JP4152014B2 - 伝動ベルト及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、伝動ベルト及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
伝動ベルトの一例として、抗張体が設けられた接着ゴムを備え、該接着ゴムの背面に上布が設けられ、接着ゴムの内面側にベルト長さ方向に延びる複数の突条よりなるリブゴムが設けられてなるVリブドベルトがある(特開平8−303528号公報参照)。
【0003】
この公報には、平織布をバイアスカットして得られる複数の布片を順次接続することによって、縦糸と横糸とが長さ方向に対して互いに逆方向に斜めになった帯布を形成し、この帯布の両端を接続することによって筒に形成し、この筒を上布材としてベルト成形用のドラムに嵌めてベルト製造に供することが記載されている。この上布におけるバイアスカットの布片同士の接続線は、ベルト長さ方向に対して斜めに延び、また、帯布両端同士の接続線はベルト幅方向に延び、いずれの接続線も布片又は帯布の端同士が突き合わされて縫い合わされた突き合わせ構造になっている。
【0004】
また、上布に上述の如き突き合わせ接続構造が採用される以前においては、上記バイアスカットの布片の端部同士を重ね合わせて接続するとともに、上記帯布の両端も重ね合わせて接続するという重ね合わせ接続構造が採用されていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記突き合わせ接続構造の場合、次の問題がある。
【0006】
すなわち、図4において、11はバイアスカットの布片12を順次接続して得られた帯布、13は突き合わせ構造の斜方向接続線である。この帯布11を同図のA1,A2の2箇所で切断し、得られた切断布の両端を突き合わせ接続して円筒状にすると、図11に円筒体27をドラム15に嵌めた状態を示すように、円筒にするときにできる幅方向接続線16と上記斜方向接続線13とが出会った三叉部を生ずる。図12には帯布11を図4のB1,B2の2箇所で切断した場合の円筒体28を示す。この場合は、三叉部が2箇所生ずることになる。
【0007】
しかし、切断布の両端を突き合わせて円筒になるように縫うこと、並びに得られた円筒体27,28をドラム15に嵌めることは、ベルト製造工程ないしは作業を煩雑なものにし、工数が増えるだけでなく、そのための設備を必要とする。特に、布の片面に予め未加硫ゴムを塗布したものにおいては、切断布を円筒状に縫うときに内側になる面が未加硫ゴムによって粘着性を有するから、縫製作業が難しくなり、さらに円筒体27,28の腰が弱い場合には、これをドラム15に嵌める作業も難しくなり、生産性を高めることの支障になる。また、上述の如き三叉部は強度的に弱い部分になるとともに、ベルトの見栄えを悪くする。
【0008】
これに対して、帯布11の切断位置を突き合わせ接続線13に当たらないように調整することによって、上記三叉部を生じないようにすることも考えられるが、帯布11に上布として使用できない部分を多く生ずることになり、ロスが大きくなるとともに、その調整は生産性を低下させる。
【0009】
一方、上記重ね合わせ接続構造の場合は次の問題がある。
【0010】
すなわち、図13において、31はバイアスカットの布片12を順次接続して得られた帯布、33は布片12同士の重ね合わせ構造の斜方向接続線である。この帯布31を同図のA1,A2の2箇所で切断し、得られた切断布の両端を突き合わせ接続して円筒状にすると、図14に円筒体34をドラム15に嵌めた状態を示すように、円筒にするときにできる幅方向接続線36と上記斜方向接続線33とが出会った三叉部を生ずる。この三叉部では布が上下に3枚重なった状態になる。図15には帯布31を図13のB1,B2の2箇所で切断した場合の円筒体37を示す。この場合は、布が上下に4枚重なった交叉部を生じている。
【0011】
このような各接続部での布の重なりは、ベルト全体のボリュームが増大するという不具合につながり、また、上記3枚重ね、4枚重ねの交叉部は、局部的に厚肉になった硬い部分を上布に作ることになり、その部分でベルト背面に凸部を生じたり、抗張体の位置がその部位でベルトの内側に若干ずれた状態になり易い。このことは、ベルトの断面の均一化に不利になり、ベルト走行中の振動や音を発生し易くなるとともに、ベルト寿命にも悪影響を与える。
【0012】
本発明は、従来の上述の如き問題を解決する伝動ベルト及びその製造方法を提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
この発明では、伝動ベルトの上布に上述の突き合わせ接続構造と重ね合わせ接続構造とを組み合わせて採用することにより、当該課題を解決している。
【0014】
この出願の発明の一つは、ベルト背面に上布が設けられた伝動ベルトにおいて、
上記上布は、複数の布片が接続されて円筒状に形成されていて、該布片同士の接続構造は、その一箇所は相隣る布片の端同士が重ね合わされた重ね合わせ接続構造に形成され、他の箇所は相隣る布片の端同士が突き合わされて縫い合わされた突き合わせ接続構造に形成されていることを特徴とする。
【0015】
すなわち、複数の接続箇所のうちの一箇所が重ね合わせ構造であるから、ベルト製造において上布材をドラムに装着するにあたり布を事前に円筒にする必要がなく、巻き付け方式を採用して当該上布の両端の接続に当該一箇所の重ね合わせ接続構造を採用すればよい。また、一箇所が重ね合わせ接続構造であり、他の接続部が突き合わせ接続構造であるから、突き合わせ接続部が三叉になって出会う状態になることを避けることができ、また、布が3枚以上に重なった部分を生ずることも避けることができる。
【0016】
上記上布は、これを、縦糸と横糸とがベルト長さ方向に対して互いに逆方向に斜めに延びる平織布によって形成され、且つベルト長さ方向に対して斜め方向に延びる一本以上の斜方向接続線とベルト幅方向に延びる1本の幅方向接続線とを備えており、上記斜方向接続線が上記突き合わせ接続構造に形成され、上記幅方向接続線が上記重ね合わせ接続構造に形成されている、ものとすればよい。
【0017】
すなわち、一枚の上布に斜め方向接続線と幅方向接続線とが混在するから、上述の三叉部や3枚重ね、4枚重ねを生ずるのであり、この発明によれば、これを避けることができる。
【0018】
この出願の他の発明は、上述の如き伝動ベルトを製造する方法に関するものであって、それは、片面に未加硫ゴム層が積層された平織布を所定の間隔でその縦糸に対して斜めに延びる方向に順次切断していくことによって複数の布片を形成し(いわゆるバイアスカット)、
上記複数の布片の縦糸方向に延びる側縁同士を順次突き合わせて縫い合わせることによって帯布を形成し、
上記帯布を所定長さに切断し、
得られた切断布をベルト成形用ドラムに巻き付け且つ該切断布の巻き始め部分の上にその巻き終わり部分を重ね、この巻き付けられた切断布の上から未加硫ゴムシート、抗張体用コード、及び未加硫ゴムシートを順に巻き付けることによって、上記ドラムの上にベルト素材を円筒状に形成し、
上記ベルト素材の未加硫ゴム部分を加硫させることを特徴とする。
【0019】
この製造方法においては、帯布を構成する布片同士の接続線はベルト長さ方向に対して斜めに延びた斜方向接続線となり、ドラムに巻き付けた切断布両端同士の接続線はベルト幅方向に延びる幅方向接続線となる。しかし、斜方向接続線は突き合わせ接続構造であり、幅方向接続線は重ね合わせ接続構造であるから、従来の三叉部や3枚重ね、4枚重ねは生じない。もちろん、上布材のドラムへの装着は巻き付け方式であるから、それが粘着性を有するものであっても腰の弱いものであっても、その装着作業が容易であり、また、特別な設備は必要としない。
【0020】
【発明の効果】
従って、上記伝動ベルトに係る発明によれば、伝動ベルトの上布が、複数の布片を接続して円筒状に形成されたものであり、その布片同士の接続構造は、一箇所が重ね合わせ接続構造であり、他の箇所が突き合わせ接続構造であるから、突き合わせ接続部が三叉状態になることや、布が3枚以上に重なった部分を生ずることを避けることができ、ベルトの強度確保、振動・騒音の低減に有利になり、しかも、その製造が容易になるという効果が得られる。
【0021】
また、上記伝動ベルトの製造方法に係る発明によれば、片面に未加硫ゴム層が積層された平織布をバイアスカットして複数の布片を形成し、この複数の布片の接続に突き合わせ接続方式を採用して帯布を形成し、該帯布を所定長さに切断し、得られた切断布をベルト成形用ドラムに巻き付けるようにし、そして該切断布の両端同士の接続に重ね合わせ接続方式を採用したから、粘着性を有する上布材であっても腰の弱いものであっても、これをドラムに簡単に装着することができ、しかも上述の三叉部や3枚重ね、4枚重ねを生ずることがなく、強度的に優れ、且つ振動・騒音の少ない伝動ベルトを簡単に得ることができる、という格別な効果が得られる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
<伝動ベルトの構成>
図1に示す伝動ベルトはエンドレスのVリブドベルトであり、同図において、符号1は抗張体2が設けられた接着ゴム、符号3は接着ゴム1の背面側に被せられた上布、符号4は接着ゴム1の内側に設けられたリブゴムである。抗張体2はベルト長さ方向に延びピッチがベルト幅方向に進むようにスパイラルに設けられている。リブゴム4はベルト長さ方向に互いに平行に延びる3本のリブ(突条)4aを備えてなる。
【0024】
上布3は、複数の布片12を接続してなるものであり、ベルト長さ方向に対して斜めに延びる斜方向接続線13と、ベルト幅方向に延びる幅方向接続線16とを備えている。斜方向接続線13は、布片12の接続縁同士を突き合わせオーバーロックミシンによって縫い合わせた突き合わせ接続構造になっている。幅方向接続線16は、布片12の接続縁同士を上下に重ね合わせ、該重合部を強圧しゴムを介して接合した重ね合わせ接続構造になっている。この斜方向接続線13の一端は幅方向接続線16に出会っている。
【0025】
<伝動ベルトの製造方法>
図2に示すように、3本のロール5,5,5を逆L字状に配置してなるカレンダーを用いたフリクション操作によって、平織布6の片面に未加硫ゴムの層7を積層する。
【0026】
図3に示すように、上記フリクション操作によって得られたゴム付き布8を縦糸方向に対して45度をなす角度で所定間隔をおいて切断していく(バイアスカット)。同図の符号9は切断線である。
【0027】
図4に示すように、上記バイアスカットによって得られた複数のゴム付き布片12の縦糸方向に延びる側縁(図3に符号10で示す)同士を順次突き合わせてオーバロックミシンで縫い合わせることによってゴム付き帯布11を形成する。従って、この帯布11における布片12同士の斜方向接続線13は突き合わせ接続構造になっている。そして、この帯布11をその長さ方向に所定間隔をおいて切断していくことによって上布材を得る。
【0028】
図5に示すように、得られた上布材17をベルト成形用ドラム15に、横糸方向がドラム長手方向となるようにして巻き付け、その巻き始め部分の上に巻き終わり部分を重ね、この重合部をハンドローラで圧着する。従って、この上布材17の幅方向接続線16は重ね合わせ接続構造になっている。同図に示す上布材17は、図4に示す帯布11を、斜方向接続線13に交叉しないA1 線と、斜方向接続線13に交叉するA2 線とで切断して得たものである。従って、この上布材17においては、斜方向接続線13は幅方向接続線16と交わることになる。
【0029】
そうして、この上布材17の上から、接着ゴム層を形成するための未加硫ゴムシート、抗張体2、接着ゴム層を形成するための未加硫ゴムシート、並びにリブゴム4を形成するための未加硫ゴムシートをこの順で巻き付けることによって、上記ドラム15の上にベルト素材を円筒状に形成する。そして、このベルト素材を外側から加熱・加圧することによって、該ベルト素材の未加硫ゴム部分を加硫させる。
【0030】
以上によって得られた筒状の加硫成形体をドラム15から外し、そのリブゴム側の面に周方向に延びる溝を切削することによってリブ4aを形成する。しかる後、得られた成形体を輪切りにすることによって目的とするVリブドベルトを得る。
【0031】
図6には図4に示す帯布11を、各々斜方向接続線13に交叉するB1,B2線で切断して得た上布材18をドラム15に巻き付けた状態を示す。この場合は、2本の斜方向接続線13,13の各々が幅方向接続線16に交わることになる。
【0032】
<上布の破壊試験>
図1に示す実施例ベルト及び図7〜図9(いずれもベルトの部分平面図)の各々に示す比較例ベルトについて、図10に示すオープン掛け且つ背面掛けにして走行させ、上布の破壊試験を行なった。図7に示すベルト21は重ね合わせ構造の斜方向接続線33を有するもの(幅方向接続線との交叉なし)、図8に示すベルト22は各々突き合わせ構造の斜方向接続線13と幅方向接続線16とを有し且つこの両接続線が交叉していないもの、図9に示すベルト23は各々突き合わせ構造の斜方向接続線13と幅方向接続線16とを有し且つこの両接続線が交叉しているものである。原動プーリー24及び従動プーリー25はいずれも直径100mmのフラットプーリーである。原動プーリー24の回転速度は4000rpm、従動プーリー25の負荷は8PS、荷重DWは120kgである。また、試験は室温(20±5℃)で行なった。結果は表1に示されている。
【0033】
【表1】
【0034】
同表によれば、重ね合わせ構造の接続部及び突き合わせ構造の接続部は、各々単独で存在する場合には、耐久性があり、ベルト走行寿命を大きく損なうことがないこと、そして、突き合わせ構造の接続部同士が交叉している場合(図9のベルトの場合)にその交叉部から上布が剥離しベルトの耐久性が低下することがわかる。すなわち、図1の実施例ベルトのように、重ね合わせ構造の接続部と突き合わせ構造の接続部とが交叉していても、ベルトの走行寿命は図7及び図8のベルトからみて遜色はなく、これから本発明の有用性が裏付けられる。また、実施例ベルトは、布が3枚以上に重なることがないから、その走行時の振動・騒音も図7に示すベルトと同程度になる。
【0035】
なお、同表において、「突き合わせ接続部に筋発生」とは、突き合わせ接続部が両側から引っ張られた結果、当該接続部に浅く狭い溝が筋状に発生したことを意味する。また、図9のベルトの上布に剥離が発生したのは、突き合わせ接続部の交叉部では、一方の接続部の縫い糸と他方の接続部の縫い糸とが上布の裏面で重なり、当該部位における上布とベルト本体ゴムとの接着が局部的に低くなったためと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例のベルトを示す一部断面にした斜視図。
【図2】 同実施例の布に対するゴムのフリクション操作の状態を示す側面図。
【図3】 同実施例のゴム付き布のバイアスカット位置を示す平面図。
【図4】 同実施例のゴム付き帯布の切断位置を示す平面図。
【図5】 同実施例の上布材をベルト成形用ドラムに巻き付けた状態を示す斜視図。
【図6】 他の実施例の上布材をベルト成形用ドラムに巻き付けた状態を示す斜視図。
【図7】 上布破壊試験に供したベルトの一部を示す平面図。
【図8】 上布破壊試験に供した他のベルトの一部を示す平面図。
【図9】 上布破壊試験に供したさらに他のベルトの一部を示す平面図。
【図10】 上布破壊試験の態様を示す側面図。
【図11】 従来の上布材をベルト成形用ドラムに巻き付けた状態を示す斜視図。
【図12】 従来の他の上布材をベルト成形用ドラムに巻き付けた状態を示す斜視図。
【図13】 従来の重ね合わせ接続方式で形成された帯布の平面図。
【図14】 上記従来の帯布から得た上布材をベルト成形用ドラムに巻き付けた状態を示す斜視図。
【図15】 上記従来の帯布から得た他の上布材をベルト成形用ドラムに巻き付けた状態を示す斜視図。
【符号の説明】
1 接着ゴム
2 抗張体
3 上布
4 リブゴム
6 平織布
7 未加硫ゴム層
8 ゴム付き布
11 ゴム付き帯布
12 ゴム付き布片
13 斜方向接続線(突き合わせ接続構造)
15 ベルト成形用ドラム
16 幅方向接続線(重ね合わせ接続構造)
17 上布材
18 上布材
Claims (3)
- ベルト背面に上布が設けられた伝動ベルトにおいて、
上記上布は、複数の布片が接続されて円筒状に形成されていて、該布片同士の接続構造は、その一箇所は相隣る布片の端同士が重ね合わされた重ね合わせ接続構造に形成され、他の箇所は相隣る布片の端同士が突き合わされて縫い合わされた突き合わせ接続構造に形成されていることを特徴とする伝動ベルト。 - 請求項1に記載されている伝動ベルトにおいて、
上記上布は、縦糸と横糸とがベルト長さ方向に対して互いに逆方向に斜めに延びる平織布によって形成され、且つベルト長さ方向に対して斜め方向に延びる一本以上の斜方向接続線とベルト幅方向に延びる1本の幅方向接続線とを備えており、
上記斜方向接続線が上記突き合わせ接続構造に形成され、上記幅方向接続線が上記重ね合わせ接続構造に形成されていることを特徴とする伝動ベルト。 - 片面に未加硫ゴム層が積層された平織布を所定の間隔でその縦糸に対して斜めに延びる方向に順次切断していくことによって複数の布片を形成し、
上記複数の布片の縦糸方向に延びる側縁同士を順次突き合わせて縫い合わせることによって帯布を形成し、
上記帯布を所定長さに切断し、
得られた切断布をベルト成形用ドラムに巻き付け且つ該切断布の巻き始め部分の上にその巻き終わり部分を重ね、この巻き付けられた切断布の上から未加硫ゴムシート、抗張体用コード、及び未加硫ゴムシートを順に巻き付けることによって、上記ドラムの上にベルト素材を円筒状に形成し、
上記ベルト素材の未加硫ゴム部分を加硫させることを特徴とする伝動ベルトの製造方法。
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