JP4165637B2 - スラッジを出さず有害物質を含む排水を処理する方法及びそれに使用する薬剤 - Google Patents

スラッジを出さず有害物質を含む排水を処理する方法及びそれに使用する薬剤 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スラッジを出さず有害物質を含む排水を処理する方法及びそれに使用する薬剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、排水中の有害物質を除去する方法として、水酸化カルシウム等のアルカリを加え、スラッジとして沈殿分離する方法が一般的であった。この場合水酸化カルシウム等を加えてスラッジ量を増やせばそれだけ共沈等で除去される量が増えるため、除去率が高くなることは知られていた。しかし、このような処理で発生したスラッジは、有害な物質を含む上、カルシウム化合物の製品価値が高くないため、産業廃棄物として処分されてきた。一方で、我が国においては産業廃棄物の処分場不足は深刻な問題で、そのことが処分費用の高騰を招き、さらには産業活動にも影響を及ぼすことが危惧されている。
また、一方で、銅エッチング処理工程から排出されるエッチング廃液中の銅の濃度は、通常、8〜20%の範囲と高いが、銅の回収再利用の妨げとなる塩素濃度も、通常、5〜30%と高い。このような塩素イオンを大量に含む廃液から銅のみを回収する技術がないため、エッチング廃液は、一般には産業廃棄物処理会社により廃棄物として引き取られ、再利用されることなく処分されてきた。
このように従来の技術では、排水中の有害物質を除去する際、大量のスラッジが発生し、その多くは回収再利用されることなく産業廃棄物処分場で処分されていた。また、濃厚塩化銅含有エッチング廃液やエッチング洗浄水から銅を回収し再利用することができずに、その多くは中和処理後に産業廃棄物処分場で処分されていた。しかし、処分場不足問題や処分費用高騰など、環境、経済の両面から、廃棄物の削減あるいは再生利用が強く望まれており、それを可能にする技術の開発が求められている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、処理しようとする有害物質を含む排水中から、有害物質を分離除去する方法及び分離除去することにより発生するスラッジを回収処理することにより系外にスラッジを発生させることなく、処理しようとする有害物質を含む排水の処理方法、並びにこれらの方法で使用される薬剤を提供することである。また、スラッジを発生させるための手段として、従来、廃棄処分され利用されていなかった、濃厚塩化銅含有エッチング廃液から調製した高濃度塩化銅含有液を処理剤として用いることによる、処理しようとする有害物質を含む排水の処理方法、並びにこれらの方法で使用される薬剤を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の事柄を見出して本発明を完成するに至った。
処理しようとする有害物質を含有する排水に、これ以後の処理である、アルカリを添加することによって生ずる前記有害物質、処理工程で有害物質と反応してできる物質及び生成する銅水酸化物により構成されるスラッジ中の銅含有量が10質量%以上になるように銅を存在させ、すなわち、前記有害物質中に銅イオン又は銅化合物を含有しない場合には、銅含有量が10質量%以上になるように銅化合物を添加し、また、前記有害物質中に銅イオン又は銅化合物が不足して含有されている場合にはその不足分の銅化合物を添加し、さらに、前記有害物質中に銅イオン又は銅化合物が十分に含有されている場合には、銅化合物を添加することなく、これに、アルカリを添加して当該排水のpHを8〜12に調整することにより、有害物質を銅水酸化物と共沈させることができ、その結果、排水中から有害物質を分離除去することができることを見いだして、本発明を完成させた。
そして、スラッジを発生させるための手段として、従来、廃棄処分され利用されていなかった、濃厚塩化銅含有エッチング廃液から調製した高濃度塩化銅含有液を処理剤として用いることにより、前記銅含有量が10質量%以上になるように銅化合物を添加する添加剤又は調整剤として使用できることを見いだして、本発明を完成させた。
さらに分離除去された銅含有量が10重量%以上のスラッジについては、銅回収するため、精錬所に山元還元すると、スラッジを廃棄物として発生させることなく、銅を回収することができるので、系外にスラッジの発生を伴うことなく、排水処理が可能となることを見いだして、本発明を完成させた。
また、添加する銅溶液として、銅エッチング廃液を利用することにより、これまで産業廃棄物として処分されていた銅エッチング廃液から銅をより経済的に回収できることを見出して、本発明を完成させた。
【0005】
即ち、本発明によれば、以下の方法が提供される。
(1)処理しようとする有害物質の重金属イオン及び/又はリン酸イオンを含有する排水に、アルカリを添加し該排水のpHを8〜12に調整した際に生成するスラッジ中の銅含有量が10質量%以上になるように銅エッチング処理工程から排出されるエッチング廃液を添加し、当該pHに調整することにより、前記有害物質を銅水酸化物と共沈させ、排水中から分離除去し、分離除去したスラッジから銅又は銅化合物として銅を回収することにより、有害物質の重金属イオン及び/又はリン酸イオンを含むスラッジを排出せずに処理することを特徴とする処理しようとする有害物質の重金属イオン及び/又はリン酸イオンを含む排水の処理方法。
(2)前記エッチング廃液が、銅エッチング廃液から塩化水素含有量を低めることによって調製されたものであることを特徴とする(1)記載の処理しようとする有害物質の重金属イオン及び/又はリン酸イオンを含む排水の処理方法。
(3)酸化剤を添加することによって銅水酸化物の一部もしくはすべてを銅酸化物とすることを特徴とする(1)又は(2)に記載の処理しようとする有害物質の重金属イオン及び/又はリン酸イオンを含む排水の処理方法。
(4)前記酸化剤は、含まれる有効塩素が1〜13%の塩素系酸化剤によるものであることを特徴とする(3)記載の処理しようとする有害物質の重金属イオン及び/又はリン酸イオンを含む排水を処理する方法。
(5)有害物質を除去し、発生した銅含有スラッジ(汚泥)の一部を原水に返送することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の処理しようとする有害物質の重金属イオン及び/又はリン酸イオンを含む排水を処理する方法。
(6)前記アルカリが水酸化ナトリウムであることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の処理しようとする有害物質の重金属イオン及び/又はリン酸イオンを含む排水を処理する方法。
(7)処理しようとする有害物質を含む排水中に、凝集剤を添加することを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の処理しようとする有害物質の重金属イオン及び/又はリン酸イオンを含む排水を処理する方法。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明で処理対象とする排水は、処理対象とする有害物質を含む排水を言う。この有害物質とは、銅、鉛、亜鉛、カドミウム、ニッケル、水銀、鉄、クロム、コバルト、スズ、ビスマスなどの重金属化合物或いは重金属イオン、クロム酸、リン酸イオン等などの人や動物にとって好ましくない物質を言う。
本発明の方法では、銅水酸化物として沈殿させるが、排水中に銅イオン或いは銅化合物を最初から必ず含まれている必要はなく、有害物質を含有するものであれば、処理の対象とすることができる。
この排水とは、これら金属精錬工程や重金属処理工程から排出される排水やその工程で発生するスラッジ、これらの廃水処理に使用された汚泥などが含まれる。また、各種排水をまとめて処理する総合処理を行う総合排水処理に関するものであってもよい。
【0007】
銅イオン及び銅化合物を含有する排水について述べれば、銅の製錬工程から発生する排水、銅板をエッチング処理する工程から発生する洗浄などに使用した排水、銅メッキ処理工程から発生する排水、銅のリサイクル工程から発生する排水、各種銅イオン含有洗浄排水など、これらの排水処理により生じた汚泥やスラッジなどを挙げることができる。特に銅イオンを含む排水において顕著な効果が期待できる。この場合、被処理水中の銅の濃度は特に規定されない。
また、銅以外の金属を含有する排水としては、各種金属精錬工程、各種金属のリサイクル工程、半導体製造工程、電気分解設備や各種製造工程から排出される排水や洗浄排水、モーターオイル処理などから発生する排水などであっても差し支えない。その他重金属により汚染されている排水や重金属に汚染された土壌処理から発生する排水も当然に処理対象となる。これらの重金属などの処理対象物質の濃度は格別問題になることはない。
また、これらの産業用排水と生活排水が混合された状態で処理する総合的な排水処理に対しても適用することができる。
【0008】
本発明の排水処理方法では、処理しようとする有害物質を含有する排水中に、アルカリを添加することにより該排水のpHを8〜12に調整した後、前記有害物質、処理工程で発生する有害物質及び生成する銅水酸化物により構成されるスラッジを生成させる。
このスラッジ中の銅含有量が10質量%以上になるようにすることが重要である。 銅の含有量が10重量%以上とすることが重要である。銅の含有量を10重量%以上とすることにより、処理業者による銅化合物含有排水として処理されることが可能となり、最終的な銅の回収操作を容易に行うことが出来ることとなる。最終的に銅を回収する回収操作を容易に行うことができることとなる。
【0009】
前記処理しようとする排水中の有害物質中に銅イオン又は銅化合物を含有しない場合には、銅含有量が10質量%以上になるように銅化合物を添加し、また、前記有害物質中に銅イオン又は銅化合物が不足して含有されている場合にはその不足分の銅化合物を添加し、さらに、前記有害物質中に銅イオン又は銅化合物が十分に含有されている場合には、あえて、銅化合物を添加することは必要ない。銅化合物は銅を含有する化合物であれば問題なく、適宜使用することができる。添加する場合には、添加した後均一に溶解させることができるものであれば、粉状又は塊でであってもよいし、水溶液であってもよい。
当初の排水中の銅化合物の含有量を調整し、生成するスラッジ中の銅含有量が10質量%以上含まれた銅水酸化物のスラッジとして共沈させることが重要である。
本発明では、被処理水中に銅を存在させる。これが有害物質を除去する薬剤(以下、単に除去剤ともいう)としての役割を果たす。
【0010】
本発明の処理に際しては、銅溶液を添加した後の銅濃度は特に規定されないが、既存の排水処理システムを変更しないで行うには、100〜3000mg/L、好ましくは100〜1000mg/Lの範囲である。
【0011】
本発明の処理に際しては、好ましい実施態様として、スラッジの銅含有量を高めるため、発生した銅含有汚泥を原水槽に返送する方法がある。この方法によれば原水槽のpHを上げることができ、結果として添加するアルカリ量を削減することができる。さらに、汚泥を返送することにより汚泥量を増加させることができる。
【0012】
従来、銅エッチング処理工程から排出されるエッチング廃液中の銅の濃度は、通常、8〜20%の範囲と高いが、銅の回収再利用の妨げとなる塩素濃度も、通常、5〜30%と高い。前記の通り、本発明ではスラッジ中に含まれる銅の重量が10重量%以上に高めることができれば、処理上の問題がないのであって、純粋な銅化合物から得られる水溶液を用いる必要はない。この廃液を用いると、廃棄物の有効利用にもつながる。
すなわち、本発明において除去剤として使用する銅溶液は、銅化合物を水に溶かすこと、粗銅を酸で溶かすこと、銅エッチング廃液等の廃棄物から調製すること、銅含有スラッジを酸で溶かすこと等、種々の方法で調製することができるが、エッチング廃液等の廃棄物から調製するのが、もっとも経済的で、しかも廃棄物の有効利用を可能にすることから好ましい。
【0013】
本発明においてエッチング廃液を除去剤として使用する場合、エッチング廃液をそのまま使用してもかまわないが、その場合、アルカリ使用量が増加するので、銅エッチング廃液の塩化水素含有量を低め、pHを調整したものを用いることが好ましい。このときの調整するpHは特に規定されないが、通常エッチング廃液のpHが約―0.7程度であるが、これをpH0〜3程度、好ましくはpH0.5〜2程度に調整するのがよい。
【0014】
銅エッチング廃液のpHを調整する方法として、もっとも一般的なアルカリを加えることによって行ってもよいが、塩化銅エッチング廃液の場合は、廃液を加熱して、塩化水素を除去することによって行うことも可能である。この場合、加熱温度と時間は、塩化水素を除去できるまでであるが、加熱温度は80℃以上、加熱時間は約4時間以内である。加熱後のpHは、0.5〜2となる。
【0015】
銅エッチング廃液のpHを調整するもう一つの方法として、銅化合物を加え水で希釈する方法によることもできる。この時の銅化合物としては、特に規定されず、市販されている硫酸銅、酸化銅、炭酸銅、塩化銅等の銅化合物を用いてもよいが、銅含有スラッジ等を用いても良い。
【0016】
本発明の銅エッチング廃液を用いた、或いは調製した除去剤(I)は、強酸性の塩化水素を前記の処理によって一部除去したものなので、排水処理に使用する場合、使用するアルカリの量を格段に低減することが可能となる。また、塩化水素とアルカリの反応で生成する塩化ナトリウムのスラッジへの混入を回避することができる。
【0017】
本発明の銅エッチング廃液から調製した除去剤(I)は塩素含有量を低めた薬剤であることから、これを使用すれば、生成するスラッジは塩素含有量が少ない銅スラッジであり、これは容易に回収して循環再利用(リサイクル)することが可能となる。
【0018】
本発明の除去剤は、有害な不純物を含有せず、また、除去剤に含まれる銅はpHを8〜12に調整することにより沈殿し、処理水中には残留しないので、有害物質そのものおよび/または処理過程で有害物質と反応してできる物質が銅水酸化物と共沈する有害物質を含む排水なら、どの様な排水でも処理することができる。例えば、pHを8〜12に調整することにより重金属水酸化物の沈殿を生成するような重金属含有排水、銅と不溶性の沈殿をつくる物質を含む排水、銅水酸化物沈殿に吸着する物質を含む排水などの処理に使用することができる。
【0019】
本発明の実施において、酸化剤を併用するのが好ましい。酸化剤を併用することにより、銅を水酸化物ではなく酸化物として沈殿させることができるので、発生するスラッジ量を減らすことができるし、スラッジ中の銅含有量を高めることもできる。酸化剤の添加時期は特に規定されず、該排水中に、酸化剤を存在させ、次に、排水中にアルカリを添加して、該水中に含まれる銅イオンを酸化銅の不溶物として沈殿させ回収してもよいし、被処理排水中にアルカリを添加して、酸化剤を存在させることにより、該水中に含まれる銅イオンを酸化銅の不溶物として沈殿させ回収させることができる。
どちらの方法を選択するかは、適宜決定すればよい。
【0020】
本発明の実施において、酸化剤を存在させることは処理しようとする排水中に酸化剤を添加することにより行うことができる。処理しようとする排水中に十分な酸化剤を含む場合は、特に加える必要がない。この酸化剤は、銅の水酸化物を酸化物に変換させることができるものであり、このような酸化剤を具体的にあげれば、次亜塩素酸、亜塩素酸、過塩素酸等及びそれらの水溶性塩などの塩素系酸化剤、過酸化水素、オゾン等である。これらの中では、経済性の点から、有効塩素量(Cl換算)が、1〜13%である塩素系酸化剤を使用することが簡便であり好ましい。塩素系酸化剤としては上記の次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸等及びそれらの水溶性塩などの薬剤を用いてもよいが、水酸化ナトリウム溶液に塩素ガスを導入することにより調製したものを用いてもよい。
【0021】
本発明で被処理排水中に添加する酸化剤としては、有効塩素量が、1〜13%の塩素系酸化剤の使用が好ましいが、その量は、水中の銅イオンを酸化銅に変換できる量で、一般的には、銅1モルに対し、薬剤に含まれる有効塩素(Cl)量として、0.1〜50モル、好ましくは0.1〜20モル、より好ましくは0.1〜10モルとなる量である。
【0022】
被処理水中に溶存する銅を不溶化するためのアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムの他、水酸化マグネシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化アンモニウム等、従来公知のものが用いられる。本発明では、特に、銅を回収する点から水酸化ナトリウムの使用が好ましい。
【0023】
被処理水に対するアルカリの添加量は、その水中に溶存する銅が不溶化する量であればよく、一般的には、その処理水のpHを8〜12、好ましくは9〜11の範囲にコントロールするような量であればよい。
【0024】
本発明の操作では、被処理水中に単にアルカリのみを添加する場合には、一般に銅は水酸化物を生成するにすぎないが、酸化剤が共存すると、銅酸化物を生成し、不溶化させることができ、低められたスラッジ量で液中から分離し、回収することができる。
【0025】
被処理水に酸化剤を添加する時点は、特に制約されず、アルカリを添加してpHを8〜12に調整する以前、アルカリの添加と同時又はアルカリを添加しpHを8〜12に調整した後であることができる。ただし、被処理水のpHが4以下の酸性の場合は、酸化剤を添加する前にあらかじめアルカリを加えて、pHを4以上に調整しておくのが好ましい。
【0026】
本発明の薬剤(除去剤(I))を好ましく調製するには、以下のようにする。高濃度塩化銅廃液(濃厚銅エッチング廃液)を80℃以上で加熱して、塩化水素を除去して、調製する。加熱時間は塩化水素をほとんど除去するまでであり、約4時間以内である。塩化水素を除去した後の液のpHは0.5〜2.0である。操作性を考慮して、この液に水を添加してもよい。
【0027】
本発明においては、凝集剤を併用するのが好ましい。この場合の凝集剤は、フロックの凝集に用いられているものであり、このようなものには、塩化カルシウム、塩化第1鉄、塩化第2鉄、硫酸第1鉄、硫酸第2鉄、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム等の無機系凝集剤の他、ポリアクリルアミドのカチオン化変性物、ポリアクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、ポリメタクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、ポリエチレンイミン、キトサン等のカチオン性有機系凝集剤、ポリアクリルアミド等のノニオン性有機系凝集剤、ポリアクリル酸、アクリルアミドとアクリル酸との共重合体及びその塩等のアニオン性有機系凝集剤が包含される。本発明においては、銅を回収し再利用する際問題となる不純物をできるだけ少なくするため、少量の添加量で済む有機系凝集剤を添加するのがよい。この場合、凝集剤の添加は、被処理水に対し、薬剤の添加前、添加後のいずれでもよいが、一般には、最後に添加するのがよい。
【0028】
本発明において、有害物質を除去し、発生した銅含有汚泥を再び原水に返送する場合には、返送する汚泥量は、原水1容量に対して、汚泥1〜15%、好ましくは4〜10%、より好ましくは6〜8%である。また、返送する汚泥の比重は、1.00から1.10、好ましくは1.01から1.08、より好ましくは1.02〜1.05の範囲である。
【0029】
有害物質、処理工程で発生する有害物質及び生成する銅水酸化物により構成されるスラッジ中の銅含有量が10質量%以上になるようにして得られる分離除去されたスラッジの分離操作は、固液分離により解決される。この場合の固液分離方法としては、処理量や処理時間に応じて慣用の方法、例えば、濾過分離、遠心分離、加圧浮上分離、沈降分離等が適宜採用される。
【0030】
有害物質、処理工程で発生する有害物質及び生成する銅水酸化物により構成されるスラッジ中の銅含有量が10質量%以上のスラッジは、銅又は銅酸化物からなる銅化合物から銅を回収することができる。銅酸化物は山元還元され銅として再利用される。このようして得られる処理水の銅濃度は、1.0mg/L以下とすることができる。
【0031】
【実施例】
次に本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。本発明はこの実施例にされるものではない。
【0032】
参考例1
濃厚塩化銅廃液(pH約―0.87、銅濃度127,300mg/L)1Lを、80℃以上で4時間加熱して塩化水素を除去したところ、pH0.5の溶液となった。水を添加して1Lとした。この溶液を除去剤(I)とする。
【0033】
実施例1
亜鉛濃度20mg/Lの排水に、除去剤(I)を添加し、銅濃度3000mg/Lとした。これに水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH10に調整した。有効塩素12%の次亜塩素酸ナトリウムを2mL/L添加し、40分撹拌した。高分子凝集剤AP120Cを8mg/L添加して、固液分離した。処理水の亜鉛濃度は、0.007mg/L、銅濃度は、0.846mg/Lであった。スラッジ中の銅の含有率は78.2%、塩素は0.3%であった。このスラッジはすべて有償で山元還元することができる。したがって、スラッジを全く発生させることなく、当該排水を処理することが可能になった。
【0034】
実施例2
鉛濃度20mg/Lの排水に、除去剤(I)を添加し、銅濃度3000mg/Lの被処理水とした。これに水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH10に調整した。有効塩素12%の次亜塩素酸ナトリウムを2mL/L添加し、40分撹拌した。高分子凝集剤AP120Cを8mg/L添加して、固液分離した。処理水の鉛濃度は0.009mg/L、銅濃度は、0.054mg/Lであった。スラッジ中の銅の含有率は77.1%、塩素は0.6%であった。このスラッジはすべて有償で山元還元することができる。したがって、スラッジを全く発生させることなく、当該排水を処理することが可能になった。
【0035】
実施例3
6価クロム濃度20mg/Lの排水に除去剤(I)を添加し、銅濃度3000mg/Lとした。水酸化ナトリウム水溶液でpH10に調整した。その後、高分子凝集剤(ダイヤニトリクス社製AP120C)を8mg/L添加し、固液分離した。上澄水のクロム濃度は0.33mg/L、銅濃度は0.063mg/Lであった。また、発生したスラッジ中の銅含有率は54.3%、塩素含有率は4.7%であった。このスラッジは、有償で山元還元することができる。
【0036】
実施例4
銅濃度23mg/L、鉄濃度66mg/L、ニッケル濃度1.36mg/Lのメッキ排水に除去剤(I)を10mL/L添加し、水酸化ナトリウム水溶液でpH10に調整した。その後、高分子凝集剤(ダイヤニトリクス社製AP120C)を添加し、固液分離した。処理水の銅濃度は0.07mg/L、鉄濃度は検出されず、ニッケル濃度は0.09mg/Lであった。また、発生したスラッジ中の銅含有率は61%、塩素含有率は1.9%であった。このスラッジはすべて有償で山元還元することができる。したがって、スラッジを全く発生させることなく、当該排水を処理することが可能になった。
【0037】
実施例5
リン濃度139mg/Lの排水に除去剤(I)を25mL/L添加し、水酸化ナトリウム水溶液でpH10に調整した。その後、高分子凝集剤(ダイヤニトリクス社製AP120C)を添加し、固液分離した。処理水のリン濃度は2.3mg/Lであった。また、発生したスラッジ中の銅含有率は65%、塩素含有率は2.3%であった。このスラッジはすべて有償で山元還元することができる。したがって、スラッジを全く発生させることなく、当該排水を処理することが可能になった。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、処理しようとする有害物質を含む排水中から、有害物質を分離除去する方法及び分離除去することにより発生するスラッジを回収処理することにより系外にスラッジを発生させることなく、処理しようとする有害物質を含む排水の処理方法が得られる。また、この方法で使用される薬剤が得られる。
また、スラッジを発生させるための手段として、従来、廃棄処分され利用されていなかった、濃厚塩化銅含有エッチング廃液から調製した高濃度塩化銅含有液を処理剤として用いることによる、処理しようとする有害物質を含む排水の処理方法が得られる。

Claims (7)

  1. 処理しようとする有害物質の重金属イオン及び/又はリン酸イオンを含有する排水に、アルカリを添加し該排水のpHを8〜12に調整した際に生成するスラッジ中の銅含有量が10質量%以上になるように銅エッチング処理工程から排出されるエッチング廃液を添加し、当該pHに調整することにより、前記有害物質を銅水酸化物と共沈させ、排水中から分離除去し、分離除去したスラッジから銅又は銅化合物として銅を回収することにより、有害物質の重金属イオン及び/又はリン酸イオンを含むスラッジを排出せずに処理することを特徴とする処理しようとする有害物質の重金属イオン及び/又はリン酸イオンを含む排水の処理方法。
  2. 該エッチング廃液が、銅エッチング廃液から塩化水素含有量を低めることによって調製されたものであることを特徴とする請求項1記載の処理しようとする有害物質の重金属イオン及び/又はリン酸イオンを含む排水の処理方法。
  3. 酸化剤を添加することによって銅水酸化物の一部もしくはすべてを銅酸化物とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の処理しようとする有害物質の重金属イオン及び/又はリン酸イオンを含む排水の処理方法。
  4. 前記酸化剤は、含まれる有効塩素が1〜13%の塩素系酸化剤によるものであることを特徴とする請求項3記載の処理しようとする有害物質の重金属イオン及び/又はリン酸イオンを含む排水を処理する方法。
  5. 有害物質を除去し、発生した銅含有スラッジ(汚泥)の一部を原水に返送することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の処理しようとする有害物質の重金属イオン及び/又はリン酸イオンを含む排水を処理する方法。
  6. 前記アルカリが水酸化ナトリウムであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の処理しようとする有害物質の重金属イオン及び/又はリン酸イオンを含む排水を処理する方法。
  7. 処理しようとする有害物質を含む排水中に、凝集剤を添加することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の処理しようとする有害物質の重金属イオン及び/又はリン酸イオンを含む排水を処理する方法。
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