JP2008016505A - 有機電界発光素子 - Google Patents

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Daisuke Okuda
大輔 奥田
Toru Ishii
徹 石井
Yohei Nishino
洋平 西野
Akira Imai
彰 今井
Tadayoshi Ozaki
忠義 尾崎
Hidekazu Hirose
英一 廣瀬
Mieko Seki
三枝子 関
Koji Horiba
幸治 堀場
Takeshi Agata
岳 阿形
Kiyokazu Mashita
清和 真下
Katsuhiro Sato
克洋 佐藤
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【課題】十分な輝度を有し、安定性及び耐久性に優れ、大面積化が可能で製造容易な上に、更に製造上の欠陥の発生が少なく且つ素子性能の経時的劣化が小さい有機電界発光素子を提供すること。
【解決手段】有機化合物層の少なくとも一層が特定のジアリールジアミンの構造を有する電荷輸送性ポリエーテルを含有し、電荷輸送性ポリエーテルを含有する有機化合物層の内で最も陽極に近い側に位置する有機化合物層の膜厚が20nm以上100nm以下であり、バッファ層が電荷注入材料としてPEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)の構造単位を有する電荷輸送性高分子を含み、陰極がアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属ハロゲン化物及びアルカリ土類金属ハロゲン化物から選択されるものを含有する第1の層と、アルカリ金属、及びアルカリ土類金属から選択されるものを含有する第2の層と、を有する有機電界発光素子。
【選択図】なし

Description

本発明は、有機電界発光素子に関する。
電界発光素子は、自発光性の全固体素子であり、視認性が高く衝撃にも強いため、広く応用が期待されている。現在は無機螢光体を用いたものが主流であるが、200V以上の交流電圧が駆動に必要なため製造コストが高く、また輝度が不十分等の問題点を有している。
これに対し、有機化合物を用いた電界発光素子研究は、最初アントラセン等の単結晶を用いて始まったが、単結晶の場合、膜厚が1mm程度と厚く100V以上の駆動電圧が必要であった。そのため蒸着法による薄膜化が試みられている(非特許文献1参照)。
しかしながら、この方法で得られた薄膜は、駆動電圧が30Vと未だ高く、また、膜中における電子・正孔キャリアの密度が低く、キャリアの再結合によるフォトンの生成確率が低いため十分な輝度が得られなかった。
ところが近年、正孔輸送性有機低分子化合物と電子輸送能を持つ螢光性有機低分子化合物の薄膜を真空蒸着法により順次積層した機能分離型の電界発光素子において、10V程度の低電圧で1000cd/m以上の高輝度が得られるものが報告されている(非特許文献2参照)。この研究報告以来、積層型の電界発光素子の研究・開発が活発に行われている。
これら積層型の素子は、電極から電荷輸送性の有機化合物からなる電荷輸送層を介して正孔と電子のキャリアバランスを保ちながら螢光性有機化合物からなる発光層に注入され、発光層中に閉じ込められた正孔と電子が再結合することにより高輝度の発光を実現している。
しかしながら、このタイプの電界発光素子では実用化に向けて下記に示す課題が示されている。
(1)数mA/cmという高い電流密度で駆動されるため、大量のジュール熱を発生する。このため、蒸着によってアモルファスガラス状態で成膜された正孔輸送性低分子化合物や螢光性有機低分子化合物が次第に結晶化して最後には融解し、輝度の低下や絶縁破壊が生じるという現象が多く見られ、その結果素子の寿命が低下するという問題を有している。
(2)低分子有機化合物を複数の蒸着工程において0.1μm以下の薄膜を形成していくため、ピンホールを生じ易く、十分な性能を得るためには厳しく管理された条件下で膜厚の制御を行うことが必要である。従って、生産性が低くかつ大面積化が困難である。
(1)に示す課題の解決のためには、正孔輸送材料として安定なアモルファスガラス状態が得られるスターバーストアミンを用いたり(例えば、非特許文献3等参照)、ポリフォスファゼンの側鎖にトリフェニルアミンを導入したポリマーを用いたり(非特許文献4参照)した電界発光素子が報告されている。
しかし、これら単独では正孔輸送材料のイオン化ポテンシャルに起因するエネルギー障壁が存在するため、陽極からの正孔注入性或いは発光層への正孔注入性を満足するものではない。また、前者のスターバーストアミンの場合、溶解性が小さいために精製が難しく純度を上げることが困難であることや、後者のポリマーの場合、高い電流密度が得られず十分な輝度が得られてない等の問題も存在する。
次に、(2)に示す課題の解決のためには、工程を短縮できる単層構造の有機電界発光素子について研究・開発が進められ、ポリ(p−フェニレンビニレン)等の導電性高分子を用いた素子(例えば、非特許文献5等参照)や、正孔輸送性ポリビニルカルバゾール中に電子輸送材料と螢光色素を混入した(非特許文献6参照)素子が提案されているが、未だ輝度、発光効率等が有機低分子化合物を用いた積層型有機電界発光素子には及ばない。
さらに、作製法という観点から、製造の簡略化、加工性、大面積化、コスト等の観点から湿式による塗布方式が検討されており、キャスティング法によっても素子が得られることが報告されている(非特許文献7,8参照)。しかし、電荷輸送材料の溶剤や樹脂に対する溶解性や相溶性が悪いため結晶化しやすく、製造上あるいは特性上に問題があった。
また、有機電界発光素子を用いた表示デバイスは、液晶等の他の表示デバイスと比較するとより小型化・薄型化に適しているため、内部電源で駆動する携帯型デバイスへの利用が期待されている。このような携帯型デバイスを実現する上では、より少ない消費電力で長時間駆動できることが重要である。
一方、有機電界発光素子の基本的な層構成は、ITOからなる透明電極(陽極)上に正孔輸送層(あるいは電荷輸送能を有する発光層)が設けられ、更に他の層が必要に応じて設けられた構成を有する。ここで、上述したような用途への対応や、より一層の省エネ化を図る方法としては、透明電極と正孔輸送層(あるいは電荷輸送能を有する発光層)との間にバッファ層を設け、正孔輸送層(あるいは電荷輸送能を有する発光層)への電荷(正孔)注入効率を向上させる方法が知られており、これにより駆動電圧を下げることができる。このバッファ層を構成する代表的な材料としては、例えば、PEDOT(ポリエチレン・ジオキシチオフェン)、スターバーストアミン、CuPc(銅フタロシアニン)等が知られている。
Thin Solid Films, Vol.94, 171 (1982) Applied Physics Letter, Vol.51,913(1987) 第40回応用物理学関係連合講演会予稿集30a−SZK−14(1993) 第42回高分子討論会予稿集20J21(1993) Nature, Vol.357, 477(1992) 第38回応用物理学関係連合講演会予稿集31p−g−12(1991) 第50回応用物理学会学術講演予稿集,29p−ZP−5(1989) 第51回応用物理学会学術講演予稿集,28a−PB−7(1990)
一方、バッファ層を設けた場合、確かに駆動電圧を下げることはできる。しかし、バッファ層を設けた有機電界発光素子の製造や、この素子を用いたデバイスを長期に渡って使用する場合のように実用化を前提とした場合、歩留まり低下の原因となる製造上の各種の欠陥や、素子性能の経時的劣化が発生し、実用に耐えない場合があることがわかった。
本発明は従来技術の上記問題点に鑑みてなされた発明であって、その目的は、十分な輝度を有し、安定性及び耐久性に優れ、大面積化が可能で製造容易な上に、更に製造上の欠陥の発生が少なく且つ素子性能の経時的劣化が小さい有機電界発光素子を提供することにある。
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、本発明は、
<1> 少なくとも一方が透明又は半透明である一対の陽極及び陰極と、前記陽極及び陰極の電極間に挾持された有機化合物層と、を有し、
前記有機化合物層が、発光層及びバッファ層を少なくとも含む2以上の層からなり、
前記有機化合物層の少なくとも一層が少なくとも1種の電荷輸送性ポリエーテルを含有し、前記電荷輸送性ポリエーテルが下記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位を有してなり、
前記電荷輸送性ポリエーテルを含有する有機化合物層の内で最も陽極に近い側に位置する有機化合物層の膜厚が、20nm以上100nm以下の範囲内であり、
前記バッファ層が、前記陽極と接して設けられ、且つ1種以上の電荷注入材料を含有し、前記電荷注入材料の少なくとも1種が下記一般式(II)で示される構造単位を有する電荷輸送性高分子であり、
前記陰極が、前記有機化合物層に接する第1の層であってアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属ハロゲン化物、及びアルカリ土類金属ハロゲン化物から選択される少なくとも1種を含有する第1の層と、前記第1の層に接する第2の層であってアルカリ金属、及びアルカリ土類金属から選択される少なくとも1種を含有する第2の層と、を有する、
ことを特徴とする有機電界発光素子。
Figure 2008016505
Figure 2008016505
(一般式(I−1)及び(I−2)中、Arは置換もしくは未置換の1価の芳香族基を表し、Xは置換もしくは未置換の2価の芳香族基を表し、k、m、lは0又は1を表し、Tは炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素又は炭素数2〜10の分枝状炭化水素を表す。また、一般式(II)中、nは100〜10000の範囲内の整数を表す。)
<2> 前記有機化合物層が、少なくとも前記バッファ層、正孔輸送層、前記発光層、及び電子輸送層を前記陽極側からこの順に積層して構成され、
前記正孔輸送層及び前記電子輸送層のうち少なくとも前記正孔輸送層が、前記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位を有する電荷輸送性ポリエーテルを少なくとも1種含有し、
前記陽極と前記正孔輸送層との間に、前記バッファ層を設けた、
ことを特徴とする<1>に記載の有機電界発光素子。
<3> 前記発光層が、前記電荷輸送性ポリエーテル以外の電荷輸送性材料を含むことを特徴とする<2>に記載の有機電界発光素子。
<4> 前記正孔輸送層の膜厚が、20nm以上100nm以下の範囲内であることを特徴とする<2>に記載の有機電界発光素子。
<5> 前記有機化合物層が、少なくとも前記バッファ層、正孔輸送層、及び前記発光層を前記陽極側からこの順に積層して構成され、
前記正孔輸送層及び前記発光層のうち少なくとも正孔輸送層が、前記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位を有する電荷輸送性ポリエーテルを少なくとも1種含有し、
前記陽極と前記正孔輸送層との間に、前記バッファ層を設けた、
ことを特徴とする<1>に記載の有機電界発光素子。
<6> 前記発光層が、前記電荷輸送性ポリエーテル以外の電荷輸送性材料を含むことを特徴とする<5>に記載の有機電界発光素子。
<7> 前記正孔輸送層の膜厚が、20nm以上100nm以下の範囲内であることを特徴とする<5>に記載の有機電界発光素子。
<8> 前記有機化合物層が、少なくとも前記バッファ層、及び電荷輸送能を有する発光層をこの順に積層して構成され、
前記電荷輸送能を有する発光層が、前記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位を有する電荷輸送性ポリエーテルを少なくとも1種含有し、
前記陽極と前記電荷輸送能を有する発光層との間に、前記バッファ層を設けた、
ことを特徴とする<1>に記載の有機電界発光素子。
<9> 前記電荷輸送能を有する発光層の膜厚が、20nm以上100nm以下の範囲内であることを特徴とする<8>に記載の有機電界発光素子。
<10> 前記陰極が、前記第1の層と、前記第2の層と、前記第2の層に接する第3の層であってアルミニウムを含む第3の層とを、前記有機化合物層側から順に積層して構成されることを特徴とする<1>に記載の有機電界発光素子。
<11> 前記バッファ層の膜厚が、10nm以上200nm以下の範囲内であることを特徴とする<1>に記載の有機電界発光素子。
<12> 前記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位を有する電荷輸送性ポリエーテルが、下記一般式(III)で示される電荷輸送性ポリエーテルであることを特徴とする<1>に記載の有機電界発光素子。
Figure 2008016505
(一般式(III)中、Aは上記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択される少なくとも1種を表し、Rは水素原子、アルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、又は、置換もしくは未置換のアラルキル基を表し、pは5〜5000の整数を表す。)
以上、本発明によれば、十分な輝度を有し、安定性及び耐久性に優れ、大面積化が可能で製造容易な上に、更に製造上の欠陥の発生が少なく且つ素子性能の経時的劣化が小さい有機電界発光素子を提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の有機電界発光素子は、
少なくとも一方が透明又は半透明である一対の陽極及び陰極と、前記陽極及び陰極の電極間に挾持された有機化合物層と、を有し、
前記有機化合物層が、発光層及びバッファ層を少なくとも含む2以上の層からなり、
前記有機化合物層の少なくとも一層が少なくとも1種の電荷輸送性ポリエーテルを含有し、前記電荷輸送性ポリエーテルが下記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位を有してなり、
前記電荷輸送性ポリエーテルを含有する有機化合物層の内で最も陽極に近い側に位置する有機化合物層の膜厚が、20nm以上100nm以下の範囲内であり、
前記バッファ層が、前記陽極と接して設けられ、且つ1種以上の電荷注入材料を含有し、前記電荷注入材料の少なくとも1種が下記一般式(II)で示される構造単位を有する電荷輸送性高分子であり、
前記陰極が、前記有機化合物層に接する第1の層であってアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属ハロゲン化物、及びアルカリ土類金属ハロゲン化物から選択される少なくとも1種を含有する第1の層と、前記第1の層に接する第2の層であってアルカリ金属、及びアルカリ土類金属から選択される少なくとも1種を含有する第2の層と、を有する、
ことを特徴としている。
本発明の有機電界発光素子は、上記構成とすることで、十分な輝度を有し、安定性及び耐久性に優れ、大面積化が可能で製造容易な上に、更に製造上の欠陥の発生が少なく且つ素子性能の経時的劣化が小さくなる。これは、以下の理由によるものと推測される。
まず、バッファ層を設けた有機電界発光素子を作製した場合に、製造上での各種欠陥の発生や、素子性能の経時的劣化が起こる原因について鋭意検討した。そして、陽極上に形成されたバッファ層表面に、高分子系の電荷輸送性材料を用いて正孔輸送層あるいは電荷輸送能を有する発光層(以下、バッファ層上に直接あるいは他の層を介して間接的に形成される層を「隣接層」と略す場合がある)を形成しようとした場合の問題点について調査した。
その結果、使用する電荷輸送性高分子がビニル系骨格(例えば、PTPDMA(高分子論文集,Vol.52,216(1995)参照)やポリカーボネート系骨格(例えば、Et−TPAPEK(第43回応用物理学関係連合講演会予稿集27a−SY−19,pp.1126(1996)参照)等の場合、バッファ層と隣接層との密着性が不充分となり剥離欠陥が発生したり、また、ピンホールが生成したり凝集が発生する場合があることを確認した。このような欠陥の原因としては、バッファ層と隣接層との界面でのなじみの悪さや、隣接層を構成する高分子の柔軟性の欠如が考えられる。
従って、これらの成膜上の欠陥防止という観点では、隣接層の形成に使用する電荷輸送性高分子としては、柔軟性の高い分子構造を有する材料を使用したり、あるいは、上述した柔軟性が低い分子構造を有する材料であっても分子自体のサイズを小さくする(分子量を小さくする)ことによって、分子の柔軟性を向上させたり、隣接層中での分子間の再配列を容易にすることで対応できると考えた。
また、素子性能の経時的劣化が発生する原因についても調査した。その結果、使用する電荷輸送性高分子が上述した場合と同様にビニル系骨格やポリカーボネート系骨格の場合、時間と共に駆動電圧が上昇し消費電力を増加させ、更には発光特性自体の低下を招いてしまう場合があることがわかった。
この原因について調査したところ、バッファ層に含まれる低分子成分(例えば、スターバーストアミンやCuPc、あるいは、PEDOTと併用されるイオン性物質の対イオン)が、素子への電界印加時に生じるジュール熱によって時間と共に隣接層へとブリード(染み出し)することにより、隣接層本来の機能が発揮できなくなっていることがわかった。また、このようなブリードの発生は、バッファ層中の低分子成分がビニル系骨格やポリカーボネート系骨格の電荷輸送性高分子を用いて形成された隣接層内へと浸透し易いこと、言い換えれば、隣接層中の電荷輸送性高分子間の隙間が大きい/電荷輸送性高分子間の隙間が容易に形成されやすいことを意味している。
それゆえ、ブリードを抑制するためには、低分子成分の隣接層へのブリードが防止できるように、緻密で耐熱性の高い隣接層を形成することが重要であると考えた。この場合、低分子成分のブリードを促進する分子間の隙間を、隣接層を形成する際に隙間無く埋められること、及び、一旦形成された隣接層内において、熱により分子間の相対的な移動が発生し分子間の隙間を発生させないことがブリードの防止には重要である。
従って、ブリード抑制の観点から、隣接層を形成する電荷輸送性高分子としては、耐熱性(ガラス転移温度)が高く、柔軟性と緻密性を兼ね備えた分子構造を有する材料を用いることが必要である。しかし、この条件は、成膜上の欠陥を抑制する選択肢のひとつである柔軟性が低い分子構造を有する分子量の小さい電荷輸送性高分子の利用と相反する関係にある。
また、抜本的なブリード抑制の為には、バッファ層に用いる電荷注入材料やその併用成分として、ブリードの原因となる低分子成分を含まない材料を利用することも考えられる。
加えて、電荷輸送性高分子は、有機電界発光素子の最も重要な発光特性を左右する電荷移動度を確保するために、分子中に電荷移動を担うホッピングサイトをある一定数以上有している必要がある。すなわち、言い換えれば、必然的にある程度以上の分子サイズ(分子量)が必要である。しかし、この条件も、ブリード抑制の場合と同様に、成膜上の欠陥を抑制する選択肢のひとつである柔軟性が低い分子構造を有する分子量の小さい電荷輸送性高分子の利用と相反する関係にある。
すなわち、分子構造の柔軟性に欠ける電荷輸送性高分子では、本質的にブリードを抑制するために緻密な隣接層を形成することが困難な一方、ブリードを抑制するために、分子量を小さくすると耐熱性の低下によるブリードの促進や、素子の基本的特性に係わる電荷移動度自体の低下を招くという根本的に解決し難いジレンマを抱えている。
それゆえ、バッファ層を設けた有機電界発光素子を得る上で発光特性という基本的特性の確保に加えて製造性や長期の使用に耐えうる実用性をも考慮した場合には、隣接層の形成に用いる電荷輸送性高分子としては、バッファ層としてブリードの原因となる材料を用いる場合には、十分な電荷移動度を有しているのみならず、柔軟性が高く緻密さを兼ね備えた分子構造及び高い耐熱性をも兼ね備えた材料を用いることが重要であると考えた。更に、抜本的にブリードを抑制するためには、バッファ層をブリードの原因となる低分子成分の利用が基本的に必要の無い成分を用いて形成することが必要であると考えた。
また、素子性能の経時的劣化に関しては、電荷注入効率を向上することにより駆動電圧を低下させるという観点から、金属単体もしくは合金、ないしその化合物からなる電極(陰極)の材料についても、その種類や構成について様々な検討が行われ、従来は金属単体のみであったのが、仕事関数の低いリチウムやマグネシウム・カルシウムといったアルカリ金属・アルカリ土類金属を併用する合金とすることにより、電荷(電子)注入効率を向上させる事が可能になっている。
しかし、実際にリチウムやカルシウム等が時間の経過と共に有機層側に拡散することで素子の劣化が引き起こされ、その結果素子寿命が改善されないことが明らかになった。そこで、電子注入性を維持しつつも拡散を防止することを目的とし、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属ハロゲン化物、及び、アルカリ土類金属ハロゲン化物といった金属化合物の薄膜を絶縁層として有機層と陰極間に挿入することにより、駆動電圧を低下と素子寿命の改善を両立させることが知られている。
ところが、前記電荷輸送ポリエーテルを前記有機化合物層に使用した場合、陰極で用いられる金属の有機化合物層への拡散防止にアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物のいずれかを含有する絶縁層を薄膜として挿入した場合での寿命改善効果が、他の電荷輸送性材料との組み合わせに比べ著しく向上することを、見出した。
それゆえ、実用化を目指す上でさらなる低電圧駆動化を目指し、本発明上における柔軟性の高い分子構造及び高い耐熱性をも兼ね備えた前記電荷輸送性ポリエーテルとの相性が良くかつ前記電荷輸送性ポリエーテルを用いた素子の特性をより向上させる陰極材料の種類・構成、陰極側に最も近くに位置する電荷輸送性ポリエーテルを有機化合物層の膜厚、そしてバッファ層の構成について、鋭意検討を行い、本発明を見出すに至った。
すなわち、本発明では、十分な電荷移動度を有しているのみならず、上述したようにバッファ層のブリードを抑制可能で製膜性に優れた、柔軟性が高く緻密な分子構造及び高い耐熱性をも兼ね備えた前記電荷輸送性ポリエーテルを用いることで、十分な輝度を有し、安定性及び耐久性に向上させることができる。そして、このような有機化合物層を適用すると共に、陰極として所定の金属元素単体からなる金属層(第1の層)と当該金属層からの有機化合物層への拡散防止を目的とする所定のアルカリ化合物層(第2の層)を含むように陰極を構成すると、駆動電圧を低くし、従来よりも消費電力を抑制することができ、その効果が他の電荷輸送性材料を含む有機化合物層を適用した場合に比べ著しく出る。即ち、寿命改善効果が、他の電荷輸送性材料を含む有機化合物層を適用した場合に比べ著しく向上する。
また、陰極側に最も近くに位置する電荷輸送性ポリエーテルを含有する有機化合物層の膜厚を所定範囲にすることで、電荷の注入性や輸送性や電荷バランスが改善され、安定的で高輝度、高効率な特性を示し、素子寿命や発光輝度をより向上する。
そして、前記電荷輸送性ポリエーテルを用いると共に、バッファ層にブリードの原因となり難い前記特定の化合物を含有させることで、より高いレベルでの素子寿命が実現する。
さらに、素子作製プロセスにおいて、有機化合物層を構成する材料全てに高分子化合物を使用することにより、有機化合物層形成を全て湿式による塗布方式で行うことが出来、製造の簡略化、加工性、大面積化、コスト等の観点から極めて有利となるが、本発明における前記電荷輸送性ポリエーテルでは、発光層として用いる発光材料の種類に関わらず安定した素子特性を発現できる。
以下、一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位を有する電荷輸送性ポリエーテルについて説明する。
なお、本発明に係る電荷輸送性ポリエーテルは、エーテル結合部位の可動性が高いため、分子構造の柔軟性が高く、また、耐熱性を確保するために分子量を大きくしても分子構造の柔軟性が失われにくいことから、薄膜形成能に優れ、かつ湿式による製膜プロセスを取ることが容易な材料である。
また、電荷輸送性ポリエーテルは、後述するように、その分子構造を適宜選択することで、正孔輸送能、電子輸送能のいずれの機能をも付与することができる。このため、目的に応じて正孔輸送層、発光層、電荷輸送層等のいずれの層にも用いることができる。
Figure 2008016505
但し、一般式(I−1)及び(I−2)中、Arは置換もしくは未置換の1価の芳香族基を表す。
具体的には、Arは、置換もしくは未置換のフェニル基、置換もしくは未置換の芳香族数2〜10の1価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の芳香族数2〜10の1価の縮合環芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の1価の芳香族複素環、又は、少なくとも1種の芳香族複素環を含む置換もしくは未置換の1価の芳香族基を表す。
ここで、一般式(I−1)及び(I−2)中において、Arを表す構造として選択される多核芳香族炭化水素及び縮合環芳香族炭化水素を構成する芳香環数は特に限定されないが、芳香環数が2〜5のものが好ましく、縮合環芳香族炭化水素においては、全縮合環芳香族炭化水素が好ましい。なお、当該多核芳香族炭化水素及び縮合環芳香族炭化水素とは、本発明においては、具体的には以下に定義される多環式芳香族のことを意味する。
即ち、「多核芳香族炭化水素」とは、炭素と水素とから構成される芳香環が2個以上存在し、これらの芳香環同士が、炭素−炭素の単結合によって結合している炭化水素化合物を表す。具体例としては、ビフェニル、ターフェニル等が挙げられる。
また、「縮合環芳香族炭化水素」とは、炭素と水素とから構成される芳香環が2個以上存在し、これらの芳香環同士が、1対の隣接して結合する炭素原子を共有している炭化水素化合物を表す。具体例としては、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン等が挙げられる。
また、「芳香族複素環」とは、炭素と水素以外の元素も含む芳香環を表す。その環骨格を構成する原子数(Nr)は、Nr=5及び/又は6が好ましく用いられる。また、環骨格を構成するC以外の元素(異種元素)の種類及び数は特に限定されないが、例えば、S、N、O等が好ましく用いられ、前記環骨格中には2種類以上及び/又は2個以上の異種原子が含まれていてもよい。特に5員環構造を持つ複素環としては、チオフェン、チオフィン及びフランもしくはこれらの3位及び4位の炭素をさらに窒素で置換した複素環、ピロールもしくはこれらの3位及び4位の炭素をさらに窒素で置換した複素環が好ましく用いられ、6員環構造をもつ複素環として、ピリジンが好ましく用いられる。
「芳香族複素環を含む芳香族基」とは、骨格を構成する原子団中に、少なくとも1種の前記芳香族複素環を含む結合基を表す。これらは、すべてが共役系で構成されたもの、或いは一部が非共役系で構成されたもののいずれでもよいが、電荷輸送性や発光効率の点で、すべてが共役系で構成されたものが好ましい。
フェニル基、多核芳香族炭化水素、縮合環芳香族炭化水素、芳香族複素環、又は、芳香族複素環を含む芳香族基の置換基としては、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、フェノキシ基、アリール基、アラルキル基、置換アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
アルキル基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。アルコキシル基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられる。アリール基としては、炭素数6〜20のものが好ましく、例えば、フェニル基、トルイル基等が挙げられる。アラルキル基としては、炭素数7〜20のものが好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。置換アミノ基の置換基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられ、具体例は前述の通りである。
一般式(I−1)及び(I−2)中、Xは置換もしくは未置換の2価の芳香族基を表す。具体的には、Xは、置換もしくは未置換のフェニレン基、又は置換もしくは未置換の芳香族数2〜10の2価の多核芳香族炭化水素、又は置換もしくは未置換の芳香族数2〜10の2価の縮合環芳香族炭化水素、又は置換もしくは未置換の2価の芳香族複素環、又は少なくとも1種の芳香族複素環を含む置換もしくは未置換の2価の芳香族基を表す。
ここで、「多核芳香族炭化水素」「縮合環芳香族炭化水素」「芳香族複素環」「芳香族複素環を含む芳香族基」については前述に示す通りである。
一般式(I−1)及び(I−2)中、k、l、mは0又は1を示し、Tは炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素、又は、炭素数2〜10の2価の分枝鎖状炭化水素基を示し、好ましくは炭素数が2〜6の2価の直鎖状炭化水素基、及び、炭素数3〜7の2価の分枝鎖状炭化水素より選択される。Tの具体的な構造を以下に示す。
Figure 2008016505
一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位を有する電荷輸送性ポリエーテルとしては、下記一般式(III)で示されるものが好適に使用される。この一般式(III)で示される電荷輸送性ポリエーテルにおいて特に好適なものは正孔輸送性を有するポリエーテル(正孔輸送性ポリエーテル)である。
Figure 2008016505
但し、一般式(III)中、Aは上記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択される少なくとも1種を表し、一つのポリマー中に2種類以上の構造Aが含まれていてもよい。Rは水素原子、アルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、または置換もしくは未置換のアラルキル基を表し、pは5〜5000の整数を表す。
一般式(III)中、Aは上記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を表し、一つのポリマー中に2種類以上の構造Aが含まれてもよい。
一般式(III)中、Rは水素原子、アルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、または置換もしくは未置換のアラルキル基を表す。
アルキル基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。アリール基としては、炭素数6〜20のものが好ましく、例えば、フェニル基、トルイル基等が挙げられる、アラルキル基としては、炭素数7〜20のものが好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。また、置換アリール基、置換アラルキル基の置換基としては、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、置換アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
一般式(III)中、重合度を表わすpは5〜5,000の範囲であるが、好ましくは10〜1,000の範囲である。
また、本発明に用いられる電荷輸送性ポリエーテルの重量平均分子量Mは5,000〜1,000,000の範囲であることが好ましく、10,000〜300,000の範囲にあることがより好ましい。
具体的には、一般式(III)で示される電荷輸送性ポリエーテルは、例えば次のようにして合成することができる。
(1)本発明における電荷輸送性ポリエーテルは、まず、下記一般式(III−1)及び(III−2)で示される化合物のうち、2個のヒドロキシアルキル基を有する電荷輸送性化合物(電荷輸送性モノマー)を加熱脱水縮合する方法によって合成することができる。なお、一般式(III−1)及び(III−2)中のAr,X,T,k、m、lは一般式(I−1)及び(I−2)の場合と同義である。
Figure 2008016505
この場合、無溶媒で電荷輸送性モノマーを加熱溶融し、水の脱離による重合反応を促進させるため減圧下で反応させることが望ましい。また、溶媒を使用する場合は、水の除去のため、水と共沸する溶媒、例えば、トリクロロエタン、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、1−クロロナフタレン等が有効であり、電荷輸送性モノマー1当量に対して、好ましくは1〜100当量の範囲、より好ましくは2〜50当量の範囲で用いられる。反応温度は任意に設定できるが、重合中に生成する水を除去するために、溶媒の沸点で反応させるのが好ましい。重合が進まない場合には、反応系から溶媒を除去し、粘ちょう状態で加熱撹拌してもよい。
(2)また、上記電荷輸送性ポリエーテルは、酸触媒として、p−トルエンスルホン酸、塩酸、硫酸、トリフルオロ酢酸等のプロトン酸、あるいは塩化亜鉛等のルイス酸を用い、脱水縮合する方法によって合成することもできる。この場合、酸触媒は電荷輸送性モノマー1当量に対して、好ましくは1/10000〜1/10当量の範囲、より好ましくは1/1000〜1/50当量の範囲で用いる。
重合中に生成する水を除去するために、水と共沸可能な溶剤を用いるのが好ましい。溶剤としては、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、1−クロロナフタレン等が有効であり、電荷輸送性モノマー1当量に対して、好ましくは1〜100当量の範囲、より好ましくは2〜50当量の範囲で用いられる。反応温度は任意に設定できるが、重合中に生成する水を除去するために、溶剤の沸点で反応させることが好ましい。
(3)さらに、上記電荷輸送性ポリエーテルは、シアン化シクロヘキシル等のイソシアン化アルキル、シアン酸p−トリルや2,2−ビス(4−シアナートフェニル)プロパン等のシアン酸エステル、ジクロロヘキシルカルボジイミド(DCC)、トリクロロアセトニトリル等の縮合剤を用いる方法によっても合成することができる。
この場合、縮合剤は、電荷輸送性モノマー1当量に対して、好ましくは1/2〜10当量の範囲、より好ましくは1〜3当量の範囲で用いられる。溶剤としては、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、1−クロロナフタレン等が有効であり、電荷輸送性モノマー1当量に対して、好ましくは1〜100当量の範囲、より好ましくは2〜50当量の範囲で用いられる。反応温度は任意に設定できるが、室温から溶剤の沸点で反応させることが好ましい。
上記(1)、(2)及び(3)の合成法のうち、異性化や副反応が起こりにくいことから、合成法(1)または(3)が好ましい。特に、合成法(3)が反応条件がより穏和なことからより好ましい。
反応終了後、溶剤を用いなかった場合は反応物を溶解可能な溶剤に溶解させ、溶剤を用いた場合にはそのまま、反応物をメタノール、エタノール等のアルコール類や、アセトン等の電荷輸送性ポリマーが溶解しにくい貧溶剤中に滴下し、電荷輸送性ポリエーテルを析出させ、電荷輸送性ポリエーテルを分離した後、水や有機溶剤で十分に洗浄し、乾燥させる。さらに必要であれば、適当な有機溶剤に溶解させ、貧溶剤中に滴下し、電荷輸送性ポリマーを析出させる再沈澱処理を繰り返してもよい。再沈澱処理の際には、メカニカルスターラー等で、効率よく撹拌しながら行うことが好ましい。
再沈澱処理の際に電荷輸送性ポリエーテルを溶解させる溶剤は、電荷輸送性ポリエーテル1質量部に対して、好ましくは1〜100質量部、より好ましくは2〜50質量部の範囲で用いられる。また、貧溶剤は電荷輸送性ポリエーテル1質量部に対して、好ましくは1〜1000質量部、より好ましくは10〜500質量部の範囲で用いられる。さらに、上記反応において、電荷輸送性モノマーを2種以上、好ましくは2〜5種の範囲、さらに好ましくは2〜3種の範囲で用いることにより、共重合ポリマーの合成も可能である。異種の電荷輸送性モノマーを共重合することによって、電気特性、成膜性、溶解性を制御することができる。
電荷輸送性ポリエーテルの重合度pは、低すぎると成膜性に劣り、強固な膜が得られにくく、また、高すぎると溶剤への溶解度が低くなり、加工性が悪くなるため、5〜5000の範囲に設定されるが、好ましくは10〜3000の範囲、より好ましくは15〜1000の範囲である。
電荷輸送性ポリエーテルの末端基は、電荷輸送性モノマーと同様にヒドロキシル基、すなわち一般式(III)におけるRが水素原子であってよいが、溶解性、成膜性、モビリティー等のポリマー物性に影響を及ぼす場合には、末端基Rを修飾し物性を制御することができる。例えば、末端のヒドロキシル基を、硫酸アルキル、ヨウ化アルキル等でアルキルエーテル化することができる。
具体的な試薬としては、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル等から任意に選ぶことができ、末端のヒドロキシル基量に対し好ましくは1〜3当量の範囲、より好ましくは1〜2当量の範囲で用いる。その際、塩基触媒を用いることができるが、該塩基触媒として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、ナトリウム金属等から任意に選ぶことができる。反応温度は、0℃から使用する溶剤の沸点の範囲で行うことができる。
また、その際用いる溶剤として、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の不活性溶剤から選ばれる単独溶剤、あるいはこれらの2〜3種の混合溶剤が使用できる。また、反応によっては、相間移動触媒としてテトラ−n−ブチルアンモニウムアイオダイド等の第4級アンモニウム塩を使用することもできる。
また、末端のヒドロキシル基を酸ハロゲン化物を用いアシル化して、一般式(III)におけるRをアシル基にすることもできる。酸ハロゲン化物は特に限定するものではないが、例えばアクリロイルクロリド、クロトノイルクロリド、メタクリロイルクロリド、n−ブチルクロリド、2−フロイルクロリド、ベンゾイルクロリド、シクロヘキサンカルボニルクロリド、エナンチルクロリド、フェニルアセチルクロリド、o−トルオイルクロリド、m−トルオイルクロリド、p−トルオイルクロリド等が挙げられる
上記酸ハロゲン化物は、末端のヒドロキシル基量に対し好ましくは1〜3当量の範囲、より好ましくは1〜2当量の範囲で用いる。
その際、塩基触媒を用いることができるが、該塩基触媒としては、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン等から任意に選ぶことができ、酸クロリドに対し好ましくは1〜3当量の範囲、より好ましくは1〜2当量の範囲で用いる。
用いられる溶剤としては、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン等が挙げられる。反応は、0℃から溶剤の沸点の範囲で行うことができるが、好ましくは、0℃から30℃の範囲で行う。
さらに、無水酢酸等の酸無水物を用いてもアシル化することができる。この反応において溶剤を用いる場合は、具体的には、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン等の不活性溶剤を使用することができる。反応は、0℃から溶剤の沸点の範囲で行うことができるが、好ましくは、50℃から溶剤の沸点の範囲で行えばよい。
そのほか、モノイソシアネートを用い、電荷輸送性ポリエーテルの末端にウレタン残基(−CONH−R’)を導入することができる。具体的なモノイソシアネートとしては、イソシアン酸ベンジルエステル、イソシアン酸n−ブチルエステル、イソシアン酸t−ブチルエステル、イソシアン酸シクロヘキシルエステル、イソシアン酸2,6−ジメチルエステル、イソシアン酸エチルエステル、イソシアン酸イソプロピルエステル、イソシアン酸2−メトキシフェニルエステル、イソシアン酸4−メトキシフェニルエステル、イソシアン酸n−オクタデシルエステル、イソシアン酸フェニルエステル、イソシアン酸i−プロピルエステル、イソシアン酸m−トリルエステル、イソシアン酸p−トリルエステル、イソシアン酸1−ナフチルエステル等から任意に選ぶことができる。使用量は、末端のヒドロキシル基量に対し1〜3当量の範囲であることが好ましく、1〜2当量の範囲であることがより好ましい。
その際用いる溶剤として、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等を挙げることができる。
反応温度は、0℃から使用溶剤の沸点の範囲で行うことができる。反応が進みにくい場合は、ジラウリン酸ジブチルスズ(II)、オクチル酸スズ(II)、ナフテン酸鉛等の金属化合物、あるいはトリエチルアミン、トリメチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン等の3級アミンを触媒として添加することもできる。
次に、本発明の有機電界発光素子の層構成について詳記する。
本発明の有機電界発光素子は、少なくとも一方が透明又は半透明である一対の陽極及び陰極からなる電極と、この一対の電極間に挾持された発光層及びバッファ層を含む2層以上からなる有機化合物層と、を含む層構成を持つ。そして、バッファ層は1種以上の電荷注入材料を含み、陽極と接して設けられる。また、有機化合物層の少なくとも一層は、少なくとも1種の前記電荷輸送性ポリエーテルを含む。
加えて、前記電荷輸送性ポリエーテルを含有する有機化合物層の内で最も陽極に近い側に位置する有機化合物層の膜厚を、20nm以上100nm以下の範囲(好ましくは、20〜80μm、より好ましくは20〜50μm)内とする。この有機化合物層は、有機化合物層が単層型の場合、電荷輸送能を有する発光層であり、機能分離型(積層型)の場合、正孔輸送層であることがよい。
本発明の有機電界発光素子においては、有機化合物層がバッファ層及び発光層のみから構成される場合には、この発光層は電荷輸送能を有する発光層を意味し、この電荷輸送能を有する発光層が前記電荷輸送性ポリエーテルを含有してなる。
また、有機化合物層が、バッファ層及び発光層に加え、更に1層以上の他の層を有する場合(3層以上の機能分離型の場合)は、バッファ層及び発光層を除くその他の層は、キャリア輸送層、すなわち、正孔輸送層、電子輸送層、又は、正孔輸送層及び電子輸送層よりなるものを意味し、これらの少なくとも一層に前記電荷輸送性ポリエーテルが含まれる。
具体的には、有機化合物層は、例えば、少なくともバッファ層、正孔輸送層、発光層及び電子輸送層を含む構成、或いは、少なくともバッファ層、正孔輸送層及び発光層を含む構成からなるものであってもよい。この場合、これらの少なくとも一層(正孔輸送層、電子輸送層、発光層)に前記電荷輸送性ポリエーテルが含まれていることが好ましいが、好適には正孔輸送性材料として前記電荷輸送性ポリエーテルが含まれていることが好ましい。そして、特に、少なくとも正孔輸送層に前記電荷輸送性ポリエーテルを含むことが好適である。
なお、バッファ層及び発光層のみから構成される場合、バッファ層は陽極と発光層との間に設けられる。また、少なくともバッファ層、正孔輸送層、発光層及び電子輸送層を含む構成の場合、バッファ層は陽極と正孔輸送層との間に設けられる。また、少なくともバッファ層、正孔輸送層及び発光層を含む構成の場合、バッファ層は陽極と正孔輸送層との間に設けられる。
さらに、本発明の有機電界発光素子においては、発光層が、電荷輸送性材料(前記電荷輸送性ポリエーテル以外の正孔輸送性材料、電子輸送性材料)を含有してもよく、このような電荷輸送性材料の詳細については後述する。
以下、図面を参照しつつ、本発明の有機電界発光素子についてより詳細に説明するが、これらに限定されるものではない。
図1〜図3は、本発明の有機電界発光素子の層構成を説明するための模式断面図であって、図1、図2の場合は、有機化合物層が3層又は4層構成の場合の一例であり、図3の場合は、有機化合物層が2層構成の場合の例を示す。なお、図1〜図3において、同様の機能を有するものは同じ符号を付して説明する。
図1に示す有機電界発光素子は、透明絶縁体基板1上に、透明電極2、バッファ層3、正孔輸送層4、発光層5、電子輸送層6及び背面電極8を順次積層してなる。図2に示す有機電界発光素子は、透明絶縁体基板1上に、透明電極2、バッファ層3、正孔輸送層4、発光層5及び背面電極8を順次積層してなる。図3に示す有機電界発光素子は、透明絶縁体基板1上に、透明電極2、バッファ層3、電荷輸送能を有する発光層7及び背面電極8を順次積層してなる。
なお、図1〜3中、透明電極2が陽極を意味し、背面電極8が陰極を意味する。以下、各々を詳しく説明する。
また、前記電荷輸送性ポリエーテルが含まれる層は、その構造によっては、図1に示される有機電界発光素子の層構成の場合、正孔輸送層4、電子輸送層6としていずれも作用することができ、図2に示される有機電界発光素子の層構成の場合、正孔輸送層4、としていずれも作用することができ、図3に示される有機電界発光素子の層構成の場合、電荷輸送能を有する発光層7として作用することができる。特に、好適には正孔輸送材料として作用することができる。
透明絶縁体基板1は、発光を取り出すため透明なものが好ましく、ガラス、プラスチックフィルム等が用いられるがこれに限られるものではない。また、透明電極2は、透明絶縁体基板と同様に発光を取り出すため透明であって、かつ正孔の注入を行うため仕事関数(イオン化ポテンシャル)の大きなものが好ましく、酸化スズインジウム(ITO)、酸化スズ(NESA)、酸化インジウム、酸化亜鉛等の酸化膜、及び蒸着或いはスパッタされた金、白金、パラジウム等が用いられるがこれに限られるものではない。
またバッファ層3は陽極(透明電極2)と接して形成され、1種以上の電荷注入材料を含有する。そして、電荷注入材料の少なくとも1種が、下記一般式(II)で示される構造単位を有する電荷輸送性高分子である。一般式(II)中、nは100〜10000の範囲内の整数を表す。
Figure 2008016505
一般式(II)で示される電荷輸送性高分子は、いわゆるPEDOT(ポリエチレン・ジオキシチオフェン)と呼ばれる材料であり、バッファ層3を構成する場合、PEDOT単体では十分な導電性が確保できないことがあるため、バッファ層3の電荷注入性を向上させる目的で、PSS(ポリスチレンスルホン酸)等の対イオン(例えば、Naイオン等)を含むイオン性物質と共に用いることが好ましい。
一般式(II)で示される電荷輸送性高分子とポリスチレンスルホン酸とを含む混合物としては、具体的には、バイトロン(Baytron)P(バイエル株式会社製:ポリエチレンジオキサイドチオフェン及びポリスチレンスルホン酸を含む混合水分散液)等の公知の材料を用いることができる。
また、電荷注入材料は、バッファ層3の陽極が設けられた側と反対側の面に接して設けられる層(すなわち、図1及び2では正孔輸送層4、図3では電荷輸送能を有する発光層7)への電荷の注入性を向上させるため、そのイオン化ポテンシャルは5.2eV以下であることが好ましく、5.1eV以下であることがより好ましい。また、バッファ層3の層数についても特に制限はないが、1層又は2層であることが好ましい。
なお、バッファ層3を構成する材料は、上記剤朗の他、さらにバインダー樹脂等、他の電荷注入性を有さない材料も必要に応じて用いることができる。
電子輸送層6は、目的に応じて機能(電子輸送能)が付与された前記電荷輸送性ポリエーテル単独で形成されていてもよいが、電気的特性をさらに改善する等の目的で、電子移動度を調節するために、電荷輸送性ポリエーテル以外の電子輸送材料を1質量%ないし50質量%の範囲で混合分散して形成されていてもよい。
このような電子輸送材料としては、好適にはオキサジアゾール誘導体、ニトロ置換フルオレノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体等が挙げられる。好適な具体例として、下記化合物(IV−1)〜(IV−3)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、前記電荷輸送性ポリエーテルを用いずに電子輸送層6を形成する場合、電子輸送層6は、これら電子輸送性材料を用いて形成される。
Figure 2008016505
正孔輸送層4は、目的に応じて機能(正孔輸送能)が付与された電荷輸送性ポリエーテル単独で形成されていてもよいが、正孔移動度を調節するために電荷輸送性ポリエーテル以外の正孔輸送材料を1質量%ないし50質量%の範囲で混合分散して形成されていてもよい。
このような正孔輸送材料としては、テトラフェニレンジアミン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、カルバゾール誘導、スチルベン誘導体、アリールヒドラゾン誘導体、ポルフィリン系化合物等、特に好適な具体例として下記化合物(V−1)〜(V−7)が挙げられるが、電荷輸送性ポリエーテルとの相容性が良いことから、テトラフェニレンジアミン誘導体が好ましい。また、他の汎用の樹脂等と混合して用いてもよい。なお、前記電荷輸送性ポリエーテルを用いずに正孔輸送層4を形成する場合には、正孔輸送層4はこれら正孔輸送性材料を用いて形成される。なお、化合物(V−7)において、n(整数値)は10〜100000の範囲内であることが好ましく、1000〜50000の範囲内であることがより好ましい。
Figure 2008016505
発光層5は、固体状態で高い蛍光量子収率を示す化合物が発光材料として用いられる。発光材料が有機低分子の場合、真空蒸着法もしくは低分子と結着樹脂を含む溶液又は分散液を塗布・乾燥することにより良好な薄膜形成が可能であることが条件である。また、高分子の場合、それ自身を含む溶液又は分散液を塗布・乾燥することにより良好な薄膜形成が可能であることが条件である。
好適には、有機低分子の場合、キレート型有機金属錯体、多核又は縮合芳香環化合物、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、スチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサチアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体等が、高分子の場合、ポリパラフェニレン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等が挙げられる。好適な具体例として、下記の化合物(VI−1)〜(VI−17)が用いられるが、これらに限定されるものではない。
なお、下記構造式(VI−13)〜(VI−17)中、Ar、Xは、一般式(I−1)及び(I−2)中に示すAr、Xと同様の構造を有する一価基あるいは二価基を意味し、n及びxは1以上の整数を、yは0又は1を示す。
Figure 2008016505
Figure 2008016505
また、有機電界発光素子の耐久性向上或いは発光効率の向上を目的として、上記の発光材料中にゲスト材料として発光材料と異なる色素化合物をドーピングしてもよい。真空蒸着によって発光層を形成する場合、共蒸着によってドーピングを行い、溶液又は分散液を塗布・乾燥することで発光層を形成する場合、溶液又は分散液中に混合することでドーピングを行う。発光層中における色素化合物のドーピングの割合としては0.001質量%〜40質量%程度、好ましくは0.01質量%〜10質量%程度である。
このようなドーピングに用いられる色素化合物としては、発光材料との相容性が良く、かつ発光層の良好な薄膜形成を妨げない有機化合物が用いられ、好適にはDCM誘導体、キナクリドン誘導体、ルブレン誘導体、ポルフィリン系化合物等が挙げられる。好適な具体例として、下記の化合物(VII−1)〜(VII−4)が用いられるが、これらに限定されるものではない。
Figure 2008016505
また、発光層5は、前記発光性材料単独で形成されていてもよいが、電気特性及び発光特性をさらに改善する等の目的で、前記発光材料に前記電荷輸送性ポリエーテルを1質量%ないし50質量%の範囲で混合分散して形成、もしくは前記発光性高分子中に前記電荷輸送性ポリエーテル以外の電荷輸送材料を1質量%ないし50質量%の範囲で混合分散して形成させてもよい。
また、前記電荷輸送性高分子が発光特性も兼ね備えたものである場合、発光材料として用いても良く、その場合、電気特性及び発光特性をさらに改善する等の目的で、前記発光材料に前記電荷輸送性ポリエーテル以外の電荷輸送材料を1質量%ないし50質量%の範囲で混合分散して形成させてもよい。
電荷輸送能を有する発光層7は、例えば、目的に応じて機能(正孔輸送能、或いは電子輸送能)が付与された前記電荷輸送性ポリエーテル中に、発光材料として前記発光材料(VI−1)〜(VI−17)を50質量%以下分散させた材料からなるものであることが好ましい。この場合、有機電界発光素子に注入される正孔と電子とのバランスを調節するために前記電荷輸送性ポリエーテル以外の電荷輸送材料を10質量%〜50質量%分散させてもよい。
このような電荷輸送材料としては、電子移動度を調節する場合、電子輸送材料として好適にはオキサジアゾール誘導体、ニトロ置換フルオレノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体等が挙げられる。好適な具体例として、前記化合物(IV−1)〜(IV−3)が挙げられる。また、前記電荷輸送性ポリエーテルと強い電子相互作用を示さない有機化合物が用いられることが好ましく、より好ましくは下記化合物(VIII)が用いられるが、これに限定されるものではない。
Figure 2008016505
同様に正孔移動度を調節する場合、正孔輸送材料として好適にはテトラフェニレンジアミン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、カルバゾール誘導、スチルベン誘導体、アリールヒドラゾン誘導体、ポルフィリン系化合物等、特に好適な具体例として上記化合物(V−1)〜(V−7)が挙げられるが、電荷輸送性ポリエーテルとの相容性が良いことから、テトラフェニレンジアミン誘導体が好ましい。
背面電極8には、真空蒸着可能で、電子注入を行うため仕事関数の小さな金属元素が使用されるが、具体的には、背面電極8としては、図示しないが、例えば、有機化合物層(発光層5、電子輸送層6、又は電荷輸送能を有する発光層7)と接する第1の層と当該第1の層と接する第2の層とで構成される。また、背面電極8は、第1の層及び第2の層に加え、前記第2の層に接するアルミニウム層(第3の層)とが有機化合物層側からこの順に積層して構成されることがよい。この構成により、材料の選択により電子注入性を制御することができる。
また、第1の層の膜厚は例えば0.5〜10nm(好ましくは1〜2nm)とすることができる。第2の層の膜厚は例えば例えば1〜50nm(好ましくは5〜35nm)とすることができる。第3の層の膜厚は例えば1000〜3000nm(好ましくは1000〜2000nm)とすることができる。
ここで、第1の層は、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属ハロゲン化物、及びアルカリ土類金属ハロゲン化物から選択される少なくとも1種を含有して構成される。
ここで、アルカリ金属酸化物としては、LiO,NaO,KOなどが挙げられる。
アルカリ土類金属酸化物としては、MgO,CaO,BaOなどが挙げられる。
アルカリ金属ハロゲン化物としては、LiF,NaF,KF,CsFなどが挙げられる。
アルカリ土類金属ハロゲン化物としては、MgF,CaF,BaFなどが挙げられる。
これらの中でも、電子注入性や電極としての安定性の点から、アルカリ金属ハロゲン化物、及びアルカリ土類金属ハロゲン化物が好ましく、より具体的には、LiF、LiOが好ましい。
また、第2の層は、アルカリ金属、及びアルカリ土類金属から選択される少なくとも1種を含有して構成される。
ここで、アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムが例示される。
アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム 及びバリウムが挙げられる。
これらの中でも、電子注入性や電極としての安定性の点から、アルカリ土類金属が好ましく、より具体的には、カルシウム(Ca)が好ましい。
これら、第1〜第3の層は、上記各金属或いは化合物1種の単独層であってもよいし、2種以上併用する層であってもよい。
また、背面電極8上(有機化合物層側が接する面とは反対面上)には、さらに素子の水分や酸素による劣化を防ぐために保護層を設けてもよい。具体的な保護層の材料としては、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Alなどの金属、MgO、SIO、TIO等の金属酸化物、ポリエチレン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂が挙げられる。保護層の形成には、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマ重合法、CVD法、コーティング法が適用できる。
これら図1〜図3に示される有機電界発光素子の作製は、以下の手順で行われる。まず、透明絶縁体基板1上に予め形成された透明電極2の上にバッファ層3を、溶媒中に溶解或いは分散させて得られた塗布液を用いて透明電極2上にスピンコーティング法、ディップ法等を用いて成膜することにより形成することができる。次に、各有機電界発光素子の層構成に応じて、バッファ層3上に、正孔輸送層4、電荷輸送能を有する発光層7を形成する。さらに、これらの層の上に、各有機電界発光素子の層構成に応じて、さらに各層を順次積層する。
また、発光層5、電子輸送層6は、上述したようにこれら各層を構成する材料を真空蒸着法により用いて形成する。あるいは、この材料を有機溶媒中に溶解或いは分散させて得られた塗布液を用いてスピンコーティング法、ディップ法等を用いて成膜することによって形成される。
また、電荷輸送材料、発光材料として高分子を用いる場合、各層形成は塗布液を用いた製膜法により行うことが好ましいが、インクジェット法を利用して製膜により行ってもよい。
また、形成されるバッファ層の膜厚は、10nm以上200nm以下で、特に20〜150nmの範囲であることが好ましい。この膜厚とすることにより、陽極の表面粗さを低減して、正孔注入性を高めることが出来るとともに、隣接する層へのイオン性成分のブリードによる劣化を最小限にとどめることが出来る。
また、正孔輸送層4、発光層5及び電子輸送層6の膜厚は、各々20nm以上100nm以下で、特に30〜80nmの範囲であることが好ましい。また、電荷輸送能を有する発光層7の膜厚は20nm以上200nm以下で、30〜200nm程度が好ましい。
上記各材料(前記電荷輸送性ポリエーテル、発光材料等)の分散状態は分子分散状態でも微粒子分散状態でも構わない。塗布液を用いた成膜法の場合、分子分散状態とするためには、分散溶媒は上記各材料の共通溶媒を用いる必要があり、微粒子分散状態とするために分散溶媒は上記各材料の分散性及び溶解性を考慮して選択する必要がある。微粒子状に分散するためには、ボールミル、サンドミル、ペイントシェイカー、アトライター、ホモジェナイザー、超音波法等が利用できる。
そして、最後に、発光層5、電子輸送層6又は電荷輸送能を有する発光層7の上に背面電極8を真空蒸着法により形成することにより図1〜3に示すような有機電界発光素子を得ることができる。
このような本発明の有機電界発光素子は、一対の電極間に、例えば、4〜20Vで、電流密度1〜200mA/cmの直流電圧を印加することによって発光させることができる。
以下、実施例によって本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
上記のようにして合成した電荷輸送性ポリ−テルを使用し、以下のようにして有機電界発光素子を作製した。
(実施例1)
バッファ層形成用の溶液として、バイトロン(Baytron)P(バイエル株式会社製:ポリエチレンジオキサイドチオフェン〔化合物(II)、イオン化ポテンシャル=5.1〜5.2eV〕とポリスチレンスルホン酸とを含む混合水分散液)を用い、目開き0.5μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターで濾過した。
また、透明電極付基板として、2mm幅の短冊型ITO電極をエッチングにより形成した基板(以下、「ITO電極付ガラス基板」と略す)を準備した。
次に、この溶液を用いて、洗浄後乾燥させたITO電極付ガラス基板のITO電極が設けられた側の面上に、スピンコート法により塗布して膜厚50nmのバッファ層を形成した。十分乾燥させた後、正孔輸送性材料として電荷輸送性ポリエーテル〔化合物(IX)〕(Mw=9.00×10)を1質量%溶解させたクロロベンゼン溶液を目開き0.1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターで濾過した後にバッファ層上にスピンコート法により塗布して膜厚30nmの正孔輸送層を形成して十分乾燥させた後、さらに発光材料として発光性高分子〔下記化合物(X)、ポリフルオレン系、Mw≒10〕を1質量%溶解させたキシレン溶液を目開き0.1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターで濾過して得られた溶液を、正孔輸送層上にスピンコート法により塗布して膜厚60nmの発光層を形成した。
形成された発光層を十分乾燥させた後、電子輸送性材料として電荷輸送性ポリエーテル〔化合物(XI)〕(Mw=1.10×10)を2質量%溶解させたクロロベンゼン溶液を目開き0.1μmのPTFEフィルターで濾過した後に、この溶液を発光層上にスピンコート法により塗布し、膜厚30nmの電子輸送層を形成した。最後に陰極としてフッ化リチウム(LiF)を1nmの膜厚で、カルシウム(Ca)を20nmの膜厚で、アルミニウムを150nmの膜厚で順に蒸着により積層して、2mm幅、0.15μm厚の背面電極をITO電極と交差するように形成した。形成された有機電界発光素子の有効面積は0.04cmであった。
Figure 2008016505
Figure 2008016505
Figure 2008016505
(実施例2)
バッファ層形成用の溶液として、バイトロン(Baytron)P(バイエル株式会社製:ポリエチレンジオキサイドチオフェン〔化合物(II)、イオン化ポテンシャル=5.1〜5.2eV〕とポリスチレンスルホン酸とを含む混合水分散液)を用い、目開き0.5μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターで濾過した。
次に、この溶液を用いて、洗浄後乾燥させたITO電極付ガラス基板のITO電極が設けられた側の面上に、スピンコート法により塗布して膜厚50nmのバッファ層を形成した。十分乾燥させた後、正孔輸送性材料として電荷輸送性ポリエーテル〔化合物(IX)〕(Mw=9.00×10)を1質量%溶解させたクロロベンゼン溶液を目開き0.1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターで濾過した後にバッファ層上にスピンコート法により塗布して膜厚30nmの正孔輸送層を形成して十分乾燥させた後、さらに発光材料として発光性高分子〔化合物(X)、ポリフルオレン系、Mw≒10〕を1質量%溶解させたキシレン溶液を目開き0.1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターで濾過して得られた溶液を、正孔輸送層上にスピンコート法により塗布して膜厚60nmの発光層を形成した。
形成された発光層を十分乾燥させた後、最後に陰極としてフッ化リチウム(LiF)を1nmの膜厚で、カルシウム(Ca)を20nmの膜厚で、アルミニウムを150nmの膜厚で順に蒸着により積層して、2mm幅、0.15μm厚の背面電極をITO電極と交差するように形成した。形成された有機電界発光素子の有効面積は0.04cmであった。
(実施例3)
バッファ層形成用の溶液として、バイトロン(Baytron)P(バイエル株式会社製:ポリエチレンジオキサイドチオフェン〔化合物(II)、イオン化ポテンシャル=5.1〜5.2eV〕とポリスチレンスルホン酸とを含む混合水分散液)を用い、目開き0.5μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターで濾過した。
次に、この溶液を用いて、洗浄後乾燥させたITO電極付ガラス基板のITO電極が設けられた側の面上に、スピンコート法により塗布して膜厚50nmのバッファ層を形成した。十分乾燥させた後、正孔輸送性材料として電荷輸送性ポリエーテル〔化合物(IX)〕(Mw=9.00×10)0.5質量部を、発光材料として発光性高分子〔化合物(X)、ポリフルオレン系、Mw≒10〕0.1質量部をそれぞれ混合して、これらの混合物を5質量%溶解させたクロロベンゼン溶液を目開き0.1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターで濾過して得られた溶液をスピンコート法により塗布して膜厚50nmの電荷輸送能を有する発光層を形成した。
形成された電荷輸送能を有する発光層を十分乾燥させた後、最後に陰極としてフッ化リチウム(LiF)を1nmの膜厚で、カルシウム(Ca)を20nmの膜厚で、アルミニウムを150nmの膜厚で順に蒸着により積層して、2mm幅、0.15μm厚の背面電極をITO電極と交差するように形成した。形成された有機電界発光素子の有効面積は0.04cmであった。
(実施例4)
発光材料として発光性高分子(下記化合物(XII)、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)系の化合物、Mw≒10)を用いた以外は、実施例1と同様にして有機電界発光素子を作製した。
Figure 2008016505
(実施例5)
発光材料として発光性高分子(化合物(XII)、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)系の化合物、Mw≒10)を用いた以外は、実施例2と同様にして有機電界発光素子を作製した。
(実施例6)
発光材料として発光性高分子(化合物(XII)、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)系の化合物、Mw≒10)を用いた以外は、実施例3と同様にして有機電界発光素子を作製した。
(実施例7)
正孔輸送性材料として電荷輸送性ポリエーテル〔化合物(XIII)〕(Mw=8.03×10)を用いた以外は、実施例2と同様にして有機電界発光素子を作製した。
Figure 2008016505
(実施例8)
正孔輸送性材料として電荷輸送性ポリエーテル〔化合物(XIII)〕(Mw=8.03×10)を用いた以外は、実施例5と同様にして有機電界発光素子を作製した。
(実施例9)
正孔輸送性材料として電荷輸送性ポリエーテル〔化合物(XIV)〕(Mw=1.04×10)を用いた以外は、実施例2と同様にして有機電界発光素子を作製した。
Figure 2008016505
(実施例10)
正孔輸送性材料として電荷輸送性ポリエーテル〔化合物(XIV)〕(Mw=1.04×10)を用いた以外は、実施例5と同様にして有機電界発光素子を作製した。
(比較例1)
正孔輸送性材料として電荷輸送性ポリエーテル〔化合物(IX)〕(Mw=9.00×10)を用いて膜厚15nmの正孔輸送層を形成した以外は、実施例1と同様にして有機電界発光素子を作製した。
(比較例2)
正孔輸送性材料として電荷輸送性ポリエーテル〔化合物(IX)〕(Mw=9.00×10)を用いて膜厚15nmの正孔輸送層を形成した以外は、実施例2と同様にして有機電界発光素子を作製した。
(比較例3)
正孔輸送性材料として電荷輸送性ポリエーテル〔化合物(IX)〕(Mw=9.00×10)0.5質量部を、発光材料として発光性高分子〔化合物(X)、ポリフルオレン系、Mw≒10〕0.1質量部をそれぞれ混合して溶解したクロロベンゼン溶液を使用してスピンコート法により塗布して膜厚15nmの電荷輸送能を有する発光層を形成した以外は、実施例3と同様にして有機電界発光素子を作製した。
(比較例4)
正孔輸送性材料として電荷輸送性ポリエーテル〔化合物(IX)〕(Mw=9.00×10)を用いて膜厚110nmの正孔輸送層を形成した以外は、実施例1と同様にして有機電界発光素子を作製した。
(比較例5)
正孔輸送性材料として電荷輸送性ポリエーテル〔化合物(IX)〕(Mw=9.00×10)を用いて膜厚110nmの正孔輸送層を形成した以外は、実施例2と同様にして有機電界発光素子を作製した。
(比較例6)
正孔輸送性材料として電荷輸送性ポリエーテル〔化合物(IX)〕(Mw=9.00×10)0.5質量部を、発光材料として発光性高分子〔化合物(X)、ポリフルオレン系、Mw≒10〕0.1質量部をそれぞれ混合して溶解したクロロベンゼン溶液を使用してスピンコート法により塗布して膜厚110nmの電荷輸送能を有する発光層を形成した以外は、実施例3と同様にして有機電界発光素子を作製した。
(比較例7)
陰極としてカルシウム(Ca)を20nmの膜厚で、アルミニウムを150nmの膜厚で順に蒸着により積層して、2mm幅、0.15μm厚の背面電極をITO電極と交差するように形成した以外は、実施例2と同様にして有機電界発光素子を作製した。
(比較例8)
陰極として銀(Ag)とマグネシウム(Mg)の合金を150nmの膜厚で共蒸着により、2mm幅、0.15μm厚の背面電極をITO電極と交差するように形成した以外は、実施例2と同様にして有機電界発光素子を作製した。
(比較例9)
バッファ層形成用の溶液として、バイトロン(Baytron)Pを用いて膜厚5nmのバッファ層を形成し、正孔輸送性材料として電荷輸送性ポリエーテル〔化合物(XIV)〕(Mw=1.04×10)を用いて膜厚30nmの正孔輸送層を形成し、さらに発光材料として発光性高分子〔化合物(XII)、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)系の化合物、Mw≒10〕を用いて膜厚60nmの発光層を形成した以外は、実施例2と同様にして有機電界発光素子を作製した。
(比較例10)
バッファ層形成用の溶液として、バイトロン(Baytron)Pを用いて膜厚5nmのバッファ層を形成し、正孔輸送性材料として電荷輸送性ポリエーテル〔化合物(XIV)〕(Mw=1.04×10)を用いて膜厚15nmの正孔輸送層を形成し、さらに発光材料として発光性高分子〔化合物(XII)、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)系の化合物、Mw≒10〕を用いて膜厚60nmの発光層を形成した以外は、実施例2と同様にして有機電界発光素子を作製した。
(評価)
以上のように作製した有機電界発光素子を、真空中(1.33×10−1Pa)でITO電極側をプラス、背面電極側をマイナスとして5Vの直流電圧を印加し、発光について測定を行い、このときの立ち上がり電圧、最高輝度を評価した。それらの結果を表1に示す。
また、乾燥窒素中で有機電界発光素子の発光寿命の測定を行った。発光寿命の評価は、初期輝度が100cd/mとなるように電流値を設定し、定電流駆動により輝度が初期値から半減するまでの時間を素子寿命(hour)とした。この時の駆動電流密度を素子寿命と共に表1に示す。
Figure 2008016505
表1からわかるように、実施例1〜10に示す本発明の有機電界発光素子は、陽極(ITO電極)と接して、特定の電荷注入材料を含むバッファ層を形成することにより電荷の注入性や電荷バランスが改善されると共に、特定の電荷輸送性ポリエステルを含む層のうち最も陰極に近くに位置する層(正孔輸送層、電荷輸送能を持つ発光層)の膜厚を適正な範囲にすることにより、電荷の注入性や輸送性や電荷バランスが改善され、極端に薄い膜厚の比較例1〜3と厚い膜厚の比較例4〜6の有機電界発光素子よりもより安定的で高輝度、高効率な特性を示し、素子寿命や発光輝度が優れていることがわかった。
また、実施例2と、比較例7・8との比較からわかるように特定の電荷輸送性ポリエーテルを用い、且つ陰極構成(背面電極構成)を持つ実施例2の方が、素子寿命や発光輝度が優れていることがわかった。
また、実施例2と、比較例9・10との比較からわかるようにバッファ層・正孔輸送層の膜厚いずれも適正な範囲内の膜厚である実施例2の方が、素子寿命や発光輝度が優れていることがわかった。
加えて、いずれの実施例においても成膜時のピンホールや剥離欠陥も発生しないことがわかった。
従って、本発明の有機電界発光素子は、その作製に際してスピンコーティング法やディップ法等を用いて良好な薄膜を形成することができるため、ピンホール等の不良も少なく、大面積化容易であり、有機電界発光素子として優れた耐久性と発光特性とを得ることができる。
本発明の有機電界発光素子の層構成の一例を示した概略構成図である。 本発明の有機電界発光素子の層構成の他の一例を示した概略構成図である。 本発明の有機電界発光素子の層構成の他の一例を示した概略構成図である。
符号の説明
1 透明絶縁体基板
2 透明電極
3 バッファ層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 電子輸送層
7 電荷輸送能を有する発光層
8 背面電極

Claims (12)

  1. 少なくとも一方が透明又は半透明である一対の陽極及び陰極と、前記陽極及び陰極の電極間に挾持された有機化合物層と、を有し、
    前記有機化合物層が、発光層及びバッファ層を少なくとも含む2以上の層からなり、
    前記有機化合物層の少なくとも一層が少なくとも1種の電荷輸送性ポリエーテルを含有し、前記電荷輸送性ポリエーテルが下記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位を有してなり、
    前記電荷輸送性ポリエーテルを含有する有機化合物層の内で最も陽極に近い側に位置する有機化合物層の膜厚が、20nm以上100nm以下の範囲内であり、
    前記バッファ層が、前記陽極と接して設けられ、且つ1種以上の電荷注入材料を含有し、前記電荷注入材料の少なくとも1種が下記一般式(II)で示される構造単位を有する電荷輸送性高分子であり、
    前記陰極が、前記有機化合物層に接する第1の層であってアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属ハロゲン化物、及びアルカリ土類金属ハロゲン化物から選択される少なくとも1種を含有する第1の層と、前記第1の層に接する第2の層であってアルカリ金属、及びアルカリ土類金属から選択される少なくとも1種を含有する第2の層と、を有する、
    ことを特徴とする有機電界発光素子。
    Figure 2008016505

    Figure 2008016505

    (一般式(I−1)及び(I−2)中、Arは置換もしくは未置換の1価の芳香族基を表し、Xは置換もしくは未置換の2価の芳香族基を表し、k、m、lは0又は1を表し、Tは炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素又は炭素数2〜10の分枝状炭化水素を表す。また、一般式(II)中、nは100〜10000の範囲内の整数を表す。)
  2. 前記有機化合物層が、少なくとも前記バッファ層、正孔輸送層、前記発光層、及び電子輸送層を前記陽極側からこの順に積層して構成され、
    前記正孔輸送層及び前記電子輸送層のうち少なくとも前記正孔輸送層が、前記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位を有する電荷輸送性ポリエーテルを少なくとも1種含有し、
    前記陽極と前記正孔輸送層との間に、前記バッファ層を設けた、
    ことを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
  3. 前記発光層が、前記電荷輸送性ポリエーテル以外の電荷輸送性材料を含むことを特徴とする請求項2に記載の有機電界発光素子。
  4. 前記正孔輸送層の膜厚が、20nm以上100nm以下の範囲内であることを特徴とする請求項2に記載の有機電界発光素子。
  5. 前記有機化合物層が、少なくとも前記バッファ層、正孔輸送層、及び前記発光層を前記陽極側からこの順に積層して構成され、
    前記正孔輸送層及び前記発光層のうち少なくとも正孔輸送層が、前記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位を有する電荷輸送性ポリエーテルを少なくとも1種含有し、
    前記陽極と前記正孔輸送層との間に、前記バッファ層を設けた、
    ことを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
  6. 前記発光層が、前記電荷輸送性ポリエーテル以外の電荷輸送性材料を含むことを特徴とする請求項5に記載の有機電界発光素子。
  7. 前記正孔輸送層の膜厚が、20nm以上100nm以下の範囲内であることを特徴とする請求項5に記載の有機電界発光素子。
  8. 前記有機化合物層が、少なくとも前記バッファ層、及び電荷輸送能を有する発光層をこの順に積層して構成され、
    前記電荷輸送能を有する発光層が、前記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位を有する電荷輸送性ポリエーテルを少なくとも1種含有し、
    前記陽極と前記電荷輸送能を有する発光層との間に、前記バッファ層を設けた、
    ことを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
  9. 前記電荷輸送能を有する発光層の膜厚が、20nm以上100nm以下の範囲内であることを特徴とする請求項8に記載の有機電界発光素子。
  10. 前記陰極が、前記第1の層と、前記第2の層と、前記第2の層に接する第3の層であってアルミニウムを含む第3の層とを、前記有機化合物層側から順に積層して構成されることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
  11. 前記バッファ層の膜厚が、10nm以上200nm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
  12. 前記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位を有する電荷輸送性ポリエーテルが、下記一般式(III)で示される電荷輸送性ポリエーテルであることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
    Figure 2008016505

    (一般式(III)中、Aは上記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択される少なくとも1種を表し、Rは水素原子、アルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、又は、置換もしくは未置換のアラルキル基を表し、pは5〜5000の整数を表す。)
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