JP4162923B2 - 炭化ケイ素単結晶の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、p型半導体等として好適に使用可能な炭化ケイ素単結晶及びその効率的な製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
炭化ケイ素は、ケイ素に比し、バンドギャップが大きく、絶縁破壊特性、耐熱性、耐放射線性等に優れることから、小型で高出力の半導体等の電子デバイス材料として、また、光学的特性に優れることから、光学デバイス材料として注目されてきている。かかる炭化ケイ素の結晶の中でも、炭化ケイ素単結晶は、炭化ケイ素多結晶に比し、ウエハ等のデバイスに応用した際にウエハ内特性の均一性等に特に優れるという利点がある。
前記炭化ケイ素単結晶の製造方法としては、黒鉛製坩堝を用い、炭化ケイ素粉末を昇華させ、炭化ケイ素単結晶の種結晶上に炭化ケイ素単結晶を成長させる改良レーリー法(改良昇華再結晶法)が知られているが、不純物元素(1989年IUPAC無機化学命名法改訂版の周期律表における1族から17族元素に属しかつ原子番号3以上(但し、炭素原子、窒素原子、酸素原子及びケイ素原子を除く)である元素をいう。)の含有量が1.0質量ppm以下である炭化ケイ素単結晶を製造する方法はあまり知られていない。
一方、p型半導体として利用可能な炭化ケイ素単結晶を製造する方法として、昇華用原料である炭化ケイ素粉末にアルミニウムやアルミナの粉末を添加して同時に昇華させて炭化ケイ素単結晶を製造する方法が知られている。この方法の場合、成長させた炭化ケイ素単結晶中のアルミニウム原子がアクセプターとして正孔を供給することでp型の電気伝導性が発現する。しかし、この場合、昇華用原料である炭化ケイ素粉末に窒素が含まれていると、ドナーとして働く窒素原子と、アクセプターとして働くアルミニウム原子との間で補償が起こり、導電性が損なわれてしまうという問題がある。このような補償が起こることを効果的に防止しつつ、p型半導体として好適な炭化ケイ素単結晶を効率よく製造し得る方法は、未だ提供されていないのが現状である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、前記不純物元素の含有量が少なく、かつ前記不純物元素でない窒素等の元素の含有量も少なく、p型半導体等として好適に使用可能な炭化ケイ素単結晶、及び、該炭化ケイ素単結晶を効率よく製造し得る炭化ケイ素単結晶の製造方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
即ち、 <1> 窒素含有量が100質量ppm以下であり、元素周期律表における13族元素を除く不純物元素の各含有量が0.1質量ppm以下であり、かつ元素周期律表における13族元素の総含有量が窒素含有量(原子ppm)以上である炭化ケイ素粉末を昇華させてから再結晶させて炭化ケイ素単結晶を成長させることを特徴とする炭化ケイ素単結晶の製造方法である。
<2> 炭化ケイ素粉末の窒素含有量が50質量ppm以下である前記<1>に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法である。
<3> 窒素含有量が0.1質量ppm以下であり、かつ元素周期律表における13族元素の総含有量が窒素含有量(原子ppm)以上である炭化ケイ素粉末を昇華させてから再結晶させて炭化ケイ素単結晶を成長させることを特徴とする炭化ケイ素単結晶の製造方法である。
<4> 元素周期律表における13族元素がアルミニウムである前記<1>から<3>のいずれかに記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法である。
<5> 炭化ケイ素粉末が、ケイ素源とキシレン系樹脂とを少なくとも含有する混合物を焼成して得られる前記<1>から<4>のいずれかに記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法である。
<6> ケイ素源が、アルコキシシラン化合物である前記<5>に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法である。
<7> 混合物が、ケイ素源に酸を添加した後、キシレン系樹脂を添加して得られる前記<5>又は<6>に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法である。
<8> 焼成の際、混合物における、キシレン系樹脂に含まれる炭素とケイ素源に含まれるケイ素との比が1.8以下である前記<5>から<7>のいずれかに記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法である。
<9> 炭化ケイ素粉末の体積平均径が50〜400μmである前記<1>から<8>のいずれかに記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法である。
<10> 炭化ケイ素粉末が、結晶多型がベータ型(3C)である炭化ケイ素粉末を30質量%以下含有する前記<1>から<9>のいずれかに記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法である。
<11> 炭化ケイ素単結晶を、その全成長過程を通して、その成長面の全面を凸形状に保持したまま成長させる前記<1>から<10>のいずれかに記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法である。
<12> 炭化ケイ素単結晶を含む炭化ケイ素の結晶を略山形に成長させる前記<1>から<11>のいずれかに記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法である。
<13> 炭化ケイ素単結晶を含む炭化ケイ素の結晶が、炭化ケイ素単結晶のみからなる前記<1>から<12>のいずれかに記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法である。
<14> 炭化ケイ素粉末を反応容器内に収容し、該反応容器内の該炭化ケイ素粉末に略対向する端部に炭化ケイ素単結晶の種結晶を配置し、
炭化ケイ素単結晶を含む炭化ケイ素の結晶の成長が、該端部における、該反応容器内の周側面部との隣接部を除く領域でのみ行われる前記<1>から<13>のいずれかに記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法である。
<15> 炭化ケイ素粉末を反応容器内の一端部側に収容し、該反応容器内の他端部側に炭化ケイ素単結晶の種結晶を配置し、
前記一端部側に配置した第一加熱手段により、該炭化ケイ素粉末が昇華可能となるように昇華雰囲気を形成し、
前記他端部側に配置した第二加熱手段により、前記第一加熱手段により昇華された炭化ケイ素が前記炭化ケイ素単結晶の種結晶近傍でのみ再結晶可能となるように再結晶雰囲気を形成し、該炭化ケイ素を前記炭化ケイ素単結晶の種結晶上に再結晶させる前記<1>から<13>のいずれかに記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法である。
<16> 第一加熱手段及び第二加熱手段が誘導加熱可能なコイルである前記<15>に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法である。
<17> 第一加熱手段における誘導加熱電流の電流値が、第二加熱手段における誘導加熱電流の電流値よりも大きい前記<16>に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法である。
<18> 第二加熱手段における誘導加熱電流の電流値を、成長する炭化ケイ素単結晶の径が大きくなるにつれて、連続的又は段階的に小さくする前記<16>又は<17>に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法である。
<19> 反応容器内の、炭化ケイ素粉末を収容した一端部側の温度をT1とし、炭化ケイ素単結晶の種結晶を配置した他端部側の温度をT2とし、該他端部側における、反応容器の内周側面部との隣接部の温度T3とした時、T3−T2及びT1−T2が連続的又は段階的に大きくなる前記<15>から<18>のいずれかに記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法である。
<20> 前記<1>から<19>のいずれかに記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法により製造されることを特徴とする炭化ケイ素単結晶である。
<21> 非破壊で光学的に画像検出した中空パイプ状の結晶欠陥が100個/cm2以下である前記<20>に記載の炭化ケイ素単結晶である。
<22> 不純物元素の総含有量が10質量ppm以下である前記<20>又は<21>に記載の炭化ケイ素単結晶である。
<23> 体積抵抗値が1×101Ω・cm以下である前記<20>から<22>のいずれかに記載の炭化ケイ素単結晶である。
<24> 窒素含有量が0.01質量ppm以下である前記<20>から<23>のいずれかに記載の炭化ケイ素単結晶である。
【0005】
前記課題を解決するための手段としては、更に以下のものが挙げられる。即ち、
<25> 焼成が、非酸化性雰囲気下、100〜1000℃/hで1300〜1600℃まで昇温し、その後50〜300℃/hで1800〜2100℃まで昇温後、1800〜2100℃で240分以内保持ことで行われる前記<4>から<19>のいずれかに記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法である。
<26> 焼成の際、ケイ素源及び炭素源に対しハロゲン又はハロゲン化水素1〜5容量%が添加される前記<4>から<19>及び<25>のいずれかに記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法である。
<27> 焼成の後、加熱による後処理が行われる前記<4>から<19>及び<24>から<26>のいずれかに記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法である。
<28> 後処理が2150〜2400℃で行われる前記<27>に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法である。
<29> 後処理がアルゴン雰囲気で3〜8時間行われる前記<27>又は<28>に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法である。
<30> 炭化ケイ素粉末の体積平均粒径(D50)が0.5〜800μmである前記<1>から<19>及び<24>から<29>のいずれかに記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法である。
<31> 炭化ケイ素粉末の粒度分布(D90/D10)が4以下である前記<1>から<19>及び<24>から<30>のいずれかに記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法である。
<32> 反応容器内において、再結晶雰囲気の温度が昇華雰囲気の温度よりも30〜300℃低い前記<12>から<19>及び<24>から<31>のいずれかに記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法である。
<33> 反応容器が、石英管内に配置された坩堝である前記<12>から<19>及び<24>から<32>のいずれかに記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法である。
<34> 他端部における、該反応容器内の周側面部との隣接部の表面が、ガラス状カーボンである前記<12>から<19>及び<24>から<33>のいずれかに記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法である。
<35> 第一加熱手段と第二加熱手段との間に、誘導電流を通電可能であり、該誘導電流を通電することにより該第一加熱手段と該第二加熱手段との間における干渉を防止する干渉防止手段が配置される前記<12>から<19>及び<24>から<34>のいずれかに記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法である。
<36> 干渉防止手段が、冷却水を流通可能なコイルである前記<35>に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法である。
<37> 一端部が下端部であり、他端部が上端部である前記<12>から<19>及び<24>から<36>のいずれかに記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法である。
<38> 他端部における、炭化ケイ素単結晶の成長が行われる領域と、該領域の外周に位置し反応容器の内周側面部と隣接する領域とが、別の部材で形成されており、かつ該炭化ケイ素単結晶の成長が行われる領域を形成する部材における、一端が反応容器の内部に露出し、他端が反応容器の外部に露出している前記<12>から<19>及び<24>から<37>のいずれかに記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法である。
【0006】
前記<1>に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法は、窒素含有量が100質量ppm以下であり、元素周期律表における13族元素を除く不純物元素の各含有量が0.1質量ppm以下であり、かつ元素周期律表における13族元素の総含有量が窒素含有量(原子ppm)以上である炭化ケイ素粉末を昇華させてから再結晶させて炭化ケイ素単結晶を成長させるため、再結晶される炭化ケイ素単結晶は、窒素含有量が低い一方、p型半導体を形成し得る程度の13族元素を含有している。このため、製造された炭化ケイ素単結晶においては、ドナーとして働く窒素原子とアクセプターとして働く13族元素の原子との間での補償が効果的に抑制され、該炭化ケイ素単結晶はp型半導体として好適である。
【0007】
前記<2>に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法は、前記<1>において、前記炭化ケイ素粉末の窒素含有量が50質量ppm以下であるので、再結晶される炭化ケイ素単結晶中の窒素含有量が極めて低い一方、p型半導体を形成し得る程度の13族元素を含有している。このため、製造された炭化ケイ素単結晶はp型半導体として特に好適である。
【0008】
前記<3>に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法は、窒素含有量が0.1質量ppm以下であり、かつ元素周期律表における13族元素の総含有量が窒素含有量(原子ppm)以上である炭化ケイ素粉末を昇華させてから再結晶させて炭化ケイ素単結晶を成長させるので、再結晶される炭化ケイ素単結晶中の窒素含有量が極めて低い一方、p型半導体を形成し得る程度の13族元素を含有している。このため、製造された炭化ケイ素単結晶においては、ドナーとして働く窒素原子とアクセプターとして働く13族元素の原子との間での補償が効果的に抑制され、該炭化ケイ素単結晶はp型半導体として特に好適である。
【0009】
前記<4>に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法は、前記<1>から<3>のいずれかにおいて、元素周期律表における13族元素がアルミニウムであるので、活性化され易く、得られる炭化ケイ素単結晶は高品質なp型半導体として特に好適である。
【0010】
前記<5>に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法は、前記<1>から<4>のいずれかにおいて、前記炭化ケイ素粉末が、ケイ素源とキシレン系樹脂とを少なくとも含有する混合物を焼成して得られ、該炭化ケイ素粉末の窒素含有量が低いので、製造される炭化ケイ素単結晶中の窒素含有量が低い。このため、製造される炭化ケイ素単結晶はp型半導体として特に好適である。
【0011】
前記<6>に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法は、前記<5>において、前記ケイ素源がテトラアルコキシシラン重合体である。このため、前記炭化ケイ素粉末が、低コストで容易に得られる。
【0012】
前記<7>に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法は、前記<5>又は<6>において、混合物が、ケイ素源に酸を添加した後、キシレン系樹脂を添加して得られる。このため、均一な状態の前記混合物が極めて容易に得られ、効率よく炭化ケイ素単結晶が製造される。
【0013】
前記<8>に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法は、前記<5>から<7>のいずれかにおいて、焼成の際、混合物における、キシレン系樹脂に含まれる炭素とケイ素源に含まれるケイ素との比が1.8以下であり、前記炭化ケイ素粉末における遊離炭素が少ないので、高品質の炭化ケイ素単結晶が得られる。
【0014】
前記<9>に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法は、前記<1>から<8>のいずれかにおいて、炭化ケイ素粉末の体積平均径が50〜400μmであり、CVD法等により製造された炭化ケイ素粉末よりも体積平均粒径が大きく、取扱い易く、炭化ケイ素単結晶の製造効率に優れる。
【0015】
前記<10>に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法は、前記<1>から<9>のいずれかにおいて、炭化ケイ素粉末が、結晶多型がベータ型(3C)である炭化ケイ素粉末を30質量%以下含有するので、CVD法等により製造された炭化ケイ素粉末よりも体積平均粒径が大きく、取扱い易く、炭化ケイ素単結晶の製造効率に優れる。
【0016】
前記<11>に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法は、前記<1>から<10>において、前記炭化ケイ素単結晶を、その全成長過程を通して、その成長面の全面を凸形状に保持したまま成長させる。ここでは、成長する炭化ケイ素単結晶における成長面の全面において、その成長方向と反対方向に前記陥没した凹部が輪状に形成されることがない。このため、割れ等の破損がなく、多結晶や多型の混入やマイクロパイプ等の結晶欠陥が存在しない高品質の炭化ケイ素単結晶が製造される。
【0017】
前記<12>に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法は、前記<1>から<11>において、炭化ケイ素単結晶を含む炭化ケイ素の結晶を略山形に成長させるので、成長する炭化ケイ素単結晶において、その成長方向と反対方向に前記陥没した凹部が全く存在しない。このため、割れ等の破損がなく、多結晶や多型の混入やマイクロパイプ等の結晶欠陥が存在しない高品質の炭化ケイ素単結晶が製造される。
【0018】
前記<13>に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法は、前記<1>から<12>のいずれかにおいて、前記炭化ケイ素単結晶を含む炭化ケイ素の結晶が、炭化ケイ素単結晶のみからなる。このため、大きな径の炭化ケイ素単結晶が得られ、該炭化ケイ素単結晶を炭化ケイ素多結晶等から分離等する必要がない。
【0019】
前記<14>に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法は、前記<1>から<13>において、反応容器内に前記炭化ケイ素粉末を収容し、該反応容器内の該炭化ケイ素粉末に略対向する端部に前記炭化ケイ素単結晶の種結晶を配置し、前記炭化ケイ素単結晶を含む炭化ケイ素の結晶の成長が、該端部における、該反応容器内の周側面部との隣接部を除く領域でのみ行われる。このため、成長する炭化ケイ素単結晶において、その成長方向と反対方向に前記陥没した凹部が輪状に形成されることがなく、また、炭化ケイ素多結晶が、前記端部における、該反応容器内の周側面部に接触した状態で成長することもない。このため、成長した炭化ケイ素単結晶を室温まで冷却した際に、炭化ケイ素多結晶側から炭化ケイ素単結晶側に熱膨張差に基づく応力が集中して印加されることがなく、得られる炭化ケイ素単結晶に割れ等の欠陥が生じてしまうことがない。その結果、割れ等の破損がなく、多結晶や多型の混入やマイクロパイプ等の結晶欠陥が存在しない高品質の炭化ケイ素単結晶が効率よくかつ確実に製造される。
【0020】
前記<15>に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法は、前記<1>から<14>のいずれかにおいて、前記反応容器内の一端部側に前記炭化ケイ素粉末を収容し、該反応容器内の他端部側に前記炭化ケイ素単結晶の種結晶を配置し、前記一端部側に配置した第一加熱手段により、該炭化ケイ素粉末を昇華可能となるように昇華雰囲気を形成し、前記他端部側に配置した第二加熱手段により、前記第一加熱手段により昇華された炭化ケイ素が炭化ケイ素単結晶の種結晶近傍でのみ再結晶可能となるように再結晶雰囲気を形成し、該炭化ケイ素を前記炭化ケイ素単結晶の種結晶上に再結晶させる。
この炭化ケイ素単結晶の製造方法においては、前記炭化ケイ素粉末を昇華可能となるように昇華雰囲気を形成するための加熱を前記第一加熱手段で行い、前記炭化ケイ素単結晶の種結晶上でのみ再結晶化を可能とする再結晶雰囲気の形成を前記第二加熱手段で行うことにより、前記炭化ケイ素単結晶の種結晶上乃至その近傍でのみ選択的に再結晶化を行うことができ、前記炭化ケイ素多結晶が、前記端部における、該反応容器内の周側面部に接触した状態で成長することがない。成長した炭化ケイ素単結晶を室温まで冷却した際に、炭化ケイ素多結晶側から炭化ケイ素単結晶側に熱膨張差に基づく応力が集中して印加されることがなく、得られる炭化ケイ素単結晶に割れ等の欠陥が生じてしまうことがない。その結果、割れ等の破損がなく、多結晶や多型の混入やマイクロパイプ等の結晶欠陥が存在しない高品質の炭化ケイ素単結晶が製造される。
【0021】
前記<16>に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法は、前記<15>において、前記第一加熱手段及び前記第二加熱手段が誘導加熱可能なコイルである。このため、該コイルによる誘導加熱により、前記昇華雰囲気の形成のための前記第一加熱手段の温度制御、及び前記再結晶雰囲気の形成のための前記第二加熱手段の温度制御が容易にかつ確実に行われる。
【0022】
前記<17>に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法は、前記<16>において、第一加熱手段における誘導加熱電流の電流値が、第二加熱手段における誘導加熱電流の電流値よりも大きい。このため、前記昇華雰囲気の温度よりも前記種結晶上近傍での再結晶雰囲気の温度の方が低く維持され、再結晶化が容易に行われる。
【0023】
前記<18>に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法は、前記<16>又は<17>において、前記第二加熱手段における誘導加熱電流の電流値を、成長する炭化ケイ素単結晶の径が大きくなるにつれて、連続的又は段階的に小さくする。このため、前記炭化ケイ素単結晶が成長するにつれて前記第二加熱手段による加熱量が小さく制御されるので、成長を続ける前記炭化ケイ素単結晶の近傍でしか再結晶が行われず、該炭化ケイ素単結晶の周囲に多結晶が生ずることがない。
【0024】
前記<19>に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法は、前記<15>から<18>のいずれかにおいて、前記反応容器内の、炭化ケイ素粉末を収容した一端部側の温度をT1とし、炭化ケイ素単結晶の種結晶を配置した他端部側の温度をT2とし、該他端部側における、反応容器の内周側面部との隣接部の温度T3とした時、T3−T2及びT1−T2が連続的又は段階的に大きくなる。T1−T2が連続的又は段階的に大きくなると、経時的に、炭化ケイ素単結晶が前記一端部側に向かって成長を続けても、該炭化ケイ素単結晶の結晶成長先端側は常に再結晶が起こり易い状態に維持される。一方、T3−T2が連続的又は段階的に大きくなると、経時的に、炭化ケイ素単結晶が前記他端部側における外周方向に向かって成長を続けても、該炭化ケイ素単結晶の結晶成長外周端側は常に再結晶が起こり易い状態に維持される。その結果、炭化ケイ素多結晶の生成が効果的に抑制され、該炭化ケイ素単結晶は、その径を拡大しながらその厚みを増す方向に成長を続け、最終的には、炭化ケイ素多結晶等の混入がない状態で大径の炭化ケイ素単結晶が得られる。
【0025】
前記<20>に記載の炭化ケイ素単結晶は、前記<1>から<19>のいずれかに記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法により製造される。このため、得られる炭化ケイ素単結晶は、窒素含有量が低く、p型半導体として特に好適である。
【0026】
前記<21>に記載の炭化ケイ素単結晶は、前記<20>において、非破壊で光学的に画像検出した中空パイプ状の結晶欠陥が100個/cm2以下である。このため、該炭化ケイ素単結晶は、極めて高品質であり、絶縁破壊特性、耐熱性、耐放射線性等に特に優れ、半導体ウエハ等の電子デバイス、発光ダイオード等の光学デバイスなどに特に好適である。
【0027】
前記<22>に記載の炭化ケイ素単結晶は、前記<20>又は<21>において、前記不純物元素の総含有量が10質量ppm以下である。このため、該炭化ケイ素単結晶は、極めて高品質である。
【0028】
前記<23>に記載の炭化ケイ素単結晶は、前記<20>から<22>のいずれかにおいて、体積抵抗値が1×101Ω・cm以下である。このため、該炭化ケイ素単結晶は、半導体乃至伝導体である。
【0029】
前記<24>に記載の炭化ケイ素単結晶は、前記<20>から<23>のいずれかにおいて、窒素含有量が0.01質量ppm以下であるので、再結晶される炭化ケイ素単結晶中の窒素含有量が極めて低い。このため、製造された炭化ケイ素単結晶はp型半導体として特に好適である。
【0030】
前記<25>に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法は、前記<4>から<19>のいずれかにおいて、焼成が、非酸化性雰囲気下、100〜1000℃/hで1300〜1600℃まで昇温し、その後50〜300℃/hで1800〜2100℃まで昇温後、1800〜2100℃で240分以内保持することで行われる。このため、効率よく炭化ケイ素単結晶が製造される。
【0031】
前記<26>に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法は、前記<4>から<19>及び<25>のいずれかにおいて、焼成の際、ケイ素源及び炭素源に対しハロゲン又はハロゲン化水素1〜5容量%が添加される。このため、得られる炭化ケイ素単結晶においては、不純物元素の量が効果的に低く抑制される。
【0032】
前記<27>に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法は、前記<4>から<19>及び<24>から<26>のいずれかにおいて、焼成の後、加熱による後処理が行われる。このため、不純物元素が除去され、高純度で高品質な炭化ケイ素単結晶が効率よく製造される。
【0033】
前記<28>に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法は、前記<27>において、後処理が2150〜2400℃で行われるので、不純物元素が除去され、高純度で高品質な炭化ケイ素単結晶が効率よく製造される。
【0034】
前記<29>に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法は、前記<27>又は<28>において、後処理がアルゴン雰囲気で3〜8時間行われるので、不純物元素が除去され、高純度で高品質な炭化ケイ素単結晶が効率よく製造される。
【0035】
前記<30>に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法は、前記<1>から<19>及び<24>から<29>のいずれかにおいて、炭化ケイ素粉末の体積平均粒径(D50)が100〜500μmであるので、昇華が効率よく行われ、炭化ケイ素単結晶が効率よく製造される。
【0036】
前記<31>に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法は、前記<1>から<19>及び<24>から<30>のいずれかにおいて、炭化ケイ素粉末の粒度分布(D90/D10)が4以下であるので、昇華が効率よく行われ、炭化ケイ素単結晶が効率よく製造される。
【0037】
前記<32>に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法は、前記<12>から<19>及び<24>から<31>において、前記反応容器内において、再結晶雰囲気の温度が前記昇華雰囲気の温度よりも30〜300℃低い。このため、前記炭化ケイ素単結晶の種結晶上乃至その近傍で容易にかつ円滑に再結晶化が行なわれる。
【0038】
前記<33>に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法は、前記<12>から<19>及び<24>から<32>のいずれかにおいて、前記反応容器が、石英管内に配置された坩堝である。このため、該石英管内の密閉系で前記炭化ケイ素粉末の昇華と再結晶、前記炭化ケイ素単結晶の成長が行われるので、これらの制御が容易である。
【0039】
前記<34>に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法は、前記<12>から<19>及び<24>から<33>のいずれかにおいて、前記他端部における、該反応容器の内周側面部との隣接部の表面が、ガラス状カーボンである。このため、前記他端部における、該反応容器の内周側面部との隣接部は、該隣接部以外の領域よりも再結晶化が起こり難い。その結果、前記他端部における、前記隣接部では炭化ケイ素の結晶が成長せず、該隣接部以外の領域でのみ選択的に炭化ケイ素単結晶が再結晶化し成長する。
【0040】
前記<35>に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法は、前記<12>から<19>及び<24>から<34>のいずれかにおいて、前記第一加熱手段と前記第二加熱手段との間に、誘導電流を通電可能であり、該誘導電流を通電することにより該第一加熱手段と該第二加熱手段との間における干渉を防止する干渉防止手段が配置される。このため、前記第一加熱手段及び前記第二加熱手段による誘導加熱を同時に行った際に、該干渉防止手段に誘導電流が流れ、該干渉防止手段が両者間における干渉を極小化し防止する。
【0041】
前記<36>に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法は、前記<35>において、前記干渉防止手段が、冷却可能なコイルである。該コイルに誘導電流が流れ加熱されたとしても該コイルは冷却されるので、該コイルが前記反応容器を加熱することがない。このため、前記反応容器の温度制御が容易である。
【0042】
前記<37>に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法は、前記<12>から<19>及び<24>から<36>のいずれかにおいて、前記一端部が下端部であり、前記他端部が上端部である。このため、前記炭化ケイ素粉末が前記反応容器内の下方に収容され、該炭化ケイ素粉末の昇華が円滑に行われ、また、前記炭化ケイ素単結晶は、下方に向かって、即ち重力方向に向かって余分な負荷がかからない状態で成長する。
【0043】
前記<38>に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法は、前記<12>から<19>及び<24>から<37>のいずれかにおいて、前記炭化ケイ素単結晶の成長が行われる領域と、該領域の外周に位置し前記反応容器の内周側面部と隣接する領域とが、別の部材で形成されており、かつ該炭化ケイ素単結晶の成長が行われる領域を形成する部材における、一端が反応容器の内部に露出し、他端が反応容器の外部に露出している。前記炭化ケイ素単結晶の成長が行われる領域(内側領域)と、該領域の外周に位置し前記反応容器の内周側面部と隣接する領域(外側領域)とが、別の部材で形成されているので、前記第二加熱手段により加熱を行った場合には、該第二加熱手段側に位置する前記外側領域は容易に加熱されるものの、前記内側領域は、該外側領域との接触抵抗の差により容易に加熱されることはない。このため、前記第二加熱手段で加熱を行ったとしても、前記外側領域と前記内側領域との間で温度差が生じ、前記内側領域の方が前記外側領域よりも加熱され難いため、温度が低く維持され、前記炭化ケイ素の再結晶が容易に行われる。また、前記内側領域を形成する部材における前記反応容器の内部と反対側が、該反応容器の外部に露出し、該反応容器外部に熱を放熱し易いため、前記第二加熱手段により加熱を行った場合、前記内側領域は前記外側領域に比べて加熱され難く、前記外側領域と前記内側領域との間で温度差が生じ、前記内側領域の方が前記外側領域よりも温度が低く維持され、前記炭化ケイ素の再結晶が容易に行われる。その結果、前記外側領域では炭化ケイ素単結晶が成長し難く、該内側領域でのみ選択的に炭化ケイ素単結晶が再結晶化し成長する。
【0044】
【発明の実施の形態】
(炭化ケイ素単結晶の製造方法)
本発明の炭化ケイ素単結晶の製造方法においては、窒素含有量が100質量ppm以下であり、元素周期律表における13族元素を除く不純物元素の各含有量が0.1質量ppm以下であり、かつ元素周期律表における13族元素の総含有量が窒素含有量(原子ppm)以上である炭化ケイ素粉末、又は、窒素含有量が0.1質量ppm以下あり、かつ元素周期律表における13族元素の総含有量が窒素含有量(原子ppm)以上である炭化ケイ素粉末を昇華させてから再結晶させて炭化ケイ素単結晶を成長させる。
【0045】
−炭化ケイ素粉末−
前記炭化ケイ素粉末としては、窒素含有量が100質量ppm以下であり、元素周期律表における13族元素を除く不純物元素の各含有量が0.1質量ppm以下であり、かつ元素周期律表における13族元素の総含有量が窒素含有量(原子ppm)以上である炭化ケイ素粉末、又は、窒素含有量が0.1質量ppm以下あり、かつ元素周期律表における13族元素の総含有量が窒素含有量(原子ppm)以上である炭化ケイ素粉末が挙げられる。
【0046】
前記炭化ケイ素粉末の窒素含有量としては、100質量ppm以下である必要があり、50質量ppm以下であるのが好ましく、40質量ppm以下であるのがより好ましく、0.1質量ppm以下であるのが特に好ましい。
前記窒素含有量が100質量ppm以下、50質量ppm以下及び40ppm以下である場合、更に前記13族元素を除く前記不純物元素の各含有量が0.1ppm以下であることが必要であり、この場合、前記13族元素の総含有量が後述の範囲内であれば、製造された炭化ケイ素単結晶においては、ドナーとして働く窒素原子とアクセプターとして働く13族元素の原子との間での補償が効果的に抑制されるので、p型半導体等として好適に利用可能な炭化ケイ素単結晶が得られ、一方、前記窒素含有量が0.1質量ppm以下である場合には、前記13族元素を除く前記不純物元素の各含有量が0.1質量ppm以下でなくとも、前記13族元素の総含有量が後述の範囲内である限り、製造された炭化ケイ素単結晶においては、ドナーとして働く窒素原子とアクセプターとして働く13族元素の原子との間での補償が効果的に抑制されるので、p型半導体等として好適に利用可能な炭化ケイ素単結晶が得られる。
【0047】
なお、前記窒素含有量は、例えば、酸素窒素同時分析装置、二次イオン質量分析装置、フォトルミネッセンス測定装置等を用いて測定することができる。
【0048】
ここで、前記不純物元素とは、1989年IUPAC無機化学命名法改訂版の周期律表における1族から17族に属しかつ原子番号3以上(但し原子番号6〜8及び同14を除く)である元素をいう(以下同じ)。
【0049】
前記炭化ケイ素粉末における前記元素周期律表における13族元素の総含有量としては、得られた炭化ケイ素単結晶の用途、目的等に応じて適宜選択することができるが、前記窒素含有量(原子ppm)以上であることが必要である。
前記元素周期律表における13族元素の総含有量が前記窒素含有量(質量ppm)以上であると、得られる炭化ケイ素単結晶がp型半導体として好適に使用することができる点で有利である。
【0050】
前記13族元素としては、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)が挙げられる。これらは前記炭化ケイ素粉末において、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。これらの中でも、活性化され易い点でアルミニウム(Al)が特に好ましい。本発明においては、前記炭化ケイ素粉末中に前記13族元素としてアルミニウム(Al)のみが含まれているのが特に好ましい。
【0051】
前記13族元素を前記炭化ケイ素粉末中に含有させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記13族元素の金属単体(例えばアルミニウム粉末など)、前記13族元素を含有する化合物(例えば、アルミナ等の酸化物、水酸化アルミニウム等の水酸化物、塩化アルミニウム等の塩化物、エチルアルミナート等の有機物などが挙げられ、これらの中でも純度の観点からはエチルアルミナート等の有機物や水酸化アルミニウム等の塩化物が好ましい(B、Ga当についても同様)。)を用い、これらを該炭化ケイ素粉末の製造プロセス中に適宜、微量添加する方法などが挙げられる。なお、このとき、得られる炭化ケイ素粉末における前記窒素含有量及び前記不純物元素の各含有量が前記数値範囲内になるようにすることが必要である。
【0052】
前記炭化ケイ素粉末としては、4H、6H、15R、3C、これらの混合物等のいずれであってもよい。なお、前記3Cの炭化ケイ素粉末のグレードとしては、特に制限はなく、一般に市販されているものでもよいが、高純度のものであることが好ましい。
【0053】
前記炭化ケイ素粉末の体積平均粒径(D50)としては、0.5〜800μmが好ましく、50〜400μmがより好ましい。
前記体積平均粒径(D50)が、0.5〜800μmであると炭化ケイ素単結晶に場合における作業性に優れ、充填時のパッキングも良好である点で有利であり、50〜400μmであると、CVD法等で製造された微粉に比べて更に作業性に優れ、充填時のパッキングも更に良好である点で有利である。
【0054】
前記炭化ケイ素粉末の粒度分布(D90/D10)(体積平均粒径基準)としては、該炭化ケイ素粉末の均一性の観点からは4.0以下であるのが好ましく、3.5以下であるのがより好ましい。
【0055】
前記炭化ケイ素粉末としては、昇華速度の安定化の点で、β−SiC(結晶多型としては「3C」のもの)を30質量%以下含有しているのが好ましく(α−SiCを70質量%超含有しているのが好ましく)、10質量%以下含有しているのがより好ましい(α−SiCを90質量%超含有しているのがより好ましい)。
該α−SiC又はβ−SiCであるか否かは、ATSMライブラリーデータにおけるマッチングピーク等から判断することができる。
【0056】
前記炭化ケイ素粉末は、ケイ素源とキシレン系樹脂とを少なくとも含有する混合物を焼成して得られる。
【0057】
−−ケイ素源−−
前記ケイ素源としては、ケイ素化合物が挙げられる。
前記ケイ素化合物としては、液状のものであってもよいし、固体のものであってもよく、これらを併用してもよいが、該液状のものを少なくとも1種使用するのが好ましい。
【0058】
前記液状のものとしては、アルコキシシラン化合物などが好適に挙げられる。
前記アルコキシシラン化合物としては、例えば、アルコキシシラン、アルコキシシランオリゴマー、アルコキシシランポリマーなどが挙げられる。
前記アルコキシシラン、前記アルコキシシランオリゴマー、及び前記アルコキシシランポリマーにおけるアルコキシシラン又はアルコキシシランユニットとしては、モノアルコキシシラン、ジアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、テトラアルコキシシランのいずれであってもよいが、テトラアルコキシシランが好ましい。
【0059】
前記アルコキシシランとしては、例えば、メトキシシラン、エトキシシラン、プロポキシシラン、ブトキシシラン等が挙げられ、これらの中でもハンドリングの点でエトキシシランが好ましい。
【0060】
前記アルコキシシランオリゴマーは、重合度が2〜15程度の低分子量重合体であり、その具体例としては、メトキシシランオリゴマー、エトキシシランオリゴマー、プロポキシシランオリゴマー、ブトキシシランオリゴマー等が挙げられ、これらの中でもハンドリングの点でエトキシシランオリゴマーが好ましい。
【0061】
前記アルコキシシランポリマーは、重合度が15程度を超える高分子量重合体であり、その具体例としては、メトキシシランポリマー、エトキシシランポリマー、プロポキシシランポリマー、ブトキシシランポリマー等が挙げられ、これらの中でもハンドリングの点でエトキシシランポリマーが好ましい。
【0062】
前記固体のものとしては、例えば、SiO、シリカゾル(コロイド状超微細シリカ含有液、内部にOH基やアルコキシル基を含む)、二酸化ケイ素(シリカゲル、微細シリカ、石英粉末)等の酸化ケイ素が挙げられる。
【0063】
本発明において、前記ケイ素化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよいが、該ケイ素化合物の中でも、均質性やハンドリング性が良好な点で、エトキシシランオリゴマー、エトキシシランポリマー、エトキシシランオリゴマーと微粉末シリカとの混合物などが好ましく、エトキシシランダイマー、エトキシシランポリマーなどがより好ましい。
【0064】
前記ケイ素化合物としては、高純度であるのが好ましく、前記不純物元素が20質量ppm以下であるのが好ましく、5質量ppm以下であるのがより好ましい。
【0065】
−−キシレン系樹脂−−
前記キシレン系樹脂は、残炭率が高く、前記不純物元素の含有量が少なく、その合成プロセスにおいて窒素を殆ど含有しない。該キシレン系樹脂は炭素源として用いられる。
前記キシレン系樹脂としては、キシレン単独重合体(以下、単に「キシレン重合体」と略称する)、キシレン共重合体などが挙げられるが、前記不純物元素の混入の観点からはキシレン重合体が好ましく、レゾール型キシレン重合体がより好ましい。
前記キシレン系樹脂は、適宜合成したものであってもよいし、市販品であってもよい。
【0066】
前記キシレン系樹脂としては、オリゴマーであってもよいし、ポリマーであってもよく、その重合度としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記オリゴマーの場合には該重合度が3〜15であるのが好ましく、前記ポリマーの場合には該重合度が15〜1200であるのが好ましい。前記重合度は、例えば、一般的なゲル透過クロマトグラフィー、浸透圧法、GC−MS等により測定することができる。
【0067】
前記キシレン系樹脂としては、高純度であるのが好ましく、前記不純物元素が20質量ppm以下であるのが好ましく、5質量ppm以下であるのがより好ましい。
【0068】
−−混合物−−
前記混合物は、前記ケイ素源と前記キシレン系樹脂とを含有する。
【0069】
前記混合物における前記ケイ素源と前記キシレン系樹脂との量比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、得られた炭化ケイ素粉末中の遊離炭素の量が少なくなるように予め前記ケイ素源と前記キシレン系樹脂との量比を決定しておくのが好ましい。
【0070】
なお、前記遊離炭素の量は、前記混合物における、前記キシレン系樹脂に含まれる炭素と前記ケイ素源に含まれるケイ素との比(以下「C/Si比」と称する)を適宜調節することにより制御することができる。
ここで、前記C/Si比は、次式、C/Si=(前記キシレン系樹脂の量(g)×残炭率/12.011)/0.4×(前記ケイ素源の量(g)/60.0843)、で表される(ただし、前記「キシレン系樹脂の量」は、該キシレン系樹脂が溶液とされている場合には該溶液中に含まれる前記キシレン系樹脂の量を意味し、前記「ケイ素源の量」は、該ケイ素源が溶液である場合には該溶液中に含まれる前記ケイ素源の量を意味する。)。
なお、前記C/Si比は、前記混合物を1000℃にて炭化して得られる炭化物中間体を元素分析することにより測定することができる。
化学量論的には、前記C/Si比が3.0の時に得られた炭化ケイ素粉末中の前記遊離炭素が0%となるが、実際には、同時に生成するSiOガスの揮散により前記C/Si比が小さな値である場合でも前記遊離炭素は発生することがある。
【0071】
前記混合物の調製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ケイ素源に酸を添加した後、前記キシレン系樹脂を添加する方法が特に好ましい。この場合、該ケイ素源と該キシレン系樹脂とを均一に混合することができ、相分離状態を生ずることがない点で有利である。
前記混合物の調製方法として、前記ケイ素源に酸を添加した後、前記キシレン系樹脂を添加する方法以外の方法を採用する場合、該ケイ素源と該キシレン系樹脂とを均一に混合することができず相分離状態が生ずることがあるが、この場合、加熱を行うと、該相分離状態の混合物を均一な混合物にすることができる。
【0072】
前記混合物は、通常、ハロゲン化合物が添加されることなく調製されるが、超高純度の炭化ケイ素粉末を得る場合には、該混合物に対しハロゲン化合物が0.5〜5質量%添加されて調製されてもよい。
前記混合物に前記ハロゲン化合物を添加すると、該混合物に混入した前記不純物元素がハロゲン化されて次の焼成により気化し飛散することにより効果的に除去されるため、超高純度の炭化ケイ素粉末が得られる。具体的には、前記ハロゲン化合物を添加することにより、得られる炭化ケイ素粉末における前記不純物元素それぞれの含有量を0.1質量ppm以下にすることができる。
前記ハロゲン化合物を添加した場合、前記混合物を、添加した該ハロゲン化合物の分解温度近傍で10〜30分間反応させ、次の焼成の温度まで昇温するのが、前記不純物元素の除去の観点からは好ましい。
【0073】
前記ハロゲン化合物は、前記混合物が液状である場合、塩化アンモニウム、塩酸水溶液等の液状ハロゲン化合物が該混合物に添加されるのが好ましく、前記混合物が固体状である場合(前記キシレン系樹脂として、熱可塑性キシレン系樹脂等を含有し、前記ケイ素源として固体状のものを含有する場合)、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、ポリクロロプレン等のハロゲン含有ポリマー等の固体状ハロゲン化合物が該混合物に添加されるのが好ましい。
【0074】
なお、前記混合物は、固体状であってもよいし、液状であってもよいが、液状である場合には、前記焼成の前に硬化させて固体状にしてもよい。
前記硬化の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、加熱により架橋する方法、硬化触媒により硬化する方法、電子線や放射線による方法などが挙げられる。
【0075】
前記加熱は、50℃以上程度の温度で1時間以上程度の時間行われる。
前記硬化触媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トルエンスルホン酸、トルエンカルボン酸、酢酸、しゅう酸、塩酸、硫酸等の酸類、などが挙げられる。
【0076】
前記混合物は、前記焼成の前に、非酸化性雰囲気下で500〜1000℃にて加熱されるのが好ましく、非酸化性雰囲気下、500〜600℃で10〜30分間加熱した後、非酸化性雰囲気下、800〜1000℃で30分間〜2時間加熱されるのがより好ましい。
前記非酸化性雰囲気としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、これらの中でもアルゴンが好ましい。
【0077】
−−焼成−−
前記焼成は、その方法、条件等については特に制限はなく、得ようとする炭化ケイ素粉末の粒径等に応じて適宜選択することができるが、炭化ケイ素粉末のより効率的な製造の観点からは、前記混合物を、非酸化性雰囲気下、100〜1000℃/hで1300〜1600℃まで昇温し、その後50〜300℃/hで1800〜2100℃まで昇温後、1800〜2100℃で240分以内保持することで行うのが好ましい。
【0078】
前記焼成の際、前記混合物を収容する反応容器内に前記不活性ガスを導入するのが好ましい。この場合、前記焼成の際に発生する、前記不純物元素を含むSiOガスやCOガス等を該反応容器外へ排出乃至除去することができる点で有利である。
【0079】
前記焼成の際、前記ケイ素源及び前記キシレン系樹脂に対し、1〜5容積%のハロゲン又はハロゲン化水素が添加されるのが、得られる炭化ケイ素粉末に含まれる前記不純物元素の量を抑制することができる点で好ましい。
【0080】
前記焼成の際における前記C/Si比としては、該焼成の際の圧力により変動し得るので一概に規定することはできないが、前記遊離炭素の発生を効果的に抑制することができる点で、1.85以下であるのが好ましく、1.55以下であるのがより好ましい。
【0081】
−−その他の処理−−
その他の処理としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、以下の後処理などが好適に挙げられる。
【0082】
前記後処理としては、前記焼成の後、2000℃以上で行われるのが好ましく、2100℃以上で行われるのがより好ましく、2150〜2400℃で行われるのが特に好ましい。
前記後処理の時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、通常5分以上であり、3〜8時間程度が好ましく、4〜6時間程度がより好ましい。
前記後処理は、前記非酸化性雰囲気下で行われるのが好ましく、該非酸化性雰囲気の中でも、高温でも非反応性である点でアルゴン雰囲気が好ましい。
前記後処理により、前記不純物元素が除去され、高純度であり、粒径が大きく、粒度分布が狭く、高品質な炭化ケイ素粉末が得られる点で有利である。
【0083】
前記炭化ケイ素粉末の製造に用いる装置等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記炭化ケイ素粉末の製造は、連続処理の態様で実施してもよいし、バッチ処理の態様で実施してもよい。また、前記焼成と前記後処理とは、1つの加熱炉内で連続処理的に行われてもよいし、別々の加熱炉内でバッチ処理的に行われてもよい。
【0084】
なお、前記炭化ケイ素粉末は、上述の通りであるが、本発明においては、前記炭化ケイ素粉末に代えて、該炭化ケイ素粉末と該炭化ケイ素粉末の焼結体との混合物、又は、該炭化ケイ素粉末の焼結体を使用してもよい。
【0085】
前記炭化ケイ素粉末の昇華及び再結晶は、反応容器内で行うことができる。
前記反応容器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、内部に前記炭化ケイ素粉末を収容することができ、該炭化ケイ素粉末に略対向する位置に前記炭化ケイ素単結晶の種結晶を配置可能な端部を有していることが好ましい。
前記端部の形状としては、特に制限はないが、例えば、略平面形状であるのが好ましい。
【0086】
前記炭化ケイ素粉末が収容される部位としては特に制限はないが、前記炭化ケイ素単結晶の種結晶を配置可能な端部に略対向する端部であるのが好ましい。この場合、前記反応容器の内部は筒形状となるが、該筒形状の軸としては、直線状であってもよいし、曲線状であってもよく、該筒形状の軸方向に垂直な断面形状としては、円形であってもよいし、多角形であってもよい。該円形状の好ましい例としては、その軸が直線状であり、かつ該軸方向に垂直な断面形状が円形であるものが好適に挙げられる。
前記反応容器の内部に2つの端部が存在する場合、一端部側に前記炭化ケイ素粉末が収容され、他端部側に前記炭化ケイ素単結晶の種結晶が配置される。以下、前記一端部を「炭化ケイ素粉末収容部」と称することがあり、前記他端部を「種結晶配置部」と称することがある。
前記一端部(炭化ケイ素粉末収容部)の形状としては、特に制限はなく、平面形状であってもよいし、均熱化を促すための構造(例えば凸部等)を適宜設けてもよい。
【0087】
前記反応容器においては、前記他端部(種結晶配置部)側が着脱可能に設計されているのが好ましい。この場合、該他端部(種結晶配置部)を脱離するだけで、成長した炭化ケイ素単結晶を容易に該反応容器から分離することができる点で有利である。
このような反応容器としては、例えば、炭化ケイ素粉末を収容可能な容器本体と、該容器本体に対し着脱可能であり、該容器本体に装着された際に該容器本体内に収容された前記炭化ケイ素粉末に対向する面の略中央に炭化ケイ素単結晶の種結晶を配置可能な蓋体とを備えた反応容器などが好適に挙げられる。
【0088】
前記一端部(炭化ケイ素粉末収容部)と前記他端部(種結晶配置部)との位置関係としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記一端部(炭化ケイ素粉末収容部)が下端部であり、前記他端部(種結晶配置部)が上端部である態様、即ち、該一端部(炭化ケイ素粉末収容部)と該他端部(種結晶配置部)とが重力方向に位置しているのが好ましい。この場合、前記炭化ケイ素粉末の昇華が円滑に行われ、また、前記炭化ケイ素単結晶の成長が、下方に向かって、即ち重力方向に向かって余分な負荷がかからない状態で行われる点で好ましい。
【0089】
なお、前記一端部(炭化ケイ素粉末収容部)側には、例えば、前記炭化ケイ素粉末の昇華を効率よく行う目的で、伝熱性に優れた材料で形成した部材を配置してもよい。
該部材としては、例えば、外周が前記反応容器内の周側面部と密接可能であり、内部が、前記他端部(種結晶配置部)に近づくにつれてその径が漸次増加するような逆錐形状乃至逆錐台形状である部材、などが好適に挙げられる。
【0090】
なお、前記反応容器の外部に露出する部分には、目的に応じて、ねじ切り、測温用凹部等が設けられていてもよく、該測温用凹部は、前記一端部側及び前記他端部側の少なくとも一方の部分に設けられているのが好ましい。
【0091】
前記反応容器の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、耐久性、耐熱性、伝熱性等に優れた材料で形成されているのが好ましく、これらに加えて更に不純物の発生による多結晶や多型の混入等が少なく、前記炭化ケイ素粉末の昇華と再結晶の制御が容易である等の点で黒鉛製であるのが特に好ましい。
【0092】
前記反応容器は、単独の部材で形成されていてもよいし、2以上の部材で形成されていてもよく、目的に応じて適宜選択することができるが、2以上の部材で形成されている場合としては、前記他端部(種結晶配置部)が2以上の部材で形成されているのが好ましく、前記他端部(種結晶配置部)の中心部とその外周部とが別の部材で形成されているのが、温度差乃至温度勾配を形成できる点でより好ましく、具体的には、該中心部としての、炭化ケイ素単結晶の成長が行われる領域(内側領域)と、該外周部としての、前記内側領域の外周に位置し反応容器の内周側面部と隣接する領域(外側領域)とが別の部材で形成され、かつ該内側領域を形成する部材における、一端が反応容器の内部に露出し、他端が反応容器の外部に露出しているのが特に好ましい。
【0093】
この場合、前記他端部(種結晶配置部)をその外側から加熱した場合、前記外側領域は容易に加熱されるものの、前記内側領域は、該外側領域との接触抵抗により加熱され難くなるため、前記外側領域と前記内側領域との間で温度差が生じ、該内側領域の方が該外側領域よりも若干温度が低く維持されるため、該内側領域の方が該外側領域よりも炭化ケイ素が再結晶し易くすることができる。更に、前記内側領域を形成する部材における前記他端が前記反応容器の外部に露出しているので、該内側領域は前記反応容器の外部に熱を放熱し易いため、該内側領域の方が該外側領域よりも炭化ケイ素が再結晶を生じ易くさせることができる。
【0094】
なお、前記内側領域を形成する部材における前記他端が前記反応容器の外部に露出している態様としては、特に制限はなく、該内側領域を底面とし前記反応容器の外部に向けて連続的又は不連続的にその径が変化する(大きくなる又は小さくなる)形状などが挙げられる。
このような形状としては、具体的には、前記内側領域を底面とする柱形状(円柱状、角柱状等が挙げられ、円柱状が好ましい)、前記内側領域を底面とする錐台形状(円錐台状、角錐台状、逆円錐台状、逆角錐台状等が挙げられ、逆円錐台状が好ましい)などが挙げられる。
【0095】
前記反応容器は、前記他端部(種結晶配置部)における、前記炭化ケイ素単結晶の成長が行われる領域(内側領域)の外周に位置し反応容器の内周側面部と隣接する領域(外側領域)の表面が、ガラス状カーボン乃至アモルファスカーボンであるのが好ましい。この場合、前記外側領域の方が前記内側領域よりも再結晶化が起こり難い点で好ましい。
【0096】
前記反応容器は、断熱材等で囲まれているのが好ましい。この場合、前記反応容器における前記一端部(炭化ケイ素粉末収容部)及び前記他端部(種結晶配置部)の略中央は、測温用窓を形成する目的で、前記断熱材等が設けられていないのが好ましい。また、前記一端部(炭化ケイ素粉末収容部)の略中央に前記測温用窓が設けられている場合には、前記断熱材粉等の落下を防ぐための黒鉛製カバー部材等が更に設けられているのが好ましい。
【0097】
前記反応容器は、石英管内に配置されるのが好ましい。この場合、前記炭化ケイ素粉末の昇華及び再結晶化のための加熱エネルギーの損失が少ない点で好ましい。
なお、前記石英管は高純度品が入手可能であり、高純度品を用いると金属不純物の混入が少ない点で有利である。
【0098】
−昇華−
前記炭化ケイ素粉末の昇華は、再結晶化を行うのに必要な加熱を行うための加熱手段と同じ加熱手段を用いて行ってもよいが、別個の加熱手段を用いて行うのが加熱手段の精密制御、独立制御、干渉防止等の点で好ましい。このような態様の場合、加熱手段の数は、2以上となるが、本発明においては2つが好ましい。
前記加熱手段が2つの好ましい態様の場合、前記炭化ケイ素粉末を昇華可能とする昇華雰囲気を形成するための加熱手段が第一加熱手段であり、昇華された炭化ケイ素が前記炭化ケイ素単結晶の種結晶近傍でのみ再結晶可能とする前記再結晶雰囲気を形成するための加熱手段が第二加熱手段である。
【0099】
前記第一加熱手段は、前記反応容器の一端部(炭化ケイ素粉末収容部)側に配置され、前記炭化ケイ素粉末が昇華可能となるように昇華雰囲気を形成し、前記炭化ケイ素粉末を加熱して昇華させる。
前記第一加熱手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、誘導加熱手段、抵抗加熱手段などが挙げられるが、温度制御が容易な点で誘導加熱手段が好ましく、該誘導加熱手段の中でも、誘導加熱可能なコイルであるのが好ましい。
【0100】
前記第一加熱手段が誘導加熱可能なコイルである場合、その環巻された巻数としては、特に制限はなく、前記第二加熱手段との距離、前記反応容器の材料等により加熱効率や温度効率が最適となるように決定することができる。
【0101】
−炭化ケイ素単結晶の成長−
前記炭化ケイ素単結晶の成長は、前記反応容器の前記他端部(種結晶配置部)に配置された炭化ケイ素単結晶の種結晶上で行われる。
前記炭化ケイ素単結晶の種結晶としては、その結晶の多型、大きさ等については、目的に応じて適宜選択することができるが、前記結晶の多型としては、通常、得ようとする炭化ケイ素単結晶の多型と同じ多型が選択される。
【0102】
前記炭化ケイ素単結晶を前記種結晶上に再結晶化し、成長させるには、前記炭化ケイ素粉末が昇華する温度よりも低い温度にし、昇華した前記炭化ケイ素粉末が前記種結晶近傍でのみ再結晶可能となるような再結晶雰囲気(換言すれば、前記種結晶が配置される面の径方向において、中心部(内側領域の中心)に近づくほど温度が低くなるような温度分布となる雰囲気)を形成するのが好ましい。
【0103】
前記再結晶雰囲気の形成は、前記第二加熱手段により好適に行うことができる。このような第二加熱手段は、前記反応容器の他端部(種結晶配置部)側に配置され、前記第一加熱手段により昇華された前記炭化ケイ素粉末が炭化ケイ素単結晶の種結晶近傍でのみ再結晶可能となるように再結晶雰囲気を形成し、該炭化ケイ素粉末を前記炭化ケイ素単結晶の種結晶上に再結晶させる。
【0104】
前記第二加熱手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、誘導加熱手段、抵抗加熱手段などが挙げられるが、温度制御が容易な点で誘導加熱手段が好ましく、該誘導加熱手段の中でも、誘導加熱可能なコイルであるのが好ましい。
【0105】
前記第二加熱手段が誘導加熱可能なコイルである場合、その環巻された巻数としては、特に制限はなく、前記第一加熱手段との距離、前記反応容器の材料等により加熱効率や温度効率が最適となるように決定することができる。
【0106】
前記第二加熱手段に通電する誘導加熱電流の量は、前記第一加熱手段に通電する誘導加熱電流の量との関係で適宜決定することができ、両者の関係としては、前記第一加熱手段における誘導加熱電流の電流値が、前記第二加熱手段における誘導加熱電流の電流値よりも大きくなるように設定するのが好ましい。この場合、前記炭化ケイ素粉末が昇華する雰囲気の温度よりも前記種結晶上近傍での再結晶雰囲気の温度の方が低く維持され、再結晶化が容易に行われる点で有利である。
【0107】
また、前記第二加熱手段における誘導加熱電流の電流値としては、成長する炭化ケイ素単結晶の径が大きくなるにつれて、連続的又は段階的に小さくなるように制御するのが好ましい。この場合、前記炭化ケイ素単結晶が成長するにつれて前記第二加熱手段による加熱量が小さく制御されるので、成長を続ける前記炭化ケイ素単結晶の近傍でしか再結晶が行われず、該炭化ケイ素単結晶の周囲に多結晶が生ずることが効果的に抑制される点で有利である。
【0108】
なお、前記第二加熱手段における誘導加熱電流の電流値としては、前記炭化ケイ素単結晶の種結晶の径が大きい場合には小さくなるように制御し、該径が小さい場合には大きくなるように制御するのが好ましい傾向がある。
【0109】
本発明においては、前記第二加熱手段は、前記第一加熱手段とは独立にその制御を行うことができるので、炭化ケイ素単結晶の成長速度に応じて、該第二加熱手段の加熱量を適宜調節することにより、炭化ケイ素単結晶の全成長過程を通して好ましい成長速度を維持することができる。
【0110】
前記第二加熱手段により形成される再結晶雰囲気の温度としては、前記第一加熱手段により形成される前記昇華雰囲気の温度よりも、30〜300℃低いのが好ましく、30〜150℃低いのがより好ましい。
【0111】
前記第二加熱手段により形成される再結晶雰囲気の圧力としては、10〜100Torr(1330〜13300Pa)が好ましい。なお、この圧力条件にする場合には、低温においては減圧にせず、設定温度にまで加熱をしてから減圧を行い、前記所定の数値範囲内になるように圧力条件を調整するのが好ましい。
また、前記再結晶雰囲気は、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気にしておくのが好ましい。
【0112】
本発明においては、前記第一加熱手段により制御される、前記反応容器内の、炭化ケイ素粉末を収容した一端部(昇華原料収容部)側の温度と、前記第二加熱手段により制御される、前記反応容器内の、前記炭化ケイ素単結晶の種結晶を配置した他端部(種結晶配置部)側における中心部の温度及び該中心部の外側に位置し反応容器の内周側面部との隣接部の温度とを、以下のような関係で制御するのが、大径の炭化ケイ素単結晶を得る観点からは好ましい。即ち、炭化ケイ素粉末を収容した一端部側の温度をT1とし、炭化ケイ素単結晶の種結晶を配置した他端部側の温度をT2とし、該他端部側における、反応容器の内周側面部との隣接部の温度をT3とした時、T3−T2及びT1−T2が連続的又は段階的に大きくなるように制御するのが好ましい。
【0113】
この場合、T1−T2が連続的又は段階的に大きくなるので、経時的に、炭化ケイ素単結晶が前記一端部側に向かって成長を続けても、該炭化ケイ素単結晶の結晶成長先端側は常に再結晶が起こり易い状態に維持される。一方、T3−T2が連続的又は段階的に大きくなるので、経時的に、炭化ケイ素単結晶が前記他端部側における外周方向に向かって成長を続けても、該炭化ケイ素単結晶の結晶成長外周端側は常に再結晶が起こり易い状態に維持される。その結果、炭化ケイ素多結晶の生成が効果的に抑制され、該炭化ケイ素単結晶は、その径を拡大しながらその厚みを増す方向に成長を続け、最終的には、炭化ケイ素多結晶等の混入がなく、大径の炭化ケイ素単結晶が得られる点で有利である。
【0114】
本発明においては、前記炭化ケイ素単結晶は、第一の態様から第三の態様により再結晶し成長するのが好ましい。
【0115】
前記第一の態様においては、前記炭化ケイ素単結晶を、その全成長過程を通して、その成長面の全面を凸形状に保持したまま成長させる。この場合、前記炭化ケイ素単結晶の成長面の全面において、前記他端部(種結晶配置部)側に陥没した凹部が輪状に形成されることがない。
【0116】
前記第二の態様においては、前記炭化ケイ素単結晶の成長が、前記反応容器の前記端部における、該反応容器内の周側面部との隣接部を除く領域(内側領域)でのみ行われる。この場合、炭化ケイ素多結晶が、前記他端部(種結晶配置部)における、該反応容器内の周側面部に、接触した状態で成長することがない。このため、成長した炭化ケイ素単結晶を室温まで冷却した際に、炭化ケイ素多結晶側から炭化ケイ素単結晶側に熱膨張差に基づく応力が集中して印加されることがなく、得られる炭化ケイ素単結晶に割れ等の破損が生じてしまうことがない。
【0117】
前記第三の態様においては、前記炭化ケイ素単結晶を、その全成長過程を通して、その成長面の全面を凸形状に保持したまま、かつ前記反応容器の前記端部における、該反応容器内の周側面部との隣接部を除く領域(内側領域)でのみ行われる。
この場合、前記炭化ケイ素単結晶の成長面の全面において、前記反応容器の前記他端部(種結晶配置部)側に陥没した凹部が輪状に形成されることがなく、また、炭化ケイ素多結晶が、前記他端部(種結晶配置部)における、該反応容器内の周側面部に、接触した状態で成長することがない。このため、成長した炭化ケイ素単結晶を室温まで冷却した際に、炭化ケイ素多結晶側から炭化ケイ素単結晶側に熱膨張差に基づく応力が集中して印加されることがなく、得られる炭化ケイ素単結晶に割れ等の破損が生じてしまうことがない。
【0118】
成長する前記炭化ケイ素単結晶の形状としては、その成長面の全面がその成長方向側に凸形状であるのが好ましく、前記一端部(炭化ケイ素粉末収容部)と前記他端部(種結晶配置部)とが対向している場合には、前記炭化ケイ素粉末側、即ち前記一端部(炭化ケイ素粉末収容部)側に向かってその成長面の全面が凸形状であるのが好ましい。
この場合、多結晶や多型の混入が多く、熱膨張差による応力が集中し易いと考えられるところの、前記他端部(種結晶配置部)側に陥没した凹部が存在しない点で好ましい。
【0119】
なお、成長する前記炭化ケイ素単結晶の形状としては、その成長面の全面がその成長方向側と反対側に凹形状となっている部分を含まない限り、前記凸形状となっていなくても平坦な個所が一部に含まれていてもよい。
【0120】
また、炭化ケイ素単結晶を含む炭化ケイ素の結晶の形状としては、前記炭化ケイ素粉末側、即ち前記一端部側に向かって略山形であるのが好ましく、その径が漸次小さくなる略山形であるのがより好ましい。
なお、前記略山形である炭化ケイ素の結晶における裾野部分、即ち外周部分においては、炭化ケイ素多結晶や多型が混入することがあるが、この混入は、前記種結晶の厚み、大きさ、形状等と、前記第二加熱手段による加熱量との条件の組み合わせにより、その発生を防止することができる。該炭化ケイ素多結晶や多型の混入を防止すると、前記炭化ケイ素を含む炭化ケイ素の結晶が、炭化ケイ素単結晶のみからなるものとすることができるので好ましい。
【0121】
なお、本発明においては、前記反応容器内の周側面部にリング状の板部材を前記他端部(種結晶配置部)と略平行に固定配置してもよい。この場合、前記炭化ケイ素単結晶を前記種結晶上に再結晶し成長させる際、前記種結晶上には前記炭化ケイ素単結晶のみを再結晶し成長させることができ、炭化ケイ素多結晶を発生させないか、あるいは前記リング状の板部材上に選択的に析出させることができる。なお、この場合、得られる炭化ケイ素単結晶の径は、前記リング状の板部材の分だけ制約を受ける。
【0122】
本発明においては、前記炭化ケイ素単結晶の効率的な成長を行う目的で、前記第一加熱手段と前記第二加熱手段との間の干渉を防止するための干渉防止手段を用いることが好ましい。
【0123】
前記干渉防止手段としては、特に制限はなく、前記第一加熱手段及び前記第二加熱手段の種類等に応じて適宜選択することができるが、例えば、干渉防止コイル、干渉防止板などが挙げられ、前記第一加熱手段及び前記第二加熱手段が前記誘導加熱可能なコイルである場合には、干渉防止コイルなどが好適に挙げられる。
【0124】
前記干渉防止コイル(単に「コイル」と称することがある)は、誘導電流を通電可能であり、誘導電流を通電することにより、該第一加熱手段と該第二加熱手段との間における干渉を防止する機能を有するものが好ましい。
【0125】
前記干渉防止コイルは、前記第一加熱手段と前記第二加熱手段との間に配置されるのが好ましい。この場合、前記第一加熱手段及び前記第二加熱手段による誘導加熱を同時に行った際に、該干渉防止コイルに誘導電流が流れ、該干渉防止コイルが両者間における干渉を極小化し防止することができる点で好ましい。
【0126】
前記干渉防止コイルは、それ自身に流れる誘導電流により加熱されないように設計するのが好ましく、それ自身冷却可能であるのがより好ましく、水等の冷却媒体を流通可能なのが特に好ましい。この場合、該干渉防止コイルに前記第一加熱手段及び前記第二加熱手段における誘導電流が流れたとしても、該干渉防止コイルが加熱されることがなく、このため前記反応容器を加熱することもない点で好ましい。
【0127】
前記干渉防止コイルの環巻された巻数としては、特に制限はなく、前記第一加熱手段及び前記第二加熱手段の種類、これらに通電される電流の量等により異なり一概に規定することはできないが、一重程度であっても十分である。
【0128】
以上、本発明の炭化ケイ素単結晶の製造方法によると、窒素含有量が低く、高品質であり、半絶縁体乃至絶縁体であり、p型半導体等として好適な炭化ケイ素単結晶を効率よく製造することができる。
【0129】
(炭化ケイ素単結晶)
本発明の炭化ケイ素単結晶は、前記本発明の炭化ケイ素単結晶の製造方法により製造される。
【0130】
本発明の炭化ケイ素単結晶は、非破壊で光学的に画像検出した結晶欠陥(パイプ欠陥)が100個/cm2以下であるのが好ましく、50個/cm2以下であるのがより好ましく、10個/cm2以下であるのが特に好ましい。
前記結晶欠陥は、例えば、以下のようにして検出することができる。即ち、該炭化ケイ素単結晶に対し、反射照明に適当量の透過照明を加えた照明を当て、該炭化ケイ素単結晶の表面の結晶欠陥(パイプ欠陥)の開口部に顕微鏡焦点を合わせた際に、該パイプ欠陥の内部へと続く部分が該開口部の像よりも弱い影として該開口部につながって観察することができる条件下で、該炭化ケイ素単結晶の全面を走査して顕微鏡画像を得た後、該顕微鏡画像を画像処理することにより、該パイプ欠陥に特長的な形状のみを抽出してその数を計測することにより、該パイプ欠陥を検出することができる。
【0131】
なお、上記の検出によると、前記炭化ケイ素単結晶の表面に付着した異物や研磨傷、空隙欠陥などの前記パイプ欠陥以外の欠陥が混在する中から、前記パイプ欠陥のみを非破壊で正確に検出することができ、しかも、例えば0.35μm程度の微小な前記パイプ欠陥までも正確に検出することができる。一方、従来から、溶融アルカリにより前記パイプ欠陥部分を選択的にエッチングし、拡大して検出する方法が行われているが、この方法の場合には、隣接する前記パイプ欠陥同士がエッチングにより互いに合一し、結果として前記パイプ欠陥の数が少なく検出されてしまうという問題がある。
【0132】
本発明の炭化ケイ素単結晶の体積抵抗値としては、1×101Ω・cm以下であるのが好ましく、1×100Ω・cm以下であるのがより好ましい。
前記体積抵抗値が前記範囲内であると、該炭化ケイ素単結晶がp型半導体等として好適である点で有利である。
【0133】
前記炭化ケイ素単結晶の窒素含有量としては、0.1質量ppm以下であるのが好ましく、0.01質量ppm以下であるのがより好ましい。
前記窒素含有量が前記数値範囲内であると、該炭化ケイ素単結晶はp型半導体として特に好適である点で有利である。
なお、前記窒素含有量は、例えば、二次イオン質量分析装置、フォトルミネッセンス測定装置等を用いて測定することができる。
【0134】
前記炭化ケイ素単結晶における前記不純物元素の総含有量としては、10質量ppm以下であるのが好ましい。
【0135】
本発明の炭化ケイ素単結晶は、窒素含有量が低く、高品質であり、半絶縁体乃至絶縁体であり、p型半導体等として特に好適に使用することができる。
【0136】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0137】
(実施例1)
図1に示す炭化ケイ素単結晶の製造装置1を用いて炭化ケイ素単結晶を製造した。炭化ケイ素単結晶の製造装置1は、炭化ケイ素粉末40を収容可能な容器本体12、及び容器本体12に対し螺合により着脱可能であり、容器本体12に装着された際に容器本体12内に収容された炭化ケイ素粉末40に対向する面の略中央に炭化ケイ素単結晶の種結晶50を配置可能な蓋体11を備えた黒鉛製坩堝10と、黒鉛製坩堝10を石英管30の内部に固定させる支持棒31と、石英管30の外周であって黒鉛製坩堝10における炭化ケイ素粉末40が収容された部分に配置された第一誘導加熱コイル21と、石英管30の外周であって黒鉛製坩堝10における蓋体11が位置する部分に配置された第二誘導加熱コイル20とを備える。なお、黒鉛製坩堝10は、断熱材(図示せず)で覆われている。
【0138】
炭化ケイ素粉末40は、以下のようにして調製した。即ち、SiO2含有量40質量%の高純度テトラエトキシシラン212gに対し、触媒として高純度マレイン酸34gを加えた後、50質量%高純度液体のレゾール型キシレン樹脂(三菱ガス化学(株)製、ニカノールPR−1440M)127gと、エチルアルミナート(アルドリッチ社製)136gとを混合すると、高粘度の飴状混合物が得られた。この飴状混合物を70℃で熱硬化させて、均質な樹脂状固形物を得た。この樹脂状固形物300gを真空下、900℃にて1時間炭化し、130gの炭化物を得た(収率43%)。なお、前記樹脂状固形物における前記C/Si比は、計算値で、(127g×0.5×0.4/12.011)/(0.4×212g/60.0843)=1.5、であり、元素分析の結果は1.53であった。この炭化物130gを炭素製容器に入れ、800℃/時間で1600℃まで昇温した後、100℃/時間で1900℃まで昇温し、その後1900℃で2時間保持して焼成を行った。更にこの粉末をアルゴン雰囲気下で2350℃まで昇温し、4時間保持し、高純度の炭化ケイ素粉末(100質量%α−SiCである)を得た。得られた炭化ケイ素粉体40は淡緑灰色であった。
【0139】
炭化ケイ素粉末40における窒素含有量を、酸素窒素同時分析装置(LECO社製、TC436)を用いて測定したところ、40質量ppm未満であった。
また、炭化ケイ素粉末40における前記不純物元素の分析を、該炭化ケイ素粉末40を、フッ酸、硝酸及び硫酸を含む混酸で加圧熱分解した後、ICP−質量分析法及びフレームレス原子吸光法で行ったところ、前記不純物元素としてのNa、K、Cr、Fe、Ni、Cu、W、Ti、及び、Caの含有量は、それぞれ0.1質量ppm以下であった。一方、Alの含有量は400質量ppmであった。
また、炭化ケイ素粉末40の体積平均粒径(D50)及び粒度分布(D90/D10)(体積平均粒径基準)を、粒度分布測定装置(COULTER LS230)にて測定したところ、体積平均粒径(D50)が300μmであり、粒度分布(D90/D10)(体積平均粒径基準)は3.4であり、一山の分布であった。
【0140】
次に、炭化ケイ素単結晶の製造装置1において、第一誘導加熱コイル21に電流を通電させこれを加熱した。その熱で炭化ケイ素粉末40を加熱し(2500℃にまで加熱した後、アルゴンガス雰囲気で圧力を50Torr(6645Pa)に維持した)。炭化ケイ素粉末40は、所定の温度(2500℃)にまで加熱されて昇華した。昇華した炭化ケイ素粉末40は、再結晶化温度にまで冷却されない限り再結晶しない。ここで、蓋体11側は、第二誘導加熱コイル20により加熱されており、炭化ケイ素粉末40側よりも温度が低く(種結晶の温度は2400℃)、昇華した炭化ケイ素粉末40が再結晶し得る再結晶雰囲気(圧力は50Torr(6645Pa))に維持されているため、炭化ケイ素単結晶の種結晶50上近傍にのみ炭化ケイ素が再結晶し、炭化ケイ素の結晶が成長した。
【0141】
このとき、図2に示す通り、炭化ケイ素単結晶の種結晶50上には炭化ケイ素単結晶60が再結晶し成長し、炭化ケイ素単結晶の種結晶50の外周縁部には炭化ケイ素多結晶70が再結晶し成長した。炭化ケイ素単結晶60の成長は、その全成長過程において炭化ケイ素粉末40側に向かって凸形状が維持され、蓋体11側に陥没した凹部が輪状に形成されることがなく、また、炭化ケイ素多結晶70が、容器本体12内の周側面部13に接触した状態で成長することもなかった。
【0142】
その結果、図3に示す通り、成長した炭化ケイ素単結晶60を室温まで冷却した際に、炭化ケイ素多結晶70側から炭化ケイ素単結晶60側に熱膨張差に基づく応力が集中して印加されることがなく、得られる炭化ケイ素単結晶60に割れ等の破損が生じてしまうこともなかった。
【0143】
得られた炭化ケイ素単結晶60について、評価したところ、多結晶や多型の結晶の混入がなく、マイクロパイプの結晶欠陥も4個/cm2とほとんど存在せず極めて高品質であった。
なお、前記マイクロパイプの結晶欠陥の検出は、得られた炭化ケイ素単結晶60を厚み0.4mmに切断し、鏡面研磨により表面粗さ0.4nmのウエハとし、アルカリ洗浄により表面の異物を極力除去した後に、後述の通り検出した。即ち、アルカリ洗浄後の前記ウエハに対し、反射照明に適当量の透過照明を加えた照明を当て、前記ウエハ表面のマイクロパイプの開口部に顕微鏡焦点を合わせた際に、該マイクロパイプの内部へと続く部分が該開口部の像よりも弱い影として該開口部につながって観察することができる条件下で、前記ウエハの全面を走査して顕微鏡画像を得た後、該顕微鏡画像を画像処理することにより、該マイクロパイプに特長的な形状のみを抽出してその数を計測することにより、該マイクロパイプを検出した。なお、この検出では、0.35μm程度の微小なマイクロパイプまでも非破壊で正確に検出した。
【0144】
また、得られた炭化ケイ素単結晶60を、フッ酸及び硝酸を含む混酸で加圧・熱分解し、得られた溶液を10倍以上に濃縮してICP−質量分析及びフレームレス原子吸光分析を用いて前記不純物元素の分析を行ったところ、前記不純物元素としてのNa、K、Cr、Fe、Ni、Cu、W、Ti、及び、Caの含有量は、それぞれ15質量ppb以下であった。一方、Alの含有量は40質量ppmであった。
また、得られた炭化ケイ素単結晶60のホール効果を測定したところ、体積抵抗値が0.03Ω・cmのp型半導体であった。
なお、得られた炭化ケイ素単結晶60の窒素含有量につき、フォトルミネッセンス測定装置を使用して測定したところ、0.05質量ppm以下であった。
【0145】
(実施例2)
実施例1において、黒鉛製坩堝10を図4に示す黒鉛製坩堝10に変更した以外は実施例1と同様にした。その結果、実施例1と同様の結果が得られた。図4に示す黒鉛製坩堝10は、蓋体11に内側領域形成部15が設けられている点でのみ、実施例1で使用した図1に示す黒鉛製坩堝10と相違する。内側領域形成部15は、図4に示す通り、炭化ケイ素単結晶の種結晶が配置される前記内側領域を底面とする円柱状であり、その一端が黒鉛製坩堝10の外部に露出している。内側領域形成部15の材料は、熱伝導度が117J/m/s/℃(W/m・K)であり、内側領域形成部15以外の蓋体11の材料は、熱伝導度が129J/m/s/℃(W/m・K)であった。
実施例2の場合、前記内側領域が前記外側領域とは別の部材(内側領域形成部15)で形成されているため、接触抵抗の差により加熱され難くなっており、また、内側領域形成部15の一端が外部に露出しているので熱を外部に放熱し易くなっているので、炭化ケイ素の再結晶が容易に行われた。
【0146】
(実施例3)
実施例1において、黒鉛製坩堝10を図5に示す黒鉛製坩堝10に変更した以外は実施例1と同様にした。その結果、実施例1と同様の結果が得られた。図5に示す黒鉛製坩堝10は、蓋体11に内側領域形成部15が設けられている点でのみ、実施例1で使用した図1に示す黒鉛製坩堝10と相違する。内側領域形成部15は、図5に示す通り、炭化ケイ素単結晶の種結晶が配置される前記内側領域を底面とし前記外部に向けて不連続的に2段階その径が大きくなる階段状を底面とする形状であり、その一端が外部に露出している。内側領域形成部15の材料は、熱伝導度が117J/m/s/℃(W/m・K)であり、内側領域形成部15以外の蓋体11の材料は、熱伝導度が129J/m/s/℃(W/m・K)であった。
実施例3の場合、前記内側領域が前記外側領域とは別の部材で形成されているため、接触抵抗の差により加熱され難くなっており、また、内側領域形成部15の一端が外部に露出しているので熱を外部に放熱し易くなっているので、炭化ケイ素の再結晶が容易に行われた。
【0147】
(実施例4)
実施例1において、以下の点が相違する以外は実施例1と同様にした。即ち、得られた炭化ケイ素粉末が、6H、平均粒径が300μmであり、炭化ケイ素単結晶の種結晶50は、実施例1で得られたバルクの炭化ケイ素単結晶を切断し、全面を鏡面研磨して得られた15Rのウエハ(直径40mm・厚み0.5mm)である。
そして、第一誘導加熱コイル21に20kHzの電流を通電させこれを加熱し、第二誘導加熱コイル20に40kHzの電流を通電させこれを昇温し、加熱した。黒鉛製坩堝10の下部(炭化ケイ素粉末40の収容部)を2312℃、黒鉛製坩堝10の上部(蓋体11における炭化ケイ素単結晶の種結晶50の配置部)を2290℃にそれぞれ加熱した。このとき、第一誘導加熱コイル21への供給電力は10.3kWであり、誘導加熱電流(LC回路への供給電流)は260Aであり、第二誘導加熱コイル20への供給電力は4.6kWであり、誘導加熱電流は98Aであった。圧力を常圧から1時間かけて20Torr(2658Pa)に減圧し、20時間維持したところ、図6に示すように、炭化ケイ素粉末40側に向かって凸形状が維持された炭化ケイ素単結晶60が得られた。このとき、炭化ケイ素単結晶60における該凸形状の先端までの高さは12mmであり、炭化ケイ素単結晶60とその周囲に形成された炭化ケイ素多結晶とを含む炭化ケイ素の成長結晶の直径は87mmであった。炭化ケイ素単結晶60においては、蓋体11方向に陥没する凹部が輪状に形成されることがなかった。また、炭化ケイ素単結晶60は、黒鉛製坩堝10の容器本体12の周側面部13に接触した状態で成長することはなかった。更に、炭化ケイ素単結晶60は、その周囲に炭化ケイ素多結晶70が僅かしか発生していなかった。
【0148】
(実施例5)
実施例4において、以下の点が相違する以外は実施例1と同様にした。即ち、炭化ケイ素単結晶の種結晶50の直径が20mm・厚み0.5mmであり、黒鉛製坩堝10の下部(炭化ケイ素粉末40の収容部)を2349℃に加熱し、黒鉛製坩堝10の上部(蓋体11における炭化ケイ素単結晶の種結晶50の配置部)の加熱温度が2317℃であり、その際の第二誘導加熱コイル20への供給電力が5.5kWであり、誘導加熱電流が118Aであり、炭化ケイ素単結晶60とその周囲に形成された炭化ケイ素多結晶とを含む炭化ケイ素の成長結晶の直径は60mmであったこと以外は、実施例4と同様であり、実施例4と同様の良好な結果が得られた。
【0149】
(実施例6)
実施例1において、以下の点が相違する以外は実施例1と同様にした。即ち、干渉防止コイル22を内部に水が流れ、冷却可能な干渉防止コイル22を用いた。得られた炭化ケイ素粉末が、6H、平均粒径が250μmであり、炭化ケイ素単結晶の種結晶50は、実施例4で得られたバルクの炭化ケイ素単結晶を切断し、全面を鏡面研磨して得られた直径25mm・厚み2mmのウエハ(6H)である。
そして、第一誘導加熱コイル21に20kHzの電流を通電させこれを加熱し、第二誘導加熱コイル20に40kHzの電流を通電させこれを加熱した。黒鉛製坩堝10の下部(炭化ケイ素粉末40の収容部)及び上部(蓋体11における炭化ケイ素単結晶の種結晶50の配置部)を2510℃まで、それぞれ昇温し、1時間加熱した。そして、黒鉛製坩堝10の下部は同温度(T1)を維持したまま、第二誘導加熱コイル20への供給電力を徐々に低下(5.8kW、120Aから4.2kW、90Aまで低下)させることにより、黒鉛製坩堝10の蓋体11における種結晶配置部の温度を20時間かけて2350℃(T2)まで、蓋体11における種結晶配置部の外周部の温度は計算値の推定温度で2480℃(T3)まで、それぞれ低下させた。このとき、同時に圧力を常圧から1時間かけて20Torr(2658Pa)に減圧したところ、図7に示すように、炭化ケイ素粉末40側に向かって凸形状が維持された炭化ケイ素単結晶60が得られた。このとき、炭化ケイ素単結晶60における該凸形状の先端までの高さは18mmであった。炭化ケイ素単結晶60においては、蓋体11方向に陥没する凹部が輪状に形成されることがなかった。また、炭化ケイ素単結晶60は、黒鉛製坩堝10の容器本体12の周側面部13に接触した状態で成長することはなかった。更に、炭化ケイ素単結晶60は、その周囲に炭化ケイ素多結晶70が隣接して発生乃至成長することがなかった。
【0150】
(実施例7)
実施例1において、以下の点が相違する以外は実施例1と同様にした。即ち、第二誘導加熱コイル20及び第一誘導加熱コイル21を図8に示す従来の炭化ケイ素単結晶の製造装置80における誘導加熱コイル25に代え、黒鉛製坩堝の蓋体11における、容器本体12の内部と対向する側の面(炭化ケイ素単結晶の成長が行われる面)の内、中心から半径60mmの円の外側領域のみに、X線回折にてガラス状乃至アモルファス状であると判断されるカーボン薄膜を、以下の方法により厚み1〜10μmの厚みに成膜した。蓋体11における前記外側領域だけを露出した状態で真空チャンバー内に設置し、ベンゼン雰囲気下、チャンバー内の圧力を0.23Paに調節した。その後、蓋体11を2.5kVの負電位に保ち、フィラメントとアノードとの対向部分に発生させたアーク放電プラズマでベンゼンを分解することによりプラズマ中で生じた正イオンを高速で、蓋体11における前記外側領域に衝突させることにより、成膜を行った。
実施例7では、蓋体11における容器本体12の内部と対向する側の面において、ガラス状カーボン乃至アモルファス状カーボンの成膜を行った部分には炭化ケイ素の結晶が成長せず、成膜を行わなかった中心部分(直径60mmの円形部分)のみに、炭化ケイ素粉末40側に向かってその成長面の全面が凸形状に維持された炭化ケイ素単結晶60が成長していた。このため、炭化ケイ素単結晶60は、黒鉛製坩堝10の容器本体12の周側面部13に接触した状態で成長することはなく、室温まで冷却した際に、割れ等の破損が生ずることがなかった。
【0151】
(実施例8)
図8に示す炭化ケイ素単結晶の製造装置80を用いた以外は、実施例1と同様にして炭化ケイ素単結晶を製造した。
【0152】
具体的には、石英管30の外周であって黒鉛製坩堝10における蓋体11が位置する部分に配置された第一誘導加熱コイル21及び第二誘導加熱コイル20にを、石英管30の外周であって黒鉛製坩堝10が位置する部分に略等間隔に螺旋状に環巻された状態で配置された誘導加熱コイル25に代え、干渉防止コイル22を用いなかった以外は実施例1と同様にした。
【0153】
実施例8では、図9に示す通り、蓋体11における、容器本体12内部と対向する側の全表面は炭化ケイ素の結晶で覆われ、蓋体11の外周縁部に炭化ケイ素多結晶70が容器本体12の内部周側面に接触した状態で成長した。この状態において、室温にまで冷却を行うと、炭化ケイ素多結晶70側から炭化ケイ素単結晶60側に熱膨張差に基づく応力が集中して印加され、図9に示す通り、炭化ケイ素単結晶60に割れが生じた。
【0154】
(比較例1)
実施例1において、炭化ケイ素粉末40の製造の際に用いたレゾール型キシレン樹脂をレゾール型フェノール樹脂に代えた以外は、実施例1と同様にして炭化ケイ素粉末40を製造した。得られた炭化ケイ素粉末における窒素含有量は、500質量ppm以上であった。
この炭化ケイ素粉末40を用いて炭化ケイ素単結晶60を製造し、実施例1と同様の評価を行ったところ、実施例1と同様の結果が得られた。ただし、炭化ケイ素単結晶60の体積抵抗値は0.01Ω・cmであり、窒素含有量は180質量ppmであり、Al含有量は40質量ppmであり、n型半導体であった。
【0155】
【発明の効果】
本発明によると、前記不純物元素の含有量が少なく、かつ前記不純物元素でない窒素等の元素の含有量も少なく、p型半導体等として好適に使用可能な炭化ケイ素単結晶、及び、該炭化ケイ素単結晶を効率よく製造し得る炭化ケイ素単結晶の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の炭化ケイ素単結晶の製造方法における初期状態を説明するための概略図である。
【図2】図2は、本発明の炭化ケイ素単結晶の製造方法により炭化ケイ素単結晶を製造している状態を説明するための概略図である。
【図3】図3は、本発明の炭化ケイ素単結晶の製造方法により製造された本発明の炭化ケイ素単結晶の概略図である。
【図4】図4は、本発明の炭化ケイ素単結晶の製造方法に用いた坩堝の一例を示す概略説明図である。
【図5】図5は、本発明の炭化ケイ素単結晶の製造方法に用いた坩堝の他の例を示す概略説明図である。
【図6】図6は、本発明の炭化ケイ素単結晶の製造方法により製造された本発明の炭化ケイ素単結晶の概略図である。
【図7】図7は、本発明の炭化ケイ素単結晶の製造方法により製造された本発明の炭化ケイ素単結晶の概略図である。
【図8】図8は、本発明の炭化ケイ素単結晶の製造方法により炭化ケイ素単結晶を製造している状態を説明するための概略図である。
【図9】図9は、本発明の炭化ケイ素単結晶の製造方法により製造された炭化ケイ素単結晶の概略図である。
【符号の説明】
1 炭化ケイ素単結晶の製造装置
10 黒鉛製坩堝
11 蓋体
12 容器本体
13 周側面部
15 内側領域形成部
20 第二誘導加熱コイル
21 第一誘導加熱コイル
22 干渉防止コイル
25 誘導加熱コイル
30 石英管
31 支持棒
40 炭化ケイ素粉末
50 炭化ケイ素単結晶の種結晶
60 炭化ケイ素単結晶
70 炭化ケイ素多結晶
71 凹部
80 炭化ケイ素単結晶の製造装置

Claims (18)

  1. 窒素含有量が100質量ppm以下であり、元素周期律表における13族元素を除く不純物元素の各含有量が0.1質量ppm以下であり、かつ元素周期律表における13族元素の総含有量が窒素含有量(原子ppm)以上である炭化ケイ素粉末を昇華させてから再結晶させて炭化ケイ素単結晶を成長させ炭化ケイ素単結晶の製造方法であって、
    前記炭化ケイ素粉末が、ケイ素源とキシレン系樹脂とを少なくとも含有する混合物を焼成して得られるものであることを特徴とする炭化ケイ素単結晶の製造方法。
  2. 前記炭化ケイ素粉末の窒素含有量が50質量ppm以下である請求項1に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法。
  3. 窒素含有量が0.1質量ppm以下であり、かつ元素周期律表における13族元素の総含有量が窒素含有量(原子ppm)以上である炭化ケイ素粉末を昇華させてから再結晶させて炭化ケイ素単結晶を成長させ炭化ケイ素単結晶の製造方法であって、
    前記炭化ケイ素粉末が、ケイ素源とキシレン系樹脂とを少なくとも含有する混合物を焼成して得られるものであることを特徴とする炭化ケイ素単結晶の製造方法。
  4. 前記元素周期律表における13族元素がアルミニウムである請求項1から3のいずれか1項に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法。
  5. 前記ケイ素源が、アルコキシシラン化合物である請求項1から4のいずれか1項に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法。
  6. 前記混合物が、ケイ素源に酸を添加した後、キシレン系樹脂を添加して得られる請求項1から5のいずれか1項に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法。
  7. 焼成の際、混合物における、キシレン系樹脂に含まれる炭素とケイ素源に含まれるケイ素との比が1.8以下である請求項1から6のいずれか1項に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法。
  8. 炭化ケイ素粉末の体積平均径が50〜400μmである請求項1からのいずれか1項に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法。
  9. 炭化ケイ素粉末が、結晶多型がベータ型(3C)である炭化ケイ素粉末を30質量%以下含有する請求項1からのいずれか1項に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法。
  10. 炭化ケイ素単結晶を、その全成長過程を通して、その成長面の全面を凸形状に保持したまま成長させる請求項1からのいずれか1項に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法。
  11. 炭化ケイ素単結晶を含む炭化ケイ素の結晶を略山形に成長させる請求項1から10のいずれか1項に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法。
  12. 炭化ケイ素単結晶を含む炭化ケイ素の結晶が、炭化ケイ素単結晶のみからなる請求項1から11のいずれか1項に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法。
  13. 炭化ケイ素粉末を反応容器内に収容し、該反応容器内の該炭化ケイ素粉末に略対向する端部に炭化ケイ素単結晶の種結晶を配置し、
    炭化ケイ素単結晶を含む炭化ケイ素の結晶の成長が、該端部における、該反応容器内の周側面部との隣接部を除く領域でのみ行われる請求項1から12のいずれか1項に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法。
  14. 炭化ケイ素粉末を反応容器内の一端部側に収容し、該反応容器内の他端部側に炭化ケイ素単結晶の種結晶を配置し、
    前記一端部側に配置した第一加熱手段により、該炭化ケイ素粉末が昇華可能となるように昇華雰囲気を形成し、
    前記他端部側に配置した第二加熱手段により、前記第一加熱手段により昇華された炭化ケイ素が前記炭化ケイ素単結晶の種結晶近傍でのみ再結晶可能となるように再結晶雰囲気を形成し、該炭化ケイ素を前記炭化ケイ素単結晶の種結晶上に再結晶させる請求項1から13のいずれか1項に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法。
  15. 第一加熱手段及び第二加熱手段が誘導加熱可能なコイルである請求項14に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法。
  16. 第一加熱手段における誘導加熱電流の電流値が、第二加熱手段における誘導加熱電流の電流値よりも大きい請求項15に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法。
  17. 第二加熱手段における誘導加熱電流の電流値を、成長する炭化ケイ素単結晶の径が大きくなるにつれて、連続的又は段階的に小さくする請求項15又は16に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法。
  18. 反応容器内の、炭化ケイ素粉末を収容した一端部側の温度をTとし、炭化ケイ素単結晶の種結晶を配置した他端部側の温度をTとし、該他端部側における、反応容器の内周側面部との隣接部の温度Tとした時、T−T及びT−Tが連続的又は段階的に大きくなる請求項14から17のいずれか1項に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法。
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