JP4127767B2 - 液状で保存可能な酵素サイクリングを用いた測定試薬 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液状で長期間保存が可能な酵素サイクリング法を用いた試薬に関する。
【0002】
【従来の技術】
検体中の成分を測定する技術は日々進歩しており、技術の進歩に伴い、検体は微量化し、検出感度は向上してきている。これらの技術の進歩は、少量しか入手できない貴重な試料の分析を可能とし、また、存在量の少ない微量成分の検出を可能としてきた。
これらの技術には、分析機器に関する技術や分析方法に関する技術、使用される試薬に関する技術など、様々な技術が含まれる。
【0003】
このような技術の進歩により高感度分析を可能とした分析技術に、酵素反応を増幅して、対象物質を高感度に測定することができる酵素サイクリング法がある。この方法は、特公平2−34599や、特公平3−53919、特許第2579319号等に開示されている。基本となる反応原理の一例を図1に示す。図1に示すとおり、当該反応系では、アンモニアとデアミド−NAD+からアデノシン5’−三リン酸(以下ATP)の存在下でNAD+合成酵素(以下NADS)を触媒として、NAD+が生じ、さらにグルコースおよびグルコース脱水素酵素(以下GlucDH)によりNADHが生成する。この時、テトラゾリウム塩およびジアホラーゼの存在により、NADHは酸化され、再びNAD+となり、そこから、グルコースおよびグルコース脱水素酵素(以下GlucDH)によりさらにNADHが生成する、いわゆるサイクリング反応が行なわれる。この例では、反応生成物であるホルマザンの吸光度を測定するが、他の例では、酵素サイクリング反応の基質を測定してもよい。
【0004】
この測定原理を使用して測定できる対象物質は、NADSの基質となるアンモニア、および酵素反応によってアンモニアを生じるクレアチニンや尿素等の物質、NADSの補酵素となるATPまたはその塩、および酵素反応によってATPが生じるクレアチンキナーゼ、ピルベートキナーゼなど種々の物質が挙げられる。これらの測定対象物質の中には、既に臨床検査の分野で日常的に測定されている物質もある。
一方、臨床検査の現場では、従来は不安定な成分を凍結乾燥し、必要時に緩衝液で溶解して使用する測定試薬が大半を占めていた。
【0005】
しかし、凍結乾燥品を溶解した試薬は、溶解後の安定性に対して配慮が欠けており、溶解後に性能が劣化する場合があるという問題があった。
一方、予め必要成分が溶解された液状で供給される試薬は、そのまま分析機器に設置できるため取り扱いやすく、液状での安定性を考慮した開発がなされているため、性能面での安定性が確保されているという利点がある。
そのため、現在では新たに発売される試薬は、特別な場合を除き大半が液状供給試薬であり、市場では液状供給試薬が主流となってきている。
【0006】
試薬の液状状態での安定性を保つ方法としては、防腐剤は別にして、全ての試薬に共通する方法はなく、測定対象物質に対する測定方法に応じて、個別に安定化の工夫がなされている。しかし、未だ液状での安定化が困難であり、凍結乾燥品として流通している試薬や、その測定原理は魅力があるものの、成分が不安定であり用時に試薬の調製が必要なため、その煩わしさから市場に普及していない測定方法による測定試薬がある。
【0007】
それらの一つに酵素サイクリング法を利用した測定試薬がある。酵素サイクリング法は、生じる物質を酵素サイクリング反応により増幅するため、通常のNADHの産生量をモニターする方法より、格段に高感度に測定が可能となる、利用価値の高い方法である。
酵素を利用した測定方法では、経時的な測定値の安定性を確保する目的で、使用する酵素などの成分の劣化を考慮し、それらを過剰量添加するのが一般的である。しかし、酵素サイクリング反応では、該成分を過剰量加えると反応が急速に進行し、分析機器の有効測定範囲を超過してしまうことが多い。これを防ぐために各成分の濃度を最適な組成のまま減少させることが一般的に行なわれるが、各酵素の劣化速度が一様でないため、長期にわたり測定値の安定性を確保することが難しかった。また、酵素サイクリング法は試薬中に様々な成分が必要であり、成分同士の干渉を抑え難く、その感度および各成分を安定に保ったまま液状状態で試薬を保管するのが困難であった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の課題は、上記問題を解決し、酵素サイクリング反応を用いた検体中の成分の測定において、正確な測定が好適に行なえるように該反応を簡便に調節できる測定試薬を提供することにある。また、本発明は、該試薬を安定化し、長期保存可能な液体として供給することも目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を進める中で、酵素サイクリング反応を利用した測定試薬、特にNAD+合成酵素、ジアホラーゼ、NAD+を補酵素とする脱水素酵素を含む該反応を用いた測定試薬において、律速酵素以外の酵素を過剰量添加する一方、律速酵素を、酵素サイクリング反応の反応開始後分析機器の測定範囲を超過しない時間内において、検体成分の濃度に依存して変化する反応生成物または基質の吸光度または透過率が時間とともに比例的に増加または減少する様子が確認できる量添加することで、該反応を良好に調節できることを見出した。また、測定試薬を、ジアホラーゼを含むpHが7.5以上の第1の液状試薬と、ジアホラーゼの基質を含むpHが7.5未満の第2の液状試薬とを含み、ジアホラーゼおよびジアホラーゼの基質以外の測定に必要な成分は、該成分にとって安定なpHの前記第1または第2の試薬のいずれかに夫々含まれるように構成し、さらに律速酵素を安定化する処置を施すことにより、酵素サイクリング法を用いた試薬の感度が液状でも長期間変化しないことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、酵素サイクリング反応を用いて検体中の成分を、該成分の濃度に依存して変化する単位時間当たりの反応生成物または基質の吸光度または透過率の変化量により測定する測定試薬であって、測定試薬中の律速酵素の含有量が、該反応の反応開始後分析機器の測定範囲を超過しない時間内において、反応生成物または基質の吸光度または透過率が時間とともに比例的に増加または減少する様子が確認できる量であり、律速酵素以外の酵素の含有量が過剰量である試薬に関する。
また本発明は、検体中の成分がアンモニア、ATPまたは酵素反応によりアンモニアもしくはATPを生じる物質である前記試薬に関する。
【0011】
本発明はさらに、NAD+合成酵素、ジアホラーゼ、NAD+を補酵素とする脱水素酵素を含む前記試薬に関する。
本発明はまた、律速酵素が、NAD+を補酵素とするグルコース脱水素酵素である前記試薬、および、該酵素を安定化するために塩化ナトリウムをさらに含む前記試薬に関する。
さらに本発明は、ジアホラーゼを含むpHが7.5以上の第1の液状試薬と、ジアホラーゼの基質を含むpHが7.5未満の第2の液状試薬とを含み、ジアホラーゼおよびジアホラーゼの基質以外の測定に必要な成分は、該成分にとって安定なpHの前記第1または第2の試薬のいずれかに夫々含まれる前記試薬に関する。
【0012】
また本発明は、ジアホラーゼの基質がテトラゾリウム塩である前記試薬に関する。
本発明はさらに、テトラゾリウム塩が2−(2−メトキシ−4−ニトロフェニル)−3−(4−ニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルホフェニル)2H−テトラゾリウム一ナトリウムである前記試薬に関する。
本発明はまた、酵素サイクリング反応を用いて検体中の成分を、該成分の濃度に依存して変化する単位時間当たりの反応生成物または基質の吸光度または透過率の変化量により測定する方法であって、測定試薬中の律速酵素以外の酵素を過剰量添加する一方、律速酵素を、酵素サイクリング反応の反応開始後分析機器の測定範囲を超過しない時間内において、反応生成物または基質の吸光度または透過率が時間とともに比例的に増加または減少する様子が確認できる量添加して調節することを含む方法にも関する。
【0013】
酵素サイクリング法は多くの測定対象物質に使用できるとともに、高感度な測定を可能とし、検体の微量化が図れ、さらに、微量物質に関しては正確かつ精密な測定を可能とすることができる。しかしこれまで、酵素サイクリング反応を正確に測定が可能な様式に調節することの困難性、成分の種類の多さ、ならびに試薬の液状での安定化における困難性から、酵素サイクリング法を用いた試薬は普及していなかった。
本発明は、律速酵素以外の酵素を過剰量添加する一方、律速酵素の添加量を調節することにより、酵素サイクリング反応を適切なレベル、つまり、酵素サイクリング反応の反応開始後分析機器の測定範囲を超過しない時間内において、検体成分の濃度に依存して変化する反応生成物または基質の吸光度または透過率が時間とともに比例的に増加または減少する様子が確認できるレベルに制御し、また、各成分同士の干渉を抑え、律速酵素を安定化することにより、試薬の安定性および使用の簡便化を可能にするものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明は、以上のとおりの特徴を持つものであるが、以下に詳しくその実施の形態について説明する。本発明の1つの態様においては、NADS、ジアホラーゼ、NAD+を補酵素とする脱水素酵素を使用した酵素サイクリング反応を利用し、反応生成物であるホルマザンの吸光度を測定することにより、測定対象物質の濃度を評価する。試薬中には測定に必要な成分として、NADSおよびNADSの基質であるデアミド−NAD+、NADSの活性化剤であるマグネシウムまたはマンガンなどの金属塩、ジアホラーゼおよびジアホラーゼの基質となるテトラゾリウム塩、NAD+を補酵素とする脱水素酵素およびNAD+を補酵素とする脱水素酵素の基質が共通に必要である。
【0015】
上記態様で測定することができる対象物質は、アンモニア、ATPなどが挙げられる。さらに、酵素反応によってアンモニアまたはATPを生じる物質であれば特に限定はない。たとえば、アンモニアを生じる物質としては、クレアチニン、尿素、ニコチンアミド、L−グルタミニル−ペプチド、L−アルギニン、グアニン、アデノシン、L−スレオニン、L−アスパラギン酸、L−メチオニンなどがあり、これらの物質からアンモニアを生じさせる酵素もその対象となる。ATPを生じる物質としてはアデノシン5’−二リン酸(以下ADP)、アデノシン5’−一リン酸(以下AMP)などがあり、酵素としては、クレアチンキナーゼ、ピルベートキナーゼ、アセテートキナーゼ、カルバメートキナーゼ、アスパルテートキナーゼ、ホスホグリセレートキナーゼまたはアルギニンキナーゼなどが挙げられ、これらの基質もまた測定対象となる。
【0016】
本発明の1つの態様で用いる酵素サイクリング法には、対象物質別に以下のような物質の添加が必要になる。
(1)アンモニアの測定に際しては、NADSの補酵素となるATPまたはその塩が必要となる。ATPの塩は、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属塩、マンガンなどの金属塩をいい、その入手しやすさからナトリウム塩が好適に用いられる。
(2)ATPまたはその塩の測定の際には、NADSの基質となるアンモニアまたはその塩が必要となる。アンモニアの塩は、水溶性のアンモニウム塩が好ましく、塩化アンモニウム、アンモニア水、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウムなどの無機アンモニウム塩、クエン酸アンモニウムなどの有機アンモニウム塩が例示される。十分な純度を持つ上、低価格である硫酸アンモニウムが好適に用いられる。
【0017】
(3)酵素反応によってアンモニアを生じるクレアチニン、尿素等の前記物質またはそれらの物質と反応しアンモニアを生じさせる酵素の測定には、ATPに加え、測定対象物質がアンモニアを生じる反応に必要な酵素、補酵素、活性化剤、基質等が必要となる。
(4)酵素反応によってATPを生じさせるADP、AMP等の物質または基質と反応してATPを生じさせるクレアチンキナーゼ、ピルベートキナーゼ等の基質または酵素の測定には、測定対象物質がATPを生じる反応に必要な酵素、補酵素、活性化剤、基質等が必要となる。
【0018】
(3)、(4)における反応に必要な酵素、補酵素、活性化剤および基質は、対象物質によって異なる。例えばクレアチニンを測定する場合には、クレアチニンよりアンモニアを生じさせる酵素としてクレアチニンデイミナーゼが必要であり、尿素を測定する場合には、尿素よりアンモニアを生じさせるウレアーゼが必要となる。また、クレアチンキナーゼを測定するには、基質としてクレアチンリン酸、およびADP、活性化剤としてN−アセチルシステインなどのチオール化合物、マグネシウム、カルシウム、マンガンなどの金属イオンが必要となり、ピルベートキナーゼを測定する場合には、基質となるホスホエノールピルビン酸およびADP、活性化剤としてマグネシウムなどの金属イオンが必要となる。
【0019】
本発明のこの態様において、NADSは律速酵素ではないため反応速度が最大になればよく、必要以上の量が含まれていればよい。試薬保存期間中の酵素活性の失活を考慮して、反応最終濃度として 500〜10,000U/Lの添加が好ましい。特に好ましくは1,000〜5,000 U/Lであり、最も好ましくは、1,500〜2,500 U/Lである。
NADSの基質には、デアミド−NAD+、デアミド−NADP+などが用いられる。デアミド−NAD+を用いた場合、反応最終濃度として、0.05〜10.0mmol/lが好ましく、0.06〜2.0mmol/lがより好ましく、0.1〜0.5mmol/lがさらに好ましい。
【0020】
NADSの活性化剤は、カリウムなどのアルカリ金属塩、マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩、マンガンなどの金属塩をいい、NADSをより活性化させるマグネシウム塩またはマンガン塩が好ましい。活性化剤の濃度は、反応最終濃度として0.1〜100mmol/lが好ましく、0.2〜50mmol/lがより好ましく、0.5〜5mmol/lがさらに好ましい。
【0021】
本態様においては、ジアホラーゼおよびNAD+を補酵素とする脱水素酵素はいずれかが律速酵素になり得るが、酵素の安定性を考慮すると、NAD+を補酵素とする脱水素酵素を律速酵素とした方が良い。その場合、ジアホラーゼは必要量以上の量が添加されていれば良く、試薬保存期間中の酵素活性の失活を考慮して、反応最終濃度として100〜5,000 U/Lの添加が好ましい。特に好ましくは200〜3,000U/Lであり、最も好ましくは、500〜2,000 U/Lである。
【0022】
ジアホラーゼの基質となるテトラゾリウム塩は、生成物の溶解性や分析機器の汚染を考慮し、水溶性ホルマザンとなるものが好ましく、より好ましくは2−(2−メトキシ−4−ニトロフェニル)−3−(4−ニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルホフェニル)2H−テトラゾリウム一ナトリウム(以下WST−8)、2−(4−インドフェニル)−3−(4−ニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルホフェニル)−2H−テトラゾリウム一ナトリウム、2−(4−インドフェニル)−3−(2,4−ジニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルホフェニル)−2H−テトラゾリウム一ナトリウムであり、さらに好ましくはWST−8である。テトラゾリウム塩は反応最終濃度として0.01〜5.0mmol/lが好ましく、0.05〜2.0mmol/lがより好ましく、0.2〜0.5mmol/lがさらに好ましい。
【0023】
NAD+を補酵素とする脱水素酵素としては、NAD+を補酵素として反応する酵素であればいずれでも良いが、グルコース脱水素酵素、乳酸脱水素酵素、アルコール脱水素酵素等、入手が容易で安価なものが好ましく、特に好ましくは、酵素自身が安定性に優れており、容易な安定化方法が報告されているグルコース脱水素酵素である。
【0024】
NAD+を補酵素とする酵素がグルコース脱水素酵素の場合、その必要量は、反応最終濃度として50〜5,000 U/Lの添加が好ましい。特に好ましくは100〜3,000U/Lであり、最も好ましくは、250〜2,000 U/Lである。
【0025】
グルコース脱水素酵素は比較的安定であるものの、さらに充分な安定化のために、その存在する試薬に塩化ナトリウムを添加することが好ましい。その添加濃度としては、25mmol/l以上であれば特に限定されないが、50〜2,000 mmol/lの範囲が好ましく、100〜500mmol/lの範囲が特に好ましい。
NAD+を補酵素とする脱水素酵素の基質は、脱水素酵素の種類により異なり、グルコース脱水素酵素を用いた場合はグルコースが、乳酸脱水素酵素を用いた場合は乳酸が、アルコール脱水素酵素を用いた場合はエチルアルコールがそれぞれ好適に用いられる。グルコース脱水素酵素を用いた場合、グルコース濃度は反応最終濃度として、5〜1,000mmol/lが好ましく、10〜200mmol/lがより好ましく、10〜100mmol/lがさらに好ましい。
【0026】
本態様では、ジアホラーゼはNADHの存在がなくとも、わずかではあるがテトラゾリウム塩と反応するという経験から、ジアホラーゼを含む試薬とジアホラーゼの基質を含む試薬とに分割して試薬の安定化を図っている。
ジアホラーゼを含む試薬のpHはその安定性を考慮し、pH7.5〜9.0が好ましく、特に好ましくはpH7.5〜8.5 である。
一方、ジアホラーゼの基質を含む試薬のpHは5.0〜7.4が好ましく、特に好ましくはpH6.0〜7.4である。
【0027】
これらの試薬への各成分の分配は、各成分のpHに対する安定性、共存する物質との反応性を考慮する必要があり、基本的には、基質と酵素は分別して存在させるべきである。
ジアホラーゼを含む試薬へは前記成分の内、NAD+を補酵素とする脱水素酵素の基質、ATP、デアミド−NAD+を含有させ、ジアホラーゼの基質を含む試薬へはNADS、NAD+を補酵素とする脱水素酵素、マグネシウムまたはマンガンの塩を含有させるのが好ましい。
【0028】
したがって、本態様の測定試薬は、たとえば、ジアホラーゼを含む試薬には、リン酸塩、グルコース、マグネシウム塩、ATP、デアミド−NAD+が含まれ、ジアホラーゼの基質を含む試薬には、リン酸塩、マグネシウム塩、ATP、NAD+合成酵素、グルコース脱水酵素が含まれる。
かかる測定試薬は、ジアホラーゼおよびジアホラーゼの基質が異なる試薬中に存在すれば、他の成分が安定である限り、2試薬系以上の多試薬系においても適用することができる。自動分析装置で測定を行なうことを考慮すると、2試薬系が最も好ましい。
【0029】
本発明による測定試薬の保存温度は、液状で保存可能で、試薬の安定性に影響を与えない温度であればよく、好ましくは0℃〜25℃であり、より好ましくは1℃〜15℃であり、さらに好ましくは2℃〜8℃である。
以下に実施例によって本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明の方法は、吸光度又は透過率の変化を測定できるものであればいずれの機器でもよく、自動分析装置、分光光度計、色彩計、比色計などを用いることができる。正確かつ簡便に測定するためには自動分析装置が好適である。
【0030】
【実施例】
〔実施例1〕
表1、表2に示す本発明による試薬、グルコース脱水素酵素を律速酵素とした場合にグルコース脱水素酵素を安定化する処置を施していない比較試薬A、および第2試薬にジアホラーゼとテトラゾリウム塩を共存させた比較試薬Bを用いて、37℃保存における相対感度の経時変化を比較した。
測定には日立7170S型自動分析装置を使用し、表3に示す測定条件にて測定を行った。KFactorには10000を入力し、測定結果には1分間当たりの吸光度変化量(mAbs./min)を出力させた。
【0031】
検体として、試薬ブランク測定用には精製水を、標準液には硫酸アンモニウム(JIS特級品)をアンモニア濃度が200μg/dlとなるように精製水に溶解したものを使用した。
測定初日の感度を100%として、各測定日の初日に対する相対感度(%)を図2に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】
グルコース脱水素酵素を律速酵素として作製した試薬において、グルコース脱水素酵素を安定化する処置を施していない比較試薬Aにおいては、グルコース脱水素酵素の失活に伴い、急激な相対感度の低下が確認された。さらに、第2試薬にジアホラーゼとテトラゾリウム塩を共存させた比較試薬Bでは、極端に試薬吸光度が上昇した結果、相対感度の低下が確認された。本発明では比較試薬と比較して明らかに安定であることが確認できる。
【0036】
〔実施例2〕
表4、表5に示す組成でアンモニア測定用の試薬1、試薬2を調製し、4℃〜8℃の温度範囲で保存し、試薬の吸光度、ブランク反応の変化、標準液の測定感度の確認を行った。
測定には日立7170S型自動分析装置を使用し、表3に示す測定条件にて測定を行った。Kfactorには10000を入力し、測定結果には1分間当たりの吸光度変化量(mAbs./min)を出力させた。
検体として、試薬ブランク測定用には精製水を、標準液には硫酸アンモニウム(JIS 特級品)をアンモニア濃度が200μg/dlとなるように精製水に溶解したものを使用した。
【0037】
【表4】
【0038】
【表5】
【0039】
測定結果を図3および図4に示す。図3は10ヶ月間冷蔵保存した本発明によるアンモニア測定試薬自体の吸光度変化を表した図であり、図4は当該試薬の10ヶ月の冷蔵保存期間におけるブランクおよび標準液を用いた単位時間当たりの吸光度変化量の変化を表した図である。
本実施例では、アンモニア測定用試薬で保存安定性の確認を行ったが、図3、4に示すとおり、アンモニア測定試薬自体の吸光度、ブランク反応、標準液の測定感度いずれにおいても、10ヶ月保存後においても変化が認められず、非常に安定であることが確認された。
【0040】
【発明の効果】
以上のように本発明は、酵素サイクリング反応を用いた測定試薬を冷蔵で長期間安定に保存することを可能とするものである。診断精度の向上、臨床検査の迅速化および簡便化は、医療および獣医療の分野において絶えず要求される課題である。本発明は、その解決の一助となるとともに、当該分野の発展に貢献するところ大であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 酵素サイクリングを用いた測定方法を模式的に示した図である。
【図2】 熱負荷試験における相対感度の変化を示したグラフである。
【図3】 保存期間中の試薬吸光度の変動を示したグラフである。
【図4】 保存期間中のブランク反応、標準液の測定感度の変動を示したグラフである。
Claims (4)
- 酵素サイクリング反応を用いて検体中の成分を、該成分の濃度に依存して変化する単位時間当たりの反応生成物または基質の吸光度または透過率の変化量により測定する、液状で保存可能な測定試薬であって、NAD + 合成酵素、ジアホラーゼおよび塩化ナトリウムにより安定化されたグルコース脱水素酵素を含有し、ジアホラーゼを含むpHが7.5以上の第1の液状試薬と、ジアホラーゼの基質であるテトラゾリウム塩を含むpHが7.5未満の第2の液状試薬とを含み、ジアホラーゼおよびジアホラーゼの基質以外の測定に必要な成分は、該成分にとって安定なpHの前記第1または第2の試薬のいずれかに夫々含まれ、測定試薬中の1つの酵素の含有量が、前記反応の反応開始後分析機器の測定範囲を超過しない時間内において、反応生成物または基質の吸光度または透過率が時間とともに比例的に増加または減少する様子が確認できる量であり、他の酵素の含有量が過剰量であり、前記第1および前記第2の試薬が別々に保管できる、前記試薬。
- 検体中の成分がアンモニア、ATPまたは酵素反応によりアンモニアもしくはATPを生じる物質である、請求項1に記載の試薬。
- テトラゾリウム塩が2−(2−メトキシ−4−ニトロフェニル)−3−(4−ニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルホフェニル)2H−テトラゾリウム一ナトリウムである、請求項1または2に記載の試薬。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の試薬を用いて、検体中の成分を測定する方法。
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