JP3742497B2 - ポリエン系エラストマー組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエン系エラストマー組成物に関し、さらに詳しくは、強度特性、耐油性、耐候性、耐オゾン性、低温特性および耐動的疲労性(耐屈曲疲労性)に優れた加硫物が得られるような加硫可能なポリエン系エラストマー組成物に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムは、強度、耐油性などの特性に優れていることから、シール材、ホール、ベルト類などの用途に広く用いられている。しかしながら、ニトリルゴムおよび水素化ニトリルゴムは、耐候性、耐オゾン性、低温特性および耐動的疲労性に劣っているため、その製品寿命が短いという問題点がある。
【0003】
また、「日本ゴム協会誌、49 236,241,246(1976)」には、耐候性、耐オゾン性を改良したエチレン・α−オレフィン系共重合体ゴムのブレンドが開示されている。しかしながら、このようなエチレン・α−オレフィン系共重合体ゴムのブレンドは、耐候性、耐オゾン性が改良されているものの、耐動的疲労性が低下したり、あるいは繊維との接着力が低下するなどの問題点がある。
【0004】
このような状況のもと、強度特性、耐油性、耐候性、耐オゾン性、低温特性および耐動的疲労性に優れるとともに、ベルト用途における繊維との接着性に優れた加硫物が得られるような加硫可能がゴム組成物が望まれていた。
【0005】
本発明者らは、上記のような特性を満たす加硫物が得られるような加硫可能がゴム組成物を得るべく鋭意検討した結果、エチレンと、芳香族ビニル化合物と、特定の非共役トリエンまたはテトラエンと、必要に応じてα−オレフィンとから得られる不飽和性オレフィン系共重合体ならびに、ニトリルゴムおよび/または水素化ニトリルゴムからなるポリエン系エラストマー組成物は、上記特性を満たす加硫物が得られることを見出して本発明を完成するに至った。
【0006】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであって、強度特性、耐油性、耐候性、耐オゾン性、低温特性および耐動的疲労性に優れるとともに、繊維との接着性に優れた加硫物が得られるような加硫可能なポリエン系エラストマー組成物を提供することを目的としている。
【0007】
【発明の概要】
本発明に係るポリエン系エラストマー組成物は、
から得られる不飽和性オレフィン系共重合体、および
(B)ニトリルゴムおよび/または水素化ニトリルゴムとからなり、
前記(A)不飽和性オレフィン系共重合体は、エチレン(i)から導かれる構成単位と炭素原子数が3〜20のα−オレフィン(iv)から導かれる構成単位とのモル比(エチレン/α−オレフィン)が100/0〜40/60の範囲にあり、前記(A)不飽和性オレフィン系共重合体と、前記(B)ニトリルゴムおよび/または水素化ニトリルゴムとの重量比((A)/(B))が1/99〜99/1の範囲にあることを特徴としている。
【0008】
【化10】
【0009】
(式中、R1 、R2 およびR3 は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数が1〜8のアルキル基を示し、nは0〜5の整数である。)本発明では、前記ポリエン系エラストマー組成物は、(A)前記不飽和性オレフィン系共重合体と(B)ニトリルゴムおよび/または水素化ニトリルゴムとに加えて、さらに(C)加硫剤、(D)充填材を含んでいてもよい。
【0010】
本発明では、前記(iii)非共役トリエンまたはテトラエンとして、下記一般式(II-a)で表され、かつ該非共役トリエンまたはテトラエンから導かれる構成単位が下記一般式(II-b)で表される化合物および、下記一般式(III-a)で表され、かつ該非共役トリエンまたはテトラエンから導かれる構成単位が下記一般式(III-b)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種の非共役トリエンまたはテトラエンを挙げることができる。
【0011】
【化11】
【0012】
(式中、pおよびqは、互いに同一でも異なっていてもよく、0または1であり(但し、pとqは同時に0ではない)、fは0〜5の整数であり(但し、pとqが共に1の場合は0ではない)、gは1〜6の整数であり、R1 ,R2 ,R3 ,R4 ,R5 ,R6 およびR7 は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数が1〜5のアルキル基を示し、R8 は炭素原子数が1〜5のアルキル基を示し、R9 は水素原子、炭素原子数が1〜5のアルキル基または−(CH2)n−CR10=CR11R12で表される基(ここで、nは1〜5の整数であり、R10およびR11は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数が1〜5のアルキル基を示し、R12は炭素原子数が1〜5のアルキル基を示す)を示す(但し、pとqが共に1の場合、R9 は水素原子または炭素原子数が1〜5のアルキル基である)。)
【0013】
【化12】
【0014】
(式中、p、q、f、g、R1 〜R9 は、前記一般式(II-a)の場合と同じ意味である。)
【0015】
【化13】
【0016】
(式中、p、q、f、g、R1 〜R9 は、前記一般式(II-a)の場合と同じ意味である。)
【0017】
【化14】
【0018】
(式中、p、q、f、g、R1 〜R9 は、前記一般式(II-a)の場合と同じ意味である。)
前記一般式(II-a)で表される非共役トリエンまたはテトラエンは、下記一般式(IV-a)で表され、かつ該非共役トリエンまたはテトラエンから導かれる構成単位が下記一般式(IV-b)で表される化合物であることが好ましく、前記一般式(III-a)で表される非共役トリエンまたはテトラエンは、下記一般式(V-a)で表され、かつ該非共役トリエンまたはテトラエンから導かれる構成単位が下記一般式(V-b)で表される化合物であることが好ましい。
【0019】
【化15】
【0020】
(式中、fは0〜5の整数であり、gは1〜6の整数であり、R1 ,R2 ,R5,R6 およびR7 は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数が1〜5のアルキル基を示し、R8 は炭素原子数が1〜5のアルキル基を示し、R9 は水素原子、炭素原子数が1〜5のアルキル基または−(CH2)n−CR10=CR11R12で表される基(ここで、nは1〜5の整数であり、R10およびR11は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数が1〜5のアルキル基を示し、R12は炭素原子数が1〜5のアルキル基を示す)を示す。)
【0021】
【化16】
【0022】
(式中、f、g、R1 、R2 、R5 〜R9 は、前記一般式(IV-a)の場合と同じ意味である。)
【0023】
【化17】
【0024】
(式中、f、g、R1 、R2 、R5 〜R9 は、前記一般式(IV-a)の場合と同じ意味である。)
【0025】
【化18】
【0026】
(式中、f、g、R1 、R2 、R5 〜R9 は、前記一般式(IV-a)の場合と同じ意味である。)
本発明では、前記(iii)非共役トリエンまたはテトラエンが、前記一般式(II-a)で表され、かつ該非共役トリエンまたはテトラエンから導かれる構成単位が前記一般式(II-b)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種の非共役トリエンまたはテトラエンであることが好ましく、特に前記一般式(IV-a)で表され、かつ該非共役トリエンまたはテトラエンから導かれる構成単位が前記一般式(IV-b)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種の非共役トリエンまたはテトラエンであることが好ましい。
【0027】
前記(A)不飽和性オレフィン系共重合体は、エチレン(i)から導かれる構成単位と炭素原子数が3〜20のα−オレフィン(iv)から導かれる構成単位とのモル比(エチレン/α−オレフィン)が99/1〜40/60の範囲にあり、エチレン(i)から導かれる構成単位と炭素原子数が3〜20のα−オレフィン(iv)から導かれる構成単位との合計量と、芳香族ビニル化合物(ii)から導かれる構成単位とのモル比(エチレン+α−オレフィン/芳香族ビニル化合物)が99.5/0.5〜60/40の範囲にあることが好ましい。
【0028】
また、前記(A)不飽和性オレフィン系共重合体は、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が0.1〜10.0dl/gの範囲にあることが好ましい。
【0029】
さらに前記(A)不飽和性オレフィン系共重合体は、ヨウ素価が1〜50の範囲にあることが好ましい。
【0030】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係るポリエン系エラストマー組成物について具体的に説明する。
【0031】
本発明に係るポリエン系エラストマー組成物は、特定の不飽和性オレフィン系共重合体(A)とニトリルゴムおよび/または水素化オレフィン系共重合体ゴム(B)とからなる加硫可能なエラストマー組成物である。まず、本発明に係るポリエン系エラストマー組成物に用いられる各成分について説明する。
【0032】
(A)不飽和性オレフィン系共重合体
(A)不飽和性オレフィン系共重合体は、(i)エチレンと(ii)下記式(I)で表される芳香族ビニル化合物と(iii)非共役トリエンまたはテトラエンとのランダム共重合体、または(i)エチレンと(ii)下記式(I)で表される芳香族ビニル化合物と(iii)非共役トリエンまたはテトラエンと(iv)炭素原子数が3〜20のα−オレフィンとのランダム共重合体である。
【0033】
(ii)芳香族ビニル化合物として具体的には、下記一般式(I)で表される化合物が用いられる。
【0034】
【化19】
【0035】
式中、R1 、R2 およびR3 は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数1〜8アルキル基を示し、好ましくは水素原子または炭素原子数1〜3のアルキル基である。
【0036】
nは0〜5、好ましくは0〜3の整数である。
上記のような芳香族ビニル化合物としては、たとえば、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレンなどのモノまたはポリアルキルスチレン、メトキシスチレン、エトキシスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルベンジルアセテート、ヒドロキシスチレン、クロロスチレン、ジビニルベンゼンなどの官能基含有スチレン誘導体、アリルベンゼン、4-フェニルブテン-1、3-フェニルブテン-1、4-(4-メチルフェニル)ブテン-1、4-(3-メチルフェニル)ブテン-1、4-(2-メチルフェニル)ブテン-1、4-(4-エチルフェニル)ブテン-1、4-(4-ブチルフェニル)ブテン-1、5-フェニルペンテン-1、4-フェニルペンテン-1、3-フェニルペンテン-1、5-(4-メチルフェニル)ペンテン-1、4-(2-メチルフェニル)ペンテン-1、3-(4-メチルフェニル)ペンテン-1、6-フェニルヘキセン-1、5-フェニルヘキセン-1、4-フェニルヘキセン-1、3-フェニルヘキセン-1、6-(4-メチルフェニル)ヘキセン-1、5-(2-メチルフェニル)ヘキセン-1、4-(4-メチルフェニル)ヘキセン-1、3-(2-メチルフェニル)ヘキセン-1、7-フェニルヘプテン-1、6-フェニルヘプテン-1、5-フェニルヘプテン-1、4-フェニルヘプテン-1、8-フェニルオクテン-1、7-フェニルオクテン-1、6-フェニルオクテン-1、5-フェニルオクテン-1、4-フェニルオクテン-1、3-フェニルオクテン-1、10-フェニルデセン-1などのフェニル置換アルケンが挙げられる。
【0037】
これらの芳香族ビニル化合物のうち、スチレン、アリルベンゼン、4-フェニルブテン-1が好ましく、特に、スチレンが好ましく用いられる。芳香族ビニル化合物は、1種単独でまたは2種以上組合わせて用いることができる。
【0038】
(iii)非共役トリエンまたはテトラエンとしては、1分子中に1個のビニル基を有する非共役トリエンまたはテトラエン、および、1分子中に1個の5-ノルボルネン-2-イル基を有する非共役トリエンまたはテトラエンが挙げられる。この非共役トリエンまたはテトラエン1分子当たりの総炭素原子数(2種以上の非共役トリエンまたはテトラエンを含む場合にはその平均炭素原子数で示す)は、通常特に限定されないが、好ましくは9〜30個、より好ましくは10〜25個、特に好ましくは10〜22個であることが望ましい。炭素原子数がこのような範囲にある非共役トリエンまたはテトラエンは、精製などの取扱いが容易であるので有利である。ここで「トリエン」とは、1分子中に炭素−炭素二重結合(C=C)を3個有する炭化水素化合物を意味し、また「テトラエン」とは1分子中に炭素−炭素二重結合を4個有する炭化水素化合物を意味する。なお、この炭素−炭素二重結合には、ビニル基の炭素−炭素二重結合および5-ノルボルネン-2-イル基の炭素−炭素二重結合が含まれる。
【0039】
非共役トリエンまたはテトラエンには、ビニル基または5-ノルボルネン-2-イル基を含めて3個(トリエンの場合)または4個(テトラエンの場合)の炭素−炭素二重結合(C=C)が含まれているが、この非共役トリエンまたはテトラエン1分子中に含まれる全ての炭素−炭素二重結合に隣接した炭素原子に直接結合している水素原子の総数は、通常特に限定されないが、好ましくは9〜33個、より好ましくは12〜33個、特に好ましくは14〜33個であることが望ましい。水素原子の総数がこのような範囲にあると、架橋反応速度の速い共重合体が得られるので好ましい。なお、この水素原子数は、用いられる非共役トリエンまたはテトラエンが2種以上の混合物である場合にはこれらの水素原子数の平均で示す。
【0040】
本発明では、非共役トリエンまたはテトラエンのなかでは、ビニル基または5-ノルボルネン-2-イル基がメチレン基(−CH2 −)に結合している非共役トリエンまたはテトラエンが好ましい。
【0041】
このような非共役トリエンまたはテトラエンのなかでも、下記一般式(II-a)または下記一般式(III-a)で表される化合物が好ましい。
【0042】
【化20】
【0043】
式中、pおよびqは、互いに同一でも異なっていてもよく、0または1である(但しpとqは同時に0ではない)。
fは0〜5の整数であり、好ましくは0〜2の整数である(但しpとqが共に1の場合は0ではない)。
【0044】
gは1〜6の整数であり、好ましくは1〜3の整数である。
R1 ,R2 ,R3 ,R4 ,R5 ,R6 およびR7 は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数が1〜5のアルキル基を示し、好ましくは水素原子または炭素原子数が1〜3のアルキル基、より好ましくはR1 ,R2 ,R3 ,R4 ,R5 およびR6 が水素原子でありR7 が水素原子または炭素原子数が1〜3のアルキル基である。
【0045】
R8 は、水素原子または炭素原子数が1〜5のアルキル基を示し、好ましくは水素原子または炭素原子数が1〜3のアルキル基、より好ましくは炭素原子数が1〜3のアルキル基である。
【0046】
R9 は水素原子、炭素原子数が1〜5のアルキル基または−(CH2)n−CR10=CR11R12で表される基(ここで、nは1〜5の整数であり、R10およびR11は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数が1〜5のアルキル基を示し、R12は炭素原子数が1〜5のアルキル基を示す)を示し、好ましくは水素原子、炭素原子数が1〜3のアルキル基または−(CH2)n−CR10=CR11R12で表される基(ここで、nは1〜3の整数であり、R10およびR11は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数が1〜3のアルキル基を示し、R12は炭素原子数が1〜3のアルキル基を示す)である。但し、pとqが共に1の場合、R9 は水素原子または炭素原子数が1〜5のアルキル基である。
【0047】
【化21】
【0048】
(式中、p、q、f、g、R1 〜R9 は、前記一般式(II-a)の場合と同じ意味である。)
(iii)非共役トリエンまたはテトラエンが、前記一般式(II-a)または (III-a)で表される非共役トリエンまたはテトラエンであると、加硫速度が速く、得られる加硫物は強度特性に優れる。
【0049】
このような前記一般式(II-a)で表される非共役トリエンまたはテトラエンとして具体的には、以下のような化合物が挙げられる。
【0050】
【化22】
【0051】
また、前記一般式(III-a)で表される非共役トリエンまたはテトラエンとして具体的には、前記一般式(II-a)で表される非共役トリエンまたはテトラエンとして例示した化合物のビニル基を5-ノルボルネン-2-イル基に置き換えた化合物が挙げられる。
【0052】
前記一般式(II-a)で表される非共役トリエンまたはテトラエンの中では、下記一般式(IV-a)で表される非共役トリエンまたはテトラエンが好ましい。この非共役トリエンまたはテトラエンは、前記一般式(II-a)で表される非共役トリエンまたはテトラエンにおいて、pが1であり、qが0の化合物である。
【0053】
また、前記一般式(III-a)で表される非共役トリエンまたはテトラエンの中では、下記一般式(V-a)で表される非共役トリエンまたはテトラエンが好ましい。この非共役トリエンまたはテトラエンは、前記一般式(III-a)で表される非共役トリエンまたはテトラエンにおいて、pが1であり、qが0の化合物である。
【0054】
【化23】
【0055】
式中、fは、0〜5の整数であり、好ましくは0〜2の整数である。
gは、1〜6の整数であり、好ましくは1〜3の整数である。
R1 ,R2 ,R5 ,R6 およびR7 は、互いに同一でも異なっていてもよく、前記一般式(II-a)と同じであり、好ましくは水素原子または炭素原子数が1〜3のアルキル基、より好ましくはR1 ,R2 ,R5 およびR6 が水素原子でありR7 が水素原子または炭素原子数が1〜3のアルキル基である。
【0056】
R8 は、前記一般式(II-a)と同じであり、好ましくは水素原子または炭素原子数が1〜3のアルキル基、より好ましくは炭素原子数が1〜3のアルキル基である。
【0057】
R9 は、前記一般式(II-a)と同じであり、好ましくは水素原子または炭素原子数が1〜3のアルキル基である。
【0058】
【化24】
【0059】
(式中、f、g、R1 、R2 、R5 〜R9 は、前記一般式(IV-a)の場合と同じ意味である。)
(iii)非共役トリエンまたはテトラエンが、前記一般式(IV-a)または (V-a) で表される非共役トリエンまたはテトラエンであると、加硫速度が速く、得られる加硫物は強度特性に優れる。
【0060】
このような前記一般式(IV-a)で表される非共役トリエンまたはテトラエンとして具体的には、以下のような化合物が挙げられる。
【0061】
【化25】
【0062】
【化26】
【0063】
【化27】
【0064】
【化28】
【0065】
前記一般式(V-a)で表される非共役トリエンまたはテトラエンとして具体的には、前記一般式(IV-a)で表される非共役トリエンまたはテトラエンとして例示した化合物のビニル基を5-ノルボルネン-2-イル基に置き換えた化合物が挙げられる。
【0066】
本発明では、(iii)非共役トリエンまたはテトラエンは、前記一般式(II-a)で表される化合物であることがさらに好ましく、前記一般式(IV-a)で表される化合物であることが特に好ましい。
【0067】
(iii)非共役トリエンまたはテトラエンが、前記一般式(II-a)で表される非共役トリエンまたはテトラエンであると、加硫速度が速く、得られる加硫物は強度特性に優れる。
【0068】
(iii)非共役トリエンまたはテトラエンが、前記一般式 (IV-a) で表される非共役トリエンまたはテトラエンであると、加硫速度が速く、得られる加硫物は耐寒性、低温特性に特に優れる。
【0069】
前記(iii)非共役トリエンまたはテトラエンは、トランス体およびシス体の混合物であってもよく、トランス体単独またはシス体単独であってもよい。
これらの(iii)非共役トリエンまたはテトラエンは、1種単独でまたは2種以上組合わせて用いることができる。
【0070】
前記一般式(II-a)または(III-a)で表される非共役トリエンまたはテトラエンは、たとえば、EP0691354A1公報、WO96/20150公報に記載されているような従来公知の方法によって調製することができる。
【0071】
(iv)炭素原子数が3〜20のα−オレフィンとして具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、12-エチル-1-テトラデセンなどが挙げられ、これらのなかでは炭素原子数が4以上のα−オレフィンが好ましく、特にプロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセンが好ましい。これらのα−オレフィンは、1種単独でまたは2種以上組合わせて用いることができる。
【0072】
(A)不飽和性オレフィン系共重合体は、エチレン(i)から導かれる構成単位と、芳香族ビニル化合物(ii)から導かれる構成単位と、非共役トリエンまたはテトラエン(iii)から導かれる構成単位がそれぞれランダムに配列して結合し、(iii)非共役トリエンまたはテトラエンに起因する分岐構造を有するとともに、主鎖は、実質的に線状構造となっている共重合体、またはエチレン(i)から導かれる構成単位と、芳香族ビニル化合物(ii)から導かれる構成単位と、非共役トリエンまたはテトラエン(iii)から導かれる構成単位と、炭素原子数が3〜20のα−オレフィン(iv)から導かれる構成単位がそれぞれランダムに配列して結合し、(iii)非共役トリエンまたはテトラエンに起因する分岐構造を有するとともに、主鎖は、実質的に線状構造となっている共重合体である。この共重合体が実質的に線状構造を有しており実質的にゲル状架橋重合体を含有しないことは、該共重合体が有機溶媒に溶解し、不溶分を実質的に含まないことにより確認することができる。たとえば極限粘度[η]を測定する際に、該共重合体が135℃、デカリンに完全に溶解することにより確認することができる。
【0073】
(A)不飽和性オレフィン系共重合体は、エチレン(i)から導かれる構成単位と、炭素原子数が3〜20のα−オレフィン(iv)から導かれる構成単位とのモル比(エチレン/α−オレフィン)が100/0〜40/60、好ましくは99/1〜40/60、より好ましくは99/2〜60/40の範囲にあり、エチレン(i)から導かれる構成単位と炭素原子数が3〜20のα−オレフィン(iv)から導かれる構成単位との合計量と、芳香族ビニル化合物(ii)から導かれる構成単位とのモル比(エチレン+α−オレフィン/芳香族ビニル化合物)が99.5/0.5〜85/15、好ましくは99/1〜90/10の範囲にあることが望ましい。
【0074】
エチレン(i)から導かれる構成単位と、炭素原子数が3〜20のα−オレフィン(iv)から導かれる構成単位とのモル比(エチレン/α−オレフィン)が99/1〜40/60の範囲内にあると、得られる加硫物は、機械的特性、低温特性に優れる。また、芳香族ビニル化合物(ii)から導かれる構成単位の割合が前記範囲内にあると得られる加硫物は、機械的特性、低温特性に優れる。
【0075】
(A)不飽和性オレフィン系共重合体において、非共役トリエンまたはテトラエン(iii)から導かれる構成単位の含有割合は、通常0.01〜30モル%、好ましくは0.05〜25モル%、より好ましくは0.1〜20モル%の範囲内にあることが望ましい。
【0076】
また、(A)不飽和性オレフィン系共重合体のヨウ素価は、通常1〜50、好ましくは3〜50、より好ましくは5〜40の範囲内にあることが望ましい。(A)不飽和性オレフィン系共重合体のヨウ素価が前記範囲内にあると、加硫速度が速く、得られる加硫物は、低温特性に優れる。
【0077】
(A)不飽和性オレフィン系共重合体は、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が、通常0.1〜10.0dl/g、好ましくは1.0〜7.0dl/g、より好ましくは1.0〜5.0dl/gの範囲にあることが望ましい。(A)不飽和性オレフィン系共重合体の極限粘度[η]が前記範囲内にあると、耐候性、耐オゾン性、耐熱老化性、低温特性、耐動的疲労性などの特性に優れた共重合体となる。
【0078】
本発明では(A)不飽和性オレフィン系共重合体は、各構成単位のモル比、極限粘度[η]およびヨウ素価のうち、少なくとも1つが前記範囲内にあることが好ましく、2つ以上が前記範囲内にあることがより好ましく、特に各構成単位のモル比、極限粘度[η]およびヨウ素価のすべてが前記範囲内にあることが好ましい。
【0079】
このような(A)不飽和性オレフィン系共重合体において(iii)非共役トリエンまたはテトラエンが前記一般式(II-a)で表される場合には、不飽和性オレフィン系共重合体(A)中においては該非共役トリエンまたはテトラエンから導かれる構成単位は、下記一般式(II-b)で表される構造を有している。
【0080】
【化29】
【0081】
(式中、p、q、f、g、R1 〜R9 は、前記一般式(II-a)の場合と同じ意味である。)
また、(iii)非共役トリエンまたはテトラエンが前記一般式(III-a)で表される場合には、不飽和性オレフィン系共重合体(A)中においては該非共役トリエンまたはテトラエンから導かれる構成単位は、下記一般式(III-b)で表される構造を有している。
【0082】
【化30】
【0083】
(式中、p、q、f、g、R1 〜R9 は、前記一般式(II-a)の場合と同じ意味である。)
さらに、(iii)非共役トリエンまたはテトラエンが前記一般式(IV-a)で表される場合には、不飽和性オレフィン系共重合体(A)中においては該非共役トリエンまたはテトラエンから導かれる構成単位は、下記一般式(IV-b)で表される構造を有している。
【0084】
【化31】
【0085】
(式中、f、g、R1 、R2 、R5 〜R9 は前記一般式(IV-a)の場合と同じ意味である。)
また、(iii)非共役トリエンまたはテトラエンが前記一般式(V-a)で表される場合には、不飽和性オレフィン系共重合体(A)中においては該非共役トリエンまたはテトラエンから導かれる構成単位は、下記一般式(V-b)で表される構造を有している。
【0086】
【化32】
【0087】
(式中、f、g、R1 、R2 、R5 〜R9 は前記一般式(IV-a)の場合と同じ意味である。)
なお(iii)非共役トリエンまたはテトラエンから導かれる構成単位が、不飽和性オレフィン系共重合体(A)において前記各構造を有していることは、共重合体の13C−NMRスペクトルを測定することによって確認することができる。
【0088】
不飽和性オレフィン系共重合体(A)の製造
上記のような不飽和性オレフィン系共重合体(A)は、(i)エチレンと、(ii)芳香族ビニル化合物と、(iii)非共役トリエンまたはテトラエンと、必要に応じて(iv)炭素原子数が3〜20のα−オレフィンとをオレフィン重合用触媒の存在下に共重合させて得られる。
【0089】
このようなオレフィン重合用触媒としては、(a)バナジウム、ジルコニウム、チタニウムなどの遷移金属の化合物と、(b)有機アルミニウム化合物(有機アルミニウムオキシ化合物)および/またはイオン化イオン性化合物とからなる触媒などが使用できる。具体的には、▲1▼固体状チタン触媒成分と有機アルミニウム化合物とからなるチタン系触媒、▲2▼可溶性バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなるバナジウム系触媒、▲3▼周期律表第4族から選ばれる遷移金属のメタロセン化合物と、有機アルミニウムオキシ化合物および/またはイオン化イオン性化合物とからなるメタロセン系触媒などが挙げられ、これらのうちでは特にメタロセン系触媒が好ましい。
【0090】
メタロセン系触媒を形成する周期律表第4族から選ばれる遷移金属のメタロセン化合物は、具体的には、次式(VI)で表される。
M1 L1 x … (VI)
式中、Mは周期律表第4族から選ばれる遷移金属であり、具体的にはジルコニウム、チタンまたはハフニウムである。xは遷移金属Mの原子価を示し、遷移金属に配位する配位子Lの個数を示す。
【0091】
Lは遷移金属に配位する配位子であり、これらのうち少なくとも1個の配位子Lは、シクロペンタジエニル基、インデニル基、4,5,6,7-テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基などのシクロペンタジエニル骨格を有する配位子であり、このシクロペンタジエニル骨格を有する配位子は、アルキル基、シクロアルキル基、トリアルキルシリル基、ハロゲン原子などの置換基を有していてもよい。
【0092】
該メタロセン化合物が配位子Lとしてシクロペンタジエニル骨格を有する基を2個以上有する場合には、そのうち2個のシクロペンタジエニル骨格を有する基同士は、アルキレン基、置換アルキレン基、シリレン基、置換シリレン基などの結合基を介して結合されていてもよい。
【0093】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外のLとしては、炭素原子数が1〜12の炭化水素基、アルコキシ基、アリーロキシ基、スルホン酸含有基(−SO3Ra 、但し、Ra はアルキル基、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、アリール基、ハロゲン原子で置換されたアリール基またはアルキル基で置換されたアリール基である。)、ハロゲン原子、水素原子などが挙げられる。
【0094】
以下に、Mがジルコニウムであり、かつシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を2個含むメタロセン化合物を例示する。
ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムモノクロリドモノハイドライド、
ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(1-メチル-3-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、
ビス(1,3-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
エチレン-ビス(インデニル)ジメチルジルコニウム、
エチレン-ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
イソプロピリデン(シクロペンタジエニル-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジフェニルシリレン-ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
メチルフェニルシリレン-ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-エチレン-ビス(2-メチル-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(4,7-ジメチル-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2,4,7-トリメチル-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2,4,6-トリメチル-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(4-フェニル-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-フェニル-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(α-ナフチル)-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(β-ナフチル)-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(1-アントリル)-1-インデニル)ジルコニウムジクロリドなど。
【0095】
また、上記のような化合物においてジルコニウム金属を、チタニウム金属、ハフニウム金属に置き換えたメタロセン化合物を例示することもできる。
【0096】
さらに、ブリッジタイプのメタロセン化合物として下記式[A]で示されるメタロセン化合物が挙げられる。
メタロセンが式[A]:
【0097】
【化33】
【0098】
[式[A]中、M1は周期律表の第IVB族の金属であり、具体的には、例えば、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウムを挙げることができる。
【0099】
R1およびR2は、互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、炭素原子数1〜10好ましくは1〜3のアルキル基、炭素原子数1〜10好ましくは1〜3のアルコキシ基、炭素原子数6〜10好ましくは6〜8のアリール基、炭素原子数6〜10好ましくは6〜8のアリールオキシ基、炭素原子数2〜10好ましくは2〜4のアルケニル基、炭素原子数7〜40好ましくは7〜10のアリールアルキル基、炭素原子数7〜40好ましくは7〜12のアルキルアリール基、炭素原子数8〜40好ましくは8〜12のアリールアルケニル基、またはハロゲン原子好ましくは塩素原子である。
【0100】
R3およびR4は、互いに同じでも異なっていても良く、水素原子、ハロゲン原子好ましくは弗素原子、塩素原子または臭素原子、ハロゲン化されていてもよい炭素原子数1〜10好ましくは1〜4のアルキル基、炭素原子数6〜10好ましくは6〜8のアリール基、−NR10 2、−SR10、−OSiR10 3、−SiR10 3または−PR10 2基であり、その際R10はハロゲン原子好ましくは塩素原子、または、炭素原子数1〜10好ましくは1〜3のアルキル基、または炭素原子数6〜10好ましくは6〜8のアリール基である。
【0101】
R3およびR4は特に水素原子であることが好ましい。
R5およびR6は互いに同じでも異なっていてもよく、好ましくは同じであり、R5およびR6は水素原子でないという条件のもとでR3およびR4について記載した意味を有する。R5およびR6は、好ましくはハロゲン化されていてもよい炭素原子数1〜4のアルキル基、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基またはトリフルオロメチル基等が挙げられ、メチル基が好ましい。
【0102】
R7は、下記:
【0103】
【化34】
【0104】
=BR11、=AlR11、−Ge−、−Sn−、−O−、−S−、=SO、=SO2、=NR11、=CO、=PR11または=P(O)R11であり、その際R11、R12およびR13は互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10好ましくは1〜4のアルキル基さらに好ましくはメチル基、炭素原子数1〜10のフルオロアルキル基好ましくはCF3基、炭素原子数6〜10好ましくは6〜8のアリール基、炭素原子数6〜10のフルオロアリール基好ましくはペンタフルオロフェニル基、炭素原子数1〜10好ましくは1〜4のアルコキシ基特に好ましくはメトキシ基、炭素原子数2〜10好ましくは2〜4のアルケニル基、炭素原子数7〜40好ましくは7〜10のアリールアルキル基、炭素原子数8〜40好ましくは8〜12のアリールアルケニル基、または炭素原子数7〜40好ましくは7〜12のアルキルアリール基であり、また「R11とR12」または「R11とR13」とは、それぞれそれらが結合する原子と一緒になって環を形成してもよい。
【0105】
M2は珪素、ゲルマニウムまたは錫、好ましくは珪素またはゲルマニウムである。
R7は、=CR11R12、=SiR11R12、=GeR11R12、−O−、−S−、=SO、=PR11または=P(O)R11であることが好ましい。
【0106】
R8およびR9は互いに同じであっても異なっていてもよく、R11について記載したと同じ意味を有する。
mおよびnは互いに同じであっても異なっていてもよく、0、1または2、好ましくは0または1であり、m+nは0、1または2、好ましくは0または1である。
【0107】
上記条件を充たす特に好ましいメタロセンを下記(i)〜(iii)に示す。
【0108】
【化35】
【0109】
[上記式(i)、(ii)及び(iii)中、M1はZrまたはHfであり、R1およびR2はメチル基または塩素原子であり、R5およびR6はメチル基、エチル基またはトリフルオロメチル基であり、R8、R9、R10およびR12が上記の意味を有する。]
このような式(i)、(ii)及び(iii)で示される化合物の内でも、下記の化合物が特に好ましい。
【0110】
rac-ジメチルメチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルメチレンビス(2-メチル-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジフェニルメチレンビス(2-メチル-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-エチレン(2-メチル-1-インデニル)2-ジルコニウム-ジクロライド、
rac-ジメチルシリレン(2-メチル-1-インデニル)2-ジルコニウム-ジクロライド、
rac-ジメチルシリレン(2-メチル-1-インデニル)2-ジルコニウム-ジメチル、
rac-エチレン-(2-メチル-1-インデニル)2-ジルコニウム-ジメチル、
rac-フェニル(メチル)シリレン-(2ーメチル-1-インデニル)2-ジルコニウム-ジクロライド、
rac-ジフェニル-シリレン-(2ーメチル-1-インデニル)2-ジルコニウム-ジクロライド、
rac-メチルエチレン-(2ーメチル-1-インデニル)2-ジルコニウム-ジクロライド、
rac-ジメチルシリレン-(2ーエチル-1-インデニル)2-ジルコニウム-ジクロライド。このようなメタロセンの製造方法については、従来より公知の方法にて製造することができる(例:特開平4-268307号公報参照)。
【0111】
本発明では、ブリッジタイプのメタロセン化合物として、下記式[B]で示される遷移金属化合物(メタロセン化合物)を用いることもできる。
【0112】
【化36】
【0113】
式[B]中、Mは周期律表第IVB族の遷移金属原子を示し、具体的には、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウムである。
【0114】
R1 およびR2 は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基またはリン含有基を示し、具体的には、
フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子;
メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、ノニル、ドデシル、アイコシル、ノルボルニル、アダマンチルなどのアルキル基、ビニル、プロペニル、シクロヘキセニルなどのアルケニル基、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピルなどのアリールアルキル基、フェニル、トリル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ビフェニル、ナフチル、メチルナフチル、アントラセニル、フェナントリルなどのアリール基などの炭素数1から20の炭化水素基;
前記炭化水素基にハロゲン原子が置換したハロゲン化炭化水素基;
メチルシリル、フェニルシリルなどのモノ炭化水素置換シリル、ジメチルシリル、ジフェニルシリルなどのジ炭化水素置換シリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリプロピルシリル、トリシクロヘキシルシリル、トリフェニルシリル、ジメチルフェニルシリル、メチルジフェニルシリル、トリトリルシリル、トリナフチルシリルなどのトリ炭化水素置換シリル、
トリメチルシリルエーテルなどの炭化水素置換シリルのシリルエーテル、
トリメチルシリルメチルなどのケイ素置換アルキル基、トリメチルシリルフェニルなどのケイ素置換アリール基、
などのケイ素含有基;
ヒドロオキシ基、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなどのアルコキシ基、フェノキシ、メチルフェノキシ、ジメチルフェノキシ、ナフトキシなどのアリロ−キシ基、フェニルメトキシ、フェニルエトキシなどのアリールアルコキシ基などの酸素含有基;
前記酸素含有基の酸素がイオウに置換した置換基などのイオウ含有基;
アミノ基、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジブチルアミノ、ジシクロヘキシルアミノなどのアルキルアミノ基、フェニルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノ、ジナフチルアミノ、メチルフェニルアミノなどのアリールアミノ基またはアルキルアリールアミノ基などの窒素含有基;
ジメチルフォスフィノ、ジフェニルフォスフィノなどのフォスフィノ基などのリン含有基である。
【0115】
これらのうちR1 は炭化水素基であることが好ましく、特にメチル、エチル、プロピルの炭素数1〜3の炭化水素基であることが好ましい。またR2 は水素、炭化水素基が好ましく、特に水素あるいは、メチル、エチル、プロピルの炭素数1〜3の炭化水素基であることが好ましい。
【0116】
R3 、R4 、R5 およびR6 は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基を示し、このうち水素、炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基であることが好ましい。R3 とR4 、R4 とR5 、R5 とR6 のうち少なくとも1組は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、単環の芳香族環を形成していてもよい。
【0117】
また芳香族環を形成する基以外の基は、炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基が2種以上ある場合には、これらが互いに結合して環状になっていてもよい。なおR6 が芳香族基以外の置換基である場合、水素原子であることが好ましい。
【0118】
ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基として、具体的には、前記R1 およびR2 と同様の基が例示できる。
R3 とR4 、R4 とR5 、R5 とR6 のうち少なくとも1組が互いに結合して形成する単環の芳香族環を含む、Mに配位する配位子としては以下に示すようなものが挙げられる。
【0119】
【化37】
【0120】
これらのうち上記式(1)で示されるものが好ましい。
前記芳香族環はハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基で置換されていてもよい。
【0121】
前記芳香族環に置換するハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基としては、前記R1 およびR2 と同様の基が例示できる。
【0122】
X1 およびX2 は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、酸素含有基またはイオウ含有基を示し、具体的には、
前記R1 およびR2 と同様のハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、酸素含有基が例示できる。
【0123】
イオウ含有基としては、前記R1 、R2 と同様の基、およびメチルスルホネート、トリフルオロメタンスルフォネート、フェニルスルフォネート、ベンジルスルフォネート、p-トルエンスルフォネート、トリメチルベンゼンスルフォネート、トリイソブチルベンゼンスルフォネート、p-クロルベンゼンスルフォネート、ペンタフルオロベンゼンスルフォネートなどのスルフォネート基、メチルスルフィネート、フェニルスルフィネート、ベンジルスルフィネート、p-トルエンスルフィネート、トリメチルベンゼンスルフィネート、ペンタフルオロベンゼンスルフィネートなどのスルフィネート基が例示できる。
【0124】
Yは、炭素数1〜20の2価の炭化水素基、炭素数1〜20の2価のハロゲン化炭化水素基、2価のケイ素含有基、2価のゲルマニウム含有基、2価のスズ含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO2 −、−NR7 −、−P(R7)−、−P(O)(R7)−、−BR7 −または−AlR7 −[ただし、R7 は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基]を示し、具体的には、
メチレン、ジメチルメチレン、1,2-エチレン、ジメチル-1,2- エチレン、1,3-トリメチレン、1,4-テトラメチレン、1,2-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキシレンなどのアルキレン基、ジフェニルメチレン、ジフェニル-1,2- エチレンなどのアリールアルキレン基などの炭素数1から20の2価の炭化水素基;
クロロメチレンなどの上記炭素数1から20の2価の炭化水素基をハロゲン化したハロゲン化炭化水素基;
メチルシリレン、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジ(n-プロピル)シリレン、ジ(i-プロピル)シリレン、ジ(シクロヘキシル)シリレン、メチルフェニルシリレン、ジフェニルシリレン、ジ(p-トリル)シリレン、ジ(p-クロロフェニル)シリレンなどのアルキルシリレン、アルキルアリールシリレン、アリールシリレン基、テトラメチル-1,2-ジシリレン、テトラフェニル-1,2- ジシリレンなどのアルキルジシリレン、アルキルアリールジシリレン、アリールジシリレン基などの2価のケイ素含有基;
上記2価のケイ素含有基のケイ素をゲルマニウムに置換した2価のゲルマニウム含有基;
上記2価のケイ素含有基のケイ素をスズに置換した2価のスズ含有基置換基などであり、
R7 は、前記R1 、R2 と同様のハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基である。
【0125】
このうち2価のケイ素含有基、2価のゲルマニウム含有基、2価のスズ含有基であることが好ましく、さらに2価のケイ素含有基であることが好ましく、このうち特にアルキルシリレン、アルキルアリールシリレン、アリールシリレンであることが好ましい。
【0126】
以下に上記式[B]で表される遷移金属化合物の具体的な例を示す。
【0127】
【化38】
【0128】
【化39】
【0129】
【化40】
【0130】
本発明では、上記のような化合物においてジルコニウム金属を、チタニウム金属、ハフニウム金属に置き換えた遷移金属化合物を用いることもできる。
前記遷移金属化合物は、通常ラセミ体としてオレフィン重合用触媒成分として用いられるが、R型またはS型を用いることもできる。
【0131】
このような遷移金属化合物のインデン誘導体配位子は、たとえば下記の反応ルートで、通常の有機合成手法を用いて合成することができる。
【0132】
【化41】
【0133】
本発明で用いられるこの遷移金属化合物は、これらインデン誘導体から既知の方法、たとえば特開平4−268307号公報に記載されている方法により合成することができる。
【0134】
本発明においては、ブリッジタイプのメタロセン化合物としてまた下記式[C]で示される遷移金属化合物(メタロセン化合物)を用いることもできる。
【0135】
【化42】
【0136】
式[C]中、M、R1、R2、 R3 、R4 、R5 およびR6としては、前記式[B]の場合と同様なものが挙げられる。
【0137】
R3 、R4 、R5 およびR6 のうち、R3 を含む2個の基が、アルキル基であることが好ましく、R3 とR5 、またはR3 とR6 がアルキル基であることが好ましい。このアルキル基は、2級または3級アルキル基であることが好ましい。また、このアルキル基は、ハロゲン原子、ケイ素含有基で置換されていてもよく、ハロゲン原子、ケイ素含有基としては、R1 、R2 で例示した置換基が挙げられる。
【0138】
R3 、R4 、R5 およびR6 で示される基のうち、アルキル基以外の基は、水素原子であることが好ましい。
炭素数1〜20の炭化水素基としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、sec-ブチル、tert- ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、ドデシル、アイコシル、ノルボルニル、アダマンチルなどの鎖状アルキル基および環状アルキル基;
ベンジル、フェニルエチル、フエニルプロピル、トリルメチルなどのアリールアルキル基などが挙げられ、2重結合、3重結合を含んでいてもよい。
【0139】
またR3 、R4 、R5 およびR6 から選ばれる2種の基が互いに結合して芳香族環以外の単環あるいは多環を形成していてもよい。
ハロゲン原子として、具体的には、前記R1 およびR2 と同様の基が例示できる。
【0140】
X1 、X2、YおよびR7としては、前記式[B]の場合と同様のものが挙げられる。
以下に上記式[C]で示されるメタロセン化合物(遷移金属化合物)の具体的な例を示す。
【0141】
rac-ジメチルシリレン-ビス(4,7-ジメチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロ リド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2,4,7-トリメチル-1- インデニル)ジルコニウムジ クロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2,4,6-トリメチル-1- インデニル)ジルコニウムジ クロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2,5,6-トリメチル-1- インデニル)ジルコニウムジ クロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2,4,5,6-テトラメチル-1- インデニル)ジルコニウ ムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2,4,5,6,7-ペンタメチル-1- インデニル)ジルコニ ウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-n- プロピル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(4-i-プロピル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニ ウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-i- プロピル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-i- プロピル-6- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4- メチル-6-i- プロピル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-i- プロピル-5- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4,6- ジ(i- プロピル)-1-インデニル)ジ ルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4,6- ジ(i- プロピル)-7-メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-i- ブチル-7- メチル-1- インデニル) ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-sec- ブチル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4,6- ジ(sec- ブチル)-1-インデニル)ジ ルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-tert-ブチル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4- シクロヘキシル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4- ベンジル-7- メチル-1- インデニル) ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4- フェニルエチル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4- フェニルジクロルメチル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4- クロロメチル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4- トリメチルシリルメチル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4- トリメチルシロキシメチル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジエチルシリレン-ビス(2-メチル-4-i- プロピル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジ(i- プロピル) シリレン-ビス(2-メチル-4-i- プロピル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジ(n- ブチル) シリレン-ビス(2-メチル-4-i- プロピル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジ( シクロヘキシル) シリレン-ビス(2-メチル-4-i- プロピル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-メチルフェニルシリレン-ビス(2-メチル-4-i- プロピル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジフェニルシリレン-ビス(2-メチル-4-i- プロピル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジフェニルシリレン-ビス(2-メチル-4,6- ジ(i- プロピル)-1-インデニル)ジ ルコニウムジクロリド、
rac-ジ(p- トリル) シリレン-ビス(2-メチル-4-i- プロピル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジ(p- クロロフェニル) シリレン-ビス(2-メチル-4-i- プロピル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-i- プロピル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジブロミド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-i- プロピル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジメチル、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-i- プロピル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウムメチルクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-i- プロピル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウム-ビス(メタンスルホナト)、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-i- プロピル-7- メチル-1- インデニル)ジルコニウム-ビス(p-フェニルスルフィナト)、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-3- メチル-4-i- プロピル-6- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-エチル-4-i- プロピル-6- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-フェニル-4-i- プロピル-6- メチル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド。
【0142】
本発明では、上記のような化合物においてジルコニウム金属を、チタニウム金属、ハフニウム金属に置き換えた遷移金属化合物を用いることもできる。
上記遷移金属化合物は、通常ラセミ体として用いられるが、R型またはS型を用いることもできる。
【0143】
このような遷移金属化合物のインデン誘導体配位子は、たとえば前記と同様の反応ルートで、通常の有機合成手法を用いて合成することができる。
また上記の式[C]で示される遷移金属化合物(メタロセン化合物)は、これらインデン誘導体から既知の方法、たとえば特開平4−268307号公報に記載の方法により合成することができる。
【0144】
本発明では、またブリッジタイプのメタロセン化合物として下記の式[D]で示される遷移金属化合物(メタロセン化合物)を用いこともできる。
【0145】
【化43】
【0146】
式[D]中、M、R1、X1 、X2およびYとしては、前記式[B]あるいは前記式[C]の場合と同様のものが挙げられる。
【0147】
このうち、R1としては、炭化水素基であることが好ましく、特にメチル、エチル、プロピル、ブチルの炭素数1〜4の炭化水素基であることが好ましい。
また、X1 、X2としては、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましい。
【0148】
R2 は、炭素数6〜16のアリール基を示し、具体的には、
フェニル、α-ナフチル、β-ナフチル、アントラセニル、フェナントリル、ピレニル、アセナフチル、フェナレニル(ペリナフテニル)、アセアントリレニルなどである。これらのうちフェニル、ナフチルであることが好ましい。これらのアリール基は、前記R1 と同様のハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基で置換されていてもよい。
【0149】
以下に上記式[D]で示される遷移金属化合物(メタロセン化合物)の具体的な例を示す。
rac-ジメチルシリレン-ビス(4-フェニル-1−インデニル)ジルコニウムジクロ リド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4−フェニル-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(α-ナフチル)-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(β-ナフチル)-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(1-アントラセニル)-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(2-アントラセニル)-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(9-アントラセニル)-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(9-フェナントリル)-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(p-フルオロフェニル)-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(ペンタフルオロフェニル)-1-インデ ニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(p-クロロフェニル)-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(m-クロロフェニル)-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(o-クロロフェニル)-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(o,p-ジクロロフェニル) フェニル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(p-ブロモフェニル)-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(p-トリル)-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(m-トリル)-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(o-トリル)-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(o,o'-ジメチルフェニル)-1-インデニル) ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(p-エチルフェニル)-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(p-i-プロピルフェニル)-1-インデニ ル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(p-ベンジルフェニル)-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(p-ビフェニル)-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(m-ビフェニル)-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(p-トリメチルシリルフェニル)-1-イ ンデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(m-トリメチルシリルフェニル)-1-イ ンデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-エチル−4-フェニル-1- インデニル)ジルコニウ ムジクロリド、
rac-ジフェニルシリレン-ビス(2-エチル-4-フェニル-1-インデニル)ジルコニウ ムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-フェニル-4-フェニル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-n-プロピル-4- フェニル-1- インデニル)ジルコ ニウムジクロリド、
rac-ジエチルシリレン-ビス(2-メチル-4- フェニル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジ-(i-プロピル)シリレン-ビス(2-メチル-4- フェニル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジ-(n-ブチル)シリレン-ビス(2-メチル-4- フェニル-1- インデニル)ジ ルコニウムジクロリド、
rac-ジシクロヘキシルシリレン-ビス(2-メチル-4- フェニル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-メチルフェニルシリレン-ビス(2-メチル-4- フェニル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジフェニルシリレン-ビス(2-メチル-4- フェニル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジ(p-トリル)シリレン-ビス(2-メチル-4- フェニル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジ(p-クロロフェニル)シリレン-ビス(2-メチル-4- フェニル-1- インデ ニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-メチレン-ビス(2-メチル-4- フェニル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-エチレン-ビス(2-メチル-4- フェニル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルゲルミレン-ビス(2-メチル-4- フェニル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルスズ-ビス(2-メチル-4- フェニル-1- インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4- フェニル-1- インデニル)ジルコニウムジブロミド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4- フェニル-1- インデニル)ジルコニウムジメチル、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4- フェニル-1- インデニル)ジルコニウムメチルクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4- フェニル-1- インデニル)ジルコニウムクロリドSO2Me、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4- フェニル-1- インデニル)ジルコニウムクロリドOSO2Meなど。
【0150】
本発明では、上記のような化合物においてジルコニウム金属を、チタニウム金属、ハフニウム金属に置き換えた遷移金属化合物を用いることもできる。
このような式[D]で示される遷移金属化合物は、Journal of Organometallic Chem.288(1985)、第63〜67頁、ヨーロッパ特許出願公開第0,320,762 号明細書および実施例に準じて、たとえば下記のようにして製造することができる。
【0151】
【化44】
【0152】
このような遷移金属化合物[D]は、通常ラセミ体として用いられるが、R体またはS体を用いることもできる。
また本発明では、メタロセン化合物として下記一般式(VII)で示される遷移金属化合物を用いることもできる。
【0153】
L2 M2 X2 … (VII)
M2 は、周期率表第4族またはランタニド系列の金属であり、
L2 は、非局在化π結合基の誘導体であり、金属M2 活性サイトに拘束幾何形状を付与しており、
Xは、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子もしくはハロゲン原子であるか、または20個以下の炭素原子、ケイ素原子もしくはゲルマニウム原子を含有する炭化水素基、シリル基もしくはゲルミル基である。
【0154】
このような前記一般式(VII)で示される化合物のうちでは、下記一般式(VII') で示される遷移金属化合物が好ましい。
【0155】
【化45】
【0156】
式中、M2 はチタン、ジルコニウムまたはハフニウムであり、Xは、上記と同じである。
CpはM2 にπ結合しており、かつ置換基Zを有する置換シクロペンタジエニル基である。
【0157】
Zは酸素、イオウ、ホウ素または周期率表第14族の元素(たとえばケイ素、ゲルマニウムまたはスズ)であり、
Yは窒素、リン、酸素またはイオウを含む配位子であり、
ZとYとで縮合環を形成してもよい。
【0158】
このような前記一般式(VII')で示される化合物としては、具体的に、
(ジメチル(t-ブチルアミド)(テトラメチル-η5-シクロペンタジエニル)シラン)チタンジクロリド、
((t-ブチルアミド)(テトラメチル-η5-シクロペンタジエニル)-1,2-エタンジイル)チタンジクロリドなどが挙げられる。
【0159】
上記のようなメタロセン化合物は、1種単独でまたは2種以上組合わせて用いることができる。
また上記のようなメタロセン化合物は、粒子状担体に担持させて用いることもできる。
【0160】
このような粒子状担体としては、SiO2、Al2O3、B2O3、MgO、ZrO2、CaO、TiO2、ZnO、SnO2、BaO、ThOなどの無機担体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテン、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体などの有機担体を用いることができる。これらの粒子状担体は、1種単独でまたは2種以上組合わせて用いることができる。
【0161】
次に、メタロセン系触媒を形成する(b-2)有機アルミニウムオキシ化合物およびイオン化イオン性化合物について説明する。
(b-2)有機アルミニウムオキシ化合物は、従来公知のアルミノキサンであってもよく、また特開平2−78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。
【0162】
従来公知のアルミノキサンは、具体的には、下記一般式で表される。
【0163】
【化46】
【0164】
式中、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭化水素基を示し、好ましくはメチル基、エチル基、特に好ましくはメチル基である。
mは2以上の整数であり、好ましくは5〜40の整数である。
【0165】
ここで、アルミノキサンは式(OAl(R1 ))で表されるアルキルオキシアルミニウム単位および式(OAl(R2 ))で表されるアルキルオキシアルミニウム単位(ここで、R1 およびR2 はRと同様の炭化水素基であり、R1 およびR2 は相異なる基を示す。)からなる混合アルキルオキシアルミニウム単位から形成されていてもよい。
【0166】
なお有機アルミニウムオキシ化合物は、少量のアルミニウム以外の金属の有機化合物成分を含有していてもよい。
イオン化イオン性化合物としては、ルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物を例示することができる。
【0167】
ルイス酸としては、BR3 (式中、Rはフッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基などの置換基を有していてもよいフェニル基またはフッ素原子である。)で示される化合物が挙げられ、たとえばトルフルオロボロン、トリフェニルボロン、トリス(4-フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(4-フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリス(p-トリル)ボロン、トリス(o-トリル)ボロン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ボロンなどが挙げられる。
【0168】
イオン性化合物としては、トリアルキル置換アンモニウム塩、N,N-ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアリールホスフォニウム塩などを挙げることができる。具体的に、トリアルキル置換アンモニウム塩としては、たとえばトリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。ジアルキルアンモニウム塩としては、たとえばジ(1-プロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。さらにイオン性化合物として、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどを挙げることもできる。
【0169】
ボラン化合物としては、デカボラン(14)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ノナボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕デカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ドデカハイドライドドデカボレート)ニッケル酸塩(III)などの金属ボランアニオンの塩などが挙げられる。
【0170】
カルボラン化合物としては、4-カルバノナボラン(14)、1,3-ジカルバノナボラン(13)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(IV)などの金属カルボランアニオンの塩などが挙げられる。
【0171】
上記のようなイオン化イオン性化合物は、1種単独でまたは2種以上組合わせて用いることができる。
前記有機アルミニウムオキシ化合物またはイオン化イオン性化合物は、上述した粒子状担体に担持させて用いることもできる。
【0172】
また触媒を形成するに際しては、有機アルミニウムオキシ化合物またはイオン化イオン性化合物とともに以下のような有機アルミニウム化合物を用いてもよい。
【0173】
有機アルミニウム化合物としては、分子内に少なくとも1個のAl−炭素結合を有する化合物が利用できる。このような化合物としては、たとえば下記一般式で表される有機アルミニウム化合物が挙げられる。
【0174】
(R1 )m Al(O(R2 ))nHpXq
(式中、R1 およびR2 は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が通常1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3を満たす数であって、しかも、m+n+p+q=3である。)
本発明では、上記のようなオレフィン重合用触媒の存在下に(i)エチレン、(ii)芳香族ビニル化合物および(iii)非共役トリエンまたはテトラエン、必要に応じて(iv)α−オレフィンを通常液相で共重合させる。この際、一般に炭化水素溶媒が用いられるが、α−オレフィンを溶媒として用いてもよい。共重合はバッチ法または連続法のいずれの方法でも行うことができる。
【0175】
メタロセン系触媒を用い、共重合をバッチ法で実施する場合には、重合系内のメタロセン化合物の濃度は、重合容積1リットル当り、通常0.00005〜0.1ミリモル、好ましくは0.0001〜0.05ミリモルの量で用いられる。有機アルミニウムオキシ化合物は、メタロセン化合物中の遷移金属原子(M)に対するアルミニウム原子(Al)のモル比(Al/M)で、1〜10000、好ましくは10〜5000となるようなの量で用いられる。
【0176】
イオン化イオン性化合物は、メタロセン化合物に対するイオン化イオン性化合物のモル比(イオン化イオン性化合物/メタロセン化合物)で、0.5〜20、好ましくは1〜10となるような量で用いられる。
【0177】
また有機アルミニウム化合物が用いられる場合には、重合容積1リットル当り、通常約0〜5ミリモル、好ましくは約0〜2ミリモルとなるような量で用いられる。
【0178】
共重合反応は、通常、温度が−20〜150℃、好ましくは0〜120℃、さらに好ましくは0〜100℃の範囲で、圧力が0を超えて〜80kg/cm2 、好ましくは0を超えて〜50kg/cm2 の範囲の条件下に行なわれる。
【0179】
(i)エチレン、(ii)芳香族ビニル化合物および(iii)非共役トリエンまたはテトラエン、必要に応じて(iv)α−オレフィンは、上述のような特定組成の(A)不飽和性オレフィン系共重合体が得られるような量で重合系に供給される。さらに共重合に際しては、水素などの分子量調節剤を用いることもできる。
【0180】
上記のようにして(i)エチレン、(ii)芳香族ビニル化合物および(iii)非共役トリエンまたはテトラエン、必要に応じて(iv)α−オレフィンを共重合させると、不飽和性オレフィン系共重合体は通常これを含む重合液として得られる。この重合液は、常法により処理され(A)不飽和性オレフィン系共重合体が得られる。
【0181】
(B)ニトリルゴムおよび/または水素化ニトリルゴム
ニトリルゴムは、ブタジエンとアクリロニトリルを主成分とする共重合体であり、具体的には、アクリロニトリル含量が10〜40重量%、ムーニー粘度〔ML1+4(100℃)〕が20〜100の範囲にあるものが用いられる。
【0182】
また水素化ニトリルゴムは、上記のようなニトリルゴムを水添して得られるゴムであり、具体的には、ヨウ素価が2〜40の範囲にあるものが用いられる。
ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムは、1種単独でまたは2種以上組合わせて用いることができる。
【0183】
このような(B)ニトリルゴムおよび/または水素化ニトリルゴムを配合すると、加硫物の耐寒性が向上する。
(C)加硫剤
加硫剤(C)としては、イオウ、イオウ化合物および有機過酸化物などをが挙げられる。
【0184】
イオウとして具体的には、粉末イオウ、沈降イオウ、コロイドイオウ、表面処理イオウ、不溶性イオウなどが挙げられる。
イオウ化合物として具体的には、塩化イオウ、二塩化イオウ、高分子多硫化物などが挙げられる。また、加硫温度で活性イオウを放出して加硫するイオウ化合物、たとえばモルフォリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジメチルジチオカルバミン酸セレンなども使用することができる。なお、加硫剤としてイオウまたはイオウ化合物を用いる場合には、加硫促進剤を併用することが好ましい。
【0185】
有機過酸化物として具体的には、ジクミルパーオキサイド(DCP)、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-アミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシン)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-ヘキサン、α,α'-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、t-ブチルヒドロパーオキサイドなどのアルキルパーオキサイド類;t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t-ブチルパーオキシフタレートなどのパーオキシエステル類;ジシクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類が挙げられる。これらの有機過酸化物は、1種単独でまたは2種以上組合わせて用いることができる。
【0186】
これらのうちでは、1分半減期温度が130℃〜200℃である有機過酸化物が好ましく、具体的にジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-アミルパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイドなどが好ましい。なお、加硫剤として有機過酸化物を用いる場合には、加硫助剤を併用することが好ましい。
【0187】
上記のような各種加硫剤のうち、イオウまたはイオウ系化合物、特にイオウを用いると優れた特性の加硫物を得ることができるため好ましい。
(D)充填剤
(D)充填剤には、補強性のある充填剤と補強性のない充填剤とがある。
【0188】
補強性のある充填剤は、加硫物の引張り強さ、引裂き強さ、耐摩耗性などの機械的性質を高める効果がある。このような充填剤として具体的には、SRF、GPF、FEF、MAF、HAF、ISAF、SAF、FT、MTなどのカーボンブラック、これらカーボンブラックをシランカップリング剤などで表面処理したもの、シリカ、活性化炭酸カルシウム、微粉タルクなどが挙げられる。充填剤としてカーボンブラックを用いる場合、通常ゴムに使用されるカーボンブラックならばその種類は問わず全て用いることができる。
【0189】
また、補強性のない充填剤は、物性にあまり影響を与えることなく、ゴム製品の硬さを高めたり、コストを引き下げることを目的として使用される。このような充填剤としては、具体的には、タルク、クレー、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
【0190】
ポリエン系エラストマー組成物
ポリエン系エラストマー組成物は、上記のような(A)不飽和性オレフィン系共重合体ならびに(B)ニトリルゴムおよび/または水素化ニトリルゴム、必要に応じて、(C)加硫剤および(D)充填材から選ばれる少なくとも1種の配合剤とからなる。
【0191】
前記ポリエン系エラストマー組成物においては、不飽和性オレフィン系共重合体(A)とニトリルゴムおよび/または水素化ニトリルゴム(B)との重量比〔(A)/(B)〕が1/99〜99/1、好ましくは1/99〜90/10、より好ましくは2/98〜80/20、さらに好ましくは2/98〜70/30の範囲にある。
【0192】
(C)加硫剤は、イオウまたはイオウ系化合物であるときには、(A)不飽和性オレフィン系共重合体と(B)ニトリルゴムおよび/または水素化ニトリルゴムとの合計量100重量部に対して、通常0.5〜10重量部、好ましくは1〜10重量部、さらに好ましくは1〜5重量部の割合で用いられる。有機過酸化物であるときには、(A)不飽和性オレフィン系共重合体と(B)ニトリルゴムおよび/または水素化ニトリルゴムとの合計量100グラムに対して、0.0003〜0.05モル好ましくは0.001〜0.03モルの量で用いられる。
【0193】
(D)充填剤は、(A)不飽和性オレフィン系共重合体と(B)ニトリルゴムおよび/または水素化ニトリルゴムとの合計量100重量部に対して、通常300重量部以下、好ましくは10〜300重量部、より好ましくは10〜200重量部の割合で用いられる。
【0194】
ポリエン系エラストマー組成物は、(A)不飽和性オレフィン系共重合体および(B)ニトリルゴムおよび/または水素化ニトリルゴムと、必要に応じて(C)加硫剤および(D)充填剤から選ばれる少なくとも1種の配合剤、さらに他のゴム配合剤とを配合し、バンバリーミキサー、ニーダー、インターミックスなどのインターナルミキサー類による混合法等等の従来公知の方法で混練することにより製造することができる。ポリエン系エラストマー組成物において、(A)不飽和性オレフィン系共重合体と(B)ニトリルゴムおよび/または水素化ニトリルゴムとの合計量は、通常20重量%以上、好ましくは25重量%以上である。
【0195】
本発明に係るポリエン系エラストマー組成物は、未加硫のままでも用いることができるが、加硫物として用いた場合に最もその特性を発揮することができる。すなわち(A)不飽和性オレフィン系共重合体には、加硫物に耐候性、耐オゾン性などの特性を向上させる働きがあり、(B)ニトリルゴムおよび/または水素化ニトリルゴムには、加硫速度を向上させたり、加硫物の強度特性を向上させる働きがある。
【0196】
(C)加硫剤を含まないポリエン系エラストマー組成物から加硫物を製造するには、通常一般のゴムを加硫するときと同様に、未加硫の配合ゴム(ポリエン系エラストマー組成物)を一度調製し、次にこの配合ゴムを意図する形状に成形した後に加硫を行なえばよい。加硫方法としては電子線を照射する方法が採用される。
【0197】
(C)加硫剤を含むポリエン系エラストマー組成物から加硫物を製造するには、通常一般のゴムを加硫するときと同様に、未加硫の配合ゴム(ポリエン系エラストマー組成物)を一度調製し、次にこの配合ゴムを意図する形状に成形した後に加硫を行なえばよい。
【0198】
なお本発明では前記未加硫の配合ゴムには、上記の不飽和性オレフィン系共重合体(A)、ニトリルゴムおよび/または水素化ニトリルゴム(B)、加硫剤(C)および充填剤(D)に加えて、加硫促進剤、加硫助剤、軟化剤、粘着付与剤、老化防止剤、発泡剤、加工助剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、着色剤、滑剤、難燃剤、ブルーミング防止剤などのゴム配合剤を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
【0199】
加硫促進剤として具体的には、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBZ)、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(2,4-ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2-(2,6-ジエチル-4-モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド等のチアゾール系化合物;ジフェニルグアニジン(DPG)、トリフェニルグアニジン、ジオルソニトリルグアニジン、オルソニトリルバイグアナイド、ジフェニルグアニジンフタレート等のグアニジン化合物;アセトアルデヒド−アニリン反応物、ブチルアルデヒド−アニリン縮合物、ヘキサメチレンテトラミン、アセトアルデヒドアンモニア等のアルデヒドアミンまたはアルデヒド−アンモニア系化合物;2-メルカプトイミダゾリン等のイミダゾリン系化合物;チオカルバニリド、ジエチルチオユリア、ジブチルチオユリア、トリメチルチオユリア、ジオルソトリルチオユリア等のチオユリア系化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム系化合物;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ-n-ブチルジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ブチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、ジメチルジチオカルバミン酸テルル等のジチオ酸塩系化合物;ジブチルキサントゲン酸亜鉛等のザンテート系化合物;亜鉛華等の化合物などを挙げることができる。これらの加硫促進剤は、(A)不飽和性オレフィン系共重合体と(B)ニトリルゴムおよび/または水素化ニトリルゴムとの合計量100重量部に対して、1〜20重量部、好ましくは2〜10重量部の量で用いられる。
【0200】
加硫助剤として具体的には、イオウ;p-キノンジオキシムなどのキノンジオキシム系化合物、および多官能性モノマー、たとえばトリメチロールプロパントリアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレートなどの(メタ)アクリレート系化合物;ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレートなどのアリル系化合物;m-フェニレンビスマレイミドなどのマレイミド系化合物;ジビニルベンゼンなどが挙げられる。加硫助剤は、有機過酸化物1モルに対して0.5〜2モル、好ましくはほぼ等モルの量で用いることが好ましい。
【0201】
軟化剤としては、従来ゴムに配合されている軟化剤が広く用いられ、具体的には、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリンなどの石油系軟化剤;コールタール、コールタールピッチなどのコールタール系軟化剤;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、ヤシ油などの脂肪油系軟化剤;トール油;サブ;蜜ロウ、カルナウバロウ、ラノリンなどのロウ類;リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛などの脂肪酸および脂肪酸塩;石油樹脂、アタクチックポリプロピレン、クマロンインデン樹脂などの合成高分子物質を挙げることができる。なかでも石油系軟化剤が好ましく用いられ、特にプロセスオイルが好ましく用いられる。軟化剤は、(A)不飽和オレフィン系共重合体と(B)ニトリルゴムおよび/または水素化ニトリルゴムとの合計量100重量部に対して、200重量部以下、好ましくは5〜200重量部、より好ましくは10〜150重量部、さらに好ましくは10〜100重量部の量で用いられる。
【0202】
発泡剤としては、一般的にゴムを発泡成形する際に用いられる発泡剤を広く使用することができ、具体的には、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウムなどの無機発泡剤、N,N'-ジメチル-N,N'-ジニトロソテレフタルアミド、N,N'-ジニトロソペンタメチレンテトラミンなどのニトロソ化合物、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウムアゾジカルボキシレートなどのアゾ化合物、ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、p,p'-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン-3,3'-ジスルホニルヒドラジドなどのスルホニルヒドラジド化合物、カルシウムアジド、4,4-ジフェニルジスルホニルアジド、p-トルエンスルホルニルアジドなどのアジド化合物が挙げられる。これらのうちでは、ニトロソ化合物、アゾ化合物、アジド化合物が好ましい。発泡剤は、(A)不飽和性オレフィン系共重合体と(B)ニトリルゴムおよび/または水素化ニトリルゴムとの合計量100重量部に対して、0.5〜30重量部好ましくは1〜20重量部の量で用いられる。このような量で発泡剤を含有するポリエン系エラストマー組成物からは、見掛け比重が0.03〜0.8g/cm3 の発泡体を製造することができる。
【0203】
また発泡剤とともに発泡助剤を用いることもでき、発泡助剤を併用すると、発泡剤の分解温度の低下、分解促進、気泡の均一化などの効果がある。このような発泡助剤としては、サリチル酸、フタル酸、ステアリン酸、しゅう酸などの有機酸、尿素またはその誘導体などが挙げられる。発泡助剤は、(A)不飽和性オレフィン系共重合体と(B)ニトリルゴムおよび/または水素化ニトリルゴムとの合計量100重量部に対して0.01〜10重量部好ましくは0.1〜5重量部の量で用いられる。
【0204】
加工助剤としては、一般的に加工助剤としてゴムに配合されるものを広く使用することができる。具体的には、リシノール酸、ステアリン酸、パルチミン酸、ラウリン酸などの酸、これら高級脂肪酸の塩たとえばステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムまたはエステル類などが挙げられる。加工助剤は、(A)不飽和性オレフィン系共重合体と(B)ニトリルゴムおよび/または水素化ニトリルゴムとの合計量100重量部に対して、10重量部以下、好ましくは5重量部以下の量で適宜用いられる。
【0205】
本発明に係るポリエン系エラストマー組成物から加硫物を製造する方法としては、特に限定されないが、具体的には例えば以下のような方法が採用される。
すなわち、バンバリーミキサーなどのミキサーを用い(A)不飽和性オレフィン系共重合体および(B)ニトリルゴムおよび/または水素化ニトリルゴム、必要に応じて(D)充填剤、(E)液状軟化剤、他のゴム配合剤などを80〜170℃の温度で3〜10分間混練した後、オープンロールなどのロールを用い、(C)加硫剤、必要に応じて加硫促進剤を追加混合し、ロール温度40〜80℃で5〜30分間混練した後、分出し、リボン状またはシート状の未加硫の配合ゴムを調製する。なお上記のインターナルミキサー類での混練温度が低い場合には、加硫剤(C)、加硫促進剤、発泡剤などを同時に混練することもできる。
【0206】
このようにして調製された未加硫の配合ゴムを、押出成形機、カレンダーロール、またはプレスにより意図する形状に成形し、成形と同時に150〜270℃の温度で1〜30分間加熱するか、または成形物を加硫槽内に導入し、150〜270℃の温度で1〜30分間加熱することにより加硫物を得る。加硫は金型内で行ってもよく、また金型を用いないで行ってもよい。金型を用いない場合は成形、加硫の工程は通常連続的に実施される。加硫槽における加熱方法としては熱空気、ガラスビーズ流動床、UHF(極超短波電磁波)、スチームなどの加熱槽を用いることができる。
【0207】
加硫方法として、電子線を照射する方法を採用する場合は、バンバリーミキサーなどのミキサーを用い(A)不飽和性オレフィン系共重合体および(B)ニトリルゴムおよび/または水素化ニトリルゴム、必要に応じて(D)充填剤、他のゴム配合剤などを80〜170℃の温度で3〜10分間混練した後、オープンロールなどのロール類を用い、ロール温度40〜80℃で5〜30分間混練した後、分出し、リボン状またはシート状の未加硫の配合ゴムを調製する。このようにして調製された未加硫の配合ゴムは押出成形機、カレンダーロール、またはプレスにより意図する形状に成形し、電子線を照射することにより加硫物が得られる。電子線の照射は、0.1〜10MeV(メガエレクトロンボルト)、好ましくは0.3〜2MeVのエネルギーを有する電子を、吸収線量が0.5〜35Mrad(メガラッド)、好ましくは0.5〜10Mradになるように行うことが望ましい。
【0208】
このようにして得られた加硫物は、自動車部品、一般工業用部品、土木建材用部品などの用途に広く用いられる。とりわけ、耐油性および耐動的疲労性ほ要求される用途、たとえば自動車エンジン回りの部品、防振ゴム、ゴムロール、ベルト、ワイパーブレード、各種パッキンなどに好適に用いられる。このような加硫物は、耐引き裂き性等が良好である。
【0209】
さらに、本発明に係るポリエン系エラストマー組成物からは発泡体を製造することもでき、発泡体を製造する場合には、通常ゴムに使用される発泡剤、および必要に応じて発泡助剤を配合し発泡させることにより製造できる。これらの発泡剤は不飽和性オレフィン系共重合体(A)とニトリルゴムおよび/または水素化ニトリルゴム(B)との合計量100重量部に対して0.5〜30重量部、好ましくは1〜20重量部の量で用いられる。得られる発泡体のみかけ比重は、通常0.03〜0.7の範囲である。得られた発泡体は、断熱材、断熱材、クッション材、シーリング材などの用途に用いることができる。
【0210】
【発明の効果】
本発明に係るポリエン系エラストマー組成物は、強度特性、耐油性、耐候性、耐オゾン性、低温特性および耐動的疲労性(耐屈曲疲労性)に優れている。
【0211】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0212】
【合成例1】
1.5リットルのオートクレーブを窒素で充分に置換し、ヘキサン430ml、スチレン35ml、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン(EMND)6.5mlを仕込んだ。さらにプロピレンを2.5kg/cm2 になるように導入した。次いで攪拌しながら系内を40℃に昇温しエチレンを8kg/cm2 になるように導入した。次に、別の反応器にメチルアルミノオキサン(東ソーアクゾ社製、3重量%トルエン溶液)9.2mmol、公知の方法により合成した(ジメチル(tert-ブチルアミド)(テトラメチル-η5-シクロペンタジエニル)シラン)ジクロライドチタン0.018mmolを加え、この混合溶液を15分間攪拌した後、オートクレーブに導入し重合を開始した。この重合中系内の圧力を8kg/cm2 に保つようにエチレンを連続供給し、30分間重合した。その後、5mlのメタノールを添加し重合を終了した。重合終了後、1リットルのメタノールで重合溶液からポリマーを析出させた。析出したポリマーをさらに1リットルのメタノールで2回洗浄し、130℃、12時間減圧乾燥した。得られたエチレン・プロピレン・スチレン・EMND共重合体(共重合体(a))は、15gであり、エチレンから導かれる構成単位と、プロピレンから導かれる構成単位とのモル比(エチレン/プロピレン)は74/26であり、エチレンから導かれる構成単位とプロピレンから導かれる構成単位との合計量と、スチレンから導かれる構成単位とのモル比(エチレン+プロピレン/スチレン)は96/4であった。この共重合体のヨウ素価は18であり、135℃、デカリン中で測定した極限粘度[η]は2.5dl/gであった。
【0213】
【合成例2】
1.5リットルのオートクレーブを窒素で充分に置換し、トルエン380ml、スチレン100ml、EMND4.5mlを仕込んだ。さらにプロピレンを3.8kg/cm2 になるように導入した。次いで攪拌しながら系内を70℃に昇温しエチレンを6kg/cm2 になるように導入した。
【0214】
その後、重合中系内の圧力を6kg/cm2 に保つようにエチレンを連続供給したこと以外は合成例1と同様にして重合反応を行った。得られたエチレン・プロピレン・スチレン・EMND共重合体(共重合体(b))は、27gであり、エチレンから導かれる構成単位と、プロピレンから導かれる構成単位とのモル比(エチレン/プロピレン)は53/47であり、エチレンから導かれる構成単位とプロピレンから導かれる構成単位との合計量と、スチレンから導かれる構成単位とのモル比(エチレン+プロピレン/スチレン)は88/12であった。この共重合体のヨウ素価は12であり、135℃、デカリン中で測定した極限粘度[η]は1.9dl/gであった。
【0215】
【合成例3】
1.5リットルのオートクレーブを窒素で充分に置換し、トルエン460ml、スチレン17ml、EMND8mlを仕込んだ。さらに1-ブテンを1.5kg/cm2 になるように導入した。次いで攪拌しながら系内を50℃に昇温しエチレンを8kg/cm2 になるように導入した。
【0216】
その後、重合中系内の圧力を8kg/cm2 に保つようにエチレンを連続供給したこと以外は合成例1と同様にして重合反応を行った。得られたエチレン・1-ブテン・スチレン・EMND共重合体(共重合体(c))は、14gであり、エチレンから導かれる構成単位と、1-ブテンから導かれる構成単位とのモル比(エチレン/1-ブテン)は81/19であり、エチレンから導かれる構成単位と1-ブテンから導かれる構成単位との合計量と、スチレンから導かれる構成単位とのモル比(エチレン+1-ブテン/スチレン)は98/2であった。この共重合体のヨウ素価は22であり、135℃、デカリン中で測定した極限粘度[η]は1.8dl/gであった。
【0217】
【合成例4】
1.5リットルのオートクレーブを窒素で充分に置換し、トルエン460ml、スチレン25ml、EMND4ml、1-オクテンを25mlを仕込んだ。次いで攪拌しながら系内を70℃に昇温しエチレンを7kg/cm2 になるように導入した。
【0218】
その後、重合中系内の圧力を7kg/cm2 に保つようにエチレンを連続供給したこと以外は合成例1と同様にして重合反応を行った。得られたエチレン・1-オクテン・スチレン・EMND共重合体(共重合体(d))は、21gであり、エチレンから導かれる構成単位と、1-オクテンから導かれる構成単位とのモル比(エチレン/1-オクテン)は90/10であり、エチレンから導かれる構成単位と1-オクテンから導かれる構成単位との合計量と、スチレンから導かれる構成単位とのモル比(エチレン+1-オクテン/スチレン)は97/3であった。この共重合体のヨウ素価は8であり、135℃、デカリン中で測定した極限粘度[η]は1.8dl/gであった。
【0219】
【合成例5】
合成例1において、(ジメチル(tert-ブチルアミド)(テトラメチル-η5-シクロペンタジエニル)シラン)ジクロライドチタンを公知の方法で合成したイソプロピリデン-ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリドに変更した以外は合成例1と同様に行い、エチレン・プロピレン・スチレン・EMND共重合体(共重合体(e))を得た。得られたエチレン・プロピレン・スチレン・EMND共重合体(共重合体(e))は、エチレンから導かれる構成単位と、プロピレンから導かれる構成単位とのモル比(エチレン/プロピレン)は76/24であり、エチレンから導かれる構成単位とプロピレンから導かれる構成単位との合計量と、スチレンから導かれる構成単位とのモル比(エチレン+プロピレン/スチレン)は95/5であった。この共重合体のヨウ素価は20であり、135℃、デカリン中で測定した極限粘度[η]は2.0dl/gであった。
【0220】
【実施例1】
前記合成例1にて製造した共重合体(a)、ニトリルゴム(ニポール1042TM、日本ゼオン(株)製)、HAFカーボンブラック(旭カーボン(株)製)、亜鉛華、ステアリン酸、ジオクチルフタレート、加硫促進剤(DPG、CBZ)および硫黄を加えオープンロール(前ロール/後ロール:50/60℃、16/18rpm)で混練し配合ゴムを得た。
【0221】
上記のようにして得られた配合ゴムをシート出しして、150℃に加熱されたプレスにより30分間加熱して厚さ2mmの加硫物シートを作製して、この加硫物シートについて以下の試験を行なった。結果を表1に示す。
【0222】
[引張試験]
JIS K 6301に従って引張強度(TB)および伸び(EB)を測定した。
【0223】
[硬さ試験]
JIS K 6301に従ってJIS A硬度(HS)を測定した。
[耐オゾン試験]
耐オゾン試験は、オゾン試験槽内で行い、条件は、オゾン濃度が80ppm、伸長率が80%、温度が40℃、時間が96時間の静的試験であった。耐オゾン性の評価は、表面の劣化状態をJIS K 6301の基準に従って行った。表面状態の評価基準は、以下の通りであり、たとえば「C−5」というように表示する。
【0224】
亀裂の数
A … 亀裂少数
B … 亀裂多数
C … 亀裂無数
亀裂の大きさおよび深さ
1 … 肉眼では見えないが10倍の拡大鏡では確認できるもの
2 … 肉眼で確認できるもの
3 … 亀裂が深くて比較的大きいもの(1mm未満)
4 … 亀裂が深くて大きいもの(1mm以上3mm未満)
5 … 3mm以上の亀裂または切断を起こしそうなもの
[屈曲試験]
屈曲試験は、JIS K 6301に従いデマッチャー試験機による亀裂成長に対する抵抗性を調べた。すなわち、亀裂が15mmになるまでの屈曲回数を測定し、耐動的疲労性の指標とした。
【0225】
[耐油試験]
耐油試験は、JIS K 6301に規定されている浸漬試験に準拠して行ない、試験片の体積変化率(ΔV(%))を求めた。なお、試験用油としてJIS3号油を用い、100℃/72時間の条件で行なった。
【0226】
【実施例2】
実施例1において、共重合体(a)の量を70重量部とし、ニトリルゴムの量を30重量部としたこと以外は実施例1と同様に行なった。結果を表1に示す。
【0227】
【実施例3】
実施例1において、共重合体(a)に代えて、合成例2にて製造した共重合体(b)を用いたこと以外は実施例1と同様に行なった。結果を表1に示す。
【0228】
【実施例4】
実施例1において、共重合体(a)に代えて、合成例3にて製造した共重合体(c)を用いたこと以外は実施例1と同様に行なった。結果を表1に示す。
【0229】
【実施例5】
実施例1において、共重合体(a)に代えて、合成例3にて製造した共重合体(d)を用いたこと以外は実施例1と同様に行なった。結果を表1に示す。
【0230】
【実施例6】
実施例1において、共重合体(a)に代えて、合成例5にて製造した共重合体(e)を用いたこと以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0231】
【比較例1】
実施例1において、共重合体(a)の量を用いずに、ニトリルゴムの量を100重量部としたこと以外は実施例1と同様に行なった。結果を表1に示す。
【0232】
【比較例2】
実施例1において、ニトリルゴムを用いずに、共重合体(a)の量を100重量部としたこと以外は実施例1と同様に行なった。結果を表1に示す。
【0233】
【比較例3】
実施例2において、共重合体(a)に代えて、エチレン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体(EPDM、エチレン含量:70モル%、135℃、デカリン中で測定した極限粘度[η]:2.5dl/g、ヨウ素価:20)を用いたこと以外は実施例2と同様に行なった。結果を表1に示す。
【0234】
【表1】
【0235】
【実施例7】
前記合成例1にて製造した共重合体(a)、水素化ニトリルゴム(ゼットポール2020LTM、日本ゼオン(株)製)、亜鉛華、ステアリン酸、FEFカーボンブラック(旭カーボン(株)製)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(エバフレックス45XTM、三井デュポンポリケミカル(株)製)を1.7リットルのバンバリーミキサー(神戸製鋼社製)で混練後、ジクミルパーオキシド(三井DPC社製)を加えオープンロール(前ロール/後ロール:50/60℃、16/18rpm)で混練し配合ゴムを得た。
【0236】
上記のようにして得られた配合ゴムをシート出しして、170℃に加熱されたプレスにより20分間加熱して厚さ2mmの加硫物シートを作製して、この加硫物シートについて実施例1と同様に試験を行なった。また、引き裂き試験は以下のように行なった。結果を表2に示す。
【0237】
[引き裂き試験]
引き裂き試験は、2枚の未加硫ゴムシートの間に幅20mmのテフロンシートを挟み、プレス加硫後、テフロンシートを挟んだ所をチャックにかけて引張り、剥離強度を測定した。
【0238】
【実施例8】
実施例7において、共重合体(a)の量を70重量部とし、水素化ニトリルゴムの量を30重量部としたこと以外は実施例1と同様に行なった。結果を表2に示す。
【0239】
【実施例9】
実施例7において、共重合体(a)に代えて、合成例2にて製造した共重合体(b)を用いたこと以外は実施例7と同様に行なった。結果を表2に示す。
【0240】
【実施例10】
実施例7において、共重合体(a)に代えて、合成例3にて製造した共重合体(c)を用いたこと以外は実施例7と同様に行なった。結果を表2に示す。
【0241】
【実施例11】
実施例7において、共重合体(a)に代えて、合成例3にて製造した共重合体(d)を用いたこと以外は実施例7と同様に行なった。結果を表2に示す。
【0242】
【比較例4】
実施例7において、共重合体(a)を用いずに、水素化ニトリルゴムの量を100重量部としたこと以外は実施例7と同様に行なった。結果を表2に示す。
【0243】
【比較例5】
実施例7において、水素化ニトリルゴムを用いずに、共重合体(a)の量を100重量部としたこと以外は実施例7と同様に行なった。結果を表2に示す。
【0244】
【比較例6】
実施例8において、共重合体(a)に代えて、エチレン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体(EPDM、エチレン含量:70モル%、135℃、デカリン中で測定した極限粘度[η]:2.5dl/g、ヨウ素価:20)を用いたこと以外は実施例8と同様に行なった。結果を表2に示す。
【0245】
【表2】
Claims (10)
- から得られる不飽和性オレフィン系共重合体、および
(B)ニトリルゴムおよび/または水素化ニトリルゴムとからなり、
前記(A)不飽和性オレフィン系共重合体は、エチレン(i)から導かれる構成単位と炭素原子数が3〜20のα−オレフィン(iv)から導かれる構成単位とのモル比(エチレン/α−オレフィン)が100/0〜40/60の範囲にあり、前記(A)不飽和性オレフィン系共重合体と、前記(B)ニトリルゴムおよび/または水素化ニトリルゴムとの重量比((A)/(B))が1/99〜99/1の範囲にあることを特徴とするポリエン系エラストマー組成物;
- 前記ポリエン系エラストマー組成物は、(A)不飽和性オレフィン系共重合体および(B)ニトリルゴムおよび/または水素化ニトリルゴムに加えて、
(C)加硫剤を含有する請求項1に記載のポリエン系エラストマー組成物。 - 前記ポリエン系エラストマー組成物は、(A)不飽和性オレフィン系共重合体および(B)ニトリルゴムおよび/または水素化ニトリルゴムに加えて、
(C)加硫剤と、
(D)充填材と
を含有する請求項1に記載のポリエン系エラストマー組成物。 - 前記(iii)非共役トリエンまたはテトラエンは、下記一般式(II-a)で表され、かつ該非共役トリエンまたはテトラエンから導かれる構成単位が下記一般式(II-b)で表される化合物および、下記一般式(III-a)で表され、かつ該非共役トリエンまたはテトラエンから導かれる構成単位が下記一般式(III-b)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種の非共役トリエンまたはテトラエンである請求項1〜3のいずれかに記載のポリエン系エラストマー組成物;
- 前記一般式(II-a)で表される非共役トリエンまたはテトラエンは、下記一般式(IV-a)で表され、かつ該非共役トリエンまたはテトラエンから導かれる構成単位が下記一般式(IV-b)で表される化合物であり、前記一般式(III-a)で表される非共役トリエンまたはテトラエンは、下記一般式(V-a)で表され、かつ該非共役トリエンまたはテトラエンから導かれる構成単位が下記一般式(V-b)で表される化合物である請求項4に記載のポリエン系エラストマー組成物;
- 前記(iii)非共役トリエンまたはテトラエンは、前記一般式(II-a)で表され、かつ該非共役トリエンまたはテトラエンから導かれる構成単位が前記一般式(II-b)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種の非共役トリエンまたはテトラエンである請求項1〜3のいずれかに記載のポリエン系エラストマー組成物。
- 前記一般式(II-a)で表される非共役トリエンまたはテトラエンは、前記一般式(IV-a)で表され、かつ該非共役トリエンまたはテトラエンから導かれる構成単位が前記一般式(IV-b)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種の非共役トリエンまたはテトラエンである請求項6に記載のポリエン系エラストマー組成物。
- 前記(A)不飽和性オレフィン系共重合体は、エチレン(i)から導かれる構成単位と炭素原子数が3〜20のα−オレフィン(iv)から導かれる構成単位とのモル比(エチレン/α−オレフィン)が99/1〜40/60の範囲にあり、エチレン(i)から導かれる構成単位と炭素原子数が3〜20のα−オレフィン(iv)から導かれる構成単位との合計量と、芳香族ビニル化合物(ii)から導かれる構成単位とのモル比(エチレン+α−オレフィン/芳香族ビニル化合物)が99.5/0.5〜85/15の範囲にある請求項1〜7のいずれかに記載のポリエン系エラストマー組成物。
- 前記(A)不飽和性オレフィン系共重合体は、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が0.1〜10.0dl/gの範囲にある請求項1〜8のいずれかに記載のポリエン系エラストマー組成物。
- 前記(A)不飽和性オレフィン系共重合体は、ヨウ素価が1〜50の範囲にある請求項1〜9のいずれかに記載のポリエン系エラストマー組成物。
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