JP4143912B2 - 電動機の制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
直流を交流に変換して出力するインバータの交流側に速度可変の電動機が接続され、この電動機の速度目標値と速度検出値との偏差に加減速ゲインを乗算して得られた値を用いてインバータを制御する電動機の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の従来の電動機の制御装置は、電動機の速度目標値と速度検出値との偏差を求め、この偏差に加減速ゲインを乗算してPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)制御のデューティ比の補正量を求め、負荷変動によって電動機の速度が目標速度より低下した場合にはデューティ比を大きくして加速させ、逆に電動機の速度が目標速度を超過した場合にはデューティ比を小さくして減速させることによって電動機を目標速度に保持する構成になっていた。
【0003】
この場合、電動機や負荷の種類によっては加減速ゲインを調整する必要がある。このため汎用の電動機の制御装置においては、可変抵抗器やディジタル的な数値入力装置を用いて加減速ゲインを外部から調整可能にしたり、速度検出器によって検出された速度に比例した加減速ゲインに逐次変更したりするものがあった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、種々の電動機を可変速駆動する汎用の電動機の制御装置においては、駆動の対象となる電動機や負荷に様々な態様が存在し、場合によっては駆動速度の相違によって負荷が変動するシステムに用いられる電動機を駆動しなければならない場合もある。このような負荷変動を伴うシステムの場合、従来の装置では速度とは無関係な固定値あるいは速度と比例関係にある値でしか加減速ゲインの調整ができなかっため、ある速度で回転ムラや振動のない安定した運転が行われていたとしても、他の速度では回転ムラや振動が拡大し、これによって電動機やシステムの振動が大きくなると共に、騒音が大きくなるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の事情を考慮してなされたもので、回転速度の変化による負荷変動の大きいシステムに使用される電動機であっても、回転ムラや振動を低く抑えることのできる汎用性を持たせた電動機の制御装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、直流を交流に変換して出力するインバータの交流側に速度可変の電動機が接続され、電動機の速度目標値と速度検出値との偏差に加減速ゲインを乗算して得られた値を用いてインバータの出力を制御する電動機の制御装置において、
電動機の速度可変範囲を複数に区分けした速度ゾーンにそれぞれ対応させて加減速ゲイン情報が格納され、かつ、加減速ゲイン情報を外部から書き換えることが可能な記憶手段を備え、電動機の速度検出値が含まれている速度ゾーンの加減速ゲイン情報を読み出し、この加減速ゲイン情報に対応する加減速ゲインを電動機の速度目標値と速度検出値との偏差に乗算することを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の電動機の制御装置において、記憶手段は複数の速度ゾーンに区分けする閾値を互いに異ならせた複数種類のテーブルを含み、加減速ゲイン情報を読み出すべき1つのテーブルを外部から選択可能にしたことを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の電動機の制御装置において、記憶手段は、電動機の速度可変範囲を複数に区分けする閾値情報を外部から切り替え可能にしたことを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係る電動機の制御装置の一実施形態の構成を、部分的に結線図で示したブロック図である。同図において、商用の交流電源1に、交流を直流に変換する整流回路2が接続されている。整流回路2として、例えば、全波整流ブリッジの出力端子間に平滑コンデンサが接続されたものが用いられる。この整流回路2にインバータ3が接続されている。インバータ3はそれぞれ還流用のダイオードが逆並列接続された、例えば、IGBTでなるスイッチング素子3U,3V,3W,3X,3Y,3Zが3相ブリッジ接続されたものでなっている。この場合、スイッチング素子3Uと3X、3Vと3Y、3Wと3Zが互いに直列接続され、これらの直列接続回路が互いに並列接続されており、その一端が整流回路2の正側端子に接続され、その他端が整流回路2の負側端子に接続されている。そして、スイッチング素子3Uと3X、3Vと3Y、3Wと3Zの各接続点に電動機4が接続されている。電動機4には、回転速度の変化により負荷変動の大きい、例えば、圧縮機でなる負荷5が結合されている。
【0010】
インバータ3と電動機4の各接続経路のうち、少なくとも2つの経路には、抵抗又はホール素子を用いた電流検出素子が接続され、これらが電流検出部11を構成している。この電流検出部11の電流検出信号に基づいて、電動機4の回転子位置及び回転速度を検出する位置・速度検出部12が設けられている。制御用マイクロコンピュータ13は書換え可能な不揮発性メモリであるEEPROM14を付帯し、位置・速度検出部12で検出された回転子位置及び回転速度に従って電圧指令を出力するもので、例えば、詳細な構成を省略した周知のサーボ電動機制御機能を備えている。制御用マイクロコンピュータ13には、UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter:万能非同期受信送信装置)端子16を介して、制御コマンドの送信やステータスの受信などを行う上位制御装置21及びEEPROM14に対するデータの書き込みや読出しが可能なパーソナルコンピュータ22が接続されている。
【0011】
EEPROM14には、電動機4の速度可変範囲を複数に区分けした速度ゾーンにそれぞれ対応させて予め定めた加減速ゲイン情報がテーブルとして格納されると共に、複数の速度ゾーンに区分けする閾値を互いに異ならせた複数種類のテーブルを備えている。そして、パーソナルコンピュータ22によって、加減速ゲイン情報の書き込みや書き換えを行ったり、閾値情報を切り替えたりすることができるようになっており、上位制御装置21は使用機種情報や速度目標値の入力等を行う。
【0012】
なお、上述した整流回路2、インバータ3、電流検出部11、位置・速度検出部12、制御用マイクロコンピュータ13、EEPROM14、PWM信号生成部15及びUART端子16によって本発明の電動機の制御装置30を構成している。
【0013】
上記のように構成された本実施形態の動作について以下に説明する。先ず、電動機の制御装置30の製造、調整段階にてUART端子16にパーソナルコンピュータ22を接続し、制御用マイクロコンピュータ13を動作させて、EEPROM14における制御ゲイン情報の書き込みを行う。この場合、パーソナルコンピュータ22から機種情報、複数の速度ゾーンに区分けする閾値、速度ゾーンにそれぞれ対応させた加減速ゲイン情報が入力され、制御用マイクロコンピュータ13はこれらの入力に従って機種毎に閾値を異ならせた複数種類のテーブルとしてEEPROM14に書き込みを行う。
【0014】
なお、本実施形態における製造、調整段階における情報の書き込みは、速度ゾーン分けの閾値においては、10rpsから100rpsの間で1rps単位で3つの閾値が設定できる。この結果、ゾーン分けはゾーン0から4の4ゾーンとなる。また、ここで設定されるゾーンの最小値は、この電動機の制御装置が組み込まれる機器における安定運転範囲の最低値となる。一方、各ゾーンにおける加減速ゲインは、2倍から255倍の間で14段階に選択することが可能である。したがって、各速度ゾーンの範囲及びそのゾーンにおける加減速ゲインは、様々な設定が可能となる。また、1つのEEPROM内に予め2以上の複数機種の速度ゾーンの範囲及びそのゾーンにおける加減速ゲインが記憶できるようにして、複数機種間での兼用を可能としてる。このため、電動機の制御装置の製造段階においてEEPROMへデータを書き込み、その後、最終の機器への組み込みという製造方法を採用した場合には最終の複数機種間で電動機の制御装置を兼用することができる。
【0015】
このようにして製造、調整が行われた電動機の制御装置30が実際のシステムに組み込まれ、交流電源1、モータ4及び負荷5が接続され、さらに、上位制御装置21がUART端子16に接続される。この状態で運転が開始されると上位制御装置21から機種情報と速度目標値(可変)とが制御用マイクロコンピュータ13に入力される。
【0016】
そこで、整流回路2は商用電源電圧を全波整流し、さらに、平滑してインバータ3に供給する。そして、PWM信号生成部15は予め定めた組合せ及び順序にてスイッチング素子3U,3V,3W,3X,3Y,3Zをオン、オフ制御することにより3相交流電圧が電動機4に供給される。これによって、電動機4が負荷5を駆動する。負荷5を駆動中の電動機4の少なくとも2相の電流が電流検出部11によって検出され、検出信号が位置・速度検出部12に加えられる。位置・速度検出部12は各相電流の検出信号に基づいて電動機4のロータ位置を検出し、さらに、回転速度を検出してロータ位置検出値及び速度検出値を制御用マイクロコンピュータ13に加える。
【0017】
制御用マイクロコンピュータ13は上位制御装置21から入力された電動機4の速度目標値と位置・速度検出部12で検出された速度検出値との偏差を求め、さらに、上位制御装置21から入力された機種と、速度検出値に対応する加減速ゲインを読み出して速度偏差に乗算し、得られた値を電流値に換算した後、位置・速度検出部12で検出されたロータ位置に対して所定のタイミングにてPWM信号生成部15に電流指令を加える。PWM信号生成部15は電流指令に対応するPWM信号を生成し、さらに、このPWM信号を増幅してインバータ3を構成するスイッチング素子3U,3V,3W,3X,3Y,3Zの各ゲートに印加する。
【0018】
ここで、上位制御装置21から、例えば、増加と減少の変速工程が含まれる速度目標値が入力されると制御用マイクロコンピュータ13は、これらの速度検出値が含まれている速度ゾーンの加減速ゲイン情報をEEPROM14から読み出し、この加減速ゲイン情報に対応する加減速ゲインを電動機4の速度目標値と速度検出値との偏差に乗算する。
【0019】
図2はEEPROM14のデータ例を示した図表であり、例えば、「機種1」の速度変動範囲を「0」と「1」に区分けする閾値が「20h(10rps)」に、「1」と「2」に区分けする閾値が「40h(20rps)」に、…、それぞれ設定され、「機種1」を運転中の速度検出値が「ゾーン1」である場合には加減速ゲインが「08h(4倍)」に設定されている。
【0020】
この例では、機種1において、ゾーン0が0〜10rps、ゾーン1が10〜20rps、ゾーン2が20〜30rps、ゾーン3が30以上に設定されている。そして、各ゾーンにおける加減速ゲインは、ゾーン0から順に、3、4、6、10に設定される。実際の加減速ゲインは式:次回のPWM出力デューティ比=現行のPWM出力デューティ比+現行のPWM出力デューティ比×(現行速度…目標速度)×加減速ゲイン/100:で計算され、この結果に基づき次回のインバータのPWM出力のデューティ比が調整される。この調製は10msec毎程度で更新される。
【0021】
図3は電動機4の速度変動範囲を「0」「1」「2」「3」の4個のゾーンに区分けする場合の設定閾値と、最新の速度検出値がどのゾーンに属するかを判定する制御用マイクロコンピュータ13の処理手順を示すフローチャートである。ここで、制御のチャタリングを防止するために、速度が上昇傾向にある場合の閾値と下降傾向にある場合の閾値とに僅かの差を持たせ、それぞれ「Va又はVa′」「Vb又はVb′」「Vc又はVc′」を閾値として下記の処理を実行する。
【0022】
すなわち、電動機4の速度を上昇させ、所定の速度に到達した時点で減速に転じる場合、ステップ101で最新の速度検出値Vを読み取り、ステップ102にてその値を前回のものに代えて記憶する。そして、ステップ103で速度検出値Vが閾値「Va」以上であるか否かを判定し、閾値「Va」以上であればステップ104にて「ゾーン=1」と仮決定してステップ116の処理に進み、閾値「Va」未満であればステップ105の処理に進む。ステップ105においては、前回の速度がゾーン「2」よりも小さく、かつ、速度検出値Vが閾値「Vb」以上であるか否かを判定し、閾値「Vb」以上であればステップ106にて「ゾーン=2」と仮決定してステップ116の処理に進み、閾値「Vb」未満であればステップ107の処理に進む。以下、これ以外の閾値「Vc」「Vc′」「Vb′」「Va′」を用いてステップ107〜114にて同様な処理を繰り返し、ステップ115にて記憶された値に変化が無いことを確認し、ステップ116で最新の速度ゾーンを確定する。
【0023】
以上のようにして、速度ゾーンを確定し、そのときの機種と速度ゾーンに対応する加減速ゲインを選択して速度検出値との偏差に乗算する。因みに、図2に示すEEPROMのデータ例に従った場合には、速度が大きくなるほど値の大きい加減速ゲインを使用することになる。
【0024】
かくして、上記の実施形態によれば、電動機4の速度目標値と速度検出値との偏差に加減速ゲインを乗算して得られた値を用いて加減速制御するに当たり、電動機4の速度検出値が含まれている速度ゾーンの加減速ゲイン情報をEEPROM14から読み出し、この情報に対応する加減速ゲインを電動機4の速度目標値と速度検出値との偏差に乗算することによって、回転速度の変化による負荷変動の大きいシステムに使用される電動機の回転ムラや振動を低く抑えることができる。
【0025】
また、EEPROM14が複数の速度ゾーンに区分けする閾値を互いに異ならせた複数種類のテーブルを含み、機種に応じて、加減速ゲイン情報を読み出すべき1つのテーブルを選択するようにしたので、型格又は特性の異なる複数の機種に対応することができる。
【0026】
さらに、EEPROM14の加減速ゲイン情報及び閾値情報を外部から切り替え設定可能にしたため、負荷の条件が変化する場合にも対応することができる。
【0027】
【発明の効果】
以上の説明によって明らかなように、本発明によれば、回転速度の変化による負荷変動の大きいシステムに使用される電動機であっても、回転ムラや振動を低く抑えることのできる汎用性を持たせた電動機の制御装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電動機の制御装置の一実施形態の構成を、部分的に結線図で示したブロック図。
【図2】図1に示す実施形態を構成するEEPROMのデータ例を示した図表。
【図3】図1に示す実施形態の動作を説明するために、制御用マイクロコンピュータの具体的処理手順を示したフローチャート。
【符号の説明】
1 交流電源
2 整流回路
3 インバータ
4 電動機
5 負荷
11 電流検出部
12 位置・速度検出部
13 制御用マイクロコンピュータ
14 EEPROM
16 UART端子
15 PWM信号生成部
21 上位制御装置
22 パーソナルコンピュータ

Claims (3)

  1. 直流を交流に変換して出力するインバータの交流側に速度可変の電動機が接続され、前記電動機の速度目標値と速度検出値との偏差に加減速ゲインを乗算して得られた値を用いて前記インバータの出力を制御する電動機の制御装置において、
    前記電動機の速度可変範囲を複数に区分けした速度ゾーンにそれぞれ対応させて加減速ゲイン情報が格納され、かつ、前記加減速ゲイン情報を外部から書き換えることが可能な記憶手段を備え、前記電動機の速度検出値が含まれている前記速度ゾーンの前記加減速ゲイン情報を読み出し、この加減速ゲイン情報に対応する加減速ゲインを前記電動機の速度目標値と速度検出値との偏差に乗算することを特徴とする電動機の制御装置。
  2. 前記記憶手段は複数の速度ゾーンに区分けする閾値を互いに異ならせた複数種類のテーブルを含み、前記加減速ゲイン情報を読み出すべき1つの前記テーブルを外部から選択可能にしたことを特徴とする請求項1に記載の電動機の制御装置。
  3. 前記記憶手段は、電動機の速度可変範囲を複数に区分けする閾値情報を外部から切り替え可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動機の制御装置。
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