JP2006086497A - 有機電界発光素子 - Google Patents

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Toru Ishii
徹 石井
Tadayoshi Ozaki
忠義 尾崎
Daisuke Okuda
大輔 奥田
Hiroto Yoneyama
博人 米山
Mieko Seki
三枝子 関
Yohei Nishino
洋平 西野
Kiyokazu Mashita
清和 真下
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Abstract

【課題】低電圧で十分な輝度が得られ、安定した電気特性を有し、耐久性に優れた有機電界発光素子の提供。
【解決手段】少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極間に挾持された有機化合物層より構成される有機電界発光素子において、該有機化合物層の少なくとも一層に特定のジフェニルアミン誘導体構造を有する電荷輸送性ポリエステルを含有し、かつ、該有機化合物層の少なくとも一層にπ共役系ポリマー発光性高分子を含有していることを特徴とする有機電界発光素子。
【選択図】 なし

Description

本発明は有機電界発光素子に関し、詳しくは特定の電荷輸送性ポリマー及び発光性π共役系ポリマー発光性高分子を用いることにより、低電圧で十分な輝度が得られ、安定した電気特性を有し、耐久性に優れる有機電界発光素子に関する。
有機電界発光素子は、自発光性の全固体素子であり、視認性が高く衝撃にも強いため、広く応用が期待されている。現在は無機螢光体を用いたものが主流であるが、駆動に200V以上の交流電圧が必要なため製造コストが高く、また輝度が不十分である等改善の余地を残している。
一方、有機化合物を用いた有機電界発光素子研究は、最初アントラセン等の単結晶を用いて始まったが、単結晶の場合、膜厚が1mm程度と厚く100V以上の駆動電圧が必要であった。そのため蒸着法による薄膜化が試みられている(例えば、非特許文献1参照。)。しかしながら、この方法で得られた薄膜は、駆動電圧が30Vと未だ高く、また、膜中における電子・電荷キャリアの密度が低く、キャリアの再結合によるフォトンの生成確率が低いため十分な輝度が得られなかった。
ところが近年、電荷輸送性有機低分子化合物と電子輸送能を持つ螢光性有機低分子化合物の薄膜を真空蒸着法により順次積層した機能分離型の有機電界発光素子において、10V程度の低電圧で1000cd/m2以上の高輝度が得られるものが報告されており(例えば、非特許文献2参照。)、以来、積層型の有機電界発光素子の研究・開発が活発に行われている。
しかしながら、このタイプの有機電界発光素子では、複数の蒸着工程において0.1μm以下の薄膜を形成していくためピンホールを生じ易く、十分な性能を得るためには厳しく管理された条件下で膜厚の制御を行うことが必要である。従って、生産性が低くかつ大面積化が難しいという問題がある。また、この有機電界発光素子は数mA/cm2という高い電流密度で駆動されるため、大量のジュール熱を発生する。このため、蒸着によってアモルファスガラス状態で製膜された電荷輸送性低分子化合物や螢光性有機低分子化合物が次第に結晶化して最後には融解し、輝度の低下や絶縁破壊が生じるという現象が多く見られ、その結果素子の寿命が低下するという問題も有している。安定性に関する問題解決のために、電荷輸送材料として安定なアモルファス状態が得られるスターバーストアミンを用いたり(例えば、非特許文献3参照。)、ポリフォスファゼンの側鎖にトリフェニルアミンを導入したポリマーを用いることが報告されている(例えば、非特許文献4参照。)が、単独では層へのホール注入性を満足するものではない。また、ポリマーを用いた場合、高い電流密度が得られず十分な輝度が得られていない。
一方、積層型有機電界発光素子における生産性と大面積化に関する問題の解決を目指し、単層構造の有機電界発光素子についても研究・開発が進められ、ポリ(p−フェニレンビニレン)等の導電性高分子を用いたり(例えば、非特許文献5参照。)、電荷輸送性ポリビニルカルバゾール中に電子輸送材料と螢光色素を混入した素子が提案されている(例えば、非特許文献6参照。)が、未だ輝度、発光効率等が有機低分子化合物を用いた積層型有機電界発光素子には及ばない。
Thin Solid Films,Vol.94,p171(1982) Appl.Phys.Lett., Vol.51,p913(1987) 第40回応用物理学関係連合講演会予稿集30a−SZK−14(1993) 第42回高分子討論会予稿集20J21(1993) Nature,Vol.357,477(1992) 第38回応用物理学関係連合講演会予稿集31p−G−12(1991)
本発明は、従来の技術の上記問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は低電圧で十分な輝度が得られ、安定した電気特性を有し、耐久性に優れた有機電界発光素子を提供することにある。
上記目的を達成するため電荷輸送材料に関し鋭意検討した結果、下記一般式(I)で表される構造を有する電荷輸送性ポリマーとπ共役系ポリマー発光性高分子の組み合わせが、有機電界発光素子として好適な注入特性、電荷移動度、発光効率、薄膜形成能を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の有機電界発光素子は、
<1> 少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極間に挾持された有機化合物層より構成される有機電界発光素子であって、該有機化合物層の少なくとも一層に下記一般式(I−1)又は(I−2)で表される構造を有する電荷輸送性ポリエステルを含有し、かつ、該有機化合物層の少なくとも一層にπ共役系ポリマー発光性高分子を含有してなることを特徴とする有機電界発光素子である。
Figure 2006086497
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、置換アミノ基、ハロゲン原子、又は置換若しくは未置換のアリール基を表す。Xは、置換又は未置換の2価の芳香族基を表す。Tは、炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素基又は炭素数2〜10の2価の分枝鎖状炭化水素基を表す。kは0又は1を表す。)
<2> 前記π共役系ポリマー発光性高分子が、フルオレン、チオフェン、ビニレン、チエニレンビニレン、フェニレンビニレン、p−フェニレン、及びこれらの置換体からなる群より選択される少なくとも1種以上を繰り返し単位とし、かつ該繰返し単位の数xが4〜10であるオリゴマー、又は該繰返し単位の数xが10以上である高分子化合物であることを特徴とする前記<1>に記載の有機電界発光素子である。
<3> 前記透明電極に近い側より順に、前記有機化合物層として電荷輸送層、発光層を設けてなり、前記電荷輸送層が前記一般式(I−1)又は(I−2)で表される構造を有する電荷輸送性ポリマーを含有し、前記発光層が、前記π共役系ポリマー発光性高分子を含有してなることを特徴とする前記<1>に記載の有機電界発光素子である。
<4> 前記透明電極上に、前記有機化合物層として発光層を設けてなり、前記発光層が、前記一般式(I−1)又は(I−2)で表される構造を有する電荷輸送性ポリマーと、前記π共役系ポリマー発光性高分子とを含有してなることを特徴とする前記<1>に記載の有機電界発光素子である。
<5> 前記発光層が、電子輸送性低分子化合物を含有してなることを特徴とする前記<3>に記載の有機電界発光素子である。
<6> 前記電荷輸送性ポリエステルが、下記一般式(II)又は(III)で表されるポリエステルであることを特徴とする前記<1>〜<4>のいずれかに記載の有機電界発光素子である。
Figure 2006086497
〔式中、Aは前記一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造より選択される少なくとも1種を表す。Rは水素原子、アルキル基、置換若しくは未置換のアリール基、又は置換若しくは未置換のアラルキル基を表す。Yは2価アルコール残基を表す。Zは2価のカルボン酸残基を表す。B及びB’は、それぞれ独立に基−O−(Y−O)m−R又は基−O−(Y−O)m−O−Z−CO−O−R’(ここで、R、Y、及びZは、それぞれ前記R、Y、及びZと同義であり、R’はアルキル基、置換若しくは未置換のアリール基、又は置換若しくは未置換のアラルキル基を表し、mは1〜5の整数を表す。)を表す。mは1〜5の整数を表し、pは5〜5000の整数を表す。〕
一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造を有する電荷輸送性ポリエステルのなかでも、一般式(II)又は(III)で示される電荷輸送性ポリエステルは、塗布による成膜が容易であり、かつ、上層にπ共役系ポリマー発光性高分子を含有する発光層を塗布によって設ける際に、該発光層の塗布溶媒に侵されることが少なく好適である。
本発明によって、低電圧で十分な輝度が得られ、安定した電気特性を有し、耐久性に優れる有機電界発光素子を提供できる。
上記一般式(I−1)、(I−2)、一般式(II)及び(III)について詳細に説明を行う。
一般式(I−1)及び(I−2)におけるXとしては、置換又は未置換の2価の芳香族基を表し、好ましくは以下の式(1)〜(7)から選択される基があげられる。
Figure 2006086497
式(1)〜(7)中、R3は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、置換若しくは未置換のフェニル基、又は置換若しくは未置換のアラルキル基を表し、R4〜R10は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシル基、置換若しくは未置換のフェニル基、置換若しくは未置換のアラルキル基、又はハロゲン原子を表し、aは0又は1を表し、Vは下記の式(8)〜(17)から選択される基を表す。
Figure 2006086497
bは1〜10の整数を表し、cは1〜3の整数を表す。
また、一般式(I−1)及び(I−2)におけるkは、0又は1を表す。
一般式(I−1)及び(I−2)におけるR1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、置換アミノ基、ハロゲン原子、又は置換若しくは未置換のアリール基を表す。
一般式(I−1)及び(I−2)におけるTは、炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素基又は炭素数2〜10の2価の分枝鎖状炭化水素基を表し、好ましくは炭素数が2〜6の2価の直鎖状炭化水素基及び炭素数3〜7の2価の分枝鎖状炭化水素基より選択される。 具体的な構造を以下に示す。
Figure 2006086497
一般式(II)又は(III)で表されるポリエステルにおいて、Aは前記一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造より選択される少なくとも1種を表す。Rは、水素原子、アルキル基、置換若しくは未置換のアリール基、又は置換若しくは未置換のアラルキル基を表す。B及びB’は、それぞれ独立に基−O−(Y−O)m−R又は基−O−(Y−O)m−O−Z−CO−O−R’(ここで、R、Y、及びZは、それぞれ下記R、Y、及びZと同義であり、R’はアルキル基、置換若しくは未置換のアリール基、又は置換若しくは未置換のアラルキル基を表し、mは1〜5の整数を表す。)を表す。mは1〜5の整数を表し、pは5〜5000の整数を表す。
また、一般式(II)及び(III)におけるYは2価アルコール残基を表し、Zは2価のカルボン酸残基を表すが、Y及びZは、それぞれ独立に下記の式(18)〜(24)から選択される基が好ましい。
Figure 2006086497
式中、R11及びR12は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシル基、置換若しくは未置換のフェニル基、置換若しくは未置換のアラルキル基、又はハロゲン原子を表し、d及びeはそれぞれ独立に1〜10の整数を表し、f及びgは、それぞれ独立に0、1又は2を表し、h及びiは、それぞれ独立に0又は1を表し、Vは前記式(7)で説明したものと同義である。)
なかでも、本発明に用いられる電荷輸送性ポリエステルとしては、一般式(I−1)及び(I−2)において、Xが下記構造式(A)又は(B)で表されるものが、安定性に優れ、かつ良好なモビリティーを示し、特に好ましい。
Figure 2006086497
本発明で用いられる上記の電荷輸送性ポリエステルは、pが5〜5,000であるが、好ましくは10〜1,000の範囲である。また、重量平均分子量Mwは、10,000〜300,000の範囲にあるのが好ましい。
上記の電荷輸送性ポリエステルについて具体例を示す。表1〜表4に一般式(I−1)で示される構造の具体例を示し、表5〜表8に一般式(I−2)で示される構造の具体例を示す。また、表9〜表14に、一般式(II)及び一般式(III)で示される電荷輸送性ポリエステルの具体例を示す。
Figure 2006086497
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Figure 2006086497
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Figure 2006086497
Figure 2006086497
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Figure 2006086497
本発明の上記電荷輸送性ポリエステルは、下記構造式(I−3)又は(I−3’)で示される正孔輸送性モノマーを、例えば、第4版実験化学講座第28巻等に記載された公知の方法で重合させることによって合成することができる。
Figure 2006086497
式中、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、置換アミノ基、ハロゲン原子、置換又は未置換のアリール基を表し、Xは置換又は未置換の2価の芳香族基を表し、Tは炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素基又は炭素数2〜10の2価の分枝鎖状炭化水素基を表し、kは0又は1であり、A’は水酸基、ハロゲン原子、又は基−O−R13を表す。ただし、R13はアルキル基、置換若しくは未置換のアリール基、又はアラルキル基を表す。
一般式(II)で示される電荷輸送性ポリエステルは、次のようにして合成することができる。A’が水酸基の場合には、HO−(Y−O)m−Hで示される2価アルコール類をほぼ当量混合し、酸触媒を用いて重合する。酸触媒としては、硫酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等、通常のエステル化反応に用いるものが使用でき、正孔輸送性モノマー1重量部に対して、1/10,000〜1/10重量部、好ましくは1/1,000〜1/50重量部の範囲で用いられる。重合中に生成する水を除去するために、水と共沸可能な溶剤を用いることが好ましく、トルエン、クロロベンゼン、1−クロロナフタレン等が有効であり、正孔輸送性モノマー1重量部に対して、1〜100重量部、好ましくは2〜50重量部の範囲で用いられる。反応温度は任意に設定できるが、重合中に生成する水を除去するために、溶剤の沸点で反応させることが好ましい。
反応終了後、溶剤を用いない場合には溶解可能な溶剤に溶解させる。溶剤を用いた場合には、反応溶液をそのまま、メタノール、エタノール等のアルコール類や、アセトン等のポリマーが溶解しにくい貧溶剤中に滴下し、電荷輸送性ポリエステルを析出させ、電荷輸送性ポリエステルを分離した後、水や有機溶剤で十分洗浄し、乾燥させる。更に、必要であれば適当な有機溶剤に溶解させ、貧溶剤中に滴下し、電荷輸送性ポリエステルを析出させる再沈殿処理を繰り返してもよい。再沈殿処理の際には、メカニカルスターラー等で、効率よく撹拌しながら行うことが好ましい。再沈殿処理の際に電荷輸送性ポリエステルを溶解させる溶剤は、電荷輸送性ポリエステル1重量部に対して、1〜100重量部、好ましくは2〜50重量部の範囲で用いられる。また、貧溶剤は電荷輸送性ポリエステル1重量部に対して、1〜1,000重量部、好ましくは10〜500重量部の範囲で用いられる。
A’がハロゲンの場合には、HO−(Y−O)m−Hで示される2価アルコール類をほぼ当量混合し、ピリジンやトリエチルアミン等の有機塩基性触媒を用いて重合する。有機塩基性触媒は、正孔輸送性モノマー1当量に対して、1〜10当量、好ましくは2〜5当量の範囲で用いられる。溶剤としては、塩化メチレン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、クロロベンゼン、1−クロロナフタレン等が有効であり、正孔輸送性モノマー1重量部に対して、1〜100重量部、好ましくは2〜50重量部の範囲で用いられる。反応温度は任意に設定できる。重合後、前述のように再沈殿処理し、精製する。また、ビスフェノール等の酸性度の高い2価アルコール類の場合には、界面重合法も用いることができる。すなわち、2価アルコール類を水に加え、当量の塩基を加えて溶解させた後、激しく撹拌しながら2価アルコール類と当量の正孔輸送性モノマー溶液を加えることによって重合できる。この際、水は2価アルコール類1重量部に対して、1〜1,000重量部、好ましくは2〜500重量部の範囲で用いられる。正孔輸送性モノマーを溶解させる溶剤としては、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トルエン、クロロベンゼン、1−クロロナフタレン等が有効である。反応温度は任意に設定でき、反応を促進するために、アンモニウム塩、スルホニウム塩等の相間移動触媒を用いることが効果的である。相間移動触媒は、正孔輸送性モノマー1重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部の範囲で用いられる。
A’が−O−R13の場合には、HO−(Y−O)m−Hで示される2価アルコール類を過剰に加え、硫酸、リン酸等の無機酸、チタンアルコキシド、カルシウム及びコバルト等の酢酸塩或いは炭酸塩、亜鉛や鉛の酸化物を触媒に用いて加熱し、エステル交換により合成できる。2価アルコール類は正孔輸送性モノマー1当量に対して、2〜100当量、好ましくは3〜50当量の範囲で用いられる。触媒は正孔輸送性モノマー1重量部に対して、1/10,000〜1重量部、好ましくは1/1,000〜1/2重量部の範囲で用いられる。反応は、反応温度200〜300℃で行い、基−O−R13から基−O−(Y−O)m−Hへのエステル交換終了後は、HO−(Y−O)m−Hの脱離による重合を促進するため、減圧下で反応させることが好ましい。また、HO−(Y−O)m−Hと共沸可能な1−クロロナフタレン等の高沸点溶剤を用いて、常圧下でHO−(Y−O)m−Hを共沸で除きながら反応させることもできる。
また、一般式(III)で示される電荷輸送性ポリエステルは、次のようにして合成することができる。上記それぞれの場合において、2価アルコール類を過剰に加えて反応させることによって下記構造式(I−4)又は(I−4’)で示される化合物を生成した後、これを正孔輸送性モノマーとして用いて上記と同様の方法で、2価カルボン酸又は2価カルボン酸ハロゲン化物等と反応させればよく、それによって電荷輸送性ポリエステルを得ることができる。
Figure 2006086497
式中、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、置換アミノ基、ハロゲン原子、置換又は未置換のアリール基を表し、Xは置換又は未置換の2価の芳香族基を表し、Yは2価の炭化水素基を表し、Tは炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素基又は炭素数2〜10の2価の分枝鎖状炭化水素基を表し、mは1〜5の整数を表し、kは0及び1である。
次に、本発明の有機化合物層に含有されるπ共役系ポリマー発光性高分子について説明する。
π共役系ポリマー発光性高分子とは、二重結合と単結合が交互に並ぶ構造を持つポリマーであって、それぞれ置換基を有しても良いベンゼン環、ナフタレン環、チオフェン環、ピロール環、フラン環等の芳香環若しくは複素芳香環直接結合したもの、あるいは置換基を有していても良いビニレン基を介して結合したものが好ましい。より好ましくは、フルオレン、チオフェン、ビニレン、チエニレンビニレン、フェニレンビニレン、p−フェニレン、及びこれらの置換体からなる群より選択される少なくとも1種以上を繰り返し単位とし、かつ該繰返し単位の数xが4〜10であるオリゴマー、又は該繰返し単位の数xが10以上である高分子化合物である。
好適には、下記に例示した繰り返し構造を有する高分子化合物が用いられるが、これらに限られるものではない。
Figure 2006086497
14は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシル基、置換若しくは未置換のフェニル基、置換若しくは未置換のアラルキル基を表す。好ましくは、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、置換若しくは未置換のフェニル基、置換若しくは未置換のアラルキル基を表し、より好ましくは、オクチル基、2−エチル−ヘキシル基等炭素数8のアルキル基、4−オクチル−フェニル基を表す。
15は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、置換若しくは未置換のフェニル基、シアノ基を表す。好ましくは、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、置換若しくは未置換のフェニル基、シアノ基を表し、より好ましくはシアノ基を表す。
Arは置換若しくは未置換のフェニル基を表し、好ましくは、無置換のフェニル基を表す。rは1〜20の整数を表し、好ましくは1〜8の整数を表し、より好ましくは3〜8の整数を表。sは0又は1を表す。
本発明の有機電界発光素子の好ましい態様として、電荷輸送性ポリエステルを含有する電荷輸送層と、π共役系ポリマー発光性高分子を含有する発光層とが隣接して積層した形態や、発光層に電荷輸送性ポリエステルとπ共役系ポリマー発光性高分子とを含有する形態が挙げられる。
前者の場合、有機層/有機層の界面において、電荷移動の障壁が存在すれば、発光効率に影響を与える。本発明にかかる電荷輸送性ポリエステルとπ共役系ポリマー発光性高分子とは、界面の障壁が少なく、発光効率が極めて良好である。結果、低電圧で十分な輝度が得られ、安定的な電気特性を有していると推測される。
後者の電荷輸送性ポリエステルとπ共役系ポリマー発光性高分子とを発光層に含有する形態の場合も、発光層内の電荷移動の障壁が少ない為に、発光効率が極めて良好となり、結果、低電圧で十分な輝度が得られ、安定的な電気特性を有すると推測される。
本発明においては、電荷輸送層には、従来の積層感光体において電荷輸送層に用いられている公知のものを含有することができる。例えば、ベンジジン系化合物、アミン系化合物、ヒドラゾン系化合物、スチルベン系化合物、カルバゾール系化合物等のホール輸送性低分子化合物、又はフルオレノン系化合物、マロンニトリル系化合物、ジフェノキシキノン系化合物等の電子輸送性低分子化合物等を用いることができる。また、セレン、アモルファスシリコン、アモルファスシリコンカーバイト等の電荷輸送能を有する無機物質を用いることもできる。
また、電子輸送性低分子化合物は、発光層に含有しても良い。
上記の電荷輸送性ポリマーを含む層を有する本発明の有機電界発光素子の層構成について詳記する。本発明の有機電界発光素子は、少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極と、それら電極間に挾持された発光層を含む複数の有機化合物層より構成される。有機化合物層のうち少なくとも一層が発光層であり、他に、少なくとも一層の電荷輸送層を備えることが好ましい。
図1は、本発明の有機電界発光素子の層構成を説明するための模式的断面図であって、図中、1は透明絶縁体基板、2は透明電極、31は電荷輸送層、32は電荷輸送能を有する発光層、4は電子輸送性を有する発光層、5は背面電極である。
透明絶縁体基板1は、発光を取り出すため透明なものが好ましく、ガラス、プラスチックフィルム等が用いられる。透明電極2は、透明絶縁体基板と同様に発光を取り出すため透明であって、かつ電荷の注入を行うため仕事関数が大きなものが好ましく、酸化スズインジウム(ITO)、酸化スズ(NESA)、酸化インジウム、酸化亜鉛等の酸化膜、及び半透明の蒸着或いはスパッタされた金、白金、パラジウム等が用いられる。
一般式(I−1)、(I−2)で表される構造を有する電荷輸送性ポリマーから構成される有機化合物層は、図1に示す有機電界発光素子の層構成の場合、電荷輸送層31として作用し、また、図2に示す有機電界発光素子の層構成の場合、上記π共役系ポリマー発光性高分子と混合して発光層32として作用する。
図1に示す有機電界発光素子の層構成の場合、電荷輸送層31は一般式(I−1)又は(I−2)で表される構造を有する電荷輸送性ポリマーの単独で形成されていてもよいが、電荷移動度を調節するためにテトラフェニレンジアミン誘導体を1質量%ないし50質量%の範囲で分散させて形成されていてもよい。図1において電子輸送能を持つ発光層4には、上記π共役系ポリマー発光性高分子が用いられる。
図2に示す有機電界発光素子の層構成の場合、発光層32は少なくとも一般式(I−1)、(I−2)で表される構造を有する電荷輸送性ポリマー中に上記π共役系ポリマー発光性高分子材料を50質量%以下分散させた有機化合物層が用いられる。
背面電極5には、真空蒸着可能で、電子注入を行うため仕事関数の小さな金属が使用されるが、特に好ましくはマグネシウム、アルミニウム、銀、インジウム及びこれらの合金である。
これら本発明の有機電界発光素子において、電荷輸送層31或いは発光層32は、まず前記一般式(I−1)又は(I−2)で表される構造を有する電荷輸送性ポリマー単独、或いは一般式(I−1)又は(I−2)で表される構造を有する電荷輸送性ポリマーとπ共役系ポリマー発光性高分子材料、及び必要に応じて電荷輸送材料を有機溶媒中に溶解或いは分散し、得られた塗布液を用いて前記透明電極上にスピンコーティング法、ディップ法等を用いて製膜することによって形成される。電荷輸送層或いは発光層の膜厚は、0.03〜0.2μm程度が好ましい。発光材料の分散状態は分子分散状態でも高分子が相分離した島状構造でも構わない。
図1のように積層構造をとる場合は、まず電荷輸送層31を上記の方法で設けた後、π共役系ポリマー発光性高分子を別途電荷輸送層31上に塗布して設ける。
次いで、上記のようにして形成された電荷輸送性ポリマーを含む層の上に、背面電極を真空蒸着法を用いて形成する。本発明の有機電界発光素子は容易に作製することが可能である。積層する電子輸送能を持つ発光層及び電子輸送層の膜厚は、各々0.1μm以下、特に0.03〜0.08μmの範囲であることが好ましい。本発明の有機電界発光素子は、一対の電極間に、例えば、4〜20Vで、電流密度1〜200mA/cm2の直流電圧を印加することによって発光させることができる。
表9に示した電荷輸送性ポリマー(10)の5質量%ジクロロエタン溶液を調製し、0.1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターで濾過した。この溶液を用いて、2mm幅の短冊型ITO電極をエッチングにより形成したガラス基板上に、ティップ法により膜厚約0.1μmの電荷輸送層を形成した。十分乾燥させた後、下記の繰り返し構造を有するπ共役系ポリマー発光性高分子の5質量%シクロヘキサノン溶液を0.1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターで濾過した溶液をスピンコート法で電荷輸送性ポリマー上に発光材料として塗布して約0.1μmの発光層を形成した。背面電極としてMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の背面電極をITO電極と交差するようにマスキングを施し、有効面積は0.04cm2の有機電界発光素子を作製した。
Figure 2006086497
電荷輸送性ポリマー(10)を表11に示した(34)に変えた以外は実施例1と同様にして素子を作製した。
π共役系ポリマー発光性高分子を下記の繰り返し構造を有するポリマーに変えた以外は実施例1と同様にして素子を作製した。
Figure 2006086497
電荷輸送性ポリマー(10)を表11に示した(34)に変えた以外は実施例3と同様にして素子を作製した。
実施例1に用いた電荷輸送性ポリマー(10)及び実施例1で用いたπ共役系ポリマー発光性高分子の0.1重量部を同時にテトラヒドロフランに溶解せしめ、5質量%の塗布溶液を調製し、0.1μmのPTFEフィルターで濾過した。この溶液を用いて、2mm幅の短冊型ITO電極をエッチングにより形成したガラス基板上に、ディップ法により塗布し、膜厚約0.1μmの電荷輸送層を形成した。十分乾燥させた後、Mg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の背面電極をITO電極と交差するように形成した。形成された有機電界発光素子の有効面積は0.04cm2であった。
電荷輸送性ポリマー(10)を表11に示した(34)に変えた以外は実施例5と同様にして素子を作製した。
π共役系ポリマー発光性高分子を実施例3に示した繰り返し構造を有するポリマーに変えた以外は実施例5と同様にして有機電界発光素子を作製した。
π共役系ポリマー発光性高分子を実施例3に示した繰り返し構造を有するポリマーに変えた以外は実施例6と同様にして有機電界発光素子を作製した。
電荷輸送性ポリマー(10)を表11に示した(44)に変えた以外は実施例5と同様にして素子を作製した。
(比較例1)
表9に示した電荷輸送性ポリマー(10)の塗布溶液に変えて、下記構造式で示される電荷輸送材料を1重量部、バインダー樹脂としてポリメチルメタクリレート(PMMA)を1重量部混合し、2質量%ジクロロエタン溶液を調製した以外は、実施例1と同様にして有機電界発光素子を作製した。
Figure 2006086497
(比較例2)
表9に示した電荷輸送性ポリマー(10)の塗布溶液に変えて、ポリビニルカルバゾールの5質量%テトラヒドロフラン溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして有機電界発光素子を作製した。
(比較例3)
表9に示した電荷輸送性ポリマー(10)に変えて、ポリビニルカルバゾールを用いた以外は、実施例5と同様にして有機電界発光素子を作製した。
(比較例4)
電荷輸送性ポリマーを表11に示した(34)に変えて、ポリビニルカルバゾールを用いた以外は、実施例2と同様にして有機電界発光素子を作製した。
(比較例5)
電荷輸送性ポリマーを表11に示した(34)に変えて、ポリビニルカルバゾールを用いた以外は、実施例6と同様にして有機電界発光素子を作製した。
(比較例6)
π共役系ポリマー発光性高分子を下記繰り返し構造を有するポリマーに変えた以外は実施例1と同様にして素子を作製した。
Figure 2006086497
(比較例7)
π共役系ポリマー発光性高分子を下記繰り返し構造を有するポリマーに変えた以外は実施例5と同様にして素子を作製した。
Figure 2006086497
<評価>
以上のように作製した有機電界発光素子を、真空中(10-3Torr)でITO電極側をプラス、Mg−Ag背面電極をマイナスとして直流電圧を印加し、発光について測定を行い、このときの最高輝度、及び発光色を評価した。最高輝度の測定は、TOPCON BM−7型輝度計によって行い、発光色の測定は、目視によって行った。それらの結果を表15に示す。
また、乾燥窒素中で有機電界発光素子の発光寿命の測定を行った。発光寿命の評価は、低電流駆動により初期発光強度50cd/m2から発光強度が半減するまでの時間を測定し、素子寿命(hr)とした。この時の駆動電流密度を素子寿命と共に表15に示す。
Figure 2006086497
表15に示すように、有機化合物層の少なくとも一層に下記一般式(I−1)若しくは(I−2)で表される構造を有する電荷輸送性ポリエステルを含有し、かつ、該有機化合物層の少なくとも一層にπ共役系ポリマー発光性高分子を含有する本発明の有機電界発光素子(実施例1〜9)では、高い最高輝度を呈し、かつ極めて長い素子寿命を示した。また、駆動電流密度も良好であった。
本発明の有機電界発光素子の一例を示す模式的断面図である。 本発明の有機電界発光素子の他の一例を示す模式的断面図である。
符号の説明
1 透明絶縁体基板
2 透明電極
31 電荷輸送層
32 発光層
4 電子輸送能を持つ発光層
5 背面電極

Claims (6)

  1. 少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極間に挾持された有機化合物層より構成される有機電界発光素子であって、
    該有機化合物層の少なくとも一層に下記一般式(I−1)又は(I−2)で表される構造を有する電荷輸送性ポリエステルを含有し、
    かつ、該有機化合物層の少なくとも一層にπ共役系ポリマー発光性高分子を含有してなることを特徴とする有機電界発光素子。
    Figure 2006086497
    (式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、置換アミノ基、ハロゲン原子、又は置換若しくは未置換のアリール基を表す。Xは、置換又は未置換の2価の芳香族基を表す。Tは、炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素基又は炭素数2〜10の2価の分枝鎖状炭化水素基を表す。kは0又は1を表す。)
  2. 前記π共役系ポリマー発光性高分子が、フルオレン、チオフェン、ビニレン、チエニレンビニレン、フェニレンビニレン、p−フェニレン、及びこれらの置換体からなる群より選択される少なくとも1種以上を繰り返し単位とし、かつ該繰返し単位の数xが4〜10であるオリゴマー、又は該繰返し単位の数xが10以上である高分子化合物であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
  3. 前記透明電極に近い側より順に、前記有機化合物層として電荷輸送層、発光層を設けてなり、前記電荷輸送層が前記一般式(I−1)又は(I−2)で表される構造を有する電荷輸送性ポリマーを含有し、前記発光層が、前記π共役系ポリマー発光性高分子を含有してなることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
  4. 前記透明電極上に、前記有機化合物層として発光層を設けてなり、前記発光層が、前記一般式(I−1)又は(I−2)で表される構造を有する電荷輸送性ポリマーと、前記π共役系ポリマー発光性高分子とを含有してなることを特徴とする請求項1記載の有機電界発光素子。
  5. 前記発光層が、電荷輸送性低分子化合物を含有してなることを特徴とする請求項3に記載の有機電界発光素子。
  6. 前記電荷輸送性ポリエステルが、下記一般式(II)又は(III)で表されるポリエステルであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
    Figure 2006086497
    〔式中、Aは前記一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造より選択される少なくとも1種を表す。Rは水素原子、アルキル基、置換若しくは未置換のアリール基、又は置換若しくは未置換のアラルキル基を表す。Yは2価アルコール残基を表す。Zは2価のカルボン酸残基を表す。B及びB’は、それぞれ独立に基−O−(Y−O)m−R又は基−O−(Y−O)m−O−Z−CO−O−R’(ここで、R、Y、及びZは、それぞれ前記R、Y、及びZと同義であり、R’はアルキル基、置換若しくは未置換のアリール基、又は置換若しくは未置換のアラルキル基を表し、mは1〜5の整数を表す。)を表す。mは1〜5の整数を表し、pは5〜5000の整数を表す。〕
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