JP4337559B2 - 高分子光導波路製造用鋳型及び高分子光導波路の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明の別の目的は、簡便な方法により、低コストで高分子光導波路を製造する方法であって、毛細管現象や吸引を使った高分子光導波路のコア形状を高精度に維持し、導波損失、挿入損失が少なく、特に複数の導波路アレイにおける位置精度を維持することができる高分子光導波路の製造方法を提供することにある。
<1> 複数本の光導波路コアに相当する複数の凹部を有する、鋳型形成用硬化性樹脂を硬化してなる鋳型の内部に、前記複数の凹部すべてを跨ぐ切り欠き部又は前記複数の凹部それぞれを独立して跨ぐ切り欠き部を有する補強板が、前記凹部の端部近傍に、前記複数の凹部すべて又はそれぞれを独立して跨ぐ状態で埋設されていることを特徴とする高分子光導波路製造用鋳型である。
また、本発明によれば、簡便な方法により、低コストで高分子光導波路を製造する方法であって、毛細管現象や吸引を使った高分子光導波路のコア形状を高精度に維持し、導波損失、挿入損失が少なく、特に複数の導波路アレイにおける位置精度を維持することができる高分子光導波路の製造方法を提供することができる。
以下、本発明の高分子光導波路製造用鋳型を説明する前に、該高分子光導波路製造用鋳型を用いる高分子光導波路の製造方法の概略について説明する。
図1(A)は原盤10を示し、12は光導波路コアに対応する凸部である。この原盤10の凸部形成面に鋳型形成用硬化性樹脂を塗布又は注型した後硬化させる(図1(B)参照)。図1(B)中、20aは硬化樹脂層である。その後硬化樹脂層20aを剥離すると、凹部が形成された硬化樹脂層20aが得られる(図示せず)。凹部22が形成された硬化樹脂層20aに、凹部22に連通する貫通穴26及び28を凹部両端に打ち抜き等により形成して鋳型20(図1(C)参照)を得る。
また、補強板の材料として光透過性のものを用いなくてもコア材料に紫外線硬化樹脂を用いることができる。これは直接紫外線があたらなくても近接する部分は硬化反応が進むためである。補強板の材料として光透過性のものでない場合(セラミック、金属、樹脂など)、補強板の厚みが1mm以下とすることが好ましい。
次に、本発明の高分子光導波路の製造方法について説明する。本発明の高分子光導波路の製造方法は、以下の1)〜5)の工程を有することを特徴としている。
1)基板上に、複数本の光導波路コアに相当する複数の凸部を形成した原盤を準備する工程
2)前記原盤上に、前記複数の凸部すべてを跨ぐ切り欠き部又は前記複数の凸部それぞれを跨ぐ切り欠き部を有する補強板を、前記凸部の端部近傍に、前記複数の凸部すべて又はそれぞれを跨ぐ状態で設置し、鋳型形成用硬化性樹脂を塗布して加熱して硬化し、高分子光導波路製造用鋳型を作製する工程
3)前記高分子光導波路製造用鋳型における前記原盤の凸部に対応する凹部の両端に貫通穴を設ける工程
4)前記高分子光導波路製造用鋳型をクラッド用基材に密着させる工程
5)前記高分子光導波路製造用鋳型の貫通穴をそれぞれコア形成用硬化性樹脂の進入部及び排出部とし、コア形成用硬化性樹脂を進入部に接触させて、吸引および毛細管現象で進入させた後、硬化手段により前記コア形成用硬化樹脂を硬化させ光導波路コアを作製する工程
以下、各工程について詳細に説明する。
基板上に、複数本の光導波路コアに相当する複数の凸部を形成した原盤を準備する。
光導波路コアに対応する凸部及び必要に応じて位置基準線を形成した原盤の作製には、従来の方法、たとえばフォトリソグラフィー法を特に制限なく用いることができる。また、本出願人が先に出願した電着法又は光電着法により高分子光導波路を作製する方法(特願2002−10240号)も、原盤を作製するのに適用できる。原盤に形成される光導波路用凸部の大きさは高分子光導波路の用途等に応じて適宜決められる。例えばシングルモード用の光導波路の場合には、10μm角程度のコアを、マルチモード用の光導波路の場合には、50〜100μm角程度のコアが一般的に用いられるが、用途によっては数百μm程度と更に大きなコア部を持つ光導波路も利用される。
前記原盤上に、前記複数の凸部すべてを跨ぐ切り欠き部又は前記複数の凸部それぞれを跨ぐ切り欠き部を有する補強板を、前記凸部の端部近傍に、前記複数の凸部すべて又はそれぞれを跨ぐ状態で設置し、シリコーン樹脂を塗布して加熱して硬化し、シリコーン樹脂製の高分子光導波路製造用鋳型を作製する。
鋳型形成用硬化性樹脂は、高分子光導波路作製用原盤の表面に塗布や注型等することが可能で、また、高分子光導波路作製用原盤に形成された個々のコアに対応する凸部を正確に写し取らなければならないので、ある限度以下の粘度、たとえば、500〜7000mPa・s程度を有することが好ましい。(なお、本発明において用いる「鋳型形成用硬化性樹脂」の中には、硬化後、弾性を有するゴム状体となるものも含まれる。)また、粘度調節のために溶剤を、溶剤の悪影響が出ない程度に加えることができる。
鋳型のシェア(Share)ゴム硬度は、15〜80、好ましくは20〜60であることが、型取り性能、凹部形状の維持、剥離性の点からみて好ましい。
鋳型の表面粗さ(二乗平均粗さ(RMS))は、0.5μm以下、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下にすることが、形成されたコアの光導波特性において光損失を大幅に低減できる。
高分子光導波路製造用鋳型には、前記凸部に対応する凹部にコア形成用硬化性樹脂を充填するための貫通穴、すなわち進入口、及び前記凸部に対応する凹部から前記樹脂を排出させるための貫通穴、すなわち排出口を形成する。具体的には、凹部に連通する貫通穴を凹部の両端に設ける。進入部側の貫通穴は液(樹脂)溜まりとして利用でき、排出部の貫通穴は減圧吸引管をその中に挿入して凹部内部を減圧吸引装置に接続することができる。貫通穴は、凹部のピッチにより、各凹部に対応してそれぞれ設けてもよく、また、各凹部に共通に連通する1つの貫通穴を設けてもよい。
前記高分子光導波路製造用鋳型をクラッド用基材に密着させる。
本発明において用いるクラッド用基材としては、ガラス基材、セラミック基材、プラスチック基材等のものが制限なく用いられる。また屈折率制御のために前記基材に樹脂コートしたものも用いられる。クラッド用基材の屈折率は、1.55より小さく、1.50より小さいものがより好ましい。特に、コア材の屈折率より小さいことが必要である。また、クラッド基材としては、平坦で、鋳型との密着性に優れ、両者を密着させた場合、鋳型凹部以外に空隙が生じないものが好ましい。また、クラッド基材が鋳型及び/又はコアとの密着性が余り良好でない場合には、オゾン雰囲気による処理、波長300nm以下の紫外線照射処理を行って、鋳型等との密着性を改善することが好ましい。
プラスチック基材の中でも、フレキシブルなフィルム基材を用いた高分子光導波路は、カプラー、ボード間の光配線や光分波器等としても使用できる。前記フィルム基材は、作製される高分子光導波路の用途に応じて、その屈折率、光透過性等の光学的特性、機械的強度、耐熱性、鋳型との密着性、フレキシビリティー(可撓性)等を考慮して選択される。
また、前記フィルム基材が鋳型及び/又はコアとの密着性が余り良好でない場合には、オゾン雰囲気による処理、波長300nm以下の紫外線照射処理を行って、鋳型等との密着性を改善することが好ましい。
また、脂環式オレフィン樹脂としては主鎖にノルボルネン構造を有するもの、及び主鎖にノルボルネン構造を有しかつ側鎖にアルキルオキシカルボニル基(アルキル基としては炭素数1から6のものやシクロアルキル基)等の極性基をもつものが挙げられる。中でも前記のごとき主鎖にノルボルネン構造を有しかつ側鎖にアルキルオキシカルボニル基等の極性基をもつ脂環式オレフィン樹脂は、低屈折率(屈折率が1.50近辺であり、コア・クラッドの屈折率の差を確保できる)及び高い光透過性等の優れた光学的特性を有し、鋳型との密着性に優れ、さらに耐熱性に優れているので特に本発明の高分子光導波路の作製に適している。
また、前記フィルム基材の厚さはフレキシビリティーと剛性や取り扱いの容易さ等を考慮して適切に選ばれ、一般的には0.1mm〜0.5mm程度が好ましい。
前記高分子光導波路製造用鋳型の貫通穴をそれぞれコア形成用硬化性樹脂の進入部及び排出部とし、コア形成用硬化性樹脂を進入部に接触させて、吸引および毛細管現象で進入させた後、硬化手段により前記コア形成用硬化樹脂を硬化させ光導波路コアを作製する。
高分子光導波路製造用鋳型の凹部にコア形成用硬化性樹脂を充填するには、クラッド用基材を密着させ、凹部の進入部にコア形成用硬化性樹脂を少量垂らし毛細管現象を利用して充填したり、凹部にコア形成用硬化性樹脂を加圧充填したり、凹部の排出部を減圧吸引したり、あるいは加圧充填と減圧吸引の両方を行うなどにより充填することができる。前記のごとく、進入側貫通穴に樹脂を溜め加圧充填したり、排出側貫通穴にポンプにつながった減圧吸引管を挿入して減圧吸引するなどすることができる。
また、前記加圧充填と減圧吸引を併用する場合はこれらを同期して行うことがさらに、前記加圧充填において圧力を段階的に増加させ、前記減圧吸引において圧力を段階的に減少させることが、鋳型が安定して固定された状態で、コア形成用硬化性樹脂をより高速に注入する相反則を両立させる点からみて好ましい。
前記コア形成用の紫外線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂としては、紫外線硬化性又は熱硬化性のモノマー、オリゴマー若しくはモノマーとオリゴマーの混合物が好ましく用いられる。
また、前記紫外線硬化性樹脂としてエポキシ系、ポリイミド系、アクリル系紫外線硬化性樹脂が好ましく用いられる。
このほかに、原盤に形成された光導波路コアに対応する凸部が有する元の形状を高精度に再現するため、前記硬化性樹脂の硬化前後の体積変化が小さいことが必要である。例えば、体積が減少すると導波損失の原因になる。したがって、前記硬化性樹脂は、体積変化ができるだけ小さいものが望ましく、10%以下、好ましくは0.01〜4%の範囲にあることが望ましい。溶剤を用いて低粘度化することは、硬化前後の体積変化が大きいのでできれば避ける方が好ましい。
コア形成用硬化性樹脂の硬化後の体積変化(収縮)を小さくするため、前記樹脂にポリマーを添加することができる。前記ポリマーはコア形成用硬化性樹脂との相溶性を有し、かつ該樹脂の屈折率、弾性率、透過特性に悪影響を及ぼさないものが好ましい。またポリマーを添加することにより体積変化を小さくする他、粘度や硬化樹脂のガラス転移点を高度に制御できる。前記ポリマーとしては例えばアクリル系、メタクリル酸系、エポキシ系のものが用いられるが、これらに限定されるものではない。
コア形成用硬化性樹脂の硬化物の屈折率は、クラッドとなる前記フィルム基材(以下の6)の工程におけるクラッド層を含む)より大きいことが必要である。コアとクラッド(クラッド用基材及びクラッド層)との屈折率の差は、0.001以上、好ましくは0.03以上である。
また、前記充填を促進するため、前記系の減圧に加えて、鋳型の進入口から充填するコア形成用硬化性樹脂を加熱することにより、より低粘度化することも有効な手段である。
クラッド形成用硬化性樹脂の硬化後の体積変化(収縮)を小さくするために、該樹脂と相溶性を有し、また該樹脂の屈折率、弾性率、透過特性に悪影響を及ぼさないポリマー(例えばメタクリル酸系、エポキシ系)を該樹脂に添加することができる。
前記紫外線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂の硬化後の体積変化(収縮)を小さくするために、クラッド層に添加するポリマーと同様のポリマーを添加することができる。
また、前記クラッド用基材とクラッド層との屈折率差は小さい方が好ましく、その差は0.01以内、好ましくは0.001以内、更に好ましくは差がないことが光の閉じ込めの点からみて好ましい。
Si基板に厚膜レジスト(SU−8)をスピンコート法で塗布した後、80℃でプリベークし、フォトマスクを通して露光した後、現像して120℃ポストベークし、250μmピッチを2mmピッチに変換するコア径50μmの8チャンネル導波路アレイ(8本の光導波路コア)に相当する凸部を形成し、これを原盤とした。
次に、厚み1mmの7059ガラスに、光導波路コアの両端ピッチに対応して100μm角の切り欠き部を設けた補強板を250μmピッチ用と2mmピッチ用の2枚用意した。
このようにして作製されたピッチ変換導波路の両端のピッチ誤差は1μm以内に収まった。
Si基板に厚膜レジスト(SU−8)をスピンコート法で塗布した後、80℃でプリベークし、フォトマスクを通して露光した後、現像して120℃ポストベークし、250μmピッチを2mmピッチに変換するコア径50μmの8チャンネル導波路アレイ(8本の光導波路コア)に相当する凸部および8本の光導波路コアの端部を結ぶ線に概ね平行な切断用の位置基準線に相当する凸部を形成し、これを原盤とした。
この状態の高分子光導波路製造用鋳型に、コア形成用硬化性樹脂として、粘度が500mPa・sのエポキシ系紫外線硬化樹脂(NTT−AT社製)を入力部に垂らし、反対側の出力部から20kPaで吸引したところ、約1分で全領域に前記紫外線硬化樹脂が充填された。さらに切断用の位置基準線端部には着色した紫外線硬化樹脂を垂らして光導波路コアと同様な方法で充填した。
このようにして作製されたピッチ変換導波路の両端のピッチ誤差は1μm以内に収まった。さらに導波路両端のコア中心からダイシングソーの切断面までの距離は設計値に対して6μm以内の誤差に収まった。
さらに同一の原盤から以上で説明した高分子光導波路製造用鋳型を10個作製して測定したところ、鋳型間の凹部の位置のばらつきは1μm以内となった。
実施例2における補強板の厚みを5mmとしたところ、実施例2と同等品質のピッチ変換導波路アレイが作製できた。
実施例2における補強板を厚み0.5mmのアルミナセラミックにしたところ、光導波路コアは実施例2とほぼ同等に硬化し、品質のピッチ変換導波路アレイが作製できた。
実施例2における補強板の材質をステンレスとしたところ、実施例2とほぼ同等の品質が確保できた。
実施例2における補強板の厚みを10mmとしたところ、高分子光導波路製造用鋳型の剥離工程においてアートンフィルム自体を変形させる必要が生じたが、歩留まりは実施例2に比べて5%程度低下に留めることができた。この結果から、補強板の厚みはより薄いことが好ましいことが分かる。
実施例2において補強板を使用しないシリコーン樹脂のみを材料とした鋳型としたところ、鋳型寸法に50μm程度の誤差が生じた。また同一原盤から鋳型を10個作製したところ鋳型間の凹部の位置のばらつきは20μmとなった。
12 凸部
20 鋳型
21a 21b 補強板
21c 切り欠き部
20a 硬化樹脂層
22 凹部
26 28 貫通穴
30 クラッド用基材
32 光導波路用コア
34 位置基準線
Claims (7)
- 複数本の光導波路コアに相当する複数の凹部を有する、鋳型形成用硬化性樹脂を硬化してなる鋳型の内部に、前記複数の凹部すべてを跨ぐ切り欠き部又は前記複数の凹部それぞれを独立して跨ぐ切り欠き部を有する補強板が、前記凹部の端部近傍に、前記複数の凹部すべて又はそれぞれを独立して跨ぐ状態で埋設されていることを特徴とする高分子光導波路製造用鋳型。
- さらに、前記凹部の両端に貫通穴を有することを特徴とする請求項1に記載の高分子光導波路製造用鋳型。
- さらに、切断用の位置基準線に相当する凹部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の高分子光導波路製造用鋳型。
- 前記補強板が、厚み5mm以下の光透過性ガラス又は光透過性樹脂からなることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の高分子光導波路製造用鋳型。
- 前記補強板が、厚み1mm以下のセラミック、金属、又は光非透過性樹脂からなることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の高分子光導波路製造用鋳型。
- 前記補強板を複数有し、該複数の補強板が前記凹部の一端と他端のそれぞれの近傍に位置することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の高分子光導波路製造用鋳型。
- 1)基板上に、複数本の光導波路コアに相当する複数の凸部を形成した原盤を準備する工程、2)前記原盤上に、前記複数の凸部すべてを跨ぐ切り欠き部又は前記複数の凸部それぞれを独立して跨ぐ切り欠き部を有する補強板を、前記凸部の端部近傍に、前記複数の凸部すべて又はそれぞれを独立して跨ぐ状態で設置し、鋳型形成用硬化性樹脂を塗布して加熱して硬化し、高分子光導波路製造用鋳型を作製する工程、3)前記高分子光導波路製造用鋳型における前記原盤の凸部に対応する凹部の両端に貫通穴を設ける工程、4)前記高分子光導波路製造用鋳型をクラッド用基材に密着させる工程、5)前記高分子光導波路製造用鋳型の貫通穴をそれぞれコア形成用硬化性樹脂の進入部及び排出部とし、コア形成用硬化性樹脂を進入部に接触させて、吸引および毛細管現象で進入させた後、硬化手段により前記コア形成用硬化樹脂を硬化させ光導波路コアを作製する工程を有することを特徴とする高分子光導波路の製造方法。
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