JP4155129B2 - 液晶吐出方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶吐出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、液晶装置では、表示の制御手段の一部として、液晶パネル内に配置された液晶が用いられている。
従来、このような液晶パネル内に液晶を配置する場合には、まず2枚の基板を貼り合せることによって液晶パネルを形成した後に液晶パネルの内部を真空雰囲気にし、その後液晶を液晶パネル内部に吸い込ませている。
ところが、この方法は、液晶の使用量が莫大になることや1枚の液晶パネルを製造する時間が長くなるという問題を有している。
そこで、近年は、インクジェット式装置等を用いることによって、2枚の基板を貼り合せる前に、基板上に液晶を配置する技術が用いられている。この技術では、高粘度材料である液晶がインクジェット式装置等によって吐出可能となるように、液晶を吐出可能温度まで加熱することでその粘度を低下させてから吐出している。このインクジェット式装置によれば、用いられる液晶の量が少量で済み、また、液晶の配置をより高精細に行うことができる。
【0003】
【特許文献1】
特開2003−19790号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、液晶を吐出可能な温度まで加熱した場合であっても吐出ヘッドに形成された吐出ノズルに目詰まりが生じる場合がある。これは、液晶を吐出可能な粘度となるまで加熱した場合であっても、液晶を液晶が貯蔵された場所から吐出ヘッドに最初に充填する際に、吐出ノズル内部に気泡が巻き込まれるためであると考えられる。このように目詰まりが生じた吐出ノズルを用いて液晶を吐出すると、基板の所定領域に所定量の液晶を配置することができなくなり、結果として液晶装置に表示ムラ等の発光特性の低下が生じる。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、液晶を確実に吐出ヘッド内に充填させることによって確実に所定量の液晶を吐出配置することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
通常、一般的に用いられている液晶吐出装置では、20cp程度以下の粘度が吐出可能な粘度とされている。ところが、20cp程度の粘度であると上述のように、吐出ノズルに目詰まりが生じる場合があるため、たとえば10cp以下の粘度にすることで吐出の安定化が図られる。また、吐出ヘッドおよび流路内に液晶が満たされてない状態で、液晶タンクから吐出ヘッドに初期充填を実施する場合には、たとえば5cpの粘度にすることで液晶の流動性が上がり、充填の確実性が向上する。
図1は、後述する吐出方法において使用する液晶Aの粘度と温度との関係を示した表である。この図から分かるように、液晶Aは、100℃程度で急激に粘度が低下する。この温度は、液晶Aが固相と液相とが共存する状態から完全に液体となる転移点である。
【0007】
そこで、本発明に係る液晶吐出方法は、液晶を吐出ヘッドから基板上の所定領域に吐出して配置する液晶吐出方法であって、前記液晶を該液晶の転移点以上の温度に加熱する加熱工程を有するという手段を採用する。
【0008】
また、本発明に係る液晶吐出装置は、液晶を吐出ヘッドから基板上の所定領域に吐出して配置する液晶吐出装置であって、前記吐出ヘッドにおいて前記液晶を該液晶の転移点以上の温度に加熱する第1ヒータを備えるという手段を採用する。
【0009】
このような本発明に係る液晶吐出方法及び装置によれば、液晶が転移点以上の温度に加熱されるため、図1で示すように、液晶の粘度が極めて低下する。このため、吐出ヘッド及び液晶の流路が目詰まりすることがないので、液晶を確実に吐出ヘッド内に充填させることによって確実に所定量の液晶を吐出配置することが可能となる。
【0010】
また、本発明に係る液晶吐出方法においては、前記液晶を吐出ヘッドに充填する初期充填工程を有し、該初期充填工程において前記加熱工程を行うことが好ましい。
また、本発明に係る液晶吐出装置においては、前記吐出ヘッド内を負圧吸引することによって前記吐出ヘッドに前記液晶を充填する吸引装置と、前記吸引装置によって前記液晶を前記吐出ヘッドに吸引する際に少なくとも前記第1ヒータを前記液晶が転移点以上の温度となるように制御する制御装置とを備えることが好ましい。
【0011】
これによって、予め外気あるいは所定ガスが充満している吐出ヘッドに充填される液晶が転移点以上の温度、すなわち十分に粘度が低下された状態となるので、気泡を巻き込むことなく液晶が吐出ヘッド内に充填される。これによって、液晶をより確実に吐出ヘッド内に充填させることによってより確実に所定量の液晶を吐出配置することが可能となる。
また、液晶が十分に粘度が低下された状態となるので、過度に吐出ヘッド内を吸引しなくとも容易に液晶が充填される。このため、必要最小限の液晶量での吐出ヘッドへの液晶の初期充填が可能となる。
【0012】
また、前記液晶を貯蔵しておく液晶タンクを加熱する第2ヒータと、前記液晶タンクと前記吐出ヘッドとを繋ぐ流路を加熱する第3ヒータとを備えることによって、液晶タンク及び液晶の流路において液晶を加熱することができるので、吐出ヘッドにおいて容易に液晶を転移点以上の温度に加熱することが可能となる。なお、上記第2及び第3ヒータによって液晶タンク及び液晶の流路を液晶の転移点以上の温度に加熱しておいても良い。
【0013】
次に、本発明に係る液晶装置の製造方法は、液晶吐出方法を用いて基板の所定領域に液晶を配置する液晶吐出配置工程を有するという手段を採用する。
このような本発明に係る液晶装置の製造方法によれば、液晶吐出配置工程において上述の液晶吐出方法を用いて液晶が配置される。したがって、吐出ヘッド(吐出ノズル)が目詰まりしていない状態で液晶が吐出されるため、確実に所定量の液晶が配置された液晶装置を提供することが可能となる。このような液晶装置は、表示ムラの発生が防止されるため、視認性が向上する。
また、本発明に係る電子機器は、上述の液晶装置を表示装置として備えるので、視認性が向上する。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明に係る液晶吐出方法及び装置、液晶装置とその製造方法並びに電子機器の一実施形態について説明する。なお、参照する各図において、図面上で認識可能な大きさとするために縮尺は各層や各部材ごとに異なる場合がある。
【0015】
(液晶吐出装置の構成)
図2は、本発明を適用した液晶吐出装置であるインクジェット式装置の全体構成を示す概略斜視図である。図2に示すように、本実施形態のインクジェット式装置1は、吐出ヘッド100、X方向駆動モータ2、X方向駆動軸4、Y方向駆動モータ3、Y方向ガイド軸5、制御装置6、ステージ7、クリーニング機構部8、基台9、吸引機構10を有している。
【0016】
吐出ヘッド100は、X軸方向に配列された複数の吐出ノズルを備えており、液晶が貯蔵された液晶タンク500から供給パイプ400(流路)を介して供給された液晶を各吐出ノズルから吐出するようになっている。ここで、吐出ヘッド100、液晶タンク500及び供給パイプ400には、第1〜第3ヒータ310、320、330が各々設けられている。
【0017】
ステージ7は、吐出ヘッド100から液晶が吐出される基板Wを載置するためのものであり、この基板Wを所定の基準位置に固定する機構を有している。
【0018】
X方向駆動軸4は、ボールねじなどから構成され、端部にはX方向駆動モータ2が接続されている。このX方向駆動モータ2は、ステッピングモータなどであり、制御装置6からX軸方向の駆動信号が供給されると、X方向駆動軸4を回転させる。このX方向駆動軸4が回転すると、吐出ヘッド100がX方向駆動軸4上をX方向に移動する。
【0019】
Y方向ガイド軸5もボールねじなどから構成されているが、基台9上に所定位置に配置されている。このY方向ガイド軸5上にステージ7が配置され、このステージ7はY方向駆動モータ3を備えている。このY方向駆動モータ3は、ステッピングモータなどであり、制御装置6からY軸方向の駆動信号が供給されると、ステージ7は、Y方向ガイド軸5に案内されながらY方向に移動する。
このようにしてX軸方向の駆動とY軸方向の駆動とを行うことにより、吐出ヘッド100を基板W上の任意の場所に相対移動させることができる。
【0020】
吐出ヘッド100のX軸方向側には、後述する図3に示すように、吐出ヘッド100内に液晶を充填するための吸引機構10が設けられている。
【0021】
後述の図5を参照して後述するように、制御装置6は、吐出ヘッド100に液晶の吐出制御用の信号を供給する駆動信号制御装置31を備えている。また、制御装置6は、X方向駆動モータ2及びY方向駆動モータ3に吐出ヘッド100とステージ7との位置関係を制御する信号を供給するヘッド位置制御装置32を備えている。また、制御装置6は、後述する温度制御部300を備えている。
【0022】
クリーニング機構部8は、吐出ヘッド100に形成された複数の吐出ノズルの先端部を例えば払拭することによって吐出ノズル(吐出ヘッド)の目詰まりを防止するためのものである。このクリーニング機構部8は、Y方向の駆動モータ(図示せず)を備えており、この駆動モータの駆動により、クリーニング機構部8はY方向ガイド軸5に沿って移動する。このようなクリーニング機構部8の移動も制御装置6によって制御される。
【0023】
また、本実施形態のインクジェット式装置1には、図3に示すように吸引機構10が備えられている。この吸引機構10は、吐出ヘッド100の吐出面、すなわち吐出ノズルを形成した面に被着されるノズルキャップ10aと、このノズルキャップ10aに連結したチューブ10bと、このチューブ10bに連結した吸引ポンプ10cとから構成されている。
ノズルキャップ10aは、吐出ヘッド100のノズル形成面に当接してこれを覆うパッド(図示せず)を有し、このパッドに形成された孔部(図示せず)に前記チューブ10bを連通させたものである。なお、パッドはゴムや軟質の合成樹脂などによって形成されており、これによって吐出ヘッド100のノズル形成面に密着するようになっている。
【0024】
吸引ポンプ10cは、真空ポンプやプロセスポンプからなるもので、チューブ10b及びノズルキャップ10aを介して吐出ヘッド100内を負圧吸引することにより、液晶タンク500から液状体を吐出ヘッド100内に強制的に流入させるようにしている。この吸引機構10によって、外気あるいは所定ガスが充満した吐出ヘッド100内に液晶を初期充填する。なお、この吸引ポンプ10cにはタンク(図示せず)が接続されており、このタンクに吐出ヘッド100を流れ出た液晶を回収するようになっている。ここで、本発明に係る吸引装置は、吸引ポンプ10cを含む構成であれば、吸引ポンプ10c単独で構成されていても、また吸引ポンプ10cとチューブ10bとを備えて構成されていてもよい。
【0025】
(吐出ヘッド100の構成)
図4は、本実施形態に係るインクジェット式装置1の吐出ヘッド100を構成する、個々の吐出ヘッド100の分解斜視図である。図4に示すように、本実施形態に係る吐出ヘッド100は、ノズル形成板押え110、ノズル形成板120、キャビティ形成板130、振動板140、ケース150、圧力発生素子アセンブリ160、ヒータハウジング170を有している。
そして、ヒータハウジング170に、第1ヒータ310として吐出ヘッド100に設けられたカートリッジヒータ180と、吐出ヘッド100に設けられた温度センサ190(第1温度センサ315)とが組み込まれている。
【0026】
まず、ノズル形成板押え110は矩形の金属材などから構成され、それには、L字形状の貫通溝111が形成されている。ノズル形成板押え110には、四隅に貫通孔112が形成されているとともに、貫通溝111を挟む両側には位置決め用の小孔113が形成されている。さらに、ノズル形成板押え110には、余剰な液を除去するための吸引パイプ116が接続されている。
【0027】
ノズル形成板120は矩形の金属板であり、その中央にノズル開口121が形成されている。ノズル形成板120には、四隅に貫通孔122が形成されているとともに、ノズル開口121を挟む両側には位置決め用の小孔123が形成されている。ここで、ノズル形成板120は、ノズル形成板押え110をノズル形成板120の下面に重ねたとき、貫通孔112、122同士が重なり、位置決め用の小孔113、123同士が重なるように形成されている。
【0028】
なお、液晶が親水性を有する場合には撥水性の表面処理が施されたノズル形成板120を使用し、液晶が撥水性を有する場合には親水性の表面処理が施されたノズル形成板120を使用する。これにより、液晶がノズル開口121の周辺に付着しにくいという効果がある。
また、ノズル開口121の大きなノズル形成板120を使用するほど、高い粘度の液晶を吐出しやすい。一方、液晶の粘度が低い場合にはノズル開口121の小さなノズル形成板120を使用する方が吐出量が安定する。
【0029】
キャビティ形成板130は、ノズル形成板120より大きめの矩形のシリコン基板などから構成され、それには、ノズル開口121と連通可能な位置に形成されたキャビティ(圧力発生室)131と、このキャビティ131に対して括れ部分を介して接続するリザーバ132とからなる流路133が形成されている。キャビティ形成板130には、キャビティ形成板130の下面にノズル形成板120を重ねたときにノズル形成板120の貫通孔122と重なる4つの貫通孔134と、小孔123と重なる位置決め用の小孔135とが形成されている。さらに、キャビティ形成板130において、その長手方向の中央からリザーバ132が形成されている領域にかけては、6つの貫通孔136が形成されているとともに、小孔135よりもやや大きめの2つの位置決め用孔137も形成されている。
【0030】
なお、流路133の断面積の大きなキャビティ形成板130を使用するほど、高い粘度の液晶を吐出しやすい。一方、液晶の粘度が低い場合には流路133の断面積の小さなキャビティ形成板130を使用する方が吐出量が安定する。
【0031】
振動板140は、キャビティ形成板130と略同じ大きさの矩形の金属板から構成され、それには、振動板140をキャビティ形成板130の上面に重ねたときに、キャビティ形成板130のキャビティ131と重なる領域に肉薄の振動板部141が形成されているとともに、リザーバ132と重なる領域には、供給口142及び肉薄の伝熱部143が形成されている。また、振動板140にはキャビティ形成板130の貫通孔134、貫通孔136、位置決め用孔137と各々、重なる貫通孔144、貫通孔146、位置決め用孔147が形成されている。
【0032】
ケース150は、振動板140と略同じ大きさの厚手の金属材から構成され、それには、振動板140をケース150の下面に重ねたときに、キャビティ131と重なる領域には素子配置用の第1の開口151が形成され、伝熱部143と重なる領域には第2の開口152が形成されている。また、ケース150には、振動板140の貫通孔144、貫通孔146、位置決め用孔147と各々、重なるねじ孔154、ねじ孔156、位置決め用孔157が形成されている。
【0033】
ここで、ケース150は内部が部分的に中空であり、ケース150の下面には振動板140の供給口142と重なる第1の供給口(図示せず)が形成されているとともに、ケース150の後端面には、第1の供給口と連通する第2の供給口(図示せず)が形成されている。本実施形態では、ケース150の第2の供給口に対して、液晶タンク500(図2を参照)から延びてきた供給パイプ400の吐出ヘッド100毎に対応する液供給路107が、メッシュフィルタ108を介して接続されている。
【0034】
このように構成したケース150の下面に対して、振動板140、キャビティ形成板130、ノズル形成板120及びノズル形成板押え110がこの順に重ねた状態で取り付けられる。
【0035】
次に、キャビティ形成板130の下面にノズル形成板120及びノズル形成板押え110をこの順に重ねた状態で、各位置決め用の小孔113、123、135に対して位置決めピン103を差し込んでこれらの板材を位置決めした後、ねじ104を貫通孔112、122、134、144を介してねじ孔154に止め、ケース150の下面に対して、振動板140、キャビティ形成板130、ノズル形成板120及びノズル形成板押え110をこの順に重ねた状態で固定する。
【0036】
これに対して、ケース150の上方では、圧電振動子からなる圧力発生素子161を備える圧力発生用素子アセンブリ160をその下端側から素子配置用の第1の開口151に装着する。この際、圧力発生用素子アセンブリ160の下端部(圧力発生素子161の下端部)と振動板140の振動板部141とを接着剤で固定する。
【0037】
また、ケース150の上方には、圧力発生用素子アセンブリ160に被さるように、金属製のヒータハウジング170を取り付ける。ここで、ヒータハウジング170には、それをケース150の上方に重ねたときに、ケース150に形成されたねじ孔(図示せず)に重なる貫通孔が形成されている。従って、ヒータハウジングの貫通孔からケース150のねじ孔に対してねじ(図示せず)を各々止めれば、ケース150の上方にヒータハウジング170を固定することができる。
【0038】
ここで、ヒータハウジング170には、横方向に貫通するヒータ装着孔172が形成されており、このヒータ装着孔172には、丸棒状のカートリッジヒータ180が装着される。また、ヒータハウジング170の上面に形成されている段差部分を利用して、一点鎖線で示すように、温度センサ190が搭載され、この温度センサ190は、L字プレートやねじ(図示せず)によってヒータハウジング170に固定されている。
【0039】
このように構成した吐出ヘッド100において、図5を参照して後述する中継回路35から圧力発生素子161に所定の駆動電圧を印加すると、この圧力発生素子161の変形に伴って、振動板140の振動板部141が振動する。その間に、キャビティ131の容積が膨張した後、キャビティ131の容積が収縮し、キャビティ131に正圧が発生する。その結果、キャビティ131内の液晶は、ノズル開口121(吐出ノズルの先端部)から液滴として基板W上の所定位置に吐出される。
【0040】
(吐出動作に関する制御系の構成)
図5は、本実施形態に係るインクジェット式装置1の制御系を示すブロック図である。図5に示すように、本実施形態に係るインクジェット式装置1において、制御装置6は、駆動信号制御装置31と、ヘッド位置制御装置32とを有している。
【0041】
駆動信号制御装置31は、吐出ヘッド100を駆動するための波形を出力する。また、駆動信号制御装置31は、例えば、複数の吐出ノズルのうち、いずれの吐出ノズルを用いて、どのタイミングで液晶を吐出するかを示すビットマップデータも出力する。
【0042】
駆動信号制御装置31は、アナログアンプ33と、タイミング制御回路34とに接続されている。アナログアンプ33は、上記波形を増幅して所定の駆動電圧を得る回路である。タイミング制御回路34は、クロックパルス回路を内蔵しており、上記ビットマップデータ及びクロックパルス回路によって決定される駆動周波数に従って、液晶の吐出タイミングを制御する回路である。
【0043】
アナログアンプ33とタイミング制御回路34はいずれも、中継回路35に接続され、この中継回路35は、タイミング制御回路34から出力された所定の駆動周波数のタイミング信号に従ってアナログアンプから出力された駆動電圧を吐出ヘッド100に出力する。
【0044】
なお、ヘッド位置制御装置32は、吐出ヘッド100とステージ7との位置関係を制御するための回路であり、駆動信号制御回路31と協動して吐出ノズルから吐出された液晶の液滴が基板W上の所定の位置に着弾するように制御する。このヘッド位置制御装置32は、X−Y制御回路37に接続されており、このX−Y制御回路37に対して吐出ヘッド100とステージ7との相対位置に関する情報を出力する。
【0045】
X−Y制御回路37は、X方向駆動モータ2及びY方向駆動モータ3に接続されており、ヘッド位置制御装置32から出力された信号に基づいて、X方向駆動モータ2及びY方向駆動モータ3に対して、X軸方向における吐出ヘッド100の位置及びY軸方向におけるステージ7の位置を制御する信号を出力する。
【0046】
(温度制御のための構成)
図6は、図1に示すインクジェット式装置1の温度制御のための構成(加熱部)を示すブロック図である。図2に示すように、吐出ヘッド100には第1ヒータ310及び第1温度センサ315(図4の温度センサ190の集合)を設け、液晶タンク500には第2ヒータ320及び第2温度センサ325を設け、供給パイプ400には、第3ヒータ330及び第3温度センサ335を設ける。なお、各部位には、保温材なども配置されるが、図6には図示を省略してある。
【0047】
温度制御部300は、図2に示す制御装置6に設けられている。第1温度センサ315、第2温度センサ325及び第3温度センサ335は吐出ヘッド100、液晶タンク500及び供給パイプ400に対する各温度監視結果を温度制御部300に出力するように構成されている。
そして、これらの各温度センサ315、325、335の温度監視結果に基づいて、温度制御部300は、第1ヒータ310、第2ヒータ320及び第3ヒータ330を個別に制御する。
このため、本実施形態においては、吐出ヘッド100、液晶タンク500及び供給パイプ400の温度を各々独立して所定の温度に制御することができる。また、第3ヒータ330は、供給パイプ400全体に設けても良く、供給パイプ400の吐出ヘッド100近傍のみに設けても良い。
【0048】
(吐出方法)
図2に示すインクジェット式装置1で、基板Wに液晶を吐出する液晶吐出方法について図7に示すフローチャートを参照して説明する。
まず、初期充填工程(ステップS1)が行われる。初期充填工程では、制御装置6は、吸引機構10によって吐出ヘッド100内を負圧吸引することによって液晶Aを液晶タンク500から供給パイプ400を介して吐出ヘッド100に充填する。また、制御装置6は、第1〜第3ヒータ310,320,330を個別に制御しながら、少なくとも吐出ヘッド100内に位置する液晶Aを転移点以上の温度に加熱する(加熱工程)。なお、好ましくは、制御装置6は、液晶タンク500及び供給パイプ400内に位置する液晶Aも転移点以上の温度となるように第2及び第3ヒータ320,330を制御する。
このように転移点以上の温度に加熱された液晶Aは、図1で示したように、その粘度が極めて低下するために、気泡を巻き込むことなく吐出ヘッド100内に充填される。したがって、吐出ヘッド100に形成された全ての吐出ノズルから目詰まりすることなく液晶Aを吐出することが可能な状態となる。
【0049】
続いて、吐出工程(ステップS2)が行われる。この吐出工程では、制御装置6は、ステージ7と吐出ヘッド100を相対移動させながら、吐出ヘッド100から液晶Aをステージ7上に載置された基板Wの所定領域に吐出することによって所定量の液晶Aを基板Wの所定領域に配置する。
なお、上記初期充填工程によって少なくとも吐出ヘッド100内に位置する液晶Aが転移点以上の温度を有しているため、本吐出工程において、例えば所定時間放置する等によって液晶Aを所定の温度まで冷却した後に吐出することが好ましい。これは、転移点以上の温度を有する液晶Aは、その粘性が極めて低いために基板W上において所定領域を越えて濡れ拡がってしまう可能性があるためである。
このようにして基板Wの所定領域に配置された液晶Aは、上記初期充填工程において目詰まりのない状態となった吐出ヘッド100から吐出されるため、正確に所定量となる。
したがって、本実施形態に係る液晶吐出方法及び装置によれば液晶を確実に吐出ヘッド内に充填させることによって確実に所定量の液晶を吐出配置することが可能となる。
【0050】
(液晶装置とその製造方法)
次に、上述した液滴吐出方法及び方法を用いて製造される液晶装置について説明する。
【0051】
図8は、パッシブマトリクス型の液晶装置の断面構造を模式的に示している。液晶装置200は、透過型のもので、一対のガラス基板201,202の間にSTN(Super Twisted Nematic)液晶等からなる液晶層203が挟まれた構造からなる液晶パネルPと、液晶層に駆動信号を供給するためのドライバIC213と、光源となるバックライト214とを備えている。
【0052】
ガラス基板201(基板W)には、その内面にカラーフィルタ204が配設されている。カラーフィルタ204は、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色からなる着色層204R、204G、204Bが規則的に配列されて構成されたものである。なお、これらの着色層204R(204G、204B)間には、ブラックマトリクスやバンクなどからなる隔壁205が形成されている。また、カラーフィルタ204及び隔壁205の上には、カラーフィルタ204や隔壁205によって形成される段差をなくしてこれを平坦化するためのオーバーコート膜206が配設されている。
【0053】
オーバーコート膜206の上には、複数の電極207がストライプ状に形成され、さらにその上には配向膜208が形成されている。
他方のガラス基板202には、その内面に、上記のカラーフィルタ204側の電極と直交するようにして、複数の電極209がストライプ状に形成されており、これら電極209上には、配向膜210が形成されている。なお、上記カラーフィルタ204の各着色層204R、204G、204Bはそれぞれ、ガラス基板202の電極209と上記ガラス基板201の電極207との交差位置に対応する位置に、配置されている。また、電極207,209は、ITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電材料によって形成されている。ガラス基板202とカラーフィルタ204の外面側にはそれぞれ偏向板(図示せず)が設けられている。ガラス基板201,202同士の間には、これら基板201,202同士の間隔(セルギャップ)を一定に保持するための不図示のスペーサと、液晶203を外気から遮断するためのシール材212とが配設されている。シール材212としては、例えば、熱硬化型あるいは光硬化型の樹脂が用いられる。
【0054】
この液晶装置200では、上述した液晶層203が上述した液滴吐出方法及び装置を用いてガラス基板上に配置される。そのため、確実に所定量の液晶がガラス基板上に配置され、これによって表示ムラの発生が防止されるので視認性の向上が図られる。
【0055】
図9(a)〜(d)は、上記液晶パネルPの製造方法を模式的に示しており、図9(a)及び(b)は、ガラス基板上に液晶を定量配置する工程、図9(c)及び(d)は、液晶を封止する工程(貼合わせ工程)をそれぞれ示している。なお、図9(a)〜(d)では、簡略化のために、上述したガラス基板上の電極やカラーフィルタ、スペーサなどの図示を省略している。
【0056】
図9(a)及び(b)において、液晶を配置する工程では、上述した液滴吐出方法を用いて、ガラス基板201上に所定量の液晶を定量配置する。
すなわち、図9(a)に示すように、ビットマップに基づいてガラス基板201に対して吐出ヘッド100を相対的に移動させながら、吐出ヘッド100の吐出ノズルから加熱された液晶を液滴Lnにして吐出し、その液滴Lnをガラス基板201上に配置する。そして、図9(b)に示すように、ガラス基板201上に所定量の液晶が配置される。ガラス基板201上に配置すべき液晶の所定量は、封止後にガラス基板同士の間に形成される空間の容量と同じである。
【0057】
本実施形態では、吐出ノズルの目詰まりがない状態で液晶が吐出されるため、常にガラス基板201上に所定量の液晶203を配置することが可能となる。
【0058】
次に、図9(c)及び(d)において、所定量の液晶203が配置されたガラス基板201上にシール材212を介して他方のガラス基板202を減圧下で貼り合わせる。
具体的には、まず、図9(c)に示すように、シール材212が配置されているガラス基板201,202の縁部に主に圧力をかけ、シール材212とガラス基板201,202とを接着する。その後、所定の時間の経過後、シール材212がある程度乾燥した後に、ガラス基板201,202の外面全体に圧力をかけて、液晶203を両基板201,202に挟まれた空間全体に行き渡らせる。
この場合、液晶203がシール材212と接触する際には、すでにシール材212がある程度乾燥しているので、液晶203との接触に伴うシール材212の性能低下や液晶203の劣化は少ない。
【0059】
そして、熱や光をシール材212に付与してシール材212を硬化させることにより、ガラス基板201,202の間に液晶が封止される。
このようにして製造される液晶装置は、液晶の消費量が少なく、低コスト化が図れる。また、液晶の表示ムラに伴う表示品質の低下もない。
【0060】
(電子機器)
図10(a)〜(c)は、本発明に係る電子機器の一実施形態を示している。本実施形態に係る電子機器は、本発明の液晶装置を表示手段として備えている。
図10(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図10(a)において、符号1000は携帯電話本体を示し、符号1001は上記の液晶装置を用いた表示部を示している。
図10(b)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図10(b)において、符号1100は時計本体を示し、符号1101は上記の液晶装置を用いた表示部を示している。
図10(c)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図10(c)において、符号1200は情報処理装置、符号1202はキーボードなどの入力部、符号1204は情報処理装置本体、符号1206は上記の液晶装置を用いた表示部を示している。
図10(a)〜(c)に示すそれぞれの電子機器は、本発明の液晶装置を表示手段として備えているので、視認性の高く、品質の向上が図られる。
なお、本実施形態は、パッシブマトリクス型の液晶装置としたが、TFD(Thin Film Diode:薄膜ダイオード)やTFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)をスイッチング素子として用いた、アクティブマトリクス型の液晶装置とすることもできる。
【0061】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 液晶における温度と粘度との関係を表した図である。
【図2】 インクジェット式装置の構成を示す概略斜視図である。
【図3】 吸引機構について説明するための概略図である。
【図4】 吐出ヘッドの構成を示す分解斜視図である。
【図5】 吐出動作に対する制御系の構成を示すブロック図である。
【図6】 温度制御のための構成を示すブロック図である。
【図7】 液晶吐出方法の手順を示すフローチャートである。
【図8】 液晶装置の断面構造の模式図である。
【図9】 液晶装置を製造する手順を模式的に示す図である。
【図10】 電子機器の具体例を示す図である。
【符号の説明】
1……インクジェット式装置、2……X方向駆動モータ、3……Y方向駆動モータ、4……X方向駆動軸、5……Y方向ガイド軸、6……制御装置、7……ステージ、8……クリーニング機構部、9……基台、10……吸引機構、100……吐出ヘッド、200……液晶装置、310……第1ヒータ、320……第2ヒータ、330……第3ヒータ、400……供給パイプ(流路)500……液晶タンク、P……液晶パネル、W……基板
Claims (1)
- 液晶を吐出ヘッドから基板上の所定領域に吐出して配置する液晶吐出方法であって、
前記液晶を吐出ヘッドに充填する初期充填工程において行う前記液晶を該液晶の転移点以上の温度に加熱する加熱工程と、
前記液晶を前記吐出ヘッドから前記基板上の所定領域に吐出する前であって前記初期充填工程後に前記液晶を冷却する工程と
を有することを特徴とする液晶吐出方法。
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