JP3575779B2 - エチレン系共重合体ゴムおよびその製造方法並びに該共重合体ゴムが含まれた加硫可能なゴム組成物 - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明は、エチレン系共重合体ゴムおよびその製造方法並びに該共重合体ゴムが含まれた加硫可能なゴム組成物に関し、さらに詳しくは耐候性、耐熱性、耐オゾン性に優れ、しかも加硫速度が速く、加工性に優れたエチレン系共重合体ゴムに関する。また本発明は、上記のようなエチレン系共重合体ゴムの製造方法並びに該共重合体ゴムが含まれた加硫可能なゴム組成物に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
不飽和性エチレン系共重合体は、加硫可能なポリマーであって、耐候性、耐オゾン性、耐熱老化性などに優れており、自動車用部品、電気絶縁材料、建築土木資材、工業用ゴム材料等のゴム製品として用いられており、またポリプロピレン、ポリスチレン等へのプラスチックブレンド用材料(改質材)として広く用いられている。
【0003】
このような不飽和性エチレン系共重合体としては、従来エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、エチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン・プロピレン・1,4−ヘキサジエン共重合体などが知られている。これらのうちでもエチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体は、他の不飽和性エチレン系共重合体に比べ、加硫速度が速く特に広く用いられている。
【0004】
しかしながらこれら従来の不飽和性エチレン系共重合体には、加硫速度のさらなる向上が望まれているのが実情である。すなわち不飽和性エチレン系共重合体は、たとえばエチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体であっても天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴムなどのジエン系ゴムに比べると加硫速度が遅く、またこれらのジエン系ゴムに比べると、加硫速度を広い範囲で自由に制御することができないという問題点があった。
【0005】
また、もし不飽和性エチレン系共重合体の加硫速度を速めようと、加硫温度を極端に高くし、あるいは加硫剤を多量に使用すると、加硫工程のコストアップにつながり、特に上記のように加硫温度を極端に高くすると得られる加硫ゴムは品質の劣ったものとなり、また、加硫剤を多量に使用すると得られる加硫ゴムの表面に加硫剤がブルーミングしてくることがあり衛生上も外観上も好ましくないという問題点があった。
【0006】
ところで、不飽和性エチレン系共重合体の押出成形によりスポンジを製造する場合、不飽和性エチレン系共重合体の加硫速度と発泡剤の分解速度とのバランスをとることにより、その発泡倍率、発泡状態を制御している。
【0007】
このようなスポンジ成形において、例えば、発泡剤の分解速度よりも加硫速度が速いと得られる成形物の表面肌は比較的きれいに仕上がるが、発泡倍率は低くなってしまう。逆に発泡剤の分解速度よりも加硫速度が遅いと発泡剤から発生した気体が抜け、得られる成形物の表面肌が悪くなったり、発泡倍率が不充分になってしまう。
【0008】
このため、従来では、表面肌が良好で、しかも発泡倍率の高い成形物としてのスポンジゴムを得るには、加硫速度と発泡剤の分解速度のバランスを厳密に調整する必要があった。
【0009】
なお、不飽和性エチレン系共重合体の押出成形によるスポンジ製造法の内でも、広く採用されている熱風槽での加硫法によれば、熱伝達が不飽和性エチレン系共重合体の表面から内部へと進行するため、押出されるスポンジの表面で比較的速やかに加硫が行われ、発泡倍率と表面肌とのバランスがある程度保持されたスポンジが得られるが、充分ではなかった。
【0010】
このため、加硫速度が速く、しかも特にスポンジ成形において加硫速度と発泡剤の分解速度とのバランスが取りやすく、加硫すると機械的特性などに優れるようなエチレン系共重合ゴムの出現が望まれていた。
【0011】
なお、特公昭46−42365号公報には、エチレン、一般式:RCH=CH2(R:炭素数1〜20を有する炭化水素基)を有するα−オレフィンの少なくとも1種および一般式:
【0012】
【化5】
【0013】
(R1,R2は、それぞれH,炭素数1〜20を有する炭化水素基、Qは少なくとも1個の内部型二重結合を非共役の位置に有し、全ての二重結合が内部型である炭化水素基を表す。)を有する5−ポリエニル−2−ノルボルネン化合物を配位触媒に接触させるオレフィン共重合体の製造方法が記載されている。
【0014】
しかしながら、該公報記載の方法で得られるオレフィン共重合体では、耐候性、耐熱性、耐オゾン性に優れ、しかも加硫速度、加工性、成形性などにもバランス良く優れた共重合体が望まれているという観点からみると、必ずしも充分でない。
【0015】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであって、耐候性、耐熱性、耐オゾン性に優れ、しかも加硫速度が速く、特にスポンジ成形において加硫速度と発泡剤の分解速度とのバランスが取りやすく、加工性に優れ、加硫すると機械的強度に優れるようなエチレン系共重合体ゴムを提供することを目的としている。本発明は上記のような特性のエチレン系共重合体ゴムの製造方法並びに該不飽和性エチレン系共重合体ゴムを含有する加硫可能なゴム組成物を提供することを目的としている。
【0016】
【発明の概要】
本発明に係るエチレン系共重合体ゴムは、
(i)エチレンと、
(ii)炭素数3〜20のα−オレフィンと、
(iii)下記一般式[I]で表される少なくとも1種の鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物と、
(iv)1分子中に重合可能な二重結合を1個有する非共役ジエンと、
のランダム共重合体であって、
(a)エチレンから導かれる単位(i)と、炭素数3〜20のα−オレフィンから導かれる単位(ii)とを、95/5〜40/60〔(i)/(ii)〕のモル比で含有し、
(b)下記一般式[I]で表される少なくとも1種の鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物から導かれる単位(iii)を0.1〜10モル%の量で含有し、
(c)1分子中に重合可能な二重結合を1個有する非共役ジエンから導かれる単位(iv)を0.1〜10モル%の量で含有し、
(d)135℃デカリン中で測定される極限粘度[η]が、0.1〜10dl/gの範囲にあり、
(e)下記一般式[I]で表される鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物から誘導される単位が下記式[II]で表される構造を有していることを特徴としている。
【0017】
但し、合計は、100モル%とする。以下同様である。
一般式[I]:
【0018】
【化6】
【0019】
[式[I]中、nは1〜5の整数であり、R1は炭素数1〜5のアルキル基であり、R2およびR3はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜5のアルキル基である。]
一般式[II]:
【0020】
【化7】
【0021】
[式[II]中、nは1〜5の整数であり、R1は炭素数1〜5のアルキル基であり、R2およびR3はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜5のアルキル基である。]。
【0022】
本発明においては、
(i) エチレンと、
(ii)炭素数3〜20のα−オレフィンと、
(iii) 1分子中に1個のノルボルネン環を有する少なくとも1種の上記式[I]で表わされる鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物と、
(iv)1分子中に重合可能な二重結合を1個有する非共役ジエンとを、
遷移金属化合物(イ)と、
有機アルミニウム化合物および/またはイオン化イオン性化合物(ロ)と、
から形成される触媒の存在下に共重合させて、
上記のようなエチレン系共重合体ゴムを製造している。
【0023】
本発明に係るエチレン系共重合体ゴムにおいては、上記(iii)成分には、鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]に加えて、さらに下記一般式[I−a]:
【0024】
【化8】
【0025】
(式[I−a]中、n、R1、R2およびR3はそれぞれ前記[I]の場合と同様である。)
で表わされる少なくとも1種の鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I−a]が、上記化合物[I]に比して少量、好ましくは[I]+[I−a]の合計100モル%中に、該化合物[I−a]が50モル%未満、さらに好ましくは40モル%以下、特に好ましくは35モル%以下の量で含まれていてもよく、
このようなランダム共重合体では、
上記(iii):上記一般式[I]で表わされる鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物から誘導される構成単位[II]と、上記一般式[I−a]で表わされる鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物から誘導される後記の構成単位[II−a]とが、合計で、上記鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[II]単独の場合と同様の量すなわち0.1〜10モル%であり、
上記構成単位[II]と上記構成単位[II−a]とは、構成単位[II]と[II−a]との合計100モル%中に、該構成単位[II−a]が50モル%未満、さらに好ましくは40モル%以下、特に好ましくは35モル%以下の量で共重合されている。
【0026】
また、このような共重合体(ゴム)中では、上記一般式[I]で表わされる鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物から誘導される構成単位が、上記式[II]で表わされる構造を有しており、上記一般式[I−a]で表わされる鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物から誘導される構成単位が、下記式[II−a]:
【0027】
【化9】
【0028】
(式[II−a]中、n、R1、R2およびR3はそれぞれ前記[II]の場合と同様である。)
で表わされる構造を有している。
【0029】
このような本発明に係る不飽和性エチレン系共重合体は、
(i) エチレンと、
(ii)炭素数3〜20のα−オレフィンと、
(iii)上記一般式[I]で表される少なくとも1種の鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物、および該鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]に比して上記のような少量の上記一般式[I−a]で表される少なくとも1種の鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物と、
(iv)1分子中に重合可能な二重結合を1個有する非共役ジエンとを、
遷移金属化合物(イ)と、有機アルミニウム化合物および/またはイオン化イオン性化合物(ロ)と、
から形成される触媒の存在下に共重合させることにより製造することができる。
【0030】
本発明に係るゴム組成物は、上記記載のエチレン系共重合体ゴムと、
下記(a)、(b)、(c)の内の少なくとも1種以上の成分と、
を含むことを特徴している。
(a)該エチレン系共重合体ゴム100重量部に対して300重量部以下の量の補強剤、
(b)該エチレン系共重合体ゴム100重量部に対して200重量部以下の量の軟化剤、
(c)加硫剤。
【0031】
上記のような本発明に係るエチレン系共重合体ゴムは、耐候性、耐熱性、耐オゾン性に優れしかも加硫速度が速く、特にスポンジ成形においては加硫速度と発泡剤の分解速度とのバランスを取りやすく、加工性に優れ、加硫すると機械的強度に優れている。
【0032】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係るエチレン系共重合体ゴムおよびその製造方法並びに該共重合体ゴムが含まれた加硫可能なゴム組成物について具体的に説明する。
[エチレン系共重合体ゴム]
本発明に係るエチレン系共重合体ゴムは、
(i) エチレンと、
(ii)炭素数3〜20のα−オレフィンと、
(iii)上記一般式[I]で表される少なくとも1種の鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物(「ポリエン(iii)」、「(iii)ポリエン」とも言う)と、
(iv)1分子中に重合可能な二重結合を1個有する非共役ジエンと、
のランダム共重合体である。
【0033】
[α − オレフィン (ii) ]
このような(ii)炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、具体的には、
プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどが挙げられ、好ましくはプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンが用いられる。これらのα−オレフィンは、単独であるいは2種以上組み合わせて用いられる。
【0034】
α−オレフィンとして炭素数4以上のものを用いた場合、すなわち1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどを用いた場合、特に、耐熱老化性と低温特性のバランスに優れている。
【0035】
[鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物 (iii) ]
本発明においては、上記(iii)の鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物(非共役ポリエン(iii))は、上述したように下記一般式[I]で表される。
【0036】
【化10】
【0037】
式[I]中、nは1〜5の整数であり、R1は炭素数1〜5のアルキル基であり、R2およびR3はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜5のアルキル基である。なお、数字1〜7およびn+3等は、炭素番号(置換基位置)を示す。
【0038】
炭素数1〜5のアルキル基としては、具体的に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基などが挙げられる。
【0039】
このような式[I]で表わされる鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物(以下、鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]ともいう)としては、具体的に下記(1)〜(24)に例示するような化合物が挙げられ、好ましくは、(5)、(6)、(9)、(11)、(14)、(19)、(20)が用いられる。(1):5−(2−エチリデン−4−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、
(2):5−(2−エチリデン−5−メチル−4−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、
(3):5−(2−エチリデン−5−メチル−4−ヘプテニル)−2−ノルボルネン、
(4):5−(2−エチリデン−5−エチル−ヘプテニル)−2−ノルボルネン、
(5):5−(2−エチリデン−4,5−ジメチル−4−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、
(6):5−(2−エチリデン−4,5−ジメチル−4−ヘプテニル)−2−ノルボルネン、
(7):5−(2−エチリデン−4−オクテニル)−2−ノルボルネン、
(8):5−(2−エチリデン−5−メチル−4−オクテニル)−2−ノルボルネン、
(9):5−(2−エチリデン−4−プロピル−5−メチル−4−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、
(10):5−(2−エチリデン−5−ヘプテニル)−2−ノルボルネン、
(11):5−(2−エチリデン−6−メチル−5−ヘプテニル)−2−ノルボルネン、
(12):5−(2−エチリデン−6−ノネニル)−2−ノルボルネン、
(13):5−(2−エチリデン−6−メチル−5−ノネニル)−2−ノルボルネン、
(14):5−(2−エチリデン−5,6−ジメチル−5−ヘプテニル)−2−ノルボルネン、
(15):5−(2−エチリデン−5,6−ジメチル−5−オクテニル)−2−ノルボルネン、
(16):5−(2−エチリデン−5,6−ジメチル−5−ノネニル)−2−ノルボルネン、
(17):5−(2−エチリデン−5−エチル−6−メチル−5−ノネニル)−2−ノルボルネン、
(18):5−(2−エチリデン−5,6−ジエチル−5−オクテニル)−2−ノルボルネン、
(19):5−(2−エチリデン−7−メチル−6−オクテニル)−2−ノルボルネン、
(20):5−(2−エチリデン−6,7−ジメチル−6−オクテニル)−2−ノルボルネン、
(21):5−(2−エチリデン−8−メチル−7−ノネニル)−2−ノルボルネン、
(22):5−(2−エチリデン−7,8−ジメチル−7−ノネニル)−2−ノルボルネン、
(23):5−(2−エチリデン−9−メチル−8−デセニル)−2−ノルボルネン、
(24):5−(2−エチリデン−8,9−ジメチル−8−デセニル)−2−ノルボルネンなど。
【0040】
上記化合物(1)〜(24)の化学式をまとめて以下に示す。
【0041】
【化11】
【0042】
【化12】
【0043】
【化13】
【0044】
このような鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]は、後述する不飽和性エチレン系共重合体ゴムの製造用モノマーとして、(i)エチレン、(ii)炭素数3〜20のα−オレフィン、および(iv)1分子中に重合可能な二重結合を1個有する非共役ジエン、と共に用いられるが、その際には、該鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]は、立体異性体の内の1種例えばトランス体単独またはシス体単独であってもよく立体異性体混合物、例えばトランス体およびシス体の混合物であってもよい。
【0045】
このような鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]を用いてなるエチレン系共重合体ゴムでは、後述するように、耐候性、耐熱性、耐オゾン性に優れしかも加硫速度が速く、特にスポンジ成形においては、加硫速度と発泡剤の分解速度とのバランスを取りやすく、加工性、成形性に優れ、加硫すると、機械的強度に優れる。
【0046】
次に、このような新規の鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]の製造方法について、具体的に説明する。
[鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[ I ]の製造]
以下に、この鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I](および[I−a])の製造方法について詳説する。
【0047】
鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]は、下記のようにして製造される。
【0048】
【化14】
【0049】
すなわち、上記鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]は、本願出願人が先に提案した特願平6−154952号明細書(平成6年(1994)7月6日出願)に記載されているように、まず、エチレンと式[III−a]:
【0050】
【化15】
【0051】
(式[III−a]中、nは1〜5の整数であり、R1 は炭素数1〜5のアルキル基であり、R2 およびR3 はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜5のアルキル基である。)
で表わされる共役ジエン化合物[III−a]とを、遷移金属化合物および有機アルミウニウム化合物からなる触媒の存在下に反応させることにより、
式[III]:
【0052】
【化16】
【0053】
(式[III]中、n、R1 、R2 およびR3 は上記[III−a]の場合と同様のものを示す。)
で表わされる分岐鎖状ポリエン化合物[III]を合成し、
次いで、特願平6ー322099号明細書(平成6年12月26日出願)に記載されているように、この分岐鎖状ポリエン化合物[III]とシクロペンタジエンとを反応(ディールス・アルダー反応)させることにより、上記鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]が得られる。
【0054】
以下、この鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]の上記製造工程に沿ってさらに詳細に順次説明する。
[分岐鎖状ポリエン化合物[ III ]の製造]
上記分岐鎖状ポリエン化合物[III]は、上記式[III−a]で示される共役ジエンを有する化合物(以下共役ジエン化合物[III−a]ともいう)と、エチレンとを反応させることにより製造することができる。
【0055】
上記式[III−a]中で、炭素数1〜5のアルキル基としては、前述したようなものが挙げられる。
このような式[III−a]で示される共役ジエン化合物としては、具体的にたとえば、下記(1)〜(24)に例示するような化合物が挙げられる。
(1):3−メチレン−1,5−ヘプタジエン、
(2):6−メチル−3−メチレン−1,5−ヘプタジエン、
(3):6−メチル−3−メチレン−1,5−オクタジエン、
(4):6−エチル−3−メチレン−1,5−オクタジエン、
(5):5,6−ジメチル−3−メチレン−1,5−ヘプタジエン、
(6):5,6−ジメチル−3−メチレン−1,5−オクタジエン、
(7):3−メチレン−1,5−ノナジエン、
(8):6−メチル−3−メチレン−1,5−ノナジエン、
(9):6−メチル−5−プロピル−3−メチレン−1,5−ヘプタジエン、
(10):3−メチレン−1,6−オクタジエン、
(11):7−メチル−3−メチレン−1,6−オクタジエン、
(12):3−メチレン−1,6−デカジエン、
(13):7−メチル−3−メチレン−1,6−デカジエン、
(14):6,7−ジメチル−3−メチレン−1,6−オクタジエン、
(15):6,7−ジメチル−3−メチレン−1,6−ノナジエン、
(16):6,7−ジメチル−3−メチレン−1,6−デカジエン、
(17):7−メチル−6−エチル−3−メチレン−1,6−デカジエン、
(18):6,7−ジエチル−3−メチレン−1,6−ノナジエン、
(19):8−メチル−3−メチレン−1,7−ノナジエン、
(20):7,8−ジメチル−3−メチレン−1,7−ノナジエン、
(21):9−メチル−3−メチレン−1,8−デカジエン、
(22):8,9−ジメチル−3−メチレン−1,8−デカジエン、
(23):10−メチル−3−メチレン−1,9−ウンデカジエン、
(24):9,10−ジメチル−3−メチレン−1,9−ウンデカジエン。
【0056】
上記反応によると、分岐鎖状ポリエン化合物[III]は、通常、トランス体とシス体との混合物として得られる。分岐鎖状ポリエン化合物[III]の構造によっては、蒸留によってトランス体とシス体とを分離することができる。
【0057】
また上記反応によれば、分岐鎖状ポリエン化合物[III]とともに一般式[III−b]で示される下記のような鎖状ポリエン化合物も副生することがある。
【0058】
【化17】
【0059】
このような副生物としては、具体的には、例えば、7−メチル−3−メチレン−1,6−オクタジエン(β−ミルセン)とエチレンとの反応により、EMN(4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン)を合成する際に副生する5,9−ジメチル−1,4,8−デカトリエンが挙げられる。
【0060】
このような副生物は、通常、蒸留によって分離することができる。
上記のような共役ジエン化合物[III−a]とエチレンとの反応は、共役ジエン化合物[III−a]の種類によっても異なるが、通常50〜200℃好ましく70〜150℃の温度で、エチレン圧1〜100kg/cm2 好ましくは10〜70kg/cm2 の圧力下に、0.5〜30時間行われる。
【0061】
反応は、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。また溶媒を使用しないで反応を行なうことができるが、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、トルエン、キシレンなどの不活性な炭化水素系溶媒の共存下に反応を行なうこともできる。
【0062】
この反応は、通常触媒の存在下に行なわれる。特に反応を、遷移金属化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒の存在下に行なうと、分岐鎖状ポリエン化合物[III]が効率よく得られる。
【0063】
このような遷移金属化合物としては、具体的に、鉄、ルテニウムなどの鉄族、コバルト、ロジウム、イリジウムなどのコバルト族、ニッケル、パラジウムなどのニッケル族から選ばれる遷移金属の塩化物、臭化物、アセチルアセトナート塩、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトナート塩、ジピバロイルメタン塩などが挙げられる。これらのうち、コバルト、鉄、ニッケル、ロジウム、パラジウムの塩化物が好ましく、特にコバルト化合物の塩化物が好ましい。
【0064】
このような遷移金属化合物(たとえば遷移金属塩化物)は、そのままでも反応に用いることができるが、この遷移金属化合物に有機配位子が配位した遷移金属錯体として用いることが好ましい。すなわちこの遷移金属化合物とともに遷移金属の配位子となりうる有機化合物(配位化合物)を反応系に共存させるか、あるいは予め遷移金属化合物と上記のような配位化合物とから遷移金属錯体を形成して使用するのが好ましい。
【0065】
このような配位子となりうる化合物としては、たとえば、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、シクロオクタジエン、シクロオクタテトラエンなどが挙げられる。
【0066】
また予め遷移金属化合物に有機配位子が配位された錯体としては、
[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]コバルト(II)クロリド、
[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ニッケル(II)クロリド、
ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)クロリドなどが好ましく用いられる。
【0067】
また有機アルミニウム化合物としては、後述する不飽和性エチレン系共重合体の製造時に用いられるようなものを挙げることができ、トリエチルアルミニウムが好ましく用いられる。有機アルミニウム化合物は、そのまま用いてもよく、またトルエン溶液あるいはヘキサン溶液にして用いることもできる。
【0068】
上記の共役ジエン化合物[III−a]とエチレンとの反応においては、遷移金属化合物は、共役ジエン化合物[III−a]に対して、好ましくは0.001〜10モル%の量で、特に好ましくは0.01〜1モル%の量で用いられる。また配位化合物は、遷移金属化合物に対して、0〜20モル倍の量で用いられることが好ましく、特に0.1〜5モル倍の量で用いられることが好ましい。
【0069】
有機アルミニウム化合物は、遷移金属化合物に対して、1〜200モル倍の量で用いられることが好ましく、特に3〜100モル倍の量で用いられることが好ましい。
【0070】
本発明では、上記のような遷移金属化合物(または遷移金属錯体)と有機アルミニウム化合物とを予め接触させた後に、上記反応(共役ジエン化合物[III−a]とエチレンとの反応)用の触媒として用いることが好ましい。
【0071】
上記のような共役ジエン化合物[III−a]とエチレンとの反応によれば、下記のような分岐鎖状ポリエン化合物[III]:
【0072】
【化18】
【0073】
(式[III]中、n、R1、R2およびR3は前記式[III−a]の場合と同じ意味である。)
が得られる。
【0074】
このような分岐鎖状ポリエン化合物[III]としては、具体的に下記(1)〜(24)に例示するような化合物が挙げられ、好ましくは、(5)、(6)、(9)、(11)、(14)、(19)、(20)が用いられる。
(1):4−エチリデン−1,6−オクタジエン、
(2):7−メチル−4−エチリデン−1,6−オクタジエン、
(3):7−メチル−4−エチリデン−1,6−ノナジエン、
(4):7−エチル−−4−エチリデン−1,6−ノナジエン、
(5):6,7−ジメチル−4−エチリデン−1,6−オクタジエン、
(6):6,7−ジメチル−4−エチリデン−1,6−ノナジエン、
(7):4−エチリデン−1,6−デカジエン、
(8):7−メチル−4−エチリデン−1,6−デカジエン、
(9):7−メチル−6−プロピル−4−エチリデン−1,6−オクタジエン、
(10):4−エチリデン−1,7−ノナジエン、
(11):8−メチル−4−エチリデン−1,7−ノナジエン(EMN)、
(12):4−エチリデン−1,7−ウンデカジエン、
(13):8−メチル−4−エチリデン−1,7−ウンデカジエン、
(14):7,8−ジメチル−4−エチリデン−1,7−ノナジエン、
(15):7,8−ジメチル−4−エチリデン−1,7−デカジエン、
(16):7,8−ジメチル−4−エチリデン−1,7−ウンデカジエン、
(17):8−メチル−7−エチル−4−エチリデン−1,7−ウンデカジエン、
(18):7,8−ジエチル−4−エチリデン−1,7−デカジエン、
(19):9−メチル−4−エチリデン−1,8−デカジエン、
(20):8,9−ジメチル−4−エチリデン−1,8−デカジエン、
(21):10−メチル−4−エチリデン−1,9−ウンデカジエン、
(22):9,10−ジメチル−4−エチリデン−1,9−ウンデカジエン、
(23):11−メチル−4−エチリデン−1,10−ドデカジエン、
(24):10,11−ジメチル−4−エチリデン−1,10−ドデカジエン。
【0075】
上記化合物(1)〜(24)の化学式をまとめて以下に示す。
【0076】
【化19】
【0077】
【化20】
【0078】
【化21】
【0079】
【化22】
【0080】
これら分岐鎖状ポリエン化合物[III]は、鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]の調製の際に、単独であるいは2種以上組み合わせて用いられる。上記した分岐鎖状ポリエン化合物[III]は、トランス体およびシス体の混合物であってもよく、トランス体単独またはシス体単独であってもよい。
【0081】
[鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[ I ]の製造]
本発明では、次いで、上記にようにして得られた分岐鎖状ポリエン化合物(「非共役トリエン化合物」とも言う)
[III]:
【0082】
【化23】
【0083】
(式[III]中、n、R1、R2およびR3は前記と同じ意味である。)
と、シクロペンタジエンとを反応(ディールス・アルダー反応)させることにより、鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]:
【0084】
【化24】
【0085】
(式[I]中、nは1〜5の整数を示し、R1は、炭素数1〜5のアルキル基を示し、R2及びR3は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。)
が得られる。
【0086】
上記一般式[I]において、R1、R2又はR3が、炭素数1〜5のアルキル基であるとき、このようなアルキル基として、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基等を挙げることができる。
【0087】
上記反応において用いられる分岐鎖状ポリエン化合物[III]の内では、R1及びR2は、炭素数1〜3のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基であり、R3は、水素であることが望ましい。
【0088】
シクロペンタジエンは、通常、その二量体であるジシクロペンタジエンを160℃以上で熱分解蒸留することによって得られるので、本発明においては、シクロペンタジエンと分岐鎖状ポリエン化合物[III]との反応において、採用される反応温度によっては、シクロペンタジエンに代えてジシクロペンタジエンを用い、このジシクロペンタジエンを反応系内で熱分解させてシクロペンタジエンを発生させ、このシクロペンタジエンを上記分岐鎖状ポリエン化合物[III]との反応に用いてもよい。
【0089】
このようなシクロペンタジエンと上記分岐鎖状ポリエン化合物[III]との反応は、用いられる分岐鎖状ポリエン化合物[III]によっても異なるが、好ましくは、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、分岐鎖状ポリエン化合物[III]1重量部に対して、シクロペンタジエン0.2〜4重量部、好ましくは0.5〜3重量部を、50〜250℃好ましくは100〜200℃の範囲の温度にて、1〜100kg/cm2好ましくは5〜70kg/cm2の圧力下に、0.5〜30時間程度、加熱攪拌することによって行われる。
【0090】
反応は、必要に応じて、ハイドロキノン等のラジカル重合禁止剤の存在下に行ってもよい。
シクロペンタジエンと分岐鎖状ポリエン化合物[III]との反応において、反応溶媒は、特に用いる必要はないが、用いてもよい。
【0091】
反応溶媒を用いる場合には、反応溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロベンゼン等のハロゲン系炭化水素、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール等のアルコール系溶媒を用いることができる。また、反応溶媒として、水も用いることができる。
【0092】
このようにして得られる鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]は、前記式[I]で示され、またこのような鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]としては、前述したようなものが例示できる。
【0093】
このようにして得られる鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]は、通常、立体異性構造(ノルボルネン骨格に対する鎖状ポリエンの結合の仕方に基づくエンド体およびエキソ体並びに鎖状ポリエンの二重結合の置換の仕方に基づくトランス体及びシス体)を有する。
【0094】
このような鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]の構造は、質量分析、赤外線吸収スペクトル、プロトンNMRスペクトル等を測定することによって決定することができる。
【0095】
本発明においては、このような鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]を、後述するような不飽和性エチレン系共重合体ゴム、並びに該不飽和性エチレン系共重合体ゴムを含有するゴム組成物の製造に用いる場合は、上記立体異性構造を有する前述したような種々のノルボルネン化合物の混合物であってもよく、また、いずれか1種の立体異性体単独であってもよい。
【0096】
なお、上記の反応によれば、鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]は、通常、エンド体とエキソ体との混合物として得られ、場合によっては、蒸留によって分離することができる。
【0097】
なお、鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]の調製の際に用いられるポリエン化合物原料に、上記分岐鎖状ポリエン化合物[III]以外に、この分岐鎖状ポリエン化合物[III]の合成過程で生じた副生物[III−b]:
【0098】
【化25】
【0099】
が含有されていると、この副生物[III−b]とシクロペンタジエンとの反応により、鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I−a]:
【0100】
【化26】
【0101】
(式[I−a]中、R1,R2,R3,nは、式[I]の場合と同様である。)が副生してくる。
後述するように、本発明に係る不飽和性エチレン系共重合体ゴムの製造に際しては、このような鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]とともに少量の鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I−a]が含まれた鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物含有物(化合物[I]と[I−a]との混合物)を用いることもできる。
【0102】
このように、上記鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]に加えて、副生物の鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I−a]をも含有するもの([I]と[I−a]との混合物)を、
後述するような、エチレン(i)と、炭素数3〜20のα−オレフィン(ii)と、(iii)鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物と、(iv)1分子中に重合可能な二重結合を1個有する非共役ジエンとの反応の際に、この(iii)鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物として用いると、
得られる不飽和性エチレン系共重合体には、鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物由来の構成単位として、上記ノルボルネン化合物[I]由来の下記に示す構成単位[II]に加えて、ノルボルネン化合物[I−a]由来の構成単位[II−a]が含まれたものが得られる。
【0103】
[II]:
【0104】
【化27】
【0105】
[式[II]中、nは1〜5の整数であり、R1は炭素数1〜5のアルキル基であり、R2およびR3はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜5のアルキル基である。]
[II−a]:
【0106】
【化28】
【0107】
(式[II−a]中、n、R1、R2およびR3はそれぞれ前記[II]の場合と同様である。)
例えば、上記鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物として、[I]:EMHN{:5−(2−エチリデン−6−メチル−5−ヘプテニル)−2−ノルボルネン}の他に、少量の副生成物[I−a]:(5−[3,7−ジメチル−2,6−オクタジエニル]−2−ノルボルネン)を含有する「EMHN含有物」を用いると、EMHN由来の構成単位[II’]:
【0108】
【化29】
【0109】
に加えて、上記副生物[I−a]由来の構成単位[II−a’]:
【0110】
【化30】
【0111】
が前述したような量(少量)で含まれたものが得られる。
なお、前記式[I−a]で表わされる鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物自体は、特願平7−75288号明細書(平成7年(1995)3月31日出願)に記載の方法で得ることもできる。
【0112】
すなわち、シクロペンタジエンと、一般式(a):
【0113】
【化31】
【0114】
[式(a)中、m,nはそれぞれ独立して1〜5の整数を示し、R1,R2,R3並びにRa,Rbは、それぞれ上記式[I]の場合と同様に、水素または炭素数1〜5のアルキル基を示す。但し、R1,R2,R3は、同時に水素であることはない。)
で表わされる鎖状非共役トリエン化合物とを反応させることにより、下記式(b):
【0115】
【化32】
【0116】
[式(b)中、m,n,R1,R2,R3,Ra,Rbは、式(a)の場合と同様のものを示す。]
で表わされる鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物を得ることもできる。
【0117】
[非共役ジエン (iv) ]
本発明においては、非共役ジエン(iv)としては、炭素・炭素二重結合のうち重合可能な炭素・炭素二重結合が、1分子内に1個のみ存在する非共役ジエンが用いられる。なお、ここで重合可能な炭素・炭素二重結合とは、通常では、後述するような触媒(例:メタロセン系触媒)によって重合可能なことを意味する。
【0118】
この非共役ジエン(iv)には、例えば両末端がビニル基(CH2=CH−)である鎖状ポリエンは含まれない。このような非共役ジエン(iv)において2個以上の炭素・炭素二重結合が存在する場合には、1個の炭素・炭素二重結合のみは、分子末端にビニル基として存在し、他の炭素・炭素二重結合(C=C)は、分子鎖(主鎖、側鎖を含む)中に内部オレフィン構造の形で存在していることが好ましい。このような非共役ジエン(iv)としては、下記のような脂肪族ジエン、脂環族ジエンなどが挙げられる。
【0119】
脂肪族系の非共役ジエンとしては、具体的には、例えば、
1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘプタジエン、1,6−オクタジエン、1,7−−ノナジエン、1,8−デカジエン、1,12− テトラデカジエン、
3−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−エチル−1,4−ヘキサジエン、3,3−ジメチル−1,4−ヘキサジエン、
5−メチル−1,4−ヘプタジエン、5−エチル−1,4−ヘプタジエン、5−メチル−1,5−ヘプタジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、5−エチル−1,5−ヘプタジエン、
4−メチル−1,4−オクタジエン、5−メチル−1,4−オクタジエン、4−エチル−1,4−オクタジエン、5−エチル−1,4−オクタジエン、5−メチル−1,5−オクタジエン、6−メチル−1,5−オクタジエン、5−エチル−1,5−オクタジエン、6−エチル−1,5−オクタジエン、6−メチル−1,6−オクタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、6−エチル−1,6−オクタジエン、6−プロピル−1,6−オクタジエン、6−ブチル−1,6−オクタジエン、
4−メチル−1,4−ノナジエン、5−メチル−1,4−ノナジエン、4−エチル−1,4−ノナジエン、5−エチル−1,4−ノナジエン、5−メチル−1,5−ノナジエン、6−メチル−1,5−ノナジエン、5−エチル−1,5−ノナジエン、6−エチル−1,5−ノナジエン、6−メチル−1,6−ノナジエン、7−メチル−1,6−ノナジエン、6−エチル−1,6−ノナジエン、7−エチル−1,6−ノナジエン、7−メチル−1,7−ノナジエン、8−メチル−1,7−ノナジエン、7−エチル−1,7−ノナジエン、
5−メチル−1,4−デカジエン、5−エチル−1,4−デカジエン、5−メチル−1,5−デカジエン、6−メチル−1,5−デカジエン、5−エチル−1,5−デカジエン、6−エチル−1,5−デカジエン、6−メチル−1,6−デカジエン、6−エチル−1,6−デカジエン、7−メチル−1,6−デカジエン、7−エチル−1,6−デカジエン、7−メチル−1,7−デカジエン、8−メチル−1,7−デカジエン、7−エチル−1,7−デカジエン、8−エチル−1,7−デカジエン、8−メチル−1,8−デカジエン、9−メチル−1,8−デカジエン、8−エチル−1,8−デカジエン、
6−メチル−1,6−ウンデカジエン、9−メチル−1,8−ウンデカジエンなどが挙げられ、7−メチル−1,6−オクタジエンなどが好ましく用いられる。本発明においては、これらの脂肪族ジエンを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0120】
上記脂環族ジエンとしては、1個の炭素・炭素二重結合(不飽和結合)を有する脂環部分と、内部オレフィン結合(炭素・炭素二重結合)を有する鎖状部分とから構成されるジエンが挙げられる。
【0121】
このような脂環族ジエンとしては、具体的には、例えば、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、5−プロピリデン−2−ノルボルネン、5−ブチリデン−2−ノルボルネンなどが挙げられ、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)が好ましく用いられる。
【0122】
その他の脂環族ジエンとしては、具体的には、例えば、2−メチル−2,5−ノルボルナジエン、2−エチル−2,5−ノルボルナジエンなどが挙げられる。
本発明においては、これらの非共役ジエン(iv)を1種または2種以上組合わせて用いることができる。
【0123】
本発明においては、これらの非共役ジエン(iv)の内では、脂環族ジエンが好ましく、さらには、上記の5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)が好ましく用いられる。
【0124】
[エチレン系共重合体ゴム]
本発明に係るエチレン系共重合体ゴムは、上記のような(i) エチレン、(ii)α−オレフィン、(iii) 鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物(ポリエン(iii))の単量体、および(iv)1分子中に重合可能な二重結合を1個有する非共役ジエン(ジエン(iv))から誘導される各構成単位が、それぞれランダムに配列して結合し、(iii)鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物(ポリエン)に起因する分岐構造と、(iv)非共役ジエンに起因する分岐(環)構造とを有するとともに、主鎖は、実質的に線状構造となっている。この共重合体が実質的に線状構造を有しており実質的にゲル状架橋重合体を含有しないことは、該共重合体が有機溶媒に溶解し、不溶分を実質的に含まないことにより確認することができる。たとえば極限粘度[η]を測定する際に、該共重合体が135℃、デカリンに完全に溶解することにより確認することができる。
成分単位量
本発明に係るエチレン系共重合体ゴムは、(i)エチレンから誘導される構成単位(エチレン単位)と、(ii)炭素数3〜20のα−オレフィンから誘導される構成単位(α−オレフィン単位)とを、モル比((i)/(ii))で95/5〜40/60、好ましくは85/15〜50/50、さらに好ましくは82/18〜55/45の量で含有している。
【0125】
本発明においては、(i)成分/(ii)成分(モル比)が95/5を超えると樹脂状となる傾向があり、40/60未満では低温特性が低下する傾向がある。
なお、本発明に係るエチレン系共重合体ゴムにおいては、上記(i)エチレンから誘導される構成単位量と、上記(ii)炭素数3〜20のα−オレフィンから誘導される構成単位量とは、上記(i)成分/(ii)成分(モル比)を満たす限り特に限定されないが、本発明に係るエチレン系共重合体ゴムでは、エチレン単位とα−オレフィン単位の合計を100モル%とするとき、(i)エチレンから誘導される構成単位を、通常95〜40モル%、好ましくは85〜50モル%、さらに好ましくは82〜55モル%の量で、
(ii)炭素数3〜20のα−オレフィンから誘導される構成単位を、通常5〜60モル%、好ましくは15〜50モル%、さらに好ましくは18〜45モル%の量で含有していることが望ましい。
【0126】
また本発明に係るエチレン系共重合体ゴム中には、(iii)少なくとも1種の鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物から誘導される構成単位を0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜8モル%、さらに好ましくは0.3〜5モル%の量で含有している。
【0127】
この鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物(iii)から誘導される構成単位が0.1モル%未満では、加硫速度の向上が見られなくなる傾向があり、10モル%を超えると化学的安定性に劣る傾向がある。
【0128】
また、本発明に係るエチレン系共重合体ゴム中には、(iv)1分子中に重合可能な二重結合を1個有する非共役ジエンから誘導される構成単位を0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜8モル%、さらに好ましくは0.3〜5モル%の量で含有している。
【0129】
この非共役ジエン(iv)から誘導される構成単位が0.1モル%未満では、加工性、成形性の向上が見られなくなる傾向があり、10モル%を超えるとゲル化する傾向がある。
【0130】
なお、この(iii)成分単位量と(iv)成分単位量との和が0.2モル%未満では、硫黄加硫が困難になる傾向があり、10モル%を超えると耐環境老化性が悪くなる傾向がある。
【0131】
なお、本発明に係るエチレン系共重合体ゴムにおいては、上記(iii)鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物成分と(iv)非共役ジエン成分とのモル比((iii)成分/(iv)成分)が、20/1〜1/20、好ましくは10/1〜1/10、さらに好ましくは5/1〜1/5となることが望ましい。この構成成分のモル比((iii)成分/(iv)成分)が上記の範囲を外れると、加硫速度と加工性のバランスが悪くなる傾向がある。
極限粘度[η]
本発明おいては、エチレン系共重合体ゴムの135℃デカリン中 で測定される極限粘度[η]は、0.1〜10dl/g、好ましくは0.5〜5dl/g、さらに好ましくは0.8〜4dl/gの範囲にある。
【0132】
この極限粘度が0.1dl/g未満では、加硫後の強度に劣る傾向があり、10dl/gを超えると加工性が悪くなる傾向がある。
ヨウ素価
本発明においては、エチレン系共重合体ゴムのヨウ素価は、0.5〜50、好ましくは1〜40特に好ましくは5〜35であることが望ましい。
上記のようなヨウ素価のエチレン系共重合体ゴムは、加硫速度が速く、高速加硫が可能である。
【0133】
上記のような本発明に係るエチレン系共重合体ゴムは、押出成形性に優れ、加硫速度が速く、しかも加硫ゴムでは加硫強度等の機械的特性に優れている。
本発明に係るエチレン系共重合体ゴムは、未加硫のまま用いられてもよく、また後述するような加硫方法により加硫して加硫状態で用いられてもよいが、加硫状態で用いられるとその特性が一層発揮される。
【0134】
また本発明に係るエチレン系共重合体ゴムは、単独で加硫されて用いられてもよく、また他のゴム材料と共加硫されて用いられてもよい。
このエチレン系共重合体ゴムは、加硫速度が速いため加硫剤を多量に用いなくても従来のエチレン系共重合体ゴムに比べて短い時間であるいは低温で加硫することができ、加硫ゴムを生産性よく製造することができる。
【0135】
本発明に係るエチレン系共重合体ゴムは、特に、天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴムなどのジエン系ゴムとの共加硫性に優れており、エチレン系共重合体ゴムとジエン系ゴムとの共加硫物は、ジエン系ゴムが本来有する優れた機械的特性、耐摩耗性、耐動的疲労性、耐油性を有するとともに耐候性、耐オゾン性、耐熱老化性などにも優れている。
【0136】
このような本発明に係るエチレン系共重合体ゴムにおいて(iii)鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物が前記式[I]で表される場合には、エチレン系共重合体ゴム中においては(iii)鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物から誘導される構成単位は、実質的に前記式[II]で表わされ、また鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I−a]から誘導される構成単位は、前記式[II−a]で表わされる。
【0137】
なお鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物(非共役ポリエン)から誘導される構成単位が上記各構造を有していることは、その共重合体の13C−NMRスペクトルを測定することによって確認することができる。
【0138】
上記のような本発明に係るエチレン系共重合体ゴムは、耐候性、耐熱性、耐オゾン性に優れるとともに加硫速度が速い。
本発明に係るエチレン系共重合体ゴムは、未加硫のまま用いられてもよく、また後述するような加硫方法により加硫して加硫状態で用いられてもよいが、加硫状態で用いられるとその特性が一層発揮される。
【0139】
このようなエチレン系共重合体ゴムは、樹脂改質剤として、また各種ゴム製品として特に好ましく用いられる。
具体的には、本発明に係るエチレン系共重合体ゴムを樹脂改質剤として、たとえばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン、ポリスチレンなどに添加すると、その耐衝撃性、耐ストレスクラック性が飛躍的に向上する。
【0140】
また本発明に係るエチレン系共重合体ゴムは、単独で加硫されて用いられてもよく、また他のゴム材料と共加硫されて用いられてもよい。
本発明の共重合体ゴムは、また、スポンジ成形においては、加硫速度と発泡剤の分解速度のバランスが取りやすいため、得られた製品は機械的特性に優れるという特徴を有する。
【0141】
このエチレン系共重合体ゴムは、加硫速度が速いため加硫剤を多量に用いなくても従来のエチレン系共重合体ゴムに比べて短い時間であるいは低温で加硫することができ、加硫ゴムを生産性よく製造することができる。
【0142】
本発明に係るエチレン系共重合体ゴムは、特に、天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴムなどのジエン系ゴムとの共加硫性に優れており、エチレン系共重合体ゴムとジエン系ゴムとの共加硫物は、ジエン系ゴムが本来有する優れた機械的特性、耐摩耗性、耐動的疲労性、耐油性を有するとともに耐候性、耐オゾン性、耐熱老化性などにも優れている。
【0143】
具体的には、たとえば本発明に係るエチレン系共重合体ゴムと天然ゴムとの共加硫物は、強度、耐候性、耐オゾン性および動的特性に優れている。
本発明に係るエチレン系共重合体ゴムとニトリルゴムとの共加硫物は、耐候性、耐オゾン性および耐油性に優れている。
【0144】
本発明に係るエチレン系共重合体ゴムとブタジエンゴムとの共加硫物は、耐候性、耐オゾン性および耐摩耗性に優れている。
[エチレン系共重合体ゴムの製造]
上記のような本発明に係るエチレン系共重合体ゴムは、
(i) エチレンと、
(ii) 炭素数3〜20のα−オレフィンと、
(iii) 上記鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I](および場合により、上記少量の鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I−a])と、
(iv) 上記非共役ジエンとを、
触媒の存在下に共重合させて得られる。
【0145】
このような触媒としては、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、チタニウム(Ti)などの遷移金属化合物(イ)と、
有機アルミニウム化合物(有機アルミニウムオキシ化合物)および/またはイオン化イオン性化合物(ロ)と、
からなる触媒が使用できる。
【0146】
本発明では、これらの内、[a]可溶性バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒、あるいは
[b]周期律表第IVb族から選ばれる遷移金属のメタロセン化合物と、有機アルミニウムオキシ化合物および/またはイオン化イオン性化合物と、からなる触媒が特に好ましく用いられる。
【0147】
このような触媒[a]を形成する可溶性バナジウム化合物は、具体的には、下記一般式で表される。
VO(OR)aXb または V(OR)cXd
式中、Rは炭化水素基であり、Xはハロゲン原子であり、a、b、c、dはそれぞれ0≦a≦3、0≦b≦3、2≦a+b≦3、0≦c≦4、0≦d≦4、3≦c+d≦4を満たす。
【0148】
上記式で表される可溶性バナジウム化合物としては、具体的には、
VOCl3、
VO(OCH3)Cl2、
VO(OC2H5)Cl2、
VO(OC2H5)1.5Cl1.5 、
VO(OC2H5)2Cl、
VO(O−n−C3H7)Cl2、
VO(O−iso−C3H7)Cl2、
VO(O−n−C4H9)Cl2、
VO(O−iso−C4H9)Cl2、
VO(O−sec−C4H9)Cl2、
VO(O−t−C4H9)Cl2、
VO(OC2H5)3、VOBr2、VCl4、VOCl2
VO(O−n−C4H9)3、
VOCl3・2OC8H17OHなどが挙げられる。
【0149】
これらは、単独であるいは2種以上組み合わせて用いられる。
また上記可溶性バナジウム化合物は、以下に示すような電子供与体を接触させて得られる、これらの可溶性バナジウム化合物の電子供与体付加物として用いることもできる。
【0150】
このような電子供与体としては、
アルコール類、フェノール類、ケトン類、アルデヒド類、カルボン酸類、有機酸ハライド類、有機酸または無機酸のエステル類、エーテル類、ジエーテル類、酸アミド類、酸無水物類、アルコキシシランなどの含酸素電子供与体、
アンモニア類、アミン類、ニトリル類、ピリジン類、イソシアネート類などの含窒素電子供与体を挙げることができる。
【0151】
より具体的には、
メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、2−エチルヘキサノール、オクタノール、ドデカノール、オクタデシルアルコール、オレイルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、クミルアルコール、イソプロピルアルコール、イソプロピルベンジルアルコールなどの炭素数1〜18のアルコール類、
トリクロロメタノール、トリクロロエタノール、トリクロロヘキサノールなどの炭素数1〜18のハロゲン含有アルコール類、
フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ノニルフェノール、クミルフェノール、ナフトールなどのアルキル基を有してもよい炭素数6〜20のフェノール類、
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンゾキノンなどの炭素数3〜15のケトン類、
アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、オクチルアルデヒド、ベンズアルデヒド、トルアルデヒド、ナフトアルデヒドなどの炭素数2〜15のアルデヒド類、
ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ビニル、酢酸プロピル、酢酸オクチル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、吉草酸エチル、クロル酢酸メチル、ジクロル酢酸エチル、メタクリル酸メチル、クロトン酸エチル、シクロヘキサンカルボン酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸オクチル、安息香酸シクロヘキシル、安息香酸フェニル、安息香酸ベンジル、トルイル酸メチル、トルイル酸エチル、トルイル酸アミル、エチル安息香酸エチル、アニス酸メチル、アニス酸エチル、エトキシ安息香酸エチル、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、クマリン、フタリド、炭酸エチルなどの炭素数2〜18の有機酸エステル類、
アセチルクロリド、ベンゾイルクロリド、トルイル酸クロリド、アニス酸クロリドなどの炭素数2〜15の酸ハライド類、
メチルエーテル、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、アミルエーテル、テトラヒドロフラン、アニソール、ジフェニルエーテルなどの炭素数2〜20のエーテル類、
無水酢酸、無水フタル酸、無水安息香酸などの酸無水物、
ケイ酸エチル、ジフェニルジメトキシシランなどのアルコキシシラン、
酢酸N,N−ジメチルアミド、安息香酸N,N−ジエチルアミド、トルイル酸N,N−ジメチルアミドなどの酸アミド類、
トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリベンジルアミン、テトラメチルエチレンジアミンなどのアミン類、
アセトニトリル、ベンゾニトリル、トルニトリルなどのニトリル類、
ピリジン、メチルピリジン、エチルピリジン、ジメチルピリジンなどのピリジン類などが挙げられる。
【0152】
可溶性バナジウム化合物の電子供与体付加物を調製する際には、これら電子供与体を単独であるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明で触媒[a]を形成する際に用いられる有機アルミニウム化合物は、下記式[III]で表される。
【0153】
R1 nAlX3−n …[III]
式中、R1 は炭素数1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基であり、Xはハロゲン原子または水素原子であり、nは1〜3である。
【0154】
このような炭素数1〜15の炭化水素基としては、たとえばアルキル基、シクロアルキル基またはアリ−ル基が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トリル基などが挙げられる。
【0155】
このような有機アルミニウム化合物としては、具体的には以下のような化合物が挙げられる。
トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリ2−エチルヘキシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニム、
一般式(i−C4H9)xAly(C5H10)z [式中、x、y、zは正の数であり、z≧2xである。]で表わされるイソプレニルアルミニウムなどのアルケニルアルミニウム、
トリイソプロペニルアルミニウムなどのトリアルケニルアルミニウム、
ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジイソプロピルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムブロミドなどのジアルキルアルミニウムハライド、
メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアウミニウムセスキクロリド、イソプロピルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド、
メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、イソプロピルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライド、
ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド、
エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリドなどが挙げられる。
【0156】
また有機アルミニウム化合物として、下記式[IV]で表される化合物を挙げることもできる。
R1 nAlY3−n …[IV]
式中、R1 は上記式[III]と同様であり、Yは−OR10基、−OSiR11 3基、−OAlR12 2基、−NR13 2基、−SiR14 3基または−N(R15)AlR16 2基である。R10、R11、R12およびR16はメチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基などであり、R13は水素、メチル基、エチル基、イソプロピル基、フェニル基、トリメチルシリル基などであり、R14およびR15はメチル基、エチル基などである。nは1〜2である。
【0157】
このような式[IV]で表される有機アルミニウム化合物としては、具体的には、以下のような化合物が挙げられる。但し、Meはメチル基、Etはエチル基、Buはブチル基であり、R1〜16は[IV]と同様である。
(1) R1 nAl(OR10)3−nで表される化合物、たとえば、
ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムメトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド、
エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドおよびR1 2.5Al(OR2)0.5などで表わされる平均組成を有する部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム、
エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウムが挙げられる。
(2) R1 nAl(OSi R11 3)3−nで表される化合物、たとえば、
Et2Al(OSi Me3)
(iso−Bu)2Al(OSi Me3)
(iso−Bu)2Al(OSi Et3)など、
(3) R1 nAl(OAlR12 2)3−nで表される化合物、たとえば、
Et2AlOAlEt2
(iso−Bu)2AlOAl(iso−Bu)2など、
(4) R1 nAl(NR13 2)3−nで表される化合物、たとえば、
Me2AlNEt2
Et2AlNHMe
Me2AlNHEt
Et2AlN(Si Me3)2
(iso−Bu)2AlN(SiMe3)2など、
(5) R1 nAl(Si R14 3)3−nで表される化合物、たとえば、
(iso−Bu)2AlSi Me3など、
(6) R1 nAl[N(R13)AlR16 2]3−nで表される化合物、たとえば
Et2AlN(Me)AlEt2 、
(iso−Bu)2AlN(Et)Al(iso−Bu)2 など。
【0158】
これらの中では、とくにアルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウムジハライドまたはこれらの組み合わせが好ましい。
なお本発明で用いられる有機アルミニウム化合物は、アルミニウム以外の金属の有機化合物成分を少量含有していてもよい。
【0159】
次に、本発明で用いられる[b]メタロセン化合物と有機アルミニウムオキシ化合物またはイオン化イオン性化合物とからなる触媒について説明する。
このような周期律表第IVB族から選ばれる遷移金属のメタロセン化合物は、具体的には、次式[V]で表される。
【0160】
MLx …[V]
式[V]中、Mは周期律表第IVB族から選ばれる遷移金属であり、具体的にジルコニウム、チタンまたはハフニウムであり、xは遷移金属の原子価である。
【0161】
Lは遷移金属に配位する配位子であり、これらのうち少なくとも1個の配位子Lはシクロペンタジエニル骨格を有する配位子であり、このシクロペンタジエニル骨格を有する配位子は置換基を有していてもよい。
【0162】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子としては、たとえば、
シクロペンタジエニル基、メチルシクロペンタジエニル基、エチルシクロペンタジエニル基、n−またはi−プロピルシクロペンタジエニル基、n−、i−、sec−、t−、ブチルシクロペンタジエニル基、ヘキシルシクロペンタジエニル基、オクチルシクロペンタジエニル基、ジメチルシクロペンタジエニル基、トリメチルシクロペンタジエニル基、テトラメチルシクロペンタジエニル基、ペンタメチルシクロペンタジエニル基、メチルエチルシクロペンタジエニル基、メチルプロピルシクロペンタジエニル基、メチルブチルシクロペンタジエニル基、メチルヘキシルシクロペンタジエニル基、メチルベンジルシクロペンタジエニル基、エチルブチルシクロペンタジエニル基、エチルヘキシルシクロペンタジエニル基、メチルシクロヘキシルシクロペンタジエニル基などのアルキルまたはシクロアルキル置換シクロペンタジエニル基、さらに
インデニル基、4,5,6,7−テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基などが挙げられる。
【0163】
これらの基は、ハロゲン原子、トリアルキルシリル基などで置換されていてもよい。
これらのうちでは、アルキル置換シクロペンタジエニル基が特に好ましい。
【0164】
式[V]で示される化合物が配位子Lとしてシクロペンタジエニル骨格を有する基を2個以上有する場合には、そのうち2個のシクロペンタジエニル骨格を有する基同士は、エチレン、プロピレンなどのアルキレン基、イソプロピリデン、ジフェニルメチレンなどの置換アルキレン基、シリレン基またはジメチルシリレン基、ジフェニルシリレン基、メチルフェニルシリレン基などの置換シリレン基などを介して結合されていてもよい。
【0165】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外のLとしては、炭素数1〜12の炭化水素基、アルコキシ基、アリーロキシ基、スルホン酸含有基(−SO3 Ra )、ハロゲン原子または水素原子(ここで、Ra はアルキル基、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、アリール基またはハロゲン原子またはアルキル基で置換されたアリール基である。)などが挙げられる。
【0166】
炭素数1〜12の炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などが挙げられ、より具体的には、
メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基などのアルキル基、
シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、
フェニル基、トリル基などのアリール基、
ベンジル基、ネオフィル基などのアラルキル基が挙げられる。
【0167】
また、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキソキシ基、オクトキシ基などが挙げられる。
【0168】
アリーロキシ基としては、フェノキシ基などが挙げられ、
スルホン酸含有基(−SO3 Ra )としては、メタンスルホナト基、p−トルエンスルホナト基、トリフルオロメタンスルホナト基、p−クロルベンゼンスルホナト基などが挙げられる。
【0169】
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
上記式で表されるメタロセン化合物は、たとえば遷移金属の原子価が4である場合、より具体的には下記式[VI]で表される。
【0170】
R2 kR3 lR4 mR5 nM …[VI]
式[VI]中、Mは上記遷移金属であり、R2 はシクロペンタジエニル骨格を有する基(配位子)であり、R3 、R4 およびR5 は、それぞれ独立にシクロペンタジエニル骨格を有する基または上記一般式[V]中のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外のLと同様である。kは1以上の整数であり、k+l+m+n=4である。
【0171】
以下に、Mがジルコニウムであり、かつシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を少なくとも2個含むメタロセン化合物を例示する。
ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムモノクロリドモノハイドライド、
ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジブロミド、
ビス(シクロペンタジエニル)メチルジルコニウムモノクロリド、
ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムフェノキシモノクロリド、
ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(n−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(イソプロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(t−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(sec−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(イソブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(ヘキシルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(オクチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(インデニル)ジルコニウムジブロミド、
ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、
ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムメトキシクロリド、
ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムエトキシクロリド、
ビス(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(メタンスルホナト)、
ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(p−トルエンスルホナト)、
ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、
ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、
ビス(エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、
ビス(プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、
ビス(ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、
ビス(ヘキシルシクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、
ビス(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、
ビス(1−メチル−3−エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、
ビス(1−メチル−3−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、
ビス(1−メチル−3−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、
ビス(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(1−メチル−3−エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(1−メチル−3−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(1−メチル−3−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(1−メチル−3−ヘキシルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(1−メチル−3−オクチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(1−エチル−3−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(メチルベンジルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(エチルヘキシルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(メチルシクロヘキシルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドなどを例示することができる。
【0172】
上記の1,3−位置換シクロペンタジエニル基を1,2−位置換シクロペンタジエニル基に置換えた化合物を本発明で用いることもできる。
また上記式[VI]において、R2 、R3 、R4 およびR5 の少なくとも2個、例えばR2およびR3 がシクロペンタジエニル骨格を有する基(配位子)であり、この少なくとも2個の基はアルキレン基、置換アルキレン基、シリレン基または置換シリレン基などを介して結合されているブリッジタイプのメタロセン化合物を例示することもできる。このときR4 およびR5 はそれぞれ独立に式[V]中で説明したシクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外のLと同様である。
【0173】
このようなブリッジタイプのメタロセン化合物としては、
エチレンビス(インデニル)ジメチルジルコニウム、
エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
エチレンビス(インデニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、
エチレンビス(インデニル)ジルコニウムビス(メタンスルホナト)、
エチレンビス(インデニル)ジルコニウムビス(p−トルエンスルホナト)、
エチレンビス(インデニル)ジルコニウムビス(p−クロルベンゼンスルホナト)、
エチレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、
イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−フルオレニル)ジルコニウムジク ロリド、
イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−メチルシクロペンタジエニル)ジ ルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス(トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、
ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス(シクロペンタジエニル−フルオレニル)ジルコニウムジク ロリド、
ジフェニルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
メチルフェニルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリドなどが挙げられる。
【0174】
さらに、下記式[A]で示される特開平4−268307号公報に記載のメタロセン化合物が挙げられる。
メタロセンが式[A]:
【0175】
【化33】
【0176】
[式[A]中、M1は周期律表の第IVb族の金属であり、具体的には、例えば、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウムを挙げることができる。
R1およびR2は、互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、炭素原子数1〜10好ましくは1〜3のアルキル基、炭素原子数1〜10好ましくは1〜3のアルコキシ基、炭素原子数6〜10好ましくは6〜8のアリール基、炭素原子数6〜10好ましくは6〜8のアリールオキシ基、炭素原子数2〜10好ましくは2〜4のアルケニル基、炭素原子数7〜40好ましくは7〜10のアリールアルキル基、炭素原子数7〜40好ましくは7〜12のアルキルアリール基、炭素原子数8〜40好ましくは8〜12のアリールアルケニル基、またはハロゲン原子好ましくは塩素原子である。
【0177】
R3およびR4は、互いに同じでも異なっていても良く、水素原子、ハロゲン原子好ましくは弗素原子、塩素原子または臭素原子、ハロゲン化されていてもよい炭素原子数1〜10好ましくは1〜4のアルキル基、炭素原子数6〜10好ましくは6〜8のアリール基、−NR10 2、−SR10、−OSiR10 3、−SiR10 3または−PR10 2基であり、その際R10はハロゲン原子好ましくは塩素原子、または、炭素原子数1〜10好ましくは1〜3のアルキル基、または炭素原子数6〜10好ましくは6〜8のアリール基である。
【0178】
R3およびR4は特に水素原子であることが好ましい。
R5およびR6は互いに同じでも異なっていてもよく、好ましくは同じであり、R5およびR6は水素原子でないという条件のもとでR3およびR4について記載した意味を有する。R5およびR6は、好ましくはハロゲン化されていてもよい炭素原子数1〜4のアルキル基、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基またはトリフルオロメチル基等が挙げられ、メチル基が好ましい。
【0179】
R7は、下記:
【0180】
【化34】
【0181】
=BR11、=AlR11、−Ge−、−Sn−、−O−、−S−、=SO、=SO2、=NR11、=CO、=PR11または=P(O)R11であり、その際R11、R12およびR13は互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10好ましくは1〜4のアルキル基さらに好ましくはメチル基、炭素原子数1〜10のフルオロアルキル基好ましくはCF3基、炭素原子数6〜10好ましくは6〜8のアリール基、炭素原子数6〜10のフルオロアリール基好ましくはペンタフルオロフェニル基、炭素原子数1〜10好ましくは1〜4のアルコキシ基特に好ましくはメトキシ基、炭素原子数2〜10好ましくは2〜4のアルケニル基、炭素原子数7〜40好ましくは7〜10のアリールアルキル基、炭素原子数8〜40好ましくは8〜12のアリールアルケニル基、または炭素原子数7〜40好ましくは7〜12のアルキルアリール基であり、また「R11とR12」または「R11とR13」とは、それぞれそれらが結合する炭素原子と一緒になって環を形成してもよい。
【0182】
M2は珪素、ゲルマニウムまたは錫、好ましくは珪素またはゲルマニウムである。
R7は、=CR11R12、=SiR11R12、=GeR11R12、−O−、−S−、=SO、=PR11または=P(O)R11であることが好ましい。
【0183】
R8およびR9は互いに同じであっても異なっていてもよく、R11について記載したと同じ意味を有する。
mおよびnは互いに同じであっても異なっていてもよく、0、1または2、好ましくは0または1であり、m+nは0、1または2、好ましくは0または1である。
【0184】
上記条件を充たす特に好ましいメタロセンを下記(i)〜(iii)に示す。
【0185】
【化35】
【0186】
[上記式(i)、(ii)及び(iii)中、M1はZrまたはHfであり、R1およびR2はメチル基または塩素原子であり、R5およびR6はメチル基、エチル基またはトリフルオロメチル基であり、R8、R9、R11およびR12が上記の意味を有する。]
このような式(i)、(ii)及び(iii)で示される化合物の内でも、下記の化合物が特に好ましい。
【0187】
rac−エチレン(2−メチル−1−インデニル)2−ジルコニウム−ジクロライド、
rac−ジメチルシリレン(2−メチル−1−インデニル)2−ジルコニウム−ジクロライド、
rac−ジメチルシリレン(2−メチル−1−インデニル)2−ジルコニウム−ジメチル、
rac−エチレン−(2−メチル−1−インデニル)2−ジルコニウム−ジメチル、
rac−フェニル(メチル)シリレン−(2ーメチル−1−インデニル)2−ジルコニウム−ジクロライド、
rac−ジフェニル−シリリン−(2ーメチル−1−インデニル)2−ジルコニウム−ジクロライド、
rac−メチルエチレン−(2ーメチル−1−インデニル)2−ジルコニウム−ジクロライド、
rac−ジメチルシリレン−(2ーエチル−1−インデニル)2−ジルコニウム−ジクロライド。このようなメタロセンの製造方法については、従来より公知の方法にて製造することができる(例:特開平4−268307号公報参照)。
【0188】
本発明では、下記式[B]で示される遷移金属化合物(メタロセン化合物)を用いることもできる。
【0189】
【化36】
【0190】
式[B]中、Mは周期律表第IVb族の遷移金属原子を示し、具体的には 、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウムである。
R1 およびR2 は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基またはリン含有基を示し、具体的には、
フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子;
メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、ノニル、ドデシル、アイコシル、ノルボルニル、アダマンチルなどのアルキル基、ビニル、プロペニル、シクロヘキセニルなどのアルケニル基、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピルなどのアリールアルキル基、フェニル、トリル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ビフェニル、ナフチル、メチルナフチル、アントラセニル、フェナントリルなどのアリール基などの炭素数1から20の炭化水素基;
前記炭化水素基にハロゲン原子が置換したハロゲン化炭化水素基;
メチルシリル、フェニルシリルなどのモノ炭化水素置換シリル、ジメチルシリル、ジフェニルシリルなどのジ炭化水素置換シリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリプロピルシリル、トリシクロヘキシルシリル、トリフェニルシリル、ジメチルフェニルシリル、メチルジフェニルシリル、トリトリルシリル、トリナフチルシリルなどのトリ炭化水素置換シリル、
トリメチルシリルエーテルなどの炭化水素置換シリルのシリルエーテル、
トリメチルシリルメチルなどのケイ素置換アルキル基、トリメチルシリルフェニルなどのケイ素置換アリール基、
などのケイ素含有基;
ヒドロオキシ基、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなどのアルコキシ基、フェノキシ、メチルフェノキシ、ジメチルフェノキシ、ナフトキシなどのアリロ−キシ基、フェニルメトキシ、フェニルエトキシなどのアリールアルコキシ基などの酸素含有基;
前記酸素含有基の酸素がイオウに置換した置換基などのイオウ含有基;
アミノ基、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジブチルアミノ、ジシクロヘキシルアミノなどのアルキルアミノ基、フェニルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノ、ジナフチルアミノ、メチルフェニルアミノなどのアリールアミノ基またはアルキルアリールアミノ基などの窒素含有基;
ジメチルフォスフィノ、ジフェニルフォスフィノなどのフォスフィノ基などのリン含有基である。
【0191】
これらのうちR1 は炭化水素基であることが好ましく、特にメチル、エチル、プロピルの炭素数1〜3の炭化水素基であることが好ましい。またR2 は水素、炭化水素基が好ましく、特に水素あるいは、メチル、エチル、プロピルの炭素数1〜3の炭化水素基であることが好ましい。
【0192】
R3 、R4 、R5 およびR6 は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基を示し、このうち水素、炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基であることが好ましい。R3 とR4 、R4 とR5 、R5 とR6 のうち少なくとも1組は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、単環の芳香族環を形成していてもよい。
【0193】
また芳香族環を形成する基以外の基は、炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基が2種以上ある場合には、これらが互いに結合して環状になっていてもよい。なおR6 が芳香族基以外の置換基である場合、水素原子であることが好ましい。
【0194】
ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基として、具体的には、前記R1 およびR2 と同様の基が例示できる。
R3 とR4 、R4 とR5 、R5 とR6 のうち少なくとも1組が互いに結合して形成する単環の芳香族環を含む、Mに配位する配位子としては以下に示すようなものが挙げられる。
【0195】
【化37】
【0196】
これらのうち上記式(1)で示されるものが好ましい。
前記芳香族環はハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基で置換されていてもよい。
【0197】
前記芳香族環に置換するハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基としては、前記R1 およびR2 と同様の基が例示できる。
【0198】
X1 およびX2 は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、酸素含有基またはイオウ含有基を示し、具体的には、
前記R1 およびR2 と同様のハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、酸素含有基が例示できる。
【0199】
イオウ含有基としては、前記R1 、R2 と同様の基、およびメチルスルホネート、トリフルオロメタンスルフォネート、フェニルスルフォネート、ベンジルスルフォネート、p−トルエンスルフォネート、トリメチルベンゼンスルフォネート、トリイソブチルベンゼンスルフォネート、p−クロルベンゼンスルフォネート、ペンタフルオロベンゼンスルフォネートなどのスルフォネート基、メチルスルフィネート、フェニルスルフィネート、ベンジルスルフィネート、p−トルエンスルフィネート、トリメチルベンゼンスルフィネート、ペンタフルオロベンゼンスルフィネートなどのスルフィネート基が例示できる。
【0200】
Yは、炭素数1〜20の2価の炭化水素基、炭素数1〜20の2価のハロゲン化炭化水素基、2価のケイ素含有基、2価のゲルマニウム含有基、2価のスズ含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO2 −、−NR7 −、−P(R7)−、−P(O)(R7)−、−BR7 −または−AlR7 −[ただし、R7 は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基]を示し、具体的には、
メチレン、ジメチルメチレン、1,2−エチレン、ジメチル−1,2− エチレン、1,3−トリメチレン、1,4−テトラメチレン、1,2−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキシレンなどのアルキレン基、ジフェニルメチレン、ジフェニル−1,2− エチレンなどのアリールアルキレン基などの炭素数1から20の2価の炭化水素基;
クロロメチレンなどの上記炭素数1から20の2価の炭化水素基をハロゲン化したハロゲン化炭化水素基;
メチルシリレン、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジ(n−プロピル)シリレン、ジ(i−プロピル)シリレン、ジ(シクロヘキシル)シリレン、メチルフェニルシリレン、ジフェニルシリレン、ジ(p−トリル)シリレン、ジ(p−クロロフェニル)シリレンなどのアルキルシリレン、アルキルアリールシリレン、アリールシリレン基、テトラメチル−1,2−ジシリレン、テトラフェニル−1,2− ジシリレンなどのアルキルジシリレン、アルキルアリールジシリレン、アリールジシリレン基などの2価のケイ素含有基;
上記2価のケイ素含有基のケイ素をゲルマニウムに置換した2価のゲルマニウム含有基;
上記2価のケイ素含有基のケイ素をスズに置換した2価のスズ含有基置換基などであり、
R7 は、前記R1 、R2 と同様のハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基である。
【0201】
このうち2価のケイ素含有基、2価のゲルマニウム含有基、2価のスズ含有基であることが好ましく、さらに2価のケイ素含有基であることが好ましく、このうち特にアルキルシリレン、アルキルアリールシリレン、アリールシリレンであることが好ましい。
【0202】
以下に上記式[B]で表される遷移金属化合物の具体的な例を示す。
【0203】
【化38】
【0204】
【化39】
【0205】
【化40】
【0206】
本発明では、上記のような化合物においてジルコニウム金属を、チタニウム金属、ハフニウム金属に置き換えた遷移金属化合物を用いることもできる。
前記遷移金属化合物は、通常ラセミ体としてオレフィン重合用触媒成分として用いられるが、R型またはS型を用いることもできる。
【0207】
このような遷移金属化合物のインデン誘導体配位子は、たとえば下記の反応ルートで、通常の有機合成手法を用いて合成することができる。
【0208】
【化41】
【0209】
本発明で用いられるこの遷移金属化合物は、これらインデン誘導体から既知の方法、たとえば特開平4−268307号公報に記載されている方法により合成することができる。
【0210】
本発明においては、また下記式[C]で示される遷移金属化合物(メタロセン化合物)を用いることもできる。
【0211】
【化42】
【0212】
式[C]中、M、R1、R2、 R3 、R4 、R5 およびR6としては、前記式[B]の場合と同様なものが挙げられる。
R3 、R4 、R5 およびR6 のうち、R3 を含む2個の基が、アルキル基であることが好ましく、R3 とR5 、またはR3 とR6 がアルキル基であることが好ましい。このアルキル基は、2級または3級アルキル基であることが好ましい。また、このアルキル基は、ハロゲン原子、ケイ素含有基で置換されていてもよく、ハロゲン原子、ケイ素含有基としては、R1 、R2 で例示した置換基が挙げられる。
【0213】
R3 、R4 、R5 およびR6 で示される基のうち、アルキル基以外の基は、水素原子であることが好ましい。
炭素数1〜20の炭化水素基としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、tert− ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、ドデシル、アイコシル、ノルボルニル、アダマンチルなどの直鎖状、分岐状アルキル基および環状アルキル基;ベンジル、フェニルエチル、フエニルプロピル、トリルメチルなどのアリールアルキル基などが挙げられ、2重結合、3重結合を含んでいてもよい。
【0214】
またR3 、R4 、R5 およびR6 から選ばれる2種の基が互いに結合して芳香族環以外の単環あるいは多環を形成していてもよい。
ハロゲン原子として、具体的には、前記R1 およびR2 と同様の基が例示できる。
【0215】
X1 、X2、YおよびR7としては、前記式[B]の場合と同様のものが挙げられる。
以下に上記式[C]で示されるメタロセン化合物(遷移金属化合物)の具体的な例を示す。
【0216】
rac−ジメチルシリレン−ビス(4,7−ジメチル−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2,4,7−トリメチル−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2,4,6−トリメチル−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2,5,6−トリメチル−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2,4,5,6−テトラメチル−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2,4,5,6,7−ペンタメチル−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−n− プロピル−7− メチル−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(4−i−プロピル−7− メチル−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−i− プロピル−7− メチル−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−i− プロピル−6− メチル−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4− メチル−6−i− プロピル−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−i− プロピル−5− メチル−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4,6− ジ(i− プロピル)−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4,6− ジ(i− プロピル)−7−メチル−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−i− ブチル−7− メチル−1− インデニル) ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−sec− ブチル−7− メチル−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4,6− ジ(sec− ブチル)−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−tert−ブチル−7− メチル−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4− シクロヘキシル−7− メチル−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4− ベンジル−7− メチル−1− インデニル) ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4− フェニルエチル−7− メチル−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4− フェニルジクロルメチル−7− メチル−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4− クロロメチル−7− メチル−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4− トリメチルシリルメチル−7− メチル−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4− トリメチルシロキシメチル−7− メチル−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジエチルシリレン−ビス(2−メチル−4−i− プロピル−7− メチル−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジ(i− プロピル) シリレン−ビス(2−メチル−4−i− プロピル−7− メチル−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジ(n− ブチル) シリレン−ビス(2−メチル−4−i− プロピル−7− メチル−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジ( シクロヘキシル) シリレン−ビス(2−メチル−4−i− プロピル−7− メチル−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−メチルフェニルシリレン−ビス(2−メチル−4−i− プロピル−7− メチル−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジフェニルシリレン−ビス(2−メチル−4−i− プロピル−7− メチル−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジフェニルシリレン−ビス(2−メチル−4− ジ(i− プロピル)−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジ(p− トリル) シリレン−ビス(2−メチル−4−i− プロピル−7− メチル−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジ(p− クロロフェニル) シリレン−ビス(2−メチル−4−i− プロピル−7− メチル−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−i− プロピル−7− メチル−1− インデニル)ジルコニウムジブロミド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−i− プロピル−7− メチル−1− インデニル)ジルコニウムジメチル、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−i− プロピル−7− メチル−1− インデニル)ジルコニウムメチルクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−i− プロピル−7− メチル−1− インデニル)ジルコニウム−ビス(メタンスルホナト)、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−i− プロピル−7− メチル−1− インデニル)ジルコニウム−ビス(p−フェニルスルフィナト)、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−3− メチル−4−i− プロピル−6− メチル−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−エチル−4−i− プロピル−6− メチル−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−フェニル−4−i− プロピル−6− メチル−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド。
【0217】
本発明では、上記のような化合物においてジルコニウム金属を、チタニウム金属、ハフニウム金属に置き換えた遷移金属化合物を用いることもできる。
上記遷移金属化合物は、通常ラセミ体として用いられるが、R型またはS型を用いることもできる。
【0218】
このような遷移金属化合物のインデン誘導体配位子は、たとえば前記と同様の反応ルートで、通常の有機合成手法を用いて合成することができる。
また上記の式[C]で示される遷移金属化合物(メタロセン化合物)は、これらインデン誘導体から既知の方法、たとえば特開平4−268307号公報に記載の方法により合成することができる。
【0219】
本発明では、また下記の式[D]で示される遷移金属化合物(メタロセン化合物)を用いこともできる。
【0220】
【化43】
【0221】
式[D]中、M、R1、X1 、X2およびYとしては、前記式[B]あるいは前記式[C]の場合と同様のものが挙げられる。
このうち、R1としては、炭化水素基であることが好ましく、特にメチル、エチル、プロピル、ブチルの炭素数1〜4の炭化水素基であることが好ましい。
【0222】
また、X1 、X2としては、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましい。
R2 は、炭素数6〜16のアリール基を示し、具体的には、
フェニル、α−ナフチル、β−ナフチル、アントラセニル、フェナントリル、ピレニル、アセナフチル、ペリナフテニル(フェナレニル)、アセアントリレニルなどである。これらのうちフェニル、ナフチルであることが好ましい。これらのアリール基は、前記R1 と同様のハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基で置換されていてもよい。
【0223】
以下に上記式[D]で示される遷移金属化合物(メタロセン化合物)の具体的な例を示す。
rac−ジメチルシリレン−ビス(4−フェニル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−フェニル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−(α−ナフチル)−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−(β−ナフチル)−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−(1−アントラセニル)−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−(2−アントラセニル)−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−(9−アントラセニル)−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−(9−フェナントリル)−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−(p−フルオロフェニル)−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−(ペンタフルオロフェニル)−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−(p−クロロフェニル)−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−(m−クロロフェニル)−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−(o−クロロフェニル)−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−(o,p−ジクロロフェニル) フェニル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−(p−ブロモフェニル)−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−(p−トリル)−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−(m−トリル)−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−(o−トリル)−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−(o,o’−ジメチルフェニル)−1−インデニル) ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−(p−エチルフェニル)−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−(p−i−プロピルフェニル)−1−インデニ ル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−(p−ベンジルフェニル)−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−(p−ビフェニル)−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−(m−ビフェニル)−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−(p−トリメチルシリルフェニル)−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−(m−トリメチルシリルフェニル)−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−エチル−4−フェニル−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジフェニルシリレン−ビス(2−エチル−4−フェニル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−フェニル−4−フェニル−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−n−プロピル−4− フェニル−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジエチルシリレン−ビス(2−メチル−4− フェニル−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジ−(i−プロピル)シリレン−ビス(2−メチル−4− フェニル−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジ−(n−ブチル)シリレン−ビス(2−メチル−4− フェニル−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジシクロヘキシルシリレン−ビス(2−メチル−4− フェニル−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−メチルフェニルシリレン−ビス(2−メチル−4− フェニル−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジフェニルシリレン−ビス(2−メチル−4− フェニル−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジ(p−トリル)シリレン−ビス(2−メチル−4− フェニル−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジ(p−クロロフェニル)シリレン−ビス(2−メチル−4− フェニル−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−メチレン−ビス(2−メチル−4− フェニル−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−エチレン−ビス(2−メチル−4− フェニル−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルゲルミル−ビス(2−メチル−4− フェニル−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルスズ−ビス(2−メチル−4− フェニル−1− インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4− フェニル−1− インデニル)ジルコニウムジブロミド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4− フェニル−1− インデニル)ジルコニウムジメチル、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4− フェニル−1− インデニル)ジルコニウムメチルクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4− フェニル−1− インデニル)ジルコニウムクロリドSO2Me、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4− フェニル−1− インデニル)ジルコニウムクロリドOSO2Meなど。
【0224】
本発明では、上記のような化合物においてジルコニウム金属を、チタニウム金属、ハフニウム金属に置き換えた遷移金属化合物を用いることもできる。
このような式[D]で示される遷移金属化合物は、Journal of Organometallic Chem.288(1985)、第63〜67頁、ヨーロッパ特許出願公開第0,320,762 号明細書および実施例に準じて、たとえば下記のようにして製造することができる。
【0225】
【化44】
【0226】
R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基またはリン含有基を示し、
R2は、炭素数6〜16のアリール基を示し、具体的には、
フェニル、α−ナフチル、β−ナフチル、アントラセニル、フェナントリル、ピレニル、アセナフチル、ペリナフテニル(フェナレニル)、アセアントリレニルなどである。
【0227】
このような遷移金属化合物[D]は、通常ラセミ体として用いられるが、R体またはS体を用いることもできる。
また本発明では、下記式[E−1]で示されるメタロセン化合物を用いることもできる。
【0228】
LaMX2 ・・・・[E−1]
(Mは、周期率表第IV族またはランタニド系列の金属であり、
La は、非局在化π結合基の誘導体であり、金属M活性サイトに拘束幾何形状を付与しており、
Xは、それぞれ独立に水素、ハロゲンまたは20以下の炭素、ケイ素またはゲルマニウムを含有する炭化水素基、シリル基またはゲルミル基である。)
このような式[E−1]で示される化合物のうちでも、具体的に、下記式[E−2]で示される化合物が好ましい。
【0229】
【化45】
【0230】
Mはチタン、ジルコニウムまたはハフニウムであり、Xは、上記と同様である。
CpはMにπ結合しており、かつ置換基Zを有する置換シクロペンタジエニル基またはその誘導体である。
【0231】
Zは酸素、イオウ、ホウ素または周期率表第IVA族の元素(例えば、ケイ素、ゲルマニウム、スズ)であり、
Yは窒素、リン、酸素またはイオウを含む配位子であり、
ZとYとで縮合環を形成してもよい。
【0232】
このような式[E−2]で示される化合物としては、具体的に、
(ジメチル(t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)シラン)チタンジクロリド、
((t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイル)チタンジクロリド、
(ジベンジル(t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)シラン)チタンジクロリド、
(ジメチル(t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル) シラン)ジベンジルチタン、
(ジメチル(t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル) シラン)ジメチルチタン、
((t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイル)ジベンジルチタン、
((メチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイル)ジネオペンチルチタン、
((フェニルホスフィド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)メチ レン)ジフェニルチタン、
(ジベンジル(t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル )シラン)ジベンジルチタン、
(ジメチル(ベンジルアミド)(η5−シクロペンタジエニル)シラン)ジ(トリメチルシリル)チタン、
(ジメチル(フェニルホスフィド)−(テトラメチル−η5−シクロペンタジエ ニル)シラン)ジベンジルチタン、
((テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイル)ジベンジルチタン、
(2−η5−(テトラメチル−シクロペンタジエニル)−1−メチル−エタノレート(2−))ジベンジルチタン、
(2−η5−(テトラメチル−シクロペンタジエニル)−1−メチル−エタノレート(2−))ジメチルチタン、
(2−((4a,4b,8a,9,9a−η)−9H−フルオレン−9−イル)シクロヘキサノレート(2−))ジメチルチタン、
(2−((4a,4b,8a,9,9a−η)−9H−フルオレン−9−イル)シクロヘキサノレート(2−))ジベンジルジルチタンなどが挙げられる。
【0233】
本発明では、上記のようなメタロセン化合物は、2種以上組合わせて用いることもできる。
上記説明においては、メタロセン化合物としてチタン化合物について例示したが、チタンを、ジルコニウムまたはハフニウムに置換えた化合物を例示することもできる。
【0234】
これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明では、上記メタロセン化合物[E−1]および[E−2]としては、中心の金属原子がジルコニウムであり、少なくとも2個のシクロペンタジエニル骨格を含む配位子を有するジルコノセン化合物が好ましく用いられる。なお前記のメタロセン化合物[VI]では、中心の金属原子がチタンであることが好ましい。
【0235】
これらメタロセン化合物は、炭化水素あるいはハロゲン化炭化水素に希釈して用いてもよい。
また上記のようなメタロセン化合物は、粒子状担体化合物と接触させて用いることもできる。
【0236】
担体化合物としては、Si O2 、Al2O3 、B2 O3 、MgO、ZrO2 、CaO、TiO2 、ZnO、Zn2O、SnO2 、BaO、ThOなどの無機担体化合物、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体などの樹脂を用いることができる。これらの担体化合物は、二種以上組み合わせて用いることもできる。
【0237】
次に、本発明で触媒[b](周期律表第IV族から選ばれる遷移金属のメタロセン化合物と有機アルミニウムオキシ化合物またはイオン化イオン性化合物とからなる触媒)を形成する際に用いられる有機アルミニウムオキシ化合物およびイオン化イオン性化合物について説明する。
【0238】
本発明で用いられる有機アルミニウムオキシ化合物は、従来公知のアルミノオキサンであってもよく、またベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。
【0239】
このような従来公知のアルミノオキサンは、具体的には、下記一般式で表される。
【0240】
【化46】
【0241】
(上記一般式において、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭化水素基であり、好ましくはメチル基、エチル基、とくに好ましくはメチル基であり、mは2以上、好ましくは5〜40の整数である。)
ここで、このアルミノオキサンは式(OAl(R1))で表わされるアルキルオキシアルミニウム単位および式(OAl(R2))で表わされるアルキルオキシアルミニウム単位[ここで、R1 およびR2 はRと同様の炭化水素基を例示することができ、R1 およびR2 は相異なる基を表わす]からなる混合アルキルオキシアルミニウム単位から形成されていてもよい。
【0242】
従来公知のアルミノオキサンは、たとえば下記のような方法によって製造され、通常、芳香族炭化水素溶媒の溶液として回収される。
(1) 吸着水を含有する化合物あるいは結晶水を含有する塩類、たとえば塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物、塩化第1セリウム水和物などを懸濁した芳香族炭化水素溶媒に、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物を添加して反応させて芳香族炭化水素溶媒の溶液として回収する方法。
(2) ベンゼン、トルエン、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどの媒体中でトリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に直接水(水、氷または水蒸気)を作用させて芳香族炭化水素溶媒の溶液として回収する方法。
【0243】
これらの方法のうちでは、(1) の方法を採用するのが好ましい。
アルミノオキサンの溶液を製造する際に用いられる有機アルミニウム化合物としては、前述したような有機アルミニウム化合物が挙げられ、具体的には、
トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec−ブチルアルミニウム、トリtert− ブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、
一般式(i−C4H9)xAly(C5H10)z [式中、x、y、zは正の数であり、z≧2xである。]で表わされるイソプレニルアルミニウムなどのアルケニルアルミニウム、
ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリドなどのジアルキルアルミニウムハライド、
ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのジアルキルアルミニウムハイドライド、
ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド、
ジエチルアルミニウムフェノキシドなどのジアルキルアルミニウムアリーロキシドなどが挙げられる。
【0244】
これらのうちでは、トリアルキルアルミニウムが特に好ましい。
上記のような有機アルミニウム化合物は、単独であるいは組合せて用いられる。
【0245】
本発明で用いられるベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物は、たとえば、アルミノオキサンの溶液と、水または活性水素含有化合物とを接触させる方法、あるいは上記のような有機アルミニウム化合物と水とを接触させる方法などによって得ることができる。
【0246】
本発明で用いられるベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物では、該化合物を赤外分光法(IR)によって解析して、1220cm−1付近における吸光度(D1220)と、1260cm−1付近における吸光度(D1260)との比(D1260/D1220)が、0.09以下、好ましくは0.08以下、特に好ましくは0.04〜0.07の範囲にあることが望ましい。
【0247】
上記のようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物は、下記式で表されるアルキルオキシアルミニウム単位を有すると推定される。
【0248】
【化47】
【0249】
式中、R7 は炭素数1〜12の炭化水素基である。このような炭化水素基として、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などを例示することができる。これらの中でメチル基、エチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0250】
このベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物は、上記式で表わされるアルキルオキシアルミニウム単位の他に、下記式で表わされるオキシアルミニウム単位を含有していてよい。
【0251】
【化48】
【0252】
式中、R8 は炭素数1〜12の炭化水素基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリーロキシ基、水酸基、ハロゲンまたは水素原子である。
また該R8 および上記式中のR7 は互いに異なる基を表わす。
【0253】
オキシアルミニウム単位を含有する場合には、アルキルオキシアルミニウム単位を30モル%以上、好ましくは50モル%以上、特に好ましくは70モル%以上の割合で含むアルキルオキシアルミニウム単位を有する有機アルミニウムオキシ化合物が望ましい。
【0254】
なお本発明で用いられる有機アルミニウムオキシ化合物は、少量のアルミニウム以外の金属の有機化合物成分を含有していてもよい。
イオン化イオン性化合物としては、ルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物を例示することができる。
【0255】
ルイス酸としては、BR3(Rは、フッ素、メチル基、トリフルオロメチル基などの置換基を有していてもよいフェニル基またはフッ素である。)で示される化合物が挙げられ、たとえば
トリフルオロボロン、
トリフェニルボロン、トリス(4−フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(4−フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリス(p−トリル)ボロン、トリス(o−トリル)ボロン、トリス(3,5−ジメチルフェニル)ボロンなどが挙げられる。
【0256】
イオン性化合物としては、トリアルキル置換アンモニウム塩、N,N−ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアリールホスフォニウム塩などを挙げることができる。
【0257】
具体的に、トリアルキル置換アンモニウム塩としては、たとえば
トリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、
トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、
トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、
トリメチルアンモニウムテトラ(p−トリル)ホウ素、
トリメチルアンモニウムテトラ(o−トリル)ホウ素、
トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、
トリプロピルアンモニウムテトラ(o,p−ジメチルフェニル)ホウ素、
トリブチルアンモニウムテトラ(m,m−ジメチルフェニル)ホウ素、
トリブチルアンモニウムテトラ(p−トリフルオロメチルフェニル)ホウ素、
トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(o−トリル)ホウ素などが挙げられる。
【0258】
N,N−ジアルキルアニリニウム塩としては、たとえば
N,N−ジメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、
N,N−ジエチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、
N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。
【0259】
ジアルキルアンモニウム塩としては、たとえば
ジ(1−プロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、
ジシクロヘキシルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。
【0260】
さらにイオン性化合物として、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどを挙げることもできる。
【0261】
さらに、ボラン化合物としては、下記のような化合物を挙げることもできる。
即ち、具体的には、ボラン化合物としては、デカボラン(14);
ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ノナボレート、
ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕デカボレート、
ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ウンデカボレート、
ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ドデカボレート、
ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕デカクロロデカボレート、
ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ドデカクロロドデカボレートなどのアニオンの塩;および
トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ドデカハイドライドドデカボレート)コバルト酸塩(III)、
ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ドデカハイドライドドデカボレート)ニッケル酸塩(III)などの金属ボランアニオンの塩などが挙げられる。
【0262】
また、カルボラン化合物としては、
4−カルバノナボラン(14)、
1,3−ジカルバノナボラン(13)、
6,9−ジカルバデカボラン(14)、
ドデカハイドライド−1−フェニル−1,3−ジカルバノナボラン、
ドデカハイドライド−1−メチル−1,3−ジカルバノナボラン、
ウンデカハイドライド−1,3−ジメチル−1,3−ジカルバノナボラン、
7,8−ジカルバウンデカボラン(13)、
2,7−ジカルバウンデカボラン(13)、
ウンデカハイドライド−7,8−ジメチル−7,8−ジカルバウンデカボラン、
ドデカハイドライド−11−メチル−2,7−ジカルバウンデカボラン、
トリ(n−ブチル)アンモニウム1−カルバデカボレート、
トリ(n−ブチル)アンモニウム1−カルバウンデカボレート、
トリ(n−ブチル)アンモニウム1−カルバドデカボレート、
トリ(n−ブチル)アンモニウム1−トリメチルシリル−1−カルバデカボレート、
トリ(n−ブチル)アンモニウムブロモ−1−カルバドデカボレート、
トリ(n−ブチル)アンモニウム6−カルバデカボレート(14)、
トリ(n−ブチル)アンモニウム6−カルバデカボレート(12)、
トリ(n−ブチル)アンモニウム7−カルバウンデカボレート(13)、
トリ(n−ブチル)アンモニウム7,8−ジカルバウンデカボレート(12)、
トリ(n−ブチル)アンモニウム2,9−ジカルバウンデカボレート(12)、
トリ(n−ブチル)アンモニウムドデカハイドライド−8−メチル−7,9−ジカルバウンデカボレート、
トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−8−エチル−7,9−ジカルバウンデカボレート、
トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−8−ブチル−7,9−ジカルバウンデカボレート、
トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−8−アリル−7,9−ジカルバウンデカボレート、
トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−9−トリメチルシリル−7,8−ジカルバウンデカボレート、
トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−4,6−ジブロモ−7−カルバウンデカボレートなどのアニオンの塩;および
トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド−1,3−ジカルバノナボ レート)コバルト酸塩(III)、
トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウ ンデカボレート)鉄酸塩(III)、
トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウ ンデカボレート)コバルト酸塩(III)、
トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウ ンデカボレート)ニッケル酸塩(III)、
トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウ ンデカボレート)銅酸塩(III)、
トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウ ンデカボレート)金酸塩(III)、
トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド−7,8−ジメチル−7,8−ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)、
トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド−7,8−ジメチル−7,8−ジカルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、
トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(トリブロモオクタハイドライド−7,8−ジ カルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、
トリス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド−7−カ ルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、
ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド−7−カル バウンデカボレート)マンガン酸塩(IV) 、
ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド−7−カル バウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、
ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド−7−カル バウンデカボレート)ニッケル酸塩(IV)などの金属カルボランアニオンの塩などが挙げられる。
【0263】
上記のようなイオン化イオン性化合物は、2種以上組合わせて用いてもよい。本発明においては、有機アルミニウムオキシ化合物または上記イオン化イオン性化合物は、上述した担体化合物に担持させて用いることもできる。
【0264】
また触媒[b]を形成するに際しては、有機アルミニウムオキシ化合物またはイオン化イオン性化合物とともに前述した有機アルミニウム化合物を用いてもよい。
【0265】
本発明では、上記のような触媒[a](可溶性バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒)または触媒[b](周期律表第IV族から選ばれる遷移金属のメタロセン化合物と有機アルミニウムオキシ化合物またはイオン化イオン性化合物とからなる触媒)の存在下に(i) エチレン、(ii)α−オレフィン、(iii)上記鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物(非共役ポリエン(iii))および、(iv)1分子中に重合可能な二重結合を1個有する非共役ジエン(非共役ジエン(iv))を、通常液相で共重合させる。この際、一般に炭化水素溶媒が用いられるが、プロピレン等のα−オレフィンを溶媒として用いてもよい。
【0266】
このような炭化水素溶媒としては、
ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素およびそのハロゲン誘導体、
シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素およびそのハロゲン誘導体、
ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素およびクロロベンゼンなどのハロゲン誘導体などが用いられる。これら溶媒は組み合わせて用いてもよい。
【0267】
(i) エチレンと(ii)α−オレフィンと(iii)上記鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物と(iv)上記非共役ジエンとは、バッチ法、あるいは連続法いずれの方法で共重合されてもよい。共重合を連続法で実施するに際しては、上記触媒は以下のような濃度で用いられる。
【0268】
本発明において上記触媒[a]、すなわち可溶性バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒が用いられる場合には、
重合系内の可溶性バナジウム化合物の濃度は、通常、0.01〜5ミリモル/リットル(重合容積)、好ましくは0.05〜3ミリモル/リットルである。この可溶性バナジウム化合物は、重合系内に存在する可溶性バナジウム化合物の濃度の10倍以下、好ましくは1〜7倍、さらに好ましくは1〜5倍の濃度で供給されることが望ましい。また有機アルミニウム化合物は、重合系内のバナジウム原子に対するアルミニウム原子の比(Al /V)で、2以上、好ましくは2〜50、さらに好ましくは3〜20の量で供給される。
【0269】
可溶性バナジウム化合物および有機アルミニウム化合物は、通常、上述の炭化水素溶媒および/または液状の共重合用原料モノマーで希釈して供給される。この際、該可溶性バナジウム化合物は上述した濃度に希釈されることが望ましいが、有機アルミニウム化合物は重合系内における濃度のたとえば50倍以下の任意の濃度に調整して重合系内に供給されることが望ましい。
【0270】
またメタロセン化合物(イ)と、有機アルミニウムオキシ化合物および/またはイオン化イオン性化合物(イオン性イオン化化合物、イオン性化合物ともいう。)(ロ)と、からなる触媒[b]が用いられる場合には、重合系内のメタロセン化合物の濃度は、通常、0.00005〜0.1ミリモル/リットル(重合容積)、好ましくは0.0001〜0.05ミリモル/リットルである。また有機アルミニウムオキシ化合物は、重合系内の遷移金属であるメタロセン化合物に対するアルミニウム原子の比(Al/遷移金属)で、1〜10000、好ましくは10〜5000の量で供給される。
【0271】
イオン化イオン性化合物の場合は、重合系内のメタロセン化合物に対するイオン化イオン性化合物のモル比(イオン化イオン性化合物/メタロセン化合物)で、0.5〜20、好ましくは1〜10の量で供給される。
【0272】
また有機アルミニウム化合物が用いられる場合には、通常、約0〜5ミリモル/リットル(重合度積)、好ましくは約0〜2ミリモル/リットルとなるような量で用いられる。
【0273】
本発明において、(i) エチレンと(ii)α−オレフィンと(iii)上記鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物(非共役ポリエン(iii))と(iv)非共役ジエンとを可溶性バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒[a]の存在下に共重合させる場合には、共重合反応は、通常、温度が−50℃〜100℃、好ましくは−30℃〜80℃、さらに好ましくは−20℃〜60℃で、圧力が0を超えて〜50Kg/cm2 、好ましくは0を超えて〜20Kg/cm2 の条件下に行われる。
【0274】
また本発明において、(i) エチレンと(ii)α−オレフィンと(iii)上記鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物(非共役ポリエン(iii))と(iv)非共役ジエンとを、メタロセン化合物(イ)と、有機アルミニウムオキシ化合物および/またはイオン化イオン性化合物(ロ)と、からなる触媒[b]の存在下に共重合させる場合には、共重合反応は、通常、温度が−20℃〜150℃、好ましくは0℃〜120℃、さらに好ましくは0℃〜100℃で、圧力が0を超えて〜80Kg/cm2 、好ましくは0を超えて〜50Kg/cm2 の条件下に行なわれる。
【0275】
また反応時間(共重合が連続法で実施される場合には平均滞留時間)は、触媒濃度、重合温度などの条件によっても異なるが、通常、5分〜5時間、好ましくは10分〜3時間である。
【0276】
本発明では、(i) エチレン、(ii)α−オレフィン、(iii)上記鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物(非共役ポリエン)および(iv)非共役ジエンは、上述のような特定組成のエチレン系共重合体ゴムが得られるような量で重合系に供給される。さらに共重合に際しては、水素などの分子量調節剤を用いることもできる。
【0277】
本発明では、周期律表第IVB族から選ばれる遷移金属のメタロセン化合物(イ)と、有機アルミウニウムオキシ化合物および/またはイオン化イオン性化合物(ロ)と、からなる触媒[b]の存在下に製造することが特に好ましい。
【0278】
上記のようにして(i) エチレン、(ii)α−オレフィン、(iii)上記鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物および(iv)非共役ジエンを共重合させると、エチレン系共重合体ゴムは通常これを含む重合液として得られる。この重合液は、常法により処理され、エチレン系共重合体ゴムが得られる。
【0279】
[エチレン系共重合体ゴムのグラフト変性物]
本発明に係るエチレン系共重合体ゴムは、該エチレン系共重合体ゴムに極性モノマーをグラフト重合させることにより、変性して用いることができる。
【0280】
本発明のグラフト変性されたエチレン系共重合体ゴム(グラフト変性エチレン系共重合体ゴムともいう)は、ラジカル開始剤の存在下あるいは不存在下に、上記のようなエチレン系共重合体ゴムと、後述するような極性モノマーとを反応させることにより得ることができる。
【0281】
極性モノマーとしては、水酸基含有エチレン性不飽和化合物、アミノ基含有エチレン性不飽和化合物、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物、芳香族ビニル化合物、不飽和カルボン酸あるいはその誘導体、ビニルエステル化合物、塩化ビニルなどが挙げられる。
【0282】
具体的には、水酸基含有エチレン性不飽和化合物としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシ−プロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、テトラメチロールエタンモノ(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−(6−ヒドロキシヘキサノイルオキシ)エチルアクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル;10−ウンデセン−1−オール、1−オクテン−3−オール、2−メタノールノルボルネン、ヒドロキシスチレン、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、N−メチロールアクリルアミド、2−(メタ)アクロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、グリセリンモノアリルエーテル、アリルアルコール、アリロキシエタノール、2−ブテン−1,4−ジオール、グリセリンモノアルコールなどが挙げられる。
【0283】
アミノ基含有エチレン性不飽和化合物は、エチレン性二重結合とアミノ基を有する化合物であり、このような化合物としては、次式で表わされるアミノ基または置換アミノ基を少なくとも1種類有するビニル系単量体を挙げることができる。
【0284】
【化49】
【0285】
式中、R1は水素原子、メチル基またはエチル基であり、R2は、水素原子、炭素数1〜12、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜12、好ましくは6〜8のシクロアルキル基である。なお上記のアルキル基、シクロアルキル基は、さらに置換基を有してもよい。
【0286】
このようなアミノ基含有エチレン性不飽和化合物としては、具体的には、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチルおよびメタクリル酸シクロヘキシルアミノエチルなどのアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル系誘導体類;N−ビニルジエチルアミンおよびN−アセチルビニルアミンなどのビニルアミン系誘導体類;アリルアミン、メタクリルアミン、N−メチルアクリルアミン、N,N−ジメチルアクリルアミン、およびN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミンなどのアリルアミン系誘導体;アクリルアミドおよびN−メチルアクリルアミドなどのアクリルアミド系誘導体;p−アミノスチレンなどのアミノスチレン類;6−アミノヘキシルコハク酸イミド、2−アミノエチルコハク酸イミドなどが用いられる。
【0287】
エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物は、1分子中に重合可能な不飽和結合およびエポキシ基を少なくとも1個以上有するモノマーであり、このようなエポキシ基含有エチレン性不飽和化合物としては、具体的には、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなど、
マレイン酸のモノおよびジグリシジルエステル、フマル酸のモノおよびジグリシジルエステル、クロトン酸のモノおよびジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸のモノおよびジグリシジルエステル、イタコン酸のモノおよびジグリシジルエステル、ブテントリカルボン酸のモノおよびジグリシジルエステル、シトラコン酸のモノおよびジグリシジルエステル、エンド−シス−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸(ナジック酸TM)のモノおよびジグリシジルエステル、エンド−シス−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−メチル−2,3−ジカルボン酸(メチルナジック酸TM)のモノおよびジグリシジルエステル、アリルコハク酸のモノおよびジグリシジルエステルなどのジカルボン酸モノおよびジアルキルグリシジルエステル(モノグリシジルエステルの場合のアルキル基の炭素数1〜12)、p−スチレンカルボン酸のアルキルグリシジルエステル、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、3,4−エポキシ−1−ブテン、3,4−エポキシ−3−メチル−1−ブテン、3,4−エポキシ−1−ペンテン、3,4−エポキシ−3−メチル−1−ペンテン、5,6−エポキシ−1−ヘキセン、ビニルシクロヘキセンモノオキシドなどを例示することができる。
【0288】
芳香族ビニル化合物としては、下記式で表わされる化合物が挙げられる。
【0289】
【化50】
【0290】
上記式において、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜3のアルキル基を表わし、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基およびイソプロピル基を挙げることができる。また、R3は炭素原子数1〜3の炭化水素基またはハロゲン原子を表わし、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基およびイソプロピル基並びに塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子などを挙げることができる。また、nは通常は0〜5、好ましくは1〜5の整数を表す。
【0291】
このような芳香族ビニル化合物の具体的な例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−クロロスチレン、m−クロロスチレンおよびp−クロロメチルスチレン、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、5−エチル−2−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、2−イソプロペニルピリジン、2−ビニルキノリン、3−ビニルイソキノリン、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドンなどを挙げることができる。
【0292】
不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ノルボルネンジカルボン酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸などの不飽和カルボン酸、またはこれらの酸無水物あるいはこれらの誘導体(例えば酸ハライド、アミド、イミド、エステルなど)が挙げられる。具体的な化合物の例としては、塩化マレニル、マレニルイミド、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物、マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジメチル、シトラコン酸ジエチル、テトラヒドロフタル酸ジメチル、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸ジメチル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メタクリル酸アミノエチルおよびメタクリル酸アミノプロピルなどを挙げることができる。これらの中では、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジルメタクリレート、メタクリル酸アミノプロピルが好ましい。
【0293】
ビニルエステル化合物の例としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n−酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ラウリル酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、p−t−ブチル安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニルなどを挙げることができる。
【0294】
上記極性モノマーは、上記エチレン系共重合体ゴム100重量部に対して、通常は、0.1〜100重量部、好ましくは0.5〜80重量部の量で使用される。
【0295】
ラジカル開始剤としては、有機過酸化物あるいはアゾ化合物などを挙げることができる。
有機過酸化物の具体的な例としては、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)バラレート、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイドおよび2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、m−トルイルパーオキサイドなどを挙げることができる。また、アゾ化合物としてはアゾイソブチロニトリル、ジメチルアゾイソブチロニトリルなどを挙げることができる。
【0296】
このようなラジカル開始剤は、上記エチレン系共重合体ゴム100重量部に対して、一般には、0.001〜10重量部の量で使用されることが望ましい。
ラジカル開始剤は、そのままエチレン系共重合体ゴムおよび極性モノマーと混合して使用することもできるが、このラジカル開始剤を少量の有機溶媒に溶解して使用することもできる。ここで使用される有機溶媒としては、ラジカル開始剤を溶解し得る有機溶媒であれば特に限定することなく使用することができる。このような有機溶媒としては、ベンゼン、トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナンおよびデカンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンおよびデカヒドロナフタレンのようなの脂環族炭化水素系溶媒;クロルベンゼン、ジクロルベンゼン、トリクロルベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素およびテトラクロルエチレンなどの塩素化炭化水素;メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノールおよびtert−ブタノールなどのアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;酢酸エチルおよびジメチルフタレートなどのエステル系溶媒;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジ−n−アミルエーテル、テトラヒドロフランおよびジオキシアニソールのようなエーテル系溶媒を挙げることができる。
【0297】
また本発明において、エチレン系共重合体ゴムをグラフト変性するに際して、還元性物質を用いてもよい。還元性物質は、得られるグラフト変性エチレン系共重合体ゴムにおけるグラフト量を向上させる作用を有する。
【0298】
還元性物質としては、鉄(II)イオン、クロムイオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、パラジウムイオン、亜硫酸塩、ヒドロキシルアミン、ヒドラジンなどのほか、−SH、−SO3H、−NHNH2、−COCH(OH)−などの基を含む化合物が挙げられる。
【0299】
このような還元性物質としては、具体的には、塩化第一鉄、重クロム酸カリウム、塩化コバルト、ナフテン酸コバルト、塩化パラジウム、エタノールアミン、ジエタノールアミン、N,N−ジメチルアニリン、ヒドラジン、エチルメルカプタン、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などが挙げられる。
【0300】
上記の還元性物質は、上記のエチレン系共重合体ゴム100重量部に対して、通常は、0.001〜5重量部、好ましくは0.1〜3重量部の量で使用される。エチレン系共重合体ゴムのグラフト変性は、従来公知の方法で行うことができ、例えばエチレン系共重合体ゴムを有機溶媒に溶解し、次いで極性モノマーおよびラジカル開始剤などを溶液に加え、70〜200℃、好ましくは80〜190℃の温度で、0.5〜15時間、好ましくは1〜10時間反応させることにより行われる。
【0301】
エチレン系共重合体ゴムをグラフト変性する際に用いられる有機溶媒は、エチレン系共重合体ゴムを溶解し得る有機溶媒であれば特に限定することなく使用することができる。
【0302】
このような有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素系溶媒などが挙げられる。
【0303】
また、押出機などを使用して、無溶媒で、エチレン系共重合体ゴムと極性モノマーとを反応させて、グラフト変性エチレン系共重合体ゴムを製造することができる。反応温度は、通常エチレン系共重合体ゴムの融点以上、具体的には120〜250℃の範囲である。このような温度条件下における反応時間は、通常0.5〜10分間である。
【0304】
このようにして調製されたグラフト変性エチレン系共重合体ゴム中における極性モノマーから誘導されるグラフト基のグラフト量は、通常は0.1〜50重量%、好ましくは0.2〜30重量%の範囲内にある。
【0305】
このようにして得られた変性エチレン系共重合体ゴムは、金属および極性樹脂との接着性に優れる。また、該変性エチレン系共重合体ゴムを極性樹脂とブレンドすることにより、その耐衝撃性、低温耐衝撃性を改良することができる。
【0306】
また変性エチレン系共重合体ゴム(変性エチレン系ランダム共重合体)を成型して得られた成形体では、その成形体表面への印刷性、塗装性に優れている。また、ポリオレフィンにガラス繊維、無機化合物などの充填剤と共に該変性エチレン系共重合体ゴム(変性エチレン系ランダム共重合体)をブレンドすることにより、充填剤の分散性が改良された樹脂組成物を得ることができる。このようにすれば、充填剤を配合する場合の利点が保持され、しかも機械強度が向上した樹脂組成物を得ることができる。
【0307】
[加硫可能なゴム組成物]
上記のようなエチレン系共重合体ゴムを含有する本発明に係るゴム組成物は、加硫可能なゴム組成物であり(以下、加硫可能なゴム組成物ともいう)、未加硫のままでも用いることもできるが、加硫物として用いるとより一層優れた特性を発現することができる。
【0308】
本発明に係る加硫可能なゴム組成物は、加硫剤を使用して加熱する方法、あるいは加硫剤を用いずに電子線を照射する方法により加硫することができる。
本発明に係る加硫可能なゴム組成物は、エチレン系共重合体ゴムとともに目的に応じて他の成分を適宜含有することができるが、エチレン系共重合体ゴムを、全ゴム組成物中20重量%以上好ましくは25重量%以上の量で含有していることが望ましい。ゴム組成物中におけるエチレン系共重合体ゴムの含有量がこの範囲にある場合に、ゴム組成物としての良好な物性が発現する。
【0309】
また他の成分としては、たとえば補強剤、無機充填剤、軟化剤、酸化防止剤、耐光安定剤などの安定剤、加工助剤、さらには発泡剤、発泡助剤などの発泡系を構成する化合物、可塑剤、着色剤、難燃剤、他のゴム配合剤などの種々の薬剤などを挙げることができる。他の成分は、用途に応じてその種類、含有量が適宜選択されるが、これらのうちでも特に補強剤、無機充填剤、軟化剤などを用いることが好ましく、以下に、より具体的に示す。
【0310】
補強剤および無機充填剤
補強剤としては、具体的に、SRF、GPF、FEF、MAF、HAF、ISAF、SAF、FT、MTなどのカーボンブラック、これらカーボンブラックをシランカップリング剤などで表面処理したもの、シリカ、活性化炭酸カルシウム、微粉タルク、微粉ケイ酸などが挙げられる。
【0311】
無機充填剤としては、具体的に、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレーなどが挙げられる。
本発明に係るゴム組成物は、補強剤および/または無機充填剤を、エチレン系共重合体ゴム100重量部に対して、通常300重量部以下、好ましくは10〜300重量部、さらに好ましくは10〜200重量部の量で含有することができる。
【0312】
このような量の補強剤を含有するゴム組成物からは、引張強度、引裂強度、耐摩耗性などの機械的性質が向上された加硫ゴムが得られる。
また無機充填剤を上記のような量で配合すると、加硫ゴムの他の物性を損なうことなく硬度を高くすることができ、またコストを引き下げることができる。
【0313】
軟化剤
軟化剤としては、従来ゴムに配合されている軟化剤が広く用られ、具体的に、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリンなどの石油系軟化剤、
コールタール、コールタールピッチなどのコールタール系軟化剤、
ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、ヤシ油などの脂肪油系軟化剤、
トール油、サブ、蜜ロウ、カルナウバロウ、ラノリンなどのロウ類、
リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛などの脂肪酸および脂肪酸塩、
石油樹脂、アタクチックポリプロピレン、クマロンインデン樹脂などの合成高分子物質などが用いられる。
【0314】
これらのうちでも石油系軟化剤が好ましく、特にプロセスオイルが好ましい。本発明に係るゴム組成物は、上記のような軟化剤を、エチレン系共重合体ゴム100重量部に対して通常200重量部以下、好ましくは10〜200重量部、さらに好ましくは10〜150重量部、特に好ましくは10〜100重量部の量で含有することができる。
【0315】
酸化防止剤
本発明に係るゴム組成物は、酸化防止剤を含有していると材料寿命を長くすることができて好ましい。この酸化防止剤としては、具体的に、
フェニルナフチルアミン、4,4’−(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンなどの芳香族第二アミン系安定剤、
2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどのフェノール系安定剤、
ビス[2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル]スルフィドなどのチオエーテル系安定剤、
2−メルカプトベンゾイミダゾールなどのベンゾイミダゾール系安定剤、
ジブチルジチオカルバミン酸ニッケルなどのジチオカルバミン酸塩系安定剤、
2,2,4−トリメチル−1,2− ジヒドロキノリンの重合物などのキノリン系安定剤などが挙げられる。これらは2種以上併用することもできる。
【0316】
このような酸化防止剤は、エチレン系共重合体ゴム100重量部に対して、5重量部以下好ましくは3重量部以下の量で適宜用いることができる。
加工助剤
加工助剤としては、一般的に加工助剤としてゴムに配合されるものを広く使用することができる。具体的には、リシノール酸、ステアリン酸、パルチミン酸、ラウリン酸などの酸、これら高級脂肪酸の塩たとえばステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムまたはエステル類などが挙げられる。
【0317】
加工助剤は、エチレン系共重合体ゴム100重量部に対して、10重量部以下好ましくは5重量部以下の量で適宜用いることができる。
加硫剤
また本発明に係るゴム組成物を加熱により加硫する場合には、ゴム組成物中に通常加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤などの加硫系を構成する化合物を配合する。
【0318】
加硫剤としては、イオウ、イオウ系化合物および有機過酸化物などを用いることができる。
イオウの形態は特に限定されず、たとえば粉末イオウ、沈降イオウ、コロイドイオウ、表面処理イオウ、不溶性イオウなどを用いるこができる。
【0319】
イオウ系化合物としては、具体的には、塩化イオウ、二塩化イオウ、高分子多硫化物、モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジメチルジチオカルバミン酸セレンなどが挙げられる。
【0320】
また有機過酸化物としては、具体的には、
ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−アミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシン)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキサン、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、t−ブチルヒドロパーオキサイドなどのアルキルパーオキサイド類、
t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシフタレートなどのパーオキシエステル類、
ジシクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類が挙げられる。これらは2種以上組合わせて用いてもよい。
【0321】
これらのうちでは、1分半減期温度が130℃〜200℃である有機過酸化物が好ましく、具体的にジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−アミルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイドなどが好ましい。
【0322】
本発明では、上記のような各種加硫剤のうちでも、イオウまたはイオウ系化合物、特にイオウを用いると優れた特性のゴム組成物を得ることができるため好ましい。
【0323】
加硫剤がイオウまたはイオウ系化合物であるときには、エチレン系共重合体ゴム100重量部に対して、0.1〜10重量部好ましくは0.5〜5重量部の量で用いることができる。
【0324】
また加硫剤が有機過酸化物であるときには、エチレン系共重合体ゴム100グラムに対して、0.0003〜0.05モル好ましくは0.001〜0.03モルの量で用いることができる。
【0325】
加硫促進剤
また加硫剤としてイオウまたはイオウ化合物を用いる場合には、加硫促進剤を併用することが好ましい。
【0326】
加硫促進剤としては、具体的に、
N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドなどのスルフェンアミド系化合物、
2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、2−(2,4−ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2−(2,6−ジエチル−4−モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィドなどのチアゾール系化合物、
ジフェニルグアニジン、トリフェニルグアニジン、ジオルソニトリルグアニジン、オルソニトリルバイグアナイド、ジフェニルグアニジンフタレートなどのグアニジン化合物、
アセトアルデヒド−アニリン反応物、ブチルアルデヒド−アニリン縮合物、ヘキサメチレンテトラミン、アセトアルデヒドアンモニアなどのアルデヒドアミンまたはアルデヒド−アンモニア系化合物、
2−メルカプトイミダゾリンなどのイミダゾリン系化合物、
チオカルバニリド、ジエチルチオユリア、ジブチルチオユリア、トリメチルチオユリア、ジオルソトリルチオユリアなどのチオユリア系化合物、
テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)などのチウラム系化合物、
ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ブチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、ジメチルジチオカルバミン酸テルルなどのジチオ酸塩系化合物、
ジブチルキサントゲン酸亜鉛などのザンテート系化合物、
亜鉛華などが挙げられる。
【0327】
上記のような加硫促進剤は、エチレン系共重合体ゴム100重量部に対して、0.1〜20重量部好ましくは0.2〜10重量部の量で用いることが望ましい。
加硫助剤
また加硫剤として有機過酸化物を用いる場合には、加硫助剤(多官能性モノマー)を有機過酸化物1モルに対して0.5〜2モル好ましくはほぼ等モルの量で併用することが好ましい。
【0328】
加硫助剤としては、具体的には、イオウ、
p−キノンジオキシムなどのキノンジオキシム系化合物、
トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレートなどの(メタ)アクリレート系化合物、
ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレートなどのアリル系化合物、
m−フェニレンビスマレイミドなどのマレイミド系化合物、
ジビニルベンゼンなどが挙げられる。
【0329】
発泡剤
本発明に係るゴム組成物は、発泡剤、発泡助剤などの発泡系を構成する化合物を含有する場合には、発泡成形することができる。
【0330】
発泡剤としては、一般的にゴムを発泡成形する際に用いられる発泡剤を広く使用することができ、具体的には、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウムなどの無機発泡剤、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソテレフタルアミド、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミンなどのニトロソ化合物、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウムアゾジカルボキシレートなどのアゾ化合物、ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホニルヒドラジドなどのスルホニルヒドラジド化合物、カルシウムアジド、4,4−ジフェニルジスルホニルアジド、p−トルエンスルホルニルアジドなどのアジド化合物が挙げられる。
【0331】
これらのうちでは、ニトロソ化合物、アゾ化合物、アジド化合物が好ましい。発泡剤は、エチレン系共重合体ゴム100重量部に対して、0.5〜30重量部好ましくは1〜20重量部の量で用いることができる。このような量で発泡剤を含有するゴム組成物からは、見かけ比重0.03〜0.8g/cm3 の発泡体を製造することができる。
【0332】
また発泡剤とともに発泡助剤を用いることもでき、発泡助剤を併用すると、発泡剤の分解温度の低下、分解促進、気泡の均一化などの効果がある。このような発泡助剤としては、サリチル酸、フタル酸、ステアリン酸、しゅう酸などの有機酸、尿素またはその誘導体などが挙げられる。
【0333】
発泡助剤は、エチレン系共重合体ゴム100重量部に対して0.01〜10重量部好ましくは0.1〜5重量部の量で用いることができる。
他のゴム
本発明に係るゴム組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、公知の他のゴムを含んでいてもよい。
【0334】
このような他のゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)などのイソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレン− ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル− ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)などの共役ジエン系ゴムを挙げることができる。
【0335】
さらに従来公知のエチレン・α−オレフィン系共重合ゴムを用いることもでき、たとえばエチレン・プロピレンランダム共重合体(EPR)、前記のエチレン系共重合体ゴム以外のエチレン・α−オレフィン・ポリエン共重合体、例えばEPDMなどを用いることができる。
【0336】
本発明に係る加硫可能なゴム組成物は、エチレン系共重合体ゴムおよび上記のような他の成分から、一般的なゴム配合物の調製方法によって調製することができる。たとえばバンバリーミキサー、ニーダー、インターミックスのようなインターナルミキサー類を用いて、エチレン系共重合体ゴムおよび他の成分を、80〜170℃の温度で3〜10分間混練した後、必要に応じて加硫剤、加硫促進剤または加硫助剤などを加えて、オープンロールなどのロ−ル類あるいはニーダーを用いて、ロール温度40〜80℃で5〜30分間混練した後、分出しすることにより調製することができる。このようにして通常リボン状またはシート状のゴム組成物(配合ゴム)が得られる。上記のインターナルミキサー類での混練温度が低い場合には、加硫剤、加硫促進剤、発泡剤などを同時に混練することもできる。
【0337】
[加硫ゴム]
本発明に係るゴム組成物の加硫物(加硫ゴム)は、上記のような未加硫のゴム組成物を、通常、押出成形機、カレンダーロール、プレス、インジェクション成形機、トランスファー成形機など種々の成形法よって所望形状に予備成形し、成形と同時にまたは成形物を加硫槽内に導入して加熱するか、あるいは電子線を照射することにより加硫して得ることができる。
【0338】
上記ゴム組成物を加熱により加硫する場合には、熱空気、ガラスビーズ流動床、UHF(極超短波電磁波)、スチーム、LCM(熱溶融塩槽)などの加熱形態の加熱槽を用いて、150〜270℃の温度で1〜30分間加熱することが好ましい。
【0339】
また加硫剤を使用せずに電子線照射により加硫する場合は、予備成形されたゴム組成物に、0.1〜10MeV、好ましくは0.3〜2MeVのエネルギーを有する電子線を、吸収線量が0.5〜35Mrad、好ましくは0.5〜10Mradになるように照射すればよい。
【0340】
成形・加硫に際しては、金型を用いてもよく、また金型を用いないでもよい。金型を用いない場合には、ゴム組成物は通常連続的に成形・加硫される。
上記のように成形・加硫された加硫ゴムは、ウェザーストリップ、ドアーグラスランチャンネル、窓枠、ラジエータホース、ブレーキ部品、ワイパーブレードなどの自動車工業部品、ゴムロール、ベルト、パッキン、ホースなどの工業用ゴム製品、アノ−ドキャップ、グロメットなどの電気絶縁材、建築用ガスケット、土木用シートなどの土木建材用品、ゴム引布などの用途に用いることができる。
【0341】
また発泡剤を含有するゴム配合物を加熱発泡させて得られる加硫発泡体は、断熱材、クッション材、シーリング材などの用途に用いることができる。
【0342】
【発明の効果】
本発明によれば、耐候性、耐熱性、耐オゾン性に優れ、加工性に優れ、特に加硫速度が速く、加硫速度と発泡剤の分解速度のバランスが取りやすく、加硫後の機械的特性に優れているようなエチレン系共重合体ゴムが得られる。
【0343】
また本発明によれば、上記のような優れた特性を有するエチレン系共重合体ゴムを含有するゴム組成物が得られる。
また本発明によればこのようなエチレン系共重合体ゴムの製造方法が提供される。
【0344】
【実施例】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何等限定されるものではない。
【0345】
なお、以下のポリマーの製造例においては、例えば、EMHN{:5−(2−エチリデン−6−メチル−5−ヘプテニル)−2−ノルボルネン}として、下記モノマー合成例で得られるEMHN(真のEMHN)の他に、少量の副生物である[5−(3,7−ジメチル−2,6−オクタジエニル)]−2−ノルボルネンを含有する「EMHN含有物」などを用いており、特にその趣旨に反しない限り、単にEMHNなどというときは、真のEMHNと副生成物との混合物(EMHN含有物)を意味し、またエチレン・プロピレン・EMHN・ENB共重合体などと言うときは、このEMHN単位には、真のEMHN単位と副生成物由来の単位とが含まれているもの(EMHN含有単位)を意味する場合がある。
【0346】
なお、主成分のEMHN由来の構成単位[II’]と、副生成物由来の構成単位[II−a’]の割合(モル比)は、共重合終了後の未反応モノマーを含む重合液を回収し、各未反応モノマーの量をガスクロマトグラフィー(GC)により定量することにより、共重合体中の各成分単位量(例:ジエン単位、トリエン(例:EMHN)単位、トリエン副生成物単位など)の含有量を求めた。
【0347】
実施例1〜3、比較例1の加硫ゴムの物性は、下記のようにして測定した。
[1]引張試験
加硫ゴムシートを打抜いて、JIS K 6301(1989年)に記載されている3号形ダンベル試験片を調製し、該試験片を用いて同じくJIS K 6301第3項に規定されている方法に従い、測定温度25℃、引張速度500mm/分の条件で引張試験を行い、100%モジュラス(M100)、200%モジュラス(M200)、300%モジュラス(M300)、引張破断点応力TB、引張破断点伸びEBを測定した。
[2]硬さ試験
硬さ試験は、JIS K 6301(1989年)に準拠して、スプリング硬さHs(JIS A 硬度)を測定した。
【0348】
実施例4、比較例2のスポンジゴムの物性は、下記のようにして測定した。
[3]引張試験
加硫したチューブ状のスポンジの上部を長さ方向に、JIS K 6301(1989年)に記載の3号型ダンベルで打ち抜いて試験片を得た。該試験片を用いて同じくJIS K 6301第3項に規定されている方法に従い、測定温度25℃、引張速度500mm/分の条件で引張試験を行い、引張破断点応力TBと引張破断点伸びEBを測定した。
[4]比重測定
加硫したチューブ状スポンジの上部から20mm×20mmの試験片を打ち抜き、表面の汚れをアルコールで拭き取る。この試験片を25℃雰囲気下で自動比重計(東洋精機製作所製:M−1型)に取り付け、空気中と純水中の質量の差から比重測定を行った。
[5]表面粗度の測定
スポンジゴムの表面粗度は、触針式表面粗度測定器を用いて、スポンジゴムの上面の凹凸を数値化して表した。実際には、上記のように得られたチューブ状スポンジゴムを長さ50mmに切断し、抜き取り部分のうちで「最高から10番目までの凸部分の高さの総和(h1)」から、「最低から10番目までの凹部分の高さの総和(h2)」を差し引いた値(h1−h2)を10で除して算出した値を、スポンジゴムの表面粗度とした。
【0349】
【参考例1】
[触媒の調製]
アルゴン雰囲気下、スターラー攪拌子を入れた50mlフラスコ中に、無水塩化コバルト(II)43mg(0.33ミリモル)、1,2−ビス(ジフェニルホスフィ ノ)エタン263mg(0.66ミリモル)および無水デカン23mlを入れ、 25℃で2時間攪拌した。次いで25℃で、濃度1モル/リットルのトリエチルアルミニウム/トルエン溶液 17ml(トリエチルアルミニウム17ミリモル)を加えて2時間攪拌することにより触媒を調製した。
【0350】
[ 4− エチリデン −8− メチル −1,7− ノナジエン(EMN)の合成]
【0351】
【化51】
【0352】
300mlステンレス(SUS316)製オートクレーブ中に、アルゴン雰囲気下、7−メチル−3−メチレン−1,6− オクタジエン(β−ミルセン)100g(7 34ミリモル)と上記のように調製された触媒を全量加えて密閉した。次いでオートクレーブにエチレンボンベを直結して、エチレンを導入して、オートクレーブ内を35kg/cm2 まで加圧した。次いで95℃に加熱して、消費されたエチレンを間欠的に5回追加して、合計で15時間反応を行った。
【0353】
反応終了後にオートクレーブを冷却してから開放し、得られた反応混合物を100mlの水中に注いで有機層と水層とに分離した。分離された有機層を、エバポレータで低沸点物を除去した後、20段の精密減圧蒸留を行った。
【0354】
目的物であるEMNが83g得られた(収率69%)。また反応副生物として、5,9−ジメチル−1,4,8− デカトリエンが16g生成した(収率13%)。
上記で得られた4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン(EMN)の分析結果を以下に示す。
【0355】
(i) 沸 点:103〜105℃/30mmHg
(ii) GC−MS(ガスクロマトグラフィ−質量分析):m/z 164(M+分子イオンピーク)、149、123、95、69、41、27
(iii) 赤外線吸収スペクトル(ニート、cm−1)
吸収ピーク:3080、2975、2925、2850、1670、1640、1440、1380、1235、1110、995、910、830
(iv) 1H−NMRスペクトル(溶媒:CDCl3 )
吸収ピークを下記に示す。
【0356】
【表1】
【0357】
【参考例2】
{5 − (2 − エチリデン − 6 − メチル − 5 − ヘプテニル) − 2 − ノルボルネン[:EMHN、先に例示した鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物(11)の合成]}
参考例1で得られた4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン(EMN)240.7g(1.156モル)を1リットル容量のステンレス製オートクレーブに入れ、2kg/cm2の窒素加圧下、190℃の温度にて加熱攪拌しながら、シクロペンタジエン153.0g(2.314モル)を5時間かけて加えた。
【0358】
この後、さらに、190℃の温度にて1時間加熱攪拌し、その後、室温まで冷却し、オートクレーブを開放した。
このようにして得られた反応混合物を減圧留去して、低沸点留分を除去した後、残留物について、40段の精密減圧蒸留を行って、目的とするEMHN{:5−(2−エチリデン−6−メチル−5−ヘプテニル)−2−ノルボルネン}53.8gを得た。収率は、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン基準で20.2%であった。
【0359】
また、副生成物である[5−(3,7−ジメチル−2,6−オクタジエニル)]−2−ノルボルネンは、10.1g得られた。よって、EMHNと副生生物との比率は、5.33/1であった。なお、この比(EMHN/副生成物)は、ガスクロマトグラフィーにより求めた。
【0360】
EMHNの物理化学的データを以下に示す。
(1)沸点:138℃/3mmHg
(2)ガスクロマトグラフィー−質量分析:
m/z 230(M+)、215、187、123、91、69
ガスクロマトグラフィー測定条件:
カラム:J&W サイエンティフィック社,キャピラリカラムDB−1701(0.25mm×30m)
気化温度:250℃
カラム温度:40℃で5分間保持後、200℃まで5℃/分で昇 温
(3)赤外線吸収スペクトル(ニート、cm−1)
3050、2960、2925、2850、1660、1630、1570、1440、1375、1345、1330、1250、1220、1100、980、925、900、820、780、715。
(4)プロトンNMRスペクトル(CDCl3溶媒)
吸収ピークを下記に示す。
【0361】
【表2】
【0362】
【実施例1】
[エチレン − プロピレン − EMHN − ENB四元共重合の合成]
撹拌翼を備えた2リットルのガラス製重合器を用いて、連続的にエチレン、プロピレン、5−(2−エチリデン−6−メチル−5−ヘプテニル)−2−ノルボルネン(EMHN)含有物および5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)との四元共重合を行った。
【0363】
すなわち、まず重合器上部から重合器内に、オキシバナジウムモノエトキシジクロリドのヘキサン溶液(V:0.8ミリモル/リットル)を毎時0.5リットル、エチルアルミニウムセスキクロリドのヘキサン溶液(Al:8ミリモル/リットル)を毎時0.5リットル、EMHN含有物とENBの混合ヘキサン溶液(7.0ミリリットル/リットル、EMHN含有物/ENB=1.33(体積比))を毎時1リットル、それぞれ連続的に供給した。
【0364】
また、重合器上部から重合器内に、エチレンを毎時150リットル、プロピレンを毎時150リットル、水素を毎時8リットル、それぞれ連続的に供給した。この共重合反応は、30℃でかつ、平均滞留時間が30分(すなわち重合スケール1リットル)となるように行った。
【0365】
ポリマー溶液は連続的に重合器下部から抜き出し、メタノールを少量添加することにより重合反応を停止させた。次いで、希塩酸で2回、水で2回洗浄することにより触媒成分を除去した後、得られたポリマー溶液を大過剰のメタノール中に投入することによりポリマーを析出させ、濾過により回収した。次いで、ポリマーに安定剤[ポリマー約100g当たりIrganox 1010(チバガイギー製)30mgおよびMark 329k(旭電化製)60mg]を混合した後、120℃で減圧下に一晩乾燥した。
【0366】
以上の操作で、エチレン・プロピレン・EMHN含有物・ENBの4元共重合体が毎時70gの量で得られた。
得られた共重合体は、エチレン単位が76.8モル%で含有され、プロピレン単位が21.4モル%で含有され、エチレン単位とプロピレン単位とのモル比(エチレン単位/プロピレン単位)が、78.2/21.8であり、EMHN含有物単位が0.85モル%で含有され、ENB単位が0.94モル%の量で含有され、EMHN含有物単位とENB単位とのモル比(EMHN含有物単位/ENB単位)が0.90であり、極限粘度[η]が2.6dl/gであり、ヨウ素価が20.4であった。また、共重合体中におけるEMHN含有物単位(混合単位)0.85モル%は、0.60モル%の「真のEMHN構成単位」と、0.25モル%の副生成物{[5−(3,7−ジメチル−2,6−オクタジエニル)]−2−ノルボルネン}構成単位とから成っていた(0.85モル%=0.60モル%+0.25モル%)。
【0367】
共重合条件などを表3〜4に示す。
[加硫性ゴム組成物の調製]
次いで、上記のようにして得られたエチレン・プロピレン・EMHN含有物・ENB共重合体、および他の成分を表5に示すような配合量で用いた配合ゴム(組成物)を調製した。
【0368】
また、この加硫性ゴム組成物からなる加硫物を調整した。
すなわち、
▲1▼エチレン・プロピレン・EMHN含有物・ENB共重合体:100重量部、▲2▼亜鉛華1号:5重量部、▲3▼ステアリン酸:1重量部、
▲4▼カーボンブラック[N330,「シースト3」東海カーボン(株)製]:80重量部、
▲5▼オイル[「サンセン4240」サンオイル(株)製]:50重量部を、1.7リットルのバンバリーミキサーを用いて混練した。
【0369】
さらに上記混練物に、6インチロール(F/B=50/50℃)を用いて
▲6▼加硫促進剤[加硫促進剤A:商品名「ノクセラーTT」大内新興化学(株)製,化合物名:テトラメチルチウラムジスルフィド:1.0重量部と、
▲7▼加硫促進剤B:商品名「ノクセラーM」大内新興化学(株)製:化合物名:2−メルカプトベンゾチアゾール:0.5重量部]、および▲8▼硫黄:1.5重量部を添加して混練し、配合ゴムを得た。
【0370】
この配合ゴムの160℃での加硫速度(T90(分))を測定したところ、加硫速度は、6.5となった。
なお、加硫速度は、JSRキュラストメーター3号(日本合成ゴム(株)社製)を用いて測定し、加硫曲線から得られるトルクの最低値MLと最高値MHの差をME(MH−ML=ME)とし、90%ME値に到達する時間:T90(分)をもって評価した。
【0371】
[加硫ゴム]
また、表5に示す配合組成の未加硫の配合ゴムを160℃でT90(分)+5分の条件でプレス成形し、加硫ゴム物性を測定したところ、100%モジュラス(M100)は27となり、200%モジュラス(M200)は52となり、300%モジュラス(M300)は87となり、引張破断点応力(TB)は169となり、引張破断点伸び(EB)は550%となり、JIS A硬度(Hs)は65となった。
【0372】
結果を併せて表6に示す。
なお、加硫ゴムの物性は、JIS K6301に準拠して測定した。
また、共重合条件、重合結果を併せて表3〜4に示す。
【0373】
【実施例2】
原料供給量、共重合条件等を表3〜4に示すように変えた以外は、実施例1と同様にして共重合体を製造した。
【0374】
この共重合体を用いて実施例1と同様に加硫性ゴム配合物および加硫ゴムを調製して、実施例1と同様にして求めた加硫速度(T90分)は6.6であり、
100%モジュラス(M100)は21となり、200%モジュラス(M200)は42となり、300%モジュラス(M300)は72となり、引張破断点応力(TB)は155となり、引張破断点伸び(EB)は570%となり、JIS A硬度(Hs)は64となった。
【0375】
結果を併せて表6に示す。
【0376】
【実施例3】
原料供給量、共重合条件等を表3〜4に示すように変えた以外は、実施例1と同様にして共重合体を製造した。
【0377】
この共重合体を用いて実施例1と同様に加硫性ゴム配合物および加硫ゴムを調製して、実施例1と同様にして求めた加硫速度(T90分)は6.2であり、
100%モジュラス(M100)は23となり、200%モジュラス(M200)は45となり、300%モジュラス(M300)は75となり、引張破断点応力(TB)は151となり、引張破断点伸び(EB)は510%となり、JIS A硬度(Hs)は65となった。
【0378】
結果を併せて表6に示す。
【0379】
【比較例1】
原料供給量、共重合条件等を表3〜4に示すように変えた以外は、実施例1と同様にして共重合体を製造した。
【0380】
この共重合体を用いて実施例1と同様に加硫性ゴム配合物および加硫ゴムを調製して、実施例1と同様にして求めた加硫速度(T90分)は11.4であり、
100%モジュラス(M100)は24となり、200%モジュラス(M200)は59となり、300%モジュラス(M300)は110となり、引張破断点応力(TB)は159となり、引張破断点伸び(EB)は520%となり、JIS A硬度(Hs)は66となった。
【0381】
結果を併せて表6に示す。
なお、表3〜4中、「L」あるいは「l」:リットル、h:時間を示す。
V:バナジウム、SQ:エチルアルミニウムセスキクロリド、
ポリエン(iii)(:EMHN等の鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物)、ジエン(iv)(:1分子中に重合可能な二重結合を1個有する非共役ジエン)は、それぞれ重合系内の濃度を示す。
【0382】
【表3】
【0383】
表中、L:リットル、h:時間を示す。
V、SQ、ポリエン(iii)、ジエン(iv)は重合系内の濃度を示す。
また、SQは、エチルアルミニウムセスキクロリドを示す。
【0384】
【表4】
【0385】
【表5】
【0386】
【表6】
【0387】
【実施例4】
実施例1で得られたエチレン・プロピレン・EMHN含有物・ENB共重合体および他の成分を表7に示すような配合量で用いた配合ゴム(組成物)の加硫物を調製した。
【0388】
すなわち、該共重合体、活性亜鉛華、ステアリン酸、カーボンブラック、オイル、ジメチルジステアリルアンモニウムクロリド、を1.7リットルのバンバリーミキサーを用いて混練した。さらに14インチロール(F/B=50/50℃)を用いて、加硫剤および他の成分を添加して混練し、配合ゴムを得た。
【0389】
次いで、この配合ゴムをチューブ状ダイス(内径10mm、肉厚1mm)を装着した6mm押出機を用いてダイス温度80℃、シリンダー温度60℃の条件で押出してチューブ状に成形した。この成形体を250℃の熱空気加硫槽中で6分間加硫を行って、スポンジゴムを得た。
【0390】
該スポンジゴムの物性を測定した。
結果を表8に示す。
【0391】
【比較例2】
実施例4において、エチレン・プロピレン・EMHN含有物・ENB共重合体に代えて、比較例1で得られた共重合体(エチレン・プロピレン・ENB共重合体)を用いた以外は、実施例4と同様にして配合ゴムを調製し、次いでスポンジを得て、実施例4と同様にスポンジゴムの物性を測定した。
【0392】
結果を表8に示す。
スポンジゴムを製造する上で、加硫速度と発泡剤の発泡速度のバランスをとることが必要である。
【0393】
例えば、加硫速度が発泡速度に比べて遅すぎると、発泡して出てきた気体がゴムより抜けでて、得られるスポンジゴムの比重が下がらないだけでなく、スポンジゴムの表面の平滑性が失われてしまい、また逆に、加硫速度が速すぎると、発泡の前に加硫が進行してしまい、低比重のスポンジが得られない。実施例4はそのバランスがとれている例であり、比較例2はそのバランスがとれていない例である。
【0394】
【表7】
【0395】
【表8】
Claims (5)
- (i)エチレンと、
(ii)炭素数3〜20のα−オレフィンと、
(iii)下記一般式[I]で表される少なくとも1種の鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物と、
(iv)1分子中に重合可能な二重結合を1個有する非共役ジエンと、のランダム共重合体であって、
(a)エチレンから導かれる単位(i)と、炭素数3〜20のα−オレフィンから導かれる単位(ii)とを、95/5〜40/60〔(i)/(ii)〕のモル比で含有し、
(b)下記一般式[I]で表される少なくとも1種の鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物から導かれる単位(iii)を0.1〜10モル%の量で含有し、
(c)1分子中に重合可能な二重結合を1個有する非共役ジエンから導かれる単位(iv)を0.1〜10モル%の量で含有し、
(d)135℃デカリン中で測定される極限粘度[η]が、0.1〜10dl/gの範囲にあり、
(e)下記一般式[I]で表される鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物から誘導される単位が下記式[II]で表される構造を有していることを特徴とするエチレン系共重合体ゴム:
一般式[I]:
一般式[II]:
- (i) エチレンと、
(ii)炭素数3〜20のα−オレフィンと、
(iii)上記一般式[I]で表される少なくとも1種の鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物と、
(iv)1分子中に重合可能な二重結合を1個有する非共役ジエンとを、遷移金属化合物(イ)と、
有機アルミニウム化合物および/またはイオン化イオン性化合物(ロ)と、
から形成される触媒の存在下に共重合させることを特徴とする請求項1に記載のエチレン系共重合体ゴムの製造方法。 - (i)エチレンと、
(ii)炭素数3〜20のα−オレフィンと、
(iii)上記式[I]で表される少なくとも1種の鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物、および該鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]に比して少量の下記式[I−a]で表わされる少なくとも1種の鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物と、
(iv)1分子中に重合可能な二重結合を1個有する非共役ジエンと、
のランダム共重合体であって、
(a)エチレンから導かれる単位(i)と、炭素数3〜20のα−オレフィンから導かれる単位(ii)とを、95/5〜40/60〔(i)/(ii)〕のモル比で含有し、(b)上記一般式[I]で表される鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物から誘導される構成単位が上記式[II]で表され、
上記一般式[I−a]で表される鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物から誘導される構成単位が下記一般式[II−a]で表され、
(iii)上記一般式[I]で表される鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物から誘導される構成単位と、該鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I]に比して少量の上記一般式[I−a]で表される鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物から誘導される構成単位とを合計で0.1〜10モル%の量で含有し、
かつ
(c)1分子中に重合可能な二重結合を1個有する非共役ジエンから導かれる単位 (iv)を0.1〜10モル%の量で含有し、
(d)135℃デカリン中で測定される極限粘度[η]が、0.1〜10dl/gの範囲にあることを特徴とするエチレン系共重合体ゴム。 - (i)エチレンと、
(ii)炭素数3〜20のα−オレフィンと、
(iii)上記一般式[I]で表わされる少なくとも1種の鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物、および上記一般式[I−a]で表わされる少なくとも1種の鎖状ポリエン基含有ノルボルネン化合物[I−a]と、
(iv)1分子中に重合可能な二重結合を1個有する非共役ジエンとを、
遷移金属化合物(イ)と、有機アルミニウム化合物および/またはイオン化イオン性化合物(ロ)と、から形成される触媒の存在下に共重合させることを特徴とする請求項3に記載の不飽和性エチレン系共重合体ゴムの製造方法。 - 請求項1または3に記載のエチレン系共重合体ゴムと、
下記(a)、(b)、(c)の内の少なくとも1種以上の成分と、
が含まれていることを特徴とするゴム組成物:
(a)該エチレン系共重合体ゴム100重量部に対して300重量部以下の量の補強剤、
(b)該エチレン系共重合体ゴム100重量部に対して200重量部以下の量の軟化剤、
(c)加硫剤。
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