JP4273975B2 - フレキシブル高分子光導波路の製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、(1)の選択重合法はフイルムの張り合わせに問題があり、(2)や(3)の方法は、フォトリソグラフィー法を使うためコスト高になり、(4)の方法は、得られるコア径の精度に課題がある。また、(5)の方法はコア層とクラッド層との十分な屈折率差がとれないという問題がある。
現在、性能的に優れた実用的な方法は、(2)や(3)の方法だけであるが前記のごときコストの問題がある。そして(1)ないし(5)のいずれの方法も、大面積でフレキシブルなプラスチック基材に高分子導波路を形成するのに適用しうるものではない。
この問題を解決する方法の1つとして、デビット・ハートはキャピラリーとなる溝のパターンが形成されたパターン基板と平面基板とをクランプ用治具で固着し、さらにパターン基板と平面基板との接触部分を樹脂でシールなどした後減圧して、モノマー(ジアリルイソフタレート)溶液をキャピラリーに充填して、高分子光導波路を製造する方法を提案した(以下の特許文献1を参照)。この方法はコア形成用樹脂材料としてポリマー前駆体材料を用いる代わりにモノマーを用いて充填材料を低粘度化し、キャピラリー内に毛細管現象を利用して充填させ、キャピラリー以外にはモノマーが充填されないようにする方法である。
しかし、この方法はコア形成用材料としてモノマーを用いているため、モノマーが重合してポリマーになる際の体積収縮率が大きく、高分子光導波路の透過損失が大きくなるいう問題がある。また、この方法は、パターン基板と平面基板とをクランプで固着する、あるいはこれに加えさらに接触部を樹脂でシールするなど煩雑な方法であり、量産にはむかず、その結果コスト低下を期待することはできない。また、クラッドとして厚さがmmオーダーあるいは1mm以下のフィルムを用いる高分子光導波路の製造に適用することは不可能である。
このように、PDMSを使ったソフトリソグラフィー技術や、毛細管マイクロモールド法は、ナノテクノロジーとして最近、米国を中心に注目を集めている技術である
光配線のための素子として、例えば、光ファイバーをシート状のボードに布線した光ファイバー布線ボードが実用化されている。しかし、光ファイバーは端面の研磨が必要で接続のための光コネクタも高価である。
(3)前記形状部材の厚さが150μm以上であることを特徴とする、前記(1)に記載のフレキシブル高分子光導波路の製造方法。
(4)前記離型層が、フッ素樹脂であることを特徴とする、前記(1)に記載のフレキシブル高分子光導波路の製造方法。
(5)前記フッ素樹脂がアモルファスフッ素樹脂であることを特徴とする、前記(4)に記載のフレキシブル高分子光導波路の製造方法。
(6)前記6)の工程において、コアが形成された前記フレキシブルフィルム基材と表面に離型層を有する形状保持部材との間に、クラッド用硬化性樹脂の層の厚さを規制するためのギャップ形成部材を用いることを特徴とする、前記(1)に記載のフレキシブル高分子光導波路の製造方法。
(8)前記鋳型の表面粗さが100nm以下であることを特徴とする前記(1)に記載のフレキシブル高分子光導波路の製造方法。
(9)前記フレキシブルフィルム基材の屈折率が1.55以下であることを特徴とする、前記(1)に記載のフレキシブル高分子光導波路の製造方法。
(11)前記脂環式オレフィン樹脂フイルムが、主鎖にノルボルネン構造を有しかつ側鎖に極性基をもつ樹脂フィルムであることを特徴とする、前記(10)に記載のフレキシブル高分子光導波路の製造方法。
(12)前記コア形成用硬化性樹脂及びクラッド用硬化性樹脂が紫外線硬化型であることを特徴とする、前記(1)に記載のフレキシブル高分子光導波路の製造方法。
(13)前記コア形成用硬化性樹脂とクラッド用硬化性樹脂との硬化後の屈折率の差が0.01以上あることを特徴とする、前記(1)に記載のフレキシブル高分子光導波路の製造方法。
(14)前記コア形成用硬化性樹脂及びクラッド用硬化性樹脂の硬化収縮率が10%以下であることを特徴とする、前記(1)に記載のフレキシブル高分子光導波路の製造方法。
(15)前記コア形成用硬化性樹脂及びクラッド用硬化性樹脂の粘度が2000mP・s以下であることを特徴とする、前記(1)に記載のフレキシブル高分子光導波路の製造方法。
(16)前記高分子光導波路が、厚さ300μm以下のフィルム状高分子光導波路であることを特徴とする、前記(1)に記載のフレキシブル高分子光導波路の製造方法。
(19)前記高分子光導波路が、厚さ300μm以下のフィルム状高分子光導波路であることを特徴とする、前記(17)に記載のフレキシブル高分子光導波路の製造方法。
また、本発明の高分子光導波路の製造方法は、上部クラッド層の作製工程の際形状保持部材を用いるため、得られる高分子光導波路に変形(反りなど)が生ずることがなく、かつ、前記工程における薄いフィルム状の材料の取り扱いが容易になる。
初めに、高分子光導波路の第1の製造方法について説明する。本発明の高分子光導波路の第1の製造方法は以下の工程により行われる。
1)鋳型形成用硬化性樹脂の硬化層から形成され、かつ、光導波路コア凸部に対応する凹部と、該凹部の一端及び他端にそれぞれ連通する貫通孔が2つ設けられ、前記2つの貫通孔の1つは凹部の一端に連通する液だめのための貫通孔であり、前記2つの貫通孔のもう1つは凹部の他端に連通する減圧吸引のための貫通孔であり、前記液だめのための貫通孔及び減圧吸引のための貫通孔が、鋳型の凹部が形成された面及び前記面に対向する面を貫通する孔である鋳型を準備する工程
2)前記鋳型に該鋳型との密着性が良好なクラッドとなるフレキシブルフィルム基材を密着させる工程
3)前記フレキシブルフィルム基材を密着させた鋳型の凹部の一端にある前記貫通孔に、コア形成用硬化性樹脂を充填し、鋳型の凹部の他端にある前記貫通孔から減圧吸引してコア形成用硬化性樹脂を鋳型の凹部に充填する工程
4)充填したコア形成用硬化性樹脂を硬化させる工程
5)鋳型を前記フレキシブルフィルム基材から剥離する工程
6)コアが形成された前記フレキシブルフィルム基材と表面に離型層を有する形状保持部材との間にクラッド用硬化性樹脂の層を設ける工程
7)クラッド用硬化性樹脂の層を硬化させる工程、及び
8)前記形状保持部材をクラッド用硬化性樹脂の硬化層から剥離する工程
(なお、以下において前記の「クラッドとなるフレキシブルフィルム基材」を「クラッド用フィルム基材」という。)
第2の製造方法においては、上部フィルム基材としてクラッドの機能を果たすことが可能なフィルムを用いることにより、前記6)の工程におけるクラッド用硬化性樹脂の層を薄くすることが可能である。
したがって、本発明の高分子光導波路の製造方法により、損失ロスが少なく高精度であり、かつ各種機器への自由な装填を可能とするフレキシブルな高分子光導波路が低コストで得られる。さらに高分子光導波路の形状等を自由に設定することができる。
1)鋳型形成用硬化性樹脂の硬化層から形成され、かつ、光導波路コア凸部に対応する凹部と、該凹部の一端及び他端にそれぞれ連通する貫通孔が2つ設けられ、前記2つの貫通孔の1つは凹部の一端に連通する液だめのための貫通孔であり、前記2つの貫通孔のもう1つは凹部の他端に連通する減圧吸引のための貫通孔であり、前記液だめのための貫通孔及び減圧吸引のための貫通孔が、鋳型の凹部が形成された面及び前記面に対向する面を貫通する孔である鋳型を準備する工程
鋳型の作製は、光導波路コアに対応する凸部を形成した原盤を用いて行うのが好ましいが、これに限定されるものではない。以下では、原盤を用いる方法について説明する。
<原盤の作製>
光導波路コアに対応する凸部を形成した原盤の作製には、従来の方法、例えばフォトリソグラフィー法を特に制限なく用いることができる。また、本出願人が先に出願した電着法又は光電着法により高分子光導波路を作製する方法(特願2002−10240号)も、原盤を作製するのに適用できる。原盤に形成される光導波路に対応する凸部の大きさは高分子光導波路の用途等に応じて適宜決められる。例えばシングルモード用の光導波路の場合には、10μm角程度のコアを、マルチモード用の光導波路の場合には、50〜100μm角程度のコアが一般的に用いられるが、用途によっては数百μm程度とさらに大きなコア部を持つ光導波路も利用される。
鋳型の作製の一例として、前記のようにして作製した原盤の凸部形成面に、鋳型形成用硬化性樹脂を塗布したり注型するなどの方法により鋳型形成用硬化性樹脂の層を形成した後、必要に応じ乾燥処理をし、硬化処理を行い、その後硬化樹脂層を原盤から剥離して前記凸部に対応する凹部が形成された型をとり、その型に凹部の一端及び他端にそれぞれ連通する貫通孔を形成する方法が挙げられる。前記連通孔は、例えば前記型を所定形状に打ち抜くことにより形成できる。打ち抜いた貫通孔の場合であっても、鋳型とクラッド用フィルム基材との密着性がよく、鋳型凹部以外にクラッド用フィルム基材との間に空隙が形成されないため、凹部以外にコア形成用硬化性樹脂が浸透することはない。
前記型(樹脂硬化層)の厚さは、鋳型としての取り扱い性を考慮して適宜決められるが、一般的に0.1〜50mm程度が適切である。
また、前記原盤にはあらかじめ離型剤塗布などの離型処理を行なって鋳型との剥離を促進することが望ましい。
鋳型形成用硬化性樹脂は、原盤の表面に塗布や注型等することが可能で、また、原盤に形成された個々の光導波路コアに対応する凸部を正確に写し取らなければならないので、ある限度以下の粘度、たとえば、500〜7000mPa・s程度を有することが好ましい。(なお、本発明において用いる「鋳型形成用硬化性樹脂」の中には、硬化後、弾性を有するゴム状体となるものも含まれる。)また、粘度調節のために溶剤を、溶剤の悪影響が出ない程度に加えることができる。
鋳型のシェア(Share)ゴム硬度は、15〜80、好ましくは20〜60であることが、型取り性能や凹部形状の維持、剥離性の点からみて好ましい。
鋳型の表面粗さ(二乗平均粗さ(RMS))は、0.2μm以下、好ましくは0.1μm(100nm)以下にすることが、型取り性能の点からみて好ましい。
また、鋳型は、紫外領域及び/又は可視領域において光透過性であることが好ましい。鋳型が可視領域において光透過性であることが好ましいのは、以下の2)の工程において鋳型をクラッド用フィルム基材に密着させる際、位置決めが容易に行え、また、以下の3)の工程においてコア形成用硬化性樹脂が鋳型凹部に充填される様子が観察でき、充填完了等が容易に確認しうるからである。また、鋳型が紫外領域において光透過性であることが好ましいのは、コア形成用硬化性樹脂として紫外線硬化性樹脂を用いる場合に、鋳型を透して紫外線硬化を行うためであり、鋳型の、紫外領域(250nm〜400nm)における透過率が80%以上であることが好ましい。
本発明の高分子光導波路から作製される光学素子は、種々の階層における光配線に用いられるので、前記クラッド用可撓性フィルム基材の材料は光学素子の用途に応じ、屈折率、光透過性等の光学的特性、機械的強度、耐熱性、鋳型との密着性、フレキシビリティー等を考慮して選択される。前記フィルムとしては脂環式アクリル樹脂フイルム、脂環式オレフィン樹脂フイルム、三酢酸セルロースフイルム、含フッ素樹脂フイルム等が挙げられる。フィルム基材の屈折率は、コアとの屈折率差を確保するため、1.55より小さく、好ましくは1.53より小さくすることが望ましい。また、水を吸収すると屈折率が変化するだけでなく、更に長波長域の光伝搬損失が増加する原因になるため、低吸水性の樹脂フィルムを用いることが好ましい。
また、脂環式オレフィン樹脂フイルムとしては主鎖にノルボルネン構造を有するもの、及び主鎖にノルボルネン構造を有しかつ側鎖にアルキルオキシカルボニル基(アルキル基としては炭素数1から6のものやシクロアルキル基)等の極性基をもつものが挙げられる。中でも前記のごとき主鎖にノルボルネン構造を有しかつ側鎖にアルキルオキシカルボニル基等の極性基をもつ脂環式オレフィン樹脂は、低屈折率(屈折率が1.50近辺であり、コア・クラッドの屈折率の差を確保できる)及び高い光透過性等の優れた光学的特性を有し、鋳型との密着性に優れ、さらに耐熱性に優れているので特に本発明の光導波路シートの作製に適している。
また、前記フィルム基材の厚さはフレキシビリティーと剛性や取り扱いの容易さ等を考慮して適切に選ばれ、一般的には0.1mm〜0.5mm程度が好ましい。
この工程においては、コア形成用硬化性樹脂を、該樹脂の進入部側に設けた貫通孔に充填し、該樹脂の排出部側に設けた貫通孔から減圧吸引して、鋳型とクラッド用フィルム基材との間に形成された空隙(鋳型の凹部)に充填する。減圧吸引することにより、鋳型とクラッド用フイルム基材との密着性が向上し、気泡の混入を避けることができる。減圧吸引は、例えば、吸引管を排出部側に設けた貫通孔に挿入し、吸引管をポンプにつなげて行われる。
コア形成用硬化性樹脂としては放射線硬化性、電子線硬化性、熱硬化性等の樹脂を用いることができ、中でも紫外線硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂が好ましく用いられる。
前記コア形成用の紫外線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂としては、紫外線硬化性又は熱硬化性のモノマー、オリゴマー若しくはモノマーとオリゴマーの混合物が好ましく用いられる。
また、前記紫外線硬化性樹脂としてエポキシ系、ポリイミド系、アクリル系紫外線硬化性樹脂が好ましく用いられる。
このほかに、原盤に形成された光導波路コアに対応する凸部が有する元の形状を高精度に再現するため、前記硬化性樹脂の硬化前後の体積変化が小さいことが必要である。例えば、体積が減少すると導波損失の原因になる。したがって、コア形成用硬化性樹脂は、体積変化ができるだけ小さいものが望ましく、10%以下、好ましくは6%以下であるのが望ましい。溶剤を用いて低粘度化することは、硬化前後の体積変化が大きいのでできれば避ける方が好ましい。
この工程では充填したコア形成用硬化性樹脂を硬化させる。紫外線硬化性樹脂を硬化させるには、紫外線ランプ、紫外線LED、UV照射装置等が用いられ、熱硬化性樹脂を硬化させるには、オーブン中での加熱等が用いられる。
コアが形成されたフィルム基材の上にクラッド用硬化性樹脂を用いてクラッド層(上部クラッド層)を形成するが、このときクラッド用硬化性樹脂の層の上に表面に離型層を有する形状保持部材を、離型層がクラッド用硬化性樹脂の層に接するように置き、クラッド用基材(下部クラッド層)と形状保持部材によりクラッド用硬化性樹脂の層を挟みながら硬化させると、出来上がるフィルム状の高分子光導波路の変形がない。クラッド用硬化性樹脂の層をクラッド用フィルム基材と形状保持部材との間に設けるには、クラッド用フィルム基材のコア形成面にスピンコート法等により塗布して設けその上に形状保持部材を重ねる方法や、所定の間隙を設けて対向設置したクラッド用フィルム基材と形状保持部材との間に、毛細管現象を利用して進入させる方法などが使用される。
クラッド用硬化性樹脂の硬化後の体積変化(収縮)は10%以下であることが好ましくさらには6%以下が好ましい。体積変化を小さくするために、該樹脂と相溶性を有し、また該樹脂の屈折率、弾性率、透過特性に悪影響を及ぼさないポリマー(メタクリル酸系、エポキシ系)を該樹脂に添加することができる。
また、前記クラッド用基材とクラッド層との屈折率差は小さい方が好ましく、その差は0.05以内、好ましくは0.001以内、更に好ましくは差がないことが光の閉じ込めの点からみて好ましい。
またその形状・大きさは、クラッド用硬化性樹脂の層とほぼ同じ形状・大きさのものあるいはこれより一回り大きいものが用いられる。更に、形状保持部材を通してその下にある材料を観察できるように光透過性の形状保持部材を用いることが好ましく、さらに形状保持部材を通して紫外線照射によりクラッド用硬化性樹脂を硬化させる場合には、形状保持部材は紫外線透過性であることが必要である。
離型層に用いる離型材としてはアモルファスフッ素樹脂等のフッ素化樹脂が好ましく用いられる。例えば、旭硝子(株)のサイトップなどが均一に塗布できて好ましい。
クラッド用硬化性樹脂の種類に応じ適宜の手段によりこの層を硬化させる。
この工程では形状保持部材をクラッド用硬化性樹脂の硬化層から剥離するが、形状保持部材の表面には離型層が設けられているので、硬化層から形状保持部材を容易に剥離することができる。
第2の製造方法における6)の工程においては、クラッド用硬化性樹脂の上に上部フィルム基材を置くもので、このようにすることにより、更に変形のないフィルム状の高分子光導波路が得られる。上部フィルム基材としては、クラッドの機能を有するものも、有しないものも使用できる。クラッドの機能を有するものとしては前記のクラッド用フィルム基材と同様なものが用いられる。前記上部フィルム基材がクラッドの機能を有しないものとしては、例えば、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミドなど屈折率が高いフイルムも使うことが可能である。
また、前記クラッド用硬化性樹脂の層の厚さは、ギャップ形成部材を用いることにより正確に制御することが好ましい。ギャップ形成部材は、上部フィルム基材と固定用治具の間、形状保持部材を用いる場合は形状保持部材と固定用治具との間など、適宜の場所に挟むことができる。
最初に、工程1)から工程5)までを図1を用いて説明する。
図1(A)は原盤10を示し、12は光導波路コアに対応する凸部である。この原盤10の凸部形成面に鋳型形成用硬化性樹脂を塗布又は注型した後硬化させる(図1(B)参照)。図1(B)中、20aは硬化樹脂層である。その後硬化樹脂層20aを剥離すると、凹部が形成された硬化樹脂層20aが得られる(図示せず)。凹部22が形成された硬化樹脂層20aに、凹部22に連通する貫通孔26及び28を凹部両端に打ち抜き等により形成して鋳型20(図1(C)参照)を得る。
次に、図1(D)が示すように、鋳型にクラッド用フィルム基材を密着させ、その後鋳型に形成されている貫通孔26にコア形成用硬化性樹脂を入れ、他端の貫通孔28から減圧吸引して鋳型凹部22にコア形成用硬化性樹脂を充填する。その後該樹脂を硬化させ鋳型を剥離すると、図1(E)に示されるように、クラッド用フィルム基材30の上に光導波路コア32が形成される。最後に貫通孔26及び28内で硬化した樹脂部分をダイサー等で切り落とす。
この状態でクラッド用硬化性樹脂を硬化させ、上部クラッド層を形成し、その後形状保持部材を上部クラッド層の表面から剥離する。
この状態でクラッド用硬化性樹脂を硬化させ、その後形状保持部材60をフィルム基材50から剥離する。
実施例1
Si基板に厚膜レジスト(マイクロケミカル(株)製、SU−8)をスピンコート法で塗布した後、80℃でプリベークし、フォトマスクを通して露光し、現像して、8本の、断面が正方形の凸部(幅:50μm、高さ:50μm、長さ:80mm)を形成した。凸部と凸部の間隔は250μmとした。次に、これを120℃でポストベークして、高分子光導波路作製用原盤を作製した。
次に、この原盤に離型剤を塗布した後、熱硬化性液状ジメチルシロキサンゴム(ダウ・コウニングアジア社製:SYLGARD184、粘度5000mPa.s)及びその硬化剤を混合したものを流し込み、120℃で30分間加熱して硬化させた後、剥離して、断面が矩形の前記凸部に対応する凹部を持った型(型の厚さ:5mm)を作製した。
さらに、平面形状が円形で鋳型厚さ方向の断面形状がテーパー状の貫通孔を、凹部の一端及び他端において、凹部と連通するように、打ち抜きにより形成して鋳型を作製した。鋳型のコア形成用硬化性樹脂が進入する側の貫通孔は、鋳型がクラッド用フィルム基材に接する面においては直径を4mm、鋳型の反対側の面においては直径を3.5mmとした。
鋳型は表面エネルギーが22dyn/cm、シェアゴム硬度が60、表面粗さが10nm以下、紫外線透過率80%以上であり、また、透明で下のものがよく観察できた。
図2に示すように、固定用治具の表面に厚さ260μmの金属製スぺーサー(ギャップ形成部材)を置き、スぺーサーの上に、サイトップ(旭硝子(株)製フッ素樹脂)を0.2μm被覆したガラス板(形状保持部材)を載せた。ガラス板を通して50mW/cm2のUV光を10分間照射して硬化させた。その後、サイトップ付きのガラス板を離型すると、全体の厚さが260μmのフレキシブルなフィルム状の高分子光導波路が得られた。
次に、Si用のブレードを備えたダイシングソーを使って、この高分子光導波路フィルムを、コアの長手方向に対し直角に切断し、鏡面を持ったコアを露出させ、光の入出力部とした。
得られた高分子導波路の伝搬損失は0.2dB/cmであった。
実施例1において用いたクラッド用フィルム基材(アートンフイルム)を、厚さ100μmのアートンフイルムに変更し、かつ、厚さが180μmの金属製スペーサーを用いる他は同様にして、全体の厚さが180μmのフィルム状の高分子光導波路を作製した。
得られた高分子導波路の伝搬損失は0.2dB/cmであった。
実施例1において、クラッド用フィルム基材として厚さ100μmのアートンフィルムを用いる他は、実施例1と同様にしてアートンフィルム上にコアを形成した。
次に、コアを形成したアートンフイルム上に、硬化後の屈折率がアートンフイルムと同じ1.51であるクラッド用紫外線硬化性樹脂をディスペンサーで塗布した。(塗布厚は、以下のように紫外線硬化性樹脂の表面にアートンフィルムを載せ、更にスぺーサーの上にガラス板を置いた場合、アートンフィルムとガラス板の間に間隙が生じないような厚さとした。)
図3に示すように、前記クラッド用紫外線硬化性樹脂の塗布面に膜厚100μmのアートンフィルムを載せた。次に、固定用治具の表面に厚さ300μmの金属製スぺーサー(ギャップ形成部材)を置き、スぺーサーの上に、サイトップ(旭硝子(株)製フッ素樹脂)を0.2μm被覆したガラス板(形状保持部材)を載せた。ガラス板を通して50mW/cm2のUV光を10分間照射して硬化させた。全体の厚さが300μmのフレキシブルなフィルム状の高分子光導波路が得られた。
次に、Si用のブレードを備えたダイシングソーを使って、この高分子光導波路フィルムを、コアの長手方向に対し直角に切断し、鏡面を持ったコアを露出させ、光の入出力部とした。
得られた高分子導波路の伝搬損失は0.1dB/cmであった。
12 光導波路コアに対応する凸部
20 鋳型
30 クラッド用フィルム基材
32 コア
40 クラッド用硬化性樹脂の層
50 上部フィルム基材
60 形状保持部材
70 ギャップ形成部材
80 固定用治具
100 高分子光導波路
Claims (19)
- 1)鋳型形成用硬化性樹脂の硬化層から形成され、かつ、光導波路コア凸部に対応する凹部と、該凹部の一端及び他端にそれぞれ連通する貫通孔が2つ設けられ、前記2つの貫通孔の1つは凹部の一端に連通する液だめのための貫通孔であり、前記2つの貫通孔のもう1つは凹部の他端に連通する減圧吸引のための貫通孔であり、前記液だめのための貫通孔及び減圧吸引のための貫通孔が、鋳型の凹部が形成された面及び前記面に対向する面を貫通する孔である鋳型を準備する工程、2)前記鋳型に該鋳型との密着性が良好な、クラッドとなるフレキシブルフィルム基材を密着させる工程、3)前記フレキシブルフィルム基材を密着させた鋳型の凹部の一端にある前記貫通孔に、コア形成用硬化性樹脂を充填し、鋳型の凹部の他端にある前記貫通孔から減圧吸引してコア形成用硬化性樹脂を前記鋳型の凹部に充填する工程、4)充填したコア形成用硬化性樹脂を硬化させる工程、5)鋳型を前記フレキシブルフィルム基材から剥離する工程、6)コアが形成された前記フレキシブルフィルム基材と表面に離型層を有する形状保持部材との間にクラッド用硬化性樹脂の層を設ける工程、7)クラッド用硬化性樹脂の層を硬化させる工程、及び8)前記形状保持部材をクラッド用硬化性樹脂の硬化層から剥離する工程、を有するフレキシブル高分子光導波路の製造方法。
- 前記形状保持部材が、ガラス板又は光透過性プラスチックフィルムからなることを特徴とする、請求項1に記載のフレキシブル高分子光導波路の製造方法。
- 前記形状保持部材の厚さが150μm以上であることを特徴とする、請求項1に記載のフレキシブル高分子光導波路の製造方法。
- 前記離型層が、フッ素樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載のフレキシブル高分子光導波路の製造方法。
- 前記フッ素樹脂がアモルファスフッ素樹脂であることを特徴とする、請求項4に記載のフレキシブル高分子光導波路の製造方法。
- 前記6)の工程において、コアが形成された前記フレキシブルフィルム基材と表面に離型層を有する形状保持部材との間に、クラッド用硬化性樹脂の層の厚さを規制するためのギャップ形成部材を用いることを特徴とする、請求項1に記載のフレキシブル高分子光導波路の製造方法。
- 前記鋳型形成用硬化性樹脂が、硬化性ポリジメチルシロキサンゴムであることを特徴とする、請求項1に記載のフレキシブル高分子光導波路の製造方法。
- 前記鋳型の表面粗さが100nm以下であることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブル高分子光導波路の製造方法。
- 前記フレキシブルフィルム基材の屈折率が1.55以下であることを特徴とする、請求項1に記載のフレキシブル高分子光導波路の製造方法。
- 前記フレキシブルフィルム基材が脂環式オレフィン樹脂フイルムであることを特徴とする、請求項1に記載のフレキシブル高分子光導波路の製造方法。
- 前記脂環式オレフィン樹脂フイルムが、主鎖にノルボルネン構造を有しかつ側鎖に極性基をもつ樹脂フィルムであることを特徴とする、請求項10に記載のフレキシブル高分子光導波路の製造方法。
- 前記コア形成用硬化性樹脂及びクラッド用硬化性樹脂が紫外線硬化型であることを特徴とする、請求項1に記載のフレキシブル高分子光導波路の製造方法。
- 前記コア形成用硬化性樹脂とクラッド用硬化性樹脂との硬化後の屈折率の差が0.01以上あることを特徴とする、請求項1に記載のフレキシブル高分子光導波路の製造方法。
- 前記コア形成用硬化性樹脂及びクラッド用硬化性樹脂の硬化収縮率が10%以下であることを特徴とする、請求項1に記載のフレキシブル高分子光導波路の製造方法。
- 前記コア形成用硬化性樹脂及びクラッド用硬化性樹脂の粘度が2000mP・s以下であることを特徴とする、請求項1に記載のフレキシブル高分子光導波路の製造方法。
- 前記高分子光導波路が、厚さ300μm以下のフィルム状高分子光導波路であることを特徴とする、請求項1に記載のフレキシブル高分子光導波路の製造方法。
- 1)鋳型形成用硬化性樹脂の硬化層から形成され、かつ、光導波路コア凸部に対応する凹部と、該凹部の一端及び他端にそれぞれ連通する貫通孔が2つ設けられ、前記2つの貫通孔の1つは凹部の一端に連通する液だめのための貫通孔であり、前記2つの貫通孔のもう1つは凹部の他端に連通する減圧吸引のための貫通孔であり、前記液だめのための貫通孔及び減圧吸引のための貫通孔が、鋳型の凹部が形成された面及び前記面に対向する面を貫通する孔である鋳型を準備する工程、2)前記鋳型に該鋳型との密着性が良好な、クラッドとなるフレキシブルフィルム基材を密着させる工程、3)前記フレキシブルフィルム基材を密着させた鋳型の凹部の一端にある前記貫通孔に、コア形成用硬化性樹脂を充填し、鋳型の凹部の他端にある前記貫通孔から減圧吸引してコア形成用硬化性樹脂を前記鋳型の凹部に充填する工程、4)充填したコア形成用硬化性樹脂を硬化させる工程、5)鋳型を前記フレキシブルフィルム基材から剥離する工程、6)コアが形成された前記フレキシブルフィルム基材と形状保持部材との間にクラッド用硬化性樹脂の層及び上部フィルム基材を設ける工程、7)クラッド用硬化性樹脂の層を硬化させる工程、及び8)前記形状保持部材を上部フィルム基材から剥離する工程、を有するフレキシブル高分子光導波路の製造方法。
- 前記形状保持部材の表面に離型層が設けられていることを特徴とする請求項17に記載のフレキシブル高分子光導波路の製造方法。
- 前記高分子光導波路が、厚さ300μm以下のフィルム状高分子光導波路であることを特徴とする、請求項17に記載のフレキシブル高分子光導波路の製造方法。
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