JP2005235646A - 有機電界発光素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】 十分な輝度を有し、安定性及び耐久性に優れ、かつ大面積化可能であり製造容易な有機EL素子を提供することである。
【解決手段】 少なくとも一方が透明または半透明である一対の電極間に挾持された、1つまたは複数の有機化合物層より構成される有機電界発光素子において、前記有機化合物層の少なくとも1層が、下記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルを1種以上含有し、さらに、前記有機化合物層の少なくとも1層が、電子エネルギー準位の励起三重項状態から基底状態への遷移により、あるいは励起三重項状態を経由しての基底状態への遷移により発光する発光性高分子を含有することを特徴とする有機電界発光素子である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、有機電界発光素子(以下、「有機EL素子」という)に関し、詳しくは、特定の電荷輸送性ポリマーを用いた有機EL素子に関するものである。
電界発光素子(以下、「EL素子」という)は、自発光性の全固体素子であり、視認性が高く衝撃にも強いため、広く応用が期待されている。上記EL素子としては、現在は無機螢光体を用いたものが主流であるが、200V以上の交流電圧が駆動に必要なため、製造コストが高く、また輝度が不十分等の問題点を有している。
一方、有機化合物を用いたEL素子研究は、最初アントラセン等の単結晶を用いて始まったが、単結晶の場合、膜厚が1mm程度と厚く、100V以上の駆動電圧が必要であった。そのため、蒸着法による薄膜化が試みられているが(例えば、非特許文献1参照)。しかし、この方法で得られた薄膜は、駆動電圧が30Vと未だ高く、また、膜中における電子・ホールキャリアの密度が低く、キャリアの再結合によるフォトンの生成確率が低いため十分な輝度が得られなかった。
ところが近年、ホール輸送性有機低分子化合物と電子輸送能を持つ螢光性有機低分子化合物との薄膜を、真空蒸着法により順次積層した機能分離型のEL素子において、10V程度の低駆動電圧で1000cd/m2以上の高輝度が得られるものが報告されており(例えば、非特許文献2参照)、以来、積層型のEL素子の研究・開発が活発に行われている。これら積層型のEL素子においては、ホールと電子とが、電極から電荷輸送性の有機化合物からなる電荷輸送層を介してホールと電子とのキャリアバランスを保ちながら螢光性有機化合物からなる発光層に注入され、発光層中に閉じ込められた前記ホールと電子とが再結合することにより高輝度の発光を実現している。
しかしながら、このタイプのEL素子では、実用化に向けて以下のような大きく3つの課題が示されている。
(1)素子が数mA/cm2という高い電流密度で駆動されることから、大量のジュール熱が発生する。このため、蒸着によりアモルファス状態で製膜されたホール輸送性低分子化合物や螢光性有機低分子化合物が次第に結晶化して、最後には融解し、輝度の低下や絶縁破壊が生じるという現象が多く見られ、その結果、素子の寿命が低下するという問題を有している。
(2)素子の作製において、低分子有機化合物を複数の蒸着工程において膜厚が0.1μm以下の薄膜を形成していくため、ピンホールを生じ易く、十分な性能を得るためには厳しく管理された条件下で膜厚の制御を行うことが必要である。従って、生産性が低くかつ大面積化が難しいという問題がある。
(3)発光材料で利用されているのは、励起一重項状態からの発光、すなわち蛍光である。ところが、発光層中でホールと電子とが再結合して生成する励起一重項状態と励起三重項状態の励起子の生成比が量子力学に基づくスピン統計則から1:3であることから、有機EL素子における発光の内部量子効率は理論的には25%が上限とされている。
前記(1)に示す課題の解決のためには、ホール輸送材料として安定なアモルファスガラス状態が得られる、スターバーストアミンを用いたり、ポリフォスファゼンの側鎖にトリフェニルアミンを導入したポリマーを用いたりしたEL素子が報告されている(例えば、非特許文献3、4参照)。
しかし、これら単独ではホール輸送材料のイオン化ポテンシャルに起因するエネルギー障壁が存在するため、陽極からのホール注入性あるいは発光層へのホール注入性を満足することができない。また、前者のスターバーストアミンの場合には、溶解性が小さいために精製が難しく、純度を上げることが困難であることや、後者のポリマーの場合には、高い電流密度が得られず十分な輝度が得られてない等の問題も存在する。
また、前記(2)に示す課題の解決のためには、工程を短縮できる単層構造のEL素子について研究・開発が進められ、ポリ(p−フェニレンビニレン)等の導電性高分子を用いたり、ホール輸送性ポリビニルカルバゾール中に電子輸送材料と螢光色素とを混入した素子が提案されているが(例えば、非特許文献5、6参照)、未だ輝度、発光効率等が有機低分子化合物を用いた積層型EL素子には及ばない。
さらに、作製法においては、製造の簡略化、加工性、大面積化、コスト等の観点から、湿式による塗布方式が望ましく、キャステイング法によっても素子が得られることが報告されている(例えば、非特許文献7、8参照)。しかし、電荷輸送材料の溶剤や樹脂に対する溶解性や相溶性が悪いため結晶化しやすく、製造上あるいは特性上に問題があった。
前記(3)に示す課題の解決のためには、励起子生成確率の高い励起三重項状態、すなわち燐光による発光材料を用いることが有効である。燐光による発光材料としては、白金錯体を用いた素子が最初に提案され(例えば、非特許文献9参照)、さらに燐光発光するイリジウム錯体を用いることにより、外部量子効率7.5%(外部取り出し効率を20%と仮定すると内部量子効率は37.5%)が得られ、従来上限値とされてきた外部量子効率5%という値を上回ることが可能なことを示されている(例えば、非特許文献10、特許文献1参照)。
しかし、実際の使用に当たっては、ホスト化合物である特定の低分子有機化合物にドープして使用する必要があり、蛍光による発光材料の場合と同様の、前記(1)や(2)に示す課題を有している。
Thin Solid Films,Vol.94,171(1982) Appl.Phys.Lett.,Vol.51,913(1987) 第40回応用物理学関係連合講演会予稿集,30a−SZK−14(1993) 第42回高分子討論会予稿集,20J21(1993) Nature,Vol.357,477(1992) 第38回応用物理学関係連合講演会予稿集,31p−G−12(1991) 第50回応用物理学会学術講演予稿集,29p−ZP−5(1989) 第51回応用物理学会学術講演予稿集,28a−PB−7(1990) Nature,Vol.395,151(1998) Appl.Phys.Lett.,Vol.75,4(1999) 国際公開00/70655パンフレット
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。すなわち、本発明の目的は、十分な輝度を有し、安定性及び耐久性に優れ、かつ大面積化可能であり製造容易な有機EL素子を提供することにある。
上記目的を達成するため電荷輸送材料及び発光材料に関し鋭意検討した結果、特定の構造より選択された少なくとも1種を部分構造として含む電荷輸送性ポリエステルが、有機EL素子として好適な電荷注入特性、電荷移動度、薄膜形成能を有し、かつ、前記電荷輸送性ポリエステルと、電子エネルギー準位の励起三重項状態から基底状態への遷移あるいは励起三重項状態を経由しての基底状態への遷移により発光する発光性高分子とを組み合わせることで、素子の耐久性と発光効率に優れるだけでなく、生産性の高い素子となることを見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、
<1> 少なくとも一方が透明または半透明である一対の電極間に挾持された、1つまたは複数の有機化合物層より構成される有機電界発光素子において、
前記有機化合物層の少なくとも1層が、下記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルを1種以上含有し、さらに、前記有機化合物層の少なくとも1層が、電子エネルギー準位の励起三重項状態から基底状態への遷移により、あるいは励起三重項状態を経由しての基底状態への遷移により発光する発光性高分子を含有することを特徴とする有機電界発光素子である。
Figure 2005235646
上記一般式(I−1)及び(I−2)中、Arは置換もしくは未置換の1価の芳香族基を表し、Xは置換もしくは未置換の2価の芳香族基を表す。また、Tは炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素または炭素数2〜10の分枝状炭化水素を表し、k、l、mは0または1を表す。
<2> 前記有機化合物層が、少なくとも発光層及び電子輸送層から構成され、該発光層及び該電子輸送層の少なくとも一方が、前記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルを1種以上含有し、前記発光層が、電子エネルギー準位の励起三重項状態から基底状態への遷移により、あるいは励起三重項状態を経由しての基底状態への遷移により発光する発光性高分子を1種以上含有してなることを特徴とする<1>に記載の有機電界発光素子である。
<3> 前記発光層が、電荷輸送性材料を含むことを特徴とする<2>に記載の有機電界発光素子である。
<4> 前記有機化合物層が、少なくともホール輸送層、発光層及び電子輸送層から構成され、該ホール輸送層及び該電子輸送層の少なくとも一方が、前記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルを1種以上含有し、前記発光層が、電子エネルギー準位の励起三重項状態から基底状態への遷移により、あるいは励起三重項状態を経由しての基底状態への遷移により発光する発光性高分子を1種以上含有してなることを特徴とする<1>に記載の有機電界発光素子である。
<5> 前記発光層が、電荷輸送性材料を含むことを特徴とする<4>に記載の有機電界発光素子である。
<6> 前記有機化合物層が、少なくともホール輸送層及び発光層から構成され、前記ホール輸送層及び前記発光層の少なくとも一方が、前記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルを1種以上含有し、前記発光層が、電子エネルギー準位の励起三重項状態から基底状態への遷移により、あるいは励起三重項状態を経由しての基底状態への遷移により発光する発光性高分子を1種以上含有してなることを特徴とする<1>に記載の有機電界発光素子である。
<7> 前記発光層が、電荷輸送性材料を含むことを特徴とする<6>に記載の有機電界発光素子である。
<8> 前記有機化合物層が、少なくとも電荷輸送能を有する発光層から構成され、該発光層が、前記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルを1種以上含有し、さらに、前記発光層が、電子エネルギー準位の励起三重項状態から基底状態への遷移により、あるいは励起三重項状態を経由しての基底状態への遷移により発光する発光性高分子を1種以上含有してなることを特徴とする<1>に記載の有機電界発光素子である。
<9> 前記発光層が、電荷輸送性材料を含むことを特徴とする<8>に記載の有機電界発光素子である。
<10> 前記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルが、下記一般式(II−1)または(II−2)で示される電荷輸送性ポリエステルであることを特徴とする<1>に記載の有機電界発光素子である。
Figure 2005235646
上記一般式(II−1)及び(II−2)中、Aは前記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択される少なくとも1種を表し、Rは水素原子、アルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、または置換もしくは未置換のアラルキル基を表し、Yは2価アルコール残基を表し、Zは2価のカルボン酸残基を表し、nは1〜5の整数を表し、pは5〜5000の整数を表す。また、B及びB’は、それぞれ独立に−O−(Y−O)n−Rまたは−O−(Y−O)n−CO−Z−CO−O−R’(ここで、R、Y、Z、nは前記と同様であり、R’はアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、または置換もしくは未置換のアラルキル基を表す。)を表す。
本発明によれば、十分な輝度を有し、安定性及び耐久性に優れ、かつ大面積化可能であり製造容易な有機EL素子を提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の有機EL素子は、少なくとも一方が透明または半透明である一対の電極間に挾持された、1つまたは複数の有機化合物層より構成される有機電界発光素子において、前記有機化合物層の少なくとも1層が、下記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルを1種以上含有し、さらに、前記有機化合物層の少なくとも1層が、電子エネルギー準位の励起三重項状態から基底状態への遷移、あるいは励起三重項状態を経由しての基底状態への遷移により発光する発光性高分子を含有することを特徴とする。
本発明の有機EL素子は、前記電荷輸送性ポリエステル及び前記発光性高分子を含有してなる層を有することで、十分な輝度を有し、安定性及び耐久性に優れる。さらに、前記電荷輸送性ポリエステル及び前記発光性高分子を用いることで、大面積化可能であり、容易に製造可能である。特に本発明では、電荷輸送層だけでなく発光層も湿式による塗布方式で形成することができるため、前述のような従来の素子に比べ、製造プロセスを大幅に簡易化することができる。
Figure 2005235646
上記一般式(I−1)及び(I−2)中、Arは置換もしくは未置換の1価の芳香族基を表し、Xは置換もしくは未置換の2価の芳香族基を表す。また、Tは炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素または炭素数2〜10の分枝状炭化水素を表し、k、l、mは0または1を表す。
前記Arとして具体的には、置換もしくは未置換のフェニル基、または置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の多核芳香族炭化水素、または置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の縮合環芳香族炭化水素、または置換もしくは未置換の1価の芳香族複素環、または少なくとも1種の芳香族複素環を含む置換もしくは未置換の1価の芳香族基を表す。
前記多核芳香族炭化水素及び縮合環芳香族炭化水素を構成する芳香環数は、特に限定されないが、芳香環数が2〜5のものが好ましく、縮合環芳香族炭化水素においては、全縮合環芳香族炭化水素が好ましい。なお、当該多核芳香族炭化水素及び縮合環芳香族炭化水素とは、本発明においては、具体的には以下に定義される多環式芳香族のことを意味する。
すなわち、前記「多核芳香族炭化水素」とは、炭素と水素とから構成される芳香環が2個以上存在し、これらの芳香環同士が、炭素−炭素の単結合によって結合している炭化水素化合物を表す。具体例としては、ビフェニル、ターフェニル等が挙げられる。
また、前記「縮合環芳香族炭化水素」とは、炭素と水素とから構成される芳香環が2個以上存在し、これらの芳香環同士が、1対の隣接して結合する炭素原子を共有している炭化水素化合物を表す。具体例としては、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン等が挙げられる。
また、一般式(I−1)及び(I−2)中において、Arで表される構造のひとつとして選択される芳香族複素環は、炭素と水素と以外の元素も含む芳香環を表す。その環骨格を構成する原子数(Nr)は、5及び/または6が好ましく用いられる。また、環骨格を構成する炭素以外の元素(異種元素)の種類及び数は特に限定されないが、例えば、S、N、O等が好ましく用いられ、前記環骨格中には、2種類以上及び/または2個以上の異種原子が含まれていてもよい。
特に、5員環構造を持つ複素環としては、チオフェン、チオフィン及びフラン、もしくはこれらの3位及び4位の炭素をさらに窒素で置換した複素環、ピロールもしくはこれの3位及び4位の炭素をさらに窒素で置換した複素環が好ましく用いられ、6員環構造をもつ複素環としては、ピリジンが好ましく用いられる。
さらに、一般式(I−1)及び(I−2)中において、Arで表される構造のひとつとして選択される芳香族複素環を含む芳香族基は、骨格を構成する原子団中に、少なくとも1種の前記芳香族複素環を含む結合基を表す。これらは、すべてが共役系で構成されたもの、あるいは一部が非共役系で構成されたもののいずれでもよいが、電荷輸送性や発光効率の点で、すべてが共役系で構成されたものが好ましい。
また、Arで表される構造として選択されるベンゼン環、多核芳香族炭化水素、縮合環芳香族炭化水素または複素環の置換基としては、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、フェノキシ基、アリール基、アラルキル基、置換アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
上記アルキル基としては、炭素数が1〜10のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。前記アルコキシル基としては、炭素数が1〜10のものが好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられる。
前記アリール基としては、炭素数が6〜20のものが好ましく、例えば、フェニル基、トルイル基等が挙げられる。前記アラルキル基としては、炭素数が7〜20のものが好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
置換アミノ基の置換基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられ、具体例は前述の通りである。
一般式(I−1)及び(I−2)中、Xは置換もしくは未置換の2価の芳香族基を表す。具体的には、置換もしくは未置換のフェニレン基、または置換もしくは未置換の芳香族数2〜10の2価の多核芳香族炭化水素、または置換もしくは未置換の芳香族数2〜10の2価の縮合環芳香族炭化水素、または置換もしくは未置換の2価の芳香族複素環、または少なくとも1種の芳香族複素環を含む置換もしくは未置換の2価の芳香族基を表す。
ここで、上記「多核芳香族炭化水素」「縮合環芳香族炭化水素」「芳香族複素環」「芳香族複素環を含む芳香族基」については前述の通りである。
一般式(I−1)及び(I−2)中、k、l、mは0または1を示し、Tは炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素、または炭素数2〜10の2価の分枝鎖状炭化水素基を示し、好ましくは炭素数が2〜6の2価の直鎖状炭化水素基、及び炭素数3〜7の2価の分枝鎖状炭化水素より選択される。
前記Tの具体的な構造としては、以下を挙げることができる。
Figure 2005235646
一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなるホール輸送性ポリエステル(電荷輸送性ポリエステル)としては、下記一般式(II−1)または(II−2)で示されるものが好適に使用される。
Figure 2005235646
一般式(II−1)または(II−2)中、Aは前記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を表し、一つのポリマー中に2種類以上の構造のAが含まれてもよい。
また、一般式(II−1)または(II−2)中、Rは水素原子、アルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、または置換もしくは未置換のアラルキル基を表す。上記アルキル基としては、炭素数が1〜10のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。前記アリール基としては、炭素数が6〜20のものが好ましく、例えば、フェニル基、トルイル基等が挙げられる。前記アラルキル基としては、炭素数が7〜20のものが好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。また、前記置換アリール基、置換アラルキル基の置換基としては、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、置換アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
一般式(II−1)または(II−2)中、Yは2価アルコール残基を表し、Zは2価のカルボン酸残基を表す。Y及びZは、具体的には下記の式(1)〜(7)から選択された基が挙げられる。
Figure 2005235646
式(1)〜(7)中、R1及びR2は、それぞれ水素原子、炭素数が1〜4のアルキル基、炭素数が1〜4のアルコキシル基、置換もしくは未置換のフェニル基、置換もしくは未置換のアラルキル基、またはハロゲン原子を表し、a〜cはそれぞれ1〜10の整数を、d及びeはそれぞれ0、1または2の整数を、fは0または1を各々表し、Vは下記の式(8)〜(18)から選択された基を表す。
Figure 2005235646
式(8)〜(18)中、gは1〜10の整数を表し、hは0〜10の整数を表す。
一般式(II−1)または(II−2)中、nは1〜5の整数を表し、重合度を表すpは5〜5000の範囲であるが、好ましくは10〜1000の範囲である。また、B及びB’は、それぞれ独立に−O−(Y−O)n−Rまたは−O−(Y−O)n−CO−Z−CO−O−R’(ここで、R、Y、Z、nは上記と同様であり、R’はアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、または置換もしくは未置換のアラルキル基を表す。)を表す。
また、本発明の電荷輸送性ポリエステルの重量平均分子量Mwは、5,000〜1,000,000の範囲であることが好ましいが、10,000〜300,000の範囲にあるのがより好ましい。
本発明の電荷輸送性ポリエステルは、下記構造式(III−1)または(III−2)で示されるホール輸送性モノマー(電荷輸送性モノマー)を、例えば、第4版実験化学講座第28巻(丸善、1993)等に記載された公知の方法で重合させることによって合成することができる。なお、構造式(III−1)または(III−2)中、Ar、X、T、k、l、mは、前記一般式(I−1)または(I−2)におけるAr、X、T、k、l、mと各々同様である。
Figure 2005235646
具体的には、一般式(II−1)で示されるホール輸送性ポリエステルは、例えば次のようにして合成することができる。
A’が水酸基の場合には、HO−(Y−O)n−Hで示される2価アルコール類をほぼ当量混合し、酸触媒を用いて重合する。酸触媒としては、硫酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等、通常のエステル化反応に用いるものが使用でき、触媒量としては、ホール輸送性モノマー1重量部に対して、1/10,000〜1/10重量部の範囲が好ましく、1/1,000〜1/50重量部の範囲がより好ましい。
重合中に生成する水を除去するために、水と共沸可能な溶剤を用いることが好ましく、トルエン、クロロベンゼン、1−クロロナフタレン等が有効であり、ホール輸送性モノマー1重量部に対して、1〜100重量部、好ましくは2〜50重量部の範囲で用いられる。反応温度は任意に設定できるが、重合中に生成する水を除去するために、溶剤の沸点で反応させることが好ましい。
反応終了後、溶剤を用いなかった場合には溶解可能な溶剤に溶解させる。溶剤を用いた場合には、反応溶液をそのまま、メタノール、エタノール等のアルコール類や、アセトン等のポリマーが溶解しにくい貧溶剤中に滴下し、ホール輸送性ポリエステルを析出させ、ホール輸送性ポリエステルを分離した後、水や有機溶剤で十分洗浄し、乾燥させる。更に、必要であれば適当な有機溶剤に溶解させ、貧溶剤中に滴下し、ホール輸送性ポリエステルを析出させる再沈殿処理を繰り返してもよい。再沈殿処理の際には、メカニカルスターラー等で、効率よく撹拌しながら行うことが好ましい。
再沈殿処理の際にホール輸送性ポリエステルを溶解させる溶剤の量は、ホール輸送性ポリエステル1重量部に対して、1〜100重量部の範囲が好ましく、2〜50重量部の範囲がより好ましい。また、貧溶剤の量は、ホール輸送性ポリエステル1重量部に対して、1〜1,000重量部の範囲が好ましく、10〜500重量部の範囲がより好ましい。
前記A’がハロゲンの場合には、HO−(Y−O)n−Hで示される2価アルコール類をほぼ当量混合し、ピリジンやトリエチルアミン等の有機塩基性触媒を用いて重合する。該有機塩基性触媒の量は、ホール輸送性モノマー1当量に対して、1〜10当量の範囲が好ましく、2〜5当量の範囲がより好ましい。
溶剤としては、塩化メチレン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、クロロベンゼン、1−クロロナフタレン等が有効であり、溶剤量は、ホール輸送性モノマー1重量部に対して、1〜100重量部の範囲が好ましく、2〜50重量部の範囲がより好ましい。反応温度は任意に設定できる。重合後、前述のように再沈殿処理し、精製する。
また、ビスフェノール等の酸性度の高い2価アルコール類の場合には、界面重合法も用いることができる。すなわち、2価アルコール類を水に加え、当量の塩基を加えて溶解させた後、激しく撹拌しながら2価アルコール類と当量のホール輸送性モノマー溶液を加えることによって重合できる。この際、水の量は、2価アルコール類1重量部に対して、1〜1,000重量部の範囲が好ましく2〜500重量部の範囲がより好ましい。
ホール輸送性モノマーを溶解させる溶剤としては、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トルエン、クロロベンゼン、1−クロロナフタレン等が有効である。反応温度は任意に設定でき、反応を促進するために、アンモニウム塩、スルホニウム塩等の相間移動触媒を用いることが効果的である。相間移動触媒の量は、ホール輸送性モノマー1重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲であることが好ましく、0.2〜5重量部の範囲がより好ましい。
さらに、前記A’がアルコキシル基の場合には、前述の構造式(III−1)及び(III−2)で示されるホール輸送性ポリマーに、HO−(Y−O)n−Hで示される2価アルコール類を過剰に加え、硫酸、リン酸等の無機酸、チタンアルコキシド、カルシウム及びコバルト等の酢酸塩あるいは炭酸塩、亜鉛や鉛の酸化物を触媒に用いて加熱し、エステル交換により合成できる。
前記2価アルコール類の量は、ホール輸送性モノマー1当量に対して、2〜100当量の範囲が好ましく、3〜50当量の範囲がより好ましい。また、触媒の量は、ホール輸送性モノマー1重量部に対して、1/10,000〜1重量部の範囲が好ましく、1/1,000〜1/2重量部の範囲がより好ましい。
反応は、反応温度を200〜300℃の範囲として行い、アルコキシル基から基−O−(Y−O)n−Hへのエステル交換終了後は、HO−(Y−O)n−Hの脱離による重合を促進するため、減圧下で反応させることが好ましい。また、HO−(Y−O)n−Hと共沸可能な1−クロロナフタレン等の高沸点溶剤を用いて、常圧下でHO−(Y−O)n−Hを共沸で除きながら反応させることもできる。
また、一般式(II−2)で示されるホール輸送性ポリエステルは、次のようにして合成することができる。
すなわち、前述の一般式(II−1)で示されるホール輸送性ポリエステルの合成におけるそれぞれの場合において、2価アルコール類を過剰に加えて反応させることによって下記構造式(IV−1)及び(IV−2)で示される化合物を生成した後、これをホール輸送性モノマーとして用いて前記と同様の方法で、2価カルボン酸または2価カルボン酸ハロゲン化物等と反応させればよく、それによってホール輸送性ポリエステルを得ることができる。なお、下記式中、Ar、X、Y、T、k、l、m及びnは前述の通りである。
Figure 2005235646
次に、本発明における発光性高分子について説明する。
本発明における発光性高分子としては、固体状態で電子エネルギー準位の励起三重項状態から基底状態への遷移により、あるいは励起三重項状態を経由しての基底状態への遷移により発光を示す化合物が用いられる。
ここで、前記電子エネルギー準位の励起三重項状態から基底状態への遷移による発光とは、上記励起三重項状態から直接燐光を発してなされる発光をいい、また、前記電子エネルギー準位の励起三重項状態を経由しての基底状態への遷移による発光とは、例えば励起三重項状態から別のエネルギー状態に移り、そこから基底状態への遷移時に燐光及び/または蛍光を発してなされる発光をいう。
前記励起三重項状態を経由しての基底状態への遷移により発光を示す化合物としては、例えば、特開2002−50483号公報に開示されているように、燐光発光性の第1の有機化合物に当たる部分の励起三重項状態から蛍光発光性の第2の有機化合物に当たる部分の励起三重項状態へのエネルギー移動が起こり、第2の有機化合物の部分から蛍光発光が起こるような2種類の成分からなるものが挙げられる。
なお、前記発光性高分子が上記励起三重項状態を経由して発光する部分を含む場合には、発光性高分子における発光性部分に含まれる燐光発光性の部分及び蛍光発光性の部分のうち、少なくとも一方が高分子鎖の一部をなすかまたは高分子鎖に結合していることが好ましい。この場合において、高分子鎖の一部をなすかまたは高分子鎖に結合している燐光発光性の部分及び/または蛍光発光性の部分は、高分子の主鎖を形成していてもよく、また高分子の側鎖を形成していてもよい。
また、上記の場合発光性高分子としては、燐光発光性の部分を含む高分子及び蛍光発光性の部分を含む高分子が混合されたものであってもよいし、燐光発光性の部分を含むモノマーと蛍光発光性の部分を含むモノマーとを共重合したものであってもよい。
上記発光性高分子における励起三重項状態からの発光を含めた発光の量子収率の値としては、0.1以上が好ましく、より好ましくは0.3以上であり、さらに好ましくは0.5以上である。これらの燐光発光性の部分に適用できる励起三重項状態の発光の量子収率が高い化合物としては金属錯体を挙げられるが、何らこれに限定されるものではない。
上記金属錯体の具体的な例としては、(1)イリジウム錯体や白金錯体等の遷移金属錯体、及びこれらの誘導体等の遷移金属錯体、(2)希土類金属錯体、などを挙げることができる。これらは高温でも比較的安定な励起三重項状態を有する点で好ましい。また、後述のように、配位能のある官能基を有する高分子を遷移金属原子に配位させることにより容易に錯体化が行える点からも好ましい。
前記遷移金属錯体に使用される遷移金属としては、周期表において第1遷移元素系列では原子番号21のScから原子番号30のZnまでを、第2遷移元素系列では原子番号39のYから原子番号48のCdまでを、第3遷移元素系列では原子番号72のHfから原子番号80のHgまでを含める。また、前記希土類金属錯体に使用される希土類金属としては、周期表において原子番号57のLaから原子番号71のLuまでを含める。
前記発光性部分は非イオン性であることが好ましい。これは、発光性部分がイオン性である場合には、例えば発光性部分を含む発光層に電圧を印加した場合には電気化学発光が起こり、この発光の応答速度が分オーダーと極めて遅くなり、ディスプレイ用途には好ましくないためである。
前述の本発明における「発光性部分が高分子鎖の一部をなす」とは、発光性部分構造が高分子鎖の繰り返し単位の少なくとも一種類を構成していることを意味する。したがって、前記のように発光性高分子が共重合体である場合、構成モノマーの少なくとも一種が発光性部分構造を有することになる。また、該発光性部分は高分子の主鎖をなしていてもよく、側鎖(ペンダント基等)であってもよい。
また、前述の「発光性部分が高分子鎖に結合している」とは、高分子化合物中に発光性部分がその程度、形態を問わず、結合していればよいことを意味する。このような発光性高分子を得るための具体的な方法としては、発光性部分を高分子の主鎖として組み込む方法、または側鎖(ペンダント基を含む)として結合させる方法などを挙げることができるが、何らこれらに限定されるものではない。また、前記遷移金属錯体及び希土類金属錯体の場合には、錯体を形成する配位子のうち少なくとも1つの配位子を高分子の主鎖として組み込む方法、または側鎖として結合させる方法などが挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
また、上記遷移金属錯体及び希土類金属錯体に配位される配位子としては、アセチルアセトナト、2,2’−ビピリジン、4,4’−ジメチル−2,2’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、2−フェニルピリジン、ポルフィリン、フタロシアニン、ピリミジン、キノリン及び/またはこれらの誘導体などを例示することができるが、何らこれらに限定されるものではない。これらの配位子は、1つの錯体について1種類または複数種類が配位される。また、このような錯体化合物として二核錯体あるいは多核錯体や、2種類以上の錯体の複錯体を使用することもできる。
本発明における前記発光性部分において、金属錯体の中心金属となる金属原子は高分子鎖の1つ以上の部位で拘束される。これを達成する方法は特に限定はされないが、上述したような配位結合による錯体化を始め、電荷移動による錯体化、イオン結合、共有結合等が挙げられる。これらの中では、配位子を高分子に結合させて発光物質を錯体化させる方法が発光物質の電子状態の変化を小さくして高分子に固定化させることができるため好ましい。この場合、配位子を高分子に共有結合させて錯体化させる方法が材料の設計及び合成が容易であり特に好ましい。
また、中心金属となる金属原子がイオンの場合には、前述の理由により、発光性部分を中性(非イオン性)とする方法が採られることが好ましく、この方法としては、例えば、配位結合と共にイオンの価数を中和するに足りる共有結合を有する有機金属化合物とする方法などが挙げられるが、何らこれに限定されるものではない。
本発明における金属原子を拘束する発光性高分子としては、特に限定はされないが、例えば、前記配位子として例示したピリジン基やビピリジル基、ピリミジン基、キノリン基等の複素環化合物を、高分子の主鎖及び/または側鎖に結合させたものを用いることができる。このような高分子としてより具体的には、ポリピリジンジイル、ポリビピリジンジイル、ポリキノリンジイル等の主鎖に配位子を含む高分子及び/またはこれらの誘導体、ポリビニルピリジン、ポリ(メタ)アクリルピリジン、ポリビニルキノリン等の、側鎖に配位子を有する高分子及び/またはこれらの誘導体、さらには上記の構造を組み合わせた高分子等が挙げられる。
また、本発明に用いられる発光性高分子としては、発光性部分がその一部をなすかまたは結合しているモノマー単位と、発光性部分を有しないモノマー単位との共重合体を用いることもできる。ここで、発光性部分を有しないモノマー単位としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸アルキル、スチレン及びその誘導体などを例示することができるが、何らこれらに限定されるものではない。
本発明における発光性高分子の重合度は、5〜10,000の範囲の整数であることが好ましく、10〜5,000の範囲の整数であることがより好ましい。また、発光性高分子の重量平均分子量Mwは、5,000〜1,000,000の範囲であることが好ましく、10,000〜300,000の範囲であることがより好ましい。
次に、本発明の有機EL素子の層構成について詳記する。
本発明の有機EL素子は、少なくとも一方が透明または半透明である一対の電極と、それら電極間に挾持された一つまたは複数の有機化合物層より構成され、該有機化合物層の少なくとも1層が、1種以上の前記電荷輸送性ポリエステル及び1種以上の前記発光性高分子を含有してなる。
すなわち本発明の有機EL素子は、陽極、陰極の一対の電極間に発光層もしくは発光層を含む複数の有機化合物層を形成した素子であり、発光層のほかホール注入層、ホール輸送層、電子注入層、電子輸送層、保護層などを有してもよく、またこれらの各層はそれぞれ他の機能を備えたものであってもよい。各層の形成にはそれぞれ種々の材料を用いることができるが、上記有機化合物層の少なくとも1層が、前記電荷輸送性ポリエステル樹脂及び前記発光性高分子を含有している必要がある。
本発明の有機EL素子においては、有機化合物層が1つの場合は、有機化合物層はキャリア輸送能を有する発光層を意味し、該発光層が前記電荷輸送性ポリエステル及び前記発光性高分子を含有してなる。また、有機化合物層が複数の場合(機能分離型の場合)は、そのうちの少なくとも1つは発光層(この発光層はキャリア輸送能を有していてもよいし、有していなくてもよい)であり、他の有機化合物層は、キャリア輸送層、すなわち、ホール輸送層、電子輸送層、またはホール輸送層及び電子輸送層よりなるものを意味し、これらの少なくとも一層が前記電荷輸送性ポリエステルを含有し、発光層が前記発光性高分子を含有してなる。
具体的には、例えば、少なくとも発光層及び電子輸送層から構成される有機EL素子、少なくともホール輸送層、発光層及び電子輸送層から構成される有機EL素子、あるいは、少なくともホール輸送層及び発光層から構成される有機EL素子において、これらの少なくとも一層(発光層、ホール輸送層、電子輸送層)が前記電荷輸送性ポリエステルを含有し、さらに発光層が前記発光性高分子を1種以上含有してなるものが挙げられる。また、本発明の有機EL素子においては、前記発光層が、電荷輸送性材料(前記電荷輸送性ポリエステル以外のホール輸送性材料、電子輸送性材料)を含有してもよい。詳しくは後述する。
以下、図面を参照しつつ、より詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるわけではない。
図1〜図4は、本発明の有機EL素子の層構成を説明するための模式的断面図であって、図1、図2、図3は、有機化合物層が複数の場合の一例であり、図4は、有機化合物層が1つの場合の例を示す。なお、図1〜図4において、同様の機能を有するものは同じ符号を付して説明する。
図1に示す有機EL素子は、透明絶縁体基板1上に、透明電極2、発光層4、電子輸送層5及び背面電極7を順次積層してなる。図2に示す有機EL素子は、透明絶縁体基板1上に、透明電極2、ホール輸送層3、発光層4、電子輸送層5及び背面電極7を順次積層してなる。図3に示す有機EL素子は、透明絶縁体基板1上に、透明電極2、ホール輸送層3、発光層4及び背面電極7を順次積層してなる。図4に示す有機EL素子は、透明絶縁体基板1上に、透明電極2、キャリア輸送能を有する発光層6及び背面電極7を順次積層してなる。なお、これらの層以外にも必要に応じてホール注入層、電子注入層などが設けられる。以下、各々を詳しく説明する。
本発明における前記電荷輸送性ポリエステルを含有してなる有機化合物層は、その構造によっては、例えば、図1に示される有機EL素子の層構成の場合、電子輸送層5、発光層4(この場合には、キャリア輸送能を有する発光層となる)としていずれも作用することができるし、また、図2に示される有機EL素子の層構成の場合、ホール輸送層3、電子輸送層5としていずれも作用することができ、図3に示される有機EL素子の層構成の場合、ホール輸送層3、発光層4(この場合には、キャリア輸送能を有する発光層となる)としていずれも作用することができ、図4に示される有機EL素子の層構成の場合、キャリア輸送能を有する発光層6として作用することができる。
以下、電極や各層の材料、製造方法について説明する。
図1〜図4に示される有機EL素子の層構成の場合、透明絶縁体基板1は、発光を取り出すため透明なものが好ましく、ガラス、プラスチックフィルム等が用いられる。また、透明電極2は、透明絶縁体基板と同様に発光を取り出すため透明であって、かつホールの注入を行うため仕事関数の大きなものが好ましく、酸化スズインジウム(ITO)、酸化スズ(NESA)、酸化インジウム、酸化亜鉛等の酸化膜、及び蒸着あるいはスパッタされた金、白金、パラジウム等が好ましく用いられる。
図1及び図2に示される有機EL素子の層構成の場合、電子輸送層5は、目的に応じて機能(電子輸送能)が付与された前記電荷輸送性ポリエステル単独で形成されていてもよいが、電気的特性をさらに改善する等の目的で、電子移動度を調節するために、電荷輸送性ポリエステル以外の電子輸送材料を、電子輸送層5を構成する材料全体の重量に対して1〜50重量%の範囲で混合分散して形成されていてもよい。このような電子輸送材料としては、好適にはオキサジアゾール誘導体、ニトロ置換フルオレノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体等が挙げられる。
前記電子輸送材料の好適な具体例として、下記例示化合物(V−1)〜(V−3)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、前記電荷輸送性ポリエステルを用いない場合、電子輸送層5はこれら電子輸送性材料を単独で用いて形成されることとなる。
Figure 2005235646
なお、陰極からの電子注入性を改善することを目的として、電子輸送層5と背面電極7との間に前記電子注入層を形成する場合の材料としては、陰極から電子を注入する機能を有しているものであればよく、前記電子輸送材料と同様の材料を用いることができる。
図2及び図3に示される有機EL素子の層構成の場合、ホール輸送層3は、目的に応じて機能(ホール輸送能)が付与された電荷輸送性ポリエステル単独で形成されていてもよいが、ホール移動度を調節するために電荷輸送性ポリエステル以外のホール輸送材料を、ホール輸送層3を構成する材料全体の重量に対して1〜50重量%の範囲で混合分散して形成されていてもよい。
このようなホール輸送材料としては、テトラフェニレンジアミン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、カルバゾール誘導、スチルベン誘導体、アリールヒドラゾン誘導体、ポルフィリン系化合物等が好ましく用いられる。特に好適な具体例として下記例示化合物(VI−1)〜(VI−6)が挙げられるが、これらの中では、電荷輸送性ポリエステルとの相容性が良いことから、テトラフェニレンジアミン誘導体が好ましい。また、他の汎用の樹脂等との混合で用いてもよい。なお、前記電荷輸送性ポリエステルを用いない場合、ホール輸送層3はこれらホール輸送性材料を単独で用いて形成されることとなる。
Figure 2005235646
なお、陽極からのホール注入性を改善することを目的として、透明電極2とホール輸送層3との間に前記ホール注入層を形成する場合の材料としては、陽極からホールを注入する機能を有しているものであればよく、前記ホール輸送材料と同様の材料を用いることができる。
図1、図2及び図3に示される有機EL素子の層構成の場合、発光層4は、前記発光性高分子単独で形成されていてもよいが、電気特性及び発光特性をさらに改善する等の目的で、前記発光性高分子中に前記電荷輸送性ポリエステルを層全体の重量に対して1〜50重量%の範囲で混合分散して形成してもよいし、前記発光性高分子中に前記電荷輸送性ポリエステル以外の電荷輸送材料を層全体の重量に対して1〜50重量%の範囲で混合分散して形成させてもよい。
図4に示される有機EL素子の層構成において、発光層をキャリア輸送能を有する発光層6とした場合、該発光層6は、例えば目的に応じて機能(ホール輸送能、あるいは電子輸送能)が付与された前記電荷輸送性ポリエステル中に、発光材料として前記発光性高分子がキャリア輸送能を有する発光層6を構成する材料全体の重量に対して50重量%以下の量で分散された有機化合物層であるが、有機EL素子に注入されるホールと電子とのバランスを調節するために、前記電荷輸送性ポリエステル以外の電荷輸送材料を10〜50重量%の範囲で分散させてもよい。
このような電荷輸送材料としては、電子移動度を調節する場合には、電子輸送材料として好適にはオキサジアゾール誘導体、ニトロ置換フルオレノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体等が挙げられ、好適な具体例としては、前記例示化合物(V−1)〜(V−3)が挙げられる。
また、前記電荷輸送性ポリエステルと強い電子相互作用を示さない有機化合物が用いられることが好ましく、より好ましくは下記例示化合物(VII)が用いられるが、これに限定されるものではない。
Figure 2005235646
同様にホール移動度を調節する場合には、ホール輸送材料として好適にはテトラフェニレンジアミン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、カルバゾール誘導、スチルベン誘導体、アリールヒドラゾン誘導体、ポルフィリン系化合物等が挙げられ、特に好適な具体例としては、前記例示化合物(VI−1)〜(VI−6)が挙げられ、電荷輸送性ポリエステルとの相容性が良いことから、テトラフェニレンジアミン誘導体が好ましい。
図1〜図4に示される有機EL素子の層構成の場合、背面電極7には、真空蒸着可能で、電子注入を行うため仕事関数の小さな金属が使用されるが、特に好ましくはマグネシウム、アルミニウム、銀、インジウム及びこれらの合金である。また、背面電極7上には、さらに素子の水分や酸素による劣化を防ぐために保護層を設けてもよい。
具体的な保護層の材料としては、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Alなどの金属、MgO、SiO2、TiO2等の金属酸化物、ポリエチレン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂が挙げられる。保護層の形成には、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマ重合法、CVD法、コーティング法が適用できる。
これら図1〜図4に示される有機EL素子の各層形成は以下のように行われる。まず、透明電極2の上に各有機EL素子の層構成に応じて、ホール輸送層3、や発光層4、あるいはキャリア輸送能を有する発光層6を形成する。ホール輸送層3、発光層4及びキャリア輸送能を有する発光層6は、前記各材料を真空蒸着法、もしくは有機溶媒中に溶解あるいは分散し、得られた塗布液を用いて前記透明電極2上にスピンコーティング法、ディップ法等を用いて製膜することにより形成する。
次に、各有機EL素子の層構成に応じて、発光層4、電子輸送層5は、前記各材料を、真空蒸着法、もしくは有機溶媒中に溶解あるいは分散し、得られた塗布液を用いて前記ホール輸送層3や発光層4の表面にスピンコーティング法、ディップ法等を用いて製膜することによって形成される。
なお、本発明においては、電荷輸送材料、発光材料として高分子を含むため、各層形成は塗布液を用いた製膜法により行うことが好ましい。
形成されるホール輸送層3、発光層4及び電子輸送層5の膜厚は、各々0.1μm以下であることが好ましく、特に、0.03〜0.08μmの範囲であることが好ましい。また、キャリア輸送能を有する発光層6の膜厚は、0.03〜0.2μmの範囲程度が好ましい。なお、前記ホール注入層、電子注入層を形成する場合の膜厚は、各々前記ホール輸送層3、電子輸送層5と同程度もしくは薄い膜厚であることが好ましい。
前記各材料(前記電荷輸送性ポリエステル、発光材料等)の層中での分散状態は分子分散状態でも微粒子分散状態でも構わない。塗布液を用いた製膜法の場合、分子分散状態とするためには、分散溶媒は前記各材料の共通溶媒を用いる必要があり、微粒子分散状態とするためには、分散溶媒は前記各材料の分散性及び溶解性を考慮して選択する必要がある。微粒子状に分散するためには、ボールミル、サンドミル、ペイントシェイカー、アトライター、ボールミル、ホモジェナイザー、超音波法等が利用できる。
そして、最後に、電子輸送層5や発光層4、あるいはキャリア輸送能を有する発光層6の上に背面電極7を真空蒸着法により形成することにより素子が完成される。
本発明の有機EL素子は、一対の電極間に、例えば、4〜20Vで、電流密度が1〜200mA/cm2の範囲の直流電圧を印加することによって、充分発光させることができる。
以下、実施例によって本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
まず、実施例に用いた電荷輸送性ポリエステルは、例えば以下のようにして得た。
−合成例1−
下記例示化合物(VIII−1)2.0g、エチレングリコール8.0g及びテトラブトキシチタン0.1gを50mlのフラスコに入れ、窒素気流下、190℃で5間加熱攪拌した。化合物(VIII−1)が消費されたことを確認した後、33.3Paに減圧してエチレングリコールを留去しながら200℃に加熱し、5時間反応を続けた。その後、室温まで冷却し、テトラヒドロフラン(THF)50mlに溶解して不溶物を0.2μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターにて濾過し、その濾液を攪拌されたメタノール500ml中に滴下する再沈殿を行うことでポリマーを析出させた。得られたポリマーを濾過し、十分にメタノールで洗浄した後乾燥させ、1.9gの下記に例示するホール輸送性ポリエステル(VIII−2)を得た。分子量をGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)にて測定したところ、Mwは7.24×104(スチレン換算)であり、Mw/Mn(Mnは数平均分子量)は1.87であった。
Figure 2005235646
−合成例2−
下記例示化合物(IX−1)2.0g、エチレングリコール8.0g及びテトラブトキシチタン0.1gを50mlのフラスコに入れ、窒素気流下、190℃で5間加熱攪拌した。化合物(IX−1)が消費されたことを確認した後、33.3Paに減圧してエチレングリコールを留去しながら200℃に加熱し、5時間反応を続けた。その後、室温まで冷却し、THF50mlに溶解して不溶物を0.2μmのPTFEフィルターにて濾過し、その濾液を攪拌されたメタノール500ml中に滴下する再沈殿を行うことでポリマーを析出させた。得られたポリマーを濾過し、十分にメタノールで洗浄した後乾燥させ、1.9gの下記に例示するホール輸送性ポリエステル(IX−2)を得た。分子量をGPCにて測定したところ、Mwは6.13×104(スチレン換算)であり、Mw/Mnは2.34であった。
Figure 2005235646
−合成例3−
下記例示化合物(X−1)2.0g、エチレングリコール8.0g及びテトラブトキシチタン0.1gを50mlのフラスコに入れ、窒素気流下、190℃で5間加熱攪拌した。化合物(X−1)が消費されたことを確認した後、33.3Paに減圧してエチレングリコールを留去しながら200℃に加熱し、5時間反応を続けた。その後、室温まで冷却し、THF50mlに溶解して不溶物を0.2μmのPTFEフィルターにて濾過し、その濾液を攪拌されたメタノール500ml中に滴下する再沈殿を行うことでポリマーを析出させた。得られたポリマーを濾過し、十分にメタノールで洗浄した後乾燥させ、1.9gの下記に例示するホール輸送性ポリエステル(X−2)を得た。分子量をGPCにて測定したところ、Mwは1.08×105(スチレン換算)であり、Mw/Mnは2.31であった。
Figure 2005235646
(実施例1)
電荷輸送材料兼燐光ホスト材料として合成例2の電荷輸送性ポリエステル(IX−2)(Mw:6.13×104)を1重量部と、燐光発光性高分子として下記例示化合物(XI)を0.1重量部とを混合し、10重量%ジクロロエタン溶液として調製し、0.1μmのPTFEフィルターで濾過した。この溶液を用いて、洗浄後乾燥させた2mm幅の短冊型ITO電極をエッチングにより形成したガラス基板上に、スピンコート法により塗布して、膜厚が0.15μmの電荷輸送能を有する発光層を形成した。
Figure 2005235646
十分乾燥させた後、電子輸送性材料として合成例3の電荷輸送性ポリエステル(X−2)(Mw:1.08×105)を5重量%ジクロロエタン溶液として調整し、0.1μmのPTFEフィルターで濾過し、この溶液を前記発光層上にスピンコート法により塗布し、膜厚が0.1μmの電子輸送層を形成した。最後にMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の背面電極を前記ITO電極と交差するように形成した。作製された有機EL素子の有効面積は0.04cm2であった。
以上のように作製した有機EL素子を、真空中(1.33×10-1Pa)でITO電極側をプラス、Mg−Ag背面電極をマイナスとして11Vの直流電圧を印加し、発光について測定を行い、このときの最高輝度、及び発光色を評価した。それらの結果を表1に示す。また、乾燥窒素中で有機EL素子の発光寿命の測定を行った。発光寿命の評価は、初期輝度が50cd/m2となるように電流値を設定し、定電流駆動により輝度が初期値から半減するまでの時間を素子寿命(hour)とした。この時の駆動電流密度を素子寿命と共に表1に示す。
(実施例2)
ホール輸送性材料として合成例1の電荷輸送性ポリエステル(VIII−2)(Mw:7.24×104)を5重量%クロロベンゼン溶液として調整し、0.1μmのPTFEフィルターで濾過した。この溶液を用いて、洗浄後乾燥させた2mm幅の短冊型ITO電極をエッチングにより形成したガラス基板上に、スピンコート法により塗布して膜厚が0.1μmのホール輸送層を形成した。
十分乾燥させた後、電荷輸送材料兼燐光ホスト材料として合成例2の電荷輸送性ポリエステル(IX−2)(Mw:6.13×104)を1重量部と、燐光発光性高分子として前記例示化合物(XI)を0.1重量部とを混合し、10重量%ジクロロエタン溶液として調製し、0.1μmPTFEフィルターで濾過し、この溶液を前記ホール輸送層上にスピンコート法により塗布して膜厚が0.15μmの電荷輸送能を有する発光層を形成した。
さらに十分乾燥させた後、電子輸送性材料として合成例3の電荷輸送性ポリエステル(X−2)を5重量%ジクロロエタン溶液として調整し、0.1μmのPTFEフィルターで濾過し、この溶液を前記発光層上にスピンコート法により塗布し、膜厚が0.1μmの電子輸送層を形成した。最後にMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の背面電極を前記ITO電極と交差するように形成した。作製された有機EL素子の有効面積は0.04cm2であった。
上記有機EL素子について実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例3)
ホール輸送性材料として合成例1の電荷輸送性ポリエステル(VIII−2)(Mw:7.24×104)を5重量%クロロベンゼン溶液として調整し、0.1μmのPTFEフィルターで濾過した。この溶液を用いて、洗浄後乾燥させた2mm幅の短冊型ITO電極をエッチングにより形成したガラス基板上に、スピンコート法により塗布して膜厚が0.1μmのホール輸送層を形成した。
十分乾燥させた後、電荷輸送材料兼燐光ホスト材料として合成例2の電荷輸送性ポリエステル(IX−2)(Mw:6.13×104)を1重量部と、燐光発光性高分子として前記例示化合物(XI)を0.1重量部とを混合し、10重量%ジクロロエタン溶液として調製し、0.1μmPTFEフィルターで濾過し、この溶液を前記ホール輸送層上にスピンコート法により塗布して膜厚が0.15μmの電荷輸送能を有する発光層を形成した。最後にMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の背面電極を前記ITO電極と交差するように形成した。作製された有機EL素子の有効面積は0.04cm2であった。
上記有機EL素子について実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例4)
電荷輸送材料として合成例1の電荷輸送性ポリエステル(VIII−2)(Mw:7.24×104)を0.5重量部と、電荷輸送材料兼燐光ホスト材料として合成例2の電荷輸送性ポリエステル(IX−2)(Mw:6.13×104)を0.5重量部と、燐光発光性高分子として前記例示化合物(XI)を0.1重量部とを混合し、10重量%ジクロロエタン溶液として調製し、0.1μmのPTFEフィルターで濾過した。この溶液を用いて、洗浄後乾燥させた2mm幅の短冊型ITO電極をエッチングにより形成したガラス基板上にスピンコート法により塗布して、膜厚が0.15μmの電荷輸送能を有する発光層を形成した。最後にMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の背面電極をITO電極と交差するように形成した。作製された有機EL素子の有効面積は0.04cm2であった。
上記有機EL素子について実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例5)
実施例3において、ホール輸送層を形成する前に、短冊型ITO電極を形成したガラス基板上にバイトロン(Baytron)P(バイエル株式会社製、ポリエチレンジオキサイドチオフェン(下記例示化合物XII)とポリスチレンスルホン酸とのポリマーの混合水分散液)をスピンコート法により塗布して、ITO電極とホール輸送層との間に膜厚が0.05μmのホール注入層を形成した以外は、実施例3と同様にして素子を作成した。
Figure 2005235646
(比較例1)
洗浄後乾燥させた2mm幅の短冊型ITO電極をエッチングにより形成したガラス基板上に、燐光ホスト材料として下記例示化合物(XIII)と燐光発光材料として下記例示化合物(XIV)とを用いて、共蒸着により膜中の化合物(XIV)の量が膜全体の化合物の重量に対して5重量%となるように蒸着して、膜厚が0.065μmの発光層を形成した。次いで、この発光層上に電子輸送材料として前記例示化合物(V−1)を用い、真空蒸着法により厚さが0.05μmの電子輸送層を形成した。最後にMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の背面電極をITO電極と交差するように形成した。作製された有機EL素子の有効面積は0.04cm2であった。
上記有機EL素子について実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 2005235646
Figure 2005235646
(比較例2)
洗浄後乾燥させた2mm幅の短冊型ITO電極をエッチングにより形成したガラス基板上に、ホール輸送材料として前記例示化合物(VI−2)を用いて真空蒸着法により厚さが0.05μmのホール輸送層を形成した。さらに、このホール輸送層上に、燐光ホスト材料として前記例示化合物(XIII)と燐光発光材料として前記例示化合物(XIV)とを用いて、共蒸着により膜中の化合物(XIV)の量が膜全体の化合物の重量に対して5重量%となるように蒸着して、膜厚が0.065μmの発光層を形成した。次いで、この発光層上に、電子輸送材料として前記例示化合物(V−1)を用い真空蒸着法により厚さが0.05μmの電子輸送層を形成した。最後にMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の背面電極をITO電極と交差するように形成した。作製された有機EL素子の有効面積は0.04cm2であった。
上記有機EL素子について実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例3)
洗浄後乾燥させた2mm幅の短冊型ITO電極をエッチングにより形成したガラス基板上に、ホール輸送材料として前記例示化合物(VI−2)を用いて真空蒸着法により厚さが0.05μmのホール輸送層を形成した。さらに、このホール輸送層上に、燐光ホスト材料として前記例示化合物(XIII)と燐光発光材料として前記例示化合物(XIV)とを用いて、共蒸着により膜中の化合物(XIV)の量が膜全体の化合物の重量に対して5重量%となるように蒸着して、膜厚が0.065μmの発光層を形成した。最後にMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の背面電極をITO電極と交差するように形成した。作製された有機EL素子の有効面積は0.04cm2であった。
上記有機EL素子について実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例4)
電荷輸送材料として前記例示化合物(VI−6)を1重量部と、燐光ホスト材料として前記例示化合物(XIII)0.5重量部と、燐光発光材料として前記例示化合物(XIV)0.05重量部とを混合し、5重量%ジクロロエタン溶液として調整し、0.1μmのPTFEフィルターで濾過した。この溶液を用いて、洗浄後乾燥させた2mm幅の短冊型ITO電極をエッチングにより形成したガラス基板上に、スピンコート法により塗布して、膜厚が0.15μmの電荷輸送能を有する発光層を形成した。その後、Mg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の背面電極をITO電極と交差するように形成した。作製された有機EL素子の有効面積は0.04cm2であった。
上記有機EL素子について実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 2005235646
上記実施例に示すように、前記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し構造単位からなる電荷輸送性ポリエステルは、有機EL素子に好適なイオン化ポテンシャル及び電荷移動度を持ち、スピンコーティング法、ディップ法等を用いて良好な薄膜を形成することが可能であった。また、電子エネルギー準位の励起三重項状態から基底状態への遷移あるいは励起三重項状態を経由しての基底状態への遷移により発光する発光性高分子を併せて用いることで十分に高い輝度を示した。さらに本発明においては、発光層としても発光性高分子を用いているため、素子全体としての作製が容易であり、得られる有機EL素子はピンホール等の不良も少なく、大面積化も容易であり、しかも優れた耐久性と発光特性を有していた。
本発明の有機EL素子の一例を示す模式的断面図である。 本発明の有機EL素子の他の一例を示す模式的断面図である。 本発明の有機EL素子の他の一例を示す模式的断面図である。 本発明の有機EL素子の他の一例を示す模式的断面図である。
符号の説明
1 透明絶縁体基板
2 透明電極
3 ホール輸送層
4 発光層
5 電子輸送層
6 キャリア輸送能を有する発光層
7 背面電極

Claims (10)

  1. 少なくとも一方が透明または半透明である一対の電極間に挾持された、1つまたは複数の有機化合物層より構成される有機電界発光素子において、
    前記有機化合物層の少なくとも1層が、下記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルを1種以上含有し、さらに、前記有機化合物層の少なくとも1層が、電子エネルギー準位の励起三重項状態から基底状態への遷移により、あるいは励起三重項状態を経由しての基底状態への遷移により発光する発光性高分子を含有することを特徴とする有機電界発光素子。
    Figure 2005235646
    (一般式(I−1)及び(I−2)中、Arは置換もしくは未置換の1価の芳香族基を表し、Xは置換もしくは未置換の2価の芳香族基を表す。また、Tは炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素または炭素数2〜10の分枝状炭化水素を表し、k、l、mは0または1を表す。)
  2. 前記有機化合物層が、少なくとも発光層及び電子輸送層から構成され、該発光層及び該電子輸送層の少なくとも一方が、前記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルを1種以上含有し、前記発光層が、電子エネルギー準位の励起三重項状態から基底状態への遷移により、あるいは励起三重項状態を経由しての基底状態への遷移により発光する発光性高分子を1種以上含有してなることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
  3. 前記発光層が、電荷輸送性材料を含むことを特徴とする請求項2に記載の有機電界発光素子。
  4. 前記有機化合物層が、少なくともホール輸送層、発光層及び電子輸送層から構成され、該ホール輸送層及び該電子輸送層の少なくとも一方が、前記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルを1種以上含有し、前記発光層が、電子エネルギー準位の励起三重項状態から基底状態への遷移により、あるいは励起三重項状態を経由しての基底状態への遷移により発光する発光性高分子を1種以上含有してなることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
  5. 前記発光層が、電荷輸送性材料を含むことを特徴とする請求項4に記載の有機電界発光素子。
  6. 前記有機化合物層が、少なくともホール輸送層及び発光層から構成され、前記ホール輸送層及び前記発光層の少なくとも一方が、前記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルを1種以上含有し、前記発光層が、電子エネルギー準位の励起三重項状態から基底状態への遷移により、あるいは励起三重項状態を経由しての基底状態への遷移により発光する発光性高分子を1種以上含有してなることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
  7. 前記発光層が、電荷輸送性材料を含むことを特徴とする請求項6に記載の有機電界発光素子。
  8. 前記有機化合物層が、少なくとも電荷輸送能を有する発光層から構成され、該発光層が、前記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルを1種以上含有し、さらに、前記発光層が、電子エネルギー準位の励起三重項状態から基底状態への遷移により、あるいは励起三重項状態を経由しての基底状態への遷移により発光する発光性高分子を1種以上含有してなることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
  9. 前記発光層が、電荷輸送性材料を含むことを特徴とする請求項8に記載の有機電界発光素子。
  10. 前記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルが、下記一般式(II−1)または(II−2)で示される電荷輸送性ポリエステルであることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
    Figure 2005235646
    (一般式(II−1)及び(II−2)中、Aは前記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択される少なくとも1種を表し、Rは水素原子、アルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、または置換もしくは未置換のアラルキル基を表し、Yは2価アルコール残基を表し、Zは2価のカルボン酸残基を表し、nは1〜5の整数を表し、pは5〜5000の整数を表す。また、B及びB’は、それぞれ独立に−O−(Y−O)n−Rまたは−O−(Y−O)n−CO−Z−CO−O−R’(ここで、R、Y、Z、nは前記と同様であり、R’はアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、または置換もしくは未置換のアラルキル基を表す。)を表す。)
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