JP3732062B2 - 非水電解質二次電池の充放電方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、非水電解質二次電池、特に、その負極材料にリチウム含有複合窒化物を用いるリチウム二次電池の充放電方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
当初、非水電解質二次電池用の負極材料として高容量であるリチウム金属を用いる検討が盛んに行われたが、充電時に負極にデンドライト状の析出が起こり、充放電を繰り返すと、その析出物がセパレータを突き破って正極側に達し内部短絡を起こすおそれがあった。このような理由も含めて負極材料としてリチウム金属を用いた非水電解質二次電池は、低い信頼性、および短いサイクル寿命と言う観点から実用化が困難であった。
一方、非水電解質二次電池として、炭素材料を負極材料、リチウム含有複合酸化物を正極材料とするリチウムイオン二次電池が開発された。これは水溶液系の二次電池に比べて電圧およびエネルギー密度が高く、かつ低温特性が優れており、負極にリチウム金属を用いていないことからサイクル安定性にも優れており、急速に実用化された。
通常、炭素材料負極には金属リチウムは析出しないため、デンドライトによる内部短絡の問題はないが、炭素材料の一つである黒鉛の理論容量は372mAh/gであり、リチウム金属単体の理論容量の10分の1程度と少ない。
【0003】
他の負極材料として、リチウムを含む窒化物が高容量材料として知られている。リチウム含有複合窒化物を電池の負極材料として用いる技術は比較的新しく、例えば、電気化学素子の電極材料として用いるリチウムニトリド金属化合物(リチウム含有複合窒化物と同意)が特開平7−78609号公報に開示されている。リチウム含有複合窒化物の中でもリチウムと遷移金属の複合窒化物、一般式Li(3.0-x)-yMxN(MはCo、Mn、Ni、及びCuからなる群より選ばれた少なくとも一種の遷移金属)で表される化合物は、電位的に金属リチウムを析出しないため、デンドライトによる内部短絡の問題はなく、特に、上述のx値が0.1〜0.6あたりの化合物はその可逆容量が500〜800mAh/gであり、いずれも黒鉛の理論容量よりも大きい有望な負極材料である。
【0004】
しかしながら、上記のようなリチウム含有複合窒化物を負極材料として電池に用いる場合には、以下に示すような問題があった。
すなわち、リチウム含有複合窒化物は、炭素負極材料にくらべて充放電サイクル特性が不十分なことである。その理由は、充放電可逆容量が大きい分、充放電における膨張・収縮による体積変化が大きくなるためであると推測される。充電時と放電時の体積差が大きい場合、大きなひずみが生じ、亀裂が発生して窒化物粒子そのものが微細化したり、膨張・収縮で極板内の導電剤との絡みを含めた電子伝導ネットワークが緩んだり分断されたりして、電気化学的な反応に関与できない部分が増加し、充放電容量が低下するものと考えられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高容量で充放電サイクル特性に優れた負極材料であるリチウム含有複合窒化物を用いる場合の上記従来の課題を解決し、サイクル特性および信頼性に優れた、高エネルギー密度の非水電解質二次電池を与える方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明は、リチウムの吸蔵・放出が可能な正極と、一般式Li(3.0-x)-yMxN(MはCo、Mn、Ni及びCuからなる群より選ばれた少なくとも一種の遷移金属、0.2≦x≦0.6)で表されるリチウム含有複合窒化物からなる負極を具備する非水電解質二次電池を、充放電に伴い変化するLi含量の変化を表す変数yを−x<y<2.0−xの範囲に規制して充放電することを特徴とする。
【0007】
本発明は、高容量のリチウム含有複合窒化物の充放電に伴う体積変化に注目し、その遷移金属の含有量を上記のように制御することによってその体積変化を抑制し、サイクル特性を改善するものである。さらに、充放電に伴ってリチウム含有複合窒化物中のLi量は変化するが、この時のLi量の変化範囲に制限を設けることでサイクル劣化領域を回避し、サイクル劣化を抑制しようというものである。すなわち、適切な組成のリチウム含有複合窒化物を負極材料として用いてその体積変化を最小限にとどめ、かつLiの変化範囲を正・負極の充填容量バランス等の設計条件や充放電条件で制御し、サイクル劣化領域を回避するのである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明は、負極材料としてリチウム含有複合窒化物、一般式Li(3.0-x)-yMxN(MはCo、Mn、Ni及びCuの群から選ばれた少なくとも一種の遷移金属)で表される化合物を用い、このリチウム含有複合窒化物において、上記式中において遷移金属の含有量に相当するx値を0.2≦x≦0.6とする。かつリチウム含有複合窒化物を電池の負極材料として使用する際のリチウム含有複合窒化物中の充放電に伴うLiの変化量を−x<y<2.0−xの範囲に限定する。なお、y値の規制は、方法論的には充填容量バランス等の設計条件や充放電条件を設定することでなされる。
このリチウム含有複合窒化物は、窒化リチウムLi3Nに遷移金属原子を固溶させた化合物である。x値は合成した時点で決定される。実験的に検討した結果、置換できる量はx≦0.6の範囲(0.6<xとなるように合成しても未反応の遷移金属が残存する)であるが、特に電池の電極材料として機能するのは0.1≦x≦0.6の範囲である。なお、x<0.1では材料そのものの電気伝導性はほとんどなく絶縁体に近いため、電極として機能しない。
【0009】
充放電に伴う体積変化に関して、これらリチウム含有複合窒化物は、最初の放電で非晶質化し、その後の充放電において二度と結晶質に戻ることがないので、格子定数の変化から現象をとらえることはできない。しかし、リチウム含有複合窒化物からなる負極の充放電に伴う極板厚み変化を追跡すると、上記x値がx<0.2で合成された電極材料を含む場合に変化率が大きい結果が得られている。このような材料は、基本的に置換した遷移金属が充放電時のLiの吸蔵・放出に対応してその価数を変えるため結晶の歪みを緩和すると考えられる。ところが、x<0.2の領域では、遷移金属の絶対量が不足することから、価数変化による結晶の歪みの緩和作用が弱まるため、結晶の膨張・収縮が促進されるものと推測される。すなわち、本発明の0.2≦x≦0.6の領域では、遷移金属の価数変化が結晶歪みを緩和するため、膨張・収縮が抑制されるものと推測される。
従って、体積変化の観点からは、上述の一般式におけるx値が0.2≦x≦0.6の範囲のリチウム含有複合窒化物を用いることがサイクル特性改良のために有効である。
【0010】
さらに、x値が0.2≦x≦0.6の範囲で合成したこれらリチウム含有複合窒化物の充放電に伴うLiの変化量とサイクル劣化について検討を加えた。充電方向では、x値に関係なくリチウム含有複合窒化物Li(3.0-x)-yMxN中の総Li量が3.0以上、すなわち、3.0≦(3.0−x)−yの領域を使う充放電を行うと著しいサイクル劣化を示した。検討の結果、この原因はLiの析出であることがわかった。従って、(3.0−x)−y<3.0の領域、すなわち−x<yの範囲で充放電を行うことが望ましい。
次に放電方向では、やはりx値に関係なくリチウム含有複合窒化物Li(3.0-x)-yMxN中の総Li量が1.0以下、すなわち(3.0−x)−y≦1.0の領域を使う充放電を行うと著しいサイクル劣化を示した。検討の結果、この原因は、リチウム含有複合窒化物Li(3.0-x)-yMxNの組成崩壊であることが判明した。特に、この場合は窒化物が分解して窒素ガスが発生することもわかった。
従って、1.0<(3.0−x)−yの領域、すなわちy<2.0−xの範囲で充放電を行うことが望ましい。
以上のように、−x<yでかつy<2.0−xの領域、すなわち、電池の電極材料として使用する際の充放電に伴うLiの変化量に相当するyが−x<y<2.0−xの範囲であることが望ましい。
【0011】
本発明のさらに好ましい実施の形態を以下に説明する。
負極のリチウム含有複合窒化物は、水分との反応性が高く、水分で劣化するため、電極作製過程におけるペースト化等に用いる溶剤は高度に脱水されたものを用いることが望ましい。
本発明に用いられる正極及び負極は、リチウムイオンを電気化学的かつ可逆的に挿入・放出できる正極材料や負極材料に導電剤、ポリマー材料等を含む合剤層を集電体の表面に塗着して作製することができる。
【0012】
本発明に用いられる負極用導電剤は、電子伝導性材料であれば何でもよい。例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛など)、人造黒鉛、膨張黒鉛などのグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカ−ボンブラック類、炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維類、銅、ニッケル等の金属粉末類およびポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料などを単独またはこれらの混合物として含ませることができる。これらの導電剤のなかで、人造黒鉛、アセチレンブラック、炭素繊維が特に好ましい。導電剤の添加量は、特に限定されないが、負極材料に対して1〜50重量%が好ましく、特に1〜30重量%が好ましい。また、本発明の負極材料は、それ自身電子伝導性を有するため、導電剤を添加しなくても電池として機能させることは可能である。
本発明に用いられる負極用集電体としては、構成された電池において化学変化を起こさない電子伝導体であれば何でもよい。例えば、材料としてステンレス鋼、ニッケル、銅、チタン、炭素、導電性樹脂などの他に、銅やステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケルあるいはチタンを処理させたものなどが用いられる。特に、銅あるいは銅合金が好ましい。また、表面処理により集電体表面に凹凸を付けることが望ましい。形状は、フォイルの他、フィルム、シート、ネット、パンチングされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の成形体などが用いられる。厚みは、特に限定されないが、1〜500μmのものが用いられる。
【0013】
本発明に用いられる正極材料には、リチウム含有遷移金属酸化物を用いることができる。例えば、LixCoO2、LixNiO2、LixMnO2、LixCoyNi1-yO2、LixCoyM1-yOz、LixNi1-yMyOz、LixMn2O4、LixMn2-yMyO4(M=Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、Bのうち少なくとも一種、x=0〜1.2、y=0〜0.9、z=2.0〜2.3)があげられる。ここで、上記のx値は、充放電開始前の値であり、充放電により増減する。なお、リチウム含有遷移金属化合物のような通常充電から(Liの放出方向から)開始する正極材料を用いる場合は、本発明の窒化物材料が通常放電から開始する負極材料なので、状態を一致させるために正負極のいずれか一方からあらかじめLiを抜く化成処理が必要である。また、遷移金属カルコゲン化物、バナジウム酸化物のリチウム化合物、ニオブ酸化物のリチウム化合物、有機導電性物質を用いた共役系ポリマー、シェブレル相化合物等の他の正極材料を用いることも可能である。二酸化マンガン、五酸化バナジウムなどの通常放電から開始する正極材料の場合は、化成処理を施す必要がなく、製造上は有利である。また、複数の異なった正極材料を混合して用いることも可能である。正極材料の粒子の平均粒径は、特に限定はされないが、1〜30μmであることが好ましい。
【0014】
本発明で使用される正極用導電剤は、用いる正極材料の充放電電位において、化学変化を起こさない電子伝導性材料であれば何でもよい。例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛など)、人造黒鉛などのグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカ−ボンブラック類、炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維類、アルミニウム等の金属粉末類、酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー類、酸化チタンなどの導電性金属酸化物あるいはポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料などを単独またはこれらの混合物として含ませることができる。これらの導電剤のなかで、人造黒鉛、アセチレンブラックが特に好ましい。導電剤の添加量は、特に限定されないが、正極材料に対して1〜50重量%が好ましく、特に1〜30重量%が好ましい。カーボンやグラファイトでは、2〜15重量%が特に好ましい。
本発明に用いられる正極用集電体としては、用いる正極材料の充放電電位において化学変化を起こさない電子伝導体であれば何でもよい。例えば、材料としてステンレス鋼、アルミニウム、チタン、炭素、導電性樹脂などの他に、アルミニウムやステンレス鋼の表面にカーボンあるいはチタンを処理させたものが用いられる。特に、アルミニウムあるいはアルミニウム合金が好ましい。これらの材料の表面を酸化して用いることもできる。また、表面処理により集電体表面に凹凸を付けることが望ましい。形状は、フォイルの他、フィルム、シート、ネット、パンチされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群、不織布体の成形体などが用いられる。厚みは、特に限定されないが、1〜500μmのものが用いられる。
【0015】
正・負極の電極の結着剤としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、スチレンブタジエンゴム、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体または前記材料の(Na+)イオン架橋体、エチレン−メタクリル酸共重合体または前記材料の(Na+)イオン架橋体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体または前記材料の(Na+)イオン架橋体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体または前記材料の(Na+)イオン架橋体を挙げる事ができ、これらの材料を単独または混合物として用いることができる。
【0016】
本発明における負極板と正極板の構成は、少なくとも正極合剤面に対向して負極合剤面が存在していることが好ましい。
本発明の非水電解質は、溶媒と、その溶媒に溶解するリチウム塩とから構成される。例えば、エチレンカーボネ−ト、プロピレンカ−ボネ−ト、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートなどの環状カーボネート類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート類、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの脂肪族カルボン酸エステル類、γ−ブチロラクトン等のγ−ラクトン類、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、エトキシメトキシエタン等の鎖状エーテル類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル類、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、プロピルニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エチルエーテル、1,3−プロパンサルトン、アニソール、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性有機溶媒を挙げることができ、これらの一種または二種以上を混合して使用することができる。なかでも環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合系または環状カーボネートと鎖状カーボネート及び脂肪族カルボン酸エステルとの混合系が好ましい。
【0017】
これらの溶媒に溶解するリチウム塩としては、例えばLiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAlCl4、LiSbF6、LiSCN、LiCl、LiCF3SO3、LiCF3CO2、Li(CF3SO2)2、LiAsF6、LiN(CF3SO2)2、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、LiCl、LiBr、LiI、クロロボランリチウム、四フェニルホウ酸リチウム、イミド類等を挙げることができ、これらを使用する電解液等に単独または二種以上を組み合わせて使用することができるが、特にLiPF6を含ませることがより好ましい。
本発明における特に好ましい非水電解質は、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを少なくとも含み、支持塩としてLiPF6を含む電解液である。これら電解質を電池内に添加する量は、特に限定されないが、正極材料や負極材料の量あるいは電池のサイズによって必要量を用いることができる。支持電解質の非水溶媒に対する溶解量は、特に限定されないが、0.2〜2mol/lが好ましい。特に、0.5〜1.5mol/lとすることがより好ましい。
さらに、放電や充放電特性を改良する目的で、他の化合物を電解質に添加することも有効である。例えば、トリエチルフォスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n−グライム、ピリジン、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、クラウンエーテル類、第四級アンモニウム塩、エチレングリコールジアルキルエーテル等を挙げることができる。
電池の形状はコイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型、電気自動車等に用いる大型のものなどいずれにも適用できる。
また、本発明の非水電解質二次電池は、携帯情報端末、携帯電子機器、家庭用小型電力貯蔵装置、自動二輪車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等に用いることができるが、特にこれらに限定されるわけではない。
【0018】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0019】
《実施例1》
負極材料の合成方法
窒化リチウムと遷移金属の粉末を所定量混合し、磁製坩堝に入れ、窒素雰囲気中700℃で8時間加熱するとリチウム含有複合窒化物が得られる。遷移金属が窒化リチウム中に固溶した目的の化合物は凝固物として得られるので、その凝固物をボールミルで粉砕し、篩で分級することにより45μm以下の粒子にした。本実施例では、遷移金属としてCoを用い、比較サンプルとして上記x値を0.1、0.2、0.3、0.4、0.5および0.6とした6種類のリチウム含有複合窒化物をそれぞれ合成した。
【0020】
図1は本発明による非水電解質二次電池のサイクル特性を比較検討するためのテストセルとして作製したボタン形電池の断面図である。図1において、1はステンレス鋼製の封口板であり、その内面にはニッケル網2を抵抗溶接により固定してある。リチウム含有複合窒化物を含む負極3は銅箔4上に形成してあり、銅箔4とニッケル網2を圧着することで集電する構造となっている。LiCoO2を正極材料として用いた正極6は、アルミ箔7上に形成した後に円盤状に打ち抜いた電極である。ステンレス綱製の正極ケース8は、内面にステンレス綱網9が抵抗溶接により固定されている。正極6はアルミ箔7と一体に成形され、アルミ箔7をステンレス網9を圧着することで集電させる構造としている。正極6上にポリエチレンからなる多孔質セパレータ5をのせ、有機電解液を注液した後、ガスケット10を介して封口板1を組合せ、正極ケース8の開口縁を内側に折り曲げ、かしめることによって、電池内容物を密閉、封止した。有機電解液は、炭酸エチレン炭酸ジエチルの体積比1:1の混合溶媒に、LiPF6を1モル/リットル溶解したものである.
【0021】
本実施例では、正極材料としてリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)を用いたが、負極のリチウム含有複合窒化物が合成時には充電状態のいわゆるLiの吸蔵状態であり、また正極のLiCoO2も初期状態が放電状態のいわゆるLi吸蔵状態であるため、このままで電池を構成することはできない。正・負極いずれかの電極材料からLiを脱離させて、Li放出状態にして電池を組み合わせる必要がある。そこで、ここでは正極のLiCoO2からあらかじめLiを酸処理で抜き取った正極材料、組成式Li0.5CoO2相当品を電池作製時に用いた。
正極にはLi0.5CoO2相当品、負極材料には上述の遷移金属にCoを用いた6種類の組成の窒化物を用いて、それぞれ図1に示したボタン形電池を作製し、その電池特性を比較した。
【0022】
図2は6種類のx値を有するリチウム含有複合窒化物をそれぞれ用いた上述のボタン形電池のサイクル特性を比較したものである。例えば、図2中のx=0.4、すなわちLi2.6Co0.4N組成のリチウム含有複合窒化物を用いた電池(正極にLiを脱離したLi0.5CoO2を使用)では、正極材料は約0.30g充填してあり、42mAhの初期容量が得られている。また、このときの負極材料であるリチウム含有複合窒化物の充填量は約0.06gであった。なお、充放電は5mAの定電流で充電および放電の終止電圧をそれぞれ4.1Vおよび2.0Vとして行った。また、サイクルは、50サイクルまで確認した。この電池の場合、50サイクル目の容量が38mAhであったので、サイクル劣化率は0.190%/サイクルとなる。
なお、ここで用いたサイクル劣化率は、初期容量42mAhから50サイクル目の容量38mAhを引いた容量低下量を初期容量の42mAhとサイクル数50で割った値を百分率で表したもので、いわゆる1サイクル当たりの初期容量を基準とした容量低下率である。
【0023】
図2から明らかに0.2≦x≦0.6の範囲でサイクル可逆性が優れていることがわかる。なお、この時のサイクル劣化率はx=0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、及び0.6のリチウム含有複合窒化物を用いた電池でそれぞれ0.538%、0.252%、0.224%、0.190%、0.178%及び0.202%であった。
【0024】
《実施例2》
実施例1と同様のボタン形電池で、負極にはx=0.4、すなわちLi2.6Co0.4N組成のリチウム含有複合窒化物を用いた電池を作製した。本実施例では、充電方向の深さ限界を確認するために、正極にはLi脱離量を少なくしたLi0.7CoO2を用いた。なお、正・負極の充填量は、実施例1と同じでそれぞれ約0.3g、0.06gとした。この電池構成の場合、正極が放電側に寄っているので、放電深度は浅くなり、放電方向のサイクル可逆性はむしろ良化する。しかし、充電時には正極はLi0.5CoO2まで充電できるので、未脱離で生じた余剰の0.2Li分が負極に上乗せされるため、充電後のリチウム含有複合窒化物の含有Li量は、初期状態のLi2.6Co0.4Nより大きな値とすることができる。そこで、充電深さを種々変えて、充放電サイクルを比較した。
【0025】
図3に、見かけ上組成式をLizCo0.4N(zはリチウム含有複合窒化物中のLi数で、電池構成時はz=2.6)としたときの、z値で表した充電深さと、その充電深さで充放電サイクルを行ったときのサイクル劣化率の関係を示す。 なお、サイクル劣化率は実施例1と同様の初期容量と50サイクル目の容量差から求めた。図3からも明らかなように、z値が3.0を境にサイクル劣化率が急変することがわかる。サイクル試験後の電池を分解して調べた結果、劣化率が悪化した3.0≦zの電池で、リチウムの析出が見られることがわかった。このリチウム析出がサイクル劣化の原因であると考えられる。
実施例1で規定したサイクル性に優れる0.2≦x≦0.6の範囲のリチウム含有複合窒化物を用いてこの充電深度を深くするサイクル試験を行った結果、サイクル劣化はx値に関係なく、リチウム含有複合窒化物中のLiの量に依存し、いずれもその充電深度が組成式で表すところのLi3.0CoxN(0.2≦x≦0.6)を越えると著しいサイクル劣化を起こすことがわかった。
以上の結果から、一般式Li(3-x)-yMxNで表されるところのLi量(3.0−x)−yは充電時において(3.0−x)−y<3.0、すなわち−x<yであることが望ましい。
【0026】
《実施例3》
本実施例でも、実施例1と同様のボタン形電池で、負極にはx=0.4、すなわちLi2.6Co0.4N組成のリチウム含有複合窒化物を用いた電池を作製した。本実施例では、放電方向の深さ限界を確認するために、正極にはLi0.5CoO2を用い、かつ、正極の充填量を相対的に増やした電池構成とした。正極のLi0.5CoO2充填量および負極のLi2.6Co0.4N充填量は、それぞれ約0.5gおよび0.06gとした。この電池構成の場合、充電深度は実施例1の場合と同じであり、基本的に充電方向のサイクル可逆性には問題がない。また、放電方向の深度は放電容量でカットすることで任意に設定できる。特に、正極の充填量を相対的に増やしているために、正極の放電容量に余裕があり、負極を深く放電することが可能である。そこで、放電深さを種々変えて、充放電サイクルを比較した。
【0027】
図4に、見かけ上組成式をLizCo0.4N(zはリチウム含有複合窒化物中のLi数で、電池構成時はz=2.6)としたときの、z値で表した放電深さと、その放電深さで充放電サイクルを行ったときのサイクル劣化率の関係を示す。 なお、サイクル劣化率は実施例1と同様の初期容量と50サイクル目の容量差から求めた。図4からも明らかなように、z値が1.0を境にサイクル劣化率が急変することがわかる。
また、放電深度をz≦1.0としてサイクルを行った電池は、サイクル試験後に電池が膨れていることがわかった。この電池を分解して調べた結果、電池内にガスが溜まっていることがわかった。また、このガスを分析したところ、ほとんどが窒素ガスであることが判明した。
【0028】
この電池系内での窒素成分は、負極の窒化物中の窒素の他は考えられないため、このガスは負極材料のリチウム含有複合窒化物が分解して発生したものであると推定される。特に、放電で負極からLiを抜くことはカチオン欠乏状態を作り出していることであり、リチウム含有複合窒化物中でカチオン、アニオンの電荷的なバランスが大きく崩れたこのような状況の場合、アニオン成分、すなわち窒素を放出する方向で反応が進むことは論理的である。
実施例1で規定したサイクル性に優れる0.2≦x≦0.6の範囲のリチウム含有複合窒化物を用いてこの放電深度を深くするサイクル試験を行った結果、サイクル劣化はx値に関係なく、リチウム含有複合窒化物中のLiの量に依存し、いずれもその放電深度が組成式で表すところのLi1.0CoxN(0.2≦x≦0.6)を下回ると著しいサイクル劣化を起こすことがわかった。
以上の結果から、一般式Li(3-x)-yMxNで表されるところのLi量(3.0−x)−yは放電時においては1.0<(3.0−x)−y、すなわちy<2.0−xであることが望ましい。
【0029】
上記の実施例では、置換する遷移金属種としてCoを用いたが、Coの代わりにMn、NiまたはCuを用いた場合およびこれらを混合して用いた場合も同様の現象ならびに同様の効果が得られた。
【0030】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、サイクル特性および信頼性に優れた、高エネルギー密度の非水電解質二次電池が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例における非水電解質二次電池の縦断面図である。
【図2】x値の異なるLi(3-x)-yMxNを負極に用いた電池のサイクル特性を比較した図である。
【図3】負極に用いたLizCo0.4Nのz値とサイクル劣化率の関係を示す図である。
【図4】他の実施例における負極に用いたLizCo0.4Nのz値とサイクル劣化率の関係を示す図である。
【符号の説明】
1 封口板
2 ニッケル網
3 負極
4 銅箔
5 セパレータ
6 正極
7 アルミ箔
8 正極ケース
9 ステンレス網
10 ガスケット
【発明の属する技術分野】
本発明は、非水電解質二次電池、特に、その負極材料にリチウム含有複合窒化物を用いるリチウム二次電池の充放電方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
当初、非水電解質二次電池用の負極材料として高容量であるリチウム金属を用いる検討が盛んに行われたが、充電時に負極にデンドライト状の析出が起こり、充放電を繰り返すと、その析出物がセパレータを突き破って正極側に達し内部短絡を起こすおそれがあった。このような理由も含めて負極材料としてリチウム金属を用いた非水電解質二次電池は、低い信頼性、および短いサイクル寿命と言う観点から実用化が困難であった。
一方、非水電解質二次電池として、炭素材料を負極材料、リチウム含有複合酸化物を正極材料とするリチウムイオン二次電池が開発された。これは水溶液系の二次電池に比べて電圧およびエネルギー密度が高く、かつ低温特性が優れており、負極にリチウム金属を用いていないことからサイクル安定性にも優れており、急速に実用化された。
通常、炭素材料負極には金属リチウムは析出しないため、デンドライトによる内部短絡の問題はないが、炭素材料の一つである黒鉛の理論容量は372mAh/gであり、リチウム金属単体の理論容量の10分の1程度と少ない。
【0003】
他の負極材料として、リチウムを含む窒化物が高容量材料として知られている。リチウム含有複合窒化物を電池の負極材料として用いる技術は比較的新しく、例えば、電気化学素子の電極材料として用いるリチウムニトリド金属化合物(リチウム含有複合窒化物と同意)が特開平7−78609号公報に開示されている。リチウム含有複合窒化物の中でもリチウムと遷移金属の複合窒化物、一般式Li(3.0-x)-yMxN(MはCo、Mn、Ni、及びCuからなる群より選ばれた少なくとも一種の遷移金属)で表される化合物は、電位的に金属リチウムを析出しないため、デンドライトによる内部短絡の問題はなく、特に、上述のx値が0.1〜0.6あたりの化合物はその可逆容量が500〜800mAh/gであり、いずれも黒鉛の理論容量よりも大きい有望な負極材料である。
【0004】
しかしながら、上記のようなリチウム含有複合窒化物を負極材料として電池に用いる場合には、以下に示すような問題があった。
すなわち、リチウム含有複合窒化物は、炭素負極材料にくらべて充放電サイクル特性が不十分なことである。その理由は、充放電可逆容量が大きい分、充放電における膨張・収縮による体積変化が大きくなるためであると推測される。充電時と放電時の体積差が大きい場合、大きなひずみが生じ、亀裂が発生して窒化物粒子そのものが微細化したり、膨張・収縮で極板内の導電剤との絡みを含めた電子伝導ネットワークが緩んだり分断されたりして、電気化学的な反応に関与できない部分が増加し、充放電容量が低下するものと考えられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高容量で充放電サイクル特性に優れた負極材料であるリチウム含有複合窒化物を用いる場合の上記従来の課題を解決し、サイクル特性および信頼性に優れた、高エネルギー密度の非水電解質二次電池を与える方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明は、リチウムの吸蔵・放出が可能な正極と、一般式Li(3.0-x)-yMxN(MはCo、Mn、Ni及びCuからなる群より選ばれた少なくとも一種の遷移金属、0.2≦x≦0.6)で表されるリチウム含有複合窒化物からなる負極を具備する非水電解質二次電池を、充放電に伴い変化するLi含量の変化を表す変数yを−x<y<2.0−xの範囲に規制して充放電することを特徴とする。
【0007】
本発明は、高容量のリチウム含有複合窒化物の充放電に伴う体積変化に注目し、その遷移金属の含有量を上記のように制御することによってその体積変化を抑制し、サイクル特性を改善するものである。さらに、充放電に伴ってリチウム含有複合窒化物中のLi量は変化するが、この時のLi量の変化範囲に制限を設けることでサイクル劣化領域を回避し、サイクル劣化を抑制しようというものである。すなわち、適切な組成のリチウム含有複合窒化物を負極材料として用いてその体積変化を最小限にとどめ、かつLiの変化範囲を正・負極の充填容量バランス等の設計条件や充放電条件で制御し、サイクル劣化領域を回避するのである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明は、負極材料としてリチウム含有複合窒化物、一般式Li(3.0-x)-yMxN(MはCo、Mn、Ni及びCuの群から選ばれた少なくとも一種の遷移金属)で表される化合物を用い、このリチウム含有複合窒化物において、上記式中において遷移金属の含有量に相当するx値を0.2≦x≦0.6とする。かつリチウム含有複合窒化物を電池の負極材料として使用する際のリチウム含有複合窒化物中の充放電に伴うLiの変化量を−x<y<2.0−xの範囲に限定する。なお、y値の規制は、方法論的には充填容量バランス等の設計条件や充放電条件を設定することでなされる。
このリチウム含有複合窒化物は、窒化リチウムLi3Nに遷移金属原子を固溶させた化合物である。x値は合成した時点で決定される。実験的に検討した結果、置換できる量はx≦0.6の範囲(0.6<xとなるように合成しても未反応の遷移金属が残存する)であるが、特に電池の電極材料として機能するのは0.1≦x≦0.6の範囲である。なお、x<0.1では材料そのものの電気伝導性はほとんどなく絶縁体に近いため、電極として機能しない。
【0009】
充放電に伴う体積変化に関して、これらリチウム含有複合窒化物は、最初の放電で非晶質化し、その後の充放電において二度と結晶質に戻ることがないので、格子定数の変化から現象をとらえることはできない。しかし、リチウム含有複合窒化物からなる負極の充放電に伴う極板厚み変化を追跡すると、上記x値がx<0.2で合成された電極材料を含む場合に変化率が大きい結果が得られている。このような材料は、基本的に置換した遷移金属が充放電時のLiの吸蔵・放出に対応してその価数を変えるため結晶の歪みを緩和すると考えられる。ところが、x<0.2の領域では、遷移金属の絶対量が不足することから、価数変化による結晶の歪みの緩和作用が弱まるため、結晶の膨張・収縮が促進されるものと推測される。すなわち、本発明の0.2≦x≦0.6の領域では、遷移金属の価数変化が結晶歪みを緩和するため、膨張・収縮が抑制されるものと推測される。
従って、体積変化の観点からは、上述の一般式におけるx値が0.2≦x≦0.6の範囲のリチウム含有複合窒化物を用いることがサイクル特性改良のために有効である。
【0010】
さらに、x値が0.2≦x≦0.6の範囲で合成したこれらリチウム含有複合窒化物の充放電に伴うLiの変化量とサイクル劣化について検討を加えた。充電方向では、x値に関係なくリチウム含有複合窒化物Li(3.0-x)-yMxN中の総Li量が3.0以上、すなわち、3.0≦(3.0−x)−yの領域を使う充放電を行うと著しいサイクル劣化を示した。検討の結果、この原因はLiの析出であることがわかった。従って、(3.0−x)−y<3.0の領域、すなわち−x<yの範囲で充放電を行うことが望ましい。
次に放電方向では、やはりx値に関係なくリチウム含有複合窒化物Li(3.0-x)-yMxN中の総Li量が1.0以下、すなわち(3.0−x)−y≦1.0の領域を使う充放電を行うと著しいサイクル劣化を示した。検討の結果、この原因は、リチウム含有複合窒化物Li(3.0-x)-yMxNの組成崩壊であることが判明した。特に、この場合は窒化物が分解して窒素ガスが発生することもわかった。
従って、1.0<(3.0−x)−yの領域、すなわちy<2.0−xの範囲で充放電を行うことが望ましい。
以上のように、−x<yでかつy<2.0−xの領域、すなわち、電池の電極材料として使用する際の充放電に伴うLiの変化量に相当するyが−x<y<2.0−xの範囲であることが望ましい。
【0011】
本発明のさらに好ましい実施の形態を以下に説明する。
負極のリチウム含有複合窒化物は、水分との反応性が高く、水分で劣化するため、電極作製過程におけるペースト化等に用いる溶剤は高度に脱水されたものを用いることが望ましい。
本発明に用いられる正極及び負極は、リチウムイオンを電気化学的かつ可逆的に挿入・放出できる正極材料や負極材料に導電剤、ポリマー材料等を含む合剤層を集電体の表面に塗着して作製することができる。
【0012】
本発明に用いられる負極用導電剤は、電子伝導性材料であれば何でもよい。例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛など)、人造黒鉛、膨張黒鉛などのグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカ−ボンブラック類、炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維類、銅、ニッケル等の金属粉末類およびポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料などを単独またはこれらの混合物として含ませることができる。これらの導電剤のなかで、人造黒鉛、アセチレンブラック、炭素繊維が特に好ましい。導電剤の添加量は、特に限定されないが、負極材料に対して1〜50重量%が好ましく、特に1〜30重量%が好ましい。また、本発明の負極材料は、それ自身電子伝導性を有するため、導電剤を添加しなくても電池として機能させることは可能である。
本発明に用いられる負極用集電体としては、構成された電池において化学変化を起こさない電子伝導体であれば何でもよい。例えば、材料としてステンレス鋼、ニッケル、銅、チタン、炭素、導電性樹脂などの他に、銅やステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケルあるいはチタンを処理させたものなどが用いられる。特に、銅あるいは銅合金が好ましい。また、表面処理により集電体表面に凹凸を付けることが望ましい。形状は、フォイルの他、フィルム、シート、ネット、パンチングされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の成形体などが用いられる。厚みは、特に限定されないが、1〜500μmのものが用いられる。
【0013】
本発明に用いられる正極材料には、リチウム含有遷移金属酸化物を用いることができる。例えば、LixCoO2、LixNiO2、LixMnO2、LixCoyNi1-yO2、LixCoyM1-yOz、LixNi1-yMyOz、LixMn2O4、LixMn2-yMyO4(M=Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、Bのうち少なくとも一種、x=0〜1.2、y=0〜0.9、z=2.0〜2.3)があげられる。ここで、上記のx値は、充放電開始前の値であり、充放電により増減する。なお、リチウム含有遷移金属化合物のような通常充電から(Liの放出方向から)開始する正極材料を用いる場合は、本発明の窒化物材料が通常放電から開始する負極材料なので、状態を一致させるために正負極のいずれか一方からあらかじめLiを抜く化成処理が必要である。また、遷移金属カルコゲン化物、バナジウム酸化物のリチウム化合物、ニオブ酸化物のリチウム化合物、有機導電性物質を用いた共役系ポリマー、シェブレル相化合物等の他の正極材料を用いることも可能である。二酸化マンガン、五酸化バナジウムなどの通常放電から開始する正極材料の場合は、化成処理を施す必要がなく、製造上は有利である。また、複数の異なった正極材料を混合して用いることも可能である。正極材料の粒子の平均粒径は、特に限定はされないが、1〜30μmであることが好ましい。
【0014】
本発明で使用される正極用導電剤は、用いる正極材料の充放電電位において、化学変化を起こさない電子伝導性材料であれば何でもよい。例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛など)、人造黒鉛などのグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカ−ボンブラック類、炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維類、アルミニウム等の金属粉末類、酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー類、酸化チタンなどの導電性金属酸化物あるいはポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料などを単独またはこれらの混合物として含ませることができる。これらの導電剤のなかで、人造黒鉛、アセチレンブラックが特に好ましい。導電剤の添加量は、特に限定されないが、正極材料に対して1〜50重量%が好ましく、特に1〜30重量%が好ましい。カーボンやグラファイトでは、2〜15重量%が特に好ましい。
本発明に用いられる正極用集電体としては、用いる正極材料の充放電電位において化学変化を起こさない電子伝導体であれば何でもよい。例えば、材料としてステンレス鋼、アルミニウム、チタン、炭素、導電性樹脂などの他に、アルミニウムやステンレス鋼の表面にカーボンあるいはチタンを処理させたものが用いられる。特に、アルミニウムあるいはアルミニウム合金が好ましい。これらの材料の表面を酸化して用いることもできる。また、表面処理により集電体表面に凹凸を付けることが望ましい。形状は、フォイルの他、フィルム、シート、ネット、パンチされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群、不織布体の成形体などが用いられる。厚みは、特に限定されないが、1〜500μmのものが用いられる。
【0015】
正・負極の電極の結着剤としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、スチレンブタジエンゴム、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体または前記材料の(Na+)イオン架橋体、エチレン−メタクリル酸共重合体または前記材料の(Na+)イオン架橋体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体または前記材料の(Na+)イオン架橋体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体または前記材料の(Na+)イオン架橋体を挙げる事ができ、これらの材料を単独または混合物として用いることができる。
【0016】
本発明における負極板と正極板の構成は、少なくとも正極合剤面に対向して負極合剤面が存在していることが好ましい。
本発明の非水電解質は、溶媒と、その溶媒に溶解するリチウム塩とから構成される。例えば、エチレンカーボネ−ト、プロピレンカ−ボネ−ト、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートなどの環状カーボネート類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート類、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの脂肪族カルボン酸エステル類、γ−ブチロラクトン等のγ−ラクトン類、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、エトキシメトキシエタン等の鎖状エーテル類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル類、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、プロピルニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エチルエーテル、1,3−プロパンサルトン、アニソール、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性有機溶媒を挙げることができ、これらの一種または二種以上を混合して使用することができる。なかでも環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合系または環状カーボネートと鎖状カーボネート及び脂肪族カルボン酸エステルとの混合系が好ましい。
【0017】
これらの溶媒に溶解するリチウム塩としては、例えばLiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAlCl4、LiSbF6、LiSCN、LiCl、LiCF3SO3、LiCF3CO2、Li(CF3SO2)2、LiAsF6、LiN(CF3SO2)2、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、LiCl、LiBr、LiI、クロロボランリチウム、四フェニルホウ酸リチウム、イミド類等を挙げることができ、これらを使用する電解液等に単独または二種以上を組み合わせて使用することができるが、特にLiPF6を含ませることがより好ましい。
本発明における特に好ましい非水電解質は、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを少なくとも含み、支持塩としてLiPF6を含む電解液である。これら電解質を電池内に添加する量は、特に限定されないが、正極材料や負極材料の量あるいは電池のサイズによって必要量を用いることができる。支持電解質の非水溶媒に対する溶解量は、特に限定されないが、0.2〜2mol/lが好ましい。特に、0.5〜1.5mol/lとすることがより好ましい。
さらに、放電や充放電特性を改良する目的で、他の化合物を電解質に添加することも有効である。例えば、トリエチルフォスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n−グライム、ピリジン、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、クラウンエーテル類、第四級アンモニウム塩、エチレングリコールジアルキルエーテル等を挙げることができる。
電池の形状はコイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型、電気自動車等に用いる大型のものなどいずれにも適用できる。
また、本発明の非水電解質二次電池は、携帯情報端末、携帯電子機器、家庭用小型電力貯蔵装置、自動二輪車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等に用いることができるが、特にこれらに限定されるわけではない。
【0018】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0019】
《実施例1》
負極材料の合成方法
窒化リチウムと遷移金属の粉末を所定量混合し、磁製坩堝に入れ、窒素雰囲気中700℃で8時間加熱するとリチウム含有複合窒化物が得られる。遷移金属が窒化リチウム中に固溶した目的の化合物は凝固物として得られるので、その凝固物をボールミルで粉砕し、篩で分級することにより45μm以下の粒子にした。本実施例では、遷移金属としてCoを用い、比較サンプルとして上記x値を0.1、0.2、0.3、0.4、0.5および0.6とした6種類のリチウム含有複合窒化物をそれぞれ合成した。
【0020】
図1は本発明による非水電解質二次電池のサイクル特性を比較検討するためのテストセルとして作製したボタン形電池の断面図である。図1において、1はステンレス鋼製の封口板であり、その内面にはニッケル網2を抵抗溶接により固定してある。リチウム含有複合窒化物を含む負極3は銅箔4上に形成してあり、銅箔4とニッケル網2を圧着することで集電する構造となっている。LiCoO2を正極材料として用いた正極6は、アルミ箔7上に形成した後に円盤状に打ち抜いた電極である。ステンレス綱製の正極ケース8は、内面にステンレス綱網9が抵抗溶接により固定されている。正極6はアルミ箔7と一体に成形され、アルミ箔7をステンレス網9を圧着することで集電させる構造としている。正極6上にポリエチレンからなる多孔質セパレータ5をのせ、有機電解液を注液した後、ガスケット10を介して封口板1を組合せ、正極ケース8の開口縁を内側に折り曲げ、かしめることによって、電池内容物を密閉、封止した。有機電解液は、炭酸エチレン炭酸ジエチルの体積比1:1の混合溶媒に、LiPF6を1モル/リットル溶解したものである.
【0021】
本実施例では、正極材料としてリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)を用いたが、負極のリチウム含有複合窒化物が合成時には充電状態のいわゆるLiの吸蔵状態であり、また正極のLiCoO2も初期状態が放電状態のいわゆるLi吸蔵状態であるため、このままで電池を構成することはできない。正・負極いずれかの電極材料からLiを脱離させて、Li放出状態にして電池を組み合わせる必要がある。そこで、ここでは正極のLiCoO2からあらかじめLiを酸処理で抜き取った正極材料、組成式Li0.5CoO2相当品を電池作製時に用いた。
正極にはLi0.5CoO2相当品、負極材料には上述の遷移金属にCoを用いた6種類の組成の窒化物を用いて、それぞれ図1に示したボタン形電池を作製し、その電池特性を比較した。
【0022】
図2は6種類のx値を有するリチウム含有複合窒化物をそれぞれ用いた上述のボタン形電池のサイクル特性を比較したものである。例えば、図2中のx=0.4、すなわちLi2.6Co0.4N組成のリチウム含有複合窒化物を用いた電池(正極にLiを脱離したLi0.5CoO2を使用)では、正極材料は約0.30g充填してあり、42mAhの初期容量が得られている。また、このときの負極材料であるリチウム含有複合窒化物の充填量は約0.06gであった。なお、充放電は5mAの定電流で充電および放電の終止電圧をそれぞれ4.1Vおよび2.0Vとして行った。また、サイクルは、50サイクルまで確認した。この電池の場合、50サイクル目の容量が38mAhであったので、サイクル劣化率は0.190%/サイクルとなる。
なお、ここで用いたサイクル劣化率は、初期容量42mAhから50サイクル目の容量38mAhを引いた容量低下量を初期容量の42mAhとサイクル数50で割った値を百分率で表したもので、いわゆる1サイクル当たりの初期容量を基準とした容量低下率である。
【0023】
図2から明らかに0.2≦x≦0.6の範囲でサイクル可逆性が優れていることがわかる。なお、この時のサイクル劣化率はx=0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、及び0.6のリチウム含有複合窒化物を用いた電池でそれぞれ0.538%、0.252%、0.224%、0.190%、0.178%及び0.202%であった。
【0024】
《実施例2》
実施例1と同様のボタン形電池で、負極にはx=0.4、すなわちLi2.6Co0.4N組成のリチウム含有複合窒化物を用いた電池を作製した。本実施例では、充電方向の深さ限界を確認するために、正極にはLi脱離量を少なくしたLi0.7CoO2を用いた。なお、正・負極の充填量は、実施例1と同じでそれぞれ約0.3g、0.06gとした。この電池構成の場合、正極が放電側に寄っているので、放電深度は浅くなり、放電方向のサイクル可逆性はむしろ良化する。しかし、充電時には正極はLi0.5CoO2まで充電できるので、未脱離で生じた余剰の0.2Li分が負極に上乗せされるため、充電後のリチウム含有複合窒化物の含有Li量は、初期状態のLi2.6Co0.4Nより大きな値とすることができる。そこで、充電深さを種々変えて、充放電サイクルを比較した。
【0025】
図3に、見かけ上組成式をLizCo0.4N(zはリチウム含有複合窒化物中のLi数で、電池構成時はz=2.6)としたときの、z値で表した充電深さと、その充電深さで充放電サイクルを行ったときのサイクル劣化率の関係を示す。 なお、サイクル劣化率は実施例1と同様の初期容量と50サイクル目の容量差から求めた。図3からも明らかなように、z値が3.0を境にサイクル劣化率が急変することがわかる。サイクル試験後の電池を分解して調べた結果、劣化率が悪化した3.0≦zの電池で、リチウムの析出が見られることがわかった。このリチウム析出がサイクル劣化の原因であると考えられる。
実施例1で規定したサイクル性に優れる0.2≦x≦0.6の範囲のリチウム含有複合窒化物を用いてこの充電深度を深くするサイクル試験を行った結果、サイクル劣化はx値に関係なく、リチウム含有複合窒化物中のLiの量に依存し、いずれもその充電深度が組成式で表すところのLi3.0CoxN(0.2≦x≦0.6)を越えると著しいサイクル劣化を起こすことがわかった。
以上の結果から、一般式Li(3-x)-yMxNで表されるところのLi量(3.0−x)−yは充電時において(3.0−x)−y<3.0、すなわち−x<yであることが望ましい。
【0026】
《実施例3》
本実施例でも、実施例1と同様のボタン形電池で、負極にはx=0.4、すなわちLi2.6Co0.4N組成のリチウム含有複合窒化物を用いた電池を作製した。本実施例では、放電方向の深さ限界を確認するために、正極にはLi0.5CoO2を用い、かつ、正極の充填量を相対的に増やした電池構成とした。正極のLi0.5CoO2充填量および負極のLi2.6Co0.4N充填量は、それぞれ約0.5gおよび0.06gとした。この電池構成の場合、充電深度は実施例1の場合と同じであり、基本的に充電方向のサイクル可逆性には問題がない。また、放電方向の深度は放電容量でカットすることで任意に設定できる。特に、正極の充填量を相対的に増やしているために、正極の放電容量に余裕があり、負極を深く放電することが可能である。そこで、放電深さを種々変えて、充放電サイクルを比較した。
【0027】
図4に、見かけ上組成式をLizCo0.4N(zはリチウム含有複合窒化物中のLi数で、電池構成時はz=2.6)としたときの、z値で表した放電深さと、その放電深さで充放電サイクルを行ったときのサイクル劣化率の関係を示す。 なお、サイクル劣化率は実施例1と同様の初期容量と50サイクル目の容量差から求めた。図4からも明らかなように、z値が1.0を境にサイクル劣化率が急変することがわかる。
また、放電深度をz≦1.0としてサイクルを行った電池は、サイクル試験後に電池が膨れていることがわかった。この電池を分解して調べた結果、電池内にガスが溜まっていることがわかった。また、このガスを分析したところ、ほとんどが窒素ガスであることが判明した。
【0028】
この電池系内での窒素成分は、負極の窒化物中の窒素の他は考えられないため、このガスは負極材料のリチウム含有複合窒化物が分解して発生したものであると推定される。特に、放電で負極からLiを抜くことはカチオン欠乏状態を作り出していることであり、リチウム含有複合窒化物中でカチオン、アニオンの電荷的なバランスが大きく崩れたこのような状況の場合、アニオン成分、すなわち窒素を放出する方向で反応が進むことは論理的である。
実施例1で規定したサイクル性に優れる0.2≦x≦0.6の範囲のリチウム含有複合窒化物を用いてこの放電深度を深くするサイクル試験を行った結果、サイクル劣化はx値に関係なく、リチウム含有複合窒化物中のLiの量に依存し、いずれもその放電深度が組成式で表すところのLi1.0CoxN(0.2≦x≦0.6)を下回ると著しいサイクル劣化を起こすことがわかった。
以上の結果から、一般式Li(3-x)-yMxNで表されるところのLi量(3.0−x)−yは放電時においては1.0<(3.0−x)−y、すなわちy<2.0−xであることが望ましい。
【0029】
上記の実施例では、置換する遷移金属種としてCoを用いたが、Coの代わりにMn、NiまたはCuを用いた場合およびこれらを混合して用いた場合も同様の現象ならびに同様の効果が得られた。
【0030】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、サイクル特性および信頼性に優れた、高エネルギー密度の非水電解質二次電池が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例における非水電解質二次電池の縦断面図である。
【図2】x値の異なるLi(3-x)-yMxNを負極に用いた電池のサイクル特性を比較した図である。
【図3】負極に用いたLizCo0.4Nのz値とサイクル劣化率の関係を示す図である。
【図4】他の実施例における負極に用いたLizCo0.4Nのz値とサイクル劣化率の関係を示す図である。
【符号の説明】
1 封口板
2 ニッケル網
3 負極
4 銅箔
5 セパレータ
6 正極
7 アルミ箔
8 正極ケース
9 ステンレス網
10 ガスケット
Claims (1)
- リチウムの吸蔵・放出が可能な正極と、一般式Li(3.0-x)-yMxN(MはCo、Mn、Ni及びCuからなる群より選ばれた少なくとも一種の遷移金属、0.2≦x≦0.6)で表されるリチウム含有複合窒化物からなる負極を具備する非水電解質二次電池を、充放電に伴い変化するLi含量の変化を表す変数yを−x<y<2.0−xの範囲に規制して充放電することを特徴とする非水電解質二次電池の充放電方法。
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