JP4138597B2 - 油分離に対する耐熱性に優れた水中油型エマルジョン食品の製造方法 - Google Patents

油分離に対する耐熱性に優れた水中油型エマルジョン食品の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、油分離に対する耐熱性に優れた水中油型エマルジョン食品の製造方法に関し、詳しくは、リゾホスファチジル・グリセロールを含有させることにより、従来のリゾリン脂質を含有させる方法よりも、一段と優れた油分離に対する耐熱性の付与された水中油型エマルジョン食品を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
食生活の多様化に伴って、マヨネーズやドレッシング類等の水中油型エマルジョン食品はレトルト・サラダ、フィリング類、調理パン類などの、加熱加工される食品の原料などとして使用されることが多くなっている。
【0003】
このため、より一層の耐熱性を有するマヨネーズやドレッシング類等の水中油型エマルジョン食品が要望されている。
マヨネーズやドレッシング類等の水中油型エマルジョン食品に対して、比較的容易に耐熱性を付与させる技術としては、リゾリン脂質を乳化剤として使用する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
本技術でのリゾリン脂質とは、ホスホリパーゼA処理によりリゾ化されたリン脂質をいう。リゾリン脂質単品では勿論のこと、卵黄との併用によっても、水中油型乳化食品に優れた耐熱性を付与することができる。
【0004】
しかしながら、近年、食品の微生物汚染が問題視されており、加工食品等について微生物安定性をより完璧に求めることの必要性から、マヨネーズやドレッシング類等の水中油型エマルジョン食品に対し、さらに強い耐熱性が要求される傾向にある。
【0005】
上記リゾリン脂質によれば、水中油型エマルジョン食品に対し、強い耐熱性を付与することができるが、まだ十分に満足し得るレベルのものではなかった。また、このリゾリン脂質は溶解するのに時間がかかること、吸湿し易いためにハンドリングが煩雑であること、更には独特の風味があるため、一定量以上の添加は風味を損なうなどの問題点があった。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−60420号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、水中油型エマルジョン食品の製造において通常用いられている蛋白系の乳化剤を用い、これと共にリゾホスファチジル・グリセロールを添加・配合することにより、油分離に対する耐熱性に優れた水中油型エマルジョン食品を製造する方法を提供することを目的とする。
【0008】
すなわち、本発明は、リゾリン脂質よりも優れた耐熱性を有しながらも、従来技術のようにリゾリン脂質を使用する場合に見られる、溶解するのに時間がかかったり、吸湿し易いためにハンドリングが煩雑であったり、更には風味を損なうといった問題のない、油分離に対する耐熱性に優れた水中油型エマルジョン食品を製造する方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、驚くべきことに、乳化剤として従来水中油型エマルジョン食品に耐熱性を付与するために用いられていたリゾリン脂質に代えて、水中油型エマルジョン食品の製造において通常用いられている蛋白系の乳化剤を用い、これと共にリゾホスファチジル・グリセロールを添加・配合して含有させた水中油型エマルジョン食品が、一段と優れた耐熱性を示すことを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、請求項1に係る本発明は、水相原料と油相原料とを乳化して水中油型エマルジョン食品を製造する方法において、水相原料の一部として、水中油型エマルジョン食品中における含有割合が0.015質量%以上となるようにリゾホスファチジル・グリセロールを用いることを特徴とする油分離に対する耐熱性に優れた水中油型エマルジョン食品の製造方法を提供するものである。
次に、請求項2に係る本発明は、リゾホスファチジル・グリセロールが、グリセロールの存在下で、リン脂質にホスファチジル基転移酵素活性を有するホスホリパーゼDを添加・処理することによりホスファチジル・グリセロールを生成させた後、該ホスファチジル・グリセロールにホスホリパーゼA2を添加し処理して得られるリゾホスファチジル・グリセロールである請求項1記載の油分離に対する耐熱性に優れた水中油型エマルジョン食品の製造方法を提供するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、請求項1に係る本発明について、詳細に説明する。
請求項1に係る本発明は、油分離に対する耐熱性に優れた水中油型エマルジョン食品の製造方法に関し、水相原料と油相原料とを乳化して水中油型エマルジョン食品を製造する方法において、水相原料の一部として、水中油型エマルジョン食品中における含有割合が0.015質量%以上となるようにリゾホスファチジル・グリセロールを用いることを特徴とするものである。
【0012】
請求項1に係る本発明の水中油型エマルジョン食品とは、水相と油相とが乳化剤により水中油型に乳化されてなるものをいい、代表的なものとしてマヨネーズやドレッシング類などが挙げられる。水中油型エマルジョン食品としては、従来公知のものを用いることができる。
【0013】
請求項1に係る本発明の特徴は、水相原料と油相原料とを乳化して水中油型エマルジョン食品を製造する方法において、水相原料の一部として、水中油型エマルジョン食品中における含有割合が0.015質量%以上となるようにリゾホスファチジル・グリセロールを用いる点にある。
【0014】
請求項1に係る本発明において用いるリゾホスファチジル・グリセロールとは、リン脂質の塩基部分がグリセロールで置換され、さらに2位の脂肪酸が加水分解されたもので、以下のような構造を示す。
【0015】
【化1】
Figure 0004138597
【0016】
2位の脂肪酸が加水分解されていないものは、ホスファチジル・グリセロールと呼ばれるが、これは植物のクロロプラスト(葉緑体)や光合成組織中の重要なリン脂質成分となっている。さらに、少量ではあるが、大豆やヒマワリ中のリン脂質にも含有されている( Lecithins Bernard F. Szuhai, American Oil Chemist's Society 1985 )。
【0017】
このようなリゾホスファチジル・グリセロールとしては、請求項2に記載したものが挙げられる。
すなわち、請求項2に係る本発明は、リゾホスファチジル・グリセロールが、グリセロールの存在下で、リン脂質にホスファチジル基転移酵素活性を有するホスホリパーゼDを添加・処理することによりホスファチジル・グリセロールを生成させた後、該ホスファチジル・グリセロールにホスホリパーゼA2を添加し処理して得られるリゾホスファチジル・グリセロールである請求項1記載の油分離に対する耐熱性に優れた水中油型エマルジョン食品の製造方法に関するものである。
【0018】
請求項2に係る本発明において、用いられるグリセロールとしては、油脂分解又はセッケン製造の際の副産物から精製されたものや酵母によるグリセロール発酵液から精製されたもの等が用いられる。
【0019】
次に、請求項2に係る本発明において、用いられるリン脂質としては、一般的な卵黄リン脂質、大豆リン脂質、菜種リン脂質等が挙げられる。
卵黄リン脂質の組成は、ホスファチジル・コリン73.0%、ホスファチジル・エタノールアミン15.0%、ホスファチジル・イノシトール0.6%、その他であり、一方、大豆リン脂質の組成は、ホスファチジル・コリン38.2%、ホスファチジル・エタノールアミン17.3%、ホスファチジル・イノシトール16.0%であることが報告されている(新食品機能素材の開発、太田明一監修、シーエムシー社、1996年)。
なお、これらリン脂質は、必ずしも純粋なものでなくてもよく、タンパク質、多糖類、塩類等、リン脂質以外の成分が混在したものであっても差し支えない。
【0020】
請求項2に係る本発明において、用いられるホスホリパーゼDは、ホスファチジル基転移酵素活性作用を有するものであり、リン脂質の塩基部分を加水分解する酵素である。水酸基を有する物質、例えばグリセロール等の存在下で、ホスホリパーゼDをリン脂質に作用させることにより、リン脂質の塩基部分とグリセロールとの間でエステル交換反応が生じ、その結果、ホスファチジル・グリセロールが得られる。グリセロールの他、糖類、ビタミンC、多価アルコール等、分子内に水酸基を有する物質との交換反応が可能である。
なお、エステル交換反応の起こり易さは、リン脂質の塩基の種類や水酸基を有する物質の種類によって決まるが、塩基部分としてはエタノールアミン、コリン、セリン等が適しており、水酸基を有する物質としては、グリセロールや糖類が適している。
このようにエステル交換反応の作用があるものをホスファチジル基転移酵素活性があると言う。
【0021】
このようなホスファチジル基転移酵素活性作用を有するホスホリパーゼDとしては、植物由来のホスホリパーゼD、例えば、キャベツ由来のホスホリパーゼDや、微生物由来のホスホリパーゼD、例えばストレプトマイセス属(Streptomyces)に属する放線菌が生産するホスホリパーゼD等が挙げられる。
このようなホスホリパーゼDとしては、転移活性が高いストレプトマイセス属(Streptomyces)に属する放線菌が生産するホスホリパーゼD、とりわけ転移活性が高く、生産性も良いことからストレプトマイセス・シナモネウム(Streptomyces cinnamoneum;旧名 Streptoverticillium cinnamoneum )が生産するホスホリパーゼDが好適に用いられる。
【0022】
このホスホリパーゼDは、分子量が約54,000であって、作用至適pHが5〜6であり、作用至適温度が40〜60℃を示すものである(Chiaki Ogino, Yukinari Negi, Toshiko Matsumiya, Koichi Nakaoka, Akihiko Kondo, Shun'ichi Kuroda, Shinji Tokuyama, Ushio Kikkawa, Tsumeo Yamane and Hideki Fukuda; J.Biochem. 125, 263-269 (1999) ;Purification, Characterization, and Sequence Determination of Phospholipase D Secreted by Streptoverticillium cinnamoneum)。
【0023】
こうしてグリセロールの存在下で、リン脂質にホスファチジル基転移酵素活性を有するホスホリパーゼDを作用させると、リン脂質の塩基部分とグリセロールとの間でエステル交換反応が生じ、その結果、ホスファチジル・グリセロールが得られる。
【0024】
このようにして得られるホスファチジル・グリセロールに、ホスホリパーゼA2を添加し処理することにより、目的とするリゾホスファチジル・グリセロールが得られる。すなわち、ホスファチジル・グリセロールをリゾ化する酵素がホスホリパーゼA2である。
請求項2に係る本発明において、用いられるホスホリパーゼA2の作用は、リン脂質の2位の脂肪酸を加水分解し、リゾリン脂質へと変換するものである。
【0025】
このようなホスホリパーゼA2としては、ブタの膵臓より得られたものや微生物由来のものなどがあり、具体的には例えばノボザイムズジャパン(株)製のレシターゼ10L、ジェネンコア・インターナショナル社製の微生物由来Lysomaxが挙げられ、特に前者のレシターゼ10Lが好ましい。
本発明において好適に用いられるレシターゼ10Lは、ブタの膵臓より抽出精製されたホスホリパーゼA2であり、かつ、作用至適pHが6〜10であり、作用至適温度が40〜60℃を示すものである。
【0026】
リン脂質がレシチン(ホスファチジル・コリン)を例とした場合での、ホスホリパーゼD及びホスホリパーゼA2処理によって得られるリゾホスファチジル・グリセロールの生成経路について、以下に示す。
【0027】
【化2】
Figure 0004138597
【0028】
さらに、請求項2に係る発明において用いられるリゾホスファチジル・グリセロールの調製法の概要について、以下に例示する。但し、以下の説明はあくまでも例示であって、これに限定されるものではない。
【0029】
[リゾホスファチジル・グリセロールの調製方法]
ホスファチジル・グリセロールの調製法としては大きくは2種類あり、リン脂質の可溶な有機溶媒とグリセロールを含む水溶液との二相にホスホリパーゼDを作用させる2相反応と、リン脂質をグリセロールを含む水溶液に分散させた液にホスホリパーゼを作用させる1相反応とがある。
前者には非極性のヘキサンやヘプタン等と極性のアセトンや酢酸エチル等の混液が有機溶媒としてよく用いられ、これらにリン脂質を溶解した有機溶媒相とpHを調整したグリセリン水溶液にホスホリパーゼを添加した水相をそれぞれ調製し、この2相が良くまざるように攪拌することで、塩基交換反応によるホスファチジル・グリセロールが生成される。生成したホスファチジル・グリセロールは有機溶媒層を分取し、エバポレーター等により溶剤を除去することで回収できる。
また、後者はpHを調整したグリセリン水溶液にリン脂質を分散させた状態でホスホリパーゼDを作用させ、塩基交換反応によるホスファチジル・グリセロールが生成される。
その他、リン脂質もしくはホスホリパーゼDを固定化させて反応させる等の方法もあるが、以上の説明はあくまでも例示であって、これに限定されるものではない。
【0030】
このようにして得られたホスファチジル・グリセロールを水に分散し、ホスホリパーゼA2を作用させ、加水分解することで、リゾホスファチジル・グリセロールが得られる。また、1相反応によりホスファチジル・グリセロールを調製した場合、ホスホリパーゼDによる塩基交換反応終了後、そのままホスホリパーゼA2を添加し、作用することでもリゾホスファチジル・グリセロールを得ることができる。
処理後は、70〜90℃で、5〜60分間・加熱することやプロテーゼで処理することにより、残存ホスホリパーゼD及びホスホリパーゼA2を失活させることができる。また、シリカゲルや活性炭,活性白土等の吸着剤で処理することにより、残存ホスホリパーゼD及びホスホリパーゼA2を除去することができる。
以上の説明はあくまでも例示であって、これに限定されるものではない。
【0031】
請求項1に係る本発明の特徴は、水相原料と油相原料とを乳化して水中油型エマルジョン食品を製造する方法において、水相原料の一部として、水中油型エマルジョン食品中における含有割合が0.015質量%以上となるようにリゾホスファチジル・グリセロール、特に請求項2に記載した如きリゾホスファチジル・グリセロールを用いる点にある
【0032】
ここで水中油型エマルジョン食品とは、水相と油相とが乳化剤により水中油型に乳化されてなるものをいい、代表的なものとしてマヨネーズやドレッシング類などが挙げられる。水中油型エマルジョン食品としては、従来公知なものを用いることができる。
【0033】
請求項1に係る本発明の水中油型エマルジョン食品中におけるリゾホスファチジル・グリセロールの含有割合は、水相原料と油相原料との配合比率などにより異なるが、0.015質量%以上であることが好ましく、特に0.05〜1質量%がより好ましい。
水中油型エマルジョン食品中におけるリゾホスファチジル・グリセロールの含有割合が0.015質量%未満では、水中油型エマルジョン食品は耐熱性がやや不安定になる。また、リゾホスファチジル・グリセロールの含有割合が1質量%を超えても、配合量に見合うだけの効果の向上が見られないため、経済的にも好ましくない。
【0034】
請求項1に係る本発明の水中油型エマルジョン食品において、水相を構成する原料(水相原料)は、マヨネーズやドレッシング類の製造に際して使用される原料や、その配合割合に準じて決定すればよく、特に制限されない。
通常、用いられる水相原料の例としては、水の他に、食塩、食酢、グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム等の調味料、乳化剤、糖類、澱粉、ガム類、香辛料、着色料などがある。乳化剤としては、卵黄が一般的であるが、卵白、乳蛋白、大豆蛋白等を使用でき、これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
一方、油相を構成する原料(油相原料)としては、通常、食品に添加可能な親油性の物質であれば、特に制限がなく、例えば食用植物油脂や、親油性のある着香料等が挙げられる。
食用植物油脂としては、常温で液体の菜種油、大豆油、べに花油、サフラワー油、コーン油、ヒマワリ油等が挙げられ、これらを単独で、又は2種以上混合して使用することができる。配合割合も通常使用されるものに準じて適宜定めることができる。
【0036】
請求項1に係る本発明の水中油型エマルジョン食品において、油相と水相の割合については、特に制限はないが、通常は油相10〜90質量%に対して水相90〜10質量%、好ましくは油相30〜80質量%に対し、水相70〜20質量%とする。
ここで、油相の比率が10質量%未満であると、調製された水中油型エマルジョン食品が美味しくなく、一方、油相の比率が90質量%を超えると、転相し易くなるので、いずれも好ましくない。
【0037】
請求項1に係る本発明の水中油型エマルジョン食品の製造は、既知の手法により行えばよく、特に制限されない。
例えば、水以外の水相原料を、水等に分散・溶解し、これらに油相原料を加えて、一般的な撹拌機、例えば市販の万能混合撹拌機を用いて予備乳化する。次いで、コロイドミル等の乳化機により仕上げ乳化を行うことによって、水中油型エマルジョン食品を製造することができる。
ここで、前記のリゾホスファチジル・グリセロールの添加は、水以外の水相原料を水等へ分散・溶解する際に行えばよい。
【0038】
このようにして得られる水中油型エマルジョン食品は、リゾホスファチジル・グリセロールが添加されていることにより、耐熱性に優れたものとなっている。
【0039】
【実施例】
次に、本発明を実施例等により詳しく説明するが、本発明の範囲は、これら実施例等により制限されるものではない。
【0040】
調製例1[リゾホスファチジル・グリセロール(本発明品1)の調製]
原料レシチン(ツル−レシチン工業(株)製レシチンSLP−PC70:ホスファチジル・コリン70%以上)27gをヘプタン/アセトン(80/20)混合溶液に溶解して300mlにして溶媒層を調製した。次に、グリセロール溶液(0.6M酢酸緩衝液(pH4)・7.2Mグリセロール混液)50mlにホスホリパーゼD(ナガセケムテックス(株)製)17,550Uを混合して水層を調製した。溶媒層と水層とを30℃及び5時間、2相がよく混ざるように攪拌し処理を行った。
処理後、35gの食塩を添加・溶解して、溶剤層と水層を分離させ、溶剤層を分取した。
分取した溶剤層はエバポレータを用い、60℃にて溶剤を除去することにより、ホスファチジル・グリセロール70〜90%を含有する固形物が得られた。
【0041】
次いで、得られた固形分20gを、6mM CaClを含有するpH8、0.2Mトリス塩酸緩衝液に分散して80mlにし、ホスホリパーゼA2(ノボザイムズジャパン(株)製レシターゼ10L:10,000IU/g)24,000IUを加え、50℃及び5時間の処理を行うことにより、90%以上のホスファチジル・グリセロールがリゾ化したリゾホスファチジル・グリセロール分散液が得られた。
【0042】
調製例2[リゾホスファチジル・グリセロール(本発明品2)の調製]
原料レシチン(ツル−レシチン工業(株)製レシチンSLP−PC70:ホスファチジル・コリン70%以上)27gをグリセロール溶液(0.2Mクエン酸緩衝液(pH5)・3.3Mグリセロール混液)に良く分散させた後、ホスホリパーゼD(ナガセケムテックス(株)製)2,700Uを加え、50℃及び5時間反応させた。
次に、2N NaOHでpHを7.6に調整した後、ホスホリパーゼA2(ノボザイムズジャパン(株)製レシターゼ10L:10,000IU/g)24,000IUを加え、50℃及び5時間の処理を行うことにより、90%以上のホスファチジル・グリセロールがリゾ化したリゾホスファチジル・グリセロール分散液が得られた。
【0043】
実施例1〜4
(1)水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ)の調製
前記調製例1で得られたリゾホスファチジル・グリセロール(本発明品1)を下記第1表に示す所定量用い、第1表に示す配合組成の4種の水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ)2kgをコロイドミルにてそれぞれ調製した。
すなわち、水相原料である卵黄、食塩、食酢(10%酸度)及び水、並びに前記調製例1で得られたリゾホスファチジル・グリセロール(本発明品1)を混合溶解して水相を調製し、この水相に油相原料として菜種油を加え、ホバルトミキサー(ホバルト社製)にて予備乳化した。次いで、コロイドミル(クリアランス:4/1000インチ、回転数:3000rpm)により仕上げ乳化を行って、水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ)を調製した。
【0044】
(2)水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ)の耐熱性の評価
上記(1)で得られた水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ)について、耐熱性の評価を以下のようにして行った。
約25g容のプラスチック容器に、上記(1)で得られた水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ)20gを充填・シールした後、95℃にて60分間加熱した。冷却後、水中油型エマルジョン(マヨネーズ)の耐熱性を次の3段階で評価した。なお、評価は経験豊かな5名のパネラーによる視覚観察の平均値で示した。結果を第1表に示す。
【0045】
〔耐熱性の評価〕
・安定:油分離していない。
・やや安定:僅かな油分離がみられる。
・不安定:かなりの油分離がみられる。
【0046】
比較例1
実施例1において、リゾホスファチジル・グリセロール20%含有溶液を全く添加せず、かつ、水の配合割合を12.9質量%から13.0質量%に変えたこと以外は実施例1〜4と同様にして、水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ)を調製し、さらに実施例1〜4と同様にして耐熱性を評価した。結果を第1表に示す。
【0047】
比較例2
実施例1において、リゾホスファチジル・グリセロール20%含有溶液を添加する代わりに、リゾリン脂質(リゾ化率75%以上の大豆リゾリン脂質33%とコーン澱粉デキストリン(DE8)67%の混合物)に置き換え、かつ、大豆リゾリン脂質含量が0.20質量%となるように全体量を水で調整した水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ)を調製した。これについて、実施例1〜4と同様にして耐熱性を評価した。結果を第1表に示す。
【0048】
【表1】
第1表
Figure 0004138597
【0049】
第1表から、以下のようなことが分かる。
リゾホスファチジル・グリセロールが水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ)に、それぞれ0.02質量%、0.10質量%、0.50質量%、及び1.00質量%添加された実施例1〜4の水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ)は、優れた耐熱性を持つことが分かる。
尚、調製例2で調製したリゾホスファチジル・グリセロールを用いて、実施例1〜4の通りに実施しても同様の結果が得られた。
これに対し、リゾホスファチジル・グリセロールが添加されていない比較例1の水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ)では、耐熱性が低いことが分かる。
さらに、比較例2では、大豆リゾリン脂質の添加量が0.20質量%と、実施例1及び2におけるリゾホスファチジル・グリセロールの添加量より多いにもかかわらず、耐熱性は低かった。
【0050】
これらの結果より、リゾホスファチジル・グリセロールを水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ)に添加・配合することにより、水中油型エマルジョン食品の耐熱性を優れたものにすることは明らかであり、さらにリゾホスファチジル・グリセロールは大豆リゾリン脂質よりもより強い耐熱性を水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ)に付与することは明らかである。
【0051】
試験例1(リゾホスファチジル・グリセロール添加量の影響)
実施例1において、リゾホスファチジル・グリセロールの添加量を第2表の如く0〜1質量%まで変化させ、さらに全体の配合量の合計が100質量%となるように水で調整したこと以外は実施例1と同様にして、水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ)を調製し、耐熱性を評価した。結果を第2表に示す。
【0052】
【表2】
第2表(その1)
Figure 0004138597
【0053】
【表3】
第2表(その2)
Figure 0004138597
【0054】
第2表の結果から、以下のようなことが分かる。
リゾホスファチジル・グリセロールの添加量が0.015質量%以上である水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ)は、優れた耐熱性を持つことが分かる。一方、リゾホスファチジル・グリセロールの添加量が0.015質量%未満である水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ)は、耐熱性がやや不安定であることが分かる。
【0055】
【発明の効果】
本発明によれば、優れた耐熱性を有する水中油型エマルジョン食品が提供される。
しかも、本発明によれば、水中油型エマルジョン食品に耐熱性を付与させるために従来技術のように乳化剤としてリゾリン脂質を使用する必要がなく、通常のマヨネーズやドレッシング類等のような水中油型エマルジョン食品に、リゾホスファチジル・グリセロールを添加・混合することにより、より耐熱性に優れた水中油型エマルジョン食品が得られる。
【0056】
即ち、本発明によれば、優れた耐熱性を有しながらも、水中油型エマルジョン食品に耐熱性を付与させるために従来技術のように乳化剤としてリゾリン脂質を使用する必要がないことから、従来技術のように乳化剤としてリゾシチレンを使用して耐熱性を付与させる場合に見られる、溶解するのに時間がかかったり、吸湿し易いためにハンドリングが煩雑であったり、更には風味を損なうといった問題がなく、通常用いられる蛋白系の乳化剤を用い、これと共にリゾホスファチジル・グリセロールを添加・配合して含有させることにより、より耐熱性に優れた水中油型エマルジョン食品が提供される。
よって、本発明は食品工業分野において有用である。

Claims (2)

  1. 水相原料と油相原料とを乳化して水中油型エマルジョン食品を製造する方法において、水相原料の一部として、水中油型エマルジョン食品中における含有割合が0.015質量%以上となるようにリゾホスファチジル・グリセロールを用いることを特徴とする油分離に対する耐熱性に優れた水中油型エマルジョン食品の製造方法
  2. リゾホスファチジル・グリセロールが、グリセロールの存在下で、リン脂質にホスファチジル基転移酵素活性を有するホスホリパーゼDを添加・処理することによりホスファチジル・グリセロールを生成させた後、該ホスファチジル・グリセロールにホスホリパーゼA2を添加し処理して得られるリゾホスファチジル・グリセロールである請求項1記載の油分離に対する耐熱性に優れた水中油型エマルジョン食品の製造方法
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