JP4132196B2 - 撥水性オーバープリントニス組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、オーバープリントニス組成物に係り、特には、撥水性と耐光性に優れたオーバープリントニス組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、印刷物の光沢を向上させ、また印刷物の皮膜を保護するために、印刷面をオーバープリントニス(以下、「OPニス」ということもある。)で被覆することが行われている。すなわち、印刷インキ各色(黄、紅、藍、墨等)を基材シートに印刷した後、その印刷物上に透明なOPニスを印刷している。しかし、従来のOPニスでは、印刷物にコーヒー、ジュース等の飲料物がこぼれたりすると、表面に汚れが付着し、印刷物にべた付きがなお残ったりした。また、従来のOPニスは、撥水性や耐光性が不十分であるため、ポスター等におけるように、長期間屋外環境に置かれ、あるいは風雨にさらされると、印刷物の皮膜が侵されることがある。さらに、通常のOPニスは熱や引っ掻き傷に対しても必ずしも十分な耐性を有していない。
【0003】
これらの対策として、従来、OPニスにポリエチレンワックスやシリーコン系の添加剤を配合することが行われているが、必ずしも満足し得る結果は得られていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の課題は、撥水性と耐光性に優れたOPニス組成物を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明によれば、オーバープリントニスに、フッ素樹脂粒子と紫外線吸収剤とを含有するオーバープリントニス組成物であって、前記フッ素樹脂粒子を20〜30重量%の割合で、前記紫外線吸収剤を5〜20重量%の割合で含有することを特徴とするオーバープリントニス組成物が提供される。
【0006】
本発明において、フッ素樹脂粒子の体積平均粒径は、0.1ないし10μmであることが好ましい。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明のOPニス組成物は、OPニスにフッ素樹脂粒子と紫外線吸収剤とを含有することを特徴とする。
本発明のOPニス組成物において、フッ素樹脂は、撥水性を付与するものとして作用し、耐摩耗性をも付与し得る。フッ素樹脂は、粒子の形態で本発明のOPニス組成物に含められている。本発明に使用されるフッ素樹脂としては、OPニスの溶剤に溶解せず、粒子として均一に分散し得るものが望ましい。具体的には、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(以下、「PTFE」と略すことがある。)、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂、ポリヘキサフルオロプロピレン樹脂、エチレン−フルオロエチレン共重合樹脂、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合樹脂、ポリパーフルオロアルコキシ樹脂等を使用することができる。中でも、PTFEが特に好ましい。
【0008】
本発明において、フッ素樹脂粒子の粒径は、当該分野でよく知られているレーザー回折法、コールターカウンター法等により得られる体積平均粒径で表される。本発明において、フッ素樹脂粒子は、体積平均粒径が0.1ないし10μmであることが好ましい。フッ素樹脂粒子は、これらの粒径範囲で特に優れた撥水性を示す。フッ素樹脂粒子の体積平均粒子は、2〜5μmであることがより好ましい。フッ素樹脂粒子の体積平均粒径が2μm以上であれば、フッ素樹脂粒子がOPニス皮膜の中に埋没することなくOPニス皮膜上へ突出し、耐摩擦性をより向上させるものとなり、他方、体積平均粒径が5μm以下である場合は、フッ素樹脂粒子のOPニスへの分散性がより高く、流動性も一層向上し、フッ素樹脂粒子が印刷機の版やブランケットへ堆積することがほとんどなくなる。使用する全フッ素樹脂粒子の45重量%以上の粒子が2〜4μmの体積平均粒径を有することが特に好ましい。
【0009】
また、フッ素樹脂粒子は、全OPニス組成物の固形分(フッ素樹脂粒子(および紫外線吸収剤)を除く。本明細書において同じ。)を基準として20〜400重量%の割合でOPニス組成物に配合される。フッ素樹脂粒子の含有量が固形分に対して20重量%より少ないと、撥水性、拭き取り性、耐摩擦性が十分に得られず、他方フッ素樹脂粒子の含有量が固形分に対して400重量%より多いと、耐パイリング性、レベリング性が不十分となる。フッ素樹脂粒子は、上記固形分に対して20〜120重量%の割合でOPニス組成物に添加されることがさらに好ましい。
【0010】
本発明において、OPニス組成物の上記固形分は、本発明のOPニス組成物に含まれる常温(20℃)で固体の成分であり、より具体的には、ビヒクルとして配合される各種樹脂、乾性油によって構成されるものであって、溶媒成分や以後詳述する紫外線吸収剤を除くものである。
【0011】
本発明のOPニス組成物に配合される紫外線吸収剤は、OPニス組成物に耐光性を付与するものであり、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤を好ましく使用することができる。そのようなベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の例を挙げると、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、メチル−3−[3−t−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピネートとポリエチレングリコール(分子量約300)との縮合物、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール誘導体等である。これら紫外線吸収剤は、いずれも市販されている。
【0012】
紫外線吸収剤は、オーバープリントニス組成物の固形分を基準として、1重量%以上の割合で添加することが好ましい。紫外線吸収剤の添加量が1重量%未満であると、十分な耐光性が得られないおそれがある。紫外線吸収剤は、20重量%以下の割合で添加することがさらに好ましい。
【0013】
本発明のOPニス組成物は、基材シートの一部に設けられ、概念駆動型の認知が可能な情報を構成する印刷インキ皮膜を含む印刷面を被覆して設けられる。
本発明のOPニス組成物は、オフセット印刷方式、グラビア印刷方式もしくはシルクスクリーン方式等で塗工することができる。塗工されたOPニス組成物は、乾燥後実質的に無色透明の皮膜を形成する。
【0014】
オフセット印刷方式で塗工する場合、本発明のOPニス組成物は、フッ素樹脂粒子と紫外線吸収剤を除き、ロジン変性フェノール樹脂、石油樹脂、アルキッド樹脂、またはこれら乾性油変性樹脂等の樹脂20〜80重量%、あまに油、桐油、大豆油等の乾性油0〜80重量%、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、アロマチックハイドロカーボン、ナフテン、αーオレフィンまたはこれらの混合物等の溶剤0〜80重量%、ドライヤー、乾燥抑制剤等の添加剤1〜5重量%からなる(フッ素樹脂粒子と紫外線吸収剤を除き、合計100重量%)ことが好ましい。より好ましくは、樹脂1重量部に対して乾性油0.3〜4重量部を配合する。
【0015】
グラビア印刷方式で塗工する場合、本発明のOPニス組成物は、フッ素樹脂粒子と紫外線吸収剤を除き、アクリル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩化ゴム樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリアミド樹脂およびセルロース樹脂からなる群の中から選ばれる少なくとも1種の樹脂20〜50重量%、およびトルエン、酢酸エチル、酢酸イソブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の溶剤50〜80重量%からなる(フッ素樹脂粒子と紫外線吸収剤を除き、合計100重量%)ことが好ましい。
【0016】
本発明のOPニスにより被覆される印刷物は、上にも述べたように、概念駆動型の認知が可能な情報を構成する印刷インキ皮膜が基材シートの少なくとも一部に形成されているものである。
【0017】
基材シートとしては、シート状で、印刷インキ受容性を有するものであれば任意のシートが利用できるが、中でも、パルプを主成分とする紙、合成樹脂を主成分とするプラスチックフィルム、あるいは合成樹脂を主成分としてその印刷インキ受容性を改善させた合成紙等が好ましく利用できる。
【0018】
パルプを主成分とする紙としては、例えば、更紙、中質紙、上質紙等が利用できる。
合成紙としては、例えば、無孔質のプラスチックフィルムの片面または両面に印刷インキ受容性の塗料を塗布しその塗布膜を形成して、印刷インキ受容性を改善させたものが利用できる。このようなプラスチックフィルムとしては、例えば、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム等が例示でき、また印刷インキ受容性塗料としては、マット剤を含有するものが使用できる。マット剤としては、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等が使用できる。
【0019】
さらに、合成紙として、プラスチックフィルムを発泡させて微細な孔を多数設け、この微細孔によって印刷インキ受容性を改善させたもの、溶剤溶解性の微粉末を混合して製膜したプラスチックフィルムから微粉末を溶剤により溶解除去し、こうして除去された微粉末存在部位を微細な孔として、この微細孔によって印刷インキ受容性を改善させたもの、あるいは微粉末を混合して製膜したプラスチックフィルムを延伸し、この延伸によって微粉末とプラスチックとの間に微細な亀裂を生じせしめ、この微細な亀裂によって印刷インキ受容性を改善させたもの等が適用できる。
【0020】
なお、粘土質の材料を合成樹脂バインダー中に分散させた塗被層を表面に備える基材シートも使用することができる。
このような粘土質の材料としては、タルク、クレー、カオリン等が例示でき、合成樹脂バインダーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の各種合成樹脂が利用できる。なお、合成樹脂バインダーとしてポリオレフィンを利用する場合には、塗被層表面のポリオレフィンに酸化処理を施して、本発明のOPニスとの密着性を増大させることが望ましい。酸化処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、オゾン処理等が利用できる。なお、上記塗被層は、その表面が平坦に構成されていることが望ましい。
【0021】
このような塗被層は、オーバープリント層が形成される面側に設けられていればよく、必ずしも基材シートの両面に設けられている必要はない。
基材シート上に形成される印刷インキ皮膜としては、周知の印刷技術に係るものが適用できる。例えば、シルクスクリーン印刷による印刷インキ皮膜、オフセット印刷による印刷インキ皮膜、凸版印刷による印刷インキ皮膜、グラビア印刷による印刷インキ皮膜、グラビアオフセット印刷による印刷インキ皮膜等であり、一色に限らず、多色の印刷インキで刷り重ねられた多層構造の印刷インキ皮膜であってよい。
【0022】
このような印刷インキ皮膜は、基材シート全面に設けられる必要はなく、その一部に、概念駆動型の認知が可能な可視情報を構成する形状に設けられればよい。ここで、概念駆動型の認知が可能な可視情報とは、可視情報観察者の持つ既存の知識に基づいて上記情報が認知されるもので、もっぱら刺激駆動型の知覚に頼る可視情報(例えば、木目模様等の装飾模様等)と異なり、その印刷インキ皮膜の形状が意味を有し、この意味を認知することができるものをいい、主に、文字、記号(例えば、電話や郵便を意味する記号、天気図において使用される晴天や雨天を意味する記号、著作権や商標権を示す記号、地図において使用される鉄道の記号や等高線、芸能人等著名人の写真等)、あるいは建築物の間取り図に用いられる各種の符号や線等であり、通常、上記印刷物の価値を化体する。
【0023】
本発明のOPニス組成物は、上記印刷方式により、印刷インキ皮膜を含む印刷面を被覆するように適用される。通常、OPニス層の厚さは、印刷方法によっても異なるが、0.5ないし1.5μm程度である。
【0024】
なお、本発明において、フッ素樹脂粒子の代わりに、ポリオレフィン粒子またはシリカ粒子を用いてもよい。ポリオレフィン粒子としては、低密度ポリエチレン粒子、高密度ポリエチレン粒子、中密度ポリエチレン粒子、ポリプロピレン粒子、ポリブテン粒子、ポリペンテン粒子、あるいはそれらの共重合体から構成される粒子を用いることができ、また実害のない範囲でオレフィン以外の微量のモノマーをオレフィンモノマーに対して共重合させた共重合体粒子を用いることもできる。これらの中でも、ポリエチレン粒子が好ましい。平均体積粒径は、1〜30μmが好適である。またシリカ粒子は、平均体積粒子が1〜40μmであるものが好適である。
【0025】
【実施例】
次に実施例により本発明を説明する。なお、以下の例中、「%」は、重量基準である。
実施例1〜9、比較例1〜5
樹脂は固形であるため、使い易くするために溶剤、乾性油で溶解した。すなわち、ロジン変性フェノール樹脂40%、桐油40%および3号ソルベント(日本石油化学(株)製溶剤)20%を攪拌付き4つ口フラスコに仕込み、180℃で1時間かけ溶解し、くみ出しワニス(以下、ワニスAという)を調製した。
【0026】
ワニスAに、フッ素樹脂粒子として体積平均粒径3.9μmのPTFE粒子((株)セイシン企業製FTワックスFT−301)と紫外線吸収剤として2−(3,5−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールを下記表1に示す比率で混合し、三本ロールで十分に分散練肉した後、ナフテン酸コバルトドライヤー0.3重量%、ナフテン酸コバルトドライヤー0.3重量%、ナフテン酸マンガンドライヤー0.3%および乾燥抑制剤1重量%を混合した(表1には、ドライヤーおよび乾燥抑制剤の量は省略されている)。
【0027】
色インキとしてTKハイエコー黄(C.I.ピグメントNo.12)を文字状に下刷りしたコート紙に各OPニスを塗布し、耐光性試験により、下刷り黄色インキが80%退色した時間で耐光性を評価した。
【0028】
また、各OPニス0.3ccを展色機(RIテスター)にてコート紙に印刷し常温で24時間放置後撥水性試験を以下のようにして行った。
市販のコーヒーを印刷物に1滴垂らし、1分間後、布で拭き取った時の印刷物のべと付き度合いを以下の5段階基準で評価した。
【0029】
5:優れる;4:良好;3:普通;2:やや劣る;
1:劣る。
結果を表1に併記する。
【0030】
【表1】
【0031】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、撥水性と耐光性に優れたオーバープリントニス組成物が提供される。
Claims (2)
- オーバープリントニスに、フッ素樹脂粒子と紫外線吸収剤とを含有するオーバープリントニス組成物であって、前記フッ素樹脂粒子を20〜30重量%の割合で、前記紫外線吸収剤を5〜20重量%の割合で含有することを特徴とするオーバープリントニス組成物。
- 前記フッ素樹脂粒子の体積平均粒径が、0.1ないし10μmであることを特徴とする請求項1記載のオーバープリントニス組成物。
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