JP4141124B2 - 吸収性物品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、生理用ナプキンや使い捨ておむつなどの吸収性物品に関し、更に詳しくは、漏れ防止効果やドライ感に優れた吸収性物品及びその表面シートに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
本出願人は先に特開平6−142134号公報において、吸収性物品の両側部に複数の襞を有し、該襞の傾倒方向が吸収性物品の中央部に向いている不織布からなる吸収性物品の表面シートを提案した。この表面シートは、着用者にドライ感を与え、また液の吸収速度、吸収量及び液戻りの点でも優れたものである。しかし、液が襞の方向である長手方向に導かれ易いので、吸収性物品の前後端からの液漏れが起こる場合がある。また、襞が線状に肌と接触するので着用者によっては違和感を覚えることがある。更に、液の排泄量が多い場合には襞が過度に濡れてしまい、べたつき感が生じることがある。
【0003】
特開平12−135239号公報には、液の吸収速度を犠牲にすることなく液の吸収容量を活用することを目的として、吸収性物品の長手方向へ延びる複数条の襞を有する不織布からなる透液性シートを備えた吸収性物品が記載されている。この襞は、その頂部及び底部が高密度領域となっており、該頂部と該底部との間が低密度領域となっており、該底部が吸収コアの表面に当接している。しかし、この吸収性物品では、排泄された液が、襞の延びる方向である長手方向に導かれ易く、液の広がりも大きいので、吸収性物品の前後端からの液漏れが起こり易い。また、襞が線状に肌と接触するので着用者が違和感を覚え、また風合いも損なわれる。更に、液の排泄量が多い場合には襞が過度に濡れてしまい、べたつき感が生じる。
【0004】
従って、本発明は、漏れ防止効果に優れ、べたつき感のない吸収性物品を提供することを目的とする。
また本発明は、装着中の違和感がなく、ドライ感を有する吸収性物品を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、液透過性の表面シート、液不透過性の裏面シート及び両シート間に介在された液保持性の吸収体を有し、実質的に縦長形状の吸収性物品において、前記表面シートは多数の曲面状の凸部及び凹部を有し、該凸部及び該凹部は、該表面シートが前記吸収性物品の少なくとも長手方向に起伏を繰り返すように配置されていると共に前記吸収性物品における肌当接面の所定領域に偏在しており、該凸部は、これを平面視した面積の総和が該肌当接面の面積の5〜60%であると共に個々の該面積が5mm2超400mm2未満である吸収性物品を提供することにより前記目的を達成したものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の吸収性物品の一例としての生理用ナプキンを一部破断した斜視図が示されている。また図2には、図1に示される生理用ナプキンにおける表面シートの側部における要部拡大図が示されており、図3には図2における要部拡大断面図が示されている。
【0007】
図1に示すように、本実施形態の生理用ナプキン1は実質的に縦長の形状をしており、液透過性の表面シート2、液不透過性の裏面シート3、及び両シート間に介在された液保持性の吸収体4を有している。表面シート2は、吸収体4の上面全域を覆っている。更に表面シート2は、吸収体4の左右両側縁から下面側に折り込まれて、吸収体4の下面における左右両側部を覆っている。そして、吸収体4の下面に折り込まれた表面シート2が、ホットメルト粘着剤等の所定の接合手段によって裏面シート3と接合されている。また、表面シート2及び裏面シート3は何れも吸収体4の前後端縁から外方に延出しており、延出した表面シート2と裏面シート3とが、ヒートシール等の所定の接合手段によって接合されている。裏面シート3の外面には、ナプキン1を着衣に固定するための粘着剤(図示せず)が塗布されている。粘着剤は、ナプキン1の幅方向へ延びるストライプ状に複数本塗布されている。
【0008】
裏面シート3及び吸収体4としては、吸収性物品の技術分野において公知のものを特に制限無く用いることができる。例えば裏面シート3としては、液不透過性である合成樹脂製のフィルムを用いることができる。斯かるフィルムは透湿性を有していてもよい。吸収体としては、パルプと高吸収性ポリマーの粒子との混合物や、高吸収性ポリマーの粒子がパルプに結合してなる吸収紙などを用いることができる。
【0009】
而して、本実施形態のナプキン1においては、図1〜図3に示すように、表面シート2が個々に独立した多数の凸部21及び凹部22を有している。凸部21と凹部22とは、ナプキン1の肌当接面、即ち表面シート2における肌対向面の左右両側部の位置に、長手方向へ延びるようにそれぞれ偏在している。表面シート2の幅方向中央部には凸部21及び凹部22は存在していない。また凸部21と凹部22とは、ナプキン1の長手方向及び幅方向に表面シート2が起伏を繰り返すように交互に且つ千鳥状に規則的に配列されている。凸部21は凸状曲面からなり、一方凹部22は凹状曲面からなっている。斯かる凸状曲面と凹状曲面とは、曲面を描くように滑らかに連接している。凸部21及び凹部22は何れも扁平な半球状の形状をしており、凹部22は凸部21を反転させた形状となっている。凸部21と凹部22とが、ナプキン1の長手方向に起伏を繰り返すように且つ個々に独立して配置されていることによって、ナプキン1が、その幅方向横断線を折り曲げ線として変形して折れ曲がり易くなり、着用者の身体へのフィット性が向上する。長手方向へ延びる襞を有する従来のナプキンでは、その幅方向横断線を折り曲げ線とする折れ曲がり(変形)が、該襞の存在によって起こりにくい。凸部21及び凹部22が個々に独立しているとは、各凸部21及び各凹部22が、ナプキン1の長手方向又は幅方向に延びた細長い形状ではないことを意味し、例えば長手方向の長さと幅方向の長さとの比が0.5〜2程度であれば、個々に独立している形状であるといえる。
【0010】
凸部12及び凹部22は、それぞれナプキン1の長手方向及び幅方向のピッチが1〜10mm、特に2〜5mmとなるように配列されていることが、肌との接触面積を低減してドライ感を与える点から好ましい。また排出された液が表面を伝って流れてしまうこと、つまりナプキン1の周縁に向かって液が流れてしまうことを効果的に防止する点から好ましい。凸部12及び凹部22は、或る一つの凸部に着目したとき、該凸部の前後及び左右に凹部が存在するように配され、且つ或る一つの凹部に着目したとき、該凹部の前後及び左右に凸部存在するように配されていることが、表面シート2の表面を液が伝って流れてしまうことを効果的に防止し得る点から好ましい。
【0011】
表面シート2は、肌対向面となる第1の層23と、該第1の層23の吸収体対向面側に配された第2の層24との2層構造となっている。第1の層23は不織布から構成されている。一方第2の層24は、液透過性を有する所定のシート材から構成されている。シート材の詳細については後述する。両層23,24は、圧着、融着又はこれらの組み合わせ等の所定の接合手段によって部分的に接合されている。表面シート2を多層構造とし且つ部分的に接合することで、同坪量の単層構造のシートよりも、柔らかさを維持しつつ、凹凸形状を保持し得るという二律背反の条件を満たすことができるという利点がある。以下、表面シート2における肌対向面を表面ともいい、また吸収体対向面を裏面ともいう。
【0012】
表面シート2における個々の凸部21は、平面視してその面積が5mm2超400mm2未満であり、好ましくは15〜50mm2である。面積が5mm2以下では、ナプキン1の使用時における着用者の身体との接触面積が高くなり、十分なドライ感を得ることができず、400mm2以上では着用者の体圧に対して凹凸形状を維持することが困難となり、結果として凹凸形状が潰れてしまい、やはり着用者の身体との接触面積が高くなってしまう。
【0013】
ナプキン1の肌当接面、即ち表面シート2における肌対向面に対する、平面視での凸部21の面積の総和の割合(以下、凸部面積率という)は、5〜60%であり、好ましくは15〜60%、更に好ましくは25〜45%である。凸部面積率が5%未満では、凸部21の割合が低くなり過ぎて、ナプキン1の使用時における着用者の身体との接触面積が高くなり、十分なドライ感を得ることができない。60%以上では、着用者の体圧に対して凹凸形状を維持することが困難となり、結果として凹凸形状が潰れてしまい、やはり着用者の身体との接触面積が高くなってしまう。
【0014】
個々の凸部21の面積及び凸部面積率は次の方法で測定される。先ず、三菱鉛筆(株)社製のスタンプ台〔ユニスタンプHSP−2G(商品名)〕のスタンプ面を表面シート2の表面側に載せ、その上に2kgの重りを載せて30秒間放置する。スタンプ台及び重りを取り除いた後、表面シート2の表面側の画像を取り込む。画像の取り込みには、光源〔サンライトSL−230K2;LPL(株)社製〕、スタンド〔コピースタンドCS−5:LPL(株)社製〕、レンズ(24mm/F2,8Dニッコールレンズ)、CCDカメラ〔(HV−37;日立電子(株)社製)Fマウントによるレンズとの接続〕及びビデオボード〔スペクトラ3200;カノーブス(株)社製〕を用いた。取り込まれた画像をNEXUS社製の画像解析ソフト(ver.3.08)で二値化処理する。二値化処理された画像から、スタンプで着色された部分の面積の平均値を求め、これを凸部21一個の面積とする(但し、スタンプで着色された部分が連続パターンの場合には、一パターンの面積とする。)。次に、スタンプで着色された部分の全面積を画像の全面積で除すことで凸部面積率(%)を求める。凸部の面積の測定が困難な場合は、スタンプで着色された部分を画面上で塗りつぶす等の補助的な処理を行う。
【0015】
図3に示すように、表面シート2を構成する第1の層23と第2の層24とは部分的に接合されている。そして、両層の接合部以外の部位は離間可能になっている。その結果、ナプキン1の装着中に着用者の動作に連れて表面シート2が動く場合、第1の層23と第2の層24とで別々の動きをすることができ、柔らかい感覚を着用者に与えられる。
【0016】
第1の層23と第2の層24との接合の程度は、ナプキン1の着用中に着用者の動作に連れて表面シート2が動いた場合に、両層が剥離しない程度であればよい。また、両層の接合の程度は、表面シート2の凹凸形状が保持され得る程度であることが好ましい。
【0017】
本実施形態における表面シート2が以上の構成を有していることにより、以下の(a)〜(d)の効果が主として奏される。
(a)表面シート2が多数の凸部21及び凹部22を有しているので、着用者の肌との接触面積が低減し、ドライ感が得られる。しかも凸部21及び凹部22は、着用者の肌が最も当たりやすいナプキン1の左右両側部にそれぞれ偏在しているので、ドライ感が一層向上する。また液の横漏れも効果的に防止される。特に、ナプキンの両側部外方に着衣固定用の一対のウイング部が形成されているナプキンでは、ナプキンの両側部が着用者の肌に一層当たり易いので、該両側部に凸部12及び凹部22を形成することが極めて効果的である。その上、凸部21及び凹部22は滑らかな曲面形状をしているので、着用時の違和感が低減される。
(b)凸部21及び凹部22は、長手方向及び幅方向に表面シート2が起伏を繰り返すように配置されているので、表面シート2の表面を伝って流れる液が堰き止めらると共に液流れの経路が分散され、漏れ防止効果が高くなる。また、横漏れが防止されることは前述の通りであるが、これに加えて、前述した従来技術の吸収性物品と異なり、ナプキン1の前後端部からの液漏れも防止される。
(c)凸部21は、個々の面積及び凸部面積率がそれぞれ前述の範囲なので、表面シートの表面積が大きくなり、液の吸収速度及び吸収容量が大きくなる。従って、多量の液が一度に排泄されても、十分に液を吸収するだけの吸収性能があり、液漏れを防止することができる。
(d)表面シート2の肌対向面が風合いの良好な不織布から構成されているので、表面シート2の肌触りが良好となり、快適な装着感が得られる。
【0018】
表面シート2における第1の層23を構成する不織布としては、例えばエアスルー不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布などが挙げられ、特に風合いの点からエアスルー不織布やスパンボンド不織布を用いることが好ましい。不織布が疎水性の場合には、所定の親水化処理を施すことが好ましい。不織布の坪量は、5〜50g/m2、特に10〜25g/m2であることが、十分な強度の確保、凸部21及び凹部22の成形性の確保、並びに凸部21及び凹部22の風合いの維持の点から好ましい。
【0019】
不織布を構成する繊維としては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィンからなる繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルからなる繊維、ポリアミドからなる繊維などの単一繊維、及びこれらの樹脂を構成材料とする芯鞘型やサイド・バイ・サイド型の複合繊維を用いることができる。繊維径は、0.5〜6dtex、特に1〜3dtexであることが、不織布の肌触りが良好になる点から好ましい。繊維長は、不織布の製造方法に応じて長繊維及び短繊維の何れもが用いられる。
【0020】
表面シート2における第2の層24を構成するシート材としては、液透過性のものが用いられる。シート材の例としては、不織布、ポリウレタン等の弾性材料から構成される発泡シート、乾式パルプシート、紙、開孔フィルムなどが挙げられる。これらのうち、表面シート2の風合いや液透過性の向上の点から、不織布や乾式パルプシートを用いることが好ましい。
【0021】
シート材として不織布が用いられる場合、その詳細は、前述した第1の層23を構成する不織布と同様である。シート材として乾式パルプシートが用いられる場合、該乾式パルプシートとしては坪量が30〜60g/m2、特に40〜50g/m2のものであることが、該乾式パルプシートの肌触り及び吸液性が良好になる点から好ましい。乾式パルプシートは、エアレイ法によってパルプをシート状に堆積させ、所定のバインダーによってパルプ間を結合させて得られるシートである。
【0022】
表面シート2は、多数の凸部21及び凹部22を有していることから、該凸部21及び該凹部22が形成されている領域、即ち両側部においては嵩高な構造となっている。その結果、表面シート2は、凸部21及び凹部22が形成されている領域の厚みが好ましくは0.3〜3mm、更に好ましくは0.5〜2mmといった厚みの大きなものとなる。厚みは次の方法で測定される。表面シート2から凸部21及び凹部22が形成されている領域を50mm×50mmの大きさの矩形状に切り出し測定片を採取する。測定片の厚みを、30mmφの大きさの円形測定子を取り付けたMitutoyo Corp.製のハンド厚み計ID−C112CB(商品名)を使用して測定する(荷重約0.11N/cm2)。5枚の測定片について厚みを測定し、その平均値を表面シート2における凸部21及び凹部22が形成されている領域の厚みとする。
【0023】
一方、表面シート2における凸部21及び凹部22が形成されていない領域、即ち中央部における厚みは0.05〜1mm、特に0.1〜0.5mmであることが、該中央部が肌に密着するようになり液流れが効果的に防止される点から好ましい。
【0024】
表面シート2は、その坪量が、20〜80g/m2、特に25〜60g/m2であることが、肌触り(柔らかさ及び滑らかさ)を良くし、ドライ感を向上させる点から好ましい。
【0025】
表面シート2は、次の方法で好ましく製造される。まず、第1の層23を構成する不織布と、第2の層24を構成するシート材とを重ね合わせる。次に、所定の凹凸賦形手段によって多数の凸部及び凹部を所定領域にのみ形成し、表面シートが得られる。
【0026】
凹凸賦形手段としては、例えば所定温度に加熱されたスチールマッチエンボス(噛み合わせエンボス)装置を用いることができる。スチールマッチエンボス装置を用いると、第1の層23と第2の層24との接合を部分的に行うことが容易となり、第1の層23と第2の層24とが離間可能となった表面シート2を容易に製造できる。即ち、スチールマッチエンボスにおける強く噛み合わされる部位において両層が接合される。従って、第1の層23と第2の層24との接合部位は、スチールマッチエンボスにおけるエンボス(噛み合わせ)の形状によって所望の部位とすることができる。スチールマッチエンボス装置の具体例としては、本出願人の先の出願に係る特開2001−20168号公報の図2(a)及び(b)に記載の装置を用いることができる。
【0027】
次に、本発明の吸収性物品の別の実施形態について説明する。これらの実施形態については、前述の実施形態と異なる点についてのみ説明し、特に説明しない点については、前述の実施形態に関して詳述した説明が適宜適用される。また、以下に説明する図において、図1〜図3と同じ部材に同じ符号を付してある。
【0028】
図4(a)〜図4(c)には、本発明の吸収性物品に用いられる表面シートの別の形態が示されている。図4(a)に示す表面シートおいては、凸部21の頂部21aに、該表面シートを貫通する開孔25aが形成されている。また、凸部21の頂部近傍21bに、やはり表面シートを貫通する開孔25bが形成されている。更に、凹部22においては、その底部22a及びその近傍それぞれに、表面シートを貫通する開孔25c,25dが形成されている。凸部21の頂部及び/又はその近傍に、開孔が形成されていることで、着用者の肌に最も接する部分である凸部21の頂部及び/又はその近傍の通気性が良好となり、表面シートが肌にべたつかなくなる。更に、液の透過性、特に粘性の高い液の透過性が良好となる。液の透過性は、凹部22の底部22a及びその近傍にも開孔25c,25dが形成されていることで一層良好となる。
【0029】
図4(b)に示す表面シートにおいては、凹部22の底部22aにのみ、表面シートを貫通する開孔25cが形成されている。図4(c)に示す表面シートにおいては、第1の層23及び第2の層24のうちの第1の層23にのみ開孔25a、25b、25c及び25dが形成されていて、第2の層24には開孔が形成されていない。この場合には、第2の層24は液透過性である必要があり、更に第1の層23の厚みは大きいことが望ましい。これらの表面シートにおいても、図4(a)に示す表面シートと同様に液の透過性が良好となる。
【0030】
表面シート2に開孔が形成されている場合、該開孔の径は、表面シートの通気性及び液透過性を十分に確保し、ドライ感を得る点から、0.5〜3mm、特に1〜2mmであることが好ましい。この場合、凸部21の頂部21a及びその近傍21bに形成されている開孔25a,25bと、凹部22の底部22a及びその近傍に形成されている開孔25c,25dとの開孔径は同じでもよく、或いは異なっていてもよい。特に、開孔を形成したことに起因する肌触りの低下を防止し、またドライ感を得る点から、凸部21の頂部21a及びその近傍21bに形成されている開孔25a,25bの径は、凹部22の底部22a及びその近傍に形成されている開孔25c,25dの径の10〜100%、とりわけ30〜70%であることが好ましい。
【0031】
表面シートの肌対向面全体の面積に対する全開孔(開孔25a,25b,25c,25d)の面積の割合(以下、全開孔面積率という)は、1〜30%、特に8〜20%であることが、表面シートの通気性及び液透過性を確保して、ドライ感を向上させる点から好ましい。
【0032】
開孔の径及び全開孔面積率は次の方法で測定される。前述した光源、スタンド、レンズ、CCDカメラ及びビデオボードを用い、表面シートの表面側の画像を取り込む。取り込まれた画像を前述した画像解析ソフトで二値化処理する。二値化処理された画像から、開孔の円相当径を求め、これを開孔径とする。また、二値化処理された部分の全面積を画像の全面積で除すことで全開孔面積率(%)を求める。開孔径の測定が困難な場合は、画面上で開孔の部分を塗りつぶす等の補助的な処理を行う。
【0033】
開孔を形成する手段としては、例えば所定温度に加熱された穿孔ピンと、該ピンが挿入される受け部材とを備えた開孔装置を用いることができる。この場合、径の異なる穿孔ピンを2種類用いることで、凸部21の頂部21aに形成される開孔25aの径と、凹部22の底部22aに形成される開孔25cの径とを異ならせることができる。開孔装置の具体例としては、本出願人の先の出願に係る特開平6−330443号公報の図1〜図11に記載の装置を用いることができる。図4(a)及び図4(b)に示す表面シートは、第1の層23と第2の層24とを重ね合わせた後に前記開孔装置を用いて開孔を形成した後に、前記スチールマッチエンボス装置によって凸部及び凹部を形成することで得られる。図4(c)に示す表面シートは、前記開孔装置を用いて第1の層23に開孔を形成した後に、これを第2の層24と重ね合わせ、次いで前記スチールマッチエンボス装置によって凸部及び凹部を形成することで得られる。
【0034】
図4(a)及び図4(b)に示す表面シートは、前記方法とは別に、開孔の形成と凸部及び凹部の形成とを同時に行う方法を用いても製造できる。この方法では、前述したスチールマッチエンボス装置における下側ロール凹部に開孔形成用の穿孔ピンが取り付けられ、また上側ロール凸部に該穿孔ピンを受けとめる凹状のくぼみが形成されたものを用いる。
【0035】
図5(a)及び図5(b)には、凸部21及び凹部22の偏在パターンの別の例が示されている。図5(a)に示すナプキンにおいては、凸部21及び凹部22が、表面シート2における肌対向面の前後端部の位置に、幅方向へ延びるように偏在している。そして、長手方向中央部には凸部及び凹部は存在していない。図5(b)に示すナプキンにおいては、凸部21及び凹部22が、着用者の排泄部位を取り囲む環を形成するように偏在している。そして、ナプキン1の中心部(着用者の排泄部位に対応する領域)及び周縁部には凸部及び凹部は存在していない。図5(a)に示すナプキンは、特にナプキンの前後端からの漏れ防止に優れている。図5(b)に示すナプキンは、ナプキンの前後左右いずれの方向からの漏れも防止できる。図5(a)及び図5(b)に示す何れのナプキンにおいても、凸部21及び凹部22は千鳥状に配置されている。
【0036】
図6(a)及び図6(b)は、凸部の形状の別の例を示している。図6(a)及び図6(b)は何れも、凸部及凹部がびナプキンの両側部に長手方向へ偏在している場合の例であり、左側がナプキンの中央部寄りで、右側がナプキンの側縁部寄りに位置していることを表している。尚、図6(a)及び図6(b)には凹部は示されていないが、凸部間に凹部が位置している。図6(a)においては、2種類の形状の凸部21a,21bが形成されている。各凸部21a,21bは、ナプキンの長手方向へ延びる列を形成しており、凸部21aの列がナプキンの中央部寄りに位置している。凸部21a,21bは千鳥状に配置されている。凸部21aは扁平な半球の形状をしている。凸部21bは底面が矩形のドーム状の形状をしている。このように形状の異なる2種類の凸部を列状に且つ千鳥状に配置することによって、排泄された液がナプキン1の幅方向へ流れるときに、必ずどれかの凸部に当たることになり、これによって液が分散されて、その吸収が促進される〔図6(a)中、矢印で液の流れを示す〕。また分散された液が凹部内に流れ込み易くなり、流れ込んだ液が該凹部で一旦保持されて容易に吸収されるようになる。これらの結果、ナプキン1の両側部での液の拡がりが効果的に防止される。
【0037】
図6(b)においては、形状は同じであるが大きさの異なる3種類の凸部21c,21d,21eが形成されている。各凸部21c,21d,21eは、ナプキンの長手方向へ延びる列を形成しており、凸部21cの列がナプキンのもっとも中央部寄りに位置し、凸部21eがナプキンのもっとも側縁部寄りに位置している。各凸部21c,21d,21eは、何れも扁平な半球の形状をしており、その大きさ(平面視での径及び凸部の高さ)が、ナプキンの側縁部に向かうにつれ漸次大きくなっている。この場合、各列における凸部のピッチは同じになている。また列間の距離は、ナプキンの側縁部に向かうにつれ大きくなっている。凸部の大きさがナプキンの側縁部に向かうにつれて漸次大きくなるように複数種類の凸部を列状に配置することによって、側縁部に向かって吸収容量が次第に大きくなり、また側縁部に向かって液の障壁効果が次第に高くなり、液漏れが効果的に防止される。
【0038】
本発明は前記実施形態に制限されない。例えば、凸部及び凹部は、所定領域に偏在していれば、その配置は規則的でなくてもよい、また凸部及び凹部の形状は前述したもの以外でもよい。
【0039】
また図1及び図5(a)に示すナプキンにおいては、凸部及び凹部がそれぞれナプキンの長手方向及び幅方向に連続して偏在していたが、一部不連続になっていてもよい。また図5(b)に示すナプキンにおいては、凸部及び凹部によって実質的に連続した環が形成されていればよく、一部不連続になっていてもよい。また、凸部及び凹部は、ナプキンの周縁部の位置に、連続して又は不連続に偏在していてもよい。
【0040】
また図4(a)及び図4(b)に示す実施形態においては、開孔25a,25b,25c,25dのうちのすべて又はその一部が立体形状となっていてもよい。具体的には、開孔は、表面シート2がその表面側から裏面側に向かって延出して形成されていてもよい。これによって、開孔の周縁は、表面シートの表面及びその近傍には存せず、裏面側に位置することになる。また、各開孔の周縁では、第1の層23と第2の層24とが接合されて、繊維密度が高くなる。各開孔の周縁の繊維密度が高いことで、毛管現象に起因して液が該周縁に集まり易くなる。開孔の周縁は、開孔の工程によって一般に硬くなり易いが、その硬い部位が表面シートの裏面側に位置することになるので、表面シートの風合いが損なわれなくなる。一方、凹部22の底部22a及びその近傍に形成された開孔25c,25dでは、液が集まっている前記周縁が吸収体に良好に接するので、液が吸収体へ円滑に移動し、表面シートが肌にべたつきにくくなる。
【0041】
また、前記実施形態においては、表面シート2は、第1の層23及び第2の層24の2層構造であったが、これに代えて不織布からなる第1の層23のみで表面シートを構成してもよい。或いは、必要に応じ、3層以上の多層構造でもよい。また、第1の層23を不織布から構成することに代えて、開孔フィルムなどの他のシート材から構成してもよい。
【0042】
また、前記実施形態は相互に置換可能である。
【0043】
本発明は、前述した生理用ナプキンに限られず、失禁パッドや使い捨ておむつなどの他の吸収性物品にも同様に適用できる。
【0044】
【実施例】
〔実施例1〕
以下の表1に示す第1の層及び第2の層を重ね合わせ、90℃に加熱されたスチールマッチエンボス装置によって個々に独立した多数の凸部及び凹部を形成し、図3に示す表面シートを得た。第1の層と第2の層とは部分的に接合していた。凸部及び凹部の形状は図6(b)に示すものであり、凸部及び凹部が形成されている部分の厚みは1.6mmであり、凸部及び凹部はナプキンの両側縁部に偏在していた。
【0045】
得られた表面シート、並びにポリエチレン製のフィルムからなる裏面シート及びパルプと高吸収性ポリマーの粒子とからなる吸収体〔花王株式会社製の生理用ナプキンである「ロリエ(登録商標)さらさらクッションウイングなし」の吸収体〕を用いて、生理用ナプキンを得た。
【0046】
〔実施例2〕
以下の表1に示す第1の層を用い、穿孔ピン及び該ピンの受け部材を備えた開孔装置を用いて該第1の層を貫通する開孔を形成した。次いで、この穿孔不織布に、以下の表1に示す第2の層を重ね合わせ、90℃に加熱されたスチールマッチエンボス装置によって多数の凸部及び凹部を形成し、図4(c)に示す表面シートを得た。第1の層と第2の層とは部分的に接合していた。凸部及び凹部の偏在パターンは図5(a)に示すものであり、凸部及び凹部が形成されている部分の厚みは1.6mmであり、凸部及び凹部はナプキンの前後端部に偏在していた。その後は実施例1と同様にして生理用ナプキンを得た。
【0047】
〔実施例3〕
以下の表1に示す第1の層及び第2の層を重ね合わせ、穿孔ピン及び該ピンの受け部材を備えた開孔装置を用いて両層を貫通する開孔を形成した。穿孔ピンは125℃に加熱されていた。次いで、90℃に加熱されたスチールマッチエンボス装置によって多数の凸部及び凹部を形成し、図4(a)に示す表面シートを得た。第1の層と第2の層とは部分的に接合していた。凸部及び凹部の偏在パターンは図1に示すものであり、凸部及び凹部が形成されている部分の厚みは1.6mmであり、凸部及び凹部はナプキンの両側部に偏在していた。その後は実施例1と同様にして生理用ナプキンを得た。
【0048】
〔実施例4〕
以下の表1に示す不織布を用い、90℃に加熱されたスチールマッチエンボス装置によって多数の凸部及び凹部を形成し、図1〜図3に示す表面シートを得た。凸部及び凹部が形成されている部分の厚みは1.4mmであった。但し、図3に示す表面シートとは異なり、本実施例の表面シートは単層である。その後は実施例1と同様にして生理用ナプキンを得た。
【0049】
〔実施例5〕
以下の表1に示す第1の層及び第2の層を重ね合わせ、穿孔ピン及び該ピンの受け部材を備えた開孔装置を用いて両層を貫通する開孔を形成した。穿孔ピンは125℃に加熱されていた。次いで、90℃に加熱されたスチールマッチエンボス装置によって多数の凸部及び凹部を形成し、図4(a)に示す表面シートを得た。凸部及び凹部の形状は図6(a)に示すものであり、凸部及び凹部が形成されている部分の厚みは1.3mmであり、凸部及び凹部はナプキンの周縁部に偏在していた。その後は実施例1と同様にして生理用ナプキンを得た。
【0050】
〔実施例6〕
以下の表1に示す第1の層を用い、穿孔ピン及び該ピンの受け部材を備えた開孔装置を用いて該第1の層を貫通する開孔を形成した。次いで、この穿孔不織布に、以下の表1に示す第2の層を重ね合わせ、90℃に加熱されたスチールマッチエンボス装置によって多数の凸部及び凹部を形成し、図4(c)に示す表面シートを得た。第1の層と第2の層とは部分的に接合していた。凸部及び凹部の偏在パターンは図1に示すものであり、凸部及び凹部が形成されている部分の厚みは2mmであり、凸部及び凹部はナプキンの両側部に偏在していた。その後は実施例1と同様にして生理用ナプキンを得た。
【0051】
〔比較例1〕
以下の表1に示す不織布を用い、特開平6−142134号公報の図1に記載の表面シートを得た。この表面シートは、ナプキンの両側部に4本ずつの襞を有し、該襞の傾倒方向がナプキンの中央部に向いているものであった。襞形成前の不織布の幅は170mmであり、襞形成後の不織布の幅は120mmであった。その後は実施例1と同様にして生理用ナプキンを得た。
【0052】
〔比較例2〕
襞を形成しない以外は比較例1と同様にして表面シートを得、得られた表面シートを用いて生理用ナプキンを得た。この表面シートはフラットなものであった。
【0053】
〔性能評価〕
実施例及び比較例で得られた表面シートにおける個々の凸部の面積、凸部面積率、開孔径、全開孔面積率、凸部のピッチ、表面シートにおける凸部及び凹部が形成された領域の厚みを前述の方法で測定した。その結果を表1に示す。また、表面シートの風合いを以下の方法で評価した。更に、表面シートの液流れ時間を以下の方法で測定した。これらの結果を表2に示す。
【0054】
〔表面シートの風合い〕
表面シートを見えない状態にして、20人の女性に表面シートを触らせ、その風合いを評価させた。風合いは、(1)柔らかさ、(2)滑らかさ及び(3)耐べたつきの3つの感触で評価させた。評価は5段階数値で行い、20人の平均値をとった。数値は大きいほど良好であること示す。但し、耐べたつきは、表面シートを、凝血(後述する液流れ時間の測定にも用いる)でウエット状態とした後に評価した。
(1)柔らかさ
5;柔らかい、4:やや柔らかい、3;どちらともいえない、2:やや硬い、1:硬い
(2)滑らかさ
5;滑らか、4:やや滑らか、3;どちらともいえない、2:ややざらつく、1:ざらつく
(3)耐べたつき
5;さらっとしている、4:ややさらっとしている、3;どちらともいえない、2:ややべたつく、1:べたつく
【0055】
〔液流れ時間〕
実施例及び比較例で得られたナプキンにおける表面シートを、花王株式会社製の生理用ナプキンである「ロリエ(登録商標)さらさらクッションウイングなし」から取り出した吸収体上に載せ、中央部を長手方向に50mm、幅方向に30mmの大きさに切り出し試験片を作製した。試験片を、表面シートが上を向くように、45度に傾斜したプレート上に載せた。試験片は、その長手方向がプレートの傾斜方向と一致するようにプレート上に載せられた。次いでプラスチック製の平らな板を用いて、試験片を2,3度軽く押さえ試験片の浮きをなくした。試験片の上端中央部にチューブの一端を接触させ、該チューブを通じて凝血を1g/10sの速度で供給した。凝血が試験片を伝って流れ落ち、その下端に達するまでの時間を測定し、5回の測定値の平均値を液流れ時間とした。液流れ時間は、長いほど液流れ防止性が高いことを意味する。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
表1及び表2に示す結果から明らかなように、各実施例の表面シートは、風合いが良好であり、しかも液流れ防止性が高いことが判る。これに対して各比較例の表面シートは、風合いが悪く、液流れが起こり易いことが判る。各比較例の表面シートは、特にべたつき感が大きいことが判る。
【0059】
【発明の効果】
本発明によれば、漏れ防止効果に優れ、また液が残留しにくく、べたつき感のない吸収性物品が得られる。
また本発明によれば、液の透過性が高い吸収性物品が得られる。
また本発明は、肌との接触面積が小さく、装着中の違和感がなく、ドライ感を有する吸収性物品が得られる。
更に本発明によれば、肌触りが良好であり、快適な装着感がある吸収性物品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の吸収性物品の一例としての生理用ナプキンを一部破断して示す斜視図である。
【図2】図2は、図1に示される生理用ナプキンにおける表面シートの側部における要部拡大図である。
【図3】図3は図2における要部拡大断面図である。
【図4】図4(a)、図4(b)及び図4(c)はそれぞれ、表面シートの別の形態を示す断面図(図3相当図)である。
【図5】図5(a)及び図5(b)はそれぞれ、凸部及び凹部の偏在パターンの別の例を示す図(図1相当図)である。
【図6】図6(a)及び図6(b)はそれぞれ、凸部の形状の別の例を示す図である。
【符号の説明】
1 生理用ナプキン(吸収性物品)
2 表面シート
3 裏面シート
4 吸収体
21 凸部
21a 頂部
22 凹部
22a 底部
23 第1の層
24 第2の層
25a,25b,25c,25d 開孔
Claims (5)
- 液透過性の表面シート、液不透過性の裏面シート及び両シート間に介在された液保持性の吸収体を有し、実質的に縦長形状の吸収性物品において、
前記表面シートは、個々に独立した多数の曲面状の凸部及び凹部を有し、該凸部及び該凹部は、該表面シートが前記吸収性物品の長手方向及び幅方向に起伏を繰り返すように、交互に且つ千鳥状に規則的に配置されており、該凸部は半球状の凸状曲面からなり、該凹部は該凸部を反転させた凹状曲面からなり、該凸状曲面と該凹状曲面とは曲面を描くように滑らかに連接しており、
前記凸部及び前記凹部は、前記吸収性物品における肌当接面の左右両側部及び又は前後端部に偏在しており、該凸部は、これを平面視した面積の総和が該肌当接面の面積の15〜60%であると共に個々の該面積が5mm2超400mm2未満である吸収性物品。 - 前記表面シートが不織布及びシート材からなる多層構造をしており、少なくともその肌対向面が前記不織布から構成されており、重ね合わせた該不織布及び前記シート材にスチールマッチエンボス装置によって凹凸賦形を施すことにより、前記凸部及び前記凹部が形成されている請求項1記載の吸収性物品。
- 前記不織布と前記シート材とが部分的に接合されて、両者の接合部以外の部位では両者が離間可能になっている請求項2記載の吸収性物品。
- 前記凹部の底部に、前記表面シートを貫通する開孔が形成されている請求項1〜3の何れかに記載の吸収性物品。
- 前記凸部及び前記凹部には、前記表面シートを貫通する開孔が形成されていない請求項1〜3の何れかに記載の吸収性物品。
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