JP4292892B2 - 積層型高分子光導波路の製造方法及びこの方法により作製される積層型高分子光導波路 - Google Patents

積層型高分子光導波路の製造方法及びこの方法により作製される積層型高分子光導波路 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層型高分子光導波路及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
高分子導波路の製造方法としては、(1)フイルムにモノマーを含浸させてコア部を選択的に露光して屈折率を変化させフイルムを貼り合わせる方法(選択重合法)、(2)コア層及びクラッド層を塗布後、反応性イオンエッチングを用いてクラッド部を形成する方法(RIE法)、(3)高分子材料中に感光性の材料を添加した紫外線硬化性樹脂を用いて、露光・現像するフォトリソグラフィー法を用いる方法(直接露光法)、(4)射出成形を利用する方法、(5)コア層及びクラッド層を塗布後、コア部を露光してコア部の屈折率を変化させる方法(フォトブリーチング法)等が提案されている。
しかし、(1)の選択重合法はフイルムの貼り合わせに問題があり、(2)や(3)の方法は、フォトリソグラフィー法を使うためコスト高になり、(4)の方法は、得られるコア径の精度に課題がある。また、(5)の方法はコア層とクラッド層との十分な屈折率差がとれないという問題がある。
現在、性能的に優れた実用的な方法は、(2)や(3)の方法だけであるが前記のごときコストの問題がある。そして(1)ないし(5)のいずれの方法も、大面積でフレキシブルなプラスチック基材に高分子導波路を形成するのに適用しうるものではない。
【0003】
また、高分子光導波路を製造する方法として、キャピラリーとなる溝のパターンが形成されたパターン基板(クラッド)にコア用のポリマー前駆体材料を充填し、その後硬化させてコア層を作り、その上に平面基板(クラッド)を貼り合わせる方法が知られているが、この方法ではキャピラリー溝にだけでなく、パターン基板と平面基板の間にも全面的にポリマー前駆体材料が薄く充填され硬化されてコア層と同じ組成の薄い層が形成される結果、この薄い層を通って光が漏洩してしまうという問題があった。
この問題を解決する方法の1つとして、デビット・ハートはキャピラリーとなる溝のパターンが形成されたパターン基板と平面基板とをクランプ用治具で固着し、さらにパターン基板と平面基板との接触部分を樹脂でシールなどした後減圧して、モノマー(ジアリルイソフタレート)溶液をキャピラリーに充填して、高分子光導波路を製造する方法を提案した(以下の特許文献1を参照)。この方法はコア形成用樹脂材料としてポリマー前駆体材料を用いる代わりにモノマーを用いて充填材料を低粘度化し、キャピラリー内に毛細管現象を利用して充填させ、キャピラリー以外にはモノマーが充填されないようにする方法である。
しかし、この方法はコア形成用材料としてモノマーを用いているため、モノマーが重合してポリマーになる際の体積収縮率が大きく、高分子光導波路の透過損失が大きくなるいう問題がある。
また、この方法は、パターン基板と平面基板とをクランプで固着する、あるいはこれに加えさらに接触部を樹脂でシールするなど煩雑な方法であり、量産にはむかず、その結果コスト低下を期待することはできない。また、クラッドとして厚さがmmオーダーあるいは1mm以下のフィルムを用いる高分子光導波路の製造に適用することは不可能である。
【0004】
また、最近、ハーバード大学のGeorge M. Whitesidesらは、ナノ構造を作る新技術として、ソフトリソグラフィーの一つである毛細管マイクロモールドという方法を提唱している。これは、フォトリソグラフィーを利用してマスター基板を作り、ポリジメチルシロキサン(PDMS)の密着性と容易な剥離性を利用してマスター基板のナノ構造をPDMSの鋳型に写し取り、この鋳型に毛細管現象を利用して液体ポリマーを流し込んで固化させる方法である。以下の非特許文献1には詳しい解説記事が記載されている。
【0005】
又はバード大学のGeorge M. WhitesidesのグループのKim Enochらによって毛細管マイクロモールド法に関する特許が出願されている(以下の特許文献2を参照)。
しかし、この特許に記載の製造方法を高分子光導波路の製造に適用しても、光導波路のコア部は断面積が小さいので、コア部を形成するのに時間がかかり、量産に適さない。また、モノマー溶液が重合して高分子になるときに体積変化を起こしコアの形状が変化し、透過損失が大きくなるという欠点を持つ。
【0006】
また、IBMチュリッヒ研究所のB. MichelらはPDMSを用いた高解像度のリソグラフィー技術を提案しており、この技術により数十nmの解像力が得られると報告している。詳しい解説記事は、以下の非特許文献2に記載されている。
このように、PDMSを使ったソフトリソグラフィー技術や、毛細管マイクロモールド法は、ナノテクノロジーとして最近、米国を中心に注目を集めている技術である
【0007】
しかしながら、前記のごときマイクロモールド法を用いて光導波路を作製すると、硬化時の体積収縮率を小さくする(したがって透過損失を小さくする)ことと、充填を容易にするために充填液体(モノマー等)を低粘度化することを両立させえない。したがって、透過損失を小さくすることを優先的に考慮すると、充填液体の粘度をある限度以下にすることができず、充填速度が遅くなり、量産は望めない。また前記のマイクロモールド法は、基板としてガラスやシリコン基板を用いることが前提になっており、フレキシブルなフィルム基材を用いることは考慮されていない。
【0008】
これに対して本発明者等は特願2002−187473号として、フィルム基材に光導波路を設けたフレキシブル高分子光導波路を極めて低コストで作製する方法を提案した。この方法により作製した高分子光導波路は、損失ロスが少なく高精度のコア形状を維持し、また、全体としてフレキシブルであるので各種機器への自由な装填が可能である。しかし、さらに回路の集積度を高めるためには、高分子光導波路同士を積層した構造、又は光導波路を電気回路基板に積層した構造とするのが有効である。しかし、フレキシブルな高分子光導波路を積層する際の位置決めは容易なことではない。
【0009】
そこでさらに本発明者らは特願2002−224642号として、アライメントマークを導波路コア部分と同時に作製し、これを利用して積層する積層型高分子光導波路の製造方法を提案した。
ところで、前記特願2002−187473号及び特願2002−224642号に係る発明では、光導波路のクラッドを構成するものとして脂環式アクリル樹脂フイルム、あるいは脂環式オレフィン樹脂フイルム等の光透過性クラッドフィルムが用いられている。これらは主にキャスティング法などで成形されて市販されているが、当然厚みに関して一定の公差(概ね膜厚の3〜5%程度)をもつ。そのため、単にフィルムに光導波路コアが形成された導波路フィルムを積層するだけでは、積層方向においてコアの設計ピッチを所定のものに維持することはできない。
【0010】
厚み方向のコアの設計ピッチを正確に維持する積層型高分子光導波路の製造方法としては、例えば以下の特許文献3に記載されているように、単層のコアに対して正確に厚みを制御した上下クラッド構造をもち、かつコア部分が全体の厚みの中心に来るような導波路フィルムを作製し、この導波路フィルムを複数積層する方法が知られている。しかし複数の導波路フィルムをそれぞれ厚み制御しつつ作製するため、1枚当りの作製工数が嵩む難点がある。さらに本発明者の特願2002−187473号、及び特願2002−224642号と異なり、光導波路のクラッド部分がすべて硬化性樹脂で構成されている。硬化性樹脂はスピンコート法などの方法により正確に厚みを制御することが可能であるが、硬化性材料(光硬化、熱硬化)であること、屈折率を正確に制御できること、体積収縮率を低く押さえられることという条件をすべて満たさなければならない点から、前述したような光透過性クラッドフィルムに比較して高価な樹脂を選択しなければならない。したがって、このような硬化性樹脂でクラッド部分の全てを構成することは、コア部分と異なり大きな体積量を要するのでいたずらに価格の高騰を招く。
【0011】
【特許文献1】
特許第3151364号明細書
【特許文献2】
米国特許第6355198号明細書
【特許文献3】
特開平11−183747号公報
【非特許文献1】
SCIENTIFIC AMERICAN SEPTEMBER 2001(日経サイエンス2001年12月号)
【非特許文献2】
IBM J. REV. & DEV. VOL. 45 NO. 5 SEPTEMBER 2001
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記のごとき問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、低コストの積層型高分子光導波路及びその製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記課題は、以下の積層型高分子光導波路及びその製造方法を提供することにより解決される。
(1)厚み公差を有する光透過性クラッドフィルムの上に光導波路コアを形成した複数の導波路フィルムの間に、硬化後の屈折率が光透過性クラッドフィルムの屈折率と等しいクラッド用硬化性樹脂の層を挟み込み、その後クラッド用硬化性樹脂を硬化させ、複数の導波路フィルムを一体に積層する積層工程を有する積層型高分子光導波路の製造方法であって、前記積層工程において、導波路フィルムのコアから前記導波路フィルムの上に位置する導波路フィルムのコアまでの距離がクラッド用硬化性樹脂の層の硬化後、光透過性クラッドフィルムの厚み公差を打ち消して設計コアピッチとなるように、クラッド用硬化性樹脂の層の厚さを測定しながら積層することを特徴とする、積層方向に設計コアピッチでコアが配置された積層型高分子光導波路の製造方法。
(2)前記光透過性クラッドフィルムの厚みが20μm以上であることを特徴とする前記(1)に記載の積層型高分子光導波路の製造方法。
(3)前記クラッド用硬化性樹脂が紫外線硬化性樹脂であることを特徴とする前記(1)に記載の積層型高分子光導波路の製造方法。
(4)前記クラッド用硬化性樹脂が熱硬化性樹脂であることを特徴とする前記(1)に記載の積層型高分子光導波路の製造方法。
(5)前記導波路フィルムが、光透過性クラッドフィルムの上に光導波路コアを有し、その上にクラッド用硬化性樹脂の硬化層を介して他の光透過性クラッドフィルムが設けられていることを特徴とする前記(1)に記載の積層型高分子光導波路の製造方法。
【0014】
(6)前記導波路フィルムに挟み込まれたクラッド用硬化性樹脂の硬化を同時に行うことを特徴とする前記(1)記載の積層型高分子光導波路の製造方法。
(7)前記導波路フィルムを以下の工程で作製することを特徴とする前記(1)に記載の積層型高分子光導波路の製造方法。
1)鋳型形成用硬化性樹脂の硬化樹脂層から形成され、光導波路コア凸部に対応する凹部を有する鋳型を準備する工程
2)鋳型に光透過性クラッドフィルムを密着させる工程
3)光透過性クラッドフィルムを密着させた鋳型の凹部にコア形成用硬化性樹脂を充填する工程
4)充填したコア形成用硬化性樹脂を硬化させる工程
5)鋳型を光透過性クラッドフィルムから剥離する工程
(8)前記鋳型が複数のアライメントマーク作製用凹部を有することを特徴とする前記(7)に記載の積層型高分子光導波路の製造方法。
【0015】
【発明の実施の形態】
[積層型高分子光導波路の製造方法]
本発明の積層型高分子光導波路の製造方法は、厚み公差をもつ光透過性クラッドフィルム(以下において単に「クラッドフィルム」ということがある。)の上に光導波路コアを形成した複数の導波路フィルムの間に、硬化後の屈折率が光透過性クラッドフィルムの屈折率と等しいクラッド用硬化性樹脂の層を挟み込み、その後クラッド用硬化性樹脂を硬化させ、複数の導波路フィルムを一体に積層するものであり、複数の導波路フィルムを積層する際、導波路フィルムのコアから前記導波路フィルムの上に位置する導波路フィルムのコアまでの距離がクラッド用硬化性樹脂の層の硬化後、光透過性クラッドフィルムの厚み公差を打ち消して設計コアピッチとなるように、クラッド用硬化性樹脂の層の厚さを測定しながら積層して、積層方向に設計コアピッチでコアを配置することを特徴とする。
前記の「硬化後の屈折率が光透過性クラッドフィルムの屈折率と等しいクラッド用硬化性樹脂の層」における「等しい」とは、両者の屈折率が全く同じことを意味するだけでなく、両者の屈折率の差が0.01以内にある場合も両者の屈折率は等しいことを意味する。
【0016】
本発明の積層型高分子光導波路は、導波路フィルムのクラッド部分をすべてクラッド用硬化性樹脂で構成しておらず、クラッドの一部を光透過性フィルムで占めることになるため、材料費を低コストにすることができる。また、低接続損失でN×N構造のレーザー発光素子等と接続できる利点がある。
【0017】
前記の「少なくともコア積層部分におけるクラッド用硬化性樹脂の硬化層の厚さが、クラッドフィルムの厚み公差を打ち消す厚さ」について説明すると、例えば、市販されているアートンフィルム(ARTON、JSR社)は厚み公差が3%存在する。これは188μm厚の場合で±5μm程度の厚み誤差が存在することを意味している。したがって、たとえばコア径が50μmの積層型高分子光導波路のコアピッチを250μmに設定し、アートンフィルムの上にコアを設けた導波路フィルムを複数積層して積層型高分子光導波路を作製する場合、設計コアピッチを正確に実現するためには、コア上面とその上に位置するフィルムとの間の硬化層の厚さ(公差が全くないと仮定すると前記ピッチを得るために12μm厚さとなる)を±5μmの間で制御する必要がある。また、この際、クラッド用硬化性樹脂は通常硬化時に体積収縮を起こすのでこの点を考慮に入れる必要がある。
【0018】
前記導波路フィルムに用いるクラッドフィルムの厚みは20μm以上であることが好ましい。これは、導波路フィルムを積層する際のハンドリングの容易さや、導波路フィルム単体としての機械的強度を保つためであり、これより薄いクラッドフィルムでは、製造時に光導波路コアに曲げの力が加わってコアに歪が入りやすく、歩留まりの悪化や性能が著しく低下する。また機械的強度の点以外にもコスト面から見ても、導波路フィルムはその設計ピッチ(積層方向のコアピッチ)が許す限り厚いほうが望ましい。これは一般に光導波路として用いることができるクラッド用硬化性樹脂(紫外線硬化性樹脂あるいは熱硬化性樹脂)の価格が高いため、なるべくその使用量を減らせるほうが低コストになるためである。
【0019】
クラッドフィルムが薄く、必要なコアピッチを得るためにクラッド用硬化性樹脂の使用量が多くなる場合には、導波路フィルムとして、クラッドフィルムの上に光導波路コアを有し、その上にクラッド用硬化性樹脂の硬化層を介して他のクラッドフィルムが設けられているものを用いることができる。
【0020】
また、本発明においてはクラッドフィルムの厚み公差をクラッド用硬化性樹脂の硬化層の厚さで補償するために、コアとその上に位置するクラッドフィルムとの間にはクラッド用硬化性樹脂が挿入される間隙が必要である。コアとその上に位置するクラッドフィルムとの間の間隙は、フィルム自体の平面性を考慮に入れると少なくとも1μmであり、またクラッド用硬化性樹脂を隙間なく充填できるかどうかという点からは、望ましくは少なくとも5μmである。
したがって、この点も考慮して前記クラッドフィルムの厚さを選択する必要がある。また、この際、コア径、コアピッチ、クラッドフィルム公差を考慮する必要があることは勿論である。
【0021】
前記クラッド用硬化性樹脂は導波路フィルム同士を貼り合わせる接着剤の機能も果たす。前記硬化性樹脂としては紫外線硬化性樹脂を用いることによって、良好な光透過性を確保することができる。紫外線硬化性樹脂はアクリル系、エポキシ系など各種存在するが、無溶剤系のもので体積収縮率が4〜5%程度のものが市販されており入手可能である。さらに、この部分に熱硬化性樹脂を用いることによってさらに体積収縮率を下げることも可能であるが、この場合、加熱温度により他の部位、たとえば保持治具やクラッドフィルムの熱膨張率の違いなどを配慮する必要がある。
体積収縮率に関しては、コア上面とその上に位置するクラッドフィルムとの間の間隙に存在するクラッド用硬化性樹脂の硬化層の厚さはコア分だけ薄いため、その厚さを10μm以下にすることも容易である。したがって、この部分の体積収縮に伴うピッチ変化は無視することが可能である。
【0022】
[積層型高分子光導波路の作製]
本発明の積層方向に所定の間隔でコアが配置された積層型高分子光導波路の製造方法は、前記のごとき導波路フィルムを複数用意し、これらの間にクラッド用硬化性樹脂の層を挟み込み、その際挟み込んだクラッド用硬化性樹脂の層の厚さを、少なくともコア積層部分において、硬化後光透過性クラッドフィルムの厚み公差を打ち消すような厚さに制御し、その後クラッド用硬化性樹脂を硬化させて、複数の導波路フィルムを積層一体化することを特徴とする。
導波路フィルムの積層は、積層に用いるクラッド用硬化性樹脂の体積収縮率を考慮した厚み設定を持った製造治具によって行うことができる。またレーザー変位計によって、積層する導波路フィルムの上方から、少なくともコア積層部分に積層される膜厚を適宜測定することによって、正確な積層膜厚を得ることができる。
【0023】
また前記複数の導波路フィルムを同時にまとめて積層接着(前記導波路フィルムに挟み込まれたクラッド用硬化性樹脂の硬化を同時に行う)することにより、積層に必要な工数を削減することが可能である。この場合、複数の導波路フィルムの位置決めが行える治具が必須となる。ただし、クラッド用硬化性樹脂の接着を一度に行うため、厚みによっては接着強度むらが生じやすくなる虞もある。たとえば250μmピッチで8×8のコアパターンの積層導波路の場合、積層厚みが2mmに達する。このようなサンプルに対して紫外線硬化性樹脂を用いてまとめて積層接着すると、上部と下部で接着速度が異なるため、上部と下部の間に歪が発生する恐れがある。このような虞がある場合は2枚ずつ積層するなど、積層工程を分割することが好ましい。
【0024】
本発明の積層型高分子光導波路の製造方法においては、比較的安価な市販の光透過性フィルムを用いることにより避けられない厚み公差を、クラッド用硬化性樹脂の層厚を調節するだけで容易にカバーすることができるため、クラッドをすべてクラッド用硬化性樹脂で構成する従来の積層型高分子光導波路に比べて製造コストを非常に低くすることができる。
【0025】
以上のことを図を用いて説明する。図1は本発明の積層型高分子光導波路の一例及びその作製について説明する概念図である。図1で示す積層型高分子光導波路40は、クラッドフィルム30にコア32を形成した導波路フィルムをクラッド用硬化性樹脂の硬化層34により積層接着した構造のもので、4×4のレーザー発光素子に接続可能である。また、図1中、xは1つの導波路フィルムにおけるコアのピッチを、yは積層方向におけるコアのピッチを、zはコア上面とその上に位置するクラッドフィルムとの間における硬化層の厚さをそれぞれ示す。
導波路フィルムを積層する際、少なくともコア積層部分(図中矢印で示す)において、レーザー変位形を用いて厚さ測定を行いながら積層する。
【0026】
また導波路フィルムを作製する際に、クラッドフィルムの上に光導波路コアと複数のアライメントマークを形成し、このアライメントマークを用いて複数の導波路フィルムを積層する際の面方向位置を定めることが望ましい。このような導波路フィルムを作製するには、以下に述べるように、同じ鋳型に複数のアライメントマーク作製用凹部と光導波路コア作製用凹部を形成した鋳型を用いることが好ましい。この鋳型を用いると、アライメントマークと光導波路コアの位置ずれを極小にできる。
【0027】
本発明の積層型高分子光導波路は前記のようにコアの積層方向におけるピッチを所定の設定値にすることができる。したがって、本発明の積層型高分子光導波路に発光素子、例えばレーザー発光素子を接続した場合、接続損失及び伝搬損失を小さくすることができる。図2に、4×4の積層型高分子光導波路に4×4のレーザー発光素子を接続する図を示す。図2(A)はその側面図で、図2(B)はその上面図を示す。図2(A)中、40は積層型高分子光導波路を、60はレーザー発光素子を、62はその発光部をそれぞれ示す。また図2(B)中、46はアライメントマークであり、4層分の誤差を誇張して表したものである。
【0028】
[導波路フィルムの作製]
次に、本発明の導波路フィルムの作製方法について説明すると、先ず、光導波路コアに対応する凸部を形成した原盤に、鋳型形成用硬化性樹脂を塗布或いは注型し、該樹脂を硬化させ、得られる硬化樹脂層を原盤から剥離して光導波路コア凸部に対応する凹部を有する鋳型を準備し、該鋳型にクラッドフィルムを密着させ、鋳型の凹部にコア形成用硬化性樹脂を充填し、充填したコア形成用硬化性樹脂を硬化させ、最後に鋳型を剥離して導波路フィルムを得る。また、その後同様のクラッドフィルムをコア形成面に接着剤(クラッド用硬化性樹脂等)により積層して他の態様の導波路フィルムとすることができる。
以下に更に具体的に導波路フィルムの作製方法について説明する。
【0029】
前記原盤は従来の方法、たとえばフォトリソグラフィー法やRIE法を特に制限なく用いることができる。また、本出願人が先に出願した電着法又は光電着法により高分子光導波路を作製する方法(特願2002−10240号)も、原盤を作製するのに適用できる。また、原盤にアライメントマーク作製用の凸部を設けることが好ましい。アライメントマーク作製については特願2002−224642号明細書に詳しく説明されている。
【0030】
鋳型は、前記のようにして作製した原盤の光導波路コアに対応する凸部が形成された面に、鋳型形成用硬化性樹脂を塗布したり注型し、必要に応じ乾燥処理をした後、該樹脂を硬化させ、次いでその硬化樹脂層を剥離して作製される。また、鋳型には、前記凸部に対応する凹部にコア形成用硬化性樹脂を充填するための進入口、及び前記凸部に対応する凹部から前記樹脂を排出させるための排出口が形成されるが、その形成方法は特に制限はない。原盤に予め進入口や排出口に対応する凸部を設けておくこともできるが、簡便な方法としては、例えば、原盤に鋳型形成用硬化性樹脂の硬化樹脂層を形成した後剥離して型をとり、その後、型の両端を前記凹部が露出するように切断することにより進入口及び排出口を形成する方法が挙げられる。また、鋳型凹部に連通する貫通孔を凹部の両端に設け、後述のようにコア形成用硬化性樹脂の充填速度を上げることもできる。
前記硬化樹脂層の厚さは、鋳型としての取り扱い性を考慮して適宜決められるが、一般的に0.1〜50mm程度が適切である。
また、前記原盤にはあらかじめ離型剤塗布などの離型処理を行なって鋳型との剥離を促進することが望ましい。
【0031】
鋳型形成用硬化性樹脂としては、その硬化物が原盤から容易に剥離できること、鋳型(繰り返し用いる)として一定以上の機械的強度・寸法安定性を有すること、凹部形状を維持する硬さ(硬度)を有すること、クラッドフィルムとの密着性が良好なことが好ましい。鋳型形成用硬化性樹脂には、必要に応じて各種添加剤を加えることができる。
鋳型形成用硬化性樹脂は、原盤の表面に塗布や注型等することが可能で、また、原盤に形成された個々の光導波路コアに対応する凸部を正確に写し取らなければならないので、ある限度以下の粘度、たとえば、500〜7000mPa・s程度を有することが好ましい。(なお、本発明において用いる「鋳型形成用硬化性樹脂」の中には、硬化後、弾性を有するゴム状体となるものも含まれる。)また、粘度調節のために溶剤を、溶剤の悪影響が出ない程度に加えることができる。
【0032】
前記鋳型形成用硬化性樹脂としては、前記のごとき剥離性、機械強度・寸法安定性、硬度、クラッドフィルムとの密着性の点から、硬化後、シリコーンゴム(シリコーンエラストマー)又はシリコーン樹脂となる硬化性オルガノポリシロキサンが好ましく用いられる。前記硬化性オルガノポリシロキサンは、分子中にメチルシロキサン基、エチルシロキサン基、フェニルシロキサン基を含むものが好ましい。また、前記硬化性オルガノポリシロキサンは、一液型のものでも硬化剤と組み合わせて用いる二液型のものでもよく、また、熱硬化型のものでも室温硬化型(例えば空気中の水分で硬化するもの)のものでもよく、更に他の硬化(紫外線硬化等)を利用するものであってもよい。
【0033】
前記硬化性オルガノポリシロキサンとしては、硬化後シリコーンゴムとなるものが好ましく、これには通常液状シリコーンゴム(「液状」の中にはペースト状のように粘度の高いものも含まれる)と称されているものが用いられ、硬化剤と組み合わせて用いる二液型のものが好ましく、中でも付加型の液状シリコーンゴムは、表面と内部が均一にかつ短時間に硬化し、またその際副生成物が無く又は少なく、かつ離型性に優れ収縮率も小さいので好ましく用いられる。
【0034】
前記液状シリコーンゴムの中でも特に液状ジメチルシロキサンゴムが密着性、剥離性、強度及び硬度の点から好ましい。
【0035】
前記液状シリコーンゴムの粘度は、光導波路コアに対応する凸部を正確に写し取り、かつ気泡の混入を少なくして脱泡し易くする観点と、数ミリの厚さの鋳型形成の点から、500〜7000mPa・s程度のものが好ましく、さらには、2000〜5000mPa・s程度のものがより好ましい。
【0036】
さらに、鋳型の表面エネルギーは、10dyn/cm〜30dyn/cm、好ましくは15dyn/cm〜24dyn/cmの範囲にあることが、クラッドフィルムとの密着性の点からみて好ましい。
鋳型のシェア(Share)ゴム硬度は、15〜80、好ましくは20〜60であることが、型取り性能、凹部形状の維持、剥離性の点からみて好ましい。
鋳型の表面粗さ(二乗平均粗さ(RMS))は、0.5μm以下、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下にすることが、形成されたコアの光導波特性において光損失を大幅に低減できる。
【0037】
また、鋳型は、紫外領域及び/又は可視領域において光透過性であることが好ましい。鋳型が可視領域において光透過性であることが好ましいのは、鋳型をクラッドフィルムに密着させる際位置決めが容易に行え、また、コア形成用硬化性樹脂が鋳型凹部に充填される様子が観察でき、充填完了等が容易に確認しうるからである。また、鋳型が紫外領域において光透過性であることが好ましいのは、コア形成用硬化性樹脂として紫外線硬化性樹脂を用いる場合に、鋳型を透して紫外線硬化を行うためであり、鋳型の、紫外領域(250nm〜400nm)における透過率が80%以上であることが好ましい。
【0038】
前記硬化性オルガノポリシロキサン、中でも硬化後シリコーンゴムとなる液状シリコーンゴムは、クラッドフィルムとの密着性と剥離性という相反した特性に優れ、ナノ構造を写し取る能力を持ち、シリコーンゴムとクラッドフィルムとを密着させると液体の進入さえ防ぐことができる。このようなシリコーンゴムを用いた鋳型は高精度に原盤を写し取り、クラッドフィルムに良く密着するため、鋳型とクラッドフィルムの間の凹部のみに効率よくコア形成用樹脂を充填することが可能となり、さらにクラッドフィルムと鋳型の剥離も容易である。したがって、この鋳型からは高精度に形状を維持した高分子光導波路を、極めて簡便に作製することができる。
【0039】
また、前記硬化樹脂層、とりわけ硬化樹脂層がゴム弾性を有する場合、硬化樹脂層の一部すなわち原盤凸部を写し取る部分以外の部分を他の剛性材料に置き換えることができ、この場合、鋳型のハンドリング性が向上する。
【0040】
本発明において用いるクラッドフィルムとしては、屈折率が1.55より小さく、好ましくは1.50より小さいプラスチックフィルムが用いられる。特に、コア材の屈折率より0.01以上、好ましくは0.05以上小さいことが必要である。また、クラッドフィルムは、平坦で、鋳型との密着性に優れ、両者を密着させた場合、鋳型凹部以外に空隙が生じないものが好ましい。また、クラッドフィルムと鋳型及び/又はコアとの密着性が余り良好でない場合には、クラッドフィルム及び/又は鋳型の表面をオゾン雰囲気に曝す処理や、波長300nm以下の紫外線照射処理を行って、鋳型等との密着性を改善することが好ましい。
プラスチックフィルムの中でも、フレキシブルなフィルムを用いた高分子光導波路は、カプラー、ボード間の光配線や光分波器等としても使用できる。前記フィルムは、作製される高分子光導波路の用途に応じて、その屈折率、光透過性等の光学的特性、機械的強度、耐熱性、鋳型との密着性、フレキシビリティー(可撓性)等を考慮して選択される。
【0041】
前記フィルムの材料としては、アクリル系樹脂(ポリメチルメタクリレート等)、脂環式アクリル樹脂、スチレン系樹脂(ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等)、オレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等)、脂環式オレフィン樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、ビニルブチラール系樹脂、アリレート系樹脂、含フッ素樹脂、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリカーボネート系樹脂、二又は三酢酸セルロース、アミド系樹脂(脂肪族、芳香族ポリアミド等)、イミド系樹脂、スルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリオキシメチレン系樹脂、または前記樹脂のブレンド物等が挙げられる。
【0042】
前記脂環式アクリル樹脂としてはトリシクロデカン等の脂肪族環状炭化水素をエステル置換基に導入した、OZ−1000、OZ−1100(日立化成(株)製)等が用いられる。
また、脂環式オレフィン樹脂としては主鎖にノルボルネン構造を有するもの、及び主鎖にノルボルネン構造を有しかつ側鎖にアルキルオキシカルボニル基(アルキル基としては炭素数1から6のものやシクロアルキル基)等の極性基をもつものが挙げられる。中でも前記のごとき主鎖にノルボルネン構造を有しかつ側鎖にアルキルオキシカルボニル基等の極性基をもつ脂環式オレフィン樹脂は、低屈折率(屈折率が1.50近辺であり、コア・クラッドの屈折率の差を確保できる)及び高い光透過性等の優れた光学的特性を有し、鋳型との密着性に優れ、さらに耐熱性に優れているので特に本発明の高分子光導波路の作製に適している。
【0043】
前記フィルムの屈折率は、コアとの屈折率差を確保するため、1.55より小さく、好ましくは1.53より小さくすることが望ましい。
また、前記フィルムの厚さはフレキシビリティーと剛性や取り扱いの容易さ等を考慮して適切に選ばれ、一般的には0.1mm〜0.5mm程度が好ましい。
【0044】
鋳型凹部にコア形成用硬化性樹脂を充填するには、鋳型に鋳型より一回り大きいサイズのクラッドフィルムを密着させ、凹部の進入口にコア形成用硬化性樹脂を少量垂らし毛細管現象を利用して充填したり、あるいは凹部に連通する貫通孔にコア形成用硬化性樹脂を満たした後加圧充填したり、又は反対側の貫通孔から減圧吸引したり、あるいは加圧充填と減圧吸引の両方を行うことにより充填することができる。前記加圧充填と減圧吸引は同期して行うことが好ましく、また、前記加圧充填において圧力を段階的に増加させ、前記減圧吸引において圧力を段階的に減少させることが、鋳型が安定して固定された状態で、コア形成用硬化性樹脂をより高速に注入する相反則を両立させる点からみて好ましい。
【0045】
コア形成用硬化性樹脂としては放射線硬化性、電子線硬化性、熱硬化性等の樹脂を用いることができ、中でも紫外線硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂が好ましく用いられる。
前記コア形成用の紫外線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂としては、紫外線硬化性又は熱硬化性のモノマー、オリゴマー若しくはモノマーとオリゴマーの混合物が好ましく用いられる。
また、前記紫外線硬化性樹脂としてエポキシ系、ポリイミド系、アクリル系紫外線硬化性樹脂が好ましく用いられる。
【0046】
コア形成用硬化性樹脂は、鋳型とクラッドフィルムとの間に形成された空隙(鋳型の凹部)に充填させるため、用いるコア形成用硬化性樹脂はそれが可能なように十分低粘度であることが必要である。前記硬化性樹脂の粘度は、10mPa・s〜2000mPa・s、望ましくは100mPa・s〜1000mPa・s、更に好ましくは300mPa・s〜700mPa・sにするのが、充填速度、コア形状の良さ及び光損失の少なさの点から好ましい。
このほかに、原盤に形成された光導波路コアに対応する凸部が有する元の形状を高精度に再現するため、前記硬化性樹脂の硬化前後の体積変化が小さいことが必要である。例えば、体積が減少すると導波損失の原因になる。したがって、前記硬化性樹脂は、体積変化ができるだけ小さいものが望ましく、10%以下、好ましくは0.01〜4%の範囲にあることが望ましい。溶剤を用いて低粘度化することは、硬化前後の体積変化が大きいのでできれば避ける方が好ましい。
コア形成用硬化性樹脂の硬化後の体積変化(収縮)を小さくするため、前記樹脂にポリマーを添加することができる。前記ポリマーはコア形成用硬化性樹脂との相溶性を有し、かつ該樹脂の屈折率、弾性率、透過特性に悪影響を及ぼさないものが好ましい。またポリマーを添加することにより体積変化を小さくする他、粘度や硬化樹脂のガラス転移点を高度に制御できる。前記ポリマーとしては例えばアクリル系、メタクリル酸系、エポキシ系のものが用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
コア形成用硬化性樹脂の硬化物の屈折率は1.20から1.60の範囲、より好ましくは1.4から1.6の範囲が好ましく、硬化物の屈折率が前記範囲内に入る2種類以上の屈折率の異なる樹脂が用いられる。
コア形成用硬化性樹脂の硬化物の屈折率は、クラッドフィルムより大きいことが必要である。コアとクラッドフィルムとの屈折率の差は、0.01以上、好ましくは0.05以上である。
【0048】
また、この工程において、毛細管現象によるコア形成用硬化性樹脂の鋳型凹部への充填を促進するために、系全体を減圧(0.1〜200Pa程度)することが望ましい。
また、前記充填を促進するため、前記系の減圧に加えて、鋳型の進入口から充填するコア形成用硬化性樹脂を加熱することにより、より低粘度化することも有効な手段である。
【0049】
充填したコア形成用硬化性樹脂が紫外線硬化性樹脂の場合には、紫外線ランプ、紫外線LED、UV照射装置等が用いられる。また、熱硬化性樹脂の場合には、オーブン中での加熱硬化等が行われる。
この後、鋳型をクラッドフィルムから剥離して本発明の導波路フィルムとする。
【0050】
本発明における導波路フィルムとして、前記のごとき方法により作製した導波路フィルムの上に、クラッドフィルムの屈折率と近い接着剤を用いて他のクラッドフィルムを貼り合わせたものを用いることができる。用いる接着剤は紫外線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂が好ましく用いられ、例えば、紫外線硬化性又は熱硬化性のモノマー、オリゴマー若しくはモノマーとオリゴマーの混合物が用いられる。
また、前記2つのクラッドフィルムの屈折率差は小さい方が好ましく、その差は0.05以内、好ましくは0.001以内、更に好ましくは差がないことが光の閉じ込めの点からみて好ましい。
【0051】
以上の導波路フィルムの作製において、鋳型に貫通孔を設ける態様について図を用いて説明する。
図3(A)は原盤10を示し、12は光導波路コアに対応する凸部である。この原盤10の凸部形成面に鋳型形成用硬化性樹脂を塗布又は注型した後硬化させる(図3(B)参照)。図3(B)中、20aは硬化樹脂層である。その後硬化樹脂層20aを剥離すると、凹部が形成された硬化樹脂層20aが得られる(図示せず)。凹部22が形成された硬化樹脂層20aに、凹部22に連通する貫通孔26及び28を凹部両端に打ち抜き等により形成して鋳型20(図3(C)参照)を得る。
次に、図3(D)が示すように、鋳型にクラッドフィルムを密着させ、その後鋳型に形成されている貫通孔26にコア形成用硬化性樹脂を入れ、他端の貫通孔28から減圧吸引して鋳型凹部22にコア形成用硬化性樹脂を充填する。その後該樹脂を硬化させ鋳型を剥離すると、図3(E)に示されるように、クラッドフィルム30の上に光導波路コア32が形成される。最後に貫通孔26及び28内で硬化した樹脂部分をダイサー等で切り落として導波路路フィルムとする。コア端面は鏡面平滑性を有している。
【0052】
また、図4は、導波路フィルムにアライメントマークを形成する際に用いる原盤の一例を示す図である。図4中10は原盤、12は光導波路コア凸部に対応する凸部、16はアライメントマークに対応する凸部をそれぞれ示す。
【0053】
本発明の導波路フィルムの作製方法において、特に、鋳型形成用硬化性樹脂として硬化してゴム状になる液状シリコーンゴム、中でも液状ジメチルシロキサンゴムを用い、クラッドフィルムとして主鎖にノルボルネン構造を有しかつ側鎖にアルキルオキシカルボニル基等の極性基をもつ脂環式オレフィン樹脂を用いる組み合わせは、両者の密着性が特に高く、また、鋳型凹部構造の変形がなく、さらに凹部構造の断面積が極めて小さくても(たとえば10×10μmの矩形)毛細管現象等により素早く凹部に硬化性樹脂を充填することができる。
【0054】
前記の導波路フィルムの作製方法は、極めて単純化された方法であり、低コストである。
【0055】
【実施例】
以下に実施例を示し本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
実施例1
<導波路フィルムの作製>
Si基板に厚膜レジスト(マイクロケミカル(株)製、SU−8)をスピンコート法で塗布した後、80℃でプリベークし、フォトマスクを通して露光し、現像して、断面が正方形の4本の光導波路用凸部(幅:50μm、高さ:50μm、長さ:50mm、ピッチ250μm)と、図4で示すような平面形状を有する2つの断面が正方形のアライメントマーク用凸部(幅:50μm、高さ:50μm、一辺の長さ:2mm)を形成した。次に、これを120℃でポストベークして、光導波路コア作製用原盤を得た。
【0056】
次に、この原盤に離型剤を塗布した後、熱硬化性ジメチルシロキサン樹脂(ダウコウニングアジア社製:SYLGARD184)を流し込み、120℃で30分間加熱して硬化させた後剥離して、断面が正方形の光導波路用及びアライメントマーク用凸部に対応する凹部を持った型(鋳型の厚さ:5mm)を作製した。
さらに、前記凹部の両端が露出するように、鋳型に直径3mmの貫通孔を切り抜いて、下記紫外線硬化性樹脂の入出力部を形成した。また、2つのアライメントマーク用凸部に対応する凹部の両端部が露出するように端部を切断した。これを鋳型として用いた。
【0057】
この鋳型と、鋳型より一回り大きい設計膜厚188μmのクラッドフィルム(アートンフイルム、JSR(株)製、屈折率1.510)を用意した。この膜厚を測定したところ、実際には186〜190μmの厚みばらつきがあった。このアートンフィルムと鋳型を密着させた。
次に、鋳型に形成されている光導波路作製用凹部充填側の貫通孔に、粘度が1300mPa・sの紫外線硬化性樹脂(JSR社製:PJ3001)を数滴落とし、光導波路作製用凹部排出側の貫通孔からダイヤフラム式吸引ポンプ(最大吸引圧33.25KPa)で20kPaの吸引力で吸引したところ、前記凹部に紫外線硬化性樹脂が充填された。また、アライメントマーク作製用凹部が露出している一端部にも同じ樹脂に若干の染料を混ぜたものを数滴落としたところ、該凹部に毛細管現象により樹脂が充填された。
【0058】
次いで、50mW/cm2のUV光を鋳型を透して5分間照射して紫外線硬化させた。鋳型をクラッドフイルムから剥離したところ、クラッドフイルム上に前記原盤凸部と同じ形状のコア及びアライメントマークが形成された。コアの屈折率は1.591であった。この導波路フィルムをフィルム切断用の刃を植えた型によって打ち抜き加工することにより、両端部の貫通孔内で硬化した樹脂部分を切り落として、コアの凸部分以外の出っ張りのないリッジ型の導波路フィルムを作製した。
【0059】
<積層型高分子光導波路の作製>
前記のごとくして作製した導波路フィルムを4枚及び同じ大きさのアートンフィルムを1枚を用意した。1枚の導波路フィルムのコア形成面に、硬化後の屈折率がクラッドフィルム(アートンフイルム)と同じ1.510であり、体積収縮率が5%以下である紫外線硬化性樹脂(JSR(株)製)を、塗布装置によって全面に塗布した。樹脂層の塗布厚は、体積収縮率も考慮して、紫外線硬化性樹脂を塗布した導波路フィルムの硬化後の厚さが概ね250μmになるようにした。この上にもう1枚の導波路フィルムを積層した。積層はレーザー変位計でコア上部からコア上部までの変位を測定し、この変位が正確に250μmになるように計測しながら導波路フィルム表面を押し付けることにより行った。さらに積層体の上から顕微鏡光学系でアライメントマークにより2枚の高分子光導波路の相対位置を微調整した。その後、50mW/cm2のUV光を10分間照射して紫外線硬化性樹脂を硬化させた。積層された2枚の導波路フィルムの相対位置誤差は面方向及び厚み方向とも2μm以下に収まった。
【0060】
この工程を繰り返し、最後に最上層にアートンフィルムを前記の紫外線硬化性樹脂を用いて積層し、その後クラッド用硬化性樹脂がはみ出した不要な部分及び、光導波路コアの端面をダイシングソーで切断することにより1層につき4本の光導波路を持ち、それらが4層積層された光導波路フィルムを作製した。この積層型高分子光導波路は、積層時にフィルム位置により若干の収縮ばらつきが存在したものの、端面における断面のコア位置誤差は設計ピッチ250μmに対して4μm以内であった。この一方に発光間隔が250μmピッチの4×4のVCSELを接続損失1dB以下、伝搬損失0.3dB/cmで直接接続できた。
【0061】
実施例2
光導波路用凸部(幅:50μm、高さ:50μm、長さ:50mm、250μmピッチ)を8本有し、実施例1と同様なアライメントマーク作製用凸部を有する原盤を用いる他は、実施例1と同様にして導波路フィルムを8枚作製した。また、同じ大きさのアートンフィルム1枚を用意した。
この8枚の導波路フィルムとアートンフィルムを実施例1と同様に積層した。
この積層型高分子光導波路は、積層時にフィルム位置により若干の収縮ばらつきが存在したものの、端面における断面のコア位置誤差は設計ピッチ250μmに対して5μm以内であった。この一方に発光間隔が250μmピッチの8×8のVCSELを接続損失1.5dB以下、伝搬損失0.3dB/cmで直接接続できた。
【0062】
実施例3
実施例2と同様の導波路フィルムを作製した後、積層工程において体積収縮率が2%程度である熱硬化性樹脂によって、8枚の導波路フィルムを積層した。その結果、収縮率が小さいため、端面における断面におけるコア位置誤差は4μm以内になった。この一方に発光間隔が250μmピッチの8×8のVCSELを接続損失1dB以下、伝搬損失0.5dB/cmで直接接続できた。
【0063】
【発明の効果】
本発明の積層型高分子光導波路は、導波路フィルムのクラッド部分をすべてクラッド用硬化性樹脂で構成しておらず、クラッドの一部を光透過性フィルムで占めることになるため、材料費を低コストにすることができる。また、低接続損失でN×N構造のレーザー発光素子等と接続できる利点がある。
また、市販の光透過性フィルムを用いることにより避けられない厚み公差を、クラッド用硬化性樹脂の層厚を調節するだけで容易にカバーすることができるため、クラッドをすべてクラッド用硬化性樹脂で構成する従来の積層型高分子光導波路に比べて製造コストを非常に低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の積層型高分子光導波路(4×4)の一例及びその積層工程を示す概念図である。
【図2】 本発明の積層型高分子光導波路に発光素子を取り付けたものを示す概念図であり、(A)は側面図を(B)は上面図を示す。
【図3】 導波路フィルムを作製する工程を示す概念図である。
【図4】 アライメントマーク作製用凸部を形成した原盤の一例を示す図である。
【符号の説明】
10 原型
12 光導波路コアに対応する凸部
20 鋳型
30 クラッドフィルム
32 光導波路コア
34 クラッド用硬化性樹脂の硬化層
40 積層型高分子光導波路
46 アライメントマーク
60 レーザー発光素子

Claims (8)

  1. 厚み公差を有する光透過性クラッドフィルムの上に光導波路コアを形成した複数の導波路フィルムの間に、硬化後の屈折率が光透過性クラッドフィルムの屈折率と等しいクラッド用硬化性樹脂の層を挟み込み、その後クラッド用硬化性樹脂を硬化させ、複数の導波路フィルムを一体に積層する積層工程を有する積層型高分子光導波路の製造方法であって、前記積層工程において、導波路フィルムのコアから前記導波路フィルムの上に位置する導波路フィルムのコアまでの距離がクラッド用硬化性樹脂の層の硬化後、光透過性クラッドフィルムの厚み公差を打ち消して設計コアピッチとなるように、クラッド用硬化性樹脂の層の厚さを測定しながら積層することを特徴とする、積層方向に設計コアピッチでコアが配置された積層型高分子光導波路の製造方法。
  2. 前記光透過性クラッドフィルムの厚みが20μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の積層型高分子光導波路の製造方法。
  3. 前記クラッド用硬化性樹脂が紫外線硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の積層型高分子光導波路の製造方法。
  4. 前記クラッド用硬化性樹脂が熱硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の積層型高分子光導波路の製造方法。
  5. 前記導波路フィルムが、光透過性クラッドフィルムの上に光導波路コアを有し、その上にクラッド用硬化性樹脂の硬化層を介して他の光透過性クラッドフィルムが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の積層型高分子光導波路の製造方法。
  6. 前記導波路フィルムに挟み込まれたクラッド用硬化性樹脂の硬化を同時に行うことを特徴とする請求項1に記載の積層型高分子光導波路の製造方法。
  7. 前記導波路フィルムを以下の工程で作製することを特徴とする請求項1に記載の積層型高分子光導波路の製造方法。
    1)鋳型形成用硬化性樹脂の硬化樹脂層から形成され、光導波路コア凸部に対応する凹部を有する鋳型を準備する工程
    2)鋳型に光透過性クラッドフィルムを密着させる工程
    3)光透過性クラッドフィルムを密着させた鋳型の凹部にコア形成用硬化性樹脂を充填する工程
    4)充填したコア形成用硬化性樹脂を硬化させる工程
    5)鋳型を光透過性クラッドフィルムから剥離する工程
  8. 前記鋳型が複数のアライメントマーク作製用凹部を有することを特徴とする請求項7に記載の積層型高分子光導波路の製造方法。
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