JP4164879B2 - 電磁波遮蔽性反射防止膜 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主としてディスプレーに利用される、反射防止膜の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
反射防止膜とは、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Catode Ray Tube)等のディスプレーにおいて、最外層もしくはそれに準じる位置に形成され、蛍光灯や太陽光等の外光の反射によってディスプレーが見にくくなることを防止するために利用されている。即ち、ディスプレー表面において、可視光の反射率を低減させる機能を有する膜のことを言う。現在まで、屈折率の異なる材料から成る膜を積層することにより可視領域の光線反射率を低減させることが検討されてきている。一般的には、材料には低屈折材料のSiO2 と高屈折材料のTiO2 等の酸化物を用い、屈折率と膜厚等を厳重に考慮して無機多層反射防止膜を形成する。
【0003】
一方、ディスプレーを有する多くの装置においては、外部から飛来する電磁波を遮蔽するため、もしくは該装置内部から発生する電磁波が外部に漏れることを防ぐための電磁波遮蔽膜が設けられていることが望ましい。現状では、可視光において光線透過性を示し、導電性も有するITO(Indium Tin Oxide)が使用されることがある。また、Ag薄膜の表裏にITO薄膜を積層(基材/第一ITO層/Ag層/第二ITO層)して、構成される多層電磁波遮蔽膜が提案されており(特開昭63−173395号)、優れた導電性および電磁波遮蔽性能を有している。
【0004】
しかしながら、上記無機多層反射防止膜は導電性を有さないため、電磁波遮蔽性はなく、別途に電磁波遮蔽膜を形成せねばならないという問題点がある。
【0005】
一方、上記電磁波遮蔽膜においては、導電性は挟持されているAg層がその性能を支配しているので、使用目的によっては、コスト的な面、または、耐性面から見ても、ITO層で狭持する必要性がない場合がある。
【0006】
例えば、電磁波遮蔽性を有効に発揮する目的のために、電磁波遮蔽膜すなわちAg層が接地に維持されることが望ましい場合がある。しかし、Ag層を直接接地することは困難な場合もあり、そのような場合には、第二ITO層が導電性を有することは接地を取る上で有利な場合が多いが、第一ITO層は導電性を有する必要性がない場合が多い。すなわち、第一ITO層は、まず第一に耐性などの特性、そして第2にコスト面を考慮し有利な物質を使うことが必要となる。
逆に、最外層に形成する第二ITO層に、耐性が要求される場合がある。その場合には、第一ITO層が導電性を有することが必要となることがある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は以上のような問題点に着目してなされたもので、ひとつの構成で、良好な反射防止性と電磁波遮蔽性との機能を合わせ持つことを特徴とする積層体を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、プラスチックフィルムからなる基材上に第一セラミック薄膜層/金属薄膜層/第二セラミック薄膜層の順に積層されている積層体において、第一セラミック薄膜層第二セラミック薄膜層が異なり、かつ第一セラミック薄膜層が高屈折率かつ電気絶縁性を有する材料から成り、第二セラミック薄膜層が高屈折率かつ導電性を有する材料から成り、かつ金属薄膜層がAg,Au,Cuのいずれか、またはそれらの合金から成ることを特徴とする電磁波遮蔽性反射防止膜である。
【0009】
請求項2記載の発明は、プラスチックフィルムからなる基材上に第一セラミック薄膜層/金属薄膜層/第二セラミック薄膜層の順に積層されている積層体において、第一セラミック薄膜層第二セラミック薄膜層が異なり、かつ第一セラミック薄膜層が高屈折率かつ導電性を有する材料から成り、第二セラミック薄膜層が高屈折率かつ電気絶縁性を有する材料から成り、かつ金属薄膜層がAg,Au,Cuのいずれか、またはそれらの合金から成ることを特徴とする電磁波遮蔽性反射防止膜である。
【0016】
【発明の実施の形態】
【0017】
以下、本発明を詳述する。
本発明としては、各層の膜厚には詳しく言及していないが、本願発明において発明の主題となっていないだけであって、積層体が反射防止効果を得るため、もしくは良好な反射防止効果を得るためには、各層の膜厚の調整が必要なことは言うまでもなく、本願発明の様に材料を変更すれば、良好な反射防止効果の為に更なる膜厚の調整が必要なことも言うまでもない。
【0018】
本発明にかかわる導電性を有する材料とは、実質的に導電性を有する材料をいい、用いられる代表的な材料としては、ITO、ZnO、SnO2 、もしくはそれらの混合物が挙げられるが、実質的に導電性を有し、かつ高屈折率材料であればいかなる材料を用いても良い。例えば、前記のIn、Zn、Snの酸化物の他、Ga、Mg、Al、Si、CeなどのIII族、IV族、ランタノイドの酸化物もしくはそれらの混合酸化物を高屈折率でありかつ実質的に導電性を有するように混合したものがある。
【0019】
本発明にかかわる電気絶縁性を有する材料とは、実質的に電気絶縁性を有する材料をいい、高屈折率で、かつ基材や金属層膜との密着性、耐性等を考慮して形成した材料であればいかなるものでも良いが、例としては、Ga、Ce、Ti、Si、Al、In、Zn、Sn、Mg等のIII族、IV族、ランタノイドの酸化物もしくはそれらの混合酸化物を挙げることができる。
【0020】
なお、実質的とは、物性的にその材料が導電性があるとか、電気絶縁性があるとかいうのではなく、薄膜の状態での導電性と電気絶縁性を問題とするという意味である。
【0021】
本発明にかかわる金属薄膜層は、導電性に優れていれば、いかなる材料でも良いが、例としては、Ag、Au、Cuもしくはそれらの合金を挙げることができる。
【0022】
本発明にかかわる基材は、いかなる材質であっても、またいかなる形状であっても良いが、ディスプレーへの応用を考慮すると、より好ましい材料としては、ガラスやプラスチックフィルムを挙げることができる。
【0023】
本発明にかかわる成膜方法は、目的の薄膜を形成できる方法であればいかなる方法でも良いが、スパッタリング、蒸着、イオンプレーティング、CVDなどの真空成膜方法が適している。
【0024】
本発明で用いている、基材上に第一セラミック薄膜層/金属薄膜層/第二セラミック薄膜層の順に積層されている積層体とは、第一セラミック薄膜層/金属薄膜層/第二セラミック薄膜層が結果として連続して基材上に形成されていれば良く、基材上の両面もしくは片面、および、第二セラミック薄膜層の金属薄膜層とは反対側に、何らかの処理もしくは成膜を施すことは、目的の特性に実質的に悪影響を及ぼさないかぎり、なんら問題ない。
【0025】
実施の形態について、構成の一例を記述する。
図1に、本発明の積層体構成例を示す。第一セラミック薄膜層、金属薄膜層、第二セラミック薄膜層は、それぞれ、膜厚、屈折率等、光学膜の設計に必要な条件を考慮して構成される。
【0026】
また、セラミツクとは無機化合物であって、酸化物、硫化物、フッ化物等のものをいう。更に、プラスチックとは、有機物で高分子であるものをいう。
更に、第一セラミック薄膜層と金属薄膜層、金属薄膜層と第二セラミック薄膜層は接している必要があるが、基材に直接接する必要はなく、ハードコート層、バリア膜、接着層等の層を介した構成でもよい。
また、第一セラミック薄膜層、金属薄膜層、第二セラミック薄膜層は前処理、後処理、表面処理等を全く行わなくともよいが、第二セラミック薄膜層に対しては、撥水、防汚処理を行ったものでも良い。
【実施例】
【0027】
基材に厚さ100μmのハードコート付きPETフィルム、第一セラミック薄膜層にGa・Ce混合酸化物、金属薄膜層にAg・Auの混合物、第二セラミック薄膜層にITOを用いた。
セラミック膜の酸化物のの混合比は、Ga23 :CeO2 =70:30wt%、In23 :SnO2 =90:10wt%、金属薄膜層の混合比は、Ag:Au=99:1at%のものを用いた。成膜方法は、マグネトロンスパッタリング法を用い、セラミック膜の形成にはRF放電を、また、金属薄膜層の形成にはDC放電を用いた。各層の膜厚は、第一セラミック薄膜層が約40nm、金属薄膜層が約10nm、セラミック薄膜層2が約40nmとした。
形成した積層体の波長550nmに対する光線反射率と光線透過率は、それぞれ、〜0.5%、90%となり、良好な反射防止膜が得られた。
また、約15Ω/□となり、充分な電磁波遮蔽効果を有する積層体が得られたことが確認された。
【0028】
基材に厚さ100μmのハードコート付きPETフィルム、第一セラミック薄膜層にITO、金属薄膜層にAg・Auの混合物、第二セラミック薄膜層にGa・Ce混合酸化物を用いた。
セラミック膜の酸化物のの混合比は、Ga23 :CeO2 =70:30wt%、In23 :SnO2 =90:10wt%、金属薄膜層の混合比は、Ag:Au=99:1at%のものを用いた。成膜方法は、マグネトロンスパッタリング法を用い、セラミック膜の形成にはRF放電を、また、金属薄膜層の形成にはDC放電を用いた。各層の膜厚は、第一セラミック薄膜層が約40nm、金属薄膜層が約10nm、第二セラミック薄膜層が約40nmとした。
形成した積層体の波長550nm に対する光線反射率と光線透過率は、それぞれ、〜0.5%、90%となり良好な反射防止膜が得られた。また、約15Ω/□(金属膜形成の段階で測定)となり、充分な電磁波遮蔽効果を有する積層体が得られたことが確認された。
【発明の効果】
【0029】
本発明の積層体によれば、膜厚、屈折率等、光学膜の設計に必要な条件を考慮して、基材上に第一セラミック薄膜層/金属薄膜層/第二セラミック薄膜層の順に積層体を形成する際に、第一セラミック薄膜層と第二セラミック薄膜層が、それぞれ別々に必要な特性を有するよう考慮して、異なる材料で形成することにより、良好な反射防止性と電磁波遮蔽性との機能を合わせ持つことを特徴とする積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一構成例を示す一部破断断面図である。
【符合の説明】
1…基材 2…第一セラミック薄膜層 3…金属薄膜層 4…第二セラミック薄膜層

Claims (2)

  1. プラスチックフィルムからなる基材上に第一セラミック薄膜層/金属薄膜層/第二セラミック薄膜層の順に積層されている積層体において、第一セラミック薄膜層第二セラミック薄膜層が異なり、かつ第一セラミック薄膜層が高屈折率かつ電気絶縁性を有する材料から成り、第二セラミック薄膜層が高屈折率かつ導電性を有する材料から成り、かつ金属薄膜層がAg,Au,Cuのいずれか、またはそれらの合金から成ることを特徴とする電磁波遮蔽性反射防止膜。
  2. プラスチックフィルムからなる基材上に第一セラミック薄膜層/金属薄膜層/第二セラミック薄膜層の順に積層されている積層体において、第一セラミック薄膜層第二セラミック薄膜層が異なり、かつ第一セラミック薄膜層が高屈折率かつ導電性を有する材料から成り、第二セラミック薄膜層が高屈折率かつ電気絶縁性を有する材料から成り、かつ金属薄膜層がAg,Au,Cuのいずれか、またはそれらの合金から成ることを特徴とする電磁波遮蔽性反射防止膜。
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