JP4130089B2 - 反射防止フィルム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
発明は、高屈折率塗膜層及び低屈折率塗膜層から成る光学多層膜を有する反射防止フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ガラス、セラミック、金属、プラスチックなどの基材表面に、種々の目的で無機皮膜を形成させることが行われている。基材表面に無機皮膜を形成させることによって、基材に電気的特性、光学的特性、機械的特性を付与することが可能となる。
このようにして、基材フィルム上に順に無機皮膜からなる高屈折率塗膜層及び低屈折率塗膜層を形成し、光学多層膜とした、反射率を低減させた反射防止フィルムが知られている。このような光学多層膜はその機能を発揮するために反射防止フィルムの最外層に用いられるので、十分な耐摩擦性や膜強度を有する必要があり、更に、屈折率を異ならせるための様々な組成から成る塗膜層間に十分な密着性を有することが求められている。そのためチタン酸化物はその屈折率が高いことから、フィルム等に薄膜を形成させ、屈折率の低い薄膜と組み合わせて、光干渉を利用した反射防止膜などの、光学的特性を持たせた膜にしばしば用いられている。
【0003】
このような観点から、高屈折率塗膜層がアルコキシチタンから調製した酸化チタンゾル等と有機ケイ素化合物とから成る反射防止フィルム(特開平9−222504)や、高屈折率塗膜層がアルコキシチタン等の有機金属化合物とアクリル系化合物とから成る反射防止フィルム(特開2001−31871)等が提案されている。
また、この様な塗膜層を形成させる方法として、CVD、PVD、スパッタリングなどの気相法又はアルコキシド化合物を用いた液相法が行われている。一般に気相法の場合には真空蒸着装置などの高価な装置が必要である。また装置の大きさで基材の大きさが制限される。一方、アルコキシド化合物を用いた液相法の場合には、基材の大きさ制限ないものの、液の安定性が低く大気中の水分と反応して加水分解と脱水反応による二酸化チタン粒子の沈殿を生じる。そのため、湿度など雰囲気の管理が必須となるが、工場生産においてこのような管理を行うことは困難である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、屈折率が高い酸化チタンを高屈折率塗膜層に含有させた光学多層膜から成る反射防止フィルムであって、十分な膜強度と層間密着性を有する反射防止フィルムを提供するものである。
また、このような酸化チタンを含有する高屈折率塗膜層を作製するために液相法を用いた場合の問題点である塗布液の加水分解を防ぐために、アセチルアセトン等のキレート化剤(金属と2つの配位結合を形成し金属原子と環状構造をとる配位子)を作用させて、コーティング液とする方法が知られているが、このような方法では熱分解(加水分解及び縮合反応)温度が400℃以上と高くなり、PETフィルム等の熱可塑性支持体上ではフィルムが変形するため、加水分解反応させることができない。150℃程度の加熱では、反応は不十分になり、得られる薄膜は有機物を多量に含むため、薄膜の屈折率を高くすることができず、高屈折率である二酸化チタン膜としての性能を得ることができない。
【0005】
また、機械的強度が低いためこの薄膜の上に塗膜を形成する時に薄膜に傷が入る等の問題が発生し、使用に耐える薄膜を形成することが困難である。また、薄膜を形成できたとしても、屈折率が低いため反射率が下がらないという問題があった
したがって本発明は、液相法で屈折率1.80以上の二酸化チタン薄膜の製造に使用できる安定性の高いコーティング用組成物とこの組成物を熱可塑性フィルムに塗布して得られる屈折率1.80以上で機械的強度の高いフィルムを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、チタンアルコキシド単量体及び多量体に、それらに含有されるチタンと7又は8員環キレートを形成することのできる有機配位子を混合したコーティング用組成物を基材フィルムに塗布して高屈折率塗膜層を形成させることにより、このような課題を解決することができることを見出し、本発明に到達した。本発明はチタンアルコキシドの貯蔵安定性を改善し、製膜安定性に優れたコーティング組成物を塗布して得られる二酸化チタン薄膜である高屈折率塗膜層及び低屈折率塗膜層を有する反射防止フィルムを提供するものである。
【0007】
即ち、本願第1の発明は、基材フィルム上に順に高屈折率塗膜層及び低屈折率塗膜層を有する反射防止フィルムであって、該高屈折率塗膜層が下記コーティング組成物を塗布し乾燥することによりり、該コーティング組成物を塗布した該基材フィルムの乾燥後における塗布面の屈折率より前記低屈折率塗膜層面の屈折率の方が低いことを特徴とする反射防止フィルムである。このコーティング組成物は、
一般式(1)
Ti(OR2m+2 (1)
(式中、Rは炭素数が1〜5のアルキル基を表し、mは1以上の整数を表す。)で表される化合物及び一般式(2)
−R−C2n−R−R (2)
(式中、R及びRはそれぞれ
Figure 0004130089
のいずれか、より好ましくは
Figure 0004130089
のいずれか、更に好ましくは
Figure 0004130089
のいずれか、特に好ましくは
Figure 0004130089
を表し(但し、これらの基はその炭素原子が−C2n−に隣接するように結合する。)、R及びRはそれぞれ水素原子又は炭素数が1〜5のアルキル基、好ましくは水素原子を表し、−C2n−は直鎖であり、nは2又は3の整数を表す。)で表され、前記一般式(1)で表される化合物中のチタンに配位して7員又は8員のキレート環を形成する化合物又はその誘導体並びに有機溶剤からる。このコーティング組成物は更に無機酸塩を含んでもよい。また、本願第2の発明はこのコーティング組成物である。本発明における前記高屈折率塗膜層及び前記低屈折率塗膜層の厚さそれぞれ50〜200nmであることが好ましく、前記コーティング組成物を塗布した前記基材フィルムの乾燥後における塗布面の屈折率が1.80以上であることが好ましい
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の反射防止フィルムは、基材フィルム上に順に高屈折率塗膜層及び低屈折率塗膜層を有する。この高屈折率塗膜層及び低屈折率塗膜層を有する反射防止フィルムは反射防止フィルムの最外層に配されればよく、基材フィルムと高屈折率塗膜層との間に、例えば接着層やハードコート層など他のいかなる層を有するものであってもよい。
この基材フィルムはいかなる基材であってもよいが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロースフィルム(TAC)、ポリカーボネートフィルム(PC)等のフィルムやこれにアクリル樹脂やウレタン樹脂のハードコート膜を形成したフィルムを使用することができる。
【0009】
高屈折率塗膜層を形成するためのコーティング組成物は、上記一般式(1)で表される化合物及び上記一般式(2)で表される化合物又はその誘導体並びに有機溶剤から成るコーティング組成物である。
このコーティング組成物及び形成された高屈折率塗膜層において、上記一般式(2)で表される化合物は、一般式(1)で表される化合物に含まれるチタンに対するキレート配位子として機能する。nが2の場合には上記一般式(2)で表される化合物は7員環のキレート環を形成し、nが3の場合には上記一般式(2)で表される化合物は8員環のキレート環を形成する。
【0010】
このキレート環がエチレングリコールやアセチルアセトンの場合のように5又は6員環を形成する場合は、得られたキレート錯体安定性が高く、加熱して酸化チタン膜を形成するためには400℃以上の高温が必要となるため、熱可塑性のフィルム上に酸化チタン膜を形成させることは困難である。一方、9員環以上になるとキレートを生成しにくいため塗膜の安定性が低い。
本発明において、7又は8員環のキレートを生成する一般式(2)で表される材料としては、コハク酸、グルタル酸等のジカルボン酸とその誘導体、ブチレングリコール、ペンチレングリコールのジアルコールとその誘導体などが挙げられる。即ち、上記一般式(2)で表される具体的な化合物として、例えば、1,4ブタンジアルデヒド、1,5ペンタンジアルデヒド、コハク酸、グルタル酸、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、へキシレングリコール、アルコキシ基の炭素数が1〜4である4-アルコキシブタノール、4アミノ1-ブタノール、4イミドイル1-ブタノール、アルコキシ基の炭素数1〜4の4アルコキシ酪酸、炭素数が13以下である1,4-ジケトン、1,5-ジケトン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、4-イミドイル1-アミノブタン、5-イミドイル1-アミノペンタン、1,4-ジイミドイルブタン、1,5-ジイミドイルペンタン、4アミノ酪酸、4イミドイル酪酸、及び、これらのナトリウム塩、カリウム塩を含む、これら化合物の誘導体を挙げることができる。特に好ましくはコハク酸、アルコキシ基の炭素数が1〜4である4アルコキシ酪酸のナトリウム塩が挙げられる。
即ち、一般式(2)で表される化合物の誘導体とは、例えば、この化合物の末端(即ち、一般式(2)のR又はR)がカルボキシル基である場合に、当該末端がエステルや金属塩であるもの等をいう。
【0011】
また本発明においては、コーティング組成物中に含有させる有機溶剤含水率が5重量%以下であることが適当であり、これらの有機溶剤としては、アルコール類、ケトン類、カルボン酸類、エステル類、セロソルブ類、エーテル類、グリコール類、炭化水素類若しくはこれらの誘導体又はこれらの混合物、好ましくは沸点150℃以下のアルコール類又はセロソルブ類を用いることができる。このような有機溶剤の具体例として、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2メチルプロパノール、1,1-ジメチルエタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、3-メチル1-ブタノール、3-メチル2-ブタノール、2-メチル1-ブタノール、2-メチル2-ブタノール、1,2-ジメチルプロパノール、2,2-ジメチルプロパノール、2-エチルブタノール、4-メチル2-ペンタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルが挙げられ、特に好ましくはエタノール、イソプロピルアルコール、1-プロパノールが挙げられる。
このコーティング組成物には必要に応じて公知の有機又は無機のバインダーや添加剤を加えてもよい。但し、屈折率を低下させる可能性があるため、コーティング組成物にはこれら添加剤を加えない方が好ましい。
一般式(1)で表される化合物に対する一般式(2)で表される化合物のモル比は1〜3であることが好ましい。また、コーティング組成物中の一般式(2)で表される化合物の割合は、通常0.1〜25.0重量%、好ましくは1.0〜5.0重量%である。
【0012】
本発明に使用する無機酸塩は特に限定されるものではないが、成膜性向上させる観点から、ナトリウム、マグネシウム、鉄、カリウム、カルシウム又はアルミニウムの無機酸塩が好ましく、マグネシウム塩がより好ましい。この塩を形成する無機酸としては硝酸、硫酸、蓚酸又は塩酸が好ましく、硝酸がより好ましい。上記の無機酸塩はエタノールに可溶であれば更に好ましい。これらの塩は混合して用いてもよい。
記コーティング組成物中の一般式(1)で表される化合物に対する無機酸塩のモル比は0.001〜0.1であることが好ましい。
【0013】
低屈折率塗膜層は透明である限り公知のいかなる塗膜であってもよいが、特に、有機ケイ素化合物、フッ素化合物又はホウ素化合物を含有することが好ましい。これら成分を含有させることにより塗膜より低屈折率にすることができる。これら化合物として、例えば、二酸化ケイ素微粒子と樹脂を混合したものやアルコキシシリケート、アルキルトリアルコキシシラン、コルコート40(コルコート社製)、MS51(三菱化学製)、スノーテックス(日産化学製)、オプスターJN7212(JSR製)、16Fep(共栄社化学製)、ザフロンFC−110(東亜合成化学製)、セクラルコートA−402B(セントラル硝子製)、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルメトキシシラン、トリフルオロプロピルメトキシシラン、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トエイメチル、ホウ酸トリプロピル等が挙げられる。
基材フィルム上に順に高屈折率塗膜層及び低屈折率塗膜層を有する本発明の反射防止フィルムは公知のいかなる方法で製造してもよい。これらの塗膜層は、例えば、グラビア、マイクログラビア、バー、コンマ、キャップ、ディップ、スロットダイ、スライドダイ、カーテンダイ、スピンコート等の塗工方式で塗工し、25〜150℃、好ましくは40〜100℃の乾燥温度で30秒〜2分乾燥して得ることができる。反応を進めるために100〜150℃で1時間以上加熱することが好ましい。
【0014】
【実施例】
以下、実施例にて本発明を例証するが、本発明を限定することを意図するものではない。
実施例1
テトラn−ブトキシチタネート(商品名B1;日本曹達製)100重量部を窒素雰囲気中で密閉式容器に入れ、n−ブタノール(関東化学製、特級)1075重量部を1分間に100重量部の速度でゆっくり加えてTiO換算で濃度2%に調整した。これにコハク酸ナトリウム(和光純薬製)10%エタノール溶液470重量部を同じ速度でゆっくり添加し、さらにイソプロピルアルコール(IPA、関東化学製)705重量部を同じ速度で添加し十分に攪拌しTiO換算で1.0%の固形分濃度の塗料(塗料1)とした。この塗料を大気下で2時間攪拌したところ、沈殿などは生じず、黄色透明な状態を保った。
この塗料を、ハードコート膜を形成したTACフィルム(日本製紙製、ZTAC-HC)上にマイヤーバー#6(RDS社製)を用い、乾燥後の厚さ80nmになるよう塗膜を形成し、送風乾燥機で60℃で1分間乾燥させ、更に110℃で8時間加熱処理を行った。得られた塗膜は均一な透明膜であった(高屈折率塗膜層)。
この塗膜の上にアルコキシシリケ−ト(L1001;日産化学製)100重量部にエタノール(関東化学製、特級)300重量部を加え、固形分濃度1%に調整した塗料(塗料2)をマイヤーバー#5(RDS社製)で塗工し、送風乾燥機で60℃で1分間乾燥させたところ、膜厚は110nmであった(低屈折率塗膜層)。
【0015】
実施例2
テトラn−ブトキシチタネート(B1)100重量部を窒素雰囲気中で密閉式容器に入れ、n−ブタノール1075重量部を1分間に100重量部の速度でゆっくり加えてTiO換算で濃度2%に調整した。これにコハク酸ナトリウム10%エタノール溶液940重量部を同じ速度でゆっくり添加し、さらにIPA235重量部を同じ速度で添加し十分に攪拌しTiO換算で1.0%の固形分濃度の塗料とした(塗料3)。この塗料を大気下で2時間攪拌したところ、沈殿などは生じず、黄色透明な状態を保った。
この塗料を、ハードコート膜を形成したTACフィルム(ZTAC-HC)上にマイヤーバー#6を用い、乾燥後の厚さ80nmになるよう塗膜を形成し、送風乾燥機で60℃で1分間乾燥し、更に110℃で8時間加熱処理を行った。得られた塗膜は均一な透明膜であった(高屈折率塗膜層)。
この塗膜の上に実施例1と同様の条件で塗料2を塗工し、送風乾燥機で60℃で1分間乾燥させ、膜厚が110nmの低屈折率塗膜層を形成させた。
【0016】
実施例3
テトラiプロポキシチタネート(商品名A1、日本曹達製)100重量部にIPA 1310重量部を窒素雰囲気下で1分間に100重量部の速度で加えてTiO換算で濃度2%に調整した。この溶液に窒素雰囲気下で、IPAと同じ速度でグルタル酸ジエチル(和光純薬製)10%IPA溶液567重量部をゆっくり添加し十分に攪拌し、さらにIPA 833重量部を同じ速度で加えてTiO換算で濃度1%の塗料とした(塗料4)。この塗料を大気下で2時間攪拌したところ、沈殿などは生じず、淡黄色透明な状態を保った。
この塗料をPETフィルム上にマイヤーバー#5で塗膜を形成し、送風乾燥機で80℃で1分間乾燥させ、更に110℃で8時間加熱処理を行った。得られた塗膜は均一な透明膜であった(高屈折率塗膜層)。
この塗膜の上に実施例1と同様の条件で塗料2を塗工し、送風乾燥機で60℃で1分間乾燥させ、膜厚が110nmの低屈折率塗膜層を形成させた。
【0017】
実施例4
テトラiプロポキシチタネート(A1)100重量部にIPA1310重量部を窒素雰囲気下で1分間に100重量部の速度で加えてTiO換算で濃度2%に調整した。この溶液に窒素雰囲気下で、IPAと同じ速度でグルタル酸ジエチル10%IPA溶液1134重量部をゆっくり添加し十分に攪拌し、さらにIPA266重量部を同じ速度で加えてTiO換算で濃度1%の塗料とした。
この塗料をPETフィルム上にマイヤーバー#5で塗膜を形成し、送風乾燥機で80℃で1分間乾燥させ、更に110℃で8時間加熱処理を行った。得られた塗膜は均一な透明膜であった(高屈折率塗膜層)。
この塗膜の上に実施例1と同様の条件で塗料2を塗工し、送風乾燥機で60℃で1分間乾燥させ、膜厚が110nmの低屈折率塗膜層を形成させた。
【0018】
実施例5
テトラiプロポキシチタネート(A1)100重量部にIPA 1310重量部を窒素雰囲気下で1分間に100重量部の速度で加えてTiO換算で濃度2%に調整した。この溶液に窒素雰囲気下で、IPAと同じ速度でグルタル酸ジエチル10%IPA溶液658重量部をゆっくり添加し十分に攪拌し、さらにIPA 752重量部を同じ速度で加えてTiO換算で濃度1%の塗料とした。
この塗料をPETフィルム上にマイヤーバー#5で塗膜を形成し、送風乾燥機で80℃で1分間乾燥させ、更に110℃で8時間加熱処理を行った。得られた塗膜は均一な透明膜であった(高屈折率塗膜層)。
この塗膜の上に実施例1と同様の条件で塗料2を塗工し、送風乾燥機で60℃で1分間乾燥させ、膜厚が110nmの低屈折率塗膜層を形成させた。
【0019】
実施例6
テトラiプロポキシチタネート(A1)100重量部にIPA 1310重量部を窒素雰囲気下で1分間に100重量部の速度で加えてTiO換算で濃度2%に調整した。この溶液に窒素雰囲気下で、IPAと同じ速度でグルタル酸ジエチル10%IPA溶液1316重量部をゆっくり添加し十分に攪拌し、さらにIPA 94重量部を同じ速度で加えてTiO換算で濃度1%の塗料とした。
この塗料をPETフィルム上にマイヤーバー#5で塗膜を形成し、送風乾燥機で80℃で1分間乾燥させ、更に110℃で8時間加熱処理を行った。得られた塗膜は均一な透明膜であった(高屈折率塗膜層)。
この塗膜の上に実施例1と同様の条件で塗料2を塗工し、送風乾燥機で60℃で1分間乾燥させ、膜厚が110nmの低屈折率塗膜層を形成させた。
【0020】
比較例1
塗料1のコハク酸ナトリウム10%エタノール溶液をエタノールに変えた以外は実施例1と同様に塗料を調整した。この塗料を大気下で攪拌したところ、数分で白色沈殿を生じた。
この塗料の沈殿が生じる前に、実施例1と同じ条件で塗工、乾燥、加熱を行った。フィルムは白化し、薄膜は形成されず粒子状であった。
この上に実施例1と同様に塗料2を同じ条件で塗工したところ、反射率は2.0〜6.0%の範囲で安定しなかった。
表面を電子顕微鏡写真で観察したところ、表面に粒子状の物質が観察され、2層目塗工により膜が破壊されていると推定される。
【0021】
比較例2
塗料3においてコハク酸ナトリウムを添加しないこと以外は実施例2と全く同じ条件で塗膜形成を試みた。塗工直後から凝集物が発生し、塗膜を形成することができなかった。また、塗料は放置直後から徐々に淡黄色沈殿を生じ、極めて不安定であった。
比較例3
塗料4において、グルタル酸ジエチル10%IPA溶液567重量部をシュウ酸ジエチル(キレート5員環を形成)10%IPA溶液520重量部に代え、IPA 833重量部をIPA 810重量部に代えた以外は実施例3と同じ条件で塗膜を形成し、110℃で8時間加熱処理を行った。得られた塗膜は均一な透明膜であった。
【0022】
上記実施例1〜7及び比較例1〜3で得られたフィルムの性能を表1にまとめる。
【表1】
Figure 0004130089
表中、B1はテトラn−ブトキシチタネート(日本曹達製)、A1はテトラiプロポキシチタネート(日本曹達製)、IPAはイソプロピルアルコールを表し、NAは測定不能を表す。
反射率は、低屈折率塗膜層面のものであり、島津製作所製UV3100分光光度計を用いて可視域で測定した最低反射率を表す。安定性は、高屈折率塗膜層用のコーティング組成物の安定性を表し、常温で8時間攪拌した後に沈殿物の有無を目視で評価したものである(優良、良、劣る)。膜厚及び屈折率は、二酸化チタン薄膜である高屈折率塗膜層面のものであり、膜厚は松下インターテクノ薄膜測定器で測定し、屈折率は550nmの値を示す。堅牢度試験は、JIS P8136に基づいて行い(スチールウール0000、250g/cm2荷重)、傷が入るまでの往復回数を示す。
【0023】
実施例7
テトラiプロポキシチタネート(商品名A1;日本曹達製)100重量部を窒素雰囲気中で密閉式容器に入れ、n−ブタノール(関東化学製、特級)2900重量部を1分間に100重量部の速度でゆっくり加え希釈した。これにエチレングリコール(和光純薬製)40重量部に硝酸マグネシウム六水和物(関東化学)0.5重量部を添加したものを1分間に10重量部の速度で添加した。十分に攪拌しTiO換算で1.0%の固形分濃度の塗料とした。この塗料を大気下で2時間攪拌したところ、沈殿などは生じず、無色透明な状態を保った。
この塗料を、ハードコート膜を形成したTACフィルム(日本製紙製、ZTAC-HC)上にマイヤーバー#6(RDS社製)を用い、乾燥後の厚さ80nmになるよう塗膜を形成し、送風乾燥機で60℃で1分間乾燥させ、更に110℃で8時間加熱処理を行った。得られた塗膜は均一な透明膜であった(高屈折率塗膜層)。
この塗膜の上に実施例1と同様の条件で塗料2を塗工し、送風乾燥機で60℃で1分間乾燥させたところ、膜厚は110nmであった(低屈折率塗膜層)。
【0024】
実施例8
テトラiプロポキシチタネート(A1)100重量部を窒素雰囲気中で密閉式容器に入れ、n−ブタノール2900重量部を1分間に100重量部の速度でゆっくり加え希釈した。これにエチレングリコール(和光純薬製)40重量部に硝酸マグネシウム六水和物(関東化学)1.0重量部を添加したものを1分間に10重量部の速度で添加した。十分に攪拌しTiO換算で1.0%の固形分濃度の塗料とした。この塗料を大気下で2時間攪拌したところ、沈殿などは生じず、無色透明な状態を保った。
この塗料を、ハードコート膜を形成したTACフィルム(ZTAC-HC)上にマイヤーバー#6を用い、乾燥後の厚さ80nmになるよう塗膜を形成し、送風乾燥機で60℃で1分間乾燥し、更に110℃で8時間加熱処理を行った。得られた塗膜は均一な透明膜であった(高屈折率塗膜層)。
この塗膜の上に実施例1と同様の条件で塗料2を塗工し、送風乾燥機で60℃で1分間乾燥させ、膜厚が110nmの低屈折率塗膜層を形成させた。
【0025】
実施例9
テトラiプロポキシチタネート(A1)100重量部にn−ブタノール2900重量部を1分間に100重量部の速度でゆっくり加え希釈した。これにエチレングリコール(和光純薬製)40重量部に硝酸マグネシウム六水和物(関東化学)1.5重量部を添加したものを1分間に10重量部の速度で添加した。十分に攪拌しTiO換算で1.0%の固形分濃度の塗料とした。この塗料を大気下で2時間攪拌したところ、沈殿などは生じず、無色透明な状態を保った。
この塗料をPETフィルム上にマイヤーバー#5で塗膜を形成し、送風乾燥機で80℃で1分間乾燥させ、更に110℃で8時間加熱処理を行った。得られた塗膜は均一な透明膜であった(高屈折率塗膜層)。
この塗膜の上に実施例1と同様の条件で塗料2を塗工し、送風乾燥機で60℃で1分間乾燥させ、膜厚が110nmの低屈折率塗膜層を形成させた。
【0026】
実施例10
テトラiプロポキシチタネート(A1)100重量部にn−ブタノール2900重量部を1分間に100重量部の速度でゆっくり加え希釈した。これにエチレングリコール(和光純薬製)40重量部に硝酸アルミニウム九水和物(関東化学)0.6重量部を添加したものを1分間に10重量部の速度で添加した。十分に攪拌しTiO換算で1.0%の固形分濃度の塗料とした。この塗料を大気下で2時間攪拌したところ、沈殿などは生じず、無色透明な状態を保った。
この塗料をPETフィルム上にマイヤーバー#5で塗膜を形成し、送風乾燥機で80℃で1分間乾燥させ、更に110℃で8時間加熱処理を行った。得られた塗膜は均一な透明膜であった(高屈折率塗膜層)。
この塗膜の上に実施例1と同様の条件で塗料2を塗工し、送風乾燥機で60℃で1分間乾燥させ、膜厚が110nmの低屈折率塗膜層を形成させた。
【0027】
実施例11
テトラiプロポキシチタネート(A1)100重量部にn−ブタノール2900重量部を1分間に100重量部の速度でゆっくり加え希釈した。これにエチレングリコール(和光純薬製)40重量部に硝酸鉄12水和物(関東化学)0.8重量部を添加したものを1分間に10重量部の速度で添加した。十分に攪拌しTiO換算で1.0%の固形分濃度の塗料とした。この塗料を大気下で2時間攪拌したところ、沈殿などは生じず、橙色透明な状態を保った。
この塗料をPETフィルム上にマイヤーバー#5で塗膜を形成し、送風乾燥機で80℃で1分間乾燥させ、更に110℃で8時間加熱処理を行った。得られた塗膜は均一な透明膜であった(高屈折率塗膜層)。
この塗膜の上に実施例1と同様の条件で塗料2を塗工し、送風乾燥機で60℃で1分間乾燥させ、膜厚が110nmの低屈折率塗膜層を形成させた。
【0028】
実施例12
テトラiプロポキシチタネート(A1)100重量部にn−ブタノール2900重量部を1分間に100重量部の速度でゆっくり加え希釈した。これにエチレングリコール(和光純薬製)40重量部に酢酸マグネシウム四水和物(関東化学)0.4重量部を添加したものを1分間に10重量部の速度で添加した。十分に攪拌しTiO換算で1.0%の固形分濃度の塗料とした。この塗料を大気下で2時間攪拌したところ、沈殿などは生じず、無色透明な状態を保った。
この塗料をPETフィルム上にマイヤーバー#5で塗膜を形成し、送風乾燥機で80℃で1分間乾燥させ、更に110℃で8時間加熱処理を行った。得られた塗膜は均一な透明膜であった(高屈折率塗膜層)。
この塗膜の上に実施例1と同様の条件で塗料2を塗工し、送風乾燥機で60℃で1分間乾燥させ、膜厚が110nmの低屈折率塗膜層を形成させた。
【0029】
実施例13
テトラn−ブトキシチタネート(商品名B1;日本曹達製)100重量部にn−ブタノール2900重量部を1分間に100重量部の速度でゆっくり加え希釈した。これにエチレングリコール(和光純薬製)40重量部に塩化マグネシウム六水和物(関東化学)0.35重量部を添加したものを1分間に10重量部の速度で添加した。十分に攪拌しTiO換算で1.0%の固形分濃度の塗料とした。この塗料を大気下で2時間攪拌したところ、沈殿などは生じず、無色透明な状態を保った。
この塗料をPETフィルム上にマイヤーバー#5で塗膜を形成し、送風乾燥機で80℃で1分間乾燥させ、更に110℃で8時間加熱処理を行った。得られた塗膜は均一な透明膜であった(高屈折率塗膜層)。
この塗膜の上に実施例1と同様の条件で塗料2を塗工し、送風乾燥機で60℃で1分間乾燥させ、膜厚が110nmの低屈折率塗膜層を形成させた。
【0030】
実施例14
テトラn−ブトキシチタネート(商品名B1;日本曹達製)100重量部にn−ブタノール2900重量部を1分間に100重量部の速度でゆっくり加え希釈した。これにアセト酢酸エチル(和光純薬製)40重量部に硝酸マグネシウム六水和物(関東化学)0.5重量部を添加したものを1分間に10重量部の速度で添加した。十分に攪拌しTiO換算で1.0%の固形分濃度の塗料とした。この塗料を大気下で2時間攪拌したところ、沈殿などは生じず、無色透明な状態を保った。
この塗料をPETフィルム上にマイヤーバー#5で塗膜を形成し、送風乾燥機で80℃で1分間乾燥させ、更に110℃で8時間加熱処理を行った。得られた塗膜は均一な透明膜であった(高屈折率塗膜層)。
この塗膜の上に実施例1と同様の条件で塗料2を塗工し、送風乾燥機で60℃で1分間乾燥させ、膜厚が110nmの低屈折率塗膜層を形成させた。
【0031】
比較例4
塗料1のエチレングリコール及び硝酸マグネシウムを配合しなかった以外は実施例1と同様に塗料を調整した。この塗料を大気下で攪拌したところ、数分で表面に膜を作りその後、白色沈殿を生じた。
この塗料の沈殿が生じる前に、実施例1と同じ条件で塗工、乾燥、加熱を行った。フィルムは白化し、薄膜は形成されず粒子状であった。
表面を電子顕微鏡写真で観察したところ、表面に粒子状の物質が観察され高屈折率塗膜層を形成できなかった。
【0032】
比較例5
塗料1において硝酸マグネシウムを配合しないこと以外は実施例1と同様に資料を調整し、高屈折率塗膜層をPETフィルム状に設けた。得られた塗膜は均一な透明膜であった。
この塗膜の上に実施例1と同様の条件で塗料2を塗工し、送風乾燥機で60℃で1分間乾燥させ、膜厚が110nmの低屈折率塗膜層を形成させた。
【0033】
上記実施例7〜14及び比較例4及び5で得られたフィルムの性能を表2にまとめる。
【表2】
Figure 0004130089
表中、塗料安定性は、高屈折率塗膜層用のコーティング組成物の安定性を表し、常温で8時間攪拌した後に沈殿物の有無を目視で評価したものである(優良、良、劣る)。塗膜の屈折率は、二酸化チタン薄膜である高屈折率塗膜層のものであり、550nmの値を示す。塗膜の成膜性については、塗膜が均一に透明である場合は○、塗膜に凝集物が存在し均一でない場合は×と目視で判断した。堅牢度の評価は、JIS P8136に基づいて行い(スチールウール0000、250g/cm2荷重)、傷が入るまでの往復回数を示す。
【0034】
【発明の効果】
本発明により、高屈折率塗膜層及び低屈折率塗膜層から成る光学多層膜を有する反射防止フィルムであって、十分な膜強度と層間密着性を有する反射防止フィルムが提供される。また本発明のコーティング組成物を用いることにより、150℃程度以下の低温加熱で基材フィルム上に均一で膜強度に優れた高屈折率塗膜層を形成することができる。

Claims (12)

  1. 基材フィルム上に順に高屈折率塗膜層及び低屈折率塗膜層を有する反射防止フィルムであって、該高屈折率塗膜層が一般式(1)
    Ti(OR2m+2 (1)
    (式中、Rは炭素数が1〜5のアルキル基を表し、mは1以上の整数を表す。)で表される化合物及び一般式(2)
    −R−C2n−R−R (2)
    (式中、R及びRはそれぞれ
    Figure 0004130089
    のいずれかを表し(但し、これらの基はその炭素原子が−C2n−に隣接するように結合する。)、R及びRはそれぞれ水素原子又は炭素数が1〜5のアルキル基を表し、−C2n−は直鎖であり、nは2又は3の整数を表す。)で表され、前記一般式(1)で表される化合物中のチタンに配位して7員又は8員のキレート環を形成する化合物又はその誘導体並びに有機溶剤から成るコーティング組成物を塗布し乾燥することにより成り、該コーティング組成物を塗布した該基材フィルムの乾燥後における塗布面の屈折率より、前記低屈折率塗膜層面の屈折率の方が低いことを特徴とする反射防止フィルム。
  2. 前記一般式(1)で表される化合物に対する前記一般式(2)で表される化合物のモル比が1〜3である請求項1に記載された反射防止フィルム。
  3. 前記コーティング組成物が更に無機酸塩を含む請求項1又は2に記載された反射防止フィルム。
  4. 前記一般式(1)で表される化合物に対する前記無機酸塩のモル比が0.001〜0.1であると共に該無機酸塩がマグネシウム塩である請求項3に記載された反射防止フィルム。
  5. 前記マグネシウム塩が硝酸マグネシウムである請求項4に記載された反射防止フィルム。
  6. 前記高屈折率塗膜層及び前記低屈折率塗膜層の厚さがそれぞれ50〜200nmであり、前記コーティング組成物を塗布した前記基材フィルムの乾燥後における塗布面の屈折率が1.80以上である請求項1〜5のいずれか一項に記載された反射防止フィルム。
  7. 前記低屈折率塗膜層が有機ケイ素化合物、フッ素化合物又はホウ素化合物を含有する請求項1〜6のいずれか一項に記載された反射防止フィルム。
  8. 一般式(1)
    Ti(OR2m+2 (1)
    (式中、Rは炭素数が1〜5のアルキル基を表し、mは1以上の整数を表す。)で表される化合物及び一般式(2)
    −R−C2n−R−R (2)
    (式中、R及びRはそれぞれ
    Figure 0004130089
    のいずれかを表し(但し、これらの基はその炭素原子が−C2n−に隣接するように結合する。)、R及びRはそれぞれ水素原子又は炭素数が1〜5のアルキル基を表し、nは2又は3の整数を表す。)で表され、前記一般式(1)で表される化合物中のチタンに配位して7員又は8員のキレート環を形成する化合物又はその誘導体並びに有機溶剤から成るコーティング組成物。
  9. 前記一般式(1)で表される化合物に対する前記一般式(2)で表される化合物のモル比が1〜3である請求項8に記載されたコーティング組成物。
  10. 更に無機酸塩を含む請求項8又は9に記載されたコーティング組成物。
  11. 前記一般式(1)で表される化合物に対する前記無機酸塩のモル比が0.001〜0.1であると共に該無機酸塩がマグネシウム塩である請求項10に記載されたコーティング組成物。
  12. 前記マグネシウム塩が硝酸マグネシウムである請求項11に記載されたコーティング組成物。
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