JP2007233303A - 高分子光導波路モジュールの製造方法 - Google Patents

高分子光導波路モジュールの製造方法 Download PDF

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英一 圷
Shigemi Otsu
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和敏 谷田
Toshihiko Suzuki
俊彦 鈴木
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Abstract

【課題】 簡易な作製工程で、低光損失高分子光導波路を簡易に製造でき、且つ製造コスト低減の為の多個取り量産可能な高分子光導波路モジュールの製造方法を提供する。
【解決手段】 本製造方法は、光導波路コアに対応する凹部5を複数有するゴム鋳型6を準備する工程と、ゴム鋳型にクラッド層付基材7を密着させる工程と、ゴム鋳型の複数の凹部5に連通するコア材液注入口23にコア形成用硬化性樹脂を供給する複数のテーパー型針状注入ヘッド27を設定し且つ複数の凹部5に連通するコア材液排出口24に減圧吸引ヘッド28を設定して複数の凹部5にコア形成用硬化性樹脂9を充填する工程と、充填された硬化性樹脂を硬化させて光導波路コア10を形成する工程と、その後ゴム鋳型6をクラッド層基材7から剥離する工程と、光導波路コア10上にクラッド層11を形成する工程とを有する。
【選択図】 図2

Description

本発明は高分子光導波路モジュールの製造方法に係り、特に高分子光導波路モジュールの量産に好適な高分子光導波路モジュールの製造方法に関する。
高分子光導波路モジュールの製造方法としては、従来から、(1)基材にモノマーを含浸させて光導波路コア部を選択的に露光して屈折率を変化させフィルムを貼り合わせる方法(選択重合法)、(2)光導波路コア層及びクラッド層を塗布後、反応性イオンエッチングを用いてクラッド部を形成する方法(RIE法)、(3)高分子材料中に感光性の材料を添加した紫外線硬化樹脂を用いて、露光・現像するフォトリソグラフィー法を用いる方法(直接露光法)、(4)射出成形を利用する方法、(5)光導波路コア層及びクラッド層を塗布後、光導波路コア部を露光して光導波路コア部の屈折率を変化させる方法(フォトブリーチング法)等を応用したものが提案されている。
上記(1)の選択重合法にはフィルムの張り合わせに問題があり、上記(2)や上記(3)の方法には、フォトリソグラフィー法を使うためコスト高になり、上記(4)の方法は、得られる光導波路コア径の精度に課題がある。また、上記(5)の方法は光導波路コア層とクラッド層との十分な屈折率差がとれないと言う問題がある。
現在、性能的に優れた導波路の実用的な製造方法は、上記(2)や上記(3)の方法だけであるが前記のごときコストの問題がある。そして上記(1)から上記(5)のいずれの方法も、大面積でフレキシブルなプラスチック基材に高分子導波路を形成するのに適用する
また、高分子光導波路を製造する方法として、キャピラリーとなる溝のパターンが形成されたパターン基板(クラッド)に光導波路コア用のポリマー前駆体材料を充填し、その後硬化させて光導波路コア層を作り、その上に平面基板(クラッド)を貼り合わせる方法が知られているが、この方法ではキャピラリー溝にだけでなく、パターン基板と平面基板の間にも全面的にポリマー前駆体材料が薄く充填され硬化されて光導波路コア層と同じ組成の薄い層が形成される結果、この薄い層を通って光が漏洩してしまう問題があった。
この問題を解決する方法の1つとして、デビット・ハートはキャピラリーとなる溝のパターンが形成されたパターン基板と平面基板とをクランプ用治具で固着し、さらにパターン基板と平面基板との接触部分を樹脂でシールなどした後、減圧して光導波路コア用のモノマー(ジアリルイソフタレート)溶液をキャピラリーに充填して、高分子光導波路を製造する方法を提案した(特許文献1)。この方法は光導波路コア形成用樹脂材料としてポリマー前駆体材料を用いる代わりにモノマーを用いて充填材料を低粘度化し、キャピラリー内に毛細管現象を利用して充填させ、キャピラリー以外にはモノマーが充填されないようにする方法である。この方法は光導波路コア形成用材料としてモノマーを用いているため、モノマーが重合してポリマーになる際の体積収縮率が大きく、光導波路コア部分内部に空隙を生じやすく、高分子光導波路の光透過損失が大きくなる問題がある。また、この方法は、パターン基板と平面基板とをクランプで固着する、あるいはこれに加えさらに接触部を樹脂でシールするなど煩雑な方法であり、量産性に関し困難度が高い。その結果、コスト低下を期待することはできない。従って、この方法は、クラッドとして厚さがmmオーダーあるいは1mm以下のフィルムを用いる高分子光導波路の製造に適用する事は不可能である。
また、最近、ハーバード大学のGeorge M. Whitesidesらは、ナノ構造を作る新技術として、ソフトリソグラフィーの一つとして毛細管マイクロモールドという方法を提唱している。これは、フォトリソグラフィーを利用してマスター基板を作り、ポリジメチルシロキサン(PDMS)の密着性と容易な剥離性を利用してマスター基板のナノ構造をPDMSの鋳型に写し取り、この鋳型に毛細管現象を利用して液体ポリマーを流し込んで固化させる方法である(非特許文献1)。これに関しては、ハーバード大学のGeorge M. WhitesidesのグループのKim Enochらによる毛細管マイクロモールド法に係る技術が特許されている(特許文献2)。
しかし、これらの製造方法を高分子光導波路の製造に適用しても、光導波路の光導波路コア部は断面積が小さいので、光導波路コア部を形成するのに時間がかかり、量産に適さないという問題がある。また、モノマー溶液が重合して高分子になるときに体積変化を起こし光導波路コアの形状が変化し、透過損失が大きくなるという欠点を持つ。
IBMチュリッヒ研究所のB. MichelらはPDMSを用いた高解像度のリソグラフィー技術を提案しており、この技術により数十nmの解像力が得られると報告している(非特許文献2)。このように、PDMSを使ったソフトリソグラフィー技術や、毛細管マイクロモールド法は、ナノテクノロジーとして最近、米国を中心に注目を集めている。前記のマイクロモールド法を用いて光導波路を作製する場合、硬化時の体積収縮率を小さくする(したがって透過損失を小さくする)ことと、充填を短時間に容易に完了するために充填液体(モノマー等)の低粘度化することとを両立させえない。したがって、透過損失を小さくすることを優先的に考慮すると、充填液体の粘度をある限度以下にすることができず、充填速度が遅くなり、量産製造は望めない。また前記のマイクロモールド法は、基板としてガラスやシリコンウエハー基板等の平滑で剛体である基板を用いることが前提となっており、フレキシブルなフィルム基材を用いることは考慮されていない。そのため形成する導波路形状に歪を生じ、十分な光伝搬性能の導波路は作製できない。
これに対し、本発明者らは既に、フレキシブルなフィルム基材をクッラド基材と兼ねさせ、該フィルム基材に高分子導波路を形成する方法を提案した(特許文献3、及び特許文献4)。これらの高分子光導波路の製造方法により、従来不可能であったフレキシブルな高分子光導波路を精度よく、同種類の材料系で全デバイスが構成され、光学端面が精度の高い切断工程で得られ、低コスト化が可能となった。
近年、IC技術やLSI技術において、信号遅延やノイズの抑制及び集積度向上のために、金属配線に代わって機器装置間、機器装置内のボード間、チップ内において光配線を行なうこと、例えば、発光素子と受光素子の間を光導波路で接続することが注目されている(例えば、特許文献5乃至特許文献7)。
特許文献5に記載の光配線素子は、発光素子からの光を光導波路コアに入射させるための入射側ミラーと、光導波路コアからの光を受光素子に出射させるための出射側ミラーを有し、さらに、発光素子から入射側ミラーおよび出射側ミラーから受光素子に至る光路に相当する箇所でクラッド層を凹状に形成し、発光素子からの光および出射側ミラーからの光を収束させるものである。また、特許文献6に記載の光配線素子は、光導波路コアの光入射端面を発光素子に向かって凸面となるように形成し、発光素子からの光を収束させて導波損失を抑えるものである。さらに、特許文献7には、電子素子と光素子とを集積化した光電融合回路基板の上に高分子光導波路回路が直接組み立てられた光電子集積回路についての技術が記載されている。
特許第3151364号公報 米国特許第6355198号明細書 特開2004−226941号公報 特願2004−86144号公報 特開2000−39530号公報 特開2000−39531号公報 特開2000−235127号公報 SCIENTIFIC AMERICAN SEPTEMBER 2001(日経サイエンス2001年12月号) IBM J.REV.& DEV.VOL.45 NO.5 SEPTEMBER 2001
高分子光導波路モジュールは、高精度な形成技術を用いる為に作製条件が厳しく、そして各部分の要求精度が非常に高い為に短時間に量産が難しく、低コスト化が難しいという製造上の課題があった。そのため、この種の光導波路モジュールは、小面積化して光導波路の最小単位で各単位毎に製造条件の制御を高いレベルで実施しながら製造しなくてはならない大きい問題があった。すなわち、高分子光導波路モジュールの多個取りがし易く、製造精度が得られ易い方法で実施できるような製造装置や製造方法の具体的な手段を示す事が課題であった。
本発明は、上記のような要請に基づいてなされたものであり、その目的は、簡易な作製工程で、低光損失高分子光導波路を簡易に製造でき、且つ製造コスト低減の為の多個取り量産可能な高分子光導波路モジュールの製造方法を提供することにある。
上記目的は、光導波路コアに対応する凹部を複数有するゴム状の硬化性樹脂から形成されたゴム鋳型を準備する工程と、前記ゴム鋳型に第1のクラッド層基材またはクラッド層付基材を密着させる工程と、前記第1のクラッド層基材またはクラッド層付基材が密着された前記ゴム鋳型の複数の凹部に連通する複数のコア材液注入口にコア形成用硬化性樹脂を供給する複数のテーパー型針状注入ヘッドを設定し且つ前記複数の凹部に連通する複数のコア材液排出口に減圧吸引ヘッドを設定して前記複数の凹部に前記コア形成用硬化性樹脂を充填する工程と、前記充填されたコア形成用硬化性樹脂を硬化させて光導波路コアを形成する工程と、その後前記ゴム鋳型を前記第1のクラッド層基材またはクラッド層付基材から剥離する工程と、その後前記形成された光導波路コアの上に第2のクラッド層を形成する工程とを有する高分子光導波路モジュールの製造方法により、達成される。
ここで、前記第2のクラッド層を形成する工程の後に、前記光導波路コアの端部を光学端面にするための切断工程を備えることができる。また、前記第2のクラッド層を形成する工程は、クラッド層用の硬化樹脂液を用いて浸漬法、スピナー法、ポテイング法または液滴噴射法で行うことができる。さらに、前記クラッド層用の硬化樹脂液を接着剤として用いて前記第2のクラッド層上に第3のクラッド層基材またはクラッド層付基材を接着する工程を含むことができる。
前記ゴム鋳型は、前記複数の凹部と前記コア材液注入口との間および前記複数の凹部と前記コア材液排出口との間の少なくとも一方に前記複数の凹部の各端部を連通する空洞を備えることができる。前記空洞の断面積は、前記凹部の断面積の2倍から1000倍の範囲にあることが好ましい。また、前記テーパー型針状注入ヘッドのテーパー角度は5度から60度の範囲にあることが好ましい。
また、前記光導波路コアの光導波方向中間部に、前記光導波路コアを切断するように光学素子設置用の空間または溝を作製する工程と、前記光学素子の光路部と前記光導波路コアとを光接合する工程とを更に有することができる。前記光学素子は、光学フィルター、光学レンズ、光学ミラー、光学スイッチ、発光素子および受光素子のうちの少なくとも1つを含むことができる。
前記コア材液注入口および前記コア材液排出口は、前記ゴム鋳型を補強するための強化部材に設けることができる。前記強化部材は、金属材料、セラミック材料およびプラスチック材料のうちの少なくとも1つの材料を含むことができる。また、前記ゴム鋳型の硬化性樹脂は、シリコーン系ゴムとすることができる。前記ゴム鋳型の硬化性樹脂のシェアゴム硬度は、10以上50以下の範囲にあることが好ましい。前記ゴム鋳型の表面エネルギーは、7dyn/cm以上30dyn/cm以下の範囲にあることが好ましい。前記ゴム鋳型の凹部内壁の表面粗さ(Ra)は、0.1μm以下であることが好ましい。
本発明によれば、簡易な作製工程で、低光損失高分子光導波路を簡易に製造でき、且つ製造コスト低減の為の多個取り量産可能な高分子光導波路モジュールの製造方法を提供することができる。
以下、本発明に係る高分子光導波路の製造方法の実施の形態について図を用いて説明する。
図1(A)〜(G)は、本発明に係る高分子光導波路の製造方法の一例を示す概念図である。図1(A)は、光導波路コアに対応する複数の凸部1が形成された原盤(光導波路マスター基板)2を、凸部1の長手方向に直角に切断した切断面を示す。原盤2の作成方法については後述する。次に、図1(B)に示すように、原盤2の凸部1が形成された面に、鋳型形成用硬化性樹脂(例えば、シリコーン系ゴム)の硬化樹脂層3を形成する。本例では、鋳型補強用の強化部材4の枠内と凸部1が形成された原盤2との間に鋳型形成用硬化性樹脂を流し込んで硬化樹脂層3を形成する。図1(B)は、原盤2に、ゴム鋳型形成用硬化性樹脂の硬化樹脂層3を形成したものを、凸部1の長手方向に直角に切断した切断面を示す。
次に、図1(C)に示すように、鋳型形成用硬化性樹脂の硬化樹脂層3を原盤2から剥離し、凸部1に対応して形成された凹部5の長手方向の両端を、凹部5の両端が露出するように切断する。これにより、凹部5に光導波路コア形成用硬化性樹脂を充填するための進入口、及び凹部5から光導波路コア形成用硬化性樹脂を排出させるための排出口を有するゴム鋳型6が作製される。
このようにして作製したゴム鋳型6に、図1(D)に示すように、それより一回り大きい面積を有するクラッド層付基材7を密着させる。クラッド層付基材7は、クラッド層を有する基材である。なお、クラッド層付基材は、クラッド層と一体的に設けられていてもよい。また、クラッド層自体が基材となるクラッド層基材であってもよい。クラッド層付基材7の裏面には、導電性パターン8が形成される。
次に、図1(E)に示すように、ゴム鋳型6の凹部5に光導波路コア形成用硬化性樹脂9を流し込み、硬化させる。図1(E)は、ゴム鋳型の凹部長手方向に直角に切断した断面図を示す。この硬化性樹脂9は紫外線または熱硬化性樹脂とすることができる。本例では、紫外線硬化性樹脂として説明する。図2は、光導波路コア形成用硬化性樹脂をゴム鋳型6の凹部5に流し込む工程の一例を示す図であり、(A)は斜視図、(B)は(A)のB−B断面図、(C)は(A)のC−C断面図、(D)はテーパー型針状注入ヘッドの一例を示す図である。図2(A)に示すように、ゴム鋳型の強化部材4はクラッド層付基材7に複数の固定ネジ21で固定される。強化部材4の枠に囲まれた部分は露光開口部22である。強化部材は、金属材料、セラミック材料およびプラスチック材料のうちの少なくとも1つの材料を含むことができる。強化部材4には、コア材液注入口23およびコア材液排出口24がそれぞれ複数設けられている。ここで、コア材液注入口23およびコア材液排出口24は、強化部材4または硬化樹脂層3に直接形成することもできる。コア材液注入口23にはコア材液注入管25がテーパー型針状注入ヘッド27を介して接続され、コア材液排出口24には減圧脱気管26が減圧吸引ヘッド(減圧脱気ヘッド)28を介して接続される。光導波路コア形成用硬化性樹脂8は、コア材液注入管25、注入ヘッド27およびコア材液注入口23を介してゴム鋳型6の凹部5に流し込まれ、一方、コア材液排出口24、吸引ヘッド28および減圧脱気管26を介して排出され、これにより凹部5内に光導波路コア形成用硬化性樹脂9が充填される。ゴム鋳型6は、複数の凹部5とコア材液注入口23との間および複数の凹部5とコア材液排出口24との間の少なくとも一方に複数の凹部5の各端部を連通する空洞20を備えることができる。空洞20の断面積は、凹部5の断面積の2倍から1000倍の範囲とすることが好ましい。断面積が2倍未満の場合は空洞を設ける効果に乏しく、また1000倍を超えるとコア材液のロスが多すぎることになるからである。なお、コア材液注入口23およびコア材液排出口24は、強化部材4を用いることなく、ゴム鋳型6の硬化樹脂層3に直接形成することもできる。
ゴム鋳型の複数のコア材原液注入口に光導波路コア形成用硬化性樹脂(コア材液)9を供給する場合、複数のテーパー型針状注入ヘッドから供給するインジェクション機構を用いることができる。図2(D)において、テーパー型針状注入ヘッド27は、断面がほぼ円形であり、ゴム鋳型6のコア材原液注入口23に挿入される。テーパー型針状注入ヘッド27のテーパー角度θは、5度から60度の範囲が好ましく、より好ましくは10度から30度の範囲である。テーパー角度θをこの範囲にすると、注入ヘッド27が注入口23の位置に対して少しズレを生じても、自動的に位置精度制御が出来て、複数の針状ヘッド27をそれぞれ各注入口23に、密着性が良好で、ばらつき無く設定することができる。特に、インジェクション機構の押圧により移動する複数本のヘッド27を一括にセットした場合に、各ヘッドの注入設定状態のばらつき低減に効果を示す。コア材液注入口23がゴム鋳型6の硬化樹脂層3に直接形成された場合に、この効果はより大きい。これはゴム鋳型6(硬化樹脂層3)の弾力性によるものである。そして、コア材原液の注入速度や注入圧力の各凹部への差が少なく、成形後の導波路の伝搬損失や偏波性の差が少ない状態になる。本例では、排出口の減圧吸引処理と合せる事により、ゴム鋳型の凹部に光導波路コア形成用硬化性樹脂9を充填する。凹部の他端部にある排出口からは光導波路コア形成用硬化性樹脂9が排出される。そして、ゴム鋳型6の凹部5内の光導波路コア形成用硬化性樹脂9を紫外線(UV光)硬化させることにより、光導波路コア10を形成する。
図3は、光導波路コア形成用硬化性樹脂をゴム鋳型6の凹部5に流し込む工程の他の例を示す図であり、(A)は斜視図、(B)は(A)のB−B断面図、(C)は(A)のC−C断面図を示す図である。図3の例が、図2の例と異なるのは、図3の例には、強化部材4の枠に囲まれた露光開口部22にガラス板31が設けられた点であり、その他は図2の例と同様である。ガラス板31は、ゴム鋳型6(硬化樹脂層3)の振動や変形による不安定さを解消し、高精度な成型性能を得るために設けられる。ガラス板の代わりに、石英板や硬質プラスチック板のような光透過性の基板(天板)を用いることができる。
次に、図1(F)に示すように、ゴム鋳型6をクラッド層付基材7から剥離することにより、クラッド層付基材7上に光導波路コア10が形成された光導波路を得ることができる。図(F)は、光導波路コア10の長手方向に直角に切断した切断面を示す。
さらに、図1(G)に示すように、クラッド層付基材7の光導波路コア10の形成面に、クラッド層用の硬化性樹脂による第2のクラッド層を形成する。第2のクラッド層を形成する工程は、クラッド層用の硬化樹脂液を用いて浸漬法、スピナー法、ポテイング法または液滴噴射法で行うことができる。また、クラッド層用の硬化樹脂液を接着剤として用いて第2のクラッド層上に第3のクラッド層基材またはクラッド層付基材を接着することができる。この第2のクラッド層の形成後に、光導波路コアの端部を光学端面にするための切断工程を実施する。これにより、本発明による高分子光導波路モジュールが作製される。図1(G)は、高分子光導波路を光導波路コア10の長手方向に直角に切断した切断面を示すものである。
図4(A)〜(G)は、本発明に係る高分子光導波路の製造方法の他の例を示す概念図である。本例は、光導波路コアが形成されたクラッド層付基材の上にクラッド層となるフィルムを接着剤により接着する例を示すものである。図4(A)〜(F)に示す工程は、図1(A)〜(F)で説明した工程とほぼ共通しているので詳しい説明は省略する。両者が異なる点は、図4の例では、強化部材4の枠に囲まれた露光開口部22にガラス板41が設けられている点、強化部材4の枠の下にゴム鋳型6の硬化樹脂層3の一部が配置されている点、および導電性パターン42がクラッド層付基材7の裏面でなく表面に形成されている点である。本発明においては、上述のようなゴム鋳型を用いるため、導電性パターン42が光導波路コア10の形成側に設けられていても、導電性パターン42に悪影響を与えることなく、光導波路コア10を形成することができる。本例では、図4(G)に示すように、光導波路コア10が形成されたクラッド層付基材7の上にクラッド層となる低屈折率フィルム43を接着剤層44を用いて接着する。接着剤44の屈折率はクラッド層フィルム43と同じであることが望ましい。図4(G)は、高分子光導波路を光導波路コア10の長手方向に直角に切断した切断面を示すものである。
図5は、光導波路コア形成用硬化性樹脂をゴム鋳型6の凹部5に流し込む工程の他の例を示す図であり、(A)は斜視図、(B)は(A)のB−B断面図、(C)は(A)のC−C断面図を示す図である。図5の例は、図4(D)に対応するものであり、図2の例と異なるのは、図5の例には、強化部材4の枠に囲まれた露光開口部22にガラス板41が設けられた点であり、その他は図2の例と同様である。ガラス板41の作用効果は上述のとおりである。
図6は、光導波路コア形成用硬化性樹脂をゴム鋳型6の凹部5に流し込む工程の他の例を示す図であり、(A)は斜視図、(B)は(A)のB−B断面図、(C)は(A)のC−C断面図を示す図である。図6の例が図2の例と異なるのは、図6の例には、強化部材4の枠に囲まれた露光開口部22にガラス板61が設けられた点、強化部材4の下部に凹部5に平行に複数の楔型の凸部62が設けられている点、強化部材4の凸部62に対応する凹部63を有する強化構造体下面基板(強化基板)64が設けられている点、強化基板64上に面積を小さくしたクラッド層付基材65が設けられている点、および固定ネジ66の本数が少なくされている点であり、その他は図2の例と同様である。ガラス板61の作用効果は上述のとおりである。
<クラッド層の作製方法>
クラッド層の材料としては、基板への成膜性や光導波路コアとの整合性を考慮して選択されるが、例えば、SiOにような無機材料に、屈折率制御用の添加物(例えば、P、B、F、Ti、Ge、Zn等)を少なくとも1種類添加したもの、あるいはクラッド層用硬化性樹脂などが用いられる。
クラッド層用硬化性樹脂としては、紫外線硬化性樹脂や、熱硬化性樹脂が好ましく用いられ、例えば、紫外線硬化性樹脂または熱硬化性のモノマー、オリゴマーもしくはモノマーとオリゴマーの混合物が用いられる。
なお、クラッド形成用硬化性樹脂の硬化後の体積変化(収縮)を小さくするために、該樹脂と相溶性を有し、また該樹脂の屈折率、弾性率、透過特性に悪影響を及ぼさないポリマー(例えばメタクリル酸系、エポキシ系)を該樹脂に添加することができる。光硬化性の樹脂の方が、硬化時体積変化が少ない為に、得られる精度が高いので、光硬化材料が有利である。
クラッド層として用いられる紫外線硬化性樹脂としては、使用光源波長域で透過性の高いアクリル系樹脂やエポキシ系樹脂、使用光源波長域で透過性の高いイミド樹脂、使用光源波長域で透過性の高いシリコーン樹脂、使用光源波長域で透過性の高いフッ素化樹脂等が挙げられる。また、クラッド層として用いられる熱硬化性樹脂としては、使用光源波長域で透過性の高いアクリル系樹脂やエポキシ系樹脂、使用光源波長域で透過性の高いイミド樹脂、使用光源波長域で透過性の高いフッ素化樹脂等が挙げられる。中でも成形加工性と信頼性の観点からエポキシ系樹脂を用いることが好ましい。また、光透過性とフレキシブル性の観点からはアクリル系樹脂を用いる事が好ましい。
上述のように、クラッド層の屈折率を調整するには、クラッド層各々の、目的とする領域が目的とする屈折率となるように、硬化時屈折率の異なる同じ樹脂系の2ないし3種類の光硬化型原液を調製し、調製した各屈折率に応じたクラッド形成用処理原液を、滴下法、浸漬法、インクジェット法、ロール転写法等を用いて、各クラッド部分の領域について成形加工することにより実現可能である。具体的には、例えば、高分子光導波路のクラッド層形成場所に前記クラッド形成処理原液(アクリル系)をインクジェット法、インジェクション塗布法、浸漬法により塗布することにより可能である。
このようにクラッド層の屈折率を調整することにより、高分子光導波路モジュールの光導波方向端部における、光導波路コアとクラッドとの間の屈折率差を低下させることができ、高分子光導波路デバイスの光導波方向端部、すなわち光ファイバーと光接合される光導波路コア端面部を光ファイバーコアの屈折率に近い値とすることができる。これにより、簡易な構成で光ファイバーと光接合したときの光接続損失を低下させることができる。
以下に、本発明による高分子光導波路デバイスの製造方法を工程順に説明する。
(1)ゴム鋳型を準備する工程
ゴム鋳型を準備する工程におけるゴム鋳型の作製は、複数の光導波路コアに対応する凸部を形成した原盤を用いて行うことができるが、これに限定されるものではない。以下では、原盤を用いる方法を説明する。
(原盤の作製)
光導波路コアに対応する凸部を形成した原盤の作製には、従来の方法、たとえばフォトリソグラフィー法やRIE法を特に制限なく用いることができる。また、本出願人が先に出願した電着法又は光電着法により高分子光導波路を作製する方法(特開2002−333538号公報)も、原盤を作製するのに適用できる。図7(A)〜(D)は、光導波路コアに対応する凸部を形成した原盤の作製方法の一例を説明するための図である。まず、図7(A)に示すように、厚さ0.7mmの1737ガラス71を用意する。次に、図7(B)に示すように、ガラス71上に厚さ50μmの厚膜レジスト72を塗布し、プリベークする。そして、図7(C)に示すように、光導波路コアに対応する凸部73を形成するためにパターン露光する。その後、図7(D)に示すように、現像およびポストベークして原盤(光導波路マスター基板)74を形成する。
原盤に形成される光導波路コアに対応する凸部の大きさは一般的に5μ〜500μm程度、好ましくは40μm〜200μm程度であり、高分子光導波路の用途等に応じて適宜決められる。例えば、シングルモード用の光導波路の場合には、10μm角程度の光導波路コアを、マルチモード用の光導波路の場合には、40μm〜150μm角程度の光導波路コアが一般的に用いられるが、用途によっては数百μm程度と更に大きな光導波路コア部を持つ光導波路も利用される。
(ゴム鋳型の作製)
ゴム鋳型の作製は、例えば上述の図1(A)〜(C)、あるいは図4(A)〜(C)の工程を用いて実施することができる。ゴム鋳型は、前記のように光硬化部分が鋳型形成用ゴム層と光透過性の光導波路コア凸部に対応する類似した凹部を有する剛体基板からなる複合的な積層構造よりなり、光導波路コアに対応する凸部が形成されたゴム面に、鋳型形成用硬化性ゴム樹脂を塗布したり注入したりして、必要に応じ加熱処理等の硬化処理をして該樹脂ゴムを硬化させ、次いでその硬化ゴム層を原盤から剥離して作製される。また、ゴム鋳型には、前記凸部に対応する凹部に光導波路コア形成用硬化性樹脂を充填するための進入口、及び前記凸部に対応する凹部から前記樹脂を排出させるための排出口が形成されるが、その形成方法は特に制限はない。原盤に予め進入口や排出口に対応する凸部を設けておくこともできるが、簡便な方法としては、例えば、原盤に鋳型形成用硬化性ゴム液により鋳型用ゴム層を形成した後剥離して型をとり、その後、型の両端を前記凹部が露出するように切断することにより進入口及び排出口を形成する方法が挙げられる。光導波路コアの成形原盤により形成されるゴム鋳型はゴム硬度5から40で柔らかい特性のゴム材を用いる事で、柔らかいゴム弾性により光導波路コア部形成後の剥離の成型特性を上げ、精密な光導波路コア形成能力を付与させていく。ゴム層は、高精度で、光導波路コア材の注入時の振動や圧力変化に対して成形精度を維持できるゴム厚みの適正値を選択できる。
また、図2(C)に示すように、ゴム鋳型凹部に連通する空洞(貫通孔)20を凹部10の両端に設けることが有効である。進入口側の貫通孔は液(樹脂)溜まりとして利用でき、排出側の貫通孔は減圧吸引管をその中に挿入して凹部内部を減圧吸引装置に接続することができる。また、進入側貫通孔を光導波路コア形成用硬化性樹脂液を注入管に連結して該樹脂液を加圧注入することも可能である。貫通孔は、凹部のピッチにより、各凹部に対応してそれぞれ設けてもよく、また、各凹部に共通に連通する1つの貫通孔を設けることもできる。
前記硬化されたゴム層の厚さは、ゴム鋳型としての取り扱い性を考慮して適宜決められるが、一般的に全体のゴム層の厚みは5μm〜5mm、より好ましくは30μmから700μmが適切である。この厚みとゴム硬度(弾性)と低表面エネルギーにより、剥離時の変形剥離性を適正に出来、光硬化後に成型光導波路コアからの界面破壊を抑制させ、また光導波路コア成形時により光導波路コア表面平滑性を維持できる。平滑性(Ra)は、100nm以下、より適正化を計れば40nm以下の平滑性を達成できる。この表面平滑性の値は使用する光の波長の五分の一以下の表面粗さであれば光の漏れ光を十分抑制でき、より好ましくは光の波長の十分の一以下で有ると光の漏れ量は殆ど低減できる特性である。
その意味で、ゴム材のゴム硬度(ゴム弾性)、厚み、ゴム鋳型の表面エネルギー値は相互に関係があり、要求される成形精度により重要な制御特性値となっている。これらの要求事項を満足させる事により、近接に電子デバイスや電子回路があるような基板上でも、簡単に部分的に導波路を形成させる事を可能にできる作製工程になっている。
また、前記原盤にはあらかじめ離型剤塗布などの離型処理を行なってゴム鋳型との剥離を促進することもある。
ゴム鋳型形成用硬化性樹脂としては、その硬化物が原盤から容易に剥離できること、鋳型(繰り返し用いる)として一定以上の機械的強度・寸法安定性を有すること、凹部形状を維持する硬さ(硬度)を有すること、クラッド層付基材との密着性が良好なことが好ましい。鋳型形成用硬化性樹脂には、必要に応じて各種添加剤を加えることができる。
鋳型形成用硬化性樹脂の未硬化状態では、原盤の表面に塗布や注型等することが可能で、また、原盤に形成された個々の光導波路コアに対応する凸部を正確に写し取らなければならないので、ある適正の粘度、たとえば、500〜7000mPa・s程度を有することが好ましい。(なお、本発明において用いる「鋳型形成用硬化性樹脂」の中には、硬化後、弾性を有するゴム状体となるものも含まれる。)また、粘度調節のために溶剤を他の部材に悪影響が出ない程度に加えることもある。
前記鋳型形成用硬化性樹脂としては、前記のごとき剥離性、機械強度・寸法安定性、硬度、クラッド層付基材との密着性の点から、シリコーンゴム(シリコーンエラストマー)又はシリコーン樹脂となる硬化性オルガノポリシロキサンが好ましく用いられる。前記硬化性オルガノポリシロキサンは、分子中にメチルシロキサン基、エチルシロキサン基、フェニルシロキサン基を含むものが好ましい。また、前記硬化性オルガノポリシロキサンは、一液型のものでも硬化剤と組み合わせて用いる二液型のものでもよく、また、熱硬化型のものでも室温硬化型(例えば空気中の水分で硬化するもの)のものでもよく、更に他の硬化(紫外線硬化等)を利用するものであってもよい。
前記硬化性オルガノポリシロキサンとしては、硬化後ゴム状態となるものが好ましく、これには通常液状シリコーンゴム(「液状」の中にはペースト状のように粘度の高いものも含まれる)と称されているものが用いられ、硬化剤と組み合わせて用いる二液型のものが好ましく、中でも付加型の液状シリコーンゴムは、表面と内部が均一にかつ短時間に硬化し、またその際副生成物が無く又は少なく、かつ離型性に優れ収縮率も小さいので好ましく用いられる。
前記液状シリコーンゴムの中でも特に液状ジメチルシロキサンゴムが密着性、剥離性、強度及び硬度の制御性から好ましい。また、液状ジメチルシロキサンゴムの硬化物は、一般に屈折率が1.43程度と低いために、これから作った鋳型は、クラッド層付基材から剥離させずに、そのままクラッド層として利用することができる。この場合には、鋳型と、充填した光導波路コア形成用樹脂及びクラッド層付基材とが剥がれないような工夫が必要になる。
前記液状シリコーンゴムの粘度は、光導波路コアに対応する凸部を正確に写し取り、かつ気泡の混入を少なくして脱泡し易くする観点と、数ミリの厚さの鋳型形成の点から、500〜7000mPa・s程度のものが好ましく、さらには、2000〜5000mPa・s程度のものがより好ましい。500mPa・s以下では注入効率が良過ぎ、クラッド付き基板と鋳型のゴム界面の間に侵入し、形状精度の劣化が見られる事がある。また、7000mPa・s以上であると注入補助手段を尽くしても、注入速度が上がらず、型取り精度に支障をきたし、生産性が低下する。
さらに、鋳型の光導波路コア材に接するゴム表面の表面エネルギーは、7dyn/cm〜30dyn/cm、好ましくは12dyn/cm〜21dyn/cmの範囲にあることが、基材フィルムとの密着性と光導波路コア形成用硬化性樹脂の浸透速度の点からみて好ましい。7dyn/cm以下では光硬化光導波路コア材液体の微細口への浸透速度が遅くなり製造性に問題を生じる。30dyn/cm以上では硬化成形物の表面において鋳型剥離時に表面の接着によるダメージが生じ、表面平滑性の大幅な低下を生じる事がある。
ゴム鋳型の表面ゴム層のシェア(Share)ゴム硬度は、10〜50、好ましくは15〜30であることが型取り性能、凹部形状の維持、剥離性の点からみて好ましい。10以下では、型精度が低下し、形状の再現性に問題を生じ、50以上では鋳型からの型剥離時に適正な弾性が出ないために成形物の表面のダメージが生じる事がある。
ゴム鋳型のゴム層表面粗さ(Ra)は、0.5μm以下、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下にすることが、形成された光導波路コアの光導波特性において光損失を大幅に低減できる。表面粗さは、使用する光の波長の5分の1以下が必要条件であり、10分の1以下になるとその光の光導波路コア表面粗さによる導波損失は殆ど無視できるレベルになる。
また、ゴム鋳型用ゴム材及び光透過性基板は、紫外光領域及び/又は可視領域において50%/mm以上の光透過性であることが好ましい。特に365nm波長の光に対し50%/mm以上の光透過性を有する事が必要である。より好ましくはゴム鋳型のゴム材が可視領域において80%/mm以上の光透過性である。これが好ましいのは、以下の(ゴム鋳型にクラッド層付基板を密着させる工程)においてゴム鋳型をクラッド層付基材に密着させる際、位置決めが容易に行え、また、以下の(3)の工程において光導波路コア形成用硬化性樹脂がゴム鋳型凹部に充填される様子が観察でき、充填完了等が容易に確認しうるからである。また、ゴム鋳型が紫外領域において光透過性であることが好ましいのは、光導波路コア形成用硬化性樹脂として紫外線硬化性樹脂を用いる場合に、ゴム鋳型を透して紫外線硬化を効率的に行うためであり、ゴム鋳型の、紫外光領域(350nm〜400nm)における透過率が50%以上であることが好ましい。
前記硬化性オルガノポリシロキサン、中でも硬化後シリコーンゴムとなる液状シリコーンゴムは、クラッド層付基材との密着性と剥離性という相反する特性に優れ、ナノ構造を写し取る能力を持ち、シリコーンゴムとクラッド層付基材とを密着させると液体の進入さえ防ぐことができる。このようなシリコーンゴムを用いたゴム鋳型は高精度に原盤を写し取り、クラッド層付基材に良く密着するため、ゴム鋳型とクラッド層付基材の間の凹部のみに効率よく光導波路コア形成用樹脂を充填することが可能となり、さらにクラッド層付基材とゴム鋳型の剥離も容易である。したがって、このゴム鋳型からは高精度に形状を維持した高分子光導波路を、極めて簡便に作製することができる。
また、前記硬化樹脂層、とりわけ硬化樹脂層がゴム弾性を有する場合、硬化樹脂層の一部すなわち原盤凸部を写し取る部分以外の部分を他の剛性材料に置き換えることができ、この場合、鋳型ハンドリング性および注入時の光導波路コア材注入圧力変化の対応性が向上する。
(2)ゴム鋳型にクラッド層付基材を密着させる工程
この工程は、上述の図1(D)または図4(D)に対応する工程である。本発明において用いるクラッド層付基材に用いられる基材としてはシリコンウエハー基材、ガラス基材、セラミック基材、プラスチック基材等のものが制限なく用いられる。特に加工性ではプラスチック基板がよい。
また屈折率が適正な基材の場合はそのままクラッド層付基材として用いることができるが、本発明のように、光導波方向において屈折率制御を行う為には、前記基材に上記方法に示したように、屈折率の異なる複数の樹脂コートや複数の無基材料をPVD法で着膜すること等によりクラッド層を形成する。
また、クラッド層の特性としては、光導波路コア接触面での平滑性において算術平均粗さRaが0.1μm以下であり、より好ましくは0.07μm以下であると、接続光損失を小さく出来る。またゴム鋳型との密着性に優れ、両者を密着させた場合、ボム鋳型凹部以外に空隙が生じないものが好ましい。また、クラッド層付基材が鋳型及び/又は光導波路コアとの密着性が余り良好でない場合には、オゾン雰囲気による処理、波長300nm以下の紫外線照射処理を行って、鋳型等との密着性を改善することが好ましい。
プラスチック基材の中でも、フレキシブルなフィルム基材を用いた高分子光導波路は、カプラー、ボード間の光配線や光分波器等としても使用できる。前記フィルム基材は、作製される高分子光導波路の用途に応じ、その屈折率、光透過性等の光学的特性、機械的強度、表面平滑性、耐熱性、鋳型との密着性、フレキシビリティー(可撓性)等を考慮して選択される。
前記フィルム基材の材料としては、アクリル系樹脂(ポリメチルメタクリレート等)、脂環式アクリル樹脂、スチレン系樹脂(ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等)、オレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等)、脂環式オレフィン樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、ビニルブチラール系樹脂、アリレート系樹脂、含フッ素樹脂、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリカーボネート系樹脂、二又は三酢酸セルロース、アミド系樹脂(脂肪族、芳香族ポリアミド等)、イミド系樹脂、スルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリオキシメチレン系樹脂、または前記樹脂のブレンド物等が挙げられる。
前記脂環式アクリル樹脂としてはトリシクロデカン等の脂肪族環状炭化水素をエステル置換基に導入した、OZ−1000、OZ−1100(日立化成(株)製)等が用いられる。
また、脂環式オレフィン樹脂としては主鎖にノルボルネン構造を有するもの、及び主鎖にノルボルネン構造を有しかつ側鎖にアルキルオキシカルボニル基(アルキル基としては炭素数1から6のものやシクロアルキル基)等の極性基をもつものが挙げられる。中でも前記のごとき主鎖にノルボルネン構造を有しかつ側鎖にアルキルオキシカルボニル基等の極性基をもつ脂環式オレフィン樹脂は、低屈折率(屈折率が1.50近辺であり、光導波路コア・クラッドの屈折率の差を確保できる)及び高い光透過性等の優れた光学的特性を有し、鋳型との密着性に優れ、さらに耐熱性に優れているので特に本発明の高分子光導波路の作製に適している。
また、前記フィルム基材の厚さはフレキシビリティーと剛性や取り扱いの容易さ等を考慮して適切に選ばれ、一般的には0.03mm〜0.5mm程度が好ましい。
フィルム基材表面の平滑性は、R(a)で10μm以下、より好ましくは1μm以下更に好ましくは0.1μm以下である必要が有る。フィルム基材表面の平滑性が、R(a)で10μm以上では、形成する光導波路コア導波路の形状成形精度が低下し、光の伝播損失が大きくなるため使用が難しい。アンダーコート層を設ける場合でもフィルム基材表面の平滑性が、R(a)で10μm以上ではアンダーコート層に被膜特性や平滑性に大きな問題を生じる事が多い。
前記導電性パターンは、クラッド層付基材の光導波路非形成部に、全面又は部分的に導電性層を塗布して、あるいはPVD法や箔の接着法により形成し、これを、常法(フォトリソ法、ドライエッチング法、レーザー加熱走査法 放電加工法等)によりパターニングする。電子回路導電性層としてはクロム、銅、アルミ、金、モリブデン、ニッケル、銀、白金、鉄、チタン、亜鉛、タングステン、鈴等の金属またはそれらの金属を含む合金等の1層又は複合薄膜層、導電性金属化合物、高分子材料にカーボンブラック等の導電性微粉末を添加した薄膜等が用いられる。特に電子回路の導電性パターンは、各電子デバイスや光制御デバイスとの電気的導通の実装を可能にする為に、ワイヤーボンデイング法やフリップチップ実装の適正がある金、銅、アルミ、モリブデン、ニッケル、及びその合金類が特に良い。
前記導電性層の膜厚は0.05μm〜30μm程度が適切である。より好ましくは0.2μm〜2μm厚が適切である。
また、導電性パターンは、クラッド層付基材の光導波路コアの非形成面に設けることが好ましいく、また積層させることも可能である。
(3)クラッド層付基材が密着された前記ゴム鋳型の凹部に光導波路コア形成用硬化性樹脂を充填する工程
この工程は、上述の図1(E)または図4(E)に対応する工程である。これに関連して、図2、図3、図5、図6に同工程を示す斜視図および断面図が示されている。ゴム鋳型の凹部に光導波路コア形成用硬化性樹脂を充填するには、ゴム鋳型にゴム鋳型より一回り大きいサイズの第1のクラッド層によるクラッドフィルムまたは第1のクラッド層が設けられたクラッド層付基材を密着させ、凹部の進入口に光導波路コア形成用硬化性樹脂を少量垂らし毛細管現象を利用して充填したり、凹部に光導波路コア形成用硬化性樹脂を加圧充填したり、凹部の排出口を減圧吸引したり、あるいは加圧充填と減圧吸引の両方を行うなどにより充填することができる。前記のごとく凹部端部に貫通孔(空洞)を設けた場合は、進入側貫通孔に樹脂を溜め加圧充填する方法や、排出側貫通孔に減圧吸引管を挿入して減圧吸引する方法等を用いることができる。
また、前記加圧充填と減圧吸引を併用する場合はこれらを同期して行うことがさらに好ましく、前記加圧充填において圧力を段階的に増加させ、前記減圧吸引において圧力を段階的に減少させることが、ゴム鋳型が安定して固定された状態で、光導波路コア形成用硬化性樹脂をより高速に注入する相反則を両立させる点からみて好ましい。
前記加圧充填及び/又は減圧吸引は、静圧力で行うことが好ましい。静圧力で行うことで、脈動を防止することができる。静圧力は、加圧充填及び/又は減圧吸引する装置と、進入部又は排出部との途中に空間を設けたり、加圧充填の場合は高低差を利用したりするなどして発現させることができる。
図8は、ゴム鋳型の凹部に光導波路コア形成用硬化性樹脂を充填する方法の一例を示す図で、(A)はゴム鋳型の平面図、(B)は(A)のB−B断面図、(C)はその斜視図である。ゴム鋳型81には、図8(A)に示すように、空洞82に連通する複数のY字型分岐導波路コア用の凹部83が設けられている。ゴム鋳型81は、一方では、空洞82と減圧吸引ヘッド(減圧脱気ヘッド)装置84とを接続する複数の排出口85を備え、他方では、複数の凹部83の他端と加圧注入ヘッド装置86とを接続する複数の注入口87を有する。図8(C)に示すように、硬化性樹脂の充填時に、複数の注入口87に対して、例えばテーパー角度20度の複数のテーパー型針状注入ヘッド88をクシ型状に接合した加圧注入ヘッド装置86を図示しない上下油圧機構にセットする。また、複数の排出口85には減圧吸引ヘッド装置84が接続される。次いで、図示しない圧力調整制御機を通して加圧注入ヘッド装置86からゴム鋳型81の凹部83に対して、紫外線硬化性樹脂を加圧注入する。一方、ゴム鋳型81の排出口85から減圧吸引ヘッド装置84を通して減圧吸引を行う。この状態を例えば数十秒間行うことで鋳型凹部に紫外線硬化性樹脂が充填される。樹脂の充填後、ゴム鋳型81(あるいは、その強化部材)から加圧注入ヘッド及び減圧吸引ヘッドをはずし、充填工程を終了する。
光導波路コア形成用硬化性樹脂としては放射線硬化性、電子線硬化性、熱硬化性等の樹脂を用いることができ、中でも紫外線硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂が好ましく用いられる。特に、電子部品や素子、光部品や素子の混在した基板において高い温度の工程はその部品の性能劣化や耐久性に影響を与えることが多いが、この光硬化現象を用いるプロセスは、光照射と常温での注入工程だけである為に、常温または120℃以下の条件下で全工程特に型取り工程を行なう為に、電子回路や光回路を作製した後に、付加的にプロセスを行なってもその回路基板性能に悪影響を与えない。
前記光導波路コア形成用の紫外線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂としては、紫外線硬化性又は熱硬化性のモノマー、オリゴマー若しくはモノマーとオリゴマーの混合物が好ましく用いられる。特に、オリゴマーの混合は硬化の速度を助けたり、形状の精度向上する。
前記紫外線硬化性樹脂としてエポキシ系、ポリイミド系、アクリル系紫外線硬化性樹脂が好ましく用いられる。
光導波路コア形成用硬化性樹脂は、鋳型とフィルム基材との間に形成された空隙(鋳型の凹部)に充填させるため、用いる光導波路コア形成用硬化性樹脂はそれが可能なように十分低粘度であることが必要である。前記硬化性樹脂の未硬化時の粘度は、50mPa・s〜2000mPa・s、望ましくは100mPa・s〜1000mPa・s、更に好ましくは300mPa・s〜700mPa・sにするのが、充填速度、光導波路コア形状の良さ及び光損失の少なさの点から好ましい。50mPa・s以下では、ゴム鋳型とクラッド層付基板の不要な隙間に入り込み、成形性や形状ばらつきを生じ特性を損ねる事があり、また2000mPa・s以上では浸透速度が極端に遅くなり、生産性が低下する。
また、原盤に形成された光導波路コアに対応する凸部が有する元の形状を高精度に再現するため、前記硬化性樹脂の硬化前後の体積変化が小さいことが必要である。例えば、体積が減少すると導波損失大の原因になる。したがって、前記硬化性樹脂は、体積変化ができるだけ小さいものが望ましく、10%以下、好ましくは0.01%〜4%の範囲にあることが望ましい。溶剤を用いて低粘度化することは、硬化前後の体積変化が大きいのでできれば避ける方が好ましい。特に、0.01%以下もしくは体積膨張する材料系はゴム鋳型からの剥離効率が下がり、ゴム鋳型からの剥離時に表面の破断等の表面劣化が生じる為、表面の平滑性が低下し、光導波損失が上昇し、好ましくない。
光導波路コア形成用硬化性樹脂の硬化後の体積変化(収縮)を小さくするため、前記硬化性樹脂にポリマーを添加することができる。前記ポリマーは光導波路コア形成用硬化性樹脂との相溶性を有し、かつ該樹脂の屈折率、弾性率、透過特性に悪影響を及ぼさないものが好ましい。またポリマーを添加することにより体積変化を小さくする他、粘度や硬化樹脂のガラス転移点を高度に制御できる。前記ポリマーとしては例えばアクリル系、メタクリル酸系、エポキシ系のものが用いられるが、これらに限定されるものではない。
光導波路コア形成用硬化性樹脂の硬化物の屈折率は1.20から1.60の範囲、より好ましくは1.4から1.6の範囲が好ましく、硬化物の屈折率が前記範囲内に入る2種類以上の屈折率の異なる樹脂が用いられる場合も有る。
また、この工程において、毛細管現象による光導波路コア形成用硬化性樹脂の鋳型凹部への充填を促進するために、系全体を減圧(0.1Pa〜200Pa程度)することが望ましい。
また、前記充填をより促進するため、前記系の減圧に加えて、鋳型の進入口から充填する光導波路コア形成用硬化性樹脂を加熱することにより、より低粘度化することも有効な手段である。
(4)充填された光導波路コア形成用硬化性樹脂を硬化させて光導波路コアを形成する工程
この工程も、上記(3)の工程と同様に、上述の図1(E)または図4(E)に対応する工程である。この工程では、充填した光導波路コア形成用硬化性樹脂を硬化させる。紫外線硬化性樹脂を硬化させるには、紫外線ランプ、紫外線LED、UV照射装置等が用いられる。また、熱硬化性樹脂を硬化させるには、オーブン中での加熱等により硬化を加速させる手段も有効である。前述の通り、硬化に際しての温度条件としては、常温下または120℃以下の常温に近い温度条件が好ましい。
(5)前記ゴム鋳型を前記クラッド層付基材から剥離する工程
この工程は、上述の図1(F)または図4(F)に対応する工程である。前記光導波路コア形成用硬化性樹脂を硬化させる工程の後、ゴム鋳型をクラッド層付基材から剥離する。また、前記(1)〜(3)の工程で用いるゴム鋳型は、屈折率等の条件を満たせばそのままクラッド層に用いることも可能で、この場合は、ゴム鋳型を剥離する必要はなくそのままクラッド層として利用する。この場合、ゴム鋳型と光導波路コア材料の接着性を向上させるためにゴム鋳型をオゾン処理することが好ましい。
(6)前記光導波路コアが形成された前記クラッド層付基材上にクラッドを形成する工程
この工程は、上述の図1(G)または図4(G)に対応する工程である。光導波路コアが形成されたフィルム基材の上にクラッド層を形成するが、上述のように、クラッド層としてはフィルム(たとえば前記(2)の工程で用いたようなクラッド層付基材が同様に用いられる)や、クラッド層用硬化性樹脂を塗布して硬化させた層、高分子材料の溶剤溶液を塗布して乾燥して得られる高分子膜等が挙げられる。
これらのクラッド層は、上述のように、光導波方向端部を含む第1の領域及び反光導波方向端部を含む第2の領域の屈折率が、該光導波方向端部及び該反光導波方向端部を含まない第3の領域の屈折率より高くなるように調製される。
クラッド層としてフィルムを用いる場合は、接着剤を用いて貼り合わされるが、その際、接着剤の屈折率は該フィルムの屈折率と近く且つ複数の屈折率を有する材料から選択することが望ましい。用いる接着剤は紫外線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂が好ましく用いられ、例えば、紫外線硬化性又は熱硬化性のモノマー、オリゴマー若しくはモノマーとオリゴマーの混合物が用いられる。そして屈折率の複数パターンのクラッドが形成される。
本発明に係る高分子光導波路モジュール(デバイス)の製造方法において、特に、鋳型形成用硬化性樹脂として硬化してゴム状になる液状シリコーン樹脂、中でも液状ジメチルシロキサン液を用い、クラッド層付基材として主鎖にノルボルネン構造を有しかつ側鎖にアルキルオキシカルボニル基等の極性基をもつ脂環式オレフィン樹脂を用いる組み合わせは、両者の密着性が特に高く、また、鋳型凹部構造の変形がなく、さらに凹部構造の断面積が極めて小さくても(たとえば10μm×10μmの矩形)、素早く凹部に硬化性樹脂を充填する事ができる。
また、本発明の高分子光導波路デバイスの製造方法においては、上記(1)に示したゴム鋳型を準備する工程において、前記硬化樹脂層を強化部材によって補強することが好ましい。また、強化部材には光導波路コア形成用硬化性樹脂を圧入するための注入口が設けられている。注入口には注入管が挿入連結される。注入口は複数設け、加圧状態が各凹部の進入部(充填口)において均一になるようにすることが好ましい。さらに、ゴム鋳型内部を減圧状態にすることにより充填速度をさらに上げられるように、強化部材の注入口は反対側に設け、これに減圧脱気管を挿入連結し凹部排出側を減圧吸引することができる。排気口も複数設け、ゴム鋳型凹部の排出側において減圧状態が偏らないようにすることが好ましい。
前述のように充填速度を上げるため、ゴム鋳型の進入部から光導波路コア形成用硬化性樹脂を加圧充填したり、これに加えゴム鋳型凹部の排出側を減圧吸引すると、加圧又は減圧の圧力変化が起きた場合においても、強化部材を設けることにより、ゴム鋳型とクラッド層付基材との間で位置ずれが生じたり、ゴム鋳型全体や部分で振動が発生してゴム鋳型が変形したり、クラッド層付基材との密着性が損なわれたりするなどを防止することができ、光導波路コア形状の精度を犠牲にすることなく、充填速度を大きくする事ができる。強化部材を設けたゴム鋳型については、例えば図2等に示したとおりである。ゴム鋳型凹部形成領域(紫外線等の照射領域)は強化部材を切り欠いた構造、すなわち強化部材の枠内に形成される。
また、この例では、鋳型凹部形成領域(紫外線等の照射領域)に石英板、ガラス板、硬質プラスチック板のように光透過性基板を用い、事前に光導波路コアの凹部に類似の形状で光導波路コア形状より少し大きい形状の溝部分を成型し、その溝に沿って光導波路コアの原盤を用いてゴム材の鋳型部分を作製している。これにより、ゴム材の欠点である弾性特性を近接して剛体の凹部により振動や変形によるゴム鋳型の不安定さを解消させることができ、高精度な成型性能を得ることができる。なお、強化部材を備えたゴム鋳型の態様としては、上記に限られるものではない。
前記強化部材の材料としては金属材料、セラミック材料、硬質プラスチック材料等及びそれらの複合材料で作られ、その厚さは1mm〜40mm程度が適切である。
本発明の高分子光導波路デバイスの製造方法において、前記のように充填速度を上げるため、鋳型の進入口から光導波路コア形成用硬化性樹脂を加圧充填したり、これに加え鋳型凹部の排出側を減圧吸引すると、加圧又は減圧の圧力変化が起きた場合鋳型とクラッド層付基材との間で位置ずれが生じたり、鋳型全体や部分で振動が発生して鋳型が変形したり、クラッド層付基材との密着性が損なわれるなどの虞がある。しかし、強化部材を設けることにより前記のごとき不具合がなくなり、光導波路コア形状の精度を犠牲にすることなく、充填速度を大きくすることができる。
また、複数の光導波路コアをクラッド層付基材上に形成する場合、前記のごとき強化部材を設けたゴム鋳型の硬化樹脂層に、圧力緩和のための空洞(空隙部)を設けることが好ましい。空隙部は、ゴム鋳型の複数凹部の一方の端部における進入部(光導波路コア形成用硬化性樹脂の充填口)のすべての進入部に連通する共通の空間を意味する。また、前記の空隙に加え、ゴム鋳型の複数凹部の他端部における排出部のすべての排出部に連通する空隙部を設けることが好ましい。進入部に空隙部を設けることにより、進入部に直接注入圧力が作用せず、各進入部に対する注入圧力が緩和され均一化される。また、排出部に空隙部を設けることにより、吸引負圧の緩和と均一化が得られ、ゴム鋳型各凹部への樹脂の注入が均一化される。
次に、上記高分子光導波路モジュールに光学素子を設置する場合について説明する。
図9(A)〜(D)は、高分子光導波路モジュールの光導波路コア部の中間に面状の光学素子を平置きで挿入する方法の一例を示す図である。図では、便宜上、光導波路コアは一本としているが、複数本でも同様である。図9(A)に示すように、前記のようにして完成した高分子光導波路モジュール90は、光導波路コア91と、コア91の周りに配置されたクラッド層92とを有する。この高分子光導波路モジュール90に、図9(B)に示すような空間93を打抜きで作成する。次に、図9(C)に示すように、この空間付き高分子光導波路モジュール90を基板94に接着する。基板94は、剛体平滑基板であることが好ましい。その後、図9(D)に示すように、基板94上の空間93に面状の光学素子95を平置きで挿入し、図示しない光学接着剤で光導波路コア91と光接合および固定する。これにより、光学素子搭載の高分子光導波路モジュールを作製することができる。
図10(A)〜(E)は、高分子光導波路モジュールの光導波路コア部の中間に板状の光学素子をその側面を向けて光導波路コア部の中間に挿入する方法の一例を示す図である。図では、便宜上、光導波路コアは一本としているが、複数本でも同様である。図10(A)に示すように、高分子光導波路モジュール100は、光導波路コア101と、コア101の周りに配置されたクラッド層102と、クラッド層102の下部に配置された基板103とを有する。この高分子光導波路モジュール100に、図10(B)に示すようなダイザーブレード104を用いて溝を作成する。ダイザーブレード104は例えば45度傾斜させて切断溝を作成する。その結果、図10(C)に示すような溝105が作成される。この溝105に、図10(D)、(E)に示すような板状の光学素子106、例えば光波長選択フィルター等の光学フィルターを挿入し、図示しない光学接着剤を隙間に注入し、硬化させ、固定する。これにより、光学素子搭載の高分子光導波路モジュールを作製することができる。
図11(A)、(B)は、高分子光導波路モジュールの光導波路コア部の中間に板状の光学素子をその側面を向けて光導波路コア部の中間に挿入する方法の他の例を示す図である。高分子光導波路モジュール110は、光導波路コア111,112,113と、これらのコアの周りに配置されたクラッド層114と、クラッド層114の下部に配置された基板115とを有する。本例では、図11(A)に示すように、光導波路コアはT字型に形成されている。T字型コアは、進入光用コア111と、透過光用コア112と、反射光用コア113とを有する。進入光用コア111からの光の進入角度がθ、反射光用コア113への光の反射角度がθ(例えば、それぞれ45度)となる位置に溝116が形成される。この溝116に、板状の光学素子117、例えば光波長選択フィルター等の光学フィルターを挿入し、図示しない光学接着剤を隙間に注入し、硬化させ、固定する。これにより、光学素子搭載の高分子光導波路モジュールを作製することができる。
図12(A)、(B)は、高分子光導波路モジュールの光導波路コア部の中間に板状の光学素子をその側面を向けて光導波路コア部の中間に挿入する方法の他の例を示す図である。高分子光導波路モジュール120は、光導波路コア121,122,123と、これらのコアの周りに配置されたクラッド層124と、クラッド層124の下部に配置された基板125とを有する。本例では、図12(A)に示すように、光導波路コアは、進入光用コア121と、透過光用コア122と、反射光用コア123とを有する。進入光用コア121と反射光用コア123とが交差し、且つコア121,123とそれぞれ例えば45度の角度を形成する位置に溝126が形成される。この溝126に、板状の光学素子127、例えば光波長選択フィルター等の光学フィルターを挿入し、図示しない光学接着剤を隙間に注入し、硬化させ、固定する。これにより、光学素子搭載の高分子光導波路モジュールを作製することができる。
図13は、高分子光導波路モジュールの光導波路コア部の中間に面状の光学素子を平置きで挿入する方法の他の例を示す図である。本例では、光導波路コアは二本としているが、本数はこれに限定されず、これより多くても少なくてもよい。図13に示すように、高分子光導波路モジュール130は、光導波路コア131と、コア131の周りに配置されたクラッド層132とを有する。この高分子光導波路モジュール130に、空間を打抜きで作成し、この空間に面状の光学素子133を平置きで挿入し、図示しない光学接着剤で光導波路コア131と光接合および固定する。これにより、光学素子搭載の高分子光導波路モジュールを作製することができる。
次に、各工程について説明する。
<光学素子設置用の空間または溝を作製する工程>
前記のようにして完成した高分子光導波路モジュールでは、クラッド層付基材としてのフィルムまたは剛体基板上に導波路としての光導波路コア部が形成され、さらに光導波路コア部を覆うようにクラッド層付基材上に上部クラッド層が形成されている。本工程では、この高分子光導波路の途中に光学素子を挿入するため、光導波路コア部の導波方向の中間部に該光導波路コア部を切断するように空間または溝を作製する。
ここで、空間とは、面状の光学素子を平置きで光導波路コア部の中間に挿入できるようにするため、導波路基板の片面側から光導波路コア部を切断するように広い面積で作製される打ち抜き部分をいう。また、溝とは、板状の光学素子をその側面を向けて光導波路コア部の中間に挿入できるようにするため、導波路基板の片面側から光導波路コア部を切断するように狭い面積で作製される切削部分をいう。この溝は、前記空間と異なり導波路基板の導波方向と交わる方向の端部に達していてもよい。
光導波路コア部を切断して光導波路コア部の中間部空間または溝を形成するためには、打抜き法(金型抜き打ち、トムソン刃、押し切り刃等を用いる方法)や切断法(レーザー光線走査、精密針走査等による方法)、さらに切削法(ドライエッチング、湿式エッチング、機械加工等による方法)などを用いることができる。これらの中では特に、ウェハー切断用のダイサー装置を用いて切断溝を作製する方法が、端部導波路面の光学面精度(面の粗さRaとして、Ra<100nm)が得られる点から好ましい。
本発明においては、前記空間または溝を設置する光学素子よりやや大きなサイズで作製することが好ましい。その理由は、後述するように光学素子を挿入した場合に、光導波路コア部の切断端部と光学素子光路部との間に空気層が存在すると光損失が大きくなるため、この空隙に光学接着剤を充填することが好ましいからである。
前記剛体基板の材質は、ガラス、金属、セラミックなど特に制限されないが、その表面の算術平均粗さRaが20nm〜2μmの範囲であることが好ましく、0.1〜0.5μmの範囲であることがより好ましい。Raが2μmを超えると、下地材を設けても十分な面出しの精度が得られない場合がある。またRaが20nmに満たない表面は実際上コスト高となるからである。
一方、高分子光導波路モジュール(導波路基板)に対してダイサーブレードなどを用いて一定の角度θをもって溝を作製する場合には、特に導波路基板を構成するクラッド層付基材がフィルム等の場合には、導波路基板自体の固定・安定化のために、当初から導波路基板に支持体を設けてもよい。
<光学素子を挿入し位置決めする工程>
本工程では、設置すべき光学素子を用意し、前記作製された空間または溝に対しその光学素子を挿入し位置決めを行う。本発明においては、光導波路が高分子であるため、前記空間作製時に切断された光導波路コア部の端面はそのまま接続損失の少ない光学端面とすることができる。また、通常の硬い無機材料の光導波路の場合には、挿入される光学素子も硬いものであるため挿入が困難であるが、高分子光導波路の場合には導波路が多少弾性を有するため容易に挿入することができる。
この場合、作製された空間または溝に対し光学素子を挿入した時、光学素子の光路部と切断された光導波路コア部端面との最大空隙幅が0.4mm以下となるように光学素子を位置決めすることが好ましく、0.15mm以下となるようにすることがより好ましい。
上記最大空隙幅とは、空間または溝に光学素子を設置した場合の前記光路部と光導波路コア部端面とが最も離れた位置となる長さをいう。最大空隙幅が0.4mmを超えると、後述するような空隙に光学接着剤を充填しても光損失が大きくなってしまう場合がある。
なお、光導波路コア部と光学素子光路部との高さ方向のずれ幅は、光導波路コア径の±10%以内であることが好ましい。
本発明に用いられる光学素子としては、光学スイッチなどのアクティブ光学素子、光学フィルター、光学反射板、回折格子、光学レンズなどのパッシブ光学素子が挙げられるが、これらの中では、光学フィルター、光学レンズ、光学ミラー、光学スイッチ、発光素子及び受光素子のうちのいずれか1以上を用いることが好ましい。
また、前記光学素子を挿入するに際し素子搭載基板を用いることが、挿入された光学素子を支持し、位置決めの精度を高くする観点から好ましい。上記素子搭載基板としては、石英基板、シリコンウェハー、高平滑フィルムなどを用いることができる。
<光学素子の光路部と光導波路コア部とを光接合する工程>
本工程は、差込んだ光学素子の光路部と光導波路コア部とを光学的に接合する工程である。前記光接合は光学素子を挿入した状態のままでも可能であるが、位置ずれを防ぐため何らかの方法により位置決めされた光学素子を固定することが好ましい。また、光学素子を挿入したままの状態では、光学素子と光導波路コア部との空隙は空気層であるので光導波路コア部との屈折率差が大きく光損失が大きい。そこで、本発明においては、挿入し設置した光学素子の光路部と光導波路コア部との間の微小空間に、光導波路コア部との屈折率差が±0.2以内、より好ましくは±0.05以内の屈折率を有する光学接着剤を充填することが好ましい。
特に本発明においては、光導波路コアが高分子材料からなる有機系であり、通常用いられる光学接着剤も有機系であることから、両者を密着させた場合の適合性がよく屈折率差も小さくできる。このため、光接合させた場合の光損失を無機系の光導波路コアの場合に比べて小さくすることができる。また、有機系の方が熱による膨張・収縮特性も近いため、接合部の機械的強度を高くすることができる。
前記屈折率差は±0.1以内であることがより好ましく、±0.03以内がさらに好ましく、±0.01以内が特に好ましい。
また、前記光学接着剤としては、光導波路コア部との屈折率差が±0.1以内であり、使用波長領域での光透過率が90%/mm以上のものを用いることが、接合における光損失を少なくする上で最も好ましい。
前記光学接着剤は、光硬化性、熱硬化性(室温硬化を含む)のいずれであってもよく、有機溶剤分散性、有機溶剤溶解性等の接着剤であって、充填後に、光照射、熱処理、乾燥等により前記充填部分を固体化させることができるものであることが好ましい。特に、硬化時室温近くで処理が行われる光硬化接着剤の使用が接合寸法精度的に有効である。これにより、光接続を可能にさせ、光学特性の損失を低減させ安定した光学性能を得ることができる。また、機械的強度も接着剤の固体化にともない発現させることができる。
なお、前記光学接着剤としては、前記光導波路コア形成用硬化性樹脂と同様のエポキシ系、ポリイミド系、アクリル系の紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂などが好ましく用いられる。
以上述べた工程を経て、高分子光導波路モジュールは、安価で手間を掛けず、簡易に大量に製造できて、機能性を有する光学素子を実装する事が可能となり、光モジュールや光インターコネクション、光回路ボード、メディアコンバーター、オプトネットワークユニット等を低コストに提供出来るようになる。
以下に実施例を示し本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
(実施例1)
<ゴム鋳型の作製>
石英基板に紫外線硬化型厚膜レジスト(マイクロケミカル(株)製、SU−8)をスピンコート法で塗布した後、80℃でプリベークし、連通型減圧空洞(30mm×10mm×50μm)が付いた同形状の10パターンのY字型分岐導波路を描画したフォトマスクを用いて高圧水銀灯で露光し、現像して、断面が正方形の凸部(導波路幅:50μm、高さ:50μm、パターンピッチ:2mm、パターン長さ:20mm)を形成した。次に、これを120℃でポストベークして、光導波路コア作製用原盤を作製した。そして、この原盤の表面に離型剤を塗布した。
次に、紫外線を透過する開口部が設けられ、かつ3つの注入口及び3つの排気口を有する強化部材(厚さ 1.5mmのアルミニウム製)を用意し、2mm厚の石英製透過性剛体基板に、上記作製した光導波路コア作製用原盤の凸部に対応する凹部と類似形状の凹部(幅:200μmで高さ:200μmの導波路パターン同形状)40mm×30mm×20mmのサイズの石英基板をフォトリソ工程とフッ酸エッチング工程により上記石英透過性剛体基板上に作製し、上記強化部材と一体化させた。次に、この石英透過性剛体基板上に一体化された強化部材を、上記作製した光導波路コア作製用原盤にかぶせた。
次に、強化部材の開口部より熱硬化性液状ジメチルシロキサンゴム(ダウコウニングアジア社製:SYLGARD184、粘度1000mPa.s)及びその硬化剤を混合したものを流し込み、130℃で20分間加熱してゴム材料を硬化させた。硬化後、硬化ゴム(硬化樹脂層)、透過性剛体基板、及び強化部材が一体になったものを原盤から剥離し、前記凸部に対応する凹部を有し、凹部に光導波路コア形成用硬化性樹脂を充填するための進入口及び該コア材原液を凹部から排出するための排出口が形成されたゴム鋳型が作製された。
なお、この時のシリコーンゴム材(硬化樹脂層)の物性は、硬度がショアA硬度で20、表面エネルギーが18N/m、ゴム厚:150から200μm、形成された凹部内壁の算術平均粗さRaが0.04μmであった。
<光導波路コア及びクラッド層の形成>
前記ゴム鋳型をアートンフィルム(厚さ:188μm、屈折率:1.51)(クラッド層)の予め設けた導電層パターンの非形成部分に加圧密着させた。また、前記ゴム鋳型の強化部材の各パターンに対応した10口の注入口に対して、テーパー角度20度の針状テーパー加圧注入ヘッド10本をクシ型状に接合された注入集合ヘッドを上下油圧稼動機構装置にセットして、また連通型空孔から出ている2つの大型排気口に減圧吸引ヘッドを接続させた。次いで、圧力調整制御機を通して加圧注入ヘッドから鋳型凹部に、粘度が1100mPa・sの紫外線硬化性樹脂(JSR社製:試作品)を常圧に対して+20kPaの加圧圧力で注入した。また、強化構造を有する鋳型の2つの排出口より、減圧吸引ヘッドを通し静圧による−50kPaの減圧吸引を行なった。この状態で40秒で鋳型凹部に紫外線硬化性樹脂が充填された。
次に、前記強化部材から加圧注入ヘッド及び減圧吸引ヘッドをはずし、強化部材の露光用開口部から光強度が30mW/cmのUV光を10分間照射して光導波路コア形成用硬化性樹脂を硬化させた。そしてゴム鋳型を剥離すると、アートンフィルム上に屈折率1.54の光導波路コア部が形成された。
さらに、アートンフィルムの光導波路コア部形成面の光導波部分に硬化後の屈折率がアートンフィルムの屈折率に近く、且つ硬化後の屈折率が1.52の試作品である紫外線硬化性樹脂を塗布し、アートンフィルムの光導波路コア部形成面の光導波部分に硬化後の屈折率が1.505の紫外線硬化性樹脂をインクジェット法により塗布した。
さらに、光強度が30mW/cmのUV光を10分間照射して紫外線硬化させ硬化後の膜厚が50μmのクラッド層を形成し、フレキシブルな高分子光導波路デバイスが得られた。この高分子光導波路の平均導波損失は、0.10dB/cmであった。
次に、作製した高分子光導波路モジュールのパターン光導波ユニットごとに各々0.5mm厚のダイサーブレードを用いてパターン毎に切断しモジュール用導波路ユニットを作製し、さらに光導波路フィルム端部に、マルチモード光ファイバーに接続するための市販のMTコネクタと互換性のあるコネクタを接着により取り付けた後に、該コネクタと、マルチモード光ファイバー(NA=0.21)のMTコネクターとを接続した。
波長が0.85μmの半導体レーザを光源とする光挿入損失評価装置により、光導波路コア径50μm、クラッド径200μm、NAが0.2の光ファイバーから0.85μm波長の光を入力して、該光ファイバーとの接続損失を評価した結果、接続損失は0.62dB±0.003dB以内と10本のばらつきが少なく、光ファイバーとの間の良好な光接続性を有する高分子光導波路デバイスを作製することができた。また、製造時間も10枚が45分で出来上がり、従来法である1枚づつの作製法に比べて、導波路基板の製造の枚当り時間が約8分の1の製造時間の短縮となった。
(比較例1)
アートンフィルム(厚さ:188μm、屈折率:1.51)の光導波路コア部形成面上に、屈折率が1.505の紫外線硬化樹脂(エポキシ系)を塗布することによって、アートンフィルムの光導波路コア部形成面上に屈折率が均一なクラッド層を形成した以外は、実施例1と同様にして高分子光導波路デバイスを作製した。
次に、実施例1と同様に、作製した高分子光導波路デバイスの光導波路部を各々0.5mm厚のダイサーブレードを用いて光導波路を横断する様に光学平滑端面を形成し、さらに光導波路フィルム端部に、マルチモード光ファイバーに接続するための市販のMTコネクタと互換性のあるコネクタを接着により取り付けた後に、該コネクタと、マルチモード光ファイバー(NA=0.20)のMTコネクターとを接続した。
波長が0.85μmの半導体レーザを光源とする光挿入損失評価装置により、光導波路コア径50μm、クラッド径200μm、NAが0.2の光ファイバーから0.85μm波長の光を入力して、該光ファイバーとの接続損失を評価した結果、接続損失は1.52dBであり、実施例1と比較して、光ファイバーとの間の良好な光接続性は得られなかった。
(実施例2)
<ゴム鋳型の作製>
シリコンウェハー基板に紫外線硬化型厚膜レジスト(マイクロケミカル(株)製、SU−8)をスピンコート法で塗布した後、80℃でプリベークし、フォトマスクを通して高圧水銀灯で露光し、現像して、断面が正方形の凸部(幅:80μm、高さ:80μm、ピッチ1mm、長さ:100mm)を10本形成した。次に、これを120℃でポストベークして、光導波路コア作製用原盤を作製した。そして、このようにして作製した凸部の1つの端部に、それぞれモールドにより、高さ2mm、幅(凸部に直交する方向)10mm、基板長手方向長さ20mmの、断面が長方形の圧力緩和空隙作製用凸部を形成し、そして光導波路コア作製用原盤とした。
次に、アルミ製の強化部材を作製した。露光用開口部は石英ガラス製とした。次に、2mm厚のアクリル製透過性剛体基板に、前記光導波路コア作製用原盤と同じピッチで、類似形状の凹部(幅:150μm、高さ:150μm、ピッチ1mm、長さ:100mm、10本)をフォトリソ工程とエッチング工程により透過性剛体基板上に作製し、強化部材と一体化させた。
上記光導波路コア作製用原盤に、離型剤を塗布した後、この上に熱硬化性シリコーンゴムオリゴマー(ダウコウニングアジア社製:SYLGARD184、ジメチルポリシロキサン)を、上記凸部の長手方向の一端が一部露出するように、かつ、他端にある空隙部作製用凸部の端部までが覆われるように、塗布した。この上から前記一体化した強化部材を押圧し固定した。
その後、135℃で18分間加熱して硬化させ、シリコンゴムと強化部材を一体化させた。硬化シリコーンゴム層の厚さは5mmであった。次いでこれを光導波路コア作製用原盤から剥離し鋳型を得た。鋳型のシリコンゴム層には、80μm角の凹部と、光導波路コア形成用硬化性樹脂の進入部と排出部、空隙部とが形成された。表面ゴム層のゴム硬度は14であった。
<光導波路コア及びクラッド層の形成>
前記ゴム鋳型を20μm厚の第1のクラッド層を塗布した250μm厚のアートンフィルムの予め設けた導電層パターンの非形成面に加圧密着させた。ここで、アートンフィルム上に塗布されたクラッド層は硬化後の屈折率1.51に作製した。この作製方法では、具体的には、硬化後の屈折率が1.51の紫外線硬化性樹脂のアクリル系クラッド形成用処理原液であるアクリル系の形成処理原液を塗布成形することによりクラッド層を作製した。
そして前記ゴム鋳型の強化部材の各パターンに対応した20口の注入口に対して、テーパー角度13度の針状テーパー加圧注入ヘッド20本をクシ型状に接合した注入集合ヘッドを上下油圧稼動機構装置にセットし、一方、連通型空孔から出ている2つの大型排気口に減圧吸引ヘッドを接続した。注入管は光導波路コア形成用硬化性樹脂を入れた加圧タンクに接続し、さらに加圧タンクに窒素ボンベを直結させ、静圧で該樹脂を圧入できるようにした。また、減圧脱気管は、圧力制御機構と減圧タンクを介して真空ポンプに接続し、圧力調整された静圧力による減圧吸引が行なわれるようにした。
静圧による加圧と同期し静圧により吸引しながら、ゴム鋳型凹部に、粘度が500mPa・sの紫外線硬化性樹脂(JSR社製:PJ3001)を圧力注入した。
充填終了後、ゴム鋳型から注入管及び減圧脱気管をはずし、ゴム鋳型の石英製窓を通して80mW/cmのUV光を8分間照射し光導波路コア形成用硬化性樹脂を硬化させた。ゴム鋳型を剥離するとアートンフィルム上に屈折率1.54の光導波路コアが形成された。上述のようにすることによって、アートンフィルムの光導波路コア形成面全面に、クラッド層を形成することができる。
次に、熱硬化性樹脂をスプレイ塗布した後、加熱硬化させたところ、フレキシブルな高分子光導波路が得られた。この高分子光導波路の平均導波伝搬損失は、0.14dB/cmであった。伝搬損失のバラツキは±0.004dB以内であった。
次に、実施例1と同様に、作製した高分子光導波路デバイスの光導波方向端部を各々0.5mm厚のダイサーブレードを用いて光導波路を横断する様に光学平滑端面を形成し、さらに光導波路フィルム端部に、マルチモード光ファイバーに接続するための市販のMTコネクタと互換性のあるコネクタを接着により取り付けた後に、該コネクタと、マルチモード光ファイバー(NA=0.22)のMTコネクターとを接続した。
波長が0.85μmの半導体レーザを光源とする光挿入損失評価装置により、光導波路コア径50μm、クラッド径250μm、NAが0.2の光ファイバーから0.85μm波長の光を入力して、該光ファイバーとの接続損失を評価した結果、接続損失は0.51dBであり、実施例1と同様光ファイバーとの間でバラツキも少なく良好な光接続性が得られた。
次に、完成した光導波路フィルムをトムソン刃を用いて、抜き打ち加工処理を行い、導波路の中央に10.7mm×5.1mmの打抜き空間を形成した。そしてこの光導波路フィルムを1mm厚で、表面平滑性Raが0.1μmの平滑状態の基板に接着させ、光スイッチ光学素子デバイス(9.9mm×4.8mm×1mm)を作製した打抜き空間にはめ込み、光導波路と光路を合わせて、0.85μmの波長の光線を90%/mm透過する屈折率1.525のUV硬化型光学接着剤を光学素子と光導波路部分の間の間隙に注入し、直上からUV光を照射し接着剤を硬化させ、光学素子を固定化させた。次に光導波路へ0.850μmの波長光を導入させ、光スイッチを電気的にスイッチングし、1.25dBの光接続損失で光スイッチ制御した光を導波できる光学素子実装導波路デバイスを完成させた。
このようにすることで、一度に多数の多個取り光導波路モジュールを簡易な製造方法で作製でき、伝搬光損失が低く導波路形成が容易で且つ製造コストの低減可能な高分子光導波路の製造方法を得ることができる。
本発明は高分子光導波路モジュールの製造方法に係り、特に高分子光導波路モジュールの量産に好適な高分子光導波路モジュールの製造方法に関するものであり、産業上の利用可能性がある。
(A)〜(G)は本発明に係る高分子光導波路の製造方法の一例を示す概念図である。 光導波路コア形成用硬化性樹脂をゴム鋳型の凹部に流し込む工程の一例を示す図であり、(A)は斜視図、(B)は(A)のB−B断面図、(C)は(A)のC−C断面図、(D)はテーパー型針状注入ヘッドの一例を示す図である。 光導波路コア形成用硬化性樹脂をゴム鋳型の凹部に流し込む工程の他の例を示す図であり、(A)は斜視図、(B)は(A)のB−B断面図、(C)は(A)のC−C断面図を示す図である。 (A)〜(G)は本発明に係る高分子光導波路の製造方法の他の例を示す概念図である。 光導波路コア形成用硬化性樹脂をゴム鋳型6の凹部5に流し込む工程の他の例を示す図であり、(A)は斜視図、(B)は(A)のB−B断面図、(C)は(A)のC−C断面図を示す図である。 光導波路コア形成用硬化性樹脂をゴム鋳型6の凹部5に流し込む工程の他の例を示す図であり、(A)は斜視図、(B)は(A)のB−B断面図、(C)は(A)のC−C断面図を示す図である。 (A)〜(D)は光導波路コアに対応する凸部を形成した原盤の作製方法の一例を説明するための図である。 ゴム鋳型の凹部に光導波路コア形成用硬化性樹脂を充填する方法の一例を示す図で、(A)はゴム鋳型の平面図、(B)は(A)のB−B断面図、(C)はその斜視図である。 (A)〜(D)は高分子光導波路モジュールの光導波路コア部の中間に面状の光学素子を平置きで挿入する方法の一例を示す図である。 (A)〜(E)は高分子光導波路モジュールの光導波路コア部の中間に板状の光学素子をその側面を向けて光導波路コア部の中間に挿入する方法の一例を示す図である。 (A)、(B)は高分子光導波路モジュールの光導波路コア部の中間に板状の光学素子をその側面を向けて光導波路コア部の中間に挿入する方法の他の例を示す図である。 (A)、(B)は高分子光導波路モジュールの光導波路コア部の中間に板状の光学素子をその側面を向けて光導波路コア部の中間に挿入する方法の他の例を示す図である。 高分子光導波路モジュールの光導波路コア部の中間に面状の光学素子を平置きで挿入する方法の他の例を示す図である。
符号の説明
1 凸部
2 原盤
3 硬化樹脂層
4 強化部材
5 凹部
6 ゴム鋳型
7 クラッド層付基材
8 導電性パターン
9 光導波路コア形成用硬化性樹脂
10 光導波路コア
20 空洞
21 固定ネジ
22 露光開口部
23 コア材液注入口
24 コア材液排出口
25 コア材液注入管
26 減圧脱気管
27 テーパー型針状注入ヘッド
28 減圧吸引ヘッド

Claims (15)

  1. 光導波路コアに対応する凹部を複数有するゴム状の硬化性樹脂から形成されたゴム鋳型を準備する工程と、前記ゴム鋳型に第1のクラッド層基材またはクラッド層付基材を密着させる工程と、前記第1のクラッド層基材またはクラッド層付基材が密着された前記ゴム鋳型の複数の凹部に連通する複数のコア材液注入口にコア形成用硬化性樹脂を供給する複数のテーパー型針状注入ヘッドを設定し且つ前記複数の凹部に連通する複数のコア材液排出口に減圧吸引ヘッドを設定して前記複数の凹部に前記コア形成用硬化性樹脂を充填する工程と、前記充填されたコア形成用硬化性樹脂を硬化させて光導波路コアを形成する工程と、その後前記ゴム鋳型を前記第1のクラッド層基材またはクラッド層付基材から剥離する工程と、その後前記形成された光導波路コアの上に第2のクラッド層を形成する工程とを有することを特徴とする高分子光導波路モジュールの製造方法。
  2. 前記第2のクラッド層を形成する工程の後に、前記光導波路コアの端部を光学端面にするための切断工程を備えたことを特徴とする請求項1に記載の高分子光導波路モジュールの製造方法。
  3. 前記第2のクラッド層を形成する工程が、クラッド層用の硬化樹脂液を用いて浸漬法、スピナー法、ポテイング法または液滴噴射法で行われることを特徴とする請求項1または2に記載の高分子光導波路モジュールの製造方法。
  4. 前記クラッド層用の硬化樹脂液を接着剤として用いて前記第2のクラッド層上に第3のクラッド層基材またはクラッド層付基材を接着する工程を含むことを特徴とする請求項3に記載の高分子光導波路モジュールの製造方法。
  5. 前記ゴム鋳型が、前記複数の凹部と前記コア材液注入口との間および前記複数の凹部と前記コア材液排出口との間の少なくとも一方に前記複数の凹部の各端部を連通する空洞を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の高分子光導波路モジュールの製造方法。
  6. 前記空洞の断面積が、前記凹部の断面積の2倍から1000倍の範囲にあることを特徴とする請求項5に記載の高分子光導波路モジュールの製造方法。
  7. 前記テーパー型針状注入ヘッドのテーパー角度が5度から60度の範囲にあることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の高分子光導波路モジュールの製造方法。
  8. 前記光導波路コアの光導波方向中間部に、前記光導波路コアを切断するように光学素子設置用の空間または溝を作製する工程と、前記光学素子の光路部と前記光導波路コアとを光接合する工程とを更に有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の高分子光導波路モジュールの製造方法。
  9. 前記光学素子が、光学フィルター、光学レンズ、光学ミラー、光学スイッチ、発光素子および受光素子のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項8に記載の高分子光導波路モジュールの製造方法。
  10. 前記コア材液注入口および前記コア材液排出口が、前記ゴム鋳型を補強するための強化部材に設けられたことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の光導波路モジュールの製造方法。
  11. 前記強化部材が、金属材料、セラミック材料およびプラスチック材料のうちの少なくとも1つの材料を含むことを特徴とする請求項10に記載の光導波路モジュールの製造方法。
  12. 前記ゴム鋳型の硬化性樹脂が、シリコーン系ゴムであることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の高分子光導波路モジュールの製造方法。
  13. 前記ゴム鋳型の硬化性樹脂のシェアゴム硬度が、10以上50以下の範囲にあることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の光導波路モジュールの製造方法。
  14. 前記ゴム鋳型の表面エネルギーが、7dyn/cm以上30dyn/cm以下の範囲にあることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の光導波路モジュールの製造方法。
  15. 前記ゴム鋳型の凹部内壁の表面粗さ(Ra)が、0.1μm以下であることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の高分子光導波路モジュールの製造方法。
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