JP3595658B2 - 撥水性オーバープリントニス組成物及び印刷物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に撥水性、耐摩擦性に優れた無色透明から乳白色のオーバープリントニス組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、印刷物の光沢向上や印刷物の皮膜保護の為、オーバープリントニス(以後OPニスということもある)が使用されている。つまり、印刷インキ各色(黄、紅、藍、墨等)を印刷後、無色透明なOPニスを印刷している。しかし、印刷物にコーヒー、ジュース等の飲料物がこぼれたりすると、表面に汚れが付着して印刷物にべた付きが残ったりした。又、ポスター等のように、風雨にさらされると、撥水性が不十分の為、印刷物の皮膜が侵されることがある。さらに、通常の印刷物は熱や引っ掻き傷に対しても必ずしも十分ではない。
これらの対策として、従来OPニスにポリエチレンワックスやシリコン系の添加剤を使用していたが、必ずしも十分ではなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、撥水性、拭き取り性、耐摩擦性等に優れたOPニス組成物を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
すなわち、第1の発明は、下記(a1)及び(a2)からなるオーバープリントニス組成物(A)100重量部に対して、体積平均粒径が2〜5マイクロメートルであるポリテトラフルオロエチレン粒子(B)2〜30重量部を添加してなることを特徴とする撥水性オーバープリントニス組成物である。
(a1) アクリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩化ゴム樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリアマイド樹脂およびセルロース系樹脂から成る群より選ばれる少なくとも1種以上の樹脂:20〜50重量%
(a2) 溶剤:50〜80重量%
【0005】
第2の発明は、基材シートと、この基材シートの少なくとも一部に設けられ、概念駆動型の認知が可能な情報を構成する印刷インキ被膜と、この印刷インキ被膜を含む印刷面を被覆して設けられた透明オーバープリント層とを備え、該透明オーバープリント層が第1の発明記載の撥水性オーバープリントニス組成物からなることを特徴とする印刷物である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明において、ポリテトラフルオロエチレン粒子(以下PTFEと略す)ワックスの粒径は、レーザー回折法、コールターカウンター法等により得られる体積平均粒径である。PTFE粒子は、体積平均粒径2〜5マイクロメートルのものであり、さらに好ましくは、全粒子の45重量%以上の粒子が体積平均粒径2〜4ミクロンメートルのものを使用する。体積平均粒径が2マイクロメートルに満たない場合は、OPニス皮膜の中に粒子がもぐり込んでOPニス皮膜上へ突出せず、耐摩擦性が劣化する。また体積平均粒径が5マイクロメートルより大きい場合は、PTFEのOPニスへの分散性が悪く流動性も劣化し、PTFEが印刷機の版やゴムローラーへ堆積してしまう。
又、PTFEは、全OPニス組成物(A)100重量部中に2〜30重量%、好ましくは5〜10重量%を添加する。含有量が上記数値より少ないと、撥水性、拭き取り性、耐摩擦性が十分に得られず、上記数値より多いと著しく光沢が低下したり、レベリング性が不十分となる。
【0007】
本発明の撥水OPニス組成物は、グラビア印刷方式もしくはシルクスクリーン方式等で塗工することができる。
グラビア印刷方式で塗工する場合のOPニス組成物(A)は、前記(a1)の樹脂20〜50重量%、及びトルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸イソブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等の溶剤(a2)50〜80重量%からなるものである。
【0008】
また、シルクスクリーン方式で塗工する場合のOPニス組成物(A)は、前記(a1)の樹脂20〜50重量%、及び石油ナフサ、メチルプロピレングリコール、ブチルセロソルブ、メチルプロピレングリコールアセテート、ダイアセトンアルコール、シクロヘキサノン、イソホロン、γ−ブチルラクトン等の溶剤(a2)50〜80重量%からなるものである。
【0009】
なお、本発明において樹脂(a1)は、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基等種々の官能基を有していてもよく、係る官能基と反応し得る基を1分子中に少なくとも1つ有する化合物を架橋剤として、本発明に係る撥水OPニス組成物に含有せしめてもよい。
【0010】
本発明のOPニス組成物を塗工するに当たり、先ず基材シート上に概念駆動型の認知が可能な情報を構成する印刷インキ被膜を基材シートの少なくとも一部に形成する。
上記基材シートとしては、シート状で印刷インキ受容性を有するものであれば任意のシートが利用できるが、中でもパルプを主成分とする紙、合成樹脂を主成分とするプラスチックフィルム、あるいは合成樹脂を主成分としてその印刷インキ受容性を改善させた合成紙等が好ましく利用できる。
パルプを主成分とする紙としては、例えば、更紙、中質紙、上質紙等が利用できる。
合成紙としては、例えば、無孔質のプラスチックフィルムの片面または両面に印刷インキ受容性の塗料を塗布しその塗布膜を形成して、印刷インキ受容性を改善させたものが利用できる。このようなプラスチックフィルムとしては、例えば、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム等が例示でき、また上記塗料としては、マット剤を含有するものが使用できる。マット剤としては、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等が使用できる。
また、この他、上記合成紙として、プラスチックフィルムを発泡させて微細な孔を多数設け、この微細孔によって印刷インキ受容性を改善させたもの、溶剤溶解性の微粉末を混合して製膜したプラスチックフィルムの上記微粉末を溶剤によって溶解除去し、こうして除去された微粉末存在部位を微細な孔として、この微細な孔によって印刷インキ受容性を改善させたもの、あるいは微粉末を混合して製膜したプラスチックフィルムを延伸し、この延伸によって微粉末とプラスチックとの間に微細な亀裂を生ぜしめ、この微細な亀裂によって印刷インキ受容性を改善させたもの等が適用できる。
【0011】
なお、基材シートがその表面に粘土質の材料を合成樹脂バインダー中に分散させた塗被層を備えるものを使用することもできる。
このような粘土質の材料としては、例えば、タルク、クレー、カオリン等が開示でき、合成樹脂バインダーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の各種合成樹脂が利用できる。なお、合成樹脂バインダーとしてポリオレフィンを利用する場合には、塗被層表面のポリオレフィンに酸化処理を施して、本発明のOPニスとの密着性を増大させることが望ましい。酸化処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、オゾン処理等が利用できる。なお、上記塗被層は、その表面が平坦に構成されていることが望ましい。
なお、係る塗被層は、透明オーバープリント層が形成される面側に設けられていればよく、必ずしも基材シートの両面に設けられている必要はない。
【0012】
上記基材シート上に形成される印刷インキ被膜としては、周知の印刷技術に係るものが使用できる。例えば、シルクスクリーン印刷による印刷インキ被膜、オフセット印刷による印刷インキ被膜、凸版印刷による印刷インキ被膜、グラビア印刷による印刷インキ被膜、グラビアオフセット印刷による印刷インキ被膜等であり、一色に限らず、多色の印刷インキで刷り重ねられた多層構造の印刷インキ被膜であってよい。
係る印刷インキ被膜は、基材シート全面に設けられる必要がなく、その一部に概念駆動型の認知が可能な可視情報を構成する形状に設けられればよい。ここで、概念駆動型の認知が可能な可視情報とは、可視情報観察者の持つ既存の知識に基づいて上記情報が認知されるもので、もっぱら刺激駆動型の知覚に頼る可視情報(例えば、木目模様等の装飾模様等)と異なり、その印刷インキ被膜の形状が意味を有し、この意味を認知することができるものをいい、主に、文字、記号(例えば、電話や郵便を意味する記号、天気図において使用される晴天や雨天を意味する記号、著作権や商標権を示す記号、地図において使用される鉄道の記号や等高線、芸能人等著名人の写真等)、あるいは建築物の間取り図に用いられる各種の符号や線等であり、通常、上記印刷物の価値を化体する。
本発明のOPニス組成物は、上記印刷方式により形成された印刷インキ被膜を含む印刷面を被覆するように適用される。
【0013】
【実施例】
次に実施例により本発明を説明する。尚、例中「部」、「%」は重量基準である。
実施例1〜3、比較例1〜6
メチルメタアクリレート/ブチルメタアクリレートを主とするアクリル共重合体樹脂22.5%、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂2.5重量%、トルエン37.5%、酢酸イソブチル17.5%、酢酸エチル15%、メチルイソブチルケトン2%、メチルエチルケトン3%を攪拌機付き4つ口フラスコに仕込み、50℃で溶解しワニスAとした。
ワニスA100部に対して、添加剤として表1に示すPTFE、他のワックス、シリコンオイル等を種々の割合で混合し、ディスパーで十分に分散し、本発明の撥水性OPニス組成物と、比較例のOPニス組成物とを得、各OP組成物を小型グラビア校正機にてコート紙に印刷し、常温24時間放置後各試験を行った。
表中の試験法は以下の通りに行った。結果を表1に示す。
【0014】
(撥水性)
市販のコーヒーを印刷物に1滴垂らし、1分間後、布で拭き取った時の印刷物のべた付き度合いを5段階評価で表示した(優)5←→1(劣)。
(耐摩擦性)
各印刷物をサザーランドラブテスター2ポンドの荷重で20回擦り、印刷物の傷付き度合いを5段階評価で表示した。表示法は上記撥水性に同じ。
【0015】
【表1】
【0016】
実施例4
アクリル樹脂(ロームアンドハース社製パラロイドB66)25%、ダイアセトンアルコール30%、メチルプロピレングリコールアセテート30%、石油ナフサ(沸点160〜180℃)15%を攪拌機付き4ツ口フラスコに仕込み、80℃で2時間かけて樹脂を溶解し、ワニスBとした。
ワニスB100部に実施例1で使用したPTFE5部及びレベリング剤としてアクリルオリゴマー(共栄社化学製商品名ポリフロー3)1部を配合し、高速ディゾルバーで30分攪拌により、均一分散された粘度46ポイズのスクリーン印刷用OPニスを得た。
このOPニス100部に対してブチロセロソルブ25部を添加し粘度調整を行い(粘度18ポイズ)、270メッシュナイロン版にてコート紙に印刷し、常温で24時間乾燥させて乾燥被膜を得た。この被膜の上記試験法による評価は、撥水性5、耐摩擦性5であった。
【0017】
実施例5
実施例4で得られたワニスBに添加剤として実施例1で使用したPTFEワックス10部及びレベリング剤としてアクリルオリゴマー(共栄社化学製商品名ポリフロー3)1部を配合し、高速ディゾルバーで30分攪拌により、均一分散された粘度46ポイズのスクリーン印刷用OPニスを得た。このOPニス100部に対してブチロセロソルブ20部を添加し粘度調整を行い(粘度18ポイズ)、270メッシュナイロン版にてコート紙に印刷し、常温で24時間乾燥させて乾燥被膜を得た。この被膜の上記試験法による評価は、撥水性5、耐摩擦性5であり、且つ、マット効果のある外観が得られた。
【0018】
比較例7
実施例4においてPTFEに代えてポリエチレンワックス(東洋ペトロライト社製商品名PWパウダーM2010)5部を添加した他は、実施例4と同操作により乾燥被膜を得た。この被膜の上記試験法による評価は、撥水性3、耐摩擦性3であった。
【0019】
【発明の効果】
本発明のOPニス組成物は撥水性、拭き取り性、耐摩擦性を向上させることができる。
Claims (2)
- 下記(a1)及び(a2)からなるオーバープリントニス組成物(A)100重量部に対して、体積平均粒径が2〜5マイクロメートルであるポリテトラフルオロエチレン粒子(B)2〜30重量部を添加してなることを特徴とする撥水性オーバープリントニス組成物。
(a1) アクリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩化ゴム樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリアマイド樹脂およびセルロース系樹脂から成る群より選ばれる少なくとも1種以上の樹脂:20〜50重量%
(a2) 溶剤:50〜80重量% - 基材シートと、この基材シートの少なくとも一部に設けられ、概念駆動型の認知が可能な情報を構成する印刷インキ被膜と、この印刷インキ被膜を含む印刷面を被覆して設けられた透明オーバープリント層とを備え、該透明オーバープリント層が請求項1記載の撥水性オーバープリントニス組成物からなることを特徴とする印刷物。
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