JP4284994B2 - 有機電界発光素子 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機電界発光素子(以下、「有機EL素子」と記述する。)に関する。
【0002】
【従来の技術】
EL素子は、自発光性の全固体素子であり、視認性が高く衝撃にも強いため、広く応用が期待されている。現在は無機螢光体を用いたものが主流であるが、200V以上の交流電圧が駆動に必要なため製造コストが高く、また輝度が不十分等の問題点を有している。
【0003】
一方、有機化合物を用いたEL素子研究は、最初アントラセン等の単結晶を用いて始まったが、単結晶の場合、膜厚が1mm程度と厚く100V以上の駆動電圧が必要であった。そのため蒸着法による薄膜化が試みられている(例えば、非特許文献1参照。)。しかしながら、この方法で得られた薄膜は、駆動電圧が30Vと未だ高く、また、膜中における電子・ホールキャリアの密度が低く、キャリアの再結合によるフォトンの生成確率が低いため十分な輝度が得られなかった。
【0004】
ところが近年、ホール輸送性有機低分子化合物と電子輸送能を持つ螢光性有機低分子化合物の薄膜を真空蒸着法により順次積層した機能分離型のEL素子において、10V程度の低電圧で1000cd/m2以上の高輝度が得られるものが報告された(例えば、非特許文献2参照。)。以来、積層型のEL素子の研究・開発が活発に行われている。
【0005】
しかしながら、このタイプのEL素子では、複数の蒸着工程において0.1μm以下の薄膜を形成していくためピンホールを生じ易く、十分な性能を得るためには厳しく管理された条件下で膜厚の制御を行うことが必要である。従って、生産性が低くかつ大面積化が難しいという問題がある。また、このEL素子は数mA/cm2という高い電流密度で駆動されるため、大量のジュール熱を発生する。このため、蒸着によってアモルファスガラス状態で製膜されたホール輸送性低分子化合物や螢光性有機低分子化合物が次第に結晶化して最後には融解し、輝度の低下や絶縁破壊が生じるという現象が多く見られ、その結果素子の寿命が低下するという問題も有している。
【0006】
例えば、電子輸送材料の場合、2−(4−ビフェニルイル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBO)を初めとするオキサジアゾール誘導体を電子輸送材料として使用することが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、得られた薄膜は結晶化しやすく、電荷輸送・注入特性の面からも充分とはいえない。また、電子輸送材料はオキサジアゾール化合物以外に種類が乏しく、低電圧駆動・高効率化の面からも電荷輸送・注入特性にも優れたさらなる材料の開発が望まれているのが現状である。
【0007】
一方、積層型有機EL素子における生産性と大面積化に関する問題の解決を目指し、単層構造のEL素子についても研究・開発が進められ、ポリ(p−フェニレンビニレン)等の導電性高分子を用いたり、ホール輸送性ポリビニルカルバゾール中に電子輸送材料と螢光色素を混入した素子が提案されている(例えば、非特許文献3又は4参照。)。しかし、未だ輝度、発光効率等が有機低分子化合物を用いた積層型有機EL素子には及ばない。
【0008】
【特許文献1】
特開平7−109454号公報
【非特許文献1】
Thin Solid Films, Vol.94, 171(1982)
【非特許文献2】
Appl.Phys.Lett., Vol.51, 913(1987)
【非特許文献3】
Nature, Vol.357, 477(1992)
【非特許文献4】
第38回応用物理学関係連合講演会予稿集31p−G−12(1991)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の技術の上記問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は素子製造が容易で十分な輝度が得られ、耐久性に優れた有機EL素子を作成するために必要となる高い製造容易性を有し、かつ優れた電子移動性を有する新しい電子輸送性材料を用いた有機電界発光素子の提供を目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため電子輸送性材料に関し鋭意検討した結果、下記一般式(I)で示される構造を部分構造として含む繰り返し単位を有する化合物が、有機EL素子として好適な電子注入特性、電子移動度、薄膜形成能を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、
<1>少なくとも一方が透明又は半透明である陽極及び陰極よりなる一対の電極間に挾持された一つ又は複数の有機化合物層より構成される有機電界発光素子であって、該有機化合物層の少なくとも一層が、下記一般式(VII)で示される電子輸送性ポリエーテル化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする有機電界発光素子である。
【0012】
【化8】
Figure 0004284994
【0013】
一般式(VII)中、Aは置換されていてもよい下記一般式(V)で表される2価の芳香族炭化水素基を表し、Tは炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素基又は炭素数2〜10の2価の分枝鎖状炭化水素基を表し、sは1を表す。Rは、水素原子、アルキル基、置換若しくは未置換のアリール基、置換若しくは未置換のアラルキル基、ウレタン残基又はアシル基を表す。pは、5〜5000を表す
【0020】
【化12】
Figure 0004284994
【0021】
一般式(V)中、 1 及びR 2 は、それぞれ独立にアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アシル基又はアミノ基を表し、Xは、酸素原子を示す。m及びlはそれぞれ独立に0〜2の整数を表す。
【0024】
<2>前記有機化合物層には、電子受容性化合物が混合分散されていることを特徴とする<1>に記載の有機電界発光素子である。
<3>前記有機化合物層には、電子供与性化合物が混合分散されていることを特徴とする<1>に記載の有機電界発光素子である。
【0031】
>前記有機化合物層が少なくとも発光層及び電子輸送層から構成され、前記電子輸送層が、一般式(VII)で示される電子輸送性ポリエーテル化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする<1>乃至<>のいずれか1つに記載の有機電界発光素子である。
【0032】
>前記有機化合物層が少なくともホール輸送層、発光層及び電子輸送層から構成され、前記電子輸送層が、一般式(VII)で示される電子輸送性ポリエーテル化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする<1>乃至<>のいずれか1つに記載の有機電界発光素子である。
【0033】
>前記有機化合物層が少なくとも発光層から構成され、前記発光層が、一般式(VII)で示される電子輸送性ポリエーテル化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする<1>乃至<>のいずれか1つに記載の有機電界発光素子である。
【0034】
>前記有機化合物層が少なくともホール輸送層及び発光層から構成され、前記発光層が、一般式(VII)で示される電子輸送性ポリエーテル化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする<1>乃至<>のいずれか1つに記載の有機電界発光素子である。
【0035】
>前記発光層が、電荷輸送性化合物を含むことを特徴とする<>又は<>に記載の有機電界発光素子である。
【0036】
>前記電荷輸送性化合物が、ホール輸送性高分子であることを特徴とする<>に記載の有機電界発光素子である。
【0037】
10>前記ホール輸送層が、ホール輸送性高分子を含有することを特徴とする<>又は<>に記載の有機電界発光素子である。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の有機EL素子は、少なくとも一方が透明又は半透明である陽極及び陰極よりなる一対の電極間に挟持された一つ又は複数の有機化合物層より構成されるものであって、該有機化合物層の少なくとも一層が、前記一般式(I)で示される構造を部分構造として含む繰り返し単位を有する電子輸送性ポリエーテル化合物(以下、本発明に係る電子輸送性ポリエーテル化合物と称することがある。)の少なくとも一種を含有してなる。
【0039】
本発明に係る電子輸送性ポリエーテル化合物は、優れた電子注入特性,電子移動度,薄膜形成能を示すので、これを含有する有機化合物層を有する本発明の有機EL素子は、素子構造が容易で十分な輝度が得られ、耐久性に優れる。
【0040】
本発明に係る電子輸送性ポリエーテル化合物には、一般式(I)で示される構造を部分構造として含む繰り返し単位以外のその他の繰り返し単位が含まれていてもよい。
【0041】
本発明に係る電子輸送性ポリエーテル化合物は、下記一般式(VIII)で示されるヒドロキシル基を有する電子輸送性化合物を分子間で縮合させることによって合成することができる。
【0042】
【化15】
Figure 0004284994
【0043】
一般式(VIII)中、Aは置換されていてもよい前記一般式(II)〜(VI)で表される2価の脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を表し、Tは炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素基又は炭素数2〜10の2価の分枝鎖状炭化水素基を表し、sは1〜3の整数を表す。
【0044】
以下に、一般式(I)で表される構造の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
【表1】
Figure 0004284994
【0046】
【表2】
Figure 0004284994
【0047】
【表3】
Figure 0004284994
【0048】
【表4】
Figure 0004284994
【0049】
本発明に係る電子輸送性ポリエーテル化合物を合成する場合、一般式(VIII)で示される電子輸送性化合物のみを用いてもよいし、本発明の効果を損なわない範囲で、その他のモノマーを併用してもよい。
前記その他のモノマーとしては、一般式(VIII)で示される電子輸送性化合物と共重合可能なモノマーであれば任意に選択できるが、特に好ましいモノマーとして、以下のものが挙げられる。
【0050】
【化16】
Figure 0004284994
【0051】
上記式中、Ar1〜Ar3はそれぞれ独立に置換されていてもよい芳香環が1又は2の芳香族炭化水素基を表し、T1及びT2はそれぞれ独立に炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素基又は炭素数2〜10の2価の分枝鎖状炭化水素基を表す。
【0052】
本発明に係る電子輸送性ポリエーテル化合物としては、下記一般式(VII)で示されるものが好適に使用される。
【0053】
【化17】
Figure 0004284994
【0054】
一般式(VII)中、A、T及びsは一般式(I)と同義である。Rは、水素原子、アルキル基、置換若しくは未置換のアリール基、置換若しくは未置換のアラルキル基、ウレタン残基又はアシル基を表す。pは、5〜5000を表す。
【0055】
一般式(VII)で表される電子輸送性ポリエーテル化合物は、一般式(I)で示される構造を部分構造として含む繰り返し単位を1種有していても、2種以上有していてもよい。
【0056】
一般式(VII)において、Rがアルキル基の場合、前記アルキル基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。
Rがアリール基の場合、前記アリール基としては、炭素数6〜20のものが好ましく、例えば、フェニル基、トルイル基等が挙げられる。
Rがアラルキル基の場合、前記アラルキル基としては、炭素数7〜20のものが好ましく、例えば、ベンジル基、フェニチル基等が挙げられる。
また、置換アリール基又は置換アラルキル基の置換基としては、例えば、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、置換アミノ基又はハロゲン原子等が挙げられる。
【0057】
本発明に係る電子輸送性ポリエーテル化合物は、例えば、以下の方法(1)〜(3)により合成することが可能である。
【0058】
(1)本発明に係る電子輸送性ポリエーテル化合物は、上記一般式(VIII)で示される2個のヒドロキシル基を有する電子輸送性化合物(電子輸送性モノマー)を加熱脱水縮合する方法によって合成することができる。
この場合、無溶媒で電子輸送性モノマーを加熱溶融し、水の脱離による重合反応を行う。水の脱離による重合反応を促進させるため減圧下で反応させることが望ましい。また、溶媒を使用する場合は、水の除去のため、水と共沸する溶媒、例えば、トリクロロエタン、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、1−クロロナフタレン等が有効であり、電子輸送性モノマー1質量部に対して、1〜100質量部、好ましくは2〜50質量部の範囲で用いられる。
反応温度は任意に設定できるが、重合中に生成する水を除去するために、溶媒の沸点で反応させるのが好ましい。重合が進まない場合には、反応系から溶媒を除去し、粘ちょう状態で加熱撹拌してもよい。
【0059】
(2)本発明に係る電子輸送性ポリエーテル化合物は、前記電子輸送性モノマーを、酸触媒として、p−トルエンスルホン酸、塩酸、硫酸、トリフルオロ酢酸等のプロトン酸、あるいは塩化亜鉛等のルイス酸を用い、脱水縮合する方法によって合成することもできる。
この場合、電子輸送性モノマー1質量部に対して、酸触媒は1/10000〜1/10質量部、好ましくは1/1000〜1/50質量部の範囲で用いられる。重合中に生成する水を除去するために、水と共沸可能な溶剤を用いるのが好ましい。
溶剤としては、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、1−クロロナフタレン等が有効であり、電子輸送性モノマー1質量部に対して、1〜100質量部、好ましくは2〜50質量部の範囲で用いられる。
反応温度は任意に設定できるが、重合中に生成する水を除去するために、溶剤の沸点で反応させることが好ましい。
【0060】
(3)本発明に係る電子輸送性ポリエーテル化合物は、イソシアン化シクロヘキシル等のイソシアン化アルキル、シアン化シクロヘキシル等のシアン化アルキル、シアン酸p−トリルや2,2−ビス(4−シアナートフェニル)プロパン等のシアン酸エステル、ジクロロヘキシルカルボジイミド(DCC)、トリクロロアセトニトリル等の縮合剤を用いる方法によっても合成することができる。
この場合、縮合剤は、電子輸送性モノマー1質量部に対して、1/2〜10質量部、好ましくは1〜3質量部の範囲で用いられる。
溶剤として、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、1−クロロナフタレン等が有効であり、電子輸送性モノマー1質量部に対して、1〜100質量部、好ましくは2〜50質量部の範囲で用いられる。
反応温度は任意に設定できるが、室温から溶剤の沸点で反応させることが好ましい。
【0061】
上述の(1)、(2)及び(3)の合成法のうち、異性化や副反応が起こりにくいことから、合成法(1)又は(3)が好ましく、反応条件がより穏和なことから合成法(3)が特に好ましい。
【0062】
重合反応終了後、電子輸送性ポリエーテル化合物合成時に溶剤を用いなかった場合は、反応生成物を溶解可能な溶剤に溶解させた状態で、一方、溶剤を用いた場合にはそのままの状態でメタノール、エタノール等のアルコール類や、アセトン等の電子輸送性ポリエーテル化合物が溶解しにくい貧溶剤中に滴下し、電子輸送性ポリエーテル化合物を析出させ、電子輸送性ポリエーテル化合物を分離した後、水や有機溶剤で十分に洗浄し、乾燥させる。
【0063】
さらに必要であれば、適当な有機溶剤に溶解させ、貧溶剤中に滴下し、電子輸送性ポリエーテル化合物を析出させる再沈澱処理を繰り返してもよい。再沈澱処理の際には、メカニカルスターラー等で、効率よく撹拌しながら行うことが好ましい。再沈澱処理の際に電子輸送性ポリエーテル化合物を溶解させる溶剤は、電子輸送性ポリエーテル化合物1質量部に対して、1〜100質量部、好ましくは2〜50質量部の範囲で用いられる。また、貧溶剤は電子輸送性ポリエーテル化合物1質量部に対して、1〜1000質量部、好ましくは10〜500質量部の範囲で用いられる。
【0064】
さらに、上記反応において、電子輸送性モノマーを2種以上、好ましくは2〜5種、さらに好ましくは2〜3種用いることにより、共重合ポリエーテル化合物の合成も可能である。異種の電子輸送性モノマーを共重合することによって、電子輸送性ポリエーテル化合物の電気特性、成膜性、溶解性を制御することができる。
【0065】
本発明に係る電子輸送性ポリエーテル化合物の重合度は、低すぎると成膜性に劣り、強固な膜が得られにくく、また、高すぎると溶剤への溶解度が低くなり、加工性が悪くなるため、5〜5000の範囲に設定され、好ましくは10〜3000、より好ましくは15〜1000の範囲である。
また、一般式(VII)で示される本発明に係る電子輸送性ポリエーテル化合物の重合度pは、低すぎると成膜性に劣り、強固な膜が得られにくく、また、高すぎると溶剤への溶解度が低くなり、加工性が悪くなるため、5〜5000の範囲に設定され、好ましくは10〜3000、より好ましくは15〜1000の範囲である。
【0066】
本発明に係る電子輸送性ポリエーテル化合物の末端基は、電子輸送性モノマーと同様にヒドロキシル基、すなわち一般式(VII)におけるRが水素原子であってよいが、溶解性、成膜性、モビリティー等のポリマー物性に影響を及ぼす場合には、末端基Rを修飾し物性を制御することができる。
【0067】
例えば、末端のヒドロキシル基を、硫酸アルキル、ヨウ化アルキル等でアルキルエーテル化することができる。具体的な試薬としては、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル等から任意に選ぶことができ、末端のヒドロキシル基1当量に対し1〜3当量、好ましくは1〜2当量の範囲で用いる。
その際、塩基触媒を用いることができるが、塩基触媒として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、ナトリウム金属等から任意に選ぶことができ、末端のヒドロキシル基1当量に対し0.1〜3当量、好ましくは1〜2当量の範囲で用いる。
反応温度は、0℃から使用する溶剤の沸点で行うことができる。また、その際用いる溶剤として、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の不活性溶剤から選んだ単独溶剤、あるいは2〜3種の混合溶剤が使用できる。
また、反応によっては、相間移動触媒としてテトラ−n−ブチルアンモニウムアイオダイド等の第4級アンモニウム塩を使用することもできる。
【0068】
また、末端のヒドロキシル基を酸ハロゲン化物を用いアシル化して、基Rをアシル基にすることもできる。
酸ハロゲン化物は特に限定するものではないが、例えばアクリロイルクロリド、クロトノイルクロリド、メタクリロイルクロリド、n−ブチルクロリド、2−フロイルクロリド、ベンゾイルクロリド、シクロヘキサンカルボニルクロリド、エナンチルクロリド、フェニルアセチルクロリド、o−トルオイルクロリド、m−トルオイルクロリド、p−トルオイルクロリド等が挙げられ、末端のヒドロキシル基1当量に対し1〜3当量、好ましくは1〜2当量の範囲で用いる。
その際、塩基触媒を用いることができるが、塩基触媒としては、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン等から任意に選ぶことができ、酸ハロゲン化物1当量に対し1〜3当量、好ましくは1〜2当量の範囲で用いる。
その際用いる溶剤として、ベンゼン、トルエン、塩化メチルン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン等があげられる。反応は、0℃から溶剤の沸点で行うことができる。好ましくは、0℃から30℃の範囲で行う。
【0069】
さらに、無水酢酸等の酸無水物を用いてもアシル化することができる。溶剤を用いる場合は、具体的には、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン等の不活性溶剤を使用することができる。反応は、0℃から溶剤の沸点で行うことができる。好ましくは、50℃から溶剤の沸点で行えばよい。
【0070】
そのほか、モノイソシアネートを用い、末端にウレタン残基(−CONH−R′)を導入することができる。具体的なモノイソシアネートとしては、イソシアン酸ベンジルエステル、イソシアン酸n−ブチルエステル、イソシアン酸t−ブチルエステル、イソシアン酸シクロヘキシルエステル、イソシアン酸2,6−ジメチルエステル、イソシアン酸エチルエステル、イソシアン酸イソプロピルエステル、イソシアン酸2−メトキシフェニルエステル、イソシアン酸4−メトキシフェニルエステル、イソシアン酸n−オクタデシルエステル、イソシアン酸フェニルエステル、イソシアン酸i−プロピルエステル、イソシアン酸m−トリルエステル、イソシアン酸p−トリルエステル、イソシアン酸1−ナフチルエステル等から任意に選ぶことができ、末端のヒドロキシル基1当量に対し1〜3当量、好ましくは1〜2当量の範囲で用いる。
その際に用いる溶剤として、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等をあげることができる。
反応温度は、0℃から使用溶剤の沸点で行うことができる。反応が進みにくい場合は、ジラウリン酸ジブチルスズ(II)、オクチル酸スズ(II)、ナフテン酸鉛等の金属化合物、あるいはトリエチルアミン、トリメチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン等の3級アミンを触媒として添加することもできる。
【0071】
本発明に係る電子輸送性ポリエーテル化合物の重量平均分子量Mwは5000〜300000の範囲にあるものが好ましく、さらに好ましくは5000〜200000、特に好ましくは10000〜200000である。
【0072】
以下に、本発明に係る電子輸送性ポリエーテル化合物の具体例を示すが、本発明は下記具体例に限定されるものではない。なお、下記表において、モノマーの番号は前記表1〜4に示した一般式(I)で表される構造の番号を示し、sは、一般式(I)におけるsと、pは、一般式(VII)におけるpと同義である。
【0073】
【表5】
Figure 0004284994
【0074】
次に、本発明の有機EL素子の層構成について詳記する。
本発明の有機EL素子は、少なくとも一方が透明又は半透明である陽極及び陰極よりなる一対の電極と、前記電極間に挾持された発光層を含む一つまたは複数の有機化合物層より構成される。
【0075】
本発明において、有機化合物層が1つの場合は、有機化合物層はキャリア輸送能を持つ発光層を意味する。また、有機化合物層が複数の場合は、その一つがキャリア輸送能を持っていても持たなくてもよい発光層であり、他の有機化合物層は、少なくともキャリア輸送層、すなわち、ホール輸送層、電子輸送層、或いはホール輸送層と電子輸送層より構成されるものを意味する。
【0076】
図1、図2、図3及び図4は、本発明の有機EL素子の層構成を説明するための模式的断面図であって、図1、図2及び図4の場合は、有機化合物層が複数の場合の例であり、図3の場合は、有機化合物層が1つの場合の例を示す。
図中、1は透明絶縁体基板、2は透明電極、3はホール輸送層、4は発光層、5は電子輸送層、6はキャリア輸送能を持つ発光層、7は背面電極を意味する。
【0077】
透明絶縁体基板1は、発光を取り出すため透明なものが好ましく、ガラス、プラスチックフィルム等が用いられる。
【0078】
透明電極2は、透明絶縁体基板と同様に発光を取り出すため透明であって、かつホールの注入を行うため仕事関数の大きなものが好ましく、酸化スズインジウム(ITO)、酸化スズ(NESA)、酸化インジウム、酸化亜鉛等の酸化膜、および蒸着或いはスパッタされた金、白金、パラジウム等が用いられる。
この中でもITOが好ましい。
【0079】
本発明に係る電子輸送性ポリエーテル化合物を含有する有機化合物層は、図1および図2に示される有機EL素子の層構成の場合、電子輸送層5として作用し、また、図3および図4に示される有機EL素子の層構成の場合、キャリア輸送能を持つ発光層6として作用する。
【0080】
図1および図2に示される有機EL素子の層構成の場合、電子輸送層5は本発明に係る電子輸送性ポリエーテル化合物単独で形成されていてもよいが、電気的特性をさらに改善する等の目的で、電子移動度を調節するために前記電子輸送性ポリエーテル化合物以外に、特定の有機低分子化合物を1質量%乃至30質量%の範囲で混合分散して形成されていてもよい。
【0081】
この場合の有機低分子化合物としては、低分子系の電子受容性化合物、電子供与性化合物または金属錯塩等が挙げられ、前記電子輸送性ポリエーテル化合物とは独立の作用により、あるいは前記電子輸送性ポリエーテル化合物と電荷移動錯体の形成等の相互作用により、電子伝導性を増強若しくは制御する機能を有する化合物が好ましく、前記有機低分子化合物は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
前記電子受容性化合物の例としては、4−ニトロベンズアルデヒドなどの芳香族ニトロ化合物、無水マレイン酸等の環状カルボン酸無水物、N−(n−ブチル)−1,8−ナフタルイミド等の芳香族カルボン酸イミド類、p−クロラニル、2,3−ジクロロアントラキノン等のキノン類、テトラシアノアントラキノンジメタン等のテトラシアノキシジメタン誘導体、9−ジシアノメチレンフルオレン−4−カルボン酸−n−オクチル等のフルオレノン誘導体等が挙げられる。
【0083】
前記電子供与性化合物の例としては、2,5−ビス(4−ジメチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールに代表されるオキサジアゾ−ル類、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセンのようなスチリル系化合物、N−メチル−N−フェニルヒドラゾン−3−メチリデン−9−エチルカルバゾールのようなカルバゾール化合物、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノスチリル)−5−(p−ジメチルアミノフェニル)−ピラゾリンのようなピラゾリン系化合物、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)ベンジジンやトリ(4−メチルフェニル)アミン、N,N−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン等のトリフェニルアミン系化合物、あるいは、テトラチアフルバレン、N,N,N’,N’−テトラエチルフェニレンジアミン等が挙げられる。
【0084】
前記有機金属錯塩の例としては、遷移金属元素又はIII族、IV族金属元素等のアセチルアセトン錯体、アセト酢酸エステル錯体、オキシキノリン錯体、フェナントロリン錯体などの各種キレート錯体、あるいは、フェロセン等のシクロペンタジエニル錯体等が挙げられる。
【0085】
また、前記電子輸送層の成膜性向上のため、汎用の樹脂等を混合してもよい。具体的な樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレンブタジエン共重合体、塩化ビニルデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコン樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂、ポリシラン樹脂、ポリチオフェン、ポリピロール等の導電性樹脂等を用いることができる。
これらの樹脂を併用する場合、本発明に係る電子輸送性ポリエーテル化合物が電子輸送層を構成する材料の60質量%以上となるよう混合されることが好ましい。
また、前記電子輸送層に含有されてもよい添加剤としては、公知の酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等が挙げられる。
【0086】
図1および図2における発光層4には、固体状態で高い蛍光量子収率を示す化合物が発光材料として用いられる。発光材料が有機低分子の場合、真空蒸着法もしくは低分子と結着樹脂を含む溶液または分散液を塗布・乾燥することにより良好な薄膜形成が可能であることが条件である。
また、発光材料が高分子の場合、それ自身を含む溶液または分散液を塗布・乾燥することにより良好な薄膜形成が可能であることが条件である。
好適には、有機低分子の場合、キレート型有機金属錯体、多核または縮合芳香環化合物、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、スチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサチアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体等が、高分子の場合、ポリパラフェニレン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリアセチレン誘導体等が挙げられる。好適な具体例として、下記の化合物(IX−1)〜(IX−15)が用いられるが、これらに限定されたものではない。
【0087】
【化18】
Figure 0004284994
【0088】
【化19】
Figure 0004284994
【0089】
ここで、式(IX−13)〜(IX−15)中、nおよびxは1又は2以上の整数を示す。
【0090】
また、有機EL素子の耐久性向上或いは発光効率の向上を目的として、上記の発光材料中にゲスト材料として発光材料と異なる色素化合物をドーピングしてもよい。真空蒸着によって発光層を形成する場合、共蒸着によってドーピングを行う。また、溶液または分散液を塗布・乾燥することで発光層を形成する場合、溶液または分散液中に混合することでドーピングを行う。
発光層中における色素化合物のドーピングの割合としては、0.001質量%〜40質量%程度、好ましくは0.01質量%〜10質量%程度である。このようなドーピングに用いられる色素化合物としては、発光材料との相容性が良く、かつ発光層の良好な薄膜形成を妨げない有機化合物が用いられ、好適にはDCM誘導体、キナクリドン誘導体、ルブレン誘導体、ポルフィリン系化合物等が挙げられる。
好適な具体例として、下記の化合物(X−1)〜(X−4)が用いられるが、これらに限定されたものではない。
【0091】
【化20】
Figure 0004284994
【0092】
図2および図4に示される有機EL素子の層構成の場合、ホール輸送層3には、電子供与性を示す化合物がホール輸送材料として用いられる。
ホール輸送材料が有機低分子の場合、真空蒸着法又は有機低分子と結着樹脂を含む溶液若しくは分散液を塗布・乾燥することにより良好な薄膜形成が可能であることが条件である。
また、ホール輸送材料が高分子の場合、それ自身を含む溶液または分散液を塗布・乾燥することにより良好な薄膜形成が可能であることが条件である。
好適には、テトラフェニレンジアミン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、カルバゾール誘導体、スチルベン誘導体、アリールヒドラゾン誘導体、ポルフィリン系化合物等が挙げられる。
好適な具体例として、下記の化合物(XI−1)〜(XI−7)が用いられるが、これらに限定されたものではない。
【0093】
【化21】
Figure 0004284994
【0094】
【化22】
Figure 0004284994
【0095】
ここで、式(XI−5)〜(XI−7)中、tは5〜5000が好ましく、10〜3000がより好ましく、特に15〜1000が好ましい。
【0096】
図3および図4に示される有機EL素子の層構成の場合、キャリア輸送能を持つ発光層6は、少なくとも本発明に係る電子輸送性ポリエーテル化合物中に、発光材料を50質量%以下分散させた有機化合物層であり、発光材料としては前記化合物(IX−1)乃至化合物(IX−12)が好適に用いられる。
また、キャリア輸送能を持つ発光層6には、有機EL素子に注入されるホールと電子のバランスを調節するために、図1に示される有機EL素子の層構成の場合と同様、本発明に係る電子輸送性ポリエーテル化合物以外の特定の有機低分子化合物を1質量%ないし30質量%の範囲で混合分散して形成されていてもよい。或いは透明電極2とキャリア輸送能を持つ発光層6の間に、ホール輸送材料よりなるホール輸送層を挿入してもよい。このようなホール輸送材料としては、本発明に係る電子輸送性ポリエーテル化合物と強い電子相互作用を示さない有機化合物が用いられ、例えば、図2のホール輸送層3で用いられる化合物が挙げられる。また、図1に示される有機EL素子の層構成の場合と同様、発光材料と異なる色素化合物をドーピングしてもよい。さらに、図1に示される有機EL素子の層構成の場合と同様、成膜性の向上のため、他の汎用の樹脂等を混合させてもよい。
【0097】
背面電極7には、真空蒸着可能で、電子注入を行うため仕事関数の小さな金属が使用されるが、特に好ましくはマグネシウム、アルミニウム、銀、インジウムおよびこれらの合金である。また、有機EL素子の水分や酸素による劣化を防ぐために、背面電極7上に保護層を設けてもよい。具体的な保護層の材料としては、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al等の金属、MgO、SiO2、TiO2等の金属酸化物、ポリエチレン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂が挙げられる。保護層の形成には、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマ重合法、CVD法、コーティング法が適用できる。
【0098】
以下に、本発明の有機EL素子の製造方法について説明する。
本発明の有機EL素子は、まず透明電極2の上に各有機EL素子の層構成に応じて、ホール輸送層3或いは発光層4を形成する。ホール輸送層3または発光層4は、それぞれ、ホール輸送材料、発光材料を真空蒸着法、もしくは有機溶媒中に溶解或いは分散し、得られた塗布液を用いて前記透明電極2上にスピンコーティング法、ディップ法等を用いて製膜することにより形成する。
【0099】
次に、電子輸送層5またはキャリア輸送能を持つ発光層6は、まず本発明に係る電子輸送性ポリエーテル化合物単独、或いはこれらの電子輸送性化合物と発光材料、および必要に応じて電子輸送材料、ホール輸送材料を有機溶媒中に溶解或いは分散し、得られた塗布液を用いて前記透明電極2上にスピンコーティング法、ディップ法等を用いて製膜することによって形成される。これにより容易に有機EL素子を作製することが可能である。
【0100】
形成されるホール輸送層3、発光層4および電子輸送層5の膜厚は、各々0.1μm以下、特に0.03〜0.08μmの範囲であることが好ましい。また、キャリア輸送能を持つ発光層6の膜厚は、0.03〜0.2μm程度が好ましい。
ホール輸送材料、発光材料、電子輸送材料および本発明に係る電子輸送性ポリエーテル化合物の分散状態は、分子分散状態でも微粒子分散状態であってもよい。
塗布液を用いた製膜法の場合、分子分散状態とするためには、分散溶媒はホール輸送材料、発光材料、電子輸送材料および本発明に係る電子輸送性ポリエーテル化合物の共通溶媒を用いる必要があり、微粒子分散状態とするために分散溶媒はホール輸送材料、発光材料、電子輸送材料の分散性および溶解性、ならびに本発明に係る電子輸送性ポリエーテル化合物の溶解性を考慮して選択する必要がある。
微粒子状に分散するためには、ボールミル、サンドミル、ペイントシェイカー、アトライター、ボールミル、ホモジェナイザー、超音波法等が利用できる。
【0101】
最後に、電子輸送層5又はキャリア輸送能を持つ発光層6の上に背面電極7を真空蒸着法により形成することにより素子が完成される。
【0102】
本発明の有機EL素子は、一対の電極間に、例えば、4〜20Vで、電流密度1〜200mA/cm2の直流電圧を印加することによって発光させることができる。
【0103】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を説明するが、本発明は下記実施例によって限定されるものではない。
【0104】
参考例1〕
2mm幅の短冊型にエッチングしたITOガラス基板を2−プロパノール(電子工業用、関東化学製)で超音波洗浄した後、乾燥させた。この基板上に下記例示化合物(XII)で示されるホール輸送材料より構成される厚さ0.050μmのホール輸送層と、前記例示化合物(IX−1)で示される発光材料より構成される厚さ0.065μmの発光層とを順次真空蒸着法により形成した。続いて、電子輸送性ポリエーテル化合物〔例示化合物(1)〕を5質量%の割合でm−クレゾールに溶解し、0.1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターで濾過して得られた溶液をスピンコーター法により塗布して膜厚0.050μmの電子輸送層をスピンコーター法により形成し、最後にMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して2mm幅、0.15μm厚の背面電極をITO電極と交差するようにして有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子の有効面積は0.04cm2であった。
【0105】
【化23】
Figure 0004284994
【0106】
参考例2〕
参考例1に用いた例示化合物(1)を1質量部、発光材料として前記例示化合物(IX−1)1質量部、ホール輸送材料としてポリビニルカルバゾール(PVK)2質量部を混合し、10質量%m−クレゾール分散液を1mmφのガラスビーズを用いたサンドミルで2時間分散して分散液を調製して、0.1μmのPTFEフィルターで濾過した。この溶液を用いて、2mm幅の短冊型ITO電極をエッチングにより形成したガラス基板上に、スピンコーター法により塗布して膜厚0.15μmのキャリア輸送能を持つ発光層を形成した。充分乾燥させた後、Mg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の背面電極をITO電極と交差するようにして有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子の有効面積は0.04cm2であった。
【0107】
参考例3〕
例示化合物(8)を用いた以外は、参考例1と同様にして有機EL素子を作製した。
【0108】
参考例4〕
例示化合物(8)を用いた以外は、参考例2と同様にして有機EL素子を作製した。
【0109】
参考例5〕
例示化合物(17)を用い、電子輸送層の塗布溶剤として1,1,2,2−テトラクロロエタンを用いた以外は、参考例1と同様にして有機EL素子を作製した。
【0110】
参考例6〕
例示化合物(17)を用い、塗布溶剤として1,1,2,2−テトラクロロエタンを用いた以外は、参考例2と同様にして有機EL素子を作製した。
【0111】
〔実施例7〕
例示化合物(26)を用い、電子輸送層の塗布溶剤として1,1,2,2−テトラクロロエタンを用いた以外は、参考例1と同様にして有機EL素子を作製した。
【0112】
〔実施例8〕
例示化合物(26)を用い、塗布溶剤として1,1,2,2−テトラクロロエタンを用いた以外は、参考例2と同様にして有機EL素子を作製した。
【0113】
〔比較例1〕
2mm幅の短冊型にエッチングしたITOガラス基板を2−プロパノール(電子工業用、関東化学製)で超音波洗浄した後、乾燥させた。この基板上に前記例示化合物(XI−2)で示されるホール輸送材料より構成される厚さ0.050μmのホール輸送層と、前記例示化合物(IX−1)より構成される厚さ0.065μmの発光層とを順次真空蒸着法により形成した。続いて、前記化合物(XII)より構成される厚さ0.050μmの電子輸送層を真空蒸着法により形成し、最後にMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して2mm幅、0.15μm厚の背面電極をITO電極と交差するようにして有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子の有効面積は0.04cm2であった。
【0114】
〔比較例2〕
ホール輸送性材料としてポリビニルカルバゾール(PVK)を2質量部、発光材料として前記例示化合物(IX−1)を0.1質量部、電子輸送材料として前記例示化合物(XII)を1質量部混合し、10質量%ジクロロエタン溶液を調製し、0.1μmのPTFEフィルターで濾過した。この溶液を用いて、2mm幅の短冊型ITO電極をエッチングにより形成したガラス基板上に、スピンコーター法により塗布して膜厚0.15μmのキャリア輸送能を持つ発光層を形成した。十分乾燥させた後、Mg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の背面電極をITO電極と交差するようにして有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子の有効面積は0.04cm2であった。
【0115】
〔比較例3〕
電子輸送層の形成を省略した以外は、比較例1と同様にして有機EL素子を作製した。
【0116】
〔比較例4〕
電子輸送材料の混合を省略した以外は、比較例2と同様にして有機EL素子を作製した。
【0117】
以上のように作製した有機EL素子を、真空中(10-3Torr)でITO電極側をプラス、Mg−Ag背面電極をマイナスとして直流電圧を印加し、発光について測定を行い、このときの最高輝度、および発光色を評価した。それらの結果を表6に示す。
また、乾燥窒素中で有機EL素子の発光寿命の測定を行った。発光寿命の評価は、初期輝度が50cd/m2となるように電流値を設定し、定電流駆動により輝度が初期値から半減するまでの時間を素子寿命(hour)とした。この時の駆動電流密度(mA/cm2)を素子寿命と共に表6に示す。
【0118】
【表6】
Figure 0004284994
【0119】
【発明の効果】
本発明に係る電子輸送性ポリエーテル化合物の少なくとも1種を用いた有機EL素子は、高輝度、高効率が可能である。また、スピンコーティング法、ディップ法等を用いてピンホール等の不良も少なく、大面積化も容易で良好な薄膜を形成することが可能であるので、これを用いて形成された本発明の有機EL素子は、製造コストの面でも有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の有機EL素子の一例の模式的断面図である。
【図2】 本発明の有機EL素子の他の一例の模式的断面図である。
【図3】 本発明の有機EL素子の他の一例の模式的断面図である。
【図4】 本発明の有機EL素子の他の一例の模式的断面図である。
【符号の説明】
1 透明絶縁体基板
2 透明電極
3 ホール輸送層
4 発光層
5 電子輸送層
6 キャリア輸送能を持つ発光層
7 背面電極

Claims (10)

  1. 少なくとも一方が透明又は半透明である陽極及び陰極よりなる一対の電極間に挾持された一つ又は複数の有機化合物層より構成される有機電界発光素子であって、該有機化合物層の少なくとも一層が、下記一般式(VII)で示される電子輸送性ポリエーテル化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする有機電界発光素子。
    Figure 0004284994
    一般式(VII)中、Aは置換されていてもよい下記一般式(V)で表される2価の芳香族炭化水素基を表し、Tは炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素基又は炭素数2〜10の2価の分枝鎖状炭化水素基を表し、sは1を表す。Rは、水素原子、アルキル基、置換若しくは未置換のアリール基、置換若しくは未置換のアラルキル基、ウレタン残基又はアシル基を表す。pは、5〜5000を表す
    Figure 0004284994
    一般式(V)中、 1 及びR 2 は、それぞれ独立にアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アシル基又はアミノ基を表し、Xは、酸素原子を示す。m及びlはそれぞれ独立に0〜2の整数を表す。
  2. 前記有機化合物層には、電子受容性化合物が混合分散されていることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
  3. 前記有機化合物層には、電子供与性化合物が混合分散されていることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子
  4. 前記有機化合物層が少なくとも発光層及び電子輸送層から構成され、前記電子輸送層が、一般式(VII)で示される電子輸送性ポリエーテル化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
  5. 前記有機化合物層が少なくともホール輸送層、発光層及び電子輸送層から構成され、前記電子輸送層が、一般式(VII)で示される電子輸送性ポリエーテル化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の有機電界発光素子
  6. 前記有機化合物層が少なくとも発光層から構成され、前記発光層が、一般式(VII)で示される電子輸送性ポリエーテル化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の有機電界発光素子
  7. 前記有機化合物層が少なくともホール輸送層及び発光層から構成され、前記発光層が、一般式(VII)で示される電子輸送性ポリエーテル化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の有機電界発光素子
  8. 前記発光層が、電荷輸送性化合物を含むことを特徴とする請求項6又は7に記載の有機電界発光素子
  9. 前記電荷輸送性化合物が、ホール輸送性高分子であることを特徴とする請求項8に記載の有機電界発光素子
  10. 前記ホール輸送層が、ホール輸送性高分子を含有することを特徴とする請求項5又は7に記載の有機電界発光素子
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