JP2016172945A - 凹凸表面を有する極細ポリエステル繊維ならびに海島型複合繊維 - Google Patents

凹凸表面を有する極細ポリエステル繊維ならびに海島型複合繊維 Download PDF

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【課題】極細繊維でありながら、繊細な肌触りやソフト感、ドレープ性を維持し、ドライ感、防透け性、マイルドな光沢感を付与し、更に極細繊維特有の不快なぬめり感を打ち消して極細繊維を高付加価値化を図った極細ポリエステル繊維の提供。【解決手段】極細繊維で、繊維の表面に微細な凹凸を有し、微細凹凸は次の(1)、(2)の要件を満足する極細ポリエステル繊維。(1)微細凹凸の数が1〜19個/40μm2、(2)微細凹凸の大きさがアスペクト比10以下。易溶解性ポリエステルを海成分、難溶解性ポリエステルを島成分として、次の(1)から(4)を満足する海島型複合繊維。(1)島成分に含まれる無機微粒子の含有率が1.0〜10.0wt%、(2)島成分が海成分に覆われている、(3)島成分が海成分により分離されている、(4)海島型複合繊維の繊度が12〜300dtex、かつ単糸数が5〜400、かつ1単糸当たりの島数が4〜1200【選択図】なし

Description

本発明は、無機微粒子を含有した極細繊維に関し、極細繊維の表面に微細な凹凸を有しており、布帛にした際にドライ感、防透け性、マイルドな光沢感を有し、さらには極細繊維特有の不快なぬめり感を打ち消し、従来では得られなかった上質感を有する極細ポリエステル繊維に関するものである。
単繊維直径が数マイクロメートルの極細ポリエステル繊維は、布帛にした際に繊細かつソフト感のある風合いを呈するため、スエード調布帛やワイピングクロスとして広く用いられている。特に、マイクロファイバーを容易に製造する手法としては、易溶解性ポリマーからなる海成分中に難溶解性の島成分を含有する海島型複合繊維や、難溶解性のマイクロファイバーが易溶解性ポリマーで仕切られた割繊型複合繊維の利用が広く知られている(特許文献1参照)。これらの手法は複合繊維として一旦巻き取った後、溶解剤に複合繊維もしくは布帛製品を浸漬させることにより易溶解性ポリマーを除去し、難溶解性のマイクロファイバーを得ることが可能となる技術である。
近年では、さらに繊細な肌触りやソフト感を追求して単繊維直径が1マイクロメートル以下となる極細ポリエステル繊維が提案されている。ナノファイバーは、繊維直径のスケールダウンによる極限のソフト化のほか、単繊維群の比表面積や空隙率が飛躍的に増加することによるナノサイズ特有の効果も認められ、研究開発に拍車が掛かっている。
一方、繊維表面に微細な凹凸を付与して、風合い改善、色調改善する技術が開示されている。例えば、特許文献2には合成繊維形成性ポリマーに直径が80ミリミクロン以下の微細粒子を添加し、繊維形成後に繊維表面を溶出処理し、微細で複雑な凹凸形状を有する合成繊維の製造方法が開示されている。これは合成繊維特有のワキシー感、鏡面光沢を改善し、色の深みが得られるとしている。
また、特許文献3は無機微粒子を含有したポリエステルに、該ポリエステルよりも熱アルカリ水溶液に対する溶解速度が大きいポリエステルが混合されたポリエステル繊維であり、アルカリ減量加工することによって繊維表面に微細な凹凸、いわゆるミクロボイドと、筋状溝を形成させることにより、織編物にした際に不透明感に加え、ドライ感、キシミ感、シャリ感、温もり感等の独特な風合い、パステルな光沢感を兼ね備えたポリエステル繊維を提供する技術が開示されている。
また、特許文献4には特定の水溶性化合物を含有した繊維を処理して繊維表面に特定の微細孔を有する繊維となすことにより染色における染料吸尽率が高く濃色の発色性に優れ、かつ静電性、工程通過性にも優れたポリエステル繊維に関する技術が開示されている。
しかしながら、上記の技術はいずれも繊維径が10μm以上で、通常太さの繊維に適用された技術であり、極細繊維でスエード調布帛やワイピングクロス機能、繊細な肌触りやソフト感、ドレープ性を有しながら、ドライ感、防透け性、マイルドな光沢感を付与し、さらには極細繊維特有の不快なぬめり感を打ち消した繊維は得られておらず、開発が待ち望まれていた。
特開2005−163234号公報 特開昭54−120728号公報 特開平11−222725号公報 特開2003−166123号公報
本発明の目的は、上記の課題を解決し、極細繊維でありながら、繊細な肌触りやソフト感、ドレープ性を維持し、ドライ感、防透け性、マイルドな光沢感を付与し、さらには極細繊維特有の不快なぬめり感を打ち消し、極細繊維の高付加価値化を付与することが可能な極細ポリエステル繊維を提供することにある。
上記課題は以下の構成により解決できる。
(1)極細繊維であって、繊維の表面に微細な凹凸を有し、かつ微細凹凸は次のA、Bの要件を満足する極細ポリエステル繊維。
A.微細凹凸の数が1〜19個/40μm
B.微細凹凸の大きさがアスペクト比10以下
(2)極細ポリエステル繊維の繊維径が50〜6000nm、かつ、無機微粒子を1.0〜10.0wt%含有することを特徴とする(1)記載の極細ポリエステル繊維。
(3)易溶解性ポリエステルを海成分、難溶解性ポリエステルを島成分として、次のAからDを同時に満足することを特徴とする海島型複合繊維。
A.島成分に含まれる無機微粒子の含有率が1.0〜10.0wt%
B.島成分が海成分に覆われている
C.島成分が海成分により分離されている
D.海島型複合繊維の繊度が12〜300dtex、かつ単糸数が5〜400、かつ1単糸当たりの島数が4〜1200
本発明によれば、極細繊維のスエード調布帛やワイピングクロス機能、繊細な肌触りやソフト感、ドレープ性を維持し、ドライ感、防透け性、マイルドな光沢感を付与し、さらには極細繊維特有の不快なぬめり感を打ち消すことができるなどの高付加価値を付与することが可能な極細ポリエステル繊維を提供することができる。
図1(a)、(b)は、本発明の海島型複合繊維の単糸の断面の一例
以下、本発明の極細ポリエステル繊維について詳述する。
すなわち、本発明は極細ポリエステル繊維の表面に微細凹凸を有し、その微細凹凸の数は1〜19個/40μmである必要がある。
表面に微細凹凸の数が1個/40μm以上であると繊維表面が平坦でなくなり、またぬめり感や金属的な好ましくない風合いでなく、ドライ感、シャリ感、ハイタッチ感、サラッとした心地よい風合いとなるので好ましい。
そして、微細凹凸の数が19個/40μm以下であると、極細繊維の強伸度特性等の物性低下も少なく好ましい。さらに好ましくは2〜15個/40μmで、特に好ましくは5〜10個/40μmである。
この微細凹凸とは繊維表面にできた微細な孔と微細な突起を指す。微細な孔および突起とは、電子走査型顕微鏡で繊維表面に観察される凹部や凸部であり、その大きさが0.1μm以上のものを呼ぶ。微細な孔は海成分ポリマーの溶解除去時に、無機微粒子が繊維表面から抜け落ちた孔で、微細な突起は、無機微粒子が抜け落ちないで繊維表面に留まっている状態を指す。
この微細凹凸が風合いに好ましい影響を与え、これまでの素材とは全く異なり、ドライ感、シャリ感、ハイタッチ感、すなわちサラッとした感触を発現させる。さらに、極細繊維の特徴である繊細な肌触りやソフト感、ドレープ性を維持しながら、極細繊維独特の不快感であるぬめり感を打ち消すことにより新しい素材とすることができ、心地よい感触で独特の風合いを得ることができるのである。
本発明の繊維表面の微細凹凸の大きさはアスペクト比が10以下とする必要がある。ここで云うアスペクト比は次のように定義する。
繊維表面の凹部または溝の形状で、繊維軸方向に対し、平行な方向を長さ(L)、
それに垂直な方向を幅(W)として、形状の幅に対する長さの比(C)をアスペクト比(C=L/W)とする。
アスペクト比が10以下であるとは、繊維表面の微細な孔、すなわち海成分ポリマーの溶解除去時に生成した微細凹凸は、繊維軸方向に沿った筋状の溝では無く、無機微粒子が抜け出た孔であることを意味している。この微細凹凸が、繊維軸方向に沿った筋状の溝、すなわちアスペクト比が10を超えるとぬめり感が発現するため好ましくない。これは、肌に触れたときに筋状の溝により表面積が大きくなり、あたかも繊維径が細くなったごとく作用し、超極細繊維のように振る舞うため、ぬめり感が発現するのである。アスペクト比の好ましい範囲は、8以下であり、さらに好ましくは6以下である。
本発明の極細ポリエステル繊維の繊維径は50〜6000nmであることが好ましい。
繊維径が50nm以上であることで、十分に極細繊維でありながら、無機微粒子を含有させることが可能となり、防透け性、マイルドな光沢感を有し、アルカリ減量加工で微細凹凸を発現させ、良好な風合いでありながら、強伸度低下が軽減できて好ましい。
また、繊維径は6000nm以下であると、極細繊維の特性である繊細な肌触りやソフトな触感、ドレープ性を生かしたスエード調布帛、比表面積や空隙率の増加によるワイピング性能に加えて、ドライ感の付与、防透け性、マイルドな光沢感が発現できるので好ましい。
また、本発明の極細ポリエステル繊維(繊維径50〜6000nm)は通常の太さの繊維に比べ比表面積が大きく、さらに単位面積当たりの微細凹凸が少ないのが特徴であり、微細凹凸の数は通常の繊維(繊維径10〜20μm)の1/5程度の数で良好な風合いが発現可能となり、糸物性の低下も押さえることができるので好ましい。これは極細繊維に単位面積当たりの数をコントロールした微細凹凸を形成させることによる相乗効果が生まれたもので、本発明の特徴の一つである。
なお、本発明の極細ポリエステル繊維の繊維径は、100〜5000nmがさらに好ましく、特に好ましくは、200〜4000nmである。
本発明の極細ポリエステル繊維は、無機微粒子を1.0〜10.0wt%含有していることが好ましい。無機微粒子の含有率が1.0wt%以上であると、防透け性が発揮され、マイルドな光沢感となり、さらに微細凹凸の数が良好な風合いとして感じることのできる1個/40μm2以上となり好ましい。また、無機微粒子の含有率が10.0wt%以下であれば製糸性の低下を避けることができるとともに繊維物性も実用上問題無い範囲となるので好ましい。さらに好ましくは3.0〜8.0wt%、特に好ましくは5.0〜7.0wt%である。
無機微粒子としては、例えば酸化チタン、シリカ、ジルコニア、もしくはアルミナなども用いることができる。中でも酸化チタンは不透明性に優れ、かつ取扱性のし易さ、価格面、太陽光線に対する諸機能等の点でより好ましい。例えば酸化チタンには皮膚に有害な紫外線を吸収・遮蔽、かつ暑さを感じる太陽光の可視および近赤外線領域を効率的に反射するため、日射エネルギーの吸収を抑え、衣服にしたときの衣服内の温度を抑える効果があるので特に好ましく用いることができる。
そして、本発明の無機微粒子の粒径は、平均粒径が0.01〜0.50μmの範囲内のものを好ましく用いることができる。
本発明の極細ポリエステル繊維の断面形状は丸断面、異型断面、扁平断面等特に限定することなく適用できる。
本発明の極細ポリエステル繊維は海島型複合繊維を極細化することによって得られる。
極細ポリエステル繊維表面の微細凹凸は島成分ポリマーに無機微粒子を含有させ、海成分ポリマーの溶解除去時に繊維表面および表面近傍から無機微粒子が脱落して微細凹凸が生成する。
以下に、本発明の海島型複合繊維について詳しく説明する。
本発明の海島型複合繊維は、易溶解性ポリエステルを海成分、難溶解性ポリエステルを島成分とする必要がある。海または島を形成するポリマーは互いに非相溶であり、繊維形成性の熱可塑性重合体であるポリエステルが用いられる。島成分をポリエステルとすることで海成分ポリマーの溶解除去後の極細繊維としたときにぬめり感のないさらっとした風合いが得られる。また海成分をポリエステルとすることで海島複合繊維を製糸する際の製糸性および海島複合糸を使って織編物を作成する際の工程通過性に優れる。島成分および/または海成分に用いられるポリエステルとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートや、それらにジカルボン酸成分、ジオール成分あるいはオキシカルボン酸成分が共重合されたもの、あるいはそれらポリエステルをブレンドしたものが挙げられる。さらには、生分解性ポリエステルとして知られるポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリε−カプロラクタム等の脂肪族ポリエステルでもよい。これらのポリエステルには、艶消し剤、難燃剤、滑剤、抗酸化剤、着色顔料等として無機微粒子や有機化合物、カーボンブラックを必要に応じて添加することができる。
本発明に用いる海島型複合繊維のポリマーの組み合わせの一例を以下に列挙する。海成分ポリマー溶解剤がアルカリ水溶液の場合は、海成分ポリマーに共重合ポリエステル樹脂または脂肪族ポリエステル樹脂を、島成分ポリマーにはホモポリエステル樹脂、芳香族ジカルボン酸からなるポリエステル樹脂などを組み合わせる。
島成分に含まれる無機微粒子の含有率は1.0〜10.0wt%が必要である。本範囲とすることで海成分ポリマーの溶解除去後の極細繊維の無機微粒子含有率を1.0〜10.0wt%とすることができて好ましい。
海成分に含まれる無機微粒子の含有率は0.1〜0.8wt%が好ましい。0.1wt%以上とすることで海島型複合繊維を製糸する際、および海島型複合繊維を使って織編物を作成する際の工程通過時に各ガイドやローラーと繊維表面との摩擦が低減し、製糸性、工程通過性が安定し、毛羽等の品位が良好となる。0.8wt%以下とすることで海島型複合繊維を製糸する際、および海島型複合繊維を使って織編物を作成する際の工程通過時に各ガイドの摩耗を抑制して、経時で海島型複合繊維の物性や毛羽等の品位を維持し、製糸性、工程通過性も安定になる。
各単糸の島成分は海成分に完全に覆われている必要がある。島成分には1.0〜10.0wt%の無機微粒子を含有しており、島成分が繊維表面に露出していると海島型複合繊維を製糸する際、および海島型複合繊維を使って織編物を作成する際の工程通過時に各ガイドの摩耗が進行し、経時で海島型複合繊維の物性や毛羽等の品位の悪化、製糸性、工程通過性も不安定になる。島成分を海成分で完全に覆ってあげることで長期間製糸性、工程通過性が安定するのである。
また、各単糸の島成分は海成分に完全に分離されている必要がある。これにより海成分ポリマーの溶解除去後に均一な極細繊維が得られ、結果上質な風合いの織編物が得られるのである。
海島型複合繊維の繊度は12〜300dtex、かつ単糸数は5〜400、かつ1単糸当たりの島数は4〜1200とする必要がある。海島型複合繊維の繊度、単糸数、1単糸当たりの島数を本範囲とすることで本発明の好ましい繊維径50nm〜6000nmの極細繊維を製糸性、工程通過性が安定した状態で得ることができ、上質な風合い、外観の織編物を得ることができる。
海島型複合繊維の繊度が12dtex未満であると製糸性、工程通過性が悪化する。該繊度が300dtexを超えると海成分ポリマーを溶解除去した後の極細繊維の繊径が大きくなり織編物の風合いが低下する。繊維径50nm〜6000nmの極細繊維を得るために単糸数および/または1単糸当たりの島数を増やすと製糸性、工程通過性が悪化する。
単糸数が5未満であると海成分ポリマーを溶解除去した後の極細繊維の繊径が大きくなり織編物の風合いが低下する。繊維径50〜6000nmの極細繊維を得るために島数を増やすと島成分の面積バラツキが大きくなり、均一な繊維径の極細繊維が得らず、織編物としたときに上質な風合いが得られない。単糸数が400を超えると海島型複合繊維の毛羽の増大による製糸性、工程通過性の悪化やU%ムラの悪化により極細繊維の繊維径が不均一になる。
島数が4未満であると海成分ポリマーを溶解除去した後の極細繊維の繊径が大きくなり織編物の風合いが低下する。繊維径50〜6000nmの極細繊維を得るために単糸数を増やすと複合繊維の毛羽の増大による製糸性、工程通過性の悪化やU%ムラの悪化により極細繊維の繊維径が不均一になる傾向がある。島数が1200を超えると島成分の面積バラツキが大きくなり、均一な繊維径の極細繊維が得らず、織編物としたときに上質な風合いが得られない。
本発明の海島型複合繊維の強度は2.5〜5.5cN/dtexが好ましい。強度を2.5cN/dtex以上とすることで製糸性、工程通過性に優れる。また海成分ポリマーを溶解除去後の極細繊維の強度を1.5cN/dtex以上とすることができ、比較的使用環境が過酷なスポーツ衣料用途などにも好適に用いることができる。強度を5.5cN/dtex以下とすることで安定した製糸性が得られ、島成分の面積バラツキが小さい海島型複合繊維とすることができる。強度を5.5cN/dtexを超えるには固有粘度の高いポリマーを使用し、もしくは延伸倍率を高く設定する必要があるため、口金での計量性の低下による島成分面積バラツキの増大や延伸倍率過多により製糸性や毛羽品位の悪化、さらには海島成分が剥離する可能性がある。更に好ましくは3.0〜5.0cN/dtexである。
伸度は20〜50%が好ましい。伸度を50%以下とすることで織編物を作成した際の寸法安定性に優れる。伸度を20%未満とすると製糸性や毛羽品位の悪化、さらには海成分が剥離する可能性がある。更に好ましくは25〜45%である。
繊維長手方向の太さムラの指標であるU%(N)は2.0%以下が好ましい。2.0%以下とすることで島成分の面積バラツキが小さくなり、海成分ポリマー溶解処理後に繊維径が均一な極細繊維が得られ、上質な風合いの織編物が得られる。更に好ましくは1.8%以下である。
本発明の海島型複合繊維の各単糸における島成分の面積バラツキは1〜20%が好ましい。20%以下とすることで海成分ポリマーを溶解除去後に繊維径が均一な極細繊維が得られ、上質な風合いと外観の織編物が得られる。1%以上が実用可能な範囲である。さらに好ましくは1〜16%である。
次に本発明の海島型複合繊維および/または極細ポリエステル繊維の好ましい製造方法について一例を挙げながら更に具体的に説明する。
まず、本発明で用いる溶解剤に対して難溶解性の島成分ポリマーとして、テレフタル酸とエチレングリコールを重合して得られるポリエチレンテレフタレートを70.0モル%以上含むポリエステルを用いる。ポリエステルは無機微粒子を1.0〜10.0wt%含有したものを好ましく用いることができる。
無機微粒子の含有率により本発明の微細凹凸の数を調整できる。無機微粒子の含有率が1.0wt%以上あると、防透け性が発揮され、マイルドな光沢感となり、さらに海成分ポリマーの溶解除去時に、微細凹凸の数が良好な風合いとして感じることのできる1個/40μm2以上となり好ましい。また、無機微粒子の含有率が10.0wt%以下であれば製糸性の低下を避けることができるとともに繊維物性も実用上問題無い範囲となるので好ましい。さらに好ましくは3.0〜8.0wt%、特に好ましくは5.0〜7.0wt%である。
この粒子添加を多くすれば微細凹凸の数も多くなり、添加量を少なくすれば微細凹凸の数も少なくできる。また、海成分ポリマーの溶解除去時に少しの調整は可能であるが、繊維物性との兼ね合いで、良好な風合いを有しつつ、実用的な繊維強伸度となるよう調整することが好ましい。
無機微粒子としては、例えば酸化チタン、シリカ、ジルコニア、もしくはアルミナなども用いることもできる。中でも酸化チタンは不透明性に優れ、かつ取扱性のし易さ、価格面、太陽光線に対する諸機能等の点でより好ましい。例えば酸化チタンには皮膚に有害な紫外線を吸収・遮蔽、かつ暑さと感じる太陽光の可視および近赤外線領域を効率的に反射するため、日射エネルギーの吸収を抑え、衣服にしたときの衣服内の温度を抑える効果があるので特に好ましく用いることができる。
そして、本発明の無機微粒子の粒径は、平均粒径が0.01〜0.50μmの範囲内のものを好ましく用いることができる。このような平均粒径の無機微粒子であると、海成分ポリマーの溶解除去時に、微細凹凸の大きさがアスペクト比10以下となり好ましい。
本発明の海成分に用いる易溶解性のポリエステルは、溶解剤に対する溶解速度は通常のホモポリエステルに対して5倍以上大きい溶解速度を有することが好ましい。
易溶解性のポリエステルは取扱の容易さ、紡糸性の容易さから5−ナトリウムスルホイソフタル酸を共重合した共重合ポリエステルが好ましい。また、好ましい共重合率は、糸物性面の安定化、製糸性の観点より1.5〜10.0モル%が好ましい。
海成分ポリエステルは無機微粒子を1.0〜10.0wt%含有したものを好ましく用いることができる。
無機微粒子としては、例えば酸化チタン、シリカ、ジルコニア、もしくはアルミナなども用いることもできる。中でも酸化チタンは不透明性に優れ、かつ取扱性のし易さ、価格面、太陽光線に対する諸機能等の点でより好ましい。
そして、無機微粒子の粒径は、平均粒径が0.01〜0.50μmの範囲内のものを好ましく用いることができる。平均粒径は0.01μm未満であると粒子活性が高くなり、粒子の凝集による増粘が大きくなり、海島型複合繊維の製糸性が悪化する。0.50μmを超えると海島型複合繊維を製糸する際にパック内のフィルターの目詰まりの発生や製糸性が悪化する。
本発明の海成分ポリマーと島成分ポリマーの好ましい組み合わせは、上述した如く、溶解剤に対し易溶解性ポリマーの海成分と難溶解性ポリマーの島成分からなる。両ポリマーは互いに非相溶であり、海成分ポリマーの溶解除去時の溶解速度差がある範囲内で、可能な限り大きな組み合わせで製糸することが重要である。この溶解速度の範囲としては、海成分ポリマーの溶解速度が島成分ポリマーの溶解速度に対して5倍以上もしくは溶解剤に対して全く溶解しない島成分ポリマーを選択する。溶解速度差を5倍以上とすることで、海成分ポリマーの溶解除去がスムーズに実行され、海島型複合繊維の単繊維の表面/芯部での島成分溶解剤接触時間差が少なくなるため、島繊維径バラツキが小さな極細単糸群を得ることができる。溶解速度差のより好ましい範囲は20倍以上である。
紡糸形態の具体例を以下に記載する。海島成分の溶解速度差が5倍以上となるポリマーを海成分ポリマーに選択し、極細ポリエステル繊維における海成分ポリマー重量割合が5〜45wt%となるように計量する。
また、溶解剤に対して難溶解性の島成分ポリマーは、重量割合が55〜95wt%となるように計量し溶融吐出する。
紡糸温度はポリマー融点よりも+20〜+50℃高い温度で設定する。ポリマー融点よりも+20℃以上高く設定することで、ポリマーが紡糸機配管内で固化して閉塞することを防ぐことができ、かつ高めに設定する温度を+50℃以下とすることでポリマーの過度な劣化を抑制することができるため好ましい。
本発明の海島型複合繊維および極細ポリエステル繊維に用いる口金は、既存の海島型極細用口金を好ましく用いることができる。すなわち従来公知のパイプ型の海島複合口金を用いることができる。さらには特開2011−174215号公報に記載されている計量プレート、分配プレート、吐出プレートの大きく3種類の部材が積層された複合口金を用いることで島成分面積バラツキが小さい海島型複合繊維が得られるため好ましい。
本発明の海島型複合繊維および極細ポリエステル繊維は、吐出されたポリマーを未延伸糸として一旦巻き取った後に延伸する二工程法のほか、紡糸および延伸工程を連続して行う直接紡糸延伸法や高速製糸法など、いずれのプロセスにおいても製造できる。また、高速製糸法における紡糸速度の範囲は特に規定しないため、半延伸糸として巻き取った後に延伸する工程でもよい。さらに、必要に応じて仮撚りなどの糸加工を行うこともできる。
二工程法の場合、一旦未延伸糸として巻き取り、得られた未延伸糸をホットロール−ホットロール延伸や熱ピンを用いた延伸のほか、あらゆる公知の延伸方法を用いることができる。
直接紡糸延伸法の場合は、一旦巻き取ることなく、ホットロール−ホットロール間を介して延伸を行う。高速製糸法の場合は、巻取速度を適宣調整し延伸糸を巻き取る。 本発明の海島型複合繊維および極細ポリエステル繊維の下記式で表される紡糸ドラフトは50〜300にすることが好ましい。紡糸ドラフトとは以下で計算した値である。
紡糸ドラフト=Vs/V0
Vs:紡糸速度(m/分)
V0:吐出線速度(m/分)
紡糸ドラフトを50以上とすることで、口金孔から吐出されたポリマー流が長時間口金直下に留まることを防止し、口金面汚れを抑制することができることから、製糸性が安定する。また、紡糸ドラフトを250以下とすることで過度な紡糸張力による糸切れを抑制することが可能となり、製糸安定的に極細ポリエステル繊維を得ることができるので好ましい。より好ましくは80〜250である。
本発明の海島型複合繊維および極細ポリエステル繊維の紡糸応力は0.02〜0.15cN/dtexにするのが好ましい。紡糸応力を0.02cN/dtex以上にすることで紡糸時の糸揺れによる単糸間での糸条干渉がなく、第1ロールである引取りロールに逆巻きすることもないため安定走行が可能となる。また、紡糸応力を0.15cN/dtex以下とすることで、製糸安定的に極細ポリエステル繊維を得られるので好ましい。紡糸応力のより好ましい範囲は0.07〜0.10cN/dtexである。
本発明の海島型複合繊維および極細ポリエステル繊維を操業・品質安定的に製糸するにあたり、吐出されたポリマーの冷却固化を適正に制御するのが好ましい。細繊度化に伴い吐出ポリマー量を抑制すると、ポリマーの細化および冷却固化が吐出後すぐに開始されることとなるため、従来技術で想定される冷却方法では長手方向の糸斑の多い複合繊維しか得られない。また、固化した繊維による随伴気流が増大し、紡糸応力が大きくなるため、製糸性を改善する方法が必要となる。
これらを解決する方法として、冷却開始点を口金面から20〜120mmとする必要がある。冷却開始点が20mm以上であれば冷却風による口金の面温度低下を抑制でき、低温糸、口金孔詰まりや複合異常、吐出斑といった諸問題を回避できるので好ましい。また、冷却開始点は120mm以下とすることで、長手方向での糸斑の少ない高品質な極細ポリエステル繊維を得ることができるので好ましい。冷却開始点のより好ましい範囲は25〜100mmである。
また、冷却風による口金面温度低下を抑制するため、必要に応じ、冷却風の温度を管理や、口金周辺部に加熱器を設置してもよい。
口金吐出面から給油位置までの距離は1300mm以下にするのが好ましい。口金吐出面から給油位置までの距離を1300mm以下とすることで冷却風による糸条揺れ幅を抑え、繊維長手方向での糸斑を改善できるほか、糸条の収束に至るまでの随伴気流を抑制できるため紡糸張力を低減でき、毛羽や糸切れの少ない安定した製糸性が得やすいので好ましい。海島型複合繊維および極細ポリエステル繊維の紡糸工程における給油位置のより好ましい範囲は1200mm以下である。
本発明の海島型複合繊維の海成分ポリマーを溶解除去することにより、本発明の極細ポリエステル繊維を得ることができる。この海成分ポリマーを除去する方法として、海成分ポリマーがアルカリ可溶性である場合は、ポリエステル繊維で一般的に行われているアルカリ減量処理が好ましい。その一例を示す。アルカリ水溶液は、1〜5wt%水酸化ナトリウム水溶液を好ましく用いることができ、そのアルカリ減量処理温度は常温(25℃)〜98℃の範囲で行うのが好ましい。また、処理時間は、海成分ポリマーの重量割合に応じて適宣調整して行うことができるが、5〜60分程度が好ましい。この減量処理によって繊維表面に微細凹凸を形成させることができ、この微細凹凸形成のために最大約5wt%以内で過剰減量処理を行うこともできる。
そして、本発明の海島型複合繊維は通常のアルカリ減量処理を行うが、その減量処理は製編織後において行うのが最も効果的である。これによって、本発明の目的とする極細繊維の特性である繊細な肌触りやソフトな触感、ドレープ性を生かしたスエード調布帛、比表面積や空隙率の増加によるワイピング性能に加えて、ドライ感の付与、防透け性、マイルドな光沢感が発現でき、従来技術では得ることのできなかった上質感を有する極細ポリエステル繊維を用いた、新規な織編物を製造することができるのである。
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。なお、実施例における測定方法は次のとおりである。
(1)固有粘度(IV)
定義式のηrは、純度98%以上のO−クロロフェノール(OCP)10mL中に試料ポリマーを0.8g溶かし、25℃の温度にてオストワルド粘度計を用いて相対粘度ηrを下記の式により求め、固有粘度(IV)を算出した。
ηr=η/η0=(t×d)/(t0×d0)
固有粘度(IV)=0.0242ηr+0.2634
[η:ポリマー溶液の粘度、η0:OCPの粘度、t:溶液の落下時間(秒)、d:溶液の密度(g/cm)、t0:OCPの落下時間(秒)、d0:OCPの密度(g/cm)] 。
(2)複合繊維の繊度
枠周1.0mの検尺機を用いて100回分のカセを作製し、下記式に従って繊度を測定した。
繊度(dtex)=100回分のカセ重量(g)×100 。
(3)複合繊維の各単糸における島成分の露出および海成分による島成分分離
走査型電子顕微鏡(SEM:日立社製S−3000N)にて観察した。得られた複合繊維全単糸を観察し島成分が海成分に完全に覆われているか、すなわち島成分の繊維表面への露出がないか、および島成分が海成分により完全に分離されているか確認した。
(4)複合繊維の島成分の面積バラツキ
走査型電子顕微鏡(SEM:日立社製S−3000N)にて観察した。全単糸から無作為に5単糸を選択し、各単糸から無作為に4島を選択。計20島を観察した。画像に1単糸が入る倍率に適宜調整し、撮影した。得られた画像について画像処理ソフト(WINROOF)を用いて面積を計測し、20島の平均値および標準偏差を求めた。これらの結果から下記式に基づき島成分の面積バラツキを算出した。
島成分の面積バラツキ(CV%)=(標準偏差/平均値)×100 。
(5)島成分単糸群の平均繊維径
海成分溶解除去後の島成分からなる極細繊維の単糸群を走査型電子顕微鏡(SEM:日立社製S−3000N)にて観察した。極細繊維単糸群から50本をランダムに選出し、それら測定値から平均繊維径を算出した。
(6)製糸安定性
各実施例についての製糸を行い、24時間当たりの糸切れ回数から海島型複合繊維の製糸安定性を4段階評価した。◎〜△は合格であり、×は不合格とした。
優 ◎ :0回
良 ○ :1〜2回未満
可 △ :2〜4回未満
不良 × :4回以上 。
(7)防透け性
海島型複合繊維を用いて経密度100本/2.54cm、緯95本/2.54cmのゾッキ織物を製作し、95℃にて精錬した。引き続き、95℃の3wt%水酸化ナトリウム水溶液にて21%アルカリ減量後(海成分を溶解除去)、染色工程を経た後、最終セットを行った。太メッシュの柄台紙に得られた布帛サンプル(サンプルサイズ:10×10cm)を貼り付け、熟練者5名による肉眼法で官能評価を行い、4段階判定法で評価した。◎〜△は合格であり、×は不合格とした。
◎:防透け性が極めて高い
〇:防透け性大
△:防透け性有り
×:防透け性の効果が少ない 。
(6)製品風合い
上記にて作成した布帛を用いて、肌触り、ソフト感、ドレープ性、ドライ感、ぬめり感、マイルドな光沢感を主体に防透け性も加味し、熟練者5名による官能評価を行い、4段階判定法で評価した。◎〜△は合格であり、×は不合格とした。
◎:優
〇:良
△:可
×:不良 。
(8)微細凹凸の数
上記(5)にて作成した布帛を用いて極細繊維の単糸群を走査型電子顕微鏡(SEM:日立社製S−3000N)にて1視野当たり3〜10本の極細繊維が観察できるようにして撮影した顕微鏡写真により、0.1μm以上の微細凹凸の数をカウントし、40μm当たりに換算して、微細凹凸の数として算出した。
(9)アスペクト比
上記(7)にて観察した微細凹凸50個について、繊維軸方向の長さ(L)と繊維軸に垂直な方向を幅(W)を測定し、形状の幅に対する長さの比をアスペクト比Cとして算出した。
C=L/W 。
(10)溶解速度差
海成分ポリマーおよび島成分ポリマーで用いるポリマーを約2gそれぞれ用意して計量した後、95℃の3wt%水酸化ナトリウム水溶液にて5分間処理した時の減量率から以下の式にて溶解速度差を算出した。
海成分ポリマーの減量率(%:S)=((処理前重量)/(処理後重量))×100
島成分ポリマーの減量率(%:I)=((処理前重量)/(処理後重量))×100
溶解速度差=S/I 。
(11)無機微粒子の含有量
純度98%以上のO−クロロフェノール(OCP)10mL中に試料ポリマーを0.8g溶かし、遠心分離した後、得られた無機微粒子重量を測定して含有量を測定した。
無機微粒子含有量(wt%)=(遠心分離にて得られた無機微粒子重量/溶解前試料ポリマー重量)×100 。
(12)長期の製糸安定性
各実施例についての10日間連続製糸を行い、5日間合計の糸切れ回数から海島型複合繊維の長期製糸安定性を4段階評価した。◎〜△は合格であり、×は不合格とした。
優 ◎ :0〜5回
良 ○ :6〜10回未満
可 △ :11〜19回未満
不良 × :20回以上 。
実施例1
平均粒径が0.50ミクロンのアナターゼ型TiOを表1に示したとおり、6.5wt%含有した固有粘度(IV)0.66のポリエステル(A)を島成分ポリマーに、固有粘度(IV)0.55で5−ナトリウムスルホイソフタル酸7.3モル%共重合した共重合ポリエステル(B)を海成分ポリマーとし、溶解剤をアルカリ水溶液として、溶解剤に対する海成分ポリマーと島成分ポリマーの溶解速度差は50倍であった。これらを各々、エクストルーダーを用いて溶融後、島成分ポリマーの重量割合が80wt%、海成分ポリマーの重量割合が20wt%となるように計量し、パックに導入し、島数127島、ホール数112の海島型複合用紡糸口金に流入させた各ポリマーは、口金内部で合流し、海成分ポリマー中に島成分ポリマーが包含された複合形態を形成し、口金から吐出された。この時の紡糸温度290℃、口金から吐出された糸条は、空冷装置により冷却、油剤付与後、ワインダーにより紡糸ドラフトが180となるように1500m/分の速度で巻き取り、175dtex−112フィラメントの未延伸糸として製糸安定的に巻き取った。このとき、冷却開始点は口金面から100mmに設定し、さらに給油位置を1100mmとすることで紡糸張力は0.09cN/dtexで、製糸性の安定を図った。
続いて、得られた未延伸糸を300m/分の速度で延伸装置に送糸し、延伸温度90℃、残留伸度25〜40%程度となるような倍率で延伸した後、130℃で熱セットし、紡糸、延伸工程を通じて製糸安定的に66dtex−112フィラメントの延伸糸を得た。得られた海島型複合繊維を95℃の3wt%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬することで海成分ポリマーを溶解除去した。得られた極細単糸群の平均繊維径は590nmであった。
この繊維を2本合糸した後、甘撚し、経糸および緯糸に使用して製織し、得られた織物特性について評価した結果を表1に示す。
繊維表面には微細な凹凸が発現しており、繊細な肌触りやソフトな触感、ドレープ性が認められ、更に、ドライ感の付与、防透け性、マイルドな光沢感が発現でき製品風合い、製品品位とも満足できるものであった。
実施例2、3
実施例2は無機微粒子として酸化チタンの含有量を1.0wt%、実施例3は含有量を10.0wt%にそれぞれ変更した以外は、実施例1に準じた。
いずれも表1に示したとおり、繊維表面には微細な凹凸が発現しており、繊細な肌触りやソフトな触感、ドレープ性が認められ、更に、ドライ感の付与、防透け性、マイルドな光沢感が発現でき製品風合い、製品品位とも満足できるものであった。
実施例4〜6
実施例4は無機微粒子を平均粒径約0.11μmのジルコニア、実施例5は無機微粒子を平均粒径約0.04μmのコロイダルシリカ、実施例6は無機微粒子を平均粒径約0.10μmのアルミナにそれぞれ変更した以外は、実施例1に準じた。
結果を表1に示した。実施例4は、マイルドな光沢感の点で、実施例5、6は、防透け性やマイルドな光沢感で劣るものの、製品風合い、製品品位とも満足できるものであった。
比較例1、2
比較例1は無機微粒子の含有量を0wt%、比較例2は無機微粒子の含有量を12.0wt%にそれぞれ変更した以外は、実施例1に準じた。
結果を表1に示した。比較例1は、繊維表面には微細な凹凸が全くなく、防透け性、風合い、マイルドな光沢感いずれも満足できるものでなかった。さらに、比較例2においては、製糸性が著しく悪く、製品品位もぬめり感が発現しており、満足できるものでなかった。
実施例7、8
実施例7は、延伸後の海島型複合繊維を22dtex−112フィラメントとし、海成分除去後の島成分の平均繊維径を197nm、実施例8は、島数を8島とし、ホール数を36とし、海成分除去後の島成分の平均繊維径を4640nmに変更した以外は、実施例1に準じ、結果を表1に示した。
実施例9
実施例9は、延伸後の海島型複合繊維を84dtex−9フィラメントとし、島数8島、ホール数を9ホールとし、海成分除去後の島成分の平均繊維径を9280nmに変更した以外は、実施例1に準じ、結果を表1に示した。
実施例10
平均粒径が0.50ミクロンのアナターゼ型TiOを6.5wt%含有した固有粘度(IV)0.66のポリエステル(A)を島成分ポリマーに、平均粒径が0.50ミクロンのアナターゼ型TiOを0.3wt%含有した固有粘度(IV)0.55で5−ナトリウムスルホイソフタル酸7.3モル%共重合した共重合ポリエステル(B)を海成分ポリマーとし、溶解剤をアルカリ水溶液として、溶解剤に対する海成分ポリマーと島成分ポリマーの溶解速度差は50倍であった。これらを各々、エクストルーダーを用いて溶融後、島成分ポリマーの重量割合が80wt%、海成分ポリマーの重量割合が20wt%、海島型複合繊維の繊度が84dtexとなるように計量し、パックに導入し、島数8島、ホール数36の海島型複合用紡糸口金に流入させた各ポリマーは、口金内部で合流し、海島型を形成し、口金から吐出された。この時の紡糸温度290℃、口金から吐出された糸条は、空冷装置により冷却、油剤付与後、紡糸ドラフトが180となるように1500m/分の速度で引き取り、一旦巻き取ることなく延伸温度90℃、残留伸度25〜40%程度となるような倍率で延伸後、130℃で熱セットし84dtex−36フィラメントの海島型複合繊維をワインダーでドラムパッケージに巻き取った。このとき、冷却開始点は口金面から100mmに設定し、さらに給油位置を1100mmとした。紡糸張力は0.09cN/dtexであった。
得られた海島型複合繊維の強度は3.5cN/dtex、伸度は35%、U%(N)は0.4%であった。36フィラメント全ての断面を観察した結果、全単糸の島成分が海成分に完全に覆われており、島成分が海成分に完全に分離されていた。島成分の面積バラツキは2.5%であった。
連続10日間の製糸評価をした結果、10日間TOTALでの糸切れ回数は1回と安定していた。
該海島型複合繊維を95℃の3wt%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬することで海成分ポリマーを溶解除去した。得られた極細単糸群の平均繊維径は4600nmであった。
この繊維を2本合糸した後、甘撚し、経糸および緯糸に使用して製織した。撚糸および製織中の糸切れはなく、得られた織物の繊維表面には微細な凹凸が発現しており、繊細な肌触りやソフトな触感、ドレープ性が認められ、更に、ドライ感の付与、防透け性、マイルドな光沢感が発現でき製品風合い、製品品位とも満足できるものであった。結果を表2に示す。
実施例11、12
海成分のTiO含有率をそれぞれ0.1wt%、0.8wt%とした以外は実施例10に準じた。
得られた海島型複合繊維の物性は表2の通りであった。36フィラメント全ての断面を観察した結果、全単糸の島成分が海成分に完全に覆われており、島成分が海成分に完全に分離されていた。
連続10日間の製糸評価をした結果、10日間TOTALでの糸切れ回数はそれぞれ6回、8回とやや不安定であった。
この繊維を2本合糸した後、甘撚し、経糸および緯糸に使用して製織した。得られた織物は良好な肌触りやソフトな触感、ドレープ性が認められ、更に、ドライ感の付与、防透け性、マイルドな光沢感が発現でき製品風合い、製品品位とも満足できるものであった。
実施例13、14
海成分のTiO含有率をそれぞれ0wt%、1.0wt%とした以外は実施例10に準じた。
得られた海島型複合繊維の物性は表2の通りであった。36フィラメント全ての断面を観察した結果、全単糸の島成分が海成分に完全に覆われており、島成分が海成分に完全に分離されていた。
連続10日間の製糸評価をした結果、実施例13は製糸初期から糸切れが散発し10日間TOTALの糸切れは45回と不安定であった。実施例14は製糸初期は安定していたが6日目頃から糸切れが散発し10日間TOTALの糸切れは22回と不安定であった。
この繊維を2本合糸した後、甘撚し、経糸および緯糸に使用して製織した。得られた織物はいずれも毛羽立ちが見られ、チクチクとした肌触りであり、チラチラとした光沢感でやや不満が残った。
実施例15〜18
海島型複合繊維の繊度、単糸数、1単糸当たりの島数を表2の通り変更した以外は実施例10に準じた。
得られた海島型複合繊維の物性は表2の通りであった。全ての断面を観察した結果、全単糸の島成分が海成分に完全に覆われており、島成分が海成分に完全に分離されていた。
連続10日間の製糸評価の結果は、実施例15は10日間TOTALの糸切れが12回とやや不安定であったが実用可能なレベルであった。実施例16は糸切れ3回と安定していた。実施例17は糸切れ18回とやや不安定であった。実施例18は製糸初期3日間は糸切れが多かったがそのご安定化しTOTAL糸切れは13回と実用可能なレベルであった。
各繊維を2本合糸した後、甘撚し、経糸および緯糸に使用して製織した。得られた織物の評価結果、実施例15は良好な肌触りやソフトな触感、ドレープ性が認められ、更に、ドライ感の付与、防透け性、マイルドな光沢感が発現でき製品風合い、製品品位とも満足できるものであった。実施例16はソフト感がやや不足し、肌触り、ドレープ性がやや不満でぬめり感も感じられたが合格レベルであった。実施例17は織物に毛羽立ちが見られ肌触りに不満が認められたが合格レベルであった。実施例18は織物に毛羽立ちが見られ肌触りと光沢感に不満が認められ、ややぬめり感も感じられたが合格レベルであった。
比較例3
海島型複合繊維の繊度、単糸数、1単糸当たりの島数を表2の通り変更した以外は実施例10に準じた。
得られた海島型複合繊維の物性は表2の通りであった。全ての断面を観察した結果、全単糸の島成分が海成分に完全に覆われており、島成分が海成分に完全に分離されていた。
連続10日間の製糸評価の結果、10日間通して糸切れが多く、TOTAL28回であった。
各繊維を2本合糸した後、甘撚し、経糸および緯糸に使用して製織した。撚り、製織での糸切れも多く織物を得るのに苦心した。得られた織物は毛羽立ちが認められ、チクチクとした肌触りとチラチラとした光沢感であり不合格レベルであった。
比較例4、5
海島型複合繊維の繊度、単糸数、1単糸当たりの島数を表2の通り変更した以外は実施例10に準じた。
得られた海島型複合繊維の物性は表2の通りで、比較例5は島成分の面積バラツキが大きかった。全ての断面を観察した結果、全単糸の島成分が海成分に完全に覆われており、島成分が海成分に完全に分離されていた。
連続10日間の製糸評価の結果、比較例4はTOTAL糸切れ1回と安定していた。比較例5は10日間通して糸切れが多く糸切れ28回と不安定であった。
各繊維を2本合糸した後、甘撚し、経糸および緯糸に使用して製織した。得られた織物の評価結果、比較例4はソフト感が不足し、肌触り、光沢感が不満で不合格レベルであった。比較例5は肌触りや光沢感がムラっぽく上質な風合いとは言えないレベルであり不合格であった。
比較例6
海島型複合繊維の繊度、単糸数、1単糸当たりの島数を表2の通り変更した以外は実施例10に準じた。
得られた海島型複合繊維の物性は表2の通りで、島成分の面積バラツキが大きかった。全ての断面を観察した結果、全単糸の島成分が海成分に完全に覆われていたが、一部の島成分同士がくっついていた。
連続10日間の製糸評価の結果、特に製糸初期3日間の糸切れが多発しTOTAL糸切れ24回であった。
各繊維を2本合糸した後、甘撚し、経糸および緯糸に使用して製織した。得られた織物の評価結果、肌触り、ソフト感にムラがあり、固く感じる部分認められた。また光沢感が
ムラっぽく上質な風合いとは言えないレベルであり不合格であった。
実施例19、20
島成分と海成分のポリマー重量割合を表3の通り変更した以外は実施例10に準じた。
得られた海島型複合繊維の物性は表3の通りで、実施例19は強度がやや低かった。全ての断面を観察した結果、全単糸の島成分が海成分に完全に覆われており、島成分が海成分に完全に分離されていた。
連続10日間の製糸評価の結果は、実施例19は10日間TOTALの糸切れが12回とやや不安定であったが実用可能なレベルであった。実施例20は糸切れ6回と問題ないレベルであった。
各繊維を2本合糸した後、甘撚し、経糸および緯糸に使用して製織した。得られた織物の評価結果、実施例19、20ともに良好な肌触りやソフトな触感、ドレープ性が認められ、更に、ドライ感の付与、防透け性、マイルドな光沢感が発現でき製品風合い、製品品位とも満足できるものであった。
比較例7
島成分と海成分のポリマー重量割合を表3の通り変更した以外は実施例10に準じた。
得られた海島型複合繊維の物性は表3の通りで強度低下が認められた。全ての断面を観察した結果、全単糸の島成分が海成分に完全に覆われており、島成分が海成分に完全に分離されていた。
連続10日間の製糸評価の結果は、10日間通して糸切れが多く、10日間TOTALの糸切れは23回と不安定であった。
各繊維を2本合糸した後、甘撚し、経糸および緯糸に使用して製織した。得られた織物の評価結果、上質な風合いとは言えず不合格レベルであった。織物を詳細に分析した結果、一部の極細繊維で海成分が残っており、割繊不良が見られた。
比較例8
島成分と海成分のポリマー重量割合を表3の通り変更した以外は実施例10に準じた。
得られた海島型複合繊維の物性は表3の通りであった。全ての断面を観察した結果、一部の島成分同士がくっついていた。また、一部の島成分が繊維表面に露出していた。その影響で島成分の面積バラツキは大きい結果となった。
連続10日間の製糸評価の結果は、特に製糸後半の糸切れが多発し、10日間TOTALの糸切れは28回と不安定であった。
各繊維を2本合糸した後、甘撚し、経糸および緯糸に使用して製織した。甘撚り、製織工程で糸切れが多く織物サンプル採取に苦労した。得られた織物の評価結果、肌触り、ソフト感、光沢感が悪く、上質な風合いとは言えず不合格レベルであった。

Claims (5)

  1. 極細繊維であって、繊維の表面に微細な凹凸を有し、微細凹凸は次の(1)、(2)の要件を満足することを特徴とする極細ポリエステル繊維。
    (1)微細凹凸の数が1〜19個/40μm
    (2)微細凹凸の大きさがアスペクト比10以下
  2. 極細繊維の繊維径が50〜6000nm、かつ、無機微粒子を1.0〜10.0wt%含有することを特徴とする請求項1記載の極細ポリエステル繊維。
  3. 易溶解性ポリエステルを海成分、難溶解性ポリエステルを島成分として、次の(1)から(4)を同時に満足することを特徴とする海島型複合繊維。
    (1)島成分に含まれる無機微粒子の含有率が1.0〜10.0wt%
    (2)島成分が海成分に覆われている
    (3)島成分が海成分により分離されている
    (4)海島型複合繊維の繊度が12〜300dtex、かつ単糸数が5〜400、かつ1単糸当たりの島数が4〜1200
  4. 海成分に含まれる無機微粒子の含有率が0.1〜0.8wt%である請求項3に記載の海島型複合繊維。
  5. 請求項1から請求項4いずれかに記載の繊維が少なくとも一部を構成する織編物。
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