JP4145466B2 - 合成樹脂エマルジョン粉末 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、合成樹脂エマルジョン粉末に関し、さらに詳しくは、1,2−グリコール結合を1.7モル%以上有するビニルアルコール系重合体を分散剤とし、エチレン性不飽和単量体及びジエン系単量体から選ばれる1種あるいは2種以上の単量体単位を有する合成樹脂エマルジョンを粉末化した合成樹脂エマルジョン粉末に関する。
【0002】
【従来の技術】
合成樹脂エマルジョン粉末は、合成樹脂エマルジョンを噴霧乾燥することにより製造され、合成樹脂エマルジョンに比べて粉末であることにより、取り扱いおよび輸送の点で優れている。また、使用に際しては、水を添加し、攪拌することにより容易に水中に再分散するため、セメントあるいはモルタルへの混入剤、接着剤、塗料用バインダーなどの広範な用途に使用されている。
しかしながら従来の合成樹脂エマルジョンでは、それをそのまま噴霧乾燥した場合には、分散質が容易に融着し、水に再分散しないため、多量のポリビニルアルコールを後添加し、さらにはブロッキング防止剤として無水珪酸等の無機粉末を多量に併用する必要があるのが現状であった。ポリビニルアルコールあるいは無機粉末を多量に後添加することで再分散後のエマルジョンはその性能が粉末化前に比べ大幅に劣る問題点があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、前述の問題点を解決し、耐ブロッキング性、再分散性に優れ、再分散させた後の耐水性、放置安定性などに優れた合成樹脂エマルジョン粉末を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の実情に鑑み、鋭意検討した結果、1,2−グリコール結合を1.7モル%以上有するビニルアルコール系重合体の存在下で、エチレン性不飽和単量体及びジエン系単量体から選ばれる1種あるいは2種以上の単量体を乳化重合したエマルジョンを噴霧乾燥して得た合成樹脂エマルジョン粉末が、優れた水への再分散性、耐ブロッキング性を有し、かつ再分散したエマルジョンは、耐水性、放置安定性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の合成樹脂エマルジョン粉末について詳細に説明する。
本発明の合成樹脂エマルジョン粉末において、分散質を構成するエチレン性不飽和単量体としては、エチレン、プロピレン、イソブテン等のオレフィン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化オレフィン類、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ピバリン酸ビニル等のビニルエステル類、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル等のメタクリル酸エステル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類、酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物、スチレン、α−メチルスチレン、P−メチルスチレンスルホン酸およびそのナトリウム、カリウム塩等のスチレン系単量体類、トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロライド、3−アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、3−メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、N−(3−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)ジメチルアミンの4級アンモニウム塩、N−(4−アリルオキシ−3−ヒドロキシブチル)ジエチルアミンの4級アンモニウム塩さらにはアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等の4級アンモニウム塩、メタクリル酸ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリル酸ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、N−ビニルピロリドン等が挙げられ、またジエン系単量体としては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。これらの単量体のうち単独もしくは二種以上の重合体または共重合体が分散質として使用される。これらの分散質のうち、ビニルエステル系単量体単位を有する重合体、特にポリ酢酸ビニル、さらにはビニルエステル系単量体およびエチレン単位を有する共重合体、特にエチレン-酢酸ビニル共重合体が好適に用いられる。
【0006】
本発明の合成樹脂エマルジョン粉末に用いる水性エマルジョンの分散剤として使用される1,2−グリコール結合を1.7モル%以上有するビニルアルコール系重合体の製造方法としては特に制限はなく、公知の方法が使用可能である。一例としてビニレンカーボネートを上記の1,2−グリコール結合量になるようビニルエステルと共重合した後、けん化する方法、またはビニルエステルを通常の条件より高い温度、例えば75〜200℃で、加圧下に重合した後、けん化する方法などが挙げられる。後者の方法において、重合温度は90〜190℃であることが好ましく、100〜180℃であることが特に好ましい。1,2−グリコール結合の含有量は1.7モル%以上であることが必要であり、より好ましくは1.75モル%以上、さらには1.8モル%以上、最適には1.9モル%以上である。1,2−グリコール結合の含有量が1.7モル%未満の場合、得られる粉末エマルジョンの再分散性が低下する懸念が生じる。また、1,2−グリコール結合の含有量は4モル%以下であることが好ましく、さらに好ましくは3.5モル%以下、最適には3.2モル%以下である。ここで、1,2−グリコール結合の含有量はNMRスペクトルの解析から求められる。
【0007】
また、ここで、ビニルエステルとしては、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなどが挙げられるが、一般に酢酸ビニルが好ましく用いられる。
【0008】
また、該分散剤は本発明の効果を損なわない範囲で共重合可能なエチレン性不飽和単量体を共重合したものでも良い。このようなエチレン性不飽和単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、(無水)マレイン酸、イタコン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびそのナトリウム塩、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ビニルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、N−ビニルピロリドン、 N−ビニルホルムアミド、 N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルアミド類が挙げられる。また、チオール酢酸、メルカプトプロピオン酸などのチオール化合物の存在下で、酢酸ビニルなどのビニルエステル系単量体を重合するか、またはビニルエステル系単量体とこれと共重合可能なエチレン性不飽和単量体とを共重合し、それをけん化することによって得られる末端変性物も分散剤として用いることができる。
【0009】
本発明の合成樹脂エマルジョン粉末に用いる水性エマルジョンの分散剤に用いる1,2−グリコール結合を1.7モル%以上有するビニルアルコール系重合体のけん化度は、特に制限されないが、通常60モル%以上のものが用いられ、より好ましくは、70モル%以上、さらに好ましくは75モル%以上である。けん化度が60モル%未満の場合には、ビニルアルコール系重合体本来の性質である水溶性が低下する懸念が生じる。該ビニルアルコール系重合体の重合度も特に制限されないが、通常100〜8000の範囲のものが用いられ、300〜3000がより好ましく用いられる。重合度が100未満の場合には、得られる粉末エマルジョンの再分散性が低下する懸念があり、8000を越える場合には、該ビニルアルコール系重合体の工業的な製造に問題がある。
【0010】
本発明の合成樹脂エマルジョン粉末に用いる水性エマルジョンは、1,2−グリコール結合を1.7モル%以上有するビニルアルコール系重合体の存在下で、エチレン性不飽和単量体及びジエン系単量体から選ばれる1種あるいは2種以上の単量体を乳化重合することによって得られ、合成樹脂エマルジョン粉末は前記水性エマルジョンを噴霧乾燥して得られる。該水性エマルジョンの製造は特に制限されず、従来の方法により、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の重合開始剤を単独あるいは各種還元剤との組み合わせによるレドックス系で製造される。
【0011】
本発明に用いる水性エマルジョンにおいて、1,2−グリコール結合を1.7モル%以上有するビニルアルコール系重合体の使用量は、単量体100重量部に対して0.5〜100重量部、好ましくは1〜50重量部、さらに好ましくは2〜30重量部である。ビニルアルコール系重合体が0.5重量部未満の場合、水性エマルジョンの重合安定性が低下すると共に、粉末エマルジョンの再分散性が低下する懸念がある。また、ビニルアルコール系重合体が100重量部を越える場合、重合系の粘度上昇による反応熱除去の問題や耐水性の低下等の問題が生じる。
ビニルアルコール系重合体の添加方法は特に制限はなく、初期に一括して添加する方法、初期にビニルアルコール系重合体の一部を添加し、重合中に連続的に重合系へ添加する方法等がある。
また、従来公知のノニオン性、アニオン性、カチオン性、両性の界面活性剤やヒドロキシエチルセルロース等の水溶性高分子をビニルアルコール系重合体と併用してもかまわない。
【0012】
本発明に用いる水性エマルジョンを製造する際の単量体の添加方法として、初期に一括して重合系に添加する方法、初期に単量体の一部を添加し、残りを重合中に連続的に添加する方法、単量体と水と分散剤を予め乳化したものを重合系に連続的に添加する方法等、各種の方法が可能である。
【0013】
また、本発明に用いる水性エマルジョンは、連鎖移動剤を添加することもできる。連鎖移動剤としては、連鎖移動が起こるものであれば特に制限はないが、連鎖移動の効率の点でメルカプト基を有する化合物が好ましい。メルカプト基を有する化合物としては、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、3−メルカプトプロピオン酸等が挙げられる。
連鎖移動剤の添加量は、単量体100重量部に対して5重量部以下が好ましい。連鎖移動剤が5重量部を越える場合には、合成樹脂エマルジョンの重合安定性が低下する上、分散質を形成する重合体の分子量が著しく低下し、エマルジョン物性の低下が起こる。
【0014】
本発明に用いる水性エマルジョンの製造方法は、上記以外の重合条件あるいは重合方法でもよく、各種の従来公知の乳化重合方法を採用することができる。
【0015】
本発明の合成樹脂エマルジョン粉末は、上記の水性エマルジョンを噴霧乾燥して得られる。噴霧乾燥には、流体を噴霧して乾燥する通常の噴霧乾燥が使用できる。噴霧の形式により、ディスク式、ノズル式、衝撃波式などがあるが、いずれの方法でも良い。また、熱源としても、熱風や加熱水蒸気等が用いられる。乾燥条件は、噴霧乾燥機の大きさや種類、合成樹脂エマルジョンの濃度、粘度、流量等によって適宜選択すればよい。乾燥温度は、100℃〜150℃が適当であり、この乾燥温度の範囲内で、十分に乾燥した粉末が得られるように、他の乾燥条件を設定することが望ましい。
【0016】
合成樹脂エマルジョン粉末の水への再分散性をより向上するために、水溶性添加剤を加えることもできる。水溶性添加剤は、噴霧乾燥前に合成樹脂エマルジョンに添加して噴霧乾燥すると均一に混合されるため好ましい。水溶性添加剤の使用量は特に制限はなく、エマルジョンの耐水性等の物性に悪影響を与えない程度に適宜コントロールされる。
【0017】
水溶性添加剤として使用されるものとして、水溶性高分子が好ましく、例えば、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、でんぷん誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド等の他、水溶性アルキッド樹脂、水溶性フェノール樹脂、水溶性尿素樹脂、水溶性メラミン樹脂、水溶性ナフタレンスルホン酸樹脂、水溶性アミノ樹脂、水溶性ポリアミド樹脂、水溶性アクリル樹脂、水溶性ポリカルボン酸樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、水溶性ポリウレタン樹脂、水溶性ポリオール樹脂、水溶性エポキシ樹脂等も使用される。
【0018】
本発明の合成樹脂エマルジョン粉末は、使用する用途により、その用途で使用される各種添加剤を配合しておくこともできる。例えば、セメントおよびモルタルなどへの混和剤としての用途では、AE剤、減水剤、流動化剤、保水剤、増粘剤、防水剤等、接着剤用には粘性改良剤、保水剤、粘着付与剤、増粘剤等、塗料用バインダーには、粘性改良剤、増粘剤、顔料分散剤、安定剤等が適宜使用される。
【0019】
また、本発明の合成樹脂エマルジョン粉末の耐ブロッキング性、水への再分散性を向上させる目的で、ブロッキング防止剤(抗粘結剤)を使用することが望ましい。ブロッキング防止剤は、噴霧乾燥後のエマルジョン粉末に添加して均一に混合しても良いが、噴霧乾燥する際に合成樹脂エマルジョンをブロッキング防止剤の存在下に噴霧する(同時噴霧)ことが、均一な混合を行うことができ好適である。ブロッキング防止剤としては、微粒子の無機粉末が好ましく、炭酸カルシウム、クレー、無水珪酸、珪酸アルミニウム、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等が使用される。これらのブロッキング防止剤のうち、無水珪酸が好適である。ブロッキング防止剤の使用量は、性能上、エマルジョン粉末に対して20重量%以下さらには10重量%以下が好ましい。下限値については0.1重量%以上、さらには0.2重量%以上が好ましい。また、有機系のフィラーも使用できる
【0020】
本発明により得られる合成樹脂エマルジョン粉末は、セメントあるいはモルタルへの混入剤としてはもとより、再分散後の水性エマルジョンの耐水性、放置安定性に優れるため、接着剤、塗料用バインダー、紙加工用途等に好適に用いられる。
【0021】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何等限定されるものではない。なお、実施例中、「部」および「%」はいずれも重量基準を意味する。
【0022】
【実施例】
エマルジョン製造例1
窒素吹き込み口、温度計、撹拌機を備えた耐圧オートクレーブにPVA−1(1,2−グリコール結合2.2モル%含有、重合度1700、けん化度88モル%;加圧下、120℃で重合したポリ酢酸ビニルをけん化して合成)の7.5%水溶液100部を仕込み、60℃に昇温してから、窒素置換を行った。酢酸ビニル80部を仕込んだ後、エチレンを50kg/cm2まで加圧し、0.5%過酸化水素水溶液2gおよび2%ロンガリット水溶液0.3gを圧入し、重合を開始した。残存酢酸ビニル濃度が10%となったところで、エチレン放出し、エチレン圧力20kg/cm2とし、3%過酸化水素水溶液0.3gを圧入し重合を完結させた。重合中に凝集などがなく、重合安定性に優れており、固形分濃度49.5%、エチレン含量13重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン(Em−1)が得られた。
【0023】
エマルジョン製造例2
エマルジョン製造例1で用いたPVA−1に代えてPVA−2(1,2−グリコール結合2.5モル%含有、重合度1000、けん化度88モル%;加圧下、150℃で重合したポリ酢酸ビニルをけん化して合成)を用いた他はエマルジョン製造例1と同様にして固形分濃度49.4%、エチレン含量14重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン(Em−2)が得られた。
【0024】
エマルジョン製造例3
エマルジョン製造例1で用いたPVA−1に代えてPVA−3(1,2−グリコール結合1.6モル%含有、重合度1000、けん化度88モル%;(株)クラレ製PVA-210)を用いた他はエマルジョン製造例1と同様にして固形分濃度49.4%、エチレン含量13重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン(Em−3)が得られた。
【0025】
エマルジョン製造例4
エマルジョン製造例1で用いたPVA−1に代えてPVA−4(1,2−グリコール結合2.2モル%含有、重合度1700、けん化度98モル%;加圧下、120℃で重合したポリ酢酸ビニルをけん化して合成)を用いた他はエマルジョン製造例1と同様にして固形分濃度49.3%、エチレン含量13重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン(Em−4)が得られた。
【0026】
エマルジョン製造例5
エマルジョン製造例1で用いたPVA−1に代えてPVA−5(1,2−グリコール結合1.6モル%含有、重合度1700、けん化度98モル%;(株)クラレ製PVA-117)を用いた他はエマルジョン製造例1と同様にして乳化重合を行ったが重合途中で凝集がおこり安定にエマルジョンを得ることができなかった。
【0027】
エマルジョン製造例6
還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素吹込口を備えた1リットルガラス製重合容器に、イオン交換水300、製造例4により得られたPVA−4(1,2−グリコール含有量2.2モル%、重合度1700、けん化度98モル%)26gを仕込み95℃で完全に溶解した。次に、このPVA水溶液を冷却、窒素置換後、200rpmで攪拌しながら、60℃に昇温した後、酒石酸の10%水溶液を4.4gおよび5%過酸化水素水3g(酢酸ビニルに対し、モル比で0.015)をショット添加後、酢酸ビニル26gを仕込み重合を開始した。重合開始30分後に初期重合終了を確認した。酒石酸の10%水溶液を0.9gおよび5%過酸化水素水3gをショット添加後、酢酸ビニル234gを2時間にわたって連続的に添加し、重合を完結させ、固形分濃度47.3%のポリ酢酸ビニル系エマルジョンが得られた(Em−5)。
【0028】
エマルジョン製造例7
エマルジョン製造例6で用いたPVA−4を用いる代わりにPVA−5((株)クラレ製PVA−117)を用いた他はエマルジョン製造例6と同様にして固形分濃度47%のポリ酢酸ビニル系エマルジョンが得られた(Em−6)。
【0029】
実施例1
エマルジョン製造例1で得られたエチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン(Em−1)100部と水80部を混合したものと、エマルジョンの固形分に対して2%の無水珪酸微粉末とを別々に120℃の熱風中に同時噴霧して乾燥し、平均粒径20μmのエマルジョン粉末を得た。
(エマルジョン粉末の性能評価)
エマルジョン粉末100部にイオン交換水80部を添加して、攪拌機により十分攪拌し、以下の物性を評価した。結果を表1に示す。
・造膜性:50℃でガラス板上に再分散物を流延し乾燥させる。
○ 均一な皮膜となり、強靱な皮膜が得られる。
△ 皮膜にはなるがもろい。
× 均一な皮膜が得られない。
・耐ブロッキング性:エマルジョン粉末を容器に入れ、25g/cm2の荷重をかけて、20℃65%RH下で10日間放置した場合の状態を観察する。
○ ほとんどブロッキングしていない。
△ ブロッキングにより一部塊が生じている。
× ブロッキングにより全体が塊になる。
・耐水性;粉末化後:再分散したエマルジョンを20℃でキャスト製膜し、得られた皮膜の吸水率、溶出率を測定した。粉末化前:再分散前の水性エマルジョンを20℃でキャスト製膜し、同様に吸水率、溶出率を測定した。
(溶出率(%))=[1−{(浸漬後の皮膜絶乾重量)/(浸漬前の皮膜絶乾重量)}]×100
(吸水率(%))={(浸漬後の皮膜吸水重量)/(浸漬前の皮膜絶乾重量)}×100
*浸漬前の皮膜絶乾重量;浸漬前の皮膜重量(含水)−{浸漬前の皮膜重量(含水)× 皮膜含水率(%)/100}
*皮膜含水率;皮膜(20℃水に浸漬するサンプルとは別のサンプル)を、105℃で絶乾し、皮膜の含水率をあらかじめもとめる。
*浸漬後の皮膜絶乾重量;浸漬後の皮膜を105℃で絶乾した重量。
*浸漬後の皮膜吸水重量;浸漬後の皮膜を水から引き上げた後、皮膜についた水をガーゼで拭き取り秤量。
・放置安定性;再分散したエマルジョンを20℃で1月間放置し、放置後の状態を観察した。
○ 放置後も変化なし
△ やや沈降が見られる
× 2層に分離
【0030】
実施例2
実施例1において(Em−1)の代わりに、エマルジョン製造例2で得られた(Em−2)を用いた他は実施例1と同様にしてエマルジョン粉末を得、このエマルジョン粉末の性能を実施例1と同様にして試験した。結果を併せて表1に示す。
【0031】
比較例1
実施例1において(Em−1)の代わりに、エマルジョン製造例3で得られた(Em−3)を用いた他は実施例1と同様にしてエマルジョン粉末を得、このエマルジョン粉末の性能を実施例1と同様にして試験した。しかし、表1に示す様にエマルジョン粉末はほとんど再分散しなかった。
【0032】
比較例2
実施例1において(Em−1)の代わりに(Em−3)を用い、さらに水80部の代わりにポリビニルアルコール(重合度1700、けん化度88モル%;(株)クラレ製PVA-217)の10%水溶液80部を用いた他は実施例1と同様にして試験した。結果を併せて表1に示す。
【0033】
実施例3
実施例1において(Em−1)の代わりに、エマルジョン製造例4で得られた(Em−4)を用いた他は実施例1と同様にしてエマルジョン粉末を得、このエマルジョン粉末の性能を実施例1と同様にして試験した。結果を併せて表1に示す。
【0034】
実施例4
エマルジョン製造例6で得られたエチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン(Em−5)100部と水80部を混合したものを120℃の熱風中に同時噴霧して乾燥し、平均粒径20μmのエマルジョン粉末を得た。このエマルジョン粉末の性能を実施例1と同様にして試験した。結果を併せて表1に示す。
【0035】
比較例3
実施例1において(Em−1)の代わりに、エマルジョン製造例7で得られた(Em−6)を用いた他は実施例1と同様にしてエマルジョン粉末を得、このエマルジョン粉末の性能を実施例1と同様にして試験した。しかし、得られたエマルジョン粉末はほとんど再分散しなかった。結果を併せて表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
【発明の効果】
本発明により、水への再分散性、造膜性、耐ブロッキング性に優れた合成樹脂エマルジョン粉末を得ることができ、また、得られた合成樹脂エマルジョン粉末は水に再分散させた後の耐水性、放置安定性等に優れるため、セメントあるいはモルタルへの混入剤はもとより、接着剤、塗料用バインダー、紙加工用途など幅広い用途において好適に用いられる。
Claims (3)
- エチレン性不飽和単量体及びジエン系単量体から選ばれる一種あるいは二種以上の不飽和単量体単位を有する重合体を分散質とし、1,2−グリコール結合を1.7モル%以上有するビニルアルコール系重合体を分散剤とする水性エマルジョンを噴霧乾燥して得られる合成樹脂エマルジョン粉末。
- エチレン性不飽和単量体及びジエン系単量体から選ばれる一種あるいは二種以上の不飽和単量体単位を有する重合体が、ビニルエステル系単量体単位を有する重合体である請求項1記載の合成樹脂エマルジョン粉末。
- エチレン性不飽和単量体及びジエン系単量体から選ばれる一種あるいは二種以上の不飽和単量体単位を有する重合体が、ビニルエステル系単量体単位およびエチレン単位を有する重合体である請求項1記載の合成樹脂エマルジョン粉末。
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