JP4134285B2 - スコーン - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、スコーンに関し、更に詳しくは外観や食感を改善したスコーンに関する。
【0002】
【従来の技術】
スコーンはスコットランド地方の伝統的な焼き菓子の一種で、小麦粉、大麦粉、オートミルなどの原料粉に油脂、卵、砂糖、牛乳などを配合して焼成したものである。本来はティータイム用の菓子パンと考えられ、形状はパンに近いがベーキングパウダーで膨化させており、パンとも菓子とも分類し難い特異な食品で、それだけに多様化の時代にあって興味深い食品であるといえる。
【0003】
スコーンはわが国でも市販されているが、表面に梨肌の発生も多くみられるなど外観上にも問題があり、食感も比較的ソフトであるがパサパサしていてドライであり、日本人の多くが好む食感からは遊離していて、好む人が限られていた。また、冷凍保存した場合には、食感が製造時の食感から大きく低下し、日持ちが良くないものであった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、外観がよく、ソフトでしっとり感があり、しかも冷凍しても食感の低下がなく日持ちのよいスコーンを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記の課題を解決すべく鋭意努力の結果、α−化澱粉とデキストリンとを併用することによって問題点の解決がはかれるという知見を得て本発明を完成した。
【0006】
上記でも述べた通り、従来、スコーンは小麦粉等の穀粉を主原料とし、油脂、卵、砂糖、牛乳、膨張剤等を配合した生地を用いて焼成されたものであり、比較的ソフトであるが、表面に梨肌の発生がみられて外観が悪くなったり、しっとり感が弱くてパサツキつきのある食感を有していた。また、製造時はそれなりの食感を有しているが、冷凍などで保存すると硬くなりすぎるなど食感が激変してとても食することのできるものでなかった。
【0007】
しかし、原料粉に対してα−化澱粉とデキストリンを添加することで、ソフト感を維持したままで梨肌の発生を防止でき、惹いては外観がよくなり、冷凍などで保存しても製造直後のソフトでしっとり感のある食感をそのまま保持して食感の低下を防止できる日持ちの良いスコーンが得られるようになった。
【0008】
即ち、本発明は原料粉に対してα−化澱粉を3〜15重量%とデキストリンを固形分として10〜35重量%添加して得られるスコーンに係るものである。
【0009】
本発明でいうスコーンとは、小麦粉、大麦粉、オートミルなどの穀粉に油脂、卵、砂糖、牛乳、膨張剤、必要に応じてイーストを配合した生地を用いて焼成したパン或は菓子の何れの範疇にも分類のできるベーカリ製品で、具体的にはブレインスコーン、スコッチスコーン、ティービスケットなどが例示される。
【0010】
本発明でいう原料粉とは、通常スコーンの製造に使用される小麦粉、大麦粉、オートミルなどの穀粉を指称する。
【0011】
本発明でいうスコーンの日持ちとは、スコーンの製造後に得られた食感が冷凍で保存された時に、製造時の食感を保持する冷凍期間を意味する。即ち、日持ちが悪い、或は短いとは、製造時の食感が冷凍で短期間に劣化する、或は大幅に変わることを指すが、本発明では製造後に冷凍して2週間放置し、解凍した時の食感の変化を評価することで日持ちの善し悪しを判断することにした。
【0012】
本発明でいうα−化澱粉とは、澱粉を水の存在下に加熱して糊化(αー化)し、乾燥したものを指称し、具体的には水に懸濁した澱粉をドラムドライヤーで処理して糊化、乾燥する方法、澱粉をエクストルーダーで処理して糊化、乾燥する方法、糊化した後凍結乾燥又は噴霧乾燥する方法などによって製造されるものである。
【0013】
澱粉としては未処理澱粉及び/又は加工澱粉から選択される。未処理澱粉としては、小麦澱粉、米澱粉、小麦澱粉、タピオカ澱粉、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、ワキシーコーンスターチやサゴ澱粉等が例示されるが、食感や日持ちがよいという点でタピオカ澱粉がより好ましい。一方、加工澱粉は、未処理澱粉に酸化、エーテル化、エステル化、架橋、或はそれらの組合せなど何らかの従来周知の加工処理をして得られる澱粉を意味し、例えば弾性の強いワキシーコーンスターチには軽度の架橋処理を施してスコーンの成形をより容易にしたり、小麦澱粉やコーンスターチについては、エーテル化やエステル化などの加工処理を施すことで、スコーンの日持ちをより良好にするなど加工方法や処理の程度を選択することができるので、全ての未処理澱粉をタピオカ澱粉と同じように使用できる。
【0014】
本発明でいうデキストリンは、澱粉を何らかの方法で分解して得られるもので、具体的には澱粉に酸及び/又は酵素を添加し、ペースト状態で反応して得られるマルトデキストリン(水素添加した還元マルトデキストリンも含む)、澱粉に無機酸を添加して高温で焙焼して製造される焙焼デキストリン、および焙焼デキストリンにαアミラーゼ及び/又はβ−アミラーゼを作用して得られる分岐構造が発展した難消化性デキストリン(水素添加した還元難消化性デキストリンも含む)等を例示でき、粉末状、或は液状の何れもが利用できる。これらの中でも、難消化性デキストリンがスコーンのしっとり感を改善する効果が大きいことからより好ましい。尚、原料である澱粉としては、小麦澱粉、米澱粉、小麦澱粉、タピオカ澱粉、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、ワキシーコーンスターチやサゴ澱粉等通常使用される澱粉、或はそれらをエーテル化、エステル化、酸化等の処理した加工澱粉の何れをも使用できる。
【0015】
本発明においては、α−化澱粉とデキストリンを併用することが必須条件であり、どちらか一方でも欠ければ本発明の所期の効果が得られなくなる。その際、特に問題となるのは原料粉に対するα−化澱粉とデキストリンの添加量であり、原料粉に対してα−化澱粉3〜15重量%、デキストリンを固形分として10〜35重量%とする。
【0016】
原料粉に対するα−化澱粉の添加量が3重量%未満では、表面の改善やソフト感を改善する効果が弱く、15重量%を越えるとソフト感というより、もちゃつきのある食感になる。一方、原料粉に対するデキストリンの添加量が10重量%未満ではしっとり感が不足し、35重量%を越えるとべたつきがみられる。
【0017】
本発明は原料粉に対してα−化加工澱粉とデキストリンを上記のような割合で添加して得られるスコーンであるが、本発明をより具体的にするために次にその方法の一例を記載する。
【0018】
混合機に小麦粉などの穀粉よりなる原料粉を100重量部、α−化澱粉を3〜15重量部、デキストリンを固形分として10〜35重量部投入し、更に膨張剤(例:重炭酸ナトリウム25〜35重量%、酸性剤65〜75重量程度含有している製剤)を1〜4重量部、砂糖15〜20重量部を添加して混合し、油脂15〜25重量部及び予め15〜45重量部の濃厚乳に全卵35〜40重量部を混合して均一化した液を添加し、混合してスコーン用の生地とする。
【0019】
油脂としては、ショートニング、バター、マーガリン、コンパウンドマーガリン(マーガリンとショートニングのほぼ等量混合物)などを使用するが、価格と味の両面を考慮するとコンパウンドマーガリンが好ましい。また、油脂の添加量としては市販のスコーンの半分程度にしている。
【0020】
膨張剤は加熱によって、炭酸ガスやアンモニアを発生させて生地を膨らませる目的で使用され、パンや菓子には炭酸水素ナトリウム単独、酸性剤と組み合わせたベーキングパウダー、塩化アンモニウムと組み合わせたイソバタなど炭酸水素ナトリウムをベースとするのが一般的に使用されるが、本発明のスコーンには炭酸水素ナトリウムと酸性剤を組み合わせたものが好ましい。炭酸水素ナトリウム単独では炭酸ソーダが残存し不快な味になり、アルカリ性であるため着色の原因になる。またイソバタはアンモニアガスが抜けにくい。
【0021】
酸性剤としては、酒石酸、重酒石酸カリウム、酸性リン酸カルシウム、グルコノデルタラクトンなどを例示できるが、味覚の点でグルコノデルタラクトンがより好ましい。
【0022】
濃厚乳の添加量はα−化澱粉の添加量が多い系では多めに、デキストリンの添加量が多い系では少ないめに使用するなどして生地の硬さを調整するが、濃厚乳の代わりに牛乳を用いてもよい。
【0023】
また、上記の原材料以外に菓子類などに一般に使用されている乳化剤、香料、色素、水飴、オリゴ糖、人工甘味料、レーズン、ナッツ、リキュールなどを必要に応じて添加することもできる。
【0024】
次に生地を2cmの厚みに延ばし、直径5cmの抜き型で抜き、それぞれの表面に卵液を2〜3回重ね塗りし、上火170〜190℃、下火160〜180℃程度に設定しておいたオーブンで20〜30分間程度焼成すると本発明の目的とするスコーンが得られる。
【0025】
このようにして得られたスコーンは、表面の状態が滑らかで、ソフトでしっとり感があり、日持ちも改善されたスコーンとなる。また、特に意図したわけでないが、最近問題となっているカロリー過多、特に油脂の取りすぎについても、本発明のスコーンは市販のスコーンに比べて大幅に油脂の含量を減少させることをも可能にした大きな特徴がある。
【0026】
以下に実施例を示し、本発明を更に詳しく説明する。但し、部は重量部、%は重量%を示す。
【0027】
【実施例1】
強力粉と薄力粉の重量比率をを強力粉:薄力粉=70:30の割合にした小麦粉100部に対して、α−化澱粉、デキストリン、食塩、上白糖、「デルトン」(商品名、オリエンタル酵母工業社製で、重炭酸ナトリウム26%、グルコノデルタラクトン70%、食品素材4%よりなるベーキングパウダー)、「ロレーヌGP」(商品名、ミヨシ油脂社製のコンパウンドマーガリン)、全卵、「エルガー7」(商品名、月島食品工業社製の濃厚乳)を下記の配合割合にしてスコーンを製造した。
【0028】
デキストリンとしては「H−ファイバー」(商品名、松谷化学工業社製で還元難消化性デキストリン、濃度70%の液状品)を33部(固形分て23.1部)、α−化澱粉としては「マツノリンM−22」(商品名、松谷化化学工業社製でタピオカ澱粉を原料とするα−化澱粉)を表1の割合で使用し、その他各材料の添加量については表1に記載した。 また、濃縮乳については対照例の生地とほぼ同じ程度の硬さになるような割合で添加し、その数値を表1に記載した。尚、表1において、「マツノリンM−22」を「M−22」と表記した。
【0029】
ホバートミキサー(ホバート社、カナダ)に小麦粉、食塩、上白糖、ベーキングパウダー、「マツノリンM−22」、「H−ファイバー」を投入して混合し、次にコンパウンドマーガリンを添加混合し、最後に予め均一化しておいた全卵と濃縮乳よりなる液を添加混合して生地とした。
【0030】
これらの生地を2cmの厚みに延ばし、直径5cmの抜き型で抜き、それぞれの表面に卵液を2〜3回重ね塗りし、予め上火180℃、下火170℃に設定しておいたオーブンで25分間焼成してスコーンを得た。
【0031】
得られたスコーンを室温まで冷却して形状、ソフト感、しっとり感を評価した。また、冷却したスコーンを冷凍で2週間間保存し、自然解凍した時のスコーンの、ソフト感やしっとり感を評価した。それらの評価した結果を表1に記載するが、評価については下記のようにして行った。
【0032】
<評価項目>
外観 :表面の梨肌の有無を下記基準で評価
ソフト感 :ソフトな食感の有無を下記基準で評価
しっとり感 :下記基準で評価
◎:良好 ○:やや良好 △:やや悪い ×:悪い
【0033】
【0034】
【表1】
【0035】
【実施例2】
実施例1において、α−化澱粉として「パセリPAC」(商品名、アベべ社製で架橋アセチル化馬鈴薯澱粉を原料とするα−化加工澱粉)を10部を用いた以外、同じようにしてスコーンを製造して評価したところ、外観が良好で直後及び冷凍2週間後何れの場合もソフトでしっとりした食感を有するスコーンとなった。
【0036】
【実施例3】
α−化澱粉として「マツノリンM−22」を10部、デキストリンとして「H−ファイバー」と濃厚乳を表2の割合で使用した以外、実施例1に準じてスコーンを評価した結果を表2に記載する。尚、スコーンの外観については何れも良好なものであった。
【0037】
【表2】
【0038】
【実施例4】
実施例3において、デキストリンとして「ファイバーソル#2」(商品名、松谷化学工業社製の難消化性デキストリン)と「パインデックス#2」(商品名、松谷化学工業社製のマルトデキストリン)を固形分としてそれぞれ21部、濃厚乳をそれぞれ20部使用した以外、実施例3と同じようにしてスコーンを製造した。得られたスコーンは何れも外観がよく、製造直後ではソフトでしっとり感も良好であった。
【0039】
これらスコーンを2週間冷凍して自然解凍して食感をみたところ、ソフト感に関してはほぼ同じように評価できたが、しっとり感には幾分差がみられ、「ファイバーソル#2」の方がよりしっとり感が強く感じられた。またこれら冷凍品を電子レンジで解凍して食感をみても自然解凍とほぼ同じような傾向がみられた。
Claims (2)
- 原料粉に対してα−化澱粉を3〜15重量%とデキストリンを固形分として10〜35重量%添加して得られるスコーン。
- デキストリンが難消化性デキストリンである請求項1に記載のスコーン。
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