JP4141339B2 - 空気調和装置及びその冷凍機油回収方法 - Google Patents

空気調和装置及びその冷凍機油回収方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、暖房時にガス管に滞留した冷凍機油を回収することができる空気調和装置およびその冷凍機油回収方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、圧縮機、四方弁、室外熱交換器を有する複数の室外機と、これらの室外機に対し、液管及びガス管からなるユニット間配管で接続した複数の室内機とを備えた空気調和装置が知られている。この種の空気調和装置は、暖房時に、圧縮機から冷媒とともに吐出された冷凍機油が、ガス管または運転停止した室内機の室内熱交換器に滞留して、室外機へ還流されないことがある。運転停止した室内熱交換器に冷凍機油が滞留する場合には、冷凍機油が液冷媒に溶けた状態で存在しているので、当該室内機の室内膨張弁を強制的に開いて冷媒を流すことにより、比較的容易に冷凍機油を回収することができる(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−133017号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ガス管に冷凍機油が滞留する場合には、簡単に冷凍機油を回収することができなかった。そのため、例えば、1つの冷媒系統に複数の室内機と複数の室外機とを有するシステムにおいては、使用するガス管径も大きくなるため、ガス管内に停滞する冷凍機油量が増加し、圧縮機の潤滑が不十分となる事態が生じ易いという問題があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、簡単な操作で、暖房時にガス管内に滞留している冷凍機油を圧縮機へ回収することができる空気調和装置及びその回収方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、圧縮機、四方弁、室外熱交換器を有する室外機と、室内熱交換器、室内膨張弁を有する室内機とを、ガス管及び液管からなるユニット間配管で接続した空気調和装置において、暖房運転中に、室外機及び室内機の運転を停止し、かつ、室外機の四方弁を冷房運転時の位置に切替え、この状態で、冷凍機油を回収するのに十分な時間として予め設定した所定時間、圧縮機の停止を継続する冷凍機油回収手段を備え、前記冷凍機油回収手段の動作により、冷房運転時の位置に切替わった四方弁の前後に生じた圧力差を用いて、ガス管に液冷媒を流して当該ガス管内に滞留した冷凍機油を圧縮機へ回収するとともに、暖房運転を再開する際には、当該冷凍機油の回収動作前よりも圧縮機の回転数を上げて、ガス管内を流通する冷媒循環量を増加する運転を実行することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、圧縮機、四方弁、室外熱交換器を有する複数の室外機と、室内熱交換器、室内膨張弁を有する室内機とを、液管及びガス管からなるユニット間配管で接続した空気調和装置において、前記複数の室外機に冷凍機油を戻す順序を決める手段と、暖房運転中に、すべての室外機及び室内機の運転を停止し、かつ、決められた順序に従って、該当する室外機の四方弁を冷房運転時の位置に切替え、この状態で、冷凍機油を回収するのに十分な時間として予め設定した所定時間、圧縮機の停止を継続する冷凍機油回収手段とを備え、冷房運転時の位置に切替わった各四方弁の前後に生じた圧力差を用いて、ガス管に液冷媒を流して当該ガス管内に滞留した冷凍機油をそれぞれの圧縮機に分配回収するとともに、暖房運転を再開する際には、当該冷凍機油の回収動作前よりも圧縮機の回転数を上げて、ガス管内を流通する冷媒循環量を増加する運転を実行することを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のものにおいて、前記順序を決める手段は、冷凍機油回収動作を最初に開始する室外機を特定するとともに、この特定した室外機から遅れて、冷凍機油回収動作を開始する遅延時間を、残りの各室外機それぞれについて算出し、この遅延時間に従い、室外機に冷凍機油を戻す順序を決定することを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、圧縮機、四方弁、室外熱交換器を有する室外機と、室内熱交換器、室内膨張弁を有する室内機とを、液管及びガス管からなるユニット間配管で接続し、このユニット間配管または室内熱交換器に滞留した冷凍機油を圧縮機へ回収する空気調和装置の冷凍機油回収方法において、暖房運転中に、室外機及び室内機の運転を停止し、かつ、室外機の四方弁を冷房運転時の位置に切替え、この状態で、冷凍機油を回収するのに十分な時間として予め設定した所定時間、圧縮機の停止を継続する冷凍機油回収過程を備え、前記冷凍機油回収過程の実行により、冷房運転時の位置に切替わった四方弁の前後に生じた圧力差を用いて、ガス管に液冷媒を流して当該ガス管内に滞留した冷凍機油を圧縮機へ回収するとともに、暖房運転を再開する際には、当該冷凍機油の回収動作前よりも圧縮機の回転数を上げて、ガス管内を流通する冷媒循環量を増加する運転を実行することを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、圧縮機、四方弁、室外熱交換器を有する複数の室外機と、室内熱交換器、室内膨張弁を有する室内機とを、液管及びガス管からなるユニット間配管で接続し、このユニット間配管または室内熱交換器に滞留した冷凍機油を圧縮機へ回収する空気調和装置の冷凍機油回収方法において、前記複数の室外機に冷凍機油を戻す順序を決める過程と、暖房運転中に、すべての室外機及び室内機の運転を停止し、かつ、決められた順序に従って、該当する室外機の四方弁を冷房運転時の位置に切替え、この状態で、冷凍機油を回収するのに十分な時間として予め設定した所定時間、圧縮機の停止を継続し、冷房運転時の位置に切替わった各四方弁の前後に生じた圧力差を用いて、ガス管に液冷媒を流して当該ガス管内に滞留した冷凍機油をそれぞれの圧縮機に分配回収するとともに、暖房運転を再開する際には、当該冷凍機油の回収動作前よりも圧縮機の回転数を上げて、ガス管内を流通する冷媒循環量を増加する運転を実行する、冷凍機油分配回収過程とを備えることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のものにおいて、前記順序を決める過程は、冷凍機油回収動作を最初に開始する室外機を特定するとともに、この特定した室外機から遅れて、冷凍機油回収動作を開始する遅延時間を、残りの各室外機それぞれについて算出し、この遅延時間に従い、室外機に冷凍機油を戻す順序を決定することを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による一実施形態を添付の図面を参照して説明する。図1において、50は空気調和装置を示している。
【0013】
この空気調和装置50は、ガス管5及び液管7を備えてなるユニット間配管9に、室外機1A,1Bが並列に接続されるとともに、室内機3A、3Bが並列に接続されて構成される。室外機1Aは、圧縮機11Aの吸込側にアキュムレータ16Aが接続され、吐出側にオイルセパレータ12Aを介して四方弁13Aが接続され、更に、四方弁13A側の室外冷媒配管18Aに室外熱交換器14A、室外膨張弁15Aが順次接続されて構成される。室外熱交換器14Aには、この室外熱交換器14Aへ送風する室外ファン17Aが隣接して配置されている。なお、圧縮機11Aには、油面センサ19Aが設けられ、圧縮機11A内の冷凍機油の量を検出している。室外機1Bは、室外機1Aと同一の構成であるので、説明を省略する。
【0014】
室内機3Aは、室内冷媒配管39Aに室内膨張弁38A及び室内熱交換器34Aが順次接続され、この室内冷媒配管39Aの一端がガス管5に、他端が室内熱交換器34A、室内膨張弁38Aを介して液管7にそれぞれ接続されている。室内熱交換器34Aには、この室内熱交換器34Aへ送風する室内ファン37Aが隣接して配置されている。室内機3Bは、室内機3Aと同一の構成であるので、説明を省略する。
【0015】
冷房運転時には、四方弁13A,13Bが点線の位置(冷房運転時の位置)に切替えられる。圧縮機11A,11Bから吐出された冷媒は、点線矢印で示すように、オイルセパレータ12A,12B、四方弁13A,13Bを経た後、室外熱交換器14A,14Bに入り、ここで凝縮した後、室外膨張弁15A,15Bを経て、液管7を流れ、室内機3A,3Bに流入する。
【0016】
室内機3A,3Bに流入した冷媒は、室内膨張弁38A,38B、室内熱交換器34A,34Bに入り、ここで蒸発した後、ガス管5を流れ、各室外機1A,1Bに分流する。そして、その分流した冷媒は、四方弁13A,13B、アキュムレータ16A,16Bを経て、圧縮機11A,11Bに戻される。
【0017】
暖房運転時には、四方弁13A,13Bが実線の位置(暖房運転時の位置)に切替えられる。圧縮機11A,11Bから吐出された冷媒は、実線矢印で示すように、オイルセパレータ12A,12B、四方弁13A,13Bを経た後、ガス管5を流れ、各室内機3A,3Bに流入する。
【0018】
各室内機3A,3Bに流入した冷媒は、室内熱交換器34A,34Bに入り、ここで凝縮した後、室内膨張弁38A,38Bを経て、液管7を流れ、各室外機1A,1Bに分流する。そして、その分流した冷媒は、室外膨張弁15A,15Bを経て、室外熱交換器14A,14Bに入り、ここで蒸発した後、四方弁13A,13B、アキュムレータ16A,16Bを経て、圧縮機11A,11Bに戻される。
【0019】
空気調和装置50は、コントローラ20を備え、このコントローラ20は、上記室外機1A,1B及び室内機3A,3Bの動作制御を行うとともに、各室外機1A,1Bへの冷凍機油の回収動作を制御する(冷凍機油回収手段)。コントローラ20には、回収処理タイマT1が設けられている。この回収処理タイマT1は、冷凍機油の回収動作時間を設定するものであり、所定の時間(例えば、60秒)に設定されている。本実施形態では、冷凍機油を回収するのに十分な時間として、回収動作時間を60秒に設定しているが、ガス管5の配管長に応じて適宜変更することができる。
【0020】
次に、本実施形態にかかる冷凍機油を回収する動作について、図2を参照して説明する。この冷凍機油の回収は、冷房運転時に比べて暖房運転時にガス管5内に冷凍機油が滞留しやすいことに鑑みてなされるものであるため、空気調和装置50が暖房運転されていることが前提となる。
【0021】
始めに、コントローラ20は、冷凍機油の回収を実施するか否かを判別する(ステップS1)。具体的には、圧縮機11A,11Bに設けられた油面センサ19A,19Bを用いて、圧縮機11A,11B内の冷凍機油の量が所定量以下となった場合に、冷凍機油の回収を実施する。また、上記冷凍機油量に関係なく、暖房運転を所定時間(例えば、2時間)行うごとに、冷凍機油の回収を実施する構成とすることもできる。
【0022】
ステップS1の判別において、冷凍機油の回収を実施する場合には、すべての室外機1A,1B及び室内機3A,3Bが運転停止しているか否かを判別する(ステップS2)。この判別において、すべての室外機1A,1B及び室内機3A,3Bが運転停止していない場合には、これらの機器の運転を停止する(ステップS3)。すなわち、この冷凍機油の回収は、暖房運転中の空気調和装置50において、すべての室外機1A,1B及び室内機3A,3Bの運転を停止した状態で実施される。
【0023】
次に、コントローラ20は、四方弁13A,13Bを冷房運転時の位置へ切替える(ステップS4)とともに、回収処理タイマT1を動作させる(ステップS5)。
【0024】
ここで、空気調和装置50は、ステップS3の停止動作に至るまでは、暖房運転されていたため、圧縮機11A,11Bの吐出口からガス管5、室内機3A,3B、液管7、室外膨張弁15A,15Bまでは高圧の液冷媒及びガス冷媒が充填されている。一方、室外膨張弁15A,15Bから室外熱交換器14A,14B、アキュムレータ16A,16B、圧縮機11A,11Bの吸込口までは、室外膨張弁15A,15Bによって減圧された、低圧の液冷媒及びガス冷媒が充填されている。この状態で、四方弁13A,13Bを冷房運転時の位置に切替えた場合には、高圧のガス管5と低圧のアキュムレータ16A,16Bとが、四方弁13A,13Bを介して接続されるため、高圧側に充填された液冷媒及びガス冷媒は、この四方弁13A,13Bの前後に生じる圧力差によって、ガス管5を通って低圧側へと流入する。すると、ガス管5に滞留していた冷凍機油は、液冷媒とともに、アキュムレータ16A,16Bを経て圧縮機11A,11Bへ回収される。
【0025】
なお、本実施形態にかかる冷凍機油の回収は、四方弁13A,13Bの前後の圧力差を利用して高圧側の冷媒を低圧側に移動させることによって行うため、高低圧力差が大きい方が有効に冷凍機油の回収ができる。従って、ステップS3において、すべての室外機1A,1B及び室内機3A,3Bを運転停止した直後に、各四方弁13A,13Bを冷房時に位置に切替えることが望ましい。
【0026】
次に、コントローラ20は、回収処理タイマT1が60秒経過したか否か判別し(ステップS6)、60秒経過した場合には、すべての室外機1A,1B及び室内機3A,3Bの運転停止指令を解除し(ステップS7)、四方弁13A,13Bを暖房運転時の位置に戻して、再び空気調和装置50の暖房運転を開始する。これにより、冷凍機油の回収は終了する。
【0027】
本実施形態によれば、暖房運転中に、室外機1A,1B及び室内機3A,3Bを停止し、かつ、室外機1A,1Bの四方弁13A,13Bを冷房運転時の位置に切替え、この冷房運転時の位置に切替わった四方弁13A,13Bの前後の圧力差を用いて、ガス管5に液冷媒を流すことによって、ガス管5内に滞留した冷凍機油を圧縮機11A,11Bへ回収することができるため、冷凍機油が不足することによって圧縮機11A,11Bの潤滑が不十分となることを防止することができる。また、予め圧縮機11A,11Bに封入する冷凍機油の量を極力低減することができるため、コストダウンを図ることができる。
【0028】
なお、この冷凍機油回収動作によって冷凍機油が回収しきれなかった場合であっても、暖房運転を再開直後に、圧縮機11A,11Bの回転速度を上げてガス冷媒の流速を高めることによって、ガス管に残留した冷凍機油を圧縮機11A,11Bへと回収することもできる。すなわち、上記した冷凍機油の回収動作を行うと、ガス管5に液冷媒が流れることによって、ガス管5は冷却されるため、暖房運転を再開した直後の圧縮機11A,11Bの吐出圧力は、当該回収動作前の吐出圧力よりも低下する。従って、圧縮機11A,11Bは、この低下した圧力に相当する分だけ、吐出圧力が上昇するように、圧縮機11A,11Bの回転速度を上げて冷媒循環量を増加させることができる。そのため、ガス管5を通過するガス冷媒の流速は上がり、そのガス冷媒の流速を用いて冷凍機油を押し流すことによってガス管5内に残存した冷凍機油を回収することができる。
【0029】
本実施形態は、2台の室外機1A,1Bと、2台の室内機3A,3Bとを有する空気調和装置について説明しているが、室外機及び室内機の数はこれに限らない。例えば、室外機及び室内機がともに1台の空気調和装置についても適用することが可能である。
【0030】
ところで、空気調和装置50において、例えば、一の室外機1Aの定格容量(以下、容量という)が他の室外機1Bの容量より大きい場合には、一の室外機1Aの冷凍機油量が多くなり、他の室外機1Bの冷凍機油量が不足する傾向にある。一般に、室外機の容量が大きくなるにつれて、冷媒循環量も増加するため、冷媒とともに冷媒管路を循環する冷凍機油は、室外機の容量の大きいものに戻りやすくなるためである。また、室外機1A,1Bの容量が同等であっても、例えば、室外機1Aが冷媒管路の主管の末端に接続され、室外機1Bが主管から分岐した、主管と同径の分岐管の末端に接続されているとした場合、冷媒とともに冷媒管路を循環する冷凍機油は、流体の直進性という性質を有するため、室外機1Aの冷凍機油量が多くなり、室外機1Bの冷凍機油量が不足する傾向にある。
【0031】
このように、室外機によって冷凍機油の量に偏りが生じる場合には、冷凍機油が不足している室外機の圧縮機に冷凍機油が戻るように、冷凍機油を分配回収する必要がある。そこで次に、図3を参照して、各室外機の圧縮機に冷凍機油を分配回収する、別の実施形態にかかる空気調和装置51について説明する。
【0032】
本実施形態にかかる空気調和装置51の構成は上述した空気調和装置50の構成と同様であるので、重複する部分は同じ符号を付して説明を省略する。空気調和装置51は、コントローラ21を備え、このコントローラ21は、室外機1A,1B及び室内機3A,3Bの動作制御を行うとともに、各室外機1A,1Bへの冷凍機油の回収動作(冷凍機油回収手段)及び各室外機1A,1Bに冷凍機油を戻す順序の決定動作(順序決定手段)を制御する。コントローラ21には、回収処理タイマT2が設けられている。この回収処理タイマT2は、冷凍機油の回収動作時間を設定するものであり、所定の時間(例えば、60秒)に設定されている。本実施形態では、冷凍機油を回収するのに十分な時間として、回収動作時間を60秒に設定しているが、ガス管5の配管長に応じて適宜変更することができる。
【0033】
次に、本実施形態にかかる冷凍機油を分配回収する動作について、図4を参照して説明する。なお、本実施形態においても、冷凍機油の回収は、冷房運転時に比べて暖房運転時にガス管5内に冷凍機油が滞留しやすいことに鑑みてなされるものであるため、空気調和装置51が暖房運転されていることが前提となる。
【0034】
始めに、コントローラ21は、冷凍機油の分配回収を実施するか否かを判別する(ステップS21)。具体的には、圧縮機11A,11Bに設けられた油面センサ19A,19Bを用いて、いずれかの圧縮機11A,11Bにおける冷凍機油の量が所定量以下となった場合に、冷凍機油の分配回収を実施する。また、この冷凍機油量に関係なく、所定時間(例えば、2時間)経過するごとに、冷凍機油の分配回収を実施する構成とすることもできる。この判別において、冷凍機油の分配回収を実施する場合には、すべての室外機1A,1B及び室内機3A,3Bを運転停止する(ステップS22)。すなわち、この冷凍機油の分配回収は、暖房運転中の空気調和装置51において、すべての室外機1A,1B及び室内機3A,3Bの運転を停止した状態で実施される。
【0035】
次に、運転を停止したすべての室外機1A,1Bに冷凍機油を戻す順序を決める。この順序の決定は、コントローラ21によって行われ、コントローラ21は、冷凍機油の回収動作を最初に開始する室外機を特定するとともに、この特定した室外機から、遅れて冷凍機油の回収動作を開始する遅延時間を、残りの室外機毎に算出し、この遅延時間に従い順序を決定する。
【0036】
具体的には、室外機番号Y(Y=1,2…、以下同じ)に対応する室外機それぞれについて、回収処理タイマT2の作動から遅れて、該当する四方弁を冷房時の位置に切替える遅延時間TLY(Y=1,2…、以下同じ)を算出する。この室外機番号Yは、複数の室外機の中から、一の室外機を特定するためのものであり、予め設定しておくことができる。本実施形態では、例えば、室外機1Aの室外機番号を1とし、室外機1Bの室外機番号を2と設定することができる。
【0037】
コントローラ21は、室外機番号Yを1にセットし(ステップS23)、この室外機番号Yが1に対応する室外機1Aについて、当該遅延時間TL1を算出する(ステップS24)。そして、室外機番号Yが室外機の台数に至ったか否かを判別する(ステップS25)。この判別において、室外機番号Yが室外機の台数に至っていない場合には、室外機番号Yに1を追加して(ステップS26)、室外機番号Yが2に対応する室外機1Bについて、同様に、遅延時間TL2を算出して(ステップS24)、ステップS27へ移行する。
【0038】
この遅延時間TLYは、以下の数式(1)に示されるように、室外機の容量による係数K_PSYと、室外機の圧縮機内の冷凍機油量による係数K_OLYとから算出される。
【0039】
TLY=K_PSY×K_OLY×20 (秒) (1)
この室外機の容量による係数K_PSYは、以下の数式(2)に示すように、当該室外機の容量PSYと、各室外機の容量の総和ΣPSNとから算出される。また、この冷凍機油量による係数K_OLYは、以下の数式(3)に示すように、当該室外機の圧縮機内の冷凍機油量OLYと、全室外機の圧縮機内における冷凍機油量の最小値Min(OLN)とから算出される。なお、これらの数式において、Nは室外機台数を示しており、本実施形態では、室外機は2台であるため、N=2となる。
【0040】
K_PSY=(ΣPSN−PSY)/ΣPSN (2)
K_OLY=OLY−Min(OLN) (3)
例えば、室外機1A,1Bの容量が等しく、かつ、室外機1Bにおける圧縮機11Bの冷凍機油量が、室外機1Aにおける圧縮機11Aの冷凍機油量に比べて少ない場合における、各室外機1A,1Bの遅延時間TL1,TL2を算出する。各室外機1A,1Bの室外機容量による係数K_PS1,K_PS2は、各室外機1A,1Bの容量が等しいため、(2)式より、K_PS1=K_PS2=1/2となる。また、各室外機1A,1Bの冷凍機油量による係数K_OL1,K_OL2は、圧縮機11Bの方が圧縮機11Aよりも冷凍機油量が少ないため、(3)式より、K_OL1=OL1−OL2、K_OL2=OL2−OL2=0となる。
【0041】
この場合、各室外機1A,1Bの遅延時間TL1,TL2は、(1)式により、TL1=(OL1−OL2)×10(秒)、TL2=0(秒)となり、室外機1Bは、回収処理タイマT2が動作すると同時に、冷凍機油の回収動作を開始し、室外機1Aは、当該回収処理タイマT2が動作した後、時間TL1遅れて、冷凍機油の回収動作を開始する。これにより、冷凍機油の回収動作を最初に開始する室外機は室外機1Bと特定されるとともに、上述のように算出される遅延時間に従って、各室外機に冷凍機油を戻す順序が決定されることとなる。
【0042】
次に、コントローラ21は、決定された冷凍機油を戻す順序に従い、該当する室外機の圧縮機に冷凍機油を回収する。具体的には、ステップS24にて算出した遅延時間TLYに基づき、この遅延時間TLYが経過した室外機の四方弁を順次、冷房時の位置に切替えて、各室外機の圧縮機に冷凍機油を分配回収する。
【0043】
すなわち、コントローラ21は、このコントローラ21に設けられた回収処理タイマT2を動作させ(ステップS27)、所定時間(例えば、60秒)を計測するとともに、室外機番号Yを1にセットし(ステップS28)、室外機番号Yが1に対応する室外機1Aの四方弁13Aが、冷房時の位置にあるか否かを判別する(ステップS29)。この判別において、四方弁13Aが既に冷房時の位置にある場合には、当該四方弁13Aを切替える必要がないため、ステップS32に移行し、冷房時の位置にない場合には、回収処理タイマT2が動作してから遅延時間TL1が経過しているか否か判別する(ステップS30)。この判別において、遅延時間TL1が経過していない場合には、まだ当該四方弁13Aを切替えることができないため、ステップS32に移行し、室外機番号Yが室外機台数に至ったか否かを判別する(ステップS32)。
【0044】
この判別において、室外機番号Yが室外機台数に至っていない場合には、室外機番号Yに1を追加して(ステップS33)、室外機番号Yが2に対応する室外機1Bについて同様の処理を行う(ステップS29〜S32)。
【0045】
ここで、上述のように室外機1Bの遅延時間TL2は、TL2=0(秒)であるため、ステップS30の判別において、遅延時間TL2は経過している。そのため、コントローラ20は、回収処理タイマT2が作動するのとほぼ同時に、この室外機1Bの四方弁13Bを冷房時の位置に切替える(ステップS31)。
【0046】
空気調和装置50は、ステップS22の停止動作に至るまでは、暖房運転されていたため、四方弁13Bを冷房運転時の位置に切替えることによって、高圧のガス管5と低圧のアキュムレータ16Bとが接続されると、高圧側に充填された液冷媒もしくはガス冷媒は、その圧力差によって、ガス管5を通って低圧側へと流入し、アキュムレータ16Bを経て圧縮機11Bへと戻される。この場合、ガス管5に滞留していた冷凍機油は、液管7や室内熱交換器34A,34B内の冷媒とともに圧縮機11Bへ回収される。これにより、冷凍機油の量が少ない室外機1Bについて優先的に冷凍機油を回収することができる。
【0047】
次に、コントローラ21は、回収処理タイマT2が動作して60秒経過したか否かを判別し(ステップS34)、60秒経過していない場合には、経過するまでの間、ステップS28〜S34を繰り返して実行する。これによって、室外機1Bの遅延時間TL2に遅れて、遅延時間TL1が経過する室外機1Aについても、冷凍機油を回収することができる。すなわち、上記ステップS28〜S34を実行する間に、上記遅延時間TL1が経過した(ステップS30)場合には、室外機1Aの四方弁13Aを冷房時の位置に切替える(ステップS31)ことによって、この四方弁13A前後の圧力差を用いてガス管5内に滞留した冷凍機油を圧縮機11Aに回収することができる。
【0048】
回収処理タイマT2が動作して60秒経過した場合、コントローラ21は、各室外機1A,1Bの四方弁13A,13Bを暖房時の位置に戻し、すべての室外機1A,1B及び室内機3A,3Bの運転停止指令を解除して(ステップS35)、再び空気調和装置51の暖房運転を開始する。これにより、冷凍機油の分配回収は終了する。
【0049】
本実施形態によれば、暖房運転中に、室外機1A,1B及び室内機3A,3Bを停止し、各室外機1A,1Bにおける圧縮機11A,11B内の冷凍機油量等から遅延時間を算出し、この遅延時間が経過した室外機から順次、当該室外機の四方弁を冷房時の位置に切替え、この切替わった四方弁の前後の圧力差を用いて、ガス管5内に滞留した冷凍機油を圧縮機11A,11Bへ分配回収するため、冷凍機油が不足することによって圧縮機11A,11Bの潤滑が不十分となることを防止することができる。また、圧縮機11A,11Bに封入する冷凍機油の量を極力低減することができるため、コストダウンを図ることができる
以上、本発明を上記実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本実施形態では、2台の室外機1A,1Bと、2台の室内機3A,3Bとを有する空気調和システムについて説明しているが、室外機及び室内機の数はこれに限らない。
【0050】
【発明の効果】
本発明では、簡単な操作で、暖房時にガス管内に滞留している冷凍機油を圧縮機へ回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一の実施形態にかかる空気調和装置の構成を示す系統図である。
【図2】冷凍機油を回収する処理手順を示すフローチャートである。
【図3】別の実施形態にかかる空気調和装置の構成を示す系統図である。
【図4】冷凍機油を分配回収する処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1A,1B 室外機
3A,3B 室内機
5 ガス管
7 液管
9 ユニット間配管
11A,11B 圧縮機
13A,13B 四方弁
14A,14B 室外熱交換器
19A,19B 油面センサ
20 コントローラ(冷凍機油回収手段)
21 コントローラ(冷凍機油回収手段、順位決定手段)
34A,34B 室内熱交換器
38A,38B 室内膨張弁
50 空気調和装置
51 空気調和装置
TL1,TL2 遅延時間

Claims (6)

  1. 圧縮機、四方弁、室外熱交換器を有する室外機と、室内熱交換器、室内膨張弁を有する室内機とを、ガス管及び液管からなるユニット間配管で接続した空気調和装置において、
    暖房運転中に、室外機及び室内機の運転を停止し、かつ、室外機の四方弁を冷房運転時の位置に切替え、この状態で、冷凍機油を回収するのに十分な時間として予め設定した所定時間、圧縮機の停止を継続する冷凍機油回収手段を備え、
    前記冷凍機油回収手段の動作により、冷房運転時の位置に切替わった四方弁の前後に生じた圧力差を用いて、ガス管に液冷媒を流して当該ガス管内に滞留した冷凍機油を圧縮機へ回収するとともに、暖房運転を再開する際には、当該冷凍機油の回収動作前よりも圧縮機の回転数を上げて、ガス管内を流通する冷媒循環量を増加する運転を実行することを特徴とする空気調和装置。
  2. 圧縮機、四方弁、室外熱交換器を有する複数の室外機と、室内熱交換器、室内膨張弁を有する室内機とを、液管及びガス管からなるユニット間配管で接続した空気調和装置において、
    前記複数の室外機に冷凍機油を戻す順序を決める手段と、
    暖房運転中に、すべての室外機及び室内機の運転を停止し、かつ、決められた順序に従って、該当する室外機の四方弁を冷房運転時の位置に切替え、この状態で、冷凍機油を回収するのに十分な時間として予め設定した所定時間、圧縮機の停止を継続する冷凍機油回収手段とを備え、
    冷房運転時の位置に切替わった各四方弁の前後に生じた圧力差を用いて、ガス管に液冷媒を流して当該ガス管内に滞留した冷凍機油をそれぞれの圧縮機に分配回収するとともに、暖房運転を再開する際には、当該冷凍機油の回収動作前よりも圧縮機の回転数を上げて、ガス管内を流通する冷媒循環量を増加する運転を実行することを特徴とする空気調和装置。
  3. 前記順序を決める手段は、冷凍機油回収動作を最初に開始する室外機を特定するとともに、この特定した室外機から遅れて、冷凍機油回収動作を開始する遅延時間を、残りの各室外機それぞれについて算出し、この遅延時間に従い、室外機に冷凍機油を戻す順序を決定することを特徴とする請求項2に記載の空気調和装置。
  4. 圧縮機、四方弁、室外熱交換器を有する室外機と、室内熱交換器、室内膨張弁を有する室内機とを、液管及びガス管からなるユニット間配管で接続し、このユニット間配管または室内熱交換器に滞留した冷凍機油を圧縮機へ回収する空気調和装置の冷凍機油回収方法において、
    暖房運転中に、室外機及び室内機の運転を停止し、かつ、室外機の四方弁を冷房運転時の位置に切替え、この状態で、冷凍機油を回収するのに十分な時間として予め設定した所定時間、圧縮機の停止を継続する冷凍機油回収過程を備え、
    前記冷凍機油回収過程の実行により、冷房運転時の位置に切替わった四方弁の前後に生じた圧力差を用いて、ガス管に液冷媒を流して当該ガス管内に滞留した冷凍機油を圧縮機へ回収するとともに、暖房運転を再開する際には、当該冷凍機油の回収動作前よりも圧縮機の回転数を上げて、ガス管内を流通する冷媒循環量を増加する運転を実行することを特徴とする冷凍機油回収方法。
  5. 圧縮機、四方弁、室外熱交換器を有する複数の室外機と、室内熱交換器、室内膨張弁を有する室内機とを、液管及びガス管からなるユニット間配管で接続し、このユニット間配管または室内熱交換器に滞留した冷凍機油を圧縮機へ回収する空気調和装置の冷凍機油回収方法において、
    前記複数の室外機に冷凍機油を戻す順序を決める過程と、
    暖房運転中に、すべての室外機及び室内機の運転を停止し、かつ、決められた順序に従って、該当する室外機の四方弁を冷房運転時の位置に切替え、この状態で、冷凍機油を回収するのに十分な時間として予め設定した所定時間、圧縮機の停止を継続し、冷房運転時の位置に切替わった各四方弁の前後に生じた圧力差を用いて、ガス管に液冷媒を流して当 ガス管内に滞留した冷凍機油をそれぞれの圧縮機に分配回収するとともに、暖房運転を再開する際には、当該冷凍機油の回収動作前よりも圧縮機の回転数を上げて、ガス管内を流通する冷媒循環量を増加する運転を実行する、冷凍機油分配回収過程とを備えることを特徴とする空気調和装置の冷凍機油回収方法。
  6. 前記順序を決める過程は、冷凍機油回収動作を最初に開始する室外機を特定するとともに、この特定した室外機から遅れて、冷凍機油回収動作を開始する遅延時間を、残りの各室外機それぞれについて算出し、この遅延時間に従い、室外機に冷凍機油を戻す順序を決定することを特徴とする請求項5に記載の空気調和装置の冷凍機油回収方法。
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