JP2006321678A - 炭化ケイ素単結晶の製造方法及び製造装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 昇華用原料の表面に多結晶が析出することを防止できる炭化ケイ素単結晶の製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】
反応容器内の第一端部に昇華用原料を収容する工程と、上記反応容器内の昇華用原料に略対向する第二端部に炭化ケイ素単結晶の種結晶を配置する工程と、上記反応容器底部の温度よりも上記昇華用原料の表面の温度が高くなるように上記昇華用原料を加熱し昇華させる工程と、昇華させた昇華用原料を上記種結晶上に再結晶させて炭化ケイ素単結晶を成長させる工程と、を有する炭化ケイ素単結晶の製造方法。
【選択図】 図1
【解決手段】
反応容器内の第一端部に昇華用原料を収容する工程と、上記反応容器内の昇華用原料に略対向する第二端部に炭化ケイ素単結晶の種結晶を配置する工程と、上記反応容器底部の温度よりも上記昇華用原料の表面の温度が高くなるように上記昇華用原料を加熱し昇華させる工程と、昇華させた昇華用原料を上記種結晶上に再結晶させて炭化ケイ素単結晶を成長させる工程と、を有する炭化ケイ素単結晶の製造方法。
【選択図】 図1
Description
本発明は、炭化ケイ素単結晶の製造方法及び製造装置に関する。
炭化ケイ素単結晶の製造には昇華用原料として高純度炭化ケイ素粉末が用いられている。かかる高純度炭化ケイ素粉体は加熱により昇華して原料ガスとなり単結晶成長面上で再結晶することで炭化ケイ素単結晶として成長する。
しかし昇華用原料の表面温度が低いと昇華用原料の表面で多結晶が析出しやすくなる。析出した多結晶は原料ガスの上昇経路を塞ぐため、単結晶成長表面に原料ガスが供給されずらくなる。また反応容器の底部に配された昇華用原料は昇華してから昇華用原料の表面に達するまでの移動距離が長い。そのため昇華した原料ガスが原料粉体間を通り抜ける際に原料粉体間で多結晶が析出しやすくなる。結果として高純度な炭化ケイ素単結晶を得ることが困難であった。
昇華用原料の表面で多結晶が析出することを防止する手段としていくつかの技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし上記課題は改善されるには至っていなかった。
特開平7−10697号公報
昇華用原料の表面に多結晶が析出することを防止できる炭化ケイ素単結晶の製造方法及び製造装置が求められていた。
即ち、本発明は、以下の記載事項に関する。
(1)反応容器内の第一端部に昇華用原料を収容する工程と、上記反応容器内の昇華用原料に略対向する第二端部に炭化ケイ素単結晶の種結晶を配置する工程と、上記反応容器底部の温度よりも上記昇華用原料の表面の温度が高くなるように上記昇華用原料を加熱し昇華させる工程と、昇華させた昇華用原料を上記種結晶上に再結晶させて炭化ケイ素単結晶を成長させる工程と、を有する炭化ケイ素単結晶の製造方法。
(2)上記昇華用原料の表面と上記反応容器底部の温度差を原料高さで除した値で定義されるΔT/tは0〜5℃/cmである上記(1)記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法。
(1)反応容器内の第一端部に昇華用原料を収容する工程と、上記反応容器内の昇華用原料に略対向する第二端部に炭化ケイ素単結晶の種結晶を配置する工程と、上記反応容器底部の温度よりも上記昇華用原料の表面の温度が高くなるように上記昇華用原料を加熱し昇華させる工程と、昇華させた昇華用原料を上記種結晶上に再結晶させて炭化ケイ素単結晶を成長させる工程と、を有する炭化ケイ素単結晶の製造方法。
(2)上記昇華用原料の表面と上記反応容器底部の温度差を原料高さで除した値で定義されるΔT/tは0〜5℃/cmである上記(1)記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法。
昇華用原料の表面に多結晶が析出することを防止できる炭化ケイ素単結晶の製造方法及び製造装置が提供される。
以下に実施形態を挙げて本発明を説明するが、本発明が以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。尚、本明細書の図において、同一又は同様の機能を有するものについては同様の符号を付して説明を省略する。
本発明者等は昇華用原料の表面の温度に着目して鋭意検討した結果、反応容器底部から昇華用原料の表面までに温度勾配を設けることで上記課題が解決されることを見出した。以下実施形態を挙げて本発明を説明する。
(炭化ケイ素単結晶の製造装置)
図1に示す実施形態にかかる炭化ケイ素単結晶の製造装置1は、昇華用原料40を収容する反応容器本体12と、反応容器本体12内の昇華用原料40に略対向して反応容器本体12に着脱自在に設けられ炭化ケイ素単結晶の種結晶50を配置可能とする蓋11と、を備える。さらに製造装置1は、反応容器10を石英管30の内部に固定させる支持棒31と、石英管30の外周であって反応容器10が位置する部分に配置された加熱コイル20と、を備える。なお、反応容器10は、断熱材(図示せず)で覆われている。
図1に示す実施形態にかかる炭化ケイ素単結晶の製造装置1は、昇華用原料40を収容する反応容器本体12と、反応容器本体12内の昇華用原料40に略対向して反応容器本体12に着脱自在に設けられ炭化ケイ素単結晶の種結晶50を配置可能とする蓋11と、を備える。さらに製造装置1は、反応容器10を石英管30の内部に固定させる支持棒31と、石英管30の外周であって反応容器10が位置する部分に配置された加熱コイル20と、を備える。なお、反応容器10は、断熱材(図示せず)で覆われている。
反応容器本体12としては、反応容器本体12内部に炭化ケイ素の昇華雰囲気を形成できるものであれば特に制限はない。反応容器本体12としては例えば坩堝を用いることができるが、その材質は黒鉛であることが好ましく、熱膨張係数が種結晶と略同一であるものがさらに好ましい。昇華用原料40を収納しやすくする観点から、反応容器本体12と、蓋11は着脱自在に一体に形成されていることが好ましい。接合手段としては、反応容器本体12内部の密閉性が保たれるのであればいずれの接合手段を用いても構わない。接合手段としては、例えば図1に示されるような螺合手段が挙げられる。
また蓋11としては、炭化ケイ素単結晶の種結晶50を設置可能とするものであって、その材質が黒鉛であるものが好ましく、熱膨張係数が種結晶と略同一であるものがさらに好ましい。
反応容器本体12と蓋11からなる反応容器10は、第二端部における少なくとも内周側面部の表面が、ガラス状カーボンもしくはアモルファスカーボンであることが好ましい。これにより少なくとも内周側面部13の表面で、炭化ケイ素の再結晶化が抑制されるからである。この場合、種結晶50が設置される底部の縁部周縁を含む部分の表面を、ガラス状カーボンもしくはアモルファスカーボンとすることが更に好ましい。
反応容器10は断熱材等で囲まれていることが好ましい。この場合、反応容器10における第一端部(昇華用原料収容部)及び第二端部(種結晶配置部)の略中央は、測温用窓を形成する目的で、断熱材等が設けられていないのが好ましい。また、第一端部(昇華用原料収容部)の略中央に測温用窓が設けられている場合には、断熱材粉等の落下を防ぐための黒鉛製カバー部材等が更に設けられているのが好ましい。
反応容器10は、石英管30内に配置されるのが好ましい。昇華用原料40の昇華及び再結晶化のための加熱エネルギーの損失が少ないからである。また石英管30は高純度品が入手可能であり、高純度品を用いると金属不純物の混入が少ない点で有利である。
加熱コイル20としては、通電により加熱し、昇華用原料40を昇華可能となるように昇華雰囲気を形成することができ、昇華された昇華用原料40が炭化ケイ素の種結晶50近傍でのみ再結晶可能となるように再結晶雰囲気を形成し、昇華用原料40を前記炭化ケイ素の種結晶50上に再結晶させることができる限り特に制限はない。加熱コイル20としては、例えば誘導加熱可能なコイルなどを用いることができる。加熱コイル20は、反応容器10の昇華用原料40が収容された部分の外周に環巻された状態で配置される。加熱コイル20は昇華用原料40を昇華可能となるように昇華雰囲気を形成し、昇華用原料40を昇華させる。そして、加熱コイル20により昇華された昇華用原料が種結晶50近傍でのみ再結晶可能となるように再結晶雰囲気を形成し昇華用原料40を種結晶50上に再結晶させる。このため、成長する炭化ケイ素単結晶が、その全成長過程において、その成長面の全面がその成長方向に向かって凸形状が維持され、蓋部側に陥没した凹部が輪状に形成されることがない。また、炭化ケイ素多結晶が、反応容器本体12内の周側面部に接触した状態で成長することもない。このため、成長した炭化ケイ素単結晶を室温まで冷却した際に、炭化ケイ素多結晶側から炭化ケイ素単結晶側に熱膨張差に基づく応力が集中して印加されることがなく、得られる炭化ケイ素単結晶に割れ等の破損が生じてしまうことがない。その結果、従来における諸問題、即ち、割れ等の破損がなく、多結晶や多型の混入やマイクロパイプ等の結晶欠陥が存在しない高品質の炭化ケイ素単結晶が効率よくかつ確実に製造することができる。
(昇華用原料)
昇華用原料40としては、炭化ケイ素である限り、結晶の多型、使用量、純度、その製造方法等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。昇華用原料40の結晶の多型としては、例えば、4H,6H,15R,3Cなどが挙げられ、これらの中でも6Hなどが好適に挙げられる。これらは、1種単独で使用されるのが好ましいが、2種以上併用されてもよい。
昇華用原料40としては、炭化ケイ素である限り、結晶の多型、使用量、純度、その製造方法等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。昇華用原料40の結晶の多型としては、例えば、4H,6H,15R,3Cなどが挙げられ、これらの中でも6Hなどが好適に挙げられる。これらは、1種単独で使用されるのが好ましいが、2種以上併用されてもよい。
昇華用原料40の使用量としては、製造する炭化ケイ素単結晶の大きさ、反応容器の大きさ等に応じて適宜選択することができる。昇華用原料40の純度としては、製造する炭化ケイ素単結晶中への多結晶や多型の混入を可能な限り防止する観点からは、純度の高いことが好ましく、具体的には、不純物元素の各含有量が0.5ppm以下であるのが好ましい。ここで、不純物元素の含有量は、化学的な分析による不純物含有量であり、参考値としての意味を有するに過ぎず、実用的には、不純物元素が炭化ケイ素単結晶中に均一に分布しているか、局所的に偏在しているかによっても、評価が異なってくる。なお、ここで「不純物元素」とは、1989年IUPAC無機化学命名法改訂版の周期律表における1族から17族元素に属しかつ原子番号3以上(但し、炭素原子、酸素原子及びケイ素原子を除く)である元素をいう。また、成長する炭化ケイ素単結晶にn型あるいはp型の導電性を付与するため故意にそれぞれ窒素、アルミニウムなどのドーパント元素を添加した場合はそれらも除くこととする。
昇華用原料40としての炭化ケイ素粉末は、例えば、ケイ素源として、ケイ素化合物の少なくとも1種と、炭素源として、加熱により炭素を生ずる有機化合物の少なくとも1種と、重合触媒又は架橋触媒とを溶媒中で溶解し乾燥して得られた粉末を非酸化性雰囲気下で焼成することにより得られる。
ケイ素化合物としては、液状のものと固体のものとを併用することができるが、少なくとも1種は液状のものから選択する。
液状のものとしては、アルコキシシラン及びアルコシシシラン重合体が好適に用いられる。アルコキシシランとしては、例えば、メトキシシラン、エトキシシラン、プロポキシシラン、ブトキシシラン等が挙げられ、これらの中でもハンドリングの点でエトキシシランが好ましい。アルコキシシランとしては、モノアルコキシシラン、ジアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、テトラアルコキシシランのいずれであってもよいが、テトラアルコキシシランが好ましい。アルコキシシラン重合体としては、重合度が2〜15程度の低分子量重合体(オリゴマー)及びケイ酸ポリマーが挙げられる。例えば、テトラエトキシシランオリゴマーが挙げられる。
固体のものとしては、SiO、シリカゾル(コロイド状超微細シリカ含有液、内部にOH基やアルコキシル基を含む)、二酸化ケイ素(シリカゲル、微細シリカ、石英粉末)等の酸化ケイ素が挙げられる。
ケイ素化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。ケイ素化合物の中でも、均質性やハンドリング性が良好な点でテトラエトキシシランのオリゴマー、テトラエトキシシランのオリゴマーと微粉末シリカとの混合物、等が好ましい。ケイ素化合物は、高純度であるのが好ましく、初期における各不純物の含有量が20ppm以下であるので好ましく、5ppm以下であるのがより好ましい。
加熱により炭素を生じる有機化合物としては、液状のものを単独で用いてもよいし、液状のものと固体のものとを併用してもよい。加熱により炭素を生ずる有機化合物としては、残炭率が高く、かつ触媒若しくは加熱により重合又は架橋する有機化合物が好ましく、例えば、フェノール樹脂、フラン樹脂、ポリイミド、ポリウレタン、ポリビニルアルコール等の樹脂のモノマーやプレポリマーが好ましく、その他、セルロース、蔗糖、ピッチ、タール等の液状物が挙げられる。これらの中でも、高純度のものが好ましく、フェノール樹脂がより好ましく、レゾール型フェノール樹脂が特に好ましい。
加熱により炭素を生ずる有機化合物は、1種単独で用いてもよいし、2以上を併用してもよい。加熱により炭素を生ずる有機化合物の純度としては、目的に応じて適宜選択することができるが、高純度の炭化ケイ素粉末が必要な場合には各金属を5ppm以上含有していない有機化合物を用いることが好ましい。
重合触媒及び架橋触媒としては、加熱により炭素を生ずる有機化合物に応じて適宜選択できるが、加熱により炭素を生ずる有機化合物がフェノール樹脂やフラン樹脂の場合、トルエンスルホン酸、トルエンカルボン酸、酢酸、しゅう酸、マレイン酸、硫酸等の酸類が好ましく、マレイン酸が特に好ましい。
加熱により炭素を生ずる有機化合物に含まれる炭素と、ケイ素化合物に含まれるケイ素との比(以下「C/Si比」と略記)は、両者の混合物を1000℃にて炭化して得られる炭化物中間体を、元素分析することにより定義される。化学量論的には、C/Si比が3.0の時に得られた炭化ケイ素粉末中の遊離炭素が0%となるはずであるが、実際には同時に生成するSiOガスの揮散により低C/Si比において遊離炭素が発生する。この得られた炭化ケイ素粉末中の遊離炭素量が適当な量となるように予め配合比を決定しておくのが好ましい。通常、1気圧近傍で1600℃以上での焼成では、C/Si比を2.0〜2.5にすると遊離炭素を抑制することができる。C/Si比が2.5を超えると、遊離炭素が顕著に増加する。但し、雰囲気の圧力を低圧又は高圧で焼成する場合は、純粋な炭化ケイ素粉末を得るためのC/Si比は変動するので、この場合は必ずしもC/Si比の範囲に限定するものではない。
なお、炭化ケイ素粉末は、例えば、ケイ素化合物と加熱により炭素を生ずる有機化合物との混合物を硬化することによっても得られる。
硬化の方法としては、加熱により架橋する方法、硬化触媒により硬化する方法、電子線や放射線による方法、などが挙げられる。硬化触媒としては、加熱により炭素を生ずる有機化合物の種類等に応じて適宜選択することができ、フェノール樹脂やフラン樹脂の場合には、トルエンスルホン酸、トルエンカルボン酸、酢酸、しゅう酸、塩酸、硫酸、マレイン酸等の酸類、ヘキサミン等のアミン酸などが好適に挙げられる。これらの硬化触媒を用いる場合、硬化触媒は溶媒に溶解し又は分散される。触媒としては、低級アルコール(例えばエチルアルコール等)、エチルエーテル、アセトンなどが挙げられる。
以上により得られた炭化ケイ素粉末は、窒素又はアルゴン等の非酸化性雰囲気中、800〜1000℃にて30〜120分間、焼成される。焼成により炭化ケイ素粉末が炭化物になり、炭化物を、アルゴン等の非酸化性雰囲気中、1350〜2000℃で焼成することにより、炭化ケイ素粉末が生成される。
焼成の温度と時間とは、得ようとする炭化ケイ素粉末の粒径等に応じて適宜選択することができ、炭化ケイ素粉末のより効果的な生成の点で温度は1600〜1900℃が好ましい。なお、焼成の後に、不純物を除去し高純度の炭化ケイ素粉末を得る目的で、例えば、2000〜2400℃で3〜8時間加熱処理を行うのが好ましい。
以上により得られた炭化ケイ素粉末は、大きさが不均一であるため、解粉、分級、等を行うことにより所望の粒度にすることができる。
炭化ケイ素粉末の平均粒径としては、10〜700μmが好ましく、100〜400μmがより好ましい。平均粒径が10μm未満であると、炭化ケイ素単結晶を成長させるための炭化ケイ素の昇華温度、即ち1800℃〜2700℃で速やかに焼結を起こしてしまうため、昇華表面積が小さくなり、炭化ケイ素単結晶の成長が遅くなることがあり、また、炭化ケイ素粉末を反応容器内へ収容させる際や、成長速度調整のために再結晶雰囲気の圧力を変化させる際に、炭化ケイ素粉末が飛散し易くなる。一方、平均粒径が500μmを超えると、炭化ケイ素粉末自身の比表面積が小さくなるため、やはり炭化ケイ素単結晶の成長が遅くなることがある。
炭化ケイ素粉末としては、4H,6H,15R,3C、これらの混合物等のいずれであってもよいが、成長させる単結晶と同一の多型が好ましく、高純度のものであることが好ましい。
なお、炭化ケイ素粉末を用いて成長させた炭化ケイ素単結晶にn型又はp型の導電性を付与する目的で窒素又はアルミニウムなどをそれぞれ導入することができ、窒素又はアルミニウムを炭化ケイ素粉末の製造時に導入する場合は、まずケイ素源と、炭素源と、窒素源又はアルミニウム源からなる有機物質と、重合又は架橋触媒とに均一に混合すればよい。このとき、例えば、フェノール樹脂等の炭素源と、ヘキサメチレンテトラミン等の窒素源からなる有機物質と、マレイン酸等の重合又は架橋触媒とを、エタノール等の溶媒に溶解する際に、テトラエトキシシランのオリゴマー等のケイ素源と十分に混合することが好ましい。
窒素源からなる有機物質としては、加熱により窒素を発生する物質が好ましく、例えば、高分子化合物(具体的には、ポリイミド樹脂、及びナイロン樹脂等);有機アミン(具体的には、ヘキサメチレンテトラミン、アンモニア、トリエチルアミン等、及びこれらの化合物、塩類)の各種アミン類が挙げられる。これらの中でも、ヘキサメチレンテトラミンが好ましい。また、ヘキサミンを触媒として合成され、その合成工程に由来する窒素を樹脂1gに対して2.0mmol以上含有するフェノール樹脂も、窒素源からなる有機物質として好適に用いることができる。こられの窒素源からなる有機物質は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、アルミニウム源からなる有機物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
窒素源からなる有機物質の添加量としては、ケイ素源と炭素源とを同時に添加する場合には、ケイ素源1g当たり窒素が1mmol以上含有することが好ましく、ケイ素源1gに対して80〜1000μgが好ましい。
炭化ケイ素単結晶の製造におけるより具体的な昇華用原料40を列記すると以下の通りである。昇華用原料40として、高純度のアルコキシシラン及びアルコキシシラン重合体から選択される少なくとも1種をケイ素源とし、加熱により炭素を生成する高純度の有機化合物を炭素源とし、これらを均一に混合して得た混合物を非酸化性雰囲気下で加熱焼成して得られた炭化ケイ素粉末を用いることが好ましい。昇華用原料40として、高純度のアルコキシシランをケイ素源とし、加熱により炭素を生成する高純度の有機化合物を炭素源とし、これらを均一に混合して得た混合物を非酸化性雰囲気下で加熱焼成して得られた炭化ケイ素粉末を用いることが好ましい。また昇華用原料40として、高純度のアルコキシシラン及び高純度のアルコキシシランの重合体をケイ素源とし、加熱により炭素を生成する高純度の有機化合物を炭素源とし、これらを均一に混合して得た混合物を非酸化性雰囲気下で加熱焼成して得られた炭化ケイ素粉末を用いることが好ましい。また昇華用原料40として、高純度のメトキシシラン、高純度のエトキシシラン、高純度のプロポキシシラン、高純度のブトキシシランからなる群から選択される少なくとも1種をケイ素源とし、加熱により炭素を生成する高純度の有機化合物を炭素源とし、これらを均一に混合して得た混合物を非酸化性雰囲気下で加熱焼成して得られた炭化ケイ素粉末を用いることが好ましい。さらに昇華用原料40として、高純度のメトキシシラン、高純度のエトキシシラン、高純度のプロポキシシラン、高純度のブトキシシラン及び重合度が2〜15のそれらの重合体からなる群から選択される少なくとも1種をケイ素源とし、加熱により炭素を生成する高純度の有機化合物を炭素源とし、これらを均一に混合して得た混合物を非酸化性雰囲気下で加熱焼成して得られた炭化ケイ素粉末を用いることが好ましい。昇華用原料40として、高純度のモノアルコキシシラン、高純度のジアルコキシシラン、高純度のトリアルコキシシラン、高純度のテトラアルコキシシラン及び重合度が2〜15のそれらの重合体からなる群から選択される少なくとも1種をケイ素源とし、加熱により炭素を生成する高純度の有機化合物を炭素源とし、これらを均一に混合して得た混合物を非酸化性雰囲気下で加熱焼成して得られた炭化ケイ素粉末を用いることが好ましい。さらに、ケイ素源をテトラアルコキシシラン重合体とし、炭素源をフェノール樹脂とすることが好ましい。炭化ケイ素粉末の不純物元素の各含有量が0.5ppm以下であることが好ましい。
(炭化ケイ素単結晶の製造方法)
図1の炭化ケイ素単結晶の製造装置1を参照しながら実施形態にかかる炭化ケイ素単結晶の製造方法を説明する。
(イ)まず、反応容器10内の第一端部に昇華用原料40を収容する。昇華用原料40としては、例えば高純度のテトラエトキシシラン重合体をケイ素源とし、レゾール型フェノール樹脂を炭素源とし、これらを均一に混合して得た混合物をアルゴン雰囲気下で加熱焼成して得られた炭化ケイ素粉末を用いることができる。
図1の炭化ケイ素単結晶の製造装置1を参照しながら実施形態にかかる炭化ケイ素単結晶の製造方法を説明する。
(イ)まず、反応容器10内の第一端部に昇華用原料40を収容する。昇華用原料40としては、例えば高純度のテトラエトキシシラン重合体をケイ素源とし、レゾール型フェノール樹脂を炭素源とし、これらを均一に混合して得た混合物をアルゴン雰囲気下で加熱焼成して得られた炭化ケイ素粉末を用いることができる。
(ロ)次に、反応容器10内の昇華用原料40に略対向する第二端部に炭化ケイ素単結晶の種結晶50を配置する。炭化ケイ素単結晶の種結晶50としては、その結晶の多型、大きさ等については、目的に応じて適宜選択することができる。結晶の多型としては、通常、得ようとする炭化ケイ素単結晶の多型と同じ多型が選択される。
(ハ)炭化ケイ素単結晶の成長方向軸上において反応容器10底部から昇華用原料40の表面に向かって序所に温度が高く温度勾配が生じるように昇華用原料40を加熱し昇華させる。昇華用原料40に温度勾配を生じさせることにより、昇華用原料40の表面に多結晶が析出することを防止するためである。昇華用原料40の表面Bの温度と反応容器底部Cの温度差(ΔT)を原料高さ(t)で除した値で定義されるΔT/tは、0℃/cmよりも大きく5℃/cm以下が好ましく、2.0℃/cm以上3.0℃/cm以下がさらに好ましい。ΔT/tの値が負になると昇華した原料が昇華用原料40の表面に析出し、種結晶50との距離が変化して、昇華雰囲気内の温度分布が崩れ単結晶成長を阻害する要因となるからである。一方、ΔT/tの値が正に大きくなりすぎると輻射熱により炭化ケイ素結晶部の温度が高くなりケイ素のみが昇華して炭化が進む要因となるからである。
再結晶雰囲気の形成は、加熱コイル20により好適に行うことができる。このような加熱コイル20は、反応容器10の外周に配置される。加熱コイル20により昇華された昇華用原料40が炭化ケイ素単結晶の種結晶50近傍でのみ再結晶可能となるように再結晶雰囲気を形成し、昇華用原料40を炭化ケイ素単結晶の種結晶50上に再結晶させる。加熱コイル20の環巻された巻数としては、特に制限はなく、反応容器10の材料等により加熱効率や温度効率が最適となるように決定することができる。
この場合、昇華用原料40が昇華する雰囲気の温度よりも種結晶50上近傍での再結晶雰囲気の温度の方が低く維持され、再結晶化が容易に行われる点で有利である。また、加熱コイル20における誘導加熱電流の電流値としては、成長する炭化ケイ素単結晶の径が大きくなるにつれて、連続的又は段階的に小さくなるように制御することが好ましい。この場合、炭化ケイ素単結晶が成長するにつれて加熱コイル20による加熱量が小さく制御されるので、成長を続ける炭化ケイ素単結晶の近傍でしか再結晶が行われず、炭化ケイ素単結晶の周囲に多結晶が生ずることが効果的に抑制される点で有利である。なお、加熱コイル20における誘導加熱電流の電流値としては、炭化ケイ素単結晶の種結晶の径が大きい場合には小さくなるように制御し、径が小さい場合には大きくなるように制御するのが好ましい傾向にある。
加熱コイル20により形成される再結晶雰囲気の圧力としては、10〜100Torr(1330〜13300Pa)が好ましい。なお、この圧力条件にする場合には、減圧にしたまま加熱するのではなく、設定温度にまで加熱をしてから減圧を行い、所定の数値範囲内になるように圧力条件を調整するのが好ましい。
再結晶雰囲気は、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気にしておくのが好ましい。
大径の炭化ケイ素単結晶を得る観点からは、以下のように温度制御することが好ましい。即ち、昇華用原料40を収容した第一端部側の温度をT1とし、炭化ケイ素単結晶の種結晶を配置した第二端部側の温度をT2とし、第二端部側における、反応容器の内周側面部との隣接部の温度T3としたとき、T3−T2及びT1−T2が連続的又は段階的に大きくなるように制御することが好ましい。この場合、T1−T2が連続的又は段階的に大きくなるので、経時的に、炭化ケイ素単結晶が第一端部側に向かって成長を続けても、炭化ケイ素単結晶の結晶成長先端側は常に再結晶が起こり易い状態に維持される。一方、T3−T2が連続的又は段階的に大きくなるので、経時的に、炭化ケイ素単結晶が第二端部側における外周方向に向かって成長を続けても、炭化ケイ素単結晶の結晶成長外周端側は常に再結晶が起こり易い状態に維持される。その結果、炭化ケイ素多結晶の生成が効果的に抑制され、炭化ケイ素単結晶は、その径を拡大しながらその厚みを増す方向に成長を続け、最終的には、炭化ケイ素多結晶等の混入がなく、大径の炭化ケイ素単結晶が得られる点で有利である。
大径の炭化ケイ素単結晶を得る観点からは、以下のように温度制御することが好ましい。即ち、昇華用原料40を収容した第一端部側の温度をT1とし、炭化ケイ素単結晶の種結晶を配置した第二端部側の温度をT2とし、第二端部側における、反応容器の内周側面部との隣接部の温度T3としたとき、T3−T2及びT1−T2が連続的又は段階的に大きくなるように制御することが好ましい。この場合、T1−T2が連続的又は段階的に大きくなるので、経時的に、炭化ケイ素単結晶が第一端部側に向かって成長を続けても、炭化ケイ素単結晶の結晶成長先端側は常に再結晶が起こり易い状態に維持される。一方、T3−T2が連続的又は段階的に大きくなるので、経時的に、炭化ケイ素単結晶が第二端部側における外周方向に向かって成長を続けても、炭化ケイ素単結晶の結晶成長外周端側は常に再結晶が起こり易い状態に維持される。その結果、炭化ケイ素多結晶の生成が効果的に抑制され、炭化ケイ素単結晶は、その径を拡大しながらその厚みを増す方向に成長を続け、最終的には、炭化ケイ素多結晶等の混入がなく、大径の炭化ケイ素単結晶が得られる点で有利である。
(ニ)昇華させた昇華用原料40を種結晶50上に再結晶させて炭化ケイ素単結晶を成長させる。炭化ケイ素単結晶は以下の形態により再結晶し成長する。第一の形態においては、図2、3に示すように炭化ケイ素単結晶60はその全成長過程を通してその成長面の全面を凸形状に保持したまま成長する。この場合、炭化ケイ素単結晶60の成長面の全面において、単結晶内側に陥没した凹部が輪状に形成されることがない。他の形態においては、炭化ケイ素単結晶は、その全成長過程を通して、その成長面の全面を凸形状に保持したまま、かつ成長面を除く全面を蓋11に接触させたまま成長する。この場合、炭化ケイ素単結晶60の成長面の全面において、反応容器10の単結晶内側に陥没した凹部が輪状に形成されることがなく、また、成長面以外の部分から欠陥等が発生拡散することがない。また蓋11が炭化ケイ素と略同一の熱膨張係数をもつため、成長した炭化ケイ素単結晶を室温まで冷却した際に、炭化ケイ素多結晶側から炭化ケイ素単結晶側に熱膨張差に基づく応力が集中して印加されることがなく、得られる炭化ケイ素単結晶に割れ等の破損が生じてしまうことがない。
成長する炭化ケイ素単結晶60の形状としては、その成長面の全面がその成長方向側に凸形状であるのが好ましく、第一端部(昇華用原料40収容部)と第二端部とが対向している場合には、昇華用原料40側、即ち第一端部側に向かってその成長面の全面が凸形状であるのが好ましい。この場合、多結晶や多型の混入が多く、熱膨張差による応力が集中し易いと考えられるところの、第二端部側に陥没した凹部が存在しない点で好ましい。なお、成長する炭化ケイ素単結晶の形状としては、その成長面の全面がその成長方向側と反対側に凹形状となっている部分を含まない限り、凸形状となっていなくても平坦な箇所が一部に含まれていてもよい。
また、炭化ケイ素単結晶を含む炭化ケイ素の結晶の形状としては、昇華用原料40側、即ち第一端部側に向かって略山形であるのが好ましく、その径が漸次小さくなる略山形であるのがより好ましい。換言すると、炭化ケイ素単結晶を含む炭化ケイ素の結晶を、その全成長過程を通して、昇華用原料40側に近づくほど径が漸次小さくなる略山形を保持したまま成長させることが好ましい。なお、略山形である炭化ケイ素の結晶における裾野部分、即ち外周部分においては、炭化ケイ素多結晶や多型が混入することがあるが、この混入は、種結晶の厚み、大きさ、形状等による加熱量との条件の組み合わせにより、その発生を防止することができる。炭化ケイ素多結晶や多型の混入を防止すると、炭化ケイ素を含む炭化ケイ素の結晶が、炭化ケイ素単結晶のみからなるものとすることができるので好ましい。
なお、反応容器10内の周側面部にリング状の板部材を第二端部(種結晶配置部)と略平行に固定配置してもよい。この場合、炭化ケイ素単結晶を種結晶上に再結晶し成長させる際、種結晶50上には炭化ケイ素単結晶60のみを再結晶し成長させることができる。また、炭化ケイ素多結晶を発生させないか、あるいはリング状の板部材上に選択的に析出させることができる。なお、この場合、得られる炭化ケイ素単結晶60の径は、リング状の板部材の分だけ制約を受ける。
図1及び図4を用いて、炭化ケイ素単結晶の製造方法の実施形態の作用効果について従来の炭化ケイ素単結晶の製造方法と比較して説明する。
図4に示すように、従来の炭化ケイ素単結晶の製造方法の場合、昇華用原料140の表面には多結晶141が析出していた。析出した多結晶141は昇華した昇華用原料140、即ち原料ガスの上昇経路を塞ぐため、単結晶成長表面に原料ガスが供給されずらかった。
図4に示すように、従来の炭化ケイ素単結晶の製造方法の場合、昇華用原料140の表面には多結晶141が析出していた。析出した多結晶141は昇華した昇華用原料140、即ち原料ガスの上昇経路を塞ぐため、単結晶成長表面に原料ガスが供給されずらかった。
また昇華用原料140の表面における多結晶141の成長は、昇華雰囲気内の温度分布変化の原因の一つと考えられていた。一方、実施形態にかかる炭化ケイ素単結晶の製造方法によれば、図1に示すように、昇華用原料40の表面に多結晶が析出しないため、単結晶成長表面に原料ガスが供給されやすくなる。結果として高純度な炭化ケイ素単結晶が得られる。
(炭化ケイ素単結晶)
実施形態にかかる炭化ケイ素単結晶は、マイクロパイプを有しない。また炭化ケイ素単結晶は非破壊で光学的に画像検出した結晶欠陥(パイプ欠陥)は100個/cm2以下が好ましく、さらに好ましくは50個/cm2以下であり、より好ましくは10個/cm2以下である。結晶欠陥は、例えば、以下のようにして検出することができる。炭化ケイ素単結晶に対し、反射照明に適当量の透過照明を加えた照明を当て、炭化ケイ素単結晶の表面の結晶欠陥(パイプ欠陥)の開口部に顕微鏡焦点を合わせた際に、パイプ欠陥の内部へと続く部分が開口部の像よりも弱い影として開口部につながって観察することができる条件下で、炭化ケイ素単結晶の全面を走査して顕微鏡画像を得た後、顕微鏡画像を画像処理することにより、パイプ欠陥に特徴的な形状のみを抽出してその数を計測することにより、パイプ欠陥を検出することができる。
実施形態にかかる炭化ケイ素単結晶は、マイクロパイプを有しない。また炭化ケイ素単結晶は非破壊で光学的に画像検出した結晶欠陥(パイプ欠陥)は100個/cm2以下が好ましく、さらに好ましくは50個/cm2以下であり、より好ましくは10個/cm2以下である。結晶欠陥は、例えば、以下のようにして検出することができる。炭化ケイ素単結晶に対し、反射照明に適当量の透過照明を加えた照明を当て、炭化ケイ素単結晶の表面の結晶欠陥(パイプ欠陥)の開口部に顕微鏡焦点を合わせた際に、パイプ欠陥の内部へと続く部分が開口部の像よりも弱い影として開口部につながって観察することができる条件下で、炭化ケイ素単結晶の全面を走査して顕微鏡画像を得た後、顕微鏡画像を画像処理することにより、パイプ欠陥に特徴的な形状のみを抽出してその数を計測することにより、パイプ欠陥を検出することができる。
なお、上記の検出によると、炭化ケイ素単結晶の表面に付着した異物や研磨傷、空隙欠陥などのパイプ欠陥以外の欠陥が混在する中から、パイプ欠陥のみを非破壊で正確に検出することができ、しかも、例えば0.35μm程度の微小なパイプ欠陥までも正確に検出することができる。一方、従来から、溶融アルカリによりパイプ欠陥部分を選択的にエッチングし、拡大して検出する方法が行われているが、この方法の場合には、隣接するパイプ欠陥同士がエッチングにより互いに合一し、結果としてパイプ欠陥の数が少なく検出されてしまうという問題がある。炭化ケイ素単結晶における不純物元素の総含有量としては、10ppm以下であるのが好ましい。
本発明の実施形態にかかる炭化ケイ素単結晶は、多結晶や多型の混入やマイクロパイプ等の結晶欠陥がなく、極めて高品質であるので、絶縁破壊特性、耐熱性、耐放射線性等に優れ、半導体ウエハ等の電子デバイス、発光ダイオード等の光学デバイスなどに特に好適に用いられる。
以上、本発明の実施形態にかかる炭化ケイ素単結晶製造装置によると、高品質な炭化ケイ素単結晶を効率よく、かつ割れ等の破損がない状態で容易に製造することができる。
以上、本発明の実施形態にかかる炭化ケイ素単結晶製造装置によると、高品質な炭化ケイ素単結晶を効率よく、かつ割れ等の破損がない状態で容易に製造することができる。
以下に、本発明の実施例を示すが、本発明はこれら実施例に何ら制限されない。
(実施例1)
図1の炭化ケイ素単結晶の製造装置1を用意した。次に昇華用原料40として、高純度のテトラエトキシシラン重合体をケイ素源とし、レゾール型フェノール樹脂を炭素源とし、これらを均一に混合して得た混合物をアルゴン雰囲気下で加熱焼成して得られた炭化ケイ素粉末(6H(一部3Cを含む)、平均粒径が200μm)を容器内に充填した。そして炭化ケイ素単結晶の種結晶50として、種結晶厚0.9mm、直径20mmの6Hのアチソン結晶を配置した。
次に、加熱コイル20に電流を通電させこれを加熱しその熱で昇華用原料40を加熱した。その際反応容器本体12の底部Cを2550℃に設定し、一方、蓋11の温度測定点14の設定温度を2300℃とし、アルゴンガス雰囲気で圧力を50Torr(6645Pa)に維持した。このとき昇華用原料40の炭化ケイ素単結晶成長方向軸上の反応容器底部Cの温度と蓋11のB部分の温度差(ΔT)を原料高さ(t)で除したΔT/tは2.6℃/cmであった。その結果、昇華用原料40の表面に多結晶が析出することなく良好な単結晶60が得られた。
(実施例1)
図1の炭化ケイ素単結晶の製造装置1を用意した。次に昇華用原料40として、高純度のテトラエトキシシラン重合体をケイ素源とし、レゾール型フェノール樹脂を炭素源とし、これらを均一に混合して得た混合物をアルゴン雰囲気下で加熱焼成して得られた炭化ケイ素粉末(6H(一部3Cを含む)、平均粒径が200μm)を容器内に充填した。そして炭化ケイ素単結晶の種結晶50として、種結晶厚0.9mm、直径20mmの6Hのアチソン結晶を配置した。
次に、加熱コイル20に電流を通電させこれを加熱しその熱で昇華用原料40を加熱した。その際反応容器本体12の底部Cを2550℃に設定し、一方、蓋11の温度測定点14の設定温度を2300℃とし、アルゴンガス雰囲気で圧力を50Torr(6645Pa)に維持した。このとき昇華用原料40の炭化ケイ素単結晶成長方向軸上の反応容器底部Cの温度と蓋11のB部分の温度差(ΔT)を原料高さ(t)で除したΔT/tは2.6℃/cmであった。その結果、昇華用原料40の表面に多結晶が析出することなく良好な単結晶60が得られた。
(比較例1)
以下の点を除いて実施例1と同様に実験を行った。
加熱コイル120に電流を通電させこれを加熱しその熱で昇華用原料140を加熱した。その際反応容器本体112の底部Cを2590℃に設定し、一方、蓋111の温度測定点114の設定温度を2300℃とし、アルゴンガス雰囲気で圧力を50Torr(6645Pa)に維持した。このとき昇華用原料140の炭化ケイ素単結晶成長方向軸上のC点と14の温度差(ΔT)を原料高さ(t)で除したΔT/tは−1.0℃/cmであった。
その結果、昇華用原料140の表面に多結晶が盛り上がった状態で析出し、種結晶150表面に多結晶が再結晶した。
以下の点を除いて実施例1と同様に実験を行った。
加熱コイル120に電流を通電させこれを加熱しその熱で昇華用原料140を加熱した。その際反応容器本体112の底部Cを2590℃に設定し、一方、蓋111の温度測定点114の設定温度を2300℃とし、アルゴンガス雰囲気で圧力を50Torr(6645Pa)に維持した。このとき昇華用原料140の炭化ケイ素単結晶成長方向軸上のC点と14の温度差(ΔT)を原料高さ(t)で除したΔT/tは−1.0℃/cmであった。
その結果、昇華用原料140の表面に多結晶が盛り上がった状態で析出し、種結晶150表面に多結晶が再結晶した。
(比較例2)
以下の点を除いて実施例1と同様に実験を行った。
加熱コイル120に電流を通電させこれを加熱しその熱で昇華用原料140を加熱した。その際反応容器本体112の底部Cを2500℃に設定し、一方、蓋111の温度測定点114の設定温度を2300℃とし、アルゴンガス雰囲気で圧力を50Torr(6645Pa)に維持した。このとき昇華用原料40の炭化ケイ素単結晶成長方向軸上のC点と14の温度差(ΔT)を原料高さ(t)で除したΔT/tは6.0℃/cmであった。
その結果、昇華用原料40の表面に多結晶が析出することはなかったが、種結晶150表面に多結晶が再結晶した。また成長結晶中に炭化現象が見られた。
以上の実施例1及び比較例1、2の結果より、昇華用原料40にΔT/tが生じるように加熱することで、昇華用原料40の表面に多結晶を形成することなく高純度の単結晶を製造できることが分かった。
以下の点を除いて実施例1と同様に実験を行った。
加熱コイル120に電流を通電させこれを加熱しその熱で昇華用原料140を加熱した。その際反応容器本体112の底部Cを2500℃に設定し、一方、蓋111の温度測定点114の設定温度を2300℃とし、アルゴンガス雰囲気で圧力を50Torr(6645Pa)に維持した。このとき昇華用原料40の炭化ケイ素単結晶成長方向軸上のC点と14の温度差(ΔT)を原料高さ(t)で除したΔT/tは6.0℃/cmであった。
その結果、昇華用原料40の表面に多結晶が析出することはなかったが、種結晶150表面に多結晶が再結晶した。また成長結晶中に炭化現象が見られた。
以上の実施例1及び比較例1、2の結果より、昇華用原料40にΔT/tが生じるように加熱することで、昇華用原料40の表面に多結晶を形成することなく高純度の単結晶を製造できることが分かった。
1…炭化ケイ素単結晶の製造装置
100…従来の炭化ケイ素単結晶の製造装置
10、110…反応容器
11、111…蓋
12、112…反応容器本体
13、113…周側面部
20、120…加熱コイル
30、130…石英管
31、131…支持棒
40、140…昇華用原料
50、150…炭化ケイ素単結晶の種結晶
60…炭化ケイ素単結晶
100…従来の炭化ケイ素単結晶の製造装置
10、110…反応容器
11、111…蓋
12、112…反応容器本体
13、113…周側面部
20、120…加熱コイル
30、130…石英管
31、131…支持棒
40、140…昇華用原料
50、150…炭化ケイ素単結晶の種結晶
60…炭化ケイ素単結晶
Claims (2)
- 反応容器内の第一端部に昇華用原料を収容する工程と、
前記反応容器内の昇華用原料に略対向する第二端部に炭化ケイ素単結晶の種結晶を配置する工程と、
前記反応容器底部の温度よりも前記昇華用原料の表面の温度が高くなるように前記昇華用原料を加熱し昇華させる工程と、
昇華させた昇華用原料を前記種結晶上に再結晶させて炭化ケイ素単結晶を成長させる工程と、を有することを特徴とする炭化ケイ素単結晶の製造方法。 - 前記昇華用原料の表面と前記反応容器底部の温度差を原料高さで除した値で定義されるΔT/tは0〜5℃/cmであることを特徴とする請求項1記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005145778A JP2006321678A (ja) | 2005-05-18 | 2005-05-18 | 炭化ケイ素単結晶の製造方法及び製造装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2005145778A Pending JP2006321678A (ja) | 2005-05-18 | 2005-05-18 | 炭化ケイ素単結晶の製造方法及び製造装置 |
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-
2005
- 2005-05-18 JP JP2005145778A patent/JP2006321678A/ja active Pending
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