐食を防止でき、表面平滑性に優れた膜となっている。
【0016】
他の課題として、STN(super twisted nematic)方式を用いた単純マトリックス液晶素子では透明電極が走査信号用電極と画素電極を兼ねているため、高精細化に伴う極めて低いシート抵抗を有する透明電極の開発が急がれている。また、画素密度を増大させて緻密な画面を表示するためには、透明電極パターンの緻密化が要求されており、その場合、100μm程度のピッチで透明電極の端子部を構成することが要求されている。そのような透明電極を実現するためには、透明電極の薄膜化(例えば100〜150nm)と優れたエッチング加工適性、低いシート抵抗が必要となる。
【0017】
また、表示画面の大型化も求められており、大型化にともなって、上述のような緻密パターンの透明電極を形成ししかも液晶に十分な駆動電圧を印加できるようにするためには、シート抵抗値5Ω/□以下、好ましくは3Ω/□以下という透明電極として低いシート抵抗値が必要であり、すなわち高い導電性を備えている必要があった。
【0018】
しかし、上記の非晶質酸化インジウム系材料では、非晶質であるためエッチング特性は良好であるものの、比抵抗は3〜6×10-4Ωcm程度であるため、膜厚が100〜150nmの電極膜ではおよそ40Ω/□のシート抵抗が限界であった。したがって、非晶質酸化インジウム系材料では上記のようなディスプレイの高精細化や大型化には対応できなかった。
【0019】
ところで、金属膜と酸化インジウム系薄膜との薄膜積層体の技術は従来からある。例えば、1982年、日本で開催された第7回ICVMにおいては、熱線反射膜として銀薄膜の表裏面にITO膜もしくは酸化インジウム膜を積層させて構成される3層構造の透明導電膜が提案されている。銀薄膜の介在は抵抗値低減のためで、この透明導電膜はシート抵抗は5Ω/□であり、その高い導電性を活かして上記の表示デバイスへの透明電極への応用が期待された。しかしこの技術では、透明導電膜の表面の粗さについては言及されていなかった。
【0020】
また、銀系導電薄膜層の両側に酸化セリウムや酸化チタンを加えた透明導電薄膜層を設けた積層体を基板に設けた電極基板は、特開平9−305126号公報に記載されている。しかし、酸化セリウムや酸化チタンは高屈折率材料として加えられているので、それら以外の酸化物系透明導電薄膜層を示唆するものは無い。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
以上述べたように、粒界の存在に伴う拡散染みだしや腐食が防止でき、膜厚70〜150nmでも1〜5Ω/□のシート抵抗を有するだけでなく、表面が平滑である透明電極膜は、LCDだけでなく、将来のディスプレイとして注目されているプラズマディスプレイ、有機ELディスプレイでも同じ理由で有用とされているが、これまでの技術ではこのような透明電極膜は実現できなかった。
【0022】
本発明は、粒界の存在に伴う拡散染みだしや腐食が防止でき、膜厚70〜150nmでも1〜5Ω/□のシート抵抗を有し、表面平滑性に優れ、透明性に優れ、高精細もしくは大型のLCDや、プラズマディスプレイ、有機EL用透明電極として有用な薄膜積層体を提供することを目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明の薄膜積層体は、上記目的を達成するために以下の特徴を持つ。
【0024】
すなわち、本発明の薄膜積層体は、金属系導電薄膜層と酸化物系透明導電薄膜層の2層、または酸化物系透明導電薄膜層が金属系導電薄膜層の両側に設けられた3層からなり、酸化物系透明導電薄膜層として、タングステン、シリコン、ゲルマニウムから選ばれた1種以上が含有される非晶質の酸化インジウムが積層されていることを特徴とする薄膜積層体である。
【0025】
金属系導電薄膜層は、銀、銀−金系合金、銀−パラジウム系合金、金、白金、パラジウムのうち少なくとも1種類で構成されることが好ましい。金属系導電薄膜層の厚みは20nm以下が好ましい。
【0026】
酸化物系透明導電薄膜層あるいは金属系導電薄膜層が薄膜積層体の表面を形成するが、この表面の中心線平均表面粗さRaを1.5以下にすることが好ましい。
【0027】
酸化物系透明導電薄膜層の厚さは、4nm以上が好ましい。
【0028】
酸化物系透明導電薄膜層が、タングステンが含有される酸化インジウム薄膜である場合、タングステン/インジウム原子数比が0.004〜0.17の割合であることが好ましい。
【0029】
酸化物系透明導電薄膜層が、シリコンが含有される酸化インジウム薄膜である場合、シリコン/インジウム原子数比が0.002〜0.15の割合であることが好ましい。
【0030】
酸化物系透明導電薄膜層が、ゲルマニウムが含有される酸化インジウム薄膜である場合、ゲルマニウム/インジウム原子数比が0.002〜0.15の割合であることが好ましい。
【0031】
薄膜積層体の全体の膜厚が70〜150nmであるとき、シート抵抗が5Ω/□以下であることが好ましい。
【0032】
本発明の別の態様では、前記薄膜積層体が基板の上に設けられ、薄膜積層体付き透明基材が形成される。この場合、基板に接するのは、酸化物系透明導電薄膜層と金属系導電薄膜層のいずれでも良い。そして、基板に対し反対側が表面となる。また、基板は、例えばディスプレイ素子のガラス板で、この上に前記薄膜積層体が成膜される。
【0033】
【発明の実施の形態】
薄膜積層体
本発明の実施態様に係わる薄膜積層体は、タングステン、ゲルマニウム、シリコンのうち少なくとも1元素が含まれた非晶質の酸化インジウム薄膜で代表される酸化物系透明導電薄膜層が、銀、銀−金系合金、銀−パラジウム系合金、金、白金、パラジウムのうちの少なくとも1種類の金属系導電薄膜層の片側もしくは両側に積層されたものであり、金属系導電薄膜層の表面の片側あるいは両側を酸化物系透明導電薄膜層が覆うような構造をとる。この薄膜積層体は、基板上に成膜で形成され薄膜積層部材を構成するが、基板に直接接するのは、金属系導電薄膜層でも、酸化物系透明導電薄膜層でもよい。基板と反対側が表面となる。
【0034】
薄膜積層体の全体の膜厚が70〜150nmにおいて、シート抵抗が5Ω/□以下の透明電極が実現できる。このような特性が実現できることから、高精細LCDやプラズマディスプレイ、有機EL等の表示デバイス用の透明電極、建築窓用の熱線遮蔽膜等として有用である。
【0035】
酸化物系透明導電薄膜層
酸化インジウムにタングステン、ゲルマニウム、シリコンのうち少なくとも1元素を含させる理由は、次の通りである。すなわち、発明者の実験によると、酸化物系透明導電薄膜層である酸化インジウム薄膜中の添加元素は、タングステンが含まれる場合はタングステン/インジウム原子数比で0.004〜0.0096の割合であり、ゲルマニウムが含まれる場合はゲルマニウム/インジウム原子数比で0.002〜0.17の割合で含まれ、シリコンが含まれる場合はシリコン/インジウム原子数比で0.002〜0.15の割合で含まれる場合、このような組成の酸化インジウム系薄膜は非晶質構造をとりやすい。前記範囲より少ないと非晶質の完全性がくずれ、多くなると他の結晶相が析出したり、結晶化しやすくなってしまう。特に、基板を加熱せずにスパッタ成膜を行った場合は、結晶質相を含まない完全に非晶質構造の薄膜が得られるため、膜表面の凹凸は極めて小さくなる。このような性質の酸化インジウム系薄膜を薄膜積層体の表面に用いることによって、膜の表面粗さが小さい薄膜積層体が得られる。
【0036】
酸化インジウム薄膜を非晶質とする理由は次の通りである。すなわち、一般に、薄膜中の物質の移動は結晶粒界に沿って高頻度に発生する。非晶質構造をとる酸化インジウム系薄膜には、結晶粒界が存在しない。従って、結晶粒界を介して大気から汚染が拡散する腐食を防ぐことができる。
【0037】
上記構成の酸化インジウム薄膜であると、結晶質相を含まない完全に非晶質構造の薄膜が得られるため、膜表面の凹凸は極めて小さくなり、中心線平均表面粗さRaが1.5以下となる。
【0038】
金属系導電薄膜層
金属系導電薄膜層に銀、銀−金系合金、銀−パラジウム系合金、金、白金、パラジウムのうちの少なくとも1種類を用いた理由は、上記金属系導電薄膜層は、可視光領域の透過率は低いが、中心線平均表面粗さRaが1.5以下で表面の凹凸は極めて小さく、厚みを20nm以下に設定することによって60%以上の透過率を維持することが可能であり、金属系導電薄膜層の極めて高い電気伝導性を利用することができるからである。そして、前記酸化インジウム系薄膜で金属系導電薄膜層を覆えば、金属と大気の接触による腐食を防ぐことができる。
【0039】
薄膜積層体付き透明基材
前記薄膜積層体を、ガラス基板などに成膜すれば、例えば透明電極として液晶ディスプレイ素子などの薄膜積層体付き透明基材を構成できる。
【0040】
【実施例】
成膜には6インチφの非磁性体ターゲット用カソードが2ヶ搭載された直流マグネトロンスパッタリング装置を使用した。カソード1には6インチφ×5mmtの酸化インジウム系酸化物焼結体スパッタリング用ターゲットを取り付け、カソード2には6インチφ×5mmtの金属系ターゲットを取り付けた。基板には石英ガラス基板を用い、ガラス基板は各カソードの対向面に移動して静止させることが可能で、各膜は静止対向にて成膜を行った。
【0041】
酸化物系透明導電薄膜層の成膜は以下の条件で行った。酸化インジウム系酸化物焼結体ターゲットと基板との距離を60mmとし、チャンバ内の真空度が1×10-4Pa以下に達した時点で、純度99.9999質量%のArガスをチャンバ内に導入してガス圧0.6Paとし、酸素を1%成膜ガス中に導入させて、直流電力200Wをターゲット−基板間に投入して直流プラズマを発生させ、基板を加熱せずにスパッタリング成膜を実施した。膜厚は成膜時間で制御した。
【0042】
金属系導電薄膜層の成膜は以下の条件で行った。ターゲットと基板との距離を60mmとし、チャンバ内の真空度が1×10-4Pa以下に達した時点で、純度99.9999質量%のArガスをチャンバ内に導入してガス圧0.6Paとし、直流電力100Wをターゲット−基板間に投入して直流プラズマを発生させ、基板を加熱せずにスパッタリング成膜を実施した。膜厚は成膜時間で制御した。
【0043】
上記の条件で金属系導電薄膜層と酸化物系透明導電薄膜層とを積層させ、以下の2種類の構造の薄膜積層体を作製した。
【0044】
1)基板/金属系導電薄膜層/酸化物系透明導電薄膜層
2)基板/酸化物系透明導電薄膜層/金属系導電薄膜層/酸化物系透明導電薄膜層
薄膜積層体のシート抵抗を四端針法で測定し、透過率の光波長依存性を分光光度計(日立製作所製)で測定した。また、薄膜積層体表面の1mm×1mmの領域で中心線平均粗さRaを原子間力顕微鏡(デジタルインスツルメント社製、NanoScopeIII)で5カ所測定し、その平均値を求めた。また各膜の組成はICP発光分析法とEPMAで決定した。
【0045】
(実施例1〜13)
カソード1にタングステンを添加した酸化インジウムの焼結体ターゲットを設置し、カソード2にAg−Pd系合金ターゲット(Pd含有量1質量%)を設置して、1)と2)のタイプの薄膜積層体を形成した例を表1と表2に示す。
【0046】
【表1】
Figure 0004168689
【0047】
【表2】
Figure 0004168689
【0048】
表1と2に示すように、本発明の薄膜積層体は総膜厚が70〜135nmと薄いのにも関わらずシート抵抗は2.0〜4.5Ω/□と非常に低抵抗であり、薄膜積層体表面の中心線平均粗さRaは1.2〜1.5nmと非常に小さく表面が平坦である。また可視光透過率は全て70%以上であり、表示デバイスとして用いる際には満足できる透過率である。
【0049】
また、実施例1〜13では金属系導電薄膜層にAg−Pd系合金薄膜を用いた例を示したが、Ag薄膜、Ag−Au系薄膜、Ag−Au−Cu系薄膜、Au薄膜、Pt薄膜、Pd薄膜を用いた場合も同様の効果がみられた。
【0050】
(実施例14〜25)
カソード1にシリコンを添加した酸化インジウムの焼結体ターゲットを設置し、カソード2にAg-Au-Cu系合金ターゲット(Au含有量1質量%、Cu含有量0.5質量%)を設置して、1)と2)のタイプの薄膜積層体を形成した例を表3と表4に示す。
【0051】
【表3】
Figure 0004168689
【0052】
【表4】
Figure 0004168689
【0053】
表3と4に示すように、本発明の薄膜積層体は総膜厚が105〜135nmと薄いのにも関わらずシート抵抗は2.0〜4.5Ω/□と非常に低抵抗であり、薄膜積層体表面の中心線平均粗さRaは1.1〜1.5nmと非常に小さく表面が平坦である。また可視光透過率は全て70%以上であり、表示デバイスとして用いる際には満足できる透過率である。
【0054】
また、実施例14〜25では金属系導電薄膜層にAg−Au−Cu系合金薄膜を用いた例を示したが、Ag薄膜、Ag−Pd系薄膜、Ag−Au系薄膜、Au薄膜、Pt薄膜、Pd薄膜を用いた場合も同様の効果がみられた。
【0055】
(実施例26〜36)
カソード1にゲルマニウムを添加した酸化インジウムの焼結体ターゲットを設置し、カソード2にAg−Pd系合金ターゲット(Pd含有量3質量%)を設置して、1)と2)のタイプの薄膜積層体を形成した例を表5と表6に示す。
【0056】
【表5】
Figure 0004168689
【0057】
【表6】
Figure 0004168689
【0058】
表5と6に示すように、本発明の薄膜積層体は総膜厚が105〜120nmと薄いのにも関わらずシート抵抗は2.2〜4.2Ω/□と非常に低抵抗であり、薄膜積層体表面の中心線平均粗さRaは1.0〜1.5nmと非常に小さく表面が平坦である。また可視光透過率は全て70%以上であり、表示デバイスとして用いる際には満足できる透過率である。
【0059】
ゲルマニウムを含む酸化インジウム薄膜も、室温での成膜で完全に非晶質の膜となりやすく、表面粗さが小さい。よって、銀などの金属膜と積層させることによってシート抵抗が5Ω/□以下でRaが1.5nm以下の薄膜積層体を作ることができる。
【0060】
また、実施例26〜36では金属系導電薄膜層にAg−Pd系薄膜を用いた例を示したが、Ag−Au系薄膜、Ag薄膜、Ag−Au−Cu系薄膜、Au薄膜、Pt薄膜、Pd薄膜を用いた場合も同様の効果がみられた。
【0061】
また、実施例1〜36と同様に、酸化インジウム系酸化物薄膜として、タングステンとスズを含む酸化インジウム薄膜を用いても、シリコンとスズを含む酸化インジウム薄膜を用いても、タングステンとシリコンを含む酸化インジウム薄膜を用いても同様の結果であった。つまり、酸化インジウム薄膜にタングステンかシリコンの少なくとも一方の元素が含まれていれば、室温にて成膜した膜は非晶質構造をとりやすいため表面粗さが小さく、また低抵抗であるため、薄膜積層体のシート抵抗は低かった。
【0062】
また、実施例1〜36では金属系導電薄膜層にAg−Pd系薄膜を用いた例を示したが、Ag−Au系薄膜、Ag−Au−Cu系薄膜、Ag系薄膜、Au薄膜、Pt薄膜、Pd薄膜を用いた場合も同様の効果がみられることを確認した。Ag−Au系薄膜、Ag−Au−Cu系薄膜、Ag系薄膜、Au薄膜、Pt薄膜、Pd薄膜はAg−Pd薄膜と同様に、数十〜数百nΩmの低抵抗を示すため、上記酸化インジウム薄膜との積層構造をとることによって同様の効果の薄膜積層体を得ることができる。
【0063】
また、上記の実施例では基板をガラス基板から樹脂基板や酸化シリコン膜を施した樹脂基板にかえて同様の膜作製を試みたが、結果は同じであった。
【0064】
(比較例1〜16)
カソード1にスズを添加した酸化インジウムの焼結体ターゲットを設置し、カソード2にAg−Pd系合金ターゲット(Pd含有量1質量%)を設置して、1)と2)のタイプの薄膜積層体を形成した例を表7示す。
【0065】
【表7】
Figure 0004168689
【0066】
【表8】
Figure 0004168689
【0067】
表7と表8に示すように、従来のSn添加In23膜とAg−Pd系膜との積層による薄膜積層体では、シート抵抗は4.3Ω/□以下と低い。しかし、原子間力顕微鏡の観察によると、比較例1〜16の薄膜積層体はSn添加In23膜が非晶質相と結晶相の混合状態となっており、結晶相が存在した。
【0068】
上記薄膜積層体を、85℃、湿度85%の雰囲気内に100時間保持してその表面を観察した結果、実施例1〜36の薄膜積層体は外観変化もなく高温耐湿性が高かったが、比較例1〜16は変色して抵抗値も増加し高温耐湿性の低いものであることがわかった。一般に、薄膜中の物質の移動は結晶粒界に沿って高頻度に発生する。実施例1〜36の酸化インジウム系薄膜は、非晶質構造をとるため結晶粒界が存在せず、このような酸化インジウム系薄膜で金属系導電薄膜層を覆えば、金属の粒界での拡散や、金属と大気の接触による粒界での腐食を防ぐことができる。それに対し、比較例1〜16の酸化インジウム系薄膜は結晶相を含むため粒界が存在し、酸化インジウム系薄膜の粒界付近の金属系導電薄膜層から腐食が起きてしまう。したがって、腐食性を考慮しなければならない用途には使用できない。
【0069】
また、表面粗さRaも2.4〜3.5nmであり表面の凹凸が大きくなっている。よって、このような薄膜積層体は、LCDや有機ELの透明電極には使用することができない。結晶相の突起が薄膜積層体の表面に表れて表面凹凸を大きくしている。
【0070】
(比較例17〜19)
金属相を挿入しない酸化インジウム相のみの薄膜を作製した。Sn添加In23膜を石英ガラス上に115〜130nmだけ積層し、シート抵抗と表面粗さを測定した結果を表9に示す。
【0071】
【表9】
Figure 0004168689
【0072】
シート抵抗は32〜40Ω/□と高く、また中心線平均粗さは3.2〜4.5nmと大きく表面の凹凸が激しい。よって、高精細LCDや有機EL用の透明電極には用いることはできない。
【0073】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の薄膜積層体は、結晶粒界の存在に伴う拡散染みだしや腐食が防止でき、耐候性などが要求される用途にも使用することができ、膜厚70〜150nmでも1〜5Ω/□のシート抵抗を有し、表面平滑性にも優れ、また透明性に優れ、高精細もしくは大型のLCDや、プラズマディスプレイ、有機EL用透明電極として有用である。このような薄膜積層体による透明電極は、高精細化や大型化の要求に満足する、薄くて低いシート抵抗を有するLCD用の透明電極として有用である。また同様の理由で、将来のディスプレイとして注目されている有機EL用の透明電極にも有用であり、工業的に極めて価値の高いものである。

Claims (7)

  1. 金属系導電薄膜層と酸化物系透明導電薄膜層との2層、または金属系導電薄膜層の両側に酸化物系透明導電薄膜層が設けられた3層からなる薄膜積層体において、酸化物系透明導電薄膜層として、タングステンが含有される酸化インジウム薄膜であり、タングステン/インジウム原子数比が0.004〜0.17の割合である非晶質酸化インジウムが積層されていることを特徴とする薄膜積層体。
  2. 金属系導電薄膜層と酸化物系透明導電薄膜層との2層、または金属系導電薄膜層の両側に酸化物系透明導電薄膜層が設けられた3層からなる薄膜積層体において、酸化物系透明導電薄膜層として、シリコンが含有され、かつ、ゲルマニウムが含有されない酸化インジウム薄膜であり、シリコン/インジウム原子数比が0.002〜0.15の割合である非晶質酸化インジウムが積層されていることを特徴とする薄膜積層体。
  3. 金属系導電薄膜層と酸化物系透明導電薄膜層との2層、または金属系導電薄膜層の両側に酸化物系透明導電薄膜層が設けられた3層からなる薄膜積層体において、酸化物系透明導電薄膜層として、タングステンと、シリコンおよび/またはゲルマニウムとが含有される酸化インジウム薄膜であり、タングステン/インジウム原子数比が0.004〜0.17の割合である非晶質酸化インジウムが積層されていることを特徴とする薄膜積層体。
  4. 薄膜積層体の全体の膜厚が70〜150nmであり、シート抵抗が5Ω/□以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の薄膜積層体。
  5. 薄膜積層体の表面の中心線平均表面粗さRaが1.5以下でり、薄膜積層体の全体の膜厚が70〜150nmであり、シート抵抗が5Ω/□以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の薄膜積層体。
  6. 金属系導電薄膜層が、銀、銀−金系合金、銀−パラジウム系合金、金、白金、パラジウムのうち少なくとも1種類で構成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の薄膜積層体。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の薄膜積層体を基板の上に設けた薄膜積層体付き透明基材。
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