JP4148759B2 - ガスバリアフィルムの製造方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、高いガスバリア性能を有するとともに、折り曲げによるガスバリア性能の低下を抑制することを特徴とした、プラスチックガスバリアフィルムを提供する。このようなフィルムは例えば食品用包装材、電子用品封止材、ガスバリア材などに好適に用いられる。
【0002】
【従来の技術】
プラスチックフィルムの特性を活かしたガスバリア材料の要望は、益々高まる傾向にある。プラスチックフィルムは、透明性に優れ、柔軟性を有し、かつ軽く、加工性に優れるなどの特性を有しているほか、資源の再利用、有効利用といった観点からも優れた特性を有していると言える。このため、ガラスや金属にない特性を活かすことが可能であるため、その用途は拡大し続けている。
【0003】
しかし、プラスチックフィルム自身は、ガスバリア性能に劣っている。これは、フィルム自身が有する柔軟性に起因している。すなわち、プラスチックがもつ分子構造が、長鎖構造からなるために、分子構造自身が動きやすいものとなっており、このことにより、ガス分子自身をプラスチック分子に取りこみやすい構造であるとともに、取りこまれたガス分子が動きやすい構造となっているためである。このガス分子が取りこまれやすく、動きやすい構造であることが、ガスの透過を促進する効果を生み出しているのであり、ガスバリア性能に劣る結果となっているのである。
【0004】
このようなプラスチックフィルムにガスバリア性を持たせるための方法として、ガスの動きやすさを抑制するために、凝集力の強い官能基をその分子構造に持つプラスチックフィルムを用いることが行われてきた。例えば、塩素を含むもの(塩化ビニリデンなど)や、水酸基(ポリビニルアルコールなど)を含むものである。
【0005】
しかし、塩素をその分子構造に含むものは、環境保全の観点から敬遠される傾向にあり、他のガスバリアフィルムへの置き換えが進んでいる。一方、水酸基をその分子構造に含むものは、水酸基自身が水分子との会合が強く、結果的に分子構造が動きやすい構造に変化することにより、ガス分子の透過を助成させることになり、特に高湿度雰囲気条件にて、高いガスバリア性能を維持することができない。
【0006】
そのために、プラスチックフィルムにガスバリア性能の高い無機や金属の薄膜を形成することにより高いガスバリア性能を発揮させる方法がとられてきた。そして、様々な方法で無機薄膜を形成し、かつ有機の薄膜と複合形成したものが開示されてきた。
【0007】
まず、特許文献1においては、2軸延伸したプラスチックフィルム基体に非晶性の酸化アルミニウム薄膜を設けた包装用フィルムを開示している。得られたものは、最良のもので光線透過率88%、酸素透過率が15[cc/m2・Day・MPa]、水蒸気透過率が2[cc/m2・Day]である透明ガスバリアフィルムを開示している。
【0008】
例えば、特許文献2においては、プラスチックフィルムの両面に直接あるいは下地層を介して、珪素酸化物蒸着層を設けることにより、工業的に安定に酸素透過率が5[cc/m2・Day・MPa]以下、水蒸気透過率が1.0[cc/m2・Day]以下のガスバリアフィルムを得ることができるとしている。
【0009】
また、特許文献3においては、プラスチックフィルムの片側に直接あるいは下地層を介して、珪素酸化物蒸着層を設けた珪素酸化物蒸着プラスチックフィルム2枚を珪素酸化物蒸着膜の側が内側になるように貼り合せることにより、工業的に安定に酸素透過率が5[cc/m2・Day・MPa]以下、水蒸気透過率が1.0[cc/m2・Day]以下のガスバリアフィルムを得ることができるとしている。
【0010】
さらに、特許文献4においては、夫々200nm以下のアルミ酸化物蒸着膜を形成し、その上に珪素酸化物蒸着膜を形成したもの、あるいは、夫々200nm以下のアルミ酸化物蒸着膜、珪素酸化物蒸着膜、アルミ酸化物蒸着膜を順次形成したもの、あるいは夫々200nm以下の珪素酸化物蒸着膜、アルミ酸化物蒸着膜を順次形成したものを開示しており、最適な膜厚において酸素透過率が2[cc/m2・Day・MPa]以下、水蒸気透過率が0.2[cc/m2・Day]以下のガスバリアフィルムを形成できることを開示している。この場合、蒸着フィルム特有のカールがなくなることを報告しており、このことがガスバリア性能の向上に寄与しているとしている。
【0011】
特許文献5においては、プラスチック基材上に、2回以上の繰り返しにより、ケイ素酸化物の蒸着膜を2層以上積層することによりも高いガスバリア性能を持たせることが可能であることを開示している。得られたガスバリア性能は、酸素透過率が2〜20[cc/m2・Day・MPa]、水蒸気透過率が0.6から3.2[cc/m2・Day]であるとしている。
【0012】
また、特許文献6においては、基材を無延伸ポリプロピレンフィルム系に限定しているが、酸化アルミニウム及びアルミニウム混在金属蒸着層を設けた上に、モンタン酸ワックス、ポリオレフィンワックス、またはその熱分解生成物からなる樹脂蒸着層を用いたことを特徴としたものを開示している。この樹脂蒸着層により、蒸着密着強度の向上及び蒸着面の耐擦過性の向上により、酸素透過率が20[cc/m2・Day・MPa]、水蒸気透過率が0.5[cc/m2・Day]にまで向上できることを開示している。
【0013】
特許文献7には、基材フィルムの片面に透明である酸化アルミニウムあるいは酸化珪素などの無機蒸着層を形成し、塩化ビニリデン共重合体からなるバリア層で被覆し、さらに帯電防止層を形成することを開示している。
【0014】
特許文献8には、2軸延伸ポリエステル系樹脂フィルムにプラズマ化学気相蒸着法により、製膜用モノマーガス、酸素、不活性ガスからなるガスにて、無機酸化物薄膜を形成したことにより透明ガスバリアフィルムを形成している。さらに、製膜化スピード、プラズマパワー、各種ガスの流量等を規定することにより、従来は不可能であった2軸延伸ポリエステル系樹脂フィルムにプラズマ化学気相蒸着法によるハイガスバリア膜の製造を可能にし、酸素透過率が8[cc/m2・Day・MPa]、水蒸気透過率が0.9[cc/m2・Day]を可能にしている。
【0015】
特許文献9には、2軸ポリプロピレンフィルム基材の一方に、少なくとも2種以上の無機酸化物薄膜を形成したものであって、第1の薄膜が物理蒸着法による無機酸化物の蒸着膜であり、第2の薄膜がプラズマ化学気相蒸着法による無機酸化物の蒸着膜であることを特徴としたものであり、酸素透過率が34±5[cc/m2・Day・MPa]、水蒸気透過率が1.2±0.2[cc/m2・Day]でかつ光線透過率90%以上の透明ハイガスバリアフィルムを形成できたことを報告している。
【0016】
特許文献10には、2軸ポリプロピレンフィルム基材の一方に、少なくとも2種以上の無機酸化物薄膜を形成したものであって、第1の薄膜が物理蒸着法による無機酸化物の蒸着膜であり、第2の薄膜がプラズマ化学気相蒸着法による無機酸化物の蒸着膜であることを特徴としたものであり、酸素透過率が34±5[cc/m2・Day・MPa]、水蒸気透過率が1.2±0.2[cc/m2・Day]でかつ光線透過率90%以上の透明ハイガスバリアフィルムを形成できたことを報告している。
【0017】
特許文献11には、樹脂フィルム上に金属または金属化合物からなるガスバリア性薄膜が物理蒸着法により形成されたガスバリア性積層体において、減圧低温CVD法を用いた蒸着合成法により形成されたポリアミド性薄膜との間に狭持されているものを開示しており、酸素透過率が1[cc/m2・Day・MPa]以下、水蒸気透過率が0.1[cc/m2・Day]以下であることを開示している。
【0018】
以上のように、ガスバリアフィルムを蒸着膜により、あるいは蒸着膜を積層することにより、ガスバリアフィルムを形成する方法には、いくつかの方法が開示されている。
【0019】
さらに、特許文献12に、透明な高分子樹脂組成物からなる基材フィルムの少なくとも片面に、珪素酸化物を主成分とするバリア層を形成してなる透明ガスバリアフィルムにおいて、バリア層の厚さ方向に炭素が均一に分布していることを特徴としたものを開示している。このようにして形成したガスバリアフィルムは、特に引張試験後でも高いガスバリア性能を維持することを示しており、6%引張試験後の酸素透過率が30[cc/m2・Day・MPa]程度、水蒸気透過率が4[cc/m2・Day]以下であることを示している。
【0020】
また、特許文献13には、特許文献12とほぼ同様の手法により、アルミニウム酸化物を用いた場合にも同様の効果が発揮されることを開示している。
【0021】
プラズマ重合膜については、ガスバリア性能について直接触れている訳ではないが、特許文献14には、基材表面に無機酸化物薄膜を形成した後に、酸素原子および/または窒素原子を有する極性基を含有するプラズマ重合膜を形成する方法を開示している。そして、このプラズマ重合膜は、親水性の付与、あるいは島状に形成された無機酸化物薄膜の被覆に用いることが可能である。また、明細書の中において、無機酸化物薄膜の形成あるいはプラズマ重合膜の形成を繰り返すことにより、特定の主要表面について3層以上の被覆膜を有する多層構造を得ることができるとしている。
【0022】
さらに、特許文献15に、ガスバリア膜の形成を行ったものではないが、高密度プラズマである表面波プラズマを用いたプラズマ処理装置を開示しており、表面波プラズマを用いて形成する薄膜として、Si系半導体薄膜を形成する場合に用いるガスとして、テトラエチルシラン、テトラメチルシラン、ジメチルシラン、SiH4等を挙げている。一方、Si3N4やSiO2などのSi化合物薄膜を形成するにあたり用いるガスとして、SiH4、Si2H6などの無機シラン類、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、ジメチルフルオロシランなどの有機シラン類、SiF4、SiCl4などのハロシラン類等を用いて形成できることを開示している。
【0023】
【特許文献1】
特開昭62−101428号公報
【特許文献2】
特開平3−71832号公報
【特許文献3】
特開平3−63127号公報
【特許文献4】
特開平3−64449号公報
【特許文献5】
特開平4−89236号公報
【特許文献6】
特開平11−170432号公報
【特許文献7】
特開平10−235778号公報
【特許文献8】
特開平11−322982号公報
【特許文献9】
特開平11−105188号公報
【特許文献10】
特開平11−309842号公報
【特許文献11】
特開平10−6432号公報
【特許文献12】
特開2000−6300号公報
【特許文献13】
特開2000−6301号公報
【特許文献14】
特開平5−209072号公報
【特許文献15】
特開平11−40397号公報
【0024】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらの無機膜蒸着フィルムは、酸化珪素化合物などの無機膜自身がもろい点を補い、優れた性能を引き出そうとするものであるが、無機膜自身の本来の性能を十分に発揮させるまでに至っていないといえる。酸化珪素化合物の緻密さ、ガス溶解度の低さなどを考慮すれば、酸化珪素化合物膜のガスバリア性能を十分に引き出し、かつ実用に供するに十分なコスト競争力を有するガスバリアフィルムの形成が可能になるはずである。
【0025】
これら、無機膜である酸化珪素化合物膜の性能が十分に発揮できない原因として、プラスチックフィルムと無機膜との熱膨張率に大きな差があるために、加熱環境において、その膨張率の違いから新たに欠陥を生じる結果となってしまうことが挙げられる。また、無機膜自身の剛直性にも問題があり、折り曲げるなどの動作がガスバリア性能を損なっているのである。
【0026】
そのために、無機の蒸着膜と有機膜を積層するなどの試みが行われているものの、従来の技術には前述のように、まだまだ改善の余地が残されているのである。
【0027】
本発明は、柔軟性に富み、光透過性に高く、かつガスバリア性に優れるガスバリアフィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【0028】
【課題を解決するための手段】
本発明により、プラスチックフィルム上に膜が形成されてなるガスバリアフィルムの製造方法において、
真空チャンバー内にプラスチックフィルムを設置し、該真空チャンバー内を0.01[Pa]以下の圧力にする減圧工程と、
該真空チャンバー内に窒素ガスを供給するとともに、周波数が10kHz以上100MHz以下で、絶対値が200V以上の負のバイアス電圧を有する高周波電力を該プラスチックフィルムが配置された高周波電極に投入することにより窒素ガスのプラズマを形成し、該プラスチックフィルムを該窒素ガスのプラズマに曝す前処理工程と、
一種類の化合物のガスもしくは二種類以上の化合物のガスの混合ガスであって、炭素元素、珪素元素および水素元素が該化合物のいずれかの分子中に含まれ、かつ、酸素元素は該化合物のいずれにも含まれない製膜ガスを、該製膜ガスに対してモル換算流量にて3倍以上100倍以下の窒素ガスによって希釈した珪素含有製膜ガスを該真空チャンバー内に供給するとともに、絶対値が200V以上の負のバイアス電圧を有する高周波電力を該プラスチックフィルムが配置された高周波電極に投入することにより該珪素含有製膜ガスのプラズマを形成し、前記前処理工程を経たプラスチックフィルムを該珪素含有製膜ガスのプラズマに曝すことにより、前記前処理工程を経たプラスチックフィルム上に膜を形成する製膜工程と
を有することを特徴とするガスバリアフィルムの製造方法が提供される。
【0029】
前記製膜工程によって1nm以上100nm以下の厚さの膜を形成することが好ましい。
【0030】
前記製膜工程によって波長550nmにおける光線透過率が75%以上である膜を形成することが好ましい。
【0031】
前記前処理工程により前記プラスチックフィルムの表面粗さを2nm以下とし、前記製膜工程により膜が形成されたプラスチックフィルムの表面粗さを2nm以下とすることが好ましい。
【0032】
本発明により、プラスチックフィルム上に膜が形成されてなるガスバリアフィルムの製造方法において、
真空チャンバー内にプラスチックフィルムを設置し、該真空チャンバー内を0.01[Pa]以下の圧力にする減圧工程と、
該真空チャンバー内に窒素ガスを供給するとともに、周波数が10kHz以上100MHz以下で、絶対値が200V以上の負のバイアス電圧を有する高周波電力を該プラスチックフィルムが配置された高周波電極に投入することにより窒素ガスのプラズマを形成し、該プラスチックフィルムを該窒素ガスのプラズマに曝す前処理工程と、
一種類の化合物のガスもしくは二種類以上の化合物のガスの混合ガスであって、炭素元素、珪素元素および水素元素が該化合物のいずれかの分子中に含まれ、かつ、酸素元素は該化合物のいずれにも含まれない製膜ガスを、該製膜ガスに対してモル換算流量にて3倍以上100倍以下の窒素ガスによって希釈した珪素含有製膜ガスを該真空チャンバー内に供給するとともに、絶対値が200V以上の負のバイアス電圧を有する高周波電力を該プラスチックフィルムが配置された高周波電極に投入することにより該珪素含有製膜ガスのプラズマを形成し、該プラスチックフィルムを該珪素含有製膜ガスのプラズマに曝すことにより、該プラスチックフィルム上に膜を形成する第1の工程と
該真空チャンバー内に有機化合物のガスを窒素ガスによって希釈した有機化合物含有ガスを供給すると共に、絶対値が100V以上の負のバイアス電圧を有する高周波電力を該プラスチックフィルムが配置された高周波電極に投入することにより該有機化合物のガスのプラズマを形成し、該プラスチックフィルムを該有機化合物のガスのプラズマに曝すことにより、該プラスチックフィルム上に膜を形成する第2の工程とを有し、
該前処理工程に引き続いて該第1の工程を行った後、該第2の工程および該第1の工程をこの順に1回ずつもしくは複数回ずつ行うことを特徴とするガスバリアフィルムの製造方法が提供される。
【0033】
前記第1の工程によって1nm以上50nm以下の厚さの膜を形成し、前記第2の工程によって1nm以上50nm以下の厚さの膜を形成し、かつ、前記第1の工程及び第2の工程によって得られる膜の合計の厚さを5nm以上100nm以下とすることが好ましい。
【0034】
前記第2の工程において、液体の有機化合物を窒素ガスにより揮発せしめることにより、前記有機化合物含有ガスを得ることができる。
【0035】
本発明による膜をプラスチックフィルム上に形成することにより、極めて高いガスバリア性能を維持しつつ、かつ柔軟性に優れ、かつ加熱環境においても高い性能を維持することが可能である。
【0036】
【発明の実施の形態】
〔ガスバリアフィルムの構造〕
本発明により得られるガスバリアフィルムのいくつかの形態について図面を用いてさらに詳しく説明する。図1には、プラスチックフィルム上に単層の無機膜が形成されたプラスチックガスバリアフィルムの断面を示す。
【0037】
図2および図3は、プラスチックフィルム上に無機膜及び有機膜が積層されたガスバリアフィルムの断面の模式図をあらわしたものである。図2に示す形態では、プラスチックフィルム上に、後述する第1の工程によって形成した無機膜、後述する第2の工程によって形成した有機膜、そして第1の工程によって形成した無機膜の3層により構成される積層膜が形成されている。図3には、同じくプラスチックフィルム上に、第1の工程によって形成した無機膜、第2の工程によって形成した有機膜、第1の工程によって形成した無機膜、第2の工程によって形成した有機膜、そして第1の工程によって形成した無機膜の5層により構成される積層膜を有する形態を示す。さらに、この上に有機膜および無機膜をこの順に繰り返して形成し、7層あるいはそれ以上の積層膜をプラスチックフィルム上に有するガスバリアフィルムを形成することも可能である。
【0038】
〔プラスチックフィルム〕
基材として用いるプラスチックフィルムは、PE((超高密度、高密度、中密度、低密度)ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PVA(ポリ酢酸ビニル)、COP(環状ポリオレフィンコポリマー)、PMMA(メタクリル樹脂)、PS(ポリスチレン)、PVA(ポリビニルアルコール)などの汎用の熱可塑性プラスチックスフィルムや、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、NY−6(ナイロン−6))、NY−66などの熱可塑性のエンジニアリングプラスチックスフィルム、あるいはPI(ポリイミド)などの熱硬化性のエンジニアリングプラスチックスフィルムを用いることができる。
【0039】
透明性の観点からプラスチックフィルムの光線透過率は75[%]以上であることが好ましく、さらに好ましくは80[%]以上である。最もこのましくは85[%]以上である。フィルムの厚みは強度の観点から5μm以上、ハンドリングの容易性の観点から1000μm以下であることが好ましい。さらに好ましくは、10μm以上、150μm以下である。
【0040】
さらに、プラスチックフィルムの表面はできるだけ平坦であることが好ましく、表面粗さはRMSにて10nm以下であることが好ましい。さらに好ましくは、5nm以下であり、最も好ましくは、1nm以下である。表面の突起部分あるいは窪み部分から、フィルム上に形成した膜の欠陥の発生が生じることを効果的に防止する観点から、上記のように表面平滑性の高いものが好ましい。RMSは2次元平均粗さのことであり、粗さ測定器により求めることができる。
【0041】
〔前処理工程〕
前処理工程において、プラスチックフィルムを、バイアス電圧が−200V以下(すなわち極性がマイナスで絶対値が200V以上)となる条件の高周波電極の上に設置した状態で、窒素ガスからなるプラズマに曝す。この前処理工程を行わずに無機膜の形成を行った場合、あるいは窒素プラズマの代わりに酸素プラズマを用いた場合に、ヘリウム透過率が高く、ひいては十分な酸素バリア性能および水蒸気バリア性能を発揮することができなくなってしまう。窒素プラズマ中に存在する窒素分子に由来するイオンによる適度な物理衝撃による表面平坦化と窒素ラジカルによる表面活性化が行われる結果、優れたガスバリアフィルムが得られると考えることができる。
【0042】
〔第1の工程〕
第1の工程では炭化珪素化合物膜を形成する。
【0043】
製膜ガスとしては、一種類の化合物のガスあるいは二種類以上の化合物のガスの混合ガスを用いることができる。炭素元素、珪素元素、水素元素が該化合物のいずれかの分子中に含まれ、かつ酸素元素をその分子構造に含まない製膜ガスを、窒素で希釈したガスを用いてプラズマを形成する。また、室温では液体あるいは固体であっても、ガスに同伴させてガスとして用いることも可能である。
【0044】
例えば、珪素元素と水素元素を含み炭素元素も酸素元素も含まない分子構造を有する化合物(a)のガスと、炭素元素と水素元素を含み珪素元素も酸素元素も含まない分子構造を有する化合物(b)のガスとの混合ガスを用いて第1の工程を行うことができる。また、炭素元素と珪素元素と水素元素をその分子構造に含み、酸素元素を含まない分子構造を有する化合物(c)のガスを用いて第1の工程を行なうこともできる。
【0045】
さらに、化合物(c)のガスと、先に述べた化合物(a)のガスまたは/および化合物(b)のガスの混合ガスを用いて第1の工程を行なうこともできる。また、炭素元素や珪素元素のほかに、炭素や珪素と同じ周期律表のIVB族に属するゲルマニウム元素、錫元素がその分子構造に含まれる化合物を製膜ガスとして加えることもできる。また、周期律表のIIIB族に属するボロン、アルミニウム、ガリウムインジウムをその分子構造に含まれる化合物を製膜ガスとして加えることも可能である。さらに、周期律表のVB族に属する窒素、燐、砒素、アンチモンをその分子構造に含まれる化合物を製膜ガスとして加えることもできる。また、遷移金属であり、IIIA族であるスカンジウム、イットリウム、IVA族であるチタン、ジルコニム、VA族であるバナジウム、ニオブ、タンタル、VIA族であるクロム、モリブデン、タングステン、VIIA族であるマンガン、テクネチウム、レニウム、VIII族である鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、IB族である銅、銀、金、IIB族である亜鉛、カドミウム、水銀などの元素を含む分子構造に有する化合物を製膜ガスとして用いることも可能である。但し、これらの遷移金属の多くは錯体化合物として用いることにより、ガスによるバブリング操作などにより、気体として第1の工程における製膜ガスとして用いることができるようになる。ただし、これらの周期律表のIIIA族からIVA族に属する元素を有する化合物においても、炭素元素、珪素元素および水素元素のいずれかもしくは2以上をその分子構造に含みかつ、酸素元素をその分子構造に含まない化合物を用いる。
【0046】
また、ハロゲン元素をその分子構造に有するものであってもよい。
【0047】
さらに、製膜ガスに混合するガスとして、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドンなどの0族に属する希ガスを用いることもできる。
【0048】
第1の工程に用いることのできる、珪素を含むガスと炭素を含むガスの混合ガスの具体例として、シラン系のガスであるシラン、ジシランおよびトリシランの中から選ばれる1種もしくは複数の化合物ガスと、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ノナン、オクタンなどのアルカン類に属する化合物;エテン、プロペン、ブテン、イソブテン、ペンテン、ヘキセンなどのアルケン類に属する化合物;アセチレン、プロピン、ブチンなどのアルキン類に属する化合物;シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロノナンなどのシクロアルカン類に属する化合物;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセンなどのシクロアルケン類に属する化合物;および、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、イソブチルベンゼン、スチレン、アリルベンゼンなどの芳香族類に属する化合物の中から選ばれる1種もしくは複数の化合物からなるハイドロカーボン系のガスとの混合系を用いることができる。
【0049】
また、第1の工程に用いることのできる、炭素および珪素を含む化合物の具体例として、モノメチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、テトラメチルシランなどのメチルシラン類;モノメチルジシラン、ジメチルジシラン、トリメチルジシラン、テトラメチルジシラン、ペンタメチルジシラン、ヘキサメチルジシランなどのメチルジシラン類;モノメチルトリシラン、ジメチルトリシラン、トリメチルトリシランなどのメチルトリシラン類;モノエチルシラン、ジエチルシラン、トリエチルシラン、テトラエチルシランなどのエチルシラン類;モノエチルジシラン、ジエチルジシラン、トリエチルジシラン、テトラエチルジシラン、ペンタエチルジシラン、ヘキサエチルジシランなどのエチルジシラン類;モノエチルトリシラン、ジエチルトリシラン、トリエチルトリシランなどのエチルトリシラン類;モノメチルモノエチルシラン、ジメチルモノエチルシラン、トリメチルモノエチルシラン、モノメチルジエチルシラン、モノメチルトリエチルシラン、ジメチルジエチルシランなどのメチルエチルシラン類などのガスがある。
【0050】
また、第1の工程において、製膜ガスに対する希釈用窒素ガスの割合は、モル流量換算にて3倍以上100倍以下であることが必要である。さらに好ましくは、10倍以上30倍以下である。さらに窒素に加えてアルゴン、ヘリウムなどの希ガスを用いることも可能ではあるが、このときにも窒素ガスを製膜ガスに比較して、モル流量換算にて3倍以上100倍以下用いることが必要な要件である。希ガスについては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンが該当する。窒素は、プラズマによって比較的励起分解されにくいガスである。そのために、希ガスと同様な効果をもたらすものの、形成する無機膜に窒素が含まれていることによって、膜の構造自体に自由空間を減少させ、ガスバリア性能を高めることに大きな貢献をなさしめるのである。
【0051】
また、窒素元素やフッ素元素をその分子構造に含む化合物を製膜ガスの希釈ガスとして用いることも有効である。このために、窒素元素を含む化合物のガスとして、アンモニアガス、三弗化窒素ガスなどを用いることができ、フッ素元素を含む化合物のガスとして、4フッ化炭素、6弗化エタン、8弗化プロパン、8弗化シクロブタン、4弗化珪素、モノフルオロシラン、ジフルオロシラン、トリフリオロシランを用いることも可能である。また、6弗化硫黄も、フッ素の供給ガスとして用いることが可能である。
【0052】
アンモニアガスは、窒素に比較してプラズマによる分解が生じやすく、窒素に比較して膜中に取り込まれる割合が大きくなる傾向にある。アンモニアを用いた場合、その混合の割合は、製膜ガスに対して0.1倍から3倍の割合(モル換算流量ベース)であると同時に、窒素ガスに対して0.001倍以上1倍以下(モル換算流量ベース)の範囲で用いることが好ましい。窒素を膜中に取り込むことにより膜自身のガスバリア性能を向上させることができるものの、バイアス電圧の効果は窒素ガスによってもたらされるため、アンモニアは窒素ガスと同量以下とすることが好ましい。
【0053】
また、三弗化窒素についても、膜中に窒素を取り込むことの効果が期待される。しかし、三弗化窒素自身はエッチング用のガスとしても用いられるものであり、製膜を妨げる効果も有しており、時には製膜を生じせしめることなく、時には基材となるプラスチックフィルムをエッチングにより削り取る場合もある。三弗化窒素の使用の好ましい範囲は、製膜ガスの総量に対して0.01倍から1倍の範囲(モル換算流量ベース)であることが好ましく、さらに窒素に対して0.0001倍から0.3倍の範囲(モル換算流量ベース)である。
【0054】
またフッ素を含む4フッ化炭素、6弗化エタン、8弗化プロパン、8弗化シクロブタン、4弗化珪素、モノフルオロシラン、ジフルオロシラン、トリフリオロシランなどのガスにおいても、エッチングを行なう作用もそれぞれのガスが有しており、製膜ガスの総量に対して0.01倍から1倍の範囲(モル換算流量ベース)であることが好ましく、さらに窒素に対して0.0001倍から0.3倍の範囲(モル換算流量ベース)である。
【0055】
第1の工程ではプラズマを用いた化学気相蒸着法等により薄膜を形成することができる。プラズマは、容量結合プラズマ(CCP)を用いて行うことが可能である。この容量結合型プラズマの簡単な模式図を、[製膜装置]の項で詳しく説明するが、容量結合プラズマは、図4に示されるように高周波電力5が印加される高周波電極3と、高周波電極とほぼ同型かつ同程度の多さからなるアース接地されているアース電極6が向き合うように平行に接地された構成をしたものであり、本発明においてはプラスチックフィルムは高周波電極に設置される。
【0056】
さらに、用いることのできるプラズマについては、誘導結合プラズマ(IPC)、ヘリコン波プラズマ、表面波プラズマ、ECRが代表的な高密度プラズマである。これらのプラズマは、一般に高密度プラズマと呼ばれるものであり、先に述べた容量結合型プラズマに比較して高いプラズマ密度を有する(プラズマによって発生した電子やイオン、ラジカルの存在量が多いということ、電子の密度すなわち電子密度で言えば、容量結合型プラズマが、最も電子密度が高い位置で108cm-3〜1010cm-3の範囲であるの対し、高密度プラズマの場合には、最も高い位置で1010cm-3〜1012cm-3の範囲である)。これらの高密度プラズマはプラズマ発生させるプラズマ発生源と石英などの誘電体板からなるプラズマ照射電極を備えているが、このプラズマ照射電極にはプラスチックフィルムを設置することはできない。そのためにプラスチックフィルムを設置するための新たな電極が必要となる。この新たな電極にはバイアス印加ができるように容量結合型プラズマに用いられるのと同様の高周波電極を用いることができる。従って、高密度プラズマを用いる場合においても、高周波電極にプラスチックフィルムを設置する方式を用いる。
【0057】
容量結合型プラズマを用いる場合、高周波電極に印加する電力は、高周波電極の単位面積あたり0.3[W/cm2]以上10[W/cm2]の範囲にあることが好ましく、さらにこのましくは0.8[W/cm2]以上5[W/cm2]の範囲にある。
【0058】
また高密度プラズマを用いる場合にも、プラズマ発生電極に印加する電力は、電極の単位面積あたり0.5[W/cm2]以上10[W/cm2]の範囲にあることが好ましく、さらに好ましくは1[W/cm2]以上5[W/cm2]の範囲にある。また、この場合の高周波電極に印加する電力は、容量結合型プラズマのときに比較して小さく、電極の単位面積あたり0.3[W/cm2]以上5[W/cm2]の範囲にあることが好ましく、さらに好ましくは0.8[W/cm2]以上3[W/cm2]の範囲である。
【0059】
プラズマを用いる場合において、プラスチックを設置する高周波電極に−200V以下の自己バイアスを形成することが必要である。好ましくは−400V以下である。なお、この関係は、電極面積78.5cm2である高周波電極を用いて作成したデータである図5に示した高周波電力とバイアス電圧の関係から求めることができる。このようなバイアス電圧を印加することにより、プラズマ中に発生したイオンを効果的に成長表面に衝突させることができ、その結果、平坦な膜の形成を可能にするのである。
【0060】
但し、プラスチックフィルム上に形成する場合、基板となるプラスチックフィルムの耐熱温度を超えることを避けることが好ましい。また、高密度プラズマの照射を長時間行なうことにより、あるいはバイアス電圧の印加を長時間行うことにより、基材であるプラスチックフィルムの温度が上昇しやすくなり、プラスチックフィルムの耐熱温度を超えてしまい、ロールツーロール型の装置を用いる場合には、フィルムに引張応力が加わっているためにフィルムの変形を生じ、所定の加工形状を維持できない恐れがある。そのため、プラスチックフィルムをプラズマ発生源から適切な位置に設置する、あるいは製膜速度を鑑みながらプラズマ照射の時間を短縮化するためにプラスチックフィルムの送り速度を大きくするなどの配慮を行うことが好ましい。
【0061】
プラスチックフィルムをプラズマ発生源から適切な位置に設置する、あるいは製膜速度を鑑みながらプラズマ照射の時間を短縮化するなどの配慮は、実験により決定することができる。しかし、これらの最適な位置や時間を決定するための目安を得るために取るべき方法は、高周波電極上に静止状態で設置したプラスチックフィルムのプラズマ照射あるいはバイアス印加に伴う温度上昇の時間変化を記録するための実験を行なうことにより、適宣決定することが可能である。
【0062】
プラズマにより発生した電子やイオンの衝突により、プラスチックフィルムの表面温度が上昇する。プラスチックフィルムの表面にサーモラベルなどのある環境下におかれた状態での最高温度を表示する道具を貼り付けておくことにより、一定時間のプラズマ照射、あるいはバイアス印加の実験を繰り返すことによりある条件でのフィルムの温度上昇が時間の関数としても求められる。この結果から、プラスチックフィルムをプラズマ発生源から適切な位置に設置するための指針を得ることができるのである。
【0063】
一般的には、プラズマ発生電極に近い場合ほど、プラスチックフィルムがプラズマに曝されることに対して許容できる時間は短くなる。また、高周波電極に印加するバイアス電圧が大きいほど、プラスチックフィルムが同じくプラズマに曝されることに対して許容できる時間は短くなる。
【0064】
たとえば、図10に示したようなロールツーロール型のプラズマを用いる場合には、プラズマに曝す時間は、フィルムの送り速度によって決定することができる。すなわち、フィルムの送り速度を速くすることによって、プラズマに曝す時間を短くすることができ、従ってプラスチックフィルムの温度上昇を抑制することができるのである。
【0065】
また、高周波電極は、水冷式であることが好ましい。特にロールツーロール式の装置に用いる高周波電極には、水冷によって高周波電極の表面温度を十分に冷却することが好ましい。表面温度は、130℃以下に保持することが好ましく、さらに好ましくは100℃以下であり、最も好ましくは80℃以下にすることである。但し、80℃以下とする場合は極めて耐熱温度の低いPEを考慮したものである。
【0066】
〔第1の工程で得られる膜〕
上記第1の工程により、原子数換算にて30%未満の酸素しか含まない炭化珪素化合物薄膜を形成することができる。製膜室内にリークあるいは排気不充分による不純物の混入があると、30%未満の酸素元素を含む炭化珪素化合物薄膜が得られず、良好なガスバリア薄膜を形成するに至らないことがある。このような状況を回避するために、0.01[Pa]以下の圧力を維持することが可能な真空排気設備を用いる。プラスチックフィルムは、図4のような単一の真空チャンバーを用いた場合には、高周波電極に貼り付ける。プラスチックフィルムを設置した真空チャンバー内を0.01[Pa]以下の圧力にする減圧工程を行う。図10に示すロールツーロール型の装置の場合には、ロール仕込み室にロールを設置した後に真空引きを行なう。
【0067】
なお、酸素元素を含まない製膜ガスを用いても膜中に酸素が混入することがあるのは、製膜チャンバー内に存在している酸素や水の存在が微量であっても無視できないためである。酸素は、シリコンと結合が生じやすく、従って膜中への取り込まれる量が無視出来ないほどに大きくなってしまうことがあるのである。
【0068】
圧力が0.01[Pa]以下になった後、製膜ガスを窒素などの希釈ガスとともに真空チャンバー内に供給するとともに、真空ポンプの排気速度を排気バルブの操作によって所定の圧力になるようにコントロールする。所定の圧力は、0.1[Pa]から500[Pa]の範囲において設定することが好ましい。さらに好ましくは、1[Pa]から100[Pa]の範囲である。
【0069】
第1の工程において形成される薄膜が、珪素を含むことにより、固くかつ緻密な薄膜を形成することができる。この緻密さがガスの透過抑制に効果を有しているのである。さらに、炭素が存在することにより、薄膜自身に柔軟性を付与することが可能である。膜中の炭素と珪素の混合割合については、優れた緻密さと柔軟性をバランス良く両立させる観点から、炭素:珪素の原子数比が1:3〜3:1の範囲にあることが望ましい。
【0070】
また、水素についてはその含有組成が、原子数ベースで全構成元素量の5%以上25%以下であることが好ましい。本発明では室温に近い状態で、かつプラズマを用いて炭化珪素化合物およびプラズマ有機重合膜を形成できるが、このとき水素が5%未満であると、膜中に含まれる水素が十分に膜内の未結合手を埋め合わせるに至らない可能性があり、そのためにガスバリア性能が相対的に低下する傾向があるという点で不利である。また、25%を超えると、緻密さが相対的に低下し、いわばポーラスな膜に近づく傾向があり、ガスバリア性能が相対的に低下する傾向があるという点で不利である。
【0071】
また第1の工程により形成されるガスバリア性能の高い膜については、膜内に含まれる窒素含有量を高くすることができ、例えば原子数ベースで20%近くを含有することができる。
【0072】
また第1の工程で得られる膜は、必要に応じてフッ素が含まれていても良い。
【0073】
上記膜組成は、製膜ガスに用いる化合物を適宜選定すること、希釈用の窒素量を加減することなどによって調整することができる。
【0074】
上述のように、酸素の含有率を低くした炭化珪素の薄膜は、酸素を含む薄膜に比較して緻密さに劣らない上に、高い柔軟性を維持することが可能である
炭化珪素薄膜の光学的バンドギャップは3.2eV程度であり、酸化珪素の5.0eV程度程広くはないが、可視光領域である300nmから800nmの波長範囲においては、炭化珪素薄膜も十分な光線透過率を発揮することができる。
【0075】
〔第2の工程〕
さらに、第2の工程について詳細な説明を行う。第2の工程によって、プラズマ重合法による有機の薄膜を形成することができ、特には高度に3次元架橋した構造を有する有機の薄膜を形成することができる。
【0076】
有機の薄膜の形成に際して用いられるプラズマ源として、容量結合型プラズマの他、誘導結合型プラズマ、ヘリコン波プラズマ、表面波プラズマ、ECRの他、高出力の容量結合型プラズマを用いることができる。
【0077】
なお、第2の工程においても、窒素ガスを用いることが必要である。用いる有機化合物の蒸気圧が低く、それ自身で供給することが困難な場合、有機化合物をバブラーの中に入れ、この有機化合物を窒素ガスにバブリング同伴させて用いることができる。また、有機化合物の蒸気圧が高く、それ自身でガスとして供給することが可能な場合には、当然バブリングは必要としないが、窒素を希釈ガスとして用いることができる。
【0078】
また、第2の工程で製膜に用いられる原料としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ノナン、オクタンなどのアルカン類に属する化合物;エテン、プロペン、ブテン、イソブテン、ペンテン、ヘキセンなどのアルケン類に属する化合物;アセチレン、プロピン、ブチンなどのアルキン類に属する化合物;シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロノナンなどのシクロアルカン類に属する化合物;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセンなどのシクロアルケン類に属する化合物;および、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、イソブチルベンゼン、スチレン、アリルベンゼンなどの芳香族類に属する化合物の中から選ばれる1種もしくは複数の化合物からなるガスを用いることができる。
【0079】
第2の工程においては、用いる製膜ガスに、窒素ガスを希釈ガスとして加える。これらの混合割合(モル換算流量ベース)は、製膜ガスに対して窒素ガスが、好ましくは1倍から100倍の範囲であり、さらに好ましくは2倍から30倍の範囲である。
【0080】
また、製膜時の圧力条件は、0.1[Pa]から500[Pa]の範囲において設定することが好ましい。さらに好ましくは、1[Pa]から100[Pa]の範囲である。
【0081】
容量結合型プラズマを用いる場合、高周波電極に印加す電力は、高周波電極の単位面積あたり0.1[W/cm2]以上5[W/cm2]の範囲にあることが好ましく、さらにこのましくは0.25[W/cm2]以上3[W/cm2]の範囲にある。これは先に述べたように、図5に示した関係より求めることができ、高周波電力を印加することにより発生させるバイアス電圧は−100V以下であることが必要である。
【0082】
〔積層膜の形成〕
第1の工程に続いて第2の工程を行い、さらに第1の工程により、再び、無機薄膜を形成する。これら一連の工程を経て、図2に示すような3層の蒸着による薄膜を形成することができる。
【0083】
なお、2回目の第1の工程も初回の第1の工程と全く同様に行うことが可能である。
【0084】
さらに、図3に示すような5層の薄膜を形成する場合には、ガスバリア層となる無機薄膜をさらに1層、3層構造の上に有しているので、さらに高いバリア性を発揮することができる。
【0085】
〔薄膜の厚さ〕
さらに、本発明の夫々の薄膜の厚みに関しては、高いガスバリア性能を発揮させるためと、高い光線透過率を維持するために好ましい範囲が存在する。まず、第1の工程により得られる無機膜の膜厚は、無機膜単独でガスバリア性能を発現させる観点から、1nm以上100nm以下が好ましい。1nm以上の膜であれば、ヘリウム透過率を10[cc/m2・Day・MPa]以下にまで低減させることができる。100nm以下とすることにより、良好な光線透過率を保つことができ、例えばPETフィルムの場合には、75%以上の良好な光線透過率を維持することができる。
【0086】
積層膜を構成する場合においては、高いガスバリア性能を発揮させるためと、高い光線透過率を維持するために、第1の工程によって得られる無機膜の膜厚は1nm以上50nm以下が好ましく、第2の工程によって得られる有機プラズマ重合薄膜の膜厚が、1nm以上50nm以下であることが好ましく、そして、積層薄膜の合計の膜厚が、5nm以上100nm以下であることが好ましい。
【0087】
〔製膜装置〕
次に、本発明を実施するために用いることのできる装置について詳細な説明を行う。
【0088】
図4は、単一の真空チャンバーを備えた容量結合型のプラズマCVD装置の概要図である。この装置は、製膜室2と高周波電極(カソード電極)3、アース電極(アノード電極)6、ガス供給ライン7、真空排気設備8により構成されている。高周波電極は、高周波電源5に接続されている。またガス供給ラインは、トリメチルシランなどの無機膜形成用の製膜ガス供給ライン71と、窒素ガスを供給するための窒素ガス供給ライン72とから構成されている。窒素ガス供給ラインにはバブラー77が接続されており、蒸気圧の低い有機化合物を窒素によってバブリング同伴させることも可能である。
【0089】
図10は、ロールツーロール容量結合型のプラズマCVD装置の概要図である。この装置は、真空チャンバーが5つの部屋に分けられている。5つの部屋は、ロール仕込み室11、製膜室12、製膜室13、製膜室14と、ロール巻取り室15により構成されている。本発明に用いられる装置は、ロールツーロール型のフィルム処理用のプラズマCVD装置であり、フィルムは供給ロール31にセットされ、巻取りロール32によって巻取られる構成になっている。フィルムは補助ロール33、34、35、36、37、38によって保持される。さらに、夫々の製膜室には、高周波電極(カソード電極)27、28、29が備えられており、夫々の電極には電源21、22、23が接続管24、25、26を介して備えられている。また夫々の部屋にアース電極(アノード電極)16、17、18が備えられている。ガス供給ライン51、52、53が夫々の製膜室に接続されており、供給されるガスの種類により、異なるプラズマが形成され、そのプラズマを通過する間に異なる薄膜を形成することができる。また、夫々の製膜室およびロール仕込み室、ロール巻取り室は、仕切り壁61、62、63、64、65、66、67、68によって仕切られており、製膜室12、13、14間においてガスの混合を極力抑制することができる。よって、仕切り壁同士の間隔(例えば仕切壁61と62との間)は、ガスの混合を抑制する目的から、フィルム1の通過の妨げにならない程度にできるだけ狭くしたほうが好ましい。好ましくは、3mm以上20mm以下であり、さらに好ましくは3mm以上10mm以下である。
【0090】
圧力の操作は、各々の製膜室に取り付けられた真空ポンプ42、43、44の実効排気速度により制御することができる。また、ロール仕込み室、ロール巻取り室にも夫々真空排気用の真空ポンプ41、45が取付けられている。但し、各製膜室は、各々の圧力を個別に制御することは困難であるため、同一の圧力にて形成することが好ましい。また、ガスの混合を完全に抑制することは困難なので、夫々の製膜室で構成した薄膜中には、多少のコンタミネーションを避けることは難しい。しかし、構成する積層ガスバリア膜は、全く異なる材質である必要はない。それよりも、夫々の薄膜自身に連続性のある方が好ましい。連続性を有した薄膜であることにより、積層薄膜の各層に結合が強くなり、ガスバリア性能が向上する効果をもたらすのである。
【0091】
【実施例】
以下に具体的な実施例を示し、本発明をさらに詳しく説明する。
【0092】
〔実施例1〕 無機膜/窒素プラズマ処理層/PET
基材フィルムとして、東洋紡株式会社製のA−4100の50μm厚みのPETフィルムを購入して用いた。PETフィルム1を5cm角に切り取り、図4に示す単一チャンバーを備えたプラズマCVD装置の製膜室2の高周波電極3に貼り付けた後に真空引きを行い、製膜室を1×10-5[Torr](1.3×10-3[Pa])にまで真空引きを行った。
【0093】
製膜のプラズマ源としては、13.56MHzの高周波プラズマを用いた。高周波プラズマは、パール工業株式会社の200Wまで印加できる13.56MHzの高周波電力発生装置である。高周波印加電極は、直径10cmの円形電極である。
【0094】
なお、図4に示すプラズマCVD装置の高周波電極に印加する電力と、印加時に形成される自己バイアス電圧の関係を、窒素ガスを用いてプラズマを形成したときの関係を示したグラフが図5である。この関係より高周波電極に印加する電力とこの結果発生するバイアス電圧の関係が分かる。
【0095】
製膜室2には、ガスライン7を用いて窒素ガスを60[sccm]の流量で供給するとともに、製膜室の圧力は1.6[Pa]に保つようにコントロールした。ここで、単位[sccm]は、1分間に流れる標準状態におけるガス量(cc単位、25℃、0.101[Mpa]の条件)を表す。続いて、製膜室2の高周波印加電極3に150W、13.56MHzの高周波電力を印加し、窒素ガスからなるプラズマを形成し、PETフィルムの前処理工程を2分間実施した。
【0096】
続いて、製膜室2に、ガスライン7を用いてトリメチルシランを5[sccm]の流量、かつ窒素ガスを60[sccm]の流量で供給するとともに、製膜室の圧力は1.6[Pa]に保つようにコントロールした。そして、製膜室2にてプラズマを形成した。このときの高周波投入電力は150Wであり、電極に発生したバイアス電圧は、−592Vであった。この結果、表面処理を施したPETフィルム上に、炭化珪素化合物膜を形成することができる。
【0097】
本実施例においては、0.5分から15分の範囲で製膜時間を変化させて製膜を実施した。ガスの供給を止め、真空解除を行った後に、フィルムを取りだした。光線透過率、ガスバリア性能及び表面粗さを評価した。光線透過率の測定には、分光光度計(島津製作所製 自記分光光度計UV−2200A)を用いた。測定の結果は、400nmから800nmの波長領域において、60%以上の光線透過率を示した。さらに、550nmにおける光線透過率は78%であった。なお、基材フィルムA−4100のフィルムの光線透過率は、同じく550nmにおいて86%であり、炭化珪素薄膜の蒸着による光線透過率の低下は小さかった。
【0098】
得られた薄膜の厚みを触針膜厚計(ビーコ社:DEKTAK3)を用いて測定した。
【0099】
ガスバリア性能の評価は、簡便な方法としてヘリウムガスの透過率を測定することで行なった。ヘリウムガスの透過試験は、アルバック社製の四重極質量分析計を改造し、ガスの透過率が測定できるようにした装置を用いて行なった。ヘリウムガスの透過率を求める基準としてアルバック社製のヘリウムリーク標準器を用いた。用いたヘリウムリーク速度は、2.5×10-8[Pa・m3/sec]である。これは、この装置でのヘリウム透過率210[cc/m2・24Hr・MPa]に相当した。なお、ヘリウムガスのフィルムの透過面積は、10cm2である。プラズマ暴露の時間と製膜膜厚そしてヘリウムガス透過率の関係等について、表1に示す。
【0100】
【表1】
【0101】
また、表1に示すものの中からヘリウム透過率の低いものについて酸素透過率および水蒸気透過率の測定を行った。酸素透過率の測定にモコン法によるガス透過率測定装置(モコンコントロール社製:MOCON OX−TRAN 2/20)を用いた。なお、このときの測定条件は、気温40°、酸素濃度100%、湿度0%雰囲気であり、透過面積は50cm2である。さらに水蒸気透過率の測定には、カップ法(JIS−Z−208)を用いた。測定条件は、気温40°、酸素ガス雰囲気、湿度100%雰囲気であり、透過面積は50cm2である。基材フィルムであるPET(A−4100)の酸素ガス透過率は、同じくモコン法により90[cc/m2・Day・MPa]であり、水蒸気透過率は同じくカップ法により130[cc/m2・24H]であった。
【0102】
製膜時間5分、膜厚50[nm]でヘリウム透過率0.4[cc/m2・Day・MPa]について、酸素透過率を測定したところ、0.12[cc/m2・Day・MPa]であった。さらに、その水蒸気透過率は、1[cc/m2・Day・MPa]であった。
【0103】
また、製膜時間10分、膜厚80[nm]でヘリウム透過率0.4[cc/m2・Day・MPa]について、酸素透過率及び水蒸気透過率を測定したところ、夫々、0.1[cc/m2・Day・MPa]以下および、0.8[cc/m2・Day・MPa]以下であることが示された。このように単室のチャンバーで形成した1層の薄膜であっても、ガスバリア性能が高いことを示している。
【0104】
また、表面粗さについては、原子間力電子顕微鏡を用いてその表面像を測定するとともに、表面粗さを求めることによって評価した。基材フィルムとして用いたPETフィルムの表面粗さは、4nm程度であった。この基材フィルムに炭化珪素膜を形成した後、その表面粗さを測定したところ、膜厚2nmから100nmの範囲において、1〜2nmの間であることが認められた。
【0105】
以上の結果から、本発明によって得られた蒸着薄膜フィルムのガスバリア性能は、優れた特性を有していることを確認することができた。
【0106】
さらに得られたガスバリアフィルムを90°にたわませる試験を10回行った後に、再度ヘリウム透過率を測定する試験を行った。その結果、表1とほぼ同じ特性を示し、得られたガスバリアフィルムは柔軟性の高いものであることが分かった。
【0107】
〔比較例1〕 無機膜/PET
実施例1と同じく、基材フィルムとして、東洋紡株式会社製のA−4100の50μm厚みのPETフィルムを5cm角サイズに切りだし用いた。このフィルムを図4に示す単一チャンバーを備えたプラズマCVD装置の製膜室2の高周波電極3に貼り付けた後に真空引きを行い、各製膜室を1×10-5[Torr](1.3×10-3[Pa])にまで真空引きを行った。
【0108】
続く工程は、実施例1と同じであるが、ただし、前処理工程を行なわず、トリメチルシラン5[sccm]を基準とし、希釈ガスを用いない場合と、希釈ガスとしてアルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガス、一酸化ニ窒素ガスを夫々60[sccm]の12倍希釈の条件とした場合で、炭化珪素膜を形成した。なお、製膜に要した時間は、0.5分から60分である。また、一連の実験ではPETフィルムは高周波電極に設置してその製膜を行ったが、希釈ガスを用いない場合と、窒素ガスを希釈ガスとして用いる場合においては、PETフィルムを高周波電極に設置したケース(以下の表に、高周波電極設置と表示する)に加えて、アース電極に設置して製膜したケース(以下の表に、アース電極設置と表示する)も実施した。夫々の光線透過率とヘリウムガスの透過率を測定した。結果を以下の表にまとめる。
【0109】
【表2】
【0110】
【表3】
【0111】
【表4】
【0112】
【表5】
【0113】
【表6】
【0114】
【表7】
【0115】
【表8】
【0116】
以上の結果(表2〜表8の結果)をグラフにしてまとめたものが、図6、図7である。この結果から、光線透過率については、希釈ガスの有無や希釈ガスの種類に関係なくほぼ一定であることが分かる。しかし、ヘリウム透過率については、希釈ガスの有無さらには希釈ガスの種類によって差があることが確認できる。希釈ガスのない場合には、特に膜の厚さが薄い場合においてヘリウムガス透過率が大きくなっていることが分かる。さらに、希釈ガスによっても差があり、窒素を希釈ガスとして用いた時が最もヘリウム透過率が低くなることが確認できた。
【0117】
さらに、窒素希釈ガスの有無およびフィルムの設置状況についてのその表面粗さを評価する検討を、ヘリウムガスの透過率測定を行なったサンプルとは別に評価検討を行った。この結果を表9及び図8に示す。
【0118】
【表9】
【0119】
この結果より、高周波電極上にPETフィルムを設置したうえで、窒素希釈を行った場合が最も表面粗さが小さく平坦な表面が形成されることが分かる。
【0120】
また、アース電極および高周波電極上に設置したサンプルを用い、希釈しない場合、アルゴン希釈を行なった場合、窒素希釈を行った場合の膜の組成をオージェ電子分光により測定した結果を表10及び図9に示す。アース電極に設置した薄膜は、製膜時間10分のものであり厚みが150nmである。また高周波電極上に設置し、希釈ガスを用いずに形成した薄膜は、製膜時間が40分でありその膜厚は300nmである。さらに、高周波電極上に設置し、アルゴン希釈および窒素希釈を行なって形成した薄膜は、夫々製膜時間15分で膜厚140nm、製膜時間15分で膜厚140nmである。
【0121】
【表10】
【0122】
トリメチルシランを用い、窒素希釈にて製膜した膜は、その組成がその他のものと窒素元素の含有量が大きく、特徴的であることが確認できた。
【0123】
〔比較例2〕 無機膜/酸素プラズマ処理層/PET
実施例1と同じく、基材フィルムとして、東洋紡株式会社製のA−4100の50μm厚みのPETフィルムを5cm角サイズに切りだし用いた。このフィルム、図4に示す単一チャンバーを備えたプラズマCVD装置の製膜室2の高周波電極3に貼り付けた後に真空引きを行い、製膜室を1×10-5[Torr](1.3×10-3[Pa])にまで真空引きを行った。
【0124】
製膜室2には、ガスライン7を用いて窒素ガスに替えて酸素ガスを60[sccm]の流量で供給するとともに、製膜室の圧力は1.6[Pa]に保つようにコントロールした。続いて、製膜室の高周波印加電極に150W、13.56MHzの高周波電力を印加し、酸素ガスからなるプラズマを形成し、PETフィルムの前処理工程を2分間実施した。
【0125】
続いて、このように表面処理を施したPETフィルム上に、製膜室に、ガスライン7からトリメチルシランを5[sccm]の流量、かつ窒素ガスを60[sccm]の流量で供給するとともに、製膜室の圧力は1.6[Pa]に保つようにコントロールした。なお、製膜室2にて第1の工程にてプラズマを形成した。このときのRF投入電力は150Wであり、電極に発生したバイアス電圧は、−472Vであった。この結果、表面処理を施したPETフィルム上に、1層の炭化珪素化合物膜を形成することができる。
【0126】
本比較例においては、0.5分〜10分の範囲においてその製膜を実施した。本比較例の結果を表11に示す。
【0127】
【表11】
【0128】
以上の結果から、酸素プラズマ処理を前処理として行った場合、特に膜厚が薄く、それゆえ、光線透過率の低い範囲において、ヘリウム透過率が低下しないことが明らかになった。
【0129】
製膜時間の短い時点における表面形状を原子間力電子顕微鏡で観察すると、極めて粗い表面形状となっていることが認められる。このように酸素プラズマ処理を前処理として行なった場合、その薄膜表面は粗くなっており、そのガスバリア性能も性能の劣るものであることが分かる。
【0130】
〔実施例2〕 無機膜/有機膜/無機膜/窒素プラズマ処理層/PET
実施例1と同じく、基材フィルムとして東洋紡株式会社製のA−4100の50μm厚みのPETフィルムを5cm角サイズに切りだし用いた。このフィルムを、図4に示す単一チャンバーを備えたプラズマCVD装置の製膜室2の高周波電極3に貼り付けた後に真空引きを行い、各製膜室を1×10-5[Torr](1.3×10-3[Pa])にまで真空引きを行った。
【0131】
続いて、実施例1と同じように、窒素プラズマによる前処理工程を行ない、PETフィルム表面の平坦化を行なった。さらに第1の工程としての製膜は、トリメチルシラン5[sccm]、窒素ガス60[sccm]の12倍希釈の条件で、実施例1と同様に炭化珪素膜を形成した。なお、第1の工程の製膜に要した時間は、5分である。このときの無機膜の厚みは50nmであると想定される。
【0132】
続いて第2の工程でかつ有機化合物膜を形成した。有機化合物としてスチレンモノマーを用い、これをバブラーに格納して40℃に加温し、窒素流量60[sccm]のガスをこのバブラーを通過させることにより、スチレンモノマーを同伴した窒素ガスを製膜室2に供給した。なお、この際、窒素ガスの流量をニードルバルブ75の開度を調整することにより、製膜室2に所定の量を供給する方法をとった。なお、その流量はチャンバ−内にニードルバルブの開度を一定に保ちながら供給することによって得られる圧力上昇のカーブから算出する方法を取った。さらに、高周波電極に13.56MHzの高周波電力を30W印加した。このときの高周波電極に印加されるバイアス電圧は、−252Vであった。なお、本実施例においては、製膜に要した時間は、2分であり、第2の工程で形成された有機化合物膜の厚みはほぼ2nmと推定される。
【0133】
さらに、バルブ75と76を閉じてバブラーに供給する窒素ガスを止め、バルブ74を開としスチレンモノマーの入ったバブラーを介さずに、直接製膜室2に60[sccm]の窒素ガスを供給した。同時に、トリメチルシランガスを5[sccm]供給することにより、再び実施例1と同様に第1の工程を実施した。この際、高周波電極に印加する電力は150Wであり、印加されたバイアス電圧は、−600Vであった。なお、製膜に要した時間は、5分である。
【0134】
得られた3層積層構造の膜の550nmにおける光線透過率は、76%であった。なお、この3層積層構造の膜の厚みは100[nm]であった。
【0135】
この膜のヘリウム透過率を測定すると、0.05[cc/m2・Day・MPa]であることが確認できた。なお、このプラスチックフィルムの酸素透過率および水蒸気透過率はその値が低く測定することができなかった。但し、酸素透過率は0.001[cc/m2・Day・MPa]程度であり、水蒸気透過率ともに、0.01[cc/m2・Day]程度であろうと想定される。
【0136】
本実施例により、無機膜単膜よりも無機膜の間に有機膜を挟むことにより、その光線透過率がさらに向上することが認められた。このように、光線透過率の低下を極力抑制しながら、かつヘリウム透過率の高いガスバリアフィルムを形成することができた。
【0137】
〔実施例3〕 無機膜/有機膜/無機膜/有機膜/無機膜/窒素プラズマ処理層/PET
実施例1と同じく、基材フィルムとして東洋紡株式会社製のA−4100の50μm厚みのPETフィルムを5cm角サイズに切りだし用いた。このフィルムを、図4に示す単一チャンバーを備えたプラズマCVD装置の製膜室2の高周波電極3に貼り付けた後に真空引きを行い、各製膜室を1×10-5[Torr](1.3×10-3[Pa])にまで真空引きを行った。
【0138】
続いて、実施例1と同じように、窒素前処理工程を行ない、PETフィルム表面の平坦化を行なった。そして、第1の工程の実施を行ない、トリメチルシラン5[sccm]、窒素ガス60[sccm]の12倍希釈の条件で、実施例1と同様に炭化珪素膜を形成した。なお、製膜に要した時間は、3分である。
【0139】
続いて第2の工程で有機化合物膜を形成した。なお、このときの有機化合物膜の形成方法は、実施例2と全く同様である。すなわち第2の工程はスチレンモノマーを入れたバブラーは40℃に加温し、かつ窒素の流量は60[sccm]であり、製膜に要した時間は2分である。続いて第1の工程を実施した。なお、この2番目に行った第1の工程に要した時間は3分である。実施例2においては、さらに、第2の工程、第1の工程を上記と同様に連続して行った。
【0140】
このようにして得られた5層積層構造の膜の550nmにおける光線透過率は、86%であった。この膜のヘリウム透過率を測定すると、0.02[cc/m2・Day・MPa]であることが確認できた。また、この5層積層構造の膜の厚みは、100[nm]であった。
【0141】
なお、この場合の無機膜/有機膜/無機膜/有機膜/無機膜の各層の膜厚は夫々、20nmづつになるように設計したものである。
【0142】
このように無機膜単膜よりも無機膜の間に有機膜を挟むことを繰り返すことにより、その光線透過率がさらに向上することが認められた。本実施例により、光線透過率の低下を極力抑制し、かつヘリウム透過率の極めて低いガスバリアフィルムを形成することができた。
【0143】
〔実施例4〕 無機膜/無機膜/窒素プラズマ処理層/PET
実施例1と同じく、基材フィルムとして、東洋紡株式会社製のA−4100の50μm厚みのPETフィルムを5cm角サイズに切りだし用いた。このフィルムを、図4に示す単一チャンバーを備えたプラズマCVD装置の製膜室2の高周波電極3に貼り付けた後に真空引きを行い、各製膜室を1×10-5[Torr](1.3×10-3[Pa])にまで真空引きを行った。
【0144】
続いて、実施例1と同じように、窒素前処理工程を行ない、PETフィルム表面の平坦化を行なった。そして、第1の工程の実施を行なった。トリメチルシラン5[sccm]、窒素ガス60[sccm]の12倍希釈の条件で、炭化珪素膜を形成した。なお、製膜に要した時間は、5分である。
【0145】
ここで、第2の工程を省略し、3分間真空引きだけを行なう操作を行い、第1の工程を繰り返し行なった。2度目の第1の工程の製膜時間は、1回目と同じく3分である。
【0146】
この膜のヘリウム透過率を測定すると、0.3[cc/m2・Day・MPa]であることが確認できた。
【0147】
本実施例により、第2の工程を省き、有機化合物層の挿入しないガスバリアフィルムは、単層の無機膜を重ねたときとほぼ同じ効果をもたらすものであることを確認することができた。
【0148】
〔比較例3〕 無機膜(HMDS使用)/窒素プラズマ処理層/PET
基材フィルムとして、実施例1と同じ東洋紡製のA−4100のPETフィルムを用いた。ロール仕込み室にセットした後に真空引きを行い、1×10-5[Torr](1.3×10-3[Pa])にまで真空引きを行った。続く工程は、実施例1と同じであるが、トリメチルシランの代わりにヘキサメチルジシロキサン(HMDS)を流して膜の形成を行なった。
【0149】
その後、形成したフィルムを取りだし,ヘリウム透過率を測定したところ、製膜時間3分、膜厚3nmにおいて、元のフィルムとほぼ同じ90[cc/m2・Day・MPa]であることが確認できた。従って,酸素を分子構造に含む炭化珪素系化合物ガスを用いた珪素化合物膜は、光線透過率の高い極めて薄い膜の状態において、十分に低いヘリウムガスの透過率を発揮することができないことが明らかになった。
【0150】
〔実施例5〕 無機膜/有機膜/無機膜/窒素プラズマ処理層/PET−(ロールツーロール)
まず、基材フィルムとして、実施例1と同じ東洋紡製のA−4100のPETフィルムを用いた。製膜装置としては、図10に示すロールツーロール式の製膜装置を用いた。ロール仕込み室11にフィルムをセットした後に真空引きを行い、1×10-5[Torr](1.3×10-3[Pa])にまで真空引きを行った。
【0151】
夫々の製膜室における高周波電極は下側を向いているがその大きさは30cm角であり、R(曲率半径)1000mmの下側に凸の曲面を有している。フィルムは、この曲面に沿って押さえつけられる形で各高周波電極の表面をすべるように移動する。すなわち、送りだしロール31から、ロールガイド35、33、37、38、34、36を介して巻取りロール32に巻き取られる。
【0152】
高周波電源には、アステック社製の3kW電源を用いた。
【0153】
なお、プラズマの実効照射面積は、0.3[m]巾でかつ0.3[m]長さであり、フィルムの送り速度は表12に示すように、0.2[m/分]の巻取り速度から18[m/分]の巻取り速度の6段階で検討を行った。例えばフィルムの巻取り速度が0.2[m/分]の場合には、90秒間のプラズマ照射時間となる。また高周波電極とフィルムの間隔は、全ての製膜室(12、13、14)において、0.1[m]に調整した。
【0154】
まず前処理工程として、窒素ガスを夫々の製膜室にガスライン51、52、53を介して夫々300sccmづつ流し、圧力は1.6[Pa]を維持するようにした。この状態で、フィルムの送り速度0.2[m/分]の速度で巻取りロールを用いて巻取りを開始した。
【0155】
巻取りを開始した時点で高周波電極27に1kWの高周波電力を印加した。結果として,フィルム1は、90秒間窒素プラズマに曝されるようにした。フィルムを全て巻取りロール32に巻取り終えて高周波電力の投入を停止し、前処理工程を終えた。その時点で、窒素ガスの供給もストップし、今度は送り出しロールおよび巻取りロールを反転させてフィルムを送りだしロールに巻き取る作業を行なった。
【0156】
次いで,製膜室12には、ガスライン51を用いてトリメチルシランを20[sccm]、かつ窒素ガスを240[sccm]の流量で供給した。製膜室13には、ガスライン52を用いて窒素ガスをニードルバルブで調整しながらバブラーに入れたスチレンモノマーをバブリングしながら、窒素ガスを300sccm流した。製膜室14には、ガスライン53を用いてトリメチルシランを20[sccm]、かつ窒素ガスを240[sccm]の流量で供給した。さらに各製膜室(12、13、14)の圧力は1.6[Pa]に保つようにコントロールした。なお、スチレンモノマーは、約40℃に加熱した容器からニードルバルブを通じて供給するようにした。
【0157】
次いで,高周波電極27、29に1kWの高周波電力を投入し、さらに高周波電極28に300Wの高周波電力を投入した。製膜室12にて第1の工程にてトリメチルシランを用いた炭化珪素膜を形成し、製膜室13にて第2の工程にてスチレンモノマーからなるプラズマ重合膜を形成し、製膜室14にて第1の工程にてトリメチルシランを用いた炭化珪素膜を形成した。この結果、表面処理を施したPETフィルム上に、炭化珪素化合物膜、プラズマ有機重合膜、炭化珪素化合物膜の3層構成の膜を形成することができる。
【0158】
製膜後のフィルムは、巻取りロール32に巻き取られた。所定の長さのフィルムの製膜が終了した後に、ガスの供給を止め、真空解除を行った後に、フィルムを取りだした。フィルムは適当な長さに切りだし、光線透過率、ガスバリア性能を評価した。試験終了後、夫々の薄膜において、巻取りの速度と、製膜膜厚そして、酸素ガスについてガス透過率の関係を調べた。得られた結果を表12に示す。
【0159】
得られた薄膜の厚みは触針膜厚計(ビーコ社:DEKTAK3)を用いて測定した。
【0160】
【表12】
【0161】
なお、夫々の膜厚は均等に製膜するように設計されており、無機膜/有機膜/無機膜の膜厚は等しく3等分したものである。
【0162】
さらに、酸素透過率と水蒸気透過率の測定を巻取り速度0.2[m/分]のものについて行った。この結果、酸素ガス透過率は、0.02[cc/m2・Day・MPa]であり、水蒸気透過率は、0.2[cc/m2・Day]であった。
【0163】
以上の結果から、本発明によって得られた蒸着薄膜フィルムのガスバリア性能は、優れた特性を有していることを確認することができた。
【0164】
〔比較例4〕
窒素プラズマによる前処理を一切行なわず、フィルムの送り速度を0.2[m/分]とした以外は実施例4と同様にしてPETフィルム上に3層の膜を有するガスバリアフィルムを作成した。
【0165】
膜厚は、10nmであり、かつヘリウムガスの透過率は、5.2[cc/m2・Day・MPa]であった。また、550nmにおける光線透過率は82%であった。酸素ガス透過率は、0.2[cc/m2・Day・MPa]であり、水蒸気透過率は、2[cc/m2・Day]であった。
【0166】
なお、以上の結果をまとめると図11、図12、図13のようになる。図11は、実施例1〜5、比較例1〜4の結果について、膜厚と光線透過率の関係を示したものである。図11からは、実施例、比較例ともに光線透過率に関しては、大きな差のないことが分かる。
【0167】
図12は膜厚とヘリウム透過率の関係について同じく、実施例1〜5、比較例1〜4の結果について記載したものであるが、比較例と実施例との間に顕著な差が確認できている。
【0168】
さらに、図13においては同じく実施例1〜5、比較例1〜4の結果について、ヘリウム透過率を横軸に、光線透過率を縦軸にプロットしたものである。実施例にて記載されているものは、特にヘリウム透過率が10[cc/m2・Day・MPa]以下の場合において、80%以上の高い光線透過率を有し、かつヘリウム透過率が1[cc/m2・Day・MPa]以下の場合において、75%以上の高い光線透過率を有していることが認められている。
【0169】
【発明の効果】
珪素および炭素および水素元素を含んだ分子構造を有する原料ガスを用い、かつ分子構造に酸素元素を含まないガスを用いて、酸素濃度が原子数換算で30%未満である炭化珪素薄膜を、高密度プラズマ状態を利用することにより形成することができた。さらに得られた薄膜は、光線透過率が高く、かつ酸素ガスおよび水蒸気透過率の極めて高いガスバリアフィルムを形成することができた。また、本発明によるフィルムは従来の酸化珪素系の無機薄膜からなるガスバリアフィルムに比較して柔軟性に優れ、通常の折り曲げ等の処理においては、そのガスバリア性能を失うことがないものであった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明により得られるガスバリア性フィルムの1層構成の例を示す断面説明図である。
【図2】本発明により得られるガスバリア性フィルムの3層構成の例を示す断面説明図である。
【図3】本発明により得られるガスバリア性フィルムの5層構成の例を示す断面説明図である。
【図4】本発明を実施するに好適な単一チャンバー方式のプラズマCVD装置の一例の概要図である。
【図5】単一チャンバー方式のプラズマCVD装置の高周波電極に印加した高周波電力と形成されるバイアス電圧の関係を示すグラフである。
【図6】単一チャンバー方式のプラズマCVD装置を用いて得られた膜厚と光線透過率の関係を示したグラフである。
【図7】単一チャンバー方式のプラズマCVD装置を用いて得られた膜厚とヘリウム透過率の関係を示したグラフである。
【図8】単一チャンバー方式のプラズマCVD装置を用いて得られた窒素希釈の有無およびPETフィルムの設置位置の違いによる表面粗さの評価結果を示したグラフである。
【図9】単一チャンバー方式のプラズマCVD装置を用いて得られた窒素希釈の有無およびPETフィルムの設置位置の違いによる製膜した膜の元素組成をオージェ電子分光により測定した結果を示すグラフである。
【図10】本発明を実施するに好適なロールツーロールプラズマCVD装置の一例の概要図である。
【図11】実施例および比較例の代表的な膜厚と光線透過率の関係を示したグラフである。
【図12】実施例および比較例の代表的な膜厚とヘリウムガス透過率の関係を示したグラフである。
【図13】実施例および比較例の代表的なヘリウムガス透過率と光線透過率の関係を示したグラフである。
【符号の説明】
1…基材となるプラスチックフィルム
2…単一チャンバー方式プラズマCVD装置の製膜室
3…単一チャンバー方式プラズマCVD装置の高周波印加電極
4…単一チャンバー方式プラズマCVD装置の高周波印加電極の電力投入ライン
5…単一チャンバー方式プラズマCVD装置の高周波印加電源
6…単一チャンバー方式プラズマCVD装置のアース電極
7…単一チャンバー方式プラズマCVD装置のガス供給ライン
71…単一チャンバー方式プラズマCVD装置の製膜ガス供給ライン
72…単一チャンバー方式プラズマCVD装置の窒素ガス供給ライン
73…単一チャンバー方式プラズマCVD装置の製膜ガス供給ラインバルブ
74,75,76…単一チャンバー方式プラズマCVD装置の窒素ガス供給ラインバルブ
77…単一チャンバー方式プラズマCVD装置のバブラー
8…単一チャンバー方式プラズマCVD装置の真空排気設備
11…ロール仕込み室
12、14…第1の工程で薄膜形成を行う製膜室
13…第2の工程で薄膜形成を行う製膜室
15…ロール巻取り室
16、17、18…アース電極(アノード電極)
21、22、23…プラズマ発生電源
24、25、26…高周波電力の接続管
27、28、29…高周波電極(カソード電極)
31…送出しロール
32…巻取りロール
33、34、35、36、37、38…ロールガイド
41、42、43、44、45…真空排気ポンプ
51、52、53…ガス供給ライン
61、62、63、64、65、66、67、68…仕切壁
Claims (8)
- プラスチックフィルム上に膜が形成されてなるガスバリアフィルムの製造方法において、
真空チャンバー内にプラスチックフィルムを設置し、該真空チャンバー内を0.01[Pa]以下の圧力にする減圧工程と、
該真空チャンバー内に窒素ガスを供給するとともに、周波数が10kHz以上100MHz以下で、絶対値が200V以上の負のバイアス電圧を有する高周波電力を該プラスチックフィルムが配置された高周波電極に投入することにより窒素ガスのプラズマを形成し、該プラスチックフィルムを該窒素ガスのプラズマに曝す前処理工程と、
一種類の化合物のガスもしくは二種類以上の化合物のガスの混合ガスであって、炭素元素、珪素元素および水素元素が該化合物のいずれかの分子中に含まれ、かつ、酸素元素は該化合物のいずれにも含まれない製膜ガスを、該製膜ガスに対してモル換算流量にて3倍以上100倍以下の窒素ガスによって希釈した珪素含有製膜ガスを該真空チャンバー内に供給するとともに、絶対値が200V以上の負のバイアス電圧を有する高周波電力を該プラスチックフィルムが配置された高周波電極に投入することにより該珪素含有製膜ガスのプラズマを形成し、前記前処理工程を経たプラスチックフィルムを該珪素含有製膜ガスのプラズマに曝すことにより、前記前処理工程を経たプラスチックフィルム上に膜を形成する製膜工程と
を有することを特徴とするガスバリアフィルムの製造方法。 - 前記製膜工程によって1nm以上100nm以下の厚さの膜を形成する請求項1に記載の方法。
- 前記製膜工程によって波長550nmにおける光線透過率が75%以上である膜を形成する請求項1または2に記載の方法。
- 前記前処理工程により前記プラスチックフィルムの表面粗さを2nm以下とし、前記製膜工程により膜が形成されたプラスチックフィルムの表面粗さを2nm以下とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
- プラスチックフィルム上に膜が形成されてなるガスバリアフィルムの製造方法において、
真空チャンバー内にプラスチックフィルムを設置し、該真空チャンバー内を0.01[Pa]以下の圧力にする減圧工程と、
該真空チャンバー内に窒素ガスを供給するとともに、周波数が10kHz以上100MHz以下で、絶対値が200V以上の負のバイアス電圧を有する高周波電力を該プラスチックフィルムが配置された高周波電極に投入することにより窒素ガスのプラズマを形成し、該プラスチックフィルムを該窒素ガスのプラズマに曝す前処理工程と、
一種類の化合物のガスもしくは二種類以上の化合物のガスの混合ガスであって、炭素元素、珪素元素および水素元素が該化合物のいずれかの分子中に含まれ、かつ、酸素元素は該化合物のいずれにも含まれない製膜ガスを、該製膜ガスに対してモル換算流量にて3倍以上100倍以下の窒素ガスによって希釈した珪素含有製膜ガスを該真空チャンバー内に供給するとともに、絶対値が200V以上の負のバイアス電圧を有する高周波電力を該プラスチックフィルムが配置された高周波電極に投入することにより該珪素含有製膜ガスのプラズマを形成し、該プラスチックフィルムを該珪素含有製膜ガスのプラズマに曝すことにより、該プラスチックフィルム上に膜を形成する第1の工程と
該真空チャンバー内に有機化合物のガスを窒素ガスによって希釈した有機化合物含有ガスを供給すると共に、絶対値が100V以上の負のバイアス電圧を有する高周波電力を該プラスチックフィルムが配置された高周波電極に投入することにより該有機化合物のガスのプラズマを形成し、該プラスチックフィルムを該有機化合物のガスのプラズマに曝すことにより、該プラスチックフィルム上に膜を形成する第2の工程とを有し、
該前処理工程に引き続いて該第1の工程を行った後、該第2の工程および該第1の工程をこの順に1回ずつもしくは複数回ずつ行うことを特徴とするガスバリアフィルムの製造方法。 - 前記第1の工程によって1nm以上50nm以下の厚さの膜を形成し、前記第2の工程によって1nm以上50nm以下の厚さの膜を形成し、かつ、前記第1の工程及び第2の工程によって得られる膜の合計の厚さを5nm以上100nm以下とする請求項5に記載の方法。
- 前記第2の工程において、液体の有機化合物を窒素ガスにより揮発せしめることにより、前記有機化合物含有ガスを得る請求項5または6記載の方法。
- 前記前処理工程により前記プラスチックフィルムの表面粗さを2nm以下とし、前記製膜工程により膜が形成されたプラスチックフィルムの表面粗さを2nm以下とすることを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載の方法。
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