JP4135857B2 - 赤外線センサの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、赤外線の入射光を吸収することにより温度を変え、その温度変化により電気抵抗値を変えることによって赤外線の放射強度の信号を読み出すボロメータ方式の非冷却型赤外線センサに関する。
【0002】
【従来の技術】
ボロメータは基板材料から熱的に隔絶された金属あるいは半導体薄膜の電気抵抗の温度変化を利用するものである。一般に、このボロメータ用材料の電気抵抗の温度係数(TCR)が大きくなると赤外線センサの温度分解能(NETD)が小さくなり感度が向上する。
【0003】
ニッケル鉄合金等の合金薄膜はTCRが0.5%/K程度と小さいため、高感度の赤外線センサに用いるボロメータ用抵抗体膜としては、酸化バナジウム薄膜、ペロブスカイト型Mn酸化物薄膜、及びYBaCu薄膜等の導電性酸化物薄膜が有利であると考えられている。
【0004】
というのは、これらの導電性酸化物薄膜が、酸化バナジウム薄膜で2%/K程度、YBaCu薄膜で2〜5%/K程度、また、ペロブスカイト型Mn酸化物で、特開2000−95522号に記載されているように、この材料特有の磁気相転移に伴う絶縁体−金属相転移を利用することによって5%/K以上、中には10%/Kを超える非常に高いTCRを示すからである。
【0005】
これらの酸化物薄膜をボロメータ用抵抗体に用いた赤外線センサの構造の一例を図2に示す。
【0006】
図2で、1はSi基板、2はブリッジ構造体、3は空隙、4はボロメータ用抵抗体、5は配線、6は保護膜、7は赤外線吸収膜、8は赤外線反射膜である。図2に示されているように、一般的にボロメータ型の赤外線センサは、ボロメータ用抵抗体4がSi基板1から空隙3を介して隔離されたマイクロブリッジ構造を有している。このため、ボロメータ用抵抗体4をシリコン基板1から熱的に分離させることができる。そして、ボロメータ用抵抗体4に上記の中から選ばれた酸化物薄膜が用いられる。
【0007】
このような構造の下、赤外線がセルに入射するとまず赤外吸収膜7で一部が吸収され、一部透過した赤外線も赤外線反射膜8で反射され、結果として入射した赤外線は赤外線吸収膜7に完全に吸収されることになる。吸収された赤外線は熱となりダイアフラムを加熱してボロメータ用抵抗体4の電気抵抗を変化させる。
【0008】
そして、ボロメータ用抵抗体4の両端からブリッジ構造体2の支持部を伝ってSi基板1までつながった配線5を介して、Si基板1中に形成された読み出し回路によって信号が検出される。
【0009】
上記の赤外線センサを製造する工程は次のとおりである。
【0010】
まず、読み出し回路が形成されたSi基板1上にWSi等の赤外で反射率が高い金属をスパッタ法で成膜し、赤外線反射膜8を形成する。
【0011】
次に、この赤外線反射膜8上に多結晶シリコン膜等で犠牲層を将来の空隙3の位置に形成する。この多結晶シリコン膜はCVD等によって形成される。この犠牲層上にSiNやSiOのような絶縁膜をプラズマCVD法で成膜して、ブリッジ構造体2が形成される。次に熱伝導率の小さい金属、例えばTi等をブリッジ構造体2上にスパッタ法で形成し、露光、現像、エッチング工程により配線5が形成される。
【0012】
引き続き、ボロメータ用抵抗体4である酸化バナジウム薄膜、ペロブスカイト型Mn酸化物薄膜、または、YBaCu薄膜などの酸化物薄膜がスパッタ法等で成膜される。このボロメータ用抵抗体も上記の配線と同様に露光、現像、エッチング工程によって形成される。このボロメータ用抵抗体を保護するために、抵抗体を含むブリッジ構造体2上には、SiO等の絶縁膜がプラズマCVD法によって成膜され保護膜6となる。
【0013】
さらに、この保護膜6上には、反応性スパッタ法などによりTiN等の赤外吸収膜7が形成される。最後に、ヒドラジン等により犠牲層をウエットエッチングして空隙3が形成される。以上の多くの工程を経ることによって、ボロメータ用抵抗体4を含む部分が宙に浮いた構造のダイアフラムが完成する。
【0014】
このような構造を採用することによって、赤外線吸収膜7によって吸収された赤外線の熱が外部に逃げにくくなり、ボロメータ用抵抗体4の温度上昇に効率的に利用される。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
前記のごとくボロメータ方式の非冷却型赤外線センサはボロメータ用抵抗体4を含む部分を宙に浮かせた構造のダイアフラムを形成することによって、効率的に赤外線を検知できる構造が採用されている。
【0016】
非冷却型赤外線センサの冷却型赤外線センサに対するメリットは、形状・重量面での操作性に加えて低価格という点にある。しかしながら、従来の非冷却型赤外線センサは、その製造工程が非常に複雑であるという問題点を有していた。
【0017】
例えば、成膜プロセスに着目すると、赤外線反射膜8、ボロメータ用抵抗体4、配線5、及び、赤外吸収膜7はスパッタリング法によって成膜される。また、多結晶シリコン膜等の犠牲層、ブリッジ構造体2、及び保護膜6はCVD法によって成膜される。
【0018】
さらに、配線5やボロメータ用抵抗体4等各層を形成するごとにレジスト塗布、乾燥、露光、現像、エッチング、レジスト剥離、洗浄の多くの製造工程が必要である。すなわち、従来の製造工程では、コストのかかる真空成膜プロセスを多く用いること、及びパターニングにおいても多くの工程が必要とされるため、製造コストが高いという問題が生じていた。
【0019】
したがって、上記の真空成膜プロセスやパターニング工程を少しでも低減できれば製造コストが下がり、より低価格の非冷却型赤外線センサを提供することが可能になるはずである。
【0020】
次に、上記ボロメータ方式の非冷却型赤外線センサの製造時には、ボロメータ用抵抗体4の成膜温度も問題となる。これは既に述べたように、ボロメータ用抵抗体4が、熱絶縁用の空隙3を介して、信号読み出し回路が配置されているSi基板上1に形成されるためである。
【0021】
Si基板中に形成された信号読み出し回路を破壊しないためには成膜温度は400〜500℃以下と低いことが要求される。さらに、ボロメータ用抵抗体4のパターンを形成する際にイオンミリング等の物理的なエッチング方法を利用することもできない。物理的なエッチングによって下層に形成されたSiの信号読み出し回路がダメージを受けるためである。
【0022】
このように、特に、ボロメータ用抵抗体4に使用する導電性酸化物薄膜には、大きなTCRという特性のほかに、その製造時にSiの製造プロセスとの整合性も併せ持つことが要求される。製造プロセス上の観点から考えると、上記の材料のうち、酸化バナジウム薄膜は最も適した材料である。
【0023】
これは、特開2000−143243号に記載されているように、酸化バナジウム薄膜を形成する際のアニール温度が400〜550℃程度と低いからである。また、この薄膜は物理的なエッチング方法を利用しなくても、反応性イオンエッチング等によってパターニングすることができるという利点もある。ただし、酸化バナジウム薄膜のTCRは2%/K程度であるため、今後、非冷却型赤外線センサの高感度化を目指す上では材料的に不十分である。
【0024】
より高感度の非冷却型赤外線センサを実現するためには、よりTCRの大きいYBaCu薄膜やペロブスカイト型Mn酸化物の方が有利である。しかしながら、これらの薄膜は大きなTCRを得るためには、ゾルゲル法の場合で1000℃程度、スパッタリング法等の場合で700℃以上の高い成膜温度が必要である。
【0025】
このような高い成膜温度が必要とされる限りにおいては、たとえ大きなTCRを持っている魅力的な薄膜といえども赤外線センサの製造プロセスに適用することは難しい。さらに、YBaCu薄膜やペロブスカイト型Mn酸化物薄膜をパターニングしてボロメータ用抵抗体を形成するためには、反応性イオンエッチング等が適用できないため、イオンミリング等の物理的なエッチング法を用いなければならない。この点においても、これらの薄膜を赤外線センサのボロメータ用抵抗体膜4に応用するのは難しいと考えられている。
【0026】
このように、赤外線センサのボロメータ用抵抗体膜4としては、酸化バナジウム薄膜、YBaCu薄膜やペロブスカイト型Mn酸化物等が有望であるが、性能面及び従来の製造方法に基づく限りにおいては、製造プロセス面においてそれぞれ問題点を有していた。
【0027】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、高感度で製造コストの安価なボロメータ方式非冷却赤外線センサにおいて、製造工程が簡単な赤外線センサの製造方法を提供することにある。
【0028】
【課題を解決するための手段】
本発明は、第一に、赤外線の入射光を吸収することにより温度を変え、その温度変化により電気抵抗値を変えることによって該赤外線の放射強度の信号を読み出す方式の赤外線センサにおいて、基板上に設けた空隙を介して形成されるブリッジ構造体、ボロメータ用抵抗体膜、及び、この抵抗体膜を含む表面に設けた保護層を、金属有機化合物を溶媒に溶解させて溶液状とし、塗布乾燥後に、波長400nm以下のレーザー光を照射することによって炭素−酸素結合を切断して分解し酸化物薄膜として形成することを特徴とする。
【0029】
第二に、上記第一に記載した製造方法において、ボロメータ用抵抗体膜が酸化バナジウム薄膜、ペロブスカイト型マンガン酸化物薄膜、及び、YBaCu薄膜のいずれかであることを特徴とする。
【0030】
第三に、上記第一に記載した製造方法において、ブリッジ構造体がSiO薄膜、TiO薄膜、Al薄膜のいずれかであることを特徴とする。
【0031】
第四に、上記第一に記載した製造方法において、保護層がSiO薄膜、TiO薄膜、Al薄膜のいずれかであることを特徴とする。
【0032】
第五に、上記第一に記載した製造方法において、波長400nm以下のレーザー光としてArF、KrF、XeCl、XeF、Fから選ばれるエキシマレーザーを用いることを特徴とする。
【0033】
第六に、上記第一に記載した製造方法において、波長400nm以下のレーザー光の照射を、複数段階で行うことを特徴とする。
【0034】
第七に、上記第一及び第六に記載した製造方法において、波長400nm以下のレーザー光の照射を複数段階で行う方法において、最初の段階の照射を金属有機化合物を完全に分解させるに至らない程度の弱い照射で行い、次に上記第ニから第四に記載した酸化物薄膜に結晶化または非晶質化させることができる程度の強い照射を行うことを特徴とする。
【0035】
第八に、上記第一に記載した製造方法において、波長400nm以下のレーザー光を照射する際に、金属有機化合物を塗布した基板を500℃以下の温度に加熱することを特徴とする。
【0036】
第九に、上記第一に記載した製造方法において、金属有機化合物が金属有機酸塩であることを特徴とする。
【0037】
第十に、上記第一および第九に記載した製造方法において、上記金属有機酸塩の金属がV、La、Nd、Pr、Ca、Sr、Ba、Mn、Y、Cu、Si、Ti、Alからなる群から選ばれるものであることを特徴とする。
【0038】
第十一に、上記第一および第八〜十に記載した製造方法において、上記金属有機酸塩の有機酸が、ナフテン酸、2−エチルヘキサン酸、カプリル酸、ステアリン酸、ラウリン酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、クエン酸、乳酸、安息香酸、サリチル酸、エチレンジアミン四酢酸からなる群から選ばれるものであることを特徴とする。
【0039】
第十二に、上記第一に記載した製造方法において、金属有機化合物が金属アセチルアセトナート錯体であることを特徴とする。
【0040】
第十三に、上記第一および第十二に記載した製造方法において、上記金属アセチルアセトナート錯体の金属がV、La、Nd、Pr、Ca、Sr、Ba、Mn、Y、Cu、Si、Ti、Alからなる群から選ばれるものであることを特徴とする。
【0041】
第十四に、上記第一、第十二および第十三に記載した製造方法において、金属アセチルアセトナート錯体を溶解させる溶媒が酢酸ブチル、トルエン、アセチルアセトン、メタノールから選ばれるものであることを特徴とする。
【0042】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の赤外線センサの製造方法について詳細に説明する。
【0043】
本発明は、赤外線の入射光を吸収することにより温度を変え、その温度変化により電気抵抗値が変化して、入射した赤外線の強度の信号を読み出す方式の図2に示すタイプのボロメータ方式の非冷却赤外線センサに関するものである。
【0044】
そして、基板上に設けた空隙を介して形成されるブリッジ構造体2、ボロメータ用抵抗体膜4、及びこの抵抗体膜を含む表面に設けた保護層6の各層を、金属有機化合物を溶媒に溶解させて溶液状とし、塗布乾燥後に、波長400nm以下のレーザー光を照射することによって炭素−酸素結合を切断して分解し酸化物薄膜として形成することに特徴がある。
【0045】
有機金属化合物の溶液を基板上に塗布し、乾燥させた後に、波長400nm以下のレーザー光を照射すると、塗布された金属含有有機金属化合物が分解され、さらに、室温あるいは400℃以下の低温で結晶化させることができるが、本発明ではこの効果を利用することによって赤外線センサの製造工程の簡略化に成功した。
【0046】
本発明による製造方法を用いれば、ブリッジ構造体2、ボロメータ用抵抗体膜4及び保護層6の各薄膜を形成する際にCVD法やスパッタリング法等真空成膜プロセスを用いる必要がない。さらに、低温での成膜が可能となるため、TCRは大きいが成膜温度が500℃以上と高いので従来技術では適用できないと考えられていたペロブスカイト型Mn酸化物やYBaCu薄膜をボロメータ用抵抗体膜4に適用することも可能になる。
【0047】
ボロメータ用抵抗体膜4としては、酸化バナジウム薄膜、ペロブスカイト型マンガン酸化物薄膜、及び、YBaCu薄膜などの酸化物薄膜を用いる。酸化バナジウム薄膜は成膜温度が500℃以下と低いので製造プロセス上の問題点は少ないが、TCRが2%/Kとやや低い。
【0048】
これに対して、ペロブスカイト型マンガン酸化物薄膜やYBaCu薄膜、特に、ペロブスカイト型マンガン酸化物薄膜は、10%/Kを越える高いTCRを実現することができるため、高感度の赤外線センサを実現するにはより有利な材料である。
【0049】
一方、ブリッジ構造体2及び保護層6には、絶縁体であるSiO薄膜、TiO薄膜、Al薄膜などの酸化物薄膜を用いる。以上の酸化物薄膜の厚さは、目的に応じて0.01〜10μm程度の間で変化させることができる。
【0050】
ブリッジ構造体2及び保護層6に導電性があるとボロメータ用抵抗体膜4の電気抵抗率の変化の検出感度が悪くなるので、これらの層には非常に抵抗の高い良好な絶縁特性が要求される。
【0051】
上記の有機金属酸化物を塗布した基板を大気中あるいは雰囲気制御することが可能なチャンバー中にセットし、所定の光強度、繰り返し数で波長400nm以下のレーザー光を照射すると、既に述べたように、塗布された金属含有有機金属化合物の炭素−酸素結合が切断されて分解し、さらに、低温で結晶化させることができる。
【0052】
レーザー光には加熱効果が少ない紫外線レーザーとして、XeF(351nm)、XeCl(308nm)、KrF(248nm)、ArF(193nm)、F(157nm)等のエキシマレーザーやArイオンレーザー(第2高調波:257nm)などを用いる。
【0053】
一例として、ArFエキシマレーザーを用いた場合の照射条件は、繰り返し数1〜20Hz、強度10〜70mJ/cm、照射時間3〜15分程度で上記の酸化物を結晶化させたり、あるいは、非晶質構造にすることができる。
【0054】
なお、この際、レーザーの照射強度が弱すぎると結晶化が起こらず照射の効果がなく、また、強度が強すぎるとアブレーションが起こって薄膜材料が蒸発してしまうので、照射強度は上記の範囲で行い、かつ対象となる酸化物薄膜の種類によって最適な条件で行うことが望ましい。
【0055】
上記の条件で、例えば、ペロブスカイト型Mn酸化物用の塗布溶液にエキシマレーザーを照射することによって、従来技術では700℃以上の非常に高い成膜温度が必要とされたが、本発明では、室温付近の低い温度でもペロブスカイト型Mn酸化物薄膜を作製することが可能になった。
【0056】
このレーザー光の照射は複数段階、少なくとも2段階からなる多段階に分けて行うことも有効であり、1段階では分解できないものが多段階に分けて行うと分解を完全に行うことができる。この際、最初の段階の照射を金属有機化合物を完全に分解させるに至らない程度の弱い照射で行い、次にペロブスカイト型Mn酸化物に結晶化させることができる程度の強い照射を行うことが望ましい。
【0057】
この複数多段階に分けて行う方法は、金属有機化合物として金属有機酸塩を利用する場合に特に有効である。金属有機酸塩を複数多段階で分解させると、安定で通常一段階では分解困難な金属有機酸塩を分解することができるようになる。この複数段階で照射することが有効な理由としては、最初の段階での弱いレーザー光の照射によって金属有機化合物を準安定な状態まで励起させることができ、次の段階のより強いレーザー光の照射によって炭素−酸素結合が切断されて金属酸化物への分解、結晶化が有効に行われるためと推測される。
【0058】
一方、例えば、ある種の金属有機酸塩などの場合に、一段階でのレーザー光の照射を行うと金属有機酸塩分子が容易に蒸発してしまい、酸化物薄膜を得られない場合がある。二段階照射の条件としては、一例として、ArFエキシマレーザーを使用し、最初の照射を10mJ/cm、50Hz、30秒間行い、引き続き二度目の照射を50mJ/cm、10Hz、5分間行うような照射方法がある。
【0059】
上記のレーザー光を照射する際に、金属有機化合物を塗布した絶縁性基板を400℃以下の温度に加熱することによって、室温で照射した場合よりも上記酸化物薄膜の結晶性をさらに向上させることが可能になる。
【0060】
これらの酸化物薄膜を形成する際に、金属有機化合物を用いるのは、該化合物を構成する有機基が、塗布後に分解させたときに金属イオン同士が凝集し、結晶成長し、粒化を引き起こさないように、金属イオン同士を立体障害効果により互いに隔離する役割を果たしている。この有機基には立体障害効果を果たすものであれば使用することができる。
【0061】
金属有機化合物としては、論文ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(Japanese Journal of Applied Physics)38巻、L823ページ、及び、1999年、38巻、L1112ページ、1999年に見られるように、金属有機酸塩および有機金属錯体化合物が挙げられる。これらの金属有機化合物は2種類以上の混合物としても使用することができる。
【0062】
金属有機酸塩は、各種金属のイオンと各種有機酸を中和させることにより得られる塩である。有機酸としては、カルボン酸が好ましく、例えば、脂肪族カルボン酸、脂環式カルボン酸、および芳香族カルボン酸が挙げられる。
【0063】
脂肪族カルボン酸としては、2−エチルヘキサン酸、カプリル酸、ステアリン酸、ラウリン酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、クエン酸、乳酸、エチレンジアミン四酢酸等が挙げられる。
【0064】
脂環式カルボン酸としては、例えばナフテン酸が挙げられる。芳香族カルボン酸としては、安息香酸、サルチル酸等が挙げられる。金属有機酸塩を構成する金属としてはV、La、Nd、Pr、Ca、Sr、Ba、Mn、Y、Cu、Si、Ti、Alからなる群から選ばれるものを用いる。本発明の場合には、各酸化物を構成する金属の有機酸塩を目標とする組成比に混合して使用する。
【0065】
有機金属錯体は金属に有機基が配位して構成される化合物である。具体的には、金属アセチルアセトナートを挙げることができる。金属アセチルアセトナートは、アセチルアセトンに金属が結合して形成される金属錯体である。
【0066】
金属アセチルアセトナートは、目的とする金属酸化物の金属アセチルアセトナートが溶媒に溶解させることにより溶液となり、分解させたときに金属酸化物となるものであれば特別限定されない。例えば、金属にV、La、Nd、Pr、Ca、Sr、Ba、Mn、Y、Cu、Si、Ti、Alからなる群から選ばれるアセチルアセトナートを挙げることができる。本発明では、上記の各酸化物を構成する金属のアセチルアセトナート及び他の金属有機化合物を目標とする組成比に混合して使用する。
【0067】
上記の有機金属化合物は溶媒に溶解させることにより、金属有機化合物溶液の状態にして使用する。溶媒の種類や使用量は金属有機化合物を溶解できるものや量を使用する。例えば金属有機酸塩の場合には、有機溶媒が用いられる。有機溶媒としては金属有機酸塩または金属アセチルアセトナートを溶解しうるものである。この際、各々の金属有機化合物には溶媒に対する溶解性の点で相違があるので、均一に溶解できるように溶媒を選択する必要がある。
【0068】
溶媒としては、例えばヘキサン、オクタン、ベンゼン、トルエン、テトラリン等の極性のない溶媒である炭化水素類などがある。この他に、アセチルアセトン、メタノールなどのアルコール類、アミン類、ピリジン、酢酸、プロピオン酸などの有機酸、酢酸ブチルなどのエステル類などを用いることができる。また、これらの有機溶媒は、金属アセチルアセトナートの種類に応じて1種または2種以上の組み合わせを用いてもよい。
【0069】
【実施例】
以下に、本発明の赤外線センサの製造方法について実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0070】
(実施例1)
読み出し回路が形成されたSi基板1上にWSi等の赤外で反射率が高い金属をスパッタ法で成膜し、赤外線反射膜8とした。この赤外線反射膜の作製には従来技術をそのまま用いた。
【0071】
次に、この赤外線反射膜8上にアセチルアセトナートTi溶液をn−酢酸ブチルで2倍に希釈した溶液を塗布、150℃での乾燥の工程を数回繰り返して図1(a)に示すような形状の犠牲層9を形成した。
【0072】
この犠牲層9に図のようにArFエキシマレーザー光10を大気中室温で照射した。レーザーの繰り返し周波数は20Hz、レーザー強度は50mJ/cmで照射を行った。その結果、図2(b)に見られるように犠牲層9のうち、レーザーが侵入して照射される表面付近の薄い層だけが結晶化してルチル構造のTiO薄膜が得られた。なお、この際、エキシマレーザーの侵入しない犠牲層9の内部には何の化学的な変化も起こらないのはいうまでもないことである。
【0073】
このTiO薄膜層がブリッジ構造体2となる。従来の製造方法でこのブリッジ構造体2を作製するためには、まず多結晶シリコン膜等を赤外線反射膜8上にCVD法で形成し、その後、さらにこの薄膜上にSiOのような絶縁膜をプラズマCVD法で成膜するというように、真空成膜プロセスを最低でも2回行う必要があった。しかし、本発明による製造方法を用いれば、真空プロセスを用いなくてもブリッジ構造体2を形成できるというメリットがある。
【0074】
このブリッジ構造体2上に熱伝導率の小さい金属、例えばTi等をスパッタ法で成膜し、通常の露光、現像、エッチング工程によって配線5を形成した。次に、金属有機化合物としてナフテン酸V溶液をトルエンに溶解させた溶液をブリッジ構造体2上にスピンコートした後、200℃、10分間乾燥し、この工程を5回繰り返してナフテン酸V層11を図1(c)のように形成した。
【0075】
引き続いて、ボロメータ用抵抗体4のパターン部分のみ、波長400nm以下のレーザー光を透過させる形状のマスク12を、ブリッジ構造体2上にセッティングした。この状態で、ArFエキシマレーザー光10を10mJ/cm、50Hz、30秒間、さらに50mJ/cm、10Hz、5分間大気中室温で照射した。この結果、レーザー光の照射されたボロメータ用抵抗体4の部分のみVO薄膜に結晶化し、マスクに隠されたその他のナフテン酸V層には化学的な変化は起こらず、金属有機化合物のままの状態で残った。
【0076】
次に、有機溶剤で洗浄すると非照射部分であるナフテン酸V層11は溶解して選択的に除去され、結晶化したボロメータ用抵抗体4の部分のみがブリッジ構造体2上に形成された。なお、この段階では犠牲層9の部分は表面に形成されたブリッジ構造体2によって保護されているため、有機溶剤には接触せず、そのままの状態で残っていた。
【0077】
従来技術では、このボロメータ用抵抗体4を形成するためには、スパッタリング法等によるVO薄膜形成という真空プロセスとその後の露光、現像、エッチング工程が必要とされる。しかし、本発明による方法を用いれば、このような複雑で多段階の工程を行う必要無くVO薄膜からなるボロメータ用抵抗体4を形成することができた。
【0078】
次に、ボロメータ用抵抗体4を含むブリッジ構造体2の上に図2(d)に見られるように、アセチルアセトナートTi溶液をn−酢酸ブチルで2倍に希釈した溶液を塗布、150℃で乾燥させて厚さ100nmのアセチルアセトナートTi層を形成した。この層に、図のようにArFエキシマレーザー光10を大気中室温で照射した。レーザーの繰り返し周波数は20Hz、レーザー強度は50mJ/cmで照射を行った。
【0079】
その結果、アセチルアセトナートTi層はすべてレーザー光によって照射されて結晶化しルチル構造のTiO薄膜になった。このTiO薄膜層がボロメータ用抵抗体4を外部から遮断する保護層6になる。従来の製造方法では、この保護層6を作製するためには、SiO等の絶縁膜をプラズマCVD法で成膜する必要があった。
【0080】
しかし、本発明による製造方法ではこの保護層6の形成においても真空成膜プロセスを用いる必要がない。最後に、この保護層6上に反応性スパッタ法などによりTiN等の赤外吸収膜7を形成した。
【0081】
この後、エキシマレーザー光をブリッジ構造体2の一部にスリット上に照射してアブレーションさせ、スリットを形成した。引き続いて、有機溶剤で洗浄すると犠牲層9を構成していたアセチルアセトナートTi層が溶解して除去され、空隙3が形成された。このような形成方法によってボロメータ用抵抗体4が宙に浮いた構造のダイアフラムを形成した。
【0082】
このセルが赤外線センサとして作動する原理は以下のとおりである。
【0083】
赤外線がセルに入射するとまず赤外吸収膜7で一部が吸収され、一部透過した赤外線も赤外線反射膜8で反射され、結果として入射した赤外線は赤外線吸収膜7に完全に吸収されることになる。吸収された赤外線は熱となりダイアフラムを加熱してボロメータ用抵抗体4の電気抵抗を変化させるためである。
【0084】
既に述べたように、従来技術による方法では、各層を形成するたびに真空成膜プロセスが必要とされ、また、それと共に、露光、現像、エッチング工程が必要とされるので、図2(e)にみられるダイアフラム構造を形成するためには非常に多くの工程が必要とされていた。
【0085】
一方、本発明では、真空成膜プロセスは、赤外線反射膜8、配線5、及び、赤外線吸収膜7を形成する場合だけに用いればよく、また、露光、現像、エッチング工程も大幅に減らすことができるので、非常に少ない工程で製造することが可能となり、赤外線センサの低コスト化に大きく貢献できることとなった。
【0086】
(実施例2)
読み出し回路が形成されたSi基板1上に実施例1と同様の方法で赤外線反射膜8を形成した。次に、Siの2−エチルヘキサノラ−ト(アルコキシド)をトルエンとアセチルアセトンの混合溶液に溶解させた溶液を塗布、150℃での乾燥の工程を数回繰り返して図1(a)に示す形状の犠牲層9を形成した。
【0087】
この犠牲層9に図のようにArFエキシマレーザー光10を大気中室温で照射した。レーザー光は、最初に繰り返し周波数は50Hz、レーザー強度は10mJ/cmで30秒間、次に繰り返し周波数は10Hz、レーザー強度は30mJ/cmで5分間の二段階照射を行った。
【0088】
その結果、図2(b)の犠牲層9のうち、レーザー光が侵入して照射された表面付近の数ミクロン程度の薄い層だけが変化して非晶質のSiO薄膜になった。なお、この際、エキシマレーザーの侵入しない犠牲層9の内部には化学的な変化が起こらなかったのはいうまでもないことである。このSiO薄膜層がブリッジ構造体2となる。
【0089】
このブリッジ構造体2上に熱伝導率の小さい金属、例えばTi等をスパッタ法で成膜し、通常の露光、現像、エッチング工程によって配線5を形成した。次に、ブリッジ構造体2上にボロメータ用抵抗体4として、ペロブスカイト型Mn酸化物薄膜及びYBaCu薄膜の二種類を以下に示す方法で作製した。
【0090】
まず、ペロブスカイト型Mn酸化物薄膜は、金属有機化合物として金属有機酸系のナフテン酸La溶液、ナフテン酸Sr溶液、ナフテン酸Mn溶液を用い、La、Sr、Mnの比率が0.8:0.2:1になるようにトルエンに溶解させた。
【0091】
この溶液を、ブリッジ構造体2上にスピンコートした後、200℃、10分間乾燥し、この工程を5回繰り返してナフテン酸系La−Sr−Mn層11を図1(c)のように形成した。引き続いて、ボロメータ用抵抗体4のパターン部分のみ、波長400nm以下のレーザー光を透過させる形状のマスク12を、ブリッジ構造体2上にセッティングした。この状態で、Si基板1を250℃に加熱して、ArFエキシマレーザー光を10mJ/cm、50Hz、30秒間、さらに50mJ/cm、10Hz、5分間大気中で照射した。
【0092】
この結果、レーザー光の照射されたボロメータ用抵抗体4の部分はペロブスカイト型Mn酸化物に結晶化したが、マスクに隠されたその他の部分には化学的な変化は起こらず、金属有機化合物のままの状態で残った。この段階で、有機溶剤で洗浄すると非照射部分が溶解して選択的に除去され、結晶化したボロメータ用抵抗体4の部分のみがペロブスカイト型Mn酸化物薄膜としてブリッジ構造体2上に形成された。
【0093】
なお、この段階では犠牲層9の部分は表面に形成されたブリッジ構造体2によって保護されているため、有機溶剤には接触せず、そのままの状態で残っていた。このようにして形成されたペロブスカイト型Mn酸化物薄膜は、300K付近にこの材料特有の絶縁体−金属相転移に伴う大きな電気抵抗の変化を示すことが観察された。この相転移に伴って300K付近で10%/K程度の大きなTCRが得られた。この値はVO系薄膜で一般的に得られる2%/K程度のTCRと比べると非常に大きな値であり、赤外線センサの高感度化に有利である。また、この温度付近での電気抵抗率も1Ωcm程度であり、ボロメータ用材料に必要とされる電気抵抗率の範囲内に入っていた。
【0094】
以上のように、本発明による製造方法を用いれば、従来高い成膜温度が必要とされていたペロブスカイト型Mn酸化物を500℃以下の低温で成膜することが可能である。
【0095】
また、この薄膜の形成時にマスクを使用することによって物理的なエッチング方法を用いることなく、ボロメータ用抵抗体4のパターンを直接形成可能であることから、従来の課題を同時に克服することができるので、赤外線センサの製造方法として非常に画期的である。
【0096】
次に、YBaCu薄膜は、金属有機化合物としてアセチルアセトナートY溶液、アセチルアセトナートBa溶液、アセチルアセトナートCu溶液を用い、Y、Ba、Cuの比率が1:2:3になるように酢酸ブチルに溶解させた。この溶液を、ブリッジ構造体2上にスピンコートした後、200℃、10分間乾燥し、この工程を5回繰り返してアセチルアセトナート系Y−Ba−Cu層11を図1(c)のように形成した。
【0097】
この状態で、このブリッジ構造体2上にボロメータ用抵抗体4のパターン部分を隠し、その他の部分はレーザー光を透過させるマスクを設置し、500mJ/cmの比較的強い強度のレーザーを3分間照射した。この結果、ボロメータ用抵抗体4のパターン部分以外は強度の強いレーザー光によってアブレーションされ、有機金属化合物が除去された。次に、このマスクを取り外して、ArFエキシマレーザー光を10mJ/cm、50Hz、30秒間、さらに50mJ/cm、10Hz、5分間酸素雰囲気中300℃で照射した。この結果、二回目にレーザー光の照射されたボロメータ用抵抗体4の部分のみがペロブスカイト型結晶構造を有するYBaCu薄膜になった。
【0098】
このYBaCu薄膜は300K付近で半導体的な電気抵抗の温度変化を示し、TCRは4%/Kで温度によらずほとんど一定の値を示した。また、この温度付近での電気抵抗率も0.1Ωcm程度であり、ボロメータ用材料に必要とされる電気抵抗率の範囲内に入っていた。
【0099】
以上のようにして形成されたボロメータ用抵抗体4を含むブリッジ構造体2の上には図2(d)に示す保護層6を次のような工程で形成した。
【0100】
まず、ラウリン酸Alをトルエンとメタノ−ルの混合溶液に溶解させた溶液を塗布し、150℃で乾燥させて厚さ100nmのラウリン酸Al層を形成した。この層に、図のようにArFエキシマレーザー光10を大気中室温で照射した。レーザーの繰り返し周波数は20Hz、レーザー強度は30mJ/cmで照射した。
【0101】
その結果、ラウリン酸Al層はすべてレーザー光によって照射されて化学的に変化し、非晶質のAlO薄膜になった。このAlO薄膜層が保護層6となってボロメータ用抵抗体4を外部から遮断する役割を担う。最後に、この保護膜6上に反応性スパッタ法などによりTiN等の赤外吸収膜7を形成した。
【0102】
この後、エキシマレーザー光をブリッジ構造体2の一部にスリット上に照射してアブレーションさせ、スリットを形成した。引き続いて有機溶剤で洗浄すると犠牲層9を構成していたSiの2−エチルヘキサノラ−ト(アルコキシド)層が溶解して除去され、空隙3が形成された。このような形成方法によってボロメータ用抵抗体4が宙に浮いた構造のダイアフラムを形成した。
【0103】
以上のプロセスで作製した二種類の赤外線センサ、すなわち、ペロブスカイト型Mn酸化物薄膜、及び、YBaCu薄膜を用いた赤外線センサの温度分解能NETDを評価した。その結果、これらの薄膜のTCRが大きいことに対応して、従来の酸化バナジウム薄膜をボロメータ用抵抗体4に用いた赤外線センサと比較して、ペロブスカイト型Mn酸化物薄膜の場合で1/3以下の小さな値、及び、YBaCu薄膜の場合で従来の70%程度のNETD値にすることが可能となった。
【0104】
以上詳細に述べたように、本発明による非冷却型赤外線センサの製造方法では、赤外線反射膜8、配線5、及び赤外線吸収膜7以外は真空成膜プロセスを省略することができる。
【0105】
さらに、露光、現像、エッチング等のパターニング工程も減らすことができるので、非常に少ない工程でのデバイス製造が可能となり、赤外線センサの低コスト化に大きく貢献できる。
【0106】
なお、本発明が上記各実施例に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施例は適宜変更され得ることは明らかである。
【0107】
【発明の効果】
本発明によれば、酸化物薄膜形成時にレーザー光を用いた光反応プロセスを採用することによって、真空成膜プロセスや、露光、現像、エッチング工程を減らすことができる。これにより、低コストの非冷却型赤外線センサの提供が可能となり、産業上の意義が大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のボロメータ方式非冷却型赤外線センサの製造工程の一例を示す図である。
【図2】ボロメータ方式非冷却型赤外線センサの構造の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 Si基板
2 ブリッジ構造体
3 空隙
4 ボロメータ用抵抗体
5 配線
6 保護膜
7 赤外線吸収膜
8 赤外線反射膜
9 犠牲層
10 エキシマレーザー光
11 金属有機化合物層
12 マスク

Claims (14)

  1. 赤外線の入射光を吸収することにより温度を変え、その温度変化により電気抵抗値を変えることによって該赤外線の放射強度の信号を読み出すボロメータ方式の赤外線センサの製造方法において、
    基板上に設けた空隙を介して形成されるブリッジ構造体、ボロメータ用抵抗体膜及びこの抵抗体膜を含む表面に設けた保護層を形成するための金属有機化合物を溶媒に溶解させて溶液状とし、
    金属有機化合物の溶液を基板上に塗布・乾燥させた後に、波長400nm以下のレーザー光を照射することによって炭素−酸素結合を切断して分解し酸化物薄膜としてブリッジ構造体を形成し、
    金属有機化合物の溶液をブリッジ構造体上に塗布・乾燥させた後に、波長400nm以下のレーザー光を照射することによって炭素−酸素結合を切断して分解し酸化物薄膜としてボロメータ用抵抗体膜を形成し、
    金属有機化合物の溶液をボロメータ用抵抗体を含むブリッジ構造体上に塗布・乾燥させた後に、波長400nm以下のレーザー光を照射することによって炭素−酸素結合を切断して分解し酸化物薄膜として保護膜を形成することを特徴とする赤外線センサの製造方法。
  2. 上記ボロメータ用抵抗体膜が、酸化バナジウム薄膜、ペロブスカイト型マンガン酸化物薄膜、及び、YBaCu薄膜のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の赤外線センサの製造方法。
  3. 上記ブリッジ構造体が、SiO薄膜、TiO薄膜、Al薄膜のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の赤外線センサの製造方法。
  4. 上記保護層が、SiO薄膜、TiO薄膜、Al薄膜のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の赤外線センサの製造方法。
  5. 上記波長400nm以下のレーザー光として、ArF、KrF、XeCl、XeF、Fから選ばれるエキシマレーザーを用いることを特徴とする請求項1に記載の赤外線センサの製造方法。
  6. 上記波長400nm以下のレーザー光の照射を、複数段階で行うことを特徴とする請求項1に記載の赤外線センサの製造方法。
  7. 上記レーザー光の照射は複数段階に分けて実施され、最初の段階の照射は金属有機化合物を完全に分解させるに至らないように実施され、
    次の段階の照射は上記酸化物を結晶化または非晶質化させるように実施されることを特徴とする請求項1に記載の赤外線センサの製造方法。
  8. 上記波長400nm以下のレーザー光を照射する際に、金属有機化合物を塗布した基板を500℃以下の温度に加熱することを特徴とする請求項1に記載の赤外線センサの製造方法。
  9. 上記金属有機化合物が金属有機酸塩であることを特徴とする請求項1に記載の赤外線センサの製造方法。
  10. 上記金属有機酸塩の金属がV、La、Nd、Pr、Ca、Sr、Ba、Mn、Y、Cu、Si、Ti、Alからなる群から選ばれるものであることを特徴とする請求項9に記載の赤外線センサの製造方法。
  11. 上記金属有機酸塩の有機酸が、ナフテン酸、2−エチルヘキサン酸、カプリル酸、ステアリン酸、ラウリン酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、クエン酸、乳酸、安息香酸、サリチル酸、エチレンジアミン四酢酸からなる群から選ばれるものであることを特徴とする請求項9に記載の赤外線センサの製造方法。
  12. 上記金属有機化合物が金属アセチルアセトナート錯体であることを特徴とする請求項1に記載の赤外線センサの製造方法。
  13. 上記金属アセチルアセトナート錯体の金属がV、La、Nd、Pr、Ca、Sr、Ba、Mn、Y、Cu、Si、Ti、Alからなる群から選ばれるものであることを特徴とする請求項12に記載の赤外線センサの製造方法。
  14. 上記金属アセチルアセトナート錯体を溶解させる溶媒が酢酸ブチル、トルエン、アセチルアセトン、メタノールから選ばれるものであることを特徴とする請求項12又は13に記載の赤外線センサの製造方法。
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