JP2006271204A - 耐熱性及び酸化安定性に優れた水中油型乳化食品 - Google Patents

耐熱性及び酸化安定性に優れた水中油型乳化食品 Download PDF

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Abstract

【課題】 水相と油相とが乳化されてなる水中油型乳化食品において、優れた耐熱性を有し、且つ、生体への影響が懸念される化学抗酸化剤を含有せずに消費者が敬遠することなく安心して食することのできる、長期間酸化安定性に優れた水中油型乳化食品を提供することを目的とするものである。
【解決手段】 水相と油相とが乳化されてなる水中油型乳化食品において、リゾホスファチジル・セリンが含有されていることを特徴とする耐熱性及び酸化安定性に優れた水中油型乳化食品を提供するものである。
【選択図】 なし

Description

本発明は、マヨネーズやドレッシング類などの水中油型乳化食品に関し、詳しくはリゾホスファチジル・セリンが含有されていることにより、優れた耐熱性及び酸化安定性を同時に併せ持つ水中油型乳化食品に関する。
食生活の多様化に伴って、マヨネーズやドレッシング類等の水中油型乳化食品は、レトルトサラダ、フィリング、調理パン類などの加熱加工された食品の原料などとして使用されることが多くなっている。
このため、マヨネーズやドレッシング類などの水中油型乳化食品に耐熱性を付与させる技術が必要となってくる。そのような技術として、例えばホスホリパーゼ処理卵黄と糊化澱粉を含み、全卵もしくは卵白を含まないことを特徴とする耐熱性マヨネーズが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、カゼインまたは/およびアラビアガムとポリグリセリン脂肪酸エステルとを併用し、かつ−20℃にて固形脂含量が50%以下の油脂、食酢または酢酸、全卵または卵黄を水中油型に乳化してなる耐熱性のマヨネーズ様乳化食品が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
ところが、卵黄を使用して乳化したマヨネーズやドレッシング類等は、酸化安定性が十分でなく、長期酸化条件下におかれると、変色を生じたり、更には乳化が破壊され、油相が分離するなどの欠点がある。
特に、酸化を促進し易い具材類とマヨネーズやドレッシング類等の水中油型乳化食品を和えた後、加熱処理される場合においては、その後の酸化安定性を確保することが重要な技術となる。
従って、耐熱性だけでなく、同時に酸化安定性にも優れた水中油型乳化食品が求められているが、上記技術には酸化安定性が配慮されているものは殆ど見られなかった。
酸化を防止するためには、抗酸化能を有する化学物質からなる化学抗酸化剤を油脂含有食品に添加するのが一般的である。
例えば、アスコルビン酸脂肪酸エステルを含有していることを特徴とする酸性調味料に係る発明が開示されており、この発明によれば、製造直後の風味がほぼ維持された、風味安定性に優れた酸性調味料が得られるとされている(例えば、特許文献3参照)。
しかしながら、近年、化学物資の生体機能への悪影響が問題となっており、消費者は、一般的にこのような合成添加物を避ける傾向にある。
特開2000−316520号公報 特開平7−194336号公報 特許第3072100号公報(特願平11−233596号)
本発明は、上記従来の問題点を解決し、水相と油相とが乳化されてなる水中油型乳化食品において、優れた耐熱性を有し、且つ、生体への影響が懸念される化学抗酸化剤を含有せずに消費者が敬遠することなく安心して食することのできる、長期間酸化安定性に優れた水中油型乳化食品を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、驚くべきことに、水相と油相とが乳化されてなる水中油型乳化食品において、リゾホスファチジル・セリンを添加・配合することにより、耐熱性及び酸化安定性に優れた水中油型乳化食品が得られることを見い出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
本発明による耐熱性及び酸化安定性に優れた水中油型乳化食品は、これまでに全く知られていない。
即ち、請求項1に係る本発明は、水相と油相とが乳化されてなる水中油型乳化食品において、リゾホスファチジル・セリンが含有されていることを特徴とする耐熱性及び酸化安定性に優れた水中油型乳化食品を提供するものである。
次に、請求項2に係る本発明は、リゾホスファチジル・セリンが、セリンの存在下で、リン脂質にホスファチジル基転移酵素活性を有するホスホリパーゼDを添加・処理することによりホスファチジル・セリンを生成させた後、該ホスファチジル・セリンにホスホリパーゼA2を添加し処理して得られるリゾホスファチジル・セリンである請求項1記載の耐熱性及び酸化安定性に優れた水中油型乳化食品を提供するものである。
更に、請求項3に係る本発明は、リゾホスファチジル・セリンが、0.05質量%以上含有されていることを特徴とする請求項1又は2記載の耐熱性及び酸化安定性に優れた水中油型乳化食品を提供するものである。
本発明によれば、セリンの存在下で、リン脂質にホスファチジル基転移酵素活性を有するホスホリパーゼDを添加・処理することによりホスファチジル・セリンを生成させた後、該ホスファチジル・セリンにホスホリパーゼA2を添加し処理して得られるリゾホスファチジル・セリンは、食品、特にマヨネーズやドレッシング類等の水中油型乳化食品に添加し含有させることにより、化学抗酸化剤を用いることなく、該食品に優れた耐熱性及び長期間の優れた酸化安定性を付与することができる。
すなわち、本発明の水中油型乳化食品は、優れた耐熱性を有するものである。
また、本発明の水中油型乳化食品は、生体への影響が懸念される化学抗酸化剤を含有しないため、消費者が敬遠することなく、安心して食することができ、しかも長期間酸化安定性に優れたものである。
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、請求項1に係る本発明について、詳細に説明する。
請求項1に係る本発明は、耐熱性及び酸化安定性に優れた水中油型乳化食品に関し、水相と油相とが乳化されてなる水中油型乳化食品において、リゾホスファチジル・セリンが含有されていることを特徴とするものである。
請求項1に係る本発明の水中油型乳化食品とは、水相と油相とが乳化剤により水中油型に乳化されてなるものをいい、代表的なものとしてマヨネーズやドレッシング類などが挙げられる。水中油型乳化食品としては、従来公知のものを用いることができる。
請求項1に係る本発明の特徴は、このような水相と油相とが乳化剤により水中油型に乳化されてなる水中油型乳化食品において、リゾホスファチジル・セリンが含有されている点にある。
請求項1に係る本発明の耐熱性及び酸化安定性に優れた水中油型乳化食品に含有されるリゾホスファチジル・セリンとは、リン脂質の塩基部分がセリンで置換され、さらに2位の脂肪酸が加水分解されたもので、以下のような構造を示す。なお、式中、Rはアルキル基を示す。
Figure 2006271204
2位の脂肪酸が加水分解されていないものは、ホスファチジル・セリンと呼ばれるが、これは特に牛やブタなどの脳中や、ウサギ、ネズミやニワトリなどの骨格筋肉中に比較的多く存在している(Lecithins: Bernard F. Suhai, American Oil Chemist's Society 1985 )。
また、ホスファチジル・セリンは、近年生体調整機能を持つことが発見されているが、例えば脳内の神経伝達物質であるアセチル・コリンの生成を助けることなどが知られている。
こうして、ホスファチジル・セリンは、脳を若く保ち活性化させ、高齢者のボケ防止などに有効とされている。また、ホスファチジル・セリンは、体内でリゾホスファチジル・セリンに変換される。
このようなリゾホスファチジル・セリンとしては、請求項2に記載したものが挙げられる。
すなわち、請求項2に係る本発明は、リゾホスファチジル・セリンが、セリンの存在下で、リン脂質にホスファチジル基転移酵素活性を有するホスホリパーゼDを添加・処理することによりホスファチジル・セリンを生成させた後、該ホスファチジル・セリンにホスホリパーゼA2を添加し処理して得られるリゾホスファチジル・セリンである請求項1記載の耐熱性及び酸化安定性に優れた水中油型乳化食品に関するものである。
請求項2に係る本発明において、用いられるセリンとしては、微生物を利用した発酵法による生産物等が主に用いられる。
次に、請求項2に係る本発明において、用いられるリン脂質としては、一般的な卵黄リン脂質、大豆リン脂質や菜種リン脂質等が挙げられる。
卵黄リン脂質の組成は、ホスファチジル・コリン73.0%、ホスファチジル・エタノールアミン15.0%、ホスファチジル・イノシトール0.6%、その他であり、一方、大豆リン脂質の組成は、ホスファチジル・コリン38.2%、ホスファチジル・エタノールアミン17.3%、ホスファチジル・イノシトール16.0%であることが報告されている(新食品機能素材の開発、太田明一監修、シーエムシー社、1996年)。
なお、これらリン脂質は、必ずしも純粋なものでなくてもよく、タンパク質、糖類、塩類等、リン脂質以外の成分が混在したものであっても、ホスホリパーゼDの塩基交換反応に影響しない限り、差し支えない。
請求項2に係る本発明において、用いられるホスホリパーゼDは、ホスファチジル基転移酵素活性作用を有するものと同時に、リン脂質の塩基部分を加水分解する酵素である。水酸基を有する物質、例えばセリン等の存在下で、ホスホリパーゼDをリン脂質に作用させることにより、リン脂質の塩基部分とセリンとの間でエステル交換反応が生じ、その結果、ホスファチジル・セリンが得られる。セリンの他、グリセロール、糖類、ビタミンC、多価アルコール類等、水酸基を有する物質との間で交換反応が可能である。
なお、エステル交換反応の起こり易さは、リン脂質の塩基の種類や水酸基を有する物質の種類によって決まるが、塩基部分としてはエタノールアミン、コリン、セリン等が適しており、水酸基を有する物質としては、セリンやグリセロールが適している。
このようにエステル交換反応の作用があるものをホスファチジル基転移酵素活性があると言う。
このようなホスファチジル基転移酵素活性作用を有するホスホリパーゼDとしては、植物由来のホスホリパーゼD、例えば、キャベツ由来のホスホリパーゼDや、微生物由来のホスホリパーゼD、例えばストレプトマイセス属(Streptomyces)に属する放線菌が生産するホスホリパーゼD等が挙げられる。
このようなホスホリパーゼDとしては、転移活性が高いストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する放線菌が生産するホスホリパーゼD、とりわけ転移活性が高く、生産性も良いことから、ストレプトマイセス・シナモネウム(Streptomyces cinnamoneum;旧名 Streptoverticillium cinnamoneum )が生産するホスホリパーゼDが好適に用いられる。
このホスホリパーゼDは、分子量が約54,000であって、作用至適pHが5〜6であり、作用至適温度が40〜60℃を示すものである(Chiaki Ogino, Yukinari Negi, Toshiko Matsumiya, Koichi Nakaoka, Akihiko Kondo, Shun'ichi Kuroda, Shinji Tokuyama, Ushio Kikkawa, Tsumeo Yamane and Hideki Fukuda; J.Biochem. 125, 263-269 (1999) ; Purification, Characterization, and Sequence Determination of Phospholipase D Secreted by Streptoverticillium cinnamoneum)。
こうしてセリンの存在下で、リン脂質にホスファチジル基転移酵素活性を有するホスホリパーゼDを作用させると、リン脂質の塩基部分とセリンとの間でエステル交換反応が生じ、その結果、ホスファチジル・セリンが得られる。
このようにして得られるホスファチジル・セリンに、ホスホリパーゼA2を添加し処理することにより、目的とするリゾホスファチジル・セリンが得られる。
このようなホスホリパーゼA2としては、ブタの膵臓より得られたものや微生物由来のものなどがあり、具体的には例えば、ノボザイムズジャパン(株)製のレシターゼ10L、ナガセケムテックス(株)社製の微生物由来PLA2ナガセが挙げられる。
本発明に用いた微生物由来のホスホリパーゼA2の作用至適pHは6〜10であり、作用至適温度は40〜50℃を示すものである。
リン脂質がレシチン(ホスファチジル・コリン)を例とした場合での、ホスホリパーゼD及びホスホリパーゼA2処理によって得られる、リゾホスファチジル・セリンの生成経路について、以下に示す。なお、式中、R,Rはアルキル基を示す。
Figure 2006271204
さらに、請求項2に係る発明におけるリゾホスファチジル・セリンの調製方法の概要について、以下に例示する。但し、以下の説明はあくまでも例示であって、これに限定されるものではない。
[リゾホスファチジル・セリンの調製方法]
まずホスファチジル・セリンの調製方法としては大きくは2種類あり、リン脂質の可溶な有機溶媒とセリンを含む水溶液との2相にホスホリパーゼDを作用させる2相反応と、リン脂質を分散させた水溶液にセリンを加え、ホスホリパーゼDを作用させる1相反応とがある。
前者には、非極性のヘキサンやヘプタン等と極性のあるアセトンや酢酸エチル等の混液が有機溶媒としてよく用いられ、これらにリン脂質を溶解した有機溶媒相とpHを調整したセリン水溶液にホスホリパーゼDを添加した水相をそれぞれ調製し、この2相がよく混ざるように攪拌することで、塩基交換反応によるホスファチジル・セリンが生成される。生成したホスファチジル・セリンは、それを含む有機溶媒層を分取し、エバポレーター等により溶剤を除去することで回収することができる。
また、後者は、pHを調整したセリン水溶液にリン脂質を分散させた状態でホスホリパーゼDを作用させ、塩基交換反応によるホスファチジル・セリンが生成される。
その他、リン脂質もしくはホスホリパーゼDを固定化させて反応させる等の方法もあるが、以上の説明はあくまでも例示であって、これに限定されるものではない。
このようにして得られたホスファチジル・セリンを水に分散し、ホスホリパーゼA2を作用させ、加水分解することで、リゾホスファチジル・セリンが得られる。
また、1相反応によりホスファチジル・セリンを調製した場合、ホスホリパーゼDによる塩基交換反応終了後、そのままホスホリパーゼA2を添加し、作用することでもリゾホスファチジル・セリンを得ることができる。
処理後は、70〜90℃で、5〜60分間・加熱することやプロテーゼで処理することにより、残存ホスホリパーゼD及びホスホリパーゼA2を失活させることができる。また
溶媒抽出したり、シリカゲルや活性炭,活性白土等の吸着剤で処理することにより、残存ホスホリパーゼD及びホスホリパーゼA2を除去することができる。
以上の説明はあくまでも例示であって、これに限定されるものではない。
請求項1に係る本発明の特徴は、水相と油相とが乳化剤により水中油型に乳化されてなる水中油型乳化食品において、上記した如きリゾホスファチジル・セリン、特に請求項2に記載した如きリゾホスファチジル・セリンが含有されている点にある。
ここで水中油型乳化食品とは、水相と油相とが乳化剤により水中油型に乳化されてなるものをいい、代表的なものとしてマヨネーズやドレッシング類等が挙げられる。水中油型乳化食品としては、従来公知なものを用いることができる。
請求項1に係る本発明の水中油型乳化食品中におけるリゾホスファチジル・セリンの含有割合は、水中油型乳化食品の水相を構成する原料(水相原料)と油相を構成する原料(油相原料)との配合比率などにより異なるが、請求項3に記載した如く、耐熱性と酸化安定性を同時に満たすためには0.05質量%以上であることが好ましく、0.07質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が最も好ましい。
水中油型乳化食品中におけるリゾホスファチジル・セリンの含有割合が0.05質量%未満では、水中油型乳化食品は耐熱性と酸化安定性を同時に満たすことができなくなるので好ましくない。
一方、リゾホスファチジル・セリンの含有割合の上限値は特に制限されないが、リゾホスファチジル・セリンの含有割合が1.0質量%を超えても、配合量に見合うだけの効果の向上が得られないため、経済的にも好ましくない。
従って、リゾホスファチジル・セリンの含有割合は、好ましくは0.05〜1.0質量%、より好ましくは0.07〜1.0質量%、最も好ましくは0.1〜1.0質量%である。
請求項1に係る本発明の水中油型乳化食品の水相を構成する原料(水相原料)は、マヨネーズやドレッシング類の製造に際して使用される原料や、その配合割合に準じて決定すればよく、特に制限されない。
通常、用いられる水相原料の例としては、水の他に、食塩、食酢、グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム等の調味料、乳化剤、糖類、澱粉、ガム類、香辛料、着色料などがある。乳化剤としては、卵黄が一般的であるが、卵白、乳蛋白、大豆蛋白等を使用でき、これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
一方、油相を構成する原料(油相原料)としては、通常、食品に添加可能な親油性の物質であれば、特に制限がなく、例えば食用植物油脂や、親油性のある着香料等が挙げられる。
食用植物油脂としては、常温で液体の菜種油、大豆油、べに花油、サフラワー油、コーン油、ヒマワリ油等が挙げられ、これらを単独で、又は2種以上混合して使用することができる。
請求項1に係る本発明の水中油型乳化食品における油相と水相の割合については、特に制限はないが、通常は油相10〜90質量%に対して水相90〜10質量%、好ましくは油相30〜80質量%に対して水相70〜20質量%とする。
ここで、油相の比率が10質量%未満であると、調製された水中油型乳化食品が美味しくなく、一方、油相の比率が90質量%を超えると、転相し易くなるので、いずれも好ましくない。
請求項1に係る本発明による水中油型乳化食品の製造は、既知の手法により行えばよく、特に制限されない。
例えば、水以外の水相原料を、水等に分散・溶解し、これらに油相原料を加えて、一般的な撹拌機、例えば市販の万能混合撹拌機を用いて予備乳化する。次いで、コロイドミル等の乳化機により仕上げ乳化を行うことによって、水中油型乳化食品を製造することができる。
ここで、前記のリゾホスファチジル・セリンの添加は、水以外の水相原料を水等へ分散・溶解する際に行えばよい。
このようにして製造された水中油型乳化食品は、リゾホスファチジル・セリンが添加されていることにより、乳化物の破壊が防止されており、長期間酸化安定性に優れたものとなっている。リゾホスファチジル・セリンを添加することにより、水中油型乳化食品の酸化安定性が付与される理由については、必ずしも明らかではないが、酸化のスタート物質であるラジカルを形成する際の触媒となる鉄等金属イオンの封鎖や、油脂の自動酸化で生じるラジカルや過酸化物の消去等に関与しているものと考えられる。
次に、本発明を実施例等により詳しく説明するが、本発明の範囲は、これら実施例等により限定されるものではない。
調製例1[リゾホスファチジル・セリン(本発明品1)の調製]
原料レシチン(ツル−レシチン工業(株)製レシチンSLP−PC70:ホスファチジル・コリン70%以上)100g及び協和発酵(株)製L−セリン420gを0.2M酢酸緩衝液(pH5)に分散し、一晩冷蔵庫に置いた。
次に、これに150mCaClを添加し、レシチン濃度を10%となるように0.2M酢酸緩衝液(pH5)で調整した。均一になるまで撹拌、分散した。
更に、30℃にて1時間保温後、50U/gレシチンとなるようにホスホリパーゼD(ナガセケムテックス(株)製)を添加し、一晩、30℃にて撹拌し、反応させた。反応後、食品用キレート剤ピロリン酸二水素二ナトリウム150mMを添加し、次いで5倍容量のヘプタン:エタノール(10:2)でレシチンを抽出し、残存ホスホリパーゼDを除去した。更に、抽出液を濃縮した後、5倍量のアセトン中に、撹拌しながら添加した。
次に、晶析物をろ過により回収し、減圧乾燥してホスファチジル・セリン80gを得た。
ホスファチジル・セリン72.5%、ホスファチジン酸3.39%、ホスファチジル・エタノールアミン0.15%及びホスファチジル・コリン0.17%の組成のものが得られ、リン脂質中のホスファチジル・セリンの純度は95%以上であった。
上記で得られたホスファチジル・コリン80gを900ml、0.1MTris−HCl中に溶解し、更に30mMとなるようにCaClを添加した。
次に、ホスホリパーゼA2(PLA2ナガセ、ナガセケムテックス(株)製)1250U/gをレシチンに添加し、50℃、16時間撹拌しながら反応させた。次いで、6NHClで反応液のpHを2.3となるように調整し、ろ過により沈殿物を回収した。
更に、沈殿を200mlのアセトンで3回洗浄し、遊離脂肪酸を除去した。次に、沈殿を減圧乾燥し、ヘキサン:エタノール(10:2)で抽出し、ろ過で残存ホスホリパーゼA2を除去した。
最後に、3倍容のアセトンで晶析させ、ろ過し、減圧乾燥して白い粉末のリゾホスファチジル・セリン24gを得た。リゾホスファチジル・セリン、ホスファチジル・セリン及びリゾホスファチジン酸の組成は、それぞれ71%、0.4%及び7.9%であり、全リン脂質中のリゾホスファチジル・セリンの純度は90%以上である。
上記で得られたホスファチジル・セリン及びリゾホスファチジル・セリンのリン脂質組成は、HPLCを用い、以下のような条件にて分析した。
[HPLCによる分析条件]
・使用カラム:Unisil QNH2(5μm、4.6×250mm、GL Science(株)製)
・溶離液:アセトニトリル:メタノール:10mMリン酸二水素アンモニウム(1857:873:270)
・カラム温度:37℃
・流速:1.3ml/min
・検出波長:205nm
尚、リン脂質の純度は上記HPLCで分析したホスファチジル・セリン(PS)及びリゾホスファチジル・セリン(リゾPS)の全グリセロリン脂質に占める割合で計算した。
実施例1〜6
(1)水中油型乳化食品(マヨネーズ)の調製
前記調製例1で得られたリゾホスファチジル・セリン(本発明品1)を下記第1表に示す所定量用い、第1表に示す配合組成の6種の水中油型乳化食品(マヨネーズ)2kgをコロイドミルにてそれぞれ調製した。
すなわち、水相原料である卵黄、食塩、食酢(10%酸度)及び水、並びに前記調製例1で得られたリゾホスファチジル・セリン(本発明品1)を混合溶解して水相を調製し、この水相に油相原料として菜種油を加え、ホバルトミキサー(ホバルト社製)にて予備乳化した。次いで、コロイドミル(クリアランス:4/1000インチ、回転数:3000rpm)により仕上げ乳化を行って、水中油型乳化食品(マヨネーズ)を調製した。
(2)水中油型乳化食品(マヨネーズ)の耐熱性の評価
上記(1)で得られた水中油型乳化食品(マヨネーズ)について、耐熱性の評価を以下のようにして行った。
約25g容のプラスチック容器に、上記(1)で得られた水中油型乳化食品(マヨネーズ)20gを充填・シールした後、90℃にて1時間加熱した。冷却後、水中油型乳化(マヨネーズ)の耐熱性を次の3段階で評価した。なお、評価は経験豊かな5名のパネラーによる視覚観察の平均値で示した。
結果を表1に示す。
〔耐熱性の評価〕
・安定:油分離していない。
・やや安定:僅かな油分離がみられる。
・不安定:かなりの油分離がみられる。
(3)水中油型乳化食品(マヨネーズ)の酸化安定性の評価
上記(1)で得られた各水中油型乳化食品(マヨネーズ)の酸化安定性を次のような方法で評価した。
すなわち、約200g容のガラス瓶に、上記(1)で得られた水中油型乳化食品(マヨネーズ)を約100g充填し、1重のサランラップで瓶の口を密封し、34℃、暗所の条件下に保管した。保管してから1、3、5及び7週間後の水中油型乳化食品(マヨネーズ)の表層の分離状態により、酸化安定性を次の3段階で評価した。評価は経験豊かな5名のパネラーによる視覚観察の平均値で示した。
結果を表1に示す。
〔酸化安定性の評価〕
・安定:油分離しておらず、表層の褐変も僅かである。
・やや安定:油分離していないが、表層が褐変している。
・不安定:油分離している。
比較例1
実施例1〜6において、前記調製例1で得られたリゾホスファチジル・セリン(本発明品1)を全く添加しなかったこと以外は、実施例1〜6と同様にして行い、水中油型乳化食品(マヨネーズ)を調製し、更に実施例1〜6と同様にして耐熱性及び酸化安定性を評価した。
結果を表1に示す。
Figure 2006271204
表1から、以下のようなことが分かる。
リゾホスファチジル・セリンを添加していない比較例1で得られた水中油型乳化食品(マヨネーズ)の酸化安定性は、3週間後ではやや安定なものの、5週間後では分離しており、酸化安定性は低い。
これに対し、リゾホスファチジル・セリンが、水中油型乳化食品(マヨネーズ)に、0.05質量%、0.1質量%、0.3質量%、0.5質量%、0.7質量%及び1.0質量%添加された実施例1〜6で得られた水中油型乳化食品(マヨネーズ)の耐熱性は、いずれもやや安定又は安定であり、耐熱性の高いことが分かる。
また、実施例1〜6で得られた水中油型乳化食品(マヨネーズ)の酸化安定性は、7週間という長期間酸化条件に置かれても、油分離がなく、いずれもやや安定又は安定であり、酸化安定性の高いことが分かる。
このことから、リゾホスファチジル・セリンを添加することによって、水中油型乳化(マヨネーズ)の耐熱性及び酸化安定性が向上することは明らかである。
本発明によれば、リゾホスファチジル・セリンを、食品、特にマヨネーズやドレッシング類等の水中油型乳化食品に添加し含有させることにより、化学抗酸化剤を用いることなく、該食品に優れた耐熱性及び長期間の優れた酸化安定性を付与することができる。
すなわち、本発明の水中油型乳化食品は、優れた耐熱性を有するものである。
また、本発明の水中油型乳化食品は、生体への影響が懸念される化学抗酸化剤を含有しないため、消費者が敬遠することなく、安心して食することができ、しかも長期間酸化安定性に優れたものである。
従って、請求項1〜3に係る本発明は、食品工業分野において有用である。

Claims (3)

  1. 水相と油相とが乳化されてなる水中油型乳化食品において、リゾホスファチジル・セリンが含有されていることを特徴とする耐熱性及び酸化安定性に優れた水中油型乳化食品。
  2. リゾホスファチジル・セリンが、セリンの存在下で、リン脂質にホスファチジル基転移酵素活性を有するホスホリパーゼDを添加・処理することによりホスファチジル・セリンを生成させた後、該ホスファチジル・セリンにホスホリパーゼA2を添加し処理して得られるリゾホスファチジル・セリンである請求項1記載の耐熱性及び酸化安定性に優れた水中油型乳化食品。
  3. リゾホスファチジル・セリンが、0.05質量%以上含有されていることを特徴とする請求項1又は2記載の耐熱性及び酸化安定性に優れた水中油型乳化食品。
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