JP4482953B2 - 非水電解質二次電池用負極およびそれを用いた非水電解質二次電池 - Google Patents
非水電解質二次電池用負極およびそれを用いた非水電解質二次電池 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、非水電解質二次電池の負極、特にその負極に含まれる結着剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、高出力、高エネルギー密度の電源として非水電解質二次電池が注目され、数多くの研究が行われている。
【0003】
従来、非水電解質二次電池としてリチウム二次電池が注目され、検討されてきた。リチウム二次電池用正極活物質にはLiCoO2、LiNiO2等のリチウム含有遷移金属酸化物やMoS2等のカルコゲン化合物が検討されている。これらは層状の結晶構造を有し、リチウムイオンを可逆的に挿入、脱離することができる。一方、負極活物質には金属リチウムが当初、検討されていた。しかし、負極活物質に金属リチウムを用いると、充放電時にリチウムが溶解、析出反応を繰り返すため、リチウム表面上に樹枝状のリチウムが形成される。この樹枝状リチウムの形成は充放電効率を低下させたり、あるいは正極と接触して内部短絡を生じるという問題を有していた。
【0004】
このような問題を解決するために、リチウムを可逆的に吸蔵、放出することのできるリチウム合金、金属粉末、黒鉛質または炭素質の炭素材料、金属酸化物もしくは金属硫化物が金属リチウムに代わる負極材料として検討されている。
【0005】
しかし、リチウム合金をシート状に加工した電極を負極に用いて円筒型電池を作成した場合、深い充放電を繰り返すと合金の微細化により集電性が低下し、充放電サイクル特性が低いという問題があった。一方、金属粉末、炭素材料、金属酸化物または金属硫化物等の粉体を用いてシート状電極を作成する場合は、通常これら単独では電極が形成できないため、結着剤を添加している。例えば、炭素材料に関しては、弾性をもったゴム系の高分子材料を結着剤として添加して、極板を形成する方法が、特開平4−255670号公報に示されている。そして金属酸化物、金属硫化物に関しては充放電特性を高めるために結着剤に加えてさらに導電材を添加している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
通常、炭素材料を負極として用いる場合、炭素材料は粉砕して粉体とし、結着剤を用いて極板を作製している。しかしながら、従来のゴム系高分子材料を結着剤として用いた場合、結着剤が黒鉛粒子を被覆してしまい、リチウムの挿入、脱離反応が阻害され、電池の高率放電特性、特に低温における放電特性が著しく低下してしまう。さらに、炭素材料として結晶性の高い黒鉛材料を用いた場合、炭素材料と比較して高容量で高電圧の電池が得られる。しかしながら、黒鉛材料を粉砕すると鱗片状の形状になり、この材料で負極板を形成するとリチウムの挿入、脱離反応に関与しない鱗片状黒鉛粒子の平面部が極板面に対して平行に配向するために、高率放電特性、特に低温における放電特性が著しく低下してしまう。
【0007】
また、従来の結着剤を用いた場合、炭素材の種類形状に関わらず、金属製の芯材との結着力が弱いため結着剤を多量に添加する必要がある。これにより、さらに炭素表面を被覆することになり高率放電特性が低下する。逆に結着剤の添加量を少なくすると結着力が弱いために、製造工程において極板の合剤剥がれ等の不良率が高くなるという課題があり、未だ充分な特性が得られていない。
【0008】
本発明はこのような課題を解決するものであり、高率放電特性、特に低温における放電特性に優れた電池を安定して量産し、供給することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために本発明は、負極材料としてリチウムを吸蔵、放出することのできる炭素材料と結着剤を含む非水電解質二次電池用負極において、前記負極材料の結着剤として結合スチレン量が20%以上70%以下のスチレンブタジエン共重合体から選ばれる結着剤(A)と、結合スチレン量が80%以上100%未満のスチレンブタジエン共重合体もしくはポリスチレンのうち少なくとも1種からから選ばれる結着剤(B)とを混合して用いたものであり、炭素材料に対する結着剤の比率は、重量比で炭素材料100に対して、結合スチレン量が20%以上70%以下のスチレンブタジエン共重合体から選ばれる結着剤(A)の比率が0.3以上4以下、結合スチレン量80%以上100%未満およびポリスチレンから選ばれる結着剤(B)の比率が0.3以上4以下としたものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明は、各請求項に特定した構成を実施の形態とすることができる。すなわち、本発明の非水電解質二次電池用負極は、請求項1記載のように、負極材料としてリチウムを吸蔵、放出することのできる炭素材料と結着剤を含む非水電解質二次電池用負極において、前記負極材料の結着剤として結合スチレン量が20%以上70%以下のスチレンブタジエン共重合体から選ばれる結着剤(A)と、結合スチレン量が80%以上100%未満のスチレンブタジエン共重合体もしくはポリスチレンのうち少なくとも1種からから選ばれる結着剤(B)とを混合して用いるものであり、炭素材料に対する前記結着剤(A)および結着剤(B)の比率を0.3以上4以下としたものである。
【0011】
さらに、請求項2記載のように、請求項1記載の非水電解質二次電池用負極の炭素材料が、平均粒子径が5〜30μmの黒鉛材料であるものである。
【0012】
また、本発明の非水電解質二次電池は、請求項4記載のように、銅箔からなる集電体に請求項1記載の負極を塗着してなる請求項3記載の負極板と、Li含有複合酸化物を活物質とする正極板と、非水電解質を備えたものである。さらに、請求項5記載のように、非水電解質にエチレンカーボネートと鎖状カーボネートを含有するものである。
【0013】
尚、これらは本発明の好ましい態様についてであり、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0014】
このような構成とすることにより、結合スチレン量が80%以上100%未満のスチレンブタジエン共重合体もしくはポリスチレンから選ばれる結着剤(B)が炭素粒子をほとんど被覆せずに付着し、結合スチレン量が20%以上70%以下のスチレンブタジエン共重合体から選ばれる結着剤(A)が、結着剤(B)を通じて炭素粒子どうしを接着するため、極板の剥がれ強度が強く取り扱いに優れた非水電解質二次電池用負極が得られ、しかも、非水電解質二次電池の低温放電特性の向上も可能となる。結着剤(B)が炭素粒子をほとんど被覆することがないのは、結合スチレン量を多くするとガラス転移温度が高くなるために成膜性が低下するためであると考えられ、これにより低温放電特性が向上する。結着剤(A)は、結合スチレン量の多いスチレンブタジエン共重合体もしくはポリスチレンから選ばれる結着剤(B)単独では2重結合を有するブタジエン量が少ないことからゴム弾性がなくなり脆くなるため、接着性を高める目的で用いられる。これにより、結着剤としての接着性が確保され、極板の剥がれ強度が強く取り扱いに優れたものとなる。
さらに、炭素材料に対して特定の比率で結着剤(A)および結着剤(B)を用いることで、なお一層、低温放電特性と合剤剥がれにおいて優れた強度をもつ非水電解質二次電池用負極を提供することができる。その比率は炭素材料100に対して、結着剤(A)を0.3以上4以下及び結着剤(B)を0.3以上4以下にすることが好ましい。
【0015】
また、請求項2記載の構成のとおり、炭素材料に結晶性の高い黒鉛材料を用いることで、高容量で高電圧の電池が得られ、その黒鉛材料の平均粒子径は5〜30μmであることが好ましい。これは、黒鉛粒子の平均粒径が小さいと負極炭素材の不可逆容量が増大するために電池容量が著しく低下し、逆に大きいと高率放電特性が低下するためである。
【0017】
以下に本発明の実施にあたり使用する材料について詳述する。
【0018】
本発明に用いられる負極は、リチウムイオンを電気化学的に吸蔵・放出できる炭素材料に前記結着剤を含む合剤層を集電体の表面に塗着して作成されたものである。
【0019】
炭素材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛、石油、石炭ピッチもしくはコークスから得られる易黒鉛化性炭素を650〜1000℃の温度範囲で焼成した炭素、石油、石炭ピッチもしくはコークスの不融化処理したものや、樹脂等を600〜1300℃の温度範囲で焼成した難黒鉛化性炭素等があり、これらは単独でも、組み合わせて用いてもよい。なかでも天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛材料が好ましい。また、結晶構造上からは、炭素六角平面の間隔(d(002))が3.35〜3.40Åでc軸方向の結晶子の大きさ(Lc)が100Å以上の黒鉛が好ましい。尚、炭素質材料には、炭素以外にも、O、B、P、N、S、SiC、B4Cなどの異種化合物を含んでもよい。さらに、本発明で示される炭素材料の平均粒子径は5〜30μmであることが好ましい。
【0020】
負極の集電体としては、構成された電池において化学変化を起こさない電子伝導体であれば何でもよい。例えば、材料としてステンレス鋼、ニッケル、銅、チタン、炭素などの他に、銅やステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタンあるいは銀を処理させたもの、Al−Cd合金などが用いられる。特に、銅あるいは銅合金が好ましいが、本発明では、銅が最も好ましい。
【0021】
本発明に用いられる正極は、リチウムイオンを電気化学的に吸蔵・放出できる正極活物質や負極材料に導電材、結着剤等を含む合剤層を集電体の表面に塗着して作成されたものである。
【0022】
本発明に用いられる正極活物質には、遷移金属酸化物、リチウム含有遷移金属酸化物、遷移金属硫化物、リチウム含有遷移金属硫化物、有機高分子化合物等がある。なかでも、リチウムを含有するTi、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、W等の1種類以上の遷移金属の複合酸化物や複合硫化物等の化合物を使用することが好ましく、特に高電圧、高エネルギーに関しては、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4等が好適である。尚、これらは単独で用いても、複数の異なった正極活物質を併用してもよい。
【0023】
本発明における正極合剤中の導電材は、構成された電池において、化学変化を起こさない電子伝導性材料であれば何でもよい。例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛など)、人造黒鉛などのグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカ−ボンブラック類、炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維類、フッ化カーボン、銅、ニッケル、アルミニウム、銀等の金属粉末類、酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー類、酸化チタンなどの導電性金属酸化物あるいはポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料などを単独又はこれらの混合物として含ませることができる。
【0024】
本発明において好ましい正極活物質用の結着剤は、分解温度が300℃以上のポリマーである。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE樹脂)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体を挙げる事ができる。特に、この中で最も好ましいのはポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。
【0025】
正極の集電体としては、構成された電池において化学変化を起こさない電子伝導体であれば何でもよい。例えば、材料としてステンレス鋼、アルミニウム、チタン、炭素などの他に、アルミニウムやステンレス鋼の表面にカーボン、チタンあるいは銀を処理させたものが用いられる。特に、アルミニウムあるいはアルミニウム合金が好ましい。
【0026】
電極合剤には、導電材や結着剤の他、フィラー、分散剤、イオン導電材、圧力増強剤及びその他の各種添加剤を用いることができる。フィラーは、構成された電池において、化学変化を起こさない繊維状材料であれば何でも用いることができる。通常、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのオレフィン系ポリマー、ガラス、炭素などの繊維が用いられる。
【0027】
本発明における非水電解質としては、溶媒と、その溶媒に溶解するリチウム塩とから構成される非水電解液を用いることができる。また、固体電解質を使用してもよい。さらに、非水電解液と固体電解質を併用してもよい。
【0028】
非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネ−ト(EC)、プロピレンカ−ボネ−ト(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)などの環状カーボネート類、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)などの鎖状カーボネート類、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの脂肪族カルボン酸類、γ−ブチロラクトン等のγ−ラクトン類、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,2−ジエトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)等の鎖状エーテル類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル類、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、プロピルニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エチルエーテル、1,3−プロパンサルトン、アニソール、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性有機溶媒を挙げることができ、これらの一種または二種以上を混合して使用する。なかでも環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合系または環状カーボネートと鎖状カーボネート及び脂肪族カーボネートとの混合系が好ましい。本発明では、特に、エチレンカーボネートと鎖状カーボネートを含有する溶媒が最も好ましい。
【0029】
これらの溶媒に溶解するリチウム塩としては、例えばLiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAlCl4、LiSbF6、LiSCN、LiCl、LiCF3SO3、LiCF3CO2、Li(CF3SO2)2、LiAsF6、LiN(CF3SO2)2、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、クロロボランリチウム、四フェニルホウ酸リチウム等を挙げることができ、これらを使用する電解質等に単独又は二種以上を組み合わせて使用することができるが、特にLiPF6を含ませることがより好ましい。
【0030】
本発明における特に好ましい非水電解質は、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを少なくとも含み、支持塩としてLiPF6を含む電解液である。これら電解質を電池内に添加する量は、特に限定されないが、正極活物質や負極材料の量や電池のサイズによって必要量用いることができる。支持電解質の非水溶媒に対する溶解量は、特に限定されないが、0.2〜3mol/lが好ましい。特に、0.5〜2.0mol/lとすることがより好ましい。
【0031】
また、固体電解質としては、無機固体電解質と有機固体電解質に分けられるが、これらを単独で用いても、併用してもよい。無機固体電解質には、Liの窒化物、ハロゲン化物、酸素酸塩などがよく知られている。なかでも、Li4 SiO4 、Li4 SiO4 −LiI−LiOH、x Li3 PO4 −(1-x)Li4 SiO4、Li2 SiS3 、Li3 PO4 −Li2S−SiS2、硫化リン化合物などが有効である。有機固体電解質では、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリホスファゼン、ポリアジリジン、ポリエチレンスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレンなどやこれらの誘導体、混合物、複合体などのポリマー材料が有効である。
【0032】
【実施例】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。
【0033】
(実施例1)
図1に本発明に用いた円筒形電池の縦断面図を示す。図において1は正極を示し、活物質であるLiCoO2と導電材としてのアセチレンブラックと、さらに結着剤としてのポリ四フッ化エチレンを重量比で100:3:7の割合で混合し、増粘剤を用いてペースト状にしたものをアルミニウム箔の両面に塗着、乾燥、圧延した後、所定の寸法(37mm×390mm)に切断したものである。さらにこの正極1には2のアルミニウム製リード板を溶接している。3は負極で、炭素材料として平均粒子径20μmの鱗片状黒鉛と結合スチレン量が50%のスチレンブタジエン共重合体と結合スチレン量が85%のスチレンブタジエン共重合体とを重量比で100:2:2の割合で混合し、増粘剤を用いてペースト状にしたものを銅箔の両面に塗着、乾燥、圧延した後、所定の寸法(39mm×465mm)に切断したものである。この負極3にも4のニッケル製のリード板を溶接している。5はポリエチレン製の微孔性フィルムからなるセパレータで、正極1と負極3との間に介在し、全体が渦巻状に捲回されて極板群を構成している。この極板群の上下の端には、それぞれポリプロピレン製の絶縁板6、7を配して鉄にニッケルメッキしたケース8に挿入する。そして正極リード2を安全弁を設けた封口板10に、負極リード4をケース8の底部にそれぞれ溶接した。さらにエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの体積比1:3の混合溶媒に電解質として六フッ化リン酸リチウムを濃度が1.5mol/lとなるように溶かして得た電解液を加え、ガスケット9を介して封口板10で封口し、本発明における実施例の電池Aを作製した。なお11は電池の正極端子で、負極端子はケース8がこれを兼ねている。電池の寸法は直径17mm、高さ50mmである。
【0034】
(比較例1)
炭素材料と負極の結着剤として結合スチレン量が50%のスチレンブタジエン共重合体単独とを重量比で100:4の割合で混合して用いた以外は、実施例1と同じようにして作製した電池Bを比較例1とした。
【0035】
(比較例2)
負極の結着剤を結合スチレン量が85%のスチレンブタジエン共重合体単独とした以外は、比較例1と同じようにして作製した電池Cを比較例2とした。
【0036】
以上負極結着剤の異なる3種類の電池A、B、Cについて、低温放電特性、負極板の強度の比較を行った。さらに、渦巻状極板群を構成した後に極板群を解いて負極板の状態を観察し、負極板合剤のひび割れの有無を観察した。
【0037】
電池容量は20℃で充電電流630mA、充電電圧4.2V、充電時間2時間の定電流定電圧充電を行った後、放電電流180mAで放電、放電終止電圧3.0Vの放電を行い求めた。低温放電特性は、20℃で充電電流630mA、充電電圧4.2V、充電時間2時間の定電流定電圧充電を行った後、−20℃の環境下で放電電流900mAで放電、放電終止電圧3.0Vの放電を行い評価した。負極板の強度評価は、幅4mmのステンレス製の引掻き棒を極板に対して垂直にあて、この引掻き棒にかかる垂直荷重を走査しながら極板方向に対して水平方向に引掻き、合剤が芯材から剥離する時の垂直荷重を測定し、これを表1において合剤剥離強度として極板強度を示した。併せて、負極板合剤のひび割れの有無を示した。
【0038】
(表1)に各電池の低温放電特性と、合剤剥離強度および合剤ひび割れの有無を示す。なお、合剤剥離強度の値が大きいほど極板強度が強いことを示している。
【0039】
【表1】
【0040】
(表1)に示す通り低温放電特性においては、比較例の電池Cが最も優れた特性を示したが、合剤のひび割れが観察された。これは、結合スチレン量を多くするとガラス転移温度が高くなるために成膜性が低下し、結着剤が黒鉛粒子を被覆することが少ないからであると考えられる。しかしながら、2重結合を有するブタジエン量が少なくなるためにゴム弾性がなくなり脆くなるために、極板が割れやすくなったと考えられる。
【0041】
本発明の実施例の電池Aは比較例の電池Bよりも優れた低温放電特性を示した。また、極板強度においても優れ、合剤のひび割れは観察されなかった。この理由については定かではないが、おそらく、結合スチレン量が85%のスチレンブタジエン共重合体が黒鉛粒子をほとんど被覆せずに付着し、次いで結合スチレン量が50%のスチレンブタジエン共重合体がこの結合スチレン量85%のスチレンブタジエン共重合体を通じて黒鉛粒子どうしを接着しているためであると考えられる。比較例の電池Bは、結合スチレン量が50%のスチレンブタジエン共重合体のガラス転移温度が約−30℃と低いために成膜性が高く、結着剤が黒鉛粒子を被覆してしまうためであると考えられる。
【0042】
(表2)に本発明における実施例の電池Aについて、結着剤(A)のスチレンブタジエン共重合体の結合スチレン量を10、20、50、70、80%、結着剤(B)のスチレンブタジエン共重合体の結合スチレン量を70、80、85、95%、およびポリスチレンとしたときの低温放電特性、極板強度および負極板合剤のひび割れの有無を示す。結着剤(A)および結着剤(B)の混合比率は、炭素材料の重量100に対してそれぞれ2である。
【0043】
【表2】
【0044】
(表2)に示す通り、結着剤(A)の結合スチレン量が10%の場合著しく低温放電特性が低下し、結合スチレン量が80%の場合には合剤のひび割れが見られた。結着剤(B)の結合スチレン量については、70%以下の場合で低温放電特性が著しく低下した。従って、結着剤(A)の結合スチレン量が20%以上70%以下で、結着剤(B)の結合スチレン量が80%以上100%未満もしくはポリスチレンが望ましい。
【0045】
(表3)に本発明における実施例の電池Aついて鱗片状黒鉛の平均粒子径を変化させたときの電池容量および低温放電特性との関係を示す。
【0046】
【表3】
【0047】
(表3)に示す通り、鱗片状黒鉛の平均粒径が5μmより小さくなると、負極炭素材の不可逆容量が増大するために電池容量の低下が著しく、また30μmを超えると低温放電特性が低下し、鱗片状黒鉛の平均粒径としては5〜30μmが望ましい。
【0048】
(表4)に本発明における実施例の電池Aについて結着剤の添加量を変化させたときの低温放電特性および極板強度、合剤ひび割れの有無との関係を示す。結着剤(A)として結合スチレン量が50%、結着剤(B)として結合スチレン量が85%のスチレンブタジエン共重合体を用いた場合について示した。
【0049】
【表4】
【0050】
結着剤(A)の添加量が0.2%の場合、合剤剥離強度が500gを下回り、5%を超えると低温放電容量が300mAhを下回った。また、結着剤(A)の添加量が0.3%で、結着剤(B)の添加量を5%とした場合、合剤のひび割れが見られた。これは、結着剤(A)に対する結着剤(B)の混合比率が高い場合には極板の弾性が低下するためである考えられる。従って、結着剤の添加比率については、炭素材料の重量100に対して、結合スチレン量が10%以上70%以下のスチレンブタジエン共重合体の比率を0.3以上4以下、結合スチレン量が80%以上100%未満もしくはポリスチレンの比率を0.3以上4以下とすることが望ましい。
【0051】
また、本発明の実施例では負極炭素材として鱗片状黒鉛を用いたが、炭素材の種類、形状について特に限定されることなく同様の効果が得られることは明確である。
【0052】
また、本発明では正極活物質としてLiCoO2を用いたが、他の正極活物質、例えばLiNiO2やLiMn2O4でも同様の効果が得られることは明確である。
【0053】
【発明の効果】
以上のように本発明は、低温放電特性、合剤剥がれにおいて優れた強度をもち、取り扱い易いという特徴を有した非水電解質二次電池用負極を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例における非水電解質二次電池の縦断面図
【符号の説明】
1 正極
2 正極リード板
3 負極
4 負極リード板
5 セパレータ
6 上部絶縁板
7 下部絶縁板
8 ケース
9 ガスケット
10 封口板
11 正極端子
Claims (5)
- リチウムを吸蔵、放出することのできる炭素材料と結着剤を含む非水電解質二次電池用負極において、前記結着剤として結合スチレン量がスチレンブタジエン共重合体全体の20重量%以上70重量%以下のスチレンブタジエン共重合体から選ばれる結着剤(A)と、結合スチレン量が80重量%以上100重量%未満のスチレンブタジエン共重合体もしくはポリスチレンのうち少なくとも1種から選ばれる結着剤(B)とを混合して用いた非水電解質二次電池用負極であって、炭素材料に対する結着剤の比率は、重量比で炭素材料100に対して、結合スチレン量が20%以上70%以下のスチレンブタジエン共重合体から選ばれる結着剤(A)の比率が0.3以上4以下、結合スチレン量80%以上100%未満およびポリスチレンから選ばれる結着剤(B)の比率が0.3以上4以下とした非水電解質二次電池用負極。
- 炭素材料は、平均粒子径が5〜30μmの黒鉛材料である請求項1記載の非水電解質二次電池用負極。
- 銅箔からなる集電体上を請求項1記載の負極で被覆してなる非水電解質二次電池用負極板。
- 活物質にリチウム含有遷移金属酸化物を用いた正極板、請求項3記載の負極板、それらの間に介在するセパレータ及び非水電解質を備えた非水電解質二次電池。
- 非水電解質がリチウム塩をエチレンカーボネートと鎖状カーボネートを含む有機溶媒に溶解させたものである請求項4記載の非水電解質二次電池。
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