JP4144834B2 - 半導体ウェーハのノッチ研削装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、円板状の砥石を用いて半導体ウェーハのノッチ溝の研削及び面取り加工する半導体ウェーハのノッチ研削装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、半導体デバイスの製造工程においては、半導体ウェーハの結晶方位を合わせ易くするために、ウェーハ周縁の一部を略V字形或いは円弧状に切欠して成るノッチ溝が形成されている。略V字形のノッチ溝は、ウェーハの限られた面積を効率良く活用でき、位置決め精度に優れる等の利点から広く採用されている。
【0003】
一方、半導体デバイスの製造工程においては、当該半導体ウェーハの周縁が、同製造工程に用いられる装置の一部と接触することが少なくない。このような接触は、時にダストを発生させたりクラックを生じさせたりすることがある。そこで、半導体ウェーハの周縁またはノッチ溝に対しては、面取り加工を施しており、今日ではそれが一般化されている。
【0004】
また、ノッチ溝を正確な寸法に加工することは、次工程の微細加工時の位置合わせ時間を短縮することができるため、高精度の研削加工が要求されている。
【0005】
このようなノッチ研削装置の一例が、特許第2611829号公報に記載されている。このノッチ研削装置について図20を用いて説明する。
【0006】
図20は前記特許公報に記載されたノッチ研削装置の概念図である。ノッチ研削装置100は、半導体ウェーハ101を回転可能に保持するワークホルダ102と、そのワークホルダ102を回転砥石107に接近又は離脱させるためのY軸方向移動装置103を有する。また、ノッチ溝106の面取りを行なうための円板状砥石107を回転させるモータ108、及び、砥石107をその回転軸線方向に移動させるX軸方向移動装置104と、砥石107をウェーハ101に対して上下方向に移動させるZ軸方向移動装置105よりなる。
【0007】
このノッチ研削装置100によってウェーハ101の面取りを行うには、X軸方向移動装置104及びY軸方向移動装置103を駆動させ、回転砥石107をノッチ溝106のV斜面に沿って移動させる。また、Z軸方向移動装置105を駆動させることにより、ウェーハ101の上面方向から下面方向に亘ってノッチ溝106を研削することができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記のノッチ研削装置100によると、円板状の回転砥石107とウェーハ101とを夫々の面が互いに直交する位置に配設している。
【0009】
しかし、ノッチ溝106はウェーハ101の結晶方向を示すものであり、一般に結晶方向は、図19の矢印で示すようにウェーハ101の中心OWとノッチ溝106を結んだ直線と平行な方向を向いて形成されている。
【0010】
この場合に、回転砥石107によりウェーハ101のノッチ溝106を研削すると、回転砥石107の研削によりノッチ溝106の被研削部分には、条痕109が形成される。この条痕109は、ウェーハ101の結晶の方向と同方向に形成されるため、研削抵抗が大きい場合等には条痕109に沿ってクラックが生じ、ウェーハ101が結晶方向に割れてしまうことが考えられる。
【0011】
本出願に係る発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、ウェーハの面取りを行う際に条痕によってウェーハが結晶方向に割れ難いノッチ研削装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本出願に係る第1の発明は、砥石回転軸を半導体ウェーハの板面に対して角度3°〜12°傾けて砥石台に回転自在に支持された円板状の砥石と、半導体ウェーハを前記砥石の板面に対して斜めに交叉する面内で不動に保持するワーク支持台と、前記半導体ウェーハの板面と平行或いは近似的に平行な平面上において、前記砥石を前記半導体ウェーハに接近又は離脱させる第一の方向に相対移動させることのできる第一の駆動装置と、前記半導体ウェーハの板面と平行或いは近似的に平行な平面上において、前記砥石を前記第一の方向と交叉する第二の方向に相対移動させることのできる第二の駆動装置と、 前記砥石を前記半導体ウェーハの板面に対して交叉する第三の方向に相対移動させることのできる第三の駆動装置とを備え、これら第一、第二、第三の駆動装置により前記砥石及び前記半導体ウェーハを相対的に三方向に移動させて前記半導体ウェーハのノッチ溝の面取り加工を行うように構成し、前記半導体ウェーハのノッチ溝に半導体ウェーハの結晶方向と斜めに交互する方向に条痕が形成されることを特徴とする半導体ウェーハのノッチ研削装置である。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本出願に係る発明の一実施の形態を図1〜図20に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図5は、本実施の形態においてノッチ溝を面取り加工しようとする前加工された半導体ウェーハ1の平面図である。一般に半導体チップ等に用いられるウェーハ1は、硬脆材料からなるインゴットをワイヤソーにより切断し、切断されたウェーハ1を研削盤やラップ盤で所望の厚さに研削して製造される。
【0019】
ウェーハ1は略円板状の外観をなし、ウェーハ1の外周は中心OWを通り板厚方向に走る中心線を中心として描かれる円形の外周部2を有する。この外周部2の一部にV字形のノッチ溝3が設けてある。
【0020】
本実施の形態では、前加工されたウェーハ1の板面の仕上げの有無、外周部2の面取りの有無は何れであってもよい。また、図17に示すようにノッチ溝3の縁のノッチ溝面3fは、前加工においてはウェーハ1の板面に対してほぼ垂直をなしている。
【0021】
図6に示すようにノッチ溝3は、V字形に切り込まれていて直線状に形成されたV斜面3aL,3aRと、この左右両側のV斜面3aL,3aRを滑らかにつないでいる溝底部3bと、ノッチ溝3が外周部2に滑らかに推移するための左右の口部3cとを有する。上記溝底部3b及び口部3cは円弧形であるが、溝底部3bはウェーハ1から見て外方に対して凹な曲線、口部3cはウェーハ1から見て外方に対して凸な曲線であれば良く、必ずしも円弧形である必要は無い。
【0022】
ウェーハ1は様々な大きさを取りうるが、本実施の形態においては、直径約200mm,厚さ約700〜900μm程度の円板状であり、ノッチ溝3は左右両側の口部3c間の幅Fが3mm、ノッチ溝3の深さHが1〜1.5mmのものを用いて説明する。また、ノッチ溝3の溝底3bの半径R1は0.9mm以上を必要とし、ノッチ溝3の左右のV斜面3aL及び3aRによって形成される角θは、90〜92°程度である。但し、本発明は前記の寸法範囲に限定されるものではない。
【0023】
次に、図7を用いてウェーハ1を研削する砥石5について説明する。図7は砥石及び砥石回転軸6を、砥石5の板面に平行な方向から見た図である。砥石5は円板状で、研削作用部の外周の母線は円弧部5aをなし、その円弧部5aに滑らかに連なって砥石回転軸6方向へ向かって次第に砥石幅を広げるように直線部5bを有し、直線部5bから平行板面の腹部5cへと滑らかにつらなる。ここで円弧部5aは研削作用面となるもので、その半径R2はノッチ溝3の溝底部3bの半径R1よりも小さい。また、両側の直線部5bのなす角度θ2は、ノッチ溝3のV斜面3aL,3aRのなす角θ1よりも小さい。
【0024】
次に、図3を用いて砥石5とウェーハ1の位置関係について説明する。図3は、ウェーハ1を砥石5によって研削している状態を、ウェーハ1の板面に平行な方向で且つノッチ溝3を正面から見たものである。
【0025】
砥石5の砥石回転軸6は、ウェーハ1の板面に対して角度αだけ傾いている。すなわち、砥石5の平行板面である腹部5cとウェーハ1の板面とは、角度αをもって交叉している。本実施の形態では、角度αは5°である。砥石5の砥石回転軸6を傾ける角度αが小さすぎる場合は、従来のノッチ研削装置と同様に、結晶方向と平行に条痕が形成されるためクラックを生じる可能性がある。逆に、砥石5の砥石回転軸6を傾ける角度αが大きすぎる場合は、ノッチ溝3の一方のV斜面3aLを研削しているときに、砥石5が他方のV斜面3aRに接触して研削してしまうことになる。これらを考慮すると、砥石回転軸6とウェーハ1の板面がなす角度αは、3°〜12°程度の範囲内であることが望ましい。
【0026】
上記のようにウェーハ1の板面に対して砥石回転軸6を傾けることにより、ウェーハ1のノッチ溝3の面取り部にはウェーハ1の結晶方向と3°〜12°程度の角度をもって斜めに交叉する条痕が形成される。また、この条痕の傾斜角度は、ノッチ溝3における割れやクラックの発生を防止するためには十分な角度である。
【0027】
次に、本発明のノッチ研削装置の具体的な実施の形態について図1,図2を用いて説明する。図1はノッチ研削装置11の側面図、図2はノッチ研削装置11の平面図である。図1に示すように、ベッド12には、Y軸送り機構20及びX軸送り機構30よりなるXYテーブルが備えられており、XYテーブルの上には砥石台40が備えられている。
【0028】
Y軸送り機構20は、Y軸スライドレール21とそのY軸スライドレール21と嵌合するY軸ガイド22と、サドル23と、Y軸制御モータ24及びY軸送りねじ25より構成される。Y軸スライドレール21はベッド12の上面に設けられており、Y軸スライドレール21上にはサドル23が載置されている。サドル23の底面にはY軸ガイド22が固定されており、Y軸ガイド22はY軸スライドレール21に沿って移動可能な状態で嵌合している。
【0029】
図2に示すように、Y軸制御モータ24は、ブラケット28によってベッド12に固定されている。そのY軸制御モータ24の回転軸線上にはY軸送りねじ25が設けられており、Y軸制御モータ24の回転によりY軸送りねじ25が回転する。サドル23には、Y軸送りねじ25が捩じ込まれた状態のナット26(図1参照)が固定されており、Y軸送りねじ25が回転することによってナット26がY軸方向に送られて、サドル23がY軸方向への移動を行う。このときサドル23は、図1に示すようにY軸ガイド22によってY軸スライドレール21に沿って案内されて、Y軸方向に移動する。
【0030】
また、図1に示すようにサドル23の上には、更にX軸送り機構30が備えられている。X軸送り機構30は、X軸スライドレール31とそのX軸スライドレール31と嵌合するX軸ガイド32と、砥石台40を支持するスライドテーブル33と、X軸制御モータ34及びX軸送りねじ35より構成される。X軸スライドレール31はサドル23の上面に設けられており、X軸スライドレール31上にはスライドテーブル33が載置されている。スライドテーブル33の底面にはX軸ガイド32が固定されており、X軸ガイド32はX軸スライドレール31に沿って移動可能な状態で嵌合している。
【0031】
X軸制御モータ34は、ブラケット38によってサドル23に固定されている。そのX軸制御モータ34の回転軸線上にはX軸送りねじ35が設けられており、X軸制御モータ34の回転によりX軸送りねじ35が回転する。スライドテーブル33には、X軸送りねじ35に捩じ込まれた状態のナット(不図示)が固定されており、X軸送りねじ35が回転することによってナットがX軸方向に送られて、スライドテーブル33がX軸方向への移動を行う。このときスライドテーブル33は、X軸ガイド32によってX軸スライドレール31に沿って案内されて、X軸方向に移動する。
【0032】
図2に示すように、X軸スライドレール31とY軸スライドレール21とは直交している。従って、ノッチ溝3のV斜面3aL,3aR等の斜め方向の研削を行う場合には、X軸方向の送りとY軸方向の送りを合成して斜め方向の研削を行う。
【0033】
また、図1に示すように砥石台40は、砥石回転駆動用モータ10と砥石回転軸6、そして、研削用の砥石5からなる。砥石回転駆動用モータ10はスライドテーブル33上に備えられており、モータの砥石回転軸6線上には研削用の砥石5が取り付けられている。砥石回転駆動用モータ10は、その砥石回転軸6が、X軸方向及びY軸方向によって形成されるXY平面と角度αをもって交わっている。また図2に示すように、本ノッチ研削装置11を上方から見た場合には、砥石回転軸6はX軸方向と平行に配置されている。
【0034】
砥石5は円板状をなし、砥石回転軸6を含む平面によって砥石5の断面をとると、砥石5の研削作用面は少なくともノッチ溝3の溝底3bの曲率よりも小さな曲率を有する円弧状をなしている。
【0035】
図1に示すように、ベッド12には被研削物であるウェーハ1を保持するワーク支持台57が備えられ、ワーク支持台57はZ軸方向に上下動させるための昇降機構50に設けられている。昇降機構50は、昇降テーブル53と、昇降テーブル53を案内するZ軸スライドレール51及びそのZ軸スライドレール51に嵌合するZ軸ガイド52、そしてZ軸制御モータ54とZ軸送りねじ55よりなる。Z軸送りねじ55は、Z軸制御モータ54の回転軸線上に設けられており、Z軸制御モータ54の回転によってZ軸送りねじ55が回転する。Z軸制御モータ54はブラケット58によってベッド12に固定されている。
【0036】
昇降テーブル53には、Z軸送りねじ55に捩じ込まれた状態のナット56が固定されており、Z軸送りねじ55が回転することによってナット56が上方又は下方に移動し、昇降テーブル53が昇降動作を行う。昇降テーブル53には上下方向に亘ってZ軸スライドレール51が設けられており、そのZ軸スライドレール51に沿って移動可能に嵌合しているZ軸ガイド52がベッド12に固定されている。昇降テーブル53が上下動を行う際には、Z軸スライドレール51がZ軸ガイド52に案内されてスライドするため、昇降テーブル53はZ軸スライドレール51に沿って昇降動作を行う。
【0037】
上記において、Y軸制御モータ24,X軸制御モータ34,Z軸制御モータ54はそれぞれサーボモータであって、CNC制御装置8によって制御される。
【0038】
ワーク支持台57は昇降テーブル53の上に設けられており、昇降テーブル53の昇降動作に伴って、Z軸方向への移動を行う。ワーク支持台57上面には複数の穴が形成されており、その穴から空気を吸引することによって、ウェーハ1がワーク支持台57上に真空吸着されて固定される。
【0039】
ウェーハ1はその板面が、X軸及びY軸によって形成されるXY平面に平行になるように配置され、また、Z軸はウェーハ1の板面と直交する方向に配置されている。ウェーハ1は、そのノッチ溝3とウェーハ1の中心を結ぶ直線が、Y軸と平行になる方向に配置されて、ワーク支持台57上に保持される。また、砥石5の回転中心線(一点鎖線で示す)とウェーハ1の中心線(Z軸)は、くい違い交叉しており、本実施の形態では交叉角は95°である。
【0040】
次に上記ノッチ研削装置11によって、ノッチ溝3の面取りを行う作業について説明する。
【0041】
始めに、板面研削が終わったウェーハ1をワーク支持台57の上に置き、ウェーハ1のノッチ溝3がY軸の方向を向くように位置合わせを行う。位置合わせは、図8に示すように、3本の位置決めピン4a,4bによって行う。位置決めピン4a,4bを直線で結ぶと、ノッチ溝3に嵌り込むピン4aを頂点として、残り二本のピン4bが二等辺三角形の底辺の角に配置されている。位置決めピン4a,4bは円柱形であって、ピン4aはウェーハ1に対してV斜面3aL,3aRの直線部で接する。
【0042】
まず、ワーク支持台57上に載置されたウェーハ1は、その外周部2を二本のピン4bによって支持される。このウェーハ1をワーク支持台57に載置する作業は、ロボットアーム等によって行われ、このときノッチ溝3の方向はほぼY軸の方向を向くように配置される。そして、ウェーハ1の半径方向に沿って、外周から中心に向かって位置決めピン4aを挿入して、ノッチ溝3の方向を正確にY軸方向と一致させる。
【0043】
ワーク支持台57上に設けられた吸引用の穴から真空吸引することにより、ウェーハ1をワーク支持台57上に真空吸着する。ウェーハ1がワーク支持台57上に吸着されウェーハ1が保持されたら、位置決めピン4aを退避させる。
【0044】
そして、砥石回転駆動用モータ10を起動させて、砥石回転軸6に固定した砥石5を回転させる。本実施の形態におけるノッチ研削装置11は、先ず始めに粗加工用砥石を用いて粗研削を行い、その後、仕上げ加工用砥石を用いて仕上げ研削を行うものである。
【0045】
次に、砥石5のウェーハ1に対する工具軌跡について説明する。
【0046】
本発明のノッチ研削装置11は、ウェーハ1の板面と平行な複数の平面内において、ノッチ溝3の形状に合わせて砥石5が工具軌跡を描くことにより、面取りを行うものである。
【0047】
図9は、ウェーハ1と砥石5の位置関係を示すために、ウェーハ1の一端の縦断面を示した図である。図9に示すように、砥石5の回転軸中心OをO1〜O5とすると、砥石5は各中心O1〜O5がウェーハ1の板面と平行な複数の平面上で工具軌跡を描くように移動する。これは、図1に示すノッチ研削装置11において、X軸送り機構30及びY軸送り機構20を制御すると共に、ウェーハ1を非回転状態でワーク支持台57上に吸着固定して行うものである。
【0048】
工具経路(工具軌跡)は、図7に示すように砥石5の研削作用面である先端円弧部5aの先端部(点T)で代表すると、図10に示す符号TP1〜TP5のようになる。この工具経路を砥石5の中心(点Tを通り砥石回転中心線に垂直な平面と、砥石回転中心線の交点)で表す場合には、砥石5の砥石回転軸6がウェーハ1に対して5°傾いている分だけ、工具軌跡を補正する必要がある。以下の説明では、便宜上、砥石5の先端部(点T)の工具経路を用いて説明する。
【0049】
何れの工具経路TP1〜TP5においても、図6に示す左側の口部3c,V斜面3aL,溝底部3bを通って、対称中心SLに対して反対側に位置するV斜面3aR,右側の口部3cを夫々連続して面取りすることができる。また、面取りできる工具経路の両側には、エアカットを行う工具経路部TPAを有する。
【0050】
また図10に示すように、このエアカット工具経路部TPAの終端O1′〜O5′(工具経路TPの終端でもある)においては、図11の二点鎖線で示すように、砥石5とウェーハ1は離れている。この工具経路部TPAの終端O1′〜O5′は、砥石中心O1〜O5に夫々対応している。
【0051】
図6及び図10を参照して、X軸送り機構30及びY軸送り機構20の具体的な制御方法について説明する。
【0052】
まず、砥石回転駆動用モータ10を回転させ、その砥石回転軸6に取り付けられた砥石5を回転させる。ノッチ溝3の面取りは、粗加工及び仕上げ加工によって鏡面仕上げを行うため、始めは粗加工用砥石を用いて研削を行う。
【0053】
そして、粗加工用砥石5の中心が左側のO1′に配置されるように、X軸送り機構30及びY軸送り機構20の制御を行う。砥石中心がO1′にある状態では、未だ砥石5の研削作用面はウェーハ1には接触していない状態である。
【0054】
次に、Y軸送り機構20のY軸制御モータ24を作動させ、砥石5の研削作用面がウェーハ1の左側の口部3cに接触する位置まで移動させる。この状態から砥石5によってウェーハが研削され始める。
【0055】
X軸送り機構30及びY軸送り機構20を制御して、ノッチ溝3の口部3cがウェーハ1の外周部2へと滑らかにつらなるように研削を行う。この口部3cは、外周部2とノッチ溝3のV斜面3aが連結する部分であり、その後の半導体生産工程において製造装置との接触により粉塵が発生しやすい場所であるため、外周部2と連続して極力滑らかに形成する必要がある。
【0056】
口部3cの面取りが終了すると今度は、V斜面3aLの研削につながる。本ノッチ研削装置11は、Y軸送り機構20及びX軸送り機構30による送りを合成することにより、V斜面3aLと同方向に平行に砥石5を送ることができる。このときは、Y軸制御モータ24とX軸制御モータ34の回転速度比は一定である。
【0057】
そして、V斜面3aLの直線部の研削が終了すると、今度は溝底部3bの研削につながる。この溝底部3bはR1の曲率を持つ円弧状であるため、砥石5をX軸及びY軸の送りの合成によってR1の曲率を描くように送り移動を行う。
【0058】
溝底部3bの研削が終了すると、今度は右側のV斜面3aRの直線部の研削につながる。右側のV斜面3aRの研削は、Y軸送り機構20及びX軸送り機構30による送りを合成することによって行う。
【0059】
その後、X軸送り機構30及びY軸送り機構20を制御することにより、外周部2との連結部である口部3cを滑らかに研削し、口部3cの研削が終了したら、右側の終端部O1′へと砥石5を移動させ、ウェーハ1から砥石5を離れさせる。
【0060】
以上の制御をTP2〜TP5についても同様に行うことにより、ウェーハ1の面取りを行うことができる。このとき、研削作業時間を極力短くするために、図10に示すようにTP2はTP1とは反対の方向から研削を行う。同様に、TP3はTP2とは反対の方向から、TP4はTP3とは反対の方向から、TP5はTP4とは反対の方向から研削を行う。このように制御することにより、工具軌跡が短くなり、作業時間が短縮される。
【0061】
次に、砥石5が研削作業を行っている場合と、ウェーハ1から離れている場合の位置関係について図12を用いて説明する。図12はウェーハ1の一端の縦断面を示す図であり、砥石中心がO1にあるときがウェーハ1の研削作業を行っている場合を示し、O1′にあるときがウェーハ1から離れている状態を示している。図10の矢印のようにX軸送り機構30,Y軸送り機構20を制御して工具経路TP1に沿って砥石5を送る場合について説明する。まず始めに左側のエアカット工具経路部TPAを通り、砥石5の研削作用面がウェーハ1に接触すると、図12に示すようにノッチ溝3の縁に沿って断面線を施した部分のストックS1が除去され、面取りC1が形成される。そして、右側のエアカット工具経路部TPAに入り、図10に示す右側の終端O1′に砥石中心が達すると、砥石5は図12の二点鎖線で示すようにウェーハ1と離れて位置することになる。
【0062】
ここで昇降機構50のZ軸制御モータ54を制御してウェーハ1を上昇させると共に、Y軸送り機構20を制御してスライドテーブル33をウェーハ1から離れる方向に後退させる。ウェーハ1の上昇量は、図12に示すように砥石中心O1,O2又はO1′,O2′のZ方向差△Z1であり、スライドテーブル33の後退量は、夫々平面図で示されている図10の工具経路TP1,TP2のY方向差△Y1である。
【0063】
次に、X軸送り機構30及びY軸送り機構20を上記TP1の場合と反対方向に制御して、工具経路TP2に沿って図10の矢印のように砥石5を左方へ送ると、図13に示すようにノッチ溝3の縁に沿って断面線を施した部分のストックS2が除去され、面取りC2が形成される。そして、図10において砥石中心が左側の終端O2′に達すると、砥石5は図13の二点鎖線で示すようにウェーハ1と離れて位置することになる。
【0064】
昇降機構50のZ軸制御モータ54を制御してウェーハ1を上昇させると共に、Y軸送り機構20を制御してスライドテーブル33を後退させる。ウェーハ1の上昇量は図13に示すように砥石中心O2,O3又はO2′,O3′のZ方向差△Z2であり、スライドテーブル33の後退量は夫々平面図で示されている図10の工具経路TP2,TP3のY方向差△Y2である。
【0065】
ここでX軸送り機構30,Y軸送り機構20を制御して工具経路TP3に沿って図10の矢印のように砥石5を右方へ送ると、ノッチ溝3の縁に沿って図14に示すように断面線を施した部分のストックS3が除去され、面取りC3が形成される。そして、図10において砥石中心が右側の終端O3′に達すると、砥石5は図14の二点鎖線で示すようにウェーハ1と離れ、中心がO3′に位置することになる。
【0066】
そして、昇降機構50のZ軸制御モータ54を制御してウェーハ1を上昇させると共に、Y軸送り機構20を制御して、今度はスライドテーブル33を前進させる。ウェーハ1の上昇量は図14に示すように、砥石中心O3,O4又はO3′,O4′のZ方向差△Z3であり、スライドテーブル33の前進量は、夫々平面図で示されている図10の工具経路TP2,TP3のY方向差△Y3である。
【0067】
今度は、X軸送り機構30及びY軸送り機構20を制御して、工具経路TP4に沿って図10の矢印のように左方へ送ると、ノッチ溝3の縁に沿って図15に示すように断面線を施した部分のストックS4が除去され、面取りC4が形成される。そして、図10において砥石中心が左側の終端O3′に達すると、砥石5は図15の二点鎖線で示すように中心がO4′に位置することになる。
【0068】
ここで、Y軸送り機構20と昇降機構50を制御してウェーハ1を上昇すると共にスライドテーブル33を前進させる。ウェーハ1の上昇量は、図15に示すように砥石中心O4,O5又はO4′,O5′のZ方向差△Z4であり、スライドテーブル33の前進量は、夫々平面図で示されている図10の工具経路TP4,TP5のY方向差△Y4である。
【0069】
X軸送り機構30及びY軸送り機構20を制御して、図10に示す工具経路TP5に沿って矢印のように右方へ送ると、ノッチ溝3の縁に沿って図16に示すように断面線を施した部分のストックS5が除去され、面取りC5が形成される。そして、図10において砥石中心が右側の終端O5′に達すると、砥石5は図16の二点鎖線で示すように、その中心がO5′に位置することになる。Y軸送り機構20を制御してスライドテーブル33を後退させる。
【0070】
上記のように粗加工用砥石による面取りが終わったら、今度は仕上げ加工用砥石によって同様に面取りを行う。なお、仕上げ加工用砥石による面取りについては、粗加工用砥石による面取りと同様であるため、説明を省略する。
【0071】
仕上げ加工が終了したら、X軸送り機構30及びY軸送り機構20と昇降機構50を制御してウェーハ1を上昇させると共に、スライドテーブル33を後退させる。このときウェーハ1は、ウェーハ1の交換可能な位置まで上昇する。
【0072】
上記研削が終了したウェーハ1のノッチ溝3には、図4に示すような条痕7が形成される。本ノッチ研削装置は、砥石回転軸6をウェーハ1の板面に対して5°傾けているため、砥石5の研削により形成される条痕7が、図4に示すようにウェーハ1の結晶方向に対して5°傾いた状態となる。このように、条痕7の方向を傾けることにより、ウェーハ1にクラックが入りやすい結晶方向に条痕7が入るのを避け、ウェーハ1の割れを防止することができる。
【0073】
上記工程によるノッチ溝3の研削による面取り方法においては、面取りは多角形状であり、本例では5角形である。そして、ウェーハ1の上下面においてほぼ対称な形状に面取りを施している。試算によれば、ノッチ溝3の縁に垂直な法面で切った各面取りC1〜C5の各辺に接する曲線と、面取りC1〜C5間の夫々の角部との距離は最大12μmである。また、9角形にすると各面取りC1〜C9の辺に接する曲線と、面取りC1〜C9間の夫々の角部との距離は最大2μmである。従って、ノッチ溝3の後工程として行われるバフ等によるポリッシングにより面取りで角部を丸める時間は、本例で1min程度であり、従来に比較して後工程時間が極端に短縮された。
【0074】
この面取りは、5角形よりも7角形、7角形よりも9角形というように、多角形になるほど面取りの断面形状は滑らかになり円弧状に近くなる。ウェーハ1のノッチ溝3の面取りにおいては、少なくとも5角形以上であることが望ましい。
【0075】
また、本実施の形態においては、レジノイドボンドの砥石を用いて鏡面研削条件を得ることができるため、Rmax0.1μm程度の面粗度を得ることができる。これによってチッピングやクラッキング等の発生がなくなる。また、大径砥石を用いることが可能なため、鏡面仕上げに必要とされる軟かい砥石を用いた場合でも、砥石研削作用面の形状の維持が比較的容易である。
【0076】
上記における工具経路は一例を示すもので、例えば、面取りC1→C5→C4→C2→C3のような順序を採用してもよい。また、切り込みは一回を示したが複数回に分けて切り込んでもよい。また、各工具経路TP1とTP5、TP2とTP4を同一としたが、工具経路TP1とTP5、TP2とTP4は夫々異なっていても良い。
【0077】
なお、本実施の形態においては、ウェーハ1をワーク支持台57上に吸着固定し、ワーク支持台57が回転しない構造を示しているが、本発明はこれらに限られるものではなく、ワーク支持台57は回転可能な構造であっても良い。こうすることにより、例えば1枚のウェーハ1に複数個のノッチ溝3が形成されているような場合には、ウェーハ1をワーク支持台57に位置決め吸着させた後、ワーク支持台57の回転によって各ノッチ溝3を順次加工位置に割出して、複数個のノッチ溝3の面取り加工を順次行うことができるものである。更に、ウェーハ1の外周部2のエッジに当接するように砥石5を配置して、ウェーハ1を回転させることにより、ノッチ溝3の面取り加工のみならず、ウェーハ1の外周エッジの面取り加工も行えるものである。
【0078】
図17は面取り加工前のウェーハ1の斜視図、図18は上述の面取り加工後におけるウェーハのノッチ溝の斜視図である。図17においては、ノッチ溝面3fは板面にほぼ垂直であり、略直角の角部を有するのに対して、図18に示すウェーハ1においては、ノッチ溝3には面取りが施されており、角部は緩やかな鈍角を描く。そのため、接触によるウェーハ1の欠けを防ぐことができ、粉塵の発生を防止することができる。
【0079】
また、ウェーハ1に対して研削作用により生じた条痕7の方向が結晶方向に対して斜め方向、即ち、ウェーハ1の板面に対して斜め方向であるため、ウェーハ1にはクラックが発生し難くなる。
【0080】
なお、本実施の形態においては、ウェーハ1の板面と砥石5の板面の交叉角αを5°として、くい違い交叉するようにしたが、交叉角αは5°に限定されるものではない。また、スライドテーブル33がX軸方向及びY軸方向に移動する構成にしているが、スライドテーブル33の代わりにワーク支持台57が移動する構成にしても良い。更に、ワーク支持台57ではなく、スライドテーブル33がZ軸方向に昇降する構成にしても良い。すなわち、砥石5とウェーハ1が相互に相対的にX軸方向、Y軸方向、Z軸方向に移動可能な構成であれば良い。
【0081】
また、本実施の形態においては、Z軸の方向は、X軸及びY軸によって形成されるXY平面に垂直であるが、必ずしも垂直である必要はなく、XY平面に交叉する方向(XY平面と平行でない方向)であれば良い。
【0082】
以上の通り、本出願に係る発明は、砥石台40に回転自在に支持された円板状の砥石5と、半導体ウェーハ1を砥石5の板面に対して斜めに交叉する面内で保持するワーク支持台57と、半導体ウェーハ1の板面と平行或いは近似的に平行な平面上において砥石5を半導体ウェーハ1に接近又は離脱させるY軸方向に相対移動させることのできるY軸送り機構20と、半導体ウェーハ1の板面と平行或いは近似的に平行な平面上において砥石5をY軸方向と交叉するX軸方向に相対移動させることのできるX軸送り機構30と、砥石5を半導体ウェーハ1の板面に対して交叉するZ軸方向に相対移動させることのできる昇降機構50とを備えた半導体ウェーハのノッチ研削装置11である。そして、これらX軸送り機構30,Y軸送り機構20,昇降機構50により砥石5及び半導体ウェーハ1を相対的に三軸方向に移動させて半導体ウェーハ1のノッチ溝3の面取り加工を行うように構成している。
【0083】
この発明は、砥石回転軸6に固定された円板状の砥石5を回転させ、砥石5を半導体ウェーハ1のノッチ溝3に当接させることにより、ノッチ溝3の面取りを行うノッチ研削装置において、半導体ウェーハ1の板面と砥石回転軸6のなす角度が、3°〜12°であることを特徴とする半導体ウェーハのノッチ研削装置11である。
【0084】
この発明は、半導体ウェーハ1のノッチ溝3には、面取り加工により半導体ウェーハ1の結晶方向と斜めに交叉する方向に条痕7が形成される。
【0086】
【発明の効果】
本ノッチ研削装置は、砥石回転軸をウェーハの板面に対して傾けているため、砥石の研削により形成される条痕が、ウェーハの結晶方向に対して傾いた状態となる。このように、条痕の方向を傾けることにより、ウェーハにクラックが入りやすい結晶方向に条痕が入るのを避け、ウェーハの割れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のノッチ研削装置の側面図である。
【図2】本発明のノッチ研削装置を上方から見た平面図である。
【図3】砥石回転軸とウェーハ板面との傾きの関係を示す側面図である。
【図4】結晶方向と条痕の方向の関係を示すウェーハの斜視図である。
【図5】面取り加工を行う前のウェーハの平面図である。
【図6】面取り加工を行う前のウェーハのノッチ溝の形状を示す平面図である。
【図7】ウェーハと砥石の関係を示す平面図である。
【図8】ウェーハを位置決めピンにより位置決めする様子を示す平面図である。
【図9】ウェーハのノッチ溝の面取り形状を示し、ノッチ溝の縁に対して法面で切った断面図である。
【図10】砥石の工具軌跡を示す平面図である。
【図11】工具移動経路の垂直断面図である。
【図12】面取り工程を示す垂直断面図である。
【図13】面取り工程を示す垂直断面図である。
【図14】面取り工程を示す垂直断面図である。
【図15】面取り工程を示す垂直断面図である。
【図16】面取り工程を示す垂直断面図である。
【図17】面取り加工を施す前のノッチ溝の斜視図である。
【図18】面取り加工を施した後のノッチ溝の斜視図である。
【図19】結晶方向と条痕の方向の関係を示す従来のウェーハの斜視図である。
【図20】従来のノッチ溝研削装置を示す概念図である。
【符号の説明】
OW…ウェーハの中心
O(O1〜O5)…砥石中心
O1′〜O5′…終端
θ1…ノッチ溝の直線部のなす角
θ2…砥石の直線部のなす角
TP1〜TP5…工具経路
TPA…エアカット工具経路部
1…ウェーハ
2…外周部
3…ノッチ溝 3aL,3aR…V斜面 3b…溝底部 3c…口部 3f…ノッチ溝面
4a,4b…ピン
5…砥石 5a…円弧部 5b…直線部 5c…腹部
6…砥石回転軸
7…条痕
8…CNC制御装置
10…砥石回転駆動用モータ
11…ノッチ研削装置
12…ベッド
20…Y軸送り機構
21…Y軸スライドレール
22…Y軸ガイド
23…サドル
24…Y軸制御モータ
25…Y軸送りねじ
26…ナット
28…ブラケット
30…X軸送り機構
31…X軸スライドレール
32…X軸ガイド
33…スライドテーブル
34…X軸制御モータ
35…X軸送りねじ
38…ブラケット
40…砥石台
50…昇降機構
51…Z軸スライドレール
52…Z軸ガイド
53…昇降テーブル
54…Z軸制御モータ
55…Z軸送りねじ
56…ナット
57…ワーク支持台
58…ブラケット
C1〜C5…面取り
△Z1,△Z2,△Z3,△Z4…Z方向差
△Y1,△Y2,△Y3,△Y4…Y方向差
100…ノッチ研削装置
101…ウェーハ
102…ワークホルダ
103…Y軸方向移動装置
104…X軸方向移動装置
105…Z軸方向移動装置
106…ノッチ溝
107…砥石
108…モータ
109…条痕。
Claims (1)
- 砥石回転軸を半導体ウェーハの板面に対して角度3°〜12°傾けて砥石台に回転自在に支持された円板状の砥石と、
半導体ウェーハを前記砥石の板面に対して斜めに交叉する面内で不動に保持するワーク支持台と、
前記半導体ウェーハの板面と平行或いは近似的に平行な平面上において、前記砥石を前記半導体ウェーハに接近又は離脱させる第一の方向に相対移動させることのできる第一の駆動装置と、
前記半導体ウェーハの板面と平行或いは近似的に平行な平面上において、前記砥石を前記第一の方向と交叉する第二の方向に相対移動させることのできる第二の駆動装置と、 前記砥石を前記半導体ウェーハの板面に対して交叉する第三の方向に相対移動させることのできる第三の駆動装置とを備え、
これら第一、第二、第三の駆動装置により前記砥石及び前記半導体ウェーハを相対的に三方向に移動させて前記半導体ウェーハのノッチ溝の面取り加工を行うように構成し、前記半導体ウェーハのノッチ溝に半導体ウェーハの結晶方向と斜めに交叉する方向に条痕が形成されることを特徴とする半導体ウェーハのノッチ研削装置。
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