JP4147319B2 - 変異ペニシリンgアシラーゼ遺伝子 - Google Patents

変異ペニシリンgアシラーゼ遺伝子 Download PDF

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Description

発明の属する分野
本発明は、原核生物のペニシリンGアシラーゼまたはその前酵素もしくはプレプロ酵素の変異による、該変異ペニシリンGアシラーゼの特性変更に関する。
発明の背景
β−ラクタム型の基本的な抗生物質は、原理的に醗酵により得られる。ペニシリウム(Penicillium)およびセファロスポリウム(Cephalosporium)〔アクレモニウム(Acremonium)〕属の菌類が、ペニシリンG、ペニシリンVおよびセファロスポリンC等のβ−ラクタム型抗生物質の原料物質の製造に利用される。それぞれPenG、PenVおよびCefCとも呼ばれるこれらの醗酵生成物が、殆ど全ての一般的に市販されているペニシリン類およびセファロスポリン類に対する出発物質となっている。該ペニシリン核の6-アミノ位置またはセファロスポリン核の7-アミノ位置におけるアシル基は、「側鎖」と呼ばれ、対応する酸は「側鎖酸(side chainacid)」と呼ばれる。PenG、PenVおよびCefCの側鎖は、それぞれフェニルアセチル基、フェノキシアセチル基およびアミノアジピル基である。これらの側鎖は、アミド結合の開裂(脱アシル化)により除去されて、ペニシリン分子の場合には6-アミノペニシラン酸(6-APA)およびセファロスポリン分子の場合には7-アミノセファロスポラン酸(7-ACA)を与える。また、この点に関連して、フェニルアセチル-7-アミノデアセトキシセファロスポラン酸(CefG)が、7-ADCAの先駆体であることを述べておくべきであるが、CefGは醗酵生成物ではない。CefGは、通常ペニシリンGから化学的に製造する。
変更された活性スペクトルをもつβ−ラクタム型化合物を得るために、β−ラクタマーゼに対する高い耐性またはβ−ラクタム型化合物6-APA、7-ACAおよび7-ADCAの改良された臨床的性能を、種々の選択されたペニシリンおよびセファロスポリンを製造するための合成操作のための出発点として利用する。現時点においては、これらの半合成ペニシリン類およびセファロスポリン類が、β−ラクタム型抗生物質の最も重要な市場を形成している。
半合成β−ラクタム製品の製造は、醗酵により生成されたペニシリン類およびセファロスポリン類の脱アシル化を必要とする。寧ろ効率的な化学的経路が、この脱アシル化のために利用できる(J.フェルウェイ(Verweij)&E.ドゥブルーム(de Vroom),Recl.Trav.Chim.Pays-Bas,1993,112,pp.66-81)が、今日では、高いエネルギーおよび溶媒コスト並びに該化学的経路に関連する幾つかの環境上の諸問題の観点から、酵素を使用する経路が好ましい(ダニル(Dunnill),P.,固定化細胞および酵素技術(Immobilised Cell and Enzyme Technology),Philos.Trans.R.Soc.London,1980,B290,pp.409-420)。β−ラクタム型化合物の脱アシル化を達成し得る酵素は、これらが触媒する化学反応に基づいて、加水分解酵素として分類される。しかしながら、β−ラクタム型化合物の脱アシル化において特に有用なこれらの加水分解酵素は、当分野において通常「アシラーゼ」または「アミダーゼ」と呼ばれている。本明細書で使用するようなこれらの名称は、同一の意味をもつ。β−ラクタム型構成物質に関連して、これらのアシラーゼは、全てのアミダーゼが、該アシル基に対するアクセプタ/ドナーとしてβ−ラクタム核を受け入れる訳ではないので、通常は更に「β−ラクタムアシラーゼ」として特定される。文献によれば、幾つかの型のβ−ラクタムアシラーゼが、その基質特異性および分子構造に基づいて、意図されている(B.S.デシュパンド(Deshpande)等,World J.Microbiology & Biotechnology,1994,10,pp.129-138)。
アシラーゼ、命名および分類
特異性による分類
該アシラーゼの基質特異性は、β−ラクタム分子の側鎖部分を識別する該酵素における側鎖結合ポケットによって決定される。一般的に、これらアシラーゼはアミド基(これはセフェム基、ペネム基、アミノ酸、糖等であってもよい)の窒素原子に近接する部分に対しては、それ程特異的ではない(J.G.シュバル(Shewal)等,プロセスバイオケミストリーインターナショナル(Process Biochemistry International),1990,6月,pp.97-103)。ペニシリンGアシラーゼ(ベンジルペニシリンアミドヒドロラーゼ、またペニシリンアミダーゼとも呼ばれる; EC 3.5.1.11)の場合、このアシル部分は高い疎水性である必要があり、またフェニルアセチルまたは(短い)アルキルであることが好ましい。ペニシリンGアシラーゼは、PenGまたはCefGを加水分解して、フェニル酢酸とそれぞれ6-APAまたは7-ADCAとを生成するのに工業的に使用されており、これら生成物は、最も重要な半合成ペニシリン類およびセファロスポリン類の工業的製造用の中間体である。これらの主な用途にも拘らず、他の者は、これらの酵素について、有機合成およびペプチド化学における高感度基の保護/脱保護、立体特異的転化、フェニルグリシンの光学分割、カルビノールの脱エステル化、モノバクタムのアシル化等を報告している。これら様々な用途において、この酵素はそのままの状態または固定化された処方物として使用できる。酵素活性を含む微生物の全細胞も、細胞懸濁液または固定化細胞処方物として使用されている。
ペニシリンGアシラーゼによって加水分解されない基質の例は、帯電したアシル部分を含む、例えばジカルボン酸、即ちサクシニル、グルタリル、アジピルおよびアミノアジピル、CefCの側鎖である。
ペニシリンVアシラーゼは、フェノキシアセチル基に対して著しく特異的であり、一方アンピシリンアシラーゼは側鎖としてD-フェニルグリシンを好む。グルタリル−アシラーゼはグルタリル-7-ACAを脱アシル化し、これはCefCから、D-アミノ酸オキシダーゼにより側鎖を酵素的に脱アミド化し、次いで生成するケトアジピル誘導体をパーオキシドで化学的に脱カルボキシル化した後に調製され、第一の工程で製造される。更に、これらアシラーゼの幾つかは、程度はきわめて限られているが、アシル部分としてサクシニル、グルタリルおよびアジピルを含有するセファースポリン(そのデアセトキシ誘導体を包含する)およびある場合においてはCefCさえも、加水分解できることを報告している(その概説についてはメルク(Merck)のEP-A-322032を参照のこと)。これまでのところ、これらアシラーゼはシュードモナス(Pseudomonas)種、およびバチルスメガテリウム(Bacillus megaterium)およびアルスロバクタービスコサス(Arthrobacterviscosus)の幾つかの菌株においてのみ見出されている。
該酵素の構造上の特徴に基づく分類
アシラーゼは、その特異性以外にも、分子的特徴に基づいて分類することができる(V.K.サッドハカラン(Sudhakaran)等,Process Biochemistry,1992,27,pp.131-143)。
タイプIアシラーゼはペニシリンVに対して特異的である。これら酵素は4つの同等なサブユニットを含み、その各々は分子量35kDaをもつ。
−タイプIIアシラーゼは全て、共通の分子構造を共有している:これらの酵素は小さなサブユニット(α:16-26kDa)と大きなサブユニット(β:54-66kDa)とを含むヘテロダイマーである。
基質特異性に関連して、タイプIIアシラーゼは更に2つの群に分割できる:
−タイプIIA アシラーゼはペニシリンGアシラーゼを含む。
−タイプIIB アシラーゼはグルタリルアシラーゼを含む。
−タイプIII アシラーゼはアンピシリンアシラーゼであり、これは分子量72kDaを有する2つの同等なサブユニットからなるダイマーであることが報告されている。
スクリーニング/化学修飾に関連するタンパク工学の利益
改良された特性をもつ酵素は幾つかの方法で、例えば古典的なスクリーニング法、既存のタンパクの化学修飾、または現代の遺伝子工学およびタンパク−工学技術によって、開発でき、もしくは発見できる。
所定の酵素活性を呈する生物または微生物に関するスクリーニングは、例えば微生物またはかかる微生物の培養上澄から、該酵素を単離並びに精製し、その生物学的な特性を測定し、かつこれらの生物学的特性が用途に関連する要件を満たすか否かをチェックすることにより実施できる。アシラーゼに関する現在の集積は、徹底的なスクリーニングプログラムの結果である。β−ラクタム型のアシラーゼ活性は、多くの微生物、例えば菌類、酵母、アクチノマイセーテスおよびバクテリア等に見出されている。
同定された酵素が、その天然の産生生物から得ることができない場合、組み換え-DNA技術を使用して、該酵素をコードする遺伝子を単離し、該遺伝子を他の生物中で発現させ、該発現された酵素を単離並びに精製し、かつこれが意図した用途に適しているか否かをテストすることができる。既存の酵素の改良は、特に化学的修飾法によって達成できる。一般的に、これら方法は、これらが共通の側鎖をもつ全ての近づき得る残基を修飾してしまい、あるいは修飾すべき適当なアミノ酸の存在に依存するという意味で著しく非特異的であり、かつしばしばこれらは該酵素分子が展開されなければ、到達することが困難なアミノ酸を修飾することはできない。更に、化学修飾は酵素を調製するための付随的な処理段階および化学物質を必要とする。該酵素をコードする遺伝子の変異誘発による酵素の修飾は、上記の問題をこうむらず、従って優れていると考えられる。
更に、アシラーゼの選択、その後の高−収率ペニシリンアシラーゼ−産生菌株の樹立および選択並びに単離および固定化のための工業的方法の開発は、労力を要する工程である。一般的に、変異体の製造およびその後の処方のためには、野性型のプロトコールに従うことができる。従って、一旦ある種のアシラーゼに対して首尾よくこのような方法を開発してしまえば、他の源からの酵素のスクリーニングを継続する代わりに、選択されたアシラーゼの用途を拡げることは、極めて魅力的なことである。従って、該野性型遺伝子をコードする遺伝子の変異誘発による、酵素の修飾は、特に該酵素の諸特性の僅かな適合が必要とされる場合には、スクリーニングよりも優れていると考えられる。所定の特性とは、変更された特異性、ある基質に対する変更された特異的活性、変更されたpH依存性または変更された安定性を包含する。変異誘発は、ランダム変異誘発またはサイト−特異的変異誘発によって達成できる。
化学的変異源による、あるいは変異誘発放射での全微生物の処理によるランダム変異誘発は、勿論修飾された酵素を与えるが、強力な選別プロトコールが、所定の特性をもつ変異体を検索するために必要である。ランダム変異誘発による所定の変異体酵素のより高い確立での単離は、コード化酵素をクローニングし、これをインビトロまたはインビボで変異誘発し、かつ該コード化された酵素を、適当な宿主細胞中で、該変異誘発された遺伝子を再クローニングすることによって発現させることにより達成できる。また、この場合には、適当な生物学的プロトコールを、所定の変異体酵素を選別するために利用する必要がある。
サイト−特異的変異誘発(SDM)は、修飾された酵素を得る最も特異的な方法であり、任意の他の所定のアミノ酸により、1以上のアミノ酸の特異的置換を可能とする。
β−ラクタム中間体の所定の半合成抗生物質への転化は、化学的および酵素学的に実施できる。適当な酵素が入手できる場合には、以下の理由から酵素を利用する経路が好ましい:
−反応を立体特異的に実施できる。
−シリル化等の、側鎖を保護するための試薬を必要としない。
−有機溶媒を殆ど必要としない。例えば、塩化メチレン等の有機溶媒の使用を排除でき、これは環境問題を軽減する。
−化学的経路と比較した場合、通常はより少ない段階を要する。
−極端な温度も圧力も必要としない。
−通常、副生成物の含有率が低い。
選択された種々のペニシリンおよびセファロスポリンを製造するための合成手法は、基本的にはそれぞれ6-APA、7-ACAおよび7-ADCAから出発する。
該酵素を使用した転化法は、正確な条件を適用した場合には、あらゆる酵素反応が可逆的であるという利点をもつ。このような用途の重要性は、以前の概説において注目されている。文献は、生合成経路におけるペニシリンアシラーゼの用途の幾つかの例を与えている(J.G.シュバル(Shewale)等,Process Biochemistry 1International,1990,6月,pp.97-103)。6-APA、7-ADCA、7-ACA、3-アミノ-4-α−メチルモノバクタム酸およびペプチドのアシル誘導体が、種々の構造の側鎖部分をもつように調製されている。6-APAおよび7-ADCA以外にも、ペニシリンアシラーゼは、6-アミノ-2,2-ジメチル-3-(テトラゾール-5-イル)ペナム、メチル-6-アミノペニシレート、3-メチル-7-アミノ-3-セフェム-4-カルボン酸および3-アミノノカルジン酸等の抗生物質中間体の形成において使用される。この加水分解反応はアルカリpH(7.5-8.5)にて触媒され、一方で酸性または中性pH(4.0-7.0)においては、アシル化反応を促進する。
種々のファクタが生物転化工程におけるアシラーゼの性能に影響を与える:
−反応媒体:pH、イオン強度、温度、有機溶媒等、
−プロセス条件に対する酵素安定性、
−反応試薬の安定性、
−該酵素の触媒活性。
酵素の特性ではない反応試薬の安定性を除き、その他のファクタは、タンパク工学による酵素修飾に対するターゲットであり得る。
様々なこれらファクタが、生合成過程を、経済的に実施可能なものとするために、検討された。側鎖酸の遊離酸と比較して、優れたアシルドナーであるメチルエステルが、この反応において使用されている。この反応の平衡は、幾つかの溶媒により、該酵素分子の回りの水の活性を変化させることによって、アシル化に相応しいようにシフトされる。例えば、ポリエチレングリコール、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、およびアセトンが、ペニシリンG、ペニシリンVおよびアンピシリンの収率を高めるのに使用される。
特に6-APA、7-ADCAおよび7-ACAによるアシル化反応は、臨床的に重要な抗生物質を生成する。しかしながら、この反応は厳密に速度論的に制御されたパラメータの下で追跡する必要がある。幾つかの文献においては、タンパク工学的手段を検討して、要件を満たす酵素分子を得ることができ、これは既存の化学的方法に匹敵する収率で半合成ペニシリンおよびセファロスポリン与えるものと考えられていたが、これを如何ようにして実施すべきか、あるいはどの酵素を処理すべきかをも教示せず、あるいはどのアミノ酸残基を置換すべきか、置換の種類と所定の基質との間のあらゆる関係についても教示していない。
与えられたペニシリンアシラーゼの合成能力は、該酵素の特異性のために限られている。従って、脱アシル化/アシル化反応において著しく有効であって、所定の化学的実在物を製造する酵素の開発に、大きな興味がある。特に興味深いのは、β−ラクタム類(特に、PenG、PenV、CefCおよびその誘導体)の、6-APAおよび7-ACA並びにその誘導体への、酵素を使用した脱アシル化、および後者の化合物をアシル化して、興味ある半合成ペニシリンおよびセファロスポリンを製造することである。更に、より極性の高い側鎖または帯電した側鎖、例えばサクシニル、グルタリルまたはアジピル等の上でのより高い活性が望まれる。特に、CefC(およびその誘導体)の、7-ACA(並びにその誘導体)への転化を触媒できる有効な酵素の処理することが重要である。
合成における酵素の適用の理論的局面
ペニシリンGアシラーゼは種々のβ−ラクタム型化合物の脱アシル化を触媒する加水分解酵素である。更に、酵素は反応をその両方向に触媒するので、これらのアシラーゼは、例えばβ−ラクタム型抗生物質、ペプチド、オリゴサッカライドまたはグリセライド等の縮合生成物の合成を触媒する、転移酵素としても使用できる。酵素で触媒した合成は、平衡論的にまたは速度論的に制御される反応の何れかとして実施できる。
平衡制御法においては、該酵素は、熱力学的平衡を確立する速度においてのみ反応を促進する。この酵素の運動学的特性は、平衡濃度に影響を与えない。しかしながら、この熱力学的平衡は、反応条件、例えばpH、温度、イオン強度、または溶媒の組成に依存する。しばしば、所定の生成物の最適の収率が得られるように、該熱力学的平衡をシフトする条件は、通常該酵素の性能に対しては最適とはいえない。このような場合、該反応の熱力学的最適状態により近い条件に、該酵素を適合させる酵素処理が望ましい。この局面において、安定性、最適温度および最適pH等の特性は、有用なターゲットであり得る。
速度論的に制御された反応において、その反応条件は、非平衡条件下での該反応中に、所定の生成物のかなりの蓄積が起こるように選択される。この場合、既に述べたパラメータ並びに該酵素の運動論的な諸特性は、既存の化学的方法と競い得る収率を達成する上で重要なファクタである。
ペニシリンGの速度論は、アシル−酵素中間体を介して進行する触媒のものと一致する。この中間体は、第1図に示した如くこの酵素メカニズムにおいて重要な役割を演じている。この反応式において、該アシラーゼは、アシル基が水に転化される場合には加水分解酵素として、あるいは活性化された基質から求核物質へのアシル基の転移を触媒する場合には、転移酵素として作用する。この化学的実体は一般式によって表される。特定のアシラーゼによって基質として受け入れられる化合物:X-CO-NH-Yにおける該化学的実体XおよびYの特性は、該当するアシラーゼの特異性によって決定される。Xは側鎖を表し、一方でYはアシルアクセプタ基を表す。例えば、PenGの脱アシル化のためには、X-CO-はフェニルアセチル側鎖を表し、かつ-NH-Yは6-アミノペニシラン酸を表す。ある酵素メカニズムが与えられれば、その特異性は、XおよびYに関する結合サイトの構造およびアミノ酸組成によって決定される。
該メカニズムの第一段階において、該基質は該酵素と結合して、非−共有結合性のミカエリス−メンテン(Michaelis-Menten)の錯体を形成する。次の段階において、共有結合性の中間体が、該酵素と該基質のアシル部分(E-CO-X)との間で形成される。該アシル−酵素の形成はアミド結合の開裂(X-CO-NH-Yのアミド加水分解)またはエステル結合の開裂(X-CO-O-Rのエステル加水分解)を介して起こり、また低pHにおいては、直接X-COOHから生成することもできる。求核性YNHは脱アシル化前に、該アシル−酵素に結合する。該脱アシル化が起こり易い条件下(該酵素がデアシラーゼまたはアミダーゼとして作用する)で、水分子が該アシル酵素を加水分解し、結果的に第二の生成物X-COOHを遊離し、かつ新たな触媒サイクルのために該酵素を再生する。化合物X-CO-NH-Yを生成し易い条件下では、該求核試薬Y-NHは水の代わりに、該アシル酵素と反応する(アミノリシス)。PenGについては、上記メカニズムは、フェニル酢酸が競合阻害剤として作用し、かつ6-APAが非−競合的阻害剤として作用するという観測により確認された。
一般的に、アミドからのアシル−酵素の形成(V1)は、アシル酵素の加水分解(V3)と比較して遅い。しかしながら、該側鎖の適当なエステル誘導体(X-CO-O-R)あるいはそのアミド自体(X-CO-NH2)を使用した場合には、該アシル酵素の形成(V2)は該加水分解(V3)と比較して比較的迅速である。その結果として、該アシル酵素中間体が蓄積されることとなる。遊離一級アミノ基をもつ適当な化合物(一般的にはY-NH2で表される)、例えば該アシラーゼによって結合される6-APA、7-ACA、7-ADCAの存在下において、アミド結合が形成されて、X-CO-N-Yが与えられる(V-1,アミノリシス)。
化学的実体XおよびYについての優先性に関連して、該酵素におけるXおよびYに対する結合サイト中の残基の置換は、この優先性を変更する。基質特異性における変化は、VmaxおよびKmの増減のあらゆる組み合わせを包含する。より特異性の高い酵素が必要とされる幾つかの場合においては、例えばエナンショマー混合物の場合、該酵素が該エナンショマーの1種に対してのみ選択性である場合に有用である。他の場合、例えばかなり純粋な化合物の転化の場合には、より高い転化率が選択性のコストにおいて好ましいかもしれない。高い基質濃度においては、高いVmaxが好ましく、一方でKmはあまり重要ではない。
基質の活性化および速度論的に制御された合成に対して使用されるアシラーゼは、化合物を加水分解する該酵素の触媒能(V3=アシル基の水への転化)が、アシルの非−水性アクセプタ求核物質への転移(V-1)に関して抑制され、野性型に相対的に高い増大した比V-1/V3をもつように変更することができる。
該転移酵素対加水分解酵素活性の比は、縮合生成物の速度論的に制御された合成における収率に影響を与える該酵素の特性である。アシルのYNHまたはH2Oへの転移に関する見掛けの二次速度定数の比は、該アシル酵素からX-CO-NH-YおよびX-COOHを生成する初期速度から決定できる。
転移酵素の活性は水についての該酵素−アシル錯体に対する該求核のアフィニティーを改善することによって、改良できる。アシル基の転移(V-1)が、該アシル酵素に結合した求核物質の量に比例するので、該酵素−アシル錯体に対する高いアフィニティーは、加水分解に関連する該縮合生成物の収率を改善するであろう。
更に、酵素により触媒された生合成におけるより高い収率は、所定の生成物(V1V3)の加水分解を減ずることによって達成できる。エステル結合に対するアミド結合の加水分解を減ずる変数は、依然としてエステル基質(V2)からのアシル酵素の形成を可能とするが、生成物のアミド結合に対しては比較的弱い加水分解活性を有する(野性型に対する高い比V1/V2)。
関連文献
タイプ-IIAペニシリンGアシラーゼをコードする幾つかの遺伝子が配列決定されている。即ち、E.コリからの遺伝子(G.シューマッハー(Schumacher)等,Nucleic Acids Research,1986,14,pp.5713-5727)、クルベラシトロフィラ(Kluvvera citrophila)(J.L.バルベロ(Barbero)等,Gene,1986,49,pp.69-80)、アルカリゲネスフェカリス(Alcaligenes faecalis)(米国特許第5,168,048号、ギスト−ブロカデス(Gist-brocades))、プロビデンシアレツゲリ(Providencia rettgeri)(G.ルビヤンキック(Ljubijankic)等,J.DNA Sequencing and Mapping,1992,3,pp.195-201)およびアルスロバクタービスコシス(Arthrobacter viscosis)(M.コンスタンチノビック(Konstantinovic)等,(1993)EMBL databank entry L04471)等である。
組み換えDNA法の利用は、工業的に使用されるペニシリンアシラーゼの生産レベルの増大を可能とし(メイヤー(Mayer)等,Adv.Biotechnol.,1982,1,pp.83-86)、またこれら酵素の処理に関する見識を拡げた(G.シューマッハー(Schumacher)等,Nucleic Acids Research,1986,14,pp.5713-5727)。E.コリのペニシリンアシラーゼは、大量の先駆体タンパクとして製造され、これは更に処理されて、小さな(α)および大きな(β)サブユニットを構成するペリプラズム成熟タンパクとされた。クルベラシトロフィラアシラーゼ遺伝子のクローニングおよび配列決定は、該E.コリアシラーゼ遺伝子との厳密な相同性を明らかにした(J.L.バルベロ(Barbero)等,Gene,1986,49,pp.69-80)。また、プロテウスレツゲリ(Proteus rettgeri)(G.O.ダウミー(Daumy)等,J.Bacteriol.,1985,163,pp.1279-1281)およびアルカリゲネスフェカリス(米国特許第5,168,048号およびEP-A-453048,ギスト−ブロカデス(Gist-brocades))についても、ペニシリンGアシラーゼの小さなおよび大きなサブユニットが記載されている。
これら出版物は本発明を教示も示唆もしていない。
タンパク工学的技術を利用した酵素の特異的活性の再設計が記載される。
特許出願EP-A-130756 EP-A-251446は、これら酵素の速度論的特性を変更する目的で、残基の選択およびセリンプロテアーゼのある群中のこれら残基の幾つかの変異誘発を記載している。
これら特許出願は、ある型のセリンプロテアーゼ(ズブチリシン型)を具体的に扱っているので、これらの刊行物は、どの残基がタイプ-IIAペニシリンGアシラーゼの触媒特性を変調するかを示していない。
ウエルズ(Wells)等(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1987,84,p.5167)は、ズブチリシンに対する1例を示している。バチルスリシェニホルミス(Bacilluslicheniformis)およびB.アミロリケファシエンス(amyloliquefaciens)のセリンプロテアーゼは、タンパク配列において31%(86残基)だけ異なり、かつ幾つかの基質に及ぼす触媒としての有効性においてファクタ60だけ異なっている。該B.アミロリケファシエンス配列からの86個の異なるアミノ酸の3個を、対応するB.リシェニホルミスの残基によって置換することにより、該変異体酵素の触媒活性は殆ど60倍に改善された。
ウイルクス(Wilks)等(Science,1988,242,p.1541)は、グルタミン102をアルギニン102に変異することにより、どのようにラクテートデヒドロゲナーゼがマレートデヒドロゲナーゼに変化するかを記載している。これら2つ、即ちセリンプロテアーゼおよびラクテートデヒドロゲナーゼの場合において、提案の改良の発想は、所定の特異性を示すことが明らかとなっている天然産の酵素との比較から生まれた。同様に、シトクロームp45015aは、Leu209をPhe209で置換することにより、シトクロームp450conの特異性に変化した(リンドバーグ(Lindberg)&ネギシ(Negishi),Nature,1989,339,p.632))。
特許出願WO93/15208は、デヒドロゲナーゼの特異性または有効性を改良し、一方でその触媒活性を維持する方法を記載しており、該方法は三次構造が実質的に公知または推定されている酵素を選択し、少なくとも一つの特異性および/または有効性−関連領域を同定し、該領域をコードするDNA中の、該同定された領域を制限する固有の制限サイトを同定または構成し、少なくとも1個のコドンのヌクレオチドをランダム化する以外、該同定された領域の少なくとも一部に相当するDNA配列を生成し、あるいは該同定された領域の少なくとも一部に対する基質として、同様にしてランダム化することのできる、もう一つのこのような領域を選択し、該生成したまたは代用のDNA配列を使用して、該もとの配列を置換し、該生成したまたは代用のDNA配列を含むDNAを発現させ、かつ所定の修飾について選別して、これをコードするDNAを単離することを特徴とする。デヒドロゲナーゼはペニシリンGアシラーゼとは少しも関連性がないので、この特許出願は、速度論的特性を変更するために置換すべき、該アシラーゼ中の残基を明らかにしていない。
フォーニー(Forney)等(Appl.and Environm.Microbiology,1989,55,pp.2550-2556; Appl.and Environm.Microbiology,1989,55,pp.2556-2560)はグルタリル-L-ロイシンまたはD(-)−α−アミノ−フェニル−アセチル-(L)-ロイシン上で成育可能なE.コリを、クローニングおよびインビトロ化学/UVランダム変異誘発技術によって単離した。この変異体により生産されたペニシリンアシラーゼは、pH5〜6の範囲でグルタリル-L-ロイシンを加水分解し、またpH6.5でD(-)−α−アミノ−フェニル−アセチル-(L)-ロイシンを加水分解する。このペニシリンGアシラーゼの特異性シフトは該アシラーゼにおける1以上の変異によるものであるが、関与する残基も変異の種類も同定されていない。
J.A.ウイリアム(Williams)& T.J.スツーゼル(Zuzel)(Journ.of Cell Biochem.,1985,supplement 9B,p.99)は、速報の概要中で、メチオニンのインビトロでの変異誘発による、ペニシリンGアシラーゼの基質特異性の改良を報告している。この概要は、このメチオニンの位置を報告していないが、該速報から、これはE.コリアシラーゼの位置Met168に関与すると結論ずけ得るものと考えられる。しかしながら、この研究は、このメチオニンの置換が、観測された特異性変化とどのように関連しているかに関する詳細は全く明らかにされていなかった。プリート(Prieto)(I.プリート(Prieto)等,Appl.Microbiol.Biotechnol.,1990,33,pp.553-559)は、K.シトロフィラ(citrophila)におけるMet168を、PenGおよびPenVの脱アシル化の速度論的パラメータに影響を与えるAla、Val、Asp、Asn、Tyrで置換した。更に、変異体Lys375AsnおよびHis481Tyrが作成され、これらはkcat/Kmには殆ど何の効果も及ぼさなかった。
J.マルタン(Martin)等は、K.シトロフィラのペニシリンアシラーゼ中の変異体Met168Alaを分析し、速度論的性質が変更されたことを報告した(J.マルタン&I.プリート(Prieto),Biochimica et Biophysica Acta,1990,1037,pp.133-139)。これらの参考文献は、該アシル部分に関する特異性について、E.コリおよびK.シトロフィラ中の168位置における残基の重要性を示している。しかしながら、この研究は、このメチオニンの置換が、所定の基質の転化に関する特異性の変化とどのように関連しているかについての詳細を何等明らかにしなかった。
ワンミン(Wang Min)は、E.コリペニシリンGアシラーゼ中のSer177のGly、Thr、Leu、Argへの変異誘発を報告したが、かれは活性アシラーゼを得ることはできなかった(ワンミン(Wang Min)等,Shiyan Shengwu Xuebao,1991,24,1,51-54)。
キョンスークチョイ(Kyeong Sook Choi)等(J.of Bacteriology,1992,174,19,6270-6276)はE.コリペニシリンアシラーゼ中のβ−サブユニットN-末端セリンを、スレオニン、アルギニン、グリシンおよびシステインにより置換した。該N-末端残基がシステインである場合においてのみ、該酵素は適当に処理されて、成熟酵素ではあるが、不活性な酵素を与えた。更に、β−サブユニットN-末端セリンの化学的な変異誘発も、活性の大幅な/殆ど完全な喪失に導いた(スレード(Slade)等,Eur.J.Biochem.,1991,197,pp.75-80; マーチン(Martin)等,Biochem.J.,1991,280,pp.659-662)。
シズマン(Sizman)等(Eur.J.Biochem.,1990,192,pp.143-151)は、翻訳後のプロセッシングにも、該酵素の触媒活性にも影響をあたえることなしに、E.コリ中のセリン838をシステインで置換した。更に、シズマン(Sizman)等は、ペニシリンアシラーゼの種々の欠失変異体を作成した。該アシラーゼの正確な成熟が変異誘発に対して極めて敏感であることが示された。全てのβ−サブユニットC-末端欠失変異体は、最後の3つの残基を欠失した変異体(これは、しかしながら極めて不安定であった)を除き、発現されなかった。位置827における、E.コリ中への4つの残基の挿入も、活性酵素を与えることができなかった。
プリート(Prieto)等は、K.シトロフィラペニシリンアシラーゼ中のグリシン310をグルタミン酸で置換した。しかしながら、活性な酵素を得ることはできなかった。
EP-A-453048には、タイプ-IIaおよびタイプ-IIbアシラーゼの特異性を変更するために、タンパク工学技術をどのように利用できるかを記載している。しかしながら、ここで応用された手順は、所定の活性についてのスクリーニングを必要とする、ランダムに発生させたアシラーゼ変異体のライブラリーの生成に限定されている。この特許出願に記載された方法によって、変異することのできるアミノ酸位置の数が減少しているが、残りの位置は依然として大きく、従って位置特異的変異誘発は多大な労力を要する研究である。本発明は、しかしながらより一層限定された数の、変異さすべき位置を与える。更に、これら位置におけるアミノ酸は基質と直接接触しており、このことは置換が直接的に該基質との相互作用に影響を与えるであろうことを意味している。その上、本発明に導く該手順は、特定の基質に対して、所定の効果を達成するために、特定のアミノ酸置換を選択することを可能とする。
発明の概要
本発明は、単離された変異体原核生物のペニシリンGアシラーゼまたはその前酵素もしくはプレプロ酵素を提供することにあり、これらは
アルカリゲネスフェカリスのペニシリンGアシラーゼまたはその前酵素もしくはプレプロ酵素中のA139〜A152、B20〜B27、B31、B32、B49〜B52、B56、B57、B65〜B72、B154〜B157、B173〜B179、B239〜B241、B250〜B263、B379〜B387、B390、B455、B474〜B480に対応する位置から選択された1種以上のサイトにおける置換を含み、かつ
−対応する野性型の無置換ペニシリンGアシラーゼに対して変更された基質特異性または変更された特異的活性を有する。
好ましくは、この単離された変異体原核生物のペニシリンGアシラーゼは、アルカリゲネスフェカリス由来のものである。
更に、この変異体アシラーゼをコードする核酸配列、該核酸配列を含むベクターおよび該ベクターによって形質転換された微生物宿主菌株が、本発明によって提供される。
本発明のもう一つの局面によれば、該単離された変異体のペニシリンGアシラーゼの製法が提供され、該方法は
−上で定義したような変異体アシラーゼ酵素をコードする核酸配列を含む発現ベクターにより形質転換された、微生物宿主菌株を培養して、該変異体アシラーゼを生成し、かつ
−該アシラーゼを単離する、
工程を含むことを特徴とする。
最後に、アシル化または脱アシル化反応を実施するための方法を提供し、この方法は該単離された変異体ペニシリンGアシラーゼと、該アシラーゼに対する基質とを、該反応が生ずるのに適した条件下で接触させる工程を含有する。好ましくは、β−ラクタム化合物がこの方法により生成される。
特に、アシル化6-アミノペニシラン酸、アシル化7-アミノ(デアセトキシ)セファロスポラン酸またはその塩もしくはエステルを脱アシル化して、それぞれ対応する6-アミノペニシラン酸または7-アミノ(デアセトキシ)セファロスポラン酸もしくはその塩またはエステルを形成する方法が提供され、該方法は該6-アシル化または7-アシル化化合物と、上で規定したような変異体アシラーゼとを、脱アシル化が生ずるのに適した条件下で接触させる工程を含む。また、半合成アシル化6-アミノペニシラン酸、アシル化7-アミノ(デアセトキシ)セファロスポラン酸またはその塩もしくはエステルを製造する方法を提供し、該方法は対応する6-アミノまたは7-アミノβ−ラクタムおよびアシル化剤と、上で規定したような変異体アシラーゼとを、アシル化が生ずるのに適した条件下で接触させる工程を含む。
【図面の簡単な説明】
第1図:タイプ-IIaペニシリンアシラーゼにより触媒される転化に関連する反応式である。EHは該酵素を表し、ここでHは脱離基に移されるプロトンを表す。Xはアシル部分または側鎖を表す。Yはアシル化すべき(アシル化)または脱アシル化すべき(脱アシル化)化合物を表す。化合物X-CO-ORは、単純なアミドX-CO-NH2であってもよい。
第2図は、タイプ-IIaペニシリンアシラーゼ変異体酵素のα(2a)およびβ(2b)サブユニットの配列を示す。アルカリゲネスフェカリス(Alcaligenes faecalis)(afae)、E.コリ(ecol)、クルベラシトロフィラ(Kluvvera citrophila)(kcit)、アルスロバクタービスコシス(Arthrobacter viscosis)(avis)、プロビデンシアレツゲリ(Providencia rettgeri)(pret)。連鎖アイデンティファイヤAおよびBはそれぞれαおよびβ鎖に対するものである。星印は該配列が該当位置にA.フェカリスアシラーゼ由来の配列と同一のアミノ酸を含むことを意味する。プロビデンシアレツゲリ(Providencia rettgeri)アシラーゼに対して、該α−サブユニットのN-末端およびC-末端は未知である。N-末端β−サブユニットプロビデンシアレツゲリは、他のアシラーゼとの整合に基づく。
第3図は、第2および3表で使用した命名法で参照している、PenGの原子名。
第4a図は、フェニルアセチル部分の回りの、A.フェカリスPenGアシラーゼの活性サイトの立体図形である。
第4b図は、6-APA部分の近傍の、A.フェカリスPenGアシラーゼの活性サイトの立体図形である。
第5図は、A.フェカリスペニシリンGアシラーゼ遺伝子、E.コリori’high’コピー、Tacプロモータ、Fd-ターミネータ、cap-、amp*f1−オリジンをもつpMcAF変異誘発ベクターを示す。
第7図は、種々の基質に対する、野性型A.フェカリスアシラーゼおよびその変異型A: M143V、B: L56K、A: F147Yの最大脱アシル化速度である。各変異型の速度はPenGに相対的な値: Vmax(X)/Vmax(PenG)であり、XはPenV、CefG、アンピシリン(Ampi)、(D)フェニルグリシンアミド((D)PGA)またはNIPABを表す。
第6図は、種々の基質に対する、野性型A.フェカリスアシラーゼおよびその変異型B: L56G、B: L56A、B: L56V、B: I177V、B: I177S、B: A67S、B: A67Gの最大脱アシル化速度である。各変異型の速度はPenGに相対的な値: Vmax(X)/Vmax(PenG)であり、XはPenV、CefG、アンピシリン(Ampi)、(D)フェニルグリシンアミド((D)PGA)またはNIPABを表す。
発明の詳細な説明
加水分解/脱アシル化
本発明は、ペニシリンGアシラーゼの速度論的特性を変更する残基の同定に関連し、これにより生成する該ペニシリンGアシラーゼの変異型は、一級アミノ基の脱アシル化に対して、例えばペニシリン類およびセファロスポリン類において起こるアシル化に対して、該先駆体ペニシリンGアシラーゼよりも一層有用となる。これらの速度論的特性は特異的活性、速度論的パラメータのpH依存性、基質特異性、立体選択性および転移酵素活性対加水分解酵素活性の比を包含する。
合成/アシル化
本発明は、組み換えDNA法により、先駆体ペニシリンGアシラーゼから、該先駆体の少なくとも一つのアミノ酸残基を変えることによって誘導される、ペニシリンGアシラーゼ変異型に関連し、該ペニシリンGアシラーゼ変異型は、一級アミノ基の脱アシル化に対して、例えばβ−ラクタム核(半合成β−ラクタム化合物の調製)およびペプチドについて見られるアシル化に対して、該先駆体ペニシリンGアシラーゼよりも一層有用である。
本発明は、組み換えDNA法により、先駆体ペニシリンGアシラーゼから、該先駆体の少なくとも一つのアミノ酸残基を変えることによって誘導される、ペニシリンGアシラーゼ変異型に関連し、該ペニシリンGアシラーゼ変異型は、該先駆体ペニシリンGアシラーゼよりも高い転移酵素活性対加水分解酵素活性の比をもつことにより特徴付けられる。
本発明の課題であるペニシリンGアシラーゼは、
−原核生物から単離され、
−単一のペプチド鎖先駆体として転写され、
−転写後に細胞内処理されて、小さなN-末端ドメイン(α−ドメイン)および大きなC-末端ドメイン(β−ドメイン)をもつヘテロダイマーを生じ、該N-末端ドメインの分子量は16-28kDaの範囲内にあり、該C-末端ドメインの分子量は54-68kDaの範囲内にあり、
−溶液中では、αβヘテロ−ダイマーのマルチマー(multimer)として存在でき、
−該βサブユニットのN-末端にセリンを有する。
このようなアシラーゼ産生微生物の例は、種E.コリクルベラシトロフィラ(Kluvvera citrophila)、プロビデンシアレツゲリ(Providencia rettgeri)、シュードモナス(Pseudomonas)sp.、アルカリゲネスフェカリス(Alcaligenesfaecalis)バチルスメガテリウム(Bacillus megaterium)、およびアルスロバクタービスコシス(Arthrobacter viscosis)の幾つかの菌株である。
幾つかのペニシリンGアシラーゼをコードする遺伝子は配列決定されている。即ち、E.コリクルベラシトロフィラ(Kluvvera citrophila)、アルカリゲネスフェカリス(Alcaligenes faecalis)プロテウスレツゲリ(Proteus rettgeri)およびアルスロバクタービスコシス(Arthrobacter viscosis)由来の遺伝子の配列は決定されている。
ペニシリンGアシラーゼの基質特異性の変更は、該変異体酵素が、ペニシリンGの天然の側鎖であるフェニルアセチル以外の、ペニシリンおよびセファロスポリン誘導体プロセッシング側鎖を開裂または合成することができるような方法で達成される。現時点において、ペニシリンGアシラーゼにより大幅な影響を受けないことが分かっている側鎖の例は、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸およびアミノアジピン酸(後者はCefCの天然の側鎖である)等のジカルボン酸から誘導されるアシル基である。
もう一つの局面においては、ペニシリンGアシラーゼの該特異性および活性の変更は、該アシラーゼに対する既存の基質である、側鎖に対して行われる。タンパク工学技術を利用して、基質に対するアフィニティーを変えることができ(例えば、増大され、該基質に対する低いKmにより表示される)、接触的物質交代を変更することができ(例えば、増大され、該基質に対するより高いkcatにより表示される)、または第2次速度定数を変更できる(例えば、変更されたkcat/Km比により表され、このパラメータは通常種々の基質に対するある酵素の特異性を比較するのに利用される)。この局面における関連する基質はアシル化されたβ−ラクタム誘導体、例えばペニシリンV(PenV)、アンピシリン、アモキシシリン、セファレキシン(cefalexin)、セファドロキシル(cefadroxyl)またはセファクロール(cefaclor)を包含する。更に、該アシル部分の単純なアミドおよびエステルに関する速度論的特性の変更は、生合成過程における収率を改善し得る、該アシル酵素中間体の高い蓄積度を達成するのに有用である。
もう一つの局面においては、ペニシリンGアシラーゼの該特異性および活性の変更は、ペニシリンGアシラーゼの立体特異性を高めるために実施され、これはキラル化合物のラセミ混合物についての転化における、改善されたエナンショマー過剰状態を示す酵素をもたらす。このような性質は、ラセミ混合物からのエナンショマー的に純粋な半合成抗生物質を合成する上で、該ペニシリンGアシラーゼを著しく有用なものとしている。該ラセミ混合物は、アミノ基(例えば、アンピシリン、セファレキシン、アモキシシリン、セファドロキシル、セファクロール)またはヒドロキシル基(セファマンドール: cefamandol)の存在のために、キラルα−炭素を含有する、フェニルアセチル側鎖またはフェニルアセチル側鎖の活性化誘導体(例えば、フェニルグリシン−アミドまたはそこからのエステル、p-ヒドロキシフェニルグリシン−アミドまたはそこからのエステル等)を含有する。
アシルC(α)位に対する立体選択性に加えて、ペニシリンGアシラーゼは、また該基質のアミノ部分に関する立体選択性をも示す。アミノ酸の場合、このアシラーゼは該C(α)原子におけるL-配位を必要とする。本発明のもう一つの局面においては、該基質のアミノ部分に対する該酵素の立体的選択性を変更できる。
本発明のもう一つの局面においては、野性型酵素に関する生成物阻害が低下される。所定の変異型は、転化中の長時間に渡り、その初期の高い脱アシル化速度を維持して、高い生産性をもたらす。このような阻害性生成物の例は、フェニルアセテート、フェノキシアセテート、フェニルグリシン、p-ヒドロキシフェニルグリシン等である。
本発明の他の局面においては、該酵素の転移酵素活性は、生合成転化において該酵素をより一層有用なものとする、その加水分解活性について改良される。特に、アモキシシリン、アンピシリン、セファクロール、セファドロキシル、セフプロジル(cefprozil)、セファレキシンおよびセフラジン(cephradine)の酵素を利用した合成において改善された性能をもつ変異型が好ましい態様である。
該先駆体アシラーゼと比較した場合、生合成に対する所定の変異型は、水によるよりも、より一層容易に、β−ラクタム核によって脱アシル化される(アミノリシス/加水分解比)。このことは、水と相対的な該求核物質の結合を改善することによって達成できる。所定の変異型は、該先駆体酵素に対して、特定の基質に対する変更されたエステラーゼ/アミダーゼ比を有する。即ち、幾つかの側鎖に対して、該所定の酵素は、これら側鎖をもつアミド誘導体に対して、対応する側鎖をもつエステルに対するエステラーゼ活性に比して、低いアミダーゼ活性を示す。
該酵素分子における変更を達成するためには、該酵素の3D構造を利用することが極めて望ましい。今までのところ、如何なるアシラーゼの高解像度の、3D−構造も公開されていない。
公知のペニシリンGアシラーゼ遺伝子配列由来のアミノ酸配列は、最適の相同性が達成されるように配列された。配列の整合のために、アミノ酸の型は、同一性ばかりでなく類似性にも基づいて、パラメータとして首尾よく利用される。例えば、セリンはスレオニンと類似し、アスパラギン酸はグルタミン酸と類似し、その他同様である。結果は第2図に示されており、第2図はE.コリクルベラシトロフィラ(Kluvvera citrophila)、アルカリゲネスフェカリス(Alcaligenesfaecalis)プロビデンシアレツゲリ(Providencia rettgeri)、およびアルスロバクタービスコシス(Arthrobacter viscosis)由来のペニシリンGアシラーゼの配列を与える。5個のアミノ酸配列の整合性は、類似の3D−構造を示唆する、該ペニシリンGアシラーゼ間の有意な相同性を表している。
本発明の1態様において、構造上アルカリゲネスフェカリス(Alcaligenesfaecalis)ペニシリンGアシラーゼと相同である、他のペニシリンGアシラーゼの対応する位置は、アルカリゲネスフェカリスペニシリンGアシラーゼ中の位置と相同の位置において、アルカリゲネスフェカリスと同様にして置換し得る。これらプロテアーゼの対応する位置は、第2図に示されたようなアミノ酸配置から得ることができる。第2図において、種々のアシラーゼのアミノ酸配列は、アルカリゲネスフェカリス(A.fae)のアシラーゼの配列に対して配置されている。
残基の選択は、ここではアルカリゲネスフェカリスペニシリンGアシラーゼの特定の例を使用して立証されるであろうが、相同性のために、類似の置換サイトを、他の種から得たペニシリンGアシラーゼ中で、選択することができる。この記載した方法は、この他の種から得たペニシリンGアシラーゼ中の対応する位置におけるアミノ酸置換後に、上記方法は類似の他のペニシリンGアシラーゼの変更された速度論的特性をもたらすであろう。「類似」とは、該置換が該速度論的パラメータ変化に及ぼす作用の種類を意味する。
本発明の一態様において、公知のペニシリンGアシラーゼ、例えばE.コリクルベラシトロフィラ(Kluvvera citrophila)、アルカリゲネスフェカリス(Alcaligenes faecalis)プロビデンシアレツゲリ(Providencia rettgeri)、およびアルスロバクタービスコシス(Arthrobacter viscosis)由来の、あるいはこのような酵素を生産する任意の他の生物由来のペニシリンGアシラーゼをコードする遺伝子は、該酵素がその基質に対して変更された特異性を獲得するように変異誘発される。
本発明の一態様において、構造上相同のペニシリンGアシラーゼ、例えばE.コリクルベラシトロフィラ(Kluvvera citrophila)、アルカリゲネスフェカリス(Alcaligenes faecalis)プロビデンシアレツゲリ(Providencia rettgeri)、およびアルスロバクタービスコシス(Arthrobacter viscosis)由来のペニシリンGアシラーゼをコードする遺伝子は、該酵素が変更された基質特異性または新規な特異性を獲得するように変異誘発される。
本発明において明らかにされた基質特異性における変化は、ペニシリンおよびセファロスポリン誘導体両者についてのVmax、およびKmの増減のあらゆる組み合わせを包含する。当業者は、このことが他の速度論的パラメータにおける変化を包含することを理解するであろう。更に、他の基質に対する特異性も、固有に変動するであろう。この基質特異性に関する提案された規則は記載された基質に制限されず、他の基質にも適用でき、特にアミノ酸のフェニルアセチルまたはフェノキシアセチル誘導体、アミノアルキルホスホン酸、一級および二級アルコール、セファミシン、ノカルディシン、モノバクタム、核酸、炭水化物、ペプチドにも適用される。
1−ペプチド鎖から活性ダイマーまで、ペニシリンGアシラーゼが成熟するメカニズムは、依然として曖昧であるので、本発明のもう一つの重要な局面は、該アシラーゼの成熟に影響を与えずに、ペニシリンGアシラーゼ中の活性サイト残基を置換することが可能である。
本発明の基礎は、タイプ-IIaペニシリンGアシラーゼに新規な特異性を補充する方法を提供することにある。点変異を導入するために、タンパク結晶学、分子設計およびコンピュータ処理法、酵素学および速度論、分子生物学およびタンパク化学技術に頼って、合理的な方法を採用する。ペニシリンGアシラーゼ中の標的となる変異の同定のための戦略は、点変異が一度に該タンパク構造の幾つかの異なる特性に影響する可能性があることを認識しているという意味で、革新的である。特に、幾つかの点変異は、適当な折り畳みまたは正確なプロセッシングを妨害し、結果として不活性な酵素を与える可能性がある。従って、記載される戦略は十分に確立された構造−関数関係を利用するが、該戦略はまた二次的な特性の望ましからぬ変更を回避し、もしくは修正する合理的な方法をも提供する。
本発明によれば、置換すべき特異的アミノ酸位置が、A.フェカリス由来のペニシリンGアシラーゼ分子中の入手可能な753位置内で同定されており、またこのような変異の、該酵素の特定の特性に及ぼす効果も明らかにされた。即ち、A139〜A152、B1、B2、B20〜B27、B31、B32、B49〜B52、B56、B57、B65〜B72、B154〜B157、B173〜B179、B239〜B241、B250〜B263、B379〜B387、B390、B455、B474〜B480が、該酵素の触媒的特性に関して重要な位置であるとして同定されている。種々の特定の残基が、基質特異性に関して重要なものとして、同定されている。これら残基は、A:Met143、A:Arg146、A:Phe147、A:Thr150、B:Pro22、B:Phe24、B:Gly25、B:Tyr27、B:Tyr31、B:Thr32、B:Pro49、B:Tyr52、B:Leu56、B:Phe57、B:Gly66、B:Ala67、B:Thr68、B:Ala69、B:Gly70、B:Pro71、B:Trp154、B:Val157、B:Met173、B:Ile175、B:Ser176、B:Ile177、B:Trp179、B:Asn239、B:Trp240、B:Thr251、B:Thr253、B:Tyr254、B:Tyr255、B:Trp256、B:Arg261、B:Met262、B:Asn379、B:Pro380、B:Gly381、B:Ser382、B:Ile383、B:Asn384、B:Lys390、B:Phe455、B:Thr477、B:Glu478を包含する。変異すべきものを包含する、これら位置の同定は、A.フェカリス由来のペニシリンGアシラーゼの3Dモデルに基づくものである(第4aおよび4b図参照)。
所定の特性を変更する残渣の選択手順。所定の特性とは変更された触媒特性、変更された特異性、改良された転移酵素活性である
酵素の速度論的特性を変更するための、サイト特異的変異の決定的な第一段階は、興味あるβ−ラクタム化合物と錯化された、目的のペニシリンGアシラーゼの3D構造モデルを得ることである。これは2つの方法によって、即ち直接的実験法または分子のモデル化を使用した間接的方法によって実施できる。
直接的方法
興味あるβ−ラクタム化合物と錯化された、目的のペニシリンGアシラーゼの3D構造をX-線回折法により決定する。しかしながら、特定のβ−ラクタム化合物が該特定のペニシリンGアシラーゼに対する基質である場合には、該化合物は、該構造決定実験中の、反応の生成物に転化されるであろう。このような場合、極定温結晶学が応用でき、あるいは高速データ−集積技術、例えばラウエ(Laue)回折を応用できる。公知の技術を利用して、該基質のフラグメントの結合が、該結合サイトを明らかにできる。別法として、該基質は、該構造中の切断可能な結合が、該酵素によって開裂できないように修飾することができる(例えば、ペプチド中のペプチド結合の代わりに、ホスホラミドまたはホスホネート結合にする、D.E.トロンラッド(Tronrud)等,Science,1987,235,pp.571-574)。しかしながら、エレガントな方法は、触媒残基の1種以上を置換して、該基質を転化できないが、依然として該基質と結合できる不活性な酵素を与えることである。例えば、ペニシリンGアシラーゼにおいて、β−サブユニットのN-末端セリンを変異してシステインとすることができる。該所定のβ−ラクタム誘導体と錯化された対象のアシラーゼの3D構造を実験的に得ることができない場合には、公知のコンピュータモデル化技術が応用できる。化学的修飾の研究およびサイト特異的変異誘発は、触媒活性にとって該β−サブユニットのN-末端セリンが必須であることを明らかにした。驚くべきことに、A.フェカリス由来のペニシリンGアシラーゼモデル中の利用可能な残基の計算は、該β−サブユニットのN-末端セリンの近傍に、深い疎水性の空洞が存在することを明らかにした。該空洞は、該ペニシリンGフェニルアセチル側鎖を完全に収容するが、PenGのペプチドカルボニルにおける求核物質の攻撃に対して、該β−サブユニットのN-末端セリンを理想的な位置に配置する。
次段階において、該β−ラクタム部分が配置されるが、そのフェニルアセチル基はその結合ポケット中に固定されたままである。基質と酵素との間の原子的重なりは、可能な限り回避され、かつ正の相互作用が最大とされる。結合に寄与する、関連する正の相互作用とは、水素結合、静電相互作用および好ましいファンデルワールス接触である。疎水性相互作用の寄与は、該基質を該酵素に結合することにより埋設される、利用可能な非−極性表面の計算に基づき評価できる。
更に、該基質計算技術の手動での操作を応用して、該基質−酵素錯体を最適化する。分子力学的技術、例えばエネルギー最小化および分子力学が極めて有用である。適当なタンパクに対する力場、例えばCVFF、AMBER、CHROMOSを利用できる。
該最終モデルは該PenG分子の環境を調査するのに使用される。この調査は該PenG分子と相互作用する残渣における、決定的な知見を提供する(実施例1参照のこと)。更に、これは、どの残基が、該基質のどの部分と相互作用するかについての知見を与える。この情報は、ペニシリンGアシラーゼの触媒特性を調節するのに利用できる該アシラーゼの全サイズ(753残基)と比較して、分子生物学者に限定された組の残基しか与えない。サイト特異的変異誘発の当業者は、今や限られた数の残基のみに注目し、これら残基を置換し、かつ所定の変更さた触媒特性を選別している。
一般的に、基質が遊離酵素に結合した場合、該結合は該酵素および該基質中に幾分かの歪みを生じる。このような歪みは、原子間の相互の位置をシフトすることを可能とする分子力学的計算によって緩和し得る。該遊離酵素と、該酵素−基質錯体との比較は、どの残基が基質結合によって最も影響されるかを指示するであろう。この局面において重要なパラメータは、該遊離酵素に対する残基のRMS位置シフト、該遊離酵素に対する残基の回りの静電的環境の変化、水素結合形成もしくは残基の自由エネルギー変化である。静電ポテンシャルはDELPHI(バイオシムテクノロジーズ(Biosym Technologies))等のプログラムを使用して計算できる。該基質の結合により影響される残基は、順に該基質の結合に影響を与えるであろうから、これら残基の置換は、タンパク構造におけるアミノ酸の置換に関する制限を考慮すると、本発明の好ましい態様である。回避すべき置換は、典型的な構造的配置、例えば塩橋、螺旋の充填、一螺旋の出発点(螺旋の開始)、例えば一螺旋の出発点であるプロリンの負電荷を保持することによる螺旋の安定化、挿入することになる該残基に対して許容された領域外の、Phi-psi角に影響を与えることが予想されるような置換である。
ある基質に対する活性を変更すべく提案された規則は、PenGに限定されず、他の基質に対しても適用できる。例えば、PenGの代わりに、セファロスポリン分子例えばCefGを採用することができ、これはPenGと共通のフェニルアセチル側鎖を有する。この場合、全モデル化手順を、上記のように繰り返すことができる。しかしながら、我々はコンピュータ内では、該7-ADCA部分の代わりに、該ペニシリンGアシラーゼと錯化されるPenG分子の6-APA部分を使用し、引き続き該構造を分子力学により改善することを好む。ペニシリンG−アシラーゼ錯体の構造と、該CefG−アシラーゼ錯体の構造との比較は、該基質の修飾により影響される残基を確定するであろう。PenGの修飾により影響を受ける残基は、順に該修飾された基質の結合を調節するであろう。このような残基の置換は、PenGに関するかかる修飾された基質の速度論的特徴を変更するための、好ましい態様である。
該基質の幾つかの修飾に関連して、この修飾によって生じた歪みが、該β−サブユニットのN-末端セリン求核物質に関する切断可能なペプチド結合の位置に影響を与えずに、緩和することは不可能であることが明らかとなった。このような場合、該β−サブユニットのN-末端セリン求核物質から、該切断可能な結合のカルボキシル炭素までの距離は、エネルギー最小化および分子力学処理中、2〜3Åの範囲内に制限される。その上、該アシラーゼのコンピュータによる変異誘発を実施して、該基質との望ましからぬ相互作用を減じ、かつ有利な相互作用を増大させる(関連する相互作用は既に上で論じた)。しかしながら、該修飾された基質の結合が望ましくなく、しかも禁止すべきである場合には、望ましからぬ相互作用は、サイト特異的変異誘発によって、このような位置においては増大する可能性さえある。この方法は、限られた数の変異を確立し、該変異は所定の方向における速度論的特性を変更するであろう。引き続き、このような限られた数の変異を所定の特性について実施でき、かつ該特性についてテストすることができる。
所定の修飾は、該PenG側鎖ベンゼンリングの、5-または6-員の炭化水素リング(例えば、シクロヘキサジエニル、シクロヘキセニル、シクロヘキシル)による置換を含む。該炭化水素リングは、場合によって1〜4個のヘテロ原子(N,OまたはS)を含有する5-員の複素環式基(例えば、チエニル、フリル)(この複素環式基は場合により置換されていてもよい)あるいは場合により置換されていてもよい脂肪属側鎖(例えば、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘプチル)で置換されている。側鎖は1以上の置換基をもつことができ、該置換基は例えばヒドロキシ、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基、ニトロ基、アミノ基等を包含するが、これらに制限されない。更に、該フェニルアセチル側鎖は、そのα−位で置換されていてもよく、これはD-またはL-立体異性体を与える。置換基は例えばヒドロキシ、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基、ニトロ基、アミノ基等を包含するが、これらに制限されない。立体異性体に関する、該アシラーゼの選択性に影響を与える残基を選択することは、本発明の好ましい態様の一つである。所定の側鎖の例は、例えば2-チエニルアセチル基、α−ヒドロキシフェニルアセチル、p-ヒドロキシフェニルアセチル、p-ヒドロキシフェニルグリシル、フェニルグリシル、サクシニル、グルタリル、アジピル、α−アミノアジピル等である。
β−ラクタム側鎖の修飾に加えて、β−ラクタム部分自体も修飾に付すことができる。上に例示した如く、該6-APA部分は7-ADCAで置換できる。代わりに7-ACAも採用できる。更に、該β−ラクタム部分は1またはそれ以上の位置で置換できる。特に、セファロスポリン類は、硫黄位置、3-位または4-位において置換基を含むことができる。例えば、該3-位はハロゲン原子、メトキシ、メチルまたはO、NまたはS等の架橋原子を介して有機部分または場合により置換されていてもよい5-または6-員の(複素)環式基に結合したメチレンで置換されていてもよい。該4-位においては、カルボン酸置換基が種々のカルボニル保護基で修飾されていてもよい。更に、この与えられた方法は、アシラーゼに対する構造上の要件を分析することをも可能とし、該アシラーゼはβ−ラクタム部分、例えばカルバペネム類、ノカルシジン類、モノバクタム類またはこれらから誘導される誘導体を転化できる。
生合成の目的にとって、該アシラーゼと所定の側鎖の反応性誘導体との相互作用は、調節できる。このような側鎖誘導体の有用な例はアルキルエステル、アミドおよびアシル化アミノ酸である。
本発明の方法は、タイプ-II ペニシリンGアシラーゼ中のこれらの位置を選択するのに利用できる。変更された速度論的特性をもつ酵素を与える、ペニシリン/セファロスポリンおよびその誘導体との相互作用に影響を与えるために、該位置において、アミノ酸を置換すべきである。位置特異的変異誘発は、限られた数の変異型を与え、該変異型は所定の基質の改善された転化について、容易にテストすることができる。このことは、莫大な数の変異体を与え、かつ取扱いが非常に困難であるランダム法とは正反対である。
物質および方法
変異誘発
変異アシラーゼ遺伝子を構築するために、重複拡張ポリメラーゼ連鎖反応を、本質的にホー(Ho)等(Gene,1989,77,pp.51-59)によって記載されたように利用した。変異オリゴを、フランキングオリゴと組み合わせて使用して、所定の変異を含む、DNA増幅生成物を発生させた。この変異体DNAフラグメントを、野性型遺伝子、例えばpMcAFの対応する制限フラグメントと交換した。これら変異体オリゴは、単一のおよび複数の変異を含むように設計された。
クローン化DNAフラグメントのサイト特異的変異誘発は、またプラスミドpMa/c系を使用して、スタンセン(Stanssen)(スタンセン等,Nucleic Acid Res.,1989,17,pp.4441-4454)により記載されたように実施することも可能である。アシラーゼ遺伝子の適当にギャップをもたせた二重螺旋分子を構築した。特定のミスマッチオリゴヌクレオチドによって、サイト特異的変異を導入した。アシラーゼ遺伝子の発現は、E.コリWK6内の、相同性発現シグナルまたは該E.コリのlac、tacまたはtrpプロモータから得られた(ドゥベール(De boer)等,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1983,80,pp.21-25)。該ギャップのあるDNAの「スパイク(Spiked)」オリゴ変異誘発およびランダム変異誘発はEP-453048に記載のように実施した。
PCR重複拡張およびギャップをもたせた二重螺旋法両者を、もう一つの型の変異誘発、即ち標的ランダム変異誘発(TRM)と組み合わせた。この変異誘発法は、該オリゴヌクレオチドの合成中に、特定のアミノ酸に対するコドンにおける2またはそれ以上の塩基の封入を含む。これを実施するに際して、選択されたコドンにおけるあらゆる可能な他のアミノ酸を発生し得る、変異原性オリゴヌクレオチドを合成することができる。単一のアミノ酸位置または幾つかの位置はこのようにして変異誘発することができる。
選択培地
フェニルアセチルL-ロイシンに対する選択培地(“fal”)は、ガルシア(Garcia)(ガルシア等,J.Biotech.,1986,3,pp.187-195)により記載されたように調製した。最少平板培養培地は以下の通りである。即ち、M63 最少寒天培地、2g/lのグルコース、1mg/lのチアミン、10mg/lのL-プロリンおよび適当な抗生物質(50μg/mlのクロラムフェニコール(cap)または25μg/mlのアンピシリン(amp))を含む。アシラーゼの側鎖特異性(例えば、フェニルアセチル、フェノキシアセチル、フェニルグリシル、p-ヒドロキシフェニルグリシル、アジピルまたはα−アミノアジピル)に基づく選別のために、100μg/lの対応するアシルL-ロイシンを最少平板培養培地中に含めた。該アシルL-ロイシンの存在下で排他的に成育するE.コリHB101(Leu-)の形質転換体または変異体は、所定の選択性をもつアシラーゼ遺伝子を含むと考えられる。ロイシン以外に、該選択基質のアミノ酸部分をも変えることができる。このような場合、E.コリの適当な栄養要求性変異体が選別のために利用された。例えば、該基質N-アジピル-L-ロイシンについての選別は、宿主としてE.コリ菌株PC2051を使用して実施した(オランダ国、ユトレヒト、ファバゲン(Phabagen,Utrecht,the Netherlands)から入手した)。特定のスクリーニング用基質はオランダ国、トランスファービューロニーメゲン(Transferbureau Nijmegen,the Netherlands)のLGSSから購入した。
フェニルアセチルアミドを、最終濃度15mMまで、最少培地M63に添加した。ここで、該最少培地には、炭素源としての0.2%の琥珀酸塩、グリセロールまたはグルコース、およびチアミン(1μg/ml)、L-プロリン(10μg/ml)および適当な抗生物質が補充されている。該基本培地中の全ての塩は、Na+またはK+のいずれかを含有する対応する塩で置換して、該アミド上での選択的な成育を保証した。所定の側鎖をもつアミドは、商業的な供給元から購入するか、あるいは標準的な技術に従って調製した。E.コリ菌株JM101、WK6、HB101、PC2051およびPC1243を宿主として使用して、該選択アミドについて特異性をもつ変異体遺伝子を選別した。
野性型および変異体アシラーゼの単離並びに精製
細胞を遠心処理によって収穫し、140mMのNaClを含有するpH7.4の10mM燐酸ナトリウムバッファー中に再懸濁した。これらの細胞を超音波照射により破壊した(6x20,100W,100mmバール,ラブソニック(Labsonic)1510、各20毎に該細胞を氷上で30秒間冷却した)。引き続き、この懸濁液を遠心処理した。該超音波照射処理を、該再懸濁されたペレットについて繰り返し、かつ最後に細胞デブリスを遠心処理によって除去した。限外濾過により該上澄を、ミリ-Q(milli-Q)水で、次にQ-セファロース用の出発バッファー(20mMのNaH2PO4・H2O,pH7.0+アジド)で徹底的に洗浄した。フィルター系はベルダー(Verder)ポンプを備えたフィルトン(Filton)によって供給した。該フィルタの遮断分子量は5kDaである。限外濾過後、該サンプルを、電導度が該出発時のバッファーの値と等しいか、それ以下となるまで、ミリ-Qで希釈した。
このサンプルを、20mMのNaH2PO4・H2O,pH 7.0+0.02% アジド(電導度=2.60mS)で平衡化したQ-セファロースカラムに適用し、流量20ml/分で稼働した。該カラムを十分に出発バッファーで洗浄した後、勾配溶出(50分乃至100%20mMNaH2PO4・H2O+0.5M NaCl pH 7.0 +0.02% アジド)を開始した。波長280nmにて検出した。次の段階において、該アシラーゼを、10mM NaH2PO4・H2O+10μm CaCl2 +0.02%アジド pH 6.8で平衡化した、ヒドロキシルアパタイト(HA-ウルトラゲル(ultragel)IBF)上で更に精製した。このカラムは4ml/分にて稼働する。該アシラーゼは平衡化バッファー中に溶出する。このカラムは350mM NaH2PO4・H2O+10μm CaCl2 +0.02%アジドpH 6.8で再生される。極めて純粋なタンパクが必要とされる場合には、該第一のカラム処理段階を、より長いカラムを使用して繰り返す。
タンパク濃度
単離並びに精製中の全タンパク含有率は、BSAを標準物質とするブラッドフォード(Bradford)法を利用して測定した。純A.フェカリスペニシリンGアシラーゼのタンパク濃度は、280nmにおけるモル吸光係数から算出できる。このモル吸光係数は該アミノ酸組成を使用して計算された。この計算されたモル吸光係数は、161210M-1cm-1であり、これは光路長1cm、1mg/mlに対して、1.87のODに相当する。
該野性型酵素の触媒中心の濃度は、種々の濃度でイソプロパノールに溶解したフェニルメチルスルホニルフルオライド(PMSF)でペニシリンアシラーゼを滴定することにより測定した。更に、該最終的なアシラーゼサンプルのアシラーゼ含有率は、分析用逆相クロマトグラフィーカラム:RP300 7μ 20X2.1mmを使用して測定した。注入体積は5μlであった。該タンパクを、100%A(水)から出発し、45分内に80%B(70%アセトニトリル−水)まで変化させた線形の勾配を使用して溶出した。該アシラーゼは、αおよびβサブユニットに対応する2つのピークとして溶出する。活性サイト滴定実験から計算された該サンプルのアシラーゼ含有率は、HPLCデータから算出されたアシラーゼ含有率と一致するので、PMSFによって十分には滴定されなかったアシラーゼ変異体を、RP-HPLCに適用して、該アシラーゼ含有率を測定した。
ペニシリンアシラーゼ活性を、基質としてNIPABを使用してアッセイした。
酵素アッセイ
酵素活性を測定するために、該アシラーゼを室温にて緩衝溶液中で、基質と共にインキュベートした。β−ラクタマーゼ不純物が該酵素処方物中に存在することが予想される場合には、該アッセイ液中に1.0mMのβ−ラクタマーゼ阻害剤としての6-ブロモペニシラン酸を添加した。この反応を、PMSFの添加によって停止した。PMSF阻害に対して低感度である幾つかの変異体については、pHが3〜4の範囲内となるまで、0.5MのHClまたは0.5Mの酢酸を添加することにより、該反応を停止させた。これら反応を、後にHPLCにより分析し、該反応を対応する溶出溶媒(第1表参照)で希釈することにより停止させた。更に、基質は酵素の不在下で、アッセイ条件下でインキュベーションした。必要ならば、アッセイを酵素以外の加水分解について補正した。
これら反応混合物の組成は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定した(第1表)。濃度は既知濃度の標準物質を使用することにより測定した。
Figure 0004147319
低濃度における、6-APA、7-ACAまたは7-ADCAの形成はフルオレサミンを使用した滴定によって測定した。濃度は、390nmでの励起後の475nmにおける蛍光を測定することにより決定した。更に、6-APA、7-ACAおよび7-ADCAの濃度は、p-ジメチルアミノベンズアルデヒドを使用した指示反応を利用して測定した。シッフ塩基の生成を415nmにて追跡した(K.バラシンガム(Balasingham)等,Biochimica et Biophysica Acta,1972,276,pp.250-256)。
連続的なアッセイにおいて、ペニシリンGアシラーゼは、色原性基質NIPAB[6-ニトロ-3-フェニルアセタミド−安息香酸〕を使用して、分光光度法的にアッセイした。3-アミノ-6-ニトロ安息香酸の遊離は、コントロン(Kontron)610速度論的分光光度計で405nmにおける吸光度を測定することにより追跡した。最大速度を測定して、該アッセイを25℃にて、pH 7.5の20mM NaH2PO4・H2Oを20mMのNIPABおよび100μlの酵素溶液(適当な希釈率で)と共に使用して実施した。初期速度の測定は、NIPABの変動する濃度を使用して実施した。
PenG、PenV、CefGの酵素を使用した加水分解の速度論をも、ラジオメータ(Radiometer)pH−スタットを使用して、アルカリ滴定(0.01M KOH)により研究した。全ての実験はバッファーを含まない媒体中で実施した。
初期速度測定は、該酵素よりも過剰の基質を使用して実施した。触媒パラメータは、ミカエリス−メンテンの式に従って、種々の基質濃度に対してプロットした、実測初期速度の最小自乗法により導かれた。
スクリーニングにおいて使用されたアシル化L-アミノ酸の脱アシル化は、該アシルアミノ酸と酵素とをインキュベーションすることにより実施した。引き続きこの脱アシル化されたアミノ酸を、o-フタルアルデヒドおよびメルカプトエタノールとの反応に基づいた方法により標識し、逆相HPLCを利用して定量化した。
合成反応は、pH−スタットまたは緩衝溶液中で実施した。使用した典型的な条件は、10mM PGA、pH 7.0、30℃および30Mm 6-APAであった。生成物はHPLCにより分析し、かつ定量した。
これらのアシラーゼをテストした該反応条件は、種々のパラメータ、特に該試薬、反応時間、温度および酵素濃度に依存する。当業者は、好ましい条件を容易に決定することができる。一般的に、反応温度は0〜40℃の範囲内で変えることができる。
本発明の変異体アシラーゼの適用により製造できる、半合成β−ラクタムの例は、アモキシシリン、アンピシリン、セファクロール、セファドロキシル、セフプロジル、セファレキシン、およびセファラジンである。
アシル化剤はD(-)-フェニルグリシン、D(-)-4-ヒドロキシフェニルグリシン、またはD(-)-2,5-ジヒドロ−フェニルグリシンの誘導体、例えば-CONH2基内で置換されていない、低級アルキル(メチル、エチル、n-プロピルまたはイソプロピル)エステルまたはアミド等であり得る。
一般的に、本発明の方法の反応温度は、0〜35℃の範囲内で変えることができる。
実施例
実施例1:ペニシリンGアシラーゼ中のペニシリンGの環境を検査する:PenG錯体および残基位置の同定、これらはペニシリンGアシラーゼの触媒性能に影響を与える
A.フェカリスペニシリンGアシラーゼ活性サイトの、溶媒が近づき得る表面はコノリー(Connolly)アルゴリズムを利用して算出した。そのプローブのサイズは1.4Åであった。モレキュラーグラフィックス(Molecular Graphics)を利用した利用可能性の輪郭の描写は、溶媒に近づき得る該β−サブユニットのN-末端セリン近傍における、深い疎水性の空洞の存在を明らかにした。コンピュータのたすけを借りたドッキング実験は、該フェニルアセテートが完全にこの空洞に適合することを示した。該フェニルアセテートを該空洞に配置した後、該β−サブユニットのN-末端セリンは、PenGのペプチドカルボニルにおける求核攻撃に対して理想的な位置にある。
後の工程で、該β−ラクタム部分は、該フェニルアセチル基を結合ポケットに固定した状態を維持しつつ、配置される。基質と酵素との間の原子の重なりをできる限り回避し、一方で正の相互作用を最大にする。結合に寄与をもつ、関連した正の相互作用は、水素結合、静電相互作用および好ましいファンデアワールス接触である。疎水性相互作用は、該基質と該酵素とを結合することにより埋設される、利用可能な非−極性表面から評価した。
該基質の手動による取扱いの後に、付随的な計算技術を応用して、該基質−酵素錯体を最適化した。該錯体のエネルギー最小化および分子力学はCVFF力場〔バイオシムテクノロジーズ(Biosym Technologies)]を利用して実施した。最小化は幾つかの別々の段階で実施した。最小化は、第一の派生エネルギーが0.01kcal/mol未満であった場合には停止した。
−まず、該錯化したPenG基質を、該アシラーゼ原子を固定したままで、最小化した。セリンB1 0GからPenGの切断可能なカルボニル炭素までの距離は、2〜3.5Åの範囲内に制限された。如何なる変化も考えられなかった。
−次いで、該アシラーゼの水素原子を運動させた。
−引き続き、該PenG基質の12Å以内に少なくとも1個の原子をもつ側鎖は、シフト可能であるが、骨格は依然として固定された状態にある。セリンB1 0GからPenGの切断可能なカルボニル炭素までの距離は、依然2〜3.5Åの範囲内に制限された。如何なる変化も考えられなかった。
−該側鎖の最適化後には、主鎖も運動可能であった。第一の運動は該主鎖の原子の束縛の故に制限された。徐々に該束縛力を緩和した。
かくして得た初期モデルを、該PenG分子の環境を分析するのに使用した。第4a図は、該PenG基質のフェニルアセテート部分の該結合サイトを形成する残基を示している。関与する連鎖セグメントはA139〜A152、Bl、B2、B20〜B25、B31、B32、B49〜B52、B56、B57、B65〜B72、B154〜B157、B173〜B179、B239〜B241、B476〜B480を含む。第2表は該PenGフェニルアセチル部分から8Å以内に少なくとも1個の原子をもつ残基を概説している。この概説は、該ペニシリン分子の該側鎖部分と相互作用する残基に関する知見を与える。触媒作用に必須の残基は置換すべきではない。というのは、置換は著しく不完全なもしくは不活性のアシラーゼに導くからである。これらの残基はB:Ser1、B:Gln23、B:Asn241を含む。
ペニシリン側鎖を結合するのに特に興味のある、A.フェカリスペニシリンGアシラーゼ中の残基は、A:Met143、A:Phe147、B:Pro22、B:Phe24、B:Tyr31、B:Thr32、B:Pro49、B:Tyr52、B:Leu56、B:Phe57、B:Gly66、B:Ala67、B:Thr68、B:Ala69、B:Gly70、B:Pro71、B:Trp154、B:Val157、B:Met173、B:Ile175、B:Ser176、B:Ile177、B:Trp179である。
更に、該β−ラクタム部分6-APAの環境をマッピングした。第3表は、該PenG6-APA部分中のある原子から、8Å以内に少なくとも1個の原子をもつ残基を概説している。第4b図は、該PenG基質の該β−ラクタム部分の結合サイトを形成する残基を示している。関与する連鎖セグメントはA146〜A150、B21〜B27、B71、B250〜B263、B379〜B387、B390、B454〜B456、B474〜B477を含む。第4b図は、該β−ラクタム部分の回りの残基に注目した、A.フェカリスペニシリンGアシラーゼ活性サイトを示す。
該ペニシリンβ−ラクタム部分を結合するのに特に興味ある、A.フェカリスペニシリンGアシラーゼ中の残基はA:Arg146、A:Phe147、A:Thr150、B:Gly25、B:Tyr27、B:Ala69、B:Pro71、B:Thr251、B:Thr253、B:Tyr254、B:Tyr255、B:Trp256、B:Arg261、B:Met262、B:Asn379、B:Pro380、B:Gly381、B:Ser382、B:Ile383、B:Asn384、B:Met387、B:Lys390、B:Thr477、B:Glu478である。
Figure 0004147319
Figure 0004147319
Figure 0004147319
Figure 0004147319
実施例2:アシラーゼに対する変異誘発/発現ベクターの構築
組み合わせた変異誘発/発現ベクターの構築用の出発物質として、既に記載したプラスミドpMcTAFNde(EP-453048)を使用した。pMcTHdeとpAF1とから構築されたこのベクターは、アルカリゲネスフェカリス由来の完全なペニシリンアシラーゼ遺伝子を含む。有利なギャップのある二重螺旋分子の構築を簡略化し、かつPCR重複拡張フラグメントの交換を容易にするために、3種の新規な固有の制限サイト、即ちEcoRV(位置5239)、Nsil(位置5972)およびClal(位置6420)を、コード情報を変えることなしに挿入した。第5図に示されているかくして得られたベクターpMcAFを使用して、変異体アシラーゼ遺伝子を構築した。この変異体アシラーゼは、提供されたtacプロモータの誘導の下で、E.コリWK6 HB101 laqIq内で生成した。
実施例3:A.フェカリスアシラーゼの変異誘発
選択された位置において、前に説明した該PCR重複拡張法を利用して、アミノ酸変異を発生させた。各サブユニット(AまたはB)中のアミノ酸位置は、以下の第4表に示されている。この構築に使用するオリゴヌクレオチドもこの表に与えられている。位置A143およびB67、B68、B69において、ランダム化したコドンをもつオリゴを使用したことに注意すべきである。
実施例4:E.コリの適当な栄養素要求体を使用した、ペニシリンアシラーゼのサイト特異的変異体の、正確な折り畳みおよび翻訳後のプロセッシングについてのアッセイ
同定された変異アシラーゼ遺伝子を含む、E.コリWK6 HB101 laqIq細胞を、選択培地を含有する寒天平板上でテストした。
フェニルアセチルL-ロイシン(“fal”)に対する選択培地をガルシア(上記した文献)が記載したようにして調製した。最少平板は、M9最少寒天培地、1mg/lのチアミン、10mg/lのL-プロリン、0.2mMのIPTGおよび適当な抗生物質(50μg/mlのクロラムフェニコール(cap)または75μg/mlのアンピシリン(amp))を含む。ペニシリンアシラーゼの発現に関する、文献から入手できるデータは、該鎖の適正な折り畳みおよび翻訳後のプロセッシングが、触媒的に成熟したペニシリンアシラーゼを得る上で必須のファクタであることを示している。該変異ペニシリンアシラーゼが活性アシラーゼとして適正に発現されるか否かを確認するために、200μg/mlのアシルL-ロイシンを最少平板培地に含めた。このフェニル−アセチル−L-ロイシンの存在下で排他的に成育するE.コリHB101(Leu)の形質転換体または変異体は、適正にペニシリンアシラーゼ遺伝子を発現する活性をもつと考えられる。第5表に、幾つかの選択された変異体に関する結果を示す。
更に、この方法は、変更された特異性をもつアシラーゼについての初期の大雑把なスクリーニングのために利用できる。アシラーゼの側鎖特異性に基づく選別のために、所定のアシルL-ロイシン200μg/mlを、最少平板培地に含めた。このアシル部分が野性型のペニシリンアシラーゼにより識別されない場合には、該所定のアシル−L-ロイシンの存在下で排他的に成育するE.コリHB101(Leu)の軽質転換体または変異体は、所定の特異性(例えば、グルタリル-L-ロイシン)をもつアシラーゼ遺伝子を含むと考えられる。このような選択用の基質は、α-D-アミノアジピルロイシン、アジピルロイシンおよびグルタリルロイシンである。これらの化合物は、オランダ国のトランスファービューロニーメゲンのLGSSから購入した。
Figure 0004147319
Figure 0004147319
野性型がアシル基に対して低い活性をもつ場合、高い活性をもつ変異体が、野性型と、該変異体により生成されるハローのサイズを比較することにより、この方法で取り出すことができる。有用な側鎖はフェノキシアセチル、p-ヒドロキシフェニルグリシル、フェニルグリシルである。
Figure 0004147319
ロイシンに代えて、選択用基質のアミノ酸部分を種々変更することができる。このような場合、適当なE.コリの栄養素要求変異体を選別のために使用した。代用品として該アシル部分のアミドも選別用の化合物として有用である。側鎖アミド(例えば、フェニルアセチルアミド、グルタリルアミド、アジピルアミド、α-D-アミノアジピルアミド)を、最終濃度15mMまで、最少M9培地に添加した。該最少培地には、0.2%のサクシネート、グリセロールまたはグルコースの何れかを炭素源として、またチアミン(1μg/ml)、L-プロリン(10μg/ml)、0.2mMのIPTGおよび適当な抗生物質が補充されている。
該基本培地中の全てのアンモニウム塩を、Na+またはK+イオンの何れかを含有する対応する塩で置換して、該アミド上での選択的成育を保証する。所定の側鎖をもつアミドは、商業的供給者から購入するか、あるいは標準的な技術に従って調製した。E.コリ菌株JM101、WK6およびHB101を宿主として使用して、該選別アミドに対する特異性をもつ変異遺伝子を選別した。
実施例5:ペニシリンアシラーゼの標的ランダム変異体に関するアッセイ
TRM変異誘発の場合には、変異体のプールを、DNA配列決定の前に、選択用の平板培地上に配置した。該選択培地の1種以上の上で成育したコロニーのみを特徴付けした。2TRM変異誘発実験の結果を以下の第6表に示す。
Figure 0004147319
実施例6:高い特異的活性および変更された特異性
A.フェカリスPenGアシラーゼ変異体の触媒パラメータを、種々の基質について測定した。該変異体に関する変更された特異性を、第7および8表に例示した。野性型と比較すると、該変異体A: M143VおよびB:L56Kは、PenVおよびCefGの脱アシル化に対する高い代謝回転率を示す。A: F147Yは、D-フェニルグリシンアミドの脱アミド化で使用した場合に、野性型と比較してより高い活性をもつ。
高い基質濃度(これは多くの工業的転化工程における通常の情況である)において、該アシラーゼは基質で完全に飽和され、結果としてその転化は最大の速度で進行するであろう。第6図には、幾つかの基質に対する最大速度を、野性型A.フェカリスアシラーゼおよび幾つかの変異体に対してプロットしてある。速度はPenGに相対的な尺度とされており、従ってPenGのVmaxが1に設定されている。野性型のPenGアシラーゼは、予想されるようにPenGに対して最大の活性を示す。しかしながら、置換A:M143Vは、該酵素をCefGアシラーゼに変え、一方で置換A:F147Yは該酵素を、D-フェニルグリシンアミド((D)PGA)の脱アミド化用の強力なアミダーゼに変える。更に、A:F147Yの脱アシル化速度は、PenGに対するよりもNIPABおよびアンピシリンに対してより高い。第7図において、所定の基質に対して、変異体B:L56G、B:L56A、B:L56V、B:177V、BI177S、B:A67S、B:A67Gについて測定したVmax値を、第6図において実施した方法と同様な方法で、PenGに対するVmax値と比較する。特異性は野性型と相対的にシフトした。例えば、変異体B:I177Sはアンピシリンに対する低い脱アシル化速度と、D-フェニルグリシンアミド((D)PGA)に対する改良された活性を呈する。
一般的に、2つの競合する基質間の識別という意味での、酵素の特異性または選択性は、該2種の基質の比:Vmax/Km(またはkcat/Km)を比較することにより決定される。第9表において、この比を種々の基質の組み合わせについて比較した。特に、該A:F147Y変異体の(D)PGAに対する特異性の著しい増加が目立つ。
Figure 0004147319
Figure 0004147319
Figure 0004147319
実施例7:PenGアシラーゼの改良された立体特異性
野性型のA.フェカリスおよびE.コリPenGアシラーゼは、α−炭素置換側鎖を有するペニシリンのDエナンショマーに対する選択性を示す。例えば、アンピシリン、セファレキシン、アモキシシリン、セファドロキシルおよびセファクロールが挙げられる。ペニシリンGアシラーゼの高い立体特異性が、キラル化合物のラセミ混合物を使用した転化において、改善されたエナンショマー過剰状態をもたらす如き、ペニシリンGアシラーゼを得るために望ましい。このような特性は、該ペニシリンGアシラーゼを、以下の合成に対して極めて有用なものとする。即ち、エナンショマー的に純粋な半合成抗生物質の、α−炭素置換フェニルアセチル側鎖をもつ化合物のラセミ混合物またはα−炭素置換フェニルアセチル側鎖をもつ化合物の活性化された誘導体(例えば、フェニルグリシン−アミドまたはエステル、p-ヒドロキシフェニルグリシン−アミドまたはエステル)からの合成。該原料物質はアミノ基(例えば、アンピシリン、セファレキシン、アモキシシリン、セファドロキシル、セファクロール)またはヒドロキシル基(セファマンドール)の存在のために、キラルα−炭素を含有する。
第10表は、フェニルグリシンアミドに対して、野性型のPenGアシラーゼが、そのDエナンショマーに対して選択性を示すことを明らかにしている。DおよびLフェニルグリシンアミドのラセミ混合物に対して、VD/VLは(Vmax/KmD-PGA/(Vmax/KmL-PGAに等しく、ここでVDおよびVLはそれぞれDおよびLエナンショマーの脱アミド化の速度を表す。野性型のA.フェカリスに関する限り、該Dエナンショマーの脱アミド化速度は、該Lエナンショマーの脱アミド化速度の5倍も速い。変異体A: F143Yについては、(Vmax/KmD-PGA/(Vmax/KmL-PGAで表される立体選択性が、5.10から36.52に増大した。このことは、Dエナンショマーの脱アミド化速度は、野性型に関する僅かに5.10倍ではなく、L型に対して36.52倍も迅速である。
Figure 0004147319
実施例8:低い生成物阻害
NIPASの完全転化を、405nmでの吸収の増加を追跡することにより、濃度20、50および100μM NIPASにおいて、時間の関数として監視した。この転化による生成物はフェニル酢酸と3-アミノ-6-ニトロ安息香酸である。この転化はpH7.5の0.lM NaH2PO4・H2Oバッファー中で、25℃にて実施した。NIPASの脱アシル化の進行曲線は、フェニル酢酸による生成物阻害を考慮した場合には、十分に適合させることができた。該進行曲線から導くことができる、フェニル酢酸に対する解離定数(通常阻害定数Kiと呼ばれる)は第11表に示されている。生成物阻害に対して余り敏感でない幾つかの変異体の利点を、第12表に示す。これらの変異体に対して、決められた時間内の転化収率は野性型に対する値よりも高い。更にまた、ある収率を達成するために、該変異体についてはより短い転化時間が必要とされる。
PenGの転化は、通常200mM程度に高い濃度にて実施する。PenG単位の同一の量を使用して、該変異体A:M143Vは、20分以内に転化収率90%を達成でき、一方で野性型はこの時間内に84%近傍である。
Figure 0004147319
Figure 0004147319
実施例9:変更モル比、即ちアミノリシス/加水分解:PenGアシラーゼを使用した、(D)フェニルグリシンアミド(D-PGA)および6-APAからのアンピシリンの合成
(D)フェニルグリシンアミド(D-PGA)および6-APAを含有する緩衝された溶液に、PenGアシラーゼ野性型または変異体を添加した。種々の時間間隔で、サンプルを分析し、該サンプルの組成を、実験部分に記載した方法に従って測定した。結果を以下の第13および14表に示す。幾つかの変異体は改善されたモル比アミノリシス/加水分解を示した。
Figure 0004147319
Figure 0004147319

Claims (10)

  1. アルカリゲネスフェカリスペニシリンGアシラーゼのαサブユニットのM143VおよびF147Y、ならびにβサブユニットのL56K、L56V、L56A、L56G、A67G、I177S及びI177V、の1またはそれ以上のアミノ酸置換、またはその前酵素もしくはプレプロ酵素中の対応するアミノ酸置換、および
    対応する野性型無置換ペニシリンGアシラーゼに対して相対的に変更された基質特異性または変更された比活性
    を有することを特徴とする、単離された変異原核生物のペニシリンGアシラーゼまたはその前酵素もしくはプレプロ酵素。
  2. 該アシラーゼがアルカリゲネスフェカリス由来のものである、請求の範囲第1項に記載の変異アシラーゼ。
  3. αサブユニットのM143VおよびF147Y、ならびにβサブユニットのL56K、L56V、L56A、L56G、A67G、I177S及びI177V、の1またはそれ以上のアミノ酸置換をもつ、請求の範囲第2項に記載の変異アシラーゼ。
  4. 請求の範囲第1〜3項の何れか1項に記載した変異アシラーゼをコードする核酸。
  5. 宿主細胞内での請求の範囲第4項に記載の核酸の発現を指示できるプロモータ配列に機能可能に結合された前記核酸を含むことを特徴とする、発現ベクター。
  6. 請求の範囲第5項に記載の発現ベクターにより形質転換された微生物。
  7. セファロスポリウム属またはペニシリウム属の微生物である、請求の範囲第6項に記載の微生物。
  8. 請求の範囲第1〜3項の何れか1項に記載の単離された変異アシラーゼの製造法であって、
    請求の範囲第6項または7項に記載の微生物を培養して、該変異アシラーゼを生成し、該アシラーゼを単離する工程を含むことを特徴とする、上記方法。
  9. 6-アシル化ペニシラン酸、7-アシル化(デアセトキシ)セファロスポラン酸またはその塩もしくはエステルを脱アシル化して、それぞれ対応する6-アミノペニシラン酸または7-アミノ(デアセトキシ)セファロスポラン酸を製造する方法であって、該6-アシル化または7-アシル化化合物を、脱アシル化を生ずるのに適した条件下で、請求の範囲第1〜3項の何れか1項に記載の変異アシラーゼと接触させる工程を含むことを特徴とする、上記方法。
  10. 半合成6-アシル化ペニシラン酸、7-アシル化(デアセトキシ)セファロスポラン酸またはその塩もしくはエステルの製造方法であって、
    それぞれ対応する6-アミノまたは7-アミノβ−ラクタムまたはその塩もしくはエステルおよび
    アシル化剤を、
    アシル化を生ずるのに適した条件下で、請求の範囲第1〜3項の何れか1項に記載の変異アシラーゼと接触させる工程を含むことを特徴とする、上記方法。
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