JPWO2015163358A1 - ガスバリアーフィルム及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明の課題は、均一性の高いガスバリアー性に優れたガスバリアーフィルムを提供することである。本発明のガスバリアーフィルム(1)は、ガスバリアー層(3)のX線光電子分光法による深さ方向の元素分布測定に基づく各構成元素の分布曲線のうち、ガスバリアー層(3)の層厚方向におけるガスバリアー層(3)の表面からの距離と、炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子の総原子数(100at%)に対する炭素原子数の比率(炭素原子比率)との関係を示す炭素分布曲線が、基材(2)最近傍側にある第1極値に対応する層厚方向の位置を起点(0%)としてガスバリアー層(3)最表面(100%)までの間に、特定の炭素原子比率を満たす領域が存在することを特徴とする。

Description

本発明は、ガスバリアーフィルム及びその製造方法に関する。より詳しくは、均一性の高いガスバリアー性に優れたガスバリアーフィルム及びその製造方法に関する。
従来、プラスチック基板やフィルムの表面に、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素等の金属酸化物を含む薄膜(ガスバリアー層)を形成したガスバリアーフィルムは、食品、医薬品等の分野で物品を包装する用途に用いられている。ガスバリアーフィルムを用いることによって、水蒸気や酸素等のガスによる物品の変質を防止することができる。
近年、このような水蒸気や酸素等の透過を防ぐガスバリアーフィルムについて、有機エレクトロルミネッセンス(electroluminescence:EL)素子、液晶表示(Liquid Crystal Display:LCD)素子等の電子デバイスへの展開が要望され、多くの検討がなされている。これらの電子デバイスにおいては、高いガスバリアー性、例えば、ガラス基材に匹敵するガスバリアー性が要求される。
ガラス基材よりも柔軟性に富むガスバリアーフィルムを製造する方法としては、例えば、CVD法(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長法、化学蒸着法)が用いられる。
例えば、特許文献1では、プラズマ化学気相成長法により形成された酸化炭化ケイ素(SiOC)膜により、ガスバリアー性やフレキシブル性、耐衝撃性が向上するとしている。
しかしながら、特許文献1に記載されたガスバリアーフィルムのガスバリアー性は十分なものではなく、特にガスバリアーフィルム内に欠陥が存在すると、折り曲げなどの外力によりクラックが発生し、そのクラックが膜全体に伝播して著しいガスバリアー性の低下が生じやすくなっていたため、屈曲耐性を維持することが困難であった。
同様に、ガラス基材よりも柔軟性に富むガスバリアーフィルムを製造する方法として、例えば、特許文献2では、プラズマ化学気相成長法により厚さ方向で組成が連続的に変化するガスバリアーフィルムの製造方法が挙げられている。
この場合、組成を繰り返し変化させることで折り曲げによる耐性は向上するが、ガスバリアー性能の粗密が極端なため、層内の緻密部が欠陥起点で破壊されると非緻密部のガスバリアー性が低いゆえに、結局ガス透過点が一極集中してしまう。
その結果、局部的(点状)なガス透過が抑制できず、デバイスを封止した場合には、ダークスポットと呼ばれる視認されやすい欠陥が短期間で検出されてしまう。
特開2011−73430号公報 特許4690041号
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、均一性の高いガスバリアー性に優れたガスバリアーフィルム及びその製造方法を提供することである。
特に、各種電子デバイスを封止したときに、局部的な欠陥の発生を著しく低減し、ガスバリアー性に優れたガスバリアーフィルム及びその製造方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、ガスバリアー層のX線光電子分光法による深さ方向の元素分布測定に基づく各構成元素の分布曲線のうち、ガスバリアー層の層厚方向におけるガスバリアー層の表面からの距離と、炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子の総原子数(100at%)に対する炭素原子数の比率(炭素原子比率)との関係を示す炭素分布曲線が、基材最近傍側にある第1極値に対応する層厚方向の位置を起点(0%)としてガスバリアー層最表面(100%)までの間に、特定の炭素原子比率を満たす領域が存在するガスバリアーフィルムにより、均一性の高いガスバリアー性に優れたガスバリアーフィルム及びその製造方法を提供できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.基材上に、酸化炭化ケイ素を含有するとともに、その組成が層厚方向において変化するガスバリアー層を有するガスバリアーフィルムであって、
前記ガスバリアー層のX線光電子分光法による深さ方向の元素分布測定に基づく各構成元素の分布曲線のうち、前記ガスバリアー層の層厚方向における前記ガスバリアー層の表面からの距離と、炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子の総原子数(100at%)に対する炭素原子数の比率(炭素原子比率)との関係を示す炭素分布曲線が、前記基材最近傍側にある第1極値に対応する層厚方向の位置を起点(0%)として前記ガスバリアー層最表面(100%)までの間に、下記(1)〜(3)で規定される要件を満たす領域が存在することを特徴とするガスバリアーフィルム。
(1)0%以上20%以下の領域における平均炭素原子比率a(at%)が、
30(at%)≦a≦40(at%)
を満たす。
(2)80%以上100%以下の領域における平均炭素原子比率c(at%)が、
0.1×a(at%)≦c≦0.5×a(at%)
を満たす。
(3)20%超80%未満の領域における平均炭素原子比率b(at%)が、
0.5×a(at%)<b<a(at%)
を満たし、かつ、
同一領域内に少なくとも一つの極値を有し、前記極値のうち最大値となる極値を第2極値としたとき、前記第2極値の炭素原子比率d(at%)が、
a(at%)≦d≦45(at%)
を満たす。
2.20%超80%未満の領域における前記平均炭素原子比率b(at%)が、
0.6×a(at%)≦b≦0.8×a(at%)
を満たすことを特徴とする第1項に記載のガスバリアーフィルム。
3.第1項又は第2項に記載のガスバリアーフィルムを製造するガスバリアーフィルムの製造方法であって、
基材を対向するローラー電極間に複数回搬送して、プラズマCVD法により、層厚方向に炭素原子比率の異なるガスバリアー層を形成することを特徴とするガスバリアーフィルムの製造方法。
本発明の上記手段により、均一性の高いガスバリアー性に優れたガスバリアーフィルム及びその製造方法を提供することができる。
本発明の効果の発現機構・作用機構については明確になっていないが、以下のように推察している。
特許文献1に記載のガスバリアーフィルムは、層厚方向に炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子の組成が、単調かつ連続的に変化する。このようなガスバリアーフィルムは、ガスバリアー性、特に、高温高湿環境下での電子デバイスの性能を維持するためのガスバリアー性が十分なものではないという問題があった。これは、深さ方向で炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子の原子組成が連続変化し、ガスバリアー性の高い組成領域と柔軟性に有利な組成領域の分離が少ないためと推察される。このため、特許文献1に記載のガスバリアーフィルムにおいては、ガスバリアー性を向上させるため厚膜化する必要があり、その結果、カールが大きくなる、あるいは折り曲げ操作に対してのガスバリアー性の劣化が増長されるといった別の弊害が生じる。
特許文献2に記載のガスバリアーフィルムは、層厚方向に炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子の組成が繰り返し連続的に変化する。この構造をとることで、折り曲げ操作に対しての耐久性を向上させることが容易になっている。しかしながら、このようなガスバリアーフィルムは、層厚方向の一部の領域において、有機性の高い領域を複数有することで、この領域内のガスバリアー性が低く、特に、有機EL素子を封止して高温高湿環境下での耐久性能を見た場合、ガスバリアー層の局部的な欠陥点からのガス拡散が顕著になり、その結果、点状の非発光領域である、いわゆるダークスポットと呼ばれる欠陥が視認されやすいという問題があった。
本発明のガスバリアーフィルムにおいては、ガスバリアー層が、基材表面近傍に酸化度が小さい高炭素含有量のSiOC膜領域、ガスバリアー層表面側に酸化度が大きい低炭素含有量のSiOC膜領域を有し、更に、ガスバリアー層の特定の中間領域に高炭素含有量のSiOC膜領域を有している。このような構成とすることで、フィルム内の応力バランスをとることが可能となり、均一性の高いガスバリアー性を発揮することが可能となり、更には、高温高湿度環境であっても高いガスバリアー性を発揮でき、屈曲後のガスバリアー性の劣化や局部的な欠陥からのガス拡散が起きることがなくなると考えられる。
本発明のガスバリアーフィルムの一例を示す断面図 本発明に係るガスバリアー層の炭素分布曲線の一例を示すグラフ 本発明に係るガスバリアー層の形成に用いられる製造装置の一例を示す模式図 本発明のガスバリアーフィルムを封止フィルムとして用いた電子デバイスである有機EL素子の一例を示す断面図
本発明のガスバリアーフィルムは、ガスバリアー層のX線光電子分光法による深さ方向の元素分布測定に基づく各構成元素の分布曲線のうち、ガスバリアー層の層厚方向におけるガスバリアー層の表面からの距離と、炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子の総原子数(100at%)に対する炭素原子数の比率(炭素原子比率)との関係を示す炭素分布曲線が、基材最近傍側にある第1極値に対応する層厚方向の位置を起点(0%)としてガスバリアー層最表面(100%)までの間に、特定の炭素原子比率を満たす領域が存在することを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項3までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明において、20%超80%未満の領域における平均炭素原子比率b(at%)は0.5×a(at%)<b<a(at%)であるが、本発明の効果発現の観点から、
0.6×a(at%)≦b≦0.8×a(at%)
を満たすことが好ましい。
また、本発明のガスバリアーフィルムの製造方法としては、基材を対向するローラー電極間に複数回搬送して、プラズマCVD法により、層厚方向に炭素原子比率の異なるガスバリアー層を形成する態様の製造方法であることが、本発明のガスバリアーフィルムを製造する方法として好ましい。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、数値範囲を表す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用している。
≪ガスバリアーフィルムの構成≫
図1に示すとおり、本発明のガスバリアーフィルム1は、基材2上に、ガスバリアー層3が積層されて構成されている。
ガスバリアー層2は、酸化炭化ケイ素(SiOC)を含有するとともに、その組成が層厚方向において変化している。
≪ガスバリアー層(3)≫
本発明に係るガスバリアー層は、X線光電子分光法による深さ方向の元素分布測定に基づく各構成元素の分布曲線のうち、ガスバリアー層の層厚方向におけるガスバリアー層の表面からの距離と、炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子の総原子数(100at%)に対する炭素原子数の比率(炭素原子比率)との関係を示す炭素分布曲線が、少なくとも二つ以上の極値を有しており、更に、層厚方向に下記(1)〜(3)で規定される要件を満たす領域が存在している。
以下、図2を参照しながら、詳細に説明する。
なお、本発明において極値とは、ガスバリアー層の層厚方向におけるガスバリアー層の表面からの距離(L)に対する元素の原子比率の極大値のことをいう。
ここで、極大値とは、ガスバリアー層の表面からの距離を変化させた場合に元素(炭素、ケイ素又は酸素)の原子比率の値が増加から減少に変わる点のことをいう。
まず、ガスバリアー層中、基材最近傍側にある極値M1に対応する層厚方向の位置を起点(0%)として、当該起点とガスバリアー層最表面との間を100等分し(すなわち、ガスバリアー層最表面を100%とする。)、0%以上20%以下の範囲内を領域A、20%超80%未満の範囲内を領域B、80%以上100%以下の範囲内を領域Cとする。
(1)領域Aにおいては、当該領域Aにおける平均炭素原子比率a(at%)が、
30(at%)≦a≦40(at%)
を満たすことを特徴としている。
領域Aは、高い平均炭素原子比率を有しており、これによりガスバリアーフィルムのガスバリアー性を確保することができる。平均炭素原子比率a(at%)が30at%より低い場合には、良好なガスバリアー性を発現することができず、反対に40at%よりも高い場合には、折り曲げや高温高湿保存下での十分な耐久性を維持することが困難となる。
(2)領域Cにおいては、当該領域Cにおける平均炭素原子比率c(at%)が、
0.1×a(at%)≦c≦0.5×a(at%)
を満たすことを特徴としている。
領域Aにおける平均炭素原子比率a(at%)と同様に、平均炭素原子比率c(at%)が0.1×a(at%)よりも低い場合には、良好なガスバリアー性を発現することができず、反対に0.5×a(at%)よりも高い場合には折り曲げや、高温高湿保存下での十分な耐久性を維持することが困難となる。
(3)領域Bにおいては、当該領域Bにおける平均炭素原子比率b(at%)が、
0.5×a(at%)<b<a(at%)
を満たし、かつ、同一領域B内に少なくとも一つの極値を有し、極値のうち最大値となる極値の炭素原子比率d(at%)が、
a(at%)≦d≦45(at%)
を満たすことを特徴としている。
図2に示した例においては、領域Bに二つの極値M2及びM3を有しており、このうち、極値M2が極値のうち最大値となる極値である。
領域Bにおける平均炭素原子比率b(at%)が0.5×a(at%)よりも低い場合や、反対にa(at%)よりも高い場合には、折り曲げ後のガスバリアー性の劣化や、ガスバリアーフィルムの透明性の低下及び平坦性の低下(カール)が生じやすくなる。
また、極値M2がa(at%)よりも低い場合には、折り曲げ試験前後の局部的な欠陥の発生を抑制することが困難となり、45at%よりも高い場合には折り曲げ試験前の欠陥が抑制できる反面、折り曲げによる劣化が大きくなる。
20%超80%未満の領域における平均炭素原子比率b(at%)は、
0.6×a(at%)≦b≦0.8×a(at%)
を満たすことが好ましい。
なお、各領域における炭素原子比率や平均炭素原子比率は、プラズマ化学気相成長法における、放電空間に投入する有機ケイ素化合物を含む原料ガスと酸素ガスとの供給量及びそれらの比率を調整したり、電極の温度やプラズマ放電を生成させるための印加電力量を調整したりとすることによって制御することができる。
一般的には、有機ケイ素化合物を含む原料ガスに対する酸素ガスの供給比率を低下させることで平均炭素原子比率は大きくなり、電極温度や印加電力量を高くすることで平均炭素原子比率は小さくなる。
≪X線光電子分光法≫
炭素分布曲線(ガスバリアー層の層厚方向におけるガスバリアー層表面からの距離(L)と、炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子の総原子数(100at%)に対する炭素原子数の比率(炭素原子比率)との関係を示す曲線)、ケイ素分布曲線(距離Lと、炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子の総原子数(100at%)に対するケイ素原子数の比率(ケイ素原子比率)との関係を示す曲線)及び酸素分布曲線(距離Lと、炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子の総原子数(100at%)に対する酸素原子数の比率(酸素原子比率)との関係を示す曲線)は、X線光電子分光法(X−ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)の測定とアルゴン等の希ガスイオンスパッタとを併用することにより、試料内部を露出させつつ順次表面組成分析を行う、いわゆるXPSデプスプロファイル測定により作成することができる。
このようなXPSデプスプロファイル測定により得られる分布曲線は、例えば、縦軸を各元素の原子比率(at%)とし、横軸をエッチング時間(スパッタ時間)として作成することができる。
なお、本発明において、各領域における平均炭素原子比率(at%)は、XPSデプスプロファイル測定で深さ方向にエッチングして5nm間隔で測定した値を平均化した値とする。
≪ガスバリアー層の層厚の測定方法≫
透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)による断面観察により、層厚を任意に10箇所測定し、平均した値をガスバリアー層の層厚とした。
(層厚方向の断面のTEM画像)
断面TEM観察として、観察試料を以下の集束イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)加工装置により薄片作製後、TEM観察を行った。
(FIB加工)
装置:SII製SMI2050
加工イオン:Ga(30kV)
試料厚さ:100〜200nm
(TEM観察)
装置:日本電子製JEM2000FX(加速電圧:200kV)
≪ガスバリアー層の層厚≫
本発明に係るガスバリアー層の層厚は、薄膜化及びガスバリアー性の両立の観点から、50〜500nmの範囲内であることが好ましく、50〜300nmの範囲内であることがより好ましい。
≪ガスバリアー層の水蒸気透過度≫
ガスバリアー層は、ガスバリアー性を有することが好ましい。ここで、ガスバリアー性を有するとは、基材上にガスバリアー層のみを積層させ、MOCON社製のMOCON水蒸気透過率測定装置Aquatranを用いて測定された水蒸気透過度(38℃、相対湿度90%RH)が、0.1g/(m・day)以下であることを指し、0.01g/(m・day)以下であることが好ましい。
≪ガスバリアー層の形成方法≫
本発明に係るガスバリアー層は、プラズマ化学気相成長法(プラズマCVD、PECVD(plasma−enhanced chemical vapor deposition)、以下、単に「プラズマCVD法」とも称する。)により形成することができる。
プラズマCVD法としては、特に限定されないが、国際公開第2006/033233号に記載の大気圧又は大気圧近傍でのプラズマCVD法、対向ローラー電極を持つプラズマCVD装置を用いたプラズマCVD法が挙げられる。プラズマCVD法は、ペニング放電プラズマ方式のプラズマCVD法であってもよい。
中でも、有機ケイ素化合物を含む原料ガスと酸素ガスとを用いて、磁場を印加したローラー間に放電空間を有する(ロール to ロール(roll to roll)方式の)放電プラズマ化学気相成長法により形成することが好ましい。上述したように、放電プラズマ化学気相成長法を用いることにより、極値を有し、かつ、各領域における炭素原子比率が一定範囲内に制御されたガスバリアー層を容易に作製可能となり、層内の応力バランスが適切なガスバリアーフィルムを作製することができる。さらに、放電プラズマ化学気相成長法を用いることにより、ガスバリアー層が緻密化し、ガスバリアー性を向上させることができる。
以下、有機ケイ素化合物を含む原料ガスと酸素ガスとを用いて、磁場を印加したローラー間に放電空間を有する放電プラズマ化学気相成長法により、本発明に係るガスバリアー層を形成する方法について説明する。
プラズマCVD法においてプラズマを発生させる際には、複数の成膜ローラーの間の空間にプラズマ放電を発生させることが好ましく、一対の成膜ローラーを用い、その一対の成膜ローラーのそれぞれに基材(ここでいう基材には、基材が処理された形態も含む。)を配置して、一対の成膜ローラー間に放電してプラズマを発生させることがより好ましい。
このようにして、一対の成膜ローラーを用い、その一対の成膜ローラー上に基材を配置して、かかる一対の成膜ローラー間に放電することにより、成膜時に一方の成膜ローラー上に存在する基材の表面部分を成膜しつつ、もう一方の成膜ローラー上に存在する基材の表面部分も同時に成膜することが可能となって効率よく薄膜を製造できる。加えて、ローラーを使用しない通常のプラズマCVD法と比較して成膜レートを倍にできる。
また、このようにして一対の成膜ローラー間に放電する際には、一対の成膜ローラーの極性を交互に反転させることが好ましい。さらに、このようなプラズマCVD法に用いる成膜ガスとしては、有機ケイ素化合物と酸素とを含むものが好ましく、その成膜ガス中の酸素の含有量は、成膜ガス中の有機ケイ素化合物の全量を完全酸化するのに必要な理論酸素量未満であることが好ましい。
また、本発明のガスバリアーフィルムは、生産性の観点から、ロール to ロール方式で基材の表面上にガスバリアー層を形成させることが好ましい。また、このようなプラズマCVD法によりガスバリアー層を製造する際に用いることが可能な装置としては、特に制限されないが、少なくとも一対の成膜ローラーと、プラズマ電源とを備え、かつ一対の成膜ローラー間において放電することが可能な構成となっている装置であることが好ましく、例えば、図3に示す製造装置を用いた場合には、プラズマCVD法を利用しながらロール to ロール方式で製造することも可能となる。
以下、図3を参照しながら、本発明に係るガスバリアー層の形成方法について、より詳細に説明する。なお、図3は、本発明に係るガスバリアー層を製造するために好適に利用することが可能な製造装置の一例を示す模式図である。また、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図3に示す製造装置10は、送出しローラー12と、搬送ローラー13〜18と、成膜ローラー19及び20と、ガス供給管21と、プラズマ発生用電源22と、成膜ローラー19及び20の内部にそれぞれ設置された磁場発生装置23及び24と、巻取りローラー25を備えている。また、このような製造装置10においては、少なくとも成膜ローラー19及び20と、ガス供給管21と、プラズマ発生用電源22と、磁場発生装置23及び24とが成膜(真空)チャンバー28内に配置されている。さらに、このような製造装置10において、成膜チャンバー28は図示を省略した真空ポンプに接続されており、かかる真空ポンプにより成膜チャンバー28内の圧力を適宜調整することが可能となっている。
送出しローラー12及び搬送ローラー13は、搬送系チャンバー27内に配置され、巻取りローラー25及び搬送ローラー18は、搬送系チャンバー29内に配置されている。搬送系チャンバー27及び29と成膜チャンバー28とは、それぞれ連結部30及び31を介して接続されている。例えば、連結部30及び31に真空ゲートバルブを設けて成膜チャンバー28と搬送系チャンバー27及び29とを物理的に隔離してもよい。真空ゲートバルブを用いることによって、例えば、成膜チャンバー28内のみを真空系とし、搬送系チャンバー27及び29内は大気下とすることができる。また、成膜チャンバー28と搬送系チャンバー27及び29とを物理的に隔離することにより、成膜チャンバー28内で発生したパーティクルによって搬送系チャンバー27及び29が汚染されることを抑制することができる。
このような製造装置においては、一対の成膜ローラー(成膜ローラー19及び20)を一対の対向電極として機能させることが可能となるように、各成膜ローラー19及び20がそれぞれプラズマ発生用電源22に接続されている。そのため、このような製造装置10においては、プラズマ発生用電源22により電力を供給することにより、成膜ローラー19と成膜ローラー20との間の空間に放電することが可能であり、これにより成膜ローラー19と成膜ローラー20との間の空間にプラズマを発生させることができる。なお、このように、成膜ローラー19と成膜ローラー20とを電極としても利用する場合には、電極としても利用可能なようにその材質や設計を適宜変更すればよい。
また、このような製造装置10においては、一対の成膜ローラー(成膜ローラー19及び20)は、その中心軸が同一平面上において略平行となるようにして配置することが好ましい。このようにして、一対の成膜ローラー(成膜ローラー19及び20)を配置することにより、ローラーを使用しない通常のプラズマCVD法と比較して成膜レートを倍にできる。
このような製造装置10によれば、CVD法により基材2(ここでいう、基材には、基材が処理された形態も含む。)の表面上にガスバリアー層3を形成することが可能であり、成膜ローラー19上において基材2の表面上にガスバリアー層成分を堆積させつつ、更に成膜ローラー20上においても基材2の表面上にガスバリアー層成分を堆積させることもできるため、基材2の表面上にガスバリアー層を効率よく形成することができる。
成膜ローラー19及び20の内部には、成膜ローラー19及び20が回転しても回転しないようにして固定された磁場発生装置23及び24がそれぞれ設けられている。
成膜ローラー19及び20にそれぞれ設けられた磁場発生装置23及び24は、一方の成膜ローラー19に設けられた磁場発生装置23と他方の成膜ローラー20に設けられた磁場発生装置24との間で磁力線がまたがらず、それぞれの磁場発生装置23及び24がほぼ閉じた磁気回路を形成するように磁極を配置することが好ましい。このような磁場発生装置23及び24を設けることにより、各成膜ローラー19及び20の対向側表面付近に磁力線が膨らんだ磁場の形成を促進することができ、その膨出部にプラズマが収束されやすくなるため、成膜効率を向上させることができる点で優れている。
また、成膜ローラー19及び20にそれぞれ設けられた磁場発生装置23及び24は、それぞれローラー軸方向に長いレーストラック状の磁極を備え、一方の磁場発生装置23と他方の磁場発生装置24とは向かい合う磁極が同一極性となるように磁極を配置することが好ましい。このような磁場発生装置23及び24を設けることにより、それぞれの磁場発生装置23及び24について、磁力線が対向するローラー側の磁場発生装置にまたがることなく、ローラー軸の長さ方向に沿って対向空間(放電領域)に面したローラー表面付近にレーストラック状の磁場を容易に形成することができ、その磁場にプラズマを収束させることができため、ローラー幅方向に沿って巻き掛けられた幅広の基材2を用いて効率的に蒸着膜であるガスバリアー層3を形成することができる点で優れている。
各成膜ローラー19及び20における基材2への張力は、全て同じであってもよいが、成膜ローラー19又は成膜ローラー20における張力のみ高くして成膜してもよい。成膜ローラー19及び20における基材2への張力を高くすることによって、基材2と成膜ローラー19及び20との密着性が向上し、熱交換が効率的に行われ、膜均一性が向上し、また、熱シワも抑制されるという利点がある。
成膜ローラー19及び20としては、適宜公知のローラーを用いることができる。このような成膜ローラー19及び20としては、より効率よく薄膜を形成させるという観点から、直径が同一のものを使うことが好ましい。また、このような成膜ローラー19及び20の直径としては、放電条件、チャンバーのスペース等の観点から、直径が300〜1000mmφの範囲内、特に300〜700mmφの範囲内が好ましい。成膜ローラーの直径が300mmφ以上であれば、プラズマ放電空間が小さくなることがないため生産性の劣化もなく、短時間でプラズマ放電の全熱量が基材2にかかることを回避できることから、基材2へのダメージを軽減でき好ましい。一方、成膜ローラーの直径が1000mmφ以下であれば、プラズマ放電空間の均一性等も含めて装置設計上、実用性を保持することができるため好ましい。各成膜ローラー19及び20は、ニップロールを備えていてもよく、ニップロールを備えることで、基材2の成膜ローラー19及び20への密着性が向上する。これにより、基材2と成膜ローラー19及び20との間で熱交換が効率的に行われ、膜均一性が向上し、また、熱シワも抑制されるという利点がある。
このような製造装置10においては、基材2の表面がそれぞれ対向するように、一対の成膜ローラー(成膜ローラー19及び20)上に、基材2が配置されている。このようにして基材2を配置することにより、成膜ローラー19と成膜ローラー20との間の対向空間に放電を行ってプラズマを発生させる際に、一対の成膜ローラー(成膜ローラー19及び20)間に存在する基材2のそれぞれの表面を同時に成膜することが可能となる。すなわち、このような製造装置10によれば、プラズマCVD法により、成膜ローラー19上にて基材2の表面上にガスバリアー層成分を堆積させ、更に成膜ローラー20上にてガスバリアー層成分を堆積させることができるため、基材2の表面上にガスバリアー層を効率よく形成することが可能となる。
基材2の基材幅は、成膜ローラー幅より広くてもよいし、狭くてもよいし、同一であってもよい。基材幅を成膜ローラー幅より広くすることによって、成膜ローラー19及び20が露出しないため、成膜ローラー19及び20がパーティクルによって汚染されることを抑制でき、メンテナンス性が向上し、性能が安定化するという利点がある。また、基材幅が成膜ローラー幅より狭いことによって、成膜される膜の有効幅が広がるという利点がある。同様に、膜形成の有効幅を考慮し、成膜ローラー19及び20上の放電幅(成膜空間)と、基材端部との位置は基材幅を適宜選択することによって適宜調整することができる。
また、基材2は、成膜チャンバー28に搬送される前に加熱されてもよい。加熱温度としては、基材のガラス転移温度以上であることが好ましい。基材を加熱して、予め基材を収縮させることによって、成膜中の基材収縮を抑制することができる。
基材2の成膜時の基材温度は、特に限定されるものではないが、30〜150℃の範囲内であることが好ましい。このような基材温度は、放電空間の温度及び成膜ローラー19及び20の温度に依存する。成膜ローラー19及び20の温度としては、−30〜100℃の範囲内であることが好ましく、このようなローラー温度に調整するために、成膜ローラー19及び20を適宜加熱、冷却すればよい。
製造装置10に用いる送出しローラー12及び搬送ローラー13〜18としては、適宜公知のローラーを用いることができる。また、巻取りローラー25としても、基材2上にガスバリアー層3を形成したガスバリアーフィルム1を巻き取ることが可能なものであればよく、特に制限されず、適宜公知のローラーを用いることができる。搬送ローラー13〜18としては、段付きローラーを用いてもよい。段付きローラーとは、ローラーの両端部のみが基材2と接触する搬送ローラーであり、例えば、特開2009−256709号公報の図2に記載の段付きローラーなどを用いることができる。段付きローラーを使用することによって、ガスバリアー層表面に非接触で搬送することができ、接触によるフィルムの劣化を抑制することができる。また、送出しローラー12や巻取りローラー25は、ターレット式であってもよい。ターレットは、2軸以上の多軸であってもよく、そのうち一部の軸のみを大気開放できる構造であってもよい。
また、ガス供給管21及び真空ポンプとしては、原料ガス等を所定の速度で供給又は排出することが可能なものを適宜用いることができる。
また、ガス供給手段であるガス供給管21は、成膜ローラー19と成膜ローラー20との間の対向空間(放電領域、成膜ゾーン)の一方に設けることが好ましく、真空排気手段である真空ポンプ(図示せず。)は、対向空間の他方に設けることが好ましい。このようにガス供給手段であるガス供給管21と、真空排気手段である真空ポンプを配置することにより、成膜ローラー19と成膜ローラー20との間の対向空間に効率よく成膜ガスを供給することができ、成膜効率を向上させることができる点で優れている。
なお、図3においては、ガス供給管21は、成膜ローラー19と成膜ローラー20との間の中心線上に設けられているが、これに限定されず、例えば、成膜ローラー19と成膜ローラー20との間の中心線から、どちらか一方側にずれていてもよい(左右方向に中心線からずらしてもよい。)。ガス供給管21を成膜ローラー19と成膜ローラー20との間の中心線からずらすことによって、片方の成膜ローラーに近く、もう片方の成膜ローラーからは遠くなるため、原料ガスの供給が成膜ローラー19上で形成される膜組成と成膜ローラー20上で形成させる膜組成とが異なるようになり、膜質を変えたいときなどに適宜ガス供給管21の位置をずらせばよい。また、ガス供給管21は、適宜中心線上で成膜ローラーから離したり近づけたりしてもよい(上下方向に中心線上で配置位置を動かしてもよい。)。ガス供給管21を成膜ローラーの中心軸上で遠ざけ、放電空間からガス供給管21を離すことによって、ガス供給管21にパーティクルが付着することを抑制できるなどの利点があり、ガス供給管21を成膜ローラーの中心軸上で放電空間に近づけることによって成膜レートを向上させることができるなどの利点がある。
図3において、ガス供給管21は一つであるが、ガス供給管21は複数あってもよく、各ノズルから異なる供給ガスを放出する形態であってもよい。
さらに、プラズマ発生用電源22としては、適宜公知のプラズマ発生装置の電源を用いることができる。このようなプラズマ発生用電源22は、これに接続された成膜ローラー19と成膜ローラー20とに電力を供給して、これらを放電のための対向電極として利用することを可能とする。このようなプラズマ発生用電源22としては、より効率よくプラズマCVDを実施することが可能となることから、一対の成膜ローラーの極性を交互に反転させることが可能なもの(交流電源など)を利用することが好ましい。
また、このようなプラズマ発生用電源22としては、より効率よくプラズマCVDを実施することが可能となることから、印加電力を100W〜20kWの範囲内とすることが好ましく、100W〜10kWの範囲内とすることがより好ましく、かつ交流の周波数を50Hz〜13.56MHzの範囲内とすることが好ましく、50Hz〜500kHzの範囲内とすることがより好ましい。
また、プラズマプロセス安定化の点から、高周波電流波及び電圧波がどちらも正弦波となるような高周波電源を用いてもよい。
図3においては、一つのプラズマ発生用電源22で成膜ローラー19及び20の双方に給電している(両成膜ローラー給電)が、このような形態に限定されるものではなく、一方の成膜ローラーに給電し(片側成膜ローラー給電)、他方の成膜ローラーをアースする形態であってもよい。
また、成膜ローラーへの給電方法としては、ローラー端の一方のみから給電するローラー片端給電でもよいし、ローラーの両端から給電するローラー両端給電であってもよい。高周波帯を供給する場合には、均一な供給が可能となることから、ローラー両端給電であってもよい。
また、給電方法としては、異なる周波数を印加する2周波給電を行ってもよく、一方の成膜ローラーに異なる2周波を印加する形態であっても、一方の成膜ローラーと他方の成膜ローラーとで異なる周波数を印加する形態であってもよい。このような2周波給電により、プラズマ密度が上がり、成膜速度を向上させることができる。
また、図3には図示していないが、放電空間のプラズマ発光強度を外部からモニタリングし、所望の発光強度でない場合には、磁場間距離(対向ローラー間距離)、磁場強度、電源の印加電力、電源周波数、供給ガス量などを調整して所望のプラズマ発光強度とするフィードバック回路を有していてもよい。このようなフィードバック回路を有することによって、成膜/生産を安定にすることができる。
また、磁場発生装置23及び24としては、適宜公知の磁場発生装置を用いることができる。さらに、基材2としては、本発明で用いられる基材の他に、ガスバリアー層3をあらかじめ形成させたものを用いることができる。このように、基材2としてガスバリアー層3をあらかじめ形成させたものを用いることにより、ガスバリアー層3の層厚を厚くすることも可能である。
このような図3に示す製造装置10を用いて、例えば、炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子を含むガスバリアー層を形成することができる。この際、ガスバリアー層の炭素原子の含有量の原子比率を制御する方法は特に限定されるものではないが、用いられる原料の比率(酸素と後述するHMDSOとの供給比率)、電力、圧力などを制御することにより、炭素原子の含有量の原子比率を制御することができる。
真空チャンバー内の圧力(真空度)は、原料ガスの種類等に応じて適宜調整することができ、0.5〜50Pa程度であることが好ましく、0.5〜10Paの範囲内とすることがより好ましい。
また、このようなプラズマCVD法において、成膜ローラー19と成膜ローラー20との間に放電するために、プラズマ発生用電源22に接続された電極ドラム(本実施形態においては、成膜ローラー19及び20に設置されている。)に印加する電力は、原料ガスの種類や真空チャンバー内の圧力等に応じて適宜調整することができるものであり一概にいえるものでないが、0.1〜10kWの範囲内とすることが好ましい。印加電力が0.1kW(100W)以上であれば、パーティクルが発生するのを十分に抑制することができ、他方、10kW以下であれば、成膜時に発生する熱量を抑えることができ、成膜時の基材表面の温度が上昇するのを抑制できる。そのため、基材が熱負けすることなく、成膜時にシワが発生するのを防止できる点で優れている。
基材2の搬送速度(ライン速度)は、原料ガスの種類や真空チャンバー内の圧力等に応じて適宜調整することができるが、0.25〜100m/minの範囲内とすることが好ましく、0.5〜100m/minの範囲内とすることがより好ましい。
ガス供給管21から対向空間に供給される成膜ガス(原料ガス等)としては、原料ガス、反応ガス、キャリアガス、放電ガスを単独又は2種以上を混合して用いることができる。ガスバリアー層3の形成に用いる成膜ガス中の原料ガスとしては、形成するガスバリアー層3の材質に応じて適宜選択して使用することができる。このような原料ガスとしては、例えば、ケイ素を含有する有機ケイ素化合物や炭素を含有する有機化合物ガスを用いることができる。このような有機ケイ素化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、ヘキサメチルジシラン(HMDS)、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサンが挙げられる。これらの有機ケイ素化合物の中でも、化合物の取り扱い性及び得られるガスバリアー層のガスバリアー性等の特性の観点から、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンが好ましい。これらの有機ケイ素化合物は、単独でも、又は2種以上を組み合わせても使用することができる。また、炭素を含有する有機化合物ガスとしては、例えば、メタン、エタン、エチレン、アセチレンを例示することができる。中でも、本実施形態の膜組成に容易に調整できることから、原料ガスとして有機ケイ素化合物を含むことが好ましい。
また、成膜ガスとしては、原料ガスの他に反応ガスを用いてもよい。このような反応ガスとしては、原料ガスと反応して酸化物等の無機化合物となるガスを適宜選択して使用することができる。本実施形態のガスバリアー層3は、酸素を含むことから、反応ガスとしては、例えば、酸素、オゾンを用いることができ、簡便性の観点から酸素を用いることが好ましい。また、その他、窒化物を形成するための反応ガスを用いてもよく、例えば、窒素、アンモニアを用いることができる。これらの反応ガスは、単独でも、又は2種以上を組み合わせても使用することができ、例えば、酸窒化物を形成する場合には、酸化物を形成するための反応ガスと窒化物を形成するための反応ガスとを組み合わせて使用することができる。
成膜ガスとしては、原料ガスを成膜チャンバー28内に供給するために、必要に応じて、キャリアガスを用いてもよい。さらに、成膜ガスとしては、プラズマ放電を発生させるために、必要に応じて、放電ガスを用いてもよい。このようなキャリアガス及び放電ガスとしては、適宜公知のものを使用することができ、例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン等の希ガス、水素及び窒素を用いることができる。
このような成膜ガスが原料ガスと反応ガスを含有する場合、原料ガスと反応ガスとの比率としては、原料ガスと反応ガスとを完全に反応させるために理論上必要となる反応ガスの量の比率よりも、反応ガスの比率を過剰にしすぎないことが好ましい。反応ガスの比率を過剰にしすぎないことで、形成されるガスバリアー層3によって、優れたガスバリアー性や耐屈曲性を得ることができる点で優れている。また、成膜ガスが有機ケイ素化合物と酸素とを含有するものである場合には、成膜ガス中の有機ケイ素化合物の全量を完全酸化するのに必要な理論酸素量以下であることが好ましい。
以下、成膜ガスとして、原料ガスとしてのヘキサメチルジシロキサン(有機ポリシラザン、HMDSO、(CHSiO)と、反応ガスとしての酸素(O)とを含有するものを用い、ケイ素−酸素系の薄膜を形成する場合を例に挙げて、成膜ガス中の原料ガスと反応ガスとの好適な比率等について、より詳細に説明する。
原料ガスとしてのヘキサメチルジシロキサン(HMDSO、(CHSiO)と、反応ガスとしての酸素(O)と、を含有する成膜ガスをプラズマCVDにより反応させてケイ素−酸素系の薄膜を作製する場合、その成膜ガスにより下記反応式(1)で表されるような反応が起こり、二酸化ケイ素が生成する。
Figure 2015163358
このような反応においては、ヘキサメチルジシロキサン1モルを完全酸化するのに必要な酸素量は12モルである。そのため、成膜ガス中に、ヘキサメチルジシロキサン1モルに対して酸素を12モル以上含有させて完全に反応させた場合には、均一な二酸化ケイ素膜が形成されてしまう(炭素分布曲線が存在しない。)ため、炭素を含有するガスバリアー層3を形成することができなくなってしまう。そのため、本発明に係るガスバリアー層を形成する際には、上記反応式(1)の反応が完全に進行してしまわないように、ヘキサメチルジシロキサン1モルに対して酸素量を化学量論比の12モルより少なくすることが好ましい。
なお、実際のプラズマCVDチャンバー内の反応では、原料のヘキサメチルジシロキサンと反応ガスの酸素とは、ガス供給部から成膜領域へ供給されて成膜されるので、反応ガスの酸素のモル量(流量)が原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の12倍のモル量(流量)であったとしても、現実には完全に反応を進行させることはできず、酸素の含有量を化学量論比に比して大過剰に供給して初めて反応が完結すると考えられる(例えば、CVDにより完全酸化させて酸化ケイ素を得るために、酸素のモル量(流量)を原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の20倍以上程度とする場合もある。)。
そのため、原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)に対する酸素のモル量(流量)は、化学量論比である12倍以下、より好ましくは10倍以下の量であることが好ましい。
このような比でヘキサメチルジシロキサン及び酸素を含有させることにより、完全に酸化されなかったヘキサメチルジシロキサン中の炭素原子や水素原子がガスバリアー層中に取り込まれる。なお、有機EL素子や太陽電池などのような透明性を必要とする電子デバイス用のフレキシブル基板への利用の観点から、成膜ガス中のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)に対する酸素のモル量(流量)の下限は、ヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の0.1倍より多い量とすることが好ましく、0.5倍より多い量とすることがより好ましい。
なお、本実施形態では、ガスバリアー層の基材近傍領域における炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子の総原子数に対する酸素原子の含有量の最大原子比率を、30〜45at%の範囲内と比較的低い値に制御することで、相対的に炭素原子の組成比を高めて緻密な領域を形成することに特徴がある。
このため、成膜ガスを成膜する際の成膜ガス中のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)に対する酸素のモル量(流量)は、等倍〜10倍の範囲内であることが好ましく、等倍〜6倍の範囲内であることがより好ましく、等倍〜3倍の範囲内であることが更に好ましい。
図3に示す製造装置10を用いて、成膜ガス(原料ガス等)を成膜チャンバー28内に供給しつつ、一対の成膜ローラー(成膜ローラー19及び20)間に放電を発生させることにより、成膜ガス(原料ガス等)がプラズマによって分解され、成膜ローラー19上の基材2の表面上及び成膜ローラー20上の基材2の表面上に、第1回目の成膜層がプラズマCVD法により形成される。この際、成膜ローラー19及び20のローラー軸の長さ方向に沿って対向空間(放電領域)に面したローラー表面付近にレーストラック状の磁場が形成されて、磁場にプラズマを収束させる。このプロセスを前述の条件の一つ又は複数を変化させた第2回目の成膜層、第3回目の成膜層と繰り返すことによって、層厚方向に各構成原子の組成が連続的に変化することとなる。
具体的には、炭素分布曲線、ケイ素分布曲線及び酸素分布曲線において、基材2が成膜ローラー19のA地点及び成膜ローラー20のB地点を通過する際に、炭素分布曲線の極大値と酸素分布曲線の極小値とが形成される。これに対して、基材2が成膜ローラー19のC1及びC2地点、並びに成膜ローラー20のC3及びC4地点を通過する際に、炭素分布曲線の極小値と酸素分布曲線の極大値とが形成される。
このような極値の存在は、膜内の炭素原子及び酸素原子の存在比が均一ではない層であることを示すものであり、部分的に炭素原子が少ない緻密性の低い部分が存在することで、層全体がフレキシブルな構造となり、屈曲に対する耐久性が向上する。
また、ガスバリアー層の極値間の距離(炭素/酸素分布曲線の有する一つの極値及び該極値に隣接する極値におけるガスバリアー層の層厚方向におけるガスバリアー層の表面からの距離(L)の差の絶対値)は、成膜ローラー19及び20の回転速度(基材2の搬送速度)によって調節できる。なお、このような成膜に際しては、基材2が送出しローラー12や成膜ローラー19等によってそれぞれ搬送されることにより、ロール to ロール方式の連続的な成膜プロセスにより基材2の表面上にガスバリアー層3が形成される。
上記したように、本実施形態のより好ましい態様としては、本発明に係るガスバリアー層を、図3に示す対向ローラー電極を有するプラズマCVD装置(ロール to ロール方式)を用いたプラズマCVD法によって、好ましくは条件を変更しながら複数回成膜することを特徴とするものである。これは、対向ローラー電極を有するプラズマCVD装置(ロール to ロール方式)を用いて量産する場合に、可撓性(屈曲性)に優れ、高温高湿下でのガスバリアー性が高く、機械的強度、特にロール to ロールでの搬送時の耐久性、ガスバリアー性を低下させる欠陥が少ないガスバリアー層を効率よく製造することができるためである。このような製造装置は、太陽電池や電子部品などに使用される温度変化に対する耐久性が求められるガスバリアーフィルムを、安価でかつ容易に量産することができる点でも優れている。
≪基材(2)≫
本発明のガスバリアーフィルムの基材としては、プラスチックフィルムを用いる。用いられるプラスチックフィルムは、ガスバリアー層を保持できるフィルムであれば材質、厚さ等に特に制限はなく、使用目的等に応じて適宜選択することができる。
プラスチックフィルムとしては、具体的には、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン樹脂、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィルンコポリマー、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、フルオレン環変性ポリエステル樹脂、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂等のフィルムが挙げられる。
ガスバリアーフィルムに用いられるプラスチックフィルムの厚さは、用途によって適宜選択されるため特に制限はないが、典型的には1〜800μmの範囲内であり、好ましくは10〜200μmの範囲内である。これらのプラスチックフィルムは、従来のガスバリアーフィルムに用いられている公知の透明導電層や平滑層等の機能層を有していてもよい。機能層については、上述したもののほか、特開2006−289627号公報の段落0036〜0038に記載されているものを好ましく採用できる。
また、上記に挙げた樹脂等を用いた基材は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。
基材は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。
基材の両面、少なくともガスバリアー層を設ける側には、接着性向上のための公知の種々の処理、コロナ放電処理、火炎処理、酸化処理、プラズマ処理、平滑層の積層等を、必要に応じて組み合わせて行うことができる。
≪アンカーコート層≫
本発明に係る基材の表面には、接着性(密着性)の向上を目的として、アンカーコート層を易接着層として形成してもよい。アンカーコート層の構成材料、形成方法等は、特開2013−52561号公報の段落0229〜0232に開示される材料、方法等が適宜採用される。
≪平滑層≫
本発明のガスバリアーフィルムは、基材のガスバリアー層を有する面に平滑層を有していてもよい。平滑層は、突起等が存在する基材の粗面を平坦化するために、あるいは、樹脂基材に存在する突起により、ガスバリアー層に生じた凹凸やピンホールを埋めて平坦化するために設けられる。平滑層の構成材料、形成方法、表面粗さ、層厚等は、特開2013−52561号公報の段落0233〜0248に開示される材料、方法等が適宜採用される。
≪ブリードアウト防止層≫
本発明のガスバリアーフィルムは、ブリードアウト防止層を更に有することができる。ブリードアウト防止層は、平滑層を有するフィルムを加熱した際に、樹脂基材中から未反応のオリゴマー等が表面へ移行して、接触する面を汚染する現象を抑制する目的で、平滑層を有する基材の反対面に設けられる。ブリードアウト防止層は、この機能を有していれば、基本的に平滑層と同じ構成をとっても構わない。ブリードアウト防止層の構成材料、形成方法、層厚等は、特開2013−52561号公報の段落0249〜0262に開示される材料、方法等が適宜採用される。
≪電子デバイス≫
上記したような本発明のガスバリアーフィルムは、優れたガスバリアー性、透明性、屈曲性を有する。このため、本発明のガスバリアーフィルムは、光電変換素子(太陽電池素子)、有機EL素子、液晶表示素子等の電子デバイスに用いられるガスバリアーフィルム及びこれを用いた電子デバイスや、電子デバイス等のパッケージなど、様々な用途に使用することができる。
≪電子素子本体≫
電子素子本体は電子デバイスの本体であり、本発明のガスバリアーフィルム側に配置される。電子素子本体としては、ガスバリアーフィルムによる封止が適用されうる公知の電子デバイスの本体が使用できる。例えば、有機EL素子、太陽電池(PV)、液晶表示素子(LCD)、電子ペーパー、薄膜トランジスタ、タッチパネル等の本体が挙げられる。本発明の効果がより効率的に得られるという観点から、該電子素子本体は、有機EL素子又は太陽電池の本体であることが好ましい。これらの電子素子本体の構成についても、特に制限はなく、従来公知の構成を有しうる。
以下、有機EL素子を例にとって、説明する。
≪有機EL素子≫
本発明のガスバリアーフィルム1を封止フィルムとして用いた電子機器である有機EL素子の一例を図4に示す。
図4に示すように、有機EL素子9は、ガスバリアーフィルム1と、ガスバリアーフィルム1上に形成されたITOなどの透明電極4と、透明電極4を介してガスバリアーフィルム1上に形成された有機EL素子本体部5と、その有機EL素子本体部5を覆うように接着剤層6を介して配設された対向フィルム7等を備えている。なお、透明電極4は、有機EL素子本体部5の一部を成すともいえる。
このガスバリアーフィルム1におけるガスバリアー層3が形成された面に、透明電極4と有機EL素子本体部5が形成されるようになっている。また、対向フィルム7は、アルミ箔などの金属フィルムのほか、本発明のガスバリアーフィルムを用いてもよい。対向フィルム7にガスバリアーフィルムを用いる場合、ガスバリアー層が形成された面を有機EL素子本体部5に向けて、接着剤層6によって貼付するようにすればよい。
有機EL素子本体部5の構成層(陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極等)やその作製方法としては、例えば、特開2014−045101号公報の段落[0110]〜[0159]等に記載のものを参考にすることができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
≪ガスバリアーフィルム1〜20の作製≫
(樹脂基材の準備)
シートロール状の樹脂基材として、熱可塑性樹脂支持体であって、両面に易接着加工された厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製、コスモシャインA4300、以下、PETと略記する。)を用いた。
(アンカーコート層の形成)
上記樹脂基材の片方の易接着面側に、JSR株式会社製のUV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材 OPSTAR(登録商標) Z7501を用い、乾燥後の層厚が3μmになるようにワイヤーバーで塗布した後、乾燥条件として、80℃で3分間の乾燥を行った。次いで、空気雰囲気下で高圧水銀ランプを使用し、硬化条件:1.0J/cmで硬化を行い、アンカーコート層を形成した。
(ブリードアウト防止層の形成)
上記樹脂基材のもう一方の易接着面側に、JSR株式会社製のUV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材 OPSTAR(登録商標) Z7535を、乾燥後の層厚が3μmとなるようにワイヤーバーで塗布した後、80℃、3分で乾燥した後、空気雰囲気下で高圧水銀ランプを用い、硬化条件:1.0J/cmで硬化を行い、ブリードアウト防止層を形成した。このブリードアウト防止層を形成後、圧力5Paの減圧下、温度35℃の環境下で96時間保管して調湿した樹脂基材として用いた。
(ガスバリアー層の形成:ローラーCVD法)
図3に記載の磁場を印加したローラー間放電プラズマCVD装置(以下、この方法をローラーCVD法と称す。)を用い、樹脂基材のブリードアウト防止層を形成した面が成膜ローラーと接触するようにして、樹脂基材を装置に装着し、下記の成膜条件(プラズマCVD条件)のうち、原料ガス、酸素ガス、真空チャンバー内の真空度、及びプラズマ発生用電源からの印加電力を記載の範囲内で変化させて炭素原子比率が異なるようにして、複数回組み合わせることにより、アンカーコート層上に最終的な層厚が160nmとなるように成膜し、これをガスバリアー層とした。本実施例においては、4回成膜を繰り返して、層厚方向に炭素原子比率の異なるガスバリアー層を形成した。
なお、炭素原子比率を高くするため、主として全供給ガス中のHMDSOの供給量を増やす、あるいは酸素ガスの供給量を減らすことで調整を行い、層厚の調整のために真空チャンバー内の真空度を増減した。
〈プラズマCVD条件〉
原料ガス(ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO))の供給量:100〜400sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute)
酸素ガス(O)の供給量:400〜2500sccm
真空チャンバー内の真空度:1.5〜3.0Pa
プラズマ発生用電源からの印加電力:1.0〜4.0kW
プラズマ発生用電源の周波数:70kHz
樹脂基材の搬送速度:12m/min
(元素分布プロファイルの測定)
上記形成したガスバリアー層について、下記条件にてXPSデプスプロファイル測定を行い、層厚方向の薄膜層の表面からの距離に対する、炭素分布曲線、ケイ素分布曲線及び酸素分布曲線を得た。
エッチングイオン種:アルゴン(Ar
エッチングレート(SiO熱酸化膜換算値):0.05nm/sec
エッチング間隔(SiO換算値):10nm
X線光電子分光装置:Thermo Fisher Scientific社製、機種名「VG Theta Probe」
照射X線:単結晶分光AlKα
X線のスポット及びそのサイズ:800μm×400μmの楕円形
以上のようにして測定した全層領域における炭素分布曲線、ケイ素分布曲線及び酸素分布曲線より、各元素組成における連続変化領域の有無、極値の有無を観察した。
その結果、ガスバリアー層中の炭素原子比率が複数の極値を有しながら深さ方向に連続的に変化していることが確認された。
≪ガスバリアーフィルムの評価≫
<ガスバリアー性の評価>
(1)屈曲処理前の水蒸気透過度(WVTR)の測定
作製した各ガスバリアーフィルムについて、MOCON社製のMOCON水蒸気透過率測定装置Aquatranを用いて、38℃、90%RHにおける水蒸気透過度を測定し、下記の評価ランクに従って、ガスバリアー性を評価した。
評価結果を表1に示す。
5:0.005g/(m・day)未満である
4:0.005g/(m・day)以上0.010g/(m・day)未満である
3:0.010g/(m・day)以上0.100g/(m・day)未満である
2:0.100g/(m・day)以上0.500g/(m・day)未満である
1:0.500g/(m・day)以上である
(2)屈曲処理後の水蒸気透過度の測定(耐久性の評価)
作製した各ガスバリアーフィルムについて、下記の屈曲処理を施した後、38℃、90%RHにおける水蒸気透過度を測定し、上記と同様の評価ランクに従って、ガスバリアー性を評価した。
評価結果を表1に示す。
(屈曲処理)
屈曲処理として、作製した各ガスバリアーフィルムについて、半径10mmの曲率になるように180度の角度で100回の屈曲を繰り返して行った。
<欠陥(腐食点)の検出>
(1)屈曲処理前の欠陥(腐食点)の検出
(水蒸気バリアー性評価用セルの作製)
作製した各ガスバリアーフィルムのガスバリアー層面(最表面)に、真空蒸着装置(日本電子株式会社製、真空蒸着装置 JEE−400)を用い、ガスバリアーフィルム試料の蒸着させたい部分(1辺5cm角の正方形)以外をマスクし、金属カルシウムを蒸着させた。その後、真空状態のままマスクを取り去り、カルシウム蒸着面にアルミニウムをもう一つの金属蒸着源から蒸着させた。アルミニウム封止後、真空状態を解除し、速やかに乾燥窒素ガス雰囲気下で、厚さ0.2mmの石英ガラスに封止用紫外線硬化樹脂(ナガセケムテックス製)を介してアルミニウム封止側と対面させ、紫外線を照射することで、評価用セルを作製した。
得られた両面を封止した試料(評価用セル)を60℃、90%RHの高温高湿下で120時間保存した後、Ca蒸着層の初期状態から新たに成長した腐食点を光学顕微鏡を用いて観察し、下記の評価ランクに従って評価した。
評価結果を表1に示す。
なお、ガスバリアーフィルム面以外からの水蒸気の透過がないことを確認するために、比較試料としてガスバリアーフィルム試料の代わりに、厚さ0.2mmの石英ガラス板を用いて金属カルシウムを蒸着した試料を、同様な60℃、90%RHの高温高湿下保存を行い、1000時間経過後でも直径が100μmを超えて成長したCa腐食点が発生しないことを確認した。
Ca蒸着面25cm当たりの直径が100μmを超えて成長したCa腐食点の数が、
5:0又は1か所である
4:2か所以上4か所以下である
3:5か所以上9か所以下である
2:10か所以上30か所以下である
1:30か所を超える、あるいは、腐食点が連結した面状の腐食に成長した
(2)屈曲処理後の欠陥(腐食点)の検出(耐久性の評価)
作製した各ガスバリアーフィルムについて、下記の屈曲処理を施した後、上記と同様にして評価用セルを作製し、上記と同様の評価ランクに従って評価した。
評価結果を表1に示す。
(屈曲処理)
屈曲処理として、作製した各ガスバリアーフィルムについて、半径10mmの曲率になるように180度の角度で100回の屈曲を繰り返して行った。
Figure 2015163358
上記結果より、本発明のガスバリアーフィルムは、比較例のガスバリアーフィルムと比較して、水蒸気透過度が低く、局部的な欠陥の発生が少ない。さらには、屈曲した後のガスバリアー性の劣化が少なく、耐久性が高いことがわかる。
本発明は、均一性の高いガスバリアー性に優れたガスバリアーフィルム及びその製造方法を提供することに、特に好適に利用することができる。
1 ガスバリアーフィルム
2 基材
3 ガスバリアー層
4 透明電極
5 有機EL素子本体部
6 接着剤層
7 対向フィルム
9 有機EL素子
10 製造装置
12 送出しローラー
13〜18 搬送ローラー
19、20 成膜ローラー
21 ガス供給管
22 プラズマ発生用電源
23、24 磁場発生装置
25 巻取りローラー、
27、29 搬送系チャンバー
28 成膜チャンバー
30、31 連結部
A〜C 領域
M1〜M3 極値

Claims (3)

  1. 基材上に、酸化炭化ケイ素を含有するとともに、その組成が層厚方向において変化するガスバリアー層を有するガスバリアーフィルムであって、
    前記ガスバリアー層のX線光電子分光法による深さ方向の元素分布測定に基づく各構成元素の分布曲線のうち、前記ガスバリアー層の層厚方向における前記ガスバリアー層の表面からの距離と、炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子の総原子数(100at%)に対する炭素原子数の比率(炭素原子比率)との関係を示す炭素分布曲線が、前記基材最近傍側にある第1極値に対応する層厚方向の位置を起点(0%)として前記ガスバリアー層最表面(100%)までの間に、下記(1)〜(3)で規定される要件を満たす領域が存在することを特徴とするガスバリアーフィルム。
    (1)0%以上20%以下の領域における平均炭素原子比率a(at%)が、
    30(at%)≦a≦40(at%)
    を満たす。
    (2)80%以上100%以下の領域における平均炭素原子比率c(at%)が、
    0.1×a(at%)≦c≦0.5×a(at%)
    を満たす。
    (3)20%超80%未満の領域における平均炭素原子比率b(at%)が、
    0.5×a(at%)<b<a(at%)
    を満たし、かつ、
    同一領域内に少なくとも一つの極値を有し、前記極値のうち最大値となる極値を第2極値としたとき、前記第2極値の炭素原子比率d(at%)が、
    a(at%)≦d≦45(at%)
    を満たす。
  2. 20%超80%未満の領域における前記平均炭素原子比率b(at%)が、
    0.6×a(at%)≦b≦0.8×a(at%)
    を満たすことを特徴とする請求項1に記載のガスバリアーフィルム。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のガスバリアーフィルムを製造するガスバリアーフィルムの製造方法であって、
    基材を対向するローラー電極間に複数回搬送して、プラズマCVD法により、層厚方向に炭素原子比率の異なるガスバリアー層を形成することを特徴とするガスバリアーフィルムの製造方法。
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