JP4128367B2 - レボルビング型自動巻取機 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明はレボルビング型自動巻取機に関する。より詳しくは、本発明はマシンフレームに回動可能にターレットテーブルを設け、ターレットテーブルに糸条巻取用のボビンを装着する複数本のボビンホルダを回転可能に担持し、一方のボビンホルダに巻取った糸条が所定量に達すると、他方のボビンホルダに装着したボビンに切替えて糸条を巻取るようにしたレボルビング型自動巻取機に関する。
【0002】
【従来の技術】
紡糸機から紡出された糸条をボビンに連続的に巻取る場合には、レボルビング型の巻取機が一般的に使用されている。ここに、レボルビング型の巻取機は、マシンフレームに回動可能に設置されたターレットテーブルとターレットテーブルに回転可能に担持され、糸条巻取用のボビンを装着する2本のボビンホルダと、垂直方向に昇降する可動枠体と可動枠体に回転可能に取り付けられた接圧ローラと、糸条糸道に対して接圧ローラの上流側に位置するトラバース装置とにより構成されている。
【0003】
糸条巻取機においては、近年、生産量を増やすために多エンド化(1つのスピンドルに複数の巻取ボビンを装着可能とすること)の傾向にある。この場合に生産量当たりのスペース効率向上と設備費用の低減、巻姿の向上が要求される。この要求を満たすべく、巻取機を組み合わせて、一層多エンドにすることが提案されている。
【0004】
例えば、特開平1−267270号公報には、複数個の回動可能なターレットテーブルを1個の機枠に上下に配列した巻取機が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
生産量当たりのスペース効率向上と設備費用の低減要求に対して、特開平1−267270号公報に開示された配置では複数個のターレットテーブルを1個の機枠に上下に配列したに過ぎず、左右方向の機枠を狭くすることはなんら考慮されていない。
【0006】
【発明の目的】
本発明は、上述した従来技術に付随する問題点に鑑みて、左右方向のスペース効率を充分に高めることができ、生産量当たりのスペース効率向上と設備費用の低減、巻姿の向上が図れるレボルビング型自動巻取機を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明においては上記目的を、回動中心の回りに回動可能なターレットテーブルに少なくとも2つのボビンホルダが回転可能に装着され、該ボビンホルダに対して糸道上流側に設置された接圧ローラおよびトラバース装置を有し、一方のボビンホルダに装着したボビンに巻取った糸条が所定量に達すると、他方のボビンホルダに装着したボビンに切替えて糸条を巻取るようにしたレボルビング型自動巻取機において、前記ターレットテーブルが前記糸道を挟んでその両側にそれぞれ配置され、一方のターレットテーブルと他方のターレットテーブルの回動方向が互いに逆であり、一方のターレットテーブルに対して設置された接圧ローラと他方のターレットテーブルに対して設置された接圧ローラとの回転方向が互いに逆であるとともに前記接圧ローラおよびトラバース装置が前記ターレットテーブルの回動中心よりも上方に位置しており、互いの巻取パッケージが退避する方向に巻き太るにつれてターレットテーブルを回動するようにし、前記ボビンへの糸条の巻き始めから巻き終わりにおいて、糸条の前記接圧ローラへの接触角度(プリント角)が略一定となるように、巻取パッケージの巻き太りにつれてターレットテーブルが回動するようにしたことを特徴とする巻取機により達成する。
【0008】
本発明においては、ターレットテーブルが糸道を挟んでその両側にそれぞれ配置されているので、左右方向の間隔を充分に狭めることができる。
【0009】
しかも、本発明においては、接圧ローラおよびトラバース装置がターレットテーブルの回動中心よりも上方に位置されているので、ボビンに巻取られる糸条をコンタクトローラへ導く際にターレットテーブルの脇を通過させる必要がなく、このため左右のターレットテーブル間の間隔を充分に狭めることができ、左右方向のスペース効率を充分に高められる。
また、本発明においては、互いの巻取パッケージが退避する方向に巻き太るにつれてターレットテーブルを回動する構成としたことにより、左右方向のスペース効率を一層高められる。
更に、本発明においては、前記ボビンへの糸条の巻き始めから巻き終わりにおいて、糸条の前記接圧ローラへの接触角(プリント角)が略一定となるように、巻取パッケージの巻き太りにつれてターレットテーブルが回動するようにしたので、接圧ローラと糸条Yの摩擦抵抗を略一定とすることができる。加えて接触角度α(プリント角)を略一定にすると言うことは接圧ローラと巻取パッケージの接触角度を略一定にでき(接圧力が略一定)、巻姿および糸質が向上する。
【0011】
また、請求項3に記載のように、前記一方の接圧ローラと他方の接圧ローラとが共通の1つの昇降枠体に支持されるとともに、それぞれの接圧ローラが該昇降枠体に対して独立して移動可能であることにより、双方の接圧ローラに接触する巻取パッケージの巻径の差を補正でき、望ましい。
【0013】
また、請求項4に記載のように、前記ターレットテーブルに回動させる駆動手段が設けられ、前記2つのターレットテーブルの駆動手段が共通していることが装置をコンパクトとでき好ましい。
【0015】
更に、本発明においては、2つのターレットテーブルが糸道を挟んでその両側にそれぞれ配置されていればよく、糸条送給装置からトラバース装置まで小間隙をあけて近接した平行な糸道に沿って糸条を案内してもよい。
【0016】
しかし、請求項5に記載し且つ実施例に示したように、一方のターレットテーブルのボビンホルダに装着されたボビンに巻取られる糸条と他方のターレットテーブルのボビンホルダに装着されるボビンに巻取られる糸条とが一緒にトラバース装置まで案内され、トラバース装置で綾振られた後にそれぞれの接圧ローラへ送給されるようになっていることが好ましい。
【0017】
この構成とすることにより、左右のユニットを一層近接させることができ、更に、糸送りローラなどの送給部材からトラバース装置までの部材を左右のユニットで共通に使用でき、全体としての設備費用を一層低減できる。
【0018】
更に本発明においては、請求項6に記載のように、前記一方のターレットテーブルのボビンホルダに装着されるボビンの糸捕捉用溝の位置をボビンホルダの奥側位置とし、前記他方のターレットテーブルのボビンホルダに装着されるボビンの糸捕捉用溝の位置をボビンホルダの手前側位置とし、それぞれの糸捕捉用溝に糸掛けする糸掛け部材が設けられていてもよい。これにより、後工程において通常行なわれるように、巻取られた糸条パッケージの向きを同方向としてクリールに供給すると、糸条パッケージからの糸条の解除方向が同方向になるので、糸条パッケージのトランスファーテールと次のパッケージの端糸を支障なくトランスファー連結でき、糸条の解舒方向も同方向とできるというメリットがある。
【0019】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図示した添付図面を参照して、本発明を詳細に説明する。なお、図面において、図1は本発明に係わるレボルビング型自動巻取機の1実施例の正面図であり、図2はその側面図である。また、図3は、この実施例に係る装置の初期糸掛け時の作動手順を時系列的に示す図である。図4は、この実施例に係る装置の糸切替時の作動手順を時経列的に示す図である。図5および図6は糸捕捉溝へ糸を係合する時の糸の屈曲状態の概略図である。図7は、実施例に係る装置の幾何学的な位置関係を示す図である。
【0020】
図1および図2において、符号1はマシンフレームを示し、本実施例においてマシンフレーム1はユニットとして構成されている。マシンフレーム1の本体は直方体形状をしており、マシンフレーム1の底部には前方(図2の左側)の作業スペース近傍まで延在するベース2が設けられている。
【0021】
マシンフレーム1の前面には円板形状のターレットテーブル3、3′が水平方向に延在する中心軸線の回りに回動可能に設けられている。両ターレットテーブル3、3′の中心軸線は水平方向(図1の左右方向)に間隔を開けている。各ターレットテーブル3、3′はモータ等の駆動手段(図示せず)に連結されており、駆動手段により回動される。なお、2つのターレットテーブル3、3′の駆動手段を電気的または機械的に連結して、両ターレットテーブル3、3′が共通の1つの駆動手段により駆動されるようにして、設備全体をコンパクトしてもよい。
【0022】
ターレットテーブル3、3′には、その中心軸線に平行、すなわち、図1の紙面に垂直な方向(図2の紙面方向)にそれぞれ2本のボビンホルダ4、5および4′、5′が回転可能に突設されている。ボビンホルダ4、5、4′、5′はそれぞれモータのような駆動装置(図示せず)に連結されており、所定の速度で回転させられるようになっている。本実施例のボビンホルダ4、5、4′、5′にはそれぞれ8個のボビン6が装着可能である。
【0023】
図1に示すように、マシンフレーム1の内部に2本のスライドレール7が垂直に設けられ、スライドレール7に沿って昇降枠体8が流体シリンダ(図示せず)により昇降可能である。
【0024】
昇降枠体8には、接圧ローラ9、9′およびトラバース装置10が担持されている。接圧ローラ9、9′は、昇降枠体8に対してそれぞれ独立して移動可能(揺動可能または直線状移動可能)に支承されており、ボビンホルダ4、5、4′、5′に装着されたボビン6またはその上に形成された糸層に接触する。接圧ローラ9、9′は、ボビンホルダ4、5、4′、5′に装着されたボビン6に糸条Yを巻取る際に、糸条Yをボビン6へ送るとともに圧接して、パッケージの形状を良くするとともに、パッケージ硬度を高めることを目的としてパッケージ表面に接触させられている。
【0025】
本実施例においては、巻取機の上方に設置された供給ローラなどの糸条供給手段(図示せず)からトラバース装置10までは、両ターレットテーブル3、3′に装着されたボビン6に巻き取られる両糸条Yを一緒に送給し、トラバース装置をでた後でそれぞれに分けるようになっている。
【0026】
本実施例においては昇降枠体8は1つであり、この1つの昇降枠体8にそれぞれ独立して、2つの接圧ローラ9、9′が揺動可能に支承されている。この構成とすることにより、ターレットテーブル3、3′のボビンホルダ4、5、4′、5′上のボビンに形成されたパッケージの巻径の差を補正できる。
【0027】
トラバース装置10は、糸条Yをボビン6の軸方向に綾振るトラバースガイドおよびトラバースガイドを綾振り駆動させるトラバースカムからなり、トラバースカムが駆動装置(図示せず)により回転され、トラバースカムの溝に係合したトラバースガイドがトラバース範囲内で糸条Yをボビン6の軸方向に往復運動させる。
【0028】
なお、実施例ではトラバースカム方式のトラバース装置10を採用したが、互いに逆方向に回転する回転羽根からなる回転ブレード方式のトラバース装置等の公知のトラバース装置をを用いてもよい。
【0029】
マシンフレーム1の上面にくの字状断面(図1参照)をしたプレート11、11′が揺動可能に支承されており、プレート11、11′は、マシンフレーム1の上方の復帰位置(図1に示す位置)から糸切替え時の作動位置(図4(c)参照)まで流体圧シリンダ(図示せず)により移動可能である。プレート11、11′の先端には糸案内ガイド12、12′と糸道規制ガイド13、13′とが取着されている。
【0030】
糸案内ガイド12、12′と糸道規制ガイド13、13′とは、マシンフレーム1の前面から作業スペース近傍まで、ボビンホルダ4、5、4′、5′の軸線に平行に(図1の紙面に垂直な方向に)延在しており、前述した流体圧シリンダ(図示せず)によるプレート11、11′の移動とともに図1の紙面に平行に移動可能である。
【0031】
糸道規制ガイド13、13′は糸条Yをトラバース装置10のトラバースガイドから外して所定量の糸条Yが巻かれているパッケージ(満巻パッケージ)の端面から糸条Yが落ちないように糸道を規制する。糸道規制ガイド13、13′により糸道を規制された糸条は、糸案内ガイド12、12′によりボビンホルダ4、5、4′、5′に装着されたボビン6に形成された糸捕捉溝6aに対応する位置へ導かれ、糸条Yは糸捕捉溝6aに一致するように規制される。
【0032】
また、マシンフレーム1の下面にL字形状をしたプレート14、14′の下端部が揺動可能に支承されており、プレート14、14′は、流体圧シリンダ(図示せず)により、マシンフレーム1の中央部下方の復帰位置(図1、図3(c)に示す位置)から初期糸掛け時の作動位置(図3(b)に示す位置)まで移動する。プレート14、14′は、マシンフレーム1の前面から作業スペース近傍までボビンホルダ4、5、4′、5′の軸線に平行に(図1の紙面に垂直な方向に)延在しており、その先端には、ボビンホルダ4、5、4′、5′に装着されたボビン6に形成された糸捕捉溝6aに対応した位置に初期糸掛けガイド15、15′が取着されており、初期糸掛けガイド15、15′はプレート14、14′とともに復帰位置と初期糸掛け時の作動位置との間を移動可能である。
【0033】
本実施例においては、図5に示すように図1において右側のターレットテーブル3のボビンホルダ4、5に装着されるボビン6の糸捕捉用溝6aの位置をボビンホルダ4、5の奥側位置(マシンフレーム1側)としており、図6に示すように図1において左側のターレットテーブル3′のボビンホルダ4′、5′に装着されるボビン6の糸捕捉用溝6aの位置をボビンホルダ4′、5′の手前側位置(作業スペース側)としている。なお、ターレットテーブル3、3′とボビン6の糸捕捉用溝6aの位置との関係は上述と逆にしてもよい。また、場合に因っては、ターレットテーブル3、3′のボビンホルダ4、5、4′、5′に装着されるボビン6の糸把持溝6aをともに奥側位置(マシンフレーム1側)または手前側位置(作業スペース側)としてもよい。
【0034】
上述した糸案内ガイド12、12′および初期糸掛けガイド15、15′は、本発明の糸掛け部材であり、対応するボビンホルダ4′、5′に装着されたボビン6の糸捕捉用溝6aに対応する位置に糸条Yを案内するように設置されている。
【0035】
以下、図3を参照してこの実施例装置の初期糸掛け時(紡出開始時等に糸条Yをボビンに糸掛けする時)の作動を、そして、図4を参照して満巻ボビンの切替え時(満巻ボビンから空ボビンへの巻取り糸条Yの切替え時)の作動について説明する。
【0036】
<初期糸掛け時>
紡出開始時等に糸条Yをボビンに糸掛けする初期糸掛け時においては、ボビンホルダ4が時計方向に回転され、ボビンホルダ4′が反時計方向に回転される。それぞれのボビンホルダ4、4′の回転数が所定の回転数(糸掛けに適する回転数)に到達すると、流体シリンダ(図示しない)により、初期糸掛けガイド15、15′をボビンホルダ4、4′に近づく方向に作動させ、糸条Yをボビンホルダ4、4′に装着したボビン6の糸捕捉溝に係合させ、糸捕捉溝の把持力だけでなく、糸条走行方向とボビン6の回転方向の相対速度により糸条Yを切断し、ボビンホルダ4、4′に装着したボビン6に糸条Yを巻取る。
【0037】
以下、その作動、特に、初期糸掛けガイド15、15′の作動を、図3に従い説明する。
【0038】
糸条Yは巻取機の上流に位置する糸条送給ローラから送給される。送給される糸条Yをトラバース装置10の近傍に設けた糸外しガイド(図示せず)によりトラバース装置10から外した状態で、その先端をサクションガンのような糸把持手段(図示せず)で把持し、糸把持手段をマシンフレーム1下方の中央に位置させる。それとともに、ボビンホルダ4、4′に装着したボビン6と接圧ローラ9、9′が接触する位置まで各ターレットテーブル3、3′を回動させる。
【0039】
その後、図3(a)に示すように、流体圧シリンダ(図示しない)によりプレート14を時計方向に、プレート14′を反時計方向に揺動させて、初期糸掛けガイド15、15′を初期糸掛け位置に移動させる。この状態で、作業者は糸把持手段に引き取られている糸条Yをトラバース装置の近傍の糸外しガイドの位置から分岐し、手に持った糸掛けガイドを操作して、それぞれの糸条Yを初期糸掛けガイド15、15′に糸通しする。
【0040】
その後、上述した回転方向へボビンホルダ4、4′の回転を開始させ、また、接圧ローラ9、9′はボビンホルダ4、4′と逆方向へ回転させ、それぞれを所定の回転数(糸掛けに適する回転数)とする。この状態は、これから初期の糸掛けを行う直前の状態である。
【0041】
流体圧シリンダ(図示しない)によりプレート14、14′を更に揺動させて、初期糸掛けガイド15、15′をボビンホルダ4、4′に一層近付ける方向に作動させ、ボビンホルダ4、4′に装着したボビン6の糸捕捉溝6aに糸条Yを係合させ、図3(b)の状態とする。
【0042】
次いで、流体圧シリンダ(図示しない)により、プレート14、14′および初期糸掛けガイド15、15′を前述と逆方向に揺動させて復帰位置に戻し、図3(c)の状態とする。
【0043】
以上により、紡出開始時等における糸条Yのボビン6への初期糸掛けが完了し、以下、ボビン6上に糸条Yが巻取られる。
【0044】
なお、本実施例では、初期糸掛けガイド15、15′をボビンホルダ4、4′に近付ける方向に作動させて初期糸掛けしたが、ターレットテーブル3、3′を通常の切替動作と逆方向に回動させ、ボビンホルダ4、4′を初期糸掛けガイド15、15′に近付ける方向に移動させる動作を加えて、ボビンホルダ4、4′に装着したボビン6の糸捕捉溝に糸条Yを係合させてもよい。
【0045】
<満巻ボビン切替え時>
次に、この実施例装置の満巻ボビンの切替え時(満巻ボビンから空ボビンへの巻取り糸条Yの切替え時)の作動について説明する。
【0046】
ボビンホルダ4が時計方向に、ボビンホルダ4′が反時計方向に回転して、ボビンホルダ4、4′に装着したボビン6に糸条Yが巻取られる。ボビン6への糸条Yの巻き始めから巻き終わりの間、昇降枠体8が所定の位置まで上昇後、駆動装置(図示しない)により、ターレットテーブル3を時計方向に、ターレットテーブル3′は反時計方向に微速回動させて、糸条Yの接圧ローラ9、9′への接触角(プリント角)が略一定となるようにする。
【0047】
巻取った糸条Yが所定量に達すると(満巻になると)、ターレットテーブル3を時計方向に、ターレットテーブル3′を反時計方向に高速回動し、後述するように糸案内ガイド12、12′と糸道規制ガイド13、13′が、それぞれボビンホルダ4とボビンホルダ5の間、ボビンホルダ4′とボビンホルダ5′の間に進出してボビンホルダに装着したボビン6の糸捕捉溝に糸条Yを係合させる。空ボビンの糸条Yを糸捕捉溝に把持力したままで空ボビンを回転させることにより満巻ボビンから空ボビンに連なる糸条Yを切断し、今度はボビンホルダ5、5′に装着したボビン6に糸条Yを巻取る。
【0048】
以下、その作動、特に、糸案内ガイド12、12′と糸道規制ガイド13、13′の作動を、図4に従い説明する。
【0049】
図4(a)はボビンホルダ4、4′に装着したボビン6に巻取った糸条Yが所定量(満巻)に達し、これから糸条Yの切替えを行う直前の状態を示している。この状態では、プレート11、11′、糸案内ガイド12、12′および糸道規制ガイド13、13′は流体圧シリンダ(図示しない)により糸条Yと干渉しない位置に位置されている。
【0050】
駆動装置(図示しない)により、ターレットテーブル3を時計方向に、ターレットテーブル3′を反時計方向に回動し、図4(b)の状態とする。ここで、流体圧シリンダ(図示しない)により、プレート11、11′、糸案内ガイド12、12′および糸道規制ガイド13、13′を復帰位置から作動位置へ移動を開始させ、図4(c)の状態とする。
【0051】
次いで、所定量の糸条Yが巻かれているパッケージ(満巻パッケージ)の端面から糸条Yが落ちないように、糸道規制ガイド13、13′により糸道を規制しておいて、糸案内ガイド12、12′をボビンホルダ4,4′の軸線方向に移動させて、糸条Yをボビン6の糸捕捉溝6aに係合させる。
【0052】
この状態で、前述し、また後に詳述するようにして、ターレットテーブル3、3′および接圧ローラ9、9′を制御しつつ、ボビンホルダ5、5′に装着され糸捕捉溝6aに糸条Yが係止されたボビン6上に糸条Yの巻取を行なう。
【0053】
ボビンホルダ4、4′に装着されたボビン6(満巻ボビン)に巻取られた糸条Yは、ボビンホルダ4、4′の回転が停止した後に、ボビンホルダ4、4に平行し、その軸線方向に移動可能なプッシャからなる玉揚げ装置(図示しない)により巻取機の外(作業スペース側)へ排出される。
【0054】
プレート11、11′、糸案内ガイド12、12′および糸道規制ガイド13、13′は、ボビンホルダ5、5′に装着したボビン6への糸掛け、ボビンホルダ4、4′に装着したボビン6に巻取った満巻パッケージの排出およびボビンホルダ4、4′への空ボビンの装着など所定の作業が完了した時点で、それぞれ作動位置から復帰位置に戻される。
【0055】
<巻き太り回動>
次に、この実施例装置の巻き始めから巻き終わりの作動について説明する。図7にボビンホルダ4、4′の巻き始め位置を破線で示す。
【0056】
本実施例では、巻き始め位置におけるボビンホルダ4、4′のセンター間距離Lを満巻パッケージの外径Dpよりも小さく設定している。従って、ボビンホルダ4、4′を巻き始め位置に位置させたままで巻き終わりまで糸条Yを巻取ると、ボビンホルダ4の満巻パッケージとボビンホルダ4′の満巻パッケージとが干渉(接触)して糸条パッケージを損傷する。
【0057】
そこで、本実施例では、巻取中常時、両ターレットテーブル上の巻取パッケージ間に所定の間隔が保てるように互いの巻取パッケージが退避する方向にパッケージが巻き太るにつれてターレットテーブル3、3′を回動させている。
【0058】
こうすることにより、トラバース装置をコンパクトにし、接圧ローラ間の距離Sが小さくなるとともに、満巻パッケージの大きさが大きくても、全ての巻径において接圧ローラと巻取パッケージを接触させることができる。
【0059】
また、従来は巻き始めから巻き終わりにかけてターレット角度θをほぼ一定としていた(図8の一点鎖線参照)のに対し、本実施例においては、巻き始めのターレット角度θを大きく設定し、巻き始めから巻き終わりにかけて、巻径の増加につれターレット角度θを図8の実線で示すように減少させている。
【0060】
このようにターレット角度θを変化させながら、巻き太ることにより、図9に示すように、糸条Yの接圧ローラへの接触角度α(プリント角:図7参照)を略一定にして巻取ることができる。
【0061】
比較のために、ボビンホルダを巻き終わり位置で固定して巻いた場合の糸条Yの接圧ローラへの接触角度α(プリント角)を一点鎖線で示す。この場合には、小巻から満巻につれて徐々に糸条の接圧ローラへの接触角度α(プリント角)が減少している。また、巻径215mmで糸条の接圧ローラへの接触角度α(プリント角)が180°となり、それ以下の巻径では接圧ローラと巻取パッケージが接触しない状態となる。
【0062】
糸条の接圧ローラへの接触角度α(プリント角)を略一定に巻取ると、接圧ローラと糸条Yの摩擦抵抗を略一定とすることができる。加えて接触角度α(プリント角)を略一定にすると言うことは接圧ローラと巻取パッケージの接触角度を略一定にでき(接圧力が略一定)、巻姿および糸質が向上する。
【0063】
【発明の効果】
本発明においては、ターレットテーブルが糸道を挟んでその両側にそれぞれ配置されているので、左右方向の間隔を充分に狭めることができる。
【0064】
しかも、本発明においては、接圧ローラおよびトラバース装置がターレットテーブルの回動中心よりも上方に位置されているので、ボビンに巻取られる糸条をコンタクトローラへ導く際にターレットテーブルの脇を通過させる必要がなく、このため左右のターレットテーブル間の間隔を充分に狭めることができ、左右方向のスペース効率を充分に高められる。
【0065】
本発明においては、2つのターレットテーブルが糸道を挟んでその両側にそれぞれ配置されていればよく、糸条送給装置からトラバース装置まで小間隙をあけて近接した平行な糸道に沿って糸条を案内してもよい。
【0066】
更に実施例に示したように、一方のターレットテーブルのボビンホルダに装着されたボビンに巻取られる糸条と他方のターレットテーブルのボビンホルダに装着されるボビンに巻取られる糸条とが一緒にトラバース装置まで案内され、トラバース装置で綾振られた後にそれぞれの接圧ローラへ送給されるようになっていることが好ましい。
【0067】
この構成とすることにより、左右のユニットを一層近接させることができ、更に、糸送りローラなどの送給部材からトラバース装置までの部材を左右のユニットで共通に使用でき、全体としての設備費用を一層低減できる。
【0068】
本発明においては、一方のターレットテーブルに装着した巻取側のボビンホルダと他方のターレットテーブルに装着した巻取側のボビンホルダの距離を、巻取可能な最大巻径のパッケージ外径より小さくして糸条を巻き始め、それぞれの巻取側のボビンホルダに巻き取られるパッケージの外周の間隔を所定の値に保ちながら、互いの巻取パッケージが退避する方向に巻き太るにつれてターレットテーブルを回動するようにした巻取機とすることが好ましい。この構成とすることにより、左右方向のスペース効率を一層高められる。
【0069】
また、一方の接圧ローラと他方の接圧ローラとが共通の1つの昇降枠体に支持されるとともに、それぞれの接圧ローラが該昇降枠体に対して独立して移動可能であることにより、双方の接圧ローラに接触する巻取パッケージの巻径の差を補正でき、望ましい。
【0070】
また、ボビンへの糸条の巻き始めから巻き終わりにおいて、糸条の前記接圧ローラへの接触角(プリント角)が略一定となるように、巻取パッケージの巻き太りにつれてターレットテーブルが回動することが好ましい。
【0071】
また、ターレットテーブルに回動させる駆動手段が設けられ、2つのターレットテーブルの駆動手段が機械的または電気的に共通していることが装置をコンパクトとでき好ましい。
【0072】
また、一方のターレットテーブルに装着したボビンホルダで巻取る糸条と他方のターレットテーブルに装着したボビンホルダで巻取る糸条を順次糸ガイドに案内した後に作動させて両ボビンホルダ上のボビンに同時に糸掛けする糸掛け装置が、2つのターレットテーブルの中央部に設けられていると、糸掛け時間が短縮され、同時糸掛けができるので好ましい。
【0073】
更に本発明においては、一方のターレットテーブルのボビンホルダに装着されるボビンの糸捕捉用溝の位置をボビンホルダの奥側位置とし、他方のターレットテーブルのボビンホルダに装着されるボビンの糸捕捉用溝の位置をボビンホルダの手前側位置とし、それぞれの糸捕捉用溝に糸掛けする糸掛け部材が設けられていることが好ましい。これにより、後工程において、巻取られた糸条パッケージを同方向としてクリールに供給すると、糸条パッケージからの糸条の解除方向が同方向になるので、糸条パッケージのトランスファーテールと次のパッケージの端糸を支障なくトランスファー連結できるというメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わるレボルビング型自動巻取機の1実施例の正面図であり、
【図2】図1に示す実施例の側面図である。
【図3】図1、図2に示す実施例の初期糸掛け時の作動手順を時系列的に示す図である。
【図4】図1、図2に示す実施例の糸切替時の作動手順を時経列的に示す図である。
【図5】ターレット8のボビンホルダ4または5に装着されたボビン6の糸捕捉溝6aへ糸条Yを係合させる時の糸条Yの屈曲状態の概略右側面図である。
【図6】ターレット8′のボビンホルダ4′または5′に装着されたボビン6の糸捕捉溝6aへ糸条Yを係合する時の糸条Yの屈曲状態の概略右側面図である。
【図7】実施例に係る装置の幾何学的な位置関係を示す図である。
【図8】実施例におけるターレット角度θと巻径との関係を示す線図である。
【図9】糸条Yの接圧ローラへの接触角度α(プリント角)と巻径との関係を示す線図である。
【符号の説明】
1 マシンフレーム
2 ベース
3、3′ ターレットテーブル
4、4′、5、5′ ボビンホルダ
6 ボビン
7 スライドレール
8 昇降枠体
9、9′ 接圧ローラ
10 トラバース装置
11、11′ プレート
12、12′ 糸案内ガイド
13、13′ 糸道規制ガイド
14、14′ プレート
15、15′ 初期糸掛けガイド
Y 糸条
Claims (6)
- 回動中心の回りに回動可能なターレットテーブルに少なくとも2つのボビンホルダが回転可能に装着され、該ボビンホルダに対して糸道上流側に設置された接圧ローラおよびトラバース装置を有し、 一方のボビンホルダに装着したボビンに巻取った糸条が所定量に達すると、他方のボビンホルダに装着したボビンに切替えて糸条を巻取るようにしたレボルビング型自動巻取機において、前記ターレットテーブルが前記糸道を挟んでその両側にそれぞれ配置され、一方のターレットテーブルと他方のターレットテーブルの回動方向が互いに逆であり、一方のターレットテーブルに対して設置された接圧ローラと他方のターレットテーブルに対して設置された接圧ローラとの回転方向が互いに逆であるとともに前記接圧ローラおよびトラバース装置が前記ターレットテーブルの回動中心よりも上方に位置しており、互いの巻取パッケージが退避する方向に巻き太るにつれてターレットテーブルを回動するようにし、前記ボビンへの糸条の巻き始めから巻き終わりにおいて、糸条の前記接圧ローラへの接触角度(プリント角)が略一定となるように、巻取パッケージの巻き太りにつれてターレットテーブルが回動するようにしたことを特徴とする巻取機。
- 前記一方のターレットテーブルに装着した巻取側のボビンホルダと他方のターレットテーブルに装着した巻取側のボビンホルダの距離を、巻取可能な最大巻径のパッケージ外径より小さくして糸条を巻き始め、前記それぞれの巻取側のボビンホルダに巻き取られるパッケージの外周の間隔を所定の値に保ちながら、互いの巻取パッケージが退避する方向に巻き太るにつれてターレットテーブルを回動するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の巻取機。
- 前記一方の接圧ローラと他方の接圧ローラとが共通の1つの昇降枠体に支持されるとともに、それぞれの接圧ローラが該昇降枠体に対して独立して移動可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の巻取機。
- 前記ターレットテーブルに回動させる駆動手段が設けられ、前記2つのターレットテーブルの駆動手段が共通していることを特徴とする請求項1または2に記載の巻取機。
- 一方のターレットテーブルのボビンホルダに装着されたボビンに巻取られる糸条と他方のターレットテーブルのボビンホルダに装着されるボビンに巻取られる糸条とが一緒にトラバース装置まで案内され、トラバース装置で綾振られた後にそれぞれの接圧ローラへ送給されるようになっていることを特徴とする請求項1または2に記載の巻取機。
- 前記一方のターレットテーブルのボビンホルダに装着されるボビンの糸捕捉用溝の位置をボビンホルダの奥側位置とし、前記他方のターレットテーブルのボビンホルダに装着されるボビンの糸捕捉用溝の位置をボビンホルダの手前側位置とし、それぞれの糸捕捉用溝に糸掛けする糸掛け部材が設けられていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の巻取機。
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