JP4140475B2 - 高分子光導波路作製用原盤及び高分子光導波路の製造方法 - Google Patents

高分子光導波路作製用原盤及び高分子光導波路の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、フレキシブルな高分子光導波路を作製するための高分子光導波路作製用原盤、及び高分子光導波路の製造方法、並びに口径変換を行う口径変換型高分子光導波路に関する。
高分子導波路の製造方法としては、(1)フイルムにモノマーを含浸させてコア部を選択的に露光して屈折率を変化させフイルムを張り合わせる方法(選択重合法)。(2)コア層クラッド層を塗布後、反応性イオンエチングを用いてクラッド部を形成する方法(RIE法)。(3)高分子材料中に感光性の材料を添加した紫外線硬化樹脂を用いて、露光・現像するフォトリソグラフィー法を用いる方法(直接露光法)。(4)射出成形利用法。(5)コア層クラッド層を塗布後、コア部を露光してコア部の屈折率を変化させる方法(フォトブリーチング法)等が提案されている。しかし、(1)の選択重合法はフイルムの張り合わせに問題がある。(2)や(3)方法は、フォトリソグラフィー法を使うためコスト高になる。(4)は、コア径の精度に課題がある。(5)は十分な屈折率差が取れないと言う課題がある。現在、性能的に優れた実用的な方法は、(2)や(3)だけであるが、どの技術も大面積でフレキシブルな基材に形成した高分子導波路の製造方法は無いのが現状である。
一方、シャープ(株)のデビット・ハートはキャピラリーとなる溝のパターンが形成された基板と平板とをクランプ用治具で密着させ、減圧させてモノマー溶液をキャピラリーに充填させることで製造する高分子光導波路の製造方法を提案している(以下の特許文献1参照)。しかし、この方法はクランプを用いて平板と密着させないとコア部以外にもモノマー溶液が含浸し精密な導波路構造を形成できないことと、また、モノマー溶液が高分子に反応して固化するときに体積変化を起こしコアの形状が変化するという欠点を持つ。また、キャピラリーを除去するときにモノマー溶液が反応した高分子とキャピラリーが部分的に接着していることから、コア形状を崩してしまうという欠点を持つ。
また、最近、ハーバード大学のGeorge M. Whitesides らは、ナノ構造を作る新技術としてソフトリソグラフィーの一つとして毛細管マイクロモールドと言う方法を提唱している。これは、フォトリソグラフィーを利用してマスター基板を作り、ポリジメチルシロキサン(PDMS)の密着性と容易な剥離性を利用してナノ構造をマスター基板からPDMSの鋳型を作り、この鋳型に毛細管現象を利用して液体ポリマーを流し込んで固化させる方法である。以下の非特許文献1に詳しい解説記事が記載されている。また、ハーバード大学のGeorge M. Whitesides のグループのKim Enochらによって毛細管マイクロモールド法に関する特許が出願されている(以下の特許文献2参照)。しかし、この特許に記載の製造方法は、光導波路のコア部のような断面積が小さい場合には、時間がかかり量産に適さないし、モノマー溶液が高分子に反応して固化するときに体積変化を起こしコアの形状が変化するという欠点を持つ。
これに対して本発明者等は、フィルム基材に光導波路を設けたフレキシブル高分子光導波路を作製する方法を提案した(特願2003−58871号、特願2003−58872号)。この方法は、製造工程が極めて単純化されたもので、容易に高分子光導波路を作製することができ、従来の高分子光導波路の製造方法に比較し、非常に低コストで高分子光導波路を作製することができる。
ところで、各種の光ファイバーや発光素子、受光素子の大きさに合わせて、光導波路の口径を変化できれば、結合損失を低下できる。しかし従来のフォトリソグラフィを利用した直接露光法に代表される方法では膜厚を連続的に変化させることが困難なため、結合損失を低下させるように自由にコア口径を制御することができなかった。またFIBなどでシリコン基板を微細加工するような方法はあるものの、マルチモード導波路のような口径が大きく、しかも大面積にわたるものでは、非常に工数がかかり不可能に近いという問題があった。
上記問題点に対する試みとして、型利用でUV硬化樹脂を流し込んで口径変換用高分子導波路を形成する方法が提案されているが(以下の特許文献3参照)、コア用高分子の液体をごく浅い液槽にいれて制御するため、重力方向に対する平行出しを厳密に行う必要がある上、振動にも弱く、大量生産の方法として実用的ではない。さらに導波路に要求される表面粗さや形状精度をもち、なおかつ厚みと幅を長手方向位置により変化させた溝を作製する具体的な方法は記載されていない。
特許第3151364号公報 米国特許第6355198号明細書 特開平10−253845号公報 SCIENTIFIC AMERICAN September 2001(日経サイエンス2001年12月号)
本発明は、前記の従来の問題点に鑑みてなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、
本発明の目的は、高分子光導波路作製用原盤を低コストで簡単に製造可能な高分子光導波路作製用原盤の製造方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、高分子光導波路を製造可能な低コストで簡単に高分子光導波路の製造方法を提供することにある。
<1> 以下の1)〜4)の工程を有する高分子光導波路作製用原盤の製造方法である。
1)紫外線を透過しないファイバー状の細線を原盤用基板上に布線する工程
2)ポジ型レジスト材料を前記原盤用基板上に、少なくとも、前記細線の上方から垂直平行光を照射しその後現像した場合、光非照射部分全体にポジ型レジスト材料の層が形成されるような厚さで塗布する工程
3)前記原盤用基板に略垂直平行に紫外光を照射し、前記ポジ型レジスト材料を感光する工程
4)前記原盤用基板上のポジ型レジストを現像して導波路コア形状に相当する凸部を原盤用基板上に形成する工程
<2> 前記細線の断面積が連続的に変化することを特徴とする前記<1>に記載の口径変換型の高分子光導波路作製用原盤の製造方法である。
<3> 前記細線を布線する工程で、位置決め用のV溝を備えた原盤用基板を用いることを特徴とする前記<1>に記載の高分子光導波路作製用原盤の製造方法である。
<4> さらに、導波路コア形状に相当する凸部を形成した原盤用基板を用いて、少なくとも1回の電鋳を行う工程を有することを特徴とする前記<1>に記載の高分子光導波路作製用原盤の製造方法である。
<5> 以下の1)〜7)の工程を有する高分子光導波路の製造方法である。
1)下記a)〜d)の工程により、高分子光導波路作製用原盤を作製する工程
a)紫外線を透過しないファイバー状の細線を原盤用基板上に布線する工程
b)ポジ型レジスト材料を前記原盤用基板上に、少なくとも、前記細線の上方から垂直平行光を照射しその後現像した場合、光非照射部分全体にポジ型レジスト材料の層が形成されるような厚さで塗布する工程
c)前記原盤用基板に略垂直平行に紫外光を照射し、前記ポジ型レジスト材料を感光する工程
d)前記原盤用基板上のポジ型レジストを現像して導波路コア形状に相当する凸部を原盤用基板上に形成する工程
2)前記原盤用基板に鋳型形成用硬化性樹脂を塗布し、次いで硬化させた後、硬化樹脂層と原盤用基板を剥離して鋳型を作製する工程
3)鋳型にクラッド用基材を密着させる工程
4)クラッド用基材を密着させた鋳型の凹部にコア形成用硬化性樹脂を充填する工程
5)充填したコア形成用硬化性樹脂を硬化させる工程
6)鋳型をクラッド用基材から剥離する工程
7)コアが形成されたクラッド用基材の上にクラッド層を形成する工程
<6> 以下の1)〜7)の工程を有する高分子光導波路の製造方法である。
1)下記a)〜e)の工程により金属製の高分子光導波路作製用原盤を作製する工程
a)紫外線を透過しないファイバー状の細線を原盤用基板上に布線する工程
b)ポジ型レジスト材料を前記原盤用基板上に、少なくとも、前記細線の上方から垂直平行光を照射しその後現像した場合、光非照射部分全体にポジ型レジスト材料の層が形成されるような厚さで塗布する工程
c)前記原盤用基板に略垂直平行に紫外光を照射し、前記ポジ型レジスト材料を感光する工程
d)前記原盤用基板上のポジ型レジストを現像して導波路コア形状に相当する凸部を原盤用基板上に形成する工程
e)前記導波路コア形状に相当する凸部を形成した原盤用基板を用いて、少なくとも1回の電鋳を行う工程
2)クラッド用基材上にクラッド形成用硬化性樹脂を塗布する工程
3)クラッド形成用硬化樹脂の層に前記高分子光導波路作製用原盤の凸部を押しつける工程
4)クラッド形成用硬化性樹脂を硬化させる工程
5)前記高分子光導波路作製用原盤の凸部に対応する凹部にコア形成用硬化性樹脂を充填する工程
6)充填したコア形成用硬化性樹脂を硬化させる工程
7)コアが形成されたクラッド用基材の上にクラッド層を形成する工程
本発明によれば、ファイバー状の細線を布線する工程とレジストによる露光現像工程という低コストな工程の組み合わせにより、低コストで簡単に高分子光導波路作製用原盤を製造可能な高分子光導波路作製用原盤の製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、高分子光導波路を低コストで簡単に製造可能な高分子光導波路の製造方法を提供することができる。
さらに、本発明によれば、種々の光学素子の大きさに合わせて、光導波路両端の口径を変化させることができる口径変換型高分子光導波路を提供することができる。
以下、先ず、高分子光導波路作製用原盤の製造方法について説明する。
<高分子光導波路作製用原盤の製造方法>
本発明の高分子光導波路作製用原盤の製造方法は、以下の1)〜4)の工程を有することを特徴としている。
1)紫外線を透過しないファイバー状の細線を原盤用基板上に布線する工程
2)ポジ型レジスト材料を前記原盤用基板上に、少なくとも、前記細線の上方から垂直平行光を照射しその後現像した場合、光非照射部分全体にポジ型レジスト材料の層が形成されるような厚さで塗布する工程
3)前記原盤用基板に略垂直平行に紫外光を照射し、前記ポジ型レジスト材料を感光する工程
4)前記原盤用基板上のポジ型レジストを現像して導波路コア形状に相当する凸部を原盤用基板上に形成する工程
まず、ファイバー状の細線を用意する。この細線はコアの断面形状の主要部を構成するため、その表面粗さは数10nm以下のものが好ましい。この細線自体がフォトマスクの役目を果たすため、細線の材質としては、紫外線を透過しない材質である必要がある。また、通常のガラスファイバーを用いた際は、その表面に紫外線を遮断できる薄膜を塗布すればよい。薄膜は表面粗さに影響を与えない限り、どのようなものでも構わないため、たとえば染料や、クロムめっき、無電解ニッケルめっきなども用いることが可能である。
またガラスファイバーは、加熱して引き伸ばす加工をするなどして断面積が長手方向に異なるテーパ形状を容易に形成することができる。
次に、用意した細線を原盤用基板上に布線、すなわち所定位置に位置決めする。この位置決めを正確に行うには、V溝を備えた原盤用基板を用いることが好ましい。ただし、この場合、V溝は将来コアを構成する位置より外側に設ける必要がある。これはV溝形状自体を鋳型に転写してしまうと導波路形状に悪影響を及ぼすためである。またV溝だけでなくNC制御によるロボットなどを使って正確に布線することもできる。この場合基板と細線を接着する必要があるが、これは例えば次に述べるポジ型レジスト材料を塗布する工程を先に行って、レジスト材料自体をそのまま接着層として利用するのが簡単な方法である。また紫外線遮断のための薄膜を接着層として利用するなどの方法もある。
次に、原盤基板上へのポジ型レジスト材料の塗布方法について述べる。ポジ型レジスト材料の塗布厚みは、ポジ型レジスト材料を露光・現像後、少なくとも、前記細線の上方から垂直平行光を照射しその後現像した場合、光非照射部分全体にポジ型レジスト材料の層が形成されるような厚さである必要がある。この理由はコアに相当する凸部パターンを作製する際に、断面形状が制約を受けるためである。型として利用する以上、型を抜ける形状にする必要がある。円形断面をもつ細線をそのまま凸部として利用したとすると、鋳型形成用硬化性樹脂が細線と原盤用基板の間に回りこんでしまうため、鋳型として取り外すのが極めて困難になってしまう。これを防ぐためにはポジ型レジスト材料が細線と基板との間の隙間を埋める構成になることが望ましい。よって円形断面を持つガラスファイバーのような細線を用いた場合に、細線と原盤用基板との間の隙間を埋めることができるように少なくとも前述の厚みにポジ型レジスト材料を塗布する。これによってポジ型レジスト材料を露光・現像後、少なくとも、前記細線の上方から垂直平行光を照射しその後現像した場合、光非照射部分全体にポジ型レジスト材料の層が形成され、型として利用可能な形状を得ることができる。
塗布の方法は、スピンコート、ディップコート等、周知の方法が適用可能である。また膜厚が若干厚くても、本発明においては特に問題とはならない。布線する細線が全て隠れてしまう厚みに塗布してしまっても構わない。
次に、この様にポジ型レジスト材料を塗布した原盤用基板に対して紫外線を照射し感光する。この際、紫外光が原盤用基板に対して垂直に入射するように、紫外光は平行光である必要がある。この様に露光すると、細線と原盤用基板との間に存在するポジ型レジスト材料のみが露光を免れ、他の部分のポジ型レジスト材料に対して全て露光することになる。最大のレジスト厚みおよび露光時間は使用するポジ型レジスト材料の特性によって定まる。
露光が完了した後、現像洗浄を行うと細線と原盤用基板との間の隙間を埋められた断面形状をもつコア形状に相当する凸部が形成される。この方法でいろいろな断面形状をもつ凸部を作製することが可能になる。例えば、細線位置を基板に対して浮かせて、かつその間隔を変化させて布線すると、凸部の高さが連続的に変化する凸部を作製することができる。また布線する細線をたとえばガラスファイバーとして、ガラスファイバーを加熱して引き伸ばすなどの加工によりテーパ形状にしておけば、凸部の高さおよび幅が連続的に変化する凸部を作製することができる。
以下、図面を参照して説明する。図1は、本発明の高分子光導波路作製用原盤の製造方法の一形態を示す概念図である。図1(A)は、ガラスファイバーからなる細線10を示し、図1(A)のAの部分の断面積が連続的に変化するテーパ形状である。細線10に無電解めっきを行い、紫外線を遮断する細線とする(図1(B))。続いて、無電解めっきした細線10を原盤用基板12に形成されたV溝13により位置決めし、原盤用基板12上に付線して接着する(図1(C))。そして、少なくとも、ポジ型レジスト材料14を原盤用基板12上に、細線10の上方から垂直平行光を照射しその後現像した場合、光非照射部分全体にポジ型レジスト材料の層が形成されるような厚さで塗布する(図1(D))。次いで、原盤用基板12に略垂直平行に紫外光を照射し、ポジ型レジスト材料14を感光し、現像、洗浄する。以上の工程により、図1(E)に示すような、原盤用基板12上に凸部16が形成された高分子光導波路作製用原盤20が得られる。図2は、図1(E)の凸部16のA−A線及びB−B線の断面図である。図2に示すように、細線10と原盤用基板12との間に存在するポジ型レジスト材料14のみが硬化されている。
以上のようにして製造された高分子光導波路作製用原盤を利用すれば、シリコンエラストマー等を用いた鋳型を容易に作製することができる。それだけではなく、スタンパ法のスタンパ型としても高分子光導波路作製用原盤は利用できる。ただし、この場合、凸部に強度が求められるため、少なくとも2回の電鋳、もしくは電鋳とシリコンゴムによる型複製の組合わせを行い、前記凸部に対応する形状を含む金属製の高分子光導波路作製用原盤を作製することが望ましい。
<高分子光導波路の製造方法>
次に、本発明の高分子光導波路の製造方法について説明する。本発明の高分子光導波路の製造方法は、第1の態様では、以下の1)〜7)の工程を有することを特徴としている。
1)下記a)〜d)の工程により、高分子光導波路作製用原盤を作製する工程
a)紫外線を透過しないファイバー状の細線を原盤用基板上に布線する工程
b)ポジ型レジスト材料を前記原盤用基板上に、少なくとも、前記細線の上方から垂直平行光を照射しその後現像した場合、光非照射部分全体にポジ型レジスト材料の層が形成されるような厚さで塗布する工程
c)前記原盤用基板に略垂直平行に紫外光を照射し、前記ポジ型レジスト材料を感光する工程
d)前記原盤用基板上のポジ型レジストを現像して導波路コア形状に相当する凸部を原盤用基板上に形成する工程
2)前記原盤用基板に鋳型形成用硬化性樹脂を塗布し、次いで硬化させた後、硬化樹脂層と原盤用基板を剥離して鋳型を作製する工程
3)鋳型にクラッド用基材を密着させる工程
4)クラッド用基材を密着させた鋳型の凹部にコア形成用硬化性樹脂を充填する工程
5)充填したコア形成用硬化性樹脂を硬化させる工程
6)鋳型をクラッド用基材から剥離する工程
7)コアが形成されたクラッド用基材の上にクラッド層を形成する工程
前記1)の工程は、前述の本発明の高分子光導波路作製用原盤の製造方法で説明した工程と同じであるため説明を省略し、前記2)の工程以降について説明する。
まず、図3を参照して本発明の高分子光導波路の製造方法(2)の工程以降)の概略を説明する。図3において、(B)は側面図であり、(A)は(B)の左方向から見た図であり、(C)は(B)の右方向から見た図である。以下、(D)〜(F)、(G)〜(I)、(J)〜(L)、(M)〜(O)において同様である。
図3(A)〜(C)はコアに対応する凸部16(長手方向に断面積が異なる)が形成された高分子光導波路作製用原盤20を示す。最初に図3(D)〜(F)で示すように、高分子光導波路作製用原盤20の凸部16が形成された面に、鋳型形成用硬化性樹脂の硬化層30を形成する。次に、硬化層30を高分子光導波路作製用原盤20から剥離し、凹部32が露出するように両端を切断して鋳型34を作製する(図3(G)〜(I)参照)。
このようにして作製した鋳型34に、クラッド用基材36を密着させる(図3(J)〜(L)参照)。次に、鋳型34の一端をコアとなるコア形成用硬化性樹脂38aに接触させ、他端から吸引してコア形成用硬化性樹脂38aを鋳型34の凹部32に進入させる。その後、凹部32内のコア形成用硬化性樹脂を硬化させ、鋳型34を剥離する(図示せず)。すると、図3(M)〜(O)が示すように、クラッド用基材36の上に光導波路用凸部(コア)38が形成される。
以下に、各工程を詳細に説明する。
2)鋳型の作製
鋳型は、前記のようにして作製した高分子光導波路作製用原盤のコアに対応する凸部が形成された面に、鋳型形成用硬化性樹脂を塗布したり注型し、必要に応じ乾燥処理をした後、該樹脂を硬化させ、次いでその硬化樹脂層を剥離して作製される。また、鋳型には、前記凸部に対応する凹部にコア形成用硬化性樹脂を充填するための進入口、及び前記凸部に対応する凹部から前記樹脂を排出させるための排出口が形成されるが、その形成方法は特に制限はない。高分子光導波路作製用原盤に予め進入口や排出口に対応する凸部を設けておくこともできるが、簡便な方法としては、例えば、高分子光導波路作製用原盤に鋳型形成用硬化性樹脂の硬化樹脂層を形成した後剥離して型をとり、その後、型の両端を前記凹部が露出するように切断することにより進入口及び排出口を形成する方法が挙げられる。
また、鋳型凹部に連通する貫通孔を凹部の両端に設けることが有効である。進入口側の貫通孔は液(樹脂)溜まりとして利用でき、排出側の貫通孔は減圧吸引管をその中に挿入して凹部内部を減圧吸引装置に接続することができる。貫通孔は、凹部のピッチにより、各凹部に対応してそれぞれ設けてもよく、また、各凹部に共通に連通する1つの貫通孔を設けてもよい。
前記硬化樹脂層の厚さは、鋳型としての取り扱い性を考慮して適宜決められるが、一般的に0.1〜50mm程度が適切である。
また、前記原盤にはあらかじめ離型剤塗布などの離型処理を行なって鋳型との剥離を促進することが望ましい。
鋳型形成用硬化性樹脂としては、その硬化物が原盤から容易に剥離できること、鋳型(繰り返し用いる)として一定以上の機械的強度・寸法安定性を有すること、凹部形状を維持する硬さ(硬度)を有すること、クラッド用基材との密着性が良好なことが好ましい。鋳型形成用硬化性樹脂には、必要に応じて各種添加剤を加えることができる。
鋳型形成用硬化性樹脂は、高分子光導波路作製用原盤の表面に塗布や注型等することが可能で、また、高分子光導波路作製用原盤に形成された個々のコアに対応する凸部を正確に写し取らなければならないので、ある限度以下の粘度、たとえば、500〜7000mPa・s程度を有することが好ましい。(なお、本発明において用いる「鋳型形成用硬化性樹脂」の中には、硬化後、弾性を有するゴム状体となるものも含まれる。)また、粘度調節のために溶剤を、溶剤の悪影響が出ない程度に加えることができる。
前記鋳型形成用硬化性樹脂としては、前記のごとき剥離性、機械強度・寸法安定性、硬度、クラッド用基材との密着性の点から、硬化後、シリコーンゴム(シリコーンエラストマー)又はシリコーン樹脂となる硬化性オルガノポリシロキサンが好ましく用いられる。前記硬化性オルガノポリシロキサンは、分子中にメチルシロキサン基、エチルシロキサン基、フェニルシロキサン基を含むものが好ましい。また、前記硬化性オルガノポリシロキサンは、一液型のものでも硬化剤と組み合わせて用いる二液型のものでもよく、また、熱硬化型のものでも室温硬化型(例えば空気中の水分で硬化するもの)のものでもよく、更に他の硬化(紫外線硬化等)を利用するものであってもよい。
前記硬化性オルガノポリシロキサンとしては、硬化後シリコーンゴムとなるものが好ましく、これには通常液状シリコーンゴム(「液状」の中にはペースト状のように粘度の高いものも含まれる)と称されているものが用いられ、硬化剤と組み合わせて用いる二液型のものが好ましく、中でも付加型の液状シリコーンゴムは、表面と内部が均一にかつ短時間に硬化し、またその際副生成物が無く又は少なく、かつ離型性に優れ収縮率も小さいので好ましく用いられる。
硬化性シリコーンゴムオリゴマー又はモノマー及び硬化性シリコーン樹脂オリゴマー又はモノマーとしては、メチルシロキサン基、エチルシロキサン基、フェニルシロキサン基を含むものが好ましく、特に硬化性ジメチルシロキサンゴムオリゴマー(PDMS)が密着性及び剥離性の点から好ましい。PDMSの硬化物は、一般に屈折率が1.43程度と低いために、PDMSから作った鋳型は、クラッド用基材から剥離せずに、そのままクラッド層として利用することができる。この場合には、PDMS鋳型と、充填したコア形成用樹脂及びクラッド用基材とが剥がれないような工夫が必要になる。
前記液状シリコーンゴムの粘度は、光導波路コアに対応する凸部を正確に写し取り、かつ気泡の混入を少なくして脱泡し易くする観点と、数ミリの厚さの鋳型形成の点から、500〜7000mPa・s程度のものが好ましく、さらには、2000〜5000mPa・s程度のものがより好ましい。
さらに、鋳型の表面エネルギーは、10dyn/cm〜30dyn/cm、好ましくは15dyn/cm〜24dyn/cmの範囲にあることが、基材フィルムとの密着性とコア形成用硬化性樹脂の浸透速度の点からみて好ましい。
鋳型のシェア(Share)ゴム硬度は、15〜80、好ましくは20〜60であることが、型取り性能、凹部形状の維持、剥離性の点からみて好ましい。
鋳型の表面粗さ(二乗平均粗さ(RMS))は、0.5μm以下、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下にすることが、形成されたコアの光導波特性において光損失を大幅に低減できる。
また、鋳型は、紫外領域及び/又は可視領域において光透過性であることが好ましい。鋳型が可視領域において光透過性であることが好ましいのは、以下の3)の工程において鋳型をクラッド用基材に密着させる際、位置決めが容易に行え、また、以下の4)の工程においてコア形成用硬化性樹脂が鋳型凹部に充填される様子が観察でき、充填完了等が容易に確認しうるからである。また、鋳型が紫外領域において光透過性であることが好ましいのは、コア形成用硬化性樹脂として紫外線硬化性樹脂を用いる場合に、鋳型を透して紫外線硬化を行うためであり、鋳型の、紫外領域(250nm〜400nm)における透過率が80%以上であることが好ましい。
前記硬化性オルガノポリシロキサン、中でも硬化後シリコーンゴムとなる液状シリコーンゴムは、クラッド用基材との密着性と剥離性という相反した特性に優れ、ナノ構造を写し取る能力を持ち、シリコーンゴムとクラッド用基材とを密着させると液体の進入さえ防ぐことができる。このようなシリコーンゴムを用いた鋳型は高精度に原盤を写し取り、クラッド用基材に良く密着するため、鋳型とクラッド用基材の間の凹部のみに効率よくコア形成用樹脂を充填することが可能となり、さらにクラッド用基材と鋳型の剥離も容易である。したがって、この鋳型からは高精度に形状を維持した高分子光導波路を、極めて簡便に作製することができる。
また、前記硬化樹脂層、とりわけ硬化樹脂層がゴム弾性を有する場合、硬化樹脂層の一部すなわち原盤凸部を写し取る部分以外の部分を他の剛性材料に置き換えることができ、この場合、鋳型のハンドリング性が向上する。
3)前記鋳型にクラッド用基材を密着させる工程
本発明において用いるクラッド用基材としては、ガラス基材、セラミック基材、プラスチック基材等のものが制限なく用いられる。また屈折率制御のために前記基材に樹脂コートしたものも用いられる。クラッド用基材の屈折率は、1.55より小さく、1.50より小さいものがより好ましい。特に、コア材の屈折率より0.05以上小さいことが必要である。また、クラッド基材としては、平坦で、鋳型との密着性に優れ、両者を密着させた場合、鋳型凹部以外に空隙が生じないものが好ましい。また、クラッド基材が鋳型及び/又はコアとの密着性が余り良好でない場合には、オゾン雰囲気による処理、波長300nm以下の紫外線照射処理を行って、鋳型等との密着性を改善することが好ましい。
プラスチック基材の中でも、フレキシブルなフィルム基材を用いた高分子光導波路は、カプラー、ボード間の光配線や光分波器等としても使用できる。前記フィルム基材は、作製される高分子光導波路の用途に応じて、その屈折率、光透過性等の光学的特性、機械的強度、耐熱性、鋳型との密着性、フレキシビリティー(可撓性)等を考慮して選択される。
前記フィルム基材の材料としては、アクリル系樹脂(ポリメチルメタクリレート等)、脂環式アクリル樹脂、スチレン系樹脂(ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等)、オレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等)、脂環式オレフィン樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、ビニルブチラール系樹脂、アリレート系樹脂、含フッ素樹脂、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリカーボネート系樹脂、二又は三酢酸セルロース、アミド系樹脂(脂肪族、芳香族ポリアミド等)、イミド系樹脂、スルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリオキシメチレン系樹脂、または前記樹脂のブレンド物等が挙げられる。
また、前記フィルム基材が鋳型及び/又はコアとの密着性が余り良好でない場合には、オゾン雰囲気による処理、波長300nm以下の紫外線照射処理を行って、鋳型等との密着性を改善することが好ましい。
前記脂環式アクリル樹脂としてはトリシクロデカン等の脂肪族環状炭化水素をエステル置換基に導入した、OZ−1000、OZ−1100(日立化成(株)製)等が用いられる。
また、脂環式オレフィン樹脂としては主鎖にノルボルネン構造を有するもの、及び主鎖にノルボルネン構造を有しかつ側鎖にアルキルオキシカルボニル基(アルキル基としては炭素数1から6のものやシクロアルキル基)等の極性基をもつものが挙げられる。中でも前記のごとき主鎖にノルボルネン構造を有しかつ側鎖にアルキルオキシカルボニル基等の極性基をもつ脂環式オレフィン樹脂は、低屈折率(屈折率が1.50近辺であり、コア・クラッドの屈折率の差を確保できる)及び高い光透過性等の優れた光学的特性を有し、鋳型との密着性に優れ、さらに耐熱性に優れているので特に本発明の高分子光導波路の作製に適している。
前記フィルム基材の屈折率は、コアとの屈折率差を確保するため、1.55より小さく、好ましくは1.53より小さくすることが望ましい。
また、前記フィルム基材の厚さはフレキシビリティーと剛性や取り扱いの容易さ等を考慮して適切に選ばれ、一般的には0.1mm〜0.5mm程度が好ましい。
4)クラッド用基材を密着させた鋳型の凹部にコア形成用硬化性樹脂を充填する工程
鋳型凹部にコア形成用硬化性樹脂を充填するには、鋳型に鋳型より一回り大きいサイズのクラッド用基材を密着させ、凹部の進入口にコア形成用硬化性樹脂を少量垂らし毛細管現象を利用して充填したり、凹部にコア形成用硬化性樹脂を加圧充填したり、凹部の排出口を減圧吸引したり、あるいは加圧充填と減圧吸引の両方を行うなどにより充填することができる。前記のごとく凹部端部に貫通孔を設けた場合は、進入側貫通孔に樹脂を溜め加圧充填したり、排出側貫通孔にポンプにつながった減圧吸引管を挿入して減圧吸引するなどすることができる。
また、前記加圧充填と減圧吸引を併用する場合はこれらを同期して行うことがさらに、前記加圧充填において圧力を段階的に増加させ、前記減圧吸引において圧力を段階的に減少させることが、鋳型が安定して固定された状態で、コア形成用硬化性樹脂をより高速に注入する相反則を両立させる点からみて好ましい。
コア形成用硬化性樹脂としては放射線硬化性、電子線硬化性、熱硬化性等の樹脂を用いることができ、中でも紫外線硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂が好ましく用いられる。
前記コア形成用の紫外線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂としては、紫外線硬化性又は熱硬化性のモノマー、オリゴマー若しくはモノマーとオリゴマーの混合物が好ましく用いられる。
また、前記紫外線硬化性樹脂としてエポキシ系、ポリイミド系、アクリル系紫外線硬化性樹脂が好ましく用いられる。
コア形成用硬化性樹脂は、鋳型とクラッド用基材との間に形成された空隙(鋳型の凹部)に充填させるため、用いるコア形成用硬化性樹脂はそれが可能なように十分低粘度であることが必要である。前記硬化性樹脂の粘度は、10mPa・s〜2000mPa・s、望ましくは100mPa・s〜1000mPa・s、更に好ましくは300mPa・s〜700mPa・sにするのが、充填速度、コア形状の良さ及び光損失の少なさの点から好ましい。
このほかに、原盤に形成された光導波路コアに対応する凸部が有する元の形状を高精度に再現するため、前記硬化性樹脂の硬化前後の体積変化が小さいことが必要である。例えば、体積が減少すると導波損失の原因になる。したがって、前記硬化性樹脂は、体積変化ができるだけ小さいものが望ましく、10%以下、好ましくは0.01〜4%の範囲にあることが望ましい。溶剤を用いて低粘度化することは、硬化前後の体積変化が大きいのでできれば避ける方が好ましい。
コア形成用硬化性樹脂の硬化後の体積変化(収縮)を小さくするため、前記樹脂にポリマーを添加することができる。前記ポリマーはコア形成用硬化性樹脂との相溶性を有し、かつ該樹脂の屈折率、弾性率、透過特性に悪影響を及ぼさないものが好ましい。またポリマーを添加することにより体積変化を小さくする他、粘度や硬化樹脂のガラス転移点を高度に制御できる。前記ポリマーとしては例えばアクリル系、メタクリル酸系、エポキシ系のものが用いられるが、これらに限定されるものではない。
コア形成用硬化性樹脂の硬化物の屈折率は1.20から1.60の範囲、より好ましくは1.4から1.6の範囲が好ましく、硬化物の屈折率が前記範囲内に入る2種類以上の屈折率の異なる樹脂が用いられる。
コア形成用硬化性樹脂の硬化物の屈折率は、クラッドとなる前記フィルム基材(以下の6)の工程におけるクラッド層を含む)より大きいことが必要である。コアとクラッド(クラッド用基材及びクラッド層)との屈折率の差は、0.001以上、好ましくは0.03以上である。
また、この工程において、毛細管現象によるコア形成用硬化性樹脂の鋳型凹部への充填を促進するために、系全体を減圧(0.1〜100kPa程度)することが望ましい。
また、前記充填を促進するため、前記系の減圧に加えて、鋳型の進入口から充填するコア形成用硬化性樹脂を加熱することにより、より低粘度化することも有効な手段である。
5)充填したコア形成用硬化性樹脂を硬化させる工程
充填したコア形成用硬化性樹脂を硬化させる。紫外線硬化性樹脂を硬化させるには、紫外線ランプ、紫外線LED、UV照射装置等が用いられる。また、熱硬化性樹脂を硬化させるには、オーブン中での加熱等が用いられる。
6)鋳型をクラッド用基材から剥離する工程
前記5)の工程の後、鋳型をクラッド用基材から剥離する。また、前記2)〜5)の工程で用いる鋳型は、屈折率等の条件を満たせばそのままクラッド層に用いることも可能で、この場合は、鋳型を剥離する必要はなくそのままクラッド層として利用する。この場合、鋳型とコア材料の接着性を向上させるために鋳型をオゾン処理することが好ましい。
7)コアが形成されたクラッド用基材の上にクラッド層を形成する工程
コアが形成されたクラッド用基材の上にクラッド層を形成するが、クラッド層としてはフィルム(たとえば前記4)の工程で用いたようなクラッド用基材が同様に用いられる)や、クラッド用硬化性樹脂を塗布して硬化させた層、高分子材料の溶剤溶液を塗布して乾燥して得られる高分子膜等が挙げられる。クラッド用硬化性樹脂としては紫外線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂が好ましく用いられ、例えば、紫外線硬化性又は熱硬化性のモノマー、オリゴマー若しくはモノマーとオリゴマーの混合物が用いられる。
クラッド形成用硬化性樹脂の硬化後の体積変化(収縮)を小さくするために、該樹脂と相溶性を有し、また該樹脂の屈折率、弾性率、透過特性に悪影響を及ぼさないポリマー(例えばメタクリル酸系、エポキシ系)を該樹脂に添加することができる。
クラッド層としてフィルムを用いる場合は、接着剤を用いて貼り合わされるが、その際、接着剤の屈折率が該フィルムの屈折率と近いことが望ましい。用いる接着剤は紫外線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂が好ましく用いられ、例えば、紫外線硬化性又は熱硬化性のモノマー、オリゴマー若しくはモノマーとオリゴマーの混合物が用いられる。
前記紫外線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂の硬化後の体積変化(収縮)を小さくするために、クラッド層に添加するポリマーと同様のポリマーを添加することができる。
また、前記クラッド用基材とクラッド層との屈折率差は小さい方が好ましく、その差は0.01以内、好ましくは0.001以内、更に好ましくは差がないことが光の閉じ込めの点からみて好ましい。
本発明の高分子光導波路の製造方法において、特に、鋳型形成用硬化性樹脂として硬化してゴム状になる液状シリコーンゴム、中でも液状ジメチルシロキサンゴムを用い、クラッド用基材として主鎖にノルボルネン構造を有しかつ側鎖にアルキルオキシカルボニル基等の極性基をもつ脂環式オレフィン樹脂を用いる組み合わせは、両者の密着性が特に高く、また、鋳型凹部構造の変形がなく、さらに凹部構造の断面積が極めて小さくても(たとえば10×10μmの矩形)、素早く凹部に硬化性樹脂を充填することができる。
次いで、本発明の高分子光導波路の製造方法の第2の態様について説明する。本発明の第2の態様の高分子光導波路の製造方法は、以下の1)〜7)の工程を有することを特徴としている。
1)下記a)〜e)の工程により金属製の高分子光導波路作製用原盤を作製する工程
a)紫外線を透過しないファイバー状の細線を原盤用基板上に布線する工程
b)ポジ型レジスト材料を前記原盤用基板上に、少なくとも、前記細線の上方から垂直平行光を照射しその後現像した場合、光非照射部分全体にポジ型レジスト材料の層が形成されるような厚さで塗布する工程
c)前記原盤用基板に略垂直平行に紫外光を照射し、前記ポジ型レジスト材料を感光する工程
d)前記原盤用基板上のポジ型レジストを現像して導波路コア形状に相当する凸部を原盤用基板上に形成する工程
e)前記導波路コア形状に相当する凸部を形成した原盤用基板を用いて、少なくとも1回の電鋳を行う工程
2)クラッド用基材上にクラッド形成用硬化性樹脂を塗布する工程
3)クラッド形成用硬化樹脂の層に前記高分子光導波路作製用原盤の凸部を押しつける工程
4)クラッド形成用硬化性樹脂を硬化させる工程
5)前記高分子光導波路作製用原盤の凸部に対応する凹部にコア形成用硬化性樹脂を充填する工程
6)充填したコア形成用硬化性樹脂を硬化させる工程
7)コアが形成されたクラッド用基材の上にクラッド層を形成する工程
以上の第2の態様の高分子光導波路の製造方法は、1)の工程(e)の工程があること)、2)の工程、3)の工程、及び4)の工程においてのみ第1の態様と異なるため、第2の態様においては、第1の態様との相違する内容について説明する。なお、第2の態様の5)の工程は第1の態様の4)と同じで、第2の態様の6)の工程は第1の態様の5)と同じで、第2の態様の7)の工程は第1の態様の7)と同じである。
本発明の製造方法の第2の態様は、前述の高分子光導波路作製用原盤を用いて、少なくとも1回の電鋳を行って得られた、前記凸部に対応する形状を含む金属製のスタンパ型を利用し、スタンパ法により高分子光導波路を製造する態様である。
以下、図4を用いて本発明の第2の態様の高分子光導波路の製造方法の概略を説明する。まず、クラッド用基材40上にクラッド形成用硬化性樹脂を塗布し、クラッド形成用硬化性樹脂層42を形成する(図4(A))。次いで、前述の図1で示した工程により得られた高分子光導波路作製用原盤を用いて電鋳を2回行って作製した金属製の高分子光導波路作製用原盤44を、クラッド形成用樹脂層42に押しつける(図4(B))。次に、クラッド形成用硬化性樹脂層42を硬化させ、高分子光導波路作製用原盤44を外すと、高分子光導波路作製用原盤44の凸部に対応する凹部42aが形成される(図4(C))。形成された凹部42aにコア形成用硬化性樹脂(詳細は前述)46を充填した状態で、クラッド形成用硬化性樹脂層42の上にガラス板48を載置する(図4(D))。次いで、コア形成用硬化性樹脂46を硬化し、さらに、載置したガラス板48を剥離し、クラッド形成用硬化性樹脂層42上にクラッド層50を形成することにより、高分子光導波路52が作製される(図4(E))。なお、クラッド形成用硬化性樹脂としては、前記7)で説明した紫外線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂が同様に用いられる。また、クラッド層は前記7)で説明したものが同様に用いられる。
<口径変換型高分子光導波路>
次に、本発明の高分子光導波路の製造方法により作製される口径変換型高分子光導波路について説明する。
本発明の前記口径変換型高分子光導波路は、断面形状の上部が円もしくは楕円で下部が矩形の光導波路コアを有し、該光導波路コアの断面積が長手方向で連続的に変化する部分を有することを特徴としている。そして、本発明の前記口径変換型高分子光導波路は、種々の光学素子の大きさに合わせて、光導波路両端の口径を変化させることができる。
図5は、本発明の口径変換型高分子光導波路の一形態を示す図であり、(A)は側面から見た透視図であり、(B)は(A)の右方向から見た側面図である。図5に示す口径変換型高分子光導波路60は、クラッド用基材62上に、光導波路コア64が形成されていて、さらにクラッド用基材62上にクラッド層66が形成されてなる。光導波路コア64は、図5(A)に示すように、断面積が長手方向で連続的に変化し、その断面形状の上部が円で下部が矩形の形状である。
このような本発明の口径変換型高分子光導波路は、前述の本発明の高分子光導波路の製造方法により容易に製造することができる。
高分子光導波路の光導波路コアにおける断面形状は矩形であることが一般的だが、本発明の製造方法により製造された口径変換型光導波路作製用原盤は、角を残したまま紫外線を遮断する細線を引き伸ばすのは難しいため、図5に示すようにその断面形状が矩形と半円を組み合わせた形をなす特徴を持つ。このような形状でも、放射損失は矩形断面や円形断面のものに比べて遜色はなく、かつ以上に説明したように容易に口径変換型光導波路を作製できる利点がある。なお、断面形状が楕円の細線を用いて高分子光導波路作製用原盤を製造し、該原盤を用いて口径変換型光導波路を製造した場合は楕円の上半分と矩形を組み合わせた形にもなりうる。図6はそのような光導波路コア68を示している。この場合でも性能に遜色はない。
以下に実施例を示し本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
[実施例1]
直径200μmのガラスファイバーを加熱引き伸ばし加工することによって、テーパ部の長さ50mm、テーパ部前後の直径が200μm、100μmであるテーパーファイバー(細線)を用意した。このガラス表面に無電解めっきを行い、紫外線を遮断できるようにニッケル薄膜を塗布した。厚み1mmのガラス基板を用意し、該ガラス基板上の端部に接着剤を用いてテーパファイバーを固定した。次いで、ポジ型厚膜レジスト(JSR製、THB−611P)をスピンコートもしくはディップコートして厚み100μmで塗布した。厚膜レジストのプリベークを行い、紫外線露光装置で平行光をガラス基板に垂直に照射し、TMAH現像液で現像しポストベーク後洗浄したところ、ガラス基板上にはテーパファイバーおよびその下部の厚膜レジストだけが残った。このガラス基板上の凸形状は口径が200μmから100μmに絞られているテーパ導波路コア部分に相当する。(図1参照)。以上のようにして、高分子光導波路作製用原盤を作製した。
次に、作製した高分子光導波路作製用原盤に離型剤を塗布した後、PDMS(ダウコウニングアジア社製:SYLGARD184)を流し込んで120℃で30分間加熱することで固化させた後、剥離して凹部を持った厚み5mmの鋳型を形成した。
テーパ部分の10mm外側に直径3mmの貫通孔を打ち抜いて樹脂の出力部を作り、この鋳型と、アートンフイルム(クラッド用基材)を接触させたところ、両者は密着した。この状態の鋳型に粘度が800mPa・sのエポキシ系紫外線硬化樹脂(NTT−AT社製)を鋳型の上部に垂らし、出力部から20KPaで吸引したところ約5分で全領域に前記紫外線硬化樹脂が充填された。
次いで、上記状態において50mW/cm2のUV光を10分間照射して固化させ、鋳型を剥離してアートンフイルム上に屈折率1.58のコアを作製した。このとき鋳型を容易にはがすことが可能であった。この後、屈折率が前記アートンフイルムと同じ1.51の紫外線硬化樹脂を塗布し、さらに上部にアートンフィルム(クラッド層)を重ねて、50mW/cm2のUV光を10分間照射して固化させた。さらに両端をダイシングソーで切断することにより半円と矩形が組み合わされた断面形状を持つ口径変換型光導波路を完成させた。その挿入損失は3dBであった。
[実施例2]
一端が2mmピッチ、他端が250μmピッチの4つずつのV溝を備えた原盤用基板を用い、このV溝を用いて実施例1で用いた4本のテーパファイバー(細線)を2mmピッチ側には200μm口径の側、250μmピッチ側には100μm側となるように接着した。以下、実施例1と同様の工程を経て口径変換型光導波路アレイを完成させた。100μm口径の側を口径100μm、250μmピッチの受光エリアをもつ1×4PDアレイに接続し、他方を200μm口径のPOFに接続したところ、POF端からの光量換算で約3dBの損失でPD受光が可能であった。
[実施例3]
実施例1によって作製した鋳型の表面に、まず無電解めっきを行い、さらにニッケル電解めっきを行う電鋳法を利用して、導波路コア相当部分が凸部になっているニッケル製の高分子光導波路作製用原盤を得た。この高分子光導波路作製用原盤を用いて、別のPDMSの鋳型を作製し、実施例1と同様な工程を経て口径変換型光導波路を完成させた。その挿入損失は実施例1で作製したものと同様であり、複製による形状崩れの影響はほとんど見られなかった。
[実施例4]
厚み188μmのアートンフィルムに、200μm厚で屈折率1.51の熱硬化性樹脂(クラッド形成用硬化性樹脂)(NTT−AT製)をスピンコート法により塗布した。実施例3で作製した電鋳法によるニッケル製の高分子光導波路作製用原盤に剥離材としてシリコンオイルをごく薄く塗布したものを用意し、高分子光導波路作製用原盤の凸部を熱硬化性樹脂層上に押し付けた。この状態で120℃で30分加熱したところ、熱硬化性樹脂は硬化重合した。その後、高分子光導波路作製用原盤を剥がしたところ、アートンフィルム上に樹脂によって口径変換型光導波路コア部分に相当する凹部分が作製できた。この凹部分に実施例1と同じ屈折率1.58のコア用紫外線硬化樹脂を垂らして、剥離材としてシリコンオイルを塗布したガラス基板で押し付けることによって、コア相当部分全てに均等にコア用紫外線硬化樹脂を充填した。
上記状態において50mW/cm2のUV光を10分間照射して固化させ、ガラス基板を剥離してアートンフイルム上に屈折率1.58のコアを作製した。ガラス基板を剥がした後、上部にアートンフィルムを重ねて、50mW/cm2のUV光を10分間照射して固化させた。さらに両端をダイシングソーで切断することにより半円と矩形が組み合わされた断面形状を持つ口径変換型光導波路を完成させた。その挿入損失は4dBであった。
このような方法により、必ずしもPDMSの鋳型を用いなくても口径変換型光導波路が作製可能である。
[実施例5]
実施例1において用いたガラスの代わりに、銅の細線を用いて同様の形状に加工したものを用いたこと以外は実施例1と同様にして口径変換型光導波路を得た。その結果、出来上がった導波路の性能にほぼ遜色はなかった。
本発明の高分子光導波路作製用原盤の製造方法の概略を示す概念図である。 図1(E)の高分子光導波路作製用原盤の凸部のA−A線及びB−B線の断面図である。 本発明における第1の態様の高分子光導波路の製造方法の概略を示す概念図である。 本発明における第2の態様の高分子光導波路の製造方法の概略を示す概念図である。 本発明の製造方法により作製される口径変換型光導波路の一形態を示す図である。 断面形状の上部が楕円で下部が矩形のコアを示す断面図である。
符号の説明
10 細線
12 原盤用基板
13 V溝
14 ポジ型レジスト材料
16 凸部
20 高分子光導波路作製用原盤
30 硬化層
32 凹部
34 鋳型
36 クラッド用基材
38 光導波路用凸部
40 クラッド用基材
42 クラッド形成用硬化性樹脂層
44 高分子光導波路作製用原盤
46 コア形成用硬化性樹脂
48 ガラス板
50 クラッド層
60 口径変換型高分子光導波路
62 クラッド用基材
64 光導波路コア
66 クラッド層
68 光導波路コア

Claims (6)

  1. 以下の1)〜4)の工程を有する高分子光導波路作製用原盤の製造方法。
    1)紫外線を透過しないファイバー状の細線を原盤用基板上に布線する工程
    2)ポジ型レジスト材料を前記原盤用基板上に、少なくとも、前記細線の上方から垂直平行光を照射しその後現像した場合、光非照射部分全体にポジ型レジスト材料の層が形成されるような厚さで塗布する工程
    3)前記原盤用基板に略垂直平行に紫外光を照射し、前記ポジ型レジスト材料を感光する工程
    4)前記原盤用基板上のポジ型レジストを現像して導波路コア形状に相当する凸部を原盤用基板上に形成する工程
  2. 前記細線の断面積が連続的に変化することを特徴とする請求項1に記載の口径変換型の高分子光導波路作製用原盤の製造方法。
  3. 前記細線を布線する工程で、位置決め用のV溝を備えた原盤用基板を用いることを特徴とする請求項1に記載の高分子光導波路作製用原盤の製造方法。
  4. さらに、導波路コア形状に相当する凸部を形成した原盤用基板を用いて、少なくとも1回の電鋳を行う工程を有することを特徴とする請求項1に記載の高分子光導波路作製用原盤の製造方法。
  5. 以下の1)〜7)の工程を有する高分子光導波路の製造方法。
    1)下記a)〜d)の工程により、高分子光導波路作製用原盤を作製する工程
    a)紫外線を透過しないファイバー状の細線を原盤用基板上に布線する工程
    b)ポジ型レジスト材料を前記原盤用基板上に、少なくとも、前記細線の上方から垂直平行光を照射しその後現像した場合、光非照射部分全体にポジ型レジスト材料の層が形成されるような厚さで塗布する工程
    c)前記原盤用基板に略垂直平行に紫外光を照射し、前記ポジ型レジスト材料を感光する工程
    d)前記原盤用基板上のポジ型レジストを現像して導波路コア形状に相当する凸部を原盤用基板上に形成する工程
    2)前記高分子光導波路作製用原盤に鋳型形成用硬化性樹脂を塗布し、次いで硬化させた後、硬化樹脂層と高分子光導波路作製用原盤を剥離して鋳型を作製する工程
    3)鋳型にクラッド用基材を密着させる工程
    4)クラッド用基材を密着させた鋳型の凹部にコア形成用硬化性樹脂を充填する工程
    5)充填したコア形成用硬化性樹脂を硬化させる工程
    6)鋳型をクラッド用基材から剥離する工程
    7)コアが形成されたクラッド用基材の上にクラッド層を形成する工程
  6. 以下の1)〜7)の工程を有する高分子光導波路の製造方法。
    1)下記a)〜e)の工程により金属製の高分子光導波路作製用原盤を作製する工程
    a)紫外線を透過しないファイバー状の細線を原盤用基板上に布線する工程
    b)ポジ型レジスト材料を前記原盤用基板上に、少なくとも、前記細線の上方から垂直平行光を照射しその後現像した場合、光非照射部分全体にポジ型レジスト材料の層が形成されるような厚さで塗布する工程
    c)前記原盤用基板に略垂直平行に紫外光を照射し、前記ポジ型レジスト材料を感光する工程
    d)前記原盤用基板上のポジ型レジストを現像して導波路コア形状に相当する凸部を原盤用基板上に形成する工程
    e)前記導波路コア形状に相当する凸部を形成した原盤用基板を用いて、少なくとも1回の電鋳を行う工程
    2)クラッド用基材上にクラッド形成用硬化性樹脂を塗布する工程
    3)クラッド形成用硬化樹脂の層に前記高分子光導波路作製用原盤の凸部を押しつける工程
    4)クラッド形成用硬化性樹脂を硬化させる工程
    5)前記高分子光導波路作製用原盤の凸部に対応する凹部にコア形成用硬化性樹脂を充填する工程
    6)充填したコア形成用硬化性樹脂を硬化させる工程
    7)コアが形成されたクラッド用基材の上にクラッド層を形成する工程
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