JP4162075B2 - 非水電解質二次電池およびその製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高容量かつ充放電サイクル寿命特性に優れた非水電解質二次電池およびその製造法に関し、特にその負極の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
リチウムまたはリチウム化合物を負極とする非水電解質二次電池は、高電圧で高エネルギー密度が期待され、多くの研究が行われている。非水電解質二次電池の正極活物質としては、LiMn2O4、LiCoO2、LiNiO2、V2O5、Cr2O5、MnO2、TiS2、MoS2などの遷移金属酸化物や遷移金属カルコゲン化合物が知られている。これらは層状もしくはトンネル構造を有し、リチウムイオンを吸蔵・放出することができる。一方、負極活物質としては、金属リチウムの検討が数多く行われている。しかしながら、金属リチウムは充電時に表面に樹枝状リチウムを析出させるため、充放電効率の低下や、樹枝状リチウムと正極との接触による内部短絡の問題が生じる。
【0003】
このような問題を解決するために、リチウムイオンを吸蔵・放出できる一方でリチウムの樹枝状成長を抑制し得るリチウム−アルミニウム合金などのリチウム合金を負極に用いる検討が試みられている。しかし、合金負極は、深い充放電の繰り返しにより微細化し、それに伴い容量が低下するという問題を有する。このような状況のもと、現在はリチウムを可逆的に吸蔵・放出でき、サイクル性と安全性に優れた黒鉛系の炭素材料を負極に用いたリチウムイオン電池が実用化されている。
【0004】
負極活物質としての黒鉛の理論容量は372mAh/gである。一方、現在実用化されているリチウムイオン電池では、負極活物質の実際の充放電容量は350mAh/gである。つまり、黒鉛を負極活物質として用いた電池は、ほぼ容量の限界にきているといえる。また、黒鉛は理論密度が2.2g/ccと低く、体積あたりの負極に含まれる黒鉛重量はさらに減少する。そのため体積あたりの容量の大きな金属材料を負極に利用することが望まれている。
【0005】
特開平7−122274号公報および特開平7−235293号公報は、負極に金属酸化物を用いることを提案している。例えば結晶質のSnO、SnO2などが、従来のWO2に比べて高容量をもつことが示されている。また、特開平7−288123号公報は、SnSiO3、SnSi1-xPxO3などの非晶質酸化物を負極に用いることでサイクル特性が改善されると述べている。
【0006】
特願平9−132298号明細書は、特定の金属塩および半金属塩が、高容量およびサイクル寿命の点で非水電解質二次電池の負極材料として優れることを示している。金属塩および半金属塩には、硝酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、チオシアン酸塩、シアン酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、ホウ酸水素塩、リン酸水素塩、セレン酸塩、セレン酸水素塩、テルル酸塩、テルル酸水素塩、タングステン酸塩、モリブデン酸塩、チタン酸塩、クロム酸塩、ジルコン酸塩、ニオブ酸塩、タンタル酸塩、マンガン酸塩、バナジン酸塩よりなる群から選択される少なくとも1種が用いられている。
【0007】
特開平10−233208号公報は、Si、Ge、Sn、Pb、Bi、P、B、Ga、In、Al、As、Sb、Zn、Ir、Mg、Ca、SrおよびBaよりなる群から選択される2種以上の元素と、酸素、硫黄、セレンおよびテルルよりなる群から選択される1種以上の元素とを含む結晶質化合物が、高容量でサイクル寿命に優れた負極材料であることを提案している。
【0008】
特開平9−246472号公報は、金属酸化物に代わって、体積あたりの放電容量の増加や初充電時の不可逆容量の抑制を目的に、様々な合金材料を提案している。特開平11−86854号公報は、合金材料の一粒子内にリチウムを吸蔵できる相と吸蔵しない相を共存させることにより、充電状態(リチウム吸蔵状態)応力をリチウムを吸蔵しない相で緩和させてサイクル特性の向上を図ることが提案されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
携帯用機器の高機能化や電気自動車用を始めとする大型電池の開発の動きが活発化するなか、駆動用電源としての電池の長寿命化に対する要求が一層強まっている。このような要望に対して、上記の負極材料は、未だ充分なサイクル性を与えるに至っていない。すなわち、合金材料の組成や相構造の改良により、充放電の可逆性を向上させることはできるが、リチウムを吸蔵可能な金属や合金に共通の充放電時の体積変化が大きいという問題は、未だ解決されていない。
【0010】
結晶学的あるいは冶金学的な数値に基づくと、充電時の活物質の膨張率は以下のようになる。例えば活物質がSnの場合、1モルのSnに対する冶金学的なLiの最大挿入量は4.4モルである。また、結晶格子体積に基づくと、リチウム挿入前に対する挿入後のSnの理論体積膨張率は358%となる。このような大きな膨張率を有する負極活物質を、従来の電極の構成や方法に従って製造した場合、特に充電時に、電極の膨張や形態変化が大きくなる。そのような従来の電極で電池を構成した場合、充放電時の電極の変形や電解液の偏在によるサイクル特性の悪化や電池外観の変形をもたらすおそれがある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記に鑑み、充放電時の膨脹・収縮にともなう負極の変形や電解液の偏在を防止することにより、高容量で充放電サイクル寿命特性に優れた非水電解質二次電池を提供するものである。
【0012】
すなわち、本発明は、充放電可能な正極、充放電可能な負極、および非水電解質からなり、前記負極が、連続気孔を有する発泡体である集電体および前記連続気孔に充填された負極活物質からなり、前記集電体の比表面積が0.002m2/g以上0.06m2/g以下であり、前記集電体の空隙率が60%以上97%以下であり、前記負極活物質の平均粒径dが、0.5μm以上50μm以下であり、前記連続気孔の合計体積の10%以上25%以下が前記負極活物質で充填されており、前記負極活物質の表面積に対する前記負極活物質と前記集電体との接合面積の割合が、5%以上40%以下であり、前記負極活物質が、Si単体またはSiを含む合金からなる非水電解質二次電池に関する。
ここで、前記負極活物質の表面積に対する前記負極活物質と前記集電体との接合面積の割合は、負極の任意の断面のSEM観察により測定することができる。
【0013】
前記集電体は、金属または合金からなり、CuおよびNiの少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0014】
本発明は、また、充放電可能な正極を作製する工程A、Si単体またはSiを含む合金を負極活物質として含む充放電可能な負極を作製する工程B、非水電解質を調製する工程C、ならびに前記正極、前記負極および前記非水電解質を用いて電池を組み立てる工程Dからなり、工程Bが、連続気孔を有する発泡体であって、比表面積が0.002m2/g以上0.06m2/g以下であり、空隙率が60%以上97%以下である集電体に、平均粒径dが0.5μm以上50μm以下の負極活物質を充填することにより、前記連続気孔の合計体積の10%以上25%以下が前記負極活物質で充填されており、前記負極活物質の表面積に対する前記負極活物質と前記集電体との接合面積の割合が5%以上40%以下である負極を得る工程である非水電解質二次電池の製造法に関する。
【0016】
本発明は、また、工程Bが、前記集電体へ前記負極活物質を塗工により充填し、続いて前記負極活物質を焼結する工程b2からなる非水電解質二次電池の製造法(第2の製造法)に関する。
【0017】
本発明は、また、工程Bが、前記集電体へ前記負極活物質および結着剤からなる混合物を塗工により充填する工程b3からなる非水電解質二次電池の製造法(第3の製造法)に関する。
【0018】
第2および第3の製造法は、負極活物質がSi単体またはSiを含む合金からなる場合に有効である。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の非水電解質二次電池は、充放電による活物質の膨脹・収縮にともなう負極の変形・電解液の偏在化を抑制したものであり、高容量で優れたサイクル特性を有する点に主な特徴を有する。
【0020】
充放電による負極の変形・電解液の偏在化のメカニズムは、概ね次のようである。すなわち、負極活物質としてリチウムを電気化学的に吸蔵可能な金属または合金を用いた場合、充電により生成するMxLi(M:リチウムを吸蔵可能な金属または合金)の体積は、充電前のMに比較して増加している。例えば、金属Snは、リチウムを最大量吸蔵するとLi4.4Snとなる。この場合の充電による体積増加率は3.58倍である(容量は993mAh/g)。一方、負極活物質としてリチウムをインターカレーション反応により吸蔵する炭素材料、例えば黒鉛を用いた場合、その体積増加率は約10%である(容量は372mAh/g)。このように、リチウムを電気化学的に吸蔵可能な金属または合金を負極活物質に用いた場合、非常に高容量である一方、充電時の体積変化が大きい。
【0021】
充電時の負極活物質の膨張により、負極集電体の空隙率が過度に低い場合には、負極の形状変化や破壊が起こる。また、負極の大きな体積変化にともなって、電解液の分布が不均一となり、負極内での電気化学反応が均質に進行しなくなる。このため、円滑に充放電反応が行われる部分と、そうでない部分とが生じる。その結果、設計時に想定した利用率や充電深度から乖離する部分、すなわちサイクル寿命の観点から許容される利用率や充電深度を越える部分が発生する。特に充電時には、負極の一部に金属リチウムが樹枝状に析出し、サイクル特性が低下するおそれがある。以上の現象は、活物質の粒径が過度に大きい場合または集電体への活物質充填率が過度に大きい場合にも起こりうる。一方、負極集電体の空隙率が過度に高い場合、充放電による活物質の体積変化に対しては充分な空間を確保できるが、高すぎる空隙率のために、充放電時の集電性が不十分な状態となり、その結果、サイクル性が劣化する。以上の現象は、活物質の粒径が過度に小さい場合または集電体への活物質充填率が過度に小さい場合にも起こりうる。従って、負極集電体の空隙率には好適範囲が存在する。また、集電体の比表面積は、集電体の空隙率に応じて変化するため、空隙率の好適範囲によって比表面積の好適範囲が決まる。
【0022】
また、活物質の膨張率はその種類により異なるが、活物質の粒径と集電体への活物質充填率にも、負極の体積変化を抑制する観点から要求される好適範囲が存在する。その好適範囲において、負極の高容量を達成し、かつ、集電性を確保するには、必要量の活物質が集電体に充填されるとともに、活物質粒子と集電体とが必要充分に接合している必要がある。そのためには、活物質の粒径と集電体への活物質充填率の好適範囲に応じて、集電体の比表面積をさらに好適化する必要がある。
【0023】
ここで、活物質粒子と集電体との接合面積が過度に大きい場合、充放電による活物質の体積変化に応じて、集電体に引張または圧縮応力が作用し、負極の形状変化や破壊が発生してしまう。一方、活物質粒子と集電体との接合面積が過度に小さい場合、両者間の接合強度が弱いため、充放電による活物質の体積変化に応じて活物質粒子と集電体との接触が不十分になり、その結果、サイクル性が劣化する。従って、活物質粒子と集電体との接合面積も好適化する必要がある。
【0024】
本発明者らは鋭意検討の結果、連続気孔を有する集電体および前記集電体に充填された負極活物質からなる負極において、負極の形状変化や破壊ならびに電解液の偏在化を防止し、容量、集電性およびサイクル性を確保し得る以下の条件を見出し、本発明を完成するに至った。
【0025】
まず、集電体の比表面積の好適範囲は0.002m2/g以上0.06m2/g以下、さらに好ましくは0.004m2/g以上0.02m2/g以下である。比表面積が0.002m2/g未満では、負極の形状変化や破壊、電解液の偏在化が生じる。一方、比表面積が0.06m2/gをこえると、充放電時の集電性が不十分な状態となり、サイクル性が劣化する。
集電体の空隙率の好適範囲は60%以上97%以下、さらに好ましくは80%以上92%以下である。空隙率が60%未満では、負極の形状変化や破壊、電解液の偏在化が生じ、97%をこえると、充放電時の集電性が不十分な状態となり、サイクル性が劣化する。
【0026】
負極活物質の平均粒径dの好適範囲は0.5μm以上50μm以下、さらに好ましくは10μm以上30μm以下である。平均粒径dが0.5μm未満または50μmをこえると、負極の形状変化や破壊、電解液の偏在化が生じる。なお、「平均粒径」における「平均」とは、活物質粒子の体積基準の平均(D50)をいう。
集電体への活物質充填率(集電体が有する連続気孔の合計体積に占める活物質体積の割合)に関しては、集電体が有する連続気孔の合計体積の10%以上25%以下、さらに好ましくは15%以上22%以下が、負極活物質で充填されていることが必要である。連続気孔の合計体積の10%未満しか活物質で充填されていない場合には、電池の高容量化が困難になり、連続気孔の合計体積の25%をこえて活物質が充填されている場合には、負極の形状変化や破壊、電解液の偏在化が生じる。
【0027】
負極活物質と集電体との接合面積の好適範囲は、負極活物質の表面積の5%以上40%以下、さらに好ましくは10%以上30%以下である。上記接合面積の割合が5%未満になると、充放電による活物質の体積変化に応じて活物質粒子と集電体との接触が不十分になり、サイクル性が劣化する。一方、接合面積の割合が40%をこえると、集電体に引張または圧縮応力が作用し、負極の形状変化や破壊が発生してしまう。
【0028】
負極集電体は、CuおよびNiの少なくとも1種を含む金属もしくは合金からなることが望ましい。CuとNiは全率固溶体を形成するため、集電体がCuおよびNiの両方を含む場合のCu/Niの比率は限定されない。集電体の構成材料には、上記以外にも、電池内において化学変化を起こさない電子伝導体、例えば、ステンレス鋼、インコネル合金、ハステロイ等を用いることができる。
【0029】
集電体は、例えば、Cu粉末、有機バインダーおよび水からなるスラリーに、界面活性剤および蒸発型発泡剤を添加し、得られた混合物を薄膜に成形後、熱処理してCu粉末を焼結することにより、製造することができる。また、発泡ウレタン等のような、三次元網目構造を有する高分子樹脂からなるシートの表面に、無電解メッキ法による前処理でCuを平均厚0.1μmで付着させ、電気メッキの後、得られたシートから樹脂を焼却除去し、還元処理することにより、製造することができる。ただし、集電体の製造方法はこれらの方法に限るものではない。
【0030】
本発明の一実施形態では、負極活物質は、Sn単体またはSnを含む合金からなる。Snを含む合金としては、例えば、Snと、Ag、Au、Bi、Cd、Co、Cr、Cu、Ge、Fe、In、Mn、Mo、Ni、Pb、Pt、Sb、Ti、WおよびZnよりなる群から選択される少なくとも1種の元素とを含む合金が好ましい。
【0031】
本発明の別の一実施形態では、負極活物質は、Si単体またはSiを含む合金からなる。Siを含む合金としては、例えば、Siと、Ag、Au、Bi、Cd、Co、Cr、Cu、Ge、Fe、In、Mg、Mn、Mo、Ni、Pb、Pt、Sb、Ti、V、WおよびZnよりなる群から選択される少なくとも1種の元素とを含む合金が好ましい。
【0032】
負極活物質がSn単体またはSnを含む合金からなる場合、負極集電体への負極活物質の充填方法としてメッキ法を用いることができる。電解メッキを採用してもよく、無電解メッキを採用してもよい。メッキ後、集電体および集電体に付着した活物質粒子を、それらの融点未満の温度で熱処理すると、集電体と活物質粒子の接合力が増大するため、より優れた負極が得られる。
【0033】
負極活物質がSn単体またはSnを含む合金からなる場合、および負極活物質がSi単体またはSiを含む合金からなる場合には、負極集電体への負極活物質の充填方法として、負極活物質を集電体に塗布した後、負極活物質を焼結する方法を用いることができる。また、負極活物質および結着剤からなる混合物を集電体に塗布する方法を用いることもできる。
結着剤量は、負極活物質100重量部あたり、0.3重量部以上5重量部以下が好ましい。結着剤量が0.3重量部未満の場合、活物質と集電体との結合力が弱くなり、5重量部をこえると、負極の電子伝導性が低下する。
【0034】
負極活物質を製造する好ましい方法の1つは、ガスアトマイズ法である。その他に、液体急冷法、イオンビームスパッタリング法、真空蒸着法、メッキ法、気相化学反応法、メカニカルアロイ法などを適用することができる。
【0035】
本発明におけるセパレータとしては、大きなイオン透過度および所定の機械的強度を有する電子絶縁性の微多孔性薄膜が好ましく用いられる。セパレータの材質としては、耐有機溶剤性と疎水性の観点からポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂が用いられ、耐熱性の観点からアラミド樹脂などが用いられる。これらは単独で用いてもよく、複合して用いてもよい。セパレータの厚みは5〜100μm、さらには5〜20μmが好ましい。セパレータの空隙率は、イオンの透過性、電解液の粘度、セパレータ自身の機械的物性などに応じて決定されるが、一般的には20〜80%であることが望ましい。
【0036】
本発明では、リチウム含有遷移金属酸化物などの従来公知の正極材料を用いることができる。リチウム含有遷移金属酸化物としては、例えば、LixCoO2、LixNiO2、LixMnO2、LixCoyNi1-yO2、LixCoyM1-yOz、LixNi1-yMyOz、LixMn2O4、LixMn2-yMyO4(M=Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、Bのうち少なくとも一種)、(ここでx=0〜1.2、y=0〜0.9、z=2.0〜2.3)などが挙げられる。ここで、上記のx値は、充放電開始前の値であり、充放電により増減する。ただし、遷移金属カルコゲン化物、バナジウム酸化物およびそのリチウム化合物、ニオブ酸化物およびそのリチウム化合物、有機導電性物質である共役系ポリマー、シェブレル相化合物等の他の正極材料を用いることも可能である。また、複数の異なる正極材料を混合して用いることも可能である。正極活物質の平均粒径は、特に限定されないが、1〜30μmであることが好ましい。
【0037】
本発明で使用される正極用導電剤は、用いる正極材料の充放電電位において、化学変化を起こさない電子伝導性材料であれば何でもよい。例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛など)、人造黒鉛などのグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類、炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維類、フッ化カーボン、アルミニウム等の金属粉末類、酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー類、酸化チタンなどの導電性金属酸化物あるいはポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料などを単独又はこれらの混合物として含ませることができる。これらの導電剤のなかでは、人造黒鉛、アセチレンブラックが特に好ましい。導電剤の添加量は、特に限定されないが、正極材料に対して1〜50重量%が好ましく、特に1〜30重量%が好ましい。カーボンやグラファイトでは2〜15重量%が特に好ましい。
【0038】
本発明に用いられる正極用結着剤は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれであってもよい。好ましい結着剤は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE樹脂)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体または前記材料の(Na+)イオン架橋体、エチレン−メタクリル酸共重合体または前記材料の(Na+)イオン架橋体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体または前記材料の(Na+)イオン架橋体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体または前記材料の(Na+)イオン架橋体を挙げることができる。これらの材料は単独又は混合物として用いることができる。これらの材料の中でより好ましい材料はポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。
【0039】
本発明に用いられる正極用集電体としては、用いる正極材料の充放電電位において化学変化を起こさない電子伝導体であれば何でもよい。正極集電体の構成材料としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、チタン、炭素、導電性樹脂などの他に、アルミニウムやステンレス鋼の表面にカーボンあるいはチタンを付与したものが用いられる。特に、アルミニウムあるいはアルミニウム合金が好ましい。これらの材料の表面を酸化して用いることもできる。また、表面処理により集電体表面に凹凸を付けることが望ましい。正極集電体の形状は、フォイルの他、フィルム、シート、ネット、パンチされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群、不織布の成形体などが用いられる。正極集電体の厚みは、特に限定されないが、1〜500μmのものが用いられる。
【0040】
本発明に用いられる負極用結着剤は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれであってもよい。好ましい結着剤は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE樹脂)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体または前記材料の(Na+)イオン架橋体、エチレン−メタクリル酸共重合体または前記材料の(Na+)イオン架橋体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体または前記材料の(Na+)イオン架橋体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体または前記材料の(Na+)イオン架橋体を挙げることができる。これらの材料は単独又は混合物として用いることができる。これらの材料の中でより好ましい材料は、スチレンブタジエンゴム、ポリフッ化ビニリデン、エチレン−アクリル酸共重合体または前記材料の(Na+)イオン架橋体、エチレン−メタクリル酸共重合体または前記材料の(Na+)イオン架橋体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体または前記材料の(Na+)イオン架橋体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体または前記材料の(Na+)イオン架橋体である。
【0041】
本発明に用いられる非水電解質は、溶媒と、その溶媒に溶解するリチウム塩とから構成されている。非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネ−ト(EC)、プロピレンカ−ボネ−ト(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)などの環状カーボネート類、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)などの鎖状カーボネート類、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの脂肪族カルボン酸エステル類、γ−ブチロラクトン等のγ−ラクトン類、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,2−ジエトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)等の鎖状エーテル類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル類、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、プロピルニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エチルエーテル、1,3−プロパンサルトン、アニソール、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、などの非プロトン性有機溶媒を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。なかでも環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合溶媒または環状カーボネートと鎖状カーボネートと脂肪族カルボン酸エステルとの混合溶媒が好ましい。
【0042】
これらの溶媒に溶解するリチウム塩としては、例えばLiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAlCl4、LiSbF6、LiSCN、LiCl、LiCF3SO3、LiCF3CO2、Li(CF3SO2)2、LiAsF6、LiN(CF3SO2)2、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、LiCl、LiBr、LiI、クロロボランリチウム、四フェニルホウ酸リチウム、イミド類等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよいが、少なくともLiPF6を用いることが好ましい。
【0043】
特に好ましい非水電解質は、ECまたはPCなどの環状カーボネート類を少なくとも含み、LiPF6を含む非水電解質である。非水電解質を電池内に添加する量は、特に限定されない。正極材料や負極材料の量や電池のサイズに応じた必要量の非水電解質を用いる。溶質の非水溶媒に対する溶解量は、特に限定されないが、0.2〜2mol/l、さらには0.5〜1.5mol/lとすることが好ましい。
【0044】
放電特性や充放電特性を改良する目的で、他の化合物を電解質に添加することも有効である。例えば、トリエチルフォスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n−グライム、ピリジン、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、クラウンエーテル類、第四級アンモニウム塩、エチレングリコールジアルキルエーテル、リン酸エステルなどを用いることができる。
【0045】
本発明における負極板と正極板の構成は、少なくとも正極合剤面の対向面に負極合剤面が存在していることが好ましい。また、電池の形状はコイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型、電気自動車等に用いる大型のものなどいずれにも適用できる。また、本発明の非水電解質二次電池は、携帯情報端末、携帯電子機器、家庭用小型電力貯蔵装置、自動二輪車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等に用いることができるが、特にこれらに限定されるわけではない。
【0046】
【実施例】
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
《実施例1〜9および比較例1〜8》
(i)負極集電体の作製
負極集電体は、Cu粉末、有機バインダーおよび水からなるスラリーに、界面活性剤と蒸発型発泡剤を添加し、得られた混合物を薄膜に成形し、熱処理し、Cu粉末を焼結させることにより作製した。Cu粉末の粒径、熱処理温度と時間、および界面活性剤と蒸発型発泡剤の種類を調整することで、表1に示す物性を有する各集電体を作製した。集電体はすべて厚さ100μmとした。なお、これらの集電体を得るための原料組成および諸条件は当業者に明らかであり、当業者であれば従来の方法に沿って容易に作製することができる。
【0047】
(ii)負極の作製
メッキ法により、上記集電体に負極活物質を充填した。ここでは電解メッキを採用した。Snメッキには、0.1モル濃度のH2SO4と0.1モル濃度のSnSO4を溶解したメッキ液(水溶液)を用いた。このメッキ液100mlに上記の集電体を浸漬した。浴温度は20℃とし、浸漬時間は15分間とした。得られた負極に含まれるSn量を、化学分析法でSnの定量分析を行うことにより求めた。
【0048】
(iii)負極の物性
得られた負極の厚さ、集電体の空隙率、集電体の比表面積、活物質の平均粒径、活物質充填率(集電体が有する連続気孔の合計体積に占める活物質体積の割合)、活物質の表面積に対する活物質と集電体との接合面積の割合を表1に示す。表1に示すように負極の厚さは全て100μmであった。
なお、集電体の空隙率および活物質充填率は、水銀ポロシメータ法を用いて求めた。負極活物質の表面積に対する負極活物質と集電体との接合面積の割合は、負極断面のSEM観察から求めた。
【0049】
(iv)試験セルの作製
得られた負極の特性を明らかにするために、図1に示す試験セルを以下のように作製した。まず、上記負極を直径16mmに打ち抜き、試験電極1とした。試験電極1をケース2の中に置き、微多孔性ポリプロピレンセパレータ3を試験電極上に置いた。一方、エチレンカーボネート(EC)と1,2−ジメトキシエタン(DME)とを体積比1:1含む混合溶媒に、過塩素酸リチウム(LiClO4)を1モル/lの濃度で溶解し、電解液を調製した。この電解液をセパレータ3の上から注液した。次いで、内側に直径17.5mmの金属Li(対極4)を張り付け、外周部にポリプロピレン製のガスケット5を付した封口板6を用いてケース2の開口部を封口し、試験セルとした。
【0050】
(v)試験セルの評価
試験セルの充放電を45℃で繰り返し、負極(試験電極1)の膨張・収縮の程度を調べた。まず、試験セルを0.5mAの定電流で、試験電極1の電位が対極4に対して0Vになるまでカソード分極(試験電極1を負極と見る場合には充電に相当)し、次に試験電極1の電位が対極4に対して1.5Vになるまでアノード分極(試験電極1を負極と見る場合には放電に相当)した。そして、初期充電時(1回目のカソード分極後)の負極の厚さと空隙率を求めた。また、充放電を100サイクル繰り返した後の放電容量と、初期の放電容量から、容量維持率を求めた。結果を表1に示す。
さらに、すべての試験セルについて、100サイクルの充放電を繰り返した後の試験電極を取り出して観察したところ、試験電極の表面に金属リチウムの析出は見られなかった。この結果により、本実施例の負極にデンドライトは発生しないことを確認した。
【0051】
(vi)円筒型電池の作製
次に、前記負極を用いた電池のサイクル特性を評価するために、図2に示す円筒型電池を以下のように作製した。
正極活物質であるLiMn2O4は、Li2CO3とMn3O4とを所定のモル比で混合し、900℃で加熱することによって合成した。さらに、これを100メッシュ以下に分級したものを正極活物質とした。正極活物質100gに対して導電剤として炭素粉末を10g、結着剤としてポリ4フッ化エチレンの水性ディスパージョンを8gと純水を加え、ペーストを得た。得られたペーストをチタンの芯材に塗布し、乾燥、圧延して正極11を得た。
【0052】
スポット溶接で取り付けた芯材と同材質の正極リード14を有する正極11と、スポット溶接で取り付けた芯材と同材質の負極リード15を有する負極12とを、両極板より幅広の帯状微多孔性ポリプロピレン製セパレータ13を介して渦巻状に捲回することで、電極体を構成した。次いで、電極体の上下それぞれにポリプロピレン製の絶縁板16、17を配して電槽18に挿入した。電槽18の上部に段部を形成させた後、試験セルに用いたのと同じ電解液を電槽18に注液した。最後に正極端子20を有する封口板19で電槽18の開口部を密閉して円筒型電池とした。
【0053】
(vii)円筒型電池の評価
得られた円筒型電池の充放電を45℃で、充放電電流4.0mA/cm2(30分率相当)、充放電電圧範囲4.3V〜2.6Vで繰り返し、高率充放電における1サイクル目の放電容量に対する100サイクル目の容量維持率を求めた。結果を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
[集電体の空隙率に関する考察]
実施例1〜3では、初期充電時においても、負極の厚さは100μmを維持しており、負極の空隙率は15%に留まっている(実施例1)。100サイクル後の容量維持率も良好である。一方、比較例1では、負極の厚さが充電時に顕著に増大しており、負極の空隙率は12%にまで低下している。100サイクル後の容量維持率も40%と低い値である。比較例2でも、100サイクル後の容量維持率は45%と低い値である。
【0056】
この結果については、次のように考える。すなわち、活物質であるSnの1モルに対するLiの最大挿入量が4.4モルであると仮定すると、Li挿入前に対する挿入後(充電時)の理論体積膨張率は358%である。しかしながら、表1のとおり負極の空隙率の大きな実施例1〜3では、膨張分の体積が負極内の空間に収容されるため、負極の厚さは変化することがなく、充放電に伴う負極の形状変化が少ないと考えられる。その結果、サイクル特性も良化していると考えられる。
【0057】
これに対して、負極集電体の空隙率の小さな比較例1では、充電時の活物質の膨張を負極内の空間に収容することが困難であるため、負極の厚さが大幅に増加し、負極形状が大幅に変化してサイクル特性が悪化すると考えられる。しかも、充電時の空隙率は12%であるから、活物質への電解液の供給も不十分になっていると考えられる。一方、比較例2のように、負極集電体の空隙率が97%をこえる場合には、空隙率が過剰に高いため充放電時の集電性が不十分となり、サイクル特性が劣化すると考えられる。集電体の比表面積は、集電体の空隙率に応じて変化するため、好適な比表面積の範囲は好適な空隙率の範囲に対応している。
【0058】
[活物質の平均粒径に関する考察]
実施例4、5の負極は、充電時においても厚さ100μmを維持しており、空隙率は35%までの低下に留まっている。さらに、100サイクル後の容量維持率も良好である。一方、比較例3では、活物質の平均粒径が過度に小さいため、高容量を達成するのに必要な充填率を得る場合、集電体の表面積の全面に活物質を付着させる必要がある。この場合、充電時には集電体と付着している活物質粒子との間に引張・圧縮応力が作用する。その結果、負極の厚さが大幅に増大し、100サイクル後の容量維持率も30%と低くなると考えられる。また、比較例4では、活物質の平均粒径が過度に大きいため、充電時の活物質の膨張を負極内の空間に収容することが困難となり、負極の厚さが大幅に増加し、サイクル特性が悪化していると考えられる。
【0059】
[活物質の充填率に関する考察]
活物質の平均粒径が25μmである場合、充填率の異なる実施例6と7の負極は、いずれも充電時において厚さ100μmを維持しており、空隙率は15%に留まっている。100サイクル後の容量維持率も良好である。一方、比較例5では、活物質の充填率が過度に小さいため、高容量を達成できない。また、比較例6では、活物質の充填率が過度に大きいため、充電時の活物質の膨張を負極内の空間に収容することが困難となり、負極の厚さが大幅に増加している。また、このような充放電による電極形状の大幅な変化がサイクル特性の悪化をもたらしていると考えられる。しかも、充電時の空隙率は3%であるから、活物質への電解液の供給も不十分と考えられる。
【0060】
[活物質と集電体との接合面積に関する考察]
負極活物質の表面積に対する負極活物質と集電体との接合面積の割合がそれぞれ5%および40%である実施例8と9の負極では、充電時においても活物質と集電体との接合が維持されていると考えられ、負極の厚さは100μmを維持している。また、充電時の空隙率は35%に留まっている。100サイクル後の容量維持率も良好である。一方、比較例7では、負極活物質の表面積に対する負極活物質と集電体との接合面積の割合が過度に小さいため、充電時に活物質が集電体と離れてしまい、サイクル特性が悪化していると考えられる。また、比較例8の電極では、負極活物質の表面積に対する負極活物質と集電体の接合面積の割合が過度に大きいため、充電時には集電体と付着粒子間に引張・圧縮応力が作用する。その結果、負極の厚さが増大し、100サイクル後の容量維持率も40%と低くなると考えられる。
【0061】
なお、実施例2の電池は、高容量でありながら、サイクル維持率が特に優れていた。実施例2の負極において、集電体の空隙率は90%、比表面積は0.025m2/gであり、この集電体の連続気孔内には平均粒径25μmのSnが充填率が21%で保持されており、Sn粒子同士の間隔は約40μmであった。また、負極活物質の表面積に対する、負極活物質と集電体との接合面積の割合は20%であった。この電極の初期充電を行ったところ、Sn粒子同士が点接触するまで膨張した。そのため、負極の厚さが変化することはなかった。従って、実施例2の負極は、空隙を最も有効に利用できている状態と言える。また、充放電を繰り返しても活物質と集電体との接着は維持されていた。
なお、集電体へ負極活物質を付着させる際に、本実施例ではSn単体のメッキを行ったが、Snを含む合金を用いた場合にも同様の結果が得られた。
【0062】
《実施例10〜12》
本実施例では、負極集電体の組成について説明する。負極集電体は、空隙率95%、比表面積0.035m2/g、厚さ100μmのものを用いた。集電体の作製方法は、原料粉末組成が異なること以外は先述の実施例と同一である。集電体の組成にはCu、Cu0.5Ni0.5の固溶体またはNiを選択した。これらの集電体を用いたこと以外、先述の実施例と同様の操作によって、表2に示す物性の負極を作製し、評価した。実施例10〜12の負極はすべて、充電時においても、厚さ100μmを維持しており、充電時の空隙率は20%に留まっている。100サイクル後の容量維持率も良好である。なお、CuとNiからなる合金としては、上記以外のすべての組成を用いることができる。
【0063】
【表2】
【0064】
《実施例13、14》
本実施例では、負極集電体への負極活物質の付着方法として、負極活物質を集電体に塗布した後、焼結する方法を採用する場合について説明する。負極集電体には、空隙率95%のCuを使用した。負極活物質には、Cu6Sn5またはNiSi2を用いた。負極活物質の製造には、ガスアトマイズ法を採用した。各活物質粉末と増粘性結着剤としてのカルボキシメチルセルロースとを重量比95:5の割合で混合し、さらに水を加えてペーストを得た。このペーストを上述のCu集電体に塗布・充填し、水素気流中で乾燥と活物質粒子の焼結を行った。焼結温度は、Cu6Sn5では200℃(3時間)、NiSi2では800℃(3時間)とした。ペースト濃度、充填率および乾燥速度をコントロールして、焼結後の負極の空隙率が72%で、厚さ100μmの負極を得た。これらの負極を用いたこと以外、先述の実施例と同様の操作によって電池を作製し、評価した。結果を表3に示す。
【0065】
【表3】
【0066】
表3のように、各実施例の負極は、充電時においても、厚さ100μmを維持し、充電時の空隙率は20%に留まっている。100サイクル後の容量維持率も良好である。焼結により作製した負極では、集電体と活物質粒子との間が強固に接合されているため、充電時の活物質の膨張に対する柔軟性に乏しく、一部では、焼結状態の破壊が生じていると推定できる。なお、本実施例では、負極活物質としてCu6Sn5とNiSi2を用いたが、Sn単体、他のSnを含む合金、Si単体、他のSiを含む合金についても同様の結果を得ている。
【0067】
《実施例15、16》
本実施例では、負極集電体への負極活物質の付着方法として、負極活物質と結着剤との混合物を集電体に塗布する方法を採用した場合について説明する。Cu6Sn5粉末と結着剤であるポリフッ化ビニリデンとを、重量比98:2の割合で混合し、さらにN,N−ジメチルホルムアミドを加えてペースト化した。このペーストをCu集電体内に充填し、100℃で乾燥し、厚さ100μmの負極を得た。なお、乾燥後の負極の空隙率が72%になるように調整した。また、Cu6Sn5粉末の代わりに、NiSi2粉末を用いて、同様の方法で、厚さ100μmの負極を得た。これらの負極を用いたこと以外、先述の実施例と同様の操作によって電池を作製し、評価した。結果を表4に示す。
【0068】
【表4】
【0069】
表4のように、各実施例の負極は、充電時においても、厚さ100μmを維持し、充電時の空隙率は20%に留まっている。100サイクル後の容量維持率も良好である。なお、本実施例では、負極活物質としてCu6Sn5とNiSi2を用いたが、Sn単体、他のSnを含む合金、Si単体、他のSiを含む合金についても同様の結果を得ている。
【0070】
《実施例17》
本実施例では、負極集電体への負極活物質の付着方法として、メッキにより活物質を付与した後、集電体と活物質の融点未満の温度でそれらを熱処理する方法を採用した場合について説明する。負極集電体には、空隙率90%のCuを使用した。実施例2と同様の方法で、集電体にSnを電解メッキで付着させた後、Ar雰囲気下、210度で5時間熱処理を行った。得られた負極を用いたこと以外、先述の実施例と同様の操作によって電池を作製し、評価した。結果を表5に示す。
【0071】
【表5】
【0072】
表5のように、実施例17の負極は、充電時においても厚さ100μmを維持し、充電時の空隙率は22%に留まっている。また、実施例17では、100サイクル後の容量維持率が、熱処理を行わなかった負極を用いた実施例2に比べて、さらに高くなっている。この結果については、次のように考えられる。すなわち、熱処理を行うと、SnとCu集電体との接合面で、SnとCuとが相互拡散し、SnとCuとの固溶体もしくは合金が形成され、それらの界面における活物質粒子と集電体との接合力は増大する。その結果、容量維持率が良化するものと考えられる。なお、本実施例では、負極活物質としてSn単体を用いたが、Snを含む合金についても同様の結果を得ている。
【0073】
【発明の効果】
本発明によれば、充放電時の膨脹・収縮にともなう負極の変形や電解液の偏在を防止することができるため、高容量で充放電サイクル寿命特性に優れた非水電解質二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】負極特性を評価するための試験セルの断面概略図である。
【図2】本発明の非水電解質二次電池の特性を評価するための円筒型電池の断面概略図である。
【符号の説明】
1 試験電極
2 ケース
3 セパレータ
4 対極
5 ガスケット
6 封口板
11 正極
12 負極
13 セパレータ
14 正極リード
15 負極リード
16 上部絶縁板
17 下部絶縁板
18 電槽
19 封口板
20 正極端子
Claims (5)
- 充放電可能な正極、充放電可能な負極、および非水電解質からなり、
前記負極が、連続気孔を有する発泡体である集電体および前記連続気孔に充填された負極活物質からなり、
前記集電体の比表面積が0.002m2/g以上0.06m2/g以下であり、
前記集電体の空隙率が60%以上97%以下であり、
前記負極活物質の平均粒径dが、0.5μm以上50μm以下であり、
前記連続気孔の合計体積の10%以上25%以下が前記負極活物質で充填されており、
前記負極活物質の表面積に対する前記負極活物質と前記集電体との接合面積の割合が、5%以上40%以下であり、
前記負極活物質が、Si単体またはSiを含む合金からなる非水電解質二次電池。 - 前記集電体が、金属または合金からなり、CuおよびNiの少なくとも1種を含む請求項1記載の非水電解質二次電池。
- 充放電可能な正極を作製する工程A、
Si単体またはSiを含む合金を負極活物質として含む充放電可能な負極を作製する工程B、
非水電解質を調製する工程C、ならびに
前記正極、前記負極および前記非水電解質を用いて電池を組み立てる工程Dからなり、
工程Bが、連続気孔を有する発泡体であって、比表面積が0.002m2/g以上0.06m2/g以下であり、空隙率が60%以上97%以下である集電体に、平均粒径dが0.5μm以上50μm以下の負極活物質を充填することにより、前記連続気孔の合計体積の10%以上25%以下が前記負極活物質で充填されており、前記負極活物質の表面積に対する前記負極活物質と前記集電体との接合面積の割合が5%以上40%以下である負極を得る工程である非水電解質二次電池の製造法。 - 工程Bが、前記集電体へ前記負極活物質を塗工により充填し、続いて前記負極活物質を焼結する工程b2からなる請求項3記載の非水電解質二次電池の製造法。
- 工程Bが、前記集電体へ前記負極活物質および結着剤からなる混合物を塗工により充填する工程b3からなる請求項3記載の非水電解質二次電池の製造法。
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