JP2004171858A - 有機電界発光素子 - Google Patents
有機電界発光素子 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004171858A JP2004171858A JP2002334871A JP2002334871A JP2004171858A JP 2004171858 A JP2004171858 A JP 2004171858A JP 2002334871 A JP2002334871 A JP 2002334871A JP 2002334871 A JP2002334871 A JP 2002334871A JP 2004171858 A JP2004171858 A JP 2004171858A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- group
- substituted
- charge transporting
- organic
- emitting layer
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、表示素子、バックライト、照明光源、電子写真用露光装置、標識、看板等に好適に使用できる有機電界発光素子(以下、「有機EL素子」と記述する)に関し、詳しくは、特定の電荷輸送性ポリマーを用いた有機電界発光素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電界発光素子(以下、「EL素子」と記述する)は、自発光性の全固体素子であり、視認性が高く衝撃にも強いため、広く応用が期待されている。現在は無機螢光体を用いたものが主流であるが、200V以上の交流電圧が駆動に必要なため製造コストが高く、また、輝度が不十分等の問題点を有している。
【0003】
一方、有機化合物を用いたEL素子研究は、最初アントラセン等の単結晶を用いて始まったが、単結晶の場合、膜厚が1mm程度と厚く100V以上の駆動電圧が必要であった。そのため蒸着法による薄膜化が試みられている(非特許文献1参照)。しかしながら、この方法で得られた薄膜は、駆動電圧が30Vと未だ高く、また、膜中における電子・ホールキャリアの密度が低く、キャリアの再結合によるフォトンの生成確率が低いため十分な輝度が得られなかった。
【0004】
ところが近年、ホール輸送性有機低分子化合物と電子輸送能を持つ螢光性有機低分子化合物の薄膜を真空蒸着法により順次積層した機能分離型のEL素子において、10V程度の低電圧で1000cd/m2以上の高輝度が得られるものが報告されている(非特許文献2参照)。以来、積層型のEL素子の研究・開発が活発に行われている。
【0005】
しかしながら、このタイプのEL素子では、複数の蒸着工程において0.1μm以下の薄膜を形成していくためピンホールを生じ易く、十分な性能を得るためには厳しく管理された条件下で膜厚の制御を行うことが必要である。従って、生産性が低くかつ大面積化が難しいという問題がある。また、このEL素子は数mA/cm2という高い電流密度で駆動されるため、大量のジュール熱を発生する。このため、蒸着によってアモルファスガラス状態で成膜されたホール輸送性低分子化合物や螢光性有機低分子化合物が次第に結晶化して最後には融解し、輝度の低下や絶縁破壊が生じるという現象が多く見られ、その結果素子の寿命が低下するという問題も有していた。
【0006】
そこで、EL素子の熱安定性に関する問題の解決のために、ホール輸送材料として安定なアモルファスガラス状態が得られるスターバーストアミンを用いたEL素子(非特許文献3参照)や、ポリフォスファゼンの側鎖にトリフェニルアミンを導入したポリマーを用いたEL素子(非特許文献4参照)が提案されている。
【0007】
しかし、これら単独ではホール輸送材料のイオン化ポテンシャルに起因するエネルギー障壁が存在するため、陽極からのホール注入性或いは発光層へのホール注入性を満足するものではない。また、前者のスターバーストアミンの場合、溶解性が小さいために精製が難しく純度を上げることが困難であることや、後者のポリマーの場合、高い電流密度が得られず十分な輝度が得られてない等の問題も存在する。
【0008】
一方、これらの問題の解決を目指し、単層構造のEL素子についても研究・開発が進められ、ポリ(p−フェニレンビニレン)等の導電性高分子を用いたり(例えば、非特許文献5参照)、ホール輸送性ポリビニルカルバゾール中に電子輸送材料と螢光色素を混入したEL素子(非特許文献6参照)が提案されているが、未だ輝度、発光効率等が有機低分子化合物を用いた積層型EL素子には及ばない。
【0009】
【非特許文献1】
Thin Solid Films,Vol.94,171(1982)
【非特許文献2】
Appl.Phys.Lett.,Vol.51,913(1987)
【非特許文献3】
第40回応用物理学関係連合講演会予稿集30a−SZK−14(1993)等
【非特許文献4】
第42回高分子討論会予稿集20J21(1993)
【非特許文献5】
Nature,Vol.357,477(1992)
【非特許文献6】
第38回応用物理学関係連合講演会予稿集31−G−12(1991)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の技術の上記問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は十分な輝度を有し、安定性および耐久性に優れ、且つ大面積化可能であり製造容易な有機EL素子を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため電荷輸送材料に関し鋭意検討した結果、下記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造より選択された少なくとも1種を部分構造として含む電荷輸送性ポリエステルが、有機EL素子として好適な電荷注入特性、電荷移動度、薄膜形成能を有することを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の通りである。
【0012】
<1> 少なくとも一方が透明または半透明である陽極および陰極よりなる一対の電極間に挾持された一つまたは複数の有機化合物層より構成される電界発光素子において、
前記有機化合物層の少なくとも一層が、下記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルを1種以上含有することを特徴とする有機電界発光素子である。
【化5】
〔一般式(I−1)及び(I−2)中、Arは、置換もしくは未置換のフェニル基、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の縮合環芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の1価の芳香族複素環、又は、少なくとも1種の芳香族複素環を含む置換もしくは未置換の1価の芳香族基を表し、Xは、下記の式(1)〜(6)から選択された縮合環を含む置換もしくは未置換の2価の芳香族基を表し、k、n、lは0又は1を表し、Tは、炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素基、又は、炭素数2〜10の分枝鎖状炭化水素基を表す。〕
【化6】
〔式(4)〜(6)中、R1は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、置換もしくは未置換のフェニル基、置換もしくは未置換のアラルキル基、または、ハロゲン原子を表し、Vは下記の式(7)〜(12)から選択された基を表す。〕
【化7】
〔式(12)中、R2は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、置換もしくは未置換のフェニル基、置換もしくは未置換のアラルキル基、または、ハロゲン原子を表す。〕
【0013】
<2> 前記有機化合物層が、少なくとも発光層および電子輸送層から構成され、前記発光層及び電子輸送層の少なくとも一方が、前記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルを1種以上含有してなることを特徴とする<1>に記載の有機電界発光素子である。
【0014】
<3> 前記発光層が、電荷輸送性材料を含むことを特徴とする<2>に記載の有機電界発光素子である。
【0015】
<4> 前記有機化合物層が、少なくともホール輸送層、発光層および電子輸送層から構成され、前記ホール輸送層及び電子輸送層の少なくとも一方が、前記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルを1種以上含有してなることを特徴とする<1>に記載の有機電界発光素子である。
【0016】
<5> 前記有機化合物層が、発光層のみから構成され、前記発光層が、前記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルを1種以上含有してなることを特徴とする<1>に記載の有機電界発光素子である。
【0017】
<6> 前記発光層が、電荷輸送性材料を含むことを特徴とする<5>に記載の有機電界発光素子である。
【0018】
<7> 前記有機化合物層が、少なくともホール輸送層及び発光層から構成され、前記ホール輸送層及び前記発光層の少なくとも一方が、前記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルを、少なくとも1種含有してなることを特徴とする<1>に記載の有機電界発光素子である。
【0019】
<8> 前記発光層が、電荷輸送性材料を含むことを特徴とする<6>に記載の有機電界発光素子である。
【0020】
<9> 前記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルが、下記一般式(II−1)および(II−2)で示されるポリエステルであることを特徴とする<1>に記載の有機電界発光素子である。
【化8】
〔一般式(II−1)および(II−2)中、Aは前記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を表し、Rは水素原子、アルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、または、置換もしくは未置換のアラルキル基を表し、Yは2価のアルコール残基を表し、Zは2価のカルボン酸残基を表し、BおよびB’は、それぞれ独立に、一般式(a):−O−(Y−O)m−R、または、一般式(b):−O−(Y−O)m−CO−Z−CO−O−R’、で示される基(但し、一般式(a)および(b)中、R、Y、Zは上記したものと同じ基を意味し、R’はアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、または、置換もしくは未置換のアラルキル基を表し、mは1〜5の整数を表す。)を表し、mは1〜5の整数を表し、pは5〜5000の整数を表す。〕
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明の有機EL素子は、少なくとも一方が透明または半透明である陽極および陰極よりなる一対の電極間に挾持された一つまたは複数の有機化合物層より構成され、該有機化合物層の少なくとも一層が、下記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステル(以下、単に「電荷輸送性ポリエステル」と記述することがある)を1種以上含有することを特徴とする。
【0022】
本発明の有機EL素子は、前記電荷輸送性ポリエステルを含有してなる層を有することで、十分な輝度を有し、安定性および耐久性に優れる。さらに、前記電荷輸送性ポリエステルを用いることで、大面積化可能であり、容易に製造が可能となる。また、前記電荷輸送性ポリエステルは後述する構造を適宜選択することで、ホール輸送能、電子輸送能のいずれの機能をも付与することができる。このため、目的に応じてホール輸送層、発光層、電子輸送層等のいずれの層にも用いることができる。
【0023】
【化9】
【0024】
一般式(I−1)及び(I−2)中、Arは、置換もしくは未置換のフェニル基、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の縮合環芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の1価の芳香族複素環、又は、少なくとも1種の芳香族複素環を含む置換もしくは未置換の1価の芳香族基を表す。
【0025】
一般式(I−1)および(I−2)中において、Arを表す構造として選択される多核芳香族炭化水素および縮合環芳香族炭化水素を構成する芳香環数は特に限定されないが、芳香環数が2〜5のものが好ましく、縮合環芳香族炭化水素においては、全縮合環芳香族炭化水素が好ましい。
【0026】
なお、当該多核芳香族炭化水素および縮合環芳香族炭化水素とは、本発明においては、具体的には以下に定義される多環式芳香族のことを意味する。即ち、「多核芳香族炭化水素」とは、炭素と水素とから構成される芳香環が2個以上存在し、これらの芳香環同士が、炭素―炭素の単結合によって結合している炭化水素化合物を表す。具体例としては、ビフェニル、ターフェニル等が挙げられる。また、「縮合環芳香族炭化水素」とは、炭素と水素とから構成される芳香環が2個以上存在し、これらの芳香環同士が、1対の隣接して結合する炭素原子を共有している炭化水素化合物を表す。具体例としては、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン等が挙げられる。なお、全ての芳香環が縮合環構造のより連続的に隣接してなる縮合環芳香族炭化水素を「全縮合環芳香族炭化水素」という。一方、これ以外の縮合環芳香族炭化水素を「部分縮合環芳香族炭化水素」という。
【0027】
また、Arを表す構造の一つとして選択される芳香族複素環は、炭素と水素以外の元素も含む芳香環を表す。その環骨格を構成する原子数(Nr)は、Nr=5及び/又は6が好ましく用いられる。また環骨格を構成するC以外の元素(異種元素)の種類及び数は特に限定されないが、例えば、S、N、O等が好ましく用いられ、前記環骨格中には2種類以上及び/又は2個以上の異種原子が含まれていてもよい。特に5員環構造を持つ複素環としては、チオフェン、チオフィン及びフランもしくはこれらの3位及び4位の炭素をさらに窒素で置換した複素環、ピロールもしくはこれらの3位及び4位の炭素をさらに窒素で置換した複素環が好ましく用いられ、6員環構造をもつ複素環として、ピリジンが好ましく用いられる。さらに、Arを表す構造の一つとして選択される芳香族複素環を含む芳香族基は、骨格を構成する原子団中に、少なくとも1種の前記芳香族複素環を含む結合基を表す。これらは、すべてが共役系で構成されたもの、或いは、一部が非共役系で構成されたもののいずれでもよいが、電荷輸送性や発光効率の点で、すべてが共役系で構成されたものが好ましい。
【0028】
Arを表す構造として選択されるベンゼン環、多核芳香族炭化水素、縮合環芳香族炭化水素または複素環の置換基としては、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、フェノキシ基、アリール基、アラルキル基、置換アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。アルキル基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。
【0029】
アルコキシル基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられる。アリール基としては、炭素数6〜20のものが好ましく、例えば、フェニル基、トルイル基等が挙げられる、アラルキル基としては、炭素数7〜20のものが好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。置換アミノ基の置換基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられ、具体例は前述の通りである。
【0030】
一般式(I−1)および(I−2)中、Xは、縮合環を含む置換または未置換の2価の芳香族基を表し、具体的には芳香環数が3〜10である下記の式(1)〜(6)から選択された芳香族基が挙げられる。
【0031】
【化10】
【0032】
式(4)〜(6)中、R1は、それぞれ水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、置換もしくは未置換のフェニル基、置換もしくは未置換のアラルキル基、または、ハロゲン原子を表し、Vは下記の式(7)〜(12)から選択された基を表す。
【0033】
【化11】
【0034】
式(12)中、R2は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、置換もしくは未置換のフェニル基、置換もしくは未置換のアラルキル基、または、ハロゲン原子を表す。
【0035】
さらに、一般式(I−1)及び(I−2)中、k、n、lは0または1を示し、Tは炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素基、または、炭素数2〜10の2価の分枝鎖状炭化水素基を示し、好ましくは炭素数が2〜6の2価の直鎖状炭化水素基、及び、炭素数3〜7の2価の分枝鎖状炭化水素基より選択される。
【0036】
以下、一般式(I−1)および(I−2)で示される構造の具体例を示す。本発明は、これら具体例に限定されるわけではない。なお、表1〜35に示す構造番号1〜209は一般式(I−1)で示される構造の具体例を表し、表36〜72に示す構造番号251〜476は一般式(I−2)で示される構造の具体例を表す。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
【表4】
【0041】
【表5】
【0042】
【表6】
【0043】
【表7】
【0044】
【表8】
【0045】
【表9】
【0046】
【表10】
【0047】
【表11】
【0048】
【表12】
【0049】
【表13】
【0050】
【表14】
【0051】
【表15】
【0052】
【表16】
【0053】
【表17】
【0054】
【表18】
【0055】
【表19】
【0056】
【表20】
【0057】
【表21】
【0058】
【表22】
【0059】
【表23】
【0060】
【表24】
【0061】
【表25】
【0062】
【表26】
【0063】
【表27】
【0064】
【表28】
【0065】
【表29】
【0066】
【表30】
【0067】
【表31】
【0068】
【表32】
【0069】
【表33】
【0070】
【表34】
【0071】
【表35】
【0072】
【表36】
【0073】
【表37】
【0074】
【表38】
【0075】
【表39】
【0076】
【表40】
【0077】
【表41】
【0078】
【表42】
【0079】
【表43】
【0080】
【表44】
【0081】
【表45】
【0082】
【表46】
【0083】
【表47】
【0084】
【表48】
【0085】
【表49】
【0086】
【表50】
【0087】
【表51】
【0088】
【表52】
【0089】
【表53】
【0090】
【表54】
【0091】
【表55】
【0092】
【表56】
【0093】
【表57】
【0094】
【表58】
【0095】
【表59】
【0096】
【表60】
【0097】
【表61】
【0098】
【表62】
【0099】
【表63】
【0100】
【表64】
【0101】
【表65】
【0102】
【表66】
【0103】
【表67】
【0104】
【表68】
【0105】
【表69】
【0106】
【表70】
【0107】
【表71】
【0108】
【表72】
【0109】
一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルとしては、下記一般式(II−1)および(II−2)で示されるものが好適に使用される。
【0110】
【化12】
【0111】
一般式(II−1)または(II−2)式中、Aは上記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を表し、1つのポリマー中に2種類以上の構造Aが含まれていてもよい。
【0112】
一般式(II−1)または(II−2)式中、Rは水素原子、アルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、または、置換もしくは未置換のアラルキル基を表す。
アルキル基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。アリール基としては、炭素数6〜20のものが好ましく、例えば、フェニル基、トルイル基等が挙げられる、アラルキル基としては、炭素数7〜20のものが好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。また、置換アリール基、置換アラルキル基の置換基としては、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、置換アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0113】
一般式(II−1)または(II−2)式中、Tは、炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素基または炭素数2〜10の2価の分枝鎖状炭化水素基を示し、好ましくは炭素数が2〜6の2価の直鎖状炭化水素基および炭素数3〜7の2価の分枝鎖状炭化水素基より選択される。また、mは0又は1である。Tで表される構造の具体的な例を以下に示す。
【0114】
【化13】
【0115】
一般式(II−1)または(II−2)式中、Yは2価アルコール残基を表し、Zは2価のカルボン酸残基を表す。YおよびZは、具体的には下記の式(13)〜(19)から選択された基が挙げられる。
【0116】
【化14】
【0117】
式(13)〜(19)中、R3およびR4は、それぞれ水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、置換もしくは未置換のフェニル基、置換もしくは未置換のアラルキル基、または、ハロゲン原子を表し、cおよびdはそれぞれ1〜10の整数を意味し、eおよびfは、それぞれ0、1または2の整数を意味し、gおよびhはそれぞれ0または1を意味し、Vは前記式(5)〜(6)中におけるVと同様である。また、pは5〜5,000の整数を表すが、好ましくは10〜1,000の範囲である。
【0118】
以下、表73〜83に、一般式(II−1)および(II−2)で示される電荷輸送性ポリエステルの具体例を示すが、一般式(II−1)および(II−2)で示される電荷輸送性ポリエステルはこれら具体例のみに限定されるものではない。但し、表73〜83において、「モノマー」の欄の「A」の欄に示される番号は、前記一般式(I−1)および(I−2)で示される具体例、すなわち表1、2の「構造」の欄に示された番号に対応している。また、「Y」および「Z」の欄のうち、「Y」の欄のみに構造式が示されている場合は一般式(II−1)で表される電荷輸送性ポリエステルの具体例を意味し、「Y」および「Z」の両方の欄に構造式が示されている場合は一般式(II−2)で表される電荷輸送性ポリエステルの具体例を意味する。なお、以下の説明において、表73〜83の「化合物」の欄に示される番号に対応する電荷輸送性ポリエステルを例示化合物と称し、例えば、「化合物」の欄に示される番号が(15)である電荷輸送性ポリエステルについては「例示化合物(15)」と記載する。
【0119】
【表73】
【0120】
【表74】
【0121】
【表75】
【0122】
【表76】
【0123】
【表77】
【0124】
【表78】
【0125】
【表79】
【0126】
【表80】
【0127】
【表81】
【0128】
【表82】
【0129】
【表83】
【0130】
本発明の電荷輸送性ポリエステルの重量平均分子量Mwは50,000〜1,000,000の範囲であることが好ましく、10,000〜300,000の範囲にあることがより好ましい。
【0131】
本発明の電荷輸送性ポリエステルは、下記構造式(III−1)〜(III−2)で示される電荷輸送性モノマーを、例えば、第4版実験化学講座第28巻(丸善、1992)等に記載された公知の方法で重合させることによって合成することができる。なお、構造式(III−1)〜(III−2)中、Ar、X、Tで表される部分構造、および、整数k、n、lの値は、前記一般式(I−1)または(I−2)におけるAr、X、Tで表される部分構造、および、整数k、n、lと同様である。
【0132】
【化15】
【0133】
すなわち、一般式(II−1)で示される電荷輸送性ポリエステルは、構造式(III−1)および(III−2)で示される電荷輸送性モノマーを用いて、次のようにして合成することができる。
構造式(III−1)〜(III−2)中のA’が水酸基の場合には、HO−(Y−O)m−H(但し、Yは2価のアルコール残基、mは1〜5の整数)で示される2価アルコール類をほぼ当量混合し、酸触媒を用いて重合する。酸触媒としては、硫酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等、通常のエステル化反応に用いるものが使用でき、電荷輸送性モノマー1重量部に対して、1/10,000〜1/10重量部、好ましくは1/1,000〜1/50重量部の範囲で用いられる。重合中に生成する水を除去するために、水と共沸可能な溶剤を用いることが好ましく、トルエン、クロロベンゼン、1−クロロナフタレン等が有効であり、電荷輸送性モノマー1重量部に対して、1〜100重量部、好ましくは2〜50重量部の範囲で用いられる。反応温度は任意に設定できるが、重合中に生成する水を除去するために、溶剤の沸点で反応させることが好ましい。
【0134】
反応終了後、溶剤を用いなかった場合には溶解可能な溶剤に溶解させる。溶剤を用いた場合には、反応溶液をそのまま、メタノール、エタノール等のアルコール類や、アセトン等のポリマーが溶解しにくい貧溶剤中に滴下し、電荷輸送性ポリエステルを析出させ、電荷輸送性ポリエステルを分離した後、水や有機溶剤で十分洗浄し、乾燥させる。更に、必要であれば適当な有機溶剤に溶解させ、貧溶剤中に滴下し、電荷輸送性ポリエステルを析出させる再沈殿処理を繰り返してもよい。再沈殿処理の際には、メカニカルスターラー等で、効率よく撹拌しながら行うことが好ましい。再沈殿処理の際に電荷輸送性ポリエステルを溶解させる溶剤は、電荷輸送性ポリエステル1重量部に対して、1〜100重量部、好ましくは2〜50重量部の範囲で用いられる。また、貧溶剤は電荷輸送性ポリエステル1重量部に対して、1〜1,000重量部、好ましくは10〜500重量部の範囲で用いられる。
【0135】
A’がハロゲンの場合には、HO−(Y−O)m−H(但し、Yは2価のアルコール残基、mは1〜5の整数であり、以下も同様である)で示される2価アルコール類をほぼ当量混合し、ピリジンやトリエチルアミン等の有機塩基性触媒を用いて重合する。有機塩基性触媒は、電荷輸送性モノマー1当量に対して、1〜10当量、好ましくは2〜5当量の範囲で用いられる。溶剤としては、塩化メチレン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、クロロベンゼン、1−クロロナフタレン等が有効であり、電荷輸送性モノマー1重量部に対して、1〜100重量部、好ましくは2〜50重量部の範囲で用いられる。反応温度は任意に設定できる。重合後、前述のように再沈殿処理し、精製する。
【0136】
また、ビスフェノール等の酸性度の高い2価アルコール類の場合には、界面重合法も用いることができる。すなわち、2価アルコール類を水に加え、当量の塩基を加えて溶解させた後、激しく撹拌しながら2価アルコール類と当量の電荷輸送性モノマー溶液を加えることによって重合できる。この際、水は2価アルコール類1重量部に対して、1〜1,000重量部、好ましくは2〜500重量部の範囲で用いられる。電荷輸送性モノマーを溶解させる溶剤としては、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トルエン、クロロベンゼン、1−クロロナフタレン等が有効である。反応温度は任意に設定でき、反応を促進するために、アンモニウム塩、スルホニウム塩等の相間移動触媒を用いることが効果的である。相間移動触媒は、電荷輸送性モノマー1重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部の範囲で用いられる。
【0137】
A’がアルコキシ基(−O−R13、但し、R13はメチル基やエチル基などのアルキル基であり、以下も同様である)の場合には、前述の構造式(III−1)および(III−2)で示される電荷輸送性ポリマーに、HO−(Y−O)m−Hで示される2価アルコール類を過剰に加え、硫酸、リン酸等の無機酸、チタンアルコキシド、カルシウムおよびコバルト等の酢酸塩或いは炭酸塩、亜鉛や鉛の酸化物を触媒に用いて加熱し、エステル交換により合成できる。2価アルコール類は電荷輸送性モノマー1当量に対して、2〜100当量、好ましくは3〜50当量の範囲で用いられる。触媒は電荷輸送性モノマー1重量部に対して、1/10,000〜1重量部、好ましくは1/1,000〜1/2重量部の範囲で用いられる。反応は、反応温度200〜300℃で行い、基−O−R13から基−O−(Y−O)m−Hへのエステル交換終了後は、HO−(Y−O)m−Hの脱離による重合を促進するため、減圧下で反応させることが好ましい。また、HO−(Y−O)m−Hと共沸可能な1−クロロナフタレン等の高沸点溶剤を用いて、常圧下でHO−(Y−O)m−Hを共沸で除きながら反応させることもできる。
【0138】
一方、一般式(II−2)で示される電荷輸送性ポリエステルは、次のようにして合成することができる。
すなわち、一般式(II−2)で示される電荷輸送性ポリエステルは、上記に説明した一般式(II−1)で示される電荷輸送性ポリエステルを合成する場合において、構造式(III−1)や(III−2)で示される電荷輸送性モノマーの代りに、下記構造式(IV−1)や(IV−2)で示される化合物を用い、それ以外は同様に2価カルボン酸または2価カルボン酸ハロゲン化物等と反応させて得ることができる。
【0139】
【化16】
【0140】
上記構造式(IV−1)および(IV−2)中、Ar、X、Tで表される部分構造、および、整数k、n、lの値は、前記一般式(I−1)または(I−2)におけるAr、X、Tで表される部分構造、および、整数k、n、lと同様である。また、上記構造式(IV−1)および(IV−2)中、Yで表される部分構造、および、整数mの値は前記一般式(II−1)および(II―2)におけるYで表される部分構造、および、整数mの値と同様である。
なお、構造式(IV−1)で示される化合物は、構造式(III−1)で示される電荷輸送性モノマーに2価アルコール類を過剰に加えて反応させることにより得ることができ、構造式(IV−2)で示される化合物は、構造式(III−2)で示される電荷輸送性モノマーに2価アルコール類を過剰に加えて反応させることにより得ることができる。
【0141】
次に、本発明の有機EL素子の構成について詳記する。
本発明の有機EL素子は、少なくとも一方が透明または半透明である一対の電極と、それら電極間に挾持された発光層を含む一つまたは複数の有機化合物層より構成され、前記有機化合物層の少なくとも一層に前記電荷輸送性ポリエステルを含有してなるものであれば特に限定されないが、具体的には以下に説明するような構成を有することができる。
【0142】
本発明の有機EL素子においては、有機化合物層が1つの場合は、有機化合物層は電荷輸送能を有する発光層を意味し、前記発光層が前記電荷輸送性ポリエステルを含有してなる。また、有機化合物層が複数の場合(機能分離型の場合)は、その少なくとも一つは発光層(この発光層は電荷輸送能を持っていてもよいし、持っていなくてもよい)であり、他の有機化合物層が、電荷輸送層、すなわち、ホール輸送層、電子輸送層、またはホール輸送層と電子輸送層よりなるものを意味し、これらの少なくとも一層が前記電荷輸送性ポリエステルを含有してなる。
【0143】
具体的には、例えば、有機化合物層が少なくとも電子輸送層および発光層から構成されるもの、少なくともホール輸送層、電子輸送層および発光層から構成されるもの、或いは少なくともホール輸送層および発光層から構成されるものであり、これらの少なくとも一層が前記電荷輸送性ポリエステルを含有してなるものが挙げられる。さらに、例えば、有機化合物層が発光層のみから構成されてなり、前記発光層が前記電荷輸送性ポリエステルを含有してなるもの等が挙げられる。また、本発明の有機EL素子においては、発光層が電荷輸送性材料(前記電荷輸送性ポリエステル以外のホール輸送性材料、電子輸送性材料)を含有していてもよい。
【0144】
以下、図面を参照しつつ、より詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図1〜図4は、本発明の有機EL素子の層構成を説明するための模式的断面図であって、図1、図2、図4の場合は、有機化合物層が複数の場合の一例であり、図3の場合は、有機化合物層が1つの場合の例を示す。なお、図1〜図4において、同様の機能を有するものは同じ符号を付して説明する。
【0145】
図1に示す有機EL素子は、透明絶縁体基板1上に、透明電極2、電荷輸送能を持つ発光層6、電子輸送層5及び背面電極7を順次積層してなる。図2に示す有機EL素子は、透明絶縁体基板1上に、透明電極2、ホール輸送層3、発光層4、電子輸送層5及び背面電極7を順次積層してなる。図3に示す有機EL素子は、透明絶縁体基板1上に、透明電極2、電荷輸送能を持つ発光層6、及び背面電極7を順次積層してなる。図4に示す有機EL素子は、透明絶縁体基板1上に、透明電極2、ホール輸送層3、電荷輸送能を持つ発光層6及び背面電極7を順次積層してなる。以下、各々を詳しく説明する。
【0146】
なお、図1、図2に示す有機EL素子は発光材料(発光層)が、真空蒸着や溶液又は分散液を塗布・乾燥することが可能であるが良好な薄膜とならないものや、明確な電子輸送性を示さないものを用いる場合に、有機EL素子の耐久性向上或いは発光効率の向上を図る目的で、発光層4或いは電荷輸送能を持つ発光層6と背面電極7との間に電子輸送層を設けた層構成である。
【0147】
本発明における前記電荷輸送性ポリエステルが含有してなる有機化合物層は、その構造によっては、図1に示される有機EL素子の層構成の場合、電子輸送層5、電荷輸送能を有する発光層6としていずれも機能することができるし、また、図2に示される有機EL素子の層構成の場合、ホール輸送層3、電子輸送層5としていずれも機能することができ、図3に示される有機EL素子の層構成の場合、キャリア輸送能を持つ発光層6としていずれも機能することができ、図4に示される有機EL素子の層構成の場合、ホール輸送層3、キャリア輸送能を持つ発光層6としていずれも機能することができる。
【0148】
図1〜図4に示される有機EL素子の層構成の場合、透明絶縁体基板1は、発光を取り出すため透明なものが好ましく、ガラス、プラスチックフィルム等が用いられる。
【0149】
透明電極2は、透明絶縁体基板と同様に発光を取り出すため透明であって、かつホールの注入を行うため仕事関数の大きなものが好ましく、酸化スズインジウム(ITO)、酸化スズ(NESA)、酸化インジウム、酸化亜鉛等の酸化膜、および蒸着或いはスパッタされた金、白金、パラジウム等が用いられる。
【0150】
図2及び図4に示される有機EL素子の層構成の場合、ホール輸送層3は目的に応じて機能(ホール輸送能)が付与された電荷輸送性ポリエステル単独で形成されていてもよいが、ホール移動度を調節するために電荷輸送性ポリエステル以外のホール輸送材料を1重量%ないし50重量%の範囲で混合分散して形成されていてもよい。
【0151】
このようなホール輸送材料としては、テトラフェニレンジアミン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、カルバゾール誘導体、スチルベン誘導体、アリールヒドラゾン誘導体、ポルフィリン系化合物等が挙げられ、好適な具体例としては下記に示す化合物(V−1)〜(V−8)が挙げられるが、電荷輸送性ポリエステルとの相容性が良いことから、テトラフェニレンジアミン誘導体が特に好ましい。なお、下記に示す化合物(V−6)〜(V−8)において、nは1以上の整数を意味する。
【0152】
【化17】
【0153】
【化18】
【0154】
また、成膜性の向上、ピンホール防止等のため、他の汎用の樹脂、添加剤等との混合でもよい。具体的な樹脂としてはポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレンブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコン樹脂、ポリ−N−カルバゾール樹脂、ポリシラン樹脂、ポリチオフェン、ポリピロール等の導電性樹脂等を用いることができる。また、添加剤としては、公知の酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等を用いることができる。
【0155】
図2に示される有機EL素子の層構成の場合、発光層4には、固体状態で高い蛍光量子収率を示す化合物が発光材料として用いられる。発光材料が有機低分子の場合、真空蒸着法、もしくは、有機低分子と結着樹脂を含む溶液や分散液を塗布・乾燥することにより良好な薄膜形成が可能であることが条件である。また、発光材料が有機高分子の場合、それ自身を含む溶液または分散液を塗布・乾燥することにより良好な薄膜形成が可能であることが条件である。
【0156】
好適には、発光材料が有機低分子の場合、キレート型有機金属錯体、多核または縮合芳香環化合物、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、スチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサチアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体等が、高分子の場合、ポリパラフェニレン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリアセチレン誘導体等が挙げられる。好適な具体例として、下記の化合物(VI−1)〜(VI−15)が用いられるが、これらに限定されたものではない。
なお、構造式(VI−13)〜(VI−15)中、nおよびxは1以上の整数を示す。
【0157】
【化19】
【0158】
【化20】
【0159】
また、発光層4には有機EL素子の耐久性向上或いは発光効率の向上を目的として、上記の発光材料中にゲスト材料として発光材料と異なる色素化合物をドーピングしてもよい。前記色素化合物のドーピングは、真空蒸着によって発光層を形成する場合には、前記色素化合物は共蒸着を利用して行うことができ、溶液または分散液を塗布・乾燥することで発光層を形成する場合には、溶液または分散液中に混合することで行うことができる。
【0160】
発光層中における色素化合物のドーピングの割合としては0.001重量%〜40重量%程度、好ましくは0.01重量%〜10重量%程度である。このようなドーピングに用いられる色素化合物としては、発光材料との相容性が良く、かつ発光層の良好な薄膜形成を妨げない有機化合物が用いられ、好適にはDCM誘導体、キナクリドン誘導体、ルブレン誘導体、ポルフィリン系化合物等が挙げられる。好適な具体例として、下記の化合物(VII−1)〜(VII−4)が用いられるが、これらに限定されたものではない。
【0161】
【化21】
【0162】
図1及び2に示される有機EL素子の層構成の場合、電子輸送層に5には、目的に応じて機能(電子輸送能)が付与された前記電荷輸送性ポリエステルのみで形成されていてもよいが、電気的特性をさらに改善する等の目的で、電子移動度を調整するために、電荷輸送性ポリエステル以外の電子輸送性材料を1重量%ないし50重量%の範囲で混合分散して形成されていてもよい。このような電荷輸送性ポリエステル以外の電子輸送材料としては、真空蒸着法により良好な薄膜形成が可能な有機化合物が用いられ、好適にはオキサジアゾール誘導体、ニトロ置換フルオレノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体等が挙げられる。好適な具体例として、下記の化合物(VIII−1)〜(VIII−3)が用いられるが、これらに限定されたものではない。なお、前記電荷輸送性ポリエステルを用いない場合は、これら電子輸送性材料単独で用いられることとなる。
【0163】
【化22】
【0164】
図1、図3又は図4に示される有機EL素子の層構成の場合、電荷輸送能を持つ発光層6は目的に応じて機能(ホール輸送能、或いは、電子輸送能)が付与された前記電荷輸送性ポリエステル中に発光材料を50重量%以下分散させた有機化合物層であり、発光材料としては前記化合物(VI−1)〜(VI−15)が好適に用いられるが、有機EL素子に注入されるホールと電子のバランスを調節するために前記電荷輸送性ポリエステル以外の電子輸送材料を10重量%〜50重量%分散させてもよい。
【0165】
このような電子輸送性材料としては、前記電荷輸送性ポリエステルと強い電子相互作用を示さない有機化合物が用いられることが好ましく、より好ましくは下記化合物(IX)が用いられるが、これに限定されるものではない。同様にホール移動度を調節するために、電荷輸送性ポリエステル以外のホール輸送材料、好ましくはテトラフェニレンジアミン誘導体を適量同時に分散させて用いてもよい。また、図2で示される有機EL素子の発光層4と同様、発光材料と異なる色素化合物をドーピングしてもよい。
【0166】
【化23】
【0167】
図1〜図4に示される有機EL素子の層構成において、背面電極7には、真空蒸着可能で、電子注入を行うため仕事関数の小さな金属が使用されるが、特に好ましくはマグネシウム、アルミニウム、銀、インジウムおよびこれらの合金が使用できる。また、背面電極7上には、さらに有機EL素子の水分や酸素による劣化を防ぐために保護層を設けてもよい。具体的な保護層の材料としては、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al等の金属、MgO、SiO2、TiO2等の金属酸化物、ポリエチレン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂が挙げられる。保護層の形成には、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマ重合法、CVD法、コーティング法が適用できる。
【0168】
これら図1〜図4に示される有機EL素子は、まず、透明絶縁体基板1の片面に透明電極2を形成し、透明電極2上に有機EL素子の層構成に応じて有機化合物層を積層する。
すなわち、図1に示す有機EL素子の場合には、透明電極2上に、電荷輸送能を持つ発光層6、および、電子輸送層5を順次積層し、図2に示す有機EL素子の場合には、透明電極2上に、ホール輸送層3、発光層4、および、電子輸送層5を順次積層し、図3に示す有機EL素子の場合には、透明電極2上に、電荷輸送能を持つ発光層6を積層し、図4に示す有機EL素子の場合には、透明電極2上に、ホール輸送層3、および、電荷輸送能を持つ発光層6を順次積層する。
なお、ホール輸送層3及び電荷輸送能を持つ発光層6は、上記各材料を真空蒸着法、もしくは、有機溶媒中に溶解・分散して得られた塗布液を用いて透明電極2上にスピンコーティング法、ディップ法等を用いて成膜することによって形成される。
【0169】
ホール輸送層3、発光層4、電子輸送層5の膜厚は、0.1μm以下であることが好ましく、特に0.03〜0.08μmの範囲であることが好ましい。また、電荷輸送能を有する発光層6の膜厚は0.03〜0.2μm程度が好ましい。
上記各材料(前記ポリエステル、発光材料、電子輸送材料ホール輸送材料等)の有機化合物層中の分散状態は分子スケールで分散した状態でも微粒子スケールで分散した状態でも構わない。塗布液を用いた成膜法の場合、塗布液中に含まれる材料を分子スケールで分散した状態とするためには、分散溶媒は用いた上記各材料の共通溶媒を用いる必要があり、微粒子スケールで分散した状態とするために分散溶媒は用いた上記各材料の分散性及び溶解性を考慮して選択する必要がある。微粒子状に分散するためには、ボールミル、サンドミル、ペイントシェイカー、アトライター、ボールミル、ホモジェナイザー、超音波法等が利用できる。
【0170】
そして最後に、電子輸送層5(図1および図2に示す有機EL素子の場合)或いは電荷輸送能を有する発光層6(図3および図4に示す有機EL素子の場合)の上に背面電極7を真空蒸着法により形成することにより本発明の有機EL素子を得ることができる。
以上に説明したようにして得られた本発明の有機EL素子は、一対の電極間に、例えば、4〜20Vで、電流密度1〜200mA/cm2の直流電圧を印加することによって発光させることができる。
【0171】
【実施例】
以下に本発明を実施例を挙げてより具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の説明において、前記一般式(III−1)および(III−2)で表される電荷輸送性モノマーの末端(「T」に結合している部分)を除く主要部の構造が、表1〜表72に示す構造の欄の番号に対応するものである場合、「電荷輸送性モノマー(表1〜表72に示す「構造」の欄の番号)」と記載する。例えば、電荷輸送性モノマーの主要部の構造が、表1に示す5番の構造である場合には、「電荷輸送性モノマー(5)」と記載する。
【0172】
実施例に用いた電荷輸送性ポリエステルは、例えば以下のようにして得た。
−合成例1〔例示化合物(17)〕−
電荷輸送性モノマー(34)を2.0g、エチレングリコール10.0gおよびテトラブトキシチタン0.2gを50mlのフラスコに入れ、窒素気流下、200℃で5時間加熱攪拌した。電荷輸送性モノマー(34)が消費されたことを確認した後、真空ポンプにて0.5mmHgに減圧してエチレングリコールを留去しながら230℃に加熱し、4時間反応を続けた。その後、室温まで冷却し、クロロベンゼン50mlに溶解して不溶物を0.1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターにて濾過し、その濾液をメタノール250mlを撹拌している中に滴下してポリマーを析出させた。得られたポリマーを濾過し、十分にメタノールで洗浄した後、乾燥させ、1.9gの例示化合物(17)を得た。分子量はGPCにて測定し、Mw=9.12×104(スチレン換算)であり、電荷輸送性モノマー(34)の分子量から求めたpは約109であった。
【0173】
−合成例2〔例示化合物(28)〕−
電荷輸送性モノマー(58)を2.0g、エチレングリコール10.0gおよびテトラブトキシチタン0.2gを50mlのフラスコに入れ、窒素気流下、200℃で4時間加熱攪拌した。電荷輸送性モノマー(58)が消費されたことを確認した後、真空ポンプにて0.5mmHgに減圧し、エチレングリコールを留去しながら230℃に加熱し、4時間反応を続けた。その後、室温まで冷却しクロロベンゼン50mlに溶解して不溶物を0.1μmのPTFEフィルターにて濾過し、その濾液をメタノール250mlを撹拌している中に滴下してポリマーを析出させた。得られたポリマーを濾過し、十分にメタノールで洗浄した後、乾燥させ、1.8gの例示化合物(28)を得た。分子量はGPCにて測定し、Mw=1.20×105(スチレン換算)であり、電荷輸送性モノマー(58)の分子量から求めたpは約123であった。
【0174】
−合成例3〔例示化合物(30)〕−
電荷輸送性モノマー(73)を5.0g、エチレングリコール25.0gおよびテトラブトキシチタン0.5gを100mlのフラスコに入れ、窒素気流下、230℃で5時間加熱攪拌した。電荷輸送性モノマー(73)が消費されたことを確認した後、真空ポンプにて0.5mmHgに減圧してエチレングリコールを留去しながら230℃に加熱し、4時間反応を続けた。その後、室温まで冷却し、クロロベンゼン100mlに溶解して不溶物を0.1μmのPTFEフィルターにて濾過し、その濾液をメタノール500mlを撹拌している中に滴下してポリマーを析出させた。得られたポリマーを濾過し、十分にメタノールで洗浄した後、乾燥させ、4.6gの例示化合物(30)を得た。分子量はGPCにて測定し、Mw=1.04×105(スチレン換算)であり、電荷輸送性モノマー(73)の分子量から求めたpは約111であった。
【0175】
−合成例4〔例示化合物(32)〕−
電荷輸送性モノマー(74)を2.0g、エチレングリコール8.0gおよびテトラブトキシチタン0.2gを50mlのフラスコに入れ、窒素気流下、230℃で4時間加熱攪拌した。電荷輸送性モノマー(74)が消費されたことを確認した後、真空ポンプで0.5mmHgに減圧してエチレングリコールを留去しながら230℃に加熱し、4時間反応を続けた。その後、室温まで冷却し、クロロベンゼン50mlに溶解して不溶物を0.1μmのPTFEフィルターにて濾過し、その濾液をメタノール250mlを撹拌している中に滴下してポリマーを析出させた。得られたポリマーを濾過し、十分にメタノールで洗浄した後、乾燥させ、1.9gの例示化合物(32)を得た。分子量はGPCにて測定し、Mw=1.21×105(スチレン換算)であり、電荷輸送性モノマー(74)の分子量から求めたpは約129であった。
【0176】
(実施例1)
まず、透明電極が設けられたガラス基板として、エッチング法等を利用して2mm幅の短冊型ITO電極を片面に形成したガラス基板を作製し、2−プロパノール(電子工業用、関東化学社製)で超音波洗浄後、乾燥させたものを準備した(以下、洗浄乾燥処理後の上記ガラス基板を「ITO電極付きガラス基板」と略す)。
次に、電荷輸送性ポリエステル[例示化合物(17)](Mw=9.12×104)の5重量%ジクロロエタン溶液を調製し、0.1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターで濾過した。この溶液を、ITO電極付きガラス基板のITO電極面が設けられた側に、ディップ法により塗布し、膜厚約0.1μmのホール輸送層を形成した。十分乾燥させた後、発光材料として昇華精製した前記化合物(VI−1)をタングステンボートに入れ、真空蒸着法により蒸着して、ホール輸送層上に膜厚0.05μmの発光層を形成した。この時の真空度は10−5Torr、ボート温度は300℃であった。続いて発光層の上にMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の短冊状の背面電極をITO電極と交差するように形成した。形成された有機EL素子の有効面積は0.04cm2であった。
【0177】
(実施例2)
電荷輸送性ポリエステル[例示化合物(17)](Mw=9.12×104)1重量部、発光材料として、前記化合物(VI−1)1重量部を混合し、10重量%ジクロロエタン溶液を調製し、0.1μmのPTFEフィルターで濾過した。この溶液を用いて、実施例1と同様にITO電極付きガラス基板のITO電極面側に、ディップ法により膜厚約0.15μmの電荷輸送能を有する発光層を形成した。充分乾燥させた後、この発光層の上にMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の短冊状の背面電極をITO電極と交差するように形成した。形成された有機EL素子の有効面積は0.04cm2であった。
【0178】
(実施例3)
電荷輸送性ポリエステル[例示化合物(17)](Mw=9.12×104)を2重量部、発光材料として前記化合物(VI−10)を0.1重量部、電子輸送材料として前記化合物(IX)を1重量部混合し、10重量%ジクロロエタン溶液を調製し、0.1μmのPTFEフィルターで濾過した。この溶液を用いて、実施例1と同様にITO電極付きガラス基板のITO電極面側に、ディップ法により塗布して、膜厚約0.15μmの電荷輸送能を有する発光層を形成した。十分乾燥させた後、この発光層の上にMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の短冊状の背面電極をITO電極と交差するように形成した。形成された有機EL素子の有効面積は0.04cm2であった。
【0179】
(実施例4)
ホール輸送材料として電荷輸送性ポリエステル[例示化合物(17)](Mw=9.12×104)を1重量部、発光材料として化合物(VI−1)を1重量部を混合し、10重量%ジクロロエタン溶液を調製し、0.1μmのPTFEフィルターで濾過した。この溶液を、ITO電極付きガラス基板のITO電極面側に、ディップ法により塗布して膜厚0.05μmの電荷輸送能を持つ発光層を形成し、十分乾燥させた。その後、予め調製し、0.1μmのPTFEフィルターで濾過した電荷輸送性ポリエステル[例示化合物(28)](Mw=1.20×105)の5重量%ジクロロエタン溶液を用いて、発光層上にスピンコート法により塗布し、厚さ0.1μmの電子輸送層を形成した。最後に、この電子輸送層上にMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の短冊状の背面電極をITO電極と交差するように形成した。形成された有機EL素子の有効面積は0.04cm2であった。
【0180】
(実施例5)
ITO電極付きガラス基板のITO電極面側に、電荷輸送性ポリエステル[例示化合物(17)](Mw=9.12×104)1重量部を含む厚さ0.1μmのホール輸送層をディップ法により形成し、さらにこのホール輸送層上に、発光材料として化合物(VI−1)からなる厚さ0.065μmの発光層を真空蒸着法により順次形成した。これらの層を十分乾燥させた後、予め調製し、0.1μmのPTFEフィルターで濾過した電荷輸送性ポリエステル[例示化合物(28)](Mw=1.20×105)の5重量%ジクロロエタン溶液を、発光層上にスピンコート法により塗布し、厚さ0.1μmの電子輸送層を形成した。最後に、この電子輸送層上にMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の短冊状の背面電極をITO電極と交差するように形成した。形成された有機EL素子の有効面積は0.04cm2であった。
【0181】
(実施例6)
ホール輸送材料として電荷輸送性ポリエステル[例示化合物(17)](Mw=9.12×104)1重量部、発光材料として前記化合物(VI−1)1重量部、電子輸送材料として電荷輸送性ポリエステル[例示化合物(28)]1重量部を用いて電荷輸送能を持つ発光層を形成した以外は実施例2と同様にして有機EL素子を作製した。
【0182】
(実施例7)
電荷輸送性ポリエステルとして例示化合物(17)の代りに例示化合物(30)(Mw=1.04×105)を用いた以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
【0183】
(実施例8)
電荷輸送性ポリエステルとして例示化合物(17)の代りに例示化合物(30)(Mw=1.04×105)を用いた以外は、実施例2と同様にして有機EL素子を作製した。
【0184】
(実施例9)
電荷輸送性ポリエステルとして例示化合物(17)の代りに例示化合物(30)(Mw=1.04×105)を用いた以外は、実施例3と同様にして有機EL素子を作製した。
【0185】
(実施例10)
電荷輸送性ポリエステルとして例示化合物(17)の代りに例示化合物(30)例示化合物(32)(Mw=1.21×105)を用いた以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
【0186】
(実施例11)
電荷輸送性ポリエステルとして例示化合物(17)の代りに例示化合物(32)(Mw=1.21×105)を用いた以外は、実施例2と同様にして有機EL素子を作製した。
【0187】
(実施例12)
電荷輸送性ポリエステルとして例示化合物(17)の代りに例示化合物(32)(Mw=1.21×105)を用いた以外は、実施例3と同様にして有機EL素子を作製した。
【0188】
(実施例13)
ホール輸送材料として用いた電荷輸送性ポリエステルである例示化合物(17)の代りに例示化合物(30)(Mw=1.04×105)を用いた以外は実施例4と同様にして有機EL素子を作製した。
【0189】
(実施例14)
ホール輸送材料として用いた電荷輸送性ポリエステルである例示化合物(17)の代りに例示化合物(32)(Mw=1.21×105)を用いた以外は、実施例5と同様にして有機EL素子を作製した。
【0190】
(比較例1)
ITO電極付きガラス基板のITO電極面側に、ホール輸送材料として、前記化合物(V−1)より構成される厚さ0.05μmのホール輸送層と、発光材料として前記化合物(VI−1)より構成される厚さ0.065μmの発光層とを、順次真空蒸着法により形成した。最後に、この発光層上にMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の短冊状の背面電極をITO電極と交差するように形成した。形成された有機EL素子の有効面積は0.04cm2であった。
【0191】
(比較例2)
ITO電極付きガラス基板のITO電極面側に、発光材料として前記化合物(VI−1)より構成される厚さ0.065μmの発光層と、電子輸送材料として前記化合物(VIII−1)より構成される厚さ0.05μmの電子輸送層とを順次真空蒸着法により形成した。最後に、この電子輸送層上にMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の短冊状の背面電極をITO電極と交差するように形成した。形成された有機EL素子の有効面積は0.04cm2であった。
【0192】
(比較例3)
ホール輸送材料として前記化合物(V−1)を1重量部、発光材料として前記化合物(VI−1)を1重量部、結着樹脂としてポリメチルメタクリレート(PMMA)を1重量部混合し、これらの成分を10重量%含むジクロロエタン溶液を調製し、さらに0.1μmのPTFEフィルターで濾過した。この溶液を、ITO電極付きガラス基板のITO電極面側に、ディップ法により塗布して膜厚0.1μmのホール輸送層を形成した。十分乾燥させた後、このホール輸送層上にMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の短冊状の背面電極をITO電極と交差するように形成した。形成された有機EL素子の有効面積は0.04cm2であった。
【0193】
(比較例4)
ホール輸送性ポリエステルとして前記化合物(V−6)を2重量部、発光材料として前記化合物(V−10)を0.1重量部、電子輸送材料として前記化合物(VIII−1)を1重量部混合し、これらの成分を10重量%含むジクロロエタン溶液を調製し、さらに0.1μmのPTFEフィルターで濾過した。この溶液を、ITO電極付きガラス基板のITO電極面側に、ディップ法により塗布して膜厚0.15μmのホール輸送層を形成した。十分乾燥させた後、このホール輸送層上にMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の短冊状の背面電極をITO電極と交差するように形成した。形成された有機EL素子の有効面積は0.04cm2であった。
【0194】
以上のように作製した有機EL素子を、真空中(10−3Torr)でITO電極側をプラス、Mg−Ag背面電極側をマイナスとして直流電圧を印加し、発光について測定を行い、このときの最高輝度、および発光色を評価した。それらの結果を表84に示す。また、乾燥窒素中で有機EL素子の発光寿命の測定を行った。発光寿命の評価は、初期輝度が50cd/m2となるように電流値を設定し、定電流駆動により輝度が初期値から半減するまでの時間を素子寿命(hour)とした。この時の駆動電流密度を素子寿命と共に表4に示す。
【0195】
【表84】
【0196】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明に用いられる上記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し構造単位からなる電荷輸送性ポリエステルが、有機EL素子に好適なイオン化ポテンシャルおよび電荷移動度を持ち、また、スピンコーティング法、ディップ法等を用いて良好な薄膜を形成することが可能であるので、本発明の有機EL素子は、十分な輝度を有し、安定性および耐久性に優れ、且つ大面積化可能であり製造容易な有機EL素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の有機EL素子の層構成の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の有機EL素子の層構成の他の一例を示す概略構成図である。
【図3】本発明の有機EL素子の層構成の他の一例を示す概略構成図である。
【図4】本発明の有機EL素子の層構成の他の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
1 透明絶縁体基板
2 透明電極
3 ホール輸送層
4 発光層
5 電子輸送層
6 電荷輸送能を持つ発光層
7 背面電極
【発明の属する技術分野】
本発明は、表示素子、バックライト、照明光源、電子写真用露光装置、標識、看板等に好適に使用できる有機電界発光素子(以下、「有機EL素子」と記述する)に関し、詳しくは、特定の電荷輸送性ポリマーを用いた有機電界発光素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電界発光素子(以下、「EL素子」と記述する)は、自発光性の全固体素子であり、視認性が高く衝撃にも強いため、広く応用が期待されている。現在は無機螢光体を用いたものが主流であるが、200V以上の交流電圧が駆動に必要なため製造コストが高く、また、輝度が不十分等の問題点を有している。
【0003】
一方、有機化合物を用いたEL素子研究は、最初アントラセン等の単結晶を用いて始まったが、単結晶の場合、膜厚が1mm程度と厚く100V以上の駆動電圧が必要であった。そのため蒸着法による薄膜化が試みられている(非特許文献1参照)。しかしながら、この方法で得られた薄膜は、駆動電圧が30Vと未だ高く、また、膜中における電子・ホールキャリアの密度が低く、キャリアの再結合によるフォトンの生成確率が低いため十分な輝度が得られなかった。
【0004】
ところが近年、ホール輸送性有機低分子化合物と電子輸送能を持つ螢光性有機低分子化合物の薄膜を真空蒸着法により順次積層した機能分離型のEL素子において、10V程度の低電圧で1000cd/m2以上の高輝度が得られるものが報告されている(非特許文献2参照)。以来、積層型のEL素子の研究・開発が活発に行われている。
【0005】
しかしながら、このタイプのEL素子では、複数の蒸着工程において0.1μm以下の薄膜を形成していくためピンホールを生じ易く、十分な性能を得るためには厳しく管理された条件下で膜厚の制御を行うことが必要である。従って、生産性が低くかつ大面積化が難しいという問題がある。また、このEL素子は数mA/cm2という高い電流密度で駆動されるため、大量のジュール熱を発生する。このため、蒸着によってアモルファスガラス状態で成膜されたホール輸送性低分子化合物や螢光性有機低分子化合物が次第に結晶化して最後には融解し、輝度の低下や絶縁破壊が生じるという現象が多く見られ、その結果素子の寿命が低下するという問題も有していた。
【0006】
そこで、EL素子の熱安定性に関する問題の解決のために、ホール輸送材料として安定なアモルファスガラス状態が得られるスターバーストアミンを用いたEL素子(非特許文献3参照)や、ポリフォスファゼンの側鎖にトリフェニルアミンを導入したポリマーを用いたEL素子(非特許文献4参照)が提案されている。
【0007】
しかし、これら単独ではホール輸送材料のイオン化ポテンシャルに起因するエネルギー障壁が存在するため、陽極からのホール注入性或いは発光層へのホール注入性を満足するものではない。また、前者のスターバーストアミンの場合、溶解性が小さいために精製が難しく純度を上げることが困難であることや、後者のポリマーの場合、高い電流密度が得られず十分な輝度が得られてない等の問題も存在する。
【0008】
一方、これらの問題の解決を目指し、単層構造のEL素子についても研究・開発が進められ、ポリ(p−フェニレンビニレン)等の導電性高分子を用いたり(例えば、非特許文献5参照)、ホール輸送性ポリビニルカルバゾール中に電子輸送材料と螢光色素を混入したEL素子(非特許文献6参照)が提案されているが、未だ輝度、発光効率等が有機低分子化合物を用いた積層型EL素子には及ばない。
【0009】
【非特許文献1】
Thin Solid Films,Vol.94,171(1982)
【非特許文献2】
Appl.Phys.Lett.,Vol.51,913(1987)
【非特許文献3】
第40回応用物理学関係連合講演会予稿集30a−SZK−14(1993)等
【非特許文献4】
第42回高分子討論会予稿集20J21(1993)
【非特許文献5】
Nature,Vol.357,477(1992)
【非特許文献6】
第38回応用物理学関係連合講演会予稿集31−G−12(1991)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の技術の上記問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は十分な輝度を有し、安定性および耐久性に優れ、且つ大面積化可能であり製造容易な有機EL素子を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため電荷輸送材料に関し鋭意検討した結果、下記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造より選択された少なくとも1種を部分構造として含む電荷輸送性ポリエステルが、有機EL素子として好適な電荷注入特性、電荷移動度、薄膜形成能を有することを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の通りである。
【0012】
<1> 少なくとも一方が透明または半透明である陽極および陰極よりなる一対の電極間に挾持された一つまたは複数の有機化合物層より構成される電界発光素子において、
前記有機化合物層の少なくとも一層が、下記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルを1種以上含有することを特徴とする有機電界発光素子である。
【化5】
〔一般式(I−1)及び(I−2)中、Arは、置換もしくは未置換のフェニル基、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の縮合環芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の1価の芳香族複素環、又は、少なくとも1種の芳香族複素環を含む置換もしくは未置換の1価の芳香族基を表し、Xは、下記の式(1)〜(6)から選択された縮合環を含む置換もしくは未置換の2価の芳香族基を表し、k、n、lは0又は1を表し、Tは、炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素基、又は、炭素数2〜10の分枝鎖状炭化水素基を表す。〕
【化6】
〔式(4)〜(6)中、R1は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、置換もしくは未置換のフェニル基、置換もしくは未置換のアラルキル基、または、ハロゲン原子を表し、Vは下記の式(7)〜(12)から選択された基を表す。〕
【化7】
〔式(12)中、R2は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、置換もしくは未置換のフェニル基、置換もしくは未置換のアラルキル基、または、ハロゲン原子を表す。〕
【0013】
<2> 前記有機化合物層が、少なくとも発光層および電子輸送層から構成され、前記発光層及び電子輸送層の少なくとも一方が、前記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルを1種以上含有してなることを特徴とする<1>に記載の有機電界発光素子である。
【0014】
<3> 前記発光層が、電荷輸送性材料を含むことを特徴とする<2>に記載の有機電界発光素子である。
【0015】
<4> 前記有機化合物層が、少なくともホール輸送層、発光層および電子輸送層から構成され、前記ホール輸送層及び電子輸送層の少なくとも一方が、前記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルを1種以上含有してなることを特徴とする<1>に記載の有機電界発光素子である。
【0016】
<5> 前記有機化合物層が、発光層のみから構成され、前記発光層が、前記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルを1種以上含有してなることを特徴とする<1>に記載の有機電界発光素子である。
【0017】
<6> 前記発光層が、電荷輸送性材料を含むことを特徴とする<5>に記載の有機電界発光素子である。
【0018】
<7> 前記有機化合物層が、少なくともホール輸送層及び発光層から構成され、前記ホール輸送層及び前記発光層の少なくとも一方が、前記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルを、少なくとも1種含有してなることを特徴とする<1>に記載の有機電界発光素子である。
【0019】
<8> 前記発光層が、電荷輸送性材料を含むことを特徴とする<6>に記載の有機電界発光素子である。
【0020】
<9> 前記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルが、下記一般式(II−1)および(II−2)で示されるポリエステルであることを特徴とする<1>に記載の有機電界発光素子である。
【化8】
〔一般式(II−1)および(II−2)中、Aは前記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を表し、Rは水素原子、アルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、または、置換もしくは未置換のアラルキル基を表し、Yは2価のアルコール残基を表し、Zは2価のカルボン酸残基を表し、BおよびB’は、それぞれ独立に、一般式(a):−O−(Y−O)m−R、または、一般式(b):−O−(Y−O)m−CO−Z−CO−O−R’、で示される基(但し、一般式(a)および(b)中、R、Y、Zは上記したものと同じ基を意味し、R’はアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、または、置換もしくは未置換のアラルキル基を表し、mは1〜5の整数を表す。)を表し、mは1〜5の整数を表し、pは5〜5000の整数を表す。〕
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明の有機EL素子は、少なくとも一方が透明または半透明である陽極および陰極よりなる一対の電極間に挾持された一つまたは複数の有機化合物層より構成され、該有機化合物層の少なくとも一層が、下記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステル(以下、単に「電荷輸送性ポリエステル」と記述することがある)を1種以上含有することを特徴とする。
【0022】
本発明の有機EL素子は、前記電荷輸送性ポリエステルを含有してなる層を有することで、十分な輝度を有し、安定性および耐久性に優れる。さらに、前記電荷輸送性ポリエステルを用いることで、大面積化可能であり、容易に製造が可能となる。また、前記電荷輸送性ポリエステルは後述する構造を適宜選択することで、ホール輸送能、電子輸送能のいずれの機能をも付与することができる。このため、目的に応じてホール輸送層、発光層、電子輸送層等のいずれの層にも用いることができる。
【0023】
【化9】
【0024】
一般式(I−1)及び(I−2)中、Arは、置換もしくは未置換のフェニル基、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の縮合環芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の1価の芳香族複素環、又は、少なくとも1種の芳香族複素環を含む置換もしくは未置換の1価の芳香族基を表す。
【0025】
一般式(I−1)および(I−2)中において、Arを表す構造として選択される多核芳香族炭化水素および縮合環芳香族炭化水素を構成する芳香環数は特に限定されないが、芳香環数が2〜5のものが好ましく、縮合環芳香族炭化水素においては、全縮合環芳香族炭化水素が好ましい。
【0026】
なお、当該多核芳香族炭化水素および縮合環芳香族炭化水素とは、本発明においては、具体的には以下に定義される多環式芳香族のことを意味する。即ち、「多核芳香族炭化水素」とは、炭素と水素とから構成される芳香環が2個以上存在し、これらの芳香環同士が、炭素―炭素の単結合によって結合している炭化水素化合物を表す。具体例としては、ビフェニル、ターフェニル等が挙げられる。また、「縮合環芳香族炭化水素」とは、炭素と水素とから構成される芳香環が2個以上存在し、これらの芳香環同士が、1対の隣接して結合する炭素原子を共有している炭化水素化合物を表す。具体例としては、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン等が挙げられる。なお、全ての芳香環が縮合環構造のより連続的に隣接してなる縮合環芳香族炭化水素を「全縮合環芳香族炭化水素」という。一方、これ以外の縮合環芳香族炭化水素を「部分縮合環芳香族炭化水素」という。
【0027】
また、Arを表す構造の一つとして選択される芳香族複素環は、炭素と水素以外の元素も含む芳香環を表す。その環骨格を構成する原子数(Nr)は、Nr=5及び/又は6が好ましく用いられる。また環骨格を構成するC以外の元素(異種元素)の種類及び数は特に限定されないが、例えば、S、N、O等が好ましく用いられ、前記環骨格中には2種類以上及び/又は2個以上の異種原子が含まれていてもよい。特に5員環構造を持つ複素環としては、チオフェン、チオフィン及びフランもしくはこれらの3位及び4位の炭素をさらに窒素で置換した複素環、ピロールもしくはこれらの3位及び4位の炭素をさらに窒素で置換した複素環が好ましく用いられ、6員環構造をもつ複素環として、ピリジンが好ましく用いられる。さらに、Arを表す構造の一つとして選択される芳香族複素環を含む芳香族基は、骨格を構成する原子団中に、少なくとも1種の前記芳香族複素環を含む結合基を表す。これらは、すべてが共役系で構成されたもの、或いは、一部が非共役系で構成されたもののいずれでもよいが、電荷輸送性や発光効率の点で、すべてが共役系で構成されたものが好ましい。
【0028】
Arを表す構造として選択されるベンゼン環、多核芳香族炭化水素、縮合環芳香族炭化水素または複素環の置換基としては、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、フェノキシ基、アリール基、アラルキル基、置換アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。アルキル基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。
【0029】
アルコキシル基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられる。アリール基としては、炭素数6〜20のものが好ましく、例えば、フェニル基、トルイル基等が挙げられる、アラルキル基としては、炭素数7〜20のものが好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。置換アミノ基の置換基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられ、具体例は前述の通りである。
【0030】
一般式(I−1)および(I−2)中、Xは、縮合環を含む置換または未置換の2価の芳香族基を表し、具体的には芳香環数が3〜10である下記の式(1)〜(6)から選択された芳香族基が挙げられる。
【0031】
【化10】
【0032】
式(4)〜(6)中、R1は、それぞれ水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、置換もしくは未置換のフェニル基、置換もしくは未置換のアラルキル基、または、ハロゲン原子を表し、Vは下記の式(7)〜(12)から選択された基を表す。
【0033】
【化11】
【0034】
式(12)中、R2は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、置換もしくは未置換のフェニル基、置換もしくは未置換のアラルキル基、または、ハロゲン原子を表す。
【0035】
さらに、一般式(I−1)及び(I−2)中、k、n、lは0または1を示し、Tは炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素基、または、炭素数2〜10の2価の分枝鎖状炭化水素基を示し、好ましくは炭素数が2〜6の2価の直鎖状炭化水素基、及び、炭素数3〜7の2価の分枝鎖状炭化水素基より選択される。
【0036】
以下、一般式(I−1)および(I−2)で示される構造の具体例を示す。本発明は、これら具体例に限定されるわけではない。なお、表1〜35に示す構造番号1〜209は一般式(I−1)で示される構造の具体例を表し、表36〜72に示す構造番号251〜476は一般式(I−2)で示される構造の具体例を表す。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
【表4】
【0041】
【表5】
【0042】
【表6】
【0043】
【表7】
【0044】
【表8】
【0045】
【表9】
【0046】
【表10】
【0047】
【表11】
【0048】
【表12】
【0049】
【表13】
【0050】
【表14】
【0051】
【表15】
【0052】
【表16】
【0053】
【表17】
【0054】
【表18】
【0055】
【表19】
【0056】
【表20】
【0057】
【表21】
【0058】
【表22】
【0059】
【表23】
【0060】
【表24】
【0061】
【表25】
【0062】
【表26】
【0063】
【表27】
【0064】
【表28】
【0065】
【表29】
【0066】
【表30】
【0067】
【表31】
【0068】
【表32】
【0069】
【表33】
【0070】
【表34】
【0071】
【表35】
【0072】
【表36】
【0073】
【表37】
【0074】
【表38】
【0075】
【表39】
【0076】
【表40】
【0077】
【表41】
【0078】
【表42】
【0079】
【表43】
【0080】
【表44】
【0081】
【表45】
【0082】
【表46】
【0083】
【表47】
【0084】
【表48】
【0085】
【表49】
【0086】
【表50】
【0087】
【表51】
【0088】
【表52】
【0089】
【表53】
【0090】
【表54】
【0091】
【表55】
【0092】
【表56】
【0093】
【表57】
【0094】
【表58】
【0095】
【表59】
【0096】
【表60】
【0097】
【表61】
【0098】
【表62】
【0099】
【表63】
【0100】
【表64】
【0101】
【表65】
【0102】
【表66】
【0103】
【表67】
【0104】
【表68】
【0105】
【表69】
【0106】
【表70】
【0107】
【表71】
【0108】
【表72】
【0109】
一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルとしては、下記一般式(II−1)および(II−2)で示されるものが好適に使用される。
【0110】
【化12】
【0111】
一般式(II−1)または(II−2)式中、Aは上記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を表し、1つのポリマー中に2種類以上の構造Aが含まれていてもよい。
【0112】
一般式(II−1)または(II−2)式中、Rは水素原子、アルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、または、置換もしくは未置換のアラルキル基を表す。
アルキル基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。アリール基としては、炭素数6〜20のものが好ましく、例えば、フェニル基、トルイル基等が挙げられる、アラルキル基としては、炭素数7〜20のものが好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。また、置換アリール基、置換アラルキル基の置換基としては、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、置換アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0113】
一般式(II−1)または(II−2)式中、Tは、炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素基または炭素数2〜10の2価の分枝鎖状炭化水素基を示し、好ましくは炭素数が2〜6の2価の直鎖状炭化水素基および炭素数3〜7の2価の分枝鎖状炭化水素基より選択される。また、mは0又は1である。Tで表される構造の具体的な例を以下に示す。
【0114】
【化13】
【0115】
一般式(II−1)または(II−2)式中、Yは2価アルコール残基を表し、Zは2価のカルボン酸残基を表す。YおよびZは、具体的には下記の式(13)〜(19)から選択された基が挙げられる。
【0116】
【化14】
【0117】
式(13)〜(19)中、R3およびR4は、それぞれ水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、置換もしくは未置換のフェニル基、置換もしくは未置換のアラルキル基、または、ハロゲン原子を表し、cおよびdはそれぞれ1〜10の整数を意味し、eおよびfは、それぞれ0、1または2の整数を意味し、gおよびhはそれぞれ0または1を意味し、Vは前記式(5)〜(6)中におけるVと同様である。また、pは5〜5,000の整数を表すが、好ましくは10〜1,000の範囲である。
【0118】
以下、表73〜83に、一般式(II−1)および(II−2)で示される電荷輸送性ポリエステルの具体例を示すが、一般式(II−1)および(II−2)で示される電荷輸送性ポリエステルはこれら具体例のみに限定されるものではない。但し、表73〜83において、「モノマー」の欄の「A」の欄に示される番号は、前記一般式(I−1)および(I−2)で示される具体例、すなわち表1、2の「構造」の欄に示された番号に対応している。また、「Y」および「Z」の欄のうち、「Y」の欄のみに構造式が示されている場合は一般式(II−1)で表される電荷輸送性ポリエステルの具体例を意味し、「Y」および「Z」の両方の欄に構造式が示されている場合は一般式(II−2)で表される電荷輸送性ポリエステルの具体例を意味する。なお、以下の説明において、表73〜83の「化合物」の欄に示される番号に対応する電荷輸送性ポリエステルを例示化合物と称し、例えば、「化合物」の欄に示される番号が(15)である電荷輸送性ポリエステルについては「例示化合物(15)」と記載する。
【0119】
【表73】
【0120】
【表74】
【0121】
【表75】
【0122】
【表76】
【0123】
【表77】
【0124】
【表78】
【0125】
【表79】
【0126】
【表80】
【0127】
【表81】
【0128】
【表82】
【0129】
【表83】
【0130】
本発明の電荷輸送性ポリエステルの重量平均分子量Mwは50,000〜1,000,000の範囲であることが好ましく、10,000〜300,000の範囲にあることがより好ましい。
【0131】
本発明の電荷輸送性ポリエステルは、下記構造式(III−1)〜(III−2)で示される電荷輸送性モノマーを、例えば、第4版実験化学講座第28巻(丸善、1992)等に記載された公知の方法で重合させることによって合成することができる。なお、構造式(III−1)〜(III−2)中、Ar、X、Tで表される部分構造、および、整数k、n、lの値は、前記一般式(I−1)または(I−2)におけるAr、X、Tで表される部分構造、および、整数k、n、lと同様である。
【0132】
【化15】
【0133】
すなわち、一般式(II−1)で示される電荷輸送性ポリエステルは、構造式(III−1)および(III−2)で示される電荷輸送性モノマーを用いて、次のようにして合成することができる。
構造式(III−1)〜(III−2)中のA’が水酸基の場合には、HO−(Y−O)m−H(但し、Yは2価のアルコール残基、mは1〜5の整数)で示される2価アルコール類をほぼ当量混合し、酸触媒を用いて重合する。酸触媒としては、硫酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等、通常のエステル化反応に用いるものが使用でき、電荷輸送性モノマー1重量部に対して、1/10,000〜1/10重量部、好ましくは1/1,000〜1/50重量部の範囲で用いられる。重合中に生成する水を除去するために、水と共沸可能な溶剤を用いることが好ましく、トルエン、クロロベンゼン、1−クロロナフタレン等が有効であり、電荷輸送性モノマー1重量部に対して、1〜100重量部、好ましくは2〜50重量部の範囲で用いられる。反応温度は任意に設定できるが、重合中に生成する水を除去するために、溶剤の沸点で反応させることが好ましい。
【0134】
反応終了後、溶剤を用いなかった場合には溶解可能な溶剤に溶解させる。溶剤を用いた場合には、反応溶液をそのまま、メタノール、エタノール等のアルコール類や、アセトン等のポリマーが溶解しにくい貧溶剤中に滴下し、電荷輸送性ポリエステルを析出させ、電荷輸送性ポリエステルを分離した後、水や有機溶剤で十分洗浄し、乾燥させる。更に、必要であれば適当な有機溶剤に溶解させ、貧溶剤中に滴下し、電荷輸送性ポリエステルを析出させる再沈殿処理を繰り返してもよい。再沈殿処理の際には、メカニカルスターラー等で、効率よく撹拌しながら行うことが好ましい。再沈殿処理の際に電荷輸送性ポリエステルを溶解させる溶剤は、電荷輸送性ポリエステル1重量部に対して、1〜100重量部、好ましくは2〜50重量部の範囲で用いられる。また、貧溶剤は電荷輸送性ポリエステル1重量部に対して、1〜1,000重量部、好ましくは10〜500重量部の範囲で用いられる。
【0135】
A’がハロゲンの場合には、HO−(Y−O)m−H(但し、Yは2価のアルコール残基、mは1〜5の整数であり、以下も同様である)で示される2価アルコール類をほぼ当量混合し、ピリジンやトリエチルアミン等の有機塩基性触媒を用いて重合する。有機塩基性触媒は、電荷輸送性モノマー1当量に対して、1〜10当量、好ましくは2〜5当量の範囲で用いられる。溶剤としては、塩化メチレン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、クロロベンゼン、1−クロロナフタレン等が有効であり、電荷輸送性モノマー1重量部に対して、1〜100重量部、好ましくは2〜50重量部の範囲で用いられる。反応温度は任意に設定できる。重合後、前述のように再沈殿処理し、精製する。
【0136】
また、ビスフェノール等の酸性度の高い2価アルコール類の場合には、界面重合法も用いることができる。すなわち、2価アルコール類を水に加え、当量の塩基を加えて溶解させた後、激しく撹拌しながら2価アルコール類と当量の電荷輸送性モノマー溶液を加えることによって重合できる。この際、水は2価アルコール類1重量部に対して、1〜1,000重量部、好ましくは2〜500重量部の範囲で用いられる。電荷輸送性モノマーを溶解させる溶剤としては、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トルエン、クロロベンゼン、1−クロロナフタレン等が有効である。反応温度は任意に設定でき、反応を促進するために、アンモニウム塩、スルホニウム塩等の相間移動触媒を用いることが効果的である。相間移動触媒は、電荷輸送性モノマー1重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部の範囲で用いられる。
【0137】
A’がアルコキシ基(−O−R13、但し、R13はメチル基やエチル基などのアルキル基であり、以下も同様である)の場合には、前述の構造式(III−1)および(III−2)で示される電荷輸送性ポリマーに、HO−(Y−O)m−Hで示される2価アルコール類を過剰に加え、硫酸、リン酸等の無機酸、チタンアルコキシド、カルシウムおよびコバルト等の酢酸塩或いは炭酸塩、亜鉛や鉛の酸化物を触媒に用いて加熱し、エステル交換により合成できる。2価アルコール類は電荷輸送性モノマー1当量に対して、2〜100当量、好ましくは3〜50当量の範囲で用いられる。触媒は電荷輸送性モノマー1重量部に対して、1/10,000〜1重量部、好ましくは1/1,000〜1/2重量部の範囲で用いられる。反応は、反応温度200〜300℃で行い、基−O−R13から基−O−(Y−O)m−Hへのエステル交換終了後は、HO−(Y−O)m−Hの脱離による重合を促進するため、減圧下で反応させることが好ましい。また、HO−(Y−O)m−Hと共沸可能な1−クロロナフタレン等の高沸点溶剤を用いて、常圧下でHO−(Y−O)m−Hを共沸で除きながら反応させることもできる。
【0138】
一方、一般式(II−2)で示される電荷輸送性ポリエステルは、次のようにして合成することができる。
すなわち、一般式(II−2)で示される電荷輸送性ポリエステルは、上記に説明した一般式(II−1)で示される電荷輸送性ポリエステルを合成する場合において、構造式(III−1)や(III−2)で示される電荷輸送性モノマーの代りに、下記構造式(IV−1)や(IV−2)で示される化合物を用い、それ以外は同様に2価カルボン酸または2価カルボン酸ハロゲン化物等と反応させて得ることができる。
【0139】
【化16】
【0140】
上記構造式(IV−1)および(IV−2)中、Ar、X、Tで表される部分構造、および、整数k、n、lの値は、前記一般式(I−1)または(I−2)におけるAr、X、Tで表される部分構造、および、整数k、n、lと同様である。また、上記構造式(IV−1)および(IV−2)中、Yで表される部分構造、および、整数mの値は前記一般式(II−1)および(II―2)におけるYで表される部分構造、および、整数mの値と同様である。
なお、構造式(IV−1)で示される化合物は、構造式(III−1)で示される電荷輸送性モノマーに2価アルコール類を過剰に加えて反応させることにより得ることができ、構造式(IV−2)で示される化合物は、構造式(III−2)で示される電荷輸送性モノマーに2価アルコール類を過剰に加えて反応させることにより得ることができる。
【0141】
次に、本発明の有機EL素子の構成について詳記する。
本発明の有機EL素子は、少なくとも一方が透明または半透明である一対の電極と、それら電極間に挾持された発光層を含む一つまたは複数の有機化合物層より構成され、前記有機化合物層の少なくとも一層に前記電荷輸送性ポリエステルを含有してなるものであれば特に限定されないが、具体的には以下に説明するような構成を有することができる。
【0142】
本発明の有機EL素子においては、有機化合物層が1つの場合は、有機化合物層は電荷輸送能を有する発光層を意味し、前記発光層が前記電荷輸送性ポリエステルを含有してなる。また、有機化合物層が複数の場合(機能分離型の場合)は、その少なくとも一つは発光層(この発光層は電荷輸送能を持っていてもよいし、持っていなくてもよい)であり、他の有機化合物層が、電荷輸送層、すなわち、ホール輸送層、電子輸送層、またはホール輸送層と電子輸送層よりなるものを意味し、これらの少なくとも一層が前記電荷輸送性ポリエステルを含有してなる。
【0143】
具体的には、例えば、有機化合物層が少なくとも電子輸送層および発光層から構成されるもの、少なくともホール輸送層、電子輸送層および発光層から構成されるもの、或いは少なくともホール輸送層および発光層から構成されるものであり、これらの少なくとも一層が前記電荷輸送性ポリエステルを含有してなるものが挙げられる。さらに、例えば、有機化合物層が発光層のみから構成されてなり、前記発光層が前記電荷輸送性ポリエステルを含有してなるもの等が挙げられる。また、本発明の有機EL素子においては、発光層が電荷輸送性材料(前記電荷輸送性ポリエステル以外のホール輸送性材料、電子輸送性材料)を含有していてもよい。
【0144】
以下、図面を参照しつつ、より詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図1〜図4は、本発明の有機EL素子の層構成を説明するための模式的断面図であって、図1、図2、図4の場合は、有機化合物層が複数の場合の一例であり、図3の場合は、有機化合物層が1つの場合の例を示す。なお、図1〜図4において、同様の機能を有するものは同じ符号を付して説明する。
【0145】
図1に示す有機EL素子は、透明絶縁体基板1上に、透明電極2、電荷輸送能を持つ発光層6、電子輸送層5及び背面電極7を順次積層してなる。図2に示す有機EL素子は、透明絶縁体基板1上に、透明電極2、ホール輸送層3、発光層4、電子輸送層5及び背面電極7を順次積層してなる。図3に示す有機EL素子は、透明絶縁体基板1上に、透明電極2、電荷輸送能を持つ発光層6、及び背面電極7を順次積層してなる。図4に示す有機EL素子は、透明絶縁体基板1上に、透明電極2、ホール輸送層3、電荷輸送能を持つ発光層6及び背面電極7を順次積層してなる。以下、各々を詳しく説明する。
【0146】
なお、図1、図2に示す有機EL素子は発光材料(発光層)が、真空蒸着や溶液又は分散液を塗布・乾燥することが可能であるが良好な薄膜とならないものや、明確な電子輸送性を示さないものを用いる場合に、有機EL素子の耐久性向上或いは発光効率の向上を図る目的で、発光層4或いは電荷輸送能を持つ発光層6と背面電極7との間に電子輸送層を設けた層構成である。
【0147】
本発明における前記電荷輸送性ポリエステルが含有してなる有機化合物層は、その構造によっては、図1に示される有機EL素子の層構成の場合、電子輸送層5、電荷輸送能を有する発光層6としていずれも機能することができるし、また、図2に示される有機EL素子の層構成の場合、ホール輸送層3、電子輸送層5としていずれも機能することができ、図3に示される有機EL素子の層構成の場合、キャリア輸送能を持つ発光層6としていずれも機能することができ、図4に示される有機EL素子の層構成の場合、ホール輸送層3、キャリア輸送能を持つ発光層6としていずれも機能することができる。
【0148】
図1〜図4に示される有機EL素子の層構成の場合、透明絶縁体基板1は、発光を取り出すため透明なものが好ましく、ガラス、プラスチックフィルム等が用いられる。
【0149】
透明電極2は、透明絶縁体基板と同様に発光を取り出すため透明であって、かつホールの注入を行うため仕事関数の大きなものが好ましく、酸化スズインジウム(ITO)、酸化スズ(NESA)、酸化インジウム、酸化亜鉛等の酸化膜、および蒸着或いはスパッタされた金、白金、パラジウム等が用いられる。
【0150】
図2及び図4に示される有機EL素子の層構成の場合、ホール輸送層3は目的に応じて機能(ホール輸送能)が付与された電荷輸送性ポリエステル単独で形成されていてもよいが、ホール移動度を調節するために電荷輸送性ポリエステル以外のホール輸送材料を1重量%ないし50重量%の範囲で混合分散して形成されていてもよい。
【0151】
このようなホール輸送材料としては、テトラフェニレンジアミン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、カルバゾール誘導体、スチルベン誘導体、アリールヒドラゾン誘導体、ポルフィリン系化合物等が挙げられ、好適な具体例としては下記に示す化合物(V−1)〜(V−8)が挙げられるが、電荷輸送性ポリエステルとの相容性が良いことから、テトラフェニレンジアミン誘導体が特に好ましい。なお、下記に示す化合物(V−6)〜(V−8)において、nは1以上の整数を意味する。
【0152】
【化17】
【0153】
【化18】
【0154】
また、成膜性の向上、ピンホール防止等のため、他の汎用の樹脂、添加剤等との混合でもよい。具体的な樹脂としてはポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレンブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコン樹脂、ポリ−N−カルバゾール樹脂、ポリシラン樹脂、ポリチオフェン、ポリピロール等の導電性樹脂等を用いることができる。また、添加剤としては、公知の酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等を用いることができる。
【0155】
図2に示される有機EL素子の層構成の場合、発光層4には、固体状態で高い蛍光量子収率を示す化合物が発光材料として用いられる。発光材料が有機低分子の場合、真空蒸着法、もしくは、有機低分子と結着樹脂を含む溶液や分散液を塗布・乾燥することにより良好な薄膜形成が可能であることが条件である。また、発光材料が有機高分子の場合、それ自身を含む溶液または分散液を塗布・乾燥することにより良好な薄膜形成が可能であることが条件である。
【0156】
好適には、発光材料が有機低分子の場合、キレート型有機金属錯体、多核または縮合芳香環化合物、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、スチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサチアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体等が、高分子の場合、ポリパラフェニレン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリアセチレン誘導体等が挙げられる。好適な具体例として、下記の化合物(VI−1)〜(VI−15)が用いられるが、これらに限定されたものではない。
なお、構造式(VI−13)〜(VI−15)中、nおよびxは1以上の整数を示す。
【0157】
【化19】
【0158】
【化20】
【0159】
また、発光層4には有機EL素子の耐久性向上或いは発光効率の向上を目的として、上記の発光材料中にゲスト材料として発光材料と異なる色素化合物をドーピングしてもよい。前記色素化合物のドーピングは、真空蒸着によって発光層を形成する場合には、前記色素化合物は共蒸着を利用して行うことができ、溶液または分散液を塗布・乾燥することで発光層を形成する場合には、溶液または分散液中に混合することで行うことができる。
【0160】
発光層中における色素化合物のドーピングの割合としては0.001重量%〜40重量%程度、好ましくは0.01重量%〜10重量%程度である。このようなドーピングに用いられる色素化合物としては、発光材料との相容性が良く、かつ発光層の良好な薄膜形成を妨げない有機化合物が用いられ、好適にはDCM誘導体、キナクリドン誘導体、ルブレン誘導体、ポルフィリン系化合物等が挙げられる。好適な具体例として、下記の化合物(VII−1)〜(VII−4)が用いられるが、これらに限定されたものではない。
【0161】
【化21】
【0162】
図1及び2に示される有機EL素子の層構成の場合、電子輸送層に5には、目的に応じて機能(電子輸送能)が付与された前記電荷輸送性ポリエステルのみで形成されていてもよいが、電気的特性をさらに改善する等の目的で、電子移動度を調整するために、電荷輸送性ポリエステル以外の電子輸送性材料を1重量%ないし50重量%の範囲で混合分散して形成されていてもよい。このような電荷輸送性ポリエステル以外の電子輸送材料としては、真空蒸着法により良好な薄膜形成が可能な有機化合物が用いられ、好適にはオキサジアゾール誘導体、ニトロ置換フルオレノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体等が挙げられる。好適な具体例として、下記の化合物(VIII−1)〜(VIII−3)が用いられるが、これらに限定されたものではない。なお、前記電荷輸送性ポリエステルを用いない場合は、これら電子輸送性材料単独で用いられることとなる。
【0163】
【化22】
【0164】
図1、図3又は図4に示される有機EL素子の層構成の場合、電荷輸送能を持つ発光層6は目的に応じて機能(ホール輸送能、或いは、電子輸送能)が付与された前記電荷輸送性ポリエステル中に発光材料を50重量%以下分散させた有機化合物層であり、発光材料としては前記化合物(VI−1)〜(VI−15)が好適に用いられるが、有機EL素子に注入されるホールと電子のバランスを調節するために前記電荷輸送性ポリエステル以外の電子輸送材料を10重量%〜50重量%分散させてもよい。
【0165】
このような電子輸送性材料としては、前記電荷輸送性ポリエステルと強い電子相互作用を示さない有機化合物が用いられることが好ましく、より好ましくは下記化合物(IX)が用いられるが、これに限定されるものではない。同様にホール移動度を調節するために、電荷輸送性ポリエステル以外のホール輸送材料、好ましくはテトラフェニレンジアミン誘導体を適量同時に分散させて用いてもよい。また、図2で示される有機EL素子の発光層4と同様、発光材料と異なる色素化合物をドーピングしてもよい。
【0166】
【化23】
【0167】
図1〜図4に示される有機EL素子の層構成において、背面電極7には、真空蒸着可能で、電子注入を行うため仕事関数の小さな金属が使用されるが、特に好ましくはマグネシウム、アルミニウム、銀、インジウムおよびこれらの合金が使用できる。また、背面電極7上には、さらに有機EL素子の水分や酸素による劣化を防ぐために保護層を設けてもよい。具体的な保護層の材料としては、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al等の金属、MgO、SiO2、TiO2等の金属酸化物、ポリエチレン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂が挙げられる。保護層の形成には、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマ重合法、CVD法、コーティング法が適用できる。
【0168】
これら図1〜図4に示される有機EL素子は、まず、透明絶縁体基板1の片面に透明電極2を形成し、透明電極2上に有機EL素子の層構成に応じて有機化合物層を積層する。
すなわち、図1に示す有機EL素子の場合には、透明電極2上に、電荷輸送能を持つ発光層6、および、電子輸送層5を順次積層し、図2に示す有機EL素子の場合には、透明電極2上に、ホール輸送層3、発光層4、および、電子輸送層5を順次積層し、図3に示す有機EL素子の場合には、透明電極2上に、電荷輸送能を持つ発光層6を積層し、図4に示す有機EL素子の場合には、透明電極2上に、ホール輸送層3、および、電荷輸送能を持つ発光層6を順次積層する。
なお、ホール輸送層3及び電荷輸送能を持つ発光層6は、上記各材料を真空蒸着法、もしくは、有機溶媒中に溶解・分散して得られた塗布液を用いて透明電極2上にスピンコーティング法、ディップ法等を用いて成膜することによって形成される。
【0169】
ホール輸送層3、発光層4、電子輸送層5の膜厚は、0.1μm以下であることが好ましく、特に0.03〜0.08μmの範囲であることが好ましい。また、電荷輸送能を有する発光層6の膜厚は0.03〜0.2μm程度が好ましい。
上記各材料(前記ポリエステル、発光材料、電子輸送材料ホール輸送材料等)の有機化合物層中の分散状態は分子スケールで分散した状態でも微粒子スケールで分散した状態でも構わない。塗布液を用いた成膜法の場合、塗布液中に含まれる材料を分子スケールで分散した状態とするためには、分散溶媒は用いた上記各材料の共通溶媒を用いる必要があり、微粒子スケールで分散した状態とするために分散溶媒は用いた上記各材料の分散性及び溶解性を考慮して選択する必要がある。微粒子状に分散するためには、ボールミル、サンドミル、ペイントシェイカー、アトライター、ボールミル、ホモジェナイザー、超音波法等が利用できる。
【0170】
そして最後に、電子輸送層5(図1および図2に示す有機EL素子の場合)或いは電荷輸送能を有する発光層6(図3および図4に示す有機EL素子の場合)の上に背面電極7を真空蒸着法により形成することにより本発明の有機EL素子を得ることができる。
以上に説明したようにして得られた本発明の有機EL素子は、一対の電極間に、例えば、4〜20Vで、電流密度1〜200mA/cm2の直流電圧を印加することによって発光させることができる。
【0171】
【実施例】
以下に本発明を実施例を挙げてより具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の説明において、前記一般式(III−1)および(III−2)で表される電荷輸送性モノマーの末端(「T」に結合している部分)を除く主要部の構造が、表1〜表72に示す構造の欄の番号に対応するものである場合、「電荷輸送性モノマー(表1〜表72に示す「構造」の欄の番号)」と記載する。例えば、電荷輸送性モノマーの主要部の構造が、表1に示す5番の構造である場合には、「電荷輸送性モノマー(5)」と記載する。
【0172】
実施例に用いた電荷輸送性ポリエステルは、例えば以下のようにして得た。
−合成例1〔例示化合物(17)〕−
電荷輸送性モノマー(34)を2.0g、エチレングリコール10.0gおよびテトラブトキシチタン0.2gを50mlのフラスコに入れ、窒素気流下、200℃で5時間加熱攪拌した。電荷輸送性モノマー(34)が消費されたことを確認した後、真空ポンプにて0.5mmHgに減圧してエチレングリコールを留去しながら230℃に加熱し、4時間反応を続けた。その後、室温まで冷却し、クロロベンゼン50mlに溶解して不溶物を0.1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターにて濾過し、その濾液をメタノール250mlを撹拌している中に滴下してポリマーを析出させた。得られたポリマーを濾過し、十分にメタノールで洗浄した後、乾燥させ、1.9gの例示化合物(17)を得た。分子量はGPCにて測定し、Mw=9.12×104(スチレン換算)であり、電荷輸送性モノマー(34)の分子量から求めたpは約109であった。
【0173】
−合成例2〔例示化合物(28)〕−
電荷輸送性モノマー(58)を2.0g、エチレングリコール10.0gおよびテトラブトキシチタン0.2gを50mlのフラスコに入れ、窒素気流下、200℃で4時間加熱攪拌した。電荷輸送性モノマー(58)が消費されたことを確認した後、真空ポンプにて0.5mmHgに減圧し、エチレングリコールを留去しながら230℃に加熱し、4時間反応を続けた。その後、室温まで冷却しクロロベンゼン50mlに溶解して不溶物を0.1μmのPTFEフィルターにて濾過し、その濾液をメタノール250mlを撹拌している中に滴下してポリマーを析出させた。得られたポリマーを濾過し、十分にメタノールで洗浄した後、乾燥させ、1.8gの例示化合物(28)を得た。分子量はGPCにて測定し、Mw=1.20×105(スチレン換算)であり、電荷輸送性モノマー(58)の分子量から求めたpは約123であった。
【0174】
−合成例3〔例示化合物(30)〕−
電荷輸送性モノマー(73)を5.0g、エチレングリコール25.0gおよびテトラブトキシチタン0.5gを100mlのフラスコに入れ、窒素気流下、230℃で5時間加熱攪拌した。電荷輸送性モノマー(73)が消費されたことを確認した後、真空ポンプにて0.5mmHgに減圧してエチレングリコールを留去しながら230℃に加熱し、4時間反応を続けた。その後、室温まで冷却し、クロロベンゼン100mlに溶解して不溶物を0.1μmのPTFEフィルターにて濾過し、その濾液をメタノール500mlを撹拌している中に滴下してポリマーを析出させた。得られたポリマーを濾過し、十分にメタノールで洗浄した後、乾燥させ、4.6gの例示化合物(30)を得た。分子量はGPCにて測定し、Mw=1.04×105(スチレン換算)であり、電荷輸送性モノマー(73)の分子量から求めたpは約111であった。
【0175】
−合成例4〔例示化合物(32)〕−
電荷輸送性モノマー(74)を2.0g、エチレングリコール8.0gおよびテトラブトキシチタン0.2gを50mlのフラスコに入れ、窒素気流下、230℃で4時間加熱攪拌した。電荷輸送性モノマー(74)が消費されたことを確認した後、真空ポンプで0.5mmHgに減圧してエチレングリコールを留去しながら230℃に加熱し、4時間反応を続けた。その後、室温まで冷却し、クロロベンゼン50mlに溶解して不溶物を0.1μmのPTFEフィルターにて濾過し、その濾液をメタノール250mlを撹拌している中に滴下してポリマーを析出させた。得られたポリマーを濾過し、十分にメタノールで洗浄した後、乾燥させ、1.9gの例示化合物(32)を得た。分子量はGPCにて測定し、Mw=1.21×105(スチレン換算)であり、電荷輸送性モノマー(74)の分子量から求めたpは約129であった。
【0176】
(実施例1)
まず、透明電極が設けられたガラス基板として、エッチング法等を利用して2mm幅の短冊型ITO電極を片面に形成したガラス基板を作製し、2−プロパノール(電子工業用、関東化学社製)で超音波洗浄後、乾燥させたものを準備した(以下、洗浄乾燥処理後の上記ガラス基板を「ITO電極付きガラス基板」と略す)。
次に、電荷輸送性ポリエステル[例示化合物(17)](Mw=9.12×104)の5重量%ジクロロエタン溶液を調製し、0.1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターで濾過した。この溶液を、ITO電極付きガラス基板のITO電極面が設けられた側に、ディップ法により塗布し、膜厚約0.1μmのホール輸送層を形成した。十分乾燥させた後、発光材料として昇華精製した前記化合物(VI−1)をタングステンボートに入れ、真空蒸着法により蒸着して、ホール輸送層上に膜厚0.05μmの発光層を形成した。この時の真空度は10−5Torr、ボート温度は300℃であった。続いて発光層の上にMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の短冊状の背面電極をITO電極と交差するように形成した。形成された有機EL素子の有効面積は0.04cm2であった。
【0177】
(実施例2)
電荷輸送性ポリエステル[例示化合物(17)](Mw=9.12×104)1重量部、発光材料として、前記化合物(VI−1)1重量部を混合し、10重量%ジクロロエタン溶液を調製し、0.1μmのPTFEフィルターで濾過した。この溶液を用いて、実施例1と同様にITO電極付きガラス基板のITO電極面側に、ディップ法により膜厚約0.15μmの電荷輸送能を有する発光層を形成した。充分乾燥させた後、この発光層の上にMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の短冊状の背面電極をITO電極と交差するように形成した。形成された有機EL素子の有効面積は0.04cm2であった。
【0178】
(実施例3)
電荷輸送性ポリエステル[例示化合物(17)](Mw=9.12×104)を2重量部、発光材料として前記化合物(VI−10)を0.1重量部、電子輸送材料として前記化合物(IX)を1重量部混合し、10重量%ジクロロエタン溶液を調製し、0.1μmのPTFEフィルターで濾過した。この溶液を用いて、実施例1と同様にITO電極付きガラス基板のITO電極面側に、ディップ法により塗布して、膜厚約0.15μmの電荷輸送能を有する発光層を形成した。十分乾燥させた後、この発光層の上にMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の短冊状の背面電極をITO電極と交差するように形成した。形成された有機EL素子の有効面積は0.04cm2であった。
【0179】
(実施例4)
ホール輸送材料として電荷輸送性ポリエステル[例示化合物(17)](Mw=9.12×104)を1重量部、発光材料として化合物(VI−1)を1重量部を混合し、10重量%ジクロロエタン溶液を調製し、0.1μmのPTFEフィルターで濾過した。この溶液を、ITO電極付きガラス基板のITO電極面側に、ディップ法により塗布して膜厚0.05μmの電荷輸送能を持つ発光層を形成し、十分乾燥させた。その後、予め調製し、0.1μmのPTFEフィルターで濾過した電荷輸送性ポリエステル[例示化合物(28)](Mw=1.20×105)の5重量%ジクロロエタン溶液を用いて、発光層上にスピンコート法により塗布し、厚さ0.1μmの電子輸送層を形成した。最後に、この電子輸送層上にMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の短冊状の背面電極をITO電極と交差するように形成した。形成された有機EL素子の有効面積は0.04cm2であった。
【0180】
(実施例5)
ITO電極付きガラス基板のITO電極面側に、電荷輸送性ポリエステル[例示化合物(17)](Mw=9.12×104)1重量部を含む厚さ0.1μmのホール輸送層をディップ法により形成し、さらにこのホール輸送層上に、発光材料として化合物(VI−1)からなる厚さ0.065μmの発光層を真空蒸着法により順次形成した。これらの層を十分乾燥させた後、予め調製し、0.1μmのPTFEフィルターで濾過した電荷輸送性ポリエステル[例示化合物(28)](Mw=1.20×105)の5重量%ジクロロエタン溶液を、発光層上にスピンコート法により塗布し、厚さ0.1μmの電子輸送層を形成した。最後に、この電子輸送層上にMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の短冊状の背面電極をITO電極と交差するように形成した。形成された有機EL素子の有効面積は0.04cm2であった。
【0181】
(実施例6)
ホール輸送材料として電荷輸送性ポリエステル[例示化合物(17)](Mw=9.12×104)1重量部、発光材料として前記化合物(VI−1)1重量部、電子輸送材料として電荷輸送性ポリエステル[例示化合物(28)]1重量部を用いて電荷輸送能を持つ発光層を形成した以外は実施例2と同様にして有機EL素子を作製した。
【0182】
(実施例7)
電荷輸送性ポリエステルとして例示化合物(17)の代りに例示化合物(30)(Mw=1.04×105)を用いた以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
【0183】
(実施例8)
電荷輸送性ポリエステルとして例示化合物(17)の代りに例示化合物(30)(Mw=1.04×105)を用いた以外は、実施例2と同様にして有機EL素子を作製した。
【0184】
(実施例9)
電荷輸送性ポリエステルとして例示化合物(17)の代りに例示化合物(30)(Mw=1.04×105)を用いた以外は、実施例3と同様にして有機EL素子を作製した。
【0185】
(実施例10)
電荷輸送性ポリエステルとして例示化合物(17)の代りに例示化合物(30)例示化合物(32)(Mw=1.21×105)を用いた以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
【0186】
(実施例11)
電荷輸送性ポリエステルとして例示化合物(17)の代りに例示化合物(32)(Mw=1.21×105)を用いた以外は、実施例2と同様にして有機EL素子を作製した。
【0187】
(実施例12)
電荷輸送性ポリエステルとして例示化合物(17)の代りに例示化合物(32)(Mw=1.21×105)を用いた以外は、実施例3と同様にして有機EL素子を作製した。
【0188】
(実施例13)
ホール輸送材料として用いた電荷輸送性ポリエステルである例示化合物(17)の代りに例示化合物(30)(Mw=1.04×105)を用いた以外は実施例4と同様にして有機EL素子を作製した。
【0189】
(実施例14)
ホール輸送材料として用いた電荷輸送性ポリエステルである例示化合物(17)の代りに例示化合物(32)(Mw=1.21×105)を用いた以外は、実施例5と同様にして有機EL素子を作製した。
【0190】
(比較例1)
ITO電極付きガラス基板のITO電極面側に、ホール輸送材料として、前記化合物(V−1)より構成される厚さ0.05μmのホール輸送層と、発光材料として前記化合物(VI−1)より構成される厚さ0.065μmの発光層とを、順次真空蒸着法により形成した。最後に、この発光層上にMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の短冊状の背面電極をITO電極と交差するように形成した。形成された有機EL素子の有効面積は0.04cm2であった。
【0191】
(比較例2)
ITO電極付きガラス基板のITO電極面側に、発光材料として前記化合物(VI−1)より構成される厚さ0.065μmの発光層と、電子輸送材料として前記化合物(VIII−1)より構成される厚さ0.05μmの電子輸送層とを順次真空蒸着法により形成した。最後に、この電子輸送層上にMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の短冊状の背面電極をITO電極と交差するように形成した。形成された有機EL素子の有効面積は0.04cm2であった。
【0192】
(比較例3)
ホール輸送材料として前記化合物(V−1)を1重量部、発光材料として前記化合物(VI−1)を1重量部、結着樹脂としてポリメチルメタクリレート(PMMA)を1重量部混合し、これらの成分を10重量%含むジクロロエタン溶液を調製し、さらに0.1μmのPTFEフィルターで濾過した。この溶液を、ITO電極付きガラス基板のITO電極面側に、ディップ法により塗布して膜厚0.1μmのホール輸送層を形成した。十分乾燥させた後、このホール輸送層上にMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の短冊状の背面電極をITO電極と交差するように形成した。形成された有機EL素子の有効面積は0.04cm2であった。
【0193】
(比較例4)
ホール輸送性ポリエステルとして前記化合物(V−6)を2重量部、発光材料として前記化合物(V−10)を0.1重量部、電子輸送材料として前記化合物(VIII−1)を1重量部混合し、これらの成分を10重量%含むジクロロエタン溶液を調製し、さらに0.1μmのPTFEフィルターで濾過した。この溶液を、ITO電極付きガラス基板のITO電極面側に、ディップ法により塗布して膜厚0.15μmのホール輸送層を形成した。十分乾燥させた後、このホール輸送層上にMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の短冊状の背面電極をITO電極と交差するように形成した。形成された有機EL素子の有効面積は0.04cm2であった。
【0194】
以上のように作製した有機EL素子を、真空中(10−3Torr)でITO電極側をプラス、Mg−Ag背面電極側をマイナスとして直流電圧を印加し、発光について測定を行い、このときの最高輝度、および発光色を評価した。それらの結果を表84に示す。また、乾燥窒素中で有機EL素子の発光寿命の測定を行った。発光寿命の評価は、初期輝度が50cd/m2となるように電流値を設定し、定電流駆動により輝度が初期値から半減するまでの時間を素子寿命(hour)とした。この時の駆動電流密度を素子寿命と共に表4に示す。
【0195】
【表84】
【0196】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明に用いられる上記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し構造単位からなる電荷輸送性ポリエステルが、有機EL素子に好適なイオン化ポテンシャルおよび電荷移動度を持ち、また、スピンコーティング法、ディップ法等を用いて良好な薄膜を形成することが可能であるので、本発明の有機EL素子は、十分な輝度を有し、安定性および耐久性に優れ、且つ大面積化可能であり製造容易な有機EL素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の有機EL素子の層構成の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の有機EL素子の層構成の他の一例を示す概略構成図である。
【図3】本発明の有機EL素子の層構成の他の一例を示す概略構成図である。
【図4】本発明の有機EL素子の層構成の他の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
1 透明絶縁体基板
2 透明電極
3 ホール輸送層
4 発光層
5 電子輸送層
6 電荷輸送能を持つ発光層
7 背面電極
Claims (9)
- 少なくとも一方が透明または半透明である陽極および陰極よりなる一対の電極間に挾持された一つまたは複数の有機化合物層より構成される電界発光素子において、
前記有機化合物層の少なくとも一層が、下記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルを1種以上含有することを特徴とする有機電界発光素子。
- 前記有機化合物層が、少なくとも発光層および電子輸送層から構成され、前記発光層及び電子輸送層の少なくとも一方が、前記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルを1種以上含有してなることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
- 前記発光層が、電荷輸送性材料を含むことを特徴とする請求項2に記載の有機電界発光素子。
- 前記有機化合物層が、少なくともホール輸送層、発光層および電子輸送層から構成され、前記ホール輸送層及び電子輸送層の少なくとも一方が、前記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルを1種以上含有してなることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
- 前記有機化合物層が、発光層のみから構成され、前記発光層が、前記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルを1種以上含有してなることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
- 前記発光層が、電荷輸送性材料を含むことを特徴とする請求項5に記載の有機電界発光素子。
- 前記有機化合物層が、少なくともホール輸送層及び発光層から構成され、前記ホール輸送層及び前記発光層の少なくとも一方が、前記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルを、少なくとも1種含有してなることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
- 前記発光層が、電荷輸送性材料を含むことを特徴とする請求項6に記載の有機電界発光素子。
- 前記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルが、下記一般式(II−1)および(II−2)で示されるポリエステルであることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002334871A JP2004171858A (ja) | 2002-11-19 | 2002-11-19 | 有機電界発光素子 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002334871A JP2004171858A (ja) | 2002-11-19 | 2002-11-19 | 有機電界発光素子 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004171858A true JP2004171858A (ja) | 2004-06-17 |
Family
ID=32699146
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002334871A Pending JP2004171858A (ja) | 2002-11-19 | 2002-11-19 | 有機電界発光素子 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004171858A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006086497A (ja) * | 2004-08-19 | 2006-03-30 | Fuji Xerox Co Ltd | 有機電界発光素子 |
JP2006108617A (ja) * | 2004-09-07 | 2006-04-20 | Fuji Xerox Co Ltd | 有機電界発光素子、有機電界発光素子の製造方法及び画像表示媒体 |
WO2009133753A1 (ja) * | 2008-04-30 | 2009-11-05 | コニカミノルタホールディングス株式会社 | 有機エレクトロルミネッセンス素子、照明装置及び表示装置 |
US7710030B2 (en) * | 2005-09-09 | 2010-05-04 | Au Optronics Corp. | Double sided AMOLED display and fabricating method thereof |
-
2002
- 2002-11-19 JP JP2002334871A patent/JP2004171858A/ja active Pending
Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006086497A (ja) * | 2004-08-19 | 2006-03-30 | Fuji Xerox Co Ltd | 有機電界発光素子 |
JP2006108617A (ja) * | 2004-09-07 | 2006-04-20 | Fuji Xerox Co Ltd | 有機電界発光素子、有機電界発光素子の製造方法及び画像表示媒体 |
US7710030B2 (en) * | 2005-09-09 | 2010-05-04 | Au Optronics Corp. | Double sided AMOLED display and fabricating method thereof |
WO2009133753A1 (ja) * | 2008-04-30 | 2009-11-05 | コニカミノルタホールディングス株式会社 | 有機エレクトロルミネッセンス素子、照明装置及び表示装置 |
US8475938B2 (en) | 2008-04-30 | 2013-07-02 | Konica Minolta Holdings, Inc. | Organic electroluminescent element, lighting device and display device |
JP5267557B2 (ja) * | 2008-04-30 | 2013-08-21 | コニカミノルタ株式会社 | 有機エレクトロルミネッセンス素子、照明装置及び表示装置 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP3893869B2 (ja) | 有機電界発光素子 | |
JP4314771B2 (ja) | 有機電界発光素子 | |
JP4078922B2 (ja) | 有機電界発光素子 | |
JP4238506B2 (ja) | 有機電界発光素子 | |
JP5194403B2 (ja) | 有機電界発光素子 | |
JP2009064882A (ja) | 有機電界発光素子および表示装置 | |
JP4134535B2 (ja) | 有機電界発光素子 | |
JP4239523B2 (ja) | 有機電界発光素子 | |
JP4321012B2 (ja) | 有機電界発光素子 | |
JP2007194338A (ja) | 有機電界発光素子およびその製造方法 | |
JP4265184B2 (ja) | 有機電界発光素子 | |
JP2007194338A5 (ja) | ||
JP3846163B2 (ja) | 有機電界発光素子 | |
JP4103348B2 (ja) | 有機電界発光素子 | |
JP2004171858A (ja) | 有機電界発光素子 | |
JP4352736B2 (ja) | 有機電界発光素子 | |
JP4078921B2 (ja) | 有機電界発光素子 | |
JP4122722B2 (ja) | 有機電界発光素子 | |
JP4639611B2 (ja) | 有機電界発光素子 | |
JP2005235646A (ja) | 有機電界発光素子 | |
JP3855640B2 (ja) | 有機電界発光素子 | |
JP4258192B2 (ja) | 有機電界発光素子 | |
JP4265175B2 (ja) | 有機電界発光素子 | |
JP2004095427A (ja) | 有機電界発光素子 | |
JP3855641B2 (ja) | 有機電界発光素子 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20051025 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20080729 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20080926 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20081104 |