JP4078922B2 - 有機電界発光素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機電界発光素子(以下、「有機EL素子」という)に関し、詳しくは、特定の電荷輸送性ポリマーを用いた有機EL素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電界発光素子(以下、「EL素子」という)は、自発光性の全固体素子であり、視認性が高く衝撃にも強いため、広く応用が期待されている。上記EL素子としては、現在は無機螢光体を用いたものが主流であるが、200V以上の交流電圧が駆動に必要なため、製造コストが高く、また輝度が不十分等の問題点を有している。
【0003】
一方、有機化合物を用いたEL素子研究は、最初アントラセン等の単結晶を用いて始まったが、単結晶の場合、膜厚が1mm程度と厚く、100V以上の駆動電圧が必要であった。そのため、蒸着法による薄膜化が試みられているが(Thin Solid Films,Vol.94,171(1982))、この方法で得られた薄膜は、駆動電圧が30Vと未だ高く、また、膜中における電子・ホールキャリアの密度が低く、キャリアの再結合によるフォトンの生成確率が低いため十分な輝度が得られなかった。
【0004】
ところが近年、ホール輸送性有機低分子化合物と電子輸送能を持つ螢光性有機低分子化合物との薄膜を、真空蒸着法により順次積層した機能分離型のEL素子において、10V程度の低駆動電圧で1000cd/m2以上の高輝度が得られるものが報告されており(Appl.Phys.Lett.,Vol.51,913(1987)、特開昭59−194393号公報)、以来、積層型のEL素子の研究・開発が活発に行われている。これら積層型のEL素子においては、ホールと電子とが、電極から電荷輸送性の有機化合物からなる電荷輸送層を介してホールと電子とのキャリアバランスを保ちながら螢光性有機化合物からなる発光層に注入され、発光層中に閉じ込められた前記ホールと電子とが再結合することにより高輝度の発光を実現している。
【0005】
しかしながら、このタイプのEL素子では、複数の蒸着工程において膜厚が0.1μm以下の薄膜を形成していくためピンホールを生じ易く、十分な性能を得るためには厳しく管理された条件下で膜厚の制御を行うことが必要である。従って、生産性が低くかつ大面積化が難しいという問題がある。また、このEL素子は、数mA/cm2という高い電流密度で駆動されるため、大量のジュール熱を発生する。このため、蒸着によってアモルファスガラス状態で製膜された電荷輸送性低分子化合物や螢光性有機低分子化合物が、次第に結晶化して最後には融解し、輝度の低下や絶縁破壊が生じるという現象が多く見られ、その結果素子の寿命が低下するという問題も有していた。
【0006】
そこで、上記EL素子の熱安定性に関する問題の解決のために、ホール輸送材料として安定なアモルファスガラス状態が得られる、スターバーストアミンを用いたり(第40回応用物理学関係連合講演会予稿集,30a−SZK−14(1993)等)、ポリフォスファゼンの側鎖にトリフェニルアミンを導入したポリマーを用いたりしたEL素子(第42回高分子討論会予稿集,20J21(1993))が報告されている。
【0007】
しかし、これら単独ではホール輸送材料のイオン化ポテンシャルに起因するエネルギー障壁が存在するため、陽極からのホール注入性あるいは発光層へのホール注入性を満足することができない。また、前者のスターバーストアミンの場合には、溶解性が小さいために精製が難しく、純度を上げることが困難であることや、後者のポリマーの場合には、高い電流密度が得られず十分な輝度が得られてない等の問題も存在する。
【0008】
一方、積層型有機EL素子における生産性と大面積化とに関する問題の解決を目指し、単層構造のEL素子についても研究・開発が進められ、ポリ(p−フェニレンビニレン)等の導電性高分子を用いたり(Nature,Vol.357,477(1992)、Nature,Vol.397,121(1999))、ホール輸送性ポリビニルカルバゾール中に電子輸送材料と螢光色素とを混入した素子(第38回応用物理学関係連合講演会予稿集,31p−G−12(1991))が提案されているが、未だ輝度、発光効率等が有機低分子化合物を用いた積層型EL素子には及ばない。
【0009】
さらに、作製法においては、製造の簡略化、加工性、大面積化、コスト等の観点から、湿式による塗布方式が望ましく、キャステイング法によっても素子が得られることが報告されている(第50回応用物理学会学術講演予稿集,29p−ZP−5(1989)、第51回応用物理学会学術講演予稿集,28a−PB−7(1990))。しかし、電荷輸送材料の溶剤や樹脂に対する溶解性や相溶性が悪いため結晶化しやすく、製造上あるいは特性上に問題があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決することを目的とする。すなわち本発明は、十分な輝度を有し、安定性及び耐久性に優れ、かつ大面積化が可能であり、製造容易な有機EL素子を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明者らは電荷輸送材料に関し鋭意検討した結果、下記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造より選択された少なくとも1種を部分構造として含む電荷輸送性ポリエステルが、有機EL素子として好適な電荷注入特性、電荷移動度、薄膜形成能を有するだけでなく、固体状態において極めて良好な発光特性を有することから、発光材料として用いた場合にも、輝度や発光効率に優れた素子として機能することを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0012】
すなわち本発明は、
<1> 少なくとも一方が透明または半透明である陽極及び陰極よりなる一対の電極間に挾持された、一つまたは複数の有機化合物層より構成される電界発光素子において、該有機化合物層の少なくとも一層が、下記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルを1種以上含有し、該電荷輸送性ポリエステルが、下記一般式( II −1)または( II −2)で示されるポリエステルであることを特徴とする有機電界発光素子である。
【0013】
【化3】
【0014】
一般式(I−1)及び(I−2)中、Xは置換または未置換の2価の芳香族基を表す。Tは炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素、または炭素数2〜10の分枝状炭化水素を表し、i、j、kは0または1を表す。R1は水素原子、炭素数1〜10の飽和もしくは不飽和炭化水素基、炭素数1〜4のアルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子、置換アミノ基、置換もしくは未置換のアリール基、または置換もしくは未置換のアラルキル基を表す。
【化2】
式中、Aは上記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を表し、Rは水素原子、アルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、または置換もしくは未置換のアラルキル基を表し、Yは2価のアルコール残基を表し、Zは2価のカルボン酸残基を表し、mは1〜5の整数を表し、pは5〜5000の整数を表す。B及びB’は、それぞれ独立に−O−(Y−O) m −Rまたは−O−(Y−O) m −CO−Z−CO−O−R’(ここで、R、Y、Z、m、pは上記と同様であり、R’はアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、または置換もしくは未置換のアラルキル基を表す。)を表す。
【0015】
<2> 前記有機化合物層が少なくともキャリア輸送能を持つ発光層及び電子輸送層から構成され、前記発光層が、前記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルを、少なくとも1種含有してなることを特徴とする<1>に記載の有機電界発光素子である。
【0016】
<3> 前記有機化合物層が少なくともホール輸送層、発光層及び電子輸送層から構成され、前記発光層が、前記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルを、少なくとも1種含有してなることを特徴とする<1>に記載の有機電界発光素子である。
【0017】
<4> 前記有機化合物層が少なくともキャリア輸送能を持つ発光層から構成され、前記発光層が、前記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルを、少なくとも1種含有してなることを特徴とする<1>に記載の有機電界発光素子である。
【0018】
<5> 前記有機化合物層が少なくともホール輸送層及びキャリア輸送能を持つ発光層から構成され、前記発光層もしくはホール輸送層のうち少なくとも1つの層が、前記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルを、少なくとも1種含有してなることを特徴とする<1>に記載の有機電界発光素子である。
【0019】
<6> 前記発光層が、電荷輸送性材料を含むことを特徴とする<2>に記載の有機電界発光素子である。
【0020】
<7> 前記発光層が、電荷輸送性材料を含むことを特徴とする<3>に記載の有機電界発光素子である。
【0021】
<8> 前記発光層が、電荷輸送性材料を含むことを特徴とする<4>に記載の有機電界発光素子である。
【0022】
<9> 前記発光層が、電荷輸送性材料を含むことを特徴とする<5>に記載の有機電界発光素子である。
【0034】
なお、本発明の有機EL素子において、前記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルは、機能分離された複数の層が積層されたもの、例えば、少なくともホール輸送層及び発光層が積層された積層型、あるいは有機化合物層がキャリア輸送能と発光能を兼ね備えた単層型のいずれにも用いられる。また、積層型の発光層、あるいは単層型の有機化合物層に含有される場合には、他に電荷輸送性材料や発光性化合物を同時に含有してもよい。
【0035】
【発明の実施の形態】
本発明の有機EL素子は、少なくとも一方が透明または半透明である陽極及び陰極よりなる一対の電極間に挾持された、一つまたは複数の有機化合物層より構成され、該有機化合物層の少なくとも一層が、下記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステル(以下、単に「電荷輸送性ポリエステル」ということがある)を1種以上含有することを特徴とする。
【0036】
【化5】
【0037】
一般式(I−1)及び(I−2)中、Xは置換または未置換の2価の芳香族基を表す。Tは炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素、または炭素数2〜10の分枝状炭化水素を表し、i、j、kは0または1を表す。R1は水素原子、炭素数1〜10の飽和もしくは不飽和炭化水素基、炭素数1〜4のアルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子、置換アミノ基、置換もしくは未置換のアリール基、または置換もしくは未置換のアラルキル基を表す。
【0038】
上記電荷輸送性ポリエステルを有機化合物層の少なくとも一層に用いることにより、電荷の移動度を大きくすることができるため、低電流で高い発光輝度を有する有機EL素子を得ることができる。また、電荷輸送層形成にあたり、低分子の電荷輸送材料を高分子材料中に分散(相溶)させる必要がないため、高分子材料のガラス転移温度を低下させることがなく、有機EL素子の耐熱性、耐久性を向上させることができる。
【0039】
一般式(I−1)及び(I−2)中、Xは、置換または未置換の2価の芳香族基を表し、具体的な例としては下記の式(1)〜(13)が挙げられる。
【0040】
【化6】
【0041】
式(1)〜(13)中、R2〜R10は、それぞれ水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシル基、置換もしくは未置換のフェニル基、置換もしくは未置換のアラルキル基、またはハロゲン原子を表し、a、bは0〜10の整数を表し、Vは下記の式(14)〜(31)から選択される基を表す。
【0042】
【化7】
【0043】
式(14)〜(31)中、c、d、eは1〜10の整数、f、g、hは0〜10の整数を表す。
【0044】
これらの中でも、前記Xが下記構造式(32)または(33)で示されるビフェニレン構造を有する場合、「The Sixth InternationalCongress on Advances in Non−impact Printing Technologies,306,(1990) 」にも報告されているように、モビリティーが高いポリマーが得られることから、特に好ましい。
【0045】
【化8】
【0046】
なお、一般式(I−1)及び(I−2)中、Tは炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素、または炭素数2〜10の分枝状炭化水素を表し、具体的な例としては以下の構造を挙げることができる。
【0047】
【化9】
【0048】
以下、一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造の具体例を表1〜表14示すが、本発明はこれら具体例に限定されるわけではない。なお、表1〜表7における構造番号1〜59は一般式(I−1)で示される構造の具体例を示し、表8〜表14における構造番号60〜114は一般式(I−2)で示される構造の具体例を示す。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
【表4】
【0053】
【表5】
【0054】
【表6】
【0055】
【表7】
【0056】
【表8】
【0057】
【表9】
【0058】
【表10】
【0059】
【表11】
【0060】
【表12】
【0061】
【表13】
【0062】
【表14】
【0063】
一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルとしては、下記一般式(II−1)または(II−2)で示されるものが使用される。
【0064】
【化10】
【0065】
式中、Aは上記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を表し、Rは水素原子、アルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、または置換もしくは未置換のアラルキル基を表し、Yは2価のアルコール残基を表し、Zは2価のカルボン酸残基を表し、mは1〜5の整数を表し、pは5〜5000の整数を表すが、pは10〜1000の範囲であることが好ましい。B及びB’は、それぞれ独立に−O−(Y−O)m−Rまたは−O−(Y−O)m−CO−Z−CO−O−R’(ここで、R、Y、Z、m、pは上記と同様であり、R’はアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、または置換もしくは未置換のアラルキル基を表す。)を表す。
【0066】
一般式(II−1)または(II−2)式中の、Y及びZの具体的な例としては下記の式(34)〜(40)から選択された基が挙げられる。
【0067】
【化11】
【0068】
式(34)〜(40)中、R11及びR12は、それぞれ水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシル基、置換もしくは未置換のフェニル基、置換もしくは未置換のアラルキル基、またはハロゲン原子を表し、α及びβはそれぞれ1〜10の整数を、γ及びδはそれぞれ0、1または2の整数を、η及びρはそれぞれ0または1を表す。また、Vの具体例としては、前記式(14)〜(31)を挙げることができる。
【0069】
以下、表15〜表21に、一般式(II−1)及び(II−2)で示される電荷輸送性ポリエステルの具体的な例を示すが、本発明はこれら具体例に限定されるわけではない。なお、表15〜表21において、モノマー列のA欄の番号は、前記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造の具体例である表1〜表14で示した構造番号に対応している。また、Zの欄が「−」であるものは一般式(II−1)で示される電荷輸送性ポリエステルの具体例を示し、Zの欄が「−」以外であるものは一般式(II−2)で示される電荷輸送性ポリエステルの具体例を示す。以下、各番号を付した具体例、例えば、15の番号を付した具体例は例示化合物(15)という。
【0070】
【表15】
【0071】
【表16】
【0072】
【表17】
【0073】
【表18】
【0074】
【表19】
【0075】
【表20】
【0076】
【表21】
【0077】
前記電荷輸送性ポリエステルの質量平均分子量Mwは、10,000〜300,000の範囲にあることが好ましく、50,000〜200,000の範囲にあることがより好ましい。
【0078】
前記電荷輸送性ポリエステルは、下記構造式(III−1)〜(IV−2)で示される電荷輸送性モノマーを、例えば、第4版実験化学講座第28巻(丸善、1992)、新高分子実験学第2巻(共立出版、1995)、等に記載された公知の方法で重合させることによって合成することができる。
【0079】
なお、構造式(III−1)〜(IV−2)中、T、mは、各々前記一般式(I−1)、(I−2)、(II−1)、及び(II−2)におけるT、mと各々同様である。また、A’は脱アルコールにより重合(エステル結合形成)させるため、前記モノマー末端をアルコール化するための2価アルコール等との反応基を表す。
【0080】
【化12】
【0081】
具体的には、例えば、一般式(III−1)及び(III−2)で示される電荷輸送性モノマーの場合、電荷輸送性ポリエステルは、次のようにして合成することができる。
まず、上記(III−1)式及び(III−2)式におけるA’が水酸基の場合には、HO−(Y−O)m−Hで示される2価アルコール類をほぼ当量混合し、酸触媒を用いて重合する。
【0082】
酸触媒としては、硫酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等、通常のエステル化反応に用いるものが使用でき、触媒量としては、電荷輸送性モノマー1質量部に対して、1/10,000〜1/10質量部の範囲であることが好ましく、1/1,000〜1/50質量部の範囲であることがより好ましい。
【0083】
重合中に生成する水を除去するために、水と共沸可能な溶剤を用いることが好ましく、トルエン、クロロベンゼン、1−クロロナフタレン等が有効であり、電荷輸送性モノマー1質量部に対して、1〜100質量部、好ましくは2〜50質量部の範囲で用いられる。反応温度は任意に設定できるが、重合中に生成する水を除去するために、溶剤の沸点で反応させることが好ましい。
【0084】
反応終了後、溶剤を用いなかった場合には溶解可能な溶剤に溶解させる。溶剤を用いた場合には、反応溶液をそのまま、メタノール、エタノール等のアルコール類や、アセトン等のポリマーが溶解しにくい貧溶剤中に滴下し、電荷輸送性ポリエステルを析出させ、電荷輸送性ポリエステルを分離した後、水や有機溶剤で十分洗浄し、乾燥させる。更に、必要であれば適当な有機溶剤に溶解させ、貧溶剤中に滴下し、電荷輸送性ポリエステルを析出させる再沈殿処理を繰り返してもよい。再沈殿処理の際には、メカニカルスターラー等で、効率よく撹拌しながら行うことが好ましい。
【0085】
上記再沈殿処理の際に電荷輸送性ポリエステルを溶解させる溶剤の量は、電荷輸送性ポリエステル1質量部に対して、1〜100質量部の範囲であることが好ましく、2〜50質量部の範囲であることがより好ましい。また、貧溶剤の量は、電荷輸送性ポリエステル1質量部に対して、1〜1,000質量部の範囲であることが好ましく、10〜500質量部の範囲であることがより好ましい。
【0086】
前記A’がハロゲンの場合には、HO−(Y−O)m−Hで示される2価アルコール類をほぼ当量混合し、ピリジンやトリエチルアミン等の有機塩基性触媒を用いて重合する。上記有機塩基性触媒の量は、電荷輸送性モノマー1当量に対して、1〜10当量の範囲であることが好ましく、2〜5当量の範囲であることがより好ましい。
【0087】
溶剤としては、塩化メチレン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、クロロベンゼン、1−クロロナフタレン等が有効であり、溶剤量は、電荷輸送性モノマー1質量部に対して、1〜100質量部の範囲であることが好ましく、2〜50質量部の範囲であることがより好ましい。反応温度は任意に設定できる。重合後、前述のように再沈殿処理し、精製する。
【0088】
また、ビスフェノール等の酸性度の高い2価アルコール類の場合には、界面重合法も用いることができる。すなわち、2価アルコール類を水に加え、当量の塩基を加えて溶解させた後、激しく撹拌しながら2価アルコール類と当量の電荷輸送性モノマー溶液を加えることによって重合することができる。この際、水の量は、2価アルコール類1質量部に対して1〜1,000質量部の範囲であることが好ましく、2〜500質量部の範囲であることがより好ましい。
【0089】
電荷輸送性モノマーを溶解させる溶剤としては、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トルエン、クロロベンゼン、1−クロロナフタレン等が有効である。反応温度は任意に設定でき、反応を促進するために、アンモニウム塩、スルホニウム塩等の相間移動触媒を用いることが効果的である。相間移動触媒の量は、電荷輸送性モノマー1質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲であることが好ましく、0.2〜5質量部の範囲であることがより好ましい。
【0090】
前記A’がアルコキシル基の場合には、前述の構造式(III−1)及び(III−2)で示される電荷輸送性ポリマーに、HO−(Y−O)m−Hで示される2価アルコール類を過剰に加え、硫酸、リン酸等の無機酸、チタンアルコキシド、カルシウム及びコバルト等の酢酸塩あるいは炭酸塩、亜鉛や鉛の酸化物を触媒に用いて加熱し、エステル交換により合成することができる。
【0091】
前記2価アルコール類の量は、電荷輸送性モノマー1当量に対して、2〜100当量の範囲であることが好ましく、3〜50当量の範囲であることがより好ましい。また、触媒の量は、ホール輸送性モノマー1質量部に対して1/10,000〜1質量部の範囲であることが好ましく、1/1,000〜1/2質量部の範囲であることがより好ましい。
【0092】
反応は、反応温度200〜300℃の範囲で行い、前記アルコキシル基から−O−(Y−O)m−Hへのエステル交換終了後は、HO−(Y−O)m−Hの脱離による重合を促進するため、減圧下で反応させることが好ましい。また、HO−(Y−O)m−Hと共沸可能な1−クロロナフタレン等の高沸点溶剤を用いて、常圧下でHO−(Y−O)m−Hを共沸で除きながら反応させることもできる。
【0093】
また、一般式(II−2)で示される電荷輸送性ポリエステルは、次のようにして合成することができる。上記の一般式(II−1)で示される電荷輸送性ポリエステルの合成におけるそれぞれの場合において、2価アルコール類を過剰に加えて反応させることによって、下記構造式(IV−1)及び(IV−2)で示される化合物を生成した後、これを電荷輸送性モノマーとして用いて上記と同様の方法で、2価カルボン酸または2価カルボン酸ハロゲン化物等と反応させればよく、それによって電荷輸送性ポリエステルを得ることができる。
【0094】
【化13】
【0095】
なお、上記式中、R1、X、Y、T、i、j、m及びkは前述の通りである。
次に、本発明の有機EL素子の層構成について詳記する。
本発明の有機EL素子は、少なくとも一方が透明または半透明である一対の電極と、それら電極間に挾持された発光層を含む一つまたは複数の有機化合物層とから構成され、該有機化合物層の少なくとも1層に前記電荷輸送性ポリエステルを含有してなる。
【0096】
本発明の有機EL素子においては、有機化合物層が1つの場合は、有機化合物層はキャリア輸送能を持つ発光層を意味し、該発光層が前記電荷輸送性ポリエステルを含有してなる。また、有機化合物層が複数の場合(機能分離型の場合)は、その少なくとも1つは発光層(この発光層はキャリア輸送能を有していてもよいし、有していなくてもよい)であり、他の有機化合物層は、キャリア輸送層、すなわち、ホール輸送層、電子輸送層、または、ホール輸送層及び電子輸送層よりなるものを意味し、これらの少なくとも1層が前記電荷輸送性ポリエステルを含有してなる。
【0097】
具体的には、例えば、少なくとも発光層及び電子輸送層から構成される有機EL素子、少なくともホール輸送層、発光層及び電子輸送層から構成される有機EL素子、あるいは、少なくともホール輸送層及び発光層から構成される有機EL素子において、これらの少なくとも一層(発光層、ホール輸送層、電子輸送層)が前記電荷輸送性ポリエステルを含有してなるもの等が挙げられる。
【0098】
本発明の有機EL素子においては、発光層が、低分子の電荷輸送性材料(前記電荷輸送性ポリエステル以外のホール輸送性材料、電子輸送性材料)を含有していることが好ましい。詳しくは、後述する。
【0099】
以下、図面を参照しつつ、より詳細に説明するが、本発明の有機EL素子は、これらに限定されるわけではない。
図1〜図4は、本発明の有機EL素子の層構成を説明するための模式的断面図であって、図1、図2、図4は、有機化合物層が複数の場合の一例であり、図3は、有機化合物層が1つの場合の例を示す。なお、図1〜図4において、同様の機能を有するものは同じ符号を付して説明する。
【0100】
図1に示す有機EL素子は、透明絶縁体基板1表面に、透明電極2、キャリア輸送能を持つ発光層6、電子輸送層5及び背面電極7を順次積層してなる。図2に示す有機EL素子は、透明絶縁体基板1表面に、透明電極2、ホール輸送層3、発光層4、電子輸送層5及び背面電極7を順次積層してなる。図3に示す有機EL素子は、透明絶縁体基板1表面に、透明電極2、キャリア輸送能を持つ発光層6及び背面電極7を順次積層してなる。図4に示す有機EL素子は、透明絶縁体基板1表面に、透明電極2、ホール輸送層3、キャリア輸送能を持つ発光層6及び背面電極7を順次積層してなる。以下、各々を詳しく説明する。
【0101】
なお、図1、図2及び図4に示す有機EL素子は、発光材料(発光層)が、明確なキャリア輸送性を示さないものを用いる場合に、有機EL素子の耐久性向上あるいは発光効率の向上を図る目的で、発光層4あるいはキャリア輸送能を持つ発光層6と透明電極2との間にホール輸送層を設けたり、発光層4あるいはキャリア輸送能を持つ発光層6と背面電極7との間に電子輸送層を設けたりした層構成のものである。
【0102】
本発明における前記電荷輸送性ポリエステルを含有してなる有機化合物層は、図1に示される有機EL素子の層構成の場合には、例えば、キャリア輸送能を持つ発光層6として用いることが好ましい。また、図2に示される有機EL素子の層構成の場合には、前記電荷輸送性ポリエステルを含有してなる有機化合物層を発光層4として用いることが好ましい。また、図3に示される有機EL素子の層構成の場合には、前記電荷輸送性ポリエステルを含有してなる有機化合物層をキャリア輸送能を持つ発光層6として用いることが好ましい。さらに、図4に示される有機EL素子の層構成の場合には、前記電荷輸送性ポリエステルを含有してなる有機化合物層を、例えば、ホール輸送層3、キャリア輸送能を持つ発光層6としていずれも用いることができるが、キャリア輸送能を持つ発光層6として用いることが工程数を大きく削減できるため、コスト的に好ましい。
【0103】
前記電荷輸送性ポリエステルを有機化合物層として用いる本発明の有機EL素子としては、上記各層構成の中で図3、図4の構成が、素子として作製が容易であり、電荷輸送性ポリエステルの特性を反映でき、十分な輝度、安定性、耐久性を達成できる点で好ましい構成である。
【0104】
なお、本発明における前記電荷輸送性ポリエステルが含有してなる有機化合物層は良好なホール輸送能を有し、例えば前記のように、図4で表される有機EL素子のホール輸送層3にも用いることができる。この場合、キャリア輸送能を持つ発光層6には電子輸送性の発光層が設けられ、代表的な例としては下記(V−1〜9)に示される化合物を挙げることができる。
【0105】
【化14】
【0106】
図1〜図4に示される有機EL素子の層構成の場合、発光層4もしくはキャリア輸送能を持つ発光層6は、目的に応じて機能(ホール輸送能、あるいは電子輸送能)が付与された前記電荷輸送性ポリエステルを含有する有機化合物層であることが好ましい。
【0107】
この場合の有機化合物層は、基本的には前記電荷輸送性ポリエステル単独で形成されるが、有機EL素子に注入されるホールと電子とのバランスを調節するために、前記電荷輸送性ポリエステル以外の電子輸送材料を層全体の質量に対して10〜50質量%の範囲で分散させてもよい。このような電子輸送材料としては、前記電荷輸送性ポリエステルと強い電子相互作用を示さない有機化合物を用いることが好ましく、より好ましくは下記例示化合物(VI)が用いられるが、これに限定されるものではない。
【0108】
【化15】
【0109】
同様にホール移動度を調節するために、電荷輸送性ポリエステル以外のホール輸送材料、好ましくはテトラフェニレンジアミン誘導体を層全体の質量に対して10〜50質量%の範囲で同時に分散させて用いてもよい。
【0110】
また、発光層4もしくはキャリア輸送能を持つ発光層6には、有機EL素子の耐久性向上あるいは発光効率の向上を目的として、前記電荷輸送性ポリエステルと異なる色素化合物をドーピングしてもよい。ドーピングは溶液または分散液中に所定の色素を混合することで行う。発光層中における色素化合物のドーピングの割合としては、層全体の質量の0.001〜40質量%の範囲であることが好ましく、0.01〜10質量%の範囲であることがより好ましい。
【0111】
このようなドーピングに用いられる色素化合物としては、発光材料との相溶性がよく、かつ発光層の良好な薄膜形成を妨げない有機化合物が用いられ、DCM誘導体、キナクリドン誘導体、ルブレン誘導体、ポルフィリン系化合物等が好適に用いられる。具体例として、下記の化合物(VII−1)〜(VII−4)が用いられるが、これらに限定されたものではない。
【0112】
【化16】
【0113】
図1〜図4に示される層構成の有機EL素子の場合、透明絶縁体基板1は、発光を取り出すため透明なものが好ましく、ガラス、プラスチックフィルム等が用いられる。また、透明電極2は、透明絶縁体基板1と同様に発光を取り出すため透明であって、かつホールの注入を効率よく行うために仕事関数の大きなものが好ましく、酸化スズインジウム(ITO)、酸化スズ(NESA)、酸化インジウム、酸化亜鉛等の酸化膜、及び蒸着あるいはスパッタされた金、白金、パラジウム等が好ましく用いられる。
【0114】
図1及び図2に示される層構成の有機EL素子の場合、電子輸送層5には、電子輸送能を示す化合物が電荷輸送性材料として用いられる。このような電子輸送層に用いられる電子輸送性材料としては、有機低分子の場合、真空蒸着法により良好な薄膜形成が可能な有機化合物が好ましく用いられ、具体的にはオキサジアゾール誘導体、ニトロ置換フルオレノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体等を挙げることができる。また、高分子の場合、それ自身を含む溶液または分散液を塗布・乾燥することにより良好な薄膜形成が可能であることが条件である。電子輸送性材料としては、具体的に下記の化合物(VIII−1)〜(VIII−3)が好ましく用いられるが、これらに限定されるものではない。また、他の汎用の樹脂等と混合して用いてもよい。
【0115】
【化17】
【0116】
図2及び図4に示される層構成の有機EL素子の場合、ホール輸送層3には、ホール輸送能を示す化合物が電荷輸送性材料として用いられる。該電荷輸送性材料が有機低分子の場合には、真空蒸着法、もしくは低分子と結着樹脂を含む溶液または分散液を塗布・乾燥することにより良好な薄膜形成が可能であることが材料選択の条件とされる。また、前記電荷輸送性材料が高分子の場合には、それ自身を含む溶液または分散液を塗布・乾燥することにより良好な薄膜形成が可能であることが材料選択の条件である。
【0117】
前記ホール輸送能を示す電荷輸送性材料としては、テトラフェニレンジアミン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、カルバゾール誘導、スチルベン誘導体、アリールヒドラゾン誘導体、ポルフィリン系化合物等が好ましく用いられるが、特に好適な具体例として下記例示化合物(IX−1)〜(IX−8)を挙げることができるが、これらの中では、電荷輸送性ポリエステルとの相溶性がよいことから、テトラフェニレンジアミン誘導体が好ましく用いられるが、これらに限定されるものではない。また、上記化合物を他の汎用の樹脂等と混合して用いてもよい。
【0118】
【化18】
【0119】
図1〜図4に示される層構成の有機EL素子の場合、背面電極7には、真空蒸着可能で、かつ電子注入を効率よく行うために仕事関数の小さな金属が使用されるが、特にマグネシウム、アルミニウム、銀、インジウム及びこれらの合金が好ましく用いられる。また、背面電極7の表面には、さらに素子の水分や酸素による劣化を防ぐために保護層を設けてもよい。具体的な保護層の材料としては、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al等の金属、MgO、SiO2、TiO2等の金属酸化物、ポリエチレン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂等が挙げられる。保護層の形成には、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマ重合法、CVD法、コーティング法が適用できる。
【0120】
これら図1〜図4に示される有機EL素子の各層形成は以下のように行われる。まず、透明電極2の表面に各有機EL素子の層構成に応じて、ホール輸送層3あるいはキャリア輸送能を持つ発光層6を形成する。ホール輸送層3及びキャリア輸送能を持つ発光層6は、上記各材料を真空蒸着法、もしくは有機溶媒中に溶解あるいは分散し、得られた塗布液を用いて前記透明電極2表面に製膜するスピンコーティング法、ディップ法等により形成される。
【0121】
次に、各有機EL素子の層構成に応じて、ホール輸送層3、発光層4、電子輸送層5あるいはキャリア輸送能を持つ発光層6は、上記各材料を、真空蒸着法、もしくは有機溶媒中に溶解或いは分散し、得られた塗布液を用いて前記透明電極2表面に製膜するスピンコーティング法、ディップ法等を用いることによって形成される。
【0122】
形成されるホール輸送層3、発光層4及び電子輸送層5の膜厚は、各々0.1μm以下であることが好ましく、特に0.03〜0.08μmの範囲であることが好ましい。また、キャリア輸送能を持つ発光層6の膜厚は、0.03〜0.2μmの範囲であることが好ましく、0.05〜0.1μmの範囲であることがより好ましい。
【0123】
上記各材料(前記電荷輸送性ポリエステル、発光材料等)の分散状態は分子分散状態でも微粒子分散状態でも構わない。塗布液を用いた製膜法の場合、分子分散状態とするためには、分散溶媒は上記各材料の共通溶媒を用いる必要があり、微粒子分散状態とするためには、分散溶媒は上記各材料の分散性及び溶解性を考慮して選択する必要がある。微粒子状に分散するためには、ボールミル、サンドミル、ペイントシェイカー、アトライター、ボールミル、ホモジェナイザー、超音波法等が利用できる。
【0124】
そして、最後に、電子輸送層5あるいはキャリア輸送能を持つ発光層6の表面に、背面電極7を真空蒸着法により形成することにより素子が完成される。
【0125】
本発明の有機EL素子は、一対の電極間に、例えば、4〜20Vで、電流密度1〜200mA/cm2の直流電圧を印加することによって、100cd/m2程度以上に十分発光させることができる。
【0126】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
まず、各実施例に用いた電荷輸送性ポリエステルは、例えば以下のようにして得た。
【0127】
−合成例1〔例示化合物(7)〕−
表1の14に記載のモノマー2.0g、エチレングリコール8.0g及びテトラブトキシチタン0.1gを、容量50mlのフラスコに入れ、窒素気流下、200℃で3時間加熱攪拌した。原料モノマーが消費されたことを確認した後、66.66Paに減圧してエチレングリコールを留去しながら200℃に加熱し、4時間反応を続けた。その後、室温まで冷却し、反応物をトルエン50mlに溶解して不溶物を0.1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターにて濾過し、その濾液を撹拌されたメタノール250ml中に滴下してポリマーを析出させた。得られたポリマーを濾過し、十分にメタノールで洗浄した後、乾燥させ、1.9gの電荷輸送性ポリエステル(例示化合物7)を得た。分子量はGPCにて測定したところ、Mw=7.89×104(スチレン換算)であり、モノマーの分子量から求めたpの値は約122であった。
【0128】
−合成例2〔例示化合物(33)〕−
表1の43に記載のモノマー2.0g、エチレングリコール8.0g及びテトラブトキシチタン0.1gを、容量50mlのフラスコに入れ、窒素気流下、200℃で3時間加熱攪拌した。原料モノマーが消費されたことを確認した後、66.66Paに減圧してエチレングリコールを留去しながら200℃に加熱し、4時間反応を続けた。その後、室温まで冷却し、トルエン50mlに溶解して不溶物を0.1μmのPTFEフィルターにて濾過し、その濾液を撹拌されてメタノール250ml中に滴下してポリマーを析出させた。得られたポリマーを濾過し、十分にメタノールで洗浄した後、乾燥させ、1.8gの電荷輸送性ポリエステル(例示化合物33)を得た。分子量はGPCにて測定したところ、Mw=5.98×104(スチレン換算)であり、モノマーの分子量から求めたpの値は約88であった。
【0129】
−合成例3〔例示化合物(93)〕−
表1の99に記載のモノマー2.0g、エチレングリコール8.0g及びテトラブトキシチタン0.1gを、容量50mlのフラスコに入れ、窒素気流下、200℃で3時間加熱攪拌した。原料モノマーが消費されたことを確認した後、66.66Paに減圧してエチレングリコールを留去しながら200℃に加熱し、4時間反応を続けた。その後、室温まで冷却し、トルエン50mlに溶解して不溶物を0.1μmのPTFEフィルターにて濾過し、その濾液を撹拌されたメタノール250ml中に滴下してポリマーを析出させた。得られたポリマーを濾過し、十分にメタノールで洗浄した後、乾燥させ、1.8gの電荷輸送性ポリエステル(例示化合物93)を得た。分子量はGPCにて測定したところ、Mw=1.01×105(スチレン換算)であり、モノマーの分子量から求めたpの値は約103であった。
【0130】
(実施例1)
合成例1に記載の電荷輸送性ポリエステルの5質量%ジクロロエタン溶液を調製し、0.1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターで濾過した。この溶液を用いて、2mm幅の短冊型ITO電極をエッチングにより形成したガラス基板表面に、ディップ法により塗布し、膜厚約0.1μmのホール輸送層を形成した。十分乾燥させたこのホール輸送層の表面に、発光材料として昇華精製した前記例示化合物(V−1)をタングステンボートに入れ、真空蒸着法により蒸着して、膜厚0.05μmのキャリア輸送能を持つ発光層を形成した。この時の真空度は1.33×10-3Pa、ボート温度は300℃であった。続いてこの発光層の表面にMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の背面電極をITO電極と交差するように形成した。作製された有機EL素子の有効面積は0.04cm2であった。
【0131】
以上のように作製した有機EL素子を、真空中(1.33×10-1Pa)でITO電極側をプラス、Mg−Ag背面電極をマイナスとして10Vの直流電圧を印加し、発光について測定を行い、このときの最高輝度、及び発光色を評価した。それらの結果を表22に示す。また、乾燥窒素中で有機EL素子の発光寿命の測定を行った。発光寿命の評価は、初期輝度が350cd/m2となるように電流値を設定し、定電流駆動により輝度が初期値から半減するまでの時間を素子寿命(hour)とした。この時の駆動電流密度を素子寿命と共に表22に示す。
【0132】
(実施例2)
合成例1に記載の電荷輸送性ポリエステル99質量部と、発光材料として化合物(VII−3)1質量部とを混合し、10質量%ジクロロエタン溶液を調製し、0.1μmのPTFEフィルターで濾過した。この溶液を用いて、2mm幅の短冊型ITO電極をエッチングにより形成したガラス基板表面に、ディップ法により膜厚約0.15μmのキャリア輸送能を持つ発光層を形成した。充分乾燥させた後、該キャリア輸送能を持つ発光層表面にMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の背面電極をITO電極と交差するように形成した。作製された有機EL素子の有効面積は0.04cm2であった。
上記有機EL素子について実施例1と同様の評価を行った。結果を表22に示す。
【0133】
(実施例3)
合成例1に記載の電荷輸送性ポリエステルを2質量部と、発光材料として化合物(VII−1)を0.1質量部と、電子輸送材料として前記化合物(VI)を1質量部とを混合し、10質量%ジクロロエタン溶液を調製し、0.1μmのPTFEフィルターで濾過した。この溶液を用いて、2mm幅の短冊型ITO電極をエッチングにより形成したガラス基板表面に、ディップ法により塗布して、膜厚約0.15μmのキャリア輸送能を持つ発光層を形成した。十分乾燥させた後、該キャリア輸送能を持つ発光層表面にMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の背面電極をITO電極と交差するように形成した。作製された有機EL素子の有効面積は0.04cm2であった。
上記有機EL素子について実施例1と同様の評価を行った。結果を表22に示す。
【0134】
(実施例4)
合成例1に記載の電荷輸送性ポリエステルの5質量%ジクロロエタン溶液を調製し、0.1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターで濾過した。この溶液を用いて、2mm幅の短冊型ITO電極をエッチングにより形成したガラス基板表面に、ディップ法により塗布し、膜厚約0.1μmのキャリア輸送能を持つ発光層を形成した。十分乾燥させた後、該キャリア輸送能を持つ発光層表面にMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の背面電極をITO電極と交差するように形成した。作製された有機EL素子の有効面積は0.04cm2であった。
上記有機EL素子について実施例1と同様の評価を行った。結果を表22に示す。
【0135】
(実施例5)
合成例2の電荷輸送性ポリエステルを用いた以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
上記有機EL素子について実施例1と同様の評価を行った。結果を表22に示す。
【0136】
(実施例6)
合成例2の電荷輸送性ポリエステルを用いた以外は実施例2と同様にして有機EL素子を作製した。
上記有機EL素子について実施例1と同様の評価を行った。結果を表22に示す。
【0137】
(実施例7)
合成例2の電荷輸送性ポリエステルを用いた以外は実施例3と同様にして有機EL素子を作製した。
上記有機EL素子について実施例1と同様の評価を行った。結果を表22に示す。
【0138】
(実施例8)
合成例2の電荷輸送性ポリエステルを用いた以外は実施例4と同様にして有機EL素子を作製した。
上記有機EL素子について実施例1と同様の評価を行った。結果を表22に示す。
【0139】
(実施例9)
合成例3の電荷輸送性ポリエステルを用いた以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
上記有機EL素子について実施例1と同様の評価を行った。結果を表22に示す。
【0140】
(実施例10)
合成例3の電荷輸送性ポリエステルを用いた以外は実施例2と同様にして有機EL素子を作製した。
上記有機EL素子について実施例1と同様の評価を行った。結果を表22に示す。
【0141】
(実施例11)
合成例3の電荷輸送性ポリエステルを用いた以外は実施例3と同様にして有機EL素子を作製した。
上記有機EL素子について実施例1と同様の評価を行った。結果を表22に示す。
【0142】
(実施例12)
合成例3の電荷輸送性ポリエステルを用いた以外は実施例4と同様にして有機EL素子を作製した。
上記有機EL素子について実施例1と同様の評価を行った。結果を表22に示す。
【0143】
(比較例1)
前記ホール輸送能を示す化合物(IX−2)を1質量部と、発光材料として前記の化合物(V−1)を1質量部と、結着樹脂としてポリメチルメタクリレート(PMMA)を1質量部とを混合し、10質量%ジクロロエタン溶液を調製し、0.1μmのPTFEフィルターで濾過した。この溶液を用いて、2mm幅の短冊型ITO電極をエッチングにより形成したガラス基板表面に、ディップ法により塗布して膜厚0.15μmのホール輸送層を形成した。十分乾燥させたホール輸送層表面に、Mg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の背面電極をITO電極と交差するように形成した。作製された有機EL素子の有効面積は0.04cm2であった。
上記有機EL素子について実施例1と同様の評価を行った。結果を表22に示す。
【0144】
(比較例2)
ホール輸送性高分子化合物として、ポリビニルカルバゾール(PVK)を2質量部、発光材料として前記例示化合物(V−1)を0.1質量部、電子輸送材料として前記化合物(VI)を1質量部混合し、10質量%ジクロロエタン溶液を調製し、0.1μmのPTFEフィルターで濾過した。この溶液を用いて、2mm幅の短冊型ITO電極をエッチングにより形成したガラス基板表面に、ディップ法により塗布して膜厚0.15μmのホール輸送層を形成した。十分乾燥させた後、該ホール輸送層表面にMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の背面電極をITO電極と交差するように形成した。作製された有機EL素子の有効面積は0.04cm2であった。
上記有機EL素子について実施例1と同様の評価を行った。結果を表22に示す。
【0145】
【表22】
【0146】
上記実施例に示すように、本発明の有機EL素子は、駆動電流密度が低いにもかかわらず高い最高輝度を示し、特に実施例3、9、12においては、900cd/m2以上の最高輝度が得られた。これに対し、比較例の有機EL素子では、十分な最高輝度、素子寿命が得られなかった。
【0147】
【発明の効果】
前記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し構造単位からなる電荷輸送性ポリエステルは、有機EL素子に好適なイオン化ポテンシャルや電荷移動度及び発光特性を持ち、また、スピンコーティング法、ディップ法等を用いて良好な薄膜を形成することが可能であるので、これを用いて形成された本発明の有機EL素子は、十分に高い輝度を示し、また、膜厚を比較的厚く設定できるため、ピンホール等の不良も少なく、大面積化も容易であり、しかも優れた耐久性を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の積層型有機EL素子の一例を示す模式的断面図である。
【図2】 本発明の積層型有機EL素子の他の一例を示す模式的断面図である。
【図3】 本発明の有機EL素子の他の一例を示す模式的断面図である。
【図4】 本発明の積層型有機EL素子の他の一例を示す模式的断面図である。
【符号の説明】
1 透明絶縁体基板
2 透明電極
3 ホール輸送層
4 発光層
5 電子輸送層
6 キャリア輸送能を持つ発光層
7 背面電極
Claims (9)
- 少なくとも一方が透明または半透明である陽極及び陰極よりなる一対の電極間に挾持された、一つまたは複数の有機化合物層より構成される電界発光素子において、該有機化合物層の少なくとも一層が、下記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルを1種以上含有し、
該電荷輸送性ポリエステルが、下記一般式( II −1)または( II −2)で示されるポリエステルであることを特徴とする有機電界発光素子。
- 前記有機化合物層が少なくともキャリア輸送能を持つ発光層及び電子輸送層から構成され、前記発光層が、前記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルを、少なくとも1種含有してなることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
- 前記有機化合物層が少なくともホール輸送層、発光層及び電子輸送層から構成され、前記発光層が、前記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルを、少なくとも1種含有してなることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
- 前記有機化合物層が少なくともキャリア輸送能を持つ発光層から構成され、前記発光層が、前記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルを、少なくとも1種含有してなることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
- 前記有機化合物層が少なくともホール輸送層及びキャリア輸送能を持つ発光層から構成され、前記発光層もしくはホール輸送層のうち少なくとも1つの層が、前記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルを、少なくとも1種含有してなることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
- 前記発光層が、電荷輸送性材料を含むことを特徴とする請求項2に記載の有機電界発光素子。
- 前記発光層が、電荷輸送性材料を含むことを特徴とする請求項3に記載の有機電界発光素子。
- 前記発光層が、電荷輸送性材料を含むことを特徴とする請求項4に記載の有機電界発光素子。
- 前記発光層が、電荷輸送性材料を含むことを特徴とする請求項5に記載の有機電界発光素子。
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