JP4281548B2 - フレキシブル高分子光導波路の製造方法 - Google Patents
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Description
現在、性能的に優れた実用的な方法は、(2)や(3)の方法だけであるが前記のごときコストの問題がある。そして(1)ないし(5)のいずれの方法も、大面積でフレキシブルなプラスチック基材に高分子導波路を形成するのに適用しうるものではない。
この問題を解決する方法の1つとして、デビット・ハートはキャピラリーとなる溝のパターンが形成されたパターン基板と平面基板とをクランプ用治具で固着し、さらにパターン基板と平面基板との接触部分を樹脂でシールなどした後減圧して、モノマー(ジアリルイソフタレート)溶液をキャピラリーに充填して、高分子光導波路を製造する方法を提案した(以下の特許文献1を参照)。この方法はコア形成用樹脂材料としてポリマー前駆体材料を用いる代わりにモノマーを用いて充填材料を低粘度化し、キャピラリー内に毛細管現象を利用して充填させ、キャピラリー以外にはモノマーが充填されないようにする方法である。
また、この方法は、パターン基板と平面基板とをクランプで固着する、あるいはこれに加えさらに接触部を樹脂でシールするなど煩雑な方法であり、量産にはむかず、その結果コスト低下を期待することはできない。また、クラッドとして厚さがmmオーダーあるいは1mm以下のフィルムを用いる高分子光導波路の製造に適用することは不可能である。
しかし、この特許に記載の製造方法を高分子光導波路の製造に適用しても、光導波路のコア部は断面積が小さいので、コア部を形成するのに時間がかかり、量産に適さない。また、モノマー溶液が重合して高分子になるときに体積変化を起こしコアの形状が変化し、透過損失が大きくなるという欠点を持つ。
このように、PDMSを使ったソフトリソグラフィー技術や、毛細管マイクロモールド法は、ナノテクノロジーとして最近、米国を中心に注目を集めている技術である。
<1> 1)ゴム鋳型形成用樹脂からなるゴム層に光導波路コア凸部に対応する凹部が形成され、該凹部において、前記ゴム層のゴム鋳型形成用樹脂とはゴム硬度が異なるゴム鋳型形成用硬化性樹脂の層を少なくとも1層積層してなる多層硬化樹脂層をなすゴム鋳型を準備する工程、2)ゴム鋳型にクラッド用基材を密着させる工程、3)クラッド用基材を密着させたゴム鋳型の凹部にコア形成用硬化性樹脂を充填する工程、4)充填したコア形成用硬化性樹脂を硬化させる工程、5)ゴム鋳型をクラッド用基材から剥離する工程、及び6)コアが形成されたクラッド用基材の上にクラッド層を形成する工程、を有し、
前記ゴム鋳型の多層硬化樹脂層のうちのコア形成用硬化性樹脂に接する最外層のシェア(Share)ゴム硬度が10〜40の範囲にあり、前記最外層以外の層のシェア(Share)ゴム硬度が45〜120の範囲内にあり、前記ゴム鋳型のゴム層の層厚の最大値が、10μm〜50mmであり、前記多層硬化樹脂層のコア形成用硬化性樹脂に接する最外層の表面エネルギーが、100μN/cm〜350μN/cmであることを特徴とするフレキシブル高分子光導波路の製造方法である。
前記ゴム鋳型の多層硬化樹脂層のうちのコア形成用硬化性樹脂に接する最外層のシェア(Share)ゴム硬度が10〜40の範囲にあり、前記最外層以外の層のシェア(Share)ゴム硬度が45〜120の範囲内にあり、前記ゴム鋳型のゴム層の層厚の最大値が、10μm〜50mmであり、前記多層硬化樹脂層のコア形成用硬化性樹脂に接する最外層の表面エネルギーが、100μN/cm〜350μN/cmであり、
前記クラッド用基材が赤外光に対して80%/mm以上の透過性を有し、かつ該クラッド用基材の屈折率と、前記4)の工程で硬化されたコア形成用硬化性樹脂の屈折率との差が0.01以上あることを特徴とするフレキシブル高分子光導波路の製造方法である。
また、従来においては、コア形成用硬化樹脂の注入時に減圧や加圧で注入することでゴム鋳型が変形し易かったり、振動し易かったりして高精度な型どりが困難であったが、本発明のフレキシブル高分子光導波路の製造方法においては、凹部において、ゴム鋳型の大部分を占めるゴム層とはゴム硬度が異なるゴム鋳型形成用硬化性樹脂の層を少なくとも1層積層してなる多層硬化樹脂層をなすゴム鋳型を用いることにより、ゴム硬度の高いゴム層が最外層以外のゴム層構造体に存在することで変形や振動に耐性が出て高精度なコア層形成を可能にした。
また、容易に圧着も可能になりゴム鋳型と基板との高度な密着性が容易に得られたり、ゴム表面層を特に表面エネルギーが低いゴム層にしたり、低いゴム硬度の材料を用いることができる為、光学的表面性を得やすかったりして、光導波路の作製工程は非常に簡便で低コストになり、各種基板に対しても容易に高分子光導波路の作製も簡易工程かつ低コストで可能となる。また、形成される光導波路は形状等を自由に設定することができるため電子デバイスの表面が多少の凸凹面上であっても導波路形成が可能であり、電子回路を埋め込んだり形成したものの上や近接部分でも導波路作製対応が容易である。他に、作製工程が簡便であるにもかかわらず極めて高精度な形状再現性で、導波損失も小さいことも大きな特徴である。さらに、クラッド用基材として可撓性フィルム基材を用いた場合においても、各種機器への自由な装填が可能な高分子光導波路が得られる。
1)ゴム鋳型形成用樹脂からなるゴム層に光導波路コア凸部に対応する凹部が形成され、該凹部において、前記ゴム層のゴム鋳型形成用樹脂とはゴム硬度が異なるゴム鋳型形成用硬化性樹脂の層を少なくとも1層積層してなる多層硬化樹脂層をなすゴム鋳型を準備する工程
2)ゴム鋳型にクラッド用基材に密着させる工程
3)クラッド用基材を密着させたゴム鋳型の凹部にコア形成用硬化性樹脂を充填する工程
4)充填したコア形成用硬化性樹脂を硬化させる工程
5)ゴム鋳型をクラッド用基材から剥離する工程
6)コアが形成されたクラッド用基材の上にクラッド層を形成する工程
次に、図1(B)が示すように、準コア原盤1の凸部2が形成された面に、ゴム鋳型形成用硬化性樹脂のゴム層20aを形成する。図1(B)は準コア原盤1にゴム鋳型形成用硬化性樹脂のゴム層20aを形成したものを、凸部2の長手方向に直角に切断した切断面を示す。
次に、ゴム鋳型形成用硬化性樹脂のゴム層20aを準コア原盤1から剥離して型をとり(図示せず)、次いで型の両端を、前記凹部22が露出するように切断し、鋳型形成用成形物20を作製する(図1(C)参照)。
1)ゴム鋳型形成用樹脂からなるゴム層に光導波路コア凸部に対応する凹部が形成され、該凹部において、前記ゴム層のゴム鋳型形成用樹脂とはゴム硬度が異なるゴム鋳型形成用硬化性樹脂の層を少なくとも1層積層してなる多層硬化樹脂層をなすゴム鋳型を準備する工程
ゴム鋳型の作製は、光導波路コアに対応する凸部を形成したコア原盤を用いて行うことが好ましいが、これに限定されるものではない。以下では、コア原盤を用いる方法について説明する。
光導波路コアに対応する凸部を形成したコア原盤の作製には、従来の方法、例えば、フォトリソグラフィー法やRIE法を特に制限なく用いることができる。また、本出願人が先に出願した電着法又は光電着法により高分子光導波路を作製する方法(特願2002−10240号)も、コア原盤を作製するのに適用することができる。コア原盤に形成される光導波路コアに対応する凸部の大きさは一般的に5〜500μm程度、好ましくは40〜200μm程度であり、高分子光導波路の用途等に応じて適宜決められる。例えばシングルモード用の光導波路の場合には、10μm角程度のコアを、マルチモード用の光導波路の場合には、50〜100μm角程度のコアが一般的に用いられるが、用途によっては数百μm程度と更に大きなコア部を持つ光導波路も利用される。本発明では、多層硬化樹脂層にするため、光導波路コアより10%から300%大きいサイズの準コア原盤を準備する。
ゴム鋳型は、前記のようにして作製したコア原盤の光導波路コアに対応する凸部が形成された面又は準コア原盤の凸部が形成された面に、ゴム鋳型形成用硬化性ゴム樹脂を塗布したり注型し、必要に応じ加熱処理をした後、該樹脂ゴムを硬化させ、次いでその硬化ゴム層を剥離して作製される。また、ゴム鋳型には、前記凸部に対応する凹部にコア形成用硬化性樹脂を充填するための進入口、及び前記凸部に対応する凹部から前記樹脂を排出させるための排出口が形成されるが、その形成方法は特に制限はない。コア原盤に予め進入口や排出口に対応する凸部を設けておくこともできるが、簡便な方法としては、例えば、コア原盤にゴム鋳型形成用硬化性樹脂によりゴム層を形成した後剥離して型をとり、その後、型の両端を前記凹部が露出するように切断することにより進入口及び排出口を形成する方法が挙げられる。この作製工程を数回に行なうことで、凹部における硬化樹脂層が多層のゴム鋳型が形成される。
ゴム鋳型形成用硬化性樹脂としては、その硬化物がコア原盤から容易に剥離できること、鋳型(繰り返し用いる)として一定以上の機械的強度・寸法安定性を有すること、凹部形状を維持する硬さ(硬度)を有すること、クラッド用基材との密着性が良好なことが好ましい。ゴム鋳型形成用硬化性樹脂には、必要に応じて各種添加剤を加えることができる。
本発明において用いるクラッド用基材としては、プラスチック基材等が用いられる。また屈折率が適正な基材の場合はそのままで良いが、屈折率制御を必要する物は、前記基材に全面または部分的に樹脂コートや無機材料をPVD法で着膜したものも用いられる。クラッド用コート層の屈折率は、1.55より小さく、1.50より小さいものがより好ましい。特に、コア材の屈折率より0.05以上小さいことが必要である。また、クラッド層の特性としては、平滑性においてRaが0.1μm以下で、ゴム鋳型との密着性に優れ、両者を密着させた場合、ゴム鋳型凹部以外に空隙が生じないものが好ましい。また、クラッド用基材がゴム鋳型及び/又はコアとの密着性が余り良好でない場合には、オゾン雰囲気による処理、波長300nm以下の紫外線照射処理を行って、ゴム鋳型等との密着性を改善することが好ましい。
前記脂環式アクリル樹脂としてはトリシクロデカン等の脂肪族環状炭化水素をエステル置換基に導入した、OZ−1000、OZ−1100(日立化成(株)製)等が用いられる。
また、前記フィルム基材の厚さはフレキシビリティーと剛性や取り扱いの容易さ等を考慮して適切に選ばれ、一般的には0.1mm〜0.5mm程度が好ましい。
前記導電性層の膜厚は0.05〜30μm程度が適切である。より好ましくは0.2〜2μm厚が適切である。
また、電子回路用の導電性層は、クラッド用基材の光導波路非形成面に設けることが好ましく、また積層させることも可能である。
ゴム鋳型凹部にコア形成用硬化性樹脂を充填するには、ゴム鋳型に、該ゴム鋳型より一回り大きいサイズのクラッドフィルムを密着させ、凹部の進入口にコア形成用硬化性樹脂を少量垂らし毛細管現象を利用して充填したり、凹部にコア形成用硬化性樹脂を加圧充填したり、凹部の排出口を減圧吸引したり、あるいは加圧充填と減圧吸引の両方を行うなどしたりして充填することができる。前記のごとく凹部端部に貫通孔を設けた場合は、進入側貫通孔に樹脂を溜め加圧充填したり、排出側貫通孔に減圧吸引管を挿入して減圧吸引するなどしたり、また両方を併用したりするとなお注入効率を上げることができる。
コア形成用硬化性樹脂は、ゴム鋳型とフィルム基材との間に形成された空隙(ゴム鋳型の凹部)に充填させるため、用いるコア形成用硬化性樹脂はそれが可能なように十分低粘度であることが必要である。前記硬化性樹脂の粘度は、50mPa・s〜2000mPa・s、望ましくは100mPa・s〜1000mPa・s、更に好ましくは300mPa・s〜700mPa・sにするのが、充填速度、コア形状の良さ及び光損失の少なさの点から好ましい。50mPa・s以下では、ゴム鋳型と基板の不要な隙間に入り込み、成形性を損ねる事があり、また2000mPa・s以上では浸透速度が極端に遅くなり、生産性が低下する。
コア形成用硬化性樹脂の硬化物の屈折率は、クラッドとなる前記フィルム基材(以下の5)の工程におけるクラッド層を含む)より大きいことが必要である。コアとクラッド(クラッド用基材及びクラッド層)との屈折率の差は、0.01以上、好ましくは0.05以上である。
また、この工程において、毛細管現象によるコア形成用硬化性樹脂のゴム鋳型凹部への充填を促進するために、系全体を減圧(0.1〜200Pa程度)することが望ましい。
また、前記充填を促進するため、前記系の減圧に加えて、ゴム鋳型の進入口から充填するコア形成用硬化性樹脂を加熱することにより、より低粘度化することも有効な手段である。
充填したコア形成用硬化性樹脂を硬化させる。紫外線硬化性樹脂を硬化させるには、紫外線ランプ、紫外線LED、UV照射装置等が用いられる。また、熱硬化性樹脂を硬化させるには、オーブン中での加熱等が用いられる。
前記4)の工程の後、ゴム鋳型をクラッド用基材から剥離する。また、前記1)〜3)の工程で用いるゴム鋳型は、屈折率等の条件を満たせばそのままクラッド層に用いることも可能で、この場合は、ゴム鋳型を剥離する必要はなくそのままクラッド層として利用する。この場合、ゴム鋳型とコア材料の接着性を向上させるためにゴム鋳型をオゾン処理することが好ましい。
コアが形成されたフィルム基材の上にクラッド層を形成するが、クラッド層としてはフィルム(たとえば前記2)の工程で用いたようなクラッド用基材が同様に用いられる)や、クラッド用硬化性樹脂を塗布して硬化させた層、高分子材料の溶剤溶液を塗布して乾燥して得られる高分子膜等が挙げられる。クラッド用硬化性樹脂としては紫外線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂が好ましく用いられ、例えば、紫外線硬化性又は熱硬化性のモノマー、オリゴマー若しくはモノマーとオリゴマーの混合物が用いられる。
クラッド層としてフィルムを用いる場合は、接着剤を用いて貼り合わされるが、その際、接着剤の屈折率が該フィルムの屈折率と近いことが望ましい。用いる接着剤は紫外線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂が好ましく用いられ、例えば、紫外線硬化性又は熱硬化性のモノマー、オリゴマー若しくはモノマーとオリゴマーの混合物が用いられる。
前記紫外線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂の硬化後の体積変化(収縮)を小さくするために、クラッド層に添加するポリマーと同様のポリマーを添加することができる。
図6(B)は、図6(A)のA−A断面図であり、22はゴム鋳型凹部を示す。図6(C)は、図6(A)のB−B断面図であり、ゴム鋳型凹部両端部において、コア形成用硬化性樹脂の進入部と排出部とに連通する応力緩和のための空隙部22a、22bを有する。
図9(A)は、ゴム鋳型をゴム鋳型凹部及び空隙部が現われるように切断した切断面を示す図で、図9(A)中、20はゴム鋳型、21は空隙部、22は凹部、24は強化部材、24bは強化部材に設けた注入口、24cは排出部をそれぞれ示す。また、図9(B)は、図9(A)をA−A線で切断した切断面を示す。
[実施例1]
<ゴム鋳型の作製>
石英基板に紫外線硬化型厚膜レジスト(マイクロケミカル(株)製、SU−8)をスピンコート法で塗布した後、80℃でプリベークし、フォトマスクを通して高圧水銀灯で露光して、現像し、断面が正方形の凸部(幅:50μm、高さ:50μm、ピッチ500μm、長さ:50mm)を5本形成した。次に、これを120℃でポストベークして、コア原盤を作製した。次に、同様に準コア原盤として、断面が正方形の凸部(幅:100μm、高さ:100μm、ピッチ500μm、長さ:50mm)を5本形成した。次に、これを120℃でポストベークして、準コア原盤を作製した。
アートンフイルム(膜厚100μm)を160℃に加熱した状態で、真空蒸着法により、その片面全面にクロム接着層0.2μm及び銅導電層0.8μmを成膜して、金属導電層を設けた。
次ぎに、スピナ−でポジ型レジスト(東京応化製)を塗布し、80℃2分のプリベークを行い、1.2μmのレジスト膜を得た。次ぎに、高圧水銀灯を有する紫外線露光用真空密着型マスクアライナーを用い、面発光レーザー制御用配線パターンと電源配線パターン用のパターンマスクを用いて、パターン露光を行い、アルカリ剤で現像を行い水洗し、130℃でポストベークを2分間行った。その後、塩化鉄から成るエッチング液で銅及びクロム層を除去し、次ぎにアセトン液に浸漬させながら超音波を与えてレジスト膜の剥離を行い、その後水洗を行った。アートンフィルム上に、薄膜金属からなる導電性パターンが得られ、各種電子テ゛ハ゛イスを実装し電子回路を形成した。この電子回路の上に、粘着層を持つフィルムで覆い汚れ等を防止した。
前記ゴム鋳型をアートンフイルム上の電子回路を有しないフィルム基材の非形成面に加圧密着させた。また、電子回路がない部分に前記ゴム鋳型の強化部材の各注入口と各排気口に注入管と減圧脱気管を接続した。圧力調整制御機を通して加圧注入管からゴム鋳型凹部に、粘度が1300mPa・sの紫外線硬化性樹脂(JSR社製:PJ3001)を30kPaの加圧圧力で注入した。また、ゴム鋳型の排出口では、減圧脱気管を通し静圧による−50kPaの減圧吸引を行なった。40秒でゴム鋳型凹部に紫外線硬化性樹脂を充填することができた。
また光スイッチデバイスを半田バンプを用いて接合兼接着を行い、高分子導波路中に設定し、光スイッチとしての機能の確認ができた。
アートンフィルムを用いてゴム硬度80の均一ゴム材からなるゴム鋳型を用い、実施例1と同様にしてコア及びクラッド層を形成した後、アートンフィルムのコア非形成面に実施例1と同様にして電子回路を形成し、高分子光導波路を作製した。この高分子光導波路の3本の光導波路コアの平均導波損失は、5.3dB/cmであった。他の2本は光導波を確認できなかった。電子回路の導電性パターンを形成する際のフォトリソ工程における光導波路コアの形状劣化は、顕微鏡で確認できた。
<ゴム鋳型の作製>
石英基板に紫外線硬化型厚膜レジスト液(マイクロケミカル(株)製、SU−8)をスピンコート法で塗布した後、80℃加熱オーブンでプリベークし、フォトマスクを通して高圧水銀灯により露光した後、現像工程を経て、断面が正方形の微細凸部(幅:80μm、高さ:80μm、ピッチ:1mm、長さ:100mm)を10本形成したコア原盤を作製した。次に、同様にフォトマスクを通して高圧水銀灯により露光した後、現像工程を経て、断面が正方形の微細凸部(幅:200μm、高さ:200μm、ピッチ:1mm、長さ:100mm)を10本形成した準コア原盤を作製した。これをそれぞれ120℃でポストベークした。このようにして作製した凸部の1つの端部に、それぞれモールドにより、高さ2mm、幅(凸部に直交する方向)10mm、基板長手方向長さ20mmの、断面が長方形の圧力緩和空隙作製用凸部を形成し、コア原盤及び準コア原盤とした。
前記準コア原盤の上に、ゴム鋳型形成用硬化性樹脂として、熱硬化性シリコーンゴムオリゴマー(ダウコウニングアジア社製:SYLGARD184、ジメチルポリシロキサン)を、凸部の長手方向の一端が一部露出するように、かつ、他端にある空隙部作製用凸部の端部までが覆われるように塗布した。この上から前記強化部材を押圧し固定した。その後、105℃で8分間加熱して仮硬化させ、シリコンゴムと強化部材を一体化させた。次に、コア原盤の上に、ゴム鋳型形成用硬化性樹脂として、熱硬化性シリコーンゴムオリゴマー(ダウコウニングアジア社製:SYLGARD184、ジメチルポリシロキサン)を、凸部の長手方向の一端が一部露出するように、かつ、他端にある空隙部作製用凸部の端部までが覆われるように塗布した。この上から前記ゴム成形物をつけた強化部材を押圧し固定した。その後、125℃で30分間加熱して硬化させ、2層のシリコンゴム層(多層硬化樹脂層)を含むゴム層と強化部材とを一体化させた。ゴム層の厚さは10mmであった。次いでこれをコア原盤から剥離しゴム鋳型を得た。ゴム鋳型の多層硬化樹脂層には、40μm角の凹部と、コア形成用硬化性樹脂の進入部と排出部と、空隙部とが形成された。最外層のシェア(Share)ゴム硬度は14であり、強化部材と最外層との間の鋳型形成用硬化性樹脂のシェア(Share)ゴム硬度は105であった。
前記ゴム鋳型をアートンフイルムの電子回路部分の非形成面に加圧密着させた。また、前記ゴム鋳型の強化部材の各注入口と各排気口に注入管と減圧脱気管を接続した。注入管にはコア形成用硬化性樹脂を入れた加圧タンクに接続し、さらに加圧タンクに窒素ボンベを直結させ、静圧で該樹脂を圧入できるようにした。また、減圧脱気管は、圧力制御機構と減圧タンクを介して真空ポンプに接続し、圧力調整された静圧力による減圧吸引が行なわれるようにした。
充填終了後、ゴム鋳型から注入管及び減圧脱気管をはずし、ゴム鋳型の石英製窓を通して80mW/cm2のUV光を10分間照射してコア形成用硬化性樹脂を硬化させた。
鋳型を剥離すると、アートンフイルム上に屈折率1.57のコアが形成された。
さらに、アートンフイルムのコア形成面に、硬化後の屈折率がアートンフイルムと同じ1.51である熱硬化性樹脂(JSR(株)製)を全面に塗布した後、加熱硬化させたところ、フレキシブルな高分子光導波路が得られた。この高分子光導波路の平均導波損失は、0.15dB/cmであった。
実施例1と同様にして、光導波路への光の良好な導波を確認した。
2 凸部
4 最外層
4a 凹部
10 コア原盤
12 光導波路コアに対応する凸部
20 鋳型形成用成形物
20a ゴム層
21 空隙部
22 ゴム鋳型凹部
22a 空隙部(コア形成用硬化性樹脂の進入部)
22b 空隙部(コア形成用硬化性樹脂の排出部)
23 ゴム鋳型
24 強化部材
24b 注入口
24c 排出部
26a 26b 注入管
28a 28b 減圧脱気管
30 クラッド用基材
31 導電性パターン
40a コア形成用硬化性樹脂
40 コア
50 クラッド層
60 高分子光導波路
Claims (17)
- 1)ゴム鋳型形成用樹脂からなるゴム層に光導波路コア凸部に対応する凹部が形成され、該凹部において、前記ゴム層のゴム鋳型形成用樹脂とはゴム硬度が異なるゴム鋳型形成用硬化性樹脂の層を少なくとも1層積層してなる多層硬化樹脂層をなすゴム鋳型を準備する工程、2)ゴム鋳型にクラッド用基材を密着させる工程、3)クラッド用基材を密着させたゴム鋳型の凹部にコア形成用硬化性樹脂を充填する工程、4)充填したコア形成用硬化性樹脂を硬化させる工程、5)ゴム鋳型をクラッド用基材から剥離する工程、及び6)コアが形成されたクラッド用基材の上にクラッド層を形成する工程、を有し、
前記ゴム鋳型の多層硬化樹脂層のうちのコア形成用硬化性樹脂に接する最外層のシェア(Share)ゴム硬度が10〜40の範囲にあり、前記最外層以外の層のシェア(Share)ゴム硬度が45〜120の範囲内にあり、前記ゴム鋳型のゴム層の層厚の最大値が、10μm〜50mmであり、前記多層硬化樹脂層のコア形成用硬化性樹脂に接する最外層の表面エネルギーが、100μN/cm〜350μN/cmであることを特徴とするフレキシブル高分子光導波路の製造方法。 - 前記ゴム鋳型が、前記ゴム層を補強する強化部材を有し、該強化部材にコア形成用硬化性樹脂の注入口が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブル高分子光導波路の製造方法。
- 前記強化部材が、金属材料又はセラミック材料からなることを特徴とする請求項2に記載のフレキシブル高分子光導波路の製造方法。
- 前記ゴム鋳型が、前記ゴム層の凹部両端部におけるコア形成用硬化性樹脂の進入部及び/又は排出部に連通する応力緩和のための空隙部を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のフレキシブル高分子光導波路の製造方法。
- 前記ゴム鋳型形成用硬化性樹脂が、液状シリコーンゴムからなることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のフレキシブル高分子光導波路の製造方法。
- 前記クラッド用基材の表面に、全面または部分的にクラッド層が設けらていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のフレキシブル高分子光導波路の製造方法。
- 前記3)の工程における充填に際し、前記ゴム鋳型の凹部のコア形成用硬化性樹脂排出側から減圧吸引することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のフレキシブル高分子光導波路の製造方法。
- 前記減圧吸引と同期して、前記ゴム鋳型の凹部のコア形成用硬化性樹脂注入側から加圧により充填することを特徴とする請求項7に記載のフレキシブル高分子光導波路の製造方法。
- 前記加圧充填及び/又は減圧吸引を静圧力で行なうことを特徴とする請求項7または8に記載のフレキシブル高分子光導波路の製造方法。
- 前記加圧充填及び/又は減圧吸引における加圧圧力又は減圧圧力を段階的に変化させて制御することを特徴とする請求項7または8に記載のフレキシブル高分子光導波路の製造方法。
- 前記ゴム鋳型のゴム鋳型形成用硬化性樹脂の全体の実測定値のシェア(Share)ゴム硬度が、15〜90の範囲にあることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載のフレキシブル高分子光導波路の製造方法。
- 前記ゴム鋳型の多層硬化樹脂層を形成するに際し、該多層硬化樹脂層のうちのコア形成用硬化性樹脂に接する最外層以外の層に、形成しようとする光導波路コア凸部に対応する凹部より大きい凹部を形成し、次にコア形成用硬化性樹脂に接する最外層に形成しようとする光導波路コア凸部に対応する凹部を形成するとともに、該最外層の層厚の最大値を10から2000μmの範囲に設定することを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載のフレキシブル高分子光導波路の製造方法。
- 前記多層硬化樹脂層のコア形成用硬化性樹脂と接する最外層の表面粗さが、0.5μm以下であることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載のフレキシブル高分子光導波路の製造方法。
- 前記ゴム鋳型の多層硬化樹脂層全層を含むゴム層のゴム鋳型形成用硬化性樹脂が、365nmの波長領域において50%/mm以上の光透過性であることを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載のフレキシブル高分子光導波路の製造方法。
- 前記コア形成用硬化性樹脂の硬化前粘度が50mPa・s〜2000mPa・sであることを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載のフレキシブル高分子光導波路の製造方法。
- 前記クラッド用基材と前記クラッド層との屈折率の差が、0.1以下であることを特徴とする請求項1から15のいずれか1項に記載のフレキシブル高分子光導波路の製造方法。
- 1)ゴム鋳型形成用樹脂からなるゴム層に光導波路コア凸部に対応する凹部が形成され、該凹部において、前記ゴム層のゴム鋳型形成用樹脂とはゴム硬度が異なるゴム鋳型形成用硬化性樹脂の層を少なくとも1層積層してなる多層硬化樹脂層をなすゴム鋳型を準備する工程、2)前記ゴム鋳型に、あらかじめ導電性パターンが形成されたクラッド用基材を密着させる工程、3)クラッド用基材を密着させたゴム鋳型の凹部にコア形成用硬化性樹脂を充填する工程、4)充填したコア形成用硬化性樹脂を硬化させる工程、を有するフレキシブル高分子光導波路の製造方法であって、
前記ゴム鋳型の多層硬化樹脂層のうちのコア形成用硬化性樹脂に接する最外層のシェア(Share)ゴム硬度が10〜40の範囲にあり、前記最外層以外の層のシェア(Share)ゴム硬度が45〜120の範囲内にあり、前記ゴム鋳型のゴム層の層厚の最大値が、10μm〜50mmであり、前記多層硬化樹脂層のコア形成用硬化性樹脂に接する最外層の表面エネルギーが、100μN/cm〜350μN/cmであり、
前記クラッド用基材が赤外光に対して80%/mm以上の透過性を有し、かつ該クラッド用基材の屈折率と、前記4)の工程で硬化されたコア形成用硬化性樹脂の屈折率との差が0.01以上あることを特徴とするフレキシブル高分子光導波路の製造方法。
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