JP4128398B2 - 吸水速乾透防止繊維及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はポリエステル繊維及びその製造方法に係り、詳しくは、風合い良好で、吸水、速乾性に優れ、透防止性も兼ね備えたポリエステル繊維及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来からポリエステル繊維は各種衣料に用いられ、速乾性に優れる等の汎用的特性からますますその用途は拡大している。しかしながら、ポリエステル繊維は吸水性が低く、そのために天然繊維と比べて清涼感に乏しい欠点をもっている。その改善方法として、繊維の断面形状を変えることで、繊維の毛管作用を高める方法が各種提案されている。例えば、特開平11-222721号公報及び特開平11-269718号公報には、繊維の断面形状をW型にすることで、ポリエステル繊維の吸水・速乾性を高めることが提案されている。このポリエステル繊維は、吸水・速乾性に優れ、また風合いも柔らかいことから、吸水・速乾性の観点では、優れたポリエステル繊維である。しかしながら、ポリエステル繊維が水を吸ったとき、加工された衣料品が透けて見え易かったり、汗染みが目立つ等の外観上の欠点をもっている。この欠点を防止するために、このポリエステル繊維布帛の概観を改質するためには、この布帛は、高濃度の酸化チタンを含有した繊維と貼り合わせる布帛構造にしなければならなかった。
【0003】
一方、透け防止技術に関しても各種提案されている。例えば、特開昭55-158331号公報に記載されているように、高濃度の酸化チタンを含有するポリマーを繊維の芯部に、酸化チタン濃度の低いポリマーを鞘部に用いる繊維とすることにより透け性を低減する方法が提案されている。しかしながら、透感を事実上低減させるためには、繊維中の酸化チタン濃度が3%を超えるような高い濃度としてなるで鞘芯構造繊維とする必要がある。しかし、このような方法は、柔らかな風合いもちながらも、吸水・速乾性を呈するポリエステル繊維を糸切れや毛羽の発生が少ない状態で得るための繊維断面構造の選択を難くしてしまう欠点がある。
【0004】
特開平8−246237号公報に示されるように、酸化チタンを1重量%以上含有する特殊な断面構造のポリエステル繊維が知られている。この方法は、確かに、吸水性が改良され、ある程度の透け防止性も付与することができる。しかし、異型度が低いので柔らかさが不足するし、ポリエステル繊維の生産性を阻害しない酸化チタン濃度の範囲で得られる繊維の透けの低減効果が満足なものではない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前述したような柔らかな風合いを保持し、吸水・速乾性に優れ、しかも透防止性も兼ね備えたポリエステル繊維及びその製造方法を提供することを課題とする。本発明の目的は、前記した改質ポリエステル繊維を合理的に1ステップの延伸工程で調製することができるポリエステル繊維の製造方法を提供することにもある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の課題は、酸化チタンを1〜3重量%の濃度で含有するポリエステルからなる繊維であって、繊維断面の異型度が2.0〜5であって、繊維の円周方向に3以上の谷間をもち、その内1つ以上の谷間を持つ辺の反対側に同数又それより1つ多い谷間をもち、繊維厚さに対する谷の深さの比率が0.1〜1.0、谷角度が100〜160°であることを特徴とするポリエステル繊維によって達成することができる。
【0007】
本発明のポリエステル繊維は、好適には、酸化チタンを1〜3重量%の濃度で含有するポリエステルを冷却固体化させ、巻き取ることなく熱延伸してから巻取り、繊維断面の異型度が2.0〜5であって、繊維の円周方向に3以上の谷間をもち、その内1つ以上の谷間をもつ辺の反対側に同数又それより1つ多い谷間をもち、繊維厚さに対する谷の深さの比率が0.1〜1.0、谷角度が100〜160°であるポリエステル繊維を得る際に、オイリングノズル上の糸速が2000m/min以下、オイリングノズルの孔形状がスリット状で、スリット幅1〜5mm、スリット高さ0.15〜0.5mm、スリット上の糸接触長さ0.5〜2mmとすることを特徴とする方法によって製造することができる。
【0008】
以下、本発明について、詳述する。
本発明においてポリエステルとは、ポリエチレンテレフタレートが85モル%以上で構成されているポリエステル繊維を意味する。
【0009】
本発明の繊維を構成するポリエステルは、酸化チタンが、1.5〜3.0重量%の濃度でがんゆうすることが必要である。酸化チタンの濃度が1.5重量%未満では、透け防止効果が不足するので好ましくない。一方、酸化チタン濃度が3.0重量%を超えると、紡糸の際にオイリングノズル上に削りかすが直ぐに付着して、仕上げ剤の付着斑が起こり、その結果、染品位が低下し易いので好ましくない。より好ましくは、酸化チタンの濃度は、1.7〜2.5重量%、更により好ましくは、1.8〜2.3%である。
【0010】
本発明におけるポリエステルの280℃におけるビンガム流体特性値は、50Pa以下であることが好ましい。ビンガム流体特性値とは、図3に示されるように後述する方法で測定したときの値であって、ポリエステルに高濃度に酸化チタン等の微細粒子を添加したときに大きくなり易い値である。透け防止に関する従来の術では、鞘芯状の繊維とし、芯に高濃度の酸化チタンを添加するために、芯成分ポリエステルのビンガム流体特性値が50Paを超えるような値になり易かった。ビンガム特性値が大きいことは、ポリマーを変形させるためにせん断応力等の変形応力を加えても、図3中の切片を超すまでポリマーが変形しないことを意味し、そのために、紡糸や延伸等の伸長変形が必要な生産方法で、糸切れや毛羽を発生させ易い原因となり、また長時間紡糸したときに、経時的に糸切れ毛羽が発生し易い原因にもなる。従来技術に示されているような丸断面や本発明の定義される繊維断面の異型度が2.0未満のような比較的異型度が低い場合には、ビンガム液体特性値が50Paを超えても顕著に糸切れが増えない場合もあるが、本発明の所定の断面構造で、異型度が2.0以上の場合、より許容範囲が小さくなるので、ビンガム液体特性値が50Pa以下であることが好ましい。ビンガム流体特性値をこのような値にするには、ポリエステル中の酸化チタン含有量を3.0重量%以下にすると達成し易い。本発明におけるポリエステルのビンガム流体特性値は、より好ましくは40 Pa以下であり、更に好ましくは、30 Pa以下である。
【0011】
本発明においてポリエステルの280℃における溶融粘度は、1500poise以上であることが好ましい。溶融粘度が1500poise以下では、本発明のポリエステル繊維の断面形状が得難いばかりか、紡糸時の糸切れも多くなり易い。より好ましい溶融粘度は、1500〜4500poiseの範囲である。
【0012】
本発明のポリエステル繊維の異型度は、図1に示すように繊維の断面から(1)式にしたがって求められる値である。本発明のポリエステル繊維は、断面の異型度が2.0〜5.0であることが必要である。2.0未満では、得られた繊維の風合いが硬くなる上、透け防止効果や吸水性が不足することがあるので好ましくない。異型度が5.0を超えると、糸切れや毛羽が発生し易くなるので好ましくない。より好ましい異型度は、2.5〜4.5であり、更により好ましくは、3.0〜4.5である。
【0013】
本発明のポリエステル維は、繊維断面の円周方向に3以上の谷間をもち、その内1以上の谷間をもつ辺の反対側にそれと同数か、それより1つ多い谷間をもつ形状を有することが必要である。円周方向に2以下の谷間しかない形状である場合は、吸水性や透け防止性が不足する。又、1つ以上の谷間を有する辺と反対側にそれと同数かそれより1つ多い谷間をもっていることで、フィラメント間の隙間が少なくなり、本発明のポリエステル繊維の含有酸化チタン濃度でも、充分な本発明の所望の透け防止効果が発揮できる。
【0014】
本発明のポリエステル維は、繊維厚さに対する谷深さの比率が0.1〜1.0にすることが必要である。谷深さの比率は、図1に示すように(2)式から求められる値である。谷深さの比率が0.1未満の場合は吸水性が不足する上、フィラメント間の隙間が広がりやすく、透け防止効果が不足するので好ましくない。谷深さの比率が1.0を超えると、糸切れや毛羽が発生し易くなるので好ましくない。より好ましい谷深さの比率は、0.2 〜0.7の範囲である。
【0015】
本発明のポリエステル繊維は、繊維断面の形状の谷角度が100〜160°であることが好ましい。谷角度とは図1中θで示される値である。谷角度が100未満でも160°を超える場合でも透け防止効果は不足する。より好ましい谷角度は、110〜150°の範囲である。
【0016】
近年ポリエステル繊維業界の技術進歩は著しく、本発明のポリエステル繊維でも、旧来の紡糸及び延伸を別々に行うことなく、合理的な1ステップ紡糸、すなわち直接紡糸延伸で生産することが商業上必須になってきている。本発明は、以下に示す方法により、長時間生産しても糸切れ毛羽が少なく、安定した染品で生産することを可能にした。
【0017】
本発明のポリエステル繊維の好適な製造方法は、特定のオイリングノズルを用いることが必要である。直接紡糸方法では、広くは、オイリングロールのような仕上げ剤塗布方法も用いられるるが、本発明のポリエステル繊維を得るためには、紡糸過程での張力が増大し、その結果、糸切れが多発するので好ましくない。オイリングノズルの位置は、低張力で紡糸して糸切れを少なくするためには、紡口口金下、2.5m以下に設置するのが好ましく、より好ましい設置は紡糸口金下2m以下にすることが好ましい。
【0018】
本発明の製造方法で、オイリングノズル上の糸速が2000m/min以下にすることが必要である。2000m/minを超した場合、紡糸の際にオイリングノズル上に削りかすが直ぐに付着して、仕上げ剤の付着斑が起こり、その結果、染品位が低下し易いので好ましくない。糸速度の下限については特に規定はしないが、1ステップで生産する効率を失わせしめないためには、少なくとも1000m/min以上であることが好ましい。
【0019】
本発明の製造方法で、オイリングノズルはその孔形状がスリット状で、スリット幅1〜5mm、スリット高さ0.15〜0.5mm、スリット上での糸接触長さ0.5〜2mmの形状にすることが、仕上げ剤の付着斑の発生を少なくし、長時間、繊維の染品位の低下を起こすことなく安定に紡糸する上で必要である。オイリングノズルのスリット形状とは、図2に示されるようにに横長の孔形状を意味する。この形状においてスリット幅が1mm以下ではノズル上でフィラメントの広がりが不足しすぎて、又、5mmを超えた場合はフィラメント間の隙間が開きすぎて均一な仕上げ剤を付着させることができない。スリット高さが0.15mm未満では、均一なスリットを加工するのが難しい上、スリットの詰まりが発生し易く、又0.5mm以上では、仕上げ剤吐出速度が不足して、均一な仕上げ剤の付着が妨げられる。スリット上の糸接触長さが0.5mm未満では、ノズル上でフィラメントが広がりにくいばかりでなく、糸の横揺れが大きくなって、安定して仕上げ剤の付着が妨げられる。スリットの糸接触長さが2mm以上では、紡糸の際にオイリングノズル上に削りかすが直ぐに付着し、仕上げ剤の付着斑が起こり易い。
【0020】
本発明において直接紡糸延伸で延伸糸を得る場合、ポリエステル繊維の伸度は、20〜40%にすることが好ましい。ポリエステル繊維の伸度が20%未満では、糸切れ、毛羽が発生し易く、40%以上では染品位が低下し易い。より好ましい伸度は25%〜36%である。
【0021】
本発明のポリエステル繊維の繊度は、特に規定されるものではないが、柔らかな風合いを保つためには、1フィラメント5デシテックス以下であることが好ましく、更に好ましくは、4デシテックス以下である。
【0022】
本発明によって得られたポリエステル繊維は、各種衣料品及び室内装飾品などに使用できるが、ソフトな風合いで、吸水性及び透け防止性に優れる、下着及びスポーツ衣料等に好適である。更には、透けにくい特性を利用して、紫外線防止繊維として、衣料、日傘、室内装飾品等にも使用できる。
【0023】
【実施例】
以下、実施例をあげて本発明をより具体的に説明する。以下の実施例における測定値及び評価値は、下記の方法で求めたものである。
(1)繊維断面の異型度、谷深さの比率及び谷角度の測定
ポリエステル繊維 フィラメントをパラフィンで包埋して、ミクロトームでフィラメントの断面切片を切り出し、当該切片を光学顕微鏡にて倍率200倍で観察し、フィラメント断面写真を撮影し、3倍に引き延ばして測定した。得られた写真より図1に従って、a及びbの長さを測定し(1)式に従って異型度Xを算出した。谷深さの比率Yは、第2に従ってc長さを測定し(2)式に従って算出した。谷角度は、図1に従って得られた接線より角度を測定した。
【0024】
X=b/a (1)
Y=c/a (2)
(2)溶融粘度及びビンガム流体特性値の測定
東洋精機社製キャピログラフで、バレル温度を280℃に設定し、孔径1.0mm、長さ100mmの丸孔キャピラリーを用い、ポリエステルの溶融粘度及びビンガム流体特性値を測定した。この際、キャピラリー装着後10分間、ポリマーをバレルに挿入後10分間経ってから、せん断速度を6.08、12.2、24.2、36.5及び60.8sec-1の5段階に変化させ、せん断応力を測定した。得られた測定値を図2のようにプロットし、最小二乗法に従って直線を求めた。得られた直線より、せん断速度が0のところのせん断応力をビンガム流体特性値とした。溶融粘度は、得られた直線の傾きを溶融粘度として求めた。
(3)強度及び伸度の測定
ツェルベガーウスター社製USTER−TENSIRAP PID-3で糸長500mm、引っ張り速度5000mm/minで強度及び伸度を求めた。伸度は、糸長500mmに対する破断までの延びた長さの割合を伸度として求めた。
(4)吸水性及び染品位の評価
48時間紡糸後に得られた繊維を3本合糸しながら経35コース/2.54cm、緯30ウエール/2.54cmの編地密度に筒編みし、花王社製スコアロール400、2g/lの水溶液中で15分間洗濯後、30分水洗後脱水し、15分間70℃で乾燥した。乾燥後、染料としてダイスタージャパン社製Dianix RedAC-E 0.5重量%、分散剤として日華化学社製ニッカサンソルト7000、0.5g/l 、吸水剤として高松油脂社製SR1000、5重量%添加し、酢酸又は酢酸ナトリウムでpH4.5に調整した水溶液をつくった。本溶液30に対し、筒編地1の重量比の割合で浸漬し、130℃まで2℃/minで昇温して、130℃で30分間処理後、冷却し、取り出した筒編地を水洗い脱水し、70℃で15分間乾燥した。得られた染色筒編み地を目視で下記基準に従って染品位を評価した。その後、経方向に幅2.5cm、長さ20cmの短冊状に切り、バイレック法で10分間経過後の吸水高さを測定し、吸水性の評価を行った。7cm以上の吸水高さになったとき良好な吸水性があると判断した。
【0025】
染品位基準
〇 均一で染筋、点状染斑がみられない
△ 染筋、点状染斑が軽度にみられる
× 染筋、点状染斑が著しくみられる
(5)柔らかさの評価
得られた繊維1本を経30コース/2.54cm、緯38ウエール/2.54cmの編地密度で筒編みし、手触りで柔らかさを下記基準で評価した。
【0026】
柔らかさ評価基準
◎ 非常に柔らかい
〇 柔らかい
△ やや硬い
× 硬い
(6)透け防止性(△L) の評価
得られた繊維1本を経30コース/2.54cm、緯38ウエール/2.54cmの編地密度に筒編みし、筒編み地を8枚重ねてミノルタカメラ社製色彩色差計CR-210で繊維の明度を測定した。次に筒編み地を明度28の黒板にのせ、明度を測定した。その後、下記(3)式に従って△Lを算出した。本値が小さい程良好な透け防止性を有する。
【0027】
△L=L*w−L*b (3)
L*w : 筒編み地の明度
L*b : 黒板上での筒編み地の明度
(7)オイリングノズル削れカス発生量の測定
48時間連続紡糸後、オイリングノズル上に付着した削れカスの量を目視で観察して、下記基準にて評価した。なお、途中で糸切れ等が発生し、再度紡糸する場合は、正味の紡糸時間が48時間になるようにして評価した。
【0028】
オイリングノズル削れカス発生量評価基準
〇 48時間連続紡糸しても削れカスの付着が見られない
△ 24時間〜48時間で削れカスの付着が認められる
× 24時間未満で削れカスの付着が認められる
(7)紡糸糸切れ回数の測定
一回の紡糸で4〜8本巻き取れる紡糸機を使い紡糸し、糸切れの回数を繊維1t(トン)に対する切れ糸回数で評価した。
(8)毛羽発生量の測定
繊維を5.0kgの重量で巻取り、得られたパッケージを目視にて選別し、毛羽の有無を確認した。1パッケージ中、毛羽が1以上見られるパッケージは、毛羽パッケージと数え、巻きあがったパッケージに対する割合で示した。なお、糸切れし、5.0kgに満たない場合は、選別の母数から除外した。
【0029】
実施例1
8ポジション、2ゴデットロール(以下GDと称す)と巻取り機を有する紡糸機で、紡糸筒温度を295℃に設定し、横吹きで冷風をあてながら、1GD温度95℃、2GD温度130℃に設定し、1GDにはテーパー率3%のテーパーGDを使い、表1のテストNo.1〜6オイリングノズルを用い、紡口下1.3mの位置で仕上げ剤を塗布し、酸化チタン濃度0.5〜3.5重量%、溶融粘度1800〜4400ポイズ、ビンガム流体特性値8〜49Paのポリエチレンテレフタレートを同表中に記載の速度で、1ステップで紡糸延伸しながら巻き取った。得られた繊維の特性値及び紡糸状況を表2テストNo.1〜6に記載する。
【0030】
No。1〜4は、柔らかな風合いで、染品位、吸水性及び透け紡糸性が良好で、糸切れ毛羽も少ないのに対し,比較例のテストNo.5では、酸化チタン濃度が3.5と高い、オイリングノズル上に削れカスが比較的早期に付着し、染品位の低下する上、毛羽が発生しやすかった。又、比較例のテストNo.6では、酸化チタン濃度が低すぎる、透け防止性が不足した。
【0031】
実施例2
テストNo.1で、2本双糸して、吐出量を調整し、84デシテックスの繊維を表1のテストNo.7の速度で、紡口下、1.0mの位置で仕上げ剤を塗布する以外同ような方法を用いて1ステップで紡糸延伸しながら巻き取った。得られた繊維の特性値及び紡糸状況を表2テストNo.7に記載する。このポリエステル繊維は、柔らかな風合いになり染品位、吸水性及び透け紡糸性が良好で、糸切れ毛羽も少なかった。
【0032】
実施例3
テストNo.1で、断面形状を図4〜図7に変え、表1テストNo.8〜11の速度以外同ような方法で1ステップで紡糸延伸しながら巻き取った。得られた繊維の特性値及び紡糸状況を表2テストNo.8〜11に記載する。
【0033】
テストNo.8は、丸断面で有る、柔らかな風合い、吸水性、透け防止性が不足する。テストNo.9は、扁平状で谷間を有するが、異型度が不足する上、谷角が小さすぎて、品位、柔らかさ、透け防止性が、本発明より劣る上、毛羽も発生しやすかった。テストNo.10は、異型度が高いため、柔らかな風合いであるが、谷間がないため吸水性が不足し、透け防止性が、本発明より劣っていた。テストNo.11は、3つの谷間を有するが、反対側に谷間がある断面構造でなく、異型度が不足する、柔らかな風合いが不足し、透け防止性も本発明より劣っていた。
【0034】
実施例4
テストNo.1で、表1 テストNo.12〜14の速度以外同ような方法により1ステップで紡糸延伸しながら巻き取った。 得られた繊維の特性値及び紡糸状況を第2表テストNo.12〜14に記載する。
【0035】
本発明の製造方法のテストNo.12及び13は、染品位が確保できたが、1GD速度が2000m/minを超すテストNo.14は、オイリングノズル上ですぐに削れカスが付着し、染品位が不足した。
【0036】
実施例5
テストNo.1で、表1 テストNo.15〜16の速度にし、1〜2GD間の伸長比を変える以外同ような方法により1ステップで紡糸延伸しながら巻き取った。得られた繊維の特性値及び紡糸状況を表2テストNo.15〜16に記載する。いずれものポリエステル繊維は、特性値及び紡糸性ともに本発明の目的を満足するものであった。
【0037】
実施例6
テストNo.13で、表1のテストNo.17〜20のオイリングノズル形状にする以外同ような方法により1ステップで紡糸延伸しながら巻き取った。得られた繊維の特性値及び紡糸状況を表2のテストNo.17〜20に記載する。
【0038】
本発明の製造方法のテストNo.17は、オイリングノズル上の削れカス付着が少なく、染品位が確保できたが、テストNo.18は、スリット幅全体に繊維が安定して広がらない、テストNo.19、オイリングノズル吐出スリット上部での削れカス付着が早すぎて、又、テストNo.20では、吐出速度が遅すぎて、仕上げ剤の付着斑が大きく染品位が不足していた。
【0039】
実施例7
テストNo.13で、図8のオイリングノズルを用いる以外、同ような方法で1ステップで紡糸延伸しながら巻き取った。得られた繊維の特性値及び紡糸状況を表2テストNo.21に記載する。オイリングノズル上での削れカス発生は少ないが、オイリングノズル上で、繊維が広がらない、仕上げ剤の付着斑が大きく染品位が不足していた。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
実施例8
2台の押出し機、6ポジション、2GDと巻取り機を有する紡糸機で、紡糸筒温度を295℃に設定し、横吹きで冷風をあてながら、1GD温度95℃、2GD温度130℃に設定し、1GDにはテーパー率3%のテーパーGDを用い、表3テストNo.22〜24オイリングノズルで、同表中に記載の速度で、1ステップで紡糸延伸しながら巻き取った。同表中に記載のように、片側の押出し機には鞘側ポリマーを、他の押出し機には芯側ポリマーを供給し、同芯鞘芯で、表4記載の断面形状の繊維を得た。得られた繊維の特性値及び紡糸状況を表4テストNo.22〜24に記載する。
【0043】
テストNo.22及び23では、断面形状が本発明と異なる、吸水性及び柔らかな風合いが不足する。テストNo.24は本発明と同じ断面形状であるが、鞘芯状とし、芯側ポリマーの酸化チタン濃度が高く、ビンガム流体特性値が本発明の範囲を超える、糸切れが頻発し、満足に設定の巻取り量まで、巻き取れなかった。その、毛羽発生率については、データーを示せなかったが、糸切れしたパッケージを見ると、無数の毛羽が見られた。糸切れは、時間が経過するに従って、頻度が増える傾向にあり、最終的には、殆ど巻き取れない状況に至った。なお、テストNo.24では、当初、テストNo.22と同ような芯と鞘のポリマー添加量にしようとしたが、紡口口金直下の糸曲がりが激しく、最初から紡糸不能であったので、それより程度が軽いテストNo.24の添加量で紡糸した。
【0044】
【表3】
【0045】
【表4】
【0046】
【発明の効果】
本発明のポリエステル繊維は、柔らかな風合いを保持し、吸水速乾性に優れ、しかも透防止性も兼ね備えているので、清涼感があり、吸水したときの汗染みを抑制することが衣料を製造することができる。本発明の製造方法により、長時間安定した直接紡糸延伸によって、染品位が高い、前記改質ポリエステル繊維を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポリエステル繊維フィラメントの断面構造の1例を示す図。
【図2】本発明のオイリングノズル構造の1例を示す図。
【図3】ビンガム流体特性値及び溶融粘度の算出方法を示す図。
【図4】比較例の糸断面構造を説明する図。
【図5】比較例の糸断面構造を説明する図。
【図6】比較例の糸断面構造を説明する図。
【図7】比較例の糸断面構造を説明する図。
【図8】比較例のオイリングノズル構造を説明する図。
Claims (1)
- 酸化チタンを1.7〜2.5重量%の濃度で含有するポリエステルを冷却固体化させ、巻き取ることなく熱延伸してから巻取り、繊維断面の異型度が3.4〜4.4であって、繊維の円周方向に3つ以上の谷間をもち、その内1つ以上の谷間をもつ辺の反対側にそれと同数又は1つ多い谷間をもち、繊維厚さに対する谷の深さの比率が0.1〜1.0、谷角度が100〜160°であるポリエステル繊維を得る際に、280℃におけるビンガム流体特性値が40Pa以下の酸化チタン含有ポリエステルを用い、オイリングノズルで仕上げ剤を付着させ、オイリングノズル上の糸速が2000m/min以下、オイリングノズルの孔形状がスリット状で、スリット幅1〜5mm、スリット高さ0.15〜0.5mm、スリット上の糸接触長さ0.5〜2mmであることを特徴とするポリエステル繊維の製造方法。
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