JP4314771B2 - 有機電界発光素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気エネルギーを光に変換して発光する素子に関し、表示素子、バックライト、照明光源、電子写真用露光装置、標識、看板等の分野に好適に使用できる有機電界発光素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電界発光素子は、自発光性の全固体素子であり、視認性が高く衝撃にも強いため、広く応用が期待されている。現在は無機螢光体を用いたものが主流であり広く使用されているが、駆動に200V以上の交流電圧を必要とするためランニングコストが高く、また輝度が不十分であるなどの問題点を有している。
【0003】
一方、有機化合物を用いた電界発光素子研究は、最初アントラセン等の単結晶を用いて始まったが、膜厚が1mm程度と厚く、100V以上の駆動電圧が必要であった。そのため蒸着法による薄膜化が試みられている(Thin Solid FIlms,Vol.94,171(1982))。このような電界発光素子の発光は、該電界発光素子の電極の一方から電子が注入され、もう一方の電極から正孔が注入されることにより、前記電界発光素子中の発光材料が高いエネルギー準位に励起され、励起された発光体が基底状態に戻る際の余分なエネルギーを光として放出する現象である。しかしながら、駆動電圧が30Vと未だ高く、また、膜中における電子・正孔キャリアの密度が低く、キャリアの再結合によるフォトンの生成確率が低いため十分な輝度が得られず、実用化には至らなかった。
【0004】
ところが、1997年にTangらにより透明基板上に正孔輸送性有機低分子化合物と電子輸送能を持つ螢光性有機低分子化合物を真空蒸着法により極めて薄い薄膜を順次積層した機能分離型の有機電界発光素子で、10V程度の低電圧で1000cd/m2以上の高輝度が得られるものが報告(Appl.Phys.Lett.,Vol.51,913(1987)、特開昭59−194393号報)され、以来、積層構造を有する有機電界発光素子の研究・開発が活発に行われている。
【0005】
このような有機電界発光素子は、有機発光体及び電荷輸送性の有機物(電荷輸送材料)を電極に積層した構造であり、それぞれの正孔と電子とが該電荷輸送材料中を移動して、再結合することにより発光する。前記有機発光体としては8−キノリノールアルミニウム錯体やクマリン化合物など蛍光を発する有機色素などが用いられる。また、前記電荷輸送材料としては、N,N−ジ(m−トリル)N,N‘−ジフェニルベンジジンや1,1−ビス[N,N−ジ(p−トリル)アミノフェニル]シクロヘキサンといったジアミノ化合物や、4−(N,N−ジフェニル)アミノベンズアルデヒドーN,N−ジフェニルヒドラゾン化合物等が挙げられる。
【0006】
しかしながら、前記有機電界発光素子は高い発光特性を有しているが、発光時の熱安定性や保存安定性に問題がある。前記有機電界発光素子を構成する有機物層の厚みは、数十から数百ナノメーターと非常に薄く、単位厚さ当たりに加わる電圧は非常に高くなり、数mA/cm2という高い電流密度で駆動されるため大量のジュール熱を発生する。このため、蒸着によってアモルファスガラス状態で成膜された正孔輸送性低分子化合物や螢光性有機低分子化合物が次第に結晶化して最後には融解し、熱安定性の点で劣っていた。このような劣悪な熱安定性は、輝度の低下や絶縁破壊を引き起こし、その結果、素子の寿命が短くなるという問題が発生した。また、長時間の使用による経時変化や酸素を含む雰囲気気体や湿気などによる劣化が生じた。
【0007】
そこで、上記の熱安定性に関する問題の解決のために、正孔輸送材料として安定なアモルファスガラス状態が得られるスターバーストアミン(第40回応用物理学関係連合講演会予稿集30a−SZK−14(1993))を用いたり、ポリフォスファゼンの側鎖にトリフェニルアミンを導入したポリマーを用いたり(第42回高分子討論会予稿集20J21(1993))した有機電界発光素子が報告されている。しかし、これら単独では正孔輸送材料のイオン化ポテンシャルに起因するエネルギー障壁が存在するため、陽極からの正孔注入性或いは発光層への正孔注入性を満足するものではない。また、前者のスターバーストアミンの場合、溶解性が小さいために精製が難しく純度を上げることが困難であることや、後者のポリマーの場合、高い電流密度が得られず十分な輝度が得られてない等の問題も存在する。
【0008】
一方、これらの問題の解決を目指し、単層構造の有機電界発光素子についても研究・開発が進められ、ポリ(p−フェニレンビニレン)等の導電性高分子を用いたり(Nature,Vol.357,477(1992)等)、正孔輸送性ポリビニルカルバゾール中に電子輸送材料と螢光色素とを混入した(第38回応用物理学関係連合講演会予稿集31p−G−12(1991))素子が提案されているが、未だ輝度、発光効率等が有機低分子化合物を用いた積層型有機電界発素子には及ばない。
【0009】
また、作製法においては、製造の簡略化、加工性、大面積化、コスト等の観点から塗布方式が望ましく、キャステイング法によっても素子が得られることが報告されている(第50回応用物理学会学術講演予稿集,29p−ZP−5(1989)、第51回応用物理学会学術講演予稿集,28a−PB−7(1990))。しかし、電荷輸送材料の溶剤や樹脂に対する溶解性、相溶性が悪いため、結晶化しやすく製造上あるいは特性上に欠陥があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来の技術における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。すなわち、本発明は、発光時の熱安定性、溶剤や樹脂に対する溶解性及び相溶性に優れた電荷輸送性ポリエーテルを用い、発光強度が大きく、発光効率が高く、素子寿命が長く、且つ製造が容易な有機電界発光素子を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため電荷輸送ポリマーに関し鋭意検討した結果、下記一般式(I−1)、(I−2)、(I’−1)、および(I’−2)で示される構造より選択された少なくとも1種を部分構造として含む電荷輸送性ポリエーテルが、有機電界発光素子として好適な電荷注入特性、電荷移動度、薄膜形成能、発光特性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の有機電界発光素子は、少なくとも一方が透明または半透明である陽極および陰極よりなる一対の電極間に挾持された一つまたは複数の有機化合物層より構成されるものであって、該有機化合物層の少なくとも一層が、下記一般式(I−1)、(I−2)、(I’−1)、および(I’−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエーテルを、少なくとも1種以上含有することを特徴とする。
【化4】
〔一般式(I−1)および(I−2)中、Arは、置換もしくは未置換の1価の縮合芳香族炭化水素を表し、Xは、置換もしくは未置換の2価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の2価の縮合芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の2価の多核複素族炭化水素、置換もしくは未置換の2価の複素環含有多核芳香族炭化水素または置換もしくは未置換の2価の複素環含有縮合芳香族炭化水素を表し、Tは、炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素基または炭素数2〜10の2価の分枝鎖状炭化水素基を表し、mは0〜3の整数を表し、kは0または1を表す。〕
上記一般式(I−1)および(I−2)におけるXは、アントラセン構造又はテトラセン構造を有する2価の芳香族基であることが好ましい。
【化5】
〔一般式(I’−1)および(I’−2)中、Arは、置換もしくは未置換の1価のベンゼン環、置換もしくは未置換の1価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の1価の縮合芳香族炭化水素または置換もしくは未置換の1価の複素環を表し、Xは、アントラセン構造又はテトラセン構造を有する2価の芳香族基を表し、Tは、炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素基または炭素数2〜10の2価の分枝鎖状炭化水素基を表し、mは0〜3の整数を表し、kは0または1を表す。〕
【0012】
この電荷輸送性ポリエーテルとしては、下記一般式(II)で示されるポリエーテルを挙げることができる。
【化6】
〔一般式(II)中、Aは上記一般式(I−1)、(I−2)、(I’−1)、および(I’−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を表し、Rは水素原子、アルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、または置換もしくは未置換のアラルキル基を表し、pは3〜5,000の整数を表す。〕
【0013】
本発明の有機電界発光素子を構成する有機化合物層は、電荷輸送能を持つ発光層のみから構成される単層構成、あるいは、少なくとも発光層又は電荷輸送能を持つ発光層を含む相互に異なる機能を有する複数の層から構成される機能分離型の複数層構成からなる。この機能分離型の複数層構成としては、例えば、[1]発光層及び電子輸送層(以下、「層構成(1)」と略す場合がある)、[2]正孔輸送層、発光層及び電子輸送層(以下、「層構成(2)」と略す場合がある)、[3]正孔輸送層及び電荷輸送能を持つ発光層(以下、「層構成(3)」と略す場合がある)が挙げられる。なお、本発明においては、前記正孔輸送層は、正孔注入層、あるいは、正孔注入層および正孔輸送層が積層されてなる層として機能するものであってもよく、前記電子輸送層は、電子注入層、あるいは、電子注入層および電子輸送層が積層されてなる層として機能するものであってもよい。
前記有機化合物層が電荷輸送能を持つ発光層のみから構成される場合には、該電荷輸送能を持つ発光層には前記一般式(I−1)、(I−2)、(I’−1)、および(I’−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエーテルが含有される。
【0014】
一方、前記有機化合物層が機能分離型の複数層から構成される場合には、層構成(1)においては、発光層及び電子輸送層の少なくとも一方に前記電荷輸送性ポリエーテルが含有され、層構成(2)においては、正孔輸送層及び電子輸送層の少なくとも一方に前記電荷輸送性ポリエーテルが含有され、層構成(3)においては、正孔輸送層及び電荷輸送能を持つ発光層の少なくとも一方に記電荷輸送性ポリエーテルが含有される。
また、前記電荷輸送能を持つ発光層には、前記電荷輸送性ポリエーテル以外の電荷輸送性化合物(正孔輸送材料、電子輸送材料)を更に含んでいてもよい。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の有機電界発光素子は、少なくとも一方が透明または半透明である陽極および陰極よりなる一対の電極間に挾持された一つまたは複数の有機化合物層より構成され、該有機化合物層の少なくとも一層が、下記一般式(I−1)、(I−2)、(I’−1)、および(I’−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエテールを1種以上含有する。
この電荷輸送性ポリエーテルは、発光時の熱安定性、溶剤や樹脂に対する溶解性及び相溶解性に優れており、さらに、本発明の有機電界発光素子は、前記電荷輸送性ポリエーテルを含有してなる有機化学物層を含んでなるため、発光強度が大きく、発光効率が高く、素子寿命が長く、且つ製造が容易である。
【0016】
【化7】
〔一般式(I−1)および(I−2)中、Arは、置換もしくは未置換の1価の縮合芳香族炭化水素を表し、Xは、置換もしくは未置換の2価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の2価の縮合芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の2価の多核複素族炭化水素、置換もしくは未置換の2価の複素環含有多核芳香族炭化水素または置換もしくは未置換の2価の複素環含有縮合芳香族炭化水素を表し、Tは、炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素基または炭素数2〜10の2価の分枝鎖状炭化水素基を表し、mは0〜3の整数を表し、kは0または1を表す。〕
【化8】
〔一般式(I’−1)および(I’−2)中、Arは、置換もしくは未置換の1価のベンゼン環、置換もしくは未置換の1価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の1価の縮合芳香族炭化水素または置換もしくは未置換の1価の複素環を表し、Xは、アントラセン構造又はテトラセン構造を有する2価の芳香族基を表し、Tは、炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素基または炭素数2〜10の2価の分枝鎖状炭化水素基を表し、mは0〜3の整数を表し、kは0または1を表す。〕
【0017】
一般式(I−1)および(I−2)中において、Arを表す構造として選択される縮合芳香族炭化水素、並びに、一般式(I’−1)および(I’−2)中において、Arを表す構造として選択される多核芳香族炭化水素及び縮合芳香族炭化水素を構成する芳香環数は特に限定されないが、芳香環数が1〜3のものが好ましく、縮合芳香族炭化水素においては、全縮合芳香族炭化水素が好ましい。なお、当該多核芳香族炭化水素および縮合芳香族炭化水素とは、本発明においては、具体的には以下に定義される多環式芳香族のことを意味する。
即ち、「多核芳香族炭化水素」とは、炭素と水素とから構成される芳香環が2個以上存在し、これらの芳香環同士が、炭素−炭素の単結合によって結合している炭化水素化合物を表す。具体例としては、ビフェニル、ターフェニル等が挙げられる。
【0018】
また、「縮合芳香族炭化水素」とは、炭素と水素とから構成される芳香環が2個以上存在し、これら芳香環同士が、1対の隣接して結合する炭素原子を共有している炭化水素化合物を表す。具体例としては、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン等が挙げられる。
なお、全ての芳香環が縮合環構造により連続的に隣接してなる縮合芳香族炭化水素を「全縮合芳香族炭化水素」という。一方、これ以外の縮合芳香族炭化水素を「部分縮合芳香族炭化水素」という。
【0019】
また、Arを表す構造のひとつとして選択される複素環は、その環骨格を構成する原子数(Nr)は、Nr=5及び/又は6が好ましく用いられる。また環骨格を構成するC以外の原子(異種原子)の種類及び数は特に限定されないが、例えば、S、N、O等が好ましく用いられ、前記環骨格中には2種類以上及び/又は2個以上の異種原子が含まれていてもよい。特に5員環構造を持つ複素環として、チオフェン、チオフェン及びフランの3位及び4位の炭素を窒素で置き換えた複素環、ピロールの3位及び4位の炭素を窒素で置き換えた複素環が好ましく用いられ、6員環構造を持つ複素環として、ピリジンが好ましく用いられる。
【0020】
Arを表す構造として選択されるベンゼン環、多核芳香族炭化水素、縮合芳香族炭化水素または複素環の置換基としては、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、置換アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。アルキル基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。アルコキシル基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられる。アリール基としては、炭素数6〜20のものが好ましく、例えば、フェニル基、トルイル基等が挙げられる、アラルキル基としては、炭素数7〜20のものが好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。置換アミノ基の置換基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられ、具体例は前述の通りである。
【0021】
また、Xは、置換もしくは未置換の2価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の2価の縮合芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の2価の多核複素族炭化水素、置換もしくは未置換の2価の複素環含有多核芳香族炭化水素または置換もしくは未置換の2価の複素環含有縮合芳香族炭化水素を表す。
前記多核芳香族炭化水素及び前記縮合芳香族炭化水素を構成する芳香環数は、芳香環数が2〜6のものが好ましい。また前記縮合芳香族炭化水素は、その芳香環数が5ないし6であるときには、部分縮合芳香族炭化水素が好ましく用いられる。
前記多核複素族炭化水素を構成する複素環数は特に限定されないが、複素環数が2〜13が好ましく、さらに、複素環が直鎖状に結合しているものがより好ましい。また各々の複素環の構造は、既述したArを表す構造のひとつとして選択される複素環と同様であることが好ましい。
【0022】
複素環含有多核芳香族炭化水素は、この芳香族化合物を構成する個々の複素環数及び芳香環数は特に限定されるものではないが、複素環数が1〜11、芳香環数が2であり、さらに、複素環が直鎖状に結合した2価の多核複素族炭化水素の両末端に芳香環が結合しているものが好ましい。また各々の複素環の構造は既述したArを表す構造のひとつとして選択される複素環と同様であることが好ましい。
複素環含有縮合芳香族炭化水素は、この芳香族化合物を構成する個々の、複素環と、芳香環との数は特に限定されるものではないが、複素環数が1〜5、芳香環数が1〜5であり、さらに、少なくとも1環以上の複素環と1環以上の芳香環が縮合環構造を形成しているものが好ましい。また各々の複素環の構造は既述したArを表す構造のひとつとして選択される複素環と同様であることが好ましい。
【0023】
なお、本発明において、多核複素族炭化水素、複素環含有多核芳香族炭化水素及び複素環含有縮合芳香族炭化水素とは、以下に定義される構造を有する有機化合物のことをいう。
「多核複素族炭化水素」とは、多核芳香族炭化水素を構成する芳香環を、全て複素環で置換した構造を有する複素環数が2以上の複素環化合物を意味する。「複素環含有多核芳香族炭化水素」とは、多核芳香族炭化水素を構成する芳香環のうち、一部の芳香環を複素環に置換した芳香族化合物を意味する。また、「複素環含有縮合芳香族炭化水素」とは、縮合芳香族炭化水素を構成する芳香環のうち、一部の芳香環を複素環に置換した芳香族化合物を意味する。
【0024】
Xを表す構造として選択される多核芳香族炭化水素、縮合芳香族炭化水素、多核複素族炭化水素、複素環含有多核芳香族炭化水素または複素環含有縮合芳香族炭化水素の置換基としては、前述のArの置換基と同様のものを用いることができる。
上記したXの具体例としては、例えば、下記の式(1)〜(8)から選択された基が挙げられる。
【0025】
【化9】
式(5)〜(8)中、R1は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシル基、置換もしくは未置換のフェニル基、または置換もしくは未置換のアラルキル基、またはハロゲン原子を表し、aは0または1を意味する。なお、式(6)及び(7)中に示されたVは下記の式(9)〜(16)から選択された基を表す。
【0026】
【化10】
なお、式(13)〜(16)において、bは0〜10の整数を意味する。
【0027】
一般式(I−1)、(I−2)、(I’−1)、および(I’−2)中、Tは、炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素基または炭素数2〜10の2価の分枝鎖状炭化水素基を示し、好ましくは炭素数が2〜6の2価の直鎖状炭化水素基および炭素数3〜7の2価の分枝鎖状炭化水素基より選択される。具体的な構造を以下に示す。
【0028】
【化11】
【0029】
一般式(I−1)、(I−2)、(I’−1)、および(I’−2)中、mは0〜3の整数を表し、kは0または1を表す。
【0030】
次に、表1〜表17中の構造16〜21、36〜37、50〜53、57〜67、80〜88、100〜101,103,および109〜110に一般式(I−1)で示される構造の具体例を示し、表18〜表28中の125〜130、139〜145、153、165〜169、175〜176、178、および183〜184に一般式(I−2)で示される構造の具体例を示し、表1〜表17中の構造22〜39、および68〜93に一般式(I’−1)で示される構造の具体例を示し、表18〜表28中の131〜147、および156〜172に一般式(I’−2)で示される構造の具体例を示す。なお、表1〜表28に示す各々の構造番号において、mの値は、記載されていないが、これについては後述する。また、表1〜表28において「MeO−」で示される置換基は、メトキシ基を意味する。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
【表4】
【0035】
【表5】
【0036】
【表6】
【0037】
【表7】
【0038】
【表8】
【0039】
【表9】
【0040】
【表10】
【0041】
【表11】
【0042】
【表12】
【0043】
【表13】
【0044】
【表14】
【0045】
【表15】
【0046】
【表16】
【0047】
【表17】
【0048】
【表18】
【0049】
【表19】
【0050】
【表20】
【0051】
【表21】
【0052】
【表22】
【0053】
【表23】
【0054】
【表24】
【0055】
【表25】
【0056】
【表26】
【0057】
【表27】
【0058】
【表28】
【0059】
一般式(I−1)、(I−2)、(I’−1)、および(I’−2)で示される構造から選択された少なくとも一種を部分構造として繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエーテルとしては、下記一般式(II)で示されるものが好適に使用される。
【0060】
【化12】
【0061】
一般式(II)中、Aは上記一般式(I−1)、(I−2)、(I’−1)、および(I’−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を表し、一つのポリマー中に2種類以上の構造Aが含まれてもよい。
【0062】
一般式(II)中、Rは水素原子、アルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、または置換もしくは未置換のアラルキル基を表す。アルキル基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。アリール基としては、炭素数6〜20のものが好ましく、例えば、フェニル基、トルイル基等が挙げられる、アラルキル基としては、炭素数7〜20のものが好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。また、置換アリール基、置換アラルキル基の置換基としては、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、置換アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。pは3〜5,000の整数を表すが、好ましくは5〜100の範囲である。
【0063】
本発明で用いられる一般式(I−1)、(I−2)、(I’−1)、および(I’−2)で示される構造から選択された少なくとも一種を部分構造として繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエーテルの重量平均分子量Mwは、5000〜300000の範囲にあるものが好ましい。
【0064】
以下、一般式(II)で示される上記の電荷輸送性ポリエーテルの具体例を表29及び表30の化合物(3)〜(10)、(17)〜(24)、(33)〜(36)、(39)〜(43)、および(49)〜(60)に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。尚、表29及び表30において、「構造」の欄に記載された番号は、表1〜表28に示した前記一般式(I−1)、(I−2)、(I’−1)、および(I’−2)で示される構造の具体例である構造番号に対応している。また、mは、一般式(I−1)、(I−2)、(I’−1)、および(I’−2)におけるmを意味し、pは、一般式(II)におけるpを意味する。以下、各番号を付した具体例(化合物)、例えば15の番号を付した具体例は例示化合物(15)という。
【0065】
【表29】
【0066】
【表30】
【0067】
本発明の一般式(I−1)、(I−2)、(I’−1)、および(I’−2)で示される構造から選択された少なくとも一種を部分構造として繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエーテルは、下記一般式(III−1)、(III−2)、(III’−1)、および(III’−2)で示されるTに結合したヒドロキシル基を有する電荷輸送性化合物を分子間で縮合させることによって、容易に合成することができる。ここで、下記一般式(III−1)、(III−2)、(III’−1)、および(III’−2)におけるAr、X、T、m、kは、前記一般式(I−1)、(I−2)、(I’−1)、および(I’−2)におけるAr、X、T、m、kと同義である。
【0068】
【化13】
【化14】
【0069】
前記電荷輸送性ポリエーテルの合成方法は特に限定されるのではないが、例えば、以下の第1〜第3の合成方法を利用することができる。
第1の合成方法では、上記一般式(III−1)、(III−2)、(III’−1)、および(III’−2)から選択された少なくとも1つで示される2個のヒドロキシルキル基を有する電荷輸送性化合物(以下、「電荷輸送性モノマー(III)」と略す)を加熱脱水縮合することにより、上記電荷輸送性ポリエーテルを合成する。なお、本発明において、単に、「電荷輸送性モノマー」と記載した場合は、別途規定の無い限り「電荷輸送性モノマー(III)」以外の、重合可能な全ての電荷輸送性材料のことをいう。
【0070】
この場合、無溶媒で電荷輸送性モノマー(III)を加熱溶融し、水の脱離による重合反応を促進させるため減圧下で反応させることが望ましい。また、溶媒を使用する場合は、水の除去のため、水と共沸する溶媒、例えば、トリクロロエタン、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、1−クロロナフタレン等が有効であり、電荷輸送性モノマー(III)1当量に対して、1〜100当量、好ましくは2〜50当量の範囲で用いられる。反応温度は任意に設定できるが、重合中に生成する水を除去するために、溶媒の沸点で反応させるのが好ましい。重合が進まない場合には、反応系から溶媒を除去し、粘ちょう状態で加熱撹拌してもよい。
【0071】
第2の合成方法では、酸触媒として、p−トルエンスルホン酸、塩酸、硫酸、トリフルオロ酢酸等のプロトン酸、あるいは塩化亜鉛等のルイス酸を用いて、電荷輸送性モノマーを脱水縮合することにより、上記電荷輸送性ポリエーテルを合成する。
【0072】
この場合、電荷輸送性モノマー(III)1当量に対して、酸触媒を1〜1/10000〜1/10当量、好ましくは1/1000〜1/50当量の範囲で用いる。重合中に生成する水を除去するために、水と共沸可能な溶剤を用いるのが好ましい。溶剤としては、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、1−クロロナフタレン等が有効であり、電荷輸送性モノマー(III)1当量に対して、1〜100当量、好ましくは2〜50当量の範囲で用いられる。反応温度は任意に設定できるが、重合中に生成する水を除去するために、溶剤の沸点で反応させることが好ましい。
【0073】
第3の合成方法では、イソシアン化シクロヘキシル等のイソシアン化アルキル、シアンン化シクロヘキシル等のイソシアン化アルキル、シアン酸p−トリルや2,2−ビス(4−シアナートフェニル)プロパン等のシアン酸エステル、ジクロロヘキシルカルボジイミド(DCC)、トリクロロアセトニトリル等の縮合剤を用いて、電荷輸送性モノマー(III)を脱水縮合することにより、上記電荷輸送性ポリエーテルを合成する。
【0074】
この場合、縮合剤は、電荷輸送性モノマー(III)1当量に対して、1/2〜10当量、好ましくは1〜3当量の範囲で用いられる。溶剤として、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、1−クロロナフタレン等が有効であり、電荷輸送性モノマー(III)1当量に対して、1〜100当量、好ましくは2〜50当量の範囲で用いられる。反応温度は任意に設定できるが、室温から溶剤の沸点で反応させることが好ましい。
【0075】
第1〜第3の合成方法のうち、異性化や副反応が起こりにくいことから、第1または第3の合成方法が好ましい。特に、第3の合成方法が、その反応条件がより穏和なことからより好ましい。
【0076】
反応終了後、溶剤を用いなかった場合は溶解可能な溶剤に溶解させる。溶剤を用いた場合には、そのまま、メタノール、エタノール等のアルコール類や、アセトン等の電荷輸送性ポリエーテルが溶解しにくい貧溶剤中に滴下し、電荷輸送性ポリエーテルを析出、分離した後、水や有機溶剤で十分に洗浄し、乾燥させる。さらに必要であれば、適当な有機溶剤に溶解させ、貧溶剤中に滴下し、電荷輸送性ポリエーテルを析出させる再沈澱処理を繰り返してもよい。再沈澱処理の際には、メカニカルスターラー等で、効率よく撹拌しながら行うことが好ましい。再沈澱処理の際に電荷輸送性ポリエーテルを溶解させる溶剤は、電荷輸送性ポリエーテル1当量に対して、1〜100当量、好ましくは2〜50当量の範囲で用いられる。また、貧溶剤は電荷輸送性ポリエーテル1当量に対して、1〜1000当量、好ましくは10〜500当量の範囲で用いられる。さらに、上記反応において、電荷輸送性モノマー(III)と、1種以上、好ましくは2〜5種、さらに好ましくは2〜3種の電荷輸送性モノマーとを用いることにより、共重合ポリマーの合成も可能である。電荷輸送性モノマー(III)と電荷輸送性モノマーとを共重合することによって得られた共重合ポリマーの電気特性、成膜性、溶解性および蛍光特性を制御することができる。
【0077】
電荷輸送性ポリエーテルの重合度は、低すぎると成膜性に劣り、強固な膜が得られにくく、また、高すぎると溶剤への溶解度が低くなり、加工性が悪くなるため、5〜5000の範囲に設定され、好ましくは10〜3000、より好ましくは15〜1000の範囲である。
【0078】
一般式(II)で示される電荷輸送性ポリエーテルの末端基Rは、電荷輸送性モノマー(III)と同様にヒドロキシル基であってもよいが、溶解性、成膜性、モビリティー等の物性を制御する場合には、前記末端基Rを修飾しこの物性を制御することができる。例えば、末端のヒドロキシル基を、硫酸アルキル、ヨウ化アルキル等でアルキルエーテル化することができる。具体的な試薬としては、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル等から任意に選ぶことができ、末端のヒドロキシル基に対し1〜3当量、好ましくは1〜2当量の範囲で用いる。その際、塩基触媒を用いることができるが、塩基触媒として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、ナトリウム金属等から任意に選ぶことができ、末端のヒドロキシル基に対し3当量あるいはそれ以下の範囲が好ましく、より好ましくは1〜2当量の範囲で用いる。反応温度は、0℃から使用する溶剤の沸点で行うことができる。また、その際用いる溶剤として、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の不活性溶剤から選んだ単独溶剤、あるいは2〜3種の混合溶剤が使用できる。また、反応によっては、相間移動触媒としてテトラ−n−ブチルアンモニウムアイオダイド等の第4級アンモニウム塩を使用することもできる。また、末端のヒドロキシル基を酸ハロゲン化物を用いアシル化して、末端基Rをアシル基にすることもできる。酸ハロゲン化物は特に限定するものではないが、例えばアクリロイルクロリド、クロトノイルクロリド、メタクリロイルクロリド、n−ブチルクロリド、2−フロイルクロリド、ベンゾイルクロリド、シクロヘキサンカルボニルクロリド、エナンチルクロリド、フェニルアセチルクロリド、o−トルオイルクロリド、m−トルオイルクロリド、p−トルオイルクロリド等があげられ、末端のヒドロキシル基に対し1〜3当量、好ましくは1〜2当量の範囲で用いる。その際、塩基触媒を用いることができるが、塩基触媒としては、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン等から任意に選ぶことができ、酸クロリドに対し1〜3当量、好ましくは1〜2当量の範囲で用いる。その際用いる溶剤として、ベンゼン、トルエン、塩化メチルン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン等があげられる。反応は、0℃から溶剤の沸点で行うことができる。好ましくは、0℃から30℃の範囲で行う。さらに、無水酢酸等の酸無水物を用いてもアシル化することができる。溶剤を用いる場合は、具体的には、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン等の不活性溶剤を使用することができる。反応は、0℃から溶剤の沸点で行うことができる。好ましくは、40℃から溶剤の沸点で行えばよい。
【0079】
そのほか、モノイソシアネートを用い、末端にウレタン残基(−CONH−R′)を導入することができる。具体的なモノイソシアネートとしては、イソシアン酸ベンジルエステル、イソシアン酸n−ブチルエステル、イソシアン酸t−ブチルエステル、イソシアン酸シクロヘキシルエステル、イソシアン酸2,6−ジメチルエステル、イソシアン酸エチルエステル、イソシアン酸イソプロピルエステル、イソシアン酸2−メトキシフェニルエステル、イソシアン酸4−メトキシフェニルエステル、イソシアン酸n−オクタデシルエステル、イソシアン酸フェニルエステル、イソシアン酸I−プロピルエステル、イソシアン酸m−トリルエステル、イソシアン酸p−トリルエステル、イソシアン酸1−ナフチルエステル等から任意に選ぶことができ、末端のヒドロキシル基に対し1〜3当量、好ましくは1〜2当量の範囲で用いる。その際用いる溶剤として、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等をあげることができる。反応温度は、0℃から使用溶剤の沸点で行うことができる。反応が進みにくい場合は、ジラウリン酸ジブチルスズ(II)、オクチル酸スズ(II)、ナフテン酸鉛等の金属化合物、あるいはトリエチルアミン、トリメチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン等の3級アミンを触媒として添加することもできる。
【0080】
次に、本発明の有機電界発光素子の層構成について詳記する。
本発明の有機電界発光素子は、少なくとも一方が透明または半透明である陽極および陰極よりなる一対の電極と、それら電極間に挾持された発光層を含む一つまたは複数の有機化合物層により構成され、該有機化合物層の少なくとも1層に前記電荷輸送性ポリエーテルを含有してなる。
【0081】
本発明の有機電界発光素子においては、有機化合物層が単層構成の場合は、該有機化合物層は電荷輸送能を持つ発光層であり、該電荷輸送能を持つ発光層が前記電荷輸送性ポリエーテルを含有してなる。
一方、有機化合物層が複数層構成の場合(即ち、各層が異なる機能を有する機能分離型の場合)は、少なくとも一層が発光層あるいは電荷輸送能を持つ発光層からなる。この場合、該発光層あるいは該電荷輸送能を持つ発光層と、その他の層とからなる層構成は、発光層及び電子輸送層から構成される層構成(1)、正孔輸送層、発光層及び電子輸送層から構成される層構成(2)、正孔輸送層及び電荷輸送能を持つ発光層から構成される層構成(3)が挙げられ、これら層構成(1)〜(3)の発光層及び電荷輸送能を持つ発光層以外の層は、電荷輸送層としての機能を有する。
【0082】
なお、層構成(1)においては、発光層及び電子輸送層の少なくとも一方に前記電荷輸送性ポリエーテルが含有され、層構成(2)においては、正孔輸送層及び電子輸送層の少なくとも一方に前記電荷輸送性ポリエーテルが含有され、層構成(3)においては、正孔輸送層及び電荷輸送能を持つ発光層の少なくとも一方に記電荷輸送性ポリエーテルが含有される。
また、前記電荷輸送能を持つ発光層には、前記電荷輸送性ポリエーテル以外の電荷輸送性化合物(正孔輸送材料、電子輸送材料)を更に含んでいてもよい。詳しくは、後述する。
【0083】
以下、図面を参照しつつ、本発明の有機電界発光素子についてより詳細に説明する。但し、本発明は、以下の説明に限定されるわけではなく、本発明の有機電界発光素子を構成する一つまたは複数の有機化合物層中に、前記電荷輸送性ポリ−テルを含んでなるものであれば、いかなる構成を有するものであってもよい。
【0084】
図1〜図4は、本発明の有機電界発光素子の層構成を説明するための模式的断面図であって、図1、図2、図4の場合は、有機化合物層が複数の層から構成される場合の一例であり、各々の図は、それぞれ既述した層構成(1)、層構成(2)、層構成(3)に対応している。一方、図3の場合は、有機化合物層が1つの層からのみ構成される場合の例である。なお、図1〜図4において、同様の機能を有するものは同じ符号を付して説明する。
【0085】
図1に示す有機電界発光素子は、透明絶縁体基板1上に、透明電極2、発光層4、電子輸送層5及び背面電極7を順次積層してなる。図2に示す有機電界発光素子は、透明絶縁体基板1上に、透明電極2、正孔輸送層3、発光層4、電子輸送層5及び背面電極7を順次積層してなる。図3に示す有機電界発光素子は、透明絶縁体基板1上に、透明電極2、電荷輸送能を持つ発光層6及び背面電極7を順次積層してなる。図4に示す有機電界発光素子は、透明絶縁体基板1上に、透明電極2、正孔輸送層3、電荷輸送能を持つ発光層6、及び背面電極7を順次積層してなる。以下、各々を詳しく説明する。
【0086】
なお、図1、図2に示す有機電界発光素子は、発光材料を、真空蒸着や溶液または分散液を塗布・乾燥する方法により発光層4を形成する際に耐熱性や成膜性に優れた薄膜とならない場合、或いは、発光層4が明確な電子輸送性を示さない場合に、有機電界発光素子の耐熱性向上、或いは、発光効率の向上を図る目的で、発光層4と背面電極7との間に電子輸送層5を設けた層構成である。
【0087】
本発明における前記電荷輸送性ポリエーテルが含有してなる有機化合物層は、その構造によっては、図1及び図2に示される有機電界発光素子の層構成の場合、正孔輸送層3、電子輸送層5としていずれにも作用することができるし、また、図3及び図4に示される有機電界発光素子の層構成の場合、正孔輸送層3、キャリア輸送能を持つ発光層6としていずれも作用することができる。
【0088】
図1から図4に示される有機電界発光素子において、透明絶縁体基板1は、発光を取り出すため透明なものが好ましく、ガラス、プラスチックフィルム等が用いられる。なお、前記の「透明」とは、可視領域の光の透過率が10%以上であること意味し、この透過率は75%以上であることが好ましい。
また、透明電極2は、透明絶縁体基板1と同様に発光を取り出すため透明であって、かつ正孔の注入を行うため仕事関数の大きなものが良く、仕事関数が4eV以上のものが好ましい。具体例として、酸化スズインジウム(ITO)、酸化スズ(NESA)、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化インジウム亜鉛等の酸化膜、および、蒸着或いはスパッタにより成膜された金、白金、パラジウム等がの金属膜が用いられる。透明電極2のシート抵抗は、低いほど好ましく、数百Ω/□以下、具体的には100Ω/□以下が好ましい。また、透明絶縁体基板1同様に、可視領域の光の透過率が10%以上で、更に透過率が75%以上であることが好ましい。
【0089】
図2及び図4に示される有機電界発光素子において、正孔輸送層3は、目的に応じて機能(正孔輸送能)が付与された前記電荷輸送性ポリエーテルのみで形成されていてもよいが、正孔移動度を調節するために該電荷輸送性ポリエーテル以外の正孔輸送材料を、0.1重量%〜50重量%の範囲で混合分散して形成されてもよい。このような正孔輸送材料としては、テトラフェニレンジアミン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、カルバゾール誘導体、スチルベン誘導体、アリールヒドラゾン誘導体、ポルフィリン系化合物が挙げられるが、電荷輸送性ポリエーテルとの相溶性が良いことから、テトラフェニレンジアミン誘導体、トリフェニルアミン誘導体が好ましい。なお、正孔輸送層3は、前記電荷輸送性ポリエーテルを一切含まずに、これら正孔輸送材料のみで形成されてもよい。
【0090】
さらに、正孔輸送層3には、成膜性の向上、ピンホール防止等を目的として、適切な樹脂(ポリマー)、添加剤を加えても良い。具体的な樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリススチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレンブタジエン共重合体、塩化ビニルデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコン樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂、ポリシラン樹脂、ポリチオフェン、ポリピロール等の導電性樹脂等を用いることができる。また、添加剤としては、公知の酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等を用いることができる。
【0091】
図1及び図2に示される有機電界発光素子において、発光層4には、固体状態で高い蛍光量子収率を示す化合物が発光材料として用いられる。該発光材料が有機低分子の場合、真空蒸着法により、もしくは該有機低分子と樹脂とを含む溶液または分散液を塗布・乾燥することにより、良好な薄膜形成が可能であることが好ましい。前記溶液または分散液に含まれる樹脂としては、上記の正孔輸送層3の場合に例示したものが適用できる。また、前記発光材料が高分子からなる場合、それ自身を含む溶液または分散液を塗布・乾燥することにより良好な薄膜形成が可能であることが好ましい。
【0092】
前記発光材料が有機低分子の場合の好適な例としては、キレート型有機金属錯体、多核または縮合芳香族炭化水素化合物、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、スチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサチアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体等が、また、前記発光材料が高分子の場合の好適な例としては、ポリパラフェニレン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリアセチレン誘導体等が用いられる。
これら有機低分子及び高分子の好適な具体例として、下記に示す化合物(IV−1)〜化合物(IV−15)が用いられるが、これらに限られるものではない。なお、化合物(IV−13)〜化合物(IV−15)中、nおよびxは1以上の整数を示す。
【0093】
【化15】
【0094】
【化16】
【0095】
また、有機電界発光素子の耐久性向上或いは発光効率の向上を目的として、上記の発光材料中にゲスト材料として該発光材料と異なる色素化合物をドーピングしてもよい。真空蒸着によって発光層4を形成する場合、前記発光材料と前記色素材料とを、共蒸着することによりドーピングを行うことができ、溶液または分散液を塗布・乾燥することで発光層4を形成する場合、溶液または分散液中に色素化合物を混合することでドーピングを行う。発光層4中における色素化合物のドーピングの割合としては、0.001重量%〜40重量%の範囲が好ましく、0.001重量%〜10重量%の範囲がより好ましい。このようなドーピングに用いられる色素化合物としては、発光材料との相容性が良く、かつ発光層4の良好な薄膜形成を妨げない有機化合物が用いられ、好適にはDCM誘導体、キナクリドン誘導体、ルブレン誘導体、ポルフィリン等が用いられる。好適な具体例として、下記の化合物(V−1)〜(V−4)があげられるが、これらに限られるものではない。
【0096】
【化17】
【0097】
図1及び図2に示される有機電界発光素子において、電子輸送層5は、目的に応じて機能(電子輸送能)が付与された前記電荷輸送ポリエーテル単独で形成されてもよいが、発光効率の向上、電気特性をさらに改善する等の目的で、電子移動度を調整するために、電荷輸送性ポリエーテル以外の電子輸送材料を0.1重量%から50重量%の範囲で混合分散して形成されてもよい。このような電子輸送材料として、オキサジアゾール誘導体、ニトロ置換フルオレノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体等が挙げられる。好適な具体例として、下記の化合物(VI−1)〜(VI−3)があげられるが、これらに限られるものではない。なお、正孔輸送層3を形成する場合と同様に適切な樹脂、添加剤を加えて良い。用いる樹脂としては、正孔輸送層3を形成する場合に例示したものが適用できる。
【0098】
【化18】
【0099】
図3及び図4における有機電界発光素子において、電荷輸送能を持つ発光層6は目的に応じて機能(正孔輸送能、或いは電子輸送能)が付与された前記電荷輸送性ポリエーテルに対して発光材料を50重量%以下の割合で混合させた有機化合物層であり、この発光材料としては化合物(IV−1)ないし化合物(IV−12)が好適に用いられる。また、有機電界発光素子に注入される正孔と電子とのバランスを調節するために、電荷輸送能を持つ発光層6に対して電子輸送材料を0.1重量%〜50重量%の割合で配合させてもよい。このような電子輸送材料としては、前記電荷輸送性ポリエーテルと強い電子相互作用を示さない有機化合物が用いられることが好ましく、好適には下記の化合物(VII)が用いられるがこれに限られるものではない。同様に正孔移動度を調節するために電荷輸送性ポリエーテル以外の正孔輸送材料、好ましくはテトラフェニレンジアミン誘導体を適量同時に分散させて用いてもよい。また、正孔輸送層3を形成する場合と同様に適切な樹脂、添加剤を加えても良い。用いる樹脂としては、正孔輸送層3を成型する場合に例示したものが適用できる。また、前記発光材料と異なる色素化合物をドーピングしてもよい。
【0100】
【化19】
【0101】
図1から図4に示される有機電界発光素子において、背面電極7には、真空蒸着による薄膜の形成が可能で、電子注入を行うため仕事関数の小さな金属、金属酸化物、金属フッ化物等が使用される。該金属としてはマグネシウム、アルミニウム、銀、インジウム、リチウム、カルシウムおよびこれらの合金が挙げられる。前記金属酸化物としては、酸化リチウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウムが挙げられる。また、前記金属フッ化物としては、フッ化リチウム、フッ化マグネシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウムが挙げられる。また、水分や酸素による有機電界発光素子の劣化を防ぐために、背面電極7表面には保護層(図示せず)を設けてもよい。この保護層の具体的な材料としては、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al等の金属、MgO、SIO2、TIO2等の金属酸化物、ポリエチレン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂が挙げられる、前記保護層の形成には、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマ重合法、CVD法、コーテング法が適用できる。
【0102】
これら図1から図4に示される有機電界発光素子は以下のように形成される。まず、透明絶縁体基板1の片面に透明電極2が形成され、さらに透明電極2表面にこれら有機電界発光素子の層構成に応じて、正孔輸送層3、発光層4、電子輸送層5及び/又は電荷輸送能を持つ発光層6が順次形成される。最後に、電子輸送層5又は電荷輸送能を持つ発光層6表面に背面電極7が形成されることにより、本発明の有機電界発光素子が完成する。
なお、正孔輸送層3、発光層4、電子輸送層5及び/又は電荷輸送能を持つ発光層6は、これら各層を構成する材料を、真空蒸着法、及び/又は、適切な有機溶媒に溶解或いは分散して得られた塗布液を用いてスピンコーティング法、キャスト法、ディップ法等により成膜することにより形成される。また、背面電極7は真空蒸着法、スパッタリング法等により形成される。
【0103】
また、正孔輸送層3、発光層4、電子輸送層5及び電荷輸送能を持つ発光層6の膜厚は、各々10μm以下が好ましく、特に0.001μmから5μmの範囲であることがより好ましい。これらの層を構成する材料が2成分以上の混合物(例えば、電荷輸送ポリエーテル及び発光材料等)からなる場合、各材料の分散状態は、各材料が分子レベルで混合する分子分散状態であってもよく、また、主たる材料中に他の材料が微結晶などの微粒子として分散した微粒子分散状態でも構わない。このような分散状態の制御は、塗布液を用いた成膜法の場合において、分子分散状態とするためには、分散溶媒は上記各材料の分散性及び溶解性を考慮して選択する必要がある。一方、微粒子状に分散するためには、ボールミル、サンドミル、ペイントシャイカー、アトライター、ホモジナイザー、超音波法等が利用できる。
【0104】
【実施例】
以下、本発明を実施例を挙げてさらに説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
【0105】
(参考例1)
透明絶縁体基板1としてガラス基板(長さ:50mm、幅:60mm、厚み:0.7mmのソーダガラス)を用い、このガラス基板の片面に、膜厚0.15μmのITO膜をスパッタ法により形成した。次に、このITO膜を短冊状のパターンを有するフォトマスクを用いてフォトリソグラフィによりパターニングし、さらにエッチング処理することにより、前記ガラス基板の片面に透明電極2として短冊状のITO電極(幅:2mm、ピッチ:14mm)が形成されたITO電極付きガラス基板を得た。次に、このITO電極付きガラス基板を、中性洗剤、純水、アセトン(電子工業用、関東化学製)およびイソプロパノール(電子工業用、関東化学製)の順で、超音波を加えながら各々10分間づつ浸漬洗浄した後、スピンコーターで乾燥させた。
【0106】
洗浄・乾燥後のITO電極付きガラス基板のITO電極が形成された面に、正孔輸送層3として、孔径0.1μmのPTFEフィルターで濾過された電荷輸送性ポリエーテル〔例示化合物(12)〕を5重量%含むジクロロエタン溶液を、ディップ法により塗布し、厚さ0.050μmの薄膜を形成した。このようにして形成された正孔輸送層3表面に、発光材料として化合物(IV−1)を真空蒸着して、厚さ0.065μmの電荷輸送能を持つ発光層6を形成した。次に、電荷輸送能を持つ発光層6表面に、短冊状の穴が設けられた金属製のマスク(幅2mm、ピッチ10mm)を短冊状に形成されたITO電極と直交するように設置した。最後に、このマスクを設置した面を、Mg−Ag合金を共蒸着により真空蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の背面電極7を発光層4表面に形成し、参考例1の有機電界発光素子を得た。得られた有機電界発光素子は、図4に示す有機電界発光素子と同じ層構成を有するものであり、発光部の有効面積は0.04cm2であった。
【0107】
(参考例2)
参考例1で用いたITO電極付きガラス基板を、参考例1と同様に洗浄・乾燥した。
参考例1に用いた電荷輸送性ポリエーテル〔例示化合物(12)〕1重量部、正孔輸送材料としてポリ(N−ビニルカルバゾール)4重量部及び発光材料として化合物(IV−1)1重量部からなる成分を10重量%含むジクロロエタン溶液を調製し、これを孔径0.1μmのPTFEフィルターで濾過することにより、塗布溶液Aを得た。次に、前記ITO電極付きガラス基板のITO電極が形成された面に、塗布溶液Aを用いて、スピンコーター法により膜厚約0.15μmの電荷輸送能を持つ発光層6を形成した。充分乾燥させた後の電荷輸送能を持つ発光層6表面に、参考例1と同様に金属製マスクを用いて、Mg−Ag合金を共蒸着により真空蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の背面電極7を形成し、参考例2の有機電界発光素子を得た。この有機電界発光素子は、図3に示す有機電界発光素子と同じ層構成を有するものであり、発光部の有効面積は0.04cm2であった。
【0108】
(実施例1)
参考例1で用いたITO電極付きガラス基板を、参考例1と同様に洗浄・乾燥した。
洗浄・乾燥後のITO電極付きガラス基板のITO電極が形成された面に、正孔輸送層3として、孔径0.1μmのPTFEフィルターで濾過された電荷輸送性ポリエーテル〔例示化合物(5)〕を5重量%含むジクロロエタン溶液を、ディップ法により塗布し、厚さ0.050μmの薄膜を形成した。
このようにして形成された正孔輸送層3表面に、発光材料として化合物(IV−1)を真空蒸着して、厚さ0.065μmの発光層4を形成し、さらにその表面に、化合物(IV−1)を真空蒸着法により厚さ0.030μmの電子輸送層5を形成した。次に、電荷輸送層5表面に参考例1と同様に金属製のマスクを用い、Mg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の背面電極7を電子輸送層5表面に形成し、実施例1の有機電界発光素子を得た。得られた有機電界発光素子は、図2に示す有機電界発光素子と同じ層構成を有するものであり、発光部の有効面積は0.04cm2であった。
【0109】
(参考例3)
正孔輸送層3を形成する電荷輸送性ポリエーテルとして、参考例1で用いた例示化合物(12)の代わりに例示化合物(16)を用いた以外は、参考例1と同様にして有機電界発光素子を作製し、図4に示す有機電界発光素子と同じ層構成を有する参考例3の有機電界発光素子を得た。発光部の有効面積は0.04cm2であった。
【0110】
(実施例2)
正孔輸送層3を形成する電荷輸送性ポリエーテルとして、参考例2で用いた例示化合物(12)の代わりに例示化合物(17)を用いた以外は、参考例2と同にして有機電界発光素子を作製し、図3に示す有機電界発光素子と同じ層構成を有する実施例2の有機電界発光素子を得た。発光部の有効面積は0.04cm2であった。
【0111】
(実施例3)
正孔輸送層3を形成する電荷輸送性ポリエーテルとして、参考例1で用いた例示化合物(12)の代わりに例示化合物(22)を用いた以外は、実施例1と同様にして有機電界発光素子を作製し、図2に示す有機電界発光素子と同じ層構成を有する実施例3の有機電界発光素子を得た。発光部の有効面積は0.04cm2であった。
【0112】
(実施例4)
正孔輸送層3を形成する電荷輸送性ポリエーテルとして、参考例1で用いた例示化合物(12)の代わりに例示化合物(23)を用いた以外は、実施例1と同様にして有機電界発光素子を作製し、図2に示す有機電界発光素子と同じ層構成を有する実施例4の有機電界発光素子を得た。発光部の有効面積は0.04cm2であった。
【0113】
(参考例4)
参考例1で用いたITO電極付きガラス基板を、参考例1と同様に洗浄・乾燥した。
洗浄・乾燥後のITO電極付きガラス基板のITO電極が形成された面に、正孔輸送層3として、孔径0.1μmのPTFEフィルターで濾過された電荷輸送性ポリエーテル〔例示化合物(12)〕を1.5重量%含むジクロロエタン溶液を、ディップ法により塗布し、厚さ0.10μmの薄膜を形成した。このようにして形成された正孔輸送層3表面に、発光材料として化合物(IV−1)を蒸着して、厚さ0.050μmの発光層4を形成した。次に、発光層4表面に、孔径0.1μmのPTFEフィルターで濾過された電荷輸送性ポリエーテル〔例示化合物(28)〕を3重量%含むトルエン溶液をスピンコーター法により塗布し、厚さ0.05μmの電子輸送層5を形成した。充分乾燥させた後の電子輸送層5表面に、参考例1と同様に金属製マスクを用いて、Mg−Ag合金を共蒸着により真空蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の背面電極7を形成し、参考例4の有機電界発光素子を得た。この有機電界発光素子は、図2に示す有機電界発光素子と同じ層構成を有するものであり、発光部の有効面積は0.04cm2であった。
【0114】
(比較例1)
正孔輸送層3を形成する電荷輸送性ポリエーテルとして、参考例1で用いた例示化合物(12)の代わりに下記構造式(VIII)で示される化合物を用いた以外は、参考例1と同様に有機電界発光素子を作製し、図4に示す有機電界発光素子と同じ層構成を有する比較例1の有機電界発光素子を得た。発光部の有効面積は0.04cm2であった。
【化20】
【0115】
(比較例2)
電荷輸送性ポリマーとしてポリビニルカルバゾール(PVK)2重量部、発光材料として化合物(V−1)0.1重量部及び電子輸送材料として化合物(VI−1)1重量部からなる成分を10重量%含むジクロロエタン溶液を調製し、これを0.1μmのPTFEフィルターで濾過することにより塗布溶液Bを得た。 次に、前記ITO電極付きガラス基板のITO電極が形成された面に、塗布溶液Bをディップ法により塗布して膜厚0.15μmの正孔輸送層3を形成した。十分乾燥させた後の正孔輸送層3表面に、参考例1と同様に金属製マスクを用いて、Mg−Ag合金を共蒸着により真空蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の背面電極7を形成し、比較例2の有機電界発光素子を得た。発光部の有効面積は0.04cm2であった。
【0116】
(評価)
以上のように作製した実施例、参考例、及び比較例の有機電界発光素子を、真空中(133.3×10-3Pa)にて、ITO電極側をプラス、Mg−Ag背面電極側をマイナスとして直流電圧を印加して発光させ、このときの最高輝度、および発光色を評価した。それらの結果を表31に示す。また、乾燥窒素中で有機電界素子の素子寿命を評価した。この素子寿命(hour)は、初期輝度が50cd/m2となるように電流値を設定し、定電流駆動により輝度が初期値から半減するまでの時間とした。この時の駆動電流密度を素子寿命と共に表31に示す
【0117】
一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し構造単位からなる電荷輸送性ポリエーテルは発光時の熱安定性等に優れ、これを用いた有機電界発光素子は、表31の結果から、発光強度が大きく、発光効率が高く(駆動電流密度が小さく)、素子寿命が長いことがわかる。
また、前記電荷輸送性ポリエーテルは、溶剤や樹脂に対する溶解性及び相溶性に優れるため、スピンコーティング法、ディップ法等の塗布方式を用いて本発明の有機電界発光素子を製造することができる。このため、製造の簡略化や加工性、大面積化、コスト等の点で優れている。
【0118】
【表31】
【0119】
【発明の効果】
以上、本発明によれば、発光時の熱安定性、溶剤や樹脂に対する溶解性及び相溶性に優れた電荷輸送ポリマーを用い、発光強度が大きく、発光効率が高く、素子寿命が長く且つ製造が容易な有機電界発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の有機電界発光素子の層構成の一例を示す概略構成図である。
【図2】 本発明の有機電界発光素子の層構成の他の一例を示す概略構成図である。
【図3】 本発明の有機電界発光素子の層構成の他の一例を示す概略構成図である。
【図4】 本発明の有機電界発光素子の層構成の他の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
1 透明絶縁体基板
2 透明電極
3 正孔輸送層
4 発光層
5 電子輸送層
6 電荷輸送能を持つ発光層
7 背面電極
Claims (9)
- 少なくとも一方が透明または半透明である陽極および陰極よりなる一対の電極間に挾持された一つまたは複数の有機化合物層より構成される電界発光素子において、
該有機化合物層の少なくとも一層が、下記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエーテルを1種以上含有することを特徴とする有機電界発光素子。
- 上記一般式(I−1)および(I−2)における前記Xは、アントラセン構造又はテトラセン構造を有する2価の芳香族基であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
- 少なくとも一方が透明または半透明である陽極および陰極よりなる一対の電極間に挾持された一つまたは複数の有機化合物層より構成される電界発光素子において、
該有機化合物層の少なくとも一層が、下記一般式(I’−1)および(I’−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエーテルを1種以上含有することを特徴とする有機電界発光素子。
- 前記有機化合物層が少なくとも発光層及び電子輸送層から構成され、該発光層及び該電子輸送層の少なくとも一方が、
前記一般式(I−1)、(I−2)、(I’−1)、および(I’−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエーテルを1種以上含有してなることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の有機電界発光素子。 - 前記有機化合物層が少なくとも正孔輸送層、発光層及び電子輸送層から構成され、該正孔輸送層及び該電子輸送層の少なくとも一方が、
前記一般式(I−1)、(I−2)、(I’−1)、および(I’−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエーテルを1種以上含有してなることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の有機電界発光素子。 - 前記有機化合物層が電荷輸送能を持つ発光層のみから構成され、該電荷輸送能を持つ発光層が、
前記一般式(I−1)、(I−2)、(I’−1)、および(I’−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエーテルを1種以上含有してなることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の有機電界発光素子。 - 前記有機化合物層が少なくとも正孔輸送層及び電荷輸送能を持つ発光層から構成され、該正孔輸送層及び該電荷輸送能を持つ発光層の少なくとも一方が、
前記一般式(I−1)、(I−2)、(I’−1)、および(I’−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエーテルを1種以上含有してなることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の有機電界発光素子。 - 前記電荷輸送能を持つ発光層が電荷輸送性化合物を含むことを特徴とする請求項6又は7に記載の有機電界発光素子。
- 前記一般式(I−1)、(I−2)、(I’−1)、および(I’−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエーテルが、下記一般式(II)で示される電荷輸送性ポリエーテルであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1に記載の有機電界発光素子。
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