JP2022138914A - ガスバリア性フィルムの製造方法及びその巻回体 - Google Patents

ガスバリア性フィルムの製造方法及びその巻回体 Download PDF

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Abstract

【課題】生産性を向上しつつ、シワ、巻取り不良等の不具合発生を抑制可能なガスバリア性フィルムの製造方法及びその巻回体を提供すること。【解決手段】ガスバリア性フィルムの製造方法は、第1保護フィルムによって覆われる第1主面、及び第2主面を有するフィルム状の樹脂基材を準備する第1工程と、第2主面上に第1無機バリア層をプラズマ化学気相成長法によって形成する第2工程と、第1無機バリア層を第2保護フィルムによって覆う第3工程と、樹脂基材から第1保護フィルムを剥離する第4工程と、第3工程後であって第4工程後、第1主面上に第2無機バリア層をプラズマ化学気相成長法によって形成する第5工程と、を備える。第1無機バリア層と第2無機バリア層とのそれぞれは、珪素原子、酸素原子及び炭素原子を含み、第1無機バリア層の水蒸気透過度は、第2無機バリア層の水蒸気透過度よりも低い。【選択図】図1

Description

本発明は、ガスバリア性フィルムの製造方法及びその巻回体に関する。
近年、自発光素子として有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」とも言う)が注目されている。有機EL素子は、有機化合物を含む発光層と、当該発光層を挟む一対の電極とを有する素子であり、支持基板上に設けられる。有機EL素子においては、発光層に酸素、水蒸気等が侵入することによって、ダークスポットと呼ばれる発光不良部が生じてしまう。このようなダークスポットの発生を防止するため、例えば、支持基板として、水蒸気等を透過しにくい基板(ガスバリア基板)を利用することが提案されている。
ガスバリア基板として、例えば下記特許文献1に記載されるように、樹脂基材に少なくとも1層のガスバリア層を有するガスバリア性樹脂基材が挙げられる。下記特許文献1では、まず、ワインダ(巻き取り軸)とアンワインダ(巻き出し軸)との間を連続的に移送する樹脂基材の一方の面側に、少なくとも1層のガスバリア層をプラズマ処理にて形成する。続いて、当該一方の面側に離型性を有する樹脂材料をラミネートする。続いて、樹脂基材の他方の面側に少なくとも1層の構成層を形成する。そして、上記樹脂材料を樹脂基材から剥離することによって、ガスバリア性樹脂基材が製造される。
特許第5093107号公報
上記特許文献1のようにプラズマ処理にてガスバリア層を形成する場合、樹脂基材にかかる熱負荷に起因するガスバリア性樹脂基材のシワ、巻取り不良等の不具合が発生してしまうことがある。このような不具合の発生を防ぐため、すなわち、樹脂基材にかかる熱負荷を低減するため、プラズマを発生させるために電極に印加される電力を抑えるなどの対策が考えられる。しかしながら、このような対策を実施した場合、ガスバリア層の成膜レートが低下してしまうので、生産性が著しく落ちてしまう。
本発明の一側面の目的は、生産性を向上しつつ、シワ、巻取り不良等の不具合発生を抑制可能なガスバリア性フィルムの製造方法及びその巻回体を提供することである。
本発明の一側面に係るガスバリア性フィルムの製造方法は、第1保護フィルムによって覆われる第1主面、及び第2主面を有するフィルム状の樹脂基材を準備する第1工程と、第2主面上に第1無機バリア層をプラズマ化学気相成長法によって形成する第2工程と、第1無機バリア層を第2保護フィルムによって覆う第3工程と、樹脂基材から第1保護フィルムを剥離する第4工程と、第3工程後であって第4工程後、第1主面上に第2無機バリア層をプラズマ化学気相成長法によって形成する第5工程と、を備える。第1無機バリア層と第2無機バリア層とのそれぞれは、珪素原子、酸素原子及び炭素原子を含み、第1無機バリア層の水蒸気透過度は、第2無機バリア層の水蒸気透過度よりも低い。
このガスバリア性フィルムの製造方法によれば、第2工程では、樹脂基材の第1主面が第1保護フィルムによって覆われた状態にて、第1無機バリア層がプラズマ化学気相成長法によって形成される。同様に、第5工程では、樹脂基材の第2主面が第1無機バリア層及び第2保護フィルムによって覆われた状態にて、第2無機バリア層がプラズマ化学気相成長法によって形成される。このように、樹脂基材がプラズマに晒されるとき、樹脂基材と保護フィルムとが一体化していることによって、樹脂基材の温度上昇を抑制できる。これにより、樹脂基材の一部が保護フィルムに覆われていないときと比較して、樹脂基材がプラズマに晒されたとしても、ガスバリア性フィルムにシワ、巻取り不良等の不具合が発生しにくくなる。このため、プラズマを発生させるために電極に印加される電力を抑えるなどの対策をすることなく、第1無機バリア層及び第2無機バリア層を樹脂基材に形成できる。したがって、本発明の一側面によれば、生産性を向上しつつ、シワ、巻取り不良等の不具合発生を抑制可能なガスバリア性フィルムの製造方法を提供できる。
第1無機バリア層の水蒸気透過度は、第2無機バリア層の水蒸気透過度の0.1倍未満でもよい。この場合、第1無機バリア層によるガスバリア性フィルムのガスバリア性能を確保しつつ、第2無機バリア層の生産性をさらに向上できる。
第2工程における第1無機バリア層の第1ダイナミックレートは、第5工程における第2無機バリア層の第2ダイナミックレートよりも小さくてもよい。ここで、第2ダイナミックレートは、第1ダイナミックレートの1.5倍よりも大きくてもよい。これらの場合、第2無機バリア層と比較して第1無機バリア層の膜質を向上できるので、第1無機バリア層によるガスバリア性フィルムのガスバリア性能を確保できる。加えて、第2無機バリア層の生産性をさらに向上できる。
樹脂基材の厚さは、20μm以上80μm以下でもよい。この場合、例えば樹脂基材の厚さが100μm以上である場合と比較して、ガスバリア性フィルムをロールに巻くときの巻数を増加できる。
第1保護フィルムと第2保護フィルムとのそれぞれは、基材と、基材に設けられると共に樹脂基材に粘着する粘着層とを有し、基材の厚さは、20μm以上80μm以下でもよい。この場合、第1保護フィルム及び第2保護フィルムによる樹脂基材の耐熱性向上効果が良好に発揮される。加えて、粘着層が用いられることによって、第2工程において第1保護フィルムが樹脂基材から剥がれにくくなると共に、第5工程において第2保護フィルムが樹脂基材から剥がれにくくなる。
第1無機バリア層の厚さの90%以上の領域において、珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する炭素原子の量の比は、連続的に変化してもよい。この場合、第1無機バリア層は、酸素及び水蒸気等に対してより優れたバリア性を得ることができる。加えて、第1無機バリア層は、優れた耐屈曲性を示すことができる。
本発明の他の一側面に係るガスバリア性フィルムの巻回体は、第1主面及び第2主面を有すると共に、厚さが20μm以上80μm以下である樹脂基材と、第1主面上に設けられる無機バリア層と、第2主面上に設けられる別の無機バリア層と、を備えるガスバリア性フィルムの巻回体である。無機バリア層と別の無機バリア層とのそれぞれは、プラズマ化学気相成長法によって形成されると共に、珪素原子、酸素原子及び炭素原子を含み、無機バリア層の水蒸気透過度は、別の無機バリア層の水蒸気透過度よりも低く、ガスバリア性フィルムの巻出し方向に対して直交する方向に延在する巻回体の側面には、±50μmを超える凹凸が存在しない。
このガスバリア性フィルムの巻回体によれば、無機バリア層の水蒸気透過度は、別の無機バリア層の水蒸気透過度よりも低い。これにより、無機バリア層の水蒸気透過度が別の無機バリア層の水蒸気透過度と同一ある場合と比較して、別の無機バリア層の成膜レートを向上できる。加えて、巻回体を構成するガスバリア性フィルムは、厚さが20μm以上80μm以下である樹脂基材を有しており、且つ、無機バリア層と別の無機バリア層とのそれぞれは、プラズマ化学気相成長法によって形成されるにもかかわらず、巻回体の側面には、±50μmを超える凹凸が存在しない。このため、巻回体の製造時に樹脂基材がプラズマに晒されたとしても、シワ、巻取り不良等の不具合が発生しにくいガスバリア性フィルムが良好に製造される。したがって、本発明の他の一側面によれば、生産性を向上しつつ、シワ、巻取り不良等の不具合発生を抑制可能なガスバリア性フィルムの巻回体を提供できる。
本発明の一側面によれば、生産性を向上しつつ、シワ、巻取り不良等の不具合発生を抑制可能なガスバリア性フィルムの製造方法及びその巻回体を提供できる。
図1(a)は、実施形態に係るガスバリア性フィルムを示す模式断面図であり、図1(b)は、ガスバリア性フィルムの巻回体である。 図2は、実施形態に係るガスバリア性フィルムの製造方法の概要を示すフローチャートである。 図3(a)は、第1保護フィルムによって覆われる樹脂基材を示す模式断面図であり、図3(b)は、第1保護フィルム及び第2保護フィルムによって覆われる樹脂基材を示す模式断面図である。 図4は、第1保護フィルムによって覆われる樹脂基材の製造方法の一例を示す概略図である。 図5は、ロール間放電プラズマCVD法によってガスバリア層を形成するための製造装置の主要構成を示す模式図である。 図6(a)は、第1無機バリア層が形成された第1保護フィルム付き樹脂基材の一部を示す断面TEM画像であり、図6(b)は、第1無機バリア層が形成された第1保護フィルム付き樹脂基材のXPSデプスプロファイル測定結果を示す図である。
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明及び図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
[ガスバリア性フィルム及びその巻回体]
図1(a)は、本実施形態に係るガスバリア性フィルムを示す模式断面図である。図1(b)は、ガスバリア性フィルムの巻回体である。図1(a)に示すように、本実施形態に係るガスバリア性フィルム1は、例えば水蒸気、酸素ガス等に対する耐透過性を示す部材である。ガスバリア性フィルム1は、例えば、有機ELデバイス等に対する保護材、支持体等に用いられる。ガスバリア性フィルム1は、可撓性(フレキシブル性)を有してもよい。この場合、ガスバリア性フィルム1は、フレキシブル性が要求される用途に、より好適に利用できる。ガスバリア性フィルム1は、樹脂基材11と、第1無機バリア層12(別の無機バリア層)と、第2無機バリア層13とを有する積層体である。ガスバリア性フィルム1では、第2無機バリア層13と、樹脂基材11と、第1無機バリア層12とが、順に積層される。以下では、第2無機バリア層13と、樹脂基材11と、第1無機バリア層12とが、互いに積層される方向を積層方向(もしくは厚さ方向)と定義する。
図1(b)に示される巻回体2は、ガスバリア性フィルム1が芯5に巻回されることによって形成される部材である。芯5は、巻回体2の大きさ及び巻数は、ガスバリア性フィルム1の用途等に応じて適宜設定される。巻回体2は、ガスバリア性フィルム1の巻出し方向UDに対して直交する方向(巻回体2の軸方向AD)に沿って延在する側面2aと、軸方向ADにおける端部2b,2cとを有する。側面2aは、巻き出される前のガスバリア性フィルム1によって構成される。側面2aには、±50μmを超える凹凸が存在しない。この場合、巻回体2の側面2aには、目視可能なシワが存在していないとみなせる。また、製造者等が側面2aを触ったときにシワが存在しないと判定できる。ここで、側面2aのうち、端部2b,2cの近傍に位置する領域3a,3bは、スリットによるフィルムのたわみ、巻ズレ等の影響により変形しやすい。このため、側面2aでは、領域3a,3bの凹凸は通常考慮されず、軸方向ADにおいて領域3a,3bに挟まれる領域3cの凹凸のみが考慮される。本実施形態では、側面2aのうち、端部2b,2cから軸方向ADに沿って20mm内側の領域3c内において±50μmを超える凹凸が存在しない場合、側面2aには±50μmを超える凹凸が存在しないとみなせる。側面2aの上記凹凸は、40μm以下でもよいし、30μm以下でもよいし、10μm以下でもよい。側面2aの凹凸は、例えば、分光干渉法による巻回体2の全幅検査によって測定されてもよい。もしくは、側面2aの凹凸は、例えば、触針式表面粗さ測定機、共焦点レーザー顕微鏡、干渉顕微鏡、原子間力顕微鏡等の既存の表面形状プロファイラーを用いて、測定されてもよい。
(樹脂基材11)
樹脂基材11は、ガスバリア性フィルム1の本体部であり、第1主面11a及び第2主面11bを有する。第2主面11b上には第1無機バリア層12が設けられ、第1主面11a上には第2無機バリア層13が設けられる。樹脂基材11としては、第1無機バリア層12及び第2無機バリア層13を保持可能な樹脂(有機高分子材料)で形成されたフィルム状の基材であれば、特に限定されるものではない。樹脂基材11としては、樹脂フィルムを用いることができ、無色透明であるものを用いることが好ましい。樹脂基材11を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリビニルアルコール樹脂;エチレン-酢酸ビニル共重合体のケン化物;ポリアクリロニトリル樹脂;アセタール樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエーテルサルファイド(PES)が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を組合せて用いることもできる。これらの中でも、透明性、耐熱性、線膨張性等の必要な特性に合せて、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂の中から選択して用いることが好ましく、PET、PEN、環状ポリオレフィンを用いることがより好ましい。また、樹脂基材11としては、上述した樹脂の層を2層以上積層した積層体を用いることもできる。
樹脂基材11は、未延伸の樹脂基材であってもよく、未延伸の樹脂基材を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、基材の流れ方向(MD方向)、及び/又は、基材の流れ方向と直角方向(TD方向)に延伸した延伸樹脂基材であってもよい。
樹脂基材11の厚さは、ガスバリア性フィルム1を製造する際の安定性等を考慮して適宜設定される。真空中における樹脂基材11の搬送性の観点から、樹脂基材11の厚さは、20μm以上でもよいし、30μm以上でもよいし、40μm以上でもよい。巻回体2の大きさを抑えつつ巻数を増やす観点から、樹脂基材11の厚さは、80μm以下でもよいし、60μm以下でもよいし、55μm以下でもよいし、50μm以下でもよい。後述するロール間放電プラズマCVD法により第1無機バリア層12及び第2無機バリア層13を形成する場合、樹脂基材11を通して放電を行うことから、樹脂基材11の厚さは35μm以上でもよい。ガスバリア性フィルム1に光を透過させる場合、樹脂基材11は薄いほど好ましく、例えば55μm以下である。樹脂基材11が薄いほど、ガスバリア性フィルム1による光吸収量が増加しないためである。なお、樹脂基材11と比較して、第1無機バリア層12及び第2無機バリア層13は顕著に薄い。このため、樹脂基材11の厚さは、ガスバリア性フィルム1と実質的に同一とみなしてもよい。
第1無機バリア層12及び第2無機バリア層13との密着性の観点から、樹脂基材11の第1主面11a及び第2主面11bのそれぞれには、表面活性処理が施されてもよい。このような表面活性処理が各バリア層の形成前に実施されることによって、第1主面11a及び第2主面11bのそれぞれがクリーニングされる。表面活性処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理が挙げられる。
(第1無機バリア層12及び第2無機バリア層13)
ガスバリア性フィルム1の反りを抑制する観点から、樹脂基材11の第2主面11b上には第1無機バリア層12が形成され、樹脂基材11の第1主面11a上には第2無機バリア層13が形成される。第1無機バリア層12及び第2無機バリア層13のそれぞれは、水蒸気等のガスの透過を防止するガスバリア性を有する層である。第1無機バリア層12は、露出面である表面12aと、樹脂基材11に接する面12bとを有する。第2無機バリア層13は、露出面である表面13aと、樹脂基材11に接する面13bとを有する。第1無機バリア層12及び第2無機バリア層13は、同一の成膜条件で形成されてもよいし、異なる成膜条件で形成されてもよい。各バリア層の成膜条件は、生産性、生産コスト等の観点で適宜選定選択される。本実施形態では、生産性、生産コスト等の観点から、後述するように、第2無機バリア層13のガスバリア性は、第1無機バリア層12よりも劣るように形成される。これにより、第2無機バリア層13の製造時間を、第1無機バリア層12の製造時間よりも短縮できる。
本実施形態における「ガスバリア性」とは、下記条件(A)~(C)のうちの少なくとも1つの条件を満たすものであればよい。
<条件(A)>
JIS K 7126(2006年発行)に準拠した方法で測定された「樹脂基材のガス透過度(単位:mol/m・s・P)」と「ガスバリア層を成膜した樹脂基材のガス透過度(単位:mol/m・s・P)」を比較して、「樹脂基材のガス透過度」に対して「ガスバリア層を成膜した樹脂基材のガス透過度」の方が2桁以上小さい値(100分の1以下の値)を示すこと。
<条件(B)>
JIS K 7129(2008年発行)に記載される方法に準拠した方法で測定された「樹脂基材の水蒸気透過度(単位:g/m・s・P)」と「ガスバリア層を成膜した樹脂基材の水蒸気透過度(単位:g/m・s・P)」を比較して、「樹脂基材の水蒸気透過度」に対して「ガスバリア層を成膜した樹脂基材の水蒸気透過度」の方が2桁以上小さい値(100分の1以下の値)を示すこと。
<条件(C)>
特開2005-283561号公報に記載される方法に準拠した方法で測定された「樹脂基材の水蒸気透過度(単位:g/m・s・P)」と「ガスバリア層を成膜した樹脂基材の水蒸気透過度(単位:g/m・s・P)」を比較して、「樹脂基材の水蒸気透過度」に対して「ガスバリア層を成膜した樹脂基材の水蒸気透過度」の方が2桁以上小さい値(100分の1以下の値)を示すこと。
一般的に、水蒸気バリア性(ガスバリア性)を有するガスバリア層を成膜した基材の水蒸気透過度は10-2g/m/day以下の値を示す。このため、上記条件(B)及び(C)を検討する場合には、「ガスバリア層を成膜した樹脂基材の水蒸気透過度」が10-2g/m/day以下の値となっていることが好ましく、10-4g/m/day以下の値となっていることがより好ましく、10-5g/m/day以下の値となっていることがさらに好ましく、10-6g/m/day以下の値となっていることがとりわけ好ましい。また、このようなガスバリア性を有するガスバリア層としては、上記条件(C)を満たすものがより好ましい。
本実施形態では、第1無機バリア層12の水蒸気透過度は、第2無機バリア層13の水蒸気透過度よりも低い。すなわち、第1無機バリア層12の水蒸気に対するバリア性は、第2無機バリア層13よりも高い。このため、第1無機バリア層12のみが形成された樹脂基材11のガスバリア性は、第2無機バリア層13のみが形成された樹脂基材11のガスバリア性よりも高い。第1無機バリア層12の水蒸気透過度は、第2無機バリア層13の水蒸気透過度の0.5倍未満でもよいし、0.3倍未満でもよいし、0.1倍未満でもよいし、0.01倍未満でもよい。なお、各無機バリア層の水蒸気透過度は、例えば、カルシウム腐食法(特開2005-283561号公報に記載される方法)によって算出される。
第1無機バリア層12及び第2無機バリア層13のそれぞれの種類は特に制限されず、公知のガスバリア性を有する薄膜層を適宜利用できる。第1無機バリア層12及び第2無機バリア層13のそれぞれは、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、金属酸炭化物のうちの少なくとも1種を含む薄膜層でもよい。第1無機バリア層12及び第2無機バリア層13のそれぞれは、上述した薄膜層を2層以上積層した多層膜でもよい。
ガスバリア性(特に水蒸気透過防止性)等の観点から、本実施形態では、第1無機バリア層12及び第2無機バリア層13のそれぞれは、珪素原子(Si)、酸素原子(O)、及び炭素原子(C)を少なくとも含有する。この場合、第1無機バリア層12及び第2無機バリア層13のそれぞれの主成分は、一般式SiOαβで表される化合物でもよい。ここで、「主成分である」とは、材質の全成分の質量に対してその成分の含有量が50質量%以上であることをいう。当該含有量は、70質量%以上でもよいし、90質量%以上であることをいう。上記一般式中、α及びβは、それぞれ独立に、2未満の正の数を表す。第1無機バリア層12及び第2無機バリア層13のそれぞれは一般式SiOαβで表される1種類の化合物を含有してもよいし、一般式SiOαβで表される2種以上の化合物を含有してもよい。上記一般式におけるα及び/またはβは、厚さ方向において一定の値でもよいし、連続的に変化していてもよい。α及びβが厚さ方向において連続的に変化しているとは、例えば、α及びβの数値が、それぞれ厚さ方向で周期的に増減を繰り返す性質を有することを意味する。高度なガスバリア性、耐屈曲性の実現という観点から、α及びβの数値は、連続的に変化してもよい。例えば、第1無機バリア層12の厚さの90%以上、95%以上、もしくは98%以上の領域において、α及びβの数値は、連続的に変化してもよい。
第1無機バリア層12及び第2無機バリア層13のそれぞれは、珪素原子、酸素原子及び炭素原子以外の元素を含有してもよい。第1無機バリア層12及び第2無機バリア層13のそれぞれは、水素原子、窒素原子、ホウ素原子、アルミニウム原子、リン原子、イオウ原子、フッ素原子及び塩素原子のうちの一以上の原子を含有してもよい。第1無機バリア層12及び第2無機バリア層13のそれぞれが少なくとも珪素原子、酸素原子、及び炭素原子を含有する場合、緻密性を高めやすい観点、微細な空隙、クラック等の欠陥を低減しやすい観点等から、第1無機バリア層12及び第2無機バリア層13のそれぞれは、例えば化学気相成長法(CVD法)で形成される。この場合、グロー放電プラズマなどを用いたプラズマ化学気相成長法(PECVD法)で形成されることが好ましい。真空チャンバー内の圧力(真空度)は、以下にて説明する原料ガスの種類等に応じて適宜調整することができる。当該圧力は、例えば、0.5Pa以上50Pa以下である。
化学気相成長法において使用される原料ガスの例は、珪素原子及び炭素原子を含有する有機ケイ素化合物である。このような有機ケイ素化合物の例は、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサンである。これらの有機ケイ素化合物の中でも、化合物の取り扱い性及び得られる第1無機バリア層12及び第2無機バリア層13のガスバリア性等の特性の観点から、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンが好ましい。原料ガスとして、これらの有機ケイ素化合物の1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
上記原料ガスに対して、上記原料ガスと反応して酸化物、窒化物等の無機化合物を形成可能とする反応ガスが適宜選択及び混合されてもよい。酸化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、酸素、オゾンを用いることができる。また、窒化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、窒素、アンモニアを用いることができる。これらの反応ガスは、1種を単独でまたは2種以上を組合せて使用することができ、例えば酸窒化物を形成する場合には、酸化物を形成するための反応ガスと窒化物を形成するための反応ガスとを組合せて使用することができる。原料ガスと反応ガスの流量比は、成膜する無機材料の原子比に応じて適宜調節できる。
上記原料ガスを真空チャンバー内に供給するために、必要に応じて、キャリアガスを用いてもよい。さらに、プラズマ放電を発生させるために、必要に応じて、放電用ガスを用いてもよい。このようなキャリアガス及び放電用ガスとしては、適宜公知のものを使用することができ、例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン等の希ガス、もしくは、水素を用いることができる。
成膜ガスが原料ガスと反応ガスを含有する場合には、原料ガスと反応ガスの比率としては、原料ガスと反応ガスとを完全に反応させるために理論上必要となる反応ガスの量の比率よりも、反応ガスの比率を過剰にし過ぎないことが好ましい。反応ガスの比率を過剰にし過ぎてしまうと、膜質が低下してしまう傾向がある。上記成膜ガスが上記有機ケイ素化合物と酸素とを含有するものである場合には、上記成膜ガス中の上記有機ケイ素化合物の全量を完全酸化するのに必要な理論酸素量以下であることが好ましい。
第1無機バリア層12及び第2無機バリア層13のそれぞれの厚さは、ガスバリア性フィルム1の用途に応じて適宜調整されるが、例えば5nm以上3000nm以下でもよいし、10nm以上2000nm以下でもよいし、50nm以上1000nm以下でもよい。バリア層の厚さは、例えば、膜厚計によって測定できる。第1無機バリア層12及び第2無機バリア層13の厚さが上記の下限値以上である場合、良好なガスバリア性が発揮される。第1無機バリア層12及び第2無機バリア層13のそれぞれの厚さが上記の上限値以下である場合、良好な屈曲性が発揮される。グロー放電プラズマを用いたPECVD法によって第1無機バリア層12及び第2無機バリア層13を形成する場合には、樹脂基材11を通して放電することから、第1無機バリア層12及び第2無機バリア層13のそれぞれの厚さは、10nm以上2000nm以下であることが好ましく、50nm以上1000nm以下であることがより好ましい。
第1無機バリア層12中の珪素原子(Si)に対する炭素原子(C)の平均原子数比をC/Siで表した場合、高い緻密性、並びに、空隙及びクラック等の欠陥低減の観点から、C/Siの範囲は、0.02<C/Si<1.00を満たしてもよい。より高い緻密性及び良好な欠陥低減の観点から、C/Siの範囲は、0.03<C/Si<0.90を満たしてもよいし、0.04<C/Si<0.80でもよいし、0.05<C/Si<0.75でもよい。第2無機バリア層13のC/Siは、第1無機バリア層12と同様である。
第1無機バリア層12中の珪素原子(Si)に対する酸素原子(O)の平均原子数比をO/Siで表した場合、高い緻密性、並びに、空隙及びクラック等の欠陥低減の観点から、O/Siの範囲は、1.10<O/Si<1.98でもよく、1.20<O/Si<1.97でもよく、1.25<O/Si<1.96でもよく、1.30<O/Si<1.95でもよい。第2無機バリア層13のO/Siは、第1無機バリア層12と同様である。
上記平均原子数比(C/Si及びO/Si)は、例えば、X線光電子分光法(XPS:Xray Photoelectron Spectroscopy)を利用したXPSデプスプロファイル測定を実施することによって得られる。XPSデプスプロファイル測定は、試料をXPSにて測定しつつ、当該試料をアルゴン等の希ガスにてイオンスパッタリングすることによって、試料内部を露出させつつ順次表面組成分析を行うことである。このようなXPSデプスプロファイル測定によって、縦軸を各元素の原子比(単位:at%)とし、横軸をエッチング時間とする分布曲線を作成できる。この分布曲線から、横軸に沿った各元素の平均原子濃度が求められる。そして、当該平均原子濃度を用いて、C/Si及びO/Siが算出される。
本実施形態では、厚さ方向における第1無機バリア層12の表面12aからの距離と、各距離における珪素原子の原子比との関係を示す曲線を、第1無機バリア層12の珪素分布曲線とする。同様に、厚さ方向における表面12aからの距離と、各距離における酸素原子の原子比との関係を示す曲線を、第1無機バリア層12の酸素分布曲線とする。また、厚さ方向における表面12aからの距離と、各距離における炭素原子の原子比との関係を示す曲線を、第1無機バリア層12の炭素分布曲線という。珪素原子の原子比、酸素原子の原子比及び炭素原子の原子比は、第1無機バリア層12に含まれる珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計数に対するそれぞれの原子数の比率を意味する。なお、第2無機バリア層13の珪素分布曲線、酸素分布曲線、及び炭素分布曲線は、第1無機バリア層12と同様に定義される。
なお、横軸をエッチング時間とする元素の分布曲線においては、エッチング時間は上記薄膜層の膜厚方向における上記薄膜層の表面からの距離に概ね相関する。このため、「薄膜層の膜厚方向における薄膜層の表面からの距離」として、XPSデプスプロファイル測定の際に採用したエッチング速度とエッチング時間との関係から算出される試料の表面からの距離を採用できる。すなわち、横軸をエッチング時間とする元素の分布曲線と、設定されたエッチング速度とから、試料の厚さを算出できる。エッチング速度は、例えば0.01nm/sec以上0.10nm/sec以下(SiO熱酸化膜換算値)である。
本実施形態では、屈曲によるガスバリア性の低下を抑制する観点から、第1無機バリア層12に含まれる珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計数に対する炭素原子の原子数比は、厚さ方向における90%以上の領域において連続的に変化する。この場合、第1無機バリア層12は、良好な耐屈折性を示し得る。ここで、上記炭素原子の原子数比が、第1無機バリア層12の膜厚方向において連続的に変化するとは、例えば上記の炭素分布曲線において、炭素の原子比が不連続に変化する部分を含まないことを表す。第1無機バリア層12に含まれる珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計数に対する炭素原子の原子数比は、厚さ方向における95%以上の領域において連続的に変化してもよいし、厚さ方向における98%以上の領域において連続的に変化してもよい。なお、第2無機バリア層13に含まれる珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計数に対する炭素原子の原子数比も、厚さ方向における90%以上の領域において連続的に変化してもよい。
第1無機バリア層12の炭素分布曲線は、少なくとも1つの極値を有してもよい。ガスバリア性フィルム1の屈曲性及びガスバリア性の観点から、8つ以上の極値を有してもよい。ここでいう極値は、厚さ方向における第1無機バリア層12の表面12aからの距離に対する各元素の原子比の極大値または極小値である。極値は、厚さ方向における表面12aからの距離を変化させたときに、元素の原子比が増加から減少に転じる点、または元素の原子比が減少から増加に転じる点での原子比の値である。極値は、例えば、厚さ方向において複数の測定位置において、測定された原子比に基づいて求めることができる。原子比の測定位置は、厚さ方向の間隔が、例えば10nm以下に設定される。厚さ方向において極値を示す位置は、各測定位置での測定結果を含んだ離散的なデータ群について、例えば互いに異なる3以上の測定位置での測定結果を比較し、測定結果が増加から減少に転じる位置または減少から増加に転じる位置を求めることによって得ることができる。極値を示す位置は、例えば、前記の離散的なデータ群から求めた近似曲線を微分することによって、得ることもできる。極値を示す位置から、原子比が単調増加または単調減少する区間が例えば10nm以上である場合に、極値を示す位置から膜厚方向に10nmだけ移動した位置での原子比と、極値との差の絶対値は例えば0.03以上である。
ガスバリア性フィルム1の屈曲性及びガスバリア性の観点から、第2無機バリア層13の炭素分布曲線は、8つ以上の極値を有してもよい。
ガスバリア性フィルム1の屈曲性及びガスバリア性の観点から、第1無機バリア層12の珪素分布曲線、酸素分布曲線及び炭素分布曲線が、下記の条件(i)及び(ii)を満たしてもよい。同様に、第2無機バリア層13の珪素分布曲線、酸素分布曲線及び炭素分布曲線が、下記の条件(i)及び(ii)を満たしてもよい。
(i)珪素の原子数比、酸素の原子数比及び炭素の原子数比が、バリア層の厚さ方向における90%以上の領域において、下記式(1)で表される条件を満たす
(酸素の原子数比)>(珪素の原子数比)>(炭素の原子数比) (1)
(ii)炭素分布曲線が好ましくは少なくとも1つ、より好ましくは8つ以上の極値を有する。
第1無機バリア層12の炭素分布曲線は、実質的に連続であることが好ましい。炭素分布曲線が実質的に連続とは、炭素分布曲線における炭素の原子比が不連続に変化する部分を含まないことである。具体的には、膜厚方向における前記薄膜層表面からの距離をx[nm]、炭素の原子比をCとしたときに、式(2):
|dC/dx|≦0.01 (2)
を満たすことが好ましい。第2無機バリア層13の炭素分布曲線は、第1無機バリア層12と同様に、実質的に連続であってもよい。
炭素分布曲線が少なくとも1つ、好ましくは8つ以上の極値を有する条件を満たすように形成された第1無機バリア層12においては、屈曲前のガス透過率に対する屈曲後のガス透過率の増加量が、上記条件を満たさない場合と比較して少なくなる。すなわち、上記条件を満たすことにより、屈曲による第1無機バリア層12のガスバリア性低下を抑制する効果が得られる。炭素分布曲線の極値の数が2つ以上になるように第1無機バリア層12を形成すると、炭素分布曲線の極値の数が1つである場合と比較して、上記増加量が少なくなる。また、炭素分布曲線の極値の数が3つ以上になるように第1無機バリア層12を形成すると、炭素分布曲線の極値の数が2つである場合と比較して、上記増加量が少なくなる。炭素分布曲線が2つ以上の極値を有する場合、第1の極値を示す位置の厚さ方向に表面12aからの距離と、第1の極値と隣接する第2の極値を示す位置の厚さ方向における表面12aからの距離との差の絶対値は、例えば、1nm以上200nm以下の範囲内である。上記絶対値は、1nm以上100nm以下の範囲内であることが好ましい。なお、第2無機バリア層13も、第1無機バリア層12と同様である。
第1無機バリア層12の炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値は、例えば0.01より大きい。当該絶対値が0.01よりも大きい第1無機バリア層12においては、屈曲前のガス透過率に対する屈曲後のガス透過率の増加量が、上記絶対値が0.01以下である場合と比較して少なくなる。すなわち、上記絶対値が0.01よりも大きい場合、屈曲によるガスバリア性の低下を抑制する効果が得られる。上記絶対値が0.02以上であると上記効果が高くなり、0.03以上であると上記効果がさらに高くなる。第2無機バリア層13においても、同様の効果が示される。
珪素分布曲線における珪素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値が低くなるほど、第1無機バリア層12及び第2無機バリア層13のそれぞれのガスバリア性が向上する傾向がある。このような観点から、上記絶対値は、0.05未満(5at%未満)であることが好ましく、0.04未満(4at%未満)であることがより好ましく、0.03未満(3at%未満)であることが特に好ましい。
酸素炭素分布曲線において、各距離における酸素原子の原子比及び炭素原子の原子比の合計を「合計原子比」としたときに、合計原子比の最大値及び最小値の差の絶対値が低くなるほど、第1無機バリア層12及び第2無機バリア層13のそれぞれのガスバリア性が向上する傾向がある。このような観点で、前記の合計原子比は、0.05未満であることが好ましく、0.04未満であることがより好ましく、0.03未満であることが特に好ましい。
第1無機バリア層12及び第2無機バリア層13のそれぞれの平均密度は、例えば、1.8g/cm以上2.22g/cm未満である。バリア層の「平均密度」は、ラザフォード後方散乱法(Rutherford Backscattering Spectrometry:RBS)で求めた珪素の原子数、炭素の原子数、酸素の原子数と、水素前方散乱法(Hydrogen Forward scattering Spectrometry:HFS)で求めた水素の原子数とから測定範囲の第1無機バリア層12の重さを計算し、測定範囲の第1無機バリア層12(もしくは第2無機バリア層13)の体積(イオンビームの照射面積と膜厚との積)で除することで求められる。第1無機バリア層12及び第2無機バリア層13のそれぞれの平均密度が1.8g/cm以上であると、緻密性が高く、微細な空隙及びクラック等の欠陥が含まれにくいバリア層を形成できる。
第1無機バリア層12の表面12aに対して赤外分光測定(ATR法)を行った場合、950~1050cm-1に存在するピーク強度(I)と、1240~1290cm-1に存在するピーク強度(I)との強度比(I/I)が、0.01≦I/I<0.05を満たしてもよい。ピーク強度比I/Iは、第1無機バリア層12中のSi-O-Si結合に対するSi-CH結合の相対的な割合を表すと考えられる。0.01≦I/I<0.05で表される関係を満たす第1無機バリア層12は、緻密性が高く、微細な空隙及びクラック等の欠陥を低減しやすい。このため、上記関係を満たす第1無機バリア層12は、高いガスバリア性及び耐衝撃性を有すると考えられる。第1無機バリア層12の緻密性を高く保持する観点から、ピーク強度比I/Iは、0.02≦I/I<0.04を満たしてもよい。第2無機バリア層13の表面13aに対して赤外分光測定(ATR法)を行った場合に得られる強度比(I/I)もまた、0.01≦I/I<0.05を満たしてもよい。
第1無機バリア層12の表面12aに対して赤外分光測定(ATR法)を行った場合、950~1050cm-1に存在するピーク強度(I)と、770~830cm-1に存在するピーク強度(I)との強度比(I/I)が、0.25≦I/I≦0.50を満たしてもよい。ピーク強度比I/Iは、第1無機バリア層12中のSi-O-Si結合に対するSi-C結合、Si-O結合等の相対的な割合を表すと考えられる。0.25≦I/I≦0.50で表される関係を満たす第1無機バリア層12は、高い緻密性、耐屈曲性及び耐衝撃性を有すると考えられる。第1無機バリア層12の緻密性と耐屈曲性のバランスを保つ観点から、ピーク強度比I/Iは、0.25≦I/I≦0.50を満たしてもよく、0.30≦I/I≦0.45を満たしてもよい。第2無機バリア層13の表面13aに対して赤外分光測定(ATR法)を行った場合に得られる強度比(I/I)もまた、0.25≦I/I≦0.50を満たしてもよい。
第1無機バリア層12の表面12aに対して赤外分光測定(ATR法)を行った場合、770~830cm-1に存在するピーク強度(I)と、870~910cm-1に存在するピーク強度(I)との強度比(I/I)が、0.70≦I/I<1.00を満たしてもよい。ピーク強度比I/Iは、第1無機バリア層12中のSi-C結合に関連するピーク同士の比率を表すと考えられる。0.70≦I/I<1.00で表される関係を満たす第1無機バリア層12は、高い緻密性、耐屈曲性、及び耐衝撃性を有すると考えられる。第1無機バリア層12の緻密性と耐屈曲性のバランスを保つ観点から、ピーク強度比I/Iは、0.70≦I/I<1.00を満たしてもよく、0.80≦I/I<0.95を満たしてもよい。第2無機バリア層13の表面13aに対して赤外分光測定(ATR法)を行った場合に得られる強度比(I/I)もまた、0.70≦I/I<1.00を満たしてもよい。
第1無機バリア層12の表面12aの赤外分光測定は、例えば、プリズムにゲルマニウム結晶を用いたATRアタッチメント(例えば、PIKE MIRacle)を備えたフーリエ変換型赤外分光光度計(例えば、日本分光株式会社製、FT/IR-460Plus)によって測定できる。
次に、図2~図5を参照しながら、本実施形態に係るガスバリア性フィルム1の製造方法の一例を説明する。
図2は、本実施形態に係るガスバリア性フィルムの製造方法の概要を示すフローチャートである。図2に示されるように、フィルム状の樹脂基材11を準備する(第1工程S1)。第1工程S1では、図3(a)に示されるように、第1主面11aが第1保護フィルム21によって覆われる樹脂基材11を準備する。第1保護フィルム21は、基材22及び粘着層23を有する部材である。基材22は、樹脂基材11の熱等に対する耐久性を向上するために設けられるフィルム状の部材であり、例えば、樹脂基材11と同様に樹脂によって形成される。基材22を構成する樹脂としては、例えば、樹脂基材11を構成するための樹脂と同様の樹脂が用いられる。基材22の厚さは、例えば20μm以上80μm以下である。基材22の厚さが20μm以上である場合、樹脂基材11に十分な耐熱性等を付与できる。粘着層23は、樹脂基材11の第1主面11aに粘着する層であり、基材22の一表面上に設けられる。粘着層23は、例えばアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコン系粘着剤、紫外線硬化型粘着剤等を含む。耐熱性、粘着性等の観点から、粘着層23にはアクリル系粘着剤が含まれてもよい。粘着剤成分、ブリードアウト成分の樹脂基材11への転写による不良発生防止の観点から、粘着層23には、硬化剤、レベリング材等の添加剤が適宜含まれ得る。加えて、製造時に発生する環境異物等の欠陥の樹脂基材11への転写を防止する観点から、第1保護フィルム21によって覆われる樹脂基材11は、クリーンルーム等の環境異物の少ない環境にて製造されてもよい。
ここで、図4を参照しながら、第1保護フィルム21によって覆われる樹脂基材11の製造方法の一例を説明する。図4は、第1保護フィルムによって覆われる樹脂基材の製造方法の一例を示す概略図である。図4に示されるように、まず、樹脂基材11が巻かれた送り出しロール31と、第1保護フィルム21が巻かれた送り出しロール32とを準備する。次に、樹脂基材11を図示しない巻取りロールに巻き取らせる際に、第1保護フィルム21を樹脂基材11の第1主面11aに貼り付ける。これにより、第1保護フィルム21によって覆われる樹脂基材11が巻かれた巻取りロールを作成する。送り出しロール31,32及び上記巻取りロールのそれぞれは、適宜公知のロールが用いられる。
図2に戻って、第1工程S1後、樹脂基材11の第2主面11b上に第1無機バリア層12をプラズマ化学気相成長法によって形成する(第2工程S2)。第2工程S2では、第1保護フィルム21から露出する樹脂基材11の第2主面11b上に、PECVD法によって第1無機バリア層12を堆積させる。PECVD法においてプラズマを発生させる際には、複数の成膜ロールの間の空間にプラズマ放電を発生させてもよいし、一対の成膜ロールを用いてその一対の成膜ロールのそれぞれに上記樹脂基材11を配置して、一対の成膜ロール間に放電してプラズマを発生させてもよい。後者の場合、成膜時に一方の成膜ロール上に存在する樹脂基材11の表面部分を成膜しつつ、他方の成膜ロール上に存在する樹脂基材11の表面部分も同時に成膜できる。このため、効率よく第1無機バリア層12を製造できる。加えて、一方の成膜ロール上と、他方の成膜ロール上とのそれぞれにて、同じ構造の膜を成膜できる。よって、上記炭素分布曲線における極値を少なくとも倍増させることが可能となる。
第1無機バリア層12の形成方法としては、生産性の観点から、PECVD法を利用しつつ、ロールツーロール方式を採用してもよい。また、このようなPECVD法によりガスバリア性フィルム1を製造する際に用いることが可能な装置としては、特に制限されない。例えば、少なくとも一対の成膜ロールと、プラズマ電源とを備えており、且つ、上記一対の成膜ロール間において放電することが可能な構成となっている装置であればよい。本実施形態では、以下の図5に示す製造装置100を用い、PECVD法を利用しながらロールツーロール方式にて、第1無機バリア層12が形成される。
図5は、ロール間放電プラズマCVD法によってガスバリア層を形成するための製造装置の主要構成を示す模式図である。図5に示されるように、製造装置100は、送り出しロール101と、搬送ロール102a,102b,102c,102dと、成膜ロール103,104と、ガス供給管105と、プラズマ発生用電源106と、成膜ロール103,104の内部に設置された磁場発生装置107a,107bと、巻取りロール108とを備えている。また、このような製造装置100においては、少なくとも成膜ロール103,104と、ガス供給管105と、プラズマ発生用電源106と、磁場発生装置107a,107bとが、図示しない真空チャンバー内に配置されている。更に、このような製造装置100において上記真空チャンバーは図示を省略した真空ポンプに接続されており、かかる真空ポンプにより真空チャンバー内の圧力を適宜調整することが可能となっている。
製造装置100に用いられる送り出しロール101、搬送ロール102a,102b,102c,102dとして、適宜公知のロールが用いられる。また、巻取りロール108としても、第1無機バリア層12を形成した樹脂基材11を巻き取ることが可能なものであればよく、特に制限されず、適宜公知のロールを用いることができる。送り出しロール101として、第1保護フィルム21によって覆われる樹脂基材11が巻かれたロールが用いられる。
製造装置100においては、一対の成膜ロール(成膜ロール103,104)を一対の対向電極として機能させることが可能となるように、各成膜ロールがそれぞれプラズマ発生用電源106に接続されている。より具体的には、成膜ロール103の内部に設けられる磁場発生装置107aと、成膜ロール104の内部に設けられる磁場発生装置107bとが、プラズマ発生用電源106に電気的に接続されている。このため、製造装置100においては、プラズマ発生用電源106により電力を供給することにより、成膜ロール103と成膜ロール104との間の空間にプラズマを発生できる。このように、成膜ロール103と成膜ロール104を電極としても利用する場合には、電極としても利用可能なようにその材質、設計等を適宜変更すればよい。また、製造装置100においては、成膜ロール103,104は、その中心軸が同一平面上において略平行となるようにして配置してもよい。この場合、成膜レートを倍にでき、なおかつ、同じ構造の膜を成膜できるので上記炭素分布曲線における極値を少なくとも倍増させることが可能となる。具体的には、製造装置100によれば、成膜ロール103上において樹脂基材11の第2主面11b上に膜成分を堆積させつつ、更に成膜ロール104上においても第2主面11b上に膜成分を堆積させることもできる。これにより、樹脂基材11の第2主面11b上に第1無機バリア層12を効率よく形成することができる。
成膜ロール103,104の内部には、成膜ロールが回転しても回転しないようにして固定された磁場発生装置107a,107bがそれぞれ設けられている。成膜ロール103,104としては、適宜公知のロールを用いることができる。このような成膜ロール103,104としては、第1無機バリア層12をより効率よく形成する観点から、同一直径のロールが用いられてもよい。成膜ロール103,104の直径としては、放電条件、チャンバーのスペース等の観点から、例えば、5cm以上100cm以下である。
ガス供給管105としては、原料ガス等を所定の速度で供給又は排出することが可能なものを適宜用いることができる。プラズマ発生用電源106としては、適宜公知のプラズマ発生装置の電源を用いることができる。このようなプラズマ発生用電源106は、成膜ロール103と成膜ロール104に電力を供給して、これらを放電のための対向電極として利用することを可能とする。このようなプラズマ発生用電源106としては、より効率よくPECVD法を実施することが可能となることから、上記一対の成膜ロールの極性を交互に反転させることが可能なもの(交流電源など)を利用してもよい。
プラズマ発生用電源106としては、より効率よくPECVD法を実施することが可能となることから、印加電力を100W以上10kW以下とすることができ、且つ、交流の周波数を50Hz以上500kHz以下とすることが可能なものでもよい。印加電力が高いほど、プラズマが発生しやすくなるので、無機バリア層の成膜速度が向上する傾向がある。ガスバリア性フィルム1の生産性の観点から、上記印加電力は、0.5kW以上でもよく、0.8kW以上でもよく、1.0kW以上でもよく、1.2kW以上でもよく、1.5kW以上でもよい。一方、印加電力が高いほど、樹脂基材11に与えられる輻射熱が大きくなる傾向がある。印加電力が上記範囲内にある場合であって、樹脂基材11に第1保護フィルム21が貼り付けられる場合、成膜時において樹脂基材11の第2主面11bから伝わる熱が第1保護フィルム21に分散することによって、樹脂基材11が熱負けしにくくなる。これにより、樹脂基材11の熱負けに起因する皺が発生しにくくなる。さらに、熱に起因する樹脂基材11の溶解によって成膜ロール103,104の一部が露出することによって、成膜ロール103,104の間に大電流の放電(アーク放電)が発生することを防止できる。また、パーティクルが発生し難くなる傾向がある。
磁場発生装置107a,107bとしては適宜公知の磁場発生装置を用いることができる。磁場発生装置107a,107bが設けられることによって、成膜ロール103,104上に位置する樹脂基材11にプラズマが高密度に拘束される。
樹脂基材11の搬送速度(ライン速度)は、原料ガスの種類、真空チャンバー内の圧力等に応じて適宜調整することができる。上記搬送速度は、例えば、0.25m/min以上100m/min以下でもよいし、0.5m/min以上20m/min以下でもよい。ライン速度が上記の範囲にあると、熱に起因するフィルムの皺が発生しにくい傾向があり、且つ、形成される第1無機バリア層12の厚みが薄くならない傾向にある。なお、製造装置100では、樹脂基材11は、送り出しロール101から巻取りロール108へ搬送されるだけでなく、巻取りロール108から送り出しロール101へ搬送されてもよい。換言すると、製造装置100では、樹脂基材11は、送り出しロール101と巻取りロール108との間を往復移動してもよい。樹脂基材11が当該往復移動されることによって、樹脂基材11上に形成される無機バリア層の厚さを良好に調整できる。例えば、樹脂基材11の往復回数は、1回以上20回以下である。なお、樹脂基材11の1往復とは、送り出しロール101から巻取りロール108へ樹脂基材11が搬送された後、巻取りロール108から送り出しロール101へ樹脂基材11が搬送されたこととする。また以下では、送り出しロール101から巻取りロール108へ樹脂基材11が搬送された回数、並びに、巻取りロール108から送り出しロール101へ樹脂基材11が搬送された回数のそれぞれを、パス回数とする。
以上に説明した製造装置100を用いて、例えば、原料ガスの種類、真空チャンバー内の圧力、印加電力、周波数、成膜ロールの直径、並びに、フィルムの搬送速度が適宜調整される。そして、成膜ガス(原料ガス等)を真空チャンバー内に供給しつつ、成膜ロール103,104間に放電を発生させることにより、上記成膜ガス(原料ガス等)がプラズマによって分解される。ここで第2工程S2における製造装置100においては、樹脂基材11の第2主面11bがそれぞれ対向するように、樹脂基材11が成膜ロール103,104上に配置されている。このため、成膜ロール103上の第2主面11b上並びに成膜ロール104上の第2主面11b上に、第1無機バリア層12が形成される。このとき、樹脂基材11が搬送ロール102a~102d、成膜ロール103等によって搬送されながら、第1無機バリア層12が形成される。すなわち、ロールツーロール方式の連続的な成膜プロセスにより第1無機バリア層12が形成される。
図2に戻って、第2工程S2後、図3(b)に示されるように、第1無機バリア層12を第2保護フィルム41によって覆う(第3工程S3)。第3工程S3では、例えば第1工程S1と同様の方法にて、第1無機バリア層12上に第2保護フィルム41を貼り付ける。第2保護フィルム41は、第1保護フィルム21と同様に、基材42及び粘着層43を有する部材である。基材42は、樹脂基材11の熱等に対する耐久性を向上するために設けられるフィルム状の部材であり、例えば、樹脂基材11と同様に樹脂によって形成される。基材42を構成する樹脂としては、例えば、樹脂基材11を構成するための樹脂と同様の樹脂が用いられる。基材42の厚さは、例えば20μm以上80μm以下である。基材42の厚さが20μm以上である場合、樹脂基材11に十分な耐熱性等を付与できる。粘着層43は、第1無機バリア層12に粘着する層であり、基材42の一表面上に設けられる。粘着層43は、粘着層23と同様に、例えばアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコン系粘着剤、紫外線硬化型粘着剤等を含む。耐熱性、粘着性等の観点から、粘着層43にはアクリル系粘着剤が含まれてもよい。粘着剤成分、ブリードアウト成分の第1無機バリア層12への転写による不良発生防止の観点から、粘着層43には、硬化剤、レベリング材等の添加剤が適宜含まれ得る。加えて、製造時に発生する環境異物等の欠陥の第1無機バリア層12への転写を防止する観点から、第3工程S3は、クリーンルーム等の環境異物の少ない環境にて実施されてもよい。第2保護フィルム41は、第1保護フィルム21と同一部材でもよい。
次に、樹脂基材11から第1保護フィルム21を剥離する(第4工程S4)。第4工程S4では、例えば、第1保護フィルム21のみを巻き取る巻取りロールを用いて、樹脂基材11から第1保護フィルム21を剥離する。よって、第4工程S4後、樹脂基材11の第1主面11aが露出する。第3工程S3の実施後に第4工程S4が実施されてもよいし、第4工程S4の実施後に第3工程S3が実施されてもよい。もしくは、第3工程S3と第4工程S4とが同時に実施されてもよい。この場合、まず、樹脂基材11が巻かれた送り出しロールと、第2保護フィルム41が巻かれた送り出しロールとを準備する。次に、樹脂基材11を図示しない巻取りロールに巻き取らせる際に、第2保護フィルム41を樹脂基材11上の第1保護フィルム21に貼り付ける。次に、樹脂基材11を上記巻取りロールに巻き取らせる前に、樹脂基材11から第1保護フィルム21を剥離する。これにより、第1保護フィルム21が剥離されると共に第2保護フィルム41が貼り付けられる樹脂基材11が巻取りロールに巻き取られる。
次に、第3工程S3後であって第4工程S4後、樹脂基材11の第1主面11a上に第2無機バリア層13をプラズマ化学気相成長法によって形成する(第5工程S5)。第5工程S5では、第2保護フィルム41から露出する樹脂基材11の第1主面11a上に、PECVD法によって第2無機バリア層13を堆積させる。これにより、樹脂基材11、第1無機バリア層12、及び第2無機バリア層13を有するガスバリア性フィルム1を製造できる。このガスバリア性フィルム1を巻取りロールにて巻き取ることによって、ガスバリア性フィルム1の巻回体2を製造できる。
第2無機バリア層13は、例えば、第1無機バリア層12の形成時に用いられる製造装置100(図5を参照)にて形成される。換言すると、図5に示す製造装置100を用い、PECVD法を利用しながらロールツーロール方式にて、第2無機バリア層13が形成される。この場合、第4工程S4にて形成される、第1保護フィルム21が剥離され、且つ、第2保護フィルム41が貼り付けられた樹脂基材11が巻かれたロールを、送り出しロール101とする。本実施形態では、第2無機バリア層13は、第1無機バリア層12よりも短時間で形成される。換言すると、第2工程S2における第1無機バリア層12のダイナミックレート(第1ダイナミックレート)は、第5工程S5における第2無機バリア層13のダイナミックレート(第2ダイナミックレート)よりも小さい。例えば、第2ダイナミックレートは、第1ダイナミックレートの1.5倍より大きくてもよいし、1.8倍以上でもよいし、2.0倍以上でもよい。この場合、ガスバリア性フィルム1の生産性を良好に向上できる。このため、第5工程S5におけるプラズマ発生用電源からの印加電力、及び/又は、成膜圧力は、第2工程S2よりも高い。また、第5工程S5における樹脂基材11の往復回数は、第2工程S2よりも少なくてもよい。なお、無機バリア層のダイナミックレートは、無機バリア層の厚さをA、樹脂基材の搬送速度をB、樹脂基材の往復回数をCとした場合、「A×B÷C」に相当する。無機バリア層のダイナミックレートが高いほど、無機バリア層の成膜レートが高いと言える。
本実施形態では、ガスバリア性フィルム1の生産性の観点から、第1ダイナミックレートは、100nm・m/min以上でもよいし、120nm・m/min以上でもよいし、150nm・m/min以上でもよいし、180nm・m/min以上でもよい。また、第2ダイナミックレートは、200nm・m/min以上でもよいし、300nm・m/min以上でもよいし、400nm・m/min以上でもよいし、450nm・m/min以上でもよい。一方、、ガスバリア性フィルム1にシワ等の発生防止、アーク放電の発生防止等の観点から、第1ダイナミックレートと第2ダイナミックレートとのそれぞれは、1000nm・m/min以下でもよいし、900nm・m/min以下でもよいし、800nm・m/min以下でもよい。
以上に説明した本実施形態に係るガスバリア性フィルム1の製造方法によれば、第2工程S2では、樹脂基材11の第1主面11aが第1保護フィルム21によって覆われた状態にて、第1無機バリア層12がプラズマ化学気相成長法によって形成される。同様に、第5工程S5では、樹脂基材11の第2主面11bが第1無機バリア層12及び第2保護フィルム41によって覆われた状態にて、第2無機バリア層13がプラズマ化学気相成長法によって形成される。このように本実施形態では、樹脂基材11がプラズマに晒されるとき、樹脂基材11と、第1保護フィルム21もしくは第2保護フィルム41とが一体化している。これにより、各無機バリア層に含まれる物質が樹脂基材11に堆積するときに樹脂基材11に伝わる熱の一部が保護フィルムに分散するので、樹脂基材11の温度上昇を抑制できる。よって、樹脂基材11が第1保護フィルム21もしくは第2保護フィルム41とが一体化していないときと比較して、樹脂基材11がプラズマに晒されたとしても、ガスバリア性フィルム1にシワ、巻取り不良等の不具合が発生しにくくなる。このため、プラズマを発生させるために成膜ロール103,104に印加される電力を抑えるなどの対策をすることなく、第1無機バリア層12及び第2無機バリア層13を樹脂基材11に形成できる。したがって、本実施形態によれば、生産性を向上しつつ、シワ、巻取り不良等の不具合発生を抑制可能なガスバリア性フィルム1を製造できる。また、当該ガスバリア性フィルム1の製造に伴い、生産性を向上しつつ、シワ、巻取り不良等の不具合発生を抑制可能なガスバリア性フィルム1の巻回体2を製造できる。
加えて、本実施形態では、第1無機バリア層12の水蒸気透過度は、第2無機バリア層の水蒸気透過度よりも小さい。例えば、第2無機バリア層13の成膜レートを第1無機バリア層12よりも高くすることによって、上記関係が成立する。ここで上述したように、第2無機バリア層13の形成時には、第2保護フィルム41によって樹脂基材11の温度上昇が抑制されている。このため本実施形態では、ガスバリア性フィルム1の生産性を向上したとしても、樹脂基材11のシワ、巻取り不良等の不具合発生が抑制可能である。
本実施形態では、第1無機バリア層12の水蒸気透過度は、第2無機バリア層13の水蒸気透過度の0.1倍未満でもよい。この場合、第1無機バリア層12によるガスバリア性フィルム1のガスバリア性能を確保しつつ、第2無機バリア層13の生産性をさらに向上できる。
本実施形態では、第2工程S2における第1無機バリア層12の第1ダイナミックレートは、第5工程S5における第2無機バリア層13の第2ダイナミックレートよりも小さい。第2ダイナミックレートは、第1ダイナミックレートの1.5倍よりも大きくてもよい。これらの場合、第2無機バリア層13と比較して第1無機バリア層12の膜質を向上できるので、第1無機バリア層12によるガスバリア性フィルム1のガスバリア性能を確保できる。加えて、第2無機バリア層13の生産性をさらに向上できる。
本実施形態では、樹脂基材11の厚さは、20μm以上80μm以下である。このため、例えば樹脂基材11の厚さが100μm以上である場合と比較して、ガスバリア性フィルム1をロールに巻くときの巻数を増加できる。加えて、例えばガスバリア性フィルム1に光を透過させる場合、ガスバリア性フィルム1による光吸収を良好に抑制できる。
本実施形態では、第1保護フィルム21は、基材22と、基材22に設けられると共に樹脂基材11に粘着する粘着層23とを有し、第2保護フィルム41は、基材42と、基材42に設けられると共に樹脂基材11に粘着する粘着層43とを有し、基材22,42の厚さは、20μm以上80μm以下でもよい。この場合、第1保護フィルム21及び第2保護フィルム41による樹脂基材11の耐熱性向上効果が良好に発揮される。加えて、粘着層23,43が用いられることによって、第2工程S2において第1保護フィルム21が樹脂基材11から剥がれにくくなると共に、第5工程S5において第2保護フィルム41が樹脂基材11から剥がれにくくなる。
本実施形態では、第1無機バリア層12の厚さの90%以上の領域において、珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する炭素原子の量の比は、連続的に変化する。このため、第1無機バリア層12は、酸素及び水蒸気等に対してより優れたバリア性を得ることができる。加えて、第1無機バリア層12は、優れた耐屈曲性を示すことができる。また、本実施形態では、第2無機バリア層13の厚さの90%以上の領域において、珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する炭素原子の量の比は、連続的に変化する。このため、第2無機バリア層13もまた、酸素及び水蒸気等に対してより優れたバリア性を得ると共に、優れた耐屈曲性を示すことができる。
本発明の一側面に係るガスバリア性フィルムの製造方法は、上記実施形態に限定されず、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では、ガスバリア性フィルムは、第2無機バリア層、樹脂基材、及び第1無機バリア層がこの順に積層された構造を有しているが、これに限られない。すなわち、ガスバリア性フィルムは、樹脂基材、第1無機バリア層、及び第2無機バリア層以外の層を有してもよい。例えば、樹脂基材は、必要に応じて、平坦化層、プライマーコート層等の機能層を有してもよい。この場合、第1主面及び/又は、当該機能層によって形成されてもよく、第1無機バリア層及び/又は第2無機バリア層は、当該機能層上に形成されてもよい。また、より高いガスバリア性が得られることから、第1無機バリア層上に第2無機バリア層が形成されてもよいし、第2無機バリア層上に第1無機バリア層が形成されていてもよい。加えて、より高いガスバリア性を得るために、第1無機バリア層上には、無機ポリマー層のような塗布により形成されるバリア層が形成されてもよい。無機ポリマー層は、例えば、パーヒドロポリシラザン(PHPS)等によって形成される。
上記実施形態では、図5に示される製造装置を用いたプラズマCVD法によって第1無機バリア層及び第2無機バリア層を形成しているが、これに限られない。例えば、容量結合型プラズマCVD法によってガスバリア性フィルムに含まれる無機バリア層が形成されてもよい。この場合、第1無機バリア層及び第2無機バリア層の少なくとも一方が、容量結合型プラズマCVD法によって形成されてもよい。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[評価方法]
<ガスバリア性>
ガスバリア性フィルムのガスバリア性は、水蒸気透過度(Water Vapor Transmission Rate:WVTR)により評価した。水蒸気透過度は、温度40℃、湿度90%RHの条件において、カルシウム腐食法(特開2005-283561号公報に記載される方法)によって算出した。具体的には、まず、乾燥処理後のガスバリア性フィルムに対して、金属カルシウムを蒸着した。続いて、金属カルシウムの上に金属アルミニウムを蒸着した。最後に、封止用樹脂を用いてガラスを貼り合せることで金属カルシウムを封止したサンプルを、温度40℃、湿度90%RHの条件にて静置した。このサンプルの腐食点の経時変化による増加を画像解析で調べることによって、水蒸気透過度を算出した。なお、このような水蒸気透過度の算出に際しては、腐食点をマイクロスコープで撮影し、その画像をパーソナルコンピューターに取り込んで、腐食点の画像を2値化し、腐食面積を算出して求めることにより、水蒸気透過度を算出した。この水蒸気透過度の値が小さいほど、ガスバリア性に優れているといえる。なお、無機バリア層の水蒸気透過度は、無機バリア層が形成された樹脂基材の水蒸気透過度の算出結果とみなした。これは、樹脂基材の水蒸気透過度が無機バリア層が形成された樹脂基材の水蒸気透過度よりも顕著に高かったため、樹脂基材の水蒸気透過度を無視できたためである。
<膜厚>
樹脂基材に設けられる平坦化層及び無機バリア層の厚さは、以下の方法で測定した。まず、樹脂基材上に平坦化層を形成する、もしくは、平坦化層付き基材の平坦化層上に無機バリア層を形成する。続いて、表面粗さ測定器(株式会社小坂研究所社製、商品名:サーフコーダET200)を用いて、基材(未塗工部)/平坦化層、もしくは、平坦化層(未成膜部)/無機バリア層の段差測定を行うことによって、平坦化層及び無機バリア層の膜厚が求められる。
<組成分布計測定>
ガスバリア性フィルムの無機バリア層について、XPSデプスプロファイル測定(Surface Science Instruments社製、商品名:S-Probe ESCA)を行い、下記の条件で、珪素分布曲線、酸素分布曲線、炭素分布曲線を得た。
エッチングイオン種:アルゴン(Ar)、
エッチングレート(SiO熱酸化膜換算値):0.05nm/sec程度、
中和電子銃使用、
照射X線:単結晶分光AlKα、
X線のスポット及びそのサイズ:800μm×150μmの楕円形。
[実施例1]
フィルム状の樹脂基材として、可撓性基材の両面にプライマー層を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製、商品名:A4360、厚み38μm、幅350mm)を準備した。続いて、樹脂基材の片面に、平坦化層を形成するためにコーティング組成物(東亞合成株式会社、商品名:アロニックスUV3701)をグラビアコーティング法にて塗布することによって、上記片面上に塗膜を形成した。続いて、該塗膜を100℃で1分間乾燥させた後、高圧水銀ランプを用いて、積算光量500mJ/cmの条件で紫外線照射した。これにより、厚み1.5μmのコーティング層を樹脂基材の片面上に形成し、平坦化層付き樹脂基材を得た。
次に、得られた平坦化層付き樹脂基材の上記片面とは反対の露出面(すなわち、樹脂基材において平坦化層から露出する面)に、第1保護フィルム(株式会社サンエー化研製、SAT、耐熱タイプ、PET基材厚50μm、幅340mm)を貼り付けた。このとき、まず、第1保護フィルムの粘着面と樹脂基材の露出面とを向かい合わせると共に、幅方向における第1保護フィルムの中央部と樹脂基材の中央部とを揃えることによって、第1保護フィルムの粘着面が露出しない状態となるように、貼合機を用いて第1保護フィルムと平坦化層付き樹脂基材とを貼り合わせた。これにより、第1保護フィルム付き樹脂基材を得た。
次に、図5に示される製造装置100を用いて、第1保護フィルム付き樹脂基材の平坦化層上に第1無機バリア層をPECVD法によって成膜した。具体的には、まず、真空チャンバー内に設置した製造装置100において、第1保護フィルム付き樹脂基材を送り出しロール101に装着した。続いて、真空チャンバー内の圧力を1×10-3Pa以下にした後、第1保護フィルム付き樹脂基材フィルムを搬送しながら、第1保護フィルム付き樹脂基材の平坦化層上に第1無機バリア層を成膜した。より具体的には、まず、成膜ロール103,104からなる一対のロール状電極表面にそれぞれ第1保護フィルム付き樹脂基材を密接させながら、第1保護フィルム付き樹脂基材を搬送させる。このとき、真空チャンバー内(特に、成膜ロール103,104の間)に、原料ガス(ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)ガス)及び酸素ガスを供給すると共に、一対のロール状電極に交流電力を供給する。これにより、一対のロール状電極間にプラズマを発生させ、当該プラズマ中で原料ガスを分解させて、平坦化層上に第1無機バリア層を形成させた。そして、巻取りロール108によって第1無機バリア層が形成された第1保護フィルム付き樹脂基材をロール状に巻き取った。第1無機バリア層の成膜は、以下に示す成膜条件1にしたがって実施される。
<成膜条件1>
原料ガスの供給量:50sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute、0℃、1気圧基準)
酸素ガスの供給量:500sccm(0℃、1気圧基準)
真空チャンバー内の排気口周辺における真空度:1Pa
プラズマ発生用電源からの印加電力:1.0kW
プラズマ発生用電源の周波数:70kHz
フィルムの搬送速度;2.2m/min
パス回数:5回
得られた第1無機バリア層の厚さは416nmである。第1無機バリア層のダイナミックレートは、183nm・m/minであった。図6(a)は、第1無機バリア層が形成された第1保護フィルム付き樹脂基材の一部を示す断面TEM画像である。図6(b)は、第1無機バリア層が形成された第1保護フィルム付き樹脂基材のXPSデプスプロファイル測定結果を示す図である。図6(a),(b)において、領域R1は、第1無機バリア層の形成領域に相当し、領域R2は平坦化層の形成領域に相当する。また、図6(b)において、グラフ51は酸素原子の分布曲線を示し、グラフ52は珪素原子の分布曲線を示し、グラフ53は炭素原子の分布曲線を示す。
図6(a)に示されるように、領域R1においては縦縞が形成されることが確認された。この縦縞は、第1無機バリア層の密度が、厚さ方向に沿って一定ではないことを示していると言える。このように第1無機バリア層の密度が厚さ方向に沿って変化することによって、第1無機バリア層に柔軟性が付与される。実際、図6(b)に示されるように、XPSデプスプロファイル測定により得られた第1無機バリア層の珪素原子、酸素原子、及び炭素原子の分布曲線から、第1無機バリア層に含まれる珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計数に対する炭素原子の原子数比は、厚さ方向における90%以上の領域において連続的に変化していたことが確認された。また、XPSデプスプロファイル測定より、第1無機バリア層においては、原子数比が大きい方から酸素、珪素及び炭素の順であることが確認された。得られた珪素原子、酸素原子及び炭素原子の分布曲線から、それぞれの原子の厚さ方向における平均原子濃度を求めた後、平均原子数比C/Si及びO/Siを算出した結果、平均原子数比C/Si=0.68、O/Si=1.55であることが確認された。
得られた第1無機バリア層の水蒸気透過度を測定するため、まず、第1無機バリア層が形成された第1保護フィルム付き樹脂基材から第1保護フィルムを剥離したサンプルを作成した。続いて、当該サンプルの水蒸気透過度を、上述したガスバリア性の評価方法にて測定したところ、当該水蒸気透過度は、温度40℃、湿度90%RHの条件において1×10-4g/(m・day)であった。
第1無機バリア層が形成された第1保護フィルム付き樹脂基材の第1無機バリア層上に、第2保護フィルム(株式会社サンエー化研製、SAT、耐熱タイプ、PET基材厚50μm、幅340mm)を貼り付けた。このとき、まず、第2保護フィルムの粘着面と第1無機バリア層とを向かい合わせると共に、幅方向における第2保護フィルムの中央部と樹脂基材の中央部とを揃えることによって、第2保護フィルムの粘着面が露出しない状態となるように、貼合機を用いて第2保護フィルムと第1無機バリア層とを貼り合わせた。続けて、第2保護フィルムを貼り付けるための貼合機とは異なる貼合機を用いて、第2保護フィルムが貼られた樹脂基材から第1保護フィルムを剥離した。
次に、第1無機バリア層の形成に用いた製造装置100(図5を参照)を用いて第1保護フィルムを剥離した面上(すなわち、樹脂基材のうち第2保護フィルムから露出するプライマー層上)に第2無機バリア層を積層した。これにより、第1無機バリア層及び第2無機バリア層が形成されるガスバリア性フィルム及びその巻回体を得た。当該ガスバリア性フィルム及びその巻回体には、少なくとも目視可能な皺などは確認されなかった。第2無機バリア層の成膜条件としては、以下の成膜条件2を適用した。成膜条件1と比較して、特に、印加電力が高くなっており、フィルムの搬送速度が上昇しており、且つ、パス回数が少なくなっている。
<成膜条件2>
原料ガスの供給量:50sccm(0℃、1気圧基準)
酸素ガスの供給量:500sccm(0℃、1気圧基準)
真空チャンバー内の排気口周辺における真空度:5Pa
プラズマ発生用電源からの印加電力:1.5kW
プラズマ発生用電源の周波数:70kHz
フィルムの搬送速度;2.4m/分
パス回数:3回
得られた第2無機バリア層の厚みは414nmで、ダイナミックレートは、331nm・m/minであった。
第2無機バリア層の水蒸気透過度を測定するため、まず、上述した平坦化層付き樹脂基材を準備した。続いて、平坦化層付き樹脂基材の平坦化層上に、第1保護フィルムを貼り付けた。保護フィルム付き樹脂基材のプライマー層上に、第2無機バリア層を、上記成膜条件2にて形成した。続いて、樹脂基材から第1保護フィルムを剥離した。これにより得られた第2無機バリア層が形成された樹脂基材の水蒸気透過度を、上述したガスバリア性の評価方法にて測定したところ、当該水蒸気透過度は、温度40℃、湿度90%RHの条件において3×10-3g/(m・day)であった。
[比較例1]
実施例1と同様の条件にて、平坦化層付き樹脂基材を得た。得られた平坦化層付き樹脂基材を、製造装置100を用いて、成膜条件1にて第1無機バリア層を得るための成膜を実施したところ、最初の送り出しロール101から巻取りロール108への樹脂基材の搬送中(すなわち、1パス目)、搬送方向に沿ったシワが樹脂基材に発生した。また、3パス目(すなわち、1.5往復目)には、放電異常(アーク放電)が発生したので、第1無機バリア層の成膜を中止した。よって、平坦化層付き樹脂基材のみを用いた場合(すなわち、保護フィルムを用いない場合)では、ガスバリア性フィルムを製造できなかった。
[比較例2]
実施例1と同様の条件にて、平坦化層付き樹脂基材を得た。得られた平坦化層付き樹脂基材を、製造装置100を用いて、以下に示す成膜条件3にて第1無機バリア層を得るための成膜を実施した。
<成膜条件3>
原料ガスの供給量:50sccm(0℃、1気圧基準)
酸素ガスの供給量:500sccm(0℃、1気圧基準)
真空チャンバー内の排気口周辺における真空度:1Pa
プラズマ発生用電源からの印加電力:0.3kW
プラズマ発生用電源の周波数:70kHz
フィルムの搬送速度;2.2m/分
パス回数:15回
得られた第1無機バリア層の厚みは405nmで、ダイナミックレートは、59nm・m/minであった。XPSデプスプロファイル測定により得られた第1無機バリア層の珪素原子、酸素原子、及び炭素原子の分布曲線から、厚さ方向における90%以上の領域において、原子数比が大きい方から酸素、珪素及び炭素の順であることが確認された。また、得られた珪素原子、酸素原子及び炭素原子の分布曲線から、それぞれの原子の厚さ方向における平均原子濃度を求めた後、平均原子数比C/Si及びO/Siを算出した結果、平均原子数比C/Si=0.65、O/Si=1.58であることが確認された。さらに、第1無機バリア層に含まれる珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計数に対する炭素原子の原子数比は、厚さ方向における90%以上の領域において連続的に変化していた。
得られた第1無機バリア層の水蒸気透過度を測定するため、まず、第1無機バリア層が形成された第1保護フィルム付き樹脂基材から第1保護フィルムを剥離したサンプルを作成した。続いて、当該サンプルの水蒸気透過度を用いて、上述したガスバリア性の評価方法にて測定したところ、当該水蒸気透過度は、温度40℃、湿度90%RHの条件において7×10-3g/(m・day)であった。
次に、第1無機バリア層の形成に用いた製造装置100(図5を参照)を用いて、樹脂基材の露出面上(すなわち、樹脂基材にて第1無機バリア層から露出するプライマー層上)に第2無機バリア層を積層した。成膜条件としては、以下の成膜条件4を適用した。第2無機バリア層の成膜中、4パス目(すなわち、2往復目)から搬送方向に沿ったシワが樹脂基材に発生した。一方、放電異常(アーク放電)は発生しなかったので、ガスバリア性フィルムを得ることはできた。しかしながら、比較例2のガスバリア性フィルム及びその巻回体には複数の皺が確認された。
<成膜条件4>
原料ガスの供給量:50sccm(0℃、1気圧基準)
酸素ガスの供給量:500sccm(0℃、1気圧基準)
真空チャンバー内の排気口周辺における真空度:5Pa
プラズマ発生用電源からの印加電力:0.6kW
プラズマ発生用電源の周波数:70kHz
フィルムの搬送速度;3.5m/分
パス回数:9回
得られた第2無機バリア層の厚みは410nmで、ダイナミックレートは、159nm・m/minであった。
第2無機バリア層の水蒸気透過度を測定するため、まず、上述した平坦化層付き樹脂基材を準備した。続いて、平坦化層付き樹脂基材の平坦化層上に、第1保護フィルムを貼り付けた。保護フィルム付き樹脂基材のプライマー層上に、第2無機バリア層を、上記成膜条件4にて形成した。続いて、樹脂基材から第1保護フィルムを剥離した。これにより得られた第2無機バリア層が形成された樹脂基材の水蒸気透過度を、上述したガスバリア性の評価方法にて測定したところ、当該水蒸気透過度は、温度40℃、湿度90%RHの条件において2×10-3g/(m・day)であった。
1…ガスバリア性フィルム、2…巻回体、2a…側面、2b,2c…端部、3a~3c…領域、11…樹脂基材、11a…第1主面、11b…第2主面、12…第1無機バリア層(別の無機バリア層)、12a…表面、13…第2無機バリア層、13a…表面、100…製造装置、101…送り出しロール、103,104…成膜ロール、108…巻取りロール。

Claims (8)

  1. 第1保護フィルムによって覆われる第1主面、及び第2主面を有するフィルム状の樹脂基材を準備する第1工程と、
    前記第2主面上に第1無機バリア層をプラズマ化学気相成長法によって形成する第2工程と、
    前記第1無機バリア層を第2保護フィルムによって覆う第3工程と、
    前記樹脂基材から前記第1保護フィルムを剥離する第4工程と、
    前記第3工程後であって前記第4工程後、前記第1主面上に第2無機バリア層をプラズマ化学気相成長法によって形成する第5工程と、
    を備え、
    前記第1無機バリア層と前記第2無機バリア層とのそれぞれは、珪素原子、酸素原子及び炭素原子を含み、
    前記第1無機バリア層の水蒸気透過度は、前記第2無機バリア層の水蒸気透過度よりも低い、
    ガスバリア性フィルムの製造方法。
  2. 前記第1無機バリア層の水蒸気透過度は、前記第2無機バリア層の水蒸気透過度の0.1倍未満である、請求項1に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
  3. 前記第2工程における前記第1無機バリア層の第1ダイナミックレートは、前記第5工程における前記第2無機バリア層の第2ダイナミックレートよりも小さい、請求項1または2に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
  4. 前記第2ダイナミックレートは、前記第1ダイナミックレートの1.5倍よりも大きい、請求項3に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
  5. 前記樹脂基材の厚さは、20μm以上80μm以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
  6. 前記第1保護フィルムと前記第2保護フィルムとのそれぞれは、基材と、前記基材に設けられると共に前記樹脂基材に粘着する粘着層とを有し、
    前記基材の厚さは、20μm以上80μm以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
  7. 前記第1無機バリア層の厚さの90%以上の領域において、珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する炭素原子の量の比は、連続的に変化する、請求項1~6のいずれか一項に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
  8. 第1主面及び第2主面を有すると共に、厚さが20μm以上80μm以下である樹脂基材と、
    前記第1主面上に設けられる無機バリア層と、
    前記第2主面上に設けられる別の無機バリア層と、
    を備えるガスバリア性フィルムの巻回体であって、
    前記無機バリア層と前記別の無機バリア層とのそれぞれは、プラズマ化学気相成長法によって形成されると共に、珪素原子、酸素原子及び炭素原子を含み、
    前記無機バリア層の水蒸気透過度は、前記別の無機バリア層の水蒸気透過度よりも低く、
    前記ガスバリア性フィルムの巻出し方向に対して直交する方向に延在する前記巻回体の側面には、±50μmを超える凹凸が存在しない、ガスバリア性フィルムの巻回体。
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