JP4134535B2 - 有機電界発光素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機電界発光素子(以下、「有機EL素子」という)に関し、詳しくは、特定のホール輸送性ポリエステルを用いた有機電界発光素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電界発光素子(以下、「EL素子」と記述する)は、自発光性の全固体素子であり、視認性が高く衝撃にも強いため、広く応用が期待されている。現在は無機螢光体を用いたものが主流であるが、200V以上の交流電圧が駆動に必要なため製造コストが高く、また輝度が不十分等の問題点を有している。
【0003】
一方、有機化合物を用いたEL素子研究は、最初アントラセン等の単結晶を用いて始まったが、単結晶の場合、膜厚が1mm程度と厚く100V以上の駆動電圧が必要であった。そのため蒸着法による薄膜化が試みられている(Thin Solid Films,Vol.94,171(1982))。しかしながら、この方法で得られた薄膜は、駆動電圧が30Vと未だ高く、また、膜中における電子・ホールキャリアの密度が低く、キャリアの再結合によるフォトンの生成確率が低いため十分な輝度が得られなかった。
【0004】
ところが近年、ホール輸送性有機低分子化合物と電子輸送能を持つ螢光性有機低分子化合物の薄膜を真空蒸着法により順次積層した機能分離型のEL素子において、10V程度の低電圧で1000cd/m2以上の高輝度が得られるものが報告されており(Appl.Phys.Lett.,Vol.51,913(1987))、以来、積層型のEL素子の研究・開発が活発に行われている。
【0005】
しかしながら、このタイプのEL素子では、複数の蒸着工程において0.1μm以下の薄膜を形成していくためピンホールを生じ易く、十分な性能を得るためには厳しく管理された条件下で膜厚の制御を行うことが必要である。従って、生産性が低くかつ大面積化が難しいという問題がある。また、このEL素子は数mA/cm2という高い電流密度で駆動されるため、大量のジュール熱を発生する。このため、蒸着によってアモルファスガラス状態で製膜されたホール輸送性低分子化合物や螢光性有機低分子化合物が次第に結晶化して最後には融解し、輝度の低下や絶縁破壊が生じるという現象が多く見られ、その結果素子の寿命が低下するという問題も有していた。
【0006】
そこで、EL素子の熱安定性に関する問題の解決のために、ホール輸送材料として安定なアモルファスガラス状態が得られるスターバーストアミンを用いたり(第40回応用物理学関係連合講演会予稿集30a−SZK−14(1993)等)、ポリフォスファゼンの側鎖にトリフェニルアミンを導入したポリマーを用いたり(第42回高分子討論会予稿集20J21(1993))したEL素子が報告されている。しかし、これら単独ではホール輸送材料のイオン化ポテンシャルに起因するエネルギー障壁が存在するため、陽極からのホール注入性或いは発光層へのホール注入性を満足するものではない。また、前者のスターバーストアミンの場合、溶解性が小さいために精製が難しく純度を上げることが困難であることや、後者のポリマーの場合、高い電流密度が得られず十分な輝度が得られてない等の問題も存在する。
【0007】
一方、これらの問題の解決を目指し、単層構造のEL素子についても研究・開発が進められ、ポリ(p−フェニレンビニレン)等の導電性高分子を用いたり(Nature, Vol.357, 477(1992)等)、ホール輸送性ポリビニルカルバゾール中に電子輸送材料と螢光色素を混入した(第38回応用物理学関係連合講演会予稿集31p−G−12(1991))素子が提案されているが、未だ輝度、発光効率等が有機低分子化合物を用いた積層型EL素子には及ばない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明の目的は、十分な輝度を有し、安定性および耐久性に優れ、且つ大面積化可能であり製造容易な有機EL素子を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するためホール輸送材料に関し鋭意検討した結果、下記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造より選択された少なくとも1種を部分構造として含む下記一般式(II)または(III)で示されるホール輸送性ポリエステルが、有機EL素子として好適なホール注入特性、ホール移動度、薄膜形成能を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、少なくとも一方が透明または半透明である一対の電極間に挾持された一つまたは複数の有機化合物層より構成されるものであって、有機化合物層の少なくとも一層が、下記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる下記一般式(II)または(III)で示されるホール輸送性ポリエステルを、少なくとも1種含有することを特徴とする有機EL素子である。
【化3】
〔一般式(I−1)および(I−2)中、Arは、置換もしくは未置換の芳香環、置換もしくは未置換の芳香環数3〜10の多核芳香環化合物、または置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の縮合芳香環を表し、Xは置換もしくは未置換のビフェニレン基を表し、kは1を表す。〕
【0010】
【化4】
〔一般式(II)または(III)中、Aは上記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を表し、Rは水素原子、アルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、または置換もしくは未置換のアラルキル基を表し、Yはエチレン基を表し、Zは2価のカルボン酸残基を表し、BおよびB’は、それぞれ独立に基−O−(Y−O)m 2 −Rまたは基−O−(Y−O)m 2 −CO−Z−CO−O−R’(ここで、R、Y、Zは上記したと同じ意味を有し、R’はアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、または置換もしくは未置換のアラルキル基を表し、m 2 は1の整数を表す。)を表し、m 1 は1の整数を表し、pは5〜5,000の整数を表す。〕
【0011】
本発明の有機EL素子において、有機化合物層は、機能分離型のもの、例えば、少なくともホール輸送層および発光層から構成され、該ホール輸送層が前記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる前記一般式(II)または(III)で示されるホール輸送性ポリエステルを含有してなるものや、キャリア輸送能と発光能を兼ね備えたもの、すなわち、有機化合物層が発光層のみから構成されてなり、該発光層が前記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる前記一般式(II)または(III)で示されるホール輸送性ポリエステルを含有してなるもののいずれでもよい。
【0012】
本発明の有機EL素子において、有機化合物層が発光層のみから構成される場合、該発光層には、電荷輸送性材料(上記特定のホール輸送性ポリエステル以外のホール輸送材料、電子輸送材料)を含んでもよい。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の有機EL素子は、少なくとも一方が透明または半透明である陽極および陰極よりなる一対の電極間に挾持された一つまたは複数の有機化合物層より構成され、該有機化合物層の少なくとも一層が、下記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなるホール輸送性ポリエステル(以下、単に「ホール輸送性ポリエステル」ということがある)を1種以上含有する。本発明の有機EL素子は、前記ホール輸送性ポリエステルを含有してなる層を有することで、十分な輝度を有し、安定性および耐久性に優れる。さらに、前記ホール輸送性ポリエステルを用いることで、大面積化可能であり、容易に製造可能である。
【0014】
【化5】
【0015】
一般式(I−1)および(I−2)中、Arは、置換もしくは未置換の芳香環、置換もしくは未置換の芳香環数3〜10の多核芳香環化合物、または置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の縮合芳香環を表す。
置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、置換アミノ基、ハロゲン原子、置換もしくは未置換のアリール基、アラルキル基等が挙げられる。
アルキル基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。アルコキシル基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられる。アリール基としては、炭素数6〜20のものが好ましく、例えば、フェニル基、トルイル基等が挙げられる、アラルキル基としては、炭素数7〜20のものが好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。置換アミノ基の置換基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられ、具体例は前述の通りである。また、置換アリール基、置換アラルキル基の置換基としては、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、置換アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0016】
一般式(I−1)および(I−2)中、Xは置換もしくは未置換のビフェニレン基を表す。
【0017】
中でも、Xが下記構造式(A)または(B)で示されるビフェニレン構造を有する場合、「The Sixth International Congress on Advances in Non−impact Printing Technologies,306,(1990)」にも報告されているように、モビリティーが高いポリマーが得られることから、特に好ましい。
【0018】
【化6】
【0019】
一般式(I−1)および(I−2)中、kは1を表す。
【0020】
以下、一般式(I−1)および(I−2)で示される構造の具体例を示す。本発明は、これら具体例に限定されるわけではない。なお、表において、構造番号5〜33、77〜96は一般式(I−1)で示される構造の具体例を示し、構造番号43〜64、109〜120は一般式(I−2)で示される構造の具体例を示す。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
【表3】
【0024】
【表4】
【0025】
【表5】
【0026】
【表6】
【0027】
【表7】
【0028】
【表8】
【0029】
【表9】
【0030】
【表10】
【0031】
一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなるホール輸送性ポリエステルとしては、下記一般式(II)または(III)で示されるホール輸送性ポリエステルが使用される。
【0032】
【化7】
【0033】
一般式(II)または(III)中、Aは上記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を表し、一つのポリマー中に2種類以上の構造Aが含まれてもよい。
【0034】
一般式(II)または(III)中、Rは水素原子、アルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、または置換もしくは未置換のアラルキル基を表す。アルキル基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。アリール基としては、炭素数6〜20のものが好ましく、例えば、フェニル基、トルイル基等が挙げられる、アラルキル基としては、炭素数7〜20のものが好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。また、置換アリール基、置換アラルキル基の置換基としては、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、置換アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0035】
一般式(II)または(III)中、BおよびB’は、それぞれ独立に基−O−(Y−O)m−Rまたは基−O−(Y−O)m−CO−Z−CO−O−R’を表す。ここで、R、Y、Zは前記したものと同意義を有し、R’はアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、または置換もしくは未置換のアラルキル基を表し、mは1を表し、pは5〜5,000の整数を表すが、好ましくは10〜1,000の範囲である。
【0036】
【化9】
【0037】
【化8】
【0038】
式(18)〜(24)中、R11およびR12は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシル基、置換もしくは未置換のフェニル基、置換もしくは未置換のアラルキル基、またはハロゲン原子を表し、dおよびeはそれぞれ独立に1〜10の整数を意味し、fおよびgは、それぞれ独立に0、1または2の整数を意味し、hおよびiはそれぞれ独立に0または1を意味し、Vは前記したものと同意義を有する。
【0039】
一般式(II)または(III)中、BおよびB’は、それぞれ独立に基−O−(Y−O)m 2 −Rまたは基−O−(Y−O)m 2 −CO−Z−CO−O−R’を表す。ここで、R、Y、Zは前記したものと同意義を有し、R’はアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、または置換もしくは未置換のアラルキル基を表し、m 2 は1を表し、pは5〜5,000の整数を表すが、好ましくは10〜1,000の範囲である。
【0040】
【表11】
【0041】
【表12】
【0042】
【表13】
【0043】
【表14】
【0044】
【表12】
【0045】
【表13】
【0046】
【表14】
【0047】
【表15】
【0048】
【表16】
【0049】
【表17】
【0050】
【表18】
【0051】
【表19】
【0052】
反応終了後、溶剤を用いなかった場合には溶解可能な溶剤に溶解させる。溶剤を用いた場合には、反応溶液をそのまま、メタノール、エタノール等のアルコール類や、アセトン等のポリマーが溶解しにくい貧溶剤中に滴下し、ホール輸送性ポリエステルを析出させ、正孔輸送性ポリエステルを分離した後、水や有機溶剤で十分洗浄し、乾燥させる。更に、必要であれば適当な有機溶剤に溶解させ、貧溶剤中に滴下し、ホール輸送性ポリエステルを析出させる再沈殿処理を繰り返してもよい。再沈殿処理の際には、メカニカルスターラー等で、効率よく撹拌しながら行うことが好ましい。再沈殿処理の際にホール輸送性ポリエステルを溶解させる溶剤は、ホール輸送性ポリエステル1重量部に対して、1〜100重量部、好ましくは2〜50重量部の範囲で用いられる。また、貧溶剤はホール輸送性ポリエステル1重量部に対して、1〜1,000重量部、好ましくは10〜500重量部の範囲で用いられる。
【0053】
A’がハロゲンの場合には、前述の構造式(I−3)および(I−4)で示されるホール輸送性モノマーを、HO−(Y−O)m−Hで示される2価アルコール類とほぼ当量混合し、ピリジンやトリエチルアミン等の有機塩基性触媒を用いて重合する。有機塩基性触媒は、ホール輸送性モノマー1当量に対して、1〜10当量、好ましくは2〜5当量の範囲で用いられる。溶剤としては、塩化メチレン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、クロロベンゼン、1−クロロナフタレン等が有効であり、ホール輸送性モノマー1重量部に対して、1〜100重量部、好ましくは2〜50重量部の範囲で用いられる。反応温度は任意に設定できる。重合後は、前述のように再沈殿処理し、精製する。
【0054】
また、HO−(Y−O)m−Hで示される2価アルコール類がビスフェノール等のような酸性度の高い2価アルコール類の場合には、界面重合法も用いることができる。すなわち、2価アルコール類を水に加え、当量の塩基を加えて溶解させた後、激しく撹拌しながら2価アルコール類と前述の構造式(I−3)および(I−4)で示される当量のホール輸送性モノマー溶液を加えることによって重合できる。この際、水は2価アルコール類1重量部に対して、1〜1,000重量部、好ましくは10〜500重量部の範囲で用いられる。ホール輸送性モノマーを溶解させる溶剤としては、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トルエン、クロロベンゼン、1−クロロナフタレン等が有効である。反応温度は任意に設定でき、反応を促進するために、アンモニウム塩、スルホニウム塩等の相間移動触媒を用いることが効果的である。相間移動触媒は、ホール輸送性モノマー1重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部の範囲で用いられる。
【0055】
一般式(II)で示されるホール輸送性ポリエステルは、例えば、次のようにして合成することができる。A’が水酸基の場合には、前述の構造式(I−3)および(I−4)で示されるホール輸送性モノマーを、HO−(Y−O)m 1 −Hで示される2価アルコール類とほぼ当量混合し、酸触媒を用いて重合する。酸触媒としては、硫酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等、通常のエステル化反応に用いるものが使用でき、ホール輸送性モノマー1重量部に対して、1/10,000〜1/10重量部、好ましくは1/1,000〜1/50重量部の範囲で用いられる。重合中に生成する水を除去するために、水と共沸可能な溶剤を用いることが好ましく、トルエン、クロロベンゼン、1−クロロナフタレン等が有効であり、ホール輸送性モノマー1重量部に対して、1〜100重量部、好ましくは2〜50重量部の範囲で用いられる。反応温度は任意に設定できるが、重合中に生成する水を除去するために、溶剤の沸点で反応させることが好ましい。
【0056】
一方、一般式(III)で示されるホール輸送性ポリエステルは、例えば、次のようにして合成することができる。前述の一般式(II)で示されるホール輸送性ポリエステルの合成におけるそれぞれの場合において、2価アルコール類を過剰に加えて反応させることによって下記構造式(I−5)および(I−6)で示される化合物を生成した後、これをホール輸送性モノマーとして用いて上記と同様の方法で、2価カルボン酸または2価カルボン酸ハロゲン化物等と反応させればよく、それによってホール輸送性ポリエステルを得ることができる。なお、構造式(I−5)および(I−6)中、Ar、X、Y、T、kおよびmは、前記一般式(I−1)および(I−2)におけるAr、X、Y、T、kおよびmと同様である。
【0057】
A’がハロゲンの場合には、前述の構造式(I−3)および(I−4)で示されるホール輸送性モノマーを、HO−(Y−O)m 1 −Hで示される2価アルコール類とほぼ当量混合し、ピリジンやトリエチルアミン等の有機塩基性触媒を用いて重合する。有機塩基性触媒は、ホール輸送性モノマー1当量に対して、1〜10当量、好ましくは2〜5当量の範囲で用いられる。溶剤としては、塩化メチレン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、クロロベンゼン、1−クロロナフタレン等が有効であり、ホール輸送性モノマー1重量部に対して、1〜100重量部、好ましくは2〜50重量部の範囲で用いられる。反応温度は任意に設定できる。重合後は、前述のように再沈殿処理し、精製する。
【0058】
また、HO−(Y−O)m 1 −Hで示される2価アルコール類がビスフェノール等のような酸性度の高い2価アルコール類の場合には、界面重合法も用いることができる。すなわち、2価アルコール類を水に加え、当量の塩基を加えて溶解させた後、激しく撹拌しながら2価アルコール類と前述の構造式(I−3)および(I−4)で示される当量のホール輸送性モノマー溶液を加えることによって重合できる。この際、水は2価アルコール類1重量部に対して、1〜1,000重量部、好ましくは10〜500重量部の範囲で用いられる。ホール輸送性モノマーを溶解させる溶剤としては、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トルエン、クロロベンゼン、1−クロロナフタレン等が有効である。反応温度は任意に設定でき、反応を促進するために、アンモニウム塩、スルホニウム塩等の相間移動触媒を用いることが効果的である。相間移動触媒は、ホール輸送性モノマー1重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部の範囲で用いられる。
【0059】
A’が−O−R13の場合には、前述の構造式(I−3)および(I−4)で示されるホール輸送性モノマーに、HO−(Y−O)m 1 −Hで示される2価アルコール類を過剰に加え、硫酸、リン酸等の無機酸、チタンアルコキシド、カルシウムおよびコバルト等の酢酸塩或いは炭酸塩、亜鉛や鉛の酸化物を触媒に用いて加熱し、エステル交換により合成できる。2価アルコール類はホール輸送性モノマー1当量に対して、2〜100当量、好ましくは3〜50当量の範囲で用いられる。触媒はホール輸送性モノマー1重量部に対して、1/10,000〜1重量部、好ましくは1/1,000〜1/2重量部の範囲で用いられる。反応は、反応温度200〜300℃で行い、基−O−R13から基−O−(Y−O)m 1 −Hへのエステル交換終了後は、HO−(Y−O)m 1 −Hの脱離による重合を促進するため、減圧下で反応させることが好ましい。また、HO−(Y−O)m 1 −Hと共沸可能な1−クロロナフタレン等の高沸点溶剤を用いて、常圧下でHO−(Y−O)m 1 −Hを共沸で除きながら反応させることもできる。
【0060】
一方、一般式(III)で示されるホール輸送性ポリエステルは、例えば、次のようにして合成することができる。前述の一般式(II)で示されるホール輸送性ポリエステルの合成におけるそれぞれの場合において、2価アルコール類を過剰に加えて反応させることによって下記構造式(I−5)および(I−6)で示される化合物を生成した後、これをホール輸送性モノマーとして用いて上記と同様の方法で、2価カルボン酸または2価カルボン酸ハロゲン化物等と反応させればよく、それによってホール輸送性ポリエステルを得ることができる。なお、構造式(I−5)および(I−6)中、Ar、X、Y、T、kおよびm 1 は、前記一般式(I−1)および(I−2)におけるAr、X、Y、T、kおよびm 1 と同様である。
【0061】
【化12】
【0062】
図2、図4に示される有機EL素子の層構成の場合、ホール輸送層3はホール輸送性ポリエステル単独で形成されていてもよいが、ホール移動度を調節するためにホール輸送性ポリエステル以外のホール輸送材料を1重量%ないし50重量%の範囲で混合分散して形成されていてもよい。このようなホール輸送材料としては、テトラフェニレンジアミン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、カルバゾール誘導、スチルベン誘導体、アリールヒドラゾン誘導体、ポルフィリン系化合物等が挙げられるが、ホール輸送性ポリエステルとの相容性が良いことから、テトラフェニレンジアミン誘導体が好ましい。また、他の汎用の樹脂等との混合でもよい。
【0063】
図2に示される有機EL素子の層構成の場合、発光層4には、固体状態で高い蛍光量子収率を示す化合物が発光材料として用いられる。発光材料が有機低分子の場合、真空蒸着法もしくは低分子と結着樹脂を含む溶液または分散液を塗布・乾燥することにより良好な薄膜形成が可能であることが条件である。また、高分子の場合、それ自身を含む溶液または分散液を塗布・乾燥することにより良好な薄膜形成が可能であることが条件である。好適には、有機低分子の場合、キレート型有機金属錯体、多核または縮合芳香環化合物、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、スチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサチアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体等が、高分子の場合、ポリパラフェニレン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリアセチレン誘導体等が挙げられる。好適な具体例として、下記の化合物(IV−1)〜(IV−15)が用いられるが、これらに限定されたものではない。なお、構造式(IV−13)〜(IV−15)中、nおよびxは1以上の整数を示す。
【0064】
【化11】
【0065】
【化12】
【0066】
また、有機EL素子の耐久性向上或いは発光効率の向上を目的として、上記の発光材料中にゲスト材料として発光材料と異なる色素化合物をドーピングしてもよい。真空蒸着によって発光層を形成する場合、共蒸着によってドーピングを行い、溶液または分散液を塗布・乾燥することで発光層を形成する場合、溶液または分散液中に混合することでドーピングを行う。発光層中における色素化合物のドーピングの割合としては0.001重量%〜40重量%程度、好ましくは0.01重量%〜10重量%程度である。このようなドーピングに用いられる色素化合物としては、発光材料との相容性が良く、かつ発光層の良好な薄膜形成を妨げない有機化合物が用いられ、好適にはDCM誘導体、キナクリドン誘導体、ルブレン誘導体、ポルフィリン系化合物等が挙げられる。好適な具体例として、下記の化合物(V−1)〜(V−4)が用いられるが、これらに限定されたものではない。
【0067】
【化13】
【0068】
図1及び図2に示される有機EL素子の層構成の場合、電子輸送層5は、電子輸送性材料により形成される。この電子輸送層5は、例えば、発光材料(発光層)が、明確な電子輸送性を示さないものを用いる場合に、有機EL素子に注入されるホールと電子のバランスを調節したり、有機EL素子の耐久性向上或いは発光効率の向上を図る目的で、発光層4或いはキャリア輸送能を持つ発光層6と背面電極7との間に挿入される。このような電子輸送層5に用いられる電子輸送材料としては、真空蒸着法により良好な薄膜形成が可能な有機化合物が用いられ、好適にはオキサジアゾール誘導体、ニトロ置換フルオレノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体等が挙げられる。好適な具体例として、下記の化合物(VI−1)〜(VI−3)が用いられるが、これらに限定されたものではない。
【0069】
【化14】
【0070】
図1、図3に示される有機EL素子の層構成の場合、キャリア輸送能を持つ発光層6は少なくとも上記ホール輸送性ポリエステル中に発光材料を50重量%以下分散させた有機化合物層であり、発光材料としては前記化合物(IV−1)ないし化合物(IV−12)が好適に用いられるが、有機EL素子に注入されるホールと電子のバランスを調節するために電子輸送材料を10重量%〜50重量%分散させてもよい。このような電子輸送材料としては、上記ホール輸送性ポリエステルと強い電子相互作用を示さない有機化合物が用いられ、好適には下記の化合物(VII)が用いられるが、これに限定されるものではない。同様にホール移動度を調節するために、ホール輸送性ポリエステル以外のホール輸送材料、好ましくはテトラフェニレンジアミン誘導体を適量同時に分散させて用いてもよい。また、発光材料と異なる色素化合物をドーピングしてもよい。一方で、図4に示される有機EL素子の層構成の場合、キャリア輸送能を持つ発光層6は、電子輸送材料中に発光材料を50重量%以下分散させた有機化合物層であり、発光材料としては前記化合物(IV−1)ないし化合物(IV−12)が好適に用いられるが、有機EL素子に注入されるホールと電子のバランスを調節するためにホール輸送材料を10重量%〜50重量%分散させてもよい。
【0071】
【化15】
【0072】
図1〜図4に示される有機EL素子の層構成の場合、背面電極7には、真空蒸着可能で、電子注入を行うため仕事関数の小さな金属が使用されるが、特に好ましくはマグネシウム、アルミニウム、銀、インジウムおよびこれらの合金である。また、背面電極7上には、さらに素子の水分や酸素による劣化を防ぐために保護層を設けてもよい。具体的な保護層の材料としては、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al等の金属、MgO、SiO2、TiO2等の金属酸化物、ポリエチレン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂が挙げられる。保護層の形成には、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマ重合法、CVD法、コーテング法が適用できる。
【0073】
これら図1〜図4に示される有機EL素子は、まず透明電極2の上に各有機EL素子の層構成に応じて、ホール輸送層3或いはキャリア輸送能を持つ発光層6を形成する。ホール輸送層3及びキャリア輸送能を持つ発光層6は、上記各材料を真空蒸着法、もしくは有機溶媒中に溶解或いは分散し、得られた塗布液を用いて前記透明電極2上にスピンコーティング法、ディップ法等を用いて製膜することにより形成する。
【0074】
次に、各有機EL素子の層構成に応じて、ホール輸送層3、電子輸送層5、発光層4或いはキャリア輸送能を持つ発光層6は、上記各材料を、真空蒸着法、もしくは有機溶媒中に溶解或いは分散し、得られた塗布液を用いてスピンコーティング法、ディップ法等を用いて製膜することによって形成される。
【0075】
形成されるホール輸送層3、発光層4及び電子輸送層5の膜厚は、各々0.1μm以下、特に0.03〜0.08μmの範囲であることが好ましい。また、キャリア輸送能を持つ発光層6の膜厚は、0.03〜0.2μm程度が好ましい。上記各材料(前記電荷輸送性ポリウレタン、発光材料等)の分散状態は分子分散状態でも微粒子分散状態でも構わない。塗布液を用いた製膜法の場合、分子分散状態とするためには、分散溶媒は上記各材料の共通溶媒を用いる必要があり、微粒子分散状態とするために分散溶媒は上記各材料の分散性及び溶解性を考慮して選択する必要がある。微粒子状に分散するためには、ボールミル、サンドミル、ペイントシェイカー、アトライター、ボールミル、ホモジェナイザー、超音波法等が利用できる。
【0076】
そして、最後に、電子輸送層5或いはキャリア輸送能を持つ発光層6の上に背面電極7を真空蒸着法により形成することにより素子が完成される。
【0077】
本発明の有機EL素子は、一対の電極間に、例えば、4〜20Vで、電流密度1〜200mA/cm2の直流電圧を印加することによって発光させることができる。
【0078】
【実施例】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
【0079】
実施例に用いたホール輸送性ポリエステルは、例えば以下のようにして得た。
−合成例1〔例示化合物(12)〕−
N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス[4−メトキシカルボニルフェニル]−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン2.0g、エチレングリコール8.0gおよびテトラブトキシチタン0.1gを50mlのフラスコに入れ、窒素気流下、200℃で3時間加熱攪拌した。N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス[4−メトキシカルボニルフェニル]−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミンが消費されたことを確認した後、0.5mmHgに減圧してエチレングリコールを留去しながら230℃に加熱し、3時間反応を続けた。その後、室温まで冷却し、トルエン50mlに溶解して不溶物を濾過し、その濾液を、メタノール250mlを撹拌している中に滴下してポリマーを析出させた。得られたポリマーを濾過し、十分にメタノールで洗浄した後乾燥させ、1.9gのホール輸送性ポリエステル〔例示化合物(12)〕を得た。分子量はGPCにて測定し、Mw=3.42×104(スチレン換算)であり、モノマーの分子量から求めたpは約57であった。
【0080】
−合成例2〔例示化合物(102)〕−
N,N’−ビス(α−ナフチル)−N,N’−ビス[4−メトキシカルボニルフェニル]−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン2.0g、エチレングリコール8.0gおよびテトラブトキシチタン0.1gを50mlのフラスコに入れ、窒素気流下、200℃で3時間加熱攪拌した。N,N’−ビス(α−ナフチル)−N,N’−ビス[4−メトキシカルボニルフェニル]−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミンが消費されたことを確認した後、0.5mmHgに減圧してエチレングリコールを留去しながら230℃に加熱し、3時間反応を続けた。その後、室温まで冷却し、トルエン50mlに溶解して不溶物を濾過し、その濾液を、メタノール250mlを撹拌している中に滴下してポリマーを析出させた。得られたポリマーを濾過し、十分にメタノールで洗浄した後乾燥させ、1.2gのホール輸送性ポリエステル〔例示化合物(102)〕を得た。分子量はGPCにて測定し、Mw=3.20×104(スチレン換算)であり、モノマーの分子量から求めたpは約45であった。
【0081】
−合成例3〔例示化合物(109)〕−
N,N’−ビス(ターフェニル)−N,N’−ビス[4−メトキシカルボニルフェニル]−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン2.0g、エチレングリコール8.0gおよびテトラブトキシチタン0.1gを50mlのフラスコに入れ、窒素気流下、200℃で3時間加熱攪拌した。N,N’−ビス(4−メトキシ−2−メチルフェニル)−N,N’−ビス[4−メトキシカルボニルフェニル]−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミンが消費されたことを確認した後、0.5mmHgに減圧してエチレングリコールを留去しながら230℃に加熱し、3時間反応を続けた。その後、室温まで冷却し、トルエン50mlに溶解して不溶物を濾過し、その濾液を、メタノール250mlを撹拌している中に滴下してポリマーを析出させた。得られたポリマーを濾過し、十分にメタノールで洗浄した後乾燥させ、1.1gのホール輸送性ポリエステル〔例示化合物(109)〕を得た。分子量はGPCにて測定し、Mw=2.68×104(スチレン換算)であり、モノマーの分子量から求めたpは約30であった。
【0082】
(実施例1)
ホール輸送性ポリエステル〔例示化合物(12)〕(Mw=1.23×105)の5重量%ジクロロエタン溶液を調製し、0.1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターで濾過した。この溶液を用いて、2mm幅の短冊型ITO電極をエッチングにより形成したガラス基板上に、ディップ法により塗布し、膜厚約0.1μmのホール輸送層を形成した。十分乾燥させた後、発光材料として昇華精製した前記例示化合物(IV−1)をタングステンボートに入れ、真空蒸着法により蒸着して、ホール輸送層上に膜厚0.05μmの発光層を形成した。この時の真空度は10-5Torr、ボート温度は300℃であった。続いてMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の背面電極をITO電極と交差するように形成した。形成された有機EL素子の有効面積は0.04cm2であった。
【0083】
(実施例2)
ホール輸送性ポリエステル〔例示化合物(12)〕(Mw=3.42×104)1重量部、発光材料として前記例示化合物(IV−1)1重量部を混合し、10重量%ジクロロエタン溶液を調製し、0.1μmのPTFEフィルターで濾過した。この溶液を用いて、2mm幅の短冊型ITO電極をエッチングにより形成したガラス基板上に、ディップ法により塗布して膜厚0.15μmのキャリア輸送能を持つ発光層を形成した。充分乾燥させた後、Mg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の背面電極をITO電極と交差するように形成した。形成された有機EL素子の有効面積は0.04cm2であった。
【0084】
(実施例3)
ホール輸送性ポリエステル〔例示化合物(12)〕(Mw=3.42×104)を2重量部、発光材料として前記例示化合物(IV−1)を0.1重量部、電子輸送材料として前記例示化合物(VI−1)を1重量部を混合し、10重量%ジクロロエタン溶液を調製し、0.1μmのPTFEフィルターで濾過した。この溶液を用いて、2mm幅の短冊型ITO電極をエッチングにより形成したガラス基板上に、ディップ法により塗布して膜厚0.15μmのキャリア輸送能を持つ発光層を形成した。十分乾燥させた後、Mg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の背面電極をITO電極と交差するように形成した。形成された有機EL素子の有効面積は0.04cm2であった。
【0085】
(実施例4)
ホール輸送性ポリエステル〔例示化合物(12)〕の代わりに、ホール輸送性ポリエステル〔例示化合物(102)〕(Mw=3.20×104)を用いた以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
【0086】
(実施例5)
ホール輸送性ポリエステル〔例示化合物(12)〕の代わりに、ホール輸送性ポリエステル〔例示化合物(102)〕(Mw=3.20×104)を用いた以外は、実施例2と同にして有機EL素子を作製した。
【0087】
(実施例6)
ホール輸送性ポリエステル〔例示化合物(12)〕の代わりに、ホール輸送性ポリエステル〔例示化合物(102)〕(Mw=2.68×104)を用いた以外は、実施例3と同様にして有機EL素子を作製した。
【0088】
(実施例7)
ホール輸送性ポリエステル〔例示化合物(12)〕の代わりに、ホール輸送性ポリエステル〔例示化合物(109)〕(Mw=3.20×104)を用いた以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
【0089】
(実施例8)
ホール輸送性ポリエステル〔例示化合物(12)〕の代わりに、ホール輸送性ポリエステル〔例示化合物(109)〕(Mw=3.20×104)を用いた以外は、実施例2と同にして有機EL素子を作製した。
【0090】
(実施例9)
ホール輸送性ポリエステル〔例示化合物(12)〕の代わりに、ホール輸送性ポリエステル〔例示化合物(109)〕(Mw=2.68×104)を用いた以外は、実施例3と同様にして有機EL素子を作製した。
【0091】
(比較例1)
下記構造式(VIII)で示されるホール輸送材料を1重量部、発光材料として前記例示化合物(IV−1)を1重量部、結着樹脂としてポリメチルメタクリレート(PMMA)を1重量部混合し、10重量%ジクロロエタン溶液を調製し、0.1μmのPTFEフィルターで濾過した。この溶液を用いて、2mm幅の短冊型ITO電極をエッチングにより形成したガラス基板上に、ディップ法により塗布して膜厚0.15μmのキャリア輸送能を持つ発光層を形成した。十分乾燥させた後、Mg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の背面電極をITO電極と交差するように形成した。形成された有機EL素子の有効面積は0.04cm2であった。
【0092】
【化16】
【0093】
(比較例2)
ホール輸送性ポリエステルとしてポリビニルカルバゾール(PVK)を2重量部、発光材料として前記例示化合物(IV−1)を0.1重量部、電子輸送材料として前記例示化合物(VI−1)を1重量部混合し、10重量%ジクロロエタン溶液を調製し、0.1μmのPTFEフィルターで濾過した。この溶液を用いて、2mm幅の短冊型ITO電極をエッチングにより形成したガラス基板上に、ディップ法により塗布して膜厚0.15μmのホール輸送層を形成した。十分乾燥させた後、Mg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の背面電極をITO電極と交差するように形成した。形成された有機EL素子の有効面積は0.04cm2であった。
(評価)
以上のように作製した有機EL素子を、真空中(133.3×10-3Pa(10-3Torr))でITO電極側をプラス、Mg−Ag背面電極をマイナスとして直流電圧を印加し、発光について測定を行い、このときの最高輝度、および発光色を評価した。それらの結果を表19に示す。また、乾燥窒素中で有機EL素子の発光寿命の測定を行った。発光寿命の評価は、初期輝度が50cd/m2となるように電流値を設定し、定電流駆動により輝度が初期値から半減するまでの時間を素子寿命(hour)とした。この時の駆動電流密度を素子寿命と共に表19に示す。
【0094】
【表19】
【0095】
表19の結果から実施例、比較例から、上記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し構造単位からなるホール輸送性ポリエステルは、有機EL素子に好適なイオン化ポテンシャルおよびホール移動度を持ち、また、スピンコーティング法、ディップ法等を用いて良好な薄膜を形成することが可能であることがわかり、これを用いて形成された本発明の有機EL素子は、十分に高い輝度を示し、また、膜厚を比較的厚く設定できるため、ピンホール等の不良も少なく、大面積化も容易であり、しかも向上した耐久性を有することもわかる。
【0096】
【発明の効果】
以上、本発明によれば、十分な輝度を有し、安定性および耐久性に優れ、且つ大面積化可能であり製造容易な有機EL素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の有機電界発光素子の層構成の一例を示した概略構成図である。
【図2】 本発明の有機電界発光素子の層構成の他の一例を示した概略構成図である。
【図3】 本発明の有機電界発光素子の層構成の他の一例を示した概略構成図である。
【図4】 本発明の有機電界発光素子の層構成の他の一例を示した概略構成図である。
【符号の説明】
1 透明絶縁体基板
2 透明電極
3 ホール輸送層
4 発光層
5 電子輸送層
6 キャリア輸送能を持つ発光層
7 背面電極
Claims (5)
- 少なくとも一方が透明または半透明である一対の電極間に挾持された一つまたは複数の有機化合物層より構成される電界発光素子において、該有機化合物層の少なくとも一層が、下記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる下記一般式(II)または(III)で示されるホール輸送性ポリエステルを1種以上含有することを特徴とする有機電界発光素子。
- 前記有機化合物層が少なくともホール輸送層および発光層から構成され、該ホール輸送層が、前記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる前記一般式(II)または(III)で示されるホール輸送性ポリエステルを1種以上含有してなることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
- 前記有機化合物層が発光層のみから構成され、該発光層が、前記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる前記一般式(II)または(III)で示されるホール輸送性ポリエステルを1種以上を含有してなることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
- 前記発光層が、電荷輸送性材料を含むことを特徴とする請求項3に記載の有機電界発光素子。
- 前記ホール輸送性ポリエステルが、上記一般式(I−1)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる上記一般式(II)で示されるホール輸送性ポリエステルであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の有機電界発光素子。
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