JP4139986B2 - 高分子電解質膜及びその製造方法並びに燃料電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高分子電解質に関し、詳しくは高分子固体電解質型燃料電池(PEFC)等の電解質として適用した場合に雰囲気制御の容易な燃料電池とすることができる高分子電解質膜及びその製造方法並びにその高分子電解質膜を用いた燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境問題、資源問題等からよりクリーンで効率の高いエネルギー源が求められており、燃料電池が期待されている。燃料電池は、電気化学反応により燃料の有する化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する装置であり、理論的に高いエネルギー効率が実現可能である。
【0003】
このような燃料電池の中でも、高分子固体電解質型燃料電池(PEFC)は、より低い温度条件下で運転が可能であって、安全性や小型化の観点からも多くの利点を有し、種々の用途が検討されている。このPEFCは、電解質として高分子電解質からなる高分子電解質膜を備える。高分子電解質膜には、高いイオン伝導度が要求されている。従来の高分子電解質膜はペルフルオロカーボンを主体とする高分子に対して、イオン伝導性を実現するイオン交換基としてのスルホン酸基を導入したペルフルオロスルホン酸系樹脂(例えば、ナフィオン、デュポン社製)が用いられてきた。
【0004】
ペルフルオロスルホン酸系樹脂からなる高分子電解質膜は膜中に取り込んだ水を介してプロトン伝導性が発現している。したがって、膜中の含水率が低下するとプロトン伝導性が低下する。従来の燃料電池における高分子電解質膜中の含水率の制御方法としては、発電の際に電極に供給するアノード及びカソードガスを加湿することで行っている。ガスを加湿するにはガス流路中に加湿器を導入する必要がある。
【0005】
また、特開平7−90111号公報に開示されたように、高分子電解質膜自身に水を生成する能力を付与することで適正なプロトン伝導性を発現できる高分子固体電解質組成物を高分子電解質膜に採用するものがあるが、高分子電解質膜内で生成した水の量によっては、膜中に足りない水を付与又は膜中から余分な水を除去する目的で、電極に供給するアノード及びカソードガス等を介して水分量を制御する必要があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、高分子電解質膜として膜中の含水率が低くてもプロトン伝導性が高い素材を得ることができれば加湿器等による高分子電解質膜の含水率の制御が不要となり、燃料電池の低コスト化を図ることができる。
【0007】
そこで、本発明では低含水率でも充分なプロトン伝導性を発現できる高分子電解質膜及びその高分子電解質膜を製造する方法を提供することを解決すべき課題とする。また、本発明ではそのような高分子電解質膜を採用した燃料電池を提供することを解決すべき課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
上記課題を解決する目的で本発明者らは鋭意研究を行った結果、高分子電解質膜中の含水率が低くてもプロトン伝導性を発現するために、高分子電解質膜を構成する高分子の分子内に超強酸基を導入することに想到した。
【0009】
超強酸基はプロトン解離度が極めて高いので、水を介することなくプロトン伝導性を発現できると考えられる。なお、従来の高分子電解質膜はスルホン基などのイオン交換基と親水性のエーテル結合とにより保水性が保たれ、この膜中の水を介して、イオン(プロトン)伝導が起こっていると考えられる。
【0010】
分子内に超強酸基を導入するにあたり、本発明者らはトリフルオロメタンスルホニル基(−SO2CF3;トリフリル,Tf)に着目した。トリフルオロメタンスルホニル基は最も強い電子求引性基の一つとして知られており、そのα位のプロトン酸性を高める働きがある(J.Am.Chem.Soc.96.2275,1974,Synthesis,691,1997.J.Fluorine Chem.66.301,1994)。例えば、ビス(トリフリル)メタン(CH2Tf2:pK3(H2O)=−1)(J.Am.Chem.Soc.106,1510,1984)やフェニルビス(トリフリル)メタン(PhCHTf2:pK6(MeCN)=7.83)(J.Org.Chem.63,7868,1998)は酸化力のない強酸である。Koppelらによって見積もられた固有酸性度△Gacid(気体状態)は次のようになっている(J.Am.Chem.Soc.116,3047,1994):MeSO3H(315.0)<CH2Tf2(310.5)<PhCHTf2(310.3)<TfOH(299.5)<NHTf2(291.8)<CHTf3(289.0)。
【0011】
本発明者らは、トリフリル源としての求電子反応剤にトリフルオロメタンスルフィン酸ナトリウム(TfNa)とトリフルオロメタンスルホン酸無水物(Tf2O)を用いることによりぺンタフルオロフェニルビス(トリフリル)メタンを合成し、このぺンタフルオロフェニルビス(トリフリル)メタンとLiOH・H2Oとをジエチルエーテル中で反応させることによりリチウムぺンタフルオロフェニルビス(トリフリル)メチドを合成し、このリチウムぺンタフルオロフェニルビス(トリフリル)メチドと4−プロモポリスチレン樹脂を、ブチルリチウムの存在下、ベンゼンとTHFの混合溶媒中で反応させ、ポリスチレン樹脂のフェニルアニオンをぺンタフルオロフェニルビス(トリフリル)メタンのパラ位に特異的に求核置換反応させることにより得られるポリスチレンにぺンタフルオロフェニルビス(トリフリル)メタンを結合した材料が、燃料電池における優れた高分子電解質膜となることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の高分子電解質膜は、一般式〔1〕で表されるアリールビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタンが有機高分子樹脂に化学的に結合された高分子結合型アリールビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタンからなることを特徴とする(請求項1)。
【0013】
【化3】
【0014】
(式〔1〕中、R1は求電子性置換基で置換されたアリール基、Rf1及びRf2は互いに独立してパーフルオロアルキル基を示す。)
つまり、本発明の高分子電解質膜は、超強酸基を有することで、プロトンの解離度が高く、水を介さなくても高いプロトン伝導性を発現できる。その結果、燃料電池に適用した場合にガス中に加湿を積極的に行う必要がなくなり、ガス中への加湿器を省略乃至は簡略化することができるので、燃料電池の低コスト化に寄与できる。
【0015】
そして前記有機高分子樹脂は、塩基性反応剤を作用させることでアニオンを発生する樹脂ポリマーであることが好ましい(請求項2)。アニオンを発生できる有機高分子樹脂を採用することで、アリールビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタンを容易に反応させ化学的に結合することが可能となる。具体的に前記樹脂ポリマーはとして、分子内に求電子性置換基で置換されたアリール基を有することが好ましく(請求項3)、特に求電子性置換基で置換されたポリスチレン樹脂であることが好ましい(請求項4)。
【0016】
また、一般式〔1〕で表されるアリールビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタンにおけるR1は求電子性置換基で置換されたアリール基とすることで、有機高分子樹脂のアニオンと容易に反応させることができ、有機高分子樹脂に容易に化学的に結合できる。
【0017】
そして、前記一般式〔1〕におけるRf1及びRf2は共にトリフルオロメチル基であることで、プロトン伝導性がより向上できるので好ましい(請求項6)。
【0018】
また、前記一般式〔1〕におけるR1は、フェニル基、ナフチル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、4−(トリフルオロメチル)フェニル基、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基及びぺンタフルオロフェニル基からなる群から選択されることが好ましい(請求項7)。
【0019】
そしてまた、前記一般式〔1〕で表されるアリールビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタンは、フェニルビス(トリフリル)メタン、2−ナフチルビス(トリフリル)メタン、1−ナフチルビス(トリフリル)メタン、2,4,6−トリメチルフェニルビス(トリフリル)メタン、4−(トリフルオロメチル)フェニルビス(トリフリル)メタン、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルビス(トリフリル)メタン及びぺンタフルオロフェニルビス(トリフリル)メタンからなる群から選択されることが好ましい(請求項8)。
【0020】
そして、前記課題を解決する本発明の高分子電解質膜の製造方法は、前述したいずれかの本発明の高分子電解質膜の製造方法であって、塩基性反応剤を作用させることでアニオンが発生する樹脂ポリマーと、一般式〔2〕で表されるアリールビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタンの金属塩とを反応させ高分子材料を合成する工程と、該高分子材料を製膜する工程と、を有することを特徴とする(請求項8)。
【0021】
【化4】
【0022】
(式〔2〕中、R2は求電子性置換基を有するアリール基、Rf1及びRf2は互いに独立してパーフルオロアルキル基を示す。)
そして前記樹脂ポリマーは、ハロアルキル樹脂ポリマーであることが好ましく(請求項10)、そのハロアルキル樹脂ポリマーは、ハロゲノポリスチレン樹脂であることがより好ましい(請求項11)。また、そのハロゲノポリスチレン樹脂は、4−ブロモポリスチレン樹脂であることが更に好ましい(請求項12)。
【0023】
また、前記一般式〔2〕で表されるアリールビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタンの金属塩は、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、遷移金属元素、ホウ素、ケイ素、アルミニウム、スズ、亜鉛及びビスマスからなる群から選択されるいずれかの金属塩であることが好ましい(請求項13)。また、その金属塩としては、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド、銅、銀、チタン、ジルコニウム又はハフニウムから選ばれるいずれかの金属元素の塩であることがより好ましい(請求項14)。更に前記一般式〔2〕で表されるアリールビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタンの金属塩は、ぺンタフルオロフェニル−ビス(トリフルオロメチルスルホン)メチルのリチウム塩であることが好ましい(請求項15)。
【0024】
そしてまた、前記塩基性反応剤はブチルリチウムであることが好ましい(請求項16)。また、前記高分子を合成する工程における溶媒として、ベンゼン及びテトラヒドロフランの混合物を用いることが好ましい(請求項17)。
【0025】
更に前記課題を解決する本発明の燃料電池は前述の高分子電解質膜と該高分子電解質膜の両面を狭持する反応極と該反応極を狭持するセパレータとからなる燃料電池セルを複数積層したことを特徴とする(請求項18)。
【0026】
前述のように膜中の含水率が低くても高いプロトン伝導性を示す高分子電解質膜を採用することで加湿器を省略乃至は簡略化することができ、燃料電池として低コスト化が達成できる。
【0027】
【発明の実施の形態】
(高分子電解質膜)
本発明の高分子電解質膜は高分子結合型アリールビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタンを製膜して構成される。この高分子結合型アリールビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタンを製膜する方法は後述する高分子電解質膜の製造方法で併せて説明するのでここでの説明は省略する。
【0028】
高分子結合型アリールビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタンは、一般式〔1〕(式〔1〕中、R1は求電子性置換基で置換されたアリール基、Rf1及びRf2は互いに独立してパーフルオロアルキル基を示す。)で表されるアリールビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタンを有機高分子樹脂に化学的に結合したものである。
【0029】
アリールビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタンを有機高分子樹脂に化学的に結合する方法としては特に制限されない。例えば、塩基性反応剤によりアニオンを発生することができる樹脂ポリマーに化学的に結合されたものが好ましい。具体的には、アリールビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタンのアリール基の求電子性置換基と有機高分子樹脂のアニオンとの反応により化学的に結合されたものが例示できる。
【0030】
塩基性反応剤によりアニオンを発生することができる樹脂ポリマーとしては、分子内に求電子性置換基で置換されたアリール基を有する樹脂ポリマー等が例示できる。具体的には、求電子性置換基で置換された、ポリスチレン樹脂、メルフィールド樹脂等が例示できる。これらアリールビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタンを化学的に結合する担体としてのポリスチレン樹脂等の高分子ポリマーは、ホモポリマーであってもよく、コポリマーであってもよい。塩基性反応剤については後述する高分子電解質膜の製造方法において説明するのでここでの説明は省略する。
【0031】
更に有機高分子樹脂としては化学構造中にフッ素元素を含有することが燃料電池内の過酷な雰囲気に対する耐性向上の観点から好ましい。例えば、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)等のフッ素樹脂に前述の塩基性反応剤によりアニオンを発生することができる樹脂ポリマーをグラフト化した有機高分子樹脂が例示できる。
【0032】
また、一般式〔1〕で表されるアリールビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタンがペンタフルオロフェニルビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタンの場合は、そのパラ位において有機高分子樹脂に化学的に結合されたものが簡便に合成することができるので有利である。そしてまた、一般式〔1〕で表されるアリールビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタンがポリスチレン樹脂に化学的に結合された高分子結合型アリールビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタンとして、一般式〔3〕で表されるポリスチレン結合型アリールビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタンが例示できる。
【0033】
【化5】
【0034】
(式〔3〕中、R3は置換又は非置換のアリレン基、Rf1およびRf2が互いに独立してパーフルオロアルキル基を示す。)
上記一般式〔1〕及び一般式〔3〕におけるRf1及びRf2としては、互いに同一または相異なっていてもよいパーフルオロアルキル基、好ましくはトリフルオロメチル基等のC1〜8のトリフルオロメチル基を示す。これらを含む−SO2Rf1や−SO2Rf2としては、トリフルオロメチルスルホニル基、パーフルオロエチルスルホニル基、パーフルオロプロピルスルホニル基、パーフルオロイソプロピルスルホニル基、パーフルオロブチルスルホニル基、パーフルオロイソブチルスルホニル基、パーフルオロペンチルスルホニル基、パーフルオロイソペンチルスルホニル基、パーフルオロネオペンチルスルホニル基等が例示できる。
【0035】
上記一般式〔1〕におけるR1が表す求電子性置換基で置換されたアリール基としては、それぞれ求電子性置換基で置換されたフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等が例示できる。また、上記式〔3〕におけるR3が表す求電子性置換基で置換されたアリール基としては、それぞれ求電子性置換基で置換されたフェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基等のアリーレン基が例示できる。
【0036】
前記R1及びR3におけるアリール基に対する求電子性置換基としては、メチル基等のC1〜4の低級アルキル基、トリフルオロメチル基等のC1〜4のハロゲン化低級アルキル基、フッ素等のハロゲン原子、アルコキシ基、スルホニル基、アミノ基などが例示できる。
【0037】
R1としては、2,4,6−トリメチルフェニル基、4−(トリフルオロメチル)フェニル基、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、ぺンタフルオロフェニル基、p−トリル基、m−トリル基、メシチル基、キシリル基、ビフェニル基、p−クロロフェニル基、o−クロロフェニル基等を具体的に例示できる。R3としては、フェニレン基、ナフチレン基、2,4,6−トリメチルフェニレン基、4−(トリフルオロメチル)フェニレン基、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニレン基、ぺンタフルオロフェニレン基、p−トリレン基、m−トリレン基、メシチレン基、キシリレン基、ビフェニレン基、p−クロロフェニレン基、o−クロロフェニレン基等を具体的に例示できる。
【0038】
本発明の高分子結合型アリールビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタンにおけるアリールビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタンとしては、フェニルビス(トリフリル)メタン、2−ナフチルビス(トリフリル)メタン、1−ナフチルビス(トリフリル)メタン、2,4,6−トリメチルフェニルビス(トリフリル)メタン、4−(トリフルオロメチル)フェニルビス(トリフリル)メタン、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルビス(トリフリル)メタン、ペンタフルオロフェニルビス(トリフリル)メタン等が具体的に例示できる。
【0039】
(高分子電解質膜の製造方法)
本発明の高分子電解質膜の製造方法は高分子材料を合成する工程とその高分子材料を製膜する工程とを有する。高分子材料を製膜する工程としては特に限定されず適正な方法が選択できる。例えば、高分子材料の溶液を平板上にキャストするキャスト法、ダイコータ、コンマコータ等により平板上にその溶液を塗布する方法、溶融した高分子材料を延伸する方法等の一般的な方法が採用できる。
【0040】
高分子材料を合成する工程は、一般式〔2〕(式〔2〕中、R2は求電子性置換基を有するアリール基、Rf1及びRf2は互いに独立してパーフルオロアルキル基を示す。)で表されるアリールビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタンの金属塩と、塩基性反応剤を作用させることでアニオンが発生する樹脂ポリマーとを反応させる工程である。
【0041】
本工程における合成反応では、一般式〔2〕で表されるアリールビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタンの金属塩の求電子性置換基が、樹脂ポリマー分子中の生成したアニオンと反応することにより、高分子結合型アリールビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタンが製造される。
【0042】
一般式〔2〕におけるR2が有する求電子性置換基としては、−+NH3、−CF3、−CCl3、−NO2、−CN、−CHO、−COCH3、−COOC2H5、−COOH、−SO2CH3、−SO3H等が例示でき、これらの置換基がアリール基に結合してR2となる。また、Rf1及びRf2は、一般式〔1〕と同様に互いに独立してパーフルオロアルキル基を示す。
【0043】
一般式〔2〕で表されるアリールビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタンの金属塩が有する金属元素としては、アルカリ金属元素(リチウム、ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属元素(カルシウム、マグネシウム)、遷移金属元素(スカンジウム、イットリウム、ランタノイド、銅、銀、チタン、ジルコニウム、ハフニウム等)、ホウ素、ケイ素、アルミニウム、スズ、亜鉛、ビスマス等が好ましい例として挙げられる。
【0044】
一般式〔2〕で表されるアリールビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタンの金属塩としては、ぺンタフルオロフェニルビス(トリフルオロメチルスルホニル)メタンのリチウム塩、すなわち、リチウムぺンタフルオロフェニルビス(トリフルオロメチルスルホニル)メチドが特に好ましい例として挙げられる。
【0045】
このようなアリールビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタンの金属塩を製造するには、上記一般式〔2〕で表されるアリールビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタンと、▲1▼金属の水酸化物との中和反応、▲2▼遷移金属の塩又は酸化物との加熱還流下での反応、又は▲3▼炭酸銀との遮光下での反応が例示できる。また、その他の製造方法としては、一般式〔2〕で表されるアリールビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタンの銀塩等の金属塩と、金属種の異なる金属のハロゲン化物とを反応させることで、金属種を交換する反応を例示できる。
【0046】
上記▲1▼の中和反応における金属の水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物や、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物を例示できる。これらの金属の水酸化物をジエチルエーテル等の溶媒に溶解した溶液を用いて、10分〜10数時間反応させる方法により目的の金属塩が得られる。
【0047】
上記▲2▼の加熱還流下での反応における遷移金属の塩又は酸化物としてはランタンやセリウムの塩化物等のランタノイド金属塩やSc2O3等のスカンジウム酸化物が例示でき、水溶液中の加熱還流を10分〜10数時間行う方法が例示できる。
【0048】
樹脂ポリマーとしては、ハロアルキル樹脂ポリマーが好ましい。ハロアルキル樹脂ポリマーとしては、分子内に置換又は非置換のアリール基を有する樹脂ポリマーが例示できる。中でも4−プロモポリスチレン樹脂等のハロゲノポリスチレン樹脂を好適に例示することができる。特に、4−プロモポリスチレン樹脂とペンタフルオロフェニルビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタンとを用いた場合、一段階の反応で一般式〔2〕で表されるアリールビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタンを化学的に結合させることができる。これらの樹脂ポリマーはホモポリマーであっても、コポリマーであってもよい。コポリマーとしては、例えば、スチレンとジビニルベンジルとの共重合体の架橋構造のものを好適に例示することができる。
【0049】
更に有機高分子樹脂として化学構造中にフッ素元素を含有するフッ素含有有機高分子樹脂を用いる場合には、有機高分子樹脂を合成する際にフッ素含有モノマーを用いる方法の他、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)等のフッ素樹脂に前述の塩基性反応剤によりアニオンを発生することができる樹脂ポリマーをグラフト化することでもフッ素含有有機高分子樹脂が製造できる。フッ素樹脂への樹脂ポリマーのグラフト化法については特に限定しないが、フッ素樹脂への高エネルギー線照射により生成したラジカルを基点としたモノマーの重合により合成できる。高エネルギー線照射によりグラフト化する場合には高エネルギー線により容易に脱離可能な水素原子を有するフッ素樹脂が好ましい。
【0050】
一般式〔2〕で表されるアリールビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタンの具体例としては、フェニルビス(トリフリル)メタン、2−ナフチルビス(トリフリル)メタン、1−ナフチルビス(トリフリル)メタン、2,4,6−トリメチルフェニルビス(トリフリル)メタン、4−(トリフルオロメチル)フェニルビス(トリフリル)メタン、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルビス(トリフリル)メタン、ぺンタフルオロフェニルビス(トリフリル)メタン等のアリールビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタン等が例示できる。また、TfOHより強い有機酸であることからぺンタフルオロフェニルビス(トリフリル)メタンを用いることが好ましい。
【0051】
また、一般式〔2〕で表されるアリールビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタンの製造方法としては、アリールハロメタンとパーフルオロアルキルスルフィン酸塩等を反応させ、次いで生成したアリールメチルパーフルオロアルキルスルホンを有機金属又は金属塩からなる脱プロトン化剤と反応させ、得られるアリールメチルパーフルオロアルキルスルホンの金属塩を無水パーフルオロアルキルスルホン酸と反応させる方法が例示できる。
【0052】
この製造方法に用いられるアリールハロメタンとしては、求電子性置換基で置換されたアリール基とハロゲン原子により置換されたメタンであれば特に制限されるものではなく、具体的には、ベンジルブロミド、2−ブロモメチルナフタレン、1−クロロメチルナフタレン、2,4,6−トリメチルフェニルメチルクロリド、4−(トリフルオロメチル)フェニルメチルブロミド、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルメチルブロミド、ぺンタフルオロフェニルメチルブロミド等が例示できる。
【0053】
一般式〔2〕で表されるアリールビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタンの製造に用いられるパーフルオロアルキルスルフィン酸塩としては、トリフルオロメチルスルフィン酸、パーフルオロエチルスルフィン酸、パーフルオロプロピルスルフィン酸、パーフルオロイソプロピルスルフィン酸、パーフルオロブチルスルフィン酸、パーフルオロイソブチルスルフィン酸、パーフルオロペンチルスルフィン酸、パーフルオロイソペンチルスルフィン酸、パーフルオロネオペンチルスルフィン酸等のC1〜8のパーフルオロアルキルスルフィン酸の金属塩を好適に例示でき、また金属塩としてはアルカリ金属塩や、アルカリ土類金属塩を例示できる。特にナトリウム塩等のアルカリ金属塩が好ましい。
【0054】
一般式〔2〕で表されるアリールビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタンの製造方法における、アリールハロメタンとパーフルオロアルキルスルフィン酸塩との求核置換反応は、触媒存在下で溶媒を用いて加熱還流することで、アリールメチルパーフルオロアルキルスルホンを高効率に合成できる。上記反応系におけるアリールハロメタンのモル濃度としては、0.2〜0.4Mが好ましく、またトリフルオロメタンスルフィン酸ナトリウム塩等のパーフルオロアルキルスルフィン酸塩は、アリールハロメタンの1.0〜1.5当量、特に1.3当量程度使用することが好ましい。
【0055】
また、使用する触媒としては、テトラブチルアンモニウムヨウ化物、ヨウ化カリウム等のヨウ化物からなる触媒を好適に例示することができる。これら触媒の使用量はアリールハロメタンに対して2〜20mol%、好ましくは5〜10mol%を例示することができる。また、溶媒としてはアセトニトリル、プロピオニトリル、ニトロメタン、ニトロプロパン等の溶媒を挙げることができる。極性と沸点が適しているという点で、特にプロピオニトリルを用いることが好ましい。
【0056】
上記反応は、乾燥不活性ガス雰囲気中、例えば、アルゴン又は窒素雰囲気中の加熱還流下で行うことが好ましい。また反応温度を80〜150℃、特に100〜120℃として、12〜48時間加熱還流下で反応を行うことが好ましい。これらの合成反応によって得られるアリールメチルトリフロンの精製方法としては、例えば、上記の条件下で反応して得られた反応溶液を濾過することにより塩を取り除き、展開溶媒としてヘキサンと酢酸エチル(EtOAc)とを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーや、ヘキサンとトルエンとを用いた再結晶操作等の方法が例示できる。
【0057】
次に、アリールハロメタンとパーフルオロアルキルスルフィン酸塩との求核置換反応により生成したアリールメチルパーフルオロアルキルスルホンを有機金属又は金属塩からなる脱プロトン化剤と反応させ、得られるアリールメチルパーフルオロアルキルスルホンの金属塩をパーフルオロアルキルスルホン酸無水物と反応させることにより、一般式〔2〕で表されるアリールビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタンを製造することができる。
【0058】
上記脱プロトン化剤としては脱プロトン化作用を有する有機金属又は塩基性反応剤であれば特に制限されず、低級アルキルのアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩、具体的にはt−BuLiを好適に例示できる。また上記パーフルオロアルキルスルホン酸無水物としては、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(Tf2O)、パーフルオロエタンスルホン酸無水物、パーフルオロプロパンスルホン酸無水物、パーフルオロイソプロパンスルホン酸無水物、パーフルオロブタンスルホン酸無水物、パーフルオロイソブタンスルホン酸無水物、パーフルオロペンタンスルホン酸無水物、パーフルオロイソペンタンスルホン酸無水物、パーフルオロネオペンタンスルホン酸無水物等のC1〜8のパーフルオロアルキルスルホン酸無水物を好適に例示できるが、特にTf2Oが好ましい。
【0059】
上記アリールメチルパーフルオロアルキルスルホンを、アルキルリチウム等の脱プロトン化剤とTf2O等のパーフルオロアルキルスルホン酸無水物と反応させる方法としては、特に制限されるものではない。例えばアリールメチルトリフロン等のアリールメチルパーフルオロアルキルスルホンをジエチルエーテル等の溶媒に溶解した後アルキルリチウム等を−78℃で加え、5〜10分間反応させ、反応後にTf2Oを加えて室温で1〜2時間反応させる方法が、高収率でアリールビス(トリフルオロメチルスルホニル)メタン等のアリールビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタンを生成できるので好ましい。
【0060】
また、高収率でアリールビス(トリフルオロメチルスルホニル)メタン等のアリールビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタンを得るため、アリールメチルトリフロン等のアリールメチルパーフルオロアルキルスルホンに対して、2.0〜2.4当量のアルキルリチウム等の有機金属や1.0〜1.2当量のTf2O等のパーフルオロアルキルスルホン酸無水物を反応させることが好ましい。
【0061】
例えば、ベンジルトリフロンに対しt−BuLi(1.2当量)を使用すると、フェニルビス(トリフリル)メタンはベンジルトリフロンより遥かに強い酸であるため、生成するフェニルビス(トリフリル)メタンをベンジルトリフロンのリチウム塩によってすぐに脱プロトン化を受け、フェニルビス(トリフリル)メタンはリチウム塩が生成し、得られたフェニルビス(トリフリル)メタンのリチウム塩はTf2Oとの反応によってフェニルトリス(トリフリル)メタンに変換される。その結果、ベンジルトリフロンとフェニルトリス(トリフリル)メタンのモル比がほぼ1:1となり、フェニルビス(トリフリル)メタンはわずかしか合成されない。
【0062】
それに対して、ベンジルトリフロンに対し2.2当量のt−BuLiを使用すると、生成するフェニルビス(トリフリル)メタンはt−BuLiによって脱プロトン化を受け、ベンジルトリフロンが定量的にフェニルビス(トリフリル)メタンのリチウム塩に変換される。しかし、ペンタフルオロメチルブロミドを用いてぺンタフルオロフェニルビス(トリフリル)メタンを製造する場合、1;1の割合でぺンタフルオロフェニルビス(トリフリル)メタンと4−tert−ブチル−2,3,5,6−テトラフルオロフェニルビス(トリフリル)メタンが共に得られる(収率はそれぞれ45%)ことから、この場合は、1.0当量のt−BuLiと0.5等量のTf2Oとを用いると、4−tert−ブチル−2,3,5,6−テトラフルオロフェニルビス(トリフリル)メタンの生成が完全に抑制され、ぺンタフルオロフェニルビス(トリフリル)メタンがTf2Oをベースに高収率で得ることができる。
【0063】
本工程における樹脂ポリマーとアリールビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタンの金属塩との反応は、以下の方法で行うことができる。まず、樹脂ポリマーをトルエン、ベンゼン等の溶媒に膨潤させ、不活性ガス雰囲気中で塩基性反応剤を添加し20〜80℃の範囲、好ましくは60℃に加熱し、攪拌した後、室温に戻し溶液部分を除去する。その樹脂に、反応溶媒を加え一旦、−10〜25℃の範囲、好ましくは0℃に冷却し、アリールビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタンの金属塩を加えて室温とし攪拌した後、25〜85℃の範囲、好ましくは70℃に加熱して、樹脂ポリマーにアリールビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタンを化学的に結合させる。その後、冷却、洗浄、乾燥を行うことで高分子結合型アリールビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタンが得られる。
【0064】
塩基性反応剤としては、樹脂ポリマーにアニオンを発生させ得るものであれば特に制限されないが、ブチルリチウム等のアルキルリチウムが好ましく、反応溶媒としてはベンゼンとテトラヒドロフランの混合液が反応収率の点で好ましい。ベンゼンはトルエンと異なり、上記ブチルリチウム等と反応することがなく、収率が向上できる。
【0065】
(燃料電池)
本実施形態の燃料電池はPEFCである。本実施形態の燃料電池としては燃料電池セルを複数積層したスタックを形成しているものを規定する。そして高分子電解質膜としては前述した本発明の高分子電解質膜を用いる。なお、本燃料電池の高分子電解質膜はすべて本発明の高分子電解質膜とする必要はなく、一部に他の種類の高分子電解質膜(例えば従来の高分子電解質膜であるペルフルオロスルホン酸系樹脂)を用いてもよい。
【0066】
高分子電解質膜を挟んだ両側の反応電極にそれぞれ燃料ガスと酸化剤ガスとを供給するガス供給装置がそれぞれ対応する側のセパレータから接続される。そして燃料ガスとしては水素ガスを酸化剤ガスとして空気をそれぞれ便宜的に規定する。
【0067】
本燃料電池の燃料電池セルは電解質膜の両側を反応電極で狭持した後にさらに拡散層で狭持したMEAの両側をセパレータで狭持した構造をもつ。
【0068】
反応電極については特に限定されず、通常のものを使用可能である。たとえば、カーボン粉末上に白金や白金のアロイを分散させた触媒を用いることが可能である。たとえば、この触媒をそのまま若しくは本発明の電解質溶液等の結着剤等と混合して電解質膜表面で製膜することで反応電極を形成できる。
【0069】
拡散層はたとえば一般的なカーボン粉末と撥水性高分子粉末との混合物を用いることができる。本発明の電解質溶液を含有させて形成することもできる。
【0070】
セパレータも一般的に使用されている材質、形態のものが使用できる。セパレータには流路が形成され、その流路には反応ガスを供給するためのガス供給装置が接続されると同時に、反応しなかった反応ガス及び発生した水を除去する手段とが接続される。
【0071】
本燃料電池では高分子電解質膜の含水率がプロトン伝導性発現に与える影響が小さいので、高分子電解質膜の含水率を制御する手段(加湿器等の特に高分子電解質膜の含水率を向上する手段)を省略乃至は簡略化することができる。
【0072】
【実施例】
以下に、具体例を揚げてこの発明を更に説明するが、この発明の範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【0073】
[実施例]
〔高分子電解質膜の製造:高分子電解質膜を構成する高分子材料の合成〕
(分析方法及び材料)
赤外線スペクトルは、Shimadzu FTIR−9100で測定した。1H−NMRスペクトルは、Varian Gemini−300(300 MHz)核磁気共鳴装置で測定した。1H−NMRの化学シフトは、内部標準(0ppmにおけるテトラメチルシラン)としての溶剤を使用したppmで表した。分裂パターンは、一重項をs、二重項をd、三重項をt、四重項をq,多重項をm、ブロードピークをbrとして示した。13C−NMRスペクトルは、Varian Gemini−300(125 MHz)核磁気共鳴装置で測定し、内部標準(77.0ppmにおけるCDCl3)としての溶剤を使用したppmで表した。19F−NMRスペクトルは、Varian Gemini−300(282MHz)核磁気共鳴装置で測定し、内部標準(−64.0ppmにおけるCF3C5H5)としての溶剤を使用したppmで表した。高速液体クロマトグラフィ(HPLC)分析は、Shimadzu LC−10AD機器とSPD−M10A UV検出器でキラルカラム(Daicel,AS又はOD−H)を使用して行った。以下の合成反応は全てオーブンで乾燥させたガラス機器中でマグネチックスターラーを用いて行った。反応生成物は、シリカゲルE.Merck9385又はシリカゲル60エキストラピュア上でフラッシュクロマトグラフィにより精製した。
【0074】
(合成反応1:アリールメチルトリフロンの合成)
表1に示す各種アリールハロメチル(10mmol)、トリフルオロメタンスルフィン酸ナトリウム(2.0g:13mmol)、プロピオニトリル(30mL)、テトラブチルアンモニウムヨウ化物(0.37g:1mmol)の混合溶液を約1日間アルゴン雰囲気下で加熱還流した。加熱還流後、反応溶液を室温に冷やし、濾過によって塩を取り除いた後濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン−EtOAc)あるいは再結晶操作(ヘキサン−トルエン)によって精製し、アリールメチルトリフロンを得た。各アリールメチルトリフロンの収率を表1に示し、各アリールメチルトリフロンの物性を以下に示す。表1から、トリフリル源としての求電子反応剤にトリフルオロメタンスルフィン酸ナトリウム(TfNa)を用いて、テトラブチルアンモニウムヨウ化物触媒存在下でプロピオニトリルを溶媒に用いてアリールハロメタンと加熱還流させることにより、Hendricksonらの方法(Synthesis,691,1997)より高収率でアリールメチルトリフロンを得ることができることがわかった。また表1から、ペンタフルオロフェニルメチルトリフロンが、収率89%で得られたことがわかる。
【0075】
【表1】
【0076】
・ベンジルトリフロン(2−Benzyl Triflone;J.Fluorine Chem.66.301.1994):IR(KBr)1362,1347,1223,1198,1188,1125,776,698,640,525,507cm-1 : 1H−NMR(CDCl3,300 MHz)δ4.48(s,2H),7.42−7.47(m,5H):19F−NMR(CDCl3,282 MHz)δ−77.6(s,3F,CF3).
・2−ナフチルメチルトリフロン(2−Naphthylmethyl Triflon):IR(KBr)1358,1345,1221,1194,1125,831,756,658,608,486cm-1;1H−NMR(CDCl3,300 MHz)δ4.65(s,2H),7.50(dd,J=1.8,8.4Hz,1H),7.54−7.58(m,2H),7.86−7.94(m,4H):13C−NMR(CDCl3,125 MHz),δ56.3,119.8(q,JCF=326Hz,1C),120.3,126.9,127.4,127.5,127.8,128.1,129.2,131.5,133.1,133.6:19F−NMR(CDCl3,282 MHz)δ−77.6(s,3F,CF3).Anal.Calcd for C12H9O2F3S:C.52.55:H,3.31:F,20.78:S,11.69.Found C,52.51:H,3.33:F,20.81:S,11.65.
・1−ナフチルメチルトリフロン(1−Naphthylmethyl Triflone):IR(KBr)1510,1358,1223,1200,804,776,658,486cm-1;1H−NMR(CDCl3,300 MHz)δ4.99(s,2H),7.53(dd,J=7.8,8.4Hz,1H),7.62(d,J=7.8Hz,1H),7.58(ddd,J=0.9,6.9,8.3Hz,1H),7.65(ddd,J=1.5,6.9,8.4Hz,1H),7.93(dd,J=1.5,8.3Hz,1H),7.98(dd,J=8.4Hz,1H),8.04(dd,J=0.9,8.4Hz,1H):13C−NMR(CDCl3,125 MHz)δ53.0,119.2,120.0(q,JCF=326Hz,1C),123.3,125.3,126.5,127.5,129.0,131.1,131.5,132.3,134.0,19F−NMR(CDCl3,282 MHz)δ−78.1(s,3F,CF3).Anal.Calcd for C12H9O2F3S:C,52.55:H,3.31:F,20.78:S,11.69.Found C,52.53:H,3.29:F,20.75:S,11.73.
・2,4,6−トリメチルフェニルメチルトリフロン(2,4,6−Trimethylphenylmethyl Triflone):IR(KBr)1358,1206,1117,864,619,550,500,469cm-1:1H−NMR(CDCl3,300 MHz)δ2.29(s,3H),2.43(s,6H),4.62(s,2H),6.96(s,2H):13C−NMR(CDCl3,125 MHz)δ20.3,21.0(2C),49.8,117.0,120.0(q,JCF=326Hz,1C,CF3),129.9(2C),139.7(2C),139.8:19F−NMR(CDCl3,282MHz)δ−79.7(s,3F,CF3).Anal.Calcd forC11H13O2F3S:C,49.62:H,4.92:F,21.40:S,12.04.Found C,49.58:H,4.53:F,21.35:S,12.06.
・4−(トリフルオロメチル)フェニルメチルトリフロン(4−(Trifluoromethyl)phenylmethyl Triflone:Synthesis,691,1997):IR(KBr)1356,1341,1227,1210,1144,1121,855,658,513cm-1:1H−NMR(CDCl3,300 MHz)δ4.53(s,2H),7.58(d,J=8.0Hz,2H),7.72(d,J=8.0Hz,2H):19F−NMR(CDCl3,282 MHz)δ−77.5(s,3F,CF3),−64.3(s,3F,CF3).
・3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルメチルトリフロン)3、5−Bis(trifluoromethyl)phenylmethyl Triflone):IR(KBr)1376,1362,1277,1175,1117,918,910,669cm-1:1H−NMR(CDCl3,300 MHz)δ4.60(s,2H),7.91(s,2H),8.01(s,1H):13C−NMR(CDCl3,125 MHz)δ55.0,119.6(q,JCF=326Hz,1C,CF3),122.6(q,JCF=272Hz,2C,2CF3),124.2(septet,JCF=4Hz,1C),126.1,131.3(2C),132.9(q,JCF=34Hz,2C):19F−NMR(CDCl3,282 MHz)δ−77.4(s,3F,CF3),−64.3(s,6F,2CF3).Anal.Calcd for C10H3O2F9S:C, 33.53:H,0.84:F,47.74:S,8.95.Found C,33.48:H,0.91:F,47.87:S,8.89.
・ペンタフルオロフェニルメチルトリフロン(Pentafluorophenylmethyl Triflone):IR(KBr)1509,1374,1210,1121,995cm-1:1H−NMR(CDCl3,300 MHz)δ4.64:13C−NMR(CDCl3,125 MHz)δ44.3,100.0(dt,JCF=4,17Hz,1C,ipso−C),119.5(q,JCF=326Hz,1C,CF3),137.9(d,JCF=251Hz,2C,2m−C),142.8(d,JCF=258Hz,1C,p−C),145.9(d,JCF=252Hz,2C,2o−C):19F−NMR(CDCl3,282 MHz)δ−160.0(d,J=15.2Hz,2F,2m−F),149.0(s,1F,p−F),139.4(d,J=15.2Hz,2F,2o−F),−78.3(s,3F,CF3).Anal.Calcd forC8H2O2F8S:C, 30.59:H,0.64:F,48.38:S,10.21.Found C,30.49:H,0.73:F,48.37:S,10.18.
(合成反応2:アリールビス(トリフリル)メタンの合成)
合成反応1により得られた各アリールメチルトリフロン(0.5mmol)をジエチルエーテル(3mL)に溶解してそれぞれの溶液を調整した。これらの溶液を−78℃まで冷却してから1.1当量(0.55mmol)のt−BuLi(0.34mL,1.6Mのペンタン溶液)を加え、10分間攪拌した後、続いてTf2O(46μL,0.275mmol)を加え、反応溶液を室温まで上げて更に1時間攪拌した。再び−78℃に冷却した後、1.1当量(0.55mmol)のt−BuLi(0.34mL,1.6Mのペンタン溶液)を加え、10分間攪拌した後、Tf2O(46μL,0.275mmol)を加え、反応溶液を室温まで上げて更に1時間攪拌した。その後、水を加えて反応を止め、中和した後、ヘキサンで洗浄した。これら水相を4Mの塩酸で酸性にし、ジエチルエーテルで2回抽出した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥、濾過、濃縮してアリールビス(トリフリル)メタンを固体として得た。更なる精製は必要としなかった。各アリールメチルトリフロンの収率を表2に示し、各アリールメチルトリフロンの物性を以下に示す。
【0077】
【表2】
【0078】
・フェニルビス(トリフリル)メタン(Phenylbis(triflyl)methane:J.Org.Chem.38,3358,1973,Heteroatom Chem.5,9,1994):IR(KBr)2950,1381,1242,1219,1184,1102,806,695,660,608,585,507cm-1:1H−NMR(CDCl3,300 MHz)δ5.97(s,1H),7.54−7.68(m,5H):13C−NMR(CDCl3,125 MHz)δ80.7,119.3,119.3(q,JCF=329Hz,2C,2CF3),130.0(2C),131.8(br),132.9(2C):19F−NMR(CDCl3,282 MHz) −73.8(s,6F,2CF3).
・2−ナフチルビス(トリフリル)メタン(2−Naphthylbis(triflyl)methane):IR(KBr)1393,1381,1244,1213,1103,646,586cm-1;1H−NMR(CDCl3,300 MHz)δ6.10(s,1H),7.61−7.71(m,3H),7.92−7.99(m,2H),8.03(d,J=8.4Hz,2H):13C−NMR(CDCl3,75MHz)δ80.9,116.3,119.3)q,JCF=329Hz,2C,2CF3),127.7,128.0,128.8,129.1,130.1,132.8,133.4,134.7:19F−NMR(CDCl3,282 MHz)δ−73.6(s,6F,2CF3):HRMS(EI)calcd for C13H9O4F6S2〔M〕+405.9768,found 405.9761.
・1−ナフチルビス(トリフリル)メタン(1−Naphthylbis(triflyl)methane):IR(KBr)1389,1383,1215,1111,770,650,504cm-1;1H−NMR(CDCl3,300 MHz)δ6.87(s,1H),7.62−7.80(m,4H),8.02(d,J=8.4Hz,1H),8.16(d,J=8.4Hz,1H),8.37(d,J=7.5Hz,1H):13C−NMR(CDCl3,75MHz)δ74.6,114.1(s,1C,ipso−C),119.4(q,JCF=328Hz,2C,2CF3),119.9,125.4,127.0,128.9,130.1,131.5,131.7,133.8,134.0:19F−NMR(CDCl3,282 MHz)δ−74.2(s,6F,2CF3):HRMS(EI)calcd for C13H8O4F6S2〔M〕+405.9768,found 405.9761.
・2,4,6−トリメチルフェニルビス(トリフリル)メタン(2,4,6−Trimethylphenylbis(triflyl)methane):IR(KBr)1397,1383,1217,1119,1107,642,590cm-1:1H−NMR(CDCl3,300 MHz)δ2.33(s,3H),2.35(s,3H),2.61(s,3H),6.48(s,1H),7.00(s,1H),7.08(2,1H):13C−NMR(CDCl3,75MHz)δ20.2,21.1,22.2,77.7,115.9,119.4(q,JCF=328Hz,2C,2CF3),130.4,132.2,140.0,142.2,142.6:19F−NMR(CDCl3,282 MHz)δ−76.3(s,6F,2CF3):HRMS(EI)calcd forC12H12O4F6S2〔M〕+ 398.0081,found 398.0089.
・4−(トリフルオロメチル)フェニルビス(トリフリル)メタン(4−(Trifluoromethyl)phenylbis(triflyl)methane):IR(KBr)1393,1383,1327,1231,1171,1136,1111,860,671,610cm-1:1H−NMR(CDCl3,300 MHz)δ5.98(s,1H),7.84(s,4H):13C−NMR(CDCl3,125 MHz)δ80.4,120.0(q,JCF=329Hz,2C,2CF3),123.8(q,JCF=271Hz,1C,CF3),124.2,127.6(q,J=4Hz,2C),133.0(2C),135,6(q,JCF=33Hz,1C):19F−NMR(CDCl3,282 MHz)δ−73.5(s,6F,2CF3),−64.7(s,3F,CF3):HRMS(EI)calcd for C10H6O4F9S2〔M〕+423.9486,found 423.9471.
・3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルビス(トリフリル)メタン(3,5−Bis(trifluoromethyl)phenylbis(triflyl)methane):IR(KBr)1395,1374,1285,1223,1194,1179,1144,1105,936,909,629,519cm-1:1H−NMR(CDCl3,300 MHz)δ6.05(s,1H),8.13(s,2H),8.18(s,1H):13C−NMR(CDCl3,125 MHz)δ78.9,119.2(q,JCF=329Hz,2C,2CF3),122.2(q,JCF=272Hz,2C,2CF3),122.9,126.7(septet,JCF=4Hz),131.6(s,2C),133.8(q,J=35Hz,2C):19F−NMR(CDCl3,282 MHz)δ−73.2(s,6F,2CF3),−64.3(s,6F,2CF3):HRMS(EI)calcd for C11H4O4F12S2〔M〕+472.9375,found 472.9372.
・ペンタフルオロフェニルビス(トリフリル)メタン(Pentafluorophenylbis(triflyl)methane):Mp.86〜87℃:IR(KBr)1522,1501,1347,1321,1198,1127,1024,988,513cm-1:1H−NMR(CDCl3,300 MHz)δ6.21(brs,1H):13C−NMR(CDCl3,125 MHz)δ70.4,98.0(s,1C,ipso−C),119.2(q,JCF=330Hz,2C,2CF3),137.8(d,JCF=258Hz,1C,m−C),138.6(d,JCF=257Hz,1C,m−C),144.7(d,JCF=264Hz,1C,p−C),145.4(d,JCF=262Hz,1C,o−C),147.2(d,JCF=262Hz,1C,o−C):13C−NMR(CD3OD(δ49.0),125 MHz)δ56.2,109.1(dt,J=6.19Hz,1C,ipso−C),122.4(q,JCF=324Hz,2C,2CF3),138.5(d,JCF=250Hz,2C,2m−C),143.0(d,JCF=251Hz,1C,p−C),150.0(d,JCF=245Hz,1C,o−C),19F−NMR(CDCl3,282 MHz)δ−157.9(dt,J=6.2,21.5Hz,1F,m−F),−156.8(dt,J=6.2,21.5Hz,1F,m−F),−142.6(tt,J=5.9,21.5Hz,1F,p−F),−140.3(br,1F,o−F),−127.7(ddd,J=5.9,15.2,21.5Hz,1F,o−F),−75.2(s,6F,2CF3):HRMS(EI)calcd for C9HO4F11S2〔M〕+445.9141,found 445.9137.
(合成反応3:ペンタフルオロフェニルビス(トリフリル)メタンのパラ位特異的な求核置換)
また、表2にペンタフルオロフェニルビス(トリフリル)メタンの収率が45%と記載されているように、ペンタフルオロフェニルメチルトリフロンを用いてペンタフルオロフェニルビス(トリフリル)メタンを製造する場合、1:1の割合でペンタフルオロフェニルビス(トリフリル)メタンと4−tert−ブチル−2,3,5,6−テトラフルオロフェニルビス(トリフリル)メタンが共に得られることがわかった(収率はそれぞれ45%)。しかし、1.0当量のt−BuLiと0.5当量のTf2Oとを用いた場合では、4−tert−ブチル−2,3,5,6−テトラフルオロフェニルビス(トリフリル)メタンの生成が完全に抑制され、ペンタフルオロフェニルビス(トリフリル)メタンはTf2Oをベースに95%の収率で得られることがわかった。そこで、ペンタフルオロフェニルビス(トリフリル)メタンのパラ位特異的な求核置換の一般性と範囲を調べるために、ペンタフルオロフェニルビス(トリフリル)メタンと種々のアルキルリチウム試薬との反応について調べた。アルキルリチウム試薬の種類と反応条件とペンタフルオロフェニルビス(トリフリル)メタンのパラ位置換体の収率を表3に示す。なお、表3に示されたペンタフルオロフェニルビス(トリフリル)メタンのパラ位置換体は、ペンタフルオロフェニルビス(トリフリル)メタンとアルキルリチウム試薬との反応生成物を塩酸溶液で洗浄することにより得られ、また、表3中「Bn」はベンジル基を表す。
【0079】
【表3】
【0080】
(合成反応4:リチウムペンタフルオロフェニルビス(トリフリル)メチドの合成)
合成反応2で得られたペンタフルオロフェニルビス(トリフリル)メタン(1mmol)と、LiOH・H2O(1mmol)とをジエチルエーテル(10mL)に溶かし室温で12時間攪拌した後、濃縮乾燥して白い粉末のリチウムペンタフルオロフェニルビス(トリフリル)メチドを得た(100%収率)。この得られたリチウムペンタフルオロフェニルビス(トリフリル)メチドの物性を以下に示す。
【0081】
・リチウムペンタフルオロフェニルビス(トリフリル)メチド(Lithium Pentafluorophenylbis(triflyl)methide):13C−NMR(CD3OD,125MHz)δ56.1,109.0(dt,J=4.19Hz,1C,ipso−C),122.3(q.JCF=324Hz,2C,2CF3),138.5(d,JCF=247Hz,2C,2m−C),143.0(d,JCF=251Hz,1C,p−C),149.5(d,JCF=245Hz,2C,2o−C).
(合成反応5:銀(I)ペンタフルオロフェニルビス(トリフリル)メチドの合成)
アルミニウムホイルで光を遮断した反応フラスコ内でペンタフルオロフェニルビス(トリフリル)メタン(0.20g,0.40mmol)の水溶液(3mL)にAg2CO3(66mg,0.24mmol)を加え室温で12時間攪拌した後、固体が残っているようであれば濾過してから濃縮し、銀(I)ペンタフルオロフェニルビス(トリフリル)メタンの白色固体を得た(収率99%以上)。この得られた銀(I)ペンタフルオロフェニルビス(トリフリル)メチドの物性を以下に示す。
【0082】
・銀(I)ペンタフルオロフェニルビス(トリフリル)メチド(Silver(I)Pentafluorophenylbis(triflyl)methide):19F−NMR(CDCl3,282 MHz)δ−162.6dt,J=7.6,21.4Hz,2F,2m−F),−150.6(t,J=21.4Hz,1F,p−F),−134.7−134.6(m,2F,2o−F),−79.5(s,6F,2CF3).
(合成反応6:スカンジウム(III)ペンタフルオロフェニルビス(トリフリル)メチドの合成(その1))
SC2O3(21mg,0.155mmol)とペンタフルオロフェニルビス(トリフリル)メタン(0.277g,0.62mmol)を水(0.5mL)中で12時間加熱還流した。その後、未反応のSC2O3を濾過によって除去し濃縮した。得られた粗生成物をクロロホルムで洗い、未反応のペンタフルオロフェニルビス(トリフリル)メタンを除去した後、真空ポンプで減圧にし、100℃で乾燥することによりスカンジウム(III)ペンタフルオロフェニルビス(トリフリル)メチドの白色粉末を得た(50%収率)。
【0083】
(合成反応7:スカンジウム(III)ペンタフルオロフェニルビス(トリフリル)メチドの合成(その2))
合成反応4により得られた銀(I)ペンタフルオロフェニルビス(トリフリル)メチド(0.19g,0.34mmol)とSc(III)Cl3・(H2O)6(29mg,0.11mmol)をジエチルエーテル(3mL)中、室温で12時間攪拌した。その後、塩化銀を濾過によって除去し濃縮した。未反応のペンタフルオロフェニルビス(トリフリル)メタンを除去し、真空ポンプで減圧にし、100℃で乾燥することによりスカンジウム(III)ペンタフルオロフェニルビス(トリフリル)メチドの白色粉末を得た(50%収率)。合成反応5や実合成反応6で得られたスカンジウム(III)ペンタフルオロフェニルビス(トリフリル)メチドの物性を以下に示す。
【0084】
・スカンジウム(III)ペンタフルオロフェニルビス(トリフリル)メチド(Scandium(III)Pentafluorophenylbis(triflyl)methide):Mp.>250℃(decomposed):13C−NMR(CD3OD(δ49.0),125 MHz)δ56.2,109.0(dt,JCF=2,20Hz,1C,ipso−C),122.3(q,JCF=324Hz,2C,2CF3),137.8(d,JCF=247Hz,2C,2m−C),142.3(d,JCF=251Hz,1C,p−C),148.9(d,JCF=245Hz,2C,2o−C):19F−NMR(CD3OD,282MHz)δ−166.4(di,J=6.1,21.3Hz,2F,2m−F),−155.9(t,J=21.3Hz,1F,p−F),−134.9〜−134.9(m,2F,2o−F),−80.9(s,6F,2CF3).
(合成反応8:4−ブロモポリスチレン樹脂(ETFEグラフト型)の製造)ETFEからなる樹脂薄膜(厚み25μm、面積100cm2)に対して、加速電圧250kVの電子線を400kGy照射した。その後、予め窒素で30分間バブリングを行い脱気をした、4−ブロモスチレン:トルエン=1:1(体積比)溶液に浸漬し、窒素バブリングを行いながら、70℃で3時間重合を行った(化6)。なお、化6中のnは5000〜数万、mは数百であった。
【0085】
ETFEにグラフト重合されていない高分子をNメチルピロリドンで抽出除去した。なお、グラフト鎖は、元となったETFE樹脂薄膜に対して、78質量%の割合で導入された。
【0086】
【化6】
【0087】
(合成反応9:ポリスチレン結合型アリールビス(トリフルオロメタンスルホニル)メタンの製造)
合成反応8で合成した4−ブロモポリスチレン樹脂(ETFEグラフト型)にリチウムペンタフルオロフェニルビス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドを化学的に結合させ、ポリスチレン結合型ペンタフルオロフェニルビス(トリフルオロメタンスルホニル)メタンを次のようにして製造した(化7)。
【0088】
合成反応8で合成した樹脂をベンゼン(5mL)に膨潤させ、アルゴン雰囲気下、室温で樹脂に含まれるBr基の3倍当量のブチルリチウム(1.6Mヘキサン溶液)を加えた。この混合溶液を60℃(バスの温度)に加熱し、3時間攪拌した後、一旦室温まで戻し、溶液部分のみをシリンジを用いて除去した。残った樹脂にベンゼン(1mL)とTHF(1mL)を加え、0℃まで冷却し、合成反応4で得られたリチウムペンタフルオロフェニルビス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド(1.36g,3mmol)を加えた。次いで、反応溶液を室温まで昇温して2時間攪拌した後、更に70℃(バスの温度)で12時間攪拌した。次に、反応溶液を0℃まで冷却し、4M塩酸(10mL)を加えた。続いて樹脂を集め、その樹脂を蒸留水(10mL)、蒸留水(5mL)−THF(5mL)混合溶液、THF(10mL)、ジエチルエーテル(10mL)を用いて順次洗浄した。最後に1torrの減圧下、80℃で5時間乾燥し、高分子材料としてのポリスチレン結合型ペンタフルオロフェニルビス(トリフルオロメタンスルホニル)メタンを得た。
【0089】
【化7】
【0090】
得られたポリスチレン結合型ペンタフルオロフェニルビス(トリフルオロメタンスルホニル)メタンの元素分析によるフッ素含有量から求めたブレンステッド酸結合率は1.06mmol/gであった。ポリスチレン結合型ペンタフルオロフェニルビス(トリフルオロメタンスルホニル)メタンの物性を以下に示す。
【0091】
・ポリスチレン結合型ペンタフルオロフェニルビス(トリフルオロメタンスルホニル)メタン(Polystyrene resin, cross−linked with 2% divinylbenzene with Pentafluorophenylbis(triflyl)methane):IR(KBr)1475,1352,1194,1119,1022,976,700,612cm-1.
(その他の合成反応)
【0092】
【化8】
【0093】
〔高分子電解質膜の製造:高分子材料の製膜〕
得られた高分子材料としてのポリスチレン結合型ペンタフルオロフェニルビス(トリフルオロメタンスルホニル)メタンを本実施例の高分子電解質膜とした。実施例の高分子電解質膜は膜厚70μmであった。
【0094】
[比較例]
従来のペルフルオロスルホン酸系電解質膜としてデュポン社製、Nafion112を用いた。比較例の高分子電解質膜は膜厚50μmであった。
【0095】
〔試験〕
実施例及び比較例の高分子電解質膜について含水率とプロトン伝導度との関係を測定した。含水率として各高分子電解質膜の保水率を測定した。保水率の測定は25℃においてイオン交換水にそれぞれの高分子電解質膜を12時間浸漬させて平衡に達した後に質量(保水質量)を測定し、乾燥質量に対する値とした。具体的には(保水率)=(保水質量−乾燥質量)/(乾燥質量)×100(%)により算出した。
【0096】
プロトン伝導度はそれぞれの高分子電解質膜を3.8mol/Lの硫酸溶液中に12時間浸漬した後に、硫酸溶液中でそのまま直流4端子法にて測定した。
【0097】
結果を表4に示す。
【0098】
【表4】
【0099】
なお、比較例の試料は乾燥状態(大気中:含水率約3%)で抵抗値が大きく、プロトン伝導度が測定できなかった。
【0100】
表4から明らかなように、実施例の高分子電解質膜は保水率が低いにも関わらず、プロトン伝導度を示した。それに対して比較例の高分子電解質膜は、実施例の高分子電解質膜と同程度の含水率に調整すると、ほとんどプロトン伝導性を示さないことが明らかとなった。したがって、実施例の高分子電解質膜を燃料電池に適用することで、高分子電解質膜の含水率を精密に制御せず高分子電解質膜の含水率が低くなったとしても充分なプロトン伝導性を発現できる。つまり、高分子電解質膜に対する含水率制御手段を省略乃至は簡略化することができるので、燃料電池全体としても構成を簡略化することが可能となる。
Claims (18)
- 前記有機高分子樹脂は、塩基性反応剤を作用させることでアニオンを発生する樹脂ポリマーである請求項1に記載の高分子電解質膜。
- 前記樹脂ポリマーは、分子内に求電子性置換基で置換されたアリール基を有する請求項2に記載の高分子電解質膜。
- 前記樹脂ポリマーは、求電子性置換基で置換されたポリスチレン樹脂である請求項3に記載の高分子電解質膜。
- 前記一般式〔1〕におけるR1は求電子性置換基で置換されたアリール基であり、
該求電子性置換基と前記有機高分子樹脂のアニオンとの反応により、有機高分子に化学的に結合される請求項1〜4のいずれかに記載の高分子電解質膜。 - 前記一般式〔1〕におけるRf1及びRf2は共にトリフルオロメチル基である請求項1〜5のいずれかに記載の高分子電解質膜。
- 前記一般式〔1〕におけるR1は、フェニル基、ナフチル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、4−(トリフルオロメチル)フェニル基、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基及びぺンタフルオロフェニル基からなる群から選択される請求項1〜6のいずれかに記載の高分子電解質膜。
- 前記一般式〔1〕で表されるアリールビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタンは、フェニルビス(トリフリル)メタン、2−ナフチルビス(トリフリル)メタン、1−ナフチルビス(トリフリル)メタン、2,4,6−トリメチルフェニルビス(トリフリル)メタン、4−(トリフルオロメチル)フェニルビス(トリフリル)メタン、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルビス(トリフリル)メタン及びぺンタフルオロフェニルビス(トリフリル)メタンからなる群から選択される請求項1〜7のいずれかに記載の高分子電解質膜。
- 前記樹脂ポリマーは、ハロアルキル樹脂ポリマーである請求項9記載の高分子電解質膜の製造方法。
- 前記ハロアルキル樹脂ポリマーは、ハロゲノポリスチレン樹脂である請求項10記載の高分子電解質膜の製造方法。
- 前記ハロゲノポリスチレン樹脂は、4−ブロモポリスチレン樹脂である請求項11記載の高分子電解質膜の製造方法。
- 前記一般式〔2〕で表されるアリールビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタンの金属塩は、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、遷移金属元素、ホウ素、ケイ素、アルミニウム、スズ、亜鉛及びビスマスからなる群から選択されるいずれかの金属塩である請求項9〜12のいずれかに記載の高分子電解質膜の製造方法。
- 前記金属塩は、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド、銅、銀、チタン、ジルコニウム又はハフニウムから選ばれるいずれかの金属元素の塩である請求項13記載の高分子電解質膜の製造方法。
- 前記一般式〔2〕で表されるアリールビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタンの金属塩は、ぺンタフルオロフェニル−ビス(トリフルオロメチルスルホン)メチルのリチウム塩である請求項9〜13のいずれかに記載の高分子電解質膜の製造方法。
- 前記塩基性反応剤はブチルリチウムである請求項9〜15のいずれかに記載の高分子電解質膜の製造方法。
- 前記高分子を合成する工程における溶媒として、ベンゼン及びテトラヒドロフランの混合物を用いる請求項9〜16のいずれかに記載の高分子電解質膜の製造方法。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の高分子電解質膜と該高分子電解質膜の両面を狭持する反応極と該反応極を狭持するセパレータとからなる燃料電池セルを複数積層したことを特徴とする燃料電池。
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