JP3583163B2 - 導電性積層体 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、透明導電材料等として好適な導電性積層体とこの導電性積層体を利用した導電性透明基板とに関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置は軽量化、薄型化が可能であり、駆動電圧も低いことから、パ−ソナルコンピュータやワードプロセッサ等のOA機器へ活発に導入されている。そして、前述のような利点を有している液晶表示装置は必然的に大面積化、多画素化、高精細化の方向に向かっており、表示欠陥のない高品質の液晶表示素子が求められている。
液晶表示素子は、互いに対向して配置された2つの透明電極により液晶を挟み込んだサンドイッチ構造をなしており、透明電極は高品質の液晶表示素子を得るうえでの重要な要素の一つである。この透明電極は、例えば透明基板上に成膜した透明導電膜を所定のエッチング液でエッチングして所望形状にパターニングすることで作製されている。
【0003】
透明電極材料としては、現在、ITO(インジウム・錫酸化物)膜が主として利用されている。しかしながら、ITO膜には水素プラズマ等で還元されて光透過率が低下する、Inが拡散しやすい、耐湿性や耐候性に劣る等の難点があり、また、抵抗率も3×10−4Ω・cm程度であることから、今後の大面積表示装置のニーズに応えることは困難である。
【0004】
ITO膜よりも低電気抵抗の透明導電材料としては、金属酸化物と金属とからなる積層体が従来よりよく知られている。代表例としては、TiOX とAgとからなる積層体(米国特許第3,962,488号明細書参照)、Bi2 O3 とAuとからなる積層体(British Journal of Applied Physics,Vol.9,PP359−361(1958)参照)、ITOとAgとからなる積層体(特開平4−340522号公報参照)がある。また、特公昭63−13823号(特開昭58−36448号)公報には酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム等の金属酸化物とAg−Cu合金とからなる積層体や、酸化ケイ素−酸化チタン系複合酸化物とAg−Cu合金とからなる積層体が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述した積層体の初期の導電性はITO膜よりも改善されたものであるが、これらの積層体から形成した電極では長期使用に伴って金属層成分あるいは合金層成分がマイグレーションを起こす結果、電極全体の導電性や光透過率が経時的に低下する。マイグレーションの原因は、長期使用の間に何等かの原因で金属層あるいは合金層が酸化されことによるといわれている。
本発明の目的は、導電性および光透過性の点からみた耐久性に優れている導電性積層体およびこの導電性積層体を利用した導電性透明基板を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成する本発明の導電性積層体は、基板の所定面上に直接またはアンダーコート層を介して設けられた非酸化物セラミックス層と、この非酸化物セラミックス層上に設けられた透明導電性酸化物からなるトップコート層とを有し、
非酸化物セラミックス層が導電性を有する1種または複数種の金属粒子を含み、かつ、前記の金属粒子がAu,Ag,Cu,PtおよびAlからなる群より選択された1種または複数種からなることを特徴とするものである。
【0007】
また、上記の目的を達成する本発明の導電性透明基板は、透明基板と、この透明基板の所定面上に直接またはアンダーコート層を介して設けられた非酸化物セラミックス層と、この非酸化物セラミックス層上に設けられた透明導電性酸化物からなるトップコート層とを有し、
非酸化物セラミックス層が導電性を有する1種または複数種の金属粒子を含み、かつ、前記の金属粒子がAu,Ag,Cu,PtおよびAlからなる群より選択された1種または複数種からなることを特徴とするものである。
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず本発明の導電性積層体について説明すると、上述したように、この導電性積層体は基板の所定面上に直接またはアンダーコート層を介して設けられた非酸化物セラミックス層を有している。この非酸化物セラミックス層は、導電性を有する非酸化物セラミックスに導電性を有する1種または複数種の金属粒子を含有させたものからなる。導電性を有する非酸化物セラミックスの具体例としては、TiB2,ZrB2等の硼化物セラミックス、TiC,WC,MoC等の炭化物セラミックス、TiN,ZrN等の窒化物セラミックス、Ti2S,Ti3S,TiS2等の硫化物セラミックスが挙げられる。また、導電性を有する金属粒子の具体例としては、Au,Ag,Cu,PtおよびAlからなる群より選択された1種(単体)または複数種(合金等)からなる粒子が挙げられる。
【0009】
非酸化物セラミックス層の膜厚は10〜1000オングストロームの範囲内で適宜選択することが好ましい。膜厚が10オングストローム未満では、十分な導電性を有する導電性積層体を得ることが困難である。一方、膜厚が1000オングストロームを超えると、得られる導電性積層体の光透過性が著しく低下する。非酸化物セラミックス層の好ましい膜厚は10〜500オングストロームの範囲内であり、特に10〜100オングストロームの範囲内であることが好ましい。また、非酸化物セラミックス層中に上述の金属粒子の含有量は10wt%以下とすることが好ましい。前述の金属粒子を含有させることで非酸化物セラミックス層の導電性を向上させることが可能になるが、金属粒子の含有量が10wt%を超えると得られる導電性積層体の光透過性が著しく低下する。金属粒子の好ましい含有量は8wt%以下であり、特に5wt%以下であることが好ましい。
【0010】
本発明の導電性積層体では、上述した非酸化物セラミックス層上にトップコート層が設けられている。このトップコート層は非酸化物セラミックス層の保護層として、また、導電層として機能するものであり、当該トップコート層は透明導電性酸化物からなる。具体例としてはIn2 O3 ,ZnO,SnO2 およびGa2 O3 からなる群より選択された1種または複数種からなる抵抗率1×102 Ω・cm以下の層が挙げられる。抵抗率が1×102 Ω・cmを超えるものは、積層体の導電性の低下をまねくため好ましくない。
【0011】
トップコート層の膜厚は10〜1000オングストロームの範囲内とすることが好ましい。膜厚が10オングストローム未満では、非酸化物セラミックス層の保護層としての効果が実質的になくなる。一方、膜厚が1000オングストローム超えると成膜に長時間を要する結果、経済性が低下する。トップコート層の好ましい膜厚は10〜500オングストロームの範囲内であり、特に好ましい膜厚は10〜300オングストロームの範囲内である。
【0012】
本発明の導電性積層体は、前述した非酸化物セラミックス層と上述したトップコート層とを有するものであり、非酸化物セラミックス層は基板の所定面上に直接またはアンダーコート層を介して設けられている。前記のアンダーコート層は基板の平滑性の向上、基板と非酸化物セラミックス層との密着性の向上、ガスの遮断等を目的として必要に応じて設けられるものであり、その具体例としてはSiO2 ,TiO2 ,In2 O3 ,SnO2 ,ZnOおよびGa2 O3 からなる群より選択される1種または複数種からなる透明金属酸化物の層や、エポキシ樹脂,ウレタン樹脂,アクリル樹脂,エポキシアクリレート,ウレタンアクリレート等の透明樹脂の層、あるいは前記の透明樹脂層と前記の透明金属酸化物層との積層物等が挙げられる。アンダーコート層の材質は、基板の材質、非酸化物セラミックス層の材質、目的とする導電性積層体の用途等に応じて適宜選択される。
【0013】
基板と非酸化物セラミックス層との間にアンダーコート層を介在させる場合、当該アンダーコート層の膜厚は0.1〜10μmの範囲内とすることが好ましい。膜厚が0.1μm未満では基板の平滑性や、基板と非酸化物セラミックス層との密着性、あるいはガスの遮断性を向上させることが困難である。一方、膜厚が10μmを超えると導電性積層体の光透過性が著しく減少し、導電性透明積層体としては用いることができない。アンダーコート層の好ましい膜厚は0.1〜4μmの範囲内であり、特に好ましい膜厚は0.1〜2μmの範囲内である。
【0014】
非酸化物セラミックス層およびトップコート層を必須構成要件とし、アンダーコート層を任意構成要件とする本発明の導電性積層体の全体の膜厚は、層構成や当該導電性積層体の用途等に応じて適宜変更可能である。上記の必須構成要件のみによって本発明の導電性積層体を構成した場合には、各層の膜厚が前述したそれぞれの範囲内であれば、各層の膜厚をどのような値にしても導電性透明材料として利用可能な光透過性(可視光の透過率で概ね70〜80%、あるいは波長550nmの光の透過率で概ね73〜80%)を有する導電性積層体を得ることができる。また、上記の必須構成要件と任意構成要件とによって構成した場合には、各層の膜厚を前述したそれぞれの範囲内で適宜選択することにより、導電性透明材料として利用可能な光透過性を有する導電性積層体を容易に得ることができる。
【0015】
なお、本発明の導電性積層体は前述したように基板の所定面上に形成されたものであり、このときの基板としては透明基板を用いてもよし非透明基板を用いてもよい。基板として透明基板を用い、この透明基板の所定面上に上述の導電性積層体を形成した場合には、本発明の導電性透明基板が得られる。このときの透明基板としては透明ガラス、石英、透明プラスチック、透明セラミックス等からなる板状物やフィルム状物等を用いることができる。
【0016】
ここで、前記透明ガラスの具体例としてはソーダ石灰ガラス、鉛硅酸塩ガラス、硼硅酸塩ガラス、硅酸塩ガラス、高硅酸ガラス、無アルカリガラス、燐酸塩ガラス、アルカリ硅酸塩ガラス、石英ガラス、アルミノ硼硅酸ガラス、バリウム硼硅酸ガラス、ナトリウム硼硅酸ガラス等が挙げられる。また、前記透明プラスチックの具体例としてはポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン系樹脂、アモルファスポリオレフィン、アクリル樹脂、ポリイミド、ポリホスファゼン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、ポリアセタール系樹脂等が挙げられる。そして、前記透明セラミックスの具体例としてはサファイア、PLZT、CaF2 、MgF2 、ZnS等が挙げられる。
なお、透明基板の材質や厚さ等は、目的とする導電性透明基板の用途や当該導電性透明基板に要求される透明性等に応じて適宜選択される。
【0017】
本発明の導電性積層体は、例えば、基板の所定面上にスパッタリング法(例えばRFマグネトロンスパッタリング法、DCマグネトロンスパッタリング法等)、反応性スパッタリング法、イオンプレーティング法、反応性イオンプレーティング法、クラスターイオンビーム法等の物理蒸着法、あるいは熱CVD法、プラズマCVD法等の化学蒸着法によって非酸化物セラミックス層を形成した後、この非酸化物セラミックス層上にスパッタリング法(例えばRFマグネトロンスパッタリング法、DCマグネトロンスパッタリング法等)、反応性スパッタリング法、イオンプレーティング法、反応性イオンプレーティング法等の物理蒸着法によってトップコート層を形成することで得ることができる。なお、導電性の金属粒子を含有する非酸化物セラミックス層は、例えば、所望の金属粒子を混入させたスパッタリングターゲット(金属粒子を除いた組成は、金属粒子を含有していない非酸化物セラミックス層を成膜する際に使用するスパッタリングターゲットと同じ)を用いたスパッタリング法(例えばRFマグネトロンスパッタリング法、DCマグネトロンスパッタリング法等)により形成することができる。このとき、スパッタリング時の雰囲気は不活性ガス雰囲気とすることが好ましい。
【0018】
また、基板と非酸化物セラミックス層との間にアンダーコート層を介在させる場合、このアンダーコート層はスパッタリング法(例えばRFマグネトロンスパッタリング法、DCマグネトロンスパッタリング法等)、反応性スパッタリング法、イオンプレーティング法、反応性イオンプレーティング法等の物理蒸着法や、スピンコート法等のコーティング法等により形成することができる。どのような方法によりアンダーコート層を形成するかは、目的とするアンダーコート層の組成等に応じて適宜選択される。
基板として透明基板を用いた場合には、上述のようにして各層を形成することにより本発明の導電性積層体が得られると同時に本発明の導電性透明基板が得られる。
【0019】
上述のようにして得られる本発明の導電性積層体および本発明の導電性透明基板では、導電性積層体を所望形状の電極に成形して長期間使用した場合でも、電極の導電性および光透過率の経時的低下は小さい。このような特性を有する本発明の導電性積層体および導電性透明基板は、液晶表示素子用等の透明電極材料や太陽電池用の電極材料として好適である他、透明静電遮蔽体、熱線反射フィルム、透明面発熱体、自動車用ガラスアンテナ等の材料としも利用することができる。
【0020】
【実施例】
以下、本発明の実施例を参考例とともに説明する。
参考例1
まず、スパッタリングターゲットとしてTiB2を用いたRFマグネトロンスパッタリング法により、透明ガラス基板(コーニング社製の#7059)の一主表面上に硼化物セラミックス層を形成した。このとき、スパッタリング時の真空度は1×10−3Torr、雰囲気ガスはArガス100%、出力は100W、基板温度は20℃、スパッタリング時間は1分とした。次に、スパッタリングターゲットとしてIn2O3とZnOとからなる焼結体(In:Zn=2:1(モル比))を用いたRFマグネトロンスパッタリングにより、前記の硼化物セラミックス層上にIn2O3−ZnOからなるトップコート層を形成した。このとき、スパッタリング時の真空度は1×10−3Torr、雰囲気ガスはArガスとO2ガスとの混合ガス(O2ガス濃度は0.28%)、出力は100W、基板温度は20℃、スパッタリング時間は5分とした。
上述のようにして透明ガラス基板の一主表面上に硼化物セラミックス層およびトップコート層を順次積層することで目的とする積層体が得られ、同時に目的とする透明基板が得られた。
【0021】
このようにして得られた積層体について、これを構成する硼化物セラミックス層とトップコート層の組成分析をICP分析(誘導結合プラズマ発光分光分析)により行ったところ、硼化物セラミックス層の組成はTiB2 、トップコート層におけるIn元素の割合(In元素とZn元素の合量に占めるIn元素の割合=In/(In+Zn)。以下の実施例においても同じ。)は0.7であった。また、このトップコート層の抵抗率は5.8×10−4Ω・cmであった。そして、積層体を構成する各層の膜厚をAES(オージェ電子分光分析)デプスプロファイルにより測定したところ、TiB2 層の膜厚は50オングストローム、トップコート層の膜厚は400オングストロームであった。
【0022】
この積層体をパターニング幅1.2mm、エッチング幅100μmにエッチングして電極とし、この電極の光透過率(透明基板をも含めたものに対する波長550nmの光の透過率。以下の参考例、実施例および比較例においても同じ。)と電気抵抗値を測定した。また、前記の電極を30Vの交流電源にリード線を介して接続し、1000時間連続して通電した後の光透過率(透明基板をも含めたものに対する波長550nmの光の透過率。以下の参考例、実施例および比較例においても同じ。)と電気抵抗値を測定した。これらの結果を表1に示す。
【0023】
参考例2〜参考例7
参考例1と同条件のRFマグネトロンスパッタリング法により透明ガラス基板(コーニング社製の#7059)の一主表面上にTiB2層を形成した後、実施例毎にスパッタリングターゲットの組成を変えたRFマグネトロンスパッタリングを行って、表1に示す組成のトップコート層を前記のTiB2層上にそれぞれ形成した。なお、トップコート層の成膜条件は、スパッタリングターゲットの組成およびスパッタリング時間を除いて参考例1と同一とした。
このようにして得られた各積層体について、トップコート層の膜厚、組成および抵抗率を参考例1と同一手法で調べた。また、各積層体を参考例1と同一条件でエッチングして電極とし、これらの電極の光透過率と電気抵抗値を測定した。さらに、各電極を30Vの交流電源にリード線を介して各々別個に接続し、1000時間連続して通電した後の光透過率と電気抵抗値をそれぞれ測定した。これらの結果を表1に示す。
【0024】
参考例8
まず、スパッタリングターゲットとしてIn2O3とZnOとからなる焼結体(In:Zn=2:1(モル比))を用いたRFマグネトロンスパッタリング法により、ポリカーボネートフィルム(厚さ100μm)の一主表面上にIn2O3−ZnOからなるアンダーコート層を形成した。このとき、スパッタリング時の真空度は1×10−3Torr、雰囲気ガスはArガスとO2ガスとの混合ガス(O2ガス濃度は0.28%)、出力は100W、基板温度は20℃、スパッタリング時間は5分とした。次に、スパッタリングターゲットとしてWCを用いたRFマグネトロンスパッタリング法により、前記のアンダーコート層上に炭化物セラミックス層を形成した。このとき、スパッタリング時の真空度は1×10−3Torr、雰囲気ガスはArガス100%、出力は100W、基板温度は20℃、スパッタリング時間は1分とした。最後に、上記のアンダーコート層の成膜条件と同条件のRFマグネトロンスパッタリングを行い、前記の炭化物セラミックス層上にIn2O3−ZnOからなるトップコート層を形成した。
上述のようにしてポリカーボネートフィルムの一主表面上にアンダーコート層、炭化物セラミックス層およびトップコート層を順次積層することで目的とする積層体が得られ、同時に目的とする透明基板が得られた。
【0025】
このようにして得られた積層体について、これを構成するアンダーコート層、炭化物セラミックス層およびトップコート層の組成分析をICP分析により行ったところ、炭化物セラミックス層の組成はWC、アンダーコート層およびトップコート層におけるIn元素の割合In/(In+Zn)は共に0.7であった。また、トップコート層の抵抗率は5.8×10−4Ω・cmであった。そして、積層体を構成する各層の膜厚をAESデプスプロファイルにより測定したところ、アンダーコート層およびトップコート層の膜厚は共に400オングストローム、WC層の膜厚は50オングストロームであった。
この積層体を参考例1と同一条件でエッチングして電極とし、この電極の光透過率と電気抵抗値を測定した。さらに、この電極を30Vの交流電源にリード線を介して接続し、1000時間連続して通電した後の光透過率と電気抵抗値をそれぞれ測定した。これらの結果を表1に示す。
【0026】
参考例9
片面に膜厚20000オングストロームのエポキシアクリレート層を有するポリカーボネートフィルム(ポリカーボネート層の厚さは100μm)を透明基板として用い、各層の成膜条件は参考例8と同条件として、In2O3−ZnO層、WC層およびトップコート層(In2O3−ZnO層)を前記のエポキシアクリレート層上に順次積層した。これにより目的とする積層体が得られ、同時に目的とする透明基板が得られた。なお、この積層体においては、エポキシアクリレート層とこのエポキシアクリレート層上に形成されたIn2O3−ZnO層とでアンダーコート層が形成されている。
【0027】
このようにして得られた積層体について、アンダーコート層を構成するIn2O3−ZnO層およびトップコート層としてのIn2O3−ZnO層の組成分析をICP分析により行ったところ、これらの層におけるIn元素の割合In/(In+Zn)は共に0.7であった。また、トップコート層の抵抗率は5.8×10−4Ω・cmであった。そして、積層体を構成する各層の膜厚をSEM(走査型電子顕微鏡)による積層体の断面観察とAESデプスプロファイルにより測定したところ、アンダーコート層の膜厚は20400オングストローム(このうちIn2O3−ZnO層の膜厚は400オングストローム)、WC層の膜厚は50オングストローム、トップコート層の膜厚は400オングストロームであった。
この積層体を参考例1と同一条件でエッチングして電極とし、この電極の光透過率と電気抵抗値を測定した。また、前記の電極を30Vの交流電源にリード線を介して接続し、1000時間連続して通電した後の光透過率と電気抵抗値を測定した。これらの結果を表1に示す。
【0028】
実施例1
まず、参考例8におけるアンダーコート層の成膜条件と同条件のRFマグネトロンスパッタリング法により、ポリカーボネートフィルム(厚さ100μm)の一主表面上にIn2O3−ZnOからなるアンダーコート層を形成した。次に、Agが5wt%添加されたWCをスパッタリングターゲットとして用いたRFマグネトロンスパッタリング法により、前記のアンダーコート層上にAg含有WC層を形成した。このとき、スパッタリング時の真空度は1×10−3Torr、雰囲気ガスはArガス100%、出力は100W、基板温度は20℃、スパッタリング時間は1分とした。最後に、参考例8におけるトップコート層の成膜条件と同条件のRFマグネトロンスパッタリング法により、前記のAg添加WC層上にIn2O3−ZnOからなるトップコート層を形成した。
上述のようにしてポリカーボネートフィルムの一主表面上にアンダーコート層、Ag添加WC層およびトップコート層を順次積層することで目的とする積層体が得られ、同時に目的とする透明基板が得られた。
【0029】
このようにして得られた積層体について、これを構成するアンダーコート層およびトップコート層の組成分析をICP分析により行ったところ、これらの層におけるIn元素の割合In/(In+Zn)は共に0.7であった。また、トップコート層の抵抗率は5.8×10−4Ω・cmであった。そして、TEM(透過型電子顕微鏡)を用いてAg添加WC層を観察したところ、当該Ag添加WC層中には粒径90〜100オングストロームのAg粒子が分散していることが確認された。また、積層体を構成する各層の膜厚をAESデプスプロファイルにより測定したところ、アンダーコート層およびトップコート層の膜厚は共に400オングストローム、Ag添加WC層の膜厚は50オングストロームであった。
この積層体を参考例1と同一条件でエッチングして電極とし、この電極の光透過率と電気抵抗値を測定した。さらに、この電極を30V参考例10の交流電源にリード線を介して接続し、1000時間連続して通電した後の光透過率と電気抵抗値をそれぞれ測定した。これらの結果を表1に示す。
【0030】
参考例10
参考例9と同じポリカーボネートフィルム(片面にエポキシアクリレート層を有するもの)を透明基板として用い、前記のエポキシアクリレート層上にRFマグネトロンスパッタリング法によりSiO2層を形成した後、このSiO2層上にWC層およびトップコート層(In2O3−ZnO層)をそれぞれ参考例8と同条件のRFマグネトロンスパッタリング法により順次積層した。これにより目的とする積層体が得られ、同時に目的とする透明基板が得られた。なお、この積層体においては、エポキシアクリレート層とこのエポキシアクリレート層上に形成されたSiO2層とでアンダーコート層が形成されている。また、SiO2層の形成にあたってはスパッタリングターゲットとしてSiO2(焼結体密度80%)を用い、スパッタリング時の真空度は1×10−3Torr、雰囲気ガスはArガスとO2ガスとの混合ガス(O2ガス濃度は0.28%)、出力は100W、基板温度は20℃、スパッタリング時間は5分とした。
【0031】
このようにして得られた積層体について、トップコート層であるIn2O3−ZnO層の組成分析をICP分析により行ったところ、当該トップコート層におけるIn元素の割合In/(In+Zn)は0.7であった。また、このトップコート層の抵抗率は5.8×10−4Ω・cmであった。そして、積層体を構成する各層の膜厚をSEMによる積層体の断面観察とAESデプスプロファイルにより測定したところ、アンダーコート層の膜厚は20400オングストローム(このうちSiO2層の膜厚は400オングストローム)、WC層の膜厚は50オングストローム、トップコート層の膜厚は400オングストロームであった。
この積層体を参考例1と同一条件でエッチングして電極とし、この電極の光透過率と電気抵抗値を測定した。また、前記の電極を30Vの交流電源にリード線を介して接続し、1000時間連続して通電した後の光透過率と電気抵抗値を測定した。これらの結果を表1に示す。
【0032】
比較例1
まず、スパッタリングターゲットとしてITO(Sn;5モル%)を用いたRFマグネトロンスパッタリング法により、透明ガラス基板(コーニング社製の#7059)の一主表面上にITO層を形成した。このとき、スパッタリング時の真空度は1×10−3Torr、雰囲気ガスはArガスとO2 ガスとの混合ガス(O2 ガス濃度は0.28%)、出力は100W、基板温度は20℃、スパッタリング時間は3分とした。次に、スパッタリングターゲットとしてAgを用いたRFマグネトロンスパッタリング法により、前記のITO層上にAg層を形成した。このとき、スパッタリング時の真空度は1×10−3Torr、雰囲気ガスはArガス100%、出力は50W、基板温度は20℃、スパッタリング時間は1分とした。最後に、上記のITO層の成膜条件と同条件のRFマグネトロンスパッタリングを行い、前記のAg層上にITO層を形成した。
上述のようにして透明ガラス基板の一主表面上にITO層、Ag層およびITO層を順次積層することで目的とする積層体が得られ、同時に目的とする透明基板が得られた。
【0033】
このようにして得られた積層体を構成する各層の膜厚をAESデプスプロファイルにより測定したところ、2つのITO層の膜厚は共に400オングストローム、Ag層の膜厚は50オングストロームであった。また、この積層体を実施例1と同一条件でエッチングして電極とし、この電極の光透過率と電気抵抗値を測定した。さらに、前記の電極を30Vの交流電源にリード線を介して接続し、1000時間連続して通電した後の光透過率と電気抵抗値を測定した。これらの結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
表1から明らかなように、実施例1および参考例1〜10で得た各電極の導電性は、初期の段階(1000時間連続して通電する前の段階)では比較例1で得られた電極の導電性より低いものの、1000時間連続して通電した後でも通電前と殆ど変化せずに安定しており、しかも連続通電後においては比較例1で得た電極の導電性より高い。また、実施例1および参考例1〜10で得た各電極の光透過性は、連続通電の前後で実質的に変化していない。このことから、実施例1および参考例1〜10で得られた各積層体は、導電性および光透過性の点で耐久性に優れていることがわかる。
一方、比較例1で得た電極の導電性は、初期の段階では実施例のものよりも高いが、1000時間連続して通電した後では大きく低下している。
【0036】
参考例11
スパッタリングターゲットとしてTiB2を用いたRFマグネトロンスパッタリング法により、透明ガラス基板(コーニング社製の#7059)の一主表面上にTiB2層を形成した。このとき、スパッタリング時の真空度は1×10−3Torr、雰囲気ガスはArガス100%、出力は100W、基板温度は20℃、スパッタリング時間は1分とした。このTiB2層の膜厚をAESデプスプロファイルにより測定したところ、50オングストロームであった。
上記のTiB2層を参考例1と同一条件でエッチングして電極とし、この電極の光透過率と電気抵抗値を測定した。さらに、この電極を30Vの交流電源にリード線を介して接続し、1000時間連続して通電した後の光透過率と電気抵抗値をそれぞれ測定した。この結果を表2に示す。
【0037】
参考例12〜14
参考例毎にスパッタリングターゲットの組成を変えてRFマグネトロンスパッタリングを行って、表2に示す組成の非酸化物セラミックス層を透明ガラス基板(コーニング社製の#7059)の一主表面上にそれぞれ形成した。なお、非酸化物セラミックス層の成膜条件は、スパッタリングターゲットの組成を除いて参考例11と同一とした。
このようにして得られた各非酸化物セラミックス層について、その膜厚を参考例11と同一手法で調べた。また、各非酸化物セラミックス層を参考例1と同一条件でエッチングして電極とし、これらの電極の光透過率と電気抵抗値を測定した。さらに、各電極を30Vの交流電源にリード線を介して各々別個に接続し、1000時間連続して通電した後の光透過率と電気抵抗値をそれぞれ測定した。これらの結果を表2に示す。
【0038】
【表2】
【0039】
表2に示したように、参考例11〜参考例14で得た各電極の導電性および光透過性は、1000時間連続して通電した後でも通電前と殆ど変化せずに安定している。このことから、参考例11〜参考例14の各非酸化物セラミックス層は、導電性および光透過性の点で耐久性に優れていることがわかる。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の導電性積層体およびこの導電性積層体を利用した導電性透明基板は、導電性および光透過性の点からみた耐久性に優れている。したがって、本発明によれば導電性および光透過性の各安定性が高い低電気抵抗透明導電材料等を提供することが可能になる。
Claims (6)
- 基板の所定面上に直接またはアンダーコート層を介して設けられた非酸化物セラミックス層と、この非酸化物セラミックス層上に設けられた透明導電性酸化物からなるトップコート層とを有し、
非酸化物セラミックス層が導電性を有する1種または複数種の金属粒子を含み、かつ、前記の金属粒子がAu,Ag,Cu,PtおよびAlからなる群より選択された1種または複数種からなることを特徴とする導電性積層体。 - 透明導電性酸化物がIn2O3,ZnO,SnO2およびGa2O3からなる群より選択された1種または複数種からなり、かつ、この透明導電性酸化物層の抵抗率が1×102Ω・cm以下である、請求項1に記載の導電性積層体。
- アンダーコート層が透明金属酸化物および/または透明樹脂からなる、請求項1〜請求項2のいずれか一項に記載の導電性積層体。
- 透明基板と、この透明基板の所定面上に直接またはアンダーコート層を介して設けられた非酸化物セラミックス層と、この非酸化物セラミックス層上に設けられた透明導電性酸化物からなるトップコート層とを有し、
非酸化物セラミックス層が導電性を有する1種または複数種の金属粒子を含み、かつ、前記の金属粒子がAu,Ag,Cu,PtおよびAlからなる群より選択された1種または複数種からなることを特徴とする導電性透明基板。 - 透明導電性酸化物がIn2O3,ZnO,SnO2およびGa2O3からなる群より選択された1種または複数種からなり、かつ、この透明導電性酸化物層の抵抗率が1×102Ω・cm以下である、請求項3〜請求項4のいずれか一項に記載の導電性透明基板。
- アンダーコート層が透明金属酸化物および/または透明樹脂からなる、請求項4〜請求項5のいずれか一項に記載の導電性透明基板。
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