JP4154001B2 - 鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物およびその製造方法、該ノルボルネン化合物を用いた不飽和性エチレン系共重合体およびその製造方法、並びに該不飽和性エチレン系共重合体を含有するゴム組成物 - Google Patents

鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物およびその製造方法、該ノルボルネン化合物を用いた不飽和性エチレン系共重合体およびその製造方法、並びに該不飽和性エチレン系共重合体を含有するゴム組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の技術分野】
本発明は、新規な鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物およびその製造方法に関し、さらに詳しくは、耐候性、耐熱性、耐オゾン性に優れしかも加硫速度の速い新規な不飽和性エチレン系共重合体の製造の際に好適に使用しうるような鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物およびその製造方法に関する。
【0002】
また、本発明は、上記のような鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物を用いた上記特性を有する新規な不飽和性エチレン系共重合体およびその製造方法に関する。
【0003】
また、本発明は、このような不飽和性エチレン系共重合体を含有するゴム組成物に関する。
【0004】
【発明の技術的背景】
一般に、ポリエン化合物は、1分子中に炭素−炭素二重結合を2個以上有する化合物(モノマー)であって、従来より、1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、エチリデン-2-ノルボルネン、ジシクロペンタジエンなど数多くのものが知られている。
【0005】
このようなポリエン化合物と、例えば、エチレン、プロピレン等のα-オレフィンとを共重合させることによって、加硫可能な不飽和性エチレン系共重合体を得ることができる。このような不飽和性エチレン系共重合体は、一般に、耐候性、耐熱性、耐オゾン性に優れており、自動車工業部品、工業用ゴム製品、電気絶縁材、土木建材用品、ゴム引布等のゴム製品として用いられており、またポリプロピレン、ポリスチレン等へのプラスチックブレンド用材料として広く用いられている。
【0006】
このような不飽和性エチレン系共重合体としては、従来では、エチレン・プロピレン・5-エチリデン-2- ノルボルネン共重合体、エチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン・プロピレン・1,4-ヘキサジエン共重合体などが用いられているが、
これらのうちでもエチレン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体は、他の不飽和性エチレン系共重合体に比べ、加硫速度が速く特に広く用いられている。
【0007】
しかしながらこれら従来の不飽和性エチレン系共重合体には、加硫速度のさらなる向上が望まれているのが実情である。すなわち不飽和性エチレン系共重合体は、たとえばエチレン・プロピレン・5-エチリデン-2- ノルボルネン共重合体であっても、天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴムなどのジエン系ゴムに比べると加硫速度が遅く、ジエン系ゴムとの共加硫性に劣っていた。
【0008】
また不飽和性エチレン系共重合体は、上記ジエン系ゴム等に比べて加硫速度が遅いため、加硫時間を短くしたり、あるいは加硫温度を低下させることにより加硫時の消費エネルギー量を減少させて、加硫ゴムを生産性よく製造することが困難であった。
【0009】
この不飽和性エチレン系共重合体の加硫速度を上げるには加硫剤を多量に用いればよいが、加硫剤を多量に用いて加硫しようとすると、得られる加硫ゴムの表面に加硫剤がブルーミングしてくることがあり衛生上好ましくない。
【0010】
このため耐候性、耐熱性、耐オゾン性に優れ、しかも加硫速度が速い不飽和性エチレン系共重合体を製造しうるような新規ポリエン化合物並びに該ポリエン化合物を用いた不飽和性エチレン系共重合体の出現が望まれていた。
【0011】
本発明者は、上記のような従来技術に鑑みてポリエン化合物並びに該ポリエン化合物を用いた不飽和性エチレン系共重合体について鋭意研究した結果、特定の鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物を用いてなる不飽和性エチレン系共重合体エチレンすなわち、α−オレフィンおよび特定の鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物から導かれる構成単位を有し、かつ不飽和性結合成分を有する不飽和性エチレン系共重合体は、耐候性、耐熱性、耐オゾン性に優れ、しかも加硫速度が速いことなどを見出して、本発明を完成するに至った。
【0012】
なお、特公昭46-42365号公報には、エチレン、一般式:
RCH=CH2(R:炭素数1〜20を有する炭化水素基)を有するα-オレフィンの少なくとも1種および一般式:
【0013】
【化6】
Figure 0004154001
【0014】
(R1,R2は、それぞれH,炭素数1〜20を有する炭化水素基、Qは少なくとも1個の内部型二重結合を非共役の位置に有し、全ての二重結合が内部型である炭化水素基を表す。)を有する5-ポリエニル-2-ノルボルネン化合物を配位触媒に接触させるオレフィン共重合体の製造方法が記載されている。
【0015】
しかしながら、該公報記載の方法で得られるオレフィン共重合体では、耐候性、耐熱性、耐オゾン性に優れ、しかも加硫速度にもバランス良く優れた共重合体が望まれているという観点からみると、必ずしも充分でない。
【0016】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであって、耐候性、耐熱性、耐オゾン性に優れしかも加硫速度の速い不飽和性エチレン系共重合体を製造する際に好適に使用しうるような鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物およびその製造方法を提供することを目的としている。
【0017】
また本発明は、上記特性の不飽和性エチレン系共重合体およびその製造方法を提供することを目的としている。
また、本発明は、このような不飽和性エチレン系共重合体を含有するゴム組成物を提供することを目的としている。
【0018】
【発明の概要】
本発明に係る鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物は、
一般式[I]:
【0019】
【化7】
Figure 0004154001
【0020】
[式[I]中、nは1〜5の整数であり、R1は炭素数1〜5のアルキル基であり、R2およびR3はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜5のアルキル基である。]
で表わされる。
【0021】
本発明に係る鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物の製造方法では、シクロペンタジエンと一般式[III]:
【0022】
【化8】
Figure 0004154001
【0023】
[式[III]中、nは1〜5の整数であり、R1は炭素数1〜5のアルキル基であり、R2およびR3はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜5のアルキル基である。]
で表わされる分岐鎖状ポリエン化合物とを反応させることにより、上記の鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物を製造している。
【0024】
本発明に係る不飽和性エチレン系共重合体は、
[A]
(i) エチレンと、
(ii)炭素数3〜20のα−オレフィンと、
(iii) 上記一般式[I]で表される少なくとも1種の鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物とのランダム共重合体であり、
[B]
(i) エチレンから誘導される構成単位が30〜92モル%であり、
(ii)炭素数3〜20のα−オレフィンから誘導される構成単位が6〜70モル%であり、
(iii) 上記一般式[I]で表される鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物から誘導される構成単位が0.1〜30モル%であり、かつ
(iv) (i)エチレンから誘導される構成単位/(ii)炭素数3〜20のα−オレフィンから誘導される構成単位がモル比で40/60〜 92/8であり、
[C]
上記一般式[I]で表される鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物から誘導される構成単位が下記式[II]で表される構造を有しており、
【0025】
【化9】
Figure 0004154001
【0026】
[式[II]中、nは1〜5の整数であり、R1は炭素数1〜5のアルキル基であり、R2およびR3はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜5のアルキル基である。]
[D]
135℃、デカリン中で測定した極限粘度[η]が0.05〜10dl/gであることを特徴としている。
【0027】
本発明に係る不飽和性エチレン系共重合体の製造方法では、
(i) エチレンと、
(ii)炭素数3〜20のα−オレフィンと、
(iii)上記一般式[I]で表される少なくとも1種の鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物とを、
遷移金属化合物と、有機アルミニウム化合物および/またはイオン化イオン性化合物と、から形成される触媒の存在下に共重合させることにより、上記の不飽和性エチレン系共重合体を製造することを特徴としている。
【0028】
本発明に係る不飽和性エチレン系共重合体においては、上記[A](iii)には、鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]に加えて、さらに下記一般式[I−a]:
【0029】
【化10】
Figure 0004154001
【0030】
(式[I−a]中、n、R1、R2およびR3はそれぞれ前記[I]の場合と同様である。)
で表わされる少なくとも1種の鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I−a]が、上記化合物[I]に比して少量、好ましくは[I]+[I−a]の合計100モル%中に、該化合物[I−a]が50モル%未満、さらに好ましくは40モル%以下、特に好ましくは35モル%以下の量で含まれていてもよく、
このようなランダム共重合体では、
上記[B](iii):上記一般式[I]で表わされる鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物から誘導される構成単位[II]と、上記一般式[I−a]で表わされる鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物から誘導される後記の構成単位[II−a]とが、合計で、上記鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[II]単独の場合と同様の量すなわち0.1〜30モル%であり、
上記構成単位[II]と上記構成単位[II−a]との量比は、用いられた鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]と[I−a]との量比に比例し、構成単位[II]と[II−a]との合計100モル%中に、該構成単位[II−a]が50モル%未満、さらに好ましくは40モル%以下、特に好ましくは35モル%以下の量で共重合されている。
【0031】
また、上記[C]:上記一般式[I]で表わされる鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物から誘導される構成単位が、上記式[II]で表わされる構造を有しており、上記一般式[I−a]で表わされる鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物から誘導される構成単位が下記式[II−a]:
【0032】
【化11】
Figure 0004154001
【0033】
(式[II−a]中、n、R1、R2およびR3はそれぞれ前記[II]の場合と同様である。)
で表わされる構造を有している。
【0034】
このような本発明に係る不飽和性エチレン系共重合体は、
(i) エチレンと、
(ii)炭素数3〜20のα−オレフィンと、
(iii)上記一般式[I]で表される少なくとも1種の鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物、および該鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]に比して上記のような少量の上記一般式[I−a]で表される少なくとも1種の鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物とを、
遷移金属化合物と、有機アルミニウム化合物および/またはイオン化イオン性化合物と、から形成される触媒の存在下に共重合させることにより製造することができる。
【0035】
本発明に係るゴム組成物は、
上記の何れかの不飽和性エチレン系共重合体と、
下記(a)、(b)、(c)の内の少なくとも1種以上の成分と、
が含まれていることを特徴としている。
(a)該不飽和性エチレン系共重合体100重量部に対して300重量部以下の量の補強剤、
(b)該不飽和性エチレン系共重合体100重量部に対して200重量部以下の量の軟化剤、
(c)加硫剤。
【0036】
上記のような本発明に係る鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物は、エチレン、プロピレン等のα-オレフィンと共重合させることにより、耐候性、耐熱性、耐オゾン性に優れしかも加硫速度が速い不飽和性エチレン系共重合体を製造する際のモノマーとして好適に用いることができる。
【0037】
上記のような本発明に係る不飽和性エチレン系共重合体は、耐候性、耐熱性、耐オゾン性に優れしかも加硫速度が速い。
【0038】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係る鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物およびその製造方法、該ノルボルネン化合物を用いた不飽和性エチレン系共重合体およびこれらの製造方法、並びに該不飽和性エチレン系共重合体を含有するゴム組成物について具体的に説明する。
【0039】
[鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物]
本発明に係る鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]は、上述したように下記一般式[I]で表される。
【0040】
【化12】
Figure 0004154001
【0041】
式[I]中、nは1〜5の整数であり、R1は炭素数1〜5のアルキル基であり、R2およびR3はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜5のアルキル基である。なお、数字1〜7およびn+3等は、炭素番号(置換基位置)を示す。
【0042】
炭素数1〜5のアルキル基としては、具体的に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、i-ペンチル基などが挙げられる。
【0043】
このような式[I]で表わされる鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物(以下、鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]ともいう)としては、具体的に下記(1)〜(24)に例示するような化合物が挙げられ、好ましくは、(5)、(6)、(9)、(11)、(14)、(19)、(20)が用いられる。
(1):5-(2-エチリデン-4-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、
(2):5-(2-エチリデン-5-メチル-4-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、
(3):5-(2-エチリデン-5-メチル-4-ヘプテニル)-2-ノルボルネン、
(4):5-(2-エチリデン-5-エチル-ヘプテニル)-2-ノルボルネン、
(5):5-(2-エチリデン-4,5-ジメチル-4-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、
(6):5-(2-エチリデン-4,5-ジメチル-4-ヘプテニル)-2-ノルボルネン、
(7):5-(2-エチリデン-4-オクテニル)-2-ノルボルネン、
(8):5-(2-エチリデン-5-メチル-4-オクテニル)-2-ノルボルネン、
(9):5-(2-エチリデン-4-プロピル-5-メチル-4-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、
(10):5-(2-エチリデン-5-ヘプテニル)-2-ノルボルネン、
(11):5-(2-エチリデン-6-メチル-5-ヘプテニル)-2-ノルボルネン、
(12):5-(2-エチリデン-6-ノネニル)-2-ノルボルネン、
(13):5-(2-エチリデン-6-メチル-5-ノネニル)-2-ノルボルネン、
(14):5-(2-エチリデン-5,6-ジメチル-5-ヘプテニル)-2-ノルボルネン、
(15):5-(2-エチリデン-5,6-ジメチル-5-オクテニル)-2-ノルボルネン、
(16):5-(2-エチリデン-5,6-ジメチル-5-ノネニル)-2-ノルボルネン、
(17): 5-(2-エチリデン-5-エチル-6-メチル-5-ノネニル)-2-ノルボルネン
(18):5-(2-エチリデン-5,6-ジエチル-5-オクテニル)-2-ノルボルネン、
(19):5-(2-エチリデン-7-メチル-6-オクテニル)-2-ノルボルネン、
(20):5-(2-エチリデン-6,7-ジメチル-6-オクテニル)-2-ノルボルネン、
(21):5-(2-エチリデン-8-メチル-7-ノネニル)-2-ノルボルネン、
(22):5-(2-エチリデン-7,8-ジメチル-7-ノネニル)-2-ノルボルネン、
(23):5-(2-エチリデン-9-メチル-8-デセニル)-2-ノルボルネン、
(24):5-(2-エチリデン-8,9-ジメチル-8-デセニル)-2-ノルボルネンなど。
【0044】
上記化合物(1)〜(24)の化学式をまとめて以下に示す。
【0045】
【化13】
Figure 0004154001
【0046】
【化14】
Figure 0004154001
【0047】
【化15】
Figure 0004154001
【0048】
このような鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]は、後述する不飽和性エチレン系共重合体の製造用モノマーとして、好ましくは、(i)エチレン、および(ii)炭素数3〜20のα-オレフィンと共に用いられるが、その際には、該鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]は、立体異性体の内の1種例えばトランス体単独またはシス体単独であってもよく立体異性体混合物、例えばトランス体およびシス体の混合物であってもよい。
【0049】
このような鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]は、後述するように、耐候性、耐熱性、耐オゾン性に優れしかも加硫速度の速い新規な不飽和性エチレン系共重合体の製造の際に好適に使用できる。
【0050】
次に、このような鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]の製造方法について、具体的に説明する。
[鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[ I ]の製造]
以下に、この鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I](および[I−a])の製造方法について詳説する。
【0051】
本発明に係る鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]は、下記のようにして製造される。
【0052】
【化16】
Figure 0004154001
【0053】
すなわち、上記鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]は、本願出願人が先に提案した特願平6-154952号明細書(平成6年(1994)7月6日出願)に記載されているように、まず、エチレンと式[III-a]:
【0054】
【化17】
Figure 0004154001
【0055】
(式[III-a]中、nは1〜5の整数であり、R1 は炭素数1〜5のアルキル基であり、R2 およびR3 はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜5のアルキル基である。)
で表わされる共役ジエン化合物[III-a]とを、遷移金属化合物および有機アルミウニウム化合物からなる触媒の存在下に反応させることにより、
式[III]:
【0056】
【化18】
Figure 0004154001
【0057】
(式[III]中、n、R1 、R2 およびR3 は上記[III-a]の場合と同様のものを示す。)
で表わされる分岐鎖状ポリエン化合物[III]を合成し、
次いで、特願平6ー322099号明細書(平成6年12月26日出願)に記載されているように、この分岐鎖状ポリエン化合物[III]とシクロペンタジエンとを反応(ディールス・アルダー反応)させることにより、上記鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]が得られる。
【0058】
以下、この鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]の上記製造工程に沿ってさらに詳細に順次説明する。
[分岐鎖状ポリエン化合物[ III ]の製造]
上記分岐鎖状ポリエン化合物[III]は、上記式[III-a]で示される共役ジエンを有する化合物(以下共役ジエン化合物[III-a]ともいう)と、エチレンとを反応させることにより製造することができる。
【0059】
上記式[III-a]中で、炭素数1〜5のアルキル基としては、前述したようなものが挙げられる。
このような式[III-a]で示される共役ジエン化合物としては、具体的にたとえば、下記(1)〜(24)に例示するような化合物が挙げられる。
(1):3-メチレン-1,5-ヘプタジエン、
(2):6-メチル-3-メチレン-1,5-ヘプタジエン、
(3):6-メチル-3-メチレン-1,5-オクタジエン、
(4):6-エチル-3-メチレン-1,5-オクタジエン、
(5):5,6-ジメチル-3-メチレン-1,5-ヘプタジエン、
(6):5,6-ジメチル-3-メチレン-1,5-オクタジエン、
(7):3-メチレン-1,5-ノナジエン、
(8):6-メチル-3-メチレン-1,5-ノナジエン、
(9):6-メチル-5-プロピル-3-メチレン-1,5-ヘプタジエン、
(10):3-メチレン-1,6-オクタジエン、
(11):7-メチル-3-メチレン-1,6-オクタジエン、
(12):3-メチレン-1,6-デカジエン、
(13):7-メチル-3-メチレン-1,6-デカジエン、
(14):6,7-ジメチル-3-メチレン-1,6-オクタジエン、
(15):6,7-ジメチル-3-メチレン-1,6-ノナジエン、
(16):6,7-ジメチル-3-メチレン-1,6-デカジエン、
(17):7-メチル-6-エチル-3-メチレン-1,6-デカジエン、
(18):6,7-ジエチル-3-メチレン-1,6-ノナジエン、
(19):8-メチル-3-メチレン-1,7-ノナジエン、
(20):7,8-ジメチル-3-メチレン-1,7-ノナジエン、
(21):9-メチル-3-メチレン-1,8-デカジエン、
(22):8,9-ジメチル-3-メチレン-1,8-デカジエン、
(23):10-メチル-3-メチレン-1,9-ウンデカジエン、
(24):9,10-ジメチル-3-メチレン-1,9-ウンデカジエン。
【0060】
上記反応によると、分岐鎖状ポリエン化合物[III]は、通常、トランス体とシス体との混合物として得られる。分岐鎖状ポリエン化合物[III]の構造によっては、蒸留によってトランス体とシス体とを分離することができる。
【0061】
また上記反応によれば、分岐鎖状ポリエン化合物[III]とともに一般式[III-b]で示される下記のような鎖状ポリエン化合物も副生することがある。
【0062】
【化19】
Figure 0004154001
【0063】
このような副生物としては、具体的には、例えば、7-メチル-3-メチレン-1,6ーオクタジエン(β-ミルセン)とエチレンとの反応により、EMN(4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン)を合成する際に副生する5,9−ジメチル-1,4,8-デカトリエンが挙げられる。
【0064】
このような副生物は、通常、蒸留によって分離することができる。
上記のような共役ジエン化合物[III-a]とエチレンとの反応は、共役ジエン化合物[III-a]の種類によっても異なるが、通常50〜200℃好ましく70〜150℃の温度で、エチレン圧1〜100kg/cm2 好ましくは10〜70kg/cm2 の圧力下に、0.5〜30時間行われる。
【0065】
反応は、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。また溶媒を使用しないで反応を行なうことができるが、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、トルエン、キシレンなどの不活性な炭化水素系溶媒の共存下に反応を行なうこともできる。
【0066】
この反応は、通常触媒の存在下に行なわれる。特に反応を、遷移金属化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒の存在下に行なうと、分岐鎖状ポリエン化合物[III]が効率よく得られる。
【0067】
このような遷移金属化合物としては、具体的に、鉄、ルテニウムなどの鉄族、コバルト、ロジウム、イリジウムなどのコバルト族、ニッケル、パラジウムなどのニッケル族から選ばれる遷移金属の塩化物、臭化物、アセチルアセトナート塩、1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロアセチルアセトナート塩、ジピバロイルメタン塩などが挙げられる。これらのうち、コバルト、鉄、ニッケル、ロジウム、パラジウムの塩化物が好ましく、特にコバルト化合物の塩化物が好ましい。
【0068】
このような遷移金属化合物(たとえば遷移金属塩化物)は、そのままでも反応に用いることができるが、この遷移金属化合物に有機配位子が配位した遷移金属錯体として用いることが好ましい。すなわちこの遷移金属化合物とともに遷移金属の配位子となりうる有機化合物(配位化合物)を反応系に共存させるか、あるいは予め遷移金属化合物と上記のような配位化合物とから遷移金属錯体を形成して使用するのが好ましい。
【0069】
このような配位子となりうる化合物としては、たとえば、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、シクロオクタジエン、シクロオクタテトラエンなどが挙げられる。
【0070】
また予め遷移金属化合物に有機配位子が配位された錯体としては、
[1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]コバルト(II)クロリド、
[1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ニッケル(II)クロリド、
ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)クロリドなどが好ましく用いられる。
【0071】
また有機アルミニウム化合物としては、後述する不飽和性エチレン系共重合体の製造時に用いられるようなものを挙げることができ、トリエチルアルミニウムが好ましく用いられる。有機アルミニウム化合物は、そのまま用いてもよく、またトルエン溶液あるいはヘキサン溶液にして用いることもできる。
【0072】
上記の共役ジエン化合物[III-a]とエチレンとの反応においては、遷移金属化合物は、共役ジエン化合物[III-a]に対して、好ましくは0.00 1〜10モル%の量で、特に好ましくは0.01〜1モル%の量で用いられる。また配位化合物は、遷移金属化合物に対して、0〜20モル倍の量で用いられることが好ましく、特に0.1〜5モル倍の量で用いられることが好ましい。
【0073】
有機アルミニウム化合物は、遷移金属化合物に対して、1〜200モル倍の量で用いられることが好ましく、特に3〜100モル倍の量で用いられることが好ましい。
【0074】
本発明では、上記のような遷移金属化合物(または遷移金属錯体)と有機アルミニウム化合物とを予め接触させた後に、上記反応(共役ジエン化合物[III-a]とエチレンとの反応)用の触媒として用いることが好ましい。
【0075】
上記のような共役ジエン化合物[III-a]とエチレンとの反応によれば、下記のような分岐鎖状ポリエン化合物[III]:
【0076】
【化20】
Figure 0004154001
【0077】
(式[III]中、n、R1、R2およびR3は前記式[III-a]の場合と同じ意味である。)
が得られる。
【0078】
このような分岐鎖状ポリエン化合物[III]としては、具体的に下記(1)〜(24)に例示するような化合物が挙げられ、好ましくは、(5)、(6)、(9)、(11)、(14)、(19)、(20)が用いられる。
(1):4-エチリデン-1,6-オクタジエン、
(2):7-メチル-4-エチリデン-1,6-オクタジエン、
(3):7-メチル-4-エチリデン-1,6-ノナジエン、
(4):7-エチル--4-エチリデン-1,6-ノナジエン、
(5):6,7-ジメチル-4-エチリデン-1,6-オクタジエン、
(6):6,7-ジメチル-4-エチリデン-1,6-ノナジエン、
(7):4-エチリデン-1,6-デカジエン、
(8):7-メチル-4-エチリデン-1,6-デカジエン、
(9):7-メチル-6-プロピル-4-エチリデン-1,6-オクタジエン、
(10):4-エチリデン-1,7-ノナジエン、
(11):8-メチル-4-エチリデン-1,7-ノナジエン(EMN)、
(12):4-エチリデン-1,7-ウンデカジエン、
(13):8-メチル-4-エチリデン-1,7-ウンデカジエン、
(14):7,8-ジメチル-4-エチリデン-1,7-ノナジエン、
(15):7,8-ジメチル-4-エチリデン-1,7-デカジエン、
(16):7,8-ジメチル-4-エチリデン-1,7-ウンデカジエン、
(17):8-メチル-7-エチル-4-エチリデン-1,7-ウンデカジエン、
(18):7,8-ジエチル-4-エチリデン-1,7-デカジエン、
(19):9-メチル-4-エチリデン-1,8-デカジエン、
(20):8,9-ジメチル-4-エチリデン-1,8-デカジエン、
(21):10-メチル-4-エチリデン-1,9-ウンデカジエン、
(22):9,10-ジメチル-4-エチリデン-1,9-ウンデカジエン、
(23):11-メチル-4-エチリデン-1,10-ドデカジエン、
(24):10,11-ジメチル-4-エチリデン-1,10-ドデカジエン。
【0079】
上記化合物(1)〜(24)の化学式をまとめて以下に示す。
【0080】
【化21】
Figure 0004154001
【0081】
【化22】
Figure 0004154001
【0082】
【化23】
Figure 0004154001
【0083】
【化24】
Figure 0004154001
【0084】
これら分岐鎖状ポリエン化合物[III]は、鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]の調製の際に、単独であるいは2種以上組み合わせて用いられる。上記した分岐鎖状ポリエン化合物[III]は、トランス体およびシス体の混合物であってもよく、トランス体単独またはシス体単独であってもよい。
【0085】
[鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[ I ]の製造]
本発明では、次いで、上記にようにして得られた分岐鎖状ポリエン化合物(「非共役トリエン化合物」とも言う)
[III]:
【0086】
【化25】
Figure 0004154001
【0087】
(式[III]中、n、R1、R2およびR3は前記と同じ意味である。)
と、シクロペンタジエンとを反応(ディールス・アルダー反応)させることにより、鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]:
【0088】
【化26】
Figure 0004154001
【0089】
(式[I]中、nは1〜5の整数を示し、R1は、炭素数1〜5のアルキル基を示し、R2及びR3は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。)
が得られる。
【0090】
上記一般式[I]において、R1、R2又はR3が、炭素数1〜5のアルキル基であるとき、このようなアルキル基として、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基等を挙げることができる。
【0091】
上記反応において用いられる分岐鎖状ポリエン化合物[III]の内では、R1及びR2は、炭素数1〜3のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基であり、R3は、水素であることが望ましい。
【0092】
シクロペンタジエンは、通常、その二量体であるジシクロペンタジエンを160℃以上で熱分解蒸留することによって得られるので、本発明においては、シクロペンタジエンと分岐鎖状ポリエン化合物[III]との反応において、採用される反応温度によっては、シクロペンタジエンに代えてジシクロペンタジエンを用い、このジシクロペンタジエンを反応系内で熱分解させてシクロペンタジエンを発生させ、このシクロペンタジエンを上記分岐鎖状ポリエン化合物[III]との反応に用いてもよい。
【0093】
このようなシクロペンタジエンと上記分岐鎖状ポリエン化合物[III]との反応は、用いられる分岐鎖状ポリエン化合物[III]によっても異なるが、好ましくは、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、分岐鎖状ポリエン化合物[III]1重量部に対して、シクロペンタジエン0.2〜4重量部、好ましくは0.5〜3重量部を、50〜250℃好ましくは100〜200℃の範囲の温度にて、1〜100kg/cm2好ましくは5〜70kg/cm2の圧力下に、0.5〜30時間程度、加熱攪拌することによって行われる。
【0094】
反応は、必要に応じて、ハイドロキノン等のラジカル重合禁止剤の存在下に行ってもよい。
シクロペンタジエンと分岐鎖状ポリエン化合物[III]との反応において、反応溶媒は、特に用いる必要はないが、用いてもよい。
【0095】
反応溶媒を用いる場合には、反応溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロベンゼン等のハロゲン系炭化水素、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール等のアルコール系溶媒を用いることができる。また、反応溶媒として、水も用いることができる。
【0096】
このようにして得られる鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]は、前記式[I]で示され、またこのような鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]としては、前述したようなものが例示できる。
【0097】
このようにして得られる鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]は、通常、立体異性構造(ノルボルネン骨格に対する鎖状ポリエンの結合の仕方に基づくエンド体およびエキソ体並びに鎖状ポリエンの二重結合の置換の仕方に基づくトランス体及びシス体)を有する。
【0098】
このような鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]の構造は、質量分析、赤外線吸収スペクトル、プロトンNMRスペクトル等を測定することによって決定することができる。
【0099】
本発明発明においては、このような鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]を、後述するような不飽和性エチレン系共重合体、並びに該不飽和性エチレン系共重合体を含有するゴム組成物の製造に用いる場合は、上記立体異性構造を有する前述したような種々のノルボルネン化合物の混合物であってもよく、また、いずれか1種の立体異性体単独であってもよい。
【0100】
なお、上記の反応によれば、鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]は、通常、エンド体とエキソ体との混合物として得られ、場合によっては、蒸留によって分離することができる。
【0101】
なお、鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]の調製の際に用いられるポリエン化合物原料に、上記分岐鎖状ポリエン化合物[III]以外に、この分岐鎖状ポリエン化合物[III]の合成過程で生じた副生物[III−b]:
【0102】
【化27】
Figure 0004154001
【0103】
が含有されていると、この副生物[III−b]とシクロペンタジエンとの反応により、鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物
[I−a]:
【0104】
【化28】
Figure 0004154001
【0105】
(式[I−a]中、R1,R2,R3,nは、式[I]の場合と同様である。)が副生してくる。
後述するように、本発明に係る不飽和性エチレン系共重合体の製造に際しては、このような鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]とともに少量の鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I−a]が含まれた鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物含有物(化合物[I]と[I−a]との混合物)を用いることもできる。
【0106】
このように、上記鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]に加えて、副生物の鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I−a]をも含有するもの([I]と[I−a]との混合物)を、後述するような、エチレン(i)と、炭素数3〜20のα-オレフィン(ii)との反応の際に鎖状ポリエン基含有化合物[A](iii)として用いると、得られる不飽和性エチレン系共重合体には、鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物由来の構成単位として、上記ノルボルネン化合物[I]由来の構成単位[II]に加えて、ノルボルネン化合物[I−a]由来の構成単位[II−a]が含まれたものが得られる。
【0107】
例えば、上記鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物として、[I]:EMHN{:5-(2-エチリデン-6-メチル-5-ヘプテニル)-2-ノルボルネン}の他に、少量の副生成物[I−a]:(5−[3,7−ジメチル−2,6−オクタジエニル]−2−ノルボルネン)を含有する「EMHN含有物」を用いると、EMHN由来の構成単位[II’]:
【0108】
【化29】
Figure 0004154001
【0109】
に加えて、上記副生物[I−a]由来の構成単位[II−a’]:
【0110】
【化30】
Figure 0004154001
【0111】
が前述したような量(少量)で含まれたものが得られる。
なお、このような式[I−a]で表わされる鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物自体は、特願平7-75288号明細書(平成7年(1995)3月31日出願)に記載の方法で得ることもできる。
【0112】
すなわち、シクロペンタジエンと、一般式(a):
【0113】
【化31】
Figure 0004154001
【0114】
[式(a)中、m,nはそれぞれ独立して1〜5の整数を示し、R1,R2,R3並びにRa,Rbは、それぞれ上記式[I]の場合と同様に、水素または炭素数1〜5のアルキル基を示す。但し、R1,R2,R3は、同時に水素であることはない。)
で表わされる鎖状非共役トリエン化合物とを反応させることにより、下記式(b):
【0115】
【化32】
Figure 0004154001
【0116】
[式(b)中、m,n,R1,R2,R3,Ra,Rbは、式(a)の場合と同様のものを示す。]
で表わされる鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物を得ることもできる。
【0117】
次に、上記のような鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]由来の構成単位[II]を有する、本発明に係る不飽和性エチレン系共重合体並びにその製造方法について説明する。
【0118】
[不飽和性エチレン系共重合体]
本発明に係る不飽和性エチレン系共重合体は、
[A](i) エチレンと、
(ii)炭素数3〜20のα−オレフィンと、
(iii)鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]とのランダム共重合体である。
【0119】
このような本発明に係る不飽和性エチレン系共重合体は、
[A](i) エチレンと、(ii)炭素数3〜20のα−オレフィンと、上述したような(iii)鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]および該化合物[I]に比して少量の上記鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I−a]とのランダム共重合体であってもよい。
【0120】
このような(ii)炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、具体的には、
プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどが挙げられ、好ましくはプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンが用いられる。これらのα-オレフィンは、単独であるいは2種以上組み合わせて用いられる。
【0121】
また上記(iii) 鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]は、上述したように下記一般式[I]で表される。
【0122】
【化33】
Figure 0004154001
【0123】
式[I]中、nは1〜5の整数であり、R1は炭素数1〜5のアルキル基であり、R2およびR3はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜5のアルキル基である。なお、数字1〜7およびn+3等は、炭素番号(置換基位置)を示す。
【0124】
炭素数1〜5のアルキル基としては、具体的に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、i-ペンチル基などが挙げられる。
【0125】
このような式[I]で表わされる(iii)鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物(鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I])としては、具体的に上記(1)〜(24)に例示するような化合物が挙げられ、好ましくは、(5)、(6)、(9)、(11)、(14)、(19)、(20)が用いられる。
【0126】
これらは、単独であるいは2種以上組み合わせて用いられる。
本発明で用いられる上記した鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]は、立体異性体の内の1種例えばトランス体単独またはシス体単独であってもよく立体異性体混合物、例えばトランス体およびシス体の混合物であってもよい。
【0127】
本発明に係る不飽和性エチレン系共重合体は、上記のような(i) エチレン、(ii)α−オレフィンおよび(iii) 鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]それぞれの単量体から誘導される構成単位が、ランダムに配列して結合し、(iii)鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物に起因する分岐構造を有するとともに、主鎖は、実質的に線状構造となっている。この共重合体が実質的に線状構造を有しており実質的にゲル状架橋重合体を含有しないことは、該共重合体が有機溶媒に溶解し、不溶分を実質的に含まないことにより確認することができる。たとえば極限粘度[η]を測定する際に、該共重合体が135℃、デカリンに完全に溶解することにより確認することができる。
【0128】
本発明に係る不飽和性エチレン系共重合体は、上記(i) エチレンから誘導される構成単位を、30〜92モル%、好ましくは40〜90モル%、さらに好ましくは45〜90モル%の量で、
(ii)炭素数3〜20のα−オレフィンから誘導される構成単位を、6〜70モル%、好ましくは8〜60モル%、さらに好ましくは10〜55モル%の量で、また(iii) 鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]から誘導される構成単位を0.1〜30モル%、好ましくは0.1〜20モル%、さらに好ましくは0.2〜10モル%の量で含有している。
【0129】
特に本発明に係る不飽和性エチレン系共重合体では、この(i) エチレンから誘導される構成単位と(ii)炭素数3〜20のα−オレフィンから誘導される構成単位とは、モル比((i) エチレン/(ii)α−オレフィン)で、40/60〜92/8、好ましくは45/55〜90/10、さらに好ましくは50/50〜88/12の量で存在している。
【0130】
このような本発明に係る不飽和性エチレン系共重合体において、鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]から誘導される構成単位は、実質的に下記式[II]で示される構造を有している。
【0131】
【化34】
Figure 0004154001
【0132】
[式[II]中、nは1〜5の整数であり、R1は炭素数1〜5のアルキル基であり、R2およびR3はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜5のアルキル基である。]
なお鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物から誘導される構成単位が上記構造を有していることは、この共重合体の13C−NMRスペクトルを測定することによって確認することができる。
【0133】
本発明に係る不飽和性エチレン系共重合体は、135℃、デカリン中で測定した極限粘度[η]が0.05〜10dl/g、好ましくは0.1〜7dl/g、さらに好ましくは0.2〜5dl/gである。
【0134】
本発明に係る不飽和性エチレン系共重合体においては、上記[A](iii)には、鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]に加えて、さらに下記一般式[I−a]:
【0135】
【化35】
Figure 0004154001
【0136】
(式[I−a]中、n、R1、R2およびR3はそれぞれ前記[I]の場合と同様である。)
で表わされる少なくとも1種の鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I−a]が上記化合物[I]に比して少量、好ましくは[I]+[I−a]の合計100モル%中に、該化合物[I−a]が50モル%未満、さらに好ましくは40モル%以下、特に好ましくは35モル%以下の量で含まれていてもよい。
【0137】
この鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I−a]は、例えば、上記鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]の合成時に前述したように副生物として得られる。
【0138】
このようなランダム共重合体では、
[B](iii):上記一般式[I]で表わされる鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物から誘導される上記構成単位[II]と、上記一般式[I−a]で表わされる鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物から誘導される後述するような構成単位[II−a]との合計量([II]+[II−a])が、前述した鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物から誘導される構成単位[II]単独の場合の量と同様な範囲となる。すなわち[II]+[II−a]=0.1〜30モル%、好ましくは0.1〜20モル%、さらに好ましくは0.2〜10モル%である。
【0139】
また、構成単位[II]と構成単位[II−a]との共重合比は、用いられた鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]と[I−a]とのモル比に対応する量となる。すなわち、構成単位[II]と構成単位[II−a]との合計100モル%中に、構成単位[II−a]は、50モル%未満、好ましくは40モル%以下、さらに好ましくは35モル%以下となるような成分比で共重合されている。
【0140】
このようなランダム共重合体では、[C]:上記一般式[I]で表わされる鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物から誘導される構成単位が、前述したように式[II]で表わされる構造を有しており、上記一般式[I−a]で表わされる鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物から誘導される構成単位が、下記式[II−a]:
【0141】
【化36】
Figure 0004154001
【0142】
(式[II−a]中、n、R1、R2およびR3はそれぞれ前記[II]の場合と同様である。)
で表わされる構造を有している。その他の点[例:(i)エチレン構成単位等の量(モル%)、(ii)エチレン構成単位/α-オレフィン構成単位(モル比)、共重合体の極限粘度など。]については、構成単位[II−a]を含有していない上記共重合体の場合と同様である。
【0143】
なお、本明細書中においては、特にその趣旨に反しない限り、単に、「鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物」と言うときは、鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]および鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I−a]の両者を含む意味で用い、また、
「鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物から誘導される構成単位」と言うときは、鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]から誘導される構成単位[II]および鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I−a]から誘導される構成単位[II−a]の両者を含む意味で用いる。
【0144】
上記のような本発明に係る不飽和性エチレン系共重合体は、耐候性、耐熱性、耐オゾン性に優れるとともに加硫速度が速い。
本発明に係る不飽和性エチレン系共重合体は、未加硫のまま用いられてもよく、また後述するような加硫方法により加硫して加硫状態で用いられてもよいが、加硫状態で用いられるとその特性が一層発揮される。
【0145】
このような不飽和性エチレン系共重合体は、樹脂改質剤として、また各種ゴム製品として特に好ましく用いられる。
具体的には、本発明に係る不飽和性エチレン系共重合体を樹脂改質剤として、たとえばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン、ポリスチレンなどに添加すると、その耐衝撃性、耐ストレスクラック性が飛躍的に向上する。
【0146】
また本発明に係る不飽和性エチレン系共重合体は、単独で加硫されて用いられてもよく、また他のゴム材料と共加硫されて用いられてもよい。
この不飽和性エチレン系共重合体は、加硫速度が速いため加硫剤を多量に用いなくても従来の不飽和性エチレン系共重合体に比べて短い時間であるいは低温で加硫することができ、加硫ゴムを生産性よく製造することができる。
【0147】
本発明に係る不飽和性エチレン系共重合体は、特に、天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴムなどのジエン系ゴムとの共加硫性に優れており、不飽和性エチレン系共重合体とジエン系ゴムとの共加硫物は、ジエン系ゴムが本来有する優れた機械的特性、耐摩耗性、耐動的疲労性、耐油性を有するとともに耐候性、耐オゾン性、耐熱老化性などにも優れている。
【0148】
具体的には、たとえば本発明に係る不飽和性エチレン系共重合体と天然ゴムとの共加硫物は、強度、耐候性、耐オゾン性および耐動的特性に優れている。
本発明に係る不飽和性エチレン系共重合体とニトリルゴムとの共加硫物は、耐候性、耐オゾン性および耐油性に優れている。
【0149】
本発明に係る不飽和性エチレン系共重合体とブタジエンゴムとの共加硫物は、耐候性、耐オゾン性および耐摩耗性に優れている。
不飽和性エチレン系共重合体の製造
上記のような本発明に係る不飽和性エチレン系共重合体は、(i) エチレンと、(ii)炭素数3〜20のα−オレフィンと、(iii) 上記一般式[I]で表される鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物(および、場合により該化合物[I]の量に比して上記のような少量の化合物[I−a])とを、触媒の存在下に共重合させて得られる。
【0150】
このような触媒としては、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、チタニウム(Ti)などの遷移金属化合物と有機アルミニウム化合物(有機アルミニウムオキシ化合物)および/イオン化イオン性化合物とからなる触媒が使用できるが、本発明では、これらのうち、[a]可溶性バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒、あるいは
[b]周期律表第IVB族から選ばれる遷移金属のメタロセン化合物と、有機アルミニウムオキシ化合物および/またはイオン化イオン性化合物と、からなる触媒が特に好ましく用いられる。
【0151】
このような触媒[a]を形成する可溶性バナジウム化合物は、具体的には、下記一般式で表される。
VO(OR)ab または V(OR)cd
式中、Rは炭化水素基であり、Xはハロゲン原子であり、a、b、c、dはそれぞれ0≦a≦3、0≦b≦3、2≦a+b≦3、0≦c≦4、0≦d≦4、3≦c+d≦4を満たす。
【0152】
上記式で表される可溶性バナジウム化合物としては、具体的には、
VOCl3
VO(OCH3)Cl2
VO(OC25)Cl2
VO(OC251.5Cl1.5
VO(OC252Cl、
VO(O-n-C37)Cl2
VO(O-iso-C37)Cl2
VO(O-n-C49)Cl2
VO(O-iso-C49)Cl2
VO(O-sec-C49)Cl2
VO(O-t-C49)Cl2
VO(OC253、VOBr2、VCl4、VOCl2
VO(O-n-C493
VOCl3・2OC817OHなどが挙げられる。
【0153】
これらは、単独であるいは2種以上組み合わせて用いられる。
また上記可溶性バナジウム化合物は、以下に示すような電子供与体を接触させて得られる、これらの可溶性バナジウム化合物の電子供与体付加物として用いることもできる。
【0154】
このような電子供与体としては、
アルコール類、フェノール類、ケトン類、アルデヒド類、カルボン酸類、有機酸ハライド類、有機酸または無機酸のエステル類、エーテル類、ジエーテル類、酸アミド類、酸無水物類、アルコキシシランなどの含酸素電子供与体、
アンモニア類、アミン類、ニトリル類、ピリジン類、イソシアネート類などの含窒素電子供与体を挙げることができる。
【0155】
より具体的には、
メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、オクタノール、ドデカノール、オクタデシルアルコール、オレイルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、クミルアルコール、イソプロピルアルコール、イソプロピルベンジルアルコールなどの炭素数1〜18のアルコール類、
トリクロロメタノール、トリクロロエタノール、トリクロロヘキサノールなどの炭素数1〜18のハロゲン含有アルコール類、
フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ノニルフェノール、クミルフェノール、ナフトールなどのアルキル基を有してもよい炭素数6〜20のフェノール類、
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンゾキノンなどの炭素数3〜15のケトン類、
アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、オクチルアルデヒド、ベンズアルデヒド、トルアルデヒド、ナフトアルデヒドなどの炭素数2〜15のアルデヒド類、
ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ビニル、酢酸プロピル、酢酸オクチル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、吉草酸エチル、クロル酢酸メチル、ジクロル酢酸エチル、メタクリル酸メチル、クロトン酸エチル、シクロヘキサンカルボン酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸オクチル、安息香酸シクロヘキシル、安息香酸フェニル、安息香酸ベンジル、トルイル酸メチル、トルイル酸エチル、トルイル酸アミル、エチル安息香酸エチル、アニス酸メチル、アニス酸エチル、エトキシ安息香酸エチル、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、クマリン、フタリド、炭酸エチルなどの炭素数2〜18の有機酸エステル類、
アセチルクロリド、ベンゾイルクロリド、トルイル酸クロリド、アニス酸クロリドなどの炭素数2〜15の酸ハライド類、
メチルエーテル、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、アミルエーテル、テトラヒドロフラン、アニソール、ジフェニルエーテルなどの炭素数2〜20のエーテル類、
無水酢酸、無水フタル酸、無水安息香酸などの酸無水物、
ケイ酸エチル、ジフェニルジメトキシシランなどのアルコキシシラン、
酢酸N,N-ジメチルアミド、安息香酸N,N-ジエチルアミド、トルイル酸N,N-ジメチルアミドなどの酸アミド類、
トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリベンジルアミン、テトラメチルエチレンジアミンなどのアミン類、
アセトニトリル、ベンゾニトリル、トルニトリルなどのニトリル類、
ピリジン、メチルピリジン、エチルピリジン、ジメチルピリジンなどのピリジン類などが挙げられる。
【0156】
可溶性バナジウム化合物の電子供与体付加物を調製する際には、これら電子供与体を単独であるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明で触媒[a]を形成する際に用いられる有機アルミニウム化合物は、下記式[III]で表される。
【0157】
1 nAlX3-n …[III]
式中、R1 は炭素数1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基であり、Xはハロゲン原子または水素原子であり、nは1〜3である。
【0158】
このような炭素数1〜15の炭化水素基としては、たとえばアルキル基、シクロアルキル基またはアリ−ル基が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トリル基などが挙げられる。
【0159】
このような有機アルミニウム化合物としては、具体的には以下のような化合物が挙げられる。
トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリ2-エチルヘキシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニム、
一般式(i-C49xAly(C510z
[式中、x、y、zは正の数であり、z≧2xである。]
で表わされるイソプレニルアルミニウムなどのアルケニルアルミニウム、
トリイソプロペニルアルミニウムなどのトリアルケニルアルミニウム、
ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジイソプロピルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムブロミドなどのジアルキルアルミニウムハライド、
メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアウミニウムセスキクロリド、イソプロピルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド、
メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、イソプロピルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライド、
ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド、
エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリドなどが挙げられる。
【0160】
また有機アルミニウム化合物として、下記式[IV]で表される化合物を挙げることもできる。
1 nAlY3-n …[IV]
式中、R1 は上記式[III]と同様であり、Yは−OR10基、−OSiR11 3基、−OAlR12 2基、−NR13 2基、−SiR14 3基または−N(R15)AlR16 2基である。R10、R11、R12およびR16はメチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基などであり、R13は水素、メチル基、エチル基、イソプロピル基、フェニル基、トリメチルシリル基などであり、R14およびR15はメチル基、エチル基などである。nは1〜2である。
【0161】
このような式[IV]で表される有機アルミニウム化合物としては、具体的には、以下のような化合物が挙げられる。但し、Meはメチル基、Etはエチル基、Buはブチル基であり、R116は[IV]と同様である。
(1) R1 nAl(OR103-nで表される化合物、たとえば、
ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムメトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド、
エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドおよびR1 2.5Al(OR20.5などで表わされる平均組成を有する部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム、
エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウムが挙げられる。
(2) R1 nAl(OSi R11 33-nで表される化合物、たとえば、
Et2Al(OSi Me3
(iso-Bu)2Al(OSi Me3
(iso-Bu)2Al(OSi Et3)など、
(3) R1 nAl(OAlR12 23-nで表される化合物、たとえば、
Et2AlOAlEt2
(iso-Bu)2AlOAl(iso-Bu)2など、
(4) R1 nAl(NR13 23-nで表される化合物、たとえば、
Me2AlNEt2
Et2AlNHMe
Me2AlNHEt
Et2AlN(Si Me32
(iso-Bu)2AlN(SiMe32など、
(5) R1 nAl(Si R14 33-nで表される化合物、たとえば、
(iso-Bu)2AlSi Me3など、
(6) R1 nAl[N(R13)AlR16 23-nで表される化合物、たとえばEt2AlN(Me)AlEt2
(iso-Bu)2AlN(Et)Al(iso-Bu)2 など。
【0162】
これらの中では、とくにアルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウムジハライドまたはこれらの組み合わせが好ましい。
なお本発明で用いられる有機アルミニウム化合物は、アルミニウム以外の金属の有機化合物成分を少量含有していてもよい。
【0163】
次に、本発明で用いられる[b]メタロセン化合物と有機アルミニウムオキシ化合物またはイオン化イオン性化合物とからなる触媒について説明する。
このような周期律表第IVB族から選ばれる遷移金属のメタロセン化合物は、具体的には、次式[V]で表される。
【0164】
MLx …[V]
式[V]中、Mは周期律表第IVB族から選ばれる遷移金属であり、具体的にジルコニウム、チタンまたはハフニウムであり、xは遷移金属の原子価である。
【0165】
Lは遷移金属に配位する配位子であり、これらのうち少なくとも1個の配位子Lはシクロペンタジエニル骨格を有する配位子であり、このシクロペンタジエニル骨格を有する配位子は置換基を有していてもよい。
【0166】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子としては、たとえば、
シクロペンタジエニル基、メチルシクロペンタジエニル基、エチルシクロペンタジエニル基、n-またはi-プロピルシクロペンタジエニル基、n-、i-、sec-、t-、ブチルシクロペンタジエニル基、ヘキシルシクロペンタジエニル基、オクチルシクロペンタジエニル基、ジメチルシクロペンタジエニル基、トリメチルシクロペンタジエニル基、テトラメチルシクロペンタジエニル基、ペンタメチルシクロペンタジエニル基、メチルエチルシクロペンタジエニル基、メチルプロピルシクロペンタジエニル基、メチルブチルシクロペンタジエニル基、メチルヘキシルシクロペンタジエニル基、メチルベンジルシクロペンタジエニル基、エチルブチルシクロペンタジエニル基、エチルヘキシルシクロペンタジエニル基、メチルシクロヘキシルシクロペンタジエニル基などのアルキルまたはシクロアルキル置換シクロペンタジエニル基、さらに
インデニル基、4,5,6,7-テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基などが挙げられる。
【0167】
これらの基は、ハロゲン原子、トリアルキルシリル基などで置換されていてもよい。
これらのうちでは、アルキル置換シクロペンタジエニル基が特に好ましい。
【0168】
式[V]で示される化合物が配位子Lとしてシクロペンタジエニル骨格を有する基を2個以上有する場合には、そのうち2個のシクロペンタジエニル骨格を有する基同士は、エチレン、プロピレンなどのアルキレン基、イソプロピリデン、ジフェニルメチレンなどの置換アルキレン基、シリレン基またはジメチルシリレン基、ジフェニルシリレン基、メチルフェニルシリレン基などの置換シリレン基などを介して結合されていてもよい。
【0169】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外のLとしては、炭素数1〜12の炭化水素基、アルコキシ基、アリーロキシ基、スルホン酸含有基(−SO3a )、ハロゲン原子または水素原子(ここで、Ra はアルキル基、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、アリール基またはハロゲン原子またはアルキル基で置換されたアリール基である。)などが挙げられる。
【0170】
炭素数1〜12の炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などが挙げられ、より具体的には、
メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基などのアルキル基、
シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、
フェニル基、トリル基などのアリール基、
ベンジル基、ネオフィル基などのアラルキル基が挙げられる。
【0171】
また、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、t-ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキソキシ基、オクトキシ基などが挙げられる。
【0172】
アリーロキシ基としては、フェノキシ基などが挙げられ、
スルホン酸含有基(−SO3a )としては、メタンスルホナト基、p-トルエンスルホナト基、トリフルオロメタンスルホナト基、p-クロルベンゼンスルホナト基などが挙げられる。
【0173】
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
上記式で表されるメタロセン化合物は、たとえば遷移金属の原子価が4である場合、より具体的には下記式[VI]で表される。
【0174】
2 k3 l4 m5 nM …[VI]
式[VI]中、Mは上記遷移金属であり、R2 はシクロペンタジエニル骨格を有する基(配位子)であり、R3 、R4 およびR5 は、それぞれ独立にシクロペンタジエニル骨格を有する基または上記一般式[V]中のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外のLと同様である。kは1以上の整数であり、k+l+m+n=4である。
【0175】
以下に、Mがジルコニウムであり、かつシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を少なくとも2個含むメタロセン化合物を例示する。
ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムモノクロリドモノハイドライド、
ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジブロミド、
ビス(シクロペンタジエニル)メチルジルコニウムモノクロリド、
ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムフェノキシモノクロリド、
ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(n-プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(イソプロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(t-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(sec-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(イソブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(ヘキシルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(オクチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(インデニル)ジルコニウムジブロミド、
ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、
ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムメトキシクロリド、
ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムエトキシクロリド、
ビス(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(メタンスルホナト)、
ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(p-トルエンスルホナト)、
ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、
ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、
ビス(エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、
ビス(プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、
ビス(ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、
ビス(ヘキシルシクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、
ビス(1,3-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、
ビス(1-メチル-3-エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、
ビス(1-メチル-3-プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、
ビス(1-メチル-3-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、
ビス(1,3-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(1-メチル-3-エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(1-メチル-3-プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(1-メチル-3-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(1-メチル-3-ヘキシルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(1-メチル-3-オクチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(1-エチル-3-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(メチルベンジルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(エチルヘキシルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(メチルシクロヘキシルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドなどを例示することができる。
【0176】
上記の1,3−位置換シクロペンタジエニル基を1,2−位置換シクロペンタジエニル基に置換えた化合物を本発明で用いることもできる。
また上記式[VI]において、R2 、R3 、R4 およびR5 の少なくとも2個すなわちR2 およびR3 がシクロペンタジエニル骨格を有する基(配位子)であり、この少なくとも2個の基はアルキレン基、置換アルキレン基、シリレン基または置換シリレン基などを介して結合されているブリッジタイプのメタロセン化合物を例示することもできる。このときR4 およびR5 はそれぞれ独立に式[V]中で説明したシクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外のLと同様である。
【0177】
このようなブリッジタイプのメタロセン化合物としては、
エチレンビス(インデニル)ジメチルジルコニウム、
エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
エチレンビス(インデニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、
エチレンビス(インデニル)ジルコニウムビス(メタンスルホナト)、
エチレンビス(インデニル)ジルコニウムビス(p-トルエンスルホナト)、
エチレンビス(インデニル)ジルコニウムビス(p-クロルベンゼンスルホナト)、
エチレンビス(4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、
イソプロピリデン(シクロペンタジエニル-フルオレニル)ジルコニウムジク ロリド、
イソプロピリデン(シクロペンタジエニル-メチルシクロペンタジエニル)ジ ルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス(トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、
ジメチルシリレンビス(4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス(シクロペンタジエニル-フルオレニル)ジルコニウムジク ロリド、
ジフェニルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
メチルフェニルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリドなどが挙げられる。
【0178】
さらに、下記式[A]で示される特開平4-268307号公報に記載のメタロセン化合物が挙げられる。
メタロセンが式[A]:
【0179】
【化37】
Figure 0004154001
【0180】
[式[A]中、M1は周期律表の第IVb、第Vbまたは第VIb族の金属であり、
具体的には、例えば、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウムを挙げることができる。
【0181】
1およびR2は、互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、炭素原子数1〜10好ましくは1〜3のアルキル基、炭素原子数1〜10好ましくは1〜3のアルコキシ基、炭素原子数6〜10好ましくは6〜8のアリール基、炭素原子数6〜10好ましくは6〜8のアリールオキシ基、炭素原子数2〜10好ましくは2〜4のアルケニル基、炭素原子数7〜40好ましくは7〜10のアリールアルキル基、炭素原子数7〜40好ましくは7〜12のアルキルアリール基、炭素原子数8〜40好ましくは8〜12のアリールアルケニル基、またはハロゲン原子好ましくは塩素原子である。
【0182】
3およびR4は、互いに同じでも異なっていても良く、水素原子、ハロゲン原子好ましくは弗素原子、塩素原子または臭素原子、ハロゲン化されていてもよい炭素原子数1〜10好ましくは1〜4のアルキル基、炭素原子数6〜10好ましくは6〜8のアリール基、−NR2 10、−SR10、−OSiR3 10、−SiR3 10または−PR2 10基であり、その際R10はハロゲン原子好ましくは塩素原子、または、炭素原子数1〜10好ましくは1〜3のアルキル基、または炭素原子数6〜10好ましくは6〜8のアリール基である。
【0183】
3およびR4は特に水素原子であることが好ましい。
5およびR6は互いに同じでも異なっていてもよく、好ましくは同じであり、R5およびR6は水素原子でないという条件のもとでR3およびR4について記載したと同じ意味を有する。R5およびR6は、好ましくはハロゲン化されていてもよい炭素原子数1〜4のアルキル基、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基またはトリフルオロメチル基等が挙げられ、メチル基が好ましい。
【0184】
7は、下記:
【0185】
【化38】
Figure 0004154001
【0186】
=BR11、=AlR11、−Ge−、−Sn−、−O−、−S−、=SO、=SO2、=NR11、=CO、=PR11または=P(O)R11であり、その際R11、R12およびR13は互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10好ましくは1〜4のアルキル基さらに好ましくはメチル基、炭素原子数1〜10のフルオロアルキル基好ましくはCF3基、炭素原子数6〜10好ましくは6〜8のアリール基、炭素原子数6〜10のフルオロアリール基好ましくはペンタフルオロフェニル基、炭素原子数1〜10好ましくは1〜4のアルコキシ基特に好ましくはメトキシ基、炭素原子数2〜10好ましくは2〜4のアルケニル基、炭素原子数7〜40好ましくは7〜10のアリールアルキル基、炭素原子数8〜40好ましくは8〜12のアリールアルケニル基、または炭素原子数7〜40好ましくは7〜12のアルキルアリール基であるかまたは「R11とR12」または「R11とR13」とは、それぞれそれらが結合する原子と一緒になって環を形成してもよい。
【0187】
2は珪素、ゲルマニウムまたは錫、好ましくは珪素またはゲルマニウムである。
7は、=CR1112、=SiR1112、=GeR1112、−O−、−S−、=SO、=PR11または=P(O)R11であることが好ましい。
【0188】
8およびR9は互いに同じであっても異なっていてもよく、R11について記載したと同じ意味を有する。
mおよびnは互いに同じであっても異なっていてもよく、0、1または2、好ましくは0または1であり、m+nは0、1または2、好ましくは0または1である。
【0189】
上記条件を充たす特に好ましいメタロセンを下記(i)〜(iii)に示す。
【0190】
【化39】
Figure 0004154001
【0191】
[上記式(i)、(ii)及び(iii)中、M1はZrまたはHfであり、R1およびR2はメチル基または塩素原子であり、R5およびR6はメチル基、エチル基またはトリフルオロメチル基であり、R8、R9、R10およびR12が上記の意味を有する。]
このような式(i)、(ii)及び(iii)で示される化合物の内でも、下記の化合物が特に好ましい。
【0192】
rac-エチレン(2-メチル-1-インデニル)2-ジルコニウム-ジクロライド、
rac-ジメチルシリレン(2-メチル-1-インデニル)2-ジルコニウム-ジクロライド、
rac-ジメチルシリレン(2-メチル-1-インデニル)2-ジルコニウム-ジメチル、
rac-エチレン-(2-メチル-1-インデニル)2-ジルコニウム-ジメチル、
rac-フェニル(メチル)シリレン-(2ーメチル-1-インデニル)2-ジルコニウム-ジクロライド、
rac-ジフェニル-シリレン-(2ーメチル-1-インデニル)2-ジルコニウム-ジクロライド、
rac-メチルエチレン-(2ーメチル-1-インデニル)2-ジルコニウム-ジクロライド、
rac-ジメチルシリレン-(2ーエチル-1-インデニル)2-ジルコニウム-ジクロライド。このようなメタロセンの製造方法については、従来より公知の方法にて製造することができる(例:特開平4-268307号公報参照)。
【0193】
本発明では、下記式[B]で示される遷移金属化合物(メタロセン化合物)を用いることもできる。
【0194】
【化40】
Figure 0004154001
【0195】
式[B]中、Mは周期律表第IVa 、Va、VIa 族の遷移金属原子を示し、具体的には 、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウムである。
1 およびR2 は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基またはリン含有基を示し、具体的には、
フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子;
メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、ノニル、ドデシル、アイコシル、ノルボルニル、アダマンチルなどのアルキル基、ビニル、プロペニル、シクロヘキセニルなどのアルケニル基、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピルなどのアリールアルキル基、フェニル、トリル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ビフェニル、ナフチル、メチルナフチル、アントラセニル、フェナントリルなどのアリール基などの炭素数1から20の炭化水素基;
前記炭化水素基にハロゲン原子が置換したハロゲン化炭化水素基;
メチルシリル、フェニルシリルなどのモノ炭化水素置換シリル、ジメチルシリル、ジフェニルシリルなどのジ炭化水素置換シリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリプロピルシリル、トリシクロヘキシルシリル、トリフェニルシリル、ジメチルフェニルシリル、メチルジフェニルシリル、トリトリルシリル、トリナフチルシリルなどのトリ炭化水素置換シリル、
トリメチルシリルエーテルなどの炭化水素置換シリルのシリルエーテル、
トリメチルシリルメチルなどのケイ素置換アルキル基、トリメチルシリルフェニルなどのケイ素置換アリール基、
などのケイ素含有基;
ヒドロオキシ基、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなどのアルコキシ基、フェノキシ、メチルフェノキシ、ジメチルフェノキシ、ナフトキシなどのアリロキシ基、フェニルメトキシ、フェニルエトキシなどのアリールアルコキシ基などの酸素含有基;
前記酸素含有基の酸素がイオウに置換した置換基などのイオウ含有基;
アミノ基、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジブチルアミノ、ジシクロヘキシルアミノなどのアルキルアミノ基、フェニルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノ、ジナフチルアミノ、メチルフェニルアミノなどのアリールアミノ基またはアルキルアリールアミノ基などの窒素含有基;
ジメチルフォスフィノ、ジフェニルフォスフィノなどのフォスフィノ基などのリン含有基である。
【0196】
これらのうちR1 は炭化水素基であることが好ましく、特にメチル、エチル、プロピルの炭素数1〜3の炭化水素基であることが好ましい。またR2 は水素、炭化水素基が好ましく、特に水素あるいは、メチル、エチル、プロピルの炭素数1〜3の炭化水素基であることが好ましい。
【0197】
3 、R4 、R5 およびR6 は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基を示し、このうち水素、炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基であることが好ましい。R3 とR4 、R4 とR5 、R5 とR6 のうち少なくとも1組は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、単環の芳香族環を形成していてもよい。
【0198】
また芳香族環を形成する基以外の基は、炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基が2種以上ある場合には、これらが互いに結合して環状になっていてもよい。なおR6 が芳香族基以外の置換基である場合、水素原子であることが好ましい。
【0199】
ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基として、具体的には、前記R1 およびR2 と同様の基が例示できる。
3 とR4 、R4 とR5 、R5 とR6 のうち少なくとも1組が互いに結合して形成する単環の芳香族環を含む、Mに配位する配位子としては以下に示すようなものが挙げられる。
【0200】
【化41】
Figure 0004154001
【0201】
これらのうち上記式(1)で示されるものが好ましい。
前記芳香族環はハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基で置換されていてもよい。
【0202】
前記芳香族環に置換するハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基としては、前記R1 およびR2 と同様の基が例示できる。
【0203】
1 およびX2 は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、酸素含有基またはイオウ含有基を示し、具体的には、
前記R1 およびR2 と同様のハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、酸素含有基が例示できる。
【0204】
イオウ含有基としては、前記R1 、R2 と同様の基、およびメチルスルホネート、トリフルオロメタンスルフォネート、フェニルスルフォネート、ベンジルスルフォネート、p-トルエンスルフォネート、トリメチルベンゼンスルフォネート、トリイソブチルベンゼンスルフォネート、p-クロルベンゼンスルフォネート、ペンタフルオロベンゼンスルフォネートなどのスルフォネート基、メチルスルフィネート、フェニルスルフィネート、ベンゼンスルフィネート、p-トルエンスルフィネート、トリメチルベンゼンスルフィネート、ペンタフルオロベンゼンスルフィネートなどのスルフィネート基が例示できる。
【0205】
Yは、炭素数1〜20の2価の炭化水素基、炭素数1〜20の2価のハロゲン化炭化水素基、2価のケイ素含有基、2価のゲルマニウム含有基、2価のスズ含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO2 −、−NR7 −、−P(R7)−、−P(O)(R7)−、−BR7 −または−AlR7 −[ただし、R7 は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基]を示し、具体的には、
メチレン、ジメチルメチレン、1,2-エチレン、ジメチル-1,2- エチレン、1,3-トリメチレン、1,4-テトラメチレン、1,2-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキシレンなどのアルキレン基、ジフェニルメチレン、ジフェニル-1,2- エチレンなどのアリールアルキレン基などの炭素数1から20の2価の炭化水素基;
クロロメチレンなどの上記炭素数1から20の2価の炭化水素基をハロゲン化したハロゲン化炭化水素基;
メチルシリレン、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジ(n-プロピル)シリレン、ジ(i-プロピル)シリレン、ジ(シクロヘキシル)シリレン、メチルフェニルシリレン、ジフェニルシリレン、ジ(p-トリル)シリレン、ジ(p-クロロフェニル)シリレンなどのアルキルシリレン、アルキルアリールシリレン、アリールシリレン基、テトラメチル-1,2-ジシリレン、テトラフェニル-1,2- ジシリレン などのアルキルジシリレン、アルキルアリールジシリレン、アリールジシリレン基などの2価のケイ素含有基;
上記2価のケイ素含有基のケイ素をゲルマニウムに置換した2価のゲルマニウム含有基;
上記2価のケイ素含有基のケイ素をスズに置換した2価のスズ含有基置換基などであり、
7 は、前記R1 、R2 と同様のハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基である。
【0206】
このうち2価のケイ素含有基、2価のゲルマニウム含有基、2価のスズ含有基であることが好ましく、さらに2価のケイ素含有基であることが好ましく、このうち特にアルキルシリレン、アルキルアリールシリレン、アリールシリレンであることが好ましい。
【0207】
以下に上記式[B]で表される遷移金属化合物の具体的な例を示す。
【0208】
【化42】
Figure 0004154001
【0209】
【化43】
Figure 0004154001
【0210】
本発明では、上記のような化合物においてジルコニウム金属を、チタニウム金属、ハフニウム金属に置き換えた遷移金属化合物を用いることもできる。
前記遷移金属化合物は、通常ラセミ体としてオレフィン重合用触媒成分として用いられるが、R型またはS型を用いることもできる。
【0211】
このような新規な遷移金属化合物のインデン誘導体配位子は、たとえば下記の反応ルートで、通常の有機合成手法を用いて合成することができる。
【0212】
【化44】
Figure 0004154001
【0213】
本発明で用いられるこの遷移金属化合物は、これらインデン誘導体から既知の方法、たとえば特開平4−268307号公報に記載されている方法により合成することができる。
【0214】
本発明においては、また下記式[C]で示される遷移金属化合物(メタロセン化合物)を用いることもできる。
【0215】
【化45】
Figure 0004154001
【0216】
式[C]中、M、R1、R2、 R3 、R4 、R5 およびR6としては、前記式[B]の場合と同様なものが挙げられる。
3 、R4 、R5 およびR6 のうち、R3 を含む2個の基が、アルキル基であることが好ましく、R3 とR5 、またはR3 とR6 がアルキル基であることが好ましい。このアルキル基は、2級または3級アルキル基であることが好ましい。また、このアルキル基は、ハロゲン原子、ケイ素含有基で置換されていてもよく、ハロゲン原子、ケイ素含有基としては、R1 、R2 で例示した置換基が挙げられる。
【0217】
3 、R4 、R5 およびR6 で示される基のうち、アルキル基以外の基は、水素原子であることが好ましい。
炭素数1〜20の炭化水素基としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、sec-ブチル、tert- ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、ドデシル、アイコシル、ノルボルニル、アダマンチルなどの鎖状アルキル基および環状アルキル基;
ベンジル、フェニルエチル、フエニルプロピル、トリルメチルなどのアリールアルキル基などが挙げられ、2重結合、3重結合を含んでいてもよい。
【0218】
またR3 、R4 、R5 およびR6 から選ばれる2種の基が互いに結合して芳香族環以外の単環あるいは多環を形成していてもよい。
ハロゲン原子として、具体的には、前記R1 およびR2 と同様の基が例示できる。
【0219】
1 、X2、YおよびR7としては、前記式[B]の場合と同様のものが挙げられる。
以下に上記式[C]で示されるメタロセン化合物(遷移金属化合物)の具体的な例を示す。
【0220】
rac-ジメチルシリレン-ビス(4,7-ジメチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2,4,7-トリメチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2,4,6-トリメチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2,5,6-トリメチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2,4,5,6-テトラメチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2,4,5,6,7-ペンタメチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-n- プロピル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(4-i-プロピル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-i- プロピル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-i- プロピル-6- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4- メチル-6-i- プロピル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-i- プロピル-5- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4,6- ジ(i- プロピル)-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4,6- ジ(i- プロピル)-7-メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-i- ブチル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-sec- ブチル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4,6- ジ(sec- ブチル)-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-tert-ブチル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4- シクロヘキシル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4- ベンジル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4- フェニルエチル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4- フェニルジクロルメチル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4- クロロメチル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4- トリメチルシリルメチル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4- トリメチルシロキシメチル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジエチルシリレン-ビス(2-メチル-4-i- プロピル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジ(i- プロピル)シリレン-ビス(2-メチル-4-i- プロピル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジ(n- ブチル)シリレン-ビス(2-メチル-4-i- プロピル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジ( シクロヘキシル)シリレン-ビス(2-メチル-4-i- プロピル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-メチルフェニルシリレン-ビス(2-メチル-4-i- プロピル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジフェニルシリレン-ビス(2-メチル-4-i- プロピル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジフェニルシリレン-ビス(2-メチル-4- ジ(i- プロピル)-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジ(p- トリル)シリレン-ビス(2-メチル-4-i- プロピル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジ(p- クロロフェニル)シリレン-ビス(2-メチル-4-i- プロピル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-i- プロピル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジブロミド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-i- プロピル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジメチル、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-i- プロピル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウムメチルクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-i- プロピル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウム-ビス(メタンスルホナト)、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-i- プロピル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウム-ビス(p-フェニルスルフィナト)、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-3- メチル-4-i- プロピル-6- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-エチル-4-i- プロピル-6- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-フェニル-4-i- プロピル-6- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド。
【0221】
本発明では、上記のような化合物においてジルコニウム金属を、チタニウム金属、ハフニウム金属に置き換えた遷移金属化合物を用いることもできる。
上記遷移金属化合物は、通常ラセミ体として用いられるが、R型またはS型を用いることもできる。
【0222】
このような遷移金属化合物のインデン誘導体配位子は、たとえば前記と同様の反応ルートで、通常の有機合成手法を用いて合成することができる。
また上記の式[C]で示される遷移金属化合物(メタロセン化合物)は、これらインデン誘導体から既知の方法、たとえば特開平4−268307号公報に記載の方法により合成することができる。
【0223】
本発明では、また下記の式[D]で示される遷移金属化合物(メタロセン化合物)を用いこともできる。
【0224】
【化46】
Figure 0004154001
【0225】
式[D]中、M、R1、X1 、X2およびYとしては、前記式[B]あるいは前記式[C]の場合と同様のものが挙げられる。
このうち、R1としては、炭化水素基であることが好ましく、特にメチル、エチル、プロピル、ブチルの炭素数1〜4の炭化水素基であることが好ましい。
【0226】
また、X1 、X2としては、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましい。
2 は、炭素数6〜16のアリール基を示し、具体的には、
フェニル、α-ナフチル、β-ナフチル、アントラセニル、フェナントリル、ピレニル、アセナフチル、フェナレニル、アセアントリレニルなどである。これらのうちフェニル、ナフチルであることが好ましい。これらのアリール基は、前記R1 と同様のハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基で置換されていてもよい。
【0227】
以下に上記式[D]で示される遷移金属化合物(メタロセン化合物)の具体的な例を示す。
rac-ジメチルシリレン-ビス(4-フェニル-1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4−フェニル-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(α-ナフチル)-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(β-ナフチル)-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(1-アントラセニル)-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(2-アントラセニル)-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(9-アントラセニル)-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(9-フェナントリル)-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(p-フルオロフェニル)-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(ペンタフルオロフェニル)-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(p-クロロフェニル)-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(m-クロロフェニル)-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(o-クロロフェニル)-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(o,p-ジクロロフェニル) フェニル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(p-ブロモフェニル)-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(p-トリル)-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(m-トリル)-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(o-トリル)-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(o,o'-ジメチルフェニル)-1-インデニル) ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(p-エチルフェニル)-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(p-i-プロピルフェニル)-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(p-ベンジルフェニル)-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(p-ビフェニル)-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(m-ビフェニル)-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(p-トリメチルシリルフェニル)-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(m-トリメチルシリルフェニル)-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-エチル−4-フェニル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジフェニルシリレン-ビス(2-エチル-4-フェニル-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-フェニル-4-フェニル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-n-プロピル-4- フェニル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジエチルシリレン-ビス(2-メチル-4- フェニル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジ-(i-プロピル)シリレン-ビス(2-メチル-4- フェニル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジ-(n-ブチル)シリレン-ビス(2-メチル-4- フェニル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジシクロヘキシルシリレン-ビス(2-メチル-4- フェニル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-メチルフェニルシリレン-ビス(2-メチル-4- フェニル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジフェニルシリレン-ビス(2-メチル-4- フェニル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジ(p-トリル)シリレン-ビス(2-メチル-4- フェニル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジ(p-クロロフェニル)シリレン-ビス(2-メチル-4- フェニル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-メチレン-ビス(2-メチル-4- フェニル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-エチレン-ビス(2-メチル-4- フェニル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルゲルミル-ビス(2-メチル-4- フェニル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルスズ-ビス(2-メチル-4- フェニル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4- フェニル-1- インデニル)ジルコニウムジブロミド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4- フェニル-1- インデニル)ジルコニウムジメチル、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4- フェニル-1- インデニル)ジルコニウムメチルクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4- フェニル-1- インデニル)ジルコニウムクロリドSO2Me、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4- フェニル-1- インデニル)ジルコニウムクロリドOSO2Meなど。
【0228】
本発明では、上記のような化合物においてジルコニウム金属を、チタニウム金属、ハフニウム金属に置き換えた遷移金属化合物を用いることもできる。
このような式[D]で示される遷移金属化合物は、Journal of Organometallic Chem.288(1985)、第63〜67頁、ヨーロッパ特許出願公開第0,320,762 号明細書および実施例に準じて、たとえば下記のようにして製造することができる。
【0229】
【化47】
Figure 0004154001
【0230】
【化48】
Figure 0004154001
【0231】
このような遷移金属化合物[D]は、通常ラセミ体として用いられるが、R体またはS体を用いることもできる。
また本発明では、下記式[E−1]で示されるメタロセン化合物を用いることもできる。
【0232】
aMX2 ・・・・[E−1]
(Mは、周期率表第IV族またはランタニド系列の金属であり、
a は、非局在化π結合基の誘導体であり、金属M活性サイトに拘束幾何形状を付与しており、
Xは、それぞれ独立に水素、ハロゲンまたは20以下の炭素、ケイ素またはゲルマニウムを含有する炭化水素基、シリル基またはゲルミル基である。)
このような式[E−1]で示される化合物のうちでも、具体的に、下記式[E−2]で示される化合物が好ましい。
【0233】
【化49】
Figure 0004154001
【0234】
Mはチタン、ジルコニウムまたはハフニウムであり、Xは、上記と同様である。
CpはMにπ結合しており、かつ置換基Zを有する置換シクロペンタジエニル基またはその誘導体である。
【0235】
Zは酸素、イオウ、ホウ素または周期率表第IVA族の元素であり、
Yは窒素、リン、酸素またはイオウを含む配位子であり、
ZとYとで縮合環を形成してもよい。
【0236】
このような式[E−2]で示される化合物としては、具体的に、
(ジメチル(t−ブチルアミド)(テトラメチル-η5-シクロペンタジエニル)シラン)チタンジクロリド、
((t−ブチルアミド)(テトラメチル-η5-シクロペンタジエニル)-1,2−エタンジイル)チタンジクロリド、
(ジベンジル(t−ブチルアミド)(テトラメチル-η5-シクロペンタジエニル)シラン)チタンジクロリド、
(ジメチル(t-ブチルアミド)(テトラメチル-η5-シクロペンタジエニル) シラン)ジベンジルチタン、
(ジメチル(t-ブチルアミド)(テトラメチル-η5-シクロペンタジエニル) シラン)ジメチルチタン、
((t-ブチルアミド)(テトラメチル-η5-シクロペンタジエニル)-1,2-エタンジイル)ジベンジルチタン、
((メチルアミド)(テトラメチル-η5-シクロペンタジエニル)-1,2-エタンジイル)ジネオペンチルチタン、
((フェニルホスフィド)(テトラメチル-η5-シクロペンタジエニル)メチ レン)ジフェニルチタン、
(ジベンジル(t-ブチルアミド)(テトラメチル-η5-シクロペンタジエニル )シラン)ジベンジルチタン、
(ジメチル(ベンジルアミド)(η5-シクロペンタジエニル)シラン)ジ(トリメチルシリル)チタン、
(ジメチル(フェニルホスフィド)−(テトラメチル-η5-シクロペンタジエ ニル)シラン)ジベンジルチタン、
((テトラメチル-η5-シクロペンタジエニル)-1,2-エタンジイル)ジベンジルチタン、
(2-η5-(テトラメチル-シクロペンタジエニル)-1-メチル-エタノレート(2-))ジベンジルチタン、
(2-η5-(テトラメチル-シクロペンタジエニル)-1-メチル-エタノレート(2-))ジメチルチタン、
(2-((4a,4b,8a,9,9a−η)-9H-フルオレン-9-イル)シクロヘキサノレート(2-))ジメチルチタン、
(2-((4a,4b,8a,9,9a−η)-9H-フルオレン-9-イル)シクロヘキサノレート(2-))ジベンジルジルチタンなどが挙げられる。
【0237】
本発明では、上記のようなメタロセン化合物は、2種以上組合わせて用いることもできる。
上記説明においては、メタロセン化合物としてチタン化合物について例示したが、チタンを、ジルコニウムまたはハフニウムに置換えた化合物を例示することもできる。
【0238】
これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明では、上記メタロセン化合物[E−1]および[E−2]としては、中心の金属原子がジルコニウムであり、少なくとも2個のシクロペンタジエニル骨格を含む配位子を有するジルコノセン化合物が好ましく用いられる。なお前記のメタロセン化合物[VI]では、中心の金属原子がチタンであることが好ましい。
【0239】
これらメタロセン化合物は、炭化水素あるいはハロゲン化炭化水素に希釈して用いてもよい。
また上記のようなメタロセン化合物は、粒子状担体化合物と接触させて用いることもできる。
【0240】
担体化合物としては、Si O2 、Al23 、B23 、MgO、ZrO2 、CaO、TiO2 、ZnO、Zn2O、SnO2 、BaO、ThOなどの無機担体化合物、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテン、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体などの樹脂を用いることができる。これらの担体化合物は、二種以上組み合わせて用いることもできる。
【0241】
次に、本発明で触媒[b](周期律表第IV族から選ばれる遷移金属のメタロセン化合物と有機アルミニウムオキシ化合物またはイオン化イオン性化合物とからなる触媒)を形成する際に用いられる有機アルミニウムオキシ化合物およびイオン化イオン性化合物について説明する。
【0242】
本発明で用いられる有機アルミニウムオキシ化合物は、従来公知のアルミノオキサンであってもよく、またベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。
【0243】
このような従来公知のアルミノオキサンは、具体的には、下記一般式で表される。
【0244】
【化50】
Figure 0004154001
【0245】
(上記一般式において、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭化水素基であり、好ましくはメチル基、エチル基、とくに好ましくはメチル基であり、mは2以上、好ましくは5〜40の整数である。)
ここで、このアルミノオキサンは式(OAl(R1))で表わされるアルキルオキシアルミニウム単位および式(OAl(R2))で表わされるアルキルオキシアルミニウム単位[ここで、R1 およびR2 はRと同様の炭化水素基を例示することができ、R1 およびR2 は相異なる基を表わす]からなる混合アルキルオキシアルミニウム単位から形成されていてもよい。
【0246】
従来公知のアルミノオキサンは、たとえば下記のような方法によって製造され、通常、芳香族炭化水素溶媒の溶液として回収される。
(1) 吸着水を含有する化合物あるいは結晶水を含有する塩類、たとえば塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物、塩化第1セリウム水和物などを懸濁した芳香族炭化水素溶媒に、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物を添加して反応させて芳香族炭化水素溶媒の溶液として回収する方法。
(2) ベンゼン、トルエン、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどの媒体中でトリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に直接水(水、氷または水蒸気)を作用させて芳香族炭化水素溶媒の溶液として回収する方法。
【0247】
これらの方法のうちでは、(1) の方法を採用するのが好ましい。
アルミノオキサンの溶液を製造する際に用いられる有機アルミニウム化合物としては、前述したような有機アルミニウム化合物が挙げられ、具体的には、
トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリn-ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec-ブチルアルミニウム、トリtert- ブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、
一般式(i-C49xAly(C510z
[式中、x、y、zは正の数であり、z≧2xである。]
で表わされるイソプレニルアルミニウムイソプレニルアルミニウムなどのアルケニルアルミニウム、
ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリドなどのジアルキルアルミニウムハライド、
ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのジアルキルアルミニウムハイドライド、
ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド、
ジエチルアルミニウムフェノキシドなどのジアルキルアルミニウムアリーロキシドなどが挙げられる。
【0248】
これらのうちでは、トリアルキルアルミニウムが特に好ましい。
上記のような有機アルミニウム化合物は、単独であるいは組合せて用いられる。
【0249】
本発明で用いられるベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物は、たとえば、アルミノオキサンの溶液と、水または活性水素含有化合物とを接触させる方法、あるいは上記のような有機アルミニウム化合物と水とを接触させる方法などによって得ることができる。
【0250】
本発明で用いられるベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物では、該化合物を赤外分光法(IR)によって解析して、1220cm-1付近における吸光度(D1220)と、1260cm-1付近における吸光度(D1260)との比(D1260/D1220)が、0.09以下、好ましくは0.08以下、特に好ましくは0.04〜0.07の範囲にあることが望ましい。
【0251】
上記のようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物は、下記式で表されるアルキルオキシアルミニウム単位を有すると推定される。
【0252】
【化51】
Figure 0004154001
【0253】
式中、R7 は炭素数1〜12の炭化水素基である。このような炭化水素基として、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などを例示することができる。これらの中でメチル基、エチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0254】
このベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物は、上記式で表わされるアルキルオキシアルミニウム単位の他に、下記式で表わされるオキシアルミニウム単位を含有していてよい。
【0255】
【化52】
Figure 0004154001
【0256】
式中、R8 は炭素数1〜12の炭化水素基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリーロキシ基、水酸基、ハロゲンまたは水素原子である。
また該R8 および上記式中のR7 は互いに異なる基を表わす。
【0257】
オキシアルミニウム単位を含有する場合には、アルキルオキシアルミニウム単位を30モル%以上、好ましくは50モル%以上、特に好ましくは70モル%以上の割合で含むアルキルオキシアルミニウム単位を有する有機アルミニウムオキシ化合物が望ましい。
【0258】
なお本発明で用いられる有機アルミニウムオキシ化合物は、少量のアルミニウム以外の金属の有機化合物成分を含有していてもよい。
イオン化イオン性化合物としては、ルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物、およびカルボラン化合物を例示することができる。
【0259】
ルイス酸としては、BR3(Rは、フッ素、メチル基、トリフルオロメチル基 などの置換基を有していてもよいフェニル基またはフッ素である。)で示される化合物が挙げられ、たとえば
トリフルオロボロン、
トリフェニルボロン、トリス(4-フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(4-フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリス(p-トリル)ボロン、トリス(o-トリル)ボロン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ボロンなどが挙げられる。
【0260】
イオン性化合物としては、トリアルキル置換アンモニウム塩、N,N-ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアリールホスフォニウム塩などを挙げることができる。
【0261】
具体的に、トリアルキル置換アンモニウム塩としては、たとえば
トリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、
トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、
トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、
トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)ホウ素、
トリメチルアンモニウムテトラ(o-トリル)ホウ素、
トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、
トリプロピルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ホウ素、
トリブチルアンモニウムテトラ(m,m-ジメチルフェニル)ホウ素、
トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ホウ素、
トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(o-トリル)ホウ素などが挙げられる。
【0262】
N,N-ジアルキルアニリニウム塩としては、たとえば
N,N-ジメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、
N,N-ジエチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、
N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。
【0263】
ジアルキルアンモニウム塩としては、たとえば
ジ(1-プロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、
ジシクロヘキシルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。
【0264】
さらにイオン性化合物として、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどを挙げることもできる。
【0265】
さらに、ボラン化合物としては、下記のような化合物を挙げることもできる。
即ち、具体的には、ボラン化合物としては、デカボラン(14);
ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ノナボレート、
ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕デカボレート、
ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ウンデカボレート、
ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ドデカボレート、
ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕デカクロロデカボレート、
ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ドデカクロロドデカボレートなどのアニオンの塩;および
トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ドデカハイドライドドデカボレート)コバルト酸塩(III)、
ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ドデカハイドライドドデカボレート)ニッケル酸塩(III)などの金属ボランアニオンの塩などが挙げられる。
【0266】
また、カルボラン化合物としては、
4-カルバノナボラン(14)、
1,3-ジカルバノナボラン(13)、
6,9-ジカルバデカボラン(14)、
ドデカハイドライド-1-フェニル-1,3-ジカルバノナボラン、
ドデカハイドライド-1-メチル-1,3-ジカルバノナボラン、
ウンデカハイドライド-1,3-ジメチル-1,3-ジカルバノナボラン、
7,8-ジカルバウンデカボラン(13)、
2,7-ジカルバウンデカボラン(13)、
ウンデカハイドライド-7,8-ジメチル-7,8-ジカルバウンデカボラン、
ドデカハイドライド-11-メチル-2,7-ジカルバウンデカボラン、
トリ(n-ブチル)アンモニウム1-カルバデカボレート、
トリ(n-ブチル)アンモニウム1-カルバウンデカボレート、
トリ(n-ブチル)アンモニウム1-カルバドデカボレート、
トリ(n-ブチル)アンモニウム1-トリメチルシリル-1-カルバデカボレート、
トリ(n-ブチル)アンモニウムブロモ-1-カルバドデカボレート、
トリ(n-ブチル)アンモニウム6-カルバデカボレート(14)、
トリ(n-ブチル)アンモニウム6-カルバデカボレート(12)、
トリ(n-ブチル)アンモニウム7-カルバウンデカボレート(13)、
トリ(n-ブチル)アンモニウム7,8-ジカルバウンデカボレート(12)、
トリ(n-ブチル)アンモニウム2,9-ジカルバウンデカボレート(12)、
トリ(n-ブチル)アンモニウムドデカハイドライド-8-メチル-7,9-ジカルバウンデカボレート、
トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-8-エチル-7,9-ジカルバウンデカボレート、
トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-8-ブチル-7,9-ジカルバウンデカボレート、
トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-8-アリル-7,9-ジカルバウンデカボレート、
トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-9-トリメチルシリル-7,8-ジカルバウンデカボレート、
トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-4,6-ジブロモ-7-カルバウンデカボレートなどのアニオンの塩;および
トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-1,3-ジカルバノナボ レート)コバルト酸塩(III)、
トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)、
トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、
トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(III)、
トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)銅酸塩(III)、
トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)金酸塩(III)、
トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-7,8-ジメチル-7,8-ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)、
トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-7,8-ジメチル-7,8-ジカルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、
トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(トリブロモオクタハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、
トリス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、
ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)マンガン酸塩(IV) 、
ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、
ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(IV)などの金属カルボランアニオンの塩などが挙げられる。
【0267】
上記のようなイオン化イオン性化合物は、2種以上組合わせて用いてもよい。本発明においては、有機アルミニウムオキシ化合物または上記イオン化イオン性化合物は、上述した担体化合物に担持させて用いることもできる。
【0268】
また触媒[b]を形成するに際しては、有機アルミニウムオキシ化合物またはイオン化イオン性化合物とともに前述した有機アルミニウム化合物を用いてもよい。
【0269】
本発明では、上記のような触媒[a](可溶性バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒)または触媒[b](周期律表第IV族から選ばれる遷移金属のメタロセン化合物と有機アルミニウムオキシ化合物またはイオン化イオン性化合物とからなる触媒)の存在下に(i) エチレン、(ii)α−オレフィンおよび(iii) 鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物を、通常液相で共重合させる。この際、一般に炭化水素溶媒が用いれれるが、プロピレン等のα-オレフィンを溶媒として用いてもよい。
【0270】
このような炭化水素溶媒としては、
ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素およびそのハロゲン誘導体、
シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素およびそのハロゲン誘導体、
ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素およびクロロベンゼンなどのハロゲン誘導体などが用いられる。これら溶媒は組み合わせて用いてもよい。
【0271】
(i) エチレンと(ii)α−オレフィンと(iii) 鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物とは、バッチ法、あるいは連続法いずれの方法で共重合されてもよい。共重合を連続法で実施するに際しては、上記触媒は以下のような濃度で用いられる。
【0272】
本発明において上記触媒[a]、すなわち可溶性バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒が用いられる場合には、
重合系内の可溶性バナジウム化合物の濃度は、通常、0.01〜5ミリモル/リットル(重合容積)、好ましくは0.05〜3ミリモル/リットルである。この可溶性バナジウム化合物は、重合系内に存在する可溶性バナジウム化合物の濃度の10倍以下、好ましくは1〜7倍、さらに好ましくは1〜5倍の濃度で供給されることが望ましい。また有機アルミニウム化合物は、重合系内のバナジウム原子に対するアルミニウム原子の比(Al /V)で、2以上、好ましくは2〜50、さらに好ましくは3〜20の量で供給される。
【0273】
可溶性バナジウム化合物および有機アルミニウム化合物[a]は、通常、上述の炭化水素溶媒および/または液状の(ii)α−オレフィンおよび(iii) 鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物で希釈されて供給される。この際、該可溶性バナジウム化合物は上述した濃度に希釈されることが望ましいが、有機アルミニウム化合物は重合系内における濃度のたとえば50倍以下の任意の濃度に調整して重合系内に供給されることが望ましい。
【0274】
またメタロセン化合物と有機アルミニウムオキシ化合物またはイオン化イオン性化合物(イオン性イオン化化合物、イオン性化合物ともいう。)とからなる触媒[b]が用いられる場合には、重合系内のメタロセン化合物の濃度は、通常、0.00005〜0.1ミリモル/リットル(重合容積)、好ましくは0.0001〜0.05ミリモル/リットルである。また有機アルミニウムオキシ化合物は、重合系内のメタロセン化合物に対するアルミニウム原子の比(Al/遷移金属)で、1〜10000、好ましくは10〜5000の量で供給される。
【0275】
イオン化イオン性化合物の場合は、重合系内のメタロセン化合物に対するイオン化イオン性化合物のモル比(イオン化イオン性化合物/メタロセン化合物)で、0.5〜20、好ましくは1〜10の量で供給される。
【0276】
また有機アルミニウム化合物が用いられる場合には、通常、約0〜5ミリモル/リットル(重合度積)、好ましくは約0〜2ミリモル/リットルとなるような量で用いられる。
【0277】
本発明において、(i) エチレンと(ii)α−オレフィンと(iii) 鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物とを可溶性バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒[a]の存在下に共重合させる場合には、共重合反応は、通常、温度が−50℃〜100℃、好ましくは−30℃〜80℃、さらに好ましくは−20℃〜60℃で、圧力が0を超えて〜50Kg/cm2 、好ましくは0を超えて〜20Kg/cm2 の条件下に行われる。
【0278】
また本発明において、(i) エチレンと(ii)α−オレフィンと(iii) 鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物とをメタロセン化合物と有機アルミニウムオキシ化合物またはイオン化イオン性化合物とからなる触媒[b]の存在下に共重合させる場合には、共重合反応は、通常、温度が−20℃〜150℃、好ましくは0℃〜120℃、さらに好ましくは0℃〜100℃で、圧力が0を超えて〜80Kg/cm2 、好ましくは0を超えて〜50Kg/cm2 の条件下に行なわれる。
【0279】
また反応時間(共重合が連続法で実施される場合には平均滞留時間)は、触媒濃度、重合温度などの条件によっても異なるが、通常、5分〜5時間、好ましくは10分〜3時間である。
【0280】
本発明では、(i) エチレン、(ii)α−オレフィンおよび(iii) 鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物は、上述のような特定組成の不飽和性エチレン系共重合体が得られるような量で重合系に供給される。さらに共重合に際しては、水素などの分子量調節剤を用いることもできる。
【0281】
上記のようにして(i) エチレン、(ii)α−オレフィンおよび(iii) 鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物を共重合させると、不飽和性エチレン系共重合体は通常これを含む重合液として得られる。この重合液は、常法により処理され、不飽和性エチレン系共重合体が得られる。
【0282】
加硫可能なゴム組成物
上記のような不飽和性エチレン系共重合体を含有する本発明に係るゴム組成物は、加硫可能なゴム組成物であり(以下、加硫可能なゴム組成物ともいう)、未加硫のままでも用いることもできるが、加硫物として用いるとより一層優れた特性を発現することができる。
【0283】
本発明に係る加硫可能なゴム組成物は、加硫剤を使用して加熱する方法、あるいは加硫剤を用いずに電子線を照射する方法により加硫することができる。
本発明に係る加硫可能なゴム組成物は、不飽和性エチレン系共重合体とともに目的に応じて他の成分を適宜含有することができるが、不飽和性エチレン系共重合体を、全ゴム組成物中20重量%以上好ましくは25重量%以上の量で含有していることが望ましい。
【0284】
また他の成分としては、たとえば補強剤、無機充填剤、軟化剤、酸化防止剤(安定剤)、加工助剤、さらには発泡剤、発泡助剤などの発泡系を構成する化合物、可塑剤、着色剤、発泡剤、他のゴム配合剤などの種々の薬剤などを挙げることができる。他の成分は、用途に応じてその種類、含有量が適宜選択されるが、これらのうちでも特に補強剤、無機充填剤、軟化剤などを用いることが好ましく、以下に、より具体的に示す。
【0285】
補強剤および無機充填剤
補強剤としては、具体的に、SRF、GPF、FEF、MAF、HAF、ISAF、SAF、FT、MTなどのカーボンブラック、これらカーボンブラックをシランカップリング剤などで表面処理したもの、シリカ、活性化炭酸カルシウム、微粉タルク、微粉ケイ酸などが挙げられる。
【0286】
無機充填剤としては、具体的に、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレーなどが挙げられる。
本発明に係るゴム組成物は、補強剤および/または無機充填剤を、不飽和性エチレン系共重合体100重量部に対して、通常300重量部以下、好ましくは10〜300重量部、さらに好ましくは10〜200重量部の量で含有することができる。
【0287】
このような量の補強剤を含有するゴム組成物からは、引張強度、引裂強度、耐摩耗性などの機械的性質が向上された加硫ゴムが得られる。
また無機充填剤を上記のような量で配合すると、加硫ゴムの他の物性を損なうことなく硬度を高くすることができ、またコストを引き下げることができる。
【0288】
軟化剤
軟化剤としては、従来ゴムに配合されている軟化剤が広く用られ、具体的に、
プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリンなどの石油系軟化剤、
コールタール、コールタールピッチなどのコールタール系軟化剤、
ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、ヤシ油などの脂肪油系軟化剤、
トール油、サブ、蜜ロウ、カルナウバロウ、ラノリンなどのロウ類、
リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛などの脂肪酸および脂肪酸塩、
石油樹脂、アタクチックポリプロピレン、クマロンインデン樹脂などの合成高分子物質などが用いられる。
【0289】
これらのうちでも石油系軟化剤が好ましく、特にプロセスオイルが好ましい。
本発明に係るゴム組成物は、上記のような軟化剤を、不飽和性エチレン系共重合体100重量部に対して通常200重量部以下、好ましくは10〜200重量部、さらに好ましくは10〜150重量部、特に好ましくは10〜100重量部の量で含有することができる。
【0290】
酸化防止剤
本発明に係るゴム組成物は、酸化防止剤を含有していると材料寿命を長くすることができて好ましい。この酸化防止剤としては、具体的に、
フェニルナフチルアミン、4,4'-(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N'-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミンなどの芳香族第二アミン系安定剤、
2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、テトラキス-[メチレン-3-(3',5'-ジ-t-ブチル-4'-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどのフェノール系安定剤、
ビス[2-メチル-4-(3-n-アルキルチオプロピオニルオキシ)-5-t-ブチルフェニル]スルフィドなどのチオエーテル系安定剤、
2-メルカプトベンゾイミダゾールなどのベンゾイミダゾール系安定剤、
ジブチルジチオカルバミン酸ニッケルなどのジチオカルバミン酸塩系安定剤、
2,2,4-トリメチル-1,2- ジヒドロキノリンの重合物などのキノリン系安定剤などが挙げられる。これらは2種以上併用することもできる。
【0291】
このような酸化防止剤は、不飽和性エチレン系共重合体100重量部に対して、5重量部以下好ましくは3重量部以下の量で適宜用いることができる。
加工助剤
加工助剤としては、一般的に加工助剤としてゴムに配合されるものを広く使用することができる。具体的には、リシノール酸、ステアリン酸、パルチミン酸、ラウリン酸などの酸、これら高級脂肪酸の塩たとえばステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムまたはエステル類などが挙げられる。
【0292】
加工助剤は、不飽和性エチレン系共重合体100重量部に対して、10重量部以下好ましくは5重量部以下の量で適宜用いることができる。
加硫剤
また本発明に係るゴム組成物を加熱により加硫する場合には、ゴム組成物中に通常加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤などの加硫系を構成する化合物を配合する。
【0293】
加硫剤としては、イオウ、イオウ系化合物および有機過酸化物などを用いることができる。
イオウの形態は特に限定されず、たとえば粉末イオウ、沈降イオウ、コロイドイオウ、表面処理イオウ、不溶性イオウなどを用いるこができる。
【0294】
イオウ系化合物としては、具体的には、塩化イオウ、二塩化イオウ、高分子多硫化物、モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジメチルジチオカルバミン酸セレンなどが挙げられる。
【0295】
また有機過酸化物としては、具体的には、
ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-アミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシン)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-ヘキサン、α,α'-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、t-ブチルヒドロパーオキサイドなどのアルキルパーオキサイド類、
t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシビバレート、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t-ブチルパーオキシフタレートなどのパーオキシエステル類、
ジシクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類が挙げられる。これらは2種以上組合わせて用いてもよい。
【0296】
これらのうちでは、1分半減期温度が130℃〜200℃である有機過酸化物が好ましく、具体的にジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-アミルパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイドなどが好ましい。
【0297】
本発明では、上記のような各種加硫剤のうちでも、イオウまたはイオウ系化合物、特にイオウを用いると本発明に係るゴム組成物の特性を発現することができて好ましい。
【0298】
加硫剤がイオウまたはイオウ系化合物であるときには、不飽和性エチレン系共重合体100重量部に対して、0.1〜10重量部好ましくは0.5〜5重量部の量で用いることができる。
【0299】
また加硫剤が有機過酸化物であるときには、不飽和性エチレン系共重合体100グラムに対して、0.0003〜0.05モル好ましくは0.001〜0.03モルの量で用いることができる。
【0300】
加硫促進剤
また加硫剤としてイオウまたはイオウ化合物を用いる場合には、加硫促進剤を併用することが好ましい。
【0301】
加硫促進剤としては、具体的に、
N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミドなどのスルフェンアミド系化合物、
2-メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、2-(2,4-ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2-(2,6-ジエチル-4-モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィドなどのチアゾール系化合物、
ジフェニルグアニジン、トリフェニルグアニジン、ジオルソニトリルグアニジン、オルソニトリルバイグアナイド、ジフェニルグアニジンフタレートなどのグアニジン化合物、
アセトアルデヒド−アニリン反応物、ブチルアルデヒド−アニリン縮合物、ヘキサメチレンテトラミン、アセトアルデヒドアンモニアなどのアルデヒドアミンまたはアルデヒド−アンモニア系化合物、
2-メルカプトイミダゾリンなどのイミダゾリン系化合物、
チオカルバニリド、ジエチルチオユリア、ジブチルチオユリア、トリメチルチオユリア、ジオルソトリルチオユリアなどのチオユリア系化合物、
テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)などのチウラム系化合物、
ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ-n-ブチルジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ブチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、ジメチルジチオカルバミン酸テルルなどのジチオ酸塩系化合物、
ジブチルキサントゲン酸亜鉛などのザンテート系化合物、
亜鉛華などが挙げられる。
【0302】
上記のような加硫促進剤は、不飽和性エチレン系共重合体100重量部に対して、0.1〜20重量部好ましくは0.2〜10重量部の量で用いることが望ましい。
【0303】
加硫助剤(多官能性モノマー)
また加硫剤として有機過酸化物を用いる場合には、加硫助剤(多官能性モノマー)を有機過酸化物1モルに対して0.5〜2モル好ましくはほぼ等モルの量で併用することが好ましい。
【0304】
加硫助剤としては、具体的には、イオウ、
p-キノンジオキシムなどのキノンジオキシム系化合物、
トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレートなどの(メタ)アクリレート系化合物、
ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレートなどのアリル系化合物、
m-フェニレンビスマレイミドなどのマレイミド系化合物、
ジビニルベンゼンなどが挙げられる。
【0305】
発泡剤
本発明に係るゴム組成物は、発泡剤、発泡助剤などの発泡系を構成する化合物を含有する場合には、発泡成形することができる。
【0306】
発泡剤としては、一般的にゴムを発泡成形する際に用いられる発泡剤を広く使用することができ、具体的には、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウムなどの無機発泡剤、N,N'-ジメチル-N,N'-ジニトロソテレフタルアミド、N,N'-ジニトロソペンタメチレンテトラミンなどのニトロソ化合物、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウムアゾジカルボキシレートなどのアゾ化合物、ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、p,p'-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン-3,3'-ジスルホニルヒドラジドなどのスルホニルヒドラジド化合物、カルシウムアジド、4,4-ジフェニルジスルホニルアジド、p-トルエンスルホルニルアジドなどのアジド化合物が挙げられる。
【0307】
これらのうちでは、ニトロソ化合物、アゾ化合物、アジド化合物が好ましい。発泡剤は、不飽和性エチレン系共重合体100重量部に対して、0.5〜30重量部好ましくは1〜20重量部の量で用いることができる。このような量で発泡剤を含有するゴム組成物からは、見かけ比重0.03〜0.8g/cm3 の発泡体を製造することができる。
【0308】
また発泡剤とともに発泡助剤を用いることもでき、発泡助剤を併用すると、発泡剤の分解温度の低下、分解促進、気泡の均一化などの効果がある。このような発泡助剤としては、サリチル酸、フタル酸、ステアリン酸、しゅう酸などの有機酸、尿素またはその誘導体などが挙げられる。
【0309】
発泡助剤は、不飽和性エチレン系共重合体100重量部に対して0.01〜10重量部好ましくは0.1〜5重量部の量で用いることができる。
他のゴム
本発明に係るゴム組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、公知の他のゴムとブレンドして用いることができる。
【0310】
このような他のゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)などのイソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレン- ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル- ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)などの共役ジエン系ゴムを挙げることができる。
【0311】
さらに従来公知のエチレン・α−オレフィン系共重合ゴムを用いることもでき、たとえばエチレン・プロピレンランダム共重合体(EPR)、前記の不飽和性エチレン系共重合体以外のエチレン・α-オレフィン・ポリエン共重合体、例えばEPDMなどを用いることができる。
【0312】
本発明に係る加硫可能なゴム組成物は、不飽和性エチレン系共重合体および上記のような他の成分から、一般的なゴム配合物の調製方法によって調製することができる。たとえばバンバリーミキサー、ニーダー、インターミックスのようなインターナルミキサー類を用いて、不飽和性エチレン系共重合体および他の成分を、80〜170℃の温度で3〜10分間混練した後、必要に応じて加硫剤、加硫促進剤または加硫助剤などを加えて、オープンロールなどのロ−ル類あるいはニーダーを用いて、ロール温度40〜80℃で5〜30分間混練した後、分出しすることにより調製することができる。このようにして通常リボン状またはシート状のゴム組成物(配合ゴム)が得られる。上記のインターナルミキサー類での混練温度が低い場合には、加硫剤、加硫促進剤、発泡剤などを同時に混練することもできる。
【0313】
加硫ゴム
本発明に係るゴム組成物の加硫物(加硫ゴム)は、上記のような未加硫のゴム組成物を、通常、押出成形機、カレンダーロール、プレス、インジェクション成形機、トランスファー成形機など種々の成形法よって所望形状に予備成形し、成形と同時にまたは成形物を加硫槽内に導入して加熱するか、あるいは電子線を照射することにより加硫して得ることができる。
【0314】
上記ゴム組成物を加熱により加硫する場合には、熱空気、ガラスビーズ流動床、UHF(極超短波電磁波)、スチーム、LCM(熱溶融塩槽)などの加熱形態の加熱槽を用いて、150〜270℃の温度で1〜30分間加熱することが好ましい。
【0315】
また加硫剤を使用せずに電子線照射により加硫する場合は、予備成形されたゴム組成物に、0.1〜10MeV、好ましくは0.3〜2MeVのエネルギーを有する電子線を、吸収線量が0.5〜35Mrad、好ましくは0.5〜10Mradになるように照射すればよい。
【0316】
成形・加硫に際しては、金型を用いてもよく、また金型を用いないでもよい。
金型を用いない場合には、ゴム組成物は通常連続的に成形・加硫される。
上記のように成形・加硫された加硫ゴムは、ウェザーストリップ、ドアーグラスランチャンネル、窓枠、ラジエータホース、ブレーキ部品、ワイパーブレードなどの自動車工業部品、ゴムロール、ベルト、パッキン、ホースなどの工業用ゴム製品、アノ−ドキャップ、グロメットなどの電気絶縁材、建築用ガスケット、土木用シートなどの土木建材用品、ゴム引布などの用途に用いることができる。
【0317】
また発泡剤を含有するゴム配合物を加熱発泡させて得られる加硫発泡体は、断熱材、クッション材、シーリング材などの用途に用いることができる。
【0318】
【発明の効果】
本発明によれば、耐候性、耐熱性、耐オゾン性に優れしかも加硫速度の速い新規な不飽和性エチレン系共重合体の製造の際に好適に使用しうるような鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物が得られる。また、本発明によれば、上記特性をバランス良く備えた不飽和性エチレン系共重合体が得られる。
【0319】
【実施例】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何等限定されるものではない。
(1) なお、以下のポリマー製造の実施例では、例えば、EMHN{:5-(2-エチリデン-6-メチル-5-ヘプテニル)-2-ノルボルネン}として、下記モノマー合成の実施例で得られるEMHN(真のEMHN)の他に、少量の副生成物(5−[3,7−ジメチル−2,6−オクタジエニル]−2−ノルボルネン)を含有する「EMHN含有物」を用いており、特にその趣旨に反しない限り、単に、EMHNなどというときは、真のEMHNと副生成物との混合物(EMHN含有物)を意味し、またエチレン・プロピレン・EMHN共重合体などと言うときは、このEMHN単位には、真のEMHN単位と副生成物由来の単位とが含まれているもの(EMHN含有単位)を意味する場合がある。
(2) 主成分のEMHN(I)由来の構成単位[II]と、副生成物[I-a]由来の構成単位[II−a]の割合は、以下の方法で求めた。
装置及び測定条件
[装置]
NMR:日本電子(株)製,GSH−270型,FT−NMR
[主な装置条件]
1H測定
観測範囲:5400Hz(20ppm)
パルス幅:7.3μsec(45゜)
溶媒:ヘキサクロロブタジエン
ロック溶剤:重水素化ベンゼン
測定モード:プロトンノンデカップリング
測定温度:120℃
濃度:50mg/0.4cc
積算回数:1000〜3000回
[計算方法]
5.07〜5.17ppm領域の面積をS1とする。
【0320】
5.17〜5.35ppm領域の面積をS2とする。
主成分の化合物[I]由来の構成単位[II]と副生成物[I−a]由来の構成単位[II−a]の割合(mol%)は次式より求まる。
【0321】
[II]:[S2×2/(S1+S2)]×100
[II−a]:[(S1−S2)/(S1+S2)]×100
【0322】
【化53】
Figure 0004154001
【0323】
【参考例1】
[触媒の調製]
アルゴン雰囲気下、スターラー攪拌子を入れた50mlフラスコ中に、無水塩化コバルト(II)43mg(0.33ミリモル)、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン263mg(0.66ミリモル)および無水デカン23mlを仕込み、25℃で2時間攪拌した。次いでこの温度(25℃)において、濃度1モル/リットルのトリエチルアルミニウム/トルエン溶液17ml(トリエチルアルミニウム17ミリモル)を加えて2時間攪拌することにより触媒を調製した。
【0324】
4- エチリデン -8- メチル -1,7- ノナジエン(EMN)の合成]
下記式:
【0325】
【化54】
Figure 0004154001
【0326】
で表わされるEMNを、以下のようにして合成した。
300ml容量のステンレス(SUS316)製オートクレーブ中に、アルゴン雰囲気下、7-メチル-3-メチレン-1,6- オクタジエン(β−ミルセン)100g(734ミリモル)と、上記のようにして調製された触媒を全量加えて密閉した。
【0327】
次いでオートクレーブにエチレンボンベを接続(直結)して、オートクレーブ内の圧力が35kg/cm2になるまでエチレンを導入した。
次いで95℃に加熱して反応を行った。この間、消費されたエチレンを間欠的に5回補充(追加)して、合計で15時間反応を行った。
【0328】
反応終了後にオートクレーブ内を冷却した後、該オートクレーブを開放し、得られた反応混合物を水100ml中に注いで有機層と水層とに分離した。
そこで、この分離された有機層を分液し、エバポレータにて低沸点物を除去した後、20段の精密減圧蒸留を行って、目的物であるEMNが83g得られた(収率69%、β−ミルセン転化率90%)。
【0329】
また反応副生物として、5,9-ジメチル-1,4,8- デカトリエンが16g生成した(収率13%)。
上記で得られた4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン(EMN)の分析結果を以下に示す。
【0330】
(1) 沸 点:103〜105℃/30mmHg
(2) GC−MS(ガスクロマトグラフィ−質量分析):
m/z 164(M+分子イオンピーク)、149、123、95、69、41、27
[ガスクロマトグラフィ測定条件:
カラム:J&W サイエンティフィック社
キャピラリカラムDB−1701 (0.25mm×30m)
気化温度 :250℃
カラム温度:60℃で5分間保持後、200℃まで10℃/分 で昇温]
(3) 赤外線吸収スペクトル(ニート、cm-1
吸収ピーク:3080、2975、2925、2850、
1670、1640、1440、1380、1235、1110、995、910、830。
(4) 1H−NMRスペクトル(溶媒:CDCl3
吸収ピークを下記に示す。
【0331】
【表1】
Figure 0004154001
【0332】
【実施例1】
{5 - (2 - エチリデン - - メチル - - ヘプテニル) - - ノルボルネン[:EMHN、先に例示した鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物(11)の合成]}
参考例1で得られた4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン(EMN)240.7g(1.156モル)を1リットル容量のステンレス製オートクレーブに入れ、2kg/cm2の窒素加圧下、190℃の温度にて加熱攪拌しながら、シクロペンタジエン153.0g(2.314モル)を5時間かけて加えた。
【0333】
この後、さらに、190℃の温度にて1時間加熱攪拌し、その後、室温まで冷却し、オートクレーブを開放した。
このようにして得られた反応混合物を減圧留去して、低沸点留分を除去した後、残留物について、40段の精密減圧蒸留を行って、目的とするEMHN{:5-(2-エチリデン-6-メチル-5-ヘプテニル)-2-ノルボルネン}53.8gを得た。収率は、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン基準で20.2%であった。
【0334】
また、副生成物である[5-(3,7−ジメチル-2,6−オクタジエニル)]-2-ノルボルネンは、10.1g得られた。よって、EMHNと副生生物との比率は、5.33/1であった。
【0335】
EMHNの物理化学的データを以下に示す。
(1)沸点:138℃/3mmHg
(2)ガスクロマトグラフィー−質量分析:
m/z 230(M+)、215、187、123、91、69
ガスクロマトグラフィー測定条件:
カラム:J&W サイエンティフィック社,キャピラリカラムD
B−1701(0.25mm×30m)
気化温度:250℃
カラム温度:40℃で5分間保持後、200℃まで5℃/分で昇 温
(3)赤外線吸収スペクトル(ニート、cm-1
3050、2960、2925、2850、1660、1630、
1570、1440、1375、1345、1330、1250、
1220、1100、980、925、900、820、780、
715。
(4)プロトンNMRスペクトル(CDCl3溶媒)
吸収ピークを下記に示す。
【0336】
【表2】
Figure 0004154001
【0337】
【実施例2】
ジシクロペンタジエン153.0g(1.157モル)と4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン240.7g(1.156モル)を1リットル容量のステンレス製オートクレーブに入れ、2kg/cm2の窒素加圧下に温度190℃で6時間加熱撹拌して反応を行なった。
【0338】
反応終了後、室温まで冷却してオートクレーブを開放した。このようにして得られた反応混合物を減圧留去して、低沸点留分を除去した後、残留物について、40段の精密減圧蒸留を行なって、目的とするEMHN48.7gを得た。収率は4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン基準で18.3%であった。
【0339】
また、副生成物である、5−[3,7−ジメチル−2,6−オクタジエニル]−2−ノルボルネンを9.7g得た。
よって、EMHNと副生物との比率は5.02/1であった。
<参考>
[5−(3,7−ジメチル−2,6−オクタジエニル]−2−ノルボルネン
(1)プロトンNMRスペクトル(CDCl3溶媒):
0.55(1H,multiplet)
1.0〜2.3(8H,multiplet)
1.60(6H,singlet)
1.68(3H,singlet)
2.7(2H,multiplet)
5.1(2H,multiplet)
5.9〜6.2(2H,multiplet)
(2)赤外線吸収スペクトル(ニート、cm-1):
3050、2960、2925、2860、1670、1640、1450、1380、1340、1250、1105、900、830、720
【0340】
【実施例3】
攪拌翼を備えた容量2リットルの重合器を用いて、エチレンとプロピレンと上記実施例1で得られたEMHN{:5-(2-エチリデン-6-メチル-5-ヘプテニル)-2-ノルボルネン}含有物との三元共重合反応を連続的に行った。
【0341】
この共重合反応は、以下のようにして行った。
すなわち、
重合器上部からEMHN含有物のヘキサン溶液を、重合器内での濃度が15ミリモル/リットルとなるように毎時0.5リットル、触媒としてVO(OC25)Cl2 のヘキサン溶液を重合器内でのバナジウム濃度が0.2ミリモル/リットルとなるように毎時0.5リットル、エチルアルミニウムセスキクロリド(Al(C2 5 1.5Cl1.5 )のヘキサン溶液を重合器内でのアルミニウム濃度が2.0ミリモル/リットルとなるように毎時0.5リットルおよびヘキサンを毎時0.5リットルの量でそれぞれ重合器内に連続的に供給し、一方重合器上部から、重合器内の重合液が常に1リットルになるように連続的に抜き出した。
【0342】
また重合系にバブリング管を用いてエチレンを毎時140リットル、プロピレンを毎時160リットル、水素を毎時15リットルの速度で供給した。共重合反応は、重合器外部にとりつけられたジャケットに冷媒を循環させることにより30℃で行った。
【0343】
上記条件で共重合反応を行うと、エチレン・プロピレン・EMHN含有物共重合体を含む重合溶液が得られた。
得られた重合溶液は塩酸水で脱灰後、大量のメタノールに投入して、ポリマーを析出後、100℃で24時間減圧乾燥を行なった。
【0344】
以上の様にしてエチレン・プロピレン・EMHN含有物共重合体を毎時、68gの量で得た。
得られた共重合体は、エチレン構成単位を67.2モル%の量で、プロピレン構成単位を31.6モル%の量で、EMHN含有物構成単位を1.2モル%の量で含有しており、エチレン構成単位/プロピレン構成単位が68/32(モル比)であった。極限粘度[η]は2.5dl/gであった。
【0345】
また、このEMHN含有物構成単位1.2モル%は、0.85モル%のEMHN構成単位と、0.35モル%の副生物{[5-(3,7-ジメチル-2,6−オクタジエニル)]-2-ノルボルネン}構成単位とから成っていた。
【0346】
次いで、得られたこのエチレン・プロピレン・EMHN含有物共重合体100重量部と、亜鉛華1号5重量部と、ステアリン酸1重量部と、N330[商品名:シースト3,東海カーボン(株)製]80重量部と、オイル[商品名:サンセン4240,サンオイル(株)製]50重量部と、加硫促進剤A[商品名:ノクセラーTT,大内新興化学(株)製]1.0重量部と、加硫促進剤B[商品名:ノクセラーM,大内新興化学(株)製]0.5重量部と、硫黄1.5重量部とを含む下記表に示す組成物を、6インチオープンロールにより混練し、未加硫の配合ゴム(未加硫のゴム組成物)を得た。
【0347】
この未加硫配合ゴム組成をあわせて表3に示す。
この配合ゴムの加硫速度を評価したところ、T90(分)は、6.1となった。
結果をあわせて表4に示す。
【0348】
なお、加硫速度は、JSRキュラストメーター3型(日本合成ゴム(株)社製)を用いて測定し、加硫曲線から得られるトルクの最低値MLと最高値MHの差をME(MH−ML=ME)とし、90%MEに到達する時間:T90(分)を以て評価したところ、6.1となった。
【0349】
また、表3に示す配合組成で配合して得られた未加硫の配合ゴムを160℃でT90(分)+2分の条件(すなわち、6.8+2=8.8分)でプレス加硫して、加硫ゴム物性を測定した。未加硫配合ゴムのT90(分)および得られた加硫ゴムの物性を測定した。
【0350】
加硫ゴム物性としての100%モジュラス(M100:kgf/cm2)は35であり、200%モジュラス(M200:kgf/cm2)は85であり、300%モジュラス(M300:kgf/cm2)は125であり、引張強度(TB:kgf/cm2)は195であり、伸び(EB:%)は460であり、硬度(HS:JIS A)は、68となた。
【0351】
結果を併せて表4に示す。
なお、測定法は何れもJIS K 6301に準拠した。
【0352】
【表3】
Figure 0004154001
【0353】
【実施例4】
実施例3においてEMHN含有物を、重合器内での濃度が5.9ミリモル/リットル、エチレンを毎時130リットル、プロピレンを毎時170リットルとなるように供給した以外は、実施例3と同様にして共重合させ、エチレン・プロピレン・EMHN含有物共重合体を毎時79gの量で得た。
【0354】
得られた共重合体は、エチレン構成単位を62.2モル%の量で、プロピレン構成単位を37.3モル%の量で、EMHN含有物構成単位を0.55モル%の量で含有しており、エチレン構成単位/プロピレン構成単位が63/37(モル比)であった。極限粘度[η]は、2.1dl/gであった。
【0355】
また、このEMHN含有物構成単位0.55モル%は、0.38モル%のEMHN構成単位と、0.17モル%の副生物{[5-(3,7-ジメチル-2,6−オクタジエニル)]-2-ノルボルネン}構成単位とから成っていた。
【0356】
ついで、実施例3におけるエチレン・プロピレン・EMHN含有物共重合体に代えて、上記の共重合体を用いた以外は実施例3と同様にして、未加硫の配合ゴムを得た。
【0357】
この配合ゴムの加硫速度を評価したところ、T90(分)は、7.7となった。また、実施例3において、上記のようにして得られたエチレン・プロピレン・EMHN含有物共重合体を用いた以外は、実施例3と同様にして未加硫の配合ゴムを調製し、プレス成形した。
【0358】
加硫ゴム物性を以下に示す。
M100:27、M200:70、M300:101、引張強度(TB):161、伸び(EB):530、硬度(HS):67。
【0359】
結果をあわせて表4に示す。
【0360】
【比較例1】
攪拌翼を備えた2リットル重合器を用いて、連続的にエチレンとプロピレンと5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)との共重合反応を行った。
【0361】
重合器上部からENBのヘキサン溶液(7.1g/リットル)を、毎時0.5リットル、触媒としてVO(OC25)Cl2のヘキサン溶液(0.8ミリモル /リットル)を毎時0.5リットル、エチルアルミニウムセスキクロリド(Al(C251.5Cl1.5)のヘキサン溶液(8.0ミリモル/リットル)を毎時0.5リットルおよびヘキサンを毎時0.5リットルの量でそれぞれ重合器内に連続的に供給し、一方重合器上部から、重合器内の重合液が常に1リットルになるように連続的に抜き出した。また重合系にバブリング管を用いてエチレンを毎時120リットル、プロピレンを毎時180リットル、水素を毎時5リットルの速度で供給した。共重合反応は、重合器外部にとりつけられたジャケットに冷媒を循環させることにより30℃で行った。上記条件で共重合反応を行うと、エチレン・プロピレン・ENB共重合体を含む重合溶液が得られた。
【0362】
得られた重合溶液は塩酸水で脱灰後、大量のメタノールに投入して、ポリマーを析出後、100℃で24時間減圧乾燥を行なった。
以上の様にしてエチレン・プロピレン・ENB共重合体を毎時、64.8gの量で得た。
【0363】
得られた共重合体は、エチレン構成単位含量が66.8モル%、プロピレン構成単位含量が31.4モル%、ENB構成単位含量が1.8モル%であり、エチレン構成単位/プロピレン構成単位は68/32(モル比)であった。極限粘度[η]は2.2dl/gであった。
【0364】
この配合ゴムの加硫速度を評価したところ、T90(分)は、11.2となった。
また、実施例3において、上記のようにして得られた共重合体を用いた以外は、実施例3と同様にして未加硫の配合ゴムを調製し、プレス成形した。
【0365】
加硫ゴム物性を以下に示す。
M100:30、M200:74、M300:117、引張強度(TB):168、伸び(EB):400、硬度(HS):68。
【0366】
結果をあわせて表4に示す。
【0367】
【実施例5】
充分に窒素置換された内容積2リットルのステンレス製オートクレーブにヘプタン:900mlおよび実施例1で得られたEMHN含有物:15mlを装入し、さらに系内の圧力が80℃で3.5kg/cm2−Gになるようにプロピレンを導入した。
【0368】
次いで、エチレンを8kg/cm2−Gになるまで導入した。
その後、トリイソブチルアルミニウムを1ミリモル、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを0.005ミリモルおよび[ジメチル(t−ブチルアミド)(テトラメチルシクロペンタジエニル)シラン]チタンジクロリド:0.001ミリモルを窒素で圧入することにより重合を開始した。
【0369】
その後、エチレンのみを連続的に供給することにより全圧を8kg/cm2−Gに保ち、80℃で20分間重合を行った。少量のエタノールを系内に添加することにより、重合を停止した後、未反応のモノマーをパージした。
【0370】
得られたポリマー溶液を大過剰のメタノール中に投入することにより、ポリマーを析出させた。
ポリマーを濾過により回収し、安定剤[Irganox1010(チバガイギー製):30mgおよびMark329k(旭電化製):60mg]を混合した後、120℃で減圧下に一晩乾燥した。
【0371】
その結果、エチレン単位が64.9モル%の量で、プロピレン単位が33.7モル%の量で、EMHN含有物単位が1.4モル%の量で含有されており、エチレン単位とプロピレン単位とのモル比(エチレン単位/プロピレン単位)は、65.8/34.2(モル比)であり、極限粘度[η]が3.01dl/gであるエチレン・プロピレン・EMHN含有物共重合体を60.1g得た。
【0372】
また、このEMHN含有物構成単位1.4モル%は、1.0モル%のEMHN構成単位と、0.4モル%の副生物{[5-(3,7-ジメチル-2,6−オクタジエニル)]-2-ノルボルネン}構成単位とから成っていた。
【0373】
この配合ゴムの加硫速度を評価したところ、T90(分)は、5.4となった。また、実施例3において、上記のようにして得られた共重合体を用いた以外は、実施例3と同様にして未加硫の配合ゴムを調製し、プレス成形した。
【0374】
加硫ゴム物性を以下に示す。
M100:45、M200:93、M300:135、引張強度(TB):170、伸び(EB):420、硬度(HS):69。
【0375】
結果をあわせて表4に示す。
【0376】
【実施例6】
実施例5において、ヘプタンの使用量を900mlとし、プロピレンの替わりに1−オクテンを100ml導入し、重合時間を15分とした以外は、実施例5と同様に重合を行った。その結果、エチレン単位が78.6モル%の量で、1−オクテン単位が19.7モル%の量で、EMHN含有物単位が1.7モル%の量で含有されており、エチレン単位と1−オクテン単位とのモル比(エチレン単位/1−オクテン単位)は、80.0/20.0(モル比)であり、極限粘度[η]が2.21dl/gであるエチレン・1−オクテン・EMHN含有物共重合体を48g得た。
【0377】
また、このEMHN含有物構成単位1.7モル%は、1.2モル%のEMHN構成単位と、0.5モル%の副生物{[5-(3,7-ジメチル-2,6−オクタジエニル)]-2-ノルボルネン}構成単位とから成っていた。
【0378】
この配合ゴムの加硫速度を評価したところ、T90(分)は、5.9となった。また、実施例3において、上記のようにして得られた共重合体を用いた以外は、実施例3と同様にして未加硫の配合ゴムを調製し、プレス成形した。
【0379】
加硫ゴム物性を以下に示す。
M100:38、M200:90、M300:132、引張強度(TB):150、伸び(EB):380、硬度(HS):67。
【0380】
結果をあわせて表4に示す。
【0381】
【実施例7】
実施例5において、プロピレンの替わりに1−ブテンを80℃で3.7kg/cm2−Gになるように導入し、重合時間を30分間とした以外は、実施例5と同様に重合を行った。
【0382】
その結果、エチレン単位が68.0モル%の量で、1−ブテン単位が30.6モル%の量で、EMHN含有物単位が1.4モル%の量で含有されており、エチレン単位と1−ブテン単位とのモル比(エチレン単位/1−ブテン単位)は、69.0/31.0(モル比)であり、極限粘度[η]が2.51dl/gであるエチレン・1−ブテン・EMHN含有物共重合体を54g得た。
【0383】
また、このEMHN含有物構成単位1.4モル%は、0.98モル%のEMHN構成単位と、0.42モル%の副生物{[5-(3,7-ジメチル-2,6−オクタジエニル)]-2-ノルボルネン}構成単位とから成っていた。
【0384】
この配合ゴムの加硫速度を評価したところ、T90(分)は、6.0となった。また、実施例3において、上記のようにして得られた共重合体を用いた以外は、実施例3と同様にして未加硫の配合ゴムを調製し、プレス成形した。
【0385】
加硫ゴム物性を以下に示す。
M100:33、M200:82、M300:120、引張強度(TB):185、伸び(EB):470、硬度(HS):66。
【0386】
結果をあわせて表4に示す。
【0387】
【実施例8】
[5−(2−エチリデン−6−メチル−5−ヘプテニル)]−2−ノルボルネン(EMHN)の合成
実施例2で得られた(4−エチリデン−8−メチル1,7−ノナジエン(EMN)316g(純度95%、1.83モル)およびジシクロペンタジエン(DCPD)24.2g(0.183モル)を1リットル容量のステンレス製オートクレーブの中に入れ、2kg/cm2の窒素加圧下220℃で2時間反応を行った。室温まで冷却後、オートクレーブを開放した。参考例に記載と同様のガスクロマトグラフィー測定条件で分析した結果、DCPDの転化率は96%、目的とするEMHNの選択率(シクロペンタジエン基準)は57%であった。反応混合物中に残存するEMNを減圧下単蒸留して除去し、得られた残留物について40段の精密減圧蒸留を行った結果、EMHN含有物が43g得られ、目的とするEMHNは40.9g得られた(単離収率48%、シクロペンタジエン基準)。
【0388】
また副生成物(副生物)として、[5−(3,7−ジメチル−2,6−オクタジエニル)]−2−ノルボルネンが2.1g得られた。よって、EMHNと副生物との比率(EMHN/副生物)は、19.5/1であった。
【0389】
EMHNの物理化学的データを以下に示す。
沸点:138℃/3mmHg
ガスクロマトグラフィー−質量分析:
m/z 230(M+)、215、187、123、91、69
ガスクロマトグラフィー測定条件:参考例1と同様
赤外線吸収スペクトル(ニート、cm-1
3050、2960、2925、2850、1660、
1630、1570、1440、1375、1345、
1330、1250、1220、1100、980、
925、900、820、780、715
プロトンNMRスペクトル
(CDCl3溶液、500MHzNMR)
0.55(1H、multiplet)
1.1〜2.3(10H、multiplet)
1.55(3H、doublet、J=7Hz)
1.60(3H、singlet)
1.67(3H、singlet)
2.7(2H、multiplet)
5.10(1H、multiplet)
5.20(1H、quartet、J=7Hz)
5.9〜6.2(2H、multiplet)
【0390】
【実施例9】
純度95%のEMHN含有物を使用した以外は実施例3と同様にして共重合させ、エチレン・プロピレン・EMHN含有物共重合体を毎時65gの量で得た。
【0391】
得られた共重合体は、エチレン構成単位を67.9モル%の量で、プロピレン構成単位を30.9モル%の量で、EMHN含有構成単位を1.2モル%の量で含有しており、エチレン構成単位/プロピレン構成単位が69/31(モル比)であった。極限粘度〔η〕は、2.6dl/gであった。
【0392】
また、このEMHN含有物単位1.2モル%は、1.0モル%のEMHN構成単位と、0.2モル%の副生成物{[5-(3,7-ジメチル-2,6−オクタジエニル)]-2-ノルボルネン}由来の構成単位とから成っていた。
【0393】
このエチレン・プロピレン・EMHN含有物共重合体を実施例3と同様に配合してなる配合ゴムの加硫速度T90(分)を評価した結果、6.2であった。
また、実施例3において、上記のようにして得られた共重合体を用いた以外は、実施例3と同様にして未加硫の配合ゴムを調製し、プレス成形した。
【0394】
加硫ゴム物性を以下に示す。
M100:36、M200:87、M300:128、引張強度(TB):196、伸び(EB):470、硬度(HS):68。
【0395】
結果をあわせて表4に示す。
【0396】
【表4】
Figure 0004154001
【0397】
(注)表4中、「M100、M200、M300」は、それぞれ、加硫ゴム物性としての100%引張モジュラス(単位:kgf/cm2)、200%引張モジュラス(単位:kgf/cm2)、300%引張モジュラス(単位:kgf/cm2)を示す。「TB」は、引張強度(単位:kgf/cm2)を示し、「EB」は、伸び(単位:%)を示し、「HS」は、硬度(測定法:JIS A 準拠)を示す。「T90(分)」は、160℃で測定した加硫速度(分)を示す。

Claims (7)

  1. 一般式[I]:
    Figure 0004154001
    [式[I]中、nは1〜5の整数であり、R1は炭素数1〜5のアルキル基であり、R2およびR3はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜5のアルキル基である。]
    で表わされる鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物。
  2. シクロペンタジエンと一般式[III]:
    Figure 0004154001
    [式[III]中、nは1〜5の整数であり、R1は炭素数1〜5のアルキル基であり、R2およびR3はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜5のアルキル基である。]
    で表わされる分岐鎖状ポリエン化合物とを反応させることを特徴とする請求項1に記載の鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物の製造方法。
  3. [A]
    (i) エチレンと、
    (ii)炭素数3〜20のα−オレフィンと、
    (iii) 上記一般式[I]で表される少なくとも1種の鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物とのランダム共重合体であり、
    [B]
    (i) エチレンから誘導される構成単位が30〜92モル%であり、
    (ii)炭素数3〜20のα−オレフィンから誘導される構成単位が6〜70モル%であり、
    (iii) 上記一般式[I]で表される鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物から誘導される構成単位が0.1〜30モル%であり、かつ
    (iv) (i)エチレンから誘導される構成単位/(ii)炭素数3〜20のα−オレフィンから誘導される構成単位がモル比で40/60〜 92/8であり、
    [C]
    上記一般式[I]で表される鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物から誘導される構成単位が下記式[II]で表される構造を有しており、
    Figure 0004154001
    [式[II]中、nは1〜5の整数であり、R1は炭素数1〜5のアルキル基であり、R2およびR3はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜5のアルキル基である。]
    [D]
    135℃、デカリン中で測定した極限粘度[η]が0.05〜10dl/gであることを特徴とする不飽和性エチレン系共重合体。
  4. (i) エチレンと、
    (ii)炭素数3〜20のα−オレフィンと、
    (iii)上記一般式[I]で表される少なくとも1種の鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物とを、
    遷移金属化合物と、有機アルミニウム化合物および/またはイオン化イオン性化合物と、から形成される触媒の存在下に共重合させることを特徴とする請求項3に記載の不飽和性エチレン系共重合体の製造方法。
  5. [A]
    (i) エチレンと、
    (ii)炭素数3〜20のα−オレフィンと、
    (iii) 上記一般式[I]で表される少なくとも1種の鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物、および該鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]に比して少量の下記一般式[I−a]で表される少なくとも1種の鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物とのランダム共重合体であり、
    Figure 0004154001
    [式[I−a]中、n、R1、R2およびR3はそれぞれ式[I]の場
    合と同様である。]
    [B]
    (i) エチレンから誘導される構成単位が30〜92モル%であり、
    (ii)炭素数3〜20のα−オレフィンから誘導される構成単位が6〜70モル%であり、
    (iii) 上記一般式[I]で表される鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物から誘導される構成単位と、該鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]に比して少量の上記一般式[I−a]で表される鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物から誘導される構成単位とが合計で0.1〜30モル%であり、かつ
    (iv) (i)エチレンから誘導される構成単位/(ii)炭素数3〜20のα−オレフィンから誘導される構成単位がモル比で40/60〜 92/8であり、
    [C]
    上記一般式[I]で表される鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物から誘導される構成単位が上記式[II]で表される構造を有しており、また、上記一般式[I−a]で表される鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物から誘導される構成単位が下記式[II−a]で表される構造を有しており、
    Figure 0004154001
    [式[II−a]中、n、R1、R2およびR3はそれぞれ式[II]の場合と同様である。]
    [D]
    135℃、デカリン中で測定した極限粘度[η]が0.05〜10dl/gであることを特徴とする不飽和性エチレン系共重合体。
  6. (i) エチレンと、
    (ii)炭素数3〜20のα−オレフィンと、
    (iii)上記一般式[I]で表される少なくとも1種の鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物、および上記一般式[I−a]で表される少なくとも1種の鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物とを、
    遷移金属化合物と、有機アルミニウム化合物および/またはイオン化イオン性化合物と、から形成される触媒の存在下に共重合させることを特徴とする請求項5に記載の不飽和性エチレン系共重合体の製造方法。
  7. 請求項3または請求項5に記載の不飽和性エチレン系共重合体と、
    下記(a)、(b)、(c)の内の少なくとも1種以上の成分と、
    が含まれていることを特徴とするゴム組成物:
    (a)該不飽和性エチレン系共重合体100重量部に対して300重量部以下の量の補強剤、
    (b)該不飽和性エチレン系共重合体100重量部に対して200重量部以下の量の軟化剤、
    (c)加硫剤。
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