JP4151135B2 - クイックリリースバルブ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両のエアブレーキ回路等に用いられるクイックリリースバルブに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、クイックリリースバルブを、エアブレーキ回路におけるブレーキバルブとブレーキチャンバとの間に配置し、ブレーキを解除する際に、ブレーキバルブを経ることなくブレーキチャンバのエアを外部に排出させて、迅速にブレーキ解除を可能にするようにした構成が知られている。
【0003】
図12は、従来のクイックリリースバルブの一例を示す縦断面図であり、図示しないブレーキバルブに接続された入力ポート2aと、図示しないブレーキチャンバに接続された出力ポート2bと、外部(大気)に連通する排気ポート2cとが形成されたハウジング2の弁室2d内に、弁体(ダイヤフラム)4が収容され、この弁体4が、入力ポート2a側の弁座(第1弁座)6および排気ポート2c側の弁座(第2弁座)8に着座または離座することにより、前記各ポート2a,2b、2c間の連通遮断を行なう。
【0004】
弁体(ダイヤフラム)4は、円柱部4aと、この円柱部4aの入力ポート2a側端部に形成されたフランジ部4bとを有しており、円柱部4aの排気ポート2c側端面が前記第2弁座8に着座可能であり、また、フランジ部4bの外周に設けられた弁部10が前記第1弁座6に着座可能になっている。この弁体4は、円柱部4aの外周に摺動自在に嵌合する筒状部12aと、この筒状部12aと一体に形成されたプレート状の部分12bとを有するリテーナ12に支持されており、プレート状の部分12bの外周部14が、前記弁体4の外周弁部10の背面に当接している。リテーナ12のプレート状の部分12bの内周寄りに貫通穴12cが形成されて、弁体4のフランジ部4bとリテーナ12のプレート部12bとの間の空間を、出力ポート2b側の弁室2d内に連通している。このリテーナ12は、外周部14と、ハウジング2の内面の排気ポート2c側の底面との間に配置したスプリング16によって、弁体4の外周弁部10を入力ポート2a側の第1弁座6方向に付勢している。
【0005】
前記クイックリリースバルブは、ブレーキの非作動時には、弁体4の外周弁部10が入力ポート2a側の第1弁座6に着座し、円柱部4aの端面が排気ポート2c側の第2弁座から離座しており、入力ポート2aと出力ポート2bとの連通を遮断し、出力ポート2bは、排気ポート2cを介して大気に連通している。この状態でブレーキバルブが作動し、圧縮エアが入力ポート2aに供給されると、この圧縮エアによりスプリング16に抗して弁体4が押し下げられ、弁体の外周弁部10が第1弁座6から離座するとともに、円柱部4aの端面が第2弁座8に着座する。これによりブレーキバルブからの圧縮エアが、弁室2d内に流入し、出力ポート2bからブレーキチャンバに送られる。この圧縮エアの圧力は、リテーナ12および弁体4の下面側に作用し、入力ポート2a側の圧力に対して出力ポート2b側の圧力が所定の大きさになると、弁体4の外周弁部10が再び第1弁座6に着座して圧縮エアの流入が停止する。
【0006】
このようなブレーキの作動状態で、ブレーキバルブの操作力を解除すると、入力ポート2aの圧縮エアが、ブレーキバルブを介して外部へ排出されるため、出力ポート2b側の圧縮エアが弁体4を押し上げて、円柱部4aの端面を排気ポート2c側の第2弁座8から離座させる。するとブレーキチャンバ内のエアが、出力ポート2bから排気ポート2cを経て外部へ排出され、出力ポート2b側の圧力が低下し、ブレーキチャンバー内は大気圧に戻る。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前記クイックリリースバルブでは、リテーナ12は、円筒部12aが弁体4の円柱部4aの外周に摺動自在に嵌合するとともに、プレート状の部分12bの外周部14がスプリング16によって弁体4の外周弁部10に当接しており、これら両者10,14が上下に相対移動可能になっているので、ブレーキバルブからの出力エア圧により、弁体4の外周弁部10がリテーナ12を押し下げながら下降して第1弁座6から離座する時に、弁体4の外周弁部10とリテーナ12の外周部14とが離れてしまう場合があった。このように離れてしまうと、弁体4の外周弁部10が非拘束状態になるため、外周弁部10が振動して第1弁座6と接離を繰返し、発振状態になってしまう。すると、ブレーキチャンバへの出力圧に脈動が発生したり、異音が発生してしまうという問題があった。
【0008】
また、前記弁体4は、ゴム等の可撓性材料で形成されているので、外周弁部10の剛性が小さく変形し易いため外周弁部10が振動する要因になっていた。特に、高温時等には剛性が下がって変形し易くなるため大きな問題であった。しかも、従来のクイックリリースバルブでは、弁体4がハウジング2の弁室2d内に収容され、外周側は拘束されていないため、弁体4やリテーナ12が振動したときに、半径方向に動いてしまう場合があり、振動を助長してしまうおそれがあった。
【0009】
本発明は前記課題を解決するためになされたもので、簡単な構造で、弁体の外周弁部とリテーナの外周部とが離れることを防止して、弁体の外周弁部の振動の発生を抑え、出力圧の脈動や異音の発生を防止することができ、しかも、組付け性が良好で低コストなクイックリリースバルブを提供することを目的とするものである。
【0010】
また、請求項5に記載の発明は、弁体の外周弁部の剛性を向上させることにより、弁体の変形を抑制し、振動の発生を防止することができるクイックリリースバルブを提供することを目的とするものである。さらに、請求項6に記載の発明は、リテーナの外周をガイドすることにより、リテーナおよび弁体の半径方向の移動を規制して、弁体の振動を抑制することができるクイックリリースバルブを提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るクイックリリースバルブは、入力ポート、出力ポートおよび排気ポートが形成され、入力ポート側の第1弁座と排気ポート側の第2弁座を有するハウジングと、前記第2弁座に着座する柱状部およびおよびこの柱状部の周囲に設けられ、前記第1弁座に着座するフランジ部外周の弁部を有する弁体と、前記柱状部に嵌合する筒状部および前記外周弁部の背面を支持する外周部を有するリテーナと、このリテーナを介して弁体の外周弁部を第1弁座方向へ付勢するスプリングとを備えたクイックリリースバルブにおいて、前記弁体に形成されたフランジ部の外周弁部この外周弁部の背面を支持するリテーナ外周部とを、作動時にも離れないように一体的に連結したものである。
【0012】
また、請求項5に記載の発明は、前記弁体の外周弁部の、第1弁座に着座するシート面以外の部分に、剛体部材を装着したものである。さらに、請求項6に記載の発明は、前記ハウジングの内周面に、リテーナの外周面が摺接するガイド突起を複数個所設けたものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面に示す実施の形態により本発明を説明する。図1は本発明の一実施の形態に係るクイックリリースバルブの縦断面図、図2はその要部の拡大図であり、前記図12に示す従来のクイックリリースバルブと同一の部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。このクイックリリースバルブでは、弁体4のフランジ部4bの外周弁部10が肉厚になり、その内周側に環状の係合溝10aが形成され、この係合溝10a内にリテーナ12の外周部14が挿入されている。
【0014】
このように、弁体4の外周弁部10とリテーナ12の外周部14とが一体化されているので、ブレーキ作動時に弁体4の外周弁部10が第1弁座6から離座した際でも、弁体4の外周弁部10とリテーナ12の外周部14とが離れてしまうことがなく、外周弁部10の振動を防止することができ、出力圧の脈動や異音の発生を防止することができる。しかも、部品点数を増加することなく、構造上の変更も僅かであり、低コストで前記効果を奏することができる。特に、弁体4の外周弁部10の係合溝10aは型成形により加工可能なので、極めて低コストである。さらに、外周弁部10の係合溝10aにリテーナ12の外周部14を挿入して係合させることにより、弁体4とリテーナ12とを一体化しているので、組付性も改善される。
【0015】
図3は前記実施の形態の変形例を示すもので、弁体4の外周弁部10とリテーナ12の外周部14の形状は前記従来の構成(図12参照)と同様であるが、これら両者10,14を接着して一体化したことを特徴とするものである。この構成の場合にも、弁体4の外周弁部10とリテーナ12の外周部14とが一体化されているので、前記構成と同様に、ブレーキ作動時の外周弁部10の振動を抑制し、出力圧の脈動および異音の発生等を防止することができる。
【0016】
また、図4はさらに他の変形例を示すもので、弁体4の外周弁部10の背面側(第1弁座6の逆側)に複数の頭部を有する係合突起10bを形成し、一方、リテーナ12の外周部14には貫通孔14aを形成し、前記係合突起10bを貫通孔14a内に挿入して嵌着している。この構成でも、弁体4の外周弁部10とリテーナ12の外周部14とを一体化することができ、前記構成と同様の効果を奏することができる。なお、係合突起10bおよび貫通穴14aの数は、適宜設定することができる。
【0017】
図5は他の実施の形態に係るクイックリリースバルブを示す縦断面図、図6はその拡大図であり、この例では、弁体4の外周弁部10の背面側に、金属または樹脂等の剛体部材であるワッシャ20を焼付または接着等により一体化したものである。弁体4は前述のように通常はゴム製であり、変形して振動を起こしやすかったが、剛体部材20が設けられているので、外周弁部10の変形を防止し、振動を抑制することができる。
【0018】
なお、剛体部材20は、図6に示すように弁体4の外周弁部10のリテーナ12側の面に設けるものに限らずその他の部位に設けても良い。例えば、図7に示すように、剛体部材20を、外周弁部10の上下の厚みのほぼ中間の内部に埋め込んだもの、または、剛体部材20を、外周弁部10の内部に埋め込み、一部を外周面に突出させたもの(図8参照)、あるいは、外周弁部10のリテーナ12側の面(図の下面)と外周面とを覆うようにしたもの(図9参照)等、剛体部材20を外周弁部10のシート面以外に設けたものであれば良い。これらの場合にも、図5および図6の構成と同様に、外周弁部10の変形を防止し、振動を抑制することができる。
【0019】
図10は、さらに他の実施の形態を示す縦断面図、図11は図10のXI−XI線に沿う断面図であり、この例では、ハウジング2の弁室2dの内周面に、リテーナ12の外周面12dに摺接するガイド突起22を複数個所(この例では4個所)に設けている。このようにガイド突起22を設けたので、ブレーキの作動時に弁体4およびリテーナ12が移動(図の上下方向に移動)する際に、リテーナ12の外周面12dがガイド突起22に案内されることになり、これら4,12の半径方向の移動を規制することができる。そして、ガイド突起22の間の空間24は、入力ポート2aから出力ポート2bへのエア通路になっている。
【0020】
前記各実施の形態に係るクイックリリースバルブおよび従来のクイックリリースバルブの構成では、いずれも、弁体4の外周弁部10の外周面およびリテーナ12の外周面12dが拘束されていないので、弁体4やリテーナ12が振動した際に、これら弁体4およびリテーナ12が半径方向(弁体4が各弁座6,8に向かって移動する方向と直交する方向)に移動してしまうおそれがあるが、この実施の形態では、弁体4およびリテーナ12の半径方向の動きを抑制することができ、外周弁部10の振動を防止することができる。なお、この図10の構成では、リテーナ12の外周部14が薄いプレート状であり、ガイド突起22に案内されて摺動する際に、引っ掛かるおそれがあるので、この外周部14を折曲げて円筒状にし、この円筒部の外周面をガイド突起22への摺動面とすることにより、円滑に摺動させることができる。
【0021】
なお、図10および図11に示す構成では、弁体4およびリテーナ12の半径方向の動きを抑制することにより、弁体4の外周弁部10の振動を防止するようにしたが、外周弁部10の剛性が小さく変形し易い点は従来の構成と同様であるので、この構成と図6ないし図9の構成と組み合わせることにより、弁体4の外周弁部10の剛性を高めることができ、より一層外周弁部10の振動を防止することができる。
【0022】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、入力ポート、出力ポートおよび排気ポートが形成され、入力ポート側の第1弁座と排気ポート側の第2弁座を有するハウジングと、前記第2弁座に着座する柱状部およびおよびこの柱状部の周囲に設けられ、前記第1弁座に着座するフランジ部外周の弁部を有する弁体と、前記柱状部に嵌合する筒状部および前記外周弁部の背面を支持する外周部を有するリテーナと、このリテーナを介して弁体の外周弁部を第1弁座方向へ付勢するスプリングとを備えたクイックリリースバルブにおいて、前記弁体に形成されたフランジ部の外周弁部この外周弁部の背面を支持するリテーナ外周部とを、作動時にも離れないように一体的に連結したことにより、極めて簡単な構造により、弁体の外周弁部とリテーナの外周部とが離れることを防止でき、外周弁部の振動を抑制することができるので、出力圧の脈動や異音の発生を防止することができる。
【0023】
また、前記弁体の外周弁部の、第1弁座に着座するシート面以外の部分に、剛体部材を装着したことにより、外周弁部の変形を防止でき、その振動を抑制することができる。さらに、前記ハウジングの内周面に、リテーナの外周面が摺接するガイド突起を複数個所設けたことにより、弁体作動時の弁体及びリテーナの半径方向の移動を抑制できるので、外周弁部の振動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係るクイックリリースバルブの縦断面図である。
【図2】前記クイックリリースバルブの要部(図1のA部)の拡大図である。
【図3】図2の変形例を示す図である。
【図4】図2の変形例を示す図である。
【図5】他の実施の形態に係るクイックリリースバルブの縦断面図である。
【図6】図5の要部の拡大図である。
【図7】図6の変形例を示す図である。
【図8】図6の変形例を示す図である。
【図9】図6の変形例を示す図である。
【図10】さらに他の実施の形態に係るクイックリリースバルブを示す縦断面図である。
【図11】図10のXI−XI線に沿う断面図である。
【図12】従来のクイックリリースバルブの縦断面図である。
【符号の説明】
2 ハウジング
2a 入力ポート
2b 出力ポート
2c 排気ポート
4 弁体
4a 柱状部
4b フランジ部
6 第1弁座
8 第2弁座
10 外周弁部
12 リテーナ
12a 筒状部
14 外周部
16 スプリング

Claims (6)

  1. 入力ポート、出力ポートおよび排気ポートが形成され、入力ポート側の第1弁座と排気ポート側の第2弁座を有するハウジングと、前記第2弁座に着座する柱状部およびおよびこの柱状部の周囲に設けられ、前記第1弁座に着座するフランジ部外周の弁部を有する弁体と、前記柱状部に嵌合する筒状部および前記外周弁部の背面を支持する外周部を有するリテーナと、このリテーナを介して弁体の外周弁部を第1弁座方向へ付勢するスプリングとを備えたクイックリリースバルブにおいて、
    前記弁体に形成されたフランジ部の外周弁部この外周弁部の背面を支持するリテーナ外周部とを、作動時にも離れないように一体的に連結したことを特徴とするクイックリリースバルブ。
  2. 前記弁体の外周弁部に環状の係合溝を形成し、この係合溝内にリテーナの外周部を挿入して係合させたことを特徴とする請求項1に記載のクイックリリースバルブ。
  3. 前記弁体の外周弁部の背面と、この外周弁部に当接するリテーナの外周部とを接着したことを特徴とする請求項1に記載のクイックリリースバルブ。
  4. 前記弁体の外周弁部に係合突起を形成するとともに、リテーナの外周部に貫通孔を形成し、この貫通孔に前記係合突起を挿入し嵌着したことを特徴とする請求項1に記載のクイックリリースバルブ。
  5. 入力ポート、出力ポートおよび排気ポートが形成され、入力ポート側の第1弁座と排気ポート側の第2弁座を有するハウジングと、前記第2弁座に着座する柱状部およびおよびこの柱状部の周囲に設けられ、前記第1弁座に着座するフランジ部外周の弁部を有する弁体と、前記柱状部に嵌合する筒状部および前記外周弁部の背面を支持する外周部を有するリテーナと、このリテーナを介して弁体の外周弁部を第1弁座方向へ付勢するスプリングとを備えたクイックリリースバルブにおいて、
    前記弁体に形成されたフランジ部の外周弁部の、第1弁座に着座するシート面以外の部分に、剛体部材を装着したことを特徴とするクイックリリースバルブ。
  6. 前記ハウジングの内周面に、リテーナの外周面が摺接するガイド突起を複数個所設けたことを特徴とする請求項1または請求項5に記載のクイックリリースバルブ。
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