JP2016172945A - 凹凸表面を有する極細ポリエステル繊維ならびに海島型複合繊維 - Google Patents
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(1)極細繊維であって、繊維の表面に微細な凹凸を有し、かつ微細凹凸は次のA、Bの要件を満足する極細ポリエステル繊維。
A.微細凹凸の数が1〜19個/40μm2
B.微細凹凸の大きさがアスペクト比10以下
(2)極細ポリエステル繊維の繊維径が50〜6000nm、かつ、無機微粒子を1.0〜10.0wt%含有することを特徴とする(1)記載の極細ポリエステル繊維。
(3)易溶解性ポリエステルを海成分、難溶解性ポリエステルを島成分として、次のAからDを同時に満足することを特徴とする海島型複合繊維。
B.島成分が海成分に覆われている
C.島成分が海成分により分離されている
D.海島型複合繊維の繊度が12〜300dtex、かつ単糸数が5〜400、かつ1単糸当たりの島数が4〜1200
すなわち、本発明は極細ポリエステル繊維の表面に微細凹凸を有し、その微細凹凸の数は1〜19個/40μm2である必要がある。
繊維表面の凹部または溝の形状で、繊維軸方向に対し、平行な方向を長さ(L)、
それに垂直な方向を幅(W)として、形状の幅に対する長さの比(C)をアスペクト比(C=L/W)とする。
アスペクト比が10以下であるとは、繊維表面の微細な孔、すなわち海成分ポリマーの溶解除去時に生成した微細凹凸は、繊維軸方向に沿った筋状の溝では無く、無機微粒子が抜け出た孔であることを意味している。この微細凹凸が、繊維軸方向に沿った筋状の溝、すなわちアスペクト比が10を超えるとぬめり感が発現するため好ましくない。これは、肌に触れたときに筋状の溝により表面積が大きくなり、あたかも繊維径が細くなったごとく作用し、超極細繊維のように振る舞うため、ぬめり感が発現するのである。アスペクト比の好ましい範囲は、8以下であり、さらに好ましくは6以下である。
繊維径が50nm以上であることで、十分に極細繊維でありながら、無機微粒子を含有させることが可能となり、防透け性、マイルドな光沢感を有し、アルカリ減量加工で微細凹凸を発現させ、良好な風合いでありながら、強伸度低下が軽減できて好ましい。
また、繊維径は6000nm以下であると、極細繊維の特性である繊細な肌触りやソフトな触感、ドレープ性を生かしたスエード調布帛、比表面積や空隙率の増加によるワイピング性能に加えて、ドライ感の付与、防透け性、マイルドな光沢感が発現できるので好ましい。
なお、本発明の極細ポリエステル繊維の繊維径は、100〜5000nmがさらに好ましく、特に好ましくは、200〜4000nmである。
無機微粒子としては、例えば酸化チタン、シリカ、ジルコニア、もしくはアルミナなども用いることができる。中でも酸化チタンは不透明性に優れ、かつ取扱性のし易さ、価格面、太陽光線に対する諸機能等の点でより好ましい。例えば酸化チタンには皮膚に有害な紫外線を吸収・遮蔽、かつ暑さを感じる太陽光の可視および近赤外線領域を効率的に反射するため、日射エネルギーの吸収を抑え、衣服にしたときの衣服内の温度を抑える効果があるので特に好ましく用いることができる。
そして、本発明の無機微粒子の粒径は、平均粒径が0.01〜0.50μmの範囲内のものを好ましく用いることができる。
本発明の海島型複合繊維は、易溶解性ポリエステルを海成分、難溶解性ポリエステルを島成分とする必要がある。海または島を形成するポリマーは互いに非相溶であり、繊維形成性の熱可塑性重合体であるポリエステルが用いられる。島成分をポリエステルとすることで海成分ポリマーの溶解除去後の極細繊維としたときにぬめり感のないさらっとした風合いが得られる。また海成分をポリエステルとすることで海島複合繊維を製糸する際の製糸性および海島複合糸を使って織編物を作成する際の工程通過性に優れる。島成分および/または海成分に用いられるポリエステルとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートや、それらにジカルボン酸成分、ジオール成分あるいはオキシカルボン酸成分が共重合されたもの、あるいはそれらポリエステルをブレンドしたものが挙げられる。さらには、生分解性ポリエステルとして知られるポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリε−カプロラクタム等の脂肪族ポリエステルでもよい。これらのポリエステルには、艶消し剤、難燃剤、滑剤、抗酸化剤、着色顔料等として無機微粒子や有機化合物、カーボンブラックを必要に応じて添加することができる。
まず、本発明で用いる溶解剤に対して難溶解性の島成分ポリマーとして、テレフタル酸とエチレングリコールを重合して得られるポリエチレンテレフタレートを70.0モル%以上含むポリエステルを用いる。ポリエステルは無機微粒子を1.0〜10.0wt%含有したものを好ましく用いることができる。
易溶解性のポリエステルは取扱の容易さ、紡糸性の容易さから5−ナトリウムスルホイソフタル酸を共重合した共重合ポリエステルが好ましい。また、好ましい共重合率は、糸物性面の安定化、製糸性の観点より1.5〜10.0モル%が好ましい。
無機微粒子としては、例えば酸化チタン、シリカ、ジルコニア、もしくはアルミナなども用いることもできる。中でも酸化チタンは不透明性に優れ、かつ取扱性のし易さ、価格面、太陽光線に対する諸機能等の点でより好ましい。
そして、無機微粒子の粒径は、平均粒径が0.01〜0.50μmの範囲内のものを好ましく用いることができる。平均粒径は0.01μm未満であると粒子活性が高くなり、粒子の凝集による増粘が大きくなり、海島型複合繊維の製糸性が悪化する。0.50μmを超えると海島型複合繊維を製糸する際にパック内のフィルターの目詰まりの発生や製糸性が悪化する。
また、溶解剤に対して難溶解性の島成分ポリマーは、重量割合が55〜95wt%となるように計量し溶融吐出する。
二工程法の場合、一旦未延伸糸として巻き取り、得られた未延伸糸をホットロール−ホットロール延伸や熱ピンを用いた延伸のほか、あらゆる公知の延伸方法を用いることができる。
紡糸ドラフト=Vs/V0
Vs:紡糸速度(m/分)
V0:吐出線速度(m/分)
紡糸ドラフトを50以上とすることで、口金孔から吐出されたポリマー流が長時間口金直下に留まることを防止し、口金面汚れを抑制することができることから、製糸性が安定する。また、紡糸ドラフトを250以下とすることで過度な紡糸張力による糸切れを抑制することが可能となり、製糸安定的に極細ポリエステル繊維を得ることができるので好ましい。より好ましくは80〜250である。
また、冷却風による口金面温度低下を抑制するため、必要に応じ、冷却風の温度を管理や、口金周辺部に加熱器を設置してもよい。
定義式のηrは、純度98%以上のO−クロロフェノール(OCP)10mL中に試料ポリマーを0.8g溶かし、25℃の温度にてオストワルド粘度計を用いて相対粘度ηrを下記の式により求め、固有粘度(IV)を算出した。
ηr=η/η0=(t×d)/(t0×d0)
固有粘度(IV)=0.0242ηr+0.2634
[η:ポリマー溶液の粘度、η0:OCPの粘度、t:溶液の落下時間(秒)、d:溶液の密度(g/cm3)、t0:OCPの落下時間(秒)、d0:OCPの密度(g/cm3)] 。
枠周1.0mの検尺機を用いて100回分のカセを作製し、下記式に従って繊度を測定した。
繊度(dtex)=100回分のカセ重量(g)×100 。
走査型電子顕微鏡(SEM:日立社製S−3000N)にて観察した。得られた複合繊維全単糸を観察し島成分が海成分に完全に覆われているか、すなわち島成分の繊維表面への露出がないか、および島成分が海成分により完全に分離されているか確認した。
走査型電子顕微鏡(SEM:日立社製S−3000N)にて観察した。全単糸から無作為に5単糸を選択し、各単糸から無作為に4島を選択。計20島を観察した。画像に1単糸が入る倍率に適宜調整し、撮影した。得られた画像について画像処理ソフト(WINROOF)を用いて面積を計測し、20島の平均値および標準偏差を求めた。これらの結果から下記式に基づき島成分の面積バラツキを算出した。
島成分の面積バラツキ(CV%)=(標準偏差/平均値)×100 。
海成分溶解除去後の島成分からなる極細繊維の単糸群を走査型電子顕微鏡(SEM:日立社製S−3000N)にて観察した。極細繊維単糸群から50本をランダムに選出し、それら測定値から平均繊維径を算出した。
各実施例についての製糸を行い、24時間当たりの糸切れ回数から海島型複合繊維の製糸安定性を4段階評価した。◎〜△は合格であり、×は不合格とした。
優 ◎ :0回
良 ○ :1〜2回未満
可 △ :2〜4回未満
不良 × :4回以上 。
海島型複合繊維を用いて経密度100本/2.54cm、緯95本/2.54cmのゾッキ織物を製作し、95℃にて精錬した。引き続き、95℃の3wt%水酸化ナトリウム水溶液にて21%アルカリ減量後(海成分を溶解除去)、染色工程を経た後、最終セットを行った。太メッシュの柄台紙に得られた布帛サンプル(サンプルサイズ:10×10cm)を貼り付け、熟練者5名による肉眼法で官能評価を行い、4段階判定法で評価した。◎〜△は合格であり、×は不合格とした。
◎:防透け性が極めて高い
〇:防透け性大
△:防透け性有り
×:防透け性の効果が少ない 。
上記にて作成した布帛を用いて、肌触り、ソフト感、ドレープ性、ドライ感、ぬめり感、マイルドな光沢感を主体に防透け性も加味し、熟練者5名による官能評価を行い、4段階判定法で評価した。◎〜△は合格であり、×は不合格とした。
◎:優
〇:良
△:可
×:不良 。
上記(5)にて作成した布帛を用いて極細繊維の単糸群を走査型電子顕微鏡(SEM:日立社製S−3000N)にて1視野当たり3〜10本の極細繊維が観察できるようにして撮影した顕微鏡写真により、0.1μm以上の微細凹凸の数をカウントし、40μm2当たりに換算して、微細凹凸の数として算出した。
上記(7)にて観察した微細凹凸50個について、繊維軸方向の長さ(L)と繊維軸に垂直な方向を幅(W)を測定し、形状の幅に対する長さの比をアスペクト比Cとして算出した。
C=L/W 。
海成分ポリマーおよび島成分ポリマーで用いるポリマーを約2gそれぞれ用意して計量した後、95℃の3wt%水酸化ナトリウム水溶液にて5分間処理した時の減量率から以下の式にて溶解速度差を算出した。
海成分ポリマーの減量率(%:S)=((処理前重量)/(処理後重量))×100
島成分ポリマーの減量率(%:I)=((処理前重量)/(処理後重量))×100
溶解速度差=S/I 。
純度98%以上のO−クロロフェノール(OCP)10mL中に試料ポリマーを0.8g溶かし、遠心分離した後、得られた無機微粒子重量を測定して含有量を測定した。
無機微粒子含有量(wt%)=(遠心分離にて得られた無機微粒子重量/溶解前試料ポリマー重量)×100 。
各実施例についての10日間連続製糸を行い、5日間合計の糸切れ回数から海島型複合繊維の長期製糸安定性を4段階評価した。◎〜△は合格であり、×は不合格とした。
優 ◎ :0〜5回
良 ○ :6〜10回未満
可 △ :11〜19回未満
不良 × :20回以上 。
平均粒径が0.50ミクロンのアナターゼ型TiO2を表1に示したとおり、6.5wt%含有した固有粘度(IV)0.66のポリエステル(A)を島成分ポリマーに、固有粘度(IV)0.55で5−ナトリウムスルホイソフタル酸7.3モル%共重合した共重合ポリエステル(B)を海成分ポリマーとし、溶解剤をアルカリ水溶液として、溶解剤に対する海成分ポリマーと島成分ポリマーの溶解速度差は50倍であった。これらを各々、エクストルーダーを用いて溶融後、島成分ポリマーの重量割合が80wt%、海成分ポリマーの重量割合が20wt%となるように計量し、パックに導入し、島数127島、ホール数112の海島型複合用紡糸口金に流入させた各ポリマーは、口金内部で合流し、海成分ポリマー中に島成分ポリマーが包含された複合形態を形成し、口金から吐出された。この時の紡糸温度290℃、口金から吐出された糸条は、空冷装置により冷却、油剤付与後、ワインダーにより紡糸ドラフトが180となるように1500m/分の速度で巻き取り、175dtex−112フィラメントの未延伸糸として製糸安定的に巻き取った。このとき、冷却開始点は口金面から100mmに設定し、さらに給油位置を1100mmとすることで紡糸張力は0.09cN/dtexで、製糸性の安定を図った。
繊維表面には微細な凹凸が発現しており、繊細な肌触りやソフトな触感、ドレープ性が認められ、更に、ドライ感の付与、防透け性、マイルドな光沢感が発現でき製品風合い、製品品位とも満足できるものであった。
実施例2は無機微粒子として酸化チタンの含有量を1.0wt%、実施例3は含有量を10.0wt%にそれぞれ変更した以外は、実施例1に準じた。
実施例4は無機微粒子を平均粒径約0.11μmのジルコニア、実施例5は無機微粒子を平均粒径約0.04μmのコロイダルシリカ、実施例6は無機微粒子を平均粒径約0.10μmのアルミナにそれぞれ変更した以外は、実施例1に準じた。
結果を表1に示した。実施例4は、マイルドな光沢感の点で、実施例5、6は、防透け性やマイルドな光沢感で劣るものの、製品風合い、製品品位とも満足できるものであった。
比較例1は無機微粒子の含有量を0wt%、比較例2は無機微粒子の含有量を12.0wt%にそれぞれ変更した以外は、実施例1に準じた。
結果を表1に示した。比較例1は、繊維表面には微細な凹凸が全くなく、防透け性、風合い、マイルドな光沢感いずれも満足できるものでなかった。さらに、比較例2においては、製糸性が著しく悪く、製品品位もぬめり感が発現しており、満足できるものでなかった。
実施例7は、延伸後の海島型複合繊維を22dtex−112フィラメントとし、海成分除去後の島成分の平均繊維径を197nm、実施例8は、島数を8島とし、ホール数を36とし、海成分除去後の島成分の平均繊維径を4640nmに変更した以外は、実施例1に準じ、結果を表1に示した。
実施例9は、延伸後の海島型複合繊維を84dtex−9フィラメントとし、島数8島、ホール数を9ホールとし、海成分除去後の島成分の平均繊維径を9280nmに変更した以外は、実施例1に準じ、結果を表1に示した。
平均粒径が0.50ミクロンのアナターゼ型TiO2を6.5wt%含有した固有粘度(IV)0.66のポリエステル(A)を島成分ポリマーに、平均粒径が0.50ミクロンのアナターゼ型TiO2を0.3wt%含有した固有粘度(IV)0.55で5−ナトリウムスルホイソフタル酸7.3モル%共重合した共重合ポリエステル(B)を海成分ポリマーとし、溶解剤をアルカリ水溶液として、溶解剤に対する海成分ポリマーと島成分ポリマーの溶解速度差は50倍であった。これらを各々、エクストルーダーを用いて溶融後、島成分ポリマーの重量割合が80wt%、海成分ポリマーの重量割合が20wt%、海島型複合繊維の繊度が84dtexとなるように計量し、パックに導入し、島数8島、ホール数36の海島型複合用紡糸口金に流入させた各ポリマーは、口金内部で合流し、海島型を形成し、口金から吐出された。この時の紡糸温度290℃、口金から吐出された糸条は、空冷装置により冷却、油剤付与後、紡糸ドラフトが180となるように1500m/分の速度で引き取り、一旦巻き取ることなく延伸温度90℃、残留伸度25〜40%程度となるような倍率で延伸後、130℃で熱セットし84dtex−36フィラメントの海島型複合繊維をワインダーでドラムパッケージに巻き取った。このとき、冷却開始点は口金面から100mmに設定し、さらに給油位置を1100mmとした。紡糸張力は0.09cN/dtexであった。
海成分のTiO2含有率をそれぞれ0.1wt%、0.8wt%とした以外は実施例10に準じた。
海成分のTiO2含有率をそれぞれ0wt%、1.0wt%とした以外は実施例10に準じた。
海島型複合繊維の繊度、単糸数、1単糸当たりの島数を表2の通り変更した以外は実施例10に準じた。
海島型複合繊維の繊度、単糸数、1単糸当たりの島数を表2の通り変更した以外は実施例10に準じた。
海島型複合繊維の繊度、単糸数、1単糸当たりの島数を表2の通り変更した以外は実施例10に準じた。
海島型複合繊維の繊度、単糸数、1単糸当たりの島数を表2の通り変更した以外は実施例10に準じた。
ムラっぽく上質な風合いとは言えないレベルであり不合格であった。
島成分と海成分のポリマー重量割合を表3の通り変更した以外は実施例10に準じた。
島成分と海成分のポリマー重量割合を表3の通り変更した以外は実施例10に準じた。
島成分と海成分のポリマー重量割合を表3の通り変更した以外は実施例10に準じた。
Claims (5)
- 極細繊維であって、繊維の表面に微細な凹凸を有し、微細凹凸は次の(1)、(2)の要件を満足することを特徴とする極細ポリエステル繊維。
(1)微細凹凸の数が1〜19個/40μm2
(2)微細凹凸の大きさがアスペクト比10以下 - 極細繊維の繊維径が50〜6000nm、かつ、無機微粒子を1.0〜10.0wt%含有することを特徴とする請求項1記載の極細ポリエステル繊維。
- 易溶解性ポリエステルを海成分、難溶解性ポリエステルを島成分として、次の(1)から(4)を同時に満足することを特徴とする海島型複合繊維。
(1)島成分に含まれる無機微粒子の含有率が1.0〜10.0wt%
(2)島成分が海成分に覆われている
(3)島成分が海成分により分離されている
(4)海島型複合繊維の繊度が12〜300dtex、かつ単糸数が5〜400、かつ1単糸当たりの島数が4〜1200 - 海成分に含まれる無機微粒子の含有率が0.1〜0.8wt%である請求項3に記載の海島型複合繊維。
- 請求項1から請求項4いずれかに記載の繊維が少なくとも一部を構成する織編物。
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